JP2004298083A - 試料中のカルシウムの測定試薬及び測定方法 - Google Patents

試料中のカルシウムの測定試薬及び測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】カルシウムイオンによるホスホリパーゼDの活性化を利用したカルシウム測定方法を提供する。
【解決手段】分子量約57キロダルトンのホスホリパーゼDアイソザイムの比率が50%以上のホスホリパーゼD、及びホスホリパーゼDの基質として下記の一般式(I)(式中、X1は発色性基であり、X2は水素原子、発色性基あるいは、置換されていないか若しくは置換されている、アルキル基又はフェニル基)で表される化合物を含有する、試料中のカルシウム測定試薬。
Figure 2004298083

【選択図】なし

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、試料中のカルシウムを測定するためのカルシウム測定試薬及び測定方法に関するものである。
本発明は、特に、化学、生命科学、分析化学及び臨床検査等の分野において有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
カルシウムは、人体内に約1,200g存在しており、その約99%が骨と歯に存在し、残りの約1%が血液などの体液や筋肉などに存在している。この1%のカルシウムが、出血を止めたり、神経の働きや筋肉運動など、生命の維持や活動に重要な役割を果たしている。血液中のカルシウム濃度は、カルシウムの吸収異常、骨疾患、内分泌疾患、高血圧、又は動脈硬化症等により変動し、その測定は臨床上極めて重要とされている。
【0003】
現在、カルシウムの測定方法として使用されている方法としては、原子吸光法、電極法、ο−クレゾールフタレイン・コンプレクソン法(以下、OCPC法と略すこともある)がある。これらの方法は、高価な機器を必要としたり、試料の前処理を必要とする場合がある。特にOCPC法ではマグネシウムイオンの影響を受けたり、温度や測定時間によって吸光度が変化するなどの欠点がある。
【0004】
このため、最近では、カルシウムイオンによる酵素の活性化又は阻害を利用した測定方法として、カルシウムイオンによるピルビン酸キナーゼ活性の阻害を利用した測定(例えば、特許文献1参照。)、カルシウムイオンによるα−アミラーゼの活性化を利用した測定(例えば、特許文献2参照。)又はカルシウムイオンによるホスホリパーゼDの活性化を利用した測定(例えば、特許文献3及び4参照。)等が提案されている。
また、ホスホリパーゼDのカルシウムイオンによる活性化を利用したものは特異性に優れ、測定感度も高いものであるため、広く利用されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平2−142498号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平2−276597号公報
【0007】
【特許文献3】
特開昭62−195297号公報
【0008】
【特許文献4】
特開平4−187098号公報
【0009】
ホスホリパーゼD(EC3.1.4.4)は、グリセロリン脂質のホスファチジル基と塩基との間のエステル結合を加水分解してホスファチジン酸および塩基を遊離させる酵素である。
また、このホスホリパーゼDとしては、植物組織由来、動物組織由来、又はストレプトマイセス属等の微生物由来のものなどがあり、各種アイソザイムの報告も行われている。
例えば、ストレプトマイセス族微生物由来のホスホリパーゼDには、分子量が約57キロダルトンのホスホリパーゼDアイソザイム(以下、PLD57ということもある。)、分子量が約42キロダルトンのホスホリパーゼDアイソザイム(以下、PLD42ということもある。)、分子量が約20キロダルトンのホスホリパーゼDアイソザイム(以下、PLD20ということもある。)、及びPLD42とPLD20の複合体からなるホスホリパーゼDアイソザイム(以下、PLD42/20ということもある。)が存在することが知られている。また、PLD20には、ホスホリパーゼD活性がないことも知られている。
更に、分子量が約42キロダルトンの蛋白質と約20キロダルトンの蛋白質はPLD57の構成成分であり、PLD42/20はホスホリパーゼDの精製過程でPLD57から分離されてくる可能性のあることが示唆されている。(例えば、非特許文献1参照。)
【0010】
【非特許文献1】
Biochimica et Biophysica Acta、1430巻、234〜244頁、1999年
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者が、市販のホスホリパーゼD及びホスホリパーゼDの基質として下記の一般式(I)(式中、X1は発色性基であり、X2は水素原子、発色性基あるいは、置換されていないか若しくは置換されている、アルキル基又はフェニル基)で表される化合物からなるカルシウム測定試薬を調製し、この測定試薬を用いて試料中のカルシウムの測定について検討を行ったところ、ホスホリパーゼDの製品ロットによってカルシウム測定を行う際の検量線の直線性にバラツキがあることが分かった。
【0012】
【化3】
Figure 2004298083
【0013】
そこで、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を用いてホスホリパーゼDの各製品ロットの分析を行ったところ、これらの製品ロットによってPLD57、PLD42、及びPLD20の比率が異なる結果が得られた。また、PLD57及びPLD20に比べてPLD42の比率が多い製品ロットの方が、検量線の直線性が悪く曲線となってしまうことが分かった。
【0014】
したがって、本発明の課題は、カルシウムイオンによるホスホリパーゼDの活性化を利用した測定において、直線性が良好な検量線が得られ、これにより、試料中のカルシウム濃度を正確に測定することのできる、試料中のカルシウム測定試薬及び試料中のカルシウム測定方法を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題点の解決を目指して鋭意検討を行った結果、カルシウムイオンによるホスホリパーゼDの活性化を利用した測定において、分子量約57キロダルトンのホスホリパーゼDの比率が50%以上のホスホリパーゼD、及びホスホリパーゼDの基質としての下記の一般式(I)(式中、X1は発色性基であり、X2は水素原子、発色性基あるいは、置換されていないか若しくは置換されている、アルキル基又はフェニル基)で表される化合物を使用することにより、検量線の直線性が大幅に改善され、これにより試料中のカルシウムを正確に測定できることを見出した。
更に、測定系に金属イオン、又はキレート剤を共存させることによって試料中のカルシウム濃度の測定範囲を拡大できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
【化4】
Figure 2004298083
【0017】
すなわち、本発明は、以下の発明を提供する。
(1) 分子量約57キロダルトンのホスホリパーゼDアイソザイムの比率が50%以上のホスホリパーゼD、及びホスホリパーゼDの基質として下記の一般式(I)(式中、X1は発色性基であり、X2は水素原子、発色性基あるいは、置換されていないか若しくは置換されている、アルキル基又はフェニル基)で表される化合物を含有する、試料中のカルシウム測定試薬。
【0018】
【化5】
Figure 2004298083
【0019】
(2) ホスホリパーゼDがストレプトマイセス属微生物由来であることを特徴とする、前記(1)記載の試料中のカルシウム測定試薬。
【0020】
(3) ホスホリパーゼDのカルシウムに対する見掛けのKm値を0.03〜10mMに調節する物質を含むことを特徴とする、前記(1)又は前記(2)記載の試料中のカルシウム測定試薬。
【0021】
(4) コバルトイオン、ニッケルイオン、又は亜鉛イオンのうち少なくとも一つから選択されるものを含むことを特徴とする、前記(1)〜前記(3)のいずれかに記載の試料中のカルシウム測定試薬。
