JP2004300516A - 磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材及び冷間鍛造品並びにその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.001〜0.03%以下,Cr:11〜16%,N:0.02〜0.05%を含有し、更に、Al、Nb,V,Ta,W,Hfのうち1種以上を0.01%以上0.2〜0.5%以下含有し、(1)式のA値が820(%)以上のフェライト系ステンレス鋼であり、更に、素材中心部の平均のフェライト粒が、JIS G 0552の粒度番号3〜9である冷間鍛造用および磁性部品用フェライト系ステンレス素材である。
A=42Cr+72Mo+88Si+204Nb+900Al+348V+1680B―300C―340N―140Ni―80Mn―22Cu+310 (1)
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼の磁気特性に係わり、例えば、安価な材料に対して冷間鍛造と熱処理で磁気特性を向上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまで、軟磁性ステンレス鋼は、耐食性に優れることから、さまざまな磁性部品に適用されており、おもに低C,低Nの12%Cr鋼が商業化されてきた。また、更に磁気特性や電気抵抗を改善するために、該成分系にAl,Si(例えば、特許文献1)、Tiが添加されてきた(例えば、特許文献2)。そして、これらの磁性部品は、おもに棒鋼からの切削加工や、粉末からの焼結により製造されてきた。
【0003】
すなわち、従来の主な磁性部品は、Al,Ti等が添加された特殊な材料で、且つ、切削加工,粉末冶金等で製造されており、高価な部品となっていた。
【0004】
ところが、最近では、低コスト化のニーズが大きく、冷間鍛造と僅かな機械加工により大量生産する方式が要求されるようになった。すなわち、従来の高性能化から品質安定・低コスト化が重視されるようになってきた。
【0005】
一方、フェライト系ステンレス鋼を、高温で磁気焼鈍すると磁気特性が向上することが知られている。しかしながら、従来の軟磁性ステンレス鋼として指向されてきた低C,低Nのフェライト系ステンレス鋼では、冷間鍛造後に高温で磁気焼鈍を施すと異常粒成長が発生し、結晶粒の異方性が発達し易くなる。異常粒成長は、磁気異方性を発達させ、磁性材料としての品質ばらつきを大きくする。そのため、冷間鍛造材については、磁気焼鈍温度を上げることができなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−045350号公報
【特許文献2】
特開昭61−217552号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、冷間鍛造性と高温磁気焼鈍時の異常粒成長抑制に優れる磁性部品用の安価なステンレス用素材を提供し、ステンレス製の磁性部品の品質を安定させ、且つ、一貫製造コストを下げることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、汎用のフェライト系ステンレス鋼において、冷間鍛造後の高温の磁気焼鈍でフェライト/オーステナイトの相変態による磁気特性の劣化を抑制するために化学組成を調整し、且つ、異常粒成長を防止するためAlN等の粒成長のインヒビターを制御することで、製品の磁気特性を損なうことなく、大幅に製造コストを低減できるステンレス用素材および製品を得ることを見出し、本発明をなしたものである。
【0009】
なお、本発明の磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材とは、磁気特性に優れたフェライト系ステンレス製品を製造するために用いる素材を意味する。この素材は棒線を含み、棒線とは、冷間鍛造用素材として熱間圧延された棒鋼,線材および伸線加工された棒線形状のことを総称して指す。また、磁気特性に優れたフェライト系ステンレス製品とは、本発明のフェライト系ステンレス冷間鍛造品を含む概念である。
【0010】
