JP2004299954A - 低発熱セメント用クリンカー及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、汎用普通ポルトランドセメント製造ラインを使用して簡単に且つ経済的に、中性化し難いコンクリートを与える低発熱セメント及び当該セメント製造方法の提供を目的とする。
【0001】
【解決手段】セメントクリンカー製造中のセメント製造設備のキルン窯前及びクリンカー冷却部から選ばれる少なくとも一方へ珪素含有物質を投入することにより、既におおよそ焼成済みのクリンカー表面と珪素含有物質とを反応させて、エーライトを分解させて生成したビーライトと、エーライトの分解によって生じた酸化カルシウムと珪素含有物質との反応により生じたスラグ類似物質とを含有することを特徴とする低発熱セメント組成物を開発して上記課題を解決した。
【選択図】 なし
【0001】
【解決手段】セメントクリンカー製造中のセメント製造設備のキルン窯前及びクリンカー冷却部から選ばれる少なくとも一方へ珪素含有物質を投入することにより、既におおよそ焼成済みのクリンカー表面と珪素含有物質とを反応させて、エーライトを分解させて生成したビーライトと、エーライトの分解によって生じた酸化カルシウムと珪素含有物質との反応により生じたスラグ類似物質とを含有することを特徴とする低発熱セメント組成物を開発して上記課題を解決した。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はダム、原子力発電所、LNGタンク、長大橋の下部工事等のマスコンクリートの建設工事で問題となるセメントの水和発熱に起因する温度ひび割れの防止対策として、水和発熱量が少なく、かつ、十分な強度発現性を有するマスコンクリート用の低発熱セメント用クリンカー及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、マスコンクリート用の低発熱セメントとしては、水和発熱量が相対的に大きい3CaO・SiO2(エーライト)や3CaO・Al2O3(アルミネート)を減じ、2CaO・SiO2(ビーライト)を増加させた中庸熱ポルトランドセメント及び低熱ポルトランドセメントが、JIS R 5210により規格化されている。また、混合材を添加した高炉セメントやフライアッシュセメントも知られている。さらに、より低発熱化を図る為、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントに高炉スラグ及びフライアッシュをそれぞれ単独または同時添加したものなど、様々の低発熱セメントが開示されている。
【0003】しかしながら、特別な組成のセメントクリンカーを少量製造する方法は、一般的に効率が悪く、改良が要求されているものであった。すなわち、特殊クリンカーの生産に関しては、汎用普通ポルトランドセメントの製造ラインを用いることが多いが、クリンカーの種類の切替え時の運転操作が煩雑になる上に、切替えロスが発生するなどの問題があった。また、その結果として、生産原価が高くなることが多いと云う問題点も抱えていた。
【0004】一方、高炉セメントやフライアッシュセメントのように、セメントクリンカー製造工程には影響を及ぼすことなく、製造の後工程において、高炉スラグ及びフライアッシュ等を多量に添加した混合セメントとする方法があるが、この方法で製造されたセメントは、それを用いて製造されたコンクリートが中性化し易く、長期的な耐久性が低下する欠点を有する。
【0005】また、セメント製造に石炭灰を利用する方法は既に、各種提案されており、その中でも、特許文献1にはキルン窯前から石炭灰を投入する技術が開示されている。しかしながら、この技術は、セメント工場の安定的操業を目的としたものであり、また、得られるセメントも通常と同等の品質のものである。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−329453号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このような従来技術の問題に鑑み、本発明は、汎用普通ポルトランドセメント製造ラインを使用して簡単に且つ経済的に、中性化し難いコンクリートを与える低発熱セメント用クリンカー及び当該クリンカー製造方法の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、ポルトランドセメント用クリンカーを製造中のセメント製造設備の高温部に、珪素含有化合物を投入する方法で得られる、エーライト由来のビーライト及びスラグ類似物質を含有するクリンカーが、上記問題点の解決された、低発熱セメント用クリンカーとなることを見出し、本発明を解決した。
