JP2004296820A - 半導体装置の製造方法及び基板処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】薄膜と基板との界面に低誘電率界面層が形成されるのを防止しつつ、不純物含有量の少ない薄膜を基板上に効率良く形成する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、成膜工程と改質工程とを備える。成膜工程では、成膜原料供給ユニット9からの原料ガスをシャワーヘッド6より反応室1内に供給して、回転する基板4上にハフニウムを含む薄膜を形成する。改質工程では、反応物活性化ユニット11で生成した酸素を含まない反応物であるアルゴンラジカルを、成膜ガスを供給するのと同一のシャワーヘッド6から供給して、成膜工程において形成した膜中の不純物元素を除去する。制御装置25によって、同一反応室1内で前記成膜工程と改質工程とを連続して複数回繰り返して半導体装置を形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】半導体装置の製造方法は、成膜工程と改質工程とを備える。成膜工程では、成膜原料供給ユニット9からの原料ガスをシャワーヘッド6より反応室1内に供給して、回転する基板4上にハフニウムを含む薄膜を形成する。改質工程では、反応物活性化ユニット11で生成した酸素を含まない反応物であるアルゴンラジカルを、成膜ガスを供給するのと同一のシャワーヘッド6から供給して、成膜工程において形成した膜中の不純物元素を除去する。制御装置25によって、同一反応室1内で前記成膜工程と改質工程とを連続して複数回繰り返して半導体装置を形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に薄膜を形成する基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工程の1つに基板(シリコンウェハやガラスなどをベースとする微細な電気回路のパターンが形成された被処理基板)の表面に所定の成膜処理を行うCVD(Chemical Vapor Deposition)工程がある。これは、気密な反応室に基板を装填し、室内に設けた加熱手段により基板を加熱し、成膜ガスを基板上へ導入しながら化学反応を起こし、基板上に設けた微細な電気回路のパターン上へ薄膜を均一に形成するものである。このような反応室では、薄膜は基板以外の構造物へも形成される。図9に示すCVD装置では、反応室1内にシャワーヘッド6とサセプタ2を設け、サセプタ2上に基板4を載置している。成膜ガスは、シャワーヘッド6に接続された原料供給管5を通って反応室1内へ導入され、シャワーヘッド6に設けた多数の孔8より基板4上へ供給される。基板4上へ供給されたガスは、排気管7を通って排気処理される。尚、基板4はサセプタ2の下方に設けたヒータ3によって加熱される。
【0003】
このようなCVD装置として、成膜原料に有機化学材料を使ってアモルファスHfO2膜やアモルファスHfシリケート膜(以下、単にHfO膜と略す)を形成するMOCVD(Metal Organic Chemical VaporDeposition)装置や、ALD(Atomic Layer Deposition)装置がある。ここで、MOCVD装置で実施するCVD法と、ALD装置で実施するALD法との違いは次の通りである。ALD法は処理温度、圧力が低く、膜を1原子層ずつ形成する。これに対して、CVD法は、ALD法よりも処理温度、圧力は高く、膜を略1/6原子層〜数十原子層ずつ形成する。
【0004】
成膜原料としては、Hf[OC(CH3)3]4(以下、Hf−(OtBu)4と略す)、Hf[OC(CH3)2CH2OCH3]4(以下、Hf−(MMP)4と略す(MMP:メチルメトキシプロポキシ))、Hf[O−Si−(CH3)]4などが使用されている。
【0005】
このなかで、例えばHf−(OtBu)4、Hf−(MMP)4など、多くの有機材料は常温常圧において液相である。このため、例えばHf−(MMP)4は加熱して蒸気圧により気体に変換して利用されている。このような原料を利用して前記のCVD法を用いて例えば基板温度450℃以下でHfO膜を形成する。このHfO膜は、有機材料に起因するCH、OHなどの不純物が数%と多量に含まれている。その結果、物質の電気的性質を示す区分としては、絶縁体を確保したいとの意図に反して半導体、あるいは導体に属することになる。
【0006】
このような薄膜の電気的絶縁性、およびその安定性を確保するため、HfO膜をO2やN2雰囲気中で650℃〜800℃前後の高速アニール処理(以下、RTA[ラピッドサーマルアニーリング]と略す)を施すことにより、CやHを離脱させて緻密化し安定した絶縁体薄膜に変換しようとする試みが、従来より行われている。ここでRTAの目的は、膜中のC、H等の不純物を離脱するとともに、緻密化することである。緻密化は、結晶化まではさせないが、アモルファス状態の平均原子間距離を縮めるために行なう。しかしながら、RTA処理によりHfO膜からC、Hを離脱させると、その表面状態は平坦性を失い凹凸な表面状態に変化するという問題が生じる。また、RTA処理によりHfO膜は部分的に結晶化しやすく、その結晶粒界を通って大きな電流が流れやすくなり、絶縁性やその安定性がかえって損なわれるという問題が生じる。これらの問題は、絶縁物に限らず全ての有機化学材料を用いたMOCVD法あるいはALD法を利用した薄膜堆積方法に共通する。
【0007】
また、反応室1では、基板以外の構造物にも薄膜が形成される。これを累積膜といい、この累積膜にもC、Hが多量に混入している。このため、処理した基板枚数の増加と共に、累積膜から離脱するC、H量は増加し、基板上に形成されるHfO膜に含まれるC、H混入量は処理基板枚数の増加と共に徐々に増加することになる。この現象により、連続して生産されるHfO膜の品質を一定に