すなわち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1) 質量%で、C:0.001〜0.03%以下,Si:0.05〜1%,Mn:0.05〜1%,P:0.04%以下,Cr:11〜16%,N:0.02〜0.05%を含有し、更にAl:0.01〜0.2%、Nb:0.01〜0.5%,V:0.01〜0.5%,Ta:0.01〜0.5%,W:0.01〜0.5%,Hf:0.01〜0.5%のうち1種以上を含有し、(1)式のA値が820(%)以上であり、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物であることを特徴とする磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材である。
A=42Cr+72Mo+88Si+204Nb+900Al+348V+1680B―300C―340N―140Ni―80Mn―22Cu+310 (1)
(2) 質量%で、S:0.01〜0.05%,Bi:0.01〜0.06%,Pb:0.01〜0.06%,Te:0.01〜0.06%,Sn:0.01〜0.1%のうち一種以上をさらに含有することを特徴とする前記(1)記載の磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材である。
(3) 質量%で、Cu:0.5%以下,Ni:0.5%以下,Mo:1.0%以下のうち、1種以上を規制することを特徴とする前記(1)又は(2)記載の磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材である。
(4) 質量%で、Mg:0.001〜0.015%,Ca:0.001〜0.015%,Zr:0.001%〜0.015%のうち、1種以上をさらに含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材である。
(5) 質量%で、B:0.001〜0.015%をさらに含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材である。
(6) 素材中心部の平均フェライト結晶粒度番号(JIS G 0552)が3〜9であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材である。
【0011】
(7) 冷間鍛造品においてビッカース硬さ(HV200g)が250Hv以下であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の素材と同じ化学組成を有する磁気特性に優れたフェライト系ステンレス冷間鍛造品である。
(8) 磁気焼鈍後の結晶粒の長径が500μm以下であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の素材と同じ化学組成を有する磁気特性に優れたフェライト系ステンレス冷間鍛造品である。
【0012】
(9) 前記(1)〜(6)のいずれかに記載のステンレス素材に冷間鍛造を施し、続いて900℃〜1100℃の高温で磁気焼鈍を施すことを特徴とする磁気特性に優れたフェライト系ステンレス冷間鍛造品の製造方法である。
【0013】
上記本発明において、式(1)のA値を820(%)以上とすることにより、冷間鍛造後の高温の磁気焼鈍でフェライト/オーステナイトの相変態による磁気特性の劣化を抑制することができる。
【0014】
従来の磁性部品用フェライト系ステンレス鋼としては低Nのものが用いられていた。本発明では逆にNを0.02%以上とし、同時にAlをはじめとする元素を添加することによってAlN等の粒成長のインヒビターを制御することで異常粒成長を防止し、製品の磁気特性を損なうことなく、大幅に製造コストを低減できるステンレス用素材および製品を得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の請求項1記載の限定理由を述べる。
Cは、磁気特性および冷間鍛造性を劣化させるため、0.03%以下とする。しなしながら、工業的に0.001未満にすることは困難なため、下限を0.001%とする。好ましくは、0.001%以上、0.02%以下である。
【0016】
Siは、ステンレス鋼の脱酸および磁気特性を向上させるために、0.05%以上を添加するが、1%を超えて添加すると、冷間鍛造性が劣化する。そのため、上限を1%とする。好ましい範囲は、0.1〜0.8%である。
【0017】
Mnは、ステンレス鋼の脱酸のため0.05%以上添加するが、1%を超えて添加すると磁気特性および冷間鍛造性が劣化する。そのため、上限を1%とする。好ましい範囲は、0.1〜0.6%である。
【0018】