すなわち、本発明の低発熱セメント用クリンカーは、セメントクリンカー製造中のセメント製造設備のキルン窯前またはクリンカー冷却部から選ばれるどちらかに存在する既におおよそ焼成済みのクリンカーとそこに投入された、酸化珪素換算で30質量%以上の珪素を含有する珪素含有物質との反応によりクリンカー中のエーライトが分解して生成したビーライト(A)及び、エーライトの分解によって生じた酸化カルシウムと前記珪素含有物質との反応により生成したスラグ類似物質(B)を含有することを特徴とする。
【0009】本発明の低発熱セメント用クリンカーは、セメントクリンカー製造中のセメント製造設備のキルン窯前及びクリンカー冷却部から選ばれる少なくとも一方に、酸化珪素換算で30質量%以上の珪素含有物質を投入して製造されることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態においては、珪素含有物質として石炭灰を用いることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳しく説明する
本発明で、キルン窯前またはクリンカー冷却部に投入される珪素含有物質とは、酸化珪素換算で30質量%以上の珪素を含有するものであり、石炭灰の他に、製紙スラッジ灰、下水汚泥焼却灰、コンクリートスラッジ、各種排水処理スラッジ、各種スラグ、再生骨材微粉、建設廃材、建設廃土、各種汚染土壌、廃サイディングボード、等があげられる。中でも、石炭灰は、化学組成、入手容易性及び価格の面から最も好ましい材料である。
【0011】本発明においては、珪素含有物質は、セメントクリンカー製造中のセメント製造設備のキルン窯前及び/又はクリンカー冷却部に投入されるが、クリンカー冷却部に投入される場合の例を、図1に示す、クリンカークーラーを有するキルンの断面図を参照しながら説明する。
図1には、キルン1のセメントクリンカー排出口にクリンカークーラー3が設けられている例を示す。クリンカークーラー内では、セメントクリンカー6がクーラーグレート上を移動しながら、下部に存在する複数の冷却室7からグレートの孔を通って供給される冷却空気によって冷却される。
【0012】珪素含有物質を投入する場所は、珪素含有物質の種類にもよるが、一般的に1100℃以上の温度領域が好適である。投入場所の温度が低いと、珪素含有物質と普通ポルトランドセメントクリンカーとの反応が十分に起こらず、ビーライトの生成が部分的になり易い。
本例で示されたタイプのものでは、クリンカーの温度が1100℃以上になるのは、一般的に、キルン1に最も近い冷却室及びその冷却室に隣接する2〜3番目の冷却室までの領域であり、従って、この領域に在る普通ポルトランドセメントクリンカー上に珪素含有物質を投入するのが良いことになる。
【0013】また、珪素含有物質と普通ポルトランドセメントクリンカーとを十分に反応させる為には、珪素含有物質をクーラー内の各冷却室に対応する数m角程度の領域に広く分散投入し、両者の接触面積を十分に確保することが好ましい。
さらに、吹き込まれる冷却空気による飛散を防止する為、予め造粒して置くことが好ましい。
【0014】珪素含有物質の添加量は、珪素含有物質種に依存して変わるが、普通ポルトランドセメントクリンカーに対して2〜5質量%とするのが好ましい。
2質量%よりも少なくなると、珪素含有物質種によっては、目的とするビーライト及びスラグ類似水硬性物質の生成量が不十分となり、十分な低発熱化が期待出来なくなり、また、5質量%より大では、珪素含有物質種によっては未反応の珪素含有物質が増加し、セメントの初期強度が低下することがあり、好ましくない。
【0015】セメントクリンカー製造中のセメント製造設備のキルン窯前及びクリンカー冷却部から選ばれる少なくとも一方へ、酸化珪素換算で30質量%以上の珪素を含有する珪素含有物質を投入し、既におおよそ焼成済みの普通ポルトランドセメントクリンカーと珪素含有物質とを接触させることにより、エーライト(3CaO・SiO2)量の減少、ビーライト(2CaO・SiO2)量の増加、及びスラグ類似物質の生成が顕微鏡観察及び粉末X線回折で確認される。
投入された珪素含有物質中のSiO2が、普通ポルトランドセメントクリンカー中のエーライトと反応し、普通ポルトランドセメントクリンカー中のカルシウム成分が、投入された珪素含有物質へ取込まれ、スラグ類似の水硬性物質が生成すると共に、エーライトが分解して低発熱性の鉱物であるビーライトが新たに生成すると考えられる。