【0022】
(5) 試料中のカルシウムを測定する方法であって、
a) 該試料と、分子量約57キロダルトンのホスホリパーゼDアイソザイムの比率が50%以上のホスホリパーゼD、及びホスホリパーゼDの基質として下記の一般式(I)(式中、X1は発色性基であり、X2は水素原子、発色性基あるいは、置換されていないか若しくは置換されている、アルキル基又はフェニル基)で表される化合物を混合し反応させ、前記の化合物から発色性基を遊離させる工程、及び
【化6】
Figure 2004298083
b) この遊離した発色性基を比色測定する工程、よりなる試料中のカルシウム測定方法。
【0023】
(6) ホスホリパーゼDがストレプトマイセス属微生物由来であることを特徴とする、前記(5)記載の試料中のカルシウム測定方法。
【0024】
(7) 前記工程a)において、ホスホリパーゼDのカルシウムに対する見掛けのKm値を0.03〜10mMに調節する物質を共存させることを特徴とする、前記(5)又は前記(6)記載の試料中のカルシウム測定方法。
【0025】
(8) 前記工程a)において、コバルトイオン、ニッケルイオン、又は亜鉛イオンのうち少なくとも一つから選択されるものを共存させることを特徴とする、前記(5)〜前記(7)のいずれかに記載の試料中のカルシウム測定方法。
【0026】
【発明の実施の形態】
(1) 分子量約57キロダルトンのホスホリパーゼDアイソザイムの比率が50%以上のホスホリパーゼD
本発明においては、分子量約57キロダルトンのホスホリパーゼDアイソザイム(PLD57)の比率が50%以上のホスホリパーゼDを使用する。
ここで、ホスホリパーゼD(EC3.1.4.4)とは、グリセロリン脂質のホスファチジル基と塩基との間のエステル結合を加水分解してホスファチジン酸及び塩基を遊離させる酵素である。
【0027】
本発明におけるホスホリパーゼDとしては、ストレプトマイセス属微生物から調製されたものを使用することが好ましい。なお、このストレプトマイセス属微生物から調製されたホスホリパーゼDとしては、ストレプトマイセス属微生物の遺伝子を大腸菌等の微生物等に組み込む遺伝子組み換え技術により調製したもの、又は遺伝子の改変等により性質を改良したストレプトマイセス属微生物から調製したホスホリパーゼD等も含まれる。
【0028】
本発明で使用するホスホリパーゼDは、PLD57の比率が50%以上のものである。例えば、本発明で使用する、ホスホリパーゼDにおけるPLD57の存在比率が50%以上であればよい。この存在比率としては、例えば、モル濃度比、蛋白濃度比等を挙げることができる。また、本発明においては、PLD57の比率が75%以上のものを使用することが好ましい。
なお、本発明で使用するホスホリパーゼDにおけるPLD57の活性比率が50%以上であってもよい。この場合、ホスホリパーゼDにおいて、PLD57、PLD42、PLD20又はPLD42/20が混在しているときに、PLD57の活性を増加させたり及び/又はPLD42、PLD42/20の活性を低下させるような条件を設定することにより、PLD57の活性比率を50%以上となるようにしてもよい。更に、本発明においては、PLD57の活性比率が75%以上のホスホリパーゼDを使用することが好ましい。
【0029】
このPLD57の比率が50%以上であるホスホリパーゼDを、試料及び前記の一般式(I)で表される化合物と混合し反応させる際の活性値は、0.05〜10U/mLの範囲にあることが好ましく、0.1〜5U/mLの範囲が特に好ましい。
また、本発明の試料中のカルシウム測定試薬に含有させるPLD57の比率が50%以上であるホスホリパーゼDの活性値は、試料並びに前記の一般式(I)で表される化合物と混合し反応させる際の活性値が0.05〜10U/mLとなるように、好ましくは0.1〜5U/mLとなるように設定すればよい。
例えば、ホスホリパーゼDを、0.05〜10U/mLとなるように、好ましくは0.1〜5U/mLとなるように含有させればよい。
【0030】
(2) ホスホリパーゼDの基質
本発明においては、下記の一般式(I)(式中、X1は発色性基であり、X2は水素原子、発色性基あるいは、置換されていないか若しくは置換されている、アルキル基又はフェニル基)で表される化合物を、ホスホリパーゼDの基質として使用する。
【0031】
【化7】
Figure 2004298083
【0032】
前記の一般式(I)で表される化合物において、発色性基としては、リン酸基にエステル結合した状態と、加水分解によりリン酸基より遊離した状態での吸光度又は透過率等のシグナルに差がある発色性基であればどのようなものでもよい。
【0033】
なお、この発色性基としては、リン酸基にエステル結合した状態と、リン酸基から遊離した状態での吸光度又は透過率等のシグナルの差が大きいものが好ましい。
【0034】
そして、発色性基X1と発色性基X2とは、それぞれ同じものであってもよく、あるいは異なるものであってもよい。
この発色性基X1と発色性基X2が異なるものである場合には、各々の測定波長域、すなわち極大吸収波長が同一であるか又は近傍にあるものであることが好ましい。
【0035】
前記の一般式(I)で表される化合物における発色性基としては、例えば、4−ニトロフェニル基、2−クロロ−4−ニトロフェニル基、2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニル基、2,6−ジクロロ−アセチルフェニル基、又はアセチルフェニル基等を挙げることができる。
【0036】
また、前記の一般式(I)で表される化合物において、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、又はイソプロピル基等を挙げることができる。
更に、置換アルキル基及び置換フェニル基の置換基としては、同一又は異なる、置換数1〜3の、例えば、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、アミノ基、又はハロゲン基等を挙げることができる。
【0037】
また、前記の一般式(I)で表される化合物のうち、X2が発色性基でない場合の化合物としては、例えば、4−ニトロフェニルリン酸〔以下、4−NPPということもある〕、4−ニトロフェニルフェニルリン酸〔以下、4−NPPPということもある〕、2−クロロ−4−ニトロフェニルリン酸〔以下、4−CNPPということもある〕、2−クロロ−4−ニトロフェニルフェニルリン酸〔以下、4−CNPPPということもある〕、2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニルリン酸〔以下、2,6−DCNPPということもある〕、2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニルフェニルリン酸〔以下、2,6−DCNPPPということもある〕、2,6−ジクロロ−アセチルフェニルリン酸〔以下、2,6−DCAPPということもある〕、2,6−ジクロロ−アセチルフェニルフェニルリン酸〔以下、2,6−DCAPPPということもある〕、アセチルフェニルリン酸〔以下、APPということもある〕、若しくはアセチルフェニルフェニルリン酸〔以下、APPPということもある〕、又はこれらの塩等を挙げることができる。
【0038】
更に、前記の一般式(I)で表される化合物のうち、X2が発色性基である場合の化合物としては、例えば、ビス(4−ニトロフェニル)リン酸〔以下、Bis−4−NPPということもある〕、ビス(2−クロロ−4−ニトロフェニル)リン酸〔以下、Bis−4−CNPPということもある〕、ビス(2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニル)リン酸〔以下、Bis−2,6−DCNPPということもある〕、ビス(2,6−ジクロロ−アセチルフェニル)リン酸〔以下、Bis−2,6−DCAPPということもある〕、若しくはビスアセチルフェニルリン酸〔Bis−APP〕、又はこれらの塩等を挙げることができる。
【0039】