Pは、磁気特性を劣化させるため、0.04%以下に制限する。好ましくは、0.02%以下である。
【0019】
Crは、耐食性の向上と、磁気焼鈍時の相変態量を抑制する指標のA値(後述)を830(%)以上にするために、11%以上添加するが、16%を超えて添加すると飽和磁束密度が低下し逆に磁気特性が劣化する。そのため、上限を16%とする。好ましい範囲は、12〜14%である。
【0020】
Nは、AlN等の窒化物を形成させて高温焼鈍時の異常粒成長を抑制して磁気特性を向上させるため、0.02%以上添加する。しかしながら、0.05%を超えて過剰に添加すると、その効果は逆に磁気特性を劣化するし、また、粗大な窒化物形成のために冷間鍛造性が劣化する。そのため、上限を0.05%とする。好ましい範囲は、0.02〜0.04%である。
【0021】
Al,Nb,V,Ta,W,Hfは、微量な窒化物を形成して、高温焼鈍時の異常粒成長を抑制して磁気特性を向上させるため、微量に添加する。しかしながら、過剰に添加すると、その効果は飽和して不経済であるばかりか、冷間鍛造性を劣化させる。そのため、Al:0.01〜0.2%、Nb:0.01〜0.5%,V:0.01〜0.5%,Ta:0.01〜0.5%,W:0.01〜0.5%、Hf:0.01〜0.5%のうち1種以上を添加することにした。
【0022】
特に、通常のステンレス鋼のAl還元プロセスで製造できるという経済的な観点から、好ましくは、Alのみで、0.01〜0.1%の範囲が最も経済性に優れる。本発明の場合、従来の約0.2%以上の多量なAl添加による磁気特性改善に比べ、微量添加のみで効果を発揮できるというのが特徴である。
【0023】
次に、(1)式のA式は、900℃以上で磁気焼鈍を施した材料の磁気特性に及ぼす影響度を調査した結果得られたもので、磁気特性に対し、効果のある元素と影響度を示すものである。
A =42Cr+72Mo+88Si+204Nb+900Al+348V+1680B―300C―340N―140Ni―80Mn―22Cu+310 (1)
A値が820(%)未満であると、磁気焼鈍時の相変態量が多くなり、磁気特性が劣化する。このことからA値は、820(%)以上に限定する。好ましくは、850(%)以上である。
【0024】
次に請求項2記載の限定理由について述べる。
S、Bi,Pb,Teは必要に応じて添加する。
Sは、磁気特性を劣化させることなく、製品の寸法精度を軽切削加工により高めるため、0.01%以上添加する。しなしながら、0.05%を超えて添加すると、磁気特性が劣化するばかりか、冷間鍛造性も劣化する。そのため、上限を0.05%とする。好ましくは、0.015〜0.03%である。
【0025】
Bi,Pb,Teは、磁気特性を劣化させることなく、製品の寸法精度を軽切削加工により高めるため、0.01%以上添加する。しなしながら、0.06%を超えて添加すると、冷間鍛造性を劣化させる。そのため、上限を0.06%とする。好ましくは、0.015〜0.03%である。
【0026】
Snは、磁気特性を劣化させることなく、製品の寸法精度を軽切削加工により高めるため、0.01%以上添加する。しかしながら、0.1%を超えて添加すると、冷間鍛造性を劣化させる。そのため、上限を0.1%とする。好ましくは、0.015〜0.05%である。
【0027】
次に請求項3記載の限定理由について述べる。
Cu,Niは必要に応じて制限する。
Cu,Niは、マトリックスの強度を高め、冷間鍛造性を劣化させるため、0.5%以下とする。好ましくは、0.3%以下である。
【0028】
Moは、マトリックスの耐食性を高めるのに有効な元素であるが、過度な添加は、製造コストを高めるばかりか、冷間鍛造性をも劣化させる。そのため、1%以下とする。好ましくは、0.5%以下である。
【0029】
次に請求項4記載の限定理由について述べる。
Mg,Ca,Zrは必要に応じて添加する。
Mg,Ca,Zrは、介在物の形態制御を行い、冷間鍛造性,磁気特性を確保しつつ、製品の寸法精度を軽切削加工により高めるため、0.001%以上添加する。しなしながら、0.015%を超えて添加すると、冷間鍛造性を劣化させる。そのため、上限を0.015%とする。好ましい範囲は、0.002〜0.01%である。
【0030】
次に請求項5記載の限定理由について述べる。
Bは、粒界を強化して冷間鍛造性を向上させるため、必要に応じて、0.001%以上添加する。しかしながら、0.015%を超えて添加すると、逆にボライドが生成して冷間鍛造性を劣化させる。そのため、上限を0.015%に限定する。好ましい範囲は、0.002〜0.01%である。
