JP2004300285A - 生分解性接着剤用ポリエステル樹脂 - Google Patents
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Abstract
【課題】生分解性に優れ、しかも、各種生分解性基材への密着性に優れるポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】共重合ポリエステル樹脂に含まれるカルボン酸成分全体に対し、乳酸残基(A):5〜90モル%、芳香族カルボン酸残基(B):5〜70モル%、脂肪族カルボン酸残基(C):5〜90モル%を含有し、(A)+(B)+(C)=100モル%としたことを特徴とする生分解性接着剤用ポリエステル樹脂。また、これを含む接着剤。
【選択図】 なし
【解決手段】共重合ポリエステル樹脂に含まれるカルボン酸成分全体に対し、乳酸残基(A):5〜90モル%、芳香族カルボン酸残基(B):5〜70モル%、脂肪族カルボン酸残基(C):5〜90モル%を含有し、(A)+(B)+(C)=100モル%としたことを特徴とする生分解性接着剤用ポリエステル樹脂。また、これを含む接着剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の生分解性基材に塗布され密着性に優れた生分解性接着剤用ポリエステル樹脂と、これを含んだ接着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、生分解性プラスチック、特に、ポリ乳酸を利用した商品の開発が行われ、これらの製品同士を接着させ、しかも、生分解性の接着剤の開発も盛んに行なわれている。例えば、特許文献1では、ポリ乳酸自体を接着剤として利用する方法が提案されているが、ポリ乳酸が硬くて脆いため、密着性に問題があった。また、特許文献2では、ポリ乳酸に可塑剤を添加して接着剤として利用することが提案されているが、ポリ乳酸は生分解性であるが、可塑剤が生分解性でないために、接着剤とポリ乳酸の成形品からなるものは、全体としては生分解性を有していなかった。また、特許文献3、特許文献4では、ポリ乳酸に、他成分をブレンドして生分解性接着剤とすることが開示されているが、ブレンド工程が必要など経済的に不利であった。また、特許文献5、特許文献6、特許文献7では、ポリ乳酸にポリ乳酸とは別のヒドロキシカルボン酸やポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、脂肪族ポリエステル等を共重合した樹脂を接着剤として利用する方法が提案されているが、これらの方法では接着剤が脂肪族系のモノマーとポリ乳酸のみで構成されているために、十分な密着性を保持することは困難であった。また、芳香族系モノマーを用いる方法としては、特許文献8に、ポリ乳酸にスルホン酸金属塩を導入することが提案されているが、スルホン酸塩として芳香族系モノマーを用いたとしても、請求項に示されている範囲の量では、生分解性プラスチックへの密着性が好ましくなかった。さらに、脂肪族系のポリエステルと芳香族系のポリエステルの共重合体が特許文献9で提案されているが、生分解性基材への接着性が悪いものであった。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−38118号公報
【特許文献2】
特開2000−86877号公報
【特許文献3】
特開平9−131835号公報
【特許文献4】
特開2002−256250号公報
【特許文献5】
特開平5−339557号公報
【特許文献6】
特開2000−173589号公報
【特許文献7】
特開2002−88334号公報
【特許文献8】
特開2001−323052号公報
【特許文献9】
特表平10−508640号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下、本発明の課題は、生分解性を備え、さらに、生分解性基材への密着性に優れる接着剤用ポリエステル樹脂を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、共重合ポリエステル樹脂に、芳香族カルボン酸残基を加え、さらにポリ乳酸残基を加えることで、生分解性基材への密着力が格段に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、共重合ポリエステル樹脂のカルボン酸成分全体に対し、乳酸残基(A)成分が5〜90モル%、芳香族カルボン酸残基(B)成分が5〜70モル%、脂肪族カルボン酸残基(C)が10〜90モル%を含有し、(A)+(B)+(C)=100モル%としたことを特徴とする生分解性接着剤用ポリエステル樹脂、およびこれを含む接着剤である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の生分解性接着剤用ポリエステル樹脂は、カルボン酸成分とアルコール成分からなり、カルボン酸成分は、乳酸残基(A)と芳香族カルボン酸残基(B)、および乳酸を除く脂肪族カルボン酸残基(C)からなり、(A)+(B)+(C)=100モル%となるように用いる。
【0008】
本発明のポリエステル樹脂のカルボン酸成分全体に対する乳酸残基(A)の割合は、5〜90モル%の範囲とする必要があり、15〜70モル%がより好ましく、30〜60モル%がさらに好ましい。(A)のカルボン酸成分全体に占める割合が5モル%未満であると、生分解性が低下し、90モル%を超えると接着性が不十分となる。
【0009】
乳酸残基は、ポリ乳酸を用いて導入することができる。乳酸の構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体を用いることができる。
【0010】
ポリ乳酸の重合法としては、縮重合法、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することができる。例えば、縮重合法ではL−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮重合して任意の組成のポリ乳酸を得ることができる。また、開環重合法では乳酸の環状2量体であるラクチドを、オクチル酸錫等の触媒を使用してポリ乳酸を得ることができる。ラクチドにはL−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の特性を有するポリ乳酸を得ることができる。
【0011】
ポリ乳酸の分子量増大を目的として、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などの鎖延長剤を使用してもよい。
【0012】
ポリ乳酸の重量平均分子量は通常5万〜100万の範囲にあることが多く、カーギルダウ、三井化学、島津製作所等から販売されている。
【0013】
なお、乳酸残基は、触媒下減圧にするなど、重合条件によっては、ポリ乳酸がラクチドとして、一部重合系外に放出されることが多いので、重合モノマーを反応釜に投入する際は、目標組成よりも若干多く投入する必要がある。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂のカルボン酸成分全体に対する芳香族カルボン酸残基(B)の割合は、5〜70モル%の範囲とする必要があり、10〜40モル%がより好ましく、15〜30モル%がさらに好ましい。(B)のカルボン酸成分全体に占める割合が5モル%未満であると、接着性が弱く、70モル%を超えると、生分解性が低下する。
【0015】
芳香族カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸等が例示できる。これらは無水物であってもよい。上記したカルボン酸成分の中でも、汎用性の点からテレフタル酸とイソフタル酸が好ましい。
【0016】
本発明のポリエステル樹脂は、さらに、乳酸を除く脂肪族カルボン酸残基(C)を5〜90モル%の範囲で含有している必要があり、15〜40モル%がより好ましく、20〜35モル%がさらに好ましい。(C)のカルボン酸成分全体に占める割合が90モル%を超えると、接着性が不十分となり、5モル%未満であると生分解性が低下する。
【0017】
(C)成分として用いることのできる脂肪族カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸およびこれらの無水物、また、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸の脂環族ジカルボン酸も含まれる。これらの中で、生分解性の面から、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸が好ましく、コハク酸とセバシン酸が特に好ましい。
【0018】
本発明のポリエステル樹脂には、さらに、分子量増大等の必要に応じて3官能以上のカルボン酸を共重合してもよい。この場合、ポリエステル樹脂に含まれるカルボン酸成分全体に対し、0.2〜5モル%程度が適当である。0.2モル%未満では添加した効果が発現せず、5モル%を超える量を含有せしめた場合には、ゲル化点を超え、ポリエステル樹脂の分子量を実用上充分に上げることができない場合がある。3官能以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸等の芳香族カルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらから1種または2種以上用いることができる。
【0019】
ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4‐ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,17−ヘプタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族グリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンのようなビスフェノール類のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加体、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0020】
さらに必要に応じて3官能以上のアルコールを、本発明のポリエステル樹脂に含まれるグリコール成分の5モル%以下で使用することができる。5モル%以上ではゲル化点を超え、共重合ポリエステル樹脂の分子量を実用上充分に上げることができず、好ましくない。3官能以上のアルコールとして、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトールが挙げられる。これらは必ずしも1種類で用いる必要はなく、樹脂に対し付与したい特性に応じて複数種以上混合して用いることが可能である。
【0021】
上記のなかで、生分解性を付与するために、脂肪族グリコールを用いることが好ましく、特に、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのような脂肪族グリコールを用いることが汎用性の点からさらに好ましい。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂には、乳酸以外のヒドロキシカルボン酸成分を共重合することができる。このような成分としては、p−ヒドロキシ安息香酸、オキシラン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸等が例示でき、これらは、上記の(B)成分または(C)成分として用いることができる。ε−カプロラクトンとその開環によって生じる6−ヒドロキシカプロン酸は、(C)成分として好ましく使用することができる。なお、本発明における組成の計算の際には、乳酸も含めたヒドロキシカルボン酸は、酸成分およびアルコール成分の両方に算入する。
【0023】
また、ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコールが共重合されていてもよい。モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等、モノアルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂の数平均分子量は4,000以上とすることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、12,000以上であることがさらに好ましく、15,000以上であることが特に好ましい。数平均分子量が4,000未満では、接着強力が不足する傾向にある。
【0025】
なお、本発明のポリエステル樹脂の分子量分布の分散度は、特に限定されないが、8以下が好ましく、5以下がより好ましい。ここで、分子量分布の分散度とは、重量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。
【0026】
