JP2013147357A - 普通ポルトランドセメントクリンカーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、ボーグ式により算出したセメント鉱物組成が特定の範囲にある第1のクリンカーを焼成する工程と、前記クリンカー100質量部に対し石炭灰を0.5質量部以上2.0質量部未満の割合で、窯前からロータリーキルンに、および/またはクーラーの1000℃以上の位置に投入して、第1のクリンカーと混合し焼成し反応させて、ボーグ式により算出したセメント鉱物組成が、特定の範囲にある普通ポルトランドセメントクリンカーを得る工程を含む普通ポルトランドセメントクリンカーの製造方法を提供する。
【選択図】なし
Description
該灰中の未燃炭素の含有率は、通常、数%程度であるが、電力需要が増える夏場等では発電効率を上げるため、微粉炭を完全に燃焼することなく石炭灰を回収している。そのため、石炭灰の炭素含有率は季節間の変動が大きく5〜30質量%程度になる。
しかし、電力事業における石炭灰の発生量は、平成11年度の576万トンから、この10年間で約1.5倍にも増加し、今後もこの増加が予想されるため、未燃炭素の多い石炭灰でも有効に活用することができる方法が望まれている。
たとえば、特許文献1では、セメント原料をセメントキルン中で焼成するに際し、該キルンの窯前部から石炭灰をキルン中に直接吹き込み、該石炭灰中に含まれる未燃カーボンを燃焼させるとともに残部の灰分をセメントクリンカーに混合して焼成するセメントの製造方法が提案されている。
[1]以下の(A)工程および(B)工程を含む普通ポルトランドセメントクリンカーの製造方法。
(A)ボーグ式を用いて算出したセメント鉱物の組成が、C3Sで66.5〜71.0%、C2Sで6.0〜11.0%、C3Aで8.5〜11.0%、および、C4AFで9.0〜12.0%である第1のクリンカーを焼成して得る第1の焼成工程
(B)前記第1のクリンカー100質量部に対し石炭灰を0.5質量部以上2.0質量部未満の割合で、窯前からロータリーキルンに、および/または、クーラーの1000℃以上の位置に投入して、第1のクリンカーと混合し焼成し反応させて、ボーグ式を用いて算出したセメント鉱物の組成が、C3Sで55.0〜64.5%、C2Sで7.0〜20.0%、C3Aで8.0〜11.0%、および、C4AFで8.0〜12.0%である普通ポルトランドセメントクリンカーを得る第2の焼成工程
前記[1]の発明によれば、第1のクリンカーのセメント鉱物組成を前記(A)の範囲に特定し、かつ第2の焼成工程における石炭灰の投入割合を前記(B)の範囲に特定したことにより、第2の焼成工程において石炭灰を第1のクリンカーに混合して焼成するという簡単な操作で、品質の安定した普通ポルトランドセメントクリンカーを連続して生産できる。また、第1のクリンカーのセメント鉱物組成が前記(A)の範囲であれば、石炭灰を含む廃棄物を、第1のクリンカー用原料の一部として多用することができる。
[2]前記石炭灰の炭素含有率が4%以上である、前記[1]に記載の普通ポルトランドセメントクリンカーの製造方法。
前記[2]の発明によれば、使用する石炭灰の炭素含有率を前記範囲に特定したことにより、第2の焼成工程において主燃料である微粉炭の使用量が減少して製造コストが低減するとともに、石炭資源を節約することができる。
以下に、本発明について詳細に説明する。
該工程は、ボーグ式を用いて算出したセメント鉱物の組成が、C3Sで66.5〜71.0%、C2Sで6.0〜11.0%、C3Aで8.5〜11.0%、および、C4AFで9.0〜12.0%となる第1のクリンカーを焼成して得るものである。セメント鉱物の組成が該範囲にあれば、該第1のクリンカー用原料の一部として石炭灰を含む廃棄物が多用できるほか、次工程である第2の焼成工程において、石炭灰の投入割合を前記(B)の範囲に制御することにより、石炭灰を第1のクリンカーに混合して焼成するという簡単な操作のみで、品質が安定した普通ポルトランドセメントクリンカーを連続して生産できる。また、第1のクリンカーのセメント鉱物の組成は、好ましくは、C3Sが68〜70%、C2Sが8〜10%、C3Aが9〜11%およびC4AFが10〜11%である。