【0031】
次に請求項6記載の限定理由について述べる。
軟化焼鈍後の素材中心部の平均フェライト結晶粒度番号は、冷間鍛造後の磁気焼鈍時の異常粒成長を防止するため、粒度番号を3以上に調整する。低C系のフェライト系ステンレス鋼では、粒粗大し易いため、素材、例えば棒線の段階で粒度を調整しておく必要がある。しかしながら、粒度番号が9を超えると、冷間鍛造性が劣化するばかりか、製品の磁気特性も劣化する。そのため、棒線の粒度番号の上限を8にした。好ましい粒度番号の範囲は、4〜8である。
【0032】
AlN等のインヒビターを本発明の如く適用含有させ、通常のフェライト系の焼鈍、例えば850℃付近で軟化焼鈍を施すことで、素材の結晶粒度を3〜9にすることができる。通常の低炭フェライト系ステンレス鋼では、インヒビターがない場合、結晶粒度が3未満の粗大粒になり、インヒビターが多すぎる場合、結晶粒度が9超の微細粒となる。
【0033】
次に請求項7記載の限定理由について述べる。
冷間鍛造時に部品全体を強加工できるならば、異常粒成長の問題は少ない。ところが、冷間鍛造において部分的に低歪みの領域が存在すると異常粒成長の問題が顕著となる。そのため、本発明の効果が著しい冷間鍛造時の加工歪みが低い部分に顕著に発生する。とりわけ、冷間鍛造後の冷間鍛造品で、加工歪み量を相対的に示すビッカース硬さ(Hv,荷重200g)が250Hv以下であると異常粒成長の抑制効果が著しい。
【0034】
次に請求項8記載の限定理由について述べる。
前述したように磁気焼鈍時に異常粒成長が生成すると磁気特性が劣化するが、とりわけ、結晶粒の長径が500μmを超える結晶粒が存在すると磁気特性の劣化が著しい。好ましくは、300μm以下である。
【0035】
一般に、低炭のフェライト系ステンレス鋼において、軽加工を施した後に900℃以上で磁気焼鈍を施すと500μmを超える異常粒成長が生成する。しかしながら、AlN等のインヒビターを本発明の如く適量添加することで、軽加工後の900℃以上の磁気焼鈍で500μmを超える異常粒成長を抑制できる。
【0036】
次に請求項9記載の限定理由について述べる。
冷間鍛造後に磁気特性付与のために可能な限り高温で磁気焼鈍を行うが、一般には、相変態や異常粒成長による磁気特性の劣化が問題となる。一方、請求項1〜6記載のステンレス鋼は、相変態の抑制や異常粒成長の抑制対策が施されているため、磁気焼鈍温度を、特性改善に有効な900℃以上に限定する。しかしながら、1100℃を超えると異常粒成長のインヒビターの効果がなくなる。そのため、上限を1100℃とする。好ましい範囲は、900〜1000℃の範囲である。なお、ここでの磁気焼鈍温度とは、熱処理中での最大温度であり、例えば、910℃で10分保定後に続いて800℃で20分保定する,910℃で100分保定後、徐冷却する等の熱処理パターンも含まれる。
【0037】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明する。
表1、2に実施例の鋼の化学組成を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
鋼A〜C,AF〜AHは、0.4%Si−0.2%Mn−0.02%P−13.3%Cr−0.02%Al鋼を基本成分として、磁気特性および冷間鍛造性に影響を及ぼすC量(%)とN量(%)を変化させたものである。
鋼A,D〜F,AI,AJは、0.015%C−0.02%P−13.3%Cr−0.025%N−0.02%Al鋼を基本成分として、磁気特性および冷間鍛造性に影響を及ぼすSi量(%)とMn量(%)を変化させたものである。
鋼A,G,AKは、0.015%C−0.4%Si−0.2%Mn−13.3%Cr−0.025%N−0.02%Al鋼を基本成分として、磁気特性に悪影響を及ぼすP量(%)を変化させたものである。
鋼A,H,I,AL,AMは、0.015%C−0.4%Si−0.2%Mn−0.02%P−0.025%N−0.02%Al鋼を基本成分として、耐食性および磁気特性に影響を及ぼすCr量(%)の影響を変化させたものである。
鋼A,J〜S,AN〜AUは、0.015%C−0.4%Si−0.2%Mn−0.02%P−13.3%Cr−0.025%N鋼を基本成分として、冷間鍛造後の高温磁気焼鈍時の異常粒成長に影響を及ぼすAl量(%),Nb量(%),V量(%),Ta量(%),W量(%),Hf量(%)を変化させたものである。
