JP2004296885A - 配線基板用積層体及びそのエッチング加工方法 - Google Patents

配線基板用積層体及びそのエッチング加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】湿式エッチング時にサイドエッチングが少なく、ファインパターンを形成するに適した配線基板用積層体を提供する。
【解決手段】絶縁樹脂層9と金属箔層1とからなる配線基板用積層体10において、絶縁樹脂層は、エチレンジアミン11wt%とエチレングリコール22 wt%を添加した30wt%水酸化カリウム水溶液をエッチング液として使用し、80℃でエッチングしたときのエッチング速度が1μm/min以下であるポリイミド樹脂層(L)とエッチング速度が5μm/min以上のポリイミド樹脂層(H)からなる2層以上のポリイミド樹脂層から構成され、ポリイミド樹脂層(L)は金属箔層と接する層にのみ配置され、その厚みが5μm以下である湿式エッチング向け配線基板用積層体。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フレキシブルプリント基板等に用いられる湿式エッチングに適した配線基板用積層体及び湿式エッチング加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フレキシブルプリント基板等に用いられる配線基板用積層体はポリイミドやポリエステルのフィルムと金属箔をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの接着剤を介して貼り合わせたり、接着剤を介することなく積層して製造されていた。そして、これまではこのような積層体への孔あけ加工は、紫外線レザー加工法やプラズマ加工法によるドライエッチング法が一般的に用いられていた。しかし、これらに用いられる加工装置は高価な上、使用するガス代などランニングコストが高く、また、量産性が悪いなどという問題がある。
【0003】
ドライエッチング法を代替する方法として、有機アルカリやアルカリ水溶液による湿式エッチングが可能な材料が要望されてきたが、ヒドラジンなどの有機アルカリ溶剤やアルカリ水溶液と有機溶剤の混合物系は毒性が高いという問題があり実用化されてない。また、アルカリ水溶液による湿式エッチング加工が可能な材料として、デュポン社のカプトン、鐘淵化学社のアピカルなどのポリイミドフィルムが代表して知られており、これらのフィルムに直接金属メッキを施し、任意の形状にエッチング加工する方法が提案されているが、この方法ではコスト、工程数の増加や、寸法精度が悪いといった問題があり、更に使用される金属の特性に制限を受けるなどの課題があった。
【0004】
金属箔/絶縁樹脂層からなる積層体にバイア孔を形成する方法としては、例えば、ポリイミドフイルムの両面に銅箔を積層した両面銅箔積層体を準備し、これにバイア孔を形成するにあたり、銅箔上にフォトレジスト層を形成し、これに目的とする開孔に適したパターンを形成した後、銅箔をエッチングして、銅箔にバイア孔を形成し、次いで、この銅箔をマスクとしてポリイミド樹脂層を湿式エッチングする方法がある。そして、この方法を行う場合には、エッチングの進行にともなってポリイミド樹脂層にサイドエッチングが生じてしまい、その結果、ファインパターンに適さない積層体となってしまうことが問題とされてきた。
【0005】
湿式エッチング用途を目的とする積層体として、特開2001−40828号公報には絶縁樹脂層の80℃、50wt%水酸化カリウム水溶液によるエッチング速度の平均値が0.5μm/min以上であるポリイミド積層体が提案されている。また、特開平6−164084号公報には、エッチング液を作用させる面から近い部分に形成したポリイミド層は、遠い部分に形成したポリイミド層よりもエッチング速度が遅いポリイミド層を積層した複数ポリイミド層から構成された、サイドエッチング等のないポリイミド系配線基板とエッチング方法が示されている。
【特許文献1】
特開2001−40828号公報
【特許文献2】
特開平6−164084号公報
【0006】