また、本発明のポリエステル樹脂のガラス転移温度(以下、Tgとする)は、特に限定されないが、25℃よりも低い方が、常温で分解されやすいので好ましい。
【0027】
本発明の生分解性接着剤用ポリエステル樹脂を得るための製造方法としては、直接エステル化法、エステル交換法いずれでもよく、エステル反応後、つづいて縮重合反応を行う溶融重合法によって製造することができる。エステル化反応としては、例えば、ポリ乳酸以外の共重合ポリエステル樹脂の原料であるアルコール成分とカルボン酸成分および触媒を一括して反応器に仕込み、攪拌しながら2〜8時間200〜240℃の条件でエステル反応を行なった後、ポリ乳酸を仕込み、さらに2〜8時間エステル化反応を行う方法や、すべての共重合ポリエステル樹脂の原料であるアルコール成分とカルボン酸成分とポリ乳酸及び触媒を一括して反応器に仕込み、攪拌しながら2〜8時間200〜240℃でエステル反応を行う方法等があげられる。前者の方法は、熱分解しやすいポリ乳酸に与える熱履歴が小さくなるため好ましい。縮重合反応としては、例えば、220〜290℃程度の重合温度まで昇温し、さらに系内を130Pa以下の減圧にし、高真空下で3〜10時間縮重合反応を行う方法が挙げられる。
【0028】
ポリエステル樹脂の分子量を制御する方法としては、重合時のポリエステル溶融物を所定の粘度で重合を終了する方法や、いったん分子量の高いポリエステルを製造したのち解重合剤を添加する方法、さらに前記した単官能アルコールや単官能カルボン酸を予め添加する方法などが挙げられる。本発明の共重合ポリエステル樹脂は上記のいかなる方法によって分子量を制御してもよいが、重合時の共重合ポリエステル樹脂溶融物を所定の粘度で制御する方法が好適に用いられる。
【0029】
また、ポリエステル樹脂に所望の酸価や水酸基価を付与する場合には、上記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸成分や多価アルコール成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合を行う方法等を挙げることができる。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂を製造する際に使用することができる触媒として、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、テトラブチルチタネ−トなどの有機チタン酸化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の酢酸塩、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズなどの有機錫化合物を挙げることができる。また触媒使用量は、生成する樹脂質量に対し、0.001〜1.0質量%の範囲にあることが好ましい。0.001質量%未満ではポリエステルが所望の分子量に到達しないことがあり、一方1.0質量%を超える場合には樹脂の分子量については実用上問題のない程度まで上昇するが、内容物への溶出が懸念されるため好ましくない。
【0031】
本発明の生分解性接着剤用ポリエステル樹脂は、溶剤型、エマルション型、ホットメルト型等いずれのタイプの接着剤としても使用することができる。
【0032】
まず、溶剤型接着剤とする場合について説明する。
生分解性接着剤用ポリエステル樹脂を溶剤型の接着剤として用いる場合は、本発明の接着剤用ポリエステル樹脂を、有機溶剤に溶解して接着剤として用いることができる。ポリエステル樹脂を溶解させる装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。また、ポリエステル樹脂が溶解しにくい場合には、加熱したり、加圧してもかまわない。
【0033】
用いる溶剤としては、本発明の共重合ポリエステル樹脂を溶解することができれば、どのようなものでもよい。使用できる溶剤として、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素系有機溶剤、脂肪族炭化水素系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、含ハロゲン系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、エステル系有機溶剤、グリコール系有機溶剤等が挙げられる。
【0034】
ケトン系有機溶剤としては、メチルエチルケトン(2−ブタノン、以下MEKと略す)、アセトン、ジエチルケトン(3−ペンタノン)、メチルプロピルケトン(2−ペンタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、2−ヘキサノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が例示できる。芳香族炭化水素系有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等、脂肪族炭化水素系有機溶剤としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等、エーテル系有機溶剤としては、1、4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、含ハロゲン系有機溶剤としては、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、アルコール系有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等、エステル系有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、γ―ブチロラクトン、イソホロン等、グリコール系有機溶剤としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を例示することができる。さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等の有機溶剤が挙げられる。中でも、汎用性があるメチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン等が好ましい。
【0035】
これらの有機溶剤としては、上記したものを単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができるが、本発明の接着剤を得るためには、ポリエステル樹脂を3質量%以上溶解することができるように有機溶剤の選択を行うことが好ましく、5質量%以上溶解することができる有機溶剤がより好ましく、10質量%以上溶解することができる有機溶剤がさらに好ましく、30質量%以上溶解することができる有機溶剤が特に好ましい。固形分濃度が3質量%未満である場合には、分厚い被膜を形成することが困難になるばかりか、組成物中の溶媒の比率が高く、被膜を形成する際の溶媒を留去するのに時間を要し、生産性が低下するなどの問題が生じるので好ましくない。
【0036】
次に、エマルション型接着剤とする場合について説明する。
生分解性接着剤用ポリエステル樹脂をエマルション型の接着剤として用いる場合は、例えば、本発明の接着剤用ポリエステル樹脂を、塩基性化合物、親水性の有機溶剤とともに加圧・加熱下で水に分散させる方法でエマルションを得る方法(A法と略す)や、本発明の接着剤用ポリエステル樹脂を、有機溶剤に溶解し、続いて、塩基性化合物とともに、水を加えて、水に分散させる方法、所謂、転相乳化法でエマルションを得る方法(B法と略す)等で作成することができる。これらの方法で得られたエマルションは、必要に応じて、系中に含まれる有機溶剤を脱溶剤することも可能である。有機溶剤を含有するエマルションおよび有機溶剤を脱溶剤したエマルションは、いずれも接着剤として用いることができる。
【0037】
まず、A法について説明する。
A法では、容器に水、塩基性化合物及び水溶性有機溶剤とからなる水性媒体、並びに粒状ないしは粉末状の本発明のポリエステル樹脂を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合して粗分散させる。この際に、ポリエステル樹脂の形状が、粗分散が困難なシート状や大きな塊状である場合には、下記の加熱工程に移行すればよい。次いで、槽内の温度をポリエステル樹脂のTg以上あるいは40℃以上の温度に保ちつつ、好ましくは15〜120分間攪拌を続けることにより、ポリエステル樹脂を十分に水性化させ、その後、好ましくは攪拌下で40℃以下に冷却する。上記のようにして、本発明のポリエステル樹脂のエマルション又は溶液が得られる。
【0038】
塩基性化合物としては、樹脂被膜形成時に揮散しやすい点から、沸点が250℃以下、好ましくは160℃以下の有機アミン、あるいはアンモニアが好ましい。好ましく用いられる有機アミンの具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等が挙げられ、中でも、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンを使用することが好ましい。
【0039】
塩基性化合物によって、ポリエステル樹脂のカルボキシル基が中和され、生成したカルボキシルアニオン間の静電気的反発力によって微粒子間の凝集が防がれ、エマルションに安定性が付与される。
【0040】
また、水溶性有機溶媒としては、有機溶剤の具体例としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられ、これらのうち1種類でも、また2種以上を混合して使用してもよい。
中でも、イソプロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0041】
また、エマルション型接着剤における水溶性有機溶剤の含有量としては、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。有機溶剤の含有量を上記の範囲とすることで、エマルション型接着剤の粘性及び貯蔵安定性を良好に保つことができる。
【0042】
分散を行なう装置としては、液体を投入できる槽を備え、槽内に投入された水性媒体と樹脂粉末ないしは粒状物との混合物を適度に撹拌できる装置があげられる。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機として広く当業者に知られている装置を使用することができ、通常は簡易的な蓋部を備え付け、常圧又は微加圧下で使用されるが、必要に応じて、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することもできる。
【0043】
次に、B法について説明する。
B法は、実質的に、溶解工程、分散工程の2工程よりなる。溶解工程は、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させる工程であり、分散工程は、有機溶剤に溶解したポリエステル樹脂溶液を塩基性化合物とともに水に分散させる工程である。
【0044】
有機溶剤は、先にあげた溶剤型接着剤に用いる有機溶剤を用いることができ、中でも、アセトン、MEK、MIBK、ジオキサン、テトラヒドロフラン単独や、アセトン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、MEK/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、MIBK/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、ジオキサン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、テトラヒドロフラン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液等が好適に使用できる。混合溶液を用いる場合には、任意の混合比の混合溶液を作成しておき、その混合溶液にポリエステル樹脂を溶解させるか、あるいは、よりポリエステルに対して溶解力がある有機溶剤で、ポリエステルをあらかじめ溶解しておき、後述する分散工程前に規定量の別の有機溶剤を加えてもよい。
【0045】
溶解工程では、ポリエステル樹脂を、10〜70質量%程度、好ましくは、30〜70質量%の濃度となるように有機溶剤に溶解させる。ポリエステル樹脂を溶解させる装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。また、ポリエステル樹脂が溶解しにくい場合には、加熱したり、加圧してもかまわない。
【0046】
次に、分散工程について説明する。
分散工程では、溶解工程で得られたポリエステル樹脂溶液を水および塩基性化合物と混合して分散を行う。塩基性化合物は、先に記述したA法で用いられる塩基性化合物が使用される。塩基性化合物は、ポリエステル樹脂を含有した溶液に加えておき、これに水を徐々に投入して分散を行うことが必要であり、このような方法を用いることで、得られるエマルションの粒子径が小さくなり貯蔵安定性が良好になる。