鋼A,T〜X,AV〜AZは、0.015%C−0.4%Si−0.2%Mn−0.02%P−13.3%Cr−0.025%N鋼を基本成分として、軽切削加工性,磁気特性,冷間鍛造性に影響を及ぼすS量(%),Bi量(%),Pb量(%),Te量(%),Sn量(%)を変化させたものである。
鋼A,Y,Z,AB,BA〜BCは、0.015%C−0.4%Si−0.2%Mn−0.02%P−13.3%Cr−0.025%N鋼を基本成分として、磁気特性および冷間鍛造性に影響を及ぼすCu量(%),Ni量(%),Mo量(%)を変化させたものである。
鋼A,AB〜AD,BD〜BFは、0.015%C−0.4%Si−0.2%Mn−0.02%P−13.3%Cr−0.025%N鋼を基本成分として、軽切削性に影響を及ぼすMg量(%),Ca量(%),Zr量(%)を変化させたものである。
鋼A,AE,BGは、0.015%C−0.4%Si−0.2%Mn−0.02%P−13.3%Cr−0.025%N鋼を基本成分として、冷間鍛造性に影響を及ぼすB量(%)を変化させたものである。
【0041】
これらの成分の鋼は、100kgの真空溶解炉にて溶解・鋳造(φ200mm)し、その鋳片を熱間加工にてΦ21mmの線材に熱間圧延した。そして、フェライト粒度を変化させるために750〜1000℃の範囲で軟化焼鈍を施し、酸洗・被膜後、Φ20.0mmにスキンパス伸線加工を施し冷間加工用の棒線とした。その後、冷間鍛造性を評価するために、後方押し出し加工の多段ヘッダーにより中空品に冷間鍛造し、引き続いて、軽切削性を施すために超鋼バイトにて軽切削加工を施した。一方、低歪み加工時での本発明の効果を確認するため、前述した圧造用棒線を冷間の前方押出し加工によりφ17〜10mmの棒製品に冷間加工を施し、冷間鍛造材の硬さを変化させた。そして、異常粒成長の影響を調べるために、冷間加工の棒製品を850〜1200℃で100分間保定の磁気焼鈍を施し、磁気特性と異常粒成長を評価した。
なお、製造途中工程において、線材の軟化焼鈍後のフェライト粒度および冷間鍛造後の硬さも評価した。
【0042】
線材の軟化焼鈍後のフェライト粒度は、JIS G 0552に従い、調査した。本発明例のフェライト粒度は3〜9である。
【0043】
冷間鍛造性は、中空形状に冷間鍛造した時に冷間加工割れが生じるかどうか評価した。割れが発生しない場合、冷間鍛造性の評価を○,割れが発生する場合、冷間鍛造性の評価を×とした。本発明例の冷間鍛造性の評価は○である。
【0044】
棒製品への冷間加工後の硬さは、冷間鍛造時の加工歪み量の程度を表す指標として測定した。すわなち、冷間加工した棒製品を縦断面に埋め込み、断面を荷重200gのビッカース硬さ計にて測定した。ビッカース硬さが250Hv以下なら低歪み加工と判断した。本発明例のビッカース硬さは、250Hv以下である。
【0045】
軽切削加工性は、中空品の外周(φ30mm)をP20の超硬バイト(チップブレーカ有り)で、切削速度100m/分,切り込み;0.2mm,送り;0.05mm/rev.湿式の条件にて、長手旋削加工を施して、切屑分断性にて評価した。切屑形状は規則的にカール状に分断されていれば○,不規則な形の連続切屑の場合は×と評価した。
【0046】
棒製品の異常粒成長は、磁気焼鈍後の製品を縦断面に埋め込み、王水溶液にてエッチングを施し、光学顕微鏡観察にて評価した。長径が500μmを超える異常粒がない場合、異常粒成長の評価は○,500μmを超える異常粒が存在する場合、評価は×とした。本発明例の異常粒成長の評価は○である。
【0047】
棒製品の磁気特性は、直流磁場中での棒鋼長手方向の磁束密度を測定した。なお、測定値は、B2,B5の値で評価した。B2とは2Oeでの磁束密度(T),B5とは5Oeでの磁束密度(T)の値である。本発明例の磁束密度は、B2≧0.2T,B5≧0.7Tである。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
表3、4は、各特性に及ぼす化学組成の影響を示したものである。線材を850℃で軟化焼鈍し、その後、中空品に冷間鍛造、または、φ16mmの棒製品に冷間加工して950℃で磁気焼鈍を施したものである。
【0051】
本発明例は、いずれも冷間鍛造性および棒製品のビッカース硬さは250Hv以下であり、異常粒成長を抑制できている。そのため、B2,B5で示されるように、磁気特性に優れている。本発明例No.20〜24,本発明例No.28〜30は、切削性改善元素が適量に添加されており、更に、軽切削性にも優れている。
