JP2004298328A - 歯ブラシ用毛材および歯ブラシ - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリエステル系樹脂の吸水時の弾性変化が小さい点や、耐久性が優れるという特性を維持しつつ、しかも適度な柔軟性を備え歯の清掃性および使用感が改善された歯ブラシ用毛材、およびこの用毛材を用いた歯ブラシの提供。
【解決手段】ポリエステル系樹脂95〜55重量%およびポリエステルエラストマー5〜45重量%を混合し溶融紡糸したモノフィラメントブリッスルからなり、屈曲回復率が65%以上である歯ブラシ用毛材および歯ブラシ。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリエステル系樹脂95〜55重量%およびポリエステルエラストマー5〜45重量%を混合し溶融紡糸したモノフィラメントブリッスルからなり、屈曲回復率が65%以上である歯ブラシ用毛材および歯ブラシ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂製の歯ブラシ用毛材および歯ブラシに関し、さらに詳しくは、従来のポリエステル系樹脂製の歯ブラシ用毛材に比べて適度な柔軟性を有することから歯の清掃性および使用感が改善され、しかも耐久性が優れた歯ブラシ用毛材、およびこの毛材を基台に植毛してなる歯ブラシに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂モノフィラメントからなるカットブリッスルは、トイレタリーブラシや筆などのいわゆる獣毛調毛材の代替用毛材として、従来から広く用いられている。
【0003】
具体的には、ポリアミド、特にポリアミド6・10やポリアミド6・12を材質とする歯ブラシ用毛材(例えば、特許文献1参照)が、柔軟性が適度であることから、一般的に用いられているが、このポリアミド製歯ブラシ用毛材は、吸湿による弾性変化が大きく毛腰が変化しやすいばかりか、耐久性がやや低く、繰り返しの使用によって比較的早期に毛開きを生じて使用できなくなるという欠点があった。
【0004】
上記の欠点を補う歯ブラシ用毛材としては、ポリエステル系樹脂、特にポリブチレンテレフタレートを材質とする歯ブラシ用毛材(例えば、特許文献2参照)が提案されており、この歯ブラシ用毛材によれば、吸湿率が小さいため吸水による弾性率変化がほとんどなく、また耐久性も向上するばかりか、先端をアルカリ溶解させてテーパー形状に先鋭化することにより、歯ブラシにおける歯間挿入性を向上させたり、筆具における獣毛に近い筆先のまとまりを与えたりすることが可能であるという利点が得られる。しかし、ポリエステル系樹脂製歯ブラシ用毛材は、ポリアミド製の歯ブラシ用毛材に比べてやや毛腰が強くなるため、歯ブラシとしての使用感が劣るという問題点を包含していた。
【0005】
また、いわゆる工業用ブラシの分野においては、ポリブチレンテレフタレートとポリエステルエラストマーとの混合物を素材とするブラシ用毛材(例えば、特許文献2参照)が知られているが、この毛材をそのまま歯ブラシに適用した場合には、耐久性が不充分なばかりか、歯の清掃性や使用感を満たすにはいたらなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−201538号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開平6−141923号公報(第5頁)
【特許文献3】
特開昭61−90877号公報(第2頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術におけるの問題点の解決を目的として検討した結果、達成されたものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ポリエステル系樹脂の吸水時の弾性変化が小さい点や、耐久性が優れるという特性を維持しつつ、しかも適度な柔軟性を備え歯の清掃性および使用感が改善された歯ブラシ用毛材、およびこの用毛材を用いた歯ブラシを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を達成するために鋭意検討した結果、ポリエステル系樹脂およびポリエステルエラストマーを特定の混合比で混合した組成物から溶融紡糸してなり、しかも特定の屈曲回復率を有するモノフィラメントブリッスルからなる毛材により、上記目的が効果的に達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリエステル系樹脂95〜55重量%およびポリエステルエラストマー5〜45重量%を混合し溶融紡糸したモノフィラメントブリッスルからなり、JIS S 3016に規定される屈曲回復率試験に準じ、評価環境を23±2℃に調整した水中として測定した屈曲回復率が65%以上であることを特徴とする歯ブラシ用毛材を提供するものである。
【0011】
なお、本発明のブラシ用毛材においては、