【0016】得られた低発熱セメント用クリンカーには、石膏を添加後粉砕し、低発熱セメントを得ることが出来る。
【0017】
【実施例】以下に、具体例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
(1)使用原料:試験には次の原料を用いた。各原料の化学成分を表1に示す。・石炭灰:石炭火力発電所からの排出物
・普通ポルトランドセメント:普通ポルトランドセメント(JIS R 5210適合品)
・低熱ポルトランドセメント:低熱ポルトランドセメント(JIS R 5210適合品)
・高炉セメント:高炉セメント(B種、JIS R 5211適合品)
【0018】
【表1】
【0019】(2)試製セメントの製造:
表1の石炭灰を、普通ポルトランドセメントクリンカーを製造中のセメント製造装置のクリンカークーラーへ、普通ポルトランドセメントクリンカーに対して3質量%添加し、試製低発熱セメント用クリンカーを製造した。投入は、グレート上を移動中の普通ポルトランドセメントクリンカー上部に、石炭灰を落下させる方法によって実施した。投入位置は、キルンに最も近い冷却室及び2番目の冷却室それぞれの上部に関して実施し、比較検討した。この後、通常の普通ポルトランドセメント製造と同様に、試製低発熱セメント用クリンカーに二水石膏を添加後、仕上げ粉砕し、試製低発熱セメントを得た。なお、二水石膏添加量は、仕上げ低発熱セメントに対してSO3換算で2質量%となるようにした(実施例1、2)。また、比較の為、同じ石炭灰を、仕上げ粉砕時に石膏と同時に添加した以外は、実施例1と同じ条件で試製セメントを製造した(比較例1)。
【0020】(3)セメントの評価:
これらの方法により製造した試製セメント3種類、並びに、表1に示した3種類のセメントに関して、水和発熱量を測定すると共に、コンクリートの促進中性化試験を実施した。
水和発熱量は東京理工製のコンダクションカロリメーターを使用し、水セメント比0.5、測定温度20℃で実施し、水和開始から72時間の累積総発熱量で比較検討した。
また、促進中性化試験は、日本建築学会高耐久性鉄筋コンクリート造設計施工指針(案)付録1に準じて実施した。まず、各セメントについて、水/セメント比:70%、スランプ:18±1cm、空気量:4.5±0.5%の配合により、10×10×40cmの供試体を製造し、材令28日まで、20℃水中養生を行った後、温度20℃湿度60%の恒温恒湿室内で28日間乾燥させてから、温度20℃、湿度60%、CO2濃度5%の試験槽内に放置した。91日間、促進中性化後、供試体の破断面にフェノールフタレイン1%アルコール溶液を噴霧し、中性化深さを測定した。
結果を表2に示す。
【0021】
【表2】
【0022】発熱に関しては、試製低熱セメント(実施例1、2)において、普通ポルトランドセメント(比較例2)よりも水和発熱量がかなり低くなり、低熱ポルトランドセメント(比較例3)並みになっていることが分かる。一方、石炭灰を、仕上げ粉砕時に添加した場合は(比較例1)、普通ポルトランドセメントとほぼ同様の水和発熱を示し、セメントをほとんど低熱化出来ないことが分かる。
【0023】一方、中性化試験結果では、試製低発熱セメント(実施例1、2)は、ほぼ、普通ポルトランドセメント(比較例2)並みの中性化速度を示すのに対し、通常の低熱ポルトランドセメント(比較例3)及びB種高炉セメント(比較例4)では、本発明の低発熱セメントに比して、中性化速度がかなり早いことが分かる。
試製低発熱セメントの中性化速度が遅い原因は現在、明確ではないが、珪素含有物質の投入により生成したスラグ類似物質とビーライトとが複合的に水和、形成された組織が中性化遅延に寄与しているものと思われる。
【0024】
【発明の効果】本発明の低発熱セメント用クリンカーは、普通ポルトランドセメントクリンカーを製造中のセメント製造設備のキルン窯前またはクリンカー冷却部へ珪素含有物質を投入することにより、効率良く、かつ、安価に製造することが出来る。特性的には、中性化速度が遅く、コンクリートの耐久性に悪影響を与えないセメントを与える。
製造面では、特に、少規模製造が可能であるメリットが大きい。更に、セメント製造時の廃熱を有効利用できるのに加え、投入した珪素含有物質分だけセメントクリンカーの焼出し量が増やせる為、設備の改造及び増強を行うことなく、セメントクリンカーの生産能力の向上が可能である。また、珪素含有物質として石炭灰を用いることにより、産業廃棄物として埋立て等で処分されていた石炭灰を有効に利用することが出来る利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】クリンカークーラーを有するキルン例の断面を示す図である。