特許文献2では、サイドエッチングを減少させるため、上記のように複数のポリイミド層のエッチング速度を調整することを提案しているが、相対的なエッチング速度の関係を規定するだけであり、その具体的なエッチング速度などを教えるものはなく、外層のポリイミド層のエッチング速度を内層のそれより遅くするだけでは十分満足できるサイドエッチングの減少が得られないことが見出された。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アルカリ水溶液による湿式エッチングを迅速に行うことが可能で、かつサイドエッチングが生じない、ポリイミド樹脂を絶縁樹脂層とする湿式エッチング向け配線基板用積層体とその配線基板用積層体の加工方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等はかかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、積層体における絶縁樹脂層の層構成を工夫し、各層に特定の特性のものを用いることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、絶縁樹脂層と金属箔層とからなる配線基板用積層体において、絶縁樹脂層は、エチレンジアミン11wt%とエチレングリコール22 wt%を添加した30wt%水酸化カリウム水溶液をエッチング液として使用し、80℃でエッチングしたときのエッチング速度が1μm/min以下であるポリイミド樹脂層(L)とエッチング速度が5μm/min以上のポリイミド樹脂層(H)からなる2層以上のポリイミド樹脂層から構成され、ポリイミド樹脂層(L)は金属箔層と接触する層にのみ配置され、その厚みが5μm以下であることを特徴とする湿式エッチング向け配線基板用積層体である。
【0010】
ここで、1)ポリイミド樹脂層(H)のエッチング速度が10μm/min以上であり、その厚さが5〜50μmであること、2)ポリイミド樹脂層(H)とポリイミド樹脂層(L)のエッチング速度の比が100以上であること、3)積層体の片面又は両面に金属箔を有し、金属箔が銅箔であること、又は、4)ポリイミド樹脂層(L)が、テトラカルボン酸二無水物がピロメリット酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−m−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物及び1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含有するテトラカルボン酸二無水物と、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル及び芳香環に置換基として低級アルキル基を有する芳香族ジアミンから選ばれる少なくとも1種のジアミンを50モル%以上含有するジアミノ化合物とを反応させて得られるポリイミド樹脂の層であることは、本発明の好ましい態様である。
【0011】
また、本発明は上記の積層体の金属箔上にエッチングレジスト層を設け、これを所定のパターンに形成し、エッチングレジスト開孔部において露出している金属箔をエッチングした後、所定のパターンにエッチングされた金属箔をマスクとして絶縁樹脂層を5〜80wt%のアルカリ金属水溶液によりエッチングし、開孔部分におけるサイドエッチング幅(w)とエッチング深さ(h)との関係で表されるw/hを0.25以下とすることを特徴とする配線基板用積層体のエッチング加工方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の湿式エッチング向け配線基板用積層体は、金属箔上に複数層のポリイミド系樹脂層からなる絶縁樹脂層を有する積層体である。図1及び図2に本発明の積層体の2つの態様を例示する。図1の積層体10は、絶縁樹脂層9の片面に金属箔層1を有し、絶縁樹脂層は2層のポリイミド樹脂層2及び3からなるものである。また、図2の積層体は、絶縁樹脂層9の両面に金属箔層1と金属箔層5を有し、絶縁樹脂層は3層のポリイミド樹脂層2、3及び4からなるものである。積層体10全体の厚さは15〜200μm、特には20〜100μmの範囲が好ましい。また、絶縁樹脂層9全体の厚さは6〜60μm、特には10〜40μmの範囲が好ましい。
【0013】
本発明の積層体に用いられる金属箔は、積層体の用途により異なることがありその種類は制限されるものではないが、具体的には、銅、アルミニウム、ステンレス、鉄、銅合金などを挙げることができる。これらの中でも、フレキシブルプリント基板に適した材質としては銅が挙げられる。金属箔の厚みは限定されず、3〜300μm程度のものが用いられるが、5〜40μm、特には7〜20μmのものが好ましく使用される。
【0014】