該工程の焼成温度は、1000〜1450℃が好ましく、1200〜1400℃がより好ましい。該温度が1000〜1450℃の範囲であれば、水硬性の高いセメント鉱物が生成する傾向がある。また、該工程の焼成時間は、30〜120分が好ましく、40〜60分がより好ましい。該時間が30分未満では焼成が十分でなく、120分を超えると生産性が低下する。
C3S(%)=4.07×CaO(%)−7.60×SiO2(%)−6.72×Al2O3(%)−1.43×Fe2O3(%)−2.85×SO3(%) ・・・(i)
C2S(%)=2.87×SiO2(%)−0.754×C3S(%) ・・・(ii)
C3A(%)=2.65×Al2O3(%)−1.69×Fe2O3(%) ・・・(iii)
C4AF(%)=3.04×Fe2O3(%) ・・・(iv)
(式中の化学式は、調合原料中またはクリンカー中における、化学式が表す化合物の含有率を表す。)
ここで、塩化揮発法とは、セメント原料中に含まれる重金属を、沸点の低い塩化物の形で揮発させて除去する方法である。具体的には、該方法は、重金属を含むセメント原料に塩化カルシウム等の塩素源を添加して、ロータリーキルン等の焼成炉を用いて焼成し、生成した重金属の塩化物を揮発させて除去するものである。
また、還元焼成法とは、セメント原料中に含まれる重金属を還元して、沸点の低い金属の形で揮発させて除去する方法である。具体的には、該方法は、重金属を含むセメント原料を還元雰囲気下で、および/または、還元剤を添加して、ロータリーキルン等の焼成炉を用いて焼成して重金属を還元し、この還元した重金属を揮発させて除去するものである。
該工程は、第1のクリンカー100質量部に対し、石炭灰を0.5質量部以上2.0質量部未満の割合で、窯前からロータリーキルンに、および/または、クーラーの1000℃以上の位置に投入して、第1のクリンカーと混合し焼成し反応させて、ボーグ式を用いて算出したセメント鉱物の組成が、C3Sで55.0〜64.5%、C2Sで7.0〜20.0%、C3Aで8.0〜11.0%、および、C4AFで8.0〜12.0%である普通ポルトランドセメントクリンカーを得るものである。石炭灰の投入量(使用量)が0.5質量部未満では石炭灰の使用量が少ないうえ、前記鉱物組成の普通ポルトランドセメントクリンカーを製造することが困難となる。また、石炭灰の投入量が2.0質量部以上では、未反応の石炭灰が残存するおそれがあるほか、前記鉱物組成の普通ポルトランドセメントクリンカーを製造することが困難となる。
石炭灰の投入量は、好ましくは第1のクリンカー100質量部に対し0.6〜1.8質量部である。また、普通ポルトランドセメントクリンカーのセメント鉱物組成は、好ましくはC3Sで57.0〜63.0%、C2Sで10.0〜19.5%、C3Aで8.5〜11.0%、および、C4AFで8.0〜11.0%である。
また、石炭灰の炭素含有率は4%以上が好ましく、5〜50%がより好ましく、6〜45%がさらに好ましく、7〜40%が特に好ましい。該値が4%未満では発熱量が小さく、製造コスト、特に燃料コストの低減効果が減少する。
本発明における石炭灰の投入位置は、窯前からロータリーキルンに、および/または、クーラーの1000℃以上の場所である。クーラーの1000℃以上の場所としては、クーラーの1室(後掲する図1の符号7の位置)等が挙げられる。
第2の焼成工程の後、クリンカーはさらにクーラーで冷却され普通ポルトランドセメントクリンカーが得られる。