【符号の説明】
1 キルン
2 プレヒーター
3 クリンカクーラー
4 窯尻
5 メインバーナー
6 クリンカー
7 冷却室
【発明の属する技術分野】本発明はダム、原子力発電所、LNGタンク、長大橋の下部工事等のマスコンクリートの建設工事で問題となるセメントの水和発熱に起因する温度ひび割れの防止対策として、水和発熱量が少なく、かつ、十分な強度発現性を有するマスコンクリート用の低発熱セメント用クリンカー及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、マスコンクリート用の低発熱セメントとしては、水和発熱量が相対的に大きい3CaO・SiO2(エーライト)や3CaO・Al2O3(アルミネート)を減じ、2CaO・SiO2(ビーライト)を増加させた中庸熱ポルトランドセメント及び低熱ポルトランドセメントが、JIS R 5210により規格化されている。また、混合材を添加した高炉セメントやフライアッシュセメントも知られている。さらに、より低発熱化を図る為、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントに高炉スラグ及びフライアッシュをそれぞれ単独または同時添加したものなど、様々の低発熱セメントが開示されている。
【0003】しかしながら、特別な組成のセメントクリンカーを少量製造する方法は、一般的に効率が悪く、改良が要求されているものであった。すなわち、特殊クリンカーの生産に関しては、汎用普通ポルトランドセメントの製造ラインを用いることが多いが、クリンカーの種類の切替え時の運転操作が煩雑になる上に、切替えロスが発生するなどの問題があった。また、その結果として、生産原価が高くなることが多いと云う問題点も抱えていた。
【0004】一方、高炉セメントやフライアッシュセメントのように、セメントクリンカー製造工程には影響を及ぼすことなく、製造の後工程において、高炉スラグ及びフライアッシュ等を多量に添加した混合セメントとする方法があるが、この方法で製造されたセメントは、それを用いて製造されたコンクリートが中性化し易く、長期的な耐久性が低下する欠点を有する。
【0005】また、セメント製造に石炭灰を利用する方法は既に、各種提案されており、その中でも、特許文献1にはキルン窯前から石炭灰を投入する技術が開示されている。しかしながら、この技術は、セメント工場の安定的操業を目的としたものであり、また、得られるセメントも通常と同等の品質のものである。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−329453号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このような従来技術の問題に鑑み、本発明は、汎用普通ポルトランドセメント製造ラインを使用して簡単に且つ経済的に、中性化し難いコンクリートを与える低発熱セメント用クリンカー及び当該クリンカー製造方法の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、ポルトランドセメント用クリンカーを製造中のセメント製造設備の高温部に、珪素含有化合物を投入する方法で得られる、エーライト由来のビーライト及びスラグ類似物質を含有するクリンカーが、上記問題点の解決された、低発熱セメント用クリンカーとなることを見出し、本発明を解決した。
すなわち、本発明の低発熱セメント用クリンカーは、セメントクリンカー製造中のセメント製造設備のキルン窯前またはクリンカー冷却部から選ばれるどちらかに存在する既におおよそ焼成済みのクリンカーとそこに投入された、酸化珪素換算で30質量%以上の珪素を含有する珪素含有物質との反応によりクリンカー中のエーライトが分解して生成したビーライト(A)及び、エーライトの分解によって生じた酸化カルシウムと前記珪素含有物質との反応により生成したスラグ類似物質(B)を含有することを特徴とする。
【0009】本発明の低発熱セメント用クリンカーは、セメントクリンカー製造中のセメント製造設備のキルン窯前及びクリンカー冷却部から選ばれる少なくとも一方に、酸化珪素換算で30質量%以上の珪素含有物質を投入して製造されることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態においては、珪素含有物質として石炭灰を用いることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳しく説明する
本発明で、キルン窯前またはクリンカー冷却部に投入される珪素含有物質とは、酸化珪素換算で30質量%以上の珪素を含有するものであり、石炭灰の他に、製紙スラッジ灰、下水汚泥焼却灰、コンクリートスラッジ、各種排水処理スラッジ、各種スラグ、再生骨材微粉、建設廃材、建設廃土、各種汚染土壌、廃サイディングボード、等があげられる。中でも、石炭灰は、化学組成、入手容易性及び価格の面から最も好ましい材料である。
【0011】本発明においては、珪素含有物質は、セメントクリンカー製造中のセメント製造設備のキルン窯前及び/又はクリンカー冷却部に投入されるが、クリンカー冷却部に投入される場合の例を、図1に示す、クリンカークーラーを有するキルンの断面図を参照しながら説明する。
図1には、キルン1のセメントクリンカー排出口にクリンカークーラー3が設けられている例を示す。クリンカークーラー内では、セメントクリンカー6がクーラーグレート上を移動しながら、下部に存在する複数の冷却室7からグレートの孔を通って供給される冷却空気によって冷却される。
【0012】珪素含有物質を投入する場所は、珪素含有物質の種類にもよるが、一般的に1100℃以上の温度領域が好適である。投入場所の温度が低いと、珪素含有物質と普通ポルトランドセメントクリンカーとの反応が十分に起こらず、ビーライトの生成が部分的になり易い。
本例で示されたタイプのものでは、クリンカーの温度が1100℃以上になるのは、一般的に、キルン1に最も近い冷却室及びその冷却室に隣接する2〜3番目の冷却室までの領域であり、従って、この領域に在る普通ポルトランドセメントクリンカー上に珪素含有物質を投入するのが良いことになる。
【0013】また、珪素含有物質と普通ポルトランドセメントクリンカーとを十分に反応させる為には、珪素含有物質をクーラー内の各冷却室に対応する数m角程度の領域に広く分散投入し、両者の接触面積を十分に確保することが好ましい。
さらに、吹き込まれる冷却空気による飛散を防止する為、予め造粒して置くことが好ましい。
【0014】珪素含有物質の添加量は、珪素含有物質種に依存して変わるが、普通ポルトランドセメントクリンカーに対して2〜5質量%とするのが好ましい。
2質量%よりも少なくなると、珪素含有物質種によっては、目的とするビーライト及びスラグ類似水硬性物質の生成量が不十分となり、十分な低発熱化が期待出来なくなり、また、5質量%より大では、珪素含有物質種によっては未反応の珪素含有物質が増加し、セメントの初期強度が低下することがあり、好ましくない。
【0015】セメントクリンカー製造中のセメント製造設備のキルン窯前及びクリンカー冷却部から選ばれる少なくとも一方へ、酸化珪素換算で30質量%以上の珪素を含有する珪素含有物質を投入し、既におおよそ焼成済みの普通ポルトランドセメントクリンカーと珪素含有物質とを接触させることにより、エーライト(3CaO・SiO2)量の減少、ビーライト(2CaO・SiO2)量の増加、及びスラグ類似物質の生成が顕微鏡観察及び粉末X線回折で確認される。
投入された珪素含有物質中のSiO2が、普通ポルトランドセメントクリンカー中のエーライトと反応し、普通ポルトランドセメントクリンカー中のカルシウム成分が、投入された珪素含有物質へ取込まれ、スラグ類似の水硬性物質が生成すると共に、エーライトが分解して低発熱性の鉱物であるビーライトが新たに生成すると考えられる。
【0016】得られた低発熱セメント用クリンカーには、石膏を添加後粉砕し、低発熱セメントを得ることが出来る。
【0017】
【実施例】以下に、具体例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
(1)使用原料:試験には次の原料を用いた。各原料の化学成分を表1に示す。・石炭灰:石炭火力発電所からの排出物
・普通ポルトランドセメント:普通ポルトランドセメント(JIS R 5210適合品)
・低熱ポルトランドセメント:低熱ポルトランドセメント(JIS R 5210適合品)
・高炉セメント:高炉セメント(B種、JIS R 5211適合品)
【0018】
【表1】
【0019】(2)試製セメントの製造:
表1の石炭灰を、普通ポルトランドセメントクリンカーを製造中のセメント製造装置のクリンカークーラーへ、普通ポルトランドセメントクリンカーに対して3質量%添加し、試製低発熱セメント用クリンカーを製造した。投入は、グレート上を移動中の普通ポルトランドセメントクリンカー上部に、石炭灰を落下させる方法によって実施した。投入位置は、キルンに最も近い冷却室及び2番目の冷却室それぞれの上部に関して実施し、比較検討した。この後、通常の普通ポルトランドセメント製造と同様に、試製低発熱セメント用クリンカーに二水石膏を添加後、仕上げ粉砕し、試製低発熱セメントを得た。なお、二水石膏添加量は、仕上げ低発熱セメントに対してSO3換算で2質量%となるようにした(実施例1、2)。また、比較の為、同じ石炭灰を、仕上げ粉砕時に石膏と同時に添加した以外は、実施例1と同じ条件で試製セメントを製造した(比較例1)。