本発明における前記の一般式(I)で表される化合物としては、ビス(4−ニトロフェニル)リン酸、ビス(2−クロロ−4−ニトロフェニル)リン酸、ビス(2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニル)リン酸、ビス(2,6−ジクロロ−アセチルフェニル)リン酸、若しくはビスアセチルフェニルリン酸、又はこれらの塩等のX2が発色性基であるものが好ましい。
それは、カルシウムにより活性化されるホスホリパーゼDの触媒作用によりリン酸基から遊離する発色性基が、X2が発色性基でない場合にはX1だけであるのに対し、X2も発色性基である場合にはX1とX2の両方であって得られるシグナルが2倍となり、これにより高感度に測定を行うことが可能となるからである。
【0040】
なお、前記の一般式(I)で表される化合物を、試料及びPLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDと混合し反応させる際の濃度は、0.2〜200mMの範囲にあることが好ましく、1〜100mMの範囲にあることが特に好ましい。
また、本発明の試料中のカルシウム測定試薬に含有させる前記の一般式(I)で表される化合物の濃度は、試料及びPLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDと混合し反応させる際の濃度が0.2〜200mMとなるように、好ましくは1〜100mMとなるように設定すればよい。
例えば、前記の一般式(I)で表される化合物を、0.2〜200mMとなるように、好ましくは1〜100mMとなるように含有させればよい。
【0041】
なお、前記の一般式(I)で表される化合物は、市販品として容易に入手することができるが、当業者に周知の合成方法を適宜組み合わせることにより、容易に製造することもできる。
【0042】
(3) ホスホリパーゼDのカルシウムに対する見掛けのKm値を0.03〜10mMに調節する物質
本発明の試料中のカルシウム測定試薬においては、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDのカルシウムに対する見掛けのKm値を0.03〜10mMに調節する物質を含むことが好ましい。
そして、見掛けのKm値を0.1〜3mMに調節する物質を含むことがより好ましい。
【0043】
また、本発明の試料中のカルシウム測定方法では、試料と、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物を混合し反応させ、前記の化合物から発色性基を遊離させる工程において、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDのカルシウムに対する見掛けのKm値を0.03〜10mMに調節する物質を共存させることが好ましい。
そして、見掛けのKm値を0.1〜3mMに調節する物質を共存させることがより好ましい。
【0044】
このKm値を0.03〜10mM(より好ましくは0.1〜3mM)に調節する物質を測定試薬に含ませ、又は共存させて測定を行うことにより、試料中のカルシウム測定の直線性を高濃度域まで伸ばすことが可能となる。
【0045】
このKm値を0.03〜10mM(より好ましくは0.1〜3mM)に調節する物質としては、例えば、金属イオン等を挙げることができる。
ここで、金属イオンとしては、例えば、コバルトイオン、ニッケルイオン、又は亜鉛イオン等を挙げることができる。
これらの金属イオンは1種類だけを用いてもよいし、又は複数種類のものを同時に用いてもよい。
【0046】
なお、この金属イオンを、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と共存させる際の濃度は、0.005〜50mMの範囲にあることが好ましい。
例えば、コバルトイオンにおいては、0.1〜50mMの範囲にあることが好ましく、ニッケルイオンにおいては、0.05〜25mMの範囲にあることが好ましく、そして、亜鉛イオンにおいては、0.005〜2.5mMの範囲にあることが好ましい。
【0047】
また、本発明の試料中のカルシウム測定試薬に含有させる前記の金属イオンの濃度は、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と混合し反応させる際の濃度が0.005〜50mMとなるように設定すればよい。
例えば、前記の金属イオンを、0.005〜50mMとなるようにカルシウム測定試薬に含有させればよい。
例としては、コバルトイオンにおいては、0.1〜50mMとなるようにすることが好ましく、ニッケルイオンにおいては、0.05〜25mMとなるようにすることが好ましく、そして、亜鉛イオンにおいては、0.005〜2.5mMとなるようにすることが好ましい。
【0048】
また、本発明においては、前記のPLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDのカルシウムに対する見掛けのKm値を0.03〜10mM(より好ましくは0.1〜3mM)に調節する物質として、キレート剤を使用することもできる。
【0049】
ここで、キレート剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、若しくはリンゴ酸などのカルボン酸又はその塩等を挙げることができる。
これらのキレート剤は1種類だけを用いてもよいし、又は複数種類のものを同時に用いてもよい。
【0050】
なお、このキレート剤を、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と共存させる際の濃度は、0.1〜200mMの範囲にあることが好ましく、5〜150mMの範囲にあることが特に好ましい。
【0051】
また、本発明の試料中のカルシウム測定試薬に含有させる前記のキレート剤の濃度は、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と混合し反応させる際の濃度が0.1〜200mMとなるように、特に5〜150mMとなるように設定すればよい。
例えば、前記のキレート剤を、0.1〜200mMとなるように、特に5〜150mMとなるように設定すればよい。
なお、本発明においては、前記の金属イオンとキレート剤を同時に用いてもよい。
【0052】
(4) コバルトイオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン
本発明の試料中のカルシウム測定試薬においては、コバルトイオン、ニッケルイオン、又は亜鉛イオンのうち少なくとも一つから選択されるものを含むことが好ましい。
【0053】
また、本発明の試料中のカルシウム測定方法では、試料と、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物を混合し反応させ、前記の化合物から発色性基を遊離させる工程において、コバルトイオン、ニッケルイオン、又は亜鉛イオンのうち少なくとも一つから選択されるものを共存させることが好ましい。
【0054】
このコバルトイオン、ニッケルイオン、又は亜鉛イオンのうち少なくとも一つから選択されるものを測定試薬に含ませ、又は共存させて測定を行うことにより、試料中のカルシウム測定の直線性を高濃度域まで伸ばすことが可能となる。
【0055】
これらは1種類のものだけを用いてもよいし、又は複数種類のものを同時に用いてもよい。
【0056】
なお、これらの金属イオンを、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と共存させる際の濃度は、コバルトイオンにおいては、0.1〜50mMの範囲にあることが好ましく、ニッケルイオンにおいては、0.05〜25mMの範囲にあることが好ましく、そして、亜鉛イオンにおいては、0.005〜2.5mMの範囲にあることが好ましい。
【0057】
また、本発明の試料中のカルシウム測定試薬に含有させる前記の金属イオンの濃度は、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と混合し反応させる際の濃度が各々前記の濃度となるように設定すればよい。