本発明の積層体は、複数層のポリイミド樹脂層から構成される絶縁樹脂層を有する。複数のポリイミド樹脂層のうち、少なくとも1層は低エッチング速度のポリイミド樹脂層(L)であり、少なくとも1層は高エッチング速度のポリイミド樹脂層(H)である。
【0015】
ここで、ポリイミド樹脂層(L)は、エチレンジアミン11wt%とエチレングリコール22 wt%を添加した30wt%水酸化カリウム水溶液をエッチング液として使用し、80℃でエッチングしたときのエッチング速度が0.5μm/min以下のものを言い、好ましくは0.1μm/min以下、より好ましくは0.05μm/min以下ないし測定不能なほど遅いものである。このエッチング速度が1μm/minを超えると、サイドエッチングが大きくなる。
【0016】
また、ポリイミド樹脂層(H)は、エチレンジアミン11wt%とエチレングリコール22 wt%を添加した30wt%水酸化カリウム水溶液をエッチング液として使用し、80℃でエッチングしたときのエッチング速度が5μm/min以上のものを言い、好ましくは10μm/min以上のものである。エッチング速度が5μm/minに満たないと、ポリイミド樹脂残渣が残る、良好なエッチング形状が得られない、生産効率の低下を招くなどの問題が発生する。良好なエッチング形状を得るには、ポリイミド樹脂層(H)とポリイミド樹脂層(L)のエッチング速度の比率を50倍以上、好ましくは100倍、更に好ましくは150倍以上とすることがよい。有利には、エッチング処理時間においてポリイミド樹脂層(H)は完全に溶解するが、ポリイミド樹脂層(L)は完全には溶解しないものである。
【0017】
ポリイミド樹脂層(L)は、金属箔層1又は5と直接に接する樹脂層2又は4として使用する。金属箔に接しない中間樹脂層等として使用すると、サイドエッチングが生じたり、エッチングが途中で止まってしまう恐れがある。図2に示すように金属箔層が2層ある場合は、金属箔層の両面側からエッチングを行う場合は、金属箔層1及び5と直接に接する樹脂層2及び4をポリイミド樹脂層(L)とすることがよく、いずれか一方の金属箔層、例えば金属箔層1の片面側からエッチングを行う場合は、金属箔層1と直接に接する樹脂層2をポリイミド樹脂層(L)とすることがよい。いずれにしても、最初にエッチングされる側のポリイミド樹脂層をポリイミド樹脂層(L)とする。
【0018】
ポリイミド樹脂層(H)は、ポリイミド樹脂層(L)が使用されない層、すなわち金属箔層1又は5と直接に接しない樹脂層3として使用するが、両面金属箔層を有する積層体であって、片面側からエッチングを行う場合は、最初にエッチングされる側と反対側の金属箔層と接する層もポリイミド樹脂層(H)を使用することがよい。
【0019】
図1に示すように金属箔層が1層の場合は、金属箔層側からエッチングが行われるので、ポリイミド樹脂層2をポリイミド樹脂層(L)とし、ポリイミド樹脂層3をポリイミド樹脂層(H)することがよい。図2に示すように金属箔層が2層の場合は、両方の金属箔層側からエッチングが行われるときは、ポリイミド樹脂層2及び4をポリイミド樹脂層(L)とし、ポリイミド樹脂層3をポリイミド樹脂層(H)とすることがよいが、片方の金属箔層1側からエッチングが行われるときは、ポリイミド樹脂層2をポリイミド樹脂層(L)とし、ポリイミド樹脂層3及び4をポリイミド樹脂層(H)とすることがよい。
【0020】
本発明の積層体において、ポリイミド樹脂層2、3や4は、図1や図2では、それぞれ単層であるように記載しているが、各層を構成するポリイミド樹脂層のエッチング速度が上記性質を満たせば、これらの層は複数層のポリイミド樹脂層から形成されてもよい。
【0021】
エッチングが開始する側の面に配置されるポリイミド樹脂層(L)の厚さは、5μm以下であることが必要で、0.5〜5μmの範囲が好ましい。この厚さを越えることは、エッチング処理に要する時間が長すぎることになる他、エッチング形状が劣るものとなる。それ以外の層に配置されるポリイミド樹脂層(H)の厚さは特に制限されないが、5〜75μmの範囲が好ましく、特に好ましくは10〜50μmの範囲である。ポリイミド樹脂層(H)とポリイミド樹脂層(L)の厚さの比は、5〜100以上、好ましくは5〜50の範囲である。
【0022】
絶縁樹脂層9は、アルカリ溶液によるエッチングにおいて、良好なエッチング特性を有する。ここでいう良好なエッチング特性は、絶縁層樹脂9全体をエッチングした場合のエッチング形状やエッチング速度等の特性を指し、本発明においては低エッチング速度のポリイミド樹脂層(L)を使用するにも係らず、驚くべきことに絶縁樹脂層9全体をエッチングした場合に、エッチング速度を大きく落とすことなく、サイドエッチングのない良好なものが得られる。