【0047】
なお、分散工程において乳化しにくい場合や、得られるエマルションの耐薬品性を高めたりする場合には、水および塩基化合物に、さらに、界面活性剤を用いて、分散を行ってもよい。
【0048】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等、すべての公知の界面活性剤が含まれる。界面活性剤の中では、顔料との混合安定性に優れることや泡が発生しにくいなどの理由から非イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。このような非イオン性界面活性剤としてはAldrich社製のIgepalシリーズ、三洋化成株式会社製のサンノニックFD−140、サンノニックFD−100、サンノニックFD−80等、サンノニックFDシリーズ、セドランFF−220、セドランFF−210、セドランFF−200、セドランFF−180等、セドランFFシリーズ、セドランSNP−112等、セドランSNPシリーズ等が挙げられる。
【0049】
また、分散工程を行う際の温度は、40℃以下であることが好ましく、30℃以下がより好ましく、15℃以下がさらに好ましい。温度が40℃以上であると、得られるエマルションの粒子径が大きくなり、貯蔵安定性が悪くなるので、好ましくない。
【0050】
分散工程を行う装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機(例えばホモミキサー)として広く当業者に知られている装置があげられる。なお、ホモミキサーなど煎断の大きい乳化機を用いる際には、内温が40℃以下になるように冷却しながら用いることが好ましい。なお、分散工程は常圧、減圧、加圧下いずれの条件で行ってもよい。
【0051】
エマルション型接着剤における有機溶剤の含有率は、特に限定されないが、好ましくは30質量%以下であり、15質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましく、0.5質量%以下が最も好ましい。有機溶剤の含有率が30質量%を超えると、基材の種類によっては、エマルションが含有する有機溶剤によって基材がダメージを受ける場合があり好ましくない。
【0052】
なお、A法、B法で得られたエマルション型接着剤の有機溶剤の含有率を減少させるために、脱溶剤工程を設けて、分散工程により得られたエマルションに含まれる有機溶剤の一部またはすべてを系外に除去してもよい。脱溶剤は、減圧下または常圧下いずれで脱溶剤をおこなってもかまわない。脱溶剤工程を行う装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。
【0053】
また、得られたエマルション中の異物等を除去する目的で、工程中に濾過工程を設けてもよい。このような場合には、例えば、300メッシュ程度のステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を設置し、加圧濾過(空気圧0.2MPa)を行えばよい。
【0054】
次に、ホットメルト接着剤とする場合について説明する。
生分解性接着剤用ポリエステル樹脂をホットメルト型の接着剤として用いる場合は、本発明の接着剤用ポリエステル樹脂を溶融状態あるいは粉体状態で使用することができる。
【0055】
次に、本発明のポリエステル樹脂を含む接着剤の使用方法について説明する。溶剤型やエマルション型の接着剤として用いる場合には、公知の成膜方法、例えば、ディップコート法、はけ塗り法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、カーテンフローコート法、各種印刷法等により、各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥及び焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂被膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。
【0056】
また、加熱温度や加熱時間としては、溶剤型接着剤やエマルション型接着剤の相違による溶剤の種類や被コーティング物である基材の種類等により適宜選択される。
【0057】
溶剤型接着剤として用いた場合は、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、40〜250℃が好ましく、50〜230℃がより好ましく、60〜200℃が特に好ましく、加熱時間としては、1秒〜20分間が好ましく、5秒〜15分がより好ましく、10秒〜10分が特に好ましい。
また、エマルション型接着剤として用いた場合は、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、60〜250℃が好ましく、70〜230℃がより好ましく、80〜200℃が特に好ましく、加熱時間としては、1秒〜30分間が好ましく、5秒〜20分がより好ましく、10秒〜10分が特に好ましい。
また、ホットメルト型接着剤として用いた場合は、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、40〜250℃が好ましく、50〜230℃がより好ましく、60〜200℃が特に好ましく、加熱時間としては、樹脂によって適宜選択される。
【0058】
溶剤型接着剤、ホットメルト型接着剤として使用する場合は、温度が40℃未満で行う場合には、溶媒または水の留去が不完全になる場合がある。一方250℃を超える温度で焼き付けた場合、ポリエステル樹脂が熱によって分解してくる場合がある。また、焼き付け時間が1秒未満である場合には、溶剤の留去が不十分となる場合があり、焼き付け時間が60分を超える場合には、生産性が低下するおそれがある。
【0059】
また、接着剤を用いて形成される樹脂被膜の厚さは、その目的や用途によって適宜選択されるものであるが、0.01〜100μmが好ましく、0.1〜70μmがより好ましく、0.5〜50μmが特に好ましい。
また、ホットメルト型接着剤として使用する場合は、樹脂被膜の厚さは、目的や用途によって適宜選択される。
【0060】
また、本発明の生分解性接着剤用ポリエステル樹脂には、必要に応じて硬化剤、各種添加剤、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料、染料、他のポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂等、アルキド樹脂、セルロース誘導体を配合することができる。
【0061】
硬化剤としては、ポリエステル樹脂が有する官能基、例えばカルボキシル基やその無水物および水酸基と反応性を有する硬化剤であれば特に限定されるものではなく、例えば尿素樹脂やメラミン樹脂やアミノプラスト樹脂等のアミノ樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物及びその各種ブロックイソシアネート化合物、多官能アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有重合体、フェノール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種類を使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0062】
また、添加剤としてはハジキ防止剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、離型剤、顔料分散剤、滑剤等が挙げられる。
なお、上記した硬化剤、各種添加剤、顔料、染料、他の樹脂等は、ポリエステル樹脂の溶解時にあらかじめ添加していてもよい。
【0063】
本発明の接着剤を適用することのできる被着体としては、特に限定されないが、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の生分解性樹脂への接着性が強いためこれらに用いることが好ましく、特に、ポリ乳酸が好ましい。また、被着体の形状も特に限定されないが、フィルム、シート、フラットケーブル等の成形体の接着に特に適している。
【0064】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0065】
(1)ポリエステル樹脂の構成
1H−NMR分析(バリアン社製,300MHz)より求めた。また、1H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解を行った後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析を行った。
【0066】
(2)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂0.5gを50mlのシクロヘキサノンに溶解し、クレゾールレッドを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消費されたKOHのmg数をポリエステル樹脂1gあたりに換算した値を酸価として求めた。
【0067】
(3)ポリエステル樹脂の水酸基価
ポリエステル樹脂3gを精秤し、無水酢酸0.6ml及びピリジン50mlとを加え、室温下で8時間攪拌して反応させ、続いて、蒸留水5mlを添加して、更に6時間、室温下で攪拌を継続することにより、上記反応に使われなかった分の無水酢酸も全て酢酸に変えた。この液にシクロヘキサノン50mlを加えて、クレゾールレッド・チモールブルーを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消費されたKOHの量(W1)と、最初に仕込んだ量の無水酢酸がポリエステル樹脂と反応せずに全て酢酸になった場合に中和に必要とされるKOHの量(計算値:W0)とから、その差(W0−W1)をKOHのmg数で求め、これをポリエステル樹脂のg数で割った値を水酸基価とした。
【0068】
(4)ポリエステル樹脂の数平均分子量
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型及び紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。
【0069】
(5)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値を求め、これをガラス転移温度(Tg)とした。
【0070】
(6)ポリエステル樹脂の溶解性
ポリエステル樹脂30gに溶剤70g添加して60℃で6時間攪拌した。その後、常温に冷却後、外観をみて、判定した。
完全に溶解している:○
溶解はしているが、不完全である:△
ほとんど溶解していない:×
【0071】
(7)エマルション中の有機溶剤の含有率
島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC−8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG−HT(5%)−UNIPORT HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n−ブタノール]を用い、エマルションを水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
【0072】
(9)樹脂被膜の厚さ
厚み計(ユニオンツール社製、MICROFINE Σ)を用いて、基材の厚みを予め測定しておき、基材上に樹脂被膜を形成した後、この樹脂被膜を有する基材の厚みを同様の方法で測定し、その差を樹脂被膜の厚さとした。
【0073】
(10)ポリエステル樹脂の接着力
卓上型コーティング装置(安田精機製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装着)を用いて、ポリ乳酸フィルム(25μm、ユニチカ製)に樹脂液をコーティングした。溶剤型接着剤の場合は、100℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、基材上に厚み約10μmの樹脂被膜を形成させ、エマルション系接着剤の場合は、130℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、基材上に厚み約3μmの樹脂被膜を形成させた。続いて、コーティングしたポリ乳酸フィルムを2枚用意し、塗布面同士を仮接着後、85℃に設定したホットプレスで1分間圧着し、15mm幅に切断したサンプルを作成した。その後、インテスコ社製精密万能材料試験機2020型を用いて温度20℃湿度50%の雰囲気下で、引張速度50mm/minの接着強力を測定した。
【0074】
(9)ポリエステル樹脂の生分解性
JIS K6953の試験手順に従い、コンポスト化8週間後の生分解度が60%を超すものを生分解性がある(○)とし、60%を超さないものを生分解性がない(×)と判断した。
【0075】
実施例および比較例で用いたポリエステル樹脂は、下記のようにして得られた。
【0076】