例えば、コバルトイオンにおいては、0.1〜50mMとなるように含有させればよく、ニッケルイオンにおいては、0.05〜25mMとなるように含有させればよく、そして、亜鉛イオンにおいては、0.005〜2.5mMとなるように含有させればよい。
【0058】
(5) キレート剤
本発明の試料中のカルシウム測定試薬においては、キレート剤を含むことが好ましい。
【0059】
また、本発明の試料中のカルシウム測定方法では、試料と、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物を混合し反応させ、前記の化合物から発色性基を遊離させる工程において、キレート剤を共存させることが好ましい。
【0060】
このキレート剤を測定試薬に含ませ、又は共存させて測定を行うことにより、試料中のカルシウム測定の直線性を高濃度域まで伸ばすことが可能となる。
【0061】
ここで、キレート剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、若しくはリンゴ酸などのカルボン酸又はその塩等を挙げることができる。
【0062】
これらのキレート剤は1種類だけを用いてもよいし、又は複数種類のものを同時に用いてもよい。
【0063】
なお、このキレート剤を、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と共存させる際の濃度は、0.1〜200mMの範囲にあることが好ましく、5〜150mMの範囲にあることが特に好ましい。
【0064】
また、本発明の試料中のカルシウム測定試薬に含有させるこのキレート剤の濃度は、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と混合し反応させる際の濃度が0.1〜200mMとなるように、特に5〜150mMとなるように設定すればよい。
例えば、このキレート剤を、0.1〜200mMとなるように、特に5〜150mMとなるように設定すればよい。
【0065】
(6) 試料中のカルシウム測定時のpH
本発明の試料中のカルシウム測定方法においては、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物を混合し反応させる際のpHとして、pH5.0〜pH9.0を挙げることができる。
【0066】
ところで、試料が体液等の場合、この試料中にホスフォジエステラーゼが混在する可能性があり、そうすると例え試料中にカルシウムが存在しなくともこのホスフォジエステラーゼが前記の一般式(I)で表される化合物より発色性基を遊離させ、シグナルを生じさせ、測定値に正の誤差を与えてしまうことになる。
そして、このホスフォジエステラーゼの酵素活性の至適pH域は、pH8.0〜pH9.0である。
【0067】
よって、このホスフォジエステラーゼによる誤差のことを考えると、前記の混合し反応させる際のpHとしては、pH5.5〜pH8.0が好ましく、pH5.5〜pH7.5が特に好ましい。
【0068】
また、本発明の試料中のカルシウム測定試薬のpHとしては、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物を混合し反応させる際のpHがpH5.0〜pH9.0、好ましくはpH5.5〜pH8.0、特に好ましくはpH5.5〜pH7.5となるように設定すればよい。
【0069】
なお、前記のpH範囲となるように使用する緩衝液としては、前記のpH範囲に緩衝能がある従来公知の緩衝液を適宜使用することができる。
このような緩衝液としては、例えば、リン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、イミダゾール、グリシルグリシン、MES、Bis−Tris、ADA、ACES、Bis−Trisプロパン、PIPES、MOPSO、MOPS、BES、HEPES、TES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPS、HEPPSO、Tricine、Bicine、TAPS等の各緩衝液を挙げることができる。
【0070】
(7) 非イオン性界面活性剤
本発明の試料中のカルシウム測定方法においては、反応のタイムコースを安定化するため、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物を混合し反応させる際に、非イオン性界面活性剤を共存させることが好ましい。
また、同じ理由により、本発明の試料中のカルシウム測定試薬においては、非イオン性界面活性剤を含ませることが好ましい。
【0071】
このような非イオン性界面活性剤としては、例えば、以下のもの等を挙げることができる。
(a) ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレンエーテル化合物。
【0072】
(b) グリセリン脂肪酸部分エステル、ソルビタン脂肪酸部分エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、又はショ糖脂肪酸部分エステルなどの多価アルコール部分エステル化合物。
【0073】
(c) ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル、又はポリオキシエチレン化ひまし油などのポリオキシエチレン化多価アルコール脂肪酸エステル。
【0074】
(d) 脂肪酸ジエタノールアミド、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、又はトリアルキルアミンオキシドなどのアミド若しくはアミン化合物。
【0075】
なお、この非イオン性界面活性剤としては、例えば、トライトンX−100(和光純薬工業社)又はBO−10TX(日光ケミカルズ社)等が好ましい。
【0076】
そして、この非イオン性界面活性剤を、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と共存させる際の濃度は、0.0001〜1%の範囲にあることが好ましく、0.001〜0.5%の範囲にあることが特に好ましい。
【0077】
また、本発明の試料中のカルシウム測定試薬に含有させる前記の非イオン性界面活性剤の濃度は、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と混合し反応させる際の濃度が0.0001〜1%となるように、特に0.001〜0.5%となるように設定すればよい。
例えば、前記の非イオン性界面活性剤を、0.0001〜1%となるように、特に0.001〜0.5%となるようにカルシウム測定試薬に含有させればよい。
【0078】
(8) 陰イオン性界面活性剤
本発明の試料中のカルシウム測定方法においては、カルシウム測定の感度が向上するため、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物を混合し反応させる際に、陰イオン性界面活性剤を共存させることが好ましい。
また、同じ理由により、本発明の試料中のカルシウム測定試薬においては、陰イオン性界面活性剤を含ませることが好ましい。
【0079】
このような陰イオン性界面活性剤としては、例えば、以下のもの等を挙げることができる。
(a) 脂肪族モノカルボン酸塩、N−アシロイルサルコシン塩、N−アシロイル−β−アラニン塩、若しくはN−アシロイルグルタミン酸塩などの脂肪族化合物カルボン酸塩;又はアビエチン酸塩などの環式化合物カルボン酸塩。
【0080】