【0023】
ポリイミド樹脂層(L)は、好ましくは水透過速度の速い樹脂層であることが好ましく、後記する実施例に記載した方法で測定される水透過速度が0.5 kgμm/mh以上、好ましくは0.7〜30 kgμm/mhの範囲にあるものが適している。この水透過速度が上記範囲にあると、エッチング速度やサイドエッチング等のエッチング特性の制御が容易となる。
【0024】
本発明の絶縁樹脂層のエッチング速度が大きく低下しないのは、ポリイミド樹脂層(L)が最初にエッチング液に接触してエッチングされる際、エッチングが不完全又は生じなくても膨潤等の変質が生じ、エッチング液がこの層(L)を浸透して、エッチング速度の速いポリイミド樹脂層(H)をエッチングしてしまうためと考えられる。そして、ポリイミド樹脂層(H)のエッチングが完了したとき、ポリイミド樹脂層(L)がなお残ったとしても、この層は薄いだけでなく、変質してもろいものとなっているため、ポリイミド樹脂層(H)が溶け出す際やエッチング後に洗浄する際に容易に洗い流されて、良好なエッチング形状が得られるためと考えられる。
【0025】
低エッチング速度のポリイミド樹脂層(L)を構成するポリイミド樹脂は、上記のエッチング速度を満足するものであれば、特に限定されないが、次のようなジアミノ化合物及びテトラカルボン酸二無水物から合成されたポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0026】
好ましいジアミノ化合物としては、4,4−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド若しくは4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル等の芳香環に置換基として低級アルキル基を有する芳香族ジアミンから選ばれるジアミノ化合物があり、これらの少なくとも1種のジアミンを30モル%以上、更には50モル%以上用いることが好ましい。より好ましいジアミノ化合物は、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ジアミノジフェニルエーテル又はこれらの芳香環に置換基として低級アルキル基を有する芳香族ジアミンである。
【0027】
また、好ましいテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2’−ヘキサフルオロイソポロポリデン)ジフタル酸ニ無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、m−フェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これのテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上、好ましくは70%モル以上、更に好ましくは80%モル以上使用することがよい。よりこのましいテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物である。
【0028】
高エッチング速度のポリイミド樹脂層(H)を構成するポリイミド樹脂は、上記のエッチング速度を満足するものであれば、特に限定されないが、次のようなジアミノ化合物及びテトラカルボン酸二無水物から合成されたポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0029】
好ましいジアミンとしては、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノ−2’−メトキシベンズアニリド、パラフェニレンジアミン又はメタフェニレンジアミンを挙げることができる。好ましいテトラカルボン酸二無水物としては、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物又は3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
【0030】
上記ポリイミド樹脂は、公知の方法で製造することができる。例えば、ほぼ等モルのテトラカルボン酸二無水物とジアミノ化合物を原料として、溶媒中、反応温度0〜200℃、好ましくは0〜100℃の範囲で反応させることにより、ポリイミド系樹脂の前駆体溶液が得られ、更にこれをイミド化することによりポリイミド樹脂が得られる。なお、ポリイミド系樹脂とはポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリシロキサンイミド、ポリベンズイミダゾールイミドなどの構造中にイミド基を有するポリマーからなる樹脂をいう。