実施例1
テレフタル酸914g(22.0モル部)、イソフタル酸1163g(28.0モル部)、セバシン酸1920g(38.0モル部)、ブタンジオール2771g(123.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸360g(20.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート1.7gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0077】
実施例2
テレフタル酸748g(18.0モル部)、イソフタル酸997g(24.0モル部)、セバシン酸1920g(38.0モル部)、ブタンジオール2591g(115.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸540g(30.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート1.7gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0078】
実施例3
テレフタル酸706g(17.0モル部)、イソフタル酸374g(9.0モル部)、セバシン酸1213g(24.0モル部)、ブタンジオール1915g(85.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸1260g(70.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0079】
実施例4
テレフタル酸249g(6.0モル部)、イソフタル酸291g(7.0モル部)、セバシン酸606g(12.0モル部)、ブタンジオール1352g(60.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸1800g(100.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を240℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0080】
実施例5
テレフタル酸706g(17.0モル部)、イソフタル酸374g(9.0モル部)、セバシン酸1213g(24.0モル部)、ブタンジオール1915g(85.0モル部)、ポリ乳酸1296g(72.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。続いて、触媒としてヒドロシキブチ錫2.1gを添加し、系の温度を240℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0081】
実施例6
テレフタル酸706g(17.0モル部)、イソフタル酸706g(17.0モル部)、コハク酸472g(16.0モル部)、ブタンジオール1915g(85.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸1260g(70.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0082】
実施例7
テレフタル酸166g(4.0モル部)、イソフタル酸166g(4.0モル部)、コハク酸797g(27.0モル部)、エチレングリコール1086g(70.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸1584g(88.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を保ちながら、トリメリット酸26g(0.5モル部)を添加し、2時間攪拌し解重合反応を行なった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいて、シート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0083】
実施例8
テレフタル酸208g(5.0モル部)、イソフタル酸208g(5.0モル部)、セバシン酸2527g(50.0モル部)、ε−カプロラクトン285g(10.0モル部)、ブタンジオール2366g(105.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸540g(30.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0084】
実施例9
テレフタル酸831g(20.0モル部)、イソフタル酸249g(6.0モル部)、セバシン酸1213g(24.0モル部)、ブタンジオール1915g(85.0モル部)、ポリ乳酸1296g(72.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を保ちながら、トリメリット酸105g(2.0モル部)を添加し、2時間攪拌し解重合反応を行なった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいて、シート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0085】
比較例1
テレフタル酸1163g(28.0モル部)、イソフタル酸1412g(34.0モル部)、セバシン酸1920g(38.0モル部)、ブタンジオール3042g(135.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート1.7gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0086】
比較例2
セバシン酸2526g(50.0モル部)、ヘキサンジオール2511g(85.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸1260g(70.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0087】
比較例3
テレフタル酸1038g(25.0モル部)、イソフタル酸1038g(25.0モル部)、ブタンジオール1915g(85.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸1260g(70.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、カッティングしてペレット(直径 約3mm、長さ
約3mm)のポリエステル樹脂を得た。
【0088】
実施例1〜9および比較例1〜3で得られたポリエステル樹脂の組成およびその特性を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例1〜9および比較例1〜3で得られたポリエステル樹脂を酢酸エチル、MEK、トルエン/MEK(8/2質量比)の3種の溶剤で溶解した時の溶解性、接着強力、および生分解性を評価し、結果を表2に示した。
【0091】
【表2】
【0092】
実施例10
ジャケット付きの密閉できる2リットル容ガラス容器を備えた撹拌機(特殊機化工業株式会社製、T.K.ロボミックス)を用いて、300gの実施例9の細かく切断したポリエステル樹脂、180gのイソプロピルアルコール、2.6gのトリエチルアミン及び517.5g(ポリエステルの総カルボキシル基量に対して1.2倍の当量比)の蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼(ホモディスパー)の回転速度を7,000rpmとして撹拌し、ジャケットに熱水を通して加熱を開始した。そして系内温度を73〜75℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、ジャケット内に冷水を流し、回転速度を4,000rpmに下げて攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却して、乳白色の均一なエマルション型接着剤とした。イソプロパノール含有率は、18質量%であった。
【0093】
実施例11
[溶解工程]3Lのポリエチレン製容器に実施例7で得られたポリエステル樹脂を400gとMEKを600g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をMEKに溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂−MEK溶液を得た。
[分散工程]次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を約15℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度 600rpm)。次いで、攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン17.3g(ポリエステルの総カルボキシル基量に対して12倍の当量比)を添加し、続いて100g/minの速度で約15℃の蒸留水478.4gを添加した。添加終了後の液温は約15℃であり、約15℃を保ちながら30分間攪拌してエマルションを得た。
[脱溶剤工程]分散工程で得られたエマルションを800gと蒸留水115.4gを2Lフラスコ入れ、内温が50℃以下になるように調整しながら減圧で脱溶剤を行った。脱溶剤は留去量が約300gになったところで終了し、室温まで冷却後、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過した。次いで、このエマルションの固形分濃度を測定した後、固形分濃度が30質量%になるように蒸留水を添加して、エマルション型接着剤とした。有機溶剤含有率は、0.1質量%以下であった。
【0094】
実施例12
[溶解工程]3Lのポリエチレン製容器に実施例9で得られたポリエステル樹脂を400gとMEKを600g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をMEKに溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂−MEK溶液を得た。
[分散工程]次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を約15℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度 600rpm)。次いで、攪拌しながら、塩基性化合物としてアンモニア28%溶液3.4g(ポリエステルの総カルボキシル基量に対して1.2倍の当量比)を添加し、続いて100g/minの速度で約15℃の蒸留水496.6gを添加した。添加終了後の液温は約15℃であり、約15℃を保ちながら30分間攪拌してエマルションを得た。
[脱溶剤工程]分散工程で得られたエマルションを800gと蒸留水115.4gを2Lフラスコ入れ、常圧で脱溶剤を行った。脱溶剤は留去量が約300gになったところで終了し、室温まで冷却後、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過した。次いで、このエマルションの固形分濃度を測定した後、固形分濃度が30質量%になるように蒸留水を添加して、エマルション型接着剤とした。有機溶剤含有率は、0.1質量%以下であった。
【0095】
実施例10〜12のエマルション型接着剤の評価結果を表2に示した。
【0096】
実施例1〜9はいずれも生分解性を有した樹脂であり、また、溶剤型接着剤として生分解性基材への良好な接着性を有していた。また、実施例10〜12のように、エマルション型接着剤としても使用できるものであった。これに対して、比較例1では乳酸残基が含まれていないために生分解性および接着性が劣るものとなった。また、比較例2においては、芳香族カルボン酸残基が含まれていないために接着性が劣っており、また、比較例3においては、脂肪族カルボン酸残基が含まれていないために生分解性が劣ったものになった。このように、共重合ポリエステル樹脂に含まれるカルボン酸成分として、乳酸残基、芳香族カルボン酸残基、乳酸以外の脂肪族カルボン酸残基のすべてを含有することで、はじめて、強力な接着強度と適切な生分解性が得られることがわかる。
【0097】
【発明の効果】