(b) ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、若しくはヒドロキシアルカンスルホン酸塩などの脂肪族化合物スルホン酸塩;直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル(分岐鎖)ベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールスルホン酸塩、若しくはナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物などの環式化合物スルホン酸塩;又はN−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム、若しくはN−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩などの含窒素化合物スルホン酸塩。
【0081】
(c) 硫酸化ひまし油、硫酸化牛脚油、脂肪酸アルキルエステル・硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩、若しくはポリオキシエチレンアルキロイルアミド硫酸塩などの脂肪族化合物硫酸エステル塩;又はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、若しくはポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩などの環式化合物硫酸エステル塩。
【0082】
(d) アルキルリン酸エステル塩、若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩などの脂肪族化合物リン酸エステル塩;又はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩などの環式化合物リン酸エステル塩。
【0083】
(e) スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物、又はオレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物などの重合型高分子化合物のけん化物。
【0084】
(f) ナフタレンスルホン酸塩−ホルマリン縮合物などの重縮合型高分子化合物。
【0085】
なお、この陰イオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸塩化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、又はN−アシルタウリン塩等が好ましい。
例えば、このスルホン酸塩化合物としてはスルホコハク酸ジオクチルナトリウム(OTP−100)〔日光ケミカルズ社〕等を、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としてはSBL−2N−27〔日光ケミカルズ社〕等を、そして、N−アシルタウリン塩としてはCMT−30又はLMT〔日光ケミカルズ社〕等を挙げることができる。
【0086】
この陰イオン性界面活性剤を、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と共存させる際の濃度は、0.0001〜1%の範囲にあることが好ましく、0.001〜0.5%の範囲にあることが特に好ましい。
【0087】
また、本発明の試料中のカルシウム測定試薬に含有させる前記の陰イオン性界面活性剤の濃度は、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と混合し反応させる際の濃度が0.0001〜1%となるように、特に0.001〜0.5%となるように設定すればよい。
例えば、前記の陰イオン性界面活性剤を、0.0001〜1%となるように、特に0.001〜0.5%となるようにカルシウム測定試薬に含有させればよい。
【0088】
(9) 測定試薬等の構成成分
本発明の試料中のカルシウム測定試薬又はカルシウム測定方法においては、前記の成分の他に、公知の防腐剤等を必要に応じて適宜含ませ又は共存させることができる。
【0089】
(10) 試薬等の構成
本発明の試料中のカルシウム測定方法及びカルシウム測定試薬は、1ステップ法(1試薬系)で実施、構成することもできるが、測定試薬を長期間保存して用いる場合には2ステップ法(2試薬系)等の多ステップ法(多試薬系)で実施、構成することが測定試薬の安定性の面からより好ましい。
【0090】
なお、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDと、前記の一般式(I)で表される化合物とは、別々の測定試薬に含有させておくことが好ましい。
それは、共存させた場合、微量でもカルシウムが混入することにより、長期保存されるうちに、前記の一般式(I)で表される化合物がホスホリパーゼDにより分解されてしまうからである。
【0091】
(11) リン酸モノエステル化合物に作用する酵素
本発明の試料中のカルシウム測定方法において、前記の一般式(I)で表される化合物のX2が発色基である場合、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物を混合し反応させる際に、リン酸ジエステル化合物には作用せずリン酸モノエステル化合物のエステル結合を加水分解する酵素を共存させることが好ましい。
【0092】
それは、試料中にカルシウムが存在する場合、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDが、前記の一般式(I)で表される化合物のX1(発色性基)及びX2(発色性基)を加水分解して遊離させるのであるが、反応時の条件によっては、一つ目の発色性基の加水分解から二つ目の発色性基の加水分解までに時間が掛かることがある。
【0093】
このときにリン酸ジエステル化合物には作用せずリン酸モノエステル化合物のエステル結合を加水分解する酵素が共存していると、一つ目の発色性基の加水分解により生成したリン酸モノエステル化合物にリン酸ジエステル化合物には作用せずリン酸モノエステル化合物のエステル結合を加水分解する酵素が作用して、二つ目の発色性基を短時間のうちに加水分解することができるからである。
【0094】
なお、この酵素はリン酸ジエステル化合物には作用しないので、試料中にカルシウムが存在せず、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDが前記の一般式(I)で表される化合物に作用しない(加水分解しない)場合には、この酵素も発色性基を加水分解することはないので、測定値に正の誤差を生じさせることはない。
【0095】
同じ理由により、本発明の試料中のカルシウム測定試薬においては、前記の一般式(I)で表される化合物のX2が発色基である場合、リン酸ジエステル化合物には作用せずリン酸モノエステル化合物のエステル結合を加水分解する酵素を含ませることが好ましい。
【0096】
このリン酸ジエステル化合物には作用せずリン酸モノエステル化合物のエステル結合を加水分解する酵素としては、例えば、アルカリ性ホスファターゼ(ALP)又は酸性ホスファターゼ(ACP)等を挙げることができる。
【0097】
このリン酸ジエステル化合物には作用せずリン酸モノエステル化合物のエステル結合を加水分解する酵素を、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と混合し反応させる際の活性値は、0.01〜10U/mLの範囲にあることが好ましく、0.1〜5U/mLの範囲が特に好ましい。
【0098】
また、本発明の試料中のカルシウム測定試薬に含有させるリン酸ジエステル化合物には作用せずリン酸モノエステル化合物のエステル結合を加水分解する酵素の活性値は、試料、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及び前記の一般式(I)で表される化合物と混合し反応させる際に0.01〜10U/mLとなるように、好ましくは0.1〜5U/mLとなるように設定すればよい。
例えば、このリン酸ジエステル化合物には作用せずリン酸モノエステル化合物のエステル結合を加水分解する酵素を、0.01〜10U/mLとなるように、好ましくは0.1〜5U/mLとなるように含有させればよい。
【0099】
(12) 試料中のカルシウム測定の一例
本発明の試料中のカルシウム測定方法は、