前記ポリエステル系樹脂がポリブチレンテレフタレートであること、および
前記モノフィラメントブリッスルの少なくとも片端がテーパー形状であることが、いずれも好ましい条件であり、これらの条件を適用した場合には、さらに好適な性能を発揮する。
【0012】
そして、本発明の歯ブラシは、上記の歯ブラシ用毛材を基台に植毛してなることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の歯ブラシ用毛材および歯ブラシについてさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明の歯ブラシ用毛材を構成する一成分であるポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、およびポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステルなどが挙げられるが、なかでもポリブチレンテレフタレートが好ましく使用される。
【0015】
本発明の歯ブラシ用毛材を構成する他の一成分であるポリエステルエラストマーの代表例としては、テレフタル酸に代表されるジカルボン酸成分と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどに代表されるジオール成分とからなるポリエステルハードセグメントと、分子量600〜3000の脂肪族ポリエーテルソフトセグメントから形成されるポリエステルエーテルブロック共重合体などが挙げられ、例えば東レ・デュポン社製ハイトレルなどを好ましく使用することができる。
【0016】
本発明の歯ブラシ用毛材は、ポリエステル系樹脂とポリエステルエラストマーとを、後述の配合比率で混合した上、通常の方法で溶融紡糸し、得られたモノフィラメントを集束させ、この糸束を所望長さにカットしてモノフィラメントブリッスルとすることにより作成されるが、モノフィラメントの溶融紡糸・延伸工程においては、得られるモノフィラメントの屈曲回復率が65%以上、好ましくは75%以上となるように、ポリエステル系樹脂とポリエステルエラストマーとの配合比率や紡糸・延伸条件などを設定する必要がある。例えば、延伸倍率をかなり低く設定した場合や、延伸後の熱セット温度を低くした場合には、得られるモノフィラメントの屈曲回復率を65%以上にすることができず、このモノフィラメントを歯ブラシ用毛材に適用したとしても、耐久性が不充分なばかりか、歯の清掃性や使用感の改善効果を十分に発揮させることができない。
【0017】
また、本発明の歯ブラシ用毛材には、本来の目的を阻害しない範囲であれば、耐熱剤、耐候剤、可塑剤および着色剤などの慣用の添加剤を含有させることができる。
【0018】
ここで、ポリエステル系樹脂とポリエステルエラストマーとの混合比率は、ポリエステル系樹脂95〜55%に対しポリエステルエラストマー5〜45重量%、特にポリエステル系樹脂90〜70%に対しポリエステルエラストマー10〜30重量%の割合とすることが必要であり、さらにこれによって得られる毛材の屈曲回復率が65%以上となるように、各々の樹脂のタイプや混合比率を調整することが望ましい。ポリエステルエラストマーの比率が上記の範囲未満の場合は、毛腰の改良効果が得られず、また上記の範囲を越えると、毛材が柔軟になり過ぎ、歯ブラシにおける歯の表面清掃性や歯間挿入性が不足するばかりか、使用者の清掃感が低下することになるため好ましくない。また、耐久性が低減し長期の使用によって著しい毛開きを生ずるという問題も生ずる。
【0019】
本発明の歯ブラシ用毛材の断面形状は、丸断面に限ったものではなく、その用途によっては、楕円形、多角形、多葉形および中空などから適宜選定することにより、清掃性の向上や、保水性の向上などの付加的な効果を与えることが可能である。
【0020】
また、本発明の歯ブラシ用毛材の単糸は、一般には直線状であるが、これをクリンプ加工することで波状としたり、表面凹凸を与えたりすることによって、保水性の向上や、清掃性の向上をはかることも可能である。
【0021】
そして、本発明の歯ブラシ用毛材は、素材がポリエステル系樹脂であることから、公知の方法を用いて毛材の先端をアルカリで溶解させることによって、尖鋭なテーパー形状を形成することが可能である。毛材先端を尖鋭なテーパー形状にすることにより、歯ブラシ用途における歯間挿入性が飛躍的に向上するという効果が得られる。
【0022】
上記したように、本発明の歯ブラシ用毛材は、吸水による弾性変化や、耐久性がポリアミドより優れるという特性を維持しつつ、しかも適度な柔軟性を備えることから、歯の清掃性および使用感が改善されたものであり、これを基台に植毛してなる歯ブラシは、従来にない優れた特性を発揮することができる。
【0023】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