【0031】
上記反応に用いられる溶媒としては、一般的にはN−メチルピロリドン(NMP)、メチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルフォキサイド(DMSO)、硫酸ジメチル、スルフォラン、ブチロラクトン、クレゾール、フェノール、ハロゲン化フェノール、シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライムなどが挙げられる。
【0032】
次に、本発明の積層体の製造方法について説明する。本発明の積層体の製造方法には、公知の種々の方法がありそれらのいずれの方法を適用してもよい。積層体の製造方法の一例を、図を参照しつつ簡単に説明する。
【0033】
図1に示される片面積層体10は、銅箔等の金属箔層1上に、ポリイミド樹脂(L)に変換されるポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布・乾燥した後、ポリイミド樹脂(H)に変換されるポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布、乾燥し、200℃以上の温度、好ましくは300℃以上の温度で熱処理を施すことによりイミド化反応を進行させ絶縁樹脂層9の片面に金属箔1を有する積層体10とすることができる。
【0034】
また、金属箔層を両面に有する積層体を製造する方法としては、上記図1に示した積層体10の絶縁樹脂層側に金属箔を加熱圧着し、絶縁樹脂層の両面に金属箔を有する積層体とすることができる。更に、図2に示すように絶縁樹脂層9を3層以上で形成することも望ましい。この場合、金属箔層1上に、ポリイミド樹脂層(L)に変換されるポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布・乾燥した後、ポリイミド樹脂層(H)に変換されるポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布、乾燥し、更に第二のポリイミド樹脂層(H)又は(L)に変換されるポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布、乾燥し、イミド化後、これに金属箔を加熱圧着することでも絶縁樹脂層9の両面に金属箔層1及び5を有する積層体とすることができる。両面から開孔を行うに適した積層体とする場合は、ポリイミド樹脂層2及び4をいずれもポリイミド樹脂層(L)とすればよい。
【0035】
なお、積層体の製造方法において、イミド化後のポリイミド樹脂の溶媒への溶解性が良好であるならば、ポリイミド樹脂溶液をそのまま塗布することも可能である。また、加熱圧着の方法としては、通常のハイドロプレス、真空タイプのハイドロプレス、オートクレーブ加圧式真空プレス、連続式熱ラミネータなどを使用することができる。この加熱圧着時の熱プレス温度は、特に限定されるものではないが、使用されるポリイミド系樹脂のガラス転移点以上であることが望ましく、更にガラス転移温度より5〜150℃高い温度が好ましい。加熱圧着時の温度が高いと、エッチング速度が遅くなる傾向にあり。温度が低いと、ポリイミド樹脂側と銅箔の接着性が良くない。また、加熱プレス圧力は、使用するプレス機器の種類にもよるが1〜50Mpaが適当である。
【0036】
本発明の積層体をエッチング加工する方法には、本発明のエッチング加工方法が好適に採用できる。一例として図2に示す積層体の加工方法を説明する。ここで、層2及び4はポリイミド樹脂層(L)とし、層3はポリイミド樹脂層(H)とするが、両面側からエッチングをしない場合は、層4は任意に設けられる。
【0037】
まず、図3に示すように金属箔1上にエッチングレジスト層8を設け、これを所定のパターンに形成する。そして、エッチングレジスト開孔部において露出している部分の金属箔1を塩化第二鉄等のエッチング液でエッチング加工する。そして、図4に示すように所定のパターンを形成した金属箔1をマスクとして絶縁樹脂層9を5〜80wt%のアルカリ金属水溶液によりエッチングする。絶縁樹脂層9をエッチングするアルカリ金属水溶液としては上記したものに限られず、広く公知のアルカリ金属水溶液系のエッチング液が使用できる。また、エッチング温度や時間にも公知の条件が使用できるが、エッチング時間はエッチングすべき絶縁樹脂層9の厚さの全部がエッチングされるまでの時間とし、過剰な時間をかけないことが普通である。