a) 試料と、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼD、及びホスホリパーゼDの基質としての前記の一般式(I)で表される化合物を混合し反応させ、前記の化合物から発色性基を遊離させる工程、及び
b) この遊離した発色性基を比色測定する工程、よりなるものである。
【0100】
なお、本発明の試料中のカルシウム測定方法は、コリンオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、又は酸性ホスファターゼ等の共役酵素を介在させなくとも測定が行えるという点で特徴的である。
【0101】
本発明の試料中のカルシウム測定方法及び測定試薬を用いて試料中のカルシウムを測定する場合の一例をより具体的に説明すると、例えば、試料中に含まれるカルシウムとPLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDとが接触すると、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDがこのカルシウムによって活性化される。
【0102】
このカルシウムによって活性化されたPLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDが、前記の一般式(I)で表される化合物と接触すると、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDは、前記の一般式(I)で表される化合物のX1及びX2を加水分解して遊離させる。
【0103】
すなわち、4−ニトロフェニル基、2−クロロ−4−ニトロフェニル基、2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニル基、2,6−ジクロロ−アセチルフェニル基又はアシルフェニル基等の発色性基が遊離される。
【0104】
ここで遊離した4−ニトロフェノール、2−クロロ−4−ニトロフェノール、2,6−ジクロロ−4−ニトロフェノール、2,6−ジクロロ−アセチルフェニル基又はアシルフェノール等が吸収を示す任意の波長において、分光光度計を用いて吸光度などを測定すること等により、遊離した発色性基の量を求め、これよりPLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDの活性値を求め、更には試料中のカルシウム濃度の算出を行うことができる。
【0105】
本発明の測定原理を、前記の一般式(I)で表される化合物としてビス(4−ニトロフェニル)リン酸を用いた場合を例として示すと下記のようになる。
【0106】
【化8】
Figure 2004298083
【0107】
本発明において前記の一般式(I)で表される化合物として基質としてビス(4−ニトロフェニル)リン酸を用いた場合は、試料中のカルシウムイオンによって活性化されたPLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDが、ビス(4−ニトロフェニル)リン酸のリン酸基と2つの4−ニトロフェニル基との間のエステル結合をそれぞれ加水分解して、2分子の4−ニトロフェノールを遊離させる。
【0108】
この遊離した4−ニトロフェノールの吸光度を測定波長405nm等において分光光度計等を用いて測定することによって、試料中のカルシウム濃度を測定することが可能となる。
【0109】
(14) 試料
本発明において、試料とは、試料中のカルシウム濃度の測定を行おうとするもののことであり、このようなものであれば特に限定されない。
このような試料としては、例えば、ヒト又は動物の血液、血清、血漿、尿、髄液、唾液、汗等の体液、ヒト若しくは動物の腎臓、心臓、肺、脳等の臓器等の抽出液;骨格筋、骨髄、皮膚、又は神経組織等の抽出液;毛髪等の抽出液、ヒト又は動物の糞便の抽出液又は懸濁液;細胞の抽出液;植物の抽出液;食品又はこれの抽出液;農林水産物又はこれの抽出物;飲料水;飲料;環境試料(土壌、海水、河川水、湖沼水、地下水など);あるいは薬剤等が挙げられる。
【0110】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【0111】
〔実施例1〕
(市販ホスホリパーゼDの各製品ロットによるカルシウム測定の直線性の確認)市販ホスホリパーゼDを用いたカルシウム測定試薬において、ホスホリパーゼDの各製品ロットによるカルシウム測定を行う際の直線性の相違を確認した。
【0112】
(1) 試薬の調製
▲1▼ 第1試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pHを7.25(20℃)に調整し、ホスホリパーゼDの製品ロットが異なる4種類の第1試薬を調製した。
PIPES 60mM
トライトンX−100〔非イオン性界面活性剤〕 0.1%
ケーソンCG〔防腐剤〕 0.05%
ホスホリパーゼD〔ストレプトマイセス・クロモフスカス由来〕 1.5単位/mL
・製品ロットA
・製品ロットB
・製品ロットC、又は
・製品ロットD
【0113】
▲2▼ 第2試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pHを7.25(20℃)に調整し、第2試薬を調製した。
PIPES 60mM
トライトンX−100〔非イオン性界面活性剤〕 0.1%
ケーソンCG〔防腐剤〕 0.05%
ビス(4−ニトロフェニル)リン酸〔基質〕(和光純薬工業社) 4mM
クエン酸 6mM
【0114】
(2) 試料の調製
カルシウム標準液〔1,000mg/mLの炭酸カルシウムを含む0.1M硝酸水溶液;原子吸光用〕(和光純薬工業社)を純水で希釈して、下記の濃度のカルシウムを含む試料をそれぞれ調製した。
【0115】
▲1▼ 20.0mg/dL
▲2▼ 15.0mg/dL
▲3▼ 10.0mg/dL
▲4▼ 5.0mg/dL
▲5▼ 2.5mg/dL
【0116】
また、純水を、カルシウムを含まない試料すなわち「▲6▼カルシウム濃度0mg/dLの試料」とした。
以上6種類の試料を調製した。
【0117】
(3) 試料中のカルシウム濃度の測定
日立製作所社製7170S形自動分析装置にて試料中のカルシウム濃度の測定を行った。
【0118】
▲1▼ 前記(2)で調製した6種類の試料をそれぞれ試料とし、この6μLに前記(1)の▲1▼で調製した4種類の第1試薬の一つを120μL添加して、混和後37℃で5分間反応させた。
【0119】
▲2▼ その後、これに前記(1)の▲2▼で調製した第2試薬の120μLを添加し、37℃で反応させた。
【0120】
▲3▼ そして、主波長405nm及び副波長660nmにおける吸光度を、第2試薬添加後1分55秒目(23ポイント目)から5分8秒目(34ポイント目)まで測定した。
【0121】
▲4▼ 前記▲3▼において測定した吸光度より、1分間当たりの吸光度変化量(ΔAbs./分)を算出した。
なお、試料▲6▼(0mg/dL)の吸光度変化量(ΔAbs./分)を試薬盲検値として差し引いた。
【0122】
▲5▼ 以上の操作を4種類の第1試薬の全てについて行った。
【0123】
(4) 測定結果
以上の測定結果を図1に示した。
なお、この図において横軸は試料中のカルシウム濃度(mg/dL)を表し、縦軸は測定により得られた1分間当たりの吸光度変化量(ΔAbs./分)を表す。
【0124】
この図から明らかなように、ホスホリパーゼDの製品ロットA又はDを用いた第1試薬を使用した場合には、試料中のカルシウム濃度が高くなるにつれて各吸光度変化量(ΔAbs./分)の値を結んだ検量線が曲がってくることが分かる。
また、ホスホリパーゼDの製品ロットB又はCを用いた第1試薬を使用した場合には、試料中のカルシウム濃度の増加に伴って各吸光度変化量(ΔAbs./分)の値がほぼ直線的に増加していることが分かる。
これより、ホスホリパーゼDの製品ロットにより、カルシウム測定値の直線性に相違があり、直線性が不良なものがあることが確かめられた。
【0125】
〔実施例2〕
(ホスホリパーゼDの各製品ロットの分析)