十分に予備乾燥したポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製 東レPBT1200S)を75重量%、ポリエステルエラストマー(東レ・デュポン社製ハイトレル6347)を25重量%の割合で混合し、均一に分散するまで撹拌した後、押出し機に投入し、270℃に加熱溶融させた樹脂を、口径0.8mmの円形状のノズルから押し出し、直ちに40℃の温水中で冷却、続いて60℃の温水、さらには130℃乾熱下で合計4.5倍に延伸しした。次いで、この延伸糸を180℃の乾熱下で0.95倍に熱セットすることによって、直径0.18mmのモノフィラメントを得た。
【0024】
上記のモノフィラメントを集束し、周囲に紙テープをまいて直径50mmの毛束とし、さらに30mmの長さに切断して歯ブラシ用毛材とした。
[実施例2]
実施例1で作成したモノフィラメント毛材束を水酸化ナトリウム溶液に浸漬して、束の両端を減量加工し、水洗、乾燥することにより、両端が尖鋭なテーパー形状である歯ブラシ用毛材を得た。
[比較例1]
ポリアミド6・10(東レ(株)製 M2001)を用いた以外は、実施例1と同一の方法によりブラシ用毛材を得た。
[比較例2]
実施例1と同じ原料を用い、混合比を、ポリエステルエラストマー50重量%、ポリブチレンテレフタレート50重量%とした以外は、実施例1と同一の方法によりブラシ用毛材を得た。
[比較例3]
原料をポリブチレンテレフタレートのみとした以外は、実施例1と同一の方法によりブラシ用毛材を得た。
[比較例4]
原料を実施例1と同様にポリブチレンテレフタレートを75重量%、ポリエステルエラストマーを25重量%の割合で混合したものとし、延伸倍率を3.0とした以外は、実施例1と同一条件として歯ブラシ用毛材を得た。
【0025】
上記で得られた各毛材について、次の方法により性能を評価した。
[屈曲回復率]
毛材を23±2℃に調整した水中に24時間浸漬した後、JIS S 3016に記載の屈曲回復率試験方法により屈曲回復率を測定した。
[耐久性評価]
毛材を34穴の歯ブラシハンドルに毛丈11mmになるように植毛して歯ブラシを作成し、この歯ブラシに対して摺動面裏側から垂直に500gの荷重をかけ、37℃の温水を滴下させた状態で、ステンレス製の波板に対して歯ブラシの長手方向に20000回摺動運動をさせ、ブラシ部の毛開き率(K)を測定した。毛開き率の算出方法は、初期状態におけるブラシ部摺動面の横幅をAmm、摺動後の横幅をBmmとしたとき、K=(B−A)/A×100(%)とした。
[清掃性評価]
耐久性評価と同じ仕様の歯ブラシを作成し、歯ブラシ摺動面裏側から垂直に150gの荷重をかけて、仮想汚れを塗布したステンレス製凹凸板に対して、振幅10mm、スピード180rpmで5000回摺動させ、仮想汚れの除去率を測定した。汚れ除去率は、凸部表面と、2つの凸部の隙間にあたる凹部の2種について算出した。
[使用感調査]
耐久性評価と同じ仕様の歯ブラシを作成し、成人20名に1種類あたり5日間使用してもらい、使用感、特に歯茎への刺激について回答を得た。評価基準は次の通りである。
【0026】
◎:「非常に良い」
○:「良い」
△:「普通」
×:「悪い」
以上の評価結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1の結果から明らかなように、本発明の歯ブラシ用毛材、およびこれを植毛した歯ブラシ(実施例1)は、ポリアミド6・10の場合(比較例1)に比べて、清掃性や使用感は同等であり、しかも耐久性が向上していることがわかる。
【0029】
さらに、ポリブチレンテレフタレートのみの場合(比較例3)と比較すると、その毛腰の硬さによって損なわれていた使用感が大きく改善されている。逆に、ポリエステルエラストマーを50重量%とした場合(比較例2)は、毛腰が過度に柔軟となるため、清掃性、特に凹部への挿入性が不十分になるとともに、十分な使用感が与えられないものとなり、同時に耐久性もポリアミド6・10より劣るものとなる。
【0030】
比較例4は、実施例1と同じ混合比としながら延伸倍率を下げることによって屈曲回復率を55%としたものであるが、この場合には耐久性がポリアミド6・10の場合(比較例1)より大きく低下し、使用感も劣るものとなった。
【0031】
また、実施例2は、実施例1の毛材の端を尖鋭なテーパー形状としたものであるが、これによって、清掃性、特に凹部への挿入性がさらに向上するとともに、毛先の柔軟性が出るため使用感も非常に良いものとなった。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の歯ブラシ用毛材は、吸水による弾性変化や、耐久性がポリアミドより優れるという特性を維持しつつ、しかも適度な柔軟性を備えることから、歯の清掃性および使用感が改善されたものであり、これを基台に植毛してなる歯ブラシは、従来にない優れた特性を発揮する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂製の歯ブラシ用毛材および歯ブラシに関し、さらに詳しくは、従来のポリエステル系樹脂製の歯ブラシ用毛材に比べて適度な柔軟性を有することから歯の清掃性および使用感が改善され、しかも耐久性が優れた歯ブラシ用毛材、およびこの毛材を基台に植毛してなる歯ブラシに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂モノフィラメントからなるカットブリッスルは、トイレタリーブラシや筆などのいわゆる獣毛調毛材の代替用毛材として、従来から広く用いられている。