【0020】(3)セメントの評価:
これらの方法により製造した試製セメント3種類、並びに、表1に示した3種類のセメントに関して、水和発熱量を測定すると共に、コンクリートの促進中性化試験を実施した。
水和発熱量は東京理工製のコンダクションカロリメーターを使用し、水セメント比0.5、測定温度20℃で実施し、水和開始から72時間の累積総発熱量で比較検討した。
また、促進中性化試験は、日本建築学会高耐久性鉄筋コンクリート造設計施工指針(案)付録1に準じて実施した。まず、各セメントについて、水/セメント比:70%、スランプ:18±1cm、空気量:4.5±0.5%の配合により、10×10×40cmの供試体を製造し、材令28日まで、20℃水中養生を行った後、温度20℃湿度60%の恒温恒湿室内で28日間乾燥させてから、温度20℃、湿度60%、CO2濃度5%の試験槽内に放置した。91日間、促進中性化後、供試体の破断面にフェノールフタレイン1%アルコール溶液を噴霧し、中性化深さを測定した。
結果を表2に示す。
【0021】
【表2】
【0022】発熱に関しては、試製低熱セメント(実施例1、2)において、普通ポルトランドセメント(比較例2)よりも水和発熱量がかなり低くなり、低熱ポルトランドセメント(比較例3)並みになっていることが分かる。一方、石炭灰を、仕上げ粉砕時に添加した場合は(比較例1)、普通ポルトランドセメントとほぼ同様の水和発熱を示し、セメントをほとんど低熱化出来ないことが分かる。
【0023】一方、中性化試験結果では、試製低発熱セメント(実施例1、2)は、ほぼ、普通ポルトランドセメント(比較例2)並みの中性化速度を示すのに対し、通常の低熱ポルトランドセメント(比較例3)及びB種高炉セメント(比較例4)では、本発明の低発熱セメントに比して、中性化速度がかなり早いことが分かる。
試製低発熱セメントの中性化速度が遅い原因は現在、明確ではないが、珪素含有物質の投入により生成したスラグ類似物質とビーライトとが複合的に水和、形成された組織が中性化遅延に寄与しているものと思われる。
【0024】
【発明の効果】本発明の低発熱セメント用クリンカーは、普通ポルトランドセメントクリンカーを製造中のセメント製造設備のキルン窯前またはクリンカー冷却部へ珪素含有物質を投入することにより、効率良く、かつ、安価に製造することが出来る。特性的には、中性化速度が遅く、コンクリートの耐久性に悪影響を与えないセメントを与える。
製造面では、特に、少規模製造が可能であるメリットが大きい。更に、セメント製造時の廃熱を有効利用できるのに加え、投入した珪素含有物質分だけセメントクリンカーの焼出し量が増やせる為、設備の改造及び増強を行うことなく、セメントクリンカーの生産能力の向上が可能である。また、珪素含有物質として石炭灰を用いることにより、産業廃棄物として埋立て等で処分されていた石炭灰を有効に利用することが出来る利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】クリンカークーラーを有するキルン例の断面を示す図である。
【符号の説明】
1 キルン
2 プレヒーター
3 クリンカクーラー
4 窯尻
5 メインバーナー
6 クリンカー
7 冷却室
Claims (3)
- セメントクリンカー製造中のセメント製造設備のキルン窯前またはクリンカー冷却部から選ばれるどちらかに存在する既におおよそ焼成済みのクリンカーとそこに投入された、酸化珪素換算で30質量%以上の珪素を含有する珪素含有物質との反応によりクリンカー中のエーライトが分解して生成したビーライト(A)及び、エーライトの分解によって生じた酸化カルシウムと前記珪素含有物質との反応により生成したスラグ類似物質(B)を含有することを特徴とする低発熱セメント用クリンカー。
- セメントクリンカー製造中のセメント製造設備のキルン窯前及びクリンカー冷却部から選ばれる少なくとも一方に、酸化珪素換算で30質量%以上の珪素を含有する珪素含有物質を投入することを特徴とする低発熱セメント用クリンカーの製造方法。
- 珪素含有物質が石炭灰であることを特徴とする、請求項2記載の低発熱セメント用クリンカーの製造方法。
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