ホスホリパーゼDの各製品ロットの蛋白質の存在パターンをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により確かめた。
【0126】
(1) 実施例1で第1試薬に使用したホスホリパーゼDの各製品ロット(製品ロットA、製品ロットB、製品ロットC、及び製品ロットD)、並びに蛋白質分子量マーカー(Precision Protein Standards;バイオラッド社)の各々を試料とし、還元条件下で、12.5%ポリアクリルアミドゲル〔フナコシ イージーゲル(II);フナコシ社)〕を支持体とし、0.1%SDSを含む25mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−200mMグリシン緩衝液を泳動緩衝液として使用して、SDS−PAGE(U.K.Laemmli,Nature,227巻、680〜685頁、1970年参照)を行った。
【0127】
(2) SDS−PAGEの結果を図2に示した。なお、この図において、ゲルのレーンの左端は、蛋白質分子量マーカーの蛋白質のパターンを示している。また、それ以外のレーンは、ホスホリパーゼDの各製品ロットの蛋白質のパターンを示している。
【0128】
図2に示すように、このSDS−PAGEの泳動結果においては、主にそれぞれ分子量約57キロダルトンの蛋白質、約42キロダルトンの蛋白質、及び約20キロダルトンの蛋白質のバンドが観察された。すなわち、これらのバンドは、ホスホリパーゼDのアイソザイムとして知られているPLD57、PLD42、及びPLD20であることが分かる。
なお、製品ロットA及びDでは、他のバンドに比べて分子量約42キロダルトンの蛋白質(PLD42)のバンドが強く出ており、製品ロットB及びCでは、他のバンドに比べて分子量約57キロダルトンの蛋白質(PLD57)のバンドが強く出ていることが分かる。
【0129】
(3) 次に、このSDS−PAGEの結果をScion Image画像解析ソフト(米国National Institute of Health)を用いて画像解析し、各レーンのPLD57、PLD42、及びPLD20のバンドの「発色強度×面積」を各々測定し、ホスホリパーゼ全体の中での比率をそれぞれ求めた。この結果を表1に示した。
【0130】
【表1】
Figure 2004298083
【0131】
各ホスホリパーゼDアイソザイムの比率は、(他のバンドに比べてPLD42のバンドが強く出ていた、)製品ロットAでは、PLD57:PLD42:PLD20=27%:53%:20%であり、製品ロットDでは、PLD57:PLD42:PLD20=42%:44%:14%であった。
また、(他のバンドに比べてPLD57のバンドが強く出ていた、)製品ロットBでは、PLD57:PLD42:PLD20=53%:28%:19%であり、製品ロットCでは、PLD57:PLD42:PLD20=88%:12%:0%であった。
【0132】
これらの結果と実施例1の結果から、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDを用いてカルシウムの測定を行うことにより、試料中のカルシウム濃度と測定により得られる吸光度変化量(ΔAbs./分)との関係がより直線的となり、カルシウム測定時の直線性が向上することが推察された。
【0133】
〔実施例3〕
(ホスホリパーゼDの再精製)
市販ホスホリパーゼDについて再精製を行った。
【0134】
(1) 実施例1で第1試薬に使用したホスホリパーゼDの製品ロットDについて、疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて、再精製を行った。
すなわち、0.9M濃度の硫酸アンモニウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)であらかじめ平衡化したHiTrap HICカラム(アマシャムバイオサイエンス社)に、前記の緩衝液0.8mLで溶解したホスホリパーゼDの製品ロットDの6mgを添加し、FPLC装置(ファルマシア社)を用いて蛋白質分画を行った。
【0135】
(2) このカラムを前記の緩衝液で洗浄し、続いて50mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて、硫酸アンモニウム濃度を直線的に下げ、流速1mL/minで溶出を行った。なお、蛋白質が吸収を有する280nmで吸光度の測定を行った。
【0136】
(3) 硫酸アンモニウム濃度が0Mに達した後、分画番号23〜29に蛋白質画分が溶出した(画分A1)。その後、純水を流しカラムを洗浄することにより分画番号DW1及びDW2に蛋白質画分が溶出した(画分B1)。
この溶出パターンを図3に示した。この図において、横軸は溶出画分の番号を表し、縦軸は各々の溶出画分の280nmにおける吸光度測定値を表す。
【0137】
(4) 溶出した画分A1及び画分B1を限外濾過膜(ウルトラフリー4;ミリポア社)を有する限外濾過濃縮ユニット(Centrifugal filter Unit;ミリポア社)で限外濾過し、それぞれ液量を1.5mLに濃縮した。
【0138】
(5)また、前記(1)及び(2)と同じ操作で、再度、製品ロットDのホスホリパーゼDの再精製を行った。硫酸アンモニウム濃度が0Mに達した後、分画番号15〜17に蛋白質画分が溶出した(画分A2)。その後、純水を流しカラムを洗浄することにより分画番号DW3〜DW6に蛋白質画分が溶出した(画分B2)。
この溶出パターンを図4に示した。この図において、横軸は溶出画分の番号を表し、縦軸は各々の溶出画分の280nmにおける吸光度測定値を表す。
【0139】
(6) 溶出した画分A2及び画分B2を各々前記(4)と同様の方法で限外濾過し、液量を0.5mLに濃縮した。
【0140】
(7) これらの濃縮した蛋白質画分(A1、A2、B1、及びB2)と製品ロットDのホスホリパーゼDを蛋白質分子量マーカー(Precision Protein Standards;バイオラッド社)とともに各々15%のポリアクリルアミドゲル〔フナコシ イージーゲル(II);フナコシ社)〕に流し、実施例2の(1)と同様にしてSDS−PAGEを行った。
【0141】
(8) このSDS−PAGEの結果を図5に示した。なお、この図において、ゲルのレーンの左端は、蛋白質分子量マーカーの蛋白質のパターンを示している。また、それ以外のレーンは、ホスホリパーゼDの製品ロットDの蛋白質パターン及び製品ロットDから単離された各蛋白質画分(A1、A2、B1、及びB2)の蛋白質パターンを示している。
【0142】
(9) また、このSDS−PAGEの結果をScion Image画像解析ソフト(米国National Institute of Health)を用いて画像解析し、各レーンのPLD57、PLD42、及びPLD20のバンドの「発色強度×面積」を各々測定し、ホスホリパーゼD全体の中で比率をそれぞれ求めた。この結果を表2に示した。
【0143】
【表2】
Figure 2004298083
【0144】
(10) 図5に示すように、このSDS−PAGEの泳動結果においては、主にそれぞれ分子量約57キロダルトンの蛋白質(PLD57)、分子量約42キロダルトンの蛋白質(PLD42)、及び分子量約20キロダルトンの蛋白質(PLD20)のバンドが観察された。
ここで、硫酸アンモニウム濃度が0Mに達した後に溶出した画分A1及びA2では、各々PLD57のバンドが他のアイソザイムのバンドに比べて非常に強く出ていることが分かる。各ホスホリパーゼDアイソザイムの比率は、表2に示すように、画分A1では、PLD57:PLD42:PLD20=84%:16%:0%であり、画分A2では、PLD57:PLD42:PLD20=76%:12%:12%であった。
また、純水を流すことにより溶出した画分B1及びB2では、各々PLD42のバンドが他のアイソザイムのバンドに比べて非常に強く出ていることが分かる。各ホスホリパーゼDアイソザイムの比率は、表2に示すように、画分B1では、PLD57:PLD42:PLD20=20%:68%:12%であり、画分B2では、PLD57:PLD42:PLD20=12%:71%:17%であった。