【0003】
具体的には、ポリアミド、特にポリアミド6・10やポリアミド6・12を材質とする歯ブラシ用毛材(例えば、特許文献1参照)が、柔軟性が適度であることから、一般的に用いられているが、このポリアミド製歯ブラシ用毛材は、吸湿による弾性変化が大きく毛腰が変化しやすいばかりか、耐久性がやや低く、繰り返しの使用によって比較的早期に毛開きを生じて使用できなくなるという欠点があった。
【0004】
上記の欠点を補う歯ブラシ用毛材としては、ポリエステル系樹脂、特にポリブチレンテレフタレートを材質とする歯ブラシ用毛材(例えば、特許文献2参照)が提案されており、この歯ブラシ用毛材によれば、吸湿率が小さいため吸水による弾性率変化がほとんどなく、また耐久性も向上するばかりか、先端をアルカリ溶解させてテーパー形状に先鋭化することにより、歯ブラシにおける歯間挿入性を向上させたり、筆具における獣毛に近い筆先のまとまりを与えたりすることが可能であるという利点が得られる。しかし、ポリエステル系樹脂製歯ブラシ用毛材は、ポリアミド製の歯ブラシ用毛材に比べてやや毛腰が強くなるため、歯ブラシとしての使用感が劣るという問題点を包含していた。
【0005】
また、いわゆる工業用ブラシの分野においては、ポリブチレンテレフタレートとポリエステルエラストマーとの混合物を素材とするブラシ用毛材(例えば、特許文献2参照)が知られているが、この毛材をそのまま歯ブラシに適用した場合には、耐久性が不充分なばかりか、歯の清掃性や使用感を満たすにはいたらなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−201538号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開平6−141923号公報(第5頁)
【特許文献3】
特開昭61−90877号公報(第2頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術におけるの問題点の解決を目的として検討した結果、達成されたものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ポリエステル系樹脂の吸水時の弾性変化が小さい点や、耐久性が優れるという特性を維持しつつ、しかも適度な柔軟性を備え歯の清掃性および使用感が改善された歯ブラシ用毛材、およびこの用毛材を用いた歯ブラシを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を達成するために鋭意検討した結果、ポリエステル系樹脂およびポリエステルエラストマーを特定の混合比で混合した組成物から溶融紡糸してなり、しかも特定の屈曲回復率を有するモノフィラメントブリッスルからなる毛材により、上記目的が効果的に達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリエステル系樹脂95〜55重量%およびポリエステルエラストマー5〜45重量%を混合し溶融紡糸したモノフィラメントブリッスルからなり、JIS S 3016に規定される屈曲回復率試験に準じ、評価環境を23±2℃に調整した水中として測定した屈曲回復率が65%以上であることを特徴とする歯ブラシ用毛材を提供するものである。
【0011】
なお、本発明のブラシ用毛材においては、
前記ポリエステル系樹脂がポリブチレンテレフタレートであること、および
前記モノフィラメントブリッスルの少なくとも片端がテーパー形状であることが、いずれも好ましい条件であり、これらの条件を適用した場合には、さらに好適な性能を発揮する。
【0012】
そして、本発明の歯ブラシは、上記の歯ブラシ用毛材を基台に植毛してなることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の歯ブラシ用毛材および歯ブラシについてさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明の歯ブラシ用毛材を構成する一成分であるポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、およびポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステルなどが挙げられるが、なかでもポリブチレンテレフタレートが好ましく使用される。
【0015】