【0038】
本発明の加工方法においては、本発明の積層体を用いることで、絶縁樹脂層9のエッチング部分のサイドエッチを少ないものとすることができる。具体的には、図5に示すように開孔部分におけるエッチングすべき絶縁樹脂層9の厚さをhとし、サイドエッチ幅をwとした場合、本発明の加工方法によれば、w/hを0〜0.25の範囲とすることができる。ここで、配線基板のファインパターン形成のためには、w の幅は10μm以下とすることが好ましく、特に好ましくは、0〜5μmの範囲である。
【0039】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例における各種特性の評価は以下の方法による。また、試料のポリイミドにはイミド化が十分に終了したものを用いた。
【0040】
[エッチング速度の測定]
銅箔上にポリイミド樹脂層を形成した積層体を用い、エッチング液に、エチレンジアミン11wt%とエチレングリコール22 wt%を添加した30wt%水酸化カリウム水溶液からなるアルカリ溶液を用いて測定する。まず、銅箔を残したままの状態で80℃のエッチング液に浸漬してポリイミド樹脂が全てなくなる時間を測定し、初期の厚みをエッチングに要した時間で割った値をエッチング速度とした。なお、エッチング速度が極めて遅いポリイミド樹脂に関しては、膜厚が減った量をエッチングに要した時間で割った値をエッチング速度とした。
【0041】
[サイドエッチの評価]
両面銅箔積層板を用い、片側銅箔の一部をφ30μm開孔し、開孔部から露出した絶縁樹脂層を、エッチング速度の評価と同じ条件でエッチングした。絶縁層が完全にエッチングされた後、銅箔の下のサイドエッチングされた距離を電子顕微鏡又は実体顕微鏡にて測定して、図5に示すh、wとw/hの値を求めた。
【0042】
[水透過速度の測定]
上部に供給液室を、下部に透過液室とを備え、両室を有効面積が22cmのポリイミド膜で隔てた測定装置を用いた。供給液室に純水(液温80℃)を100ml入れ、透過液室を真空ポンプにより0.1 torrの減圧とし、液を透過させた。透過物は液体窒素によりトラップ内で凝固させ捕集した。膜の水透過速度は、単位厚み、単位面積、単位時間当たりの水の水透過速度Q(kg・μm/mh)として評価した。
【0043】
実施例等に用いた略号を下記に示す。
・PMDA:ピロメリット酸二無水物
・BAPB:4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル
・BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
・BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・NTDA:ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物
・MABA:4,4’−ジアミノ−2’−メトキシベンズアニリド
・TPE−R:1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
・DANPG:1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン
・p−PDA:パラフェニレンジアミン
・DAPE44:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
・DAPE34:3,4’−ジアミノジフェニルエーテル
・BAPP: 2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
・DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
【0044】
合成例1
低エッチング速度のポリイミド樹脂層(L)用のポリイミド前駆体A〜Gを合成するため、表1に示したジアミノ化合物を500mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤DMAc340gに溶解させた。次いで、窒素気流下で表1に示したテトラカルボン酸二無水物を加えた。その後、溶液を室温に戻し、3時間攪拌を続けて重合反応を行い、ポリイミド前駆体A〜Gの粘稠な溶液を得た。
【0045】