することが非常に難しくなっている。このような憂慮すべき事象を解決するため、セルフクリーニングによる累積膜の除去処理を頻繁に実施することが必要になり、それが生産性を低下させる要因になっている。
【0008】
上述したようにアモルファス薄膜を形成する従来の技術では、RTA処理によりHfO膜の表面状態が平坦性を失い凹凸な表面状態に変化したり、HfO膜が部分的に結晶化して結晶粒界が発生し、絶縁性やその安定性が低くなるという問題があった。
【0009】
また、連続して生産されたHfO膜の品質を一定にするために、C、Hが多量に混入する累積膜のクリーニング処理を頻繁に実施することが必要になり、生産性が低下するという問題があった。
【0010】
なお、HfO膜に関するものではないが、薄膜形成技術として、Ta2O5成膜と改質処理を同一反応室内で複数回繰り返す方法(例えば、特許文献1参照)、高誘電率酸化膜、強誘電体酸化膜の成膜と、酸化雰囲気ガスを用いて生成したプラズマを用いた熱処理を同一反応室内で複数回繰り返す方法(例えば、特許文献2参照)、金属膜の形成と窒化剤ガス導入による金属窒化物膜形成を複数回繰り返す方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−50622号公報
【特許文献2】
特開平11−177057号公報
【特許文献3】
特開平11−217672号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上述した特許文献1〜3に記載された従来技術を用いて、金属酸化膜を形成しようとしても、成膜工程の際、原料ガス以外に酸素原子を含むガスを用いて金属酸化膜を形成するので、改質工程の際、金属酸化膜中の特定元素を有効に除去できず、膜の改質が十分ではなかった。
【0014】
また、成膜ガスと反応物とが異なる供給口より供給されるので、供給口の内部に付着した異物が基板上へ落ちてくることを抑制できず、また、クリーニングしても供給口内部に吸着している副生成物やクリーニングガスの除去が十分ではなかった。
【0015】
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解消して、改質工程の際、金属酸化膜中の特定元素を有効に除去することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。また、本発明の課題は、供給口の内部に付着した異物が基板上へ落ちてくることを抑制でき、クリーニングによって供給口内部に吸着している副生成物やクリーニングガスを除去することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。また、本発明の課題は、Hfを含む膜中の特定元素を速やかに除去することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。さらに、本発明の課題は、スループットを向上することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、原料ガスを用いて基板上に薄膜を形成する成膜工程と、酸素原子を含まない反応物を用いて成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程と、を連続して複数回繰り返すことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、前記成膜工程と改質工程は同一反応室内で行われることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0018】
第3の発明は、第1の発明において、前記反応物とはアルゴンガスを活性化したガスであることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0019】
第4の発明は、第1の発明において、前記反応物とはアルゴンガスをプラズマにより活性化したガスであることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0020】
第5の発明は、第1の発明において、前記反応物とはアルゴンガスをプラズマにより活性化することにより生成したアルゴンラジカルであることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0021】
第6の発明は、第1の発明において、前記薄膜とはHfを含む膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0022】
第7の発明は、第1の発明において、前記原料とはHf[OC(CH3)2CH2OCH3]4であり、前記薄膜とはHfを含む膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0023】
第8の発明は、第1の発明において、前記薄膜とはHfを含む膜であり、1回の成膜工程で形成する薄膜の膜厚が0.5Å〜30Åであることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0024】
第9の発明は、第2の発明において、前記成膜工程で基板に供給する原料ガスと、改質工程で基板に供給する反応物とを同一の供給口より供給することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0025】
第10の発明は、第2の発明において、前記成膜工程で基板に供給する原料ガスと、改質工程で基板に供給する反応物はそれぞれ別々の供給口より供給するとともに成膜工程で原料ガス用の供給口より基板に原料ガスを供給する際は反応物用の供給口に非反応性ガスを供給し、改質工程で反応物用の供給口より基板に反応物を供給する際は、原料ガス用の供給口に非反応性ガスを供給することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0026】