本発明の製造方法において、例えば、C3Sが57.0〜63.0%、C2Sが10.0〜19.5%、C3Aが8.5〜11.0%、および、C4AFが8.0〜11.0%である普通ポルトランドセメントクリンカーを製造する場合、従来の製造方法(石炭灰を他のセメント原料と予め混合し、該混合物を焼成する方法)と比べ、以下の(1)〜(3)に示す燃料コストの低減が可能である。すなわち、
(1)炭素含有率が5%の石炭灰を、第1のクリンカー100質量部に対し1.0質量部、1.5質量、および2.0質量部使用した場合、クリンカーを1トン製造するのに要する燃料コスト(以下「燃料費」という。)は、それぞれ、10〜15円、15〜20円、および20〜25円程度低減できる。
(2)炭素含有率が10%の石炭灰を、第1のクリンカー100質量部に対し1.0質量部、1.5質量、および2.0質量部使用した場合、燃料費は、それぞれ、20〜25円、30〜35円、および40〜45円程度低減できる。
(3)炭素含有率が20%の石炭灰を、第1のクリンカー100質量部に対し1.0質量部、1.5質量、および2.0質量部使用した場合、燃料費は、それぞれ、40〜45円、65〜70円、および90〜95円程度低減できる。
例えば、前記(3)の炭素含有率が20%の石炭灰を、第1のクリンカー100質量部に対し2.0質量部使用した場合を、2010年度の普通ポルトランドセメントの生産量である3465万トンに当てはめれば、普通ポルトランドセメントの製造における燃料費は年間で最大32億円程度減らすことができ、またその分、石炭資源を節約することができる。
本発明の製造方法は、任意の工程として、前記(A)工程の前に第1のクリンカー原料を調合するための原料調合工程を含むことができる。
該工程では、カルシウム原料、ケイ素原料、アルミニウム原料および鉄原料等のセメント原料を、前記(i)〜(iv)式のボーグ式を用いて、前記セメント鉱物の組成の範囲になるように調合して調合原料を調製する。ここで、カルシウム原料として石灰石、生石灰および消石灰等が、ケイ素原料として珪石や粘土等が、アルミニウム原料として粘土等が、鉄原料として鉄滓や鉄ケーキ等が挙げられる。
該産業廃棄物として、例えば、石炭灰、生コンクリートスラッジ、建設汚泥、製鉄汚泥等の各種汚泥、ボーリング廃土、各種焼却灰、鋳物砂、ロックウール、高炉二次灰、建設廃材、およびコンクリート廃材等が挙げられる。
また、前記一般廃棄物として、例えば、浄水汚泥、下水汚泥、下水汚泥乾粉、都市ごみ焼却灰、貝殻、および下水汚泥焼却灰等が挙げられる。
また、前記建設発生土として、建設現場や工事現場等から発生する土壌や残土などが挙げられる。
なお、調合原料の粉末度を調整する必要がある場合は、ボールミル等の原料粉砕機で所定の粉末度になるまで粉砕して調整する。
本発明の製造方法は、任意の工程として、さらに前記(B)工程の後に、前記普通ポルトランドセメントクリンカーに石膏を添加して、ボールミルやロッドミル等の粉砕機を用い粉砕してセメントを調製する仕上工程を含む。また混合方法として、前記の混合粉砕のほかに、クリンカーと石膏を別々に粉砕した後に両者を混合してもよい。
ここで石膏は、特に制限されず、例えば、天然二水石膏、排煙脱硫石膏、リン酸石膏、チタン石膏、フッ酸石膏、精錬石膏、半水石膏および無水石膏等から選ばれる、少なくとも1種以上が挙げられる。また、石膏のブレーン比表面積は、2000〜5000cm2/gが好ましく、3000〜4000cm2/gがより好ましい。該値が2000〜5000cm2/gの範囲を外れると、強度発現性が低下したり、水和熱が大きくなるおそれがある。
また、前記セメントは、さらに高炉スラグ、フライアッシュ、石炭灰、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等を、本発明の効果を奏する範囲内で含んでもよい。
1.クリンカーの製造
原料として、石灰石、粘土、鉄滓、石炭灰(炭素含有率3%)、および化学組成が異なる3種類の下水汚泥を用いた。また、調合原料は、クリンカー中の各セメント鉱物の組成が表1の「第1」欄に示す値になるように、下水汚泥等の混合量を調整して調合した。