合成例2
低エッチング速度のポリイミド樹脂層(L)用のポリイミド樹脂を合成するため、表1に示した所定の配合量のジアミノ化合物を500mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤in−cresol340gに溶解させた。次いで、窒素気流下で触媒と表1に示したテトラカルボン酸二無水物を加えた。その後、溶液を190℃で10時間加熱し、その後、室温に戻してから更に8時間攪拌し、メタノールにて沈殿、精製し、ポリイミド樹脂Jを得た。各合成例の原料の使用量は表1に示す。
【0046】
A〜Gのポリイミド前駆体溶液をそれぞれ、銅箔上にアプリケータを用いて塗布し、110℃で5分間乾燥した後、更に130℃、160℃、200℃、250℃、300℃、360℃で各3分段階的な熱処理を行い、銅箔上にポリイミド層を形成し、エッチング速度を測定した。
また、合成例2で得たポリイミド樹脂Jを溶かした溶液を銅箔上にアプリケータを用いて塗布し、110℃で5分間乾燥した後、更に130℃、160℃、200℃各3分段階的な熱処理を行い、銅箔上にポリイミド層を形成し、エッチング速度を測定した。
【0047】
結果を表1に示す。エッチング速度が0又は<0は45分間の浸漬後も膨潤等により厚みの減少が認められないか、厚みがわずかに増えたことを意味する。
【0048】
【表1】
Figure 2004296885
【0049】
合成例3
高エッチング速度のポリイミド樹脂層(H)用のポリイミド前駆体Kを合成するため、20.6gのMABA、10.7gのDAPE44を500mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら340gの溶剤DMAcに溶解させた。次いで、その溶液を氷浴で冷却し、窒素気流下で28.8gのPMDAを加えた。その後、3hr攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体の溶液を得た。
【0050】
このポリイミド前駆体Kの溶液を銅箔にアプリケータを用いて塗布し、120℃で5分間乾燥した後、更に110℃で5分間乾燥した後、更に130℃、160℃、200℃、250℃、300℃、360℃で各3分段階的な熱処理を行い銅箔上にポリイミド層を形成した。これについて、エッチング速度を測定したところ、15μm/minであった。
【0051】
実施例1〜4
銅箔上に、A〜Gのポリイミド前駆体樹脂溶液又はJのポリイミド樹脂溶液を、硬化後の厚みが3μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、110℃で3分乾燥した後、その上に合成例3で得られたKのポリイミド前駆体樹脂溶液を硬化後の厚さが22μmになるように塗布し、110℃で10分乾燥した後、更に130℃、160℃、200℃、250℃、300℃、360℃で各3分段階的な熱処理を行い、イミド化を完了させ、銅箔上にポリイミド樹脂層の合計厚み25μmの積層体を得た。
次に、絶縁樹脂層側に銅箔を重ね合わせ、真空プレス機を用いて、面圧15Mpa、300〜330℃で、プレス時間20分の条件で加熱圧着して積層体を得た。この積層体は、銅箔(1)/樹脂層▲1▼/樹脂層▲2▼/銅箔(2)の4層構造を有する。
【0052】
この積層体について、その銅箔層(1)を塩化第二鉄を含む溶液を用いて所定のパターンに加工し、樹脂層の一部を露出させた。次に、80℃にてエチレンジアミン11 wt%とエチレングリコール22wt%を添加した30wt%水酸化カリウム水溶液が入った浴に3分間浸漬した後、液温40℃の温水で洗浄を行った。
その結果、積層体は反対側の銅箔に達して露出するまでにポリイミド樹脂は完全にエッチングされていた。エッチング後の積層体の絶縁樹脂層の断面形状を観察したところ、上記4種の積層体のサイドエッチ量wは5μm以内であり、精度よく加工されていた。
特に、エッチング速度がゼロより小さい樹脂は、ある程度分解されるが、分解物がエッチング液に溶けにくく、溶解したコア層と一緒に溶解し、全体の速度が落ちなかった。
【0053】
実施例5
上記実施例と同様にして銅箔/樹脂層A/樹脂層K/銅箔の層構造を有する積層体を作成した。その際、樹脂層Aの厚さを2μm 、樹脂層Kの厚さを28μmとした。その他は、実施例1と同様に行った。なお、前駆体樹脂溶液Aから生じるポリイミド樹脂層を、簡略化して樹脂層Aとし、以下同様とする。
その結果、30μm厚の樹脂層に対して、サイドエッチング量は2μmであり、w/hは、0.07であった。