本発明の生分解性接着剤用ポリエステル樹脂は、生分解性に優れ、しかも、各種生分解性基材への密着性に優れるので、生分解性素材からなる製品どうしの接着剤として用いることができる。しかも、これにより接着された製品は、全体としても生分解性を有するため、環境負荷の低減に寄与することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の生分解性基材に塗布され密着性に優れた生分解性接着剤用ポリエステル樹脂と、これを含んだ接着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、生分解性プラスチック、特に、ポリ乳酸を利用した商品の開発が行われ、これらの製品同士を接着させ、しかも、生分解性の接着剤の開発も盛んに行なわれている。例えば、特許文献1では、ポリ乳酸自体を接着剤として利用する方法が提案されているが、ポリ乳酸が硬くて脆いため、密着性に問題があった。また、特許文献2では、ポリ乳酸に可塑剤を添加して接着剤として利用することが提案されているが、ポリ乳酸は生分解性であるが、可塑剤が生分解性でないために、接着剤とポリ乳酸の成形品からなるものは、全体としては生分解性を有していなかった。また、特許文献3、特許文献4では、ポリ乳酸に、他成分をブレンドして生分解性接着剤とすることが開示されているが、ブレンド工程が必要など経済的に不利であった。また、特許文献5、特許文献6、特許文献7では、ポリ乳酸にポリ乳酸とは別のヒドロキシカルボン酸やポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、脂肪族ポリエステル等を共重合した樹脂を接着剤として利用する方法が提案されているが、これらの方法では接着剤が脂肪族系のモノマーとポリ乳酸のみで構成されているために、十分な密着性を保持することは困難であった。また、芳香族系モノマーを用いる方法としては、特許文献8に、ポリ乳酸にスルホン酸金属塩を導入することが提案されているが、スルホン酸塩として芳香族系モノマーを用いたとしても、請求項に示されている範囲の量では、生分解性プラスチックへの密着性が好ましくなかった。さらに、脂肪族系のポリエステルと芳香族系のポリエステルの共重合体が特許文献9で提案されているが、生分解性基材への接着性が悪いものであった。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−38118号公報
【特許文献2】
特開2000−86877号公報
【特許文献3】
特開平9−131835号公報
【特許文献4】
特開2002−256250号公報
【特許文献5】
特開平5−339557号公報
【特許文献6】
特開2000−173589号公報
【特許文献7】
特開2002−88334号公報
【特許文献8】
特開2001−323052号公報
【特許文献9】
特表平10−508640号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下、本発明の課題は、生分解性を備え、さらに、生分解性基材への密着性に優れる接着剤用ポリエステル樹脂を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、共重合ポリエステル樹脂に、芳香族カルボン酸残基を加え、さらにポリ乳酸残基を加えることで、生分解性基材への密着力が格段に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、共重合ポリエステル樹脂のカルボン酸成分全体に対し、乳酸残基(A)成分が5〜90モル%、芳香族カルボン酸残基(B)成分が5〜70モル%、脂肪族カルボン酸残基(C)が10〜90モル%を含有し、(A)+(B)+(C)=100モル%としたことを特徴とする生分解性接着剤用ポリエステル樹脂、およびこれを含む接着剤である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の生分解性接着剤用ポリエステル樹脂は、カルボン酸成分とアルコール成分からなり、カルボン酸成分は、乳酸残基(A)と芳香族カルボン酸残基(B)、および乳酸を除く脂肪族カルボン酸残基(C)からなり、(A)+(B)+(C)=100モル%となるように用いる。
【0008】
本発明のポリエステル樹脂のカルボン酸成分全体に対する乳酸残基(A)の割合は、5〜90モル%の範囲とする必要があり、15〜70モル%がより好ましく、30〜60モル%がさらに好ましい。(A)のカルボン酸成分全体に占める割合が5モル%未満であると、生分解性が低下し、90モル%を超えると接着性が不十分となる。
【0009】
乳酸残基は、ポリ乳酸を用いて導入することができる。乳酸の構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体を用いることができる。
【0010】
ポリ乳酸の重合法としては、縮重合法、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することができる。例えば、縮重合法ではL−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮重合して任意の組成のポリ乳酸を得ることができる。また、開環重合法では乳酸の環状2量体であるラクチドを、オクチル酸錫等の触媒を使用してポリ乳酸を得ることができる。ラクチドにはL−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の特性を有するポリ乳酸を得ることができる。
【0011】
ポリ乳酸の分子量増大を目的として、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などの鎖延長剤を使用してもよい。
【0012】
ポリ乳酸の重量平均分子量は通常5万〜100万の範囲にあることが多く、カーギルダウ、三井化学、島津製作所等から販売されている。
【0013】
なお、乳酸残基は、触媒下減圧にするなど、重合条件によっては、ポリ乳酸がラクチドとして、一部重合系外に放出されることが多いので、重合モノマーを反応釜に投入する際は、目標組成よりも若干多く投入する必要がある。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂のカルボン酸成分全体に対する芳香族カルボン酸残基(B)の割合は、5〜70モル%の範囲とする必要があり、10〜40モル%がより好ましく、15〜30モル%がさらに好ましい。(B)のカルボン酸成分全体に占める割合が5モル%未満であると、接着性が弱く、70モル%を超えると、生分解性が低下する。
【0015】
芳香族カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸等が例示できる。これらは無水物であってもよい。上記したカルボン酸成分の中でも、汎用性の点からテレフタル酸とイソフタル酸が好ましい。
【0016】
本発明のポリエステル樹脂は、さらに、乳酸を除く脂肪族カルボン酸残基(C)を5〜90モル%の範囲で含有している必要があり、15〜40モル%がより好ましく、20〜35モル%がさらに好ましい。(C)のカルボン酸成分全体に占める割合が90モル%を超えると、接着性が不十分となり、5モル%未満であると生分解性が低下する。
【0017】
(C)成分として用いることのできる脂肪族カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸およびこれらの無水物、また、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸の脂環族ジカルボン酸も含まれる。これらの中で、生分解性の面から、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸が好ましく、コハク酸とセバシン酸が特に好ましい。
【0018】
本発明のポリエステル樹脂には、さらに、分子量増大等の必要に応じて3官能以上のカルボン酸を共重合してもよい。この場合、ポリエステル樹脂に含まれるカルボン酸成分全体に対し、0.2〜5モル%程度が適当である。0.2モル%未満では添加した効果が発現せず、5モル%を超える量を含有せしめた場合には、ゲル化点を超え、ポリエステル樹脂の分子量を実用上充分に上げることができない場合がある。3官能以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸等の芳香族カルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらから1種または2種以上用いることができる。
【0019】
ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4‐ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,17−ヘプタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族グリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンのようなビスフェノール類のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加体、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0020】
さらに必要に応じて3官能以上のアルコールを、本発明のポリエステル樹脂に含まれるグリコール成分の5モル%以下で使用することができる。5モル%以上ではゲル化点を超え、共重合ポリエステル樹脂の分子量を実用上充分に上げることができず、好ましくない。3官能以上のアルコールとして、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトールが挙げられる。これらは必ずしも1種類で用いる必要はなく、樹脂に対し付与したい特性に応じて複数種以上混合して用いることが可能である。
【0021】
上記のなかで、生分解性を付与するために、脂肪族グリコールを用いることが好ましく、特に、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのような脂肪族グリコールを用いることが汎用性の点からさらに好ましい。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂には、乳酸以外のヒドロキシカルボン酸成分を共重合することができる。このような成分としては、p−ヒドロキシ安息香酸、オキシラン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸等が例示でき、これらは、上記の(B)成分または(C)成分として用いることができる。ε−カプロラクトンとその開環によって生じる6−ヒドロキシカプロン酸は、(C)成分として好ましく使用することができる。なお、本発明における組成の計算の際には、乳酸も含めたヒドロキシカルボン酸は、酸成分およびアルコール成分の両方に算入する。
【0023】
また、ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコールが共重合されていてもよい。モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等、モノアルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂の数平均分子量は4,000以上とすることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、12,000以上であることがさらに好ましく、15,000以上であることが特に好ましい。数平均分子量が4,000未満では、接着強力が不足する傾向にある。
【0025】
なお、本発明のポリエステル樹脂の分子量分布の分散度は、特に限定されないが、8以下が好ましく、5以下がより好ましい。ここで、分子量分布の分散度とは、重量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。
【0026】
また、本発明のポリエステル樹脂のガラス転移温度(以下、Tgとする)は、特に限定されないが、25℃よりも低い方が、常温で分解されやすいので好ましい。
【0027】
本発明の生分解性接着剤用ポリエステル樹脂を得るための製造方法としては、直接エステル化法、エステル交換法いずれでもよく、エステル反応後、つづいて縮重合反応を行う溶融重合法によって製造することができる。エステル化反応としては、例えば、ポリ乳酸以外の共重合ポリエステル樹脂の原料であるアルコール成分とカルボン酸成分および触媒を一括して反応器に仕込み、攪拌しながら2〜8時間200〜240℃の条件でエステル反応を行なった後、ポリ乳酸を仕込み、さらに2〜8時間エステル化反応を行う方法や、すべての共重合ポリエステル樹脂の原料であるアルコール成分とカルボン酸成分とポリ乳酸及び触媒を一括して反応器に仕込み、攪拌しながら2〜8時間200〜240℃でエステル反応を行う方法等があげられる。前者の方法は、熱分解しやすいポリ乳酸に与える熱履歴が小さくなるため好ましい。縮重合反応としては、例えば、220〜290℃程度の重合温度まで昇温し、さらに系内を130Pa以下の減圧にし、高真空下で3〜10時間縮重合反応を行う方法が挙げられる。
【0028】
ポリエステル樹脂の分子量を制御する方法としては、重合時のポリエステル溶融物を所定の粘度で重合を終了する方法や、いったん分子量の高いポリエステルを製造したのち解重合剤を添加する方法、さらに前記した単官能アルコールや単官能カルボン酸を予め添加する方法などが挙げられる。本発明の共重合ポリエステル樹脂は上記のいかなる方法によって分子量を制御してもよいが、重合時の共重合ポリエステル樹脂溶融物を所定の粘度で制御する方法が好適に用いられる。