【0052】
しかしながら、比較例No.32ではC量が高く、冷間鍛造性および磁気特性に劣っている。
比較例No.33では、N量が低く、粒成長のインヒビターがないために異常粒成長が発生し、磁気特性に劣っている。
比較例No.34では、N量が高いためフェライト粒が小さく、冷間鍛造性に劣っているばかりか、磁気特性にも劣っている。
比較例No.35では、Si量が高いため、冷間鍛造性に劣っている。
比較例No.36では、Mn量が高いため、磁気特性および冷間鍛造性に劣っている。
比較例No.37では、P量が高いため、磁気特性に劣っている。
比較例No.38では、Cr量が低いため、A値が低くなり、磁気特性に劣っている。逆に比較例No.39では、Cr量が高いため、磁気特性に劣っている。
比較例No.40では、Al等、粒成長のインヒビターの元素含有量が少なく、異常粒成長が発生して磁気特性に劣っている。
比較例No.41〜47では、それぞれ、インヒビターに寄与するAl量,Nb量,V量,Ta量,W量,Hf量が高過ぎるため、粗大な窒化物が析出して、冷間鍛造性に劣っている。
比較例No.48では、軽切削性に寄与するS量が高過ぎるため、冷間鍛造性に劣っているばかりか、磁気特性にも劣っている。
比較例No.49〜52では、それぞれ、軽切削性に寄与するBi量,Pb量,Te量,Sn量が高すぎるため、冷間鍛造性に劣っている。
比較例No.53〜55では、それぞれ、冷間鍛造性を劣化させるCu量,Ni量,Mo量が高いため、冷間鍛造性に劣っている。更に、比較例No.54ではA値も低いため、磁気特性にも劣っている。
比較例No.56〜58では、それぞれ、軽切削性に寄与するMg量,Ca量,Zr量が高過ぎるため、冷間鍛造性に劣っている。
比較例No.59では、冷間鍛造性に寄与するB量が高過ぎるため、逆に冷間鍛造性を劣化させている。
【0053】
以上、本発明鋼において、窒化物のインヒビター効果の優位性は明らかである。
【0054】
【表5】
【0055】
表5は、各特性に及ぼす棒線のフェライト粒度の影響を示したもので、線材の軟化焼鈍温度を750〜1000℃と条件を振ってフェライト粒度を変化させ、その後、中空品へ冷間鍛造、または、φ16mmの棒製品へ冷間加工して950℃で磁気焼鈍を施したものである。
【0056】
本発明例No.60〜62では、棒線素材のフェライト粒度が3〜9であり、磁気特性に優れている。
【0057】
しかしながら、比較例No.63では、フェライト粒度が10と小さいため、冷間鍛造性に劣るばかりか、磁気特性にも劣っている。
一方、比較例No.64では、フェライト粒度が大きいため、異常粒成長が発生し、磁気特性に劣っている。
【0058】
以上、本発明の棒線において、軟化焼鈍時のフェライト粒径の調整は、重要であり、本発明の優位性は明らかである。
【0059】
【表6】
【0060】
表6は、各特性に及ぼす磁気焼鈍温度の影響を示したもので、線材を850℃で軟化焼鈍し、その後、棒鋼へ冷間加工後の磁気焼鈍温度を850〜1200℃に変化させたものである。
【0061】
本発明例65〜67では、磁気焼鈍温度が900〜1100℃の範囲でインヒビターの効果が効いているため、異常粒成長が発生しておらず、磁気特性に優れている。
【0062】
しかしながら、比較例No.68では、磁気焼鈍温度が低いため、磁気特性に劣っている。
一方、比較例No.69では、磁気焼鈍温度が高すぎるため、インヒビターの効果がなくなり、磁気特性に劣っている。
【0063】
以上、本発明の高温磁気焼鈍の優位性は明らかである。
【0064】
【表7】
【0065】
表7は、各特性に及ぼす冷間加工後の硬さ(冷間加工率)の影響を示したもので、線材を850℃で軟化焼鈍し、棒鋼加工時の加工率(断面減少率)を30%〜85%まで変化させ、その後、950℃で磁気焼鈍を施したものである。
【0066】
本発明例No.70〜72では、冷間加工後の硬さが250Hv以下であるが、インヒビターの効果があるため、異常粒成長が抑制され、磁気焼鈍に優れている。
【0067】
しかしながら、比較例No.73〜75では、インヒビターがないため、冷間加工後の硬さが250Hv以下では異常粒成長が生成する。そのため、磁気特性に劣っている。
一方、比較例No.76,77の冷間加工後の硬さが250Hv以上を超える強加工の領域では、インヒビターの存在に関係なく異常粒成長が抑制されるため、インヒビターの有無に係わらず、磁気特性に優れている。すなわち、冷間加工後の硬さが250Hvを超える強加工域では本発明鋼の優位性が小さくなる。