【0054】
実施例6
実施例1の積層体について、エッチング時間を3分から2分間に短縮してエッチングを行った。サイドエッチング量を測定したところ、実施例1と同じく2μmであった。
【0055】
比較例1〜3
実施例1と同様にして銅箔(1)/樹脂層▲1▼/樹脂層▲2▼/銅箔(2)の4層構造を有する積層体を3種類製造し、実施例1と同様にエッチング加工を行った。反対側の銅合金箔が露出するまでポリイミド樹脂を完全にし、その積層体の絶縁樹脂層の断面形状を観察したところ、上記3種類の積層体のサイドエッチ量wは5μm以上であった。
結果をまとめて表2に示す。なお、樹脂層の記号は、ポリイミド前駆体樹脂溶液Aから生じるポリイミド樹脂層を樹脂層Aとし、以下同様と理解される。
【0056】
【表2】
Figure 2004296885
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、配線基板に用いられる積層体を湿式エッチングするに適した配線基板用積層体と該積層体の加工方法が提供される。得られた配線基板用積層体は、湿式エッチング時に従来問題とされていたサイドエッチングが少なく、ファインパターンを形成するに適している。また、絶縁樹脂層の層構成によっては、エッチング速度が速く、また両面からの湿式エッチングに適した配線基板用積層体をも提供可能であり、その産業上の利用価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】積層体の断面図
【図2】積層体の断面図
【図3】エッチング工程の説明図
【図4】エッチング工程の説明図
【図5】エッチングされた積層体の断面図
【符号の説明】
1、5 金属箔層
2、3、4 ポリイミド樹脂層
9 絶縁樹脂層
10 積層体

Claims (6)

  1. 絶縁樹脂層と金属箔層とからなる配線基板用積層体において、絶縁樹脂層は、エチレンジアミン11wt%とエチレングリコール22 wt%を添加した30wt%水酸化カリウム水溶液をエッチング液として使用し、80℃でエッチングしたときのエッチング速度が1μm/min以下であるポリイミド樹脂層(L)とエッチング速度が5μm/min以上のポリイミド樹脂層(H)からなる2層以上のポリイミド樹脂層から構成され、ポリイミド樹脂層(L)は金属箔層と接する層にのみ配置され、その厚みが5μm以下であることを特徴とする湿式エッチング向け配線基板用積層体。
  2. ポリイミド樹脂層(H)のエッチング速度が10μm/min以上であり、その厚さが5〜50μmである請求項1記載の積層体。
  3. ポリイミド樹脂層(H)とポリイミド樹脂層(L)のエッチング速度の比が100以上である請求項1又は2記載の積層体。
  4. 積層体の片面又は両面に金属箔を有し、金属箔が銅箔である請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
  5. ポリイミド樹脂層(L)が、テトラカルボン酸二無水物がピロメリット酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−m−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物及び1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含有するテトラカルボン酸二無水物と、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル及び芳香環に置換基として低級アルキル基を有する芳香族ジアミンから選ばれる少なくとも1種のジアミンを50モル%以上含有するジアミノ化合物とを反応させて得られるポリイミド樹脂の層である請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の積層体の金属箔上にエッチングレジスト層を設け、これを所定のパターンに形成し、エッチングレジスト開孔部において露出している金属箔をエッチングした後、所定のパターンにエッチングされた金属箔をマスクとして絶縁樹脂層を5〜80wt%のアルカリ金属水溶液によりエッチングし、開孔部分におけるサイドエッチング幅(w)とエッチング深さ(h)との関係で表されるw/hを0.25以下とすることを特徴とする配線基板用積層体のエッチング加工方法。
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