【0145】
〔実施例4〕
(ホスホリパーゼDのアイソザイム比率によるカルシウム測定時の直線性の確認)
実施例3でホスホリパーゼDを再精製して得た各画分等における、カルシウム測定時の直線性を確認した。
【0146】
(1) 試薬の調製
▲1▼ 第1試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pHを7.25(20℃)に調整し、6種類の本発明・第1試薬を調製した。
PIPES 60mM
トライトンX−100〔非イオン性界面活性剤〕 0.1%
ケーソンCG〔防腐剤〕 0.05%
ホスホリパーゼD 1.5単位/mL
・実施例3で得た画分A1
・実施例3で得た画分A2
・実施例3で得た画分B1
・実施例3で得た画分B2
・実施例1及び2で用いたホスホリパーゼDの製品ロットC、又は
・実施例1及び2で用いたホスホリパーゼDの製品ロットD
【0147】
▲2▼ 第2試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pHを7.25(20℃)に調整し、第2試薬を調製した。
PIPES 60mM
トライトンX−100〔非イオン性界面活性剤〕 0.1%
ケーソンCG〔防腐剤〕 0.05%
ビス(4−ニトロフェニル)リン酸〔基質〕(和光純薬工業社) 4mM
硫酸ナトリウム 50mM
クエン酸 6mM
【0148】
(2) 試料の調製
実施例1の(2)で調製した試料をそのまま使用した。
【0149】
(3) 試料中のカルシウム濃度の測定
前記(2)の各試料中のカルシウム濃度を、前記(1)で調製した第1試薬及び第2試薬を用いて、前記実施例1の(3)の▲1▼〜▲5▼の通りに操作を行い、1分間当たりの吸光度変化量(ΔAbs./分)を求めた。
【0150】
(4) 測定結果
測定結果を図6に示した。
【0151】
なお、この図において横軸は試料中のカルシウム濃度(mg/dL)を表し、縦軸は測定により得られた1分間当たりの吸光度変化量(ΔAbs./分)を表す。
【0152】
この図から明らかなように、ホスホリパーゼDとして実施例3で得た画分B1(PLD57比率20%)又は画分B2(PLD57比率12%)を用いた場合には、それぞれ試料中のカルシウム濃度の増加に伴って各吸光度変化量(ΔAbs./分)の値が頭打ちとなり曲線状となってしまっていることが分かる。また、これはホスホリパーゼDの製品ロットD(PLD57比率42%)を使用した場合も同様であった。
これに対して、ホスホリパーゼDとして実施例3で得た画分A1(PLD57比率84%)又は画分A2(PLD57比率76%)を用いた場合には、それぞれ試料中のカルシウム濃度の増加に伴って各吸光度変化量(ΔAbs./分)の値が高濃度域まで直線的に増加していることが分かる。また、これはホスホリパーゼDの製品ロットC(PLD57比率88%)を使用した場合も同様であった。
【0153】
この結果と前記実施例1〜実施例3の結果から、PLD57の比率が50%以上のホスホリパーゼDを用いてカルシウムの測定を行うことにより、試料中のカルシウム濃度と測定により得られる吸光度変化量(ΔAbs./分)の値との関係が直線的となり、これにより直線的な検量線が得られ、そして低濃度域から高濃度域までカルシウム濃度測定値がほぼ直線上に位置するようになることが分かる。
従って、低濃度域から高濃度域まで試料中のカルシウム濃度を精度よくかつ正確に測定できるようになる。
特に、PLD57の比率が75%以上のホスホリパーゼDを使用した場合、試料中のカルシウムの測定において極めて良好な直線性が得られることが確認された。
【0154】
【発明の効果】
本発明の試料中のカルシウム測定試薬及びカルシウム測定方法では、カルシウムイオンによるホスホリパーゼDの活性化を利用した測定において、分子量約57キロダルトンのホスホリパーゼDの比率が50%以上のホスホリパーゼD、及びホスホリパーゼDの基質として前記の一般式(I)で表される化合物を使用することにより、直線的な検量線が得られるようになり、そして低濃度域から高濃度域までカルシウム濃度測定値が、ほぼ直線上に位置するようになるので、試料中のカルシウム濃度を低濃度域から高濃度域まで精度よくかつ正確に測定できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】市販ホスホリパーゼDを用いて試料中のカルシウムを測定した結果を示したグラフである。
【図2】市販ホスホリパーゼDのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示した写真である。
【図3】ホスホリパーゼDの製品ロットDの疎水性相互作用クロマトグラフィーの溶出のパターンを示したグラフである。
【図4】ホスホリパーゼDの製品ロットDの疎水性相互作用クロマトグラフィーの溶出のパターンを示したグラフである。
【図5】ホスホリパーゼDを再精製して得た各画分のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示した写真である。
【図6】ホスホリパーゼDを再精製して得た各画分を用いて試料中のカルシウムを測定した結果を示したグラフである。

Claims (8)

  1. 分子量約57キロダルトンのホスホリパーゼDアイソザイムの比率が50%以上のホスホリパーゼD、及びホスホリパーゼDの基質として下記の一般式(I)(式中、X1は発色性基であり、X2は水素原子、発色性基あるいは、置換されていないか若しくは置換されている、アルキル基又はフェニル基)で表される化合物を含有する、試料中のカルシウム測定試薬。
    Figure 2004298083
  2. ホスホリパーゼDがストレプトマイセス属微生物由来であることを特徴とする、請求項1又は2記載の試料中のカルシウム測定試薬。
  3. ホスホリパーゼDのカルシウムに対する見掛けのKm値を0.03〜10mMに調節する物質を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の試料中のカルシウム測定試薬。
  4. コバルトイオン、ニッケルイオン、又は亜鉛イオンのうち少なくとも一つから選択されるものを含むことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の試料中のカルシウム測定試薬。
  5. 試料中のカルシウムを測定する方法であって、
    a) 該試料と、分子量約57キロダルトンのホスホリパーゼDアイソザイムの比率が50%以上のホスホリパーゼD、及びホスホリパーゼDの基質として下記の一般式(I)(式中、X1は発色性基であり、X2は水素原子、発色性基あるいは、置換されていないか若しくは置換されている、アルキル基又はフェニル基)で表される化合物を混合し反応させ、前記の化合物から発色性基を遊離させる工程、及び
    Figure 2004298083
    b) この遊離した発色性基を比色測定する工程、よりなる試料中のカルシウム測定方法。
  6. ホスホリパーゼDがストレプトマイセス属微生物由来であることを特徴とする、請求項5記載の試料中のカルシウム測定方法。
  7. 前記工程a)において、ホスホリパーゼDのカルシウムに対する見掛けのKm値を0.03〜10mMに調節する物質を共存させることを特徴とする、請求項5又は請求項6記載の試料中のカルシウム測定方法。
  8. 前記工程a)において、コバルトイオン、ニッケルイオン、又は亜鉛イオンのうち少なくとも一つから選択されるものを共存させることを特徴とする、請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載の試料中のカルシウム測定方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007322336A (ja) * 2006-06-02 2007-12-13 Mitsubishi Kagaku Iatron Inc カルシウム測定試薬及び測定方法

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