【0029】
また、ポリエステル樹脂に所望の酸価や水酸基価を付与する場合には、上記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸成分や多価アルコール成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合を行う方法等を挙げることができる。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂を製造する際に使用することができる触媒として、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、テトラブチルチタネ−トなどの有機チタン酸化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の酢酸塩、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズなどの有機錫化合物を挙げることができる。また触媒使用量は、生成する樹脂質量に対し、0.001〜1.0質量%の範囲にあることが好ましい。0.001質量%未満ではポリエステルが所望の分子量に到達しないことがあり、一方1.0質量%を超える場合には樹脂の分子量については実用上問題のない程度まで上昇するが、内容物への溶出が懸念されるため好ましくない。
【0031】
本発明の生分解性接着剤用ポリエステル樹脂は、溶剤型、エマルション型、ホットメルト型等いずれのタイプの接着剤としても使用することができる。
【0032】
まず、溶剤型接着剤とする場合について説明する。
生分解性接着剤用ポリエステル樹脂を溶剤型の接着剤として用いる場合は、本発明の接着剤用ポリエステル樹脂を、有機溶剤に溶解して接着剤として用いることができる。ポリエステル樹脂を溶解させる装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。また、ポリエステル樹脂が溶解しにくい場合には、加熱したり、加圧してもかまわない。
【0033】
用いる溶剤としては、本発明の共重合ポリエステル樹脂を溶解することができれば、どのようなものでもよい。使用できる溶剤として、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素系有機溶剤、脂肪族炭化水素系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、含ハロゲン系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、エステル系有機溶剤、グリコール系有機溶剤等が挙げられる。
【0034】
ケトン系有機溶剤としては、メチルエチルケトン(2−ブタノン、以下MEKと略す)、アセトン、ジエチルケトン(3−ペンタノン)、メチルプロピルケトン(2−ペンタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、2−ヘキサノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が例示できる。芳香族炭化水素系有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等、脂肪族炭化水素系有機溶剤としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等、エーテル系有機溶剤としては、1、4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、含ハロゲン系有機溶剤としては、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、アルコール系有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等、エステル系有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、γ―ブチロラクトン、イソホロン等、グリコール系有機溶剤としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を例示することができる。さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等の有機溶剤が挙げられる。中でも、汎用性があるメチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン等が好ましい。
【0035】
これらの有機溶剤としては、上記したものを単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができるが、本発明の接着剤を得るためには、ポリエステル樹脂を3質量%以上溶解することができるように有機溶剤の選択を行うことが好ましく、5質量%以上溶解することができる有機溶剤がより好ましく、10質量%以上溶解することができる有機溶剤がさらに好ましく、30質量%以上溶解することができる有機溶剤が特に好ましい。固形分濃度が3質量%未満である場合には、分厚い被膜を形成することが困難になるばかりか、組成物中の溶媒の比率が高く、被膜を形成する際の溶媒を留去するのに時間を要し、生産性が低下するなどの問題が生じるので好ましくない。
【0036】
次に、エマルション型接着剤とする場合について説明する。
生分解性接着剤用ポリエステル樹脂をエマルション型の接着剤として用いる場合は、例えば、本発明の接着剤用ポリエステル樹脂を、塩基性化合物、親水性の有機溶剤とともに加圧・加熱下で水に分散させる方法でエマルションを得る方法(A法と略す)や、本発明の接着剤用ポリエステル樹脂を、有機溶剤に溶解し、続いて、塩基性化合物とともに、水を加えて、水に分散させる方法、所謂、転相乳化法でエマルションを得る方法(B法と略す)等で作成することができる。これらの方法で得られたエマルションは、必要に応じて、系中に含まれる有機溶剤を脱溶剤することも可能である。有機溶剤を含有するエマルションおよび有機溶剤を脱溶剤したエマルションは、いずれも接着剤として用いることができる。
【0037】
まず、A法について説明する。
A法では、容器に水、塩基性化合物及び水溶性有機溶剤とからなる水性媒体、並びに粒状ないしは粉末状の本発明のポリエステル樹脂を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合して粗分散させる。この際に、ポリエステル樹脂の形状が、粗分散が困難なシート状や大きな塊状である場合には、下記の加熱工程に移行すればよい。次いで、槽内の温度をポリエステル樹脂のTg以上あるいは40℃以上の温度に保ちつつ、好ましくは15〜120分間攪拌を続けることにより、ポリエステル樹脂を十分に水性化させ、その後、好ましくは攪拌下で40℃以下に冷却する。上記のようにして、本発明のポリエステル樹脂のエマルション又は溶液が得られる。
【0038】
塩基性化合物としては、樹脂被膜形成時に揮散しやすい点から、沸点が250℃以下、好ましくは160℃以下の有機アミン、あるいはアンモニアが好ましい。好ましく用いられる有機アミンの具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等が挙げられ、中でも、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンを使用することが好ましい。
【0039】
塩基性化合物によって、ポリエステル樹脂のカルボキシル基が中和され、生成したカルボキシルアニオン間の静電気的反発力によって微粒子間の凝集が防がれ、エマルションに安定性が付与される。
【0040】
また、水溶性有機溶媒としては、有機溶剤の具体例としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられ、これらのうち1種類でも、また2種以上を混合して使用してもよい。
中でも、イソプロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0041】
また、エマルション型接着剤における水溶性有機溶剤の含有量としては、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。有機溶剤の含有量を上記の範囲とすることで、エマルション型接着剤の粘性及び貯蔵安定性を良好に保つことができる。
【0042】
分散を行なう装置としては、液体を投入できる槽を備え、槽内に投入された水性媒体と樹脂粉末ないしは粒状物との混合物を適度に撹拌できる装置があげられる。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機として広く当業者に知られている装置を使用することができ、通常は簡易的な蓋部を備え付け、常圧又は微加圧下で使用されるが、必要に応じて、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することもできる。
【0043】
次に、B法について説明する。
B法は、実質的に、溶解工程、分散工程の2工程よりなる。溶解工程は、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させる工程であり、分散工程は、有機溶剤に溶解したポリエステル樹脂溶液を塩基性化合物とともに水に分散させる工程である。
【0044】
有機溶剤は、先にあげた溶剤型接着剤に用いる有機溶剤を用いることができ、中でも、アセトン、MEK、MIBK、ジオキサン、テトラヒドロフラン単独や、アセトン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、MEK/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、MIBK/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、ジオキサン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、テトラヒドロフラン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液等が好適に使用できる。混合溶液を用いる場合には、任意の混合比の混合溶液を作成しておき、その混合溶液にポリエステル樹脂を溶解させるか、あるいは、よりポリエステルに対して溶解力がある有機溶剤で、ポリエステルをあらかじめ溶解しておき、後述する分散工程前に規定量の別の有機溶剤を加えてもよい。
【0045】
溶解工程では、ポリエステル樹脂を、10〜70質量%程度、好ましくは、30〜70質量%の濃度となるように有機溶剤に溶解させる。ポリエステル樹脂を溶解させる装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。また、ポリエステル樹脂が溶解しにくい場合には、加熱したり、加圧してもかまわない。
【0046】
次に、分散工程について説明する。
分散工程では、溶解工程で得られたポリエステル樹脂溶液を水および塩基性化合物と混合して分散を行う。塩基性化合物は、先に記述したA法で用いられる塩基性化合物が使用される。塩基性化合物は、ポリエステル樹脂を含有した溶液に加えておき、これに水を徐々に投入して分散を行うことが必要であり、このような方法を用いることで、得られるエマルションの粒子径が小さくなり貯蔵安定性が良好になる。
【0047】
なお、分散工程において乳化しにくい場合や、得られるエマルションの耐薬品性を高めたりする場合には、水および塩基化合物に、さらに、界面活性剤を用いて、分散を行ってもよい。
【0048】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等、すべての公知の界面活性剤が含まれる。界面活性剤の中では、顔料との混合安定性に優れることや泡が発生しにくいなどの理由から非イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。このような非イオン性界面活性剤としてはAldrich社製のIgepalシリーズ、三洋化成株式会社製のサンノニックFD−140、サンノニックFD−100、サンノニックFD−80等、サンノニックFDシリーズ、セドランFF−220、セドランFF−210、セドランFF−200、セドランFF−180等、セドランFFシリーズ、セドランSNP−112等、セドランSNPシリーズ等が挙げられる。
【0049】
また、分散工程を行う際の温度は、40℃以下であることが好ましく、30℃以下がより好ましく、15℃以下がさらに好ましい。温度が40℃以上であると、得られるエマルションの粒子径が大きくなり、貯蔵安定性が悪くなるので、好ましくない。
【0050】
分散工程を行う装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機(例えばホモミキサー)として広く当業者に知られている装置があげられる。なお、ホモミキサーなど煎断の大きい乳化機を用いる際には、内温が40℃以下になるように冷却しながら用いることが好ましい。なお、分散工程は常圧、減圧、加圧下いずれの条件で行ってもよい。