本発明の歯ブラシ用毛材を構成する他の一成分であるポリエステルエラストマーの代表例としては、テレフタル酸に代表されるジカルボン酸成分と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどに代表されるジオール成分とからなるポリエステルハードセグメントと、分子量600〜3000の脂肪族ポリエーテルソフトセグメントから形成されるポリエステルエーテルブロック共重合体などが挙げられ、例えば東レ・デュポン社製ハイトレルなどを好ましく使用することができる。
【0016】
本発明の歯ブラシ用毛材は、ポリエステル系樹脂とポリエステルエラストマーとを、後述の配合比率で混合した上、通常の方法で溶融紡糸し、得られたモノフィラメントを集束させ、この糸束を所望長さにカットしてモノフィラメントブリッスルとすることにより作成されるが、モノフィラメントの溶融紡糸・延伸工程においては、得られるモノフィラメントの屈曲回復率が65%以上、好ましくは75%以上となるように、ポリエステル系樹脂とポリエステルエラストマーとの配合比率や紡糸・延伸条件などを設定する必要がある。例えば、延伸倍率をかなり低く設定した場合や、延伸後の熱セット温度を低くした場合には、得られるモノフィラメントの屈曲回復率を65%以上にすることができず、このモノフィラメントを歯ブラシ用毛材に適用したとしても、耐久性が不充分なばかりか、歯の清掃性や使用感の改善効果を十分に発揮させることができない。
【0017】
また、本発明の歯ブラシ用毛材には、本来の目的を阻害しない範囲であれば、耐熱剤、耐候剤、可塑剤および着色剤などの慣用の添加剤を含有させることができる。
【0018】
ここで、ポリエステル系樹脂とポリエステルエラストマーとの混合比率は、ポリエステル系樹脂95〜55%に対しポリエステルエラストマー5〜45重量%、特にポリエステル系樹脂90〜70%に対しポリエステルエラストマー10〜30重量%の割合とすることが必要であり、さらにこれによって得られる毛材の屈曲回復率が65%以上となるように、各々の樹脂のタイプや混合比率を調整することが望ましい。ポリエステルエラストマーの比率が上記の範囲未満の場合は、毛腰の改良効果が得られず、また上記の範囲を越えると、毛材が柔軟になり過ぎ、歯ブラシにおける歯の表面清掃性や歯間挿入性が不足するばかりか、使用者の清掃感が低下することになるため好ましくない。また、耐久性が低減し長期の使用によって著しい毛開きを生ずるという問題も生ずる。
【0019】
本発明の歯ブラシ用毛材の断面形状は、丸断面に限ったものではなく、その用途によっては、楕円形、多角形、多葉形および中空などから適宜選定することにより、清掃性の向上や、保水性の向上などの付加的な効果を与えることが可能である。
【0020】
また、本発明の歯ブラシ用毛材の単糸は、一般には直線状であるが、これをクリンプ加工することで波状としたり、表面凹凸を与えたりすることによって、保水性の向上や、清掃性の向上をはかることも可能である。
【0021】
そして、本発明の歯ブラシ用毛材は、素材がポリエステル系樹脂であることから、公知の方法を用いて毛材の先端をアルカリで溶解させることによって、尖鋭なテーパー形状を形成することが可能である。毛材先端を尖鋭なテーパー形状にすることにより、歯ブラシ用途における歯間挿入性が飛躍的に向上するという効果が得られる。
【0022】
上記したように、本発明の歯ブラシ用毛材は、吸水による弾性変化や、耐久性がポリアミドより優れるという特性を維持しつつ、しかも適度な柔軟性を備えることから、歯の清掃性および使用感が改善されたものであり、これを基台に植毛してなる歯ブラシは、従来にない優れた特性を発揮することができる。
【0023】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
十分に予備乾燥したポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製 東レPBT1200S)を75重量%、ポリエステルエラストマー(東レ・デュポン社製ハイトレル6347)を25重量%の割合で混合し、均一に分散するまで撹拌した後、押出し機に投入し、270℃に加熱溶融させた樹脂を、口径0.8mmの円形状のノズルから押し出し、直ちに40℃の温水中で冷却、続いて60℃の温水、さらには130℃乾熱下で合計4.5倍に延伸しした。次いで、この延伸糸を180℃の乾熱下で0.95倍に熱セットすることによって、直径0.18mmのモノフィラメントを得た。
【0024】
上記のモノフィラメントを集束し、周囲に紙テープをまいて直径50mmの毛束とし、さらに30mmの長さに切断して歯ブラシ用毛材とした。
[実施例2]
実施例1で作成したモノフィラメント毛材束を水酸化ナトリウム溶液に浸漬して、束の両端を減量加工し、水洗、乾燥することにより、両端が尖鋭なテーパー形状である歯ブラシ用毛材を得た。
[比較例1]
ポリアミド6・10(東レ(株)製 M2001)を用いた以外は、実施例1と同一の方法によりブラシ用毛材を得た。
[比較例2]