次に、該調合原料をロータリーキルン1を用いて、焼成温度1400℃で第1のクリンカーを焼成した後、該クリンカーがキルン1からクーラー3に落下する直前の位置(温度は1200℃)に、炭素含有率が10%の石炭灰を投入した。該投入量(使用量)は、第1のクリンカー100質量部に対し石炭灰1質量部であった。また、クリンカー中のフリーライム(f−CaO)量が0.2±0.2%になるまで、第1および第2の焼成工程においてクリンカーを焼成した。得られた普通ポルトランドセメントクリンカー1〜7のセメント鉱物組成を表1の「普通」欄に示す。
なお、前記の普通ポルトランドセメントクリンカー1〜7を割裂し、割裂面をEPMAで分析した結果、全てのクリンカーにおいて未反応の石炭灰は認められずC2Sが生成していることが認められた。
表1に示す普通ポルトランドセメントクリンカー1〜7の100質量部に対し、二水石膏(試薬1級 関東化学社製)をSO3換算で1.3質量部、および半水石膏(試薬1級 関東化学社製)をSO3換算で1.3質量部添加した後、小型ミルで粉砕して、ブレーン比表面積が3300±100cm2/gの普通ポルトランドセメントを製造した。
前記セメントを用いてモルタルを調製し、該モルタルの混練直後および混練後30分経過時のフロー値を測定して、前記セメントの流動性を求めた。具体的には、
(i)前記セメントを用いて、質量比で、細骨材/セメント=2.0、水/セメント=0.35、および、減水剤(固形分)/セメント=0.007のモルタルを、ホバートミキサーを用いて低速で2.5分間、さらに続けて高速で3分間混練した。
(ii)前記混錬したモルタルをミニスランプコーン(JIS A 1171:2000「ポリマーセメントモルタルの試験方法」に規定する鋼製スランプコーン)の中に投入し、該コーンを上方へ取り去った時のモルタルの広がり(フロー値)を測定して流動性を求めた。なお、前記細骨材はJIS R 5201に規定する標準砂を、前記減水剤はポリカルボン酸系高性能AE減水剤(商品名:レオビルドSP8N、BASFポゾリス社製)を用いた。フロー値の測定結果を表1に示す。
前記セメントの凝結時間と圧縮強度を、JIS R 5201に準じて測定した。これらの測定結果を表1に示す。
一方、比較として、表1のNo.5または6と同一のセメント鉱物組成の普通ポルトランドセメントクリンカーを、従来の製造方法(炭素含有率が3%の石炭灰を他のセメント原料と予め混合し、該混合物をロータリーキルンで焼成しクリンカーを製造する方法)を用いて製造した結果、燃料費は本発明の製造方法と比べて20〜22円高くなった。
2 プレヒーター
3 クーラー
4 窯前
5 メインバーナー
6 クリンカー
7 クーラーの1室
Claims (2)
- 以下の(A)工程および(B)工程を含む普通ポルトランドセメントクリンカーの製造方法。
(A)ボーグ式を用いて算出したセメント鉱物の組成が、C3Sで66.5〜71.0質量%、C2Sで6.0〜11.0質量%、C3Aで8.5〜11.0質量%、および、C4AFで9.0〜12.0質量%である第1のセメントクリンカーを焼成して得る第1の焼成工程
(B)前記第1のセメントクリンカー100質量部に対し石炭灰を0.5質量部以上2.0質量部未満の割合で、窯前からロータリーキルンに、および/または、クーラーの1000℃以上の位置に投入して、第1のセメントクリンカーと混合し焼成し反応させて、ボーグ式を用いて算出したセメント鉱物の組成が、C3Sで55.0〜64.5%、C2Sで7.0〜20.0%、C3Aで8.0〜11.0%、および、C4AFで8.0〜12.0%である普通ポルトランドセメントクリンカーを得る第2の焼成工程 - 前記石炭灰の炭素含有率が4質量%以上である、請求項1に記載の普通ポルトランドセメントクリンカーの製造方法。
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