【0051】
エマルション型接着剤における有機溶剤の含有率は、特に限定されないが、好ましくは30質量%以下であり、15質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましく、0.5質量%以下が最も好ましい。有機溶剤の含有率が30質量%を超えると、基材の種類によっては、エマルションが含有する有機溶剤によって基材がダメージを受ける場合があり好ましくない。
【0052】
なお、A法、B法で得られたエマルション型接着剤の有機溶剤の含有率を減少させるために、脱溶剤工程を設けて、分散工程により得られたエマルションに含まれる有機溶剤の一部またはすべてを系外に除去してもよい。脱溶剤は、減圧下または常圧下いずれで脱溶剤をおこなってもかまわない。脱溶剤工程を行う装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。
【0053】
また、得られたエマルション中の異物等を除去する目的で、工程中に濾過工程を設けてもよい。このような場合には、例えば、300メッシュ程度のステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を設置し、加圧濾過(空気圧0.2MPa)を行えばよい。
【0054】
次に、ホットメルト接着剤とする場合について説明する。
生分解性接着剤用ポリエステル樹脂をホットメルト型の接着剤として用いる場合は、本発明の接着剤用ポリエステル樹脂を溶融状態あるいは粉体状態で使用することができる。
【0055】
次に、本発明のポリエステル樹脂を含む接着剤の使用方法について説明する。溶剤型やエマルション型の接着剤として用いる場合には、公知の成膜方法、例えば、ディップコート法、はけ塗り法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、カーテンフローコート法、各種印刷法等により、各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥及び焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂被膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。
【0056】
また、加熱温度や加熱時間としては、溶剤型接着剤やエマルション型接着剤の相違による溶剤の種類や被コーティング物である基材の種類等により適宜選択される。
【0057】
溶剤型接着剤として用いた場合は、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、40〜250℃が好ましく、50〜230℃がより好ましく、60〜200℃が特に好ましく、加熱時間としては、1秒〜20分間が好ましく、5秒〜15分がより好ましく、10秒〜10分が特に好ましい。
また、エマルション型接着剤として用いた場合は、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、60〜250℃が好ましく、70〜230℃がより好ましく、80〜200℃が特に好ましく、加熱時間としては、1秒〜30分間が好ましく、5秒〜20分がより好ましく、10秒〜10分が特に好ましい。
また、ホットメルト型接着剤として用いた場合は、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、40〜250℃が好ましく、50〜230℃がより好ましく、60〜200℃が特に好ましく、加熱時間としては、樹脂によって適宜選択される。
【0058】
溶剤型接着剤、ホットメルト型接着剤として使用する場合は、温度が40℃未満で行う場合には、溶媒または水の留去が不完全になる場合がある。一方250℃を超える温度で焼き付けた場合、ポリエステル樹脂が熱によって分解してくる場合がある。また、焼き付け時間が1秒未満である場合には、溶剤の留去が不十分となる場合があり、焼き付け時間が60分を超える場合には、生産性が低下するおそれがある。
【0059】
また、接着剤を用いて形成される樹脂被膜の厚さは、その目的や用途によって適宜選択されるものであるが、0.01〜100μmが好ましく、0.1〜70μmがより好ましく、0.5〜50μmが特に好ましい。
また、ホットメルト型接着剤として使用する場合は、樹脂被膜の厚さは、目的や用途によって適宜選択される。
【0060】
また、本発明の生分解性接着剤用ポリエステル樹脂には、必要に応じて硬化剤、各種添加剤、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料、染料、他のポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂等、アルキド樹脂、セルロース誘導体を配合することができる。
【0061】
硬化剤としては、ポリエステル樹脂が有する官能基、例えばカルボキシル基やその無水物および水酸基と反応性を有する硬化剤であれば特に限定されるものではなく、例えば尿素樹脂やメラミン樹脂やアミノプラスト樹脂等のアミノ樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物及びその各種ブロックイソシアネート化合物、多官能アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有重合体、フェノール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種類を使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0062】
また、添加剤としてはハジキ防止剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、離型剤、顔料分散剤、滑剤等が挙げられる。
なお、上記した硬化剤、各種添加剤、顔料、染料、他の樹脂等は、ポリエステル樹脂の溶解時にあらかじめ添加していてもよい。
【0063】
本発明の接着剤を適用することのできる被着体としては、特に限定されないが、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の生分解性樹脂への接着性が強いためこれらに用いることが好ましく、特に、ポリ乳酸が好ましい。また、被着体の形状も特に限定されないが、フィルム、シート、フラットケーブル等の成形体の接着に特に適している。
【0064】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0065】
(1)ポリエステル樹脂の構成
1H−NMR分析(バリアン社製,300MHz)より求めた。また、1H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解を行った後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析を行った。
【0066】
(2)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂0.5gを50mlのシクロヘキサノンに溶解し、クレゾールレッドを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消費されたKOHのmg数をポリエステル樹脂1gあたりに換算した値を酸価として求めた。
【0067】
(3)ポリエステル樹脂の水酸基価
ポリエステル樹脂3gを精秤し、無水酢酸0.6ml及びピリジン50mlとを加え、室温下で8時間攪拌して反応させ、続いて、蒸留水5mlを添加して、更に6時間、室温下で攪拌を継続することにより、上記反応に使われなかった分の無水酢酸も全て酢酸に変えた。この液にシクロヘキサノン50mlを加えて、クレゾールレッド・チモールブルーを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消費されたKOHの量(W1)と、最初に仕込んだ量の無水酢酸がポリエステル樹脂と反応せずに全て酢酸になった場合に中和に必要とされるKOHの量(計算値:W0)とから、その差(W0−W1)をKOHのmg数で求め、これをポリエステル樹脂のg数で割った値を水酸基価とした。
【0068】
(4)ポリエステル樹脂の数平均分子量
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型及び紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。
【0069】
(5)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値を求め、これをガラス転移温度(Tg)とした。
【0070】
(6)ポリエステル樹脂の溶解性
ポリエステル樹脂30gに溶剤70g添加して60℃で6時間攪拌した。その後、常温に冷却後、外観をみて、判定した。
完全に溶解している:○
溶解はしているが、不完全である:△
ほとんど溶解していない:×
【0071】
(7)エマルション中の有機溶剤の含有率
島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC−8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG−HT(5%)−UNIPORT HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n−ブタノール]を用い、エマルションを水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
【0072】
(9)樹脂被膜の厚さ
厚み計(ユニオンツール社製、MICROFINE Σ)を用いて、基材の厚みを予め測定しておき、基材上に樹脂被膜を形成した後、この樹脂被膜を有する基材の厚みを同様の方法で測定し、その差を樹脂被膜の厚さとした。
【0073】
(10)ポリエステル樹脂の接着力
卓上型コーティング装置(安田精機製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装着)を用いて、ポリ乳酸フィルム(25μm、ユニチカ製)に樹脂液をコーティングした。溶剤型接着剤の場合は、100℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、基材上に厚み約10μmの樹脂被膜を形成させ、エマルション系接着剤の場合は、130℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、基材上に厚み約3μmの樹脂被膜を形成させた。続いて、コーティングしたポリ乳酸フィルムを2枚用意し、塗布面同士を仮接着後、85℃に設定したホットプレスで1分間圧着し、15mm幅に切断したサンプルを作成した。その後、インテスコ社製精密万能材料試験機2020型を用いて温度20℃湿度50%の雰囲気下で、引張速度50mm/minの接着強力を測定した。
【0074】
(9)ポリエステル樹脂の生分解性
JIS K6953の試験手順に従い、コンポスト化8週間後の生分解度が60%を超すものを生分解性がある(○)とし、60%を超さないものを生分解性がない(×)と判断した。
【0075】
実施例および比較例で用いたポリエステル樹脂は、下記のようにして得られた。
【0076】
実施例1
テレフタル酸914g(22.0モル部)、イソフタル酸1163g(28.0モル部)、セバシン酸1920g(38.0モル部)、ブタンジオール2771g(123.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸360g(20.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート1.7gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0077】
実施例2
テレフタル酸748g(18.0モル部)、イソフタル酸997g(24.0モル部)、セバシン酸1920g(38.0モル部)、ブタンジオール2591g(115.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸540g(30.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート1.7gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0078】
実施例3
テレフタル酸706g(17.0モル部)、イソフタル酸374g(9.0モル部)、セバシン酸1213g(24.0モル部)、ブタンジオール1915g(85.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸1260g(70.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0079】