実施例1と同じ原料を用い、混合比を、ポリエステルエラストマー50重量%、ポリブチレンテレフタレート50重量%とした以外は、実施例1と同一の方法によりブラシ用毛材を得た。
[比較例3]
原料をポリブチレンテレフタレートのみとした以外は、実施例1と同一の方法によりブラシ用毛材を得た。
[比較例4]
原料を実施例1と同様にポリブチレンテレフタレートを75重量%、ポリエステルエラストマーを25重量%の割合で混合したものとし、延伸倍率を3.0とした以外は、実施例1と同一条件として歯ブラシ用毛材を得た。
【0025】
上記で得られた各毛材について、次の方法により性能を評価した。
[屈曲回復率]
毛材を23±2℃に調整した水中に24時間浸漬した後、JIS S 3016に記載の屈曲回復率試験方法により屈曲回復率を測定した。
[耐久性評価]
毛材を34穴の歯ブラシハンドルに毛丈11mmになるように植毛して歯ブラシを作成し、この歯ブラシに対して摺動面裏側から垂直に500gの荷重をかけ、37℃の温水を滴下させた状態で、ステンレス製の波板に対して歯ブラシの長手方向に20000回摺動運動をさせ、ブラシ部の毛開き率(K)を測定した。毛開き率の算出方法は、初期状態におけるブラシ部摺動面の横幅をAmm、摺動後の横幅をBmmとしたとき、K=(B−A)/A×100(%)とした。
[清掃性評価]
耐久性評価と同じ仕様の歯ブラシを作成し、歯ブラシ摺動面裏側から垂直に150gの荷重をかけて、仮想汚れを塗布したステンレス製凹凸板に対して、振幅10mm、スピード180rpmで5000回摺動させ、仮想汚れの除去率を測定した。汚れ除去率は、凸部表面と、2つの凸部の隙間にあたる凹部の2種について算出した。
[使用感調査]
耐久性評価と同じ仕様の歯ブラシを作成し、成人20名に1種類あたり5日間使用してもらい、使用感、特に歯茎への刺激について回答を得た。評価基準は次の通りである。
【0026】
◎:「非常に良い」
○:「良い」
△:「普通」
×:「悪い」
以上の評価結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1の結果から明らかなように、本発明の歯ブラシ用毛材、およびこれを植毛した歯ブラシ(実施例1)は、ポリアミド6・10の場合(比較例1)に比べて、清掃性や使用感は同等であり、しかも耐久性が向上していることがわかる。
【0029】
さらに、ポリブチレンテレフタレートのみの場合(比較例3)と比較すると、その毛腰の硬さによって損なわれていた使用感が大きく改善されている。逆に、ポリエステルエラストマーを50重量%とした場合(比較例2)は、毛腰が過度に柔軟となるため、清掃性、特に凹部への挿入性が不十分になるとともに、十分な使用感が与えられないものとなり、同時に耐久性もポリアミド6・10より劣るものとなる。
【0030】
比較例4は、実施例1と同じ混合比としながら延伸倍率を下げることによって屈曲回復率を55%としたものであるが、この場合には耐久性がポリアミド6・10の場合(比較例1)より大きく低下し、使用感も劣るものとなった。
【0031】
また、実施例2は、実施例1の毛材の端を尖鋭なテーパー形状としたものであるが、これによって、清掃性、特に凹部への挿入性がさらに向上するとともに、毛先の柔軟性が出るため使用感も非常に良いものとなった。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の歯ブラシ用毛材は、吸水による弾性変化や、耐久性がポリアミドより優れるという特性を維持しつつ、しかも適度な柔軟性を備えることから、歯の清掃性および使用感が改善されたものであり、これを基台に植毛してなる歯ブラシは、従来にない優れた特性を発揮する。
Claims (4)
- ポリエステル系樹脂95〜55重量%およびポリエステルエラストマー5〜45重量%を混合し溶融紡糸したモノフィラメントブリッスルからなり、JIS S 3016に規定される屈曲回復率試験に準じ、評価環境を23±2℃に調整した水中として測定した屈曲回復率が65%以上であることを特徴とする歯ブラシ用毛材。
- 前記ポリエステル系樹脂がポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ用毛材。
- 前記モノフィラメントブリッスルの少なくとも片端がテーパー形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の歯ブラシ用毛材。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯ブラシ用毛材を基台に植毛してなることを特徴とする歯ブラシ。
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-
2003
- 2003-03-31 JP JP2003093665A patent/JP2004298328A/ja active Pending
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