【0068】
以上、低歪み加工での冷間加工材における本発明の優位性は明らかである。
【0069】
【発明の効果】
以上の実施例から明らかなように、本発明により冷間鍛造性と高温の磁気焼鈍時の異常粒成長抑制に優れる磁性部品用の安価なステンレス素材を提供して、ステンレス鋼製の磁性部品の品質を安定させ、且つ、一貫製造コストを下げることが可能であり、産業上、極めて有用である。
Claims (9)
- 質量%で、C:0.001〜0.03%以下,Si:0.05〜1%,Mn:0.05〜1%,P:0.04%以下,Cr:11〜16%,N:0.02〜0.05%を含有し、更にAl:0.01〜0.2%、Nb:0.01〜0.5%,V:0.01〜0.5%,Ta:0.01〜0.5%,W:0.01〜0.5%,Hf:0.01〜0.5%のうち1種以上を含有し、(1)式のA値が820(%)以上であり、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物であることを特徴とする磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材。
A=42Cr+72Mo+88Si+204Nb+900Al+348V+1680B―300C―340N―140Ni―80Mn―22Cu+310 (1) - 質量%で、S:0.01〜0.05%,Bi:0.01〜0.06%,Pb:0.01〜0.06%,Te:0.01〜0.06%,Sn:0.01〜0.1%のうち一種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1記載の磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材。
- 質量%で、Cu:0.5%以下,Ni:0.5%以下,Mo:1%以下のうち、1種以上を制限することを特徴とする請求項1又は2記載の磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材。
- 質量%で、Mg:0.001〜0.015%,Ca:0.001〜0.015%,Zr:0.001%〜0.015%のうち、1種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材。
- 質量%で、B:0.001〜0.015%をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材。
- 素材中心部の平均フェライト結晶粒度番号(JIS G 0552)が3〜9であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁気特性に優れたフェライト系ステンレス用素材。
- 冷間鍛造品において、ビッカース硬さ(Hv200g)が250Hv以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化学組成を有する磁気特性に優れたフェライト系ステンレス冷間鍛造品。
- 冷間鍛造品において、磁気焼鈍後の結晶粒の長径が500μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化学組成を有する磁気特性に優れたフェライト系ステンレス冷間鍛造品。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のステンレス素材に冷間鍛造を施し、続いて900℃〜1100℃の高温で磁気焼鈍を施すことを特徴とする磁気特性に優れたフェライト系ステンレス冷間鍛造品の製造方法。
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US10316379B2 (en) * | 2015-10-30 | 2019-06-11 | Northwestern University | High temperature steel for steam turbine and other applications |
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- 2003-03-31 JP JP2003094727A patent/JP2004300516A/ja not_active Withdrawn
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