実施例4
テレフタル酸249g(6.0モル部)、イソフタル酸291g(7.0モル部)、セバシン酸606g(12.0モル部)、ブタンジオール1352g(60.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸1800g(100.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を240℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0080】
実施例5
テレフタル酸706g(17.0モル部)、イソフタル酸374g(9.0モル部)、セバシン酸1213g(24.0モル部)、ブタンジオール1915g(85.0モル部)、ポリ乳酸1296g(72.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。続いて、触媒としてヒドロシキブチ錫2.1gを添加し、系の温度を240℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0081】
実施例6
テレフタル酸706g(17.0モル部)、イソフタル酸706g(17.0モル部)、コハク酸472g(16.0モル部)、ブタンジオール1915g(85.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸1260g(70.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0082】
実施例7
テレフタル酸166g(4.0モル部)、イソフタル酸166g(4.0モル部)、コハク酸797g(27.0モル部)、エチレングリコール1086g(70.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸1584g(88.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を保ちながら、トリメリット酸26g(0.5モル部)を添加し、2時間攪拌し解重合反応を行なった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいて、シート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0083】
実施例8
テレフタル酸208g(5.0モル部)、イソフタル酸208g(5.0モル部)、セバシン酸2527g(50.0モル部)、ε−カプロラクトン285g(10.0モル部)、ブタンジオール2366g(105.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸540g(30.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0084】
実施例9
テレフタル酸831g(20.0モル部)、イソフタル酸249g(6.0モル部)、セバシン酸1213g(24.0モル部)、ブタンジオール1915g(85.0モル部)、ポリ乳酸1296g(72.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を保ちながら、トリメリット酸105g(2.0モル部)を添加し、2時間攪拌し解重合反応を行なった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいて、シート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0085】
比較例1
テレフタル酸1163g(28.0モル部)、イソフタル酸1412g(34.0モル部)、セバシン酸1920g(38.0モル部)、ブタンジオール3042g(135.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート1.7gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0086】
比較例2
セバシン酸2526g(50.0モル部)、ヘキサンジオール2511g(85.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸1260g(70.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂を得た。
【0087】
比較例3
テレフタル酸1038g(25.0モル部)、イソフタル酸1038g(25.0モル部)、ブタンジオール1915g(85.0モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で2時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、系の温度を220℃に降温し、ポリ乳酸1260g(70.0モル部)を投入して、さらに4時間加熱してエステル化反応を続けた。続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、カッティングしてペレット(直径 約3mm、長さ
約3mm)のポリエステル樹脂を得た。
【0088】
実施例1〜9および比較例1〜3で得られたポリエステル樹脂の組成およびその特性を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例1〜9および比較例1〜3で得られたポリエステル樹脂を酢酸エチル、MEK、トルエン/MEK(8/2質量比)の3種の溶剤で溶解した時の溶解性、接着強力、および生分解性を評価し、結果を表2に示した。
【0091】
【表2】
【0092】
実施例10
ジャケット付きの密閉できる2リットル容ガラス容器を備えた撹拌機(特殊機化工業株式会社製、T.K.ロボミックス)を用いて、300gの実施例9の細かく切断したポリエステル樹脂、180gのイソプロピルアルコール、2.6gのトリエチルアミン及び517.5g(ポリエステルの総カルボキシル基量に対して1.2倍の当量比)の蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼(ホモディスパー)の回転速度を7,000rpmとして撹拌し、ジャケットに熱水を通して加熱を開始した。そして系内温度を73〜75℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、ジャケット内に冷水を流し、回転速度を4,000rpmに下げて攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却して、乳白色の均一なエマルション型接着剤とした。イソプロパノール含有率は、18質量%であった。
【0093】
実施例11
[溶解工程]3Lのポリエチレン製容器に実施例7で得られたポリエステル樹脂を400gとMEKを600g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をMEKに溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂−MEK溶液を得た。
[分散工程]次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を約15℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度 600rpm)。次いで、攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン17.3g(ポリエステルの総カルボキシル基量に対して12倍の当量比)を添加し、続いて100g/minの速度で約15℃の蒸留水478.4gを添加した。添加終了後の液温は約15℃であり、約15℃を保ちながら30分間攪拌してエマルションを得た。
[脱溶剤工程]分散工程で得られたエマルションを800gと蒸留水115.4gを2Lフラスコ入れ、内温が50℃以下になるように調整しながら減圧で脱溶剤を行った。脱溶剤は留去量が約300gになったところで終了し、室温まで冷却後、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過した。次いで、このエマルションの固形分濃度を測定した後、固形分濃度が30質量%になるように蒸留水を添加して、エマルション型接着剤とした。有機溶剤含有率は、0.1質量%以下であった。
【0094】
実施例12
[溶解工程]3Lのポリエチレン製容器に実施例9で得られたポリエステル樹脂を400gとMEKを600g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をMEKに溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂−MEK溶液を得た。
[分散工程]次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を約15℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度 600rpm)。次いで、攪拌しながら、塩基性化合物としてアンモニア28%溶液3.4g(ポリエステルの総カルボキシル基量に対して1.2倍の当量比)を添加し、続いて100g/minの速度で約15℃の蒸留水496.6gを添加した。添加終了後の液温は約15℃であり、約15℃を保ちながら30分間攪拌してエマルションを得た。
[脱溶剤工程]分散工程で得られたエマルションを800gと蒸留水115.4gを2Lフラスコ入れ、常圧で脱溶剤を行った。脱溶剤は留去量が約300gになったところで終了し、室温まで冷却後、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過した。次いで、このエマルションの固形分濃度を測定した後、固形分濃度が30質量%になるように蒸留水を添加して、エマルション型接着剤とした。有機溶剤含有率は、0.1質量%以下であった。
【0095】
実施例10〜12のエマルション型接着剤の評価結果を表2に示した。
【0096】
実施例1〜9はいずれも生分解性を有した樹脂であり、また、溶剤型接着剤として生分解性基材への良好な接着性を有していた。また、実施例10〜12のように、エマルション型接着剤としても使用できるものであった。これに対して、比較例1では乳酸残基が含まれていないために生分解性および接着性が劣るものとなった。また、比較例2においては、芳香族カルボン酸残基が含まれていないために接着性が劣っており、また、比較例3においては、脂肪族カルボン酸残基が含まれていないために生分解性が劣ったものになった。このように、共重合ポリエステル樹脂に含まれるカルボン酸成分として、乳酸残基、芳香族カルボン酸残基、乳酸以外の脂肪族カルボン酸残基のすべてを含有することで、はじめて、強力な接着強度と適切な生分解性が得られることがわかる。
【0097】
【発明の効果】
本発明の生分解性接着剤用ポリエステル樹脂は、生分解性に優れ、しかも、各種生分解性基材への密着性に優れるので、生分解性素材からなる製品どうしの接着剤として用いることができる。しかも、これにより接着された製品は、全体としても生分解性を有するため、環境負荷の低減に寄与することができる。
Claims (2)
- 共重合ポリエステル樹脂のカルボン酸成分全体に対し、乳酸残基(A)成分5〜90モル%、芳香族カルボン酸残基(B)成分5〜70モル%、乳酸を除く脂肪族カルボン酸残基(C)5〜90モル%を含有し、(A)+(B)+(C)=100モル%としたことを特徴とする生分解性接着剤用ポリエステル樹脂。
- 請求項1記載の生分解性接着剤用ポリエステル樹脂を含む接着剤。
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Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009173884A (ja) * | 2007-12-27 | 2009-08-06 | Mitsubishi Chemicals Corp | 脂肪族ポリエステルの製造方法 |
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KR101433809B1 (ko) | 2008-12-30 | 2014-08-25 | 에스케이케미칼주식회사 | 용제형 접착제용 생분해성 폴리에스테르 조성물, 폴리에스테르 수지, 이를 포함하는 용제형 접착제, 및 이의 제조 방법 |
WO2018180335A1 (ja) * | 2017-03-28 | 2018-10-04 | 東洋紡株式会社 | 保存安定性に優れたポリエステル樹脂 |
-
2003
- 2003-03-31 JP JP2003094766A patent/JP2004300285A/ja active Pending
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