第11の発明は、第2の発明において、成膜工程で基板に原料ガスを供給する際は、改質工程で使用する反応物は停止させることなく反応室をバイパスするよう排気しておき、改質工程で基板に反応物を供給する際は成膜工程で使用する原料ガスは停止させることなく反応室をバイパスするよう排気しておくことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0027】
第12の発明は、第1の発明において、前記成膜工程では、原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく薄膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0028】
第13の発明は、第1の発明において、前記成膜工程または/および改質工程は基板を回転させながら行うことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0029】
第14の発明は、原料ガスを用いて基板上に薄膜を形成する成膜工程と、アルゴンガスをプラズマにより活性化したガスを用いて成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程と、を連続して複数回繰り返すことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0030】
第15の発明は、酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを用い、原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく基板上に薄膜を形成する成膜工程と、酸素原子を含まない反応物を用いて成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程と、を連続して複数回繰り返すことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0031】
第16の発明は、基板を処理する反応室と、前記反応室内に酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを供給する第1供給口と、前記反応室内に前記ガスとは異なる反応物を供給する第2供給口と、前記反応室内を排気する排気口とを備え、前記反応室内で前記原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく前記基板上に金属酸化膜を形成する成膜工程と、前記原料ガスとは異なる反応物を用いて前記成膜工程において形成した前記金属酸化膜の改質を行う改質工程とを連続して複数回繰り返すように制御する制御装置とを有する基板処理装置である。
【0032】
Hfを含む膜の例として、HfO2、HfON、HfSiO、HfSiON、HfAlO、HfAlONなどがある。また、H
fを含む膜以外の膜の例としては、下記のものがある。
PET(Ta(OC2H5)5)を利用したTaO膜(酸化タンタル膜)
Zr−(MMP) 4を利用したZrO膜(酸化ジルコニウム膜)
Al−(MMP) 3を利用したAlO膜(酸化アルミニウム膜)
Zr−(MMP) 4とSi−(MMP) 4を利用したZrSiO膜(酸化Zrシリケート膜)やZrSiON膜(酸窒化Zrシリケート膜)
Zr−(MMP) 4とAl−(MMP) 3を利用したZrAlO膜やZrAlON膜
Ti−(MMP) 4を利用したTiO膜(酸化チタン膜)
Ti−(MMP) 4とSi−(MMP) 4を利用したTiSiOやTiSiON膜
Ti−(MMP) 4とAl−(MMP) 3を利用したTiAlO、TiAlON膜
【0033】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。実施の形態では、CVD法、より具体的にはMOCVD法を使って、HfO膜のうち特にアモルファス状態のHfO2膜(以下、単にHfO2膜と略す)を形成する場合について説明する。
【0034】
図1は実施の形態に係る基板処理装置である枚葉式CVD装置の一例を示す概略図である。従来の反応室1(図9)に対して、プラズマ源となる反応物活性化ユニット11、基板回転ユニット12、不活性ガス供給ユニット10、バイパス管14を主に追加してある。
【0035】
図に示すように、反応室1内に、上部開口がサセプタ2によって覆われた中空のヒータユニット18が設けられる。ヒータユニット18の内部にはヒータ3が設けられ、ヒータ3によってサセプタ2上に載置される基板4を加熱するようになっている。サセプタ2上に載置される基板4は、例えば半導体シリコンウェハ、ガラス等である。
【0036】
反応室1外に基板回転ユニット12が設けられ、基板回転ユニット12によって反応室1内のヒータユニット18を回転して、サセプタ2上の基板4を回転できるようになっている。基板4を回転させるのは、後述する成膜工程、改質工程における基板への処理を基板面内において素早く均一に行うためである。
【0037】
また、反応室1内のサセプタ2の上方に多数の孔8を有するシャワーヘッド6が設けられる。このシャワーヘッド6には、成膜ガスを供給する原料供給管5とラジカルを供給するラジカル供給管13とが共通に接続されて、成膜ガス又はラジカルをシャワーヘッド6からシャワー状に反応室1内へ噴出できるようになっている。ここで、シャワーヘッド6は、成膜工程で基板4に供給する成膜ガスと、改質工程で基板4に供給するラジカルとをそれぞれ供給する同一の供給口を構成する。
【0038】
反応室1外に、成膜原料としての有機液体原料を供給する成膜原料供給ユニット9と、成膜原料の液体供給流量を制御する流量制御手段としての液体流量制御装置28と、成膜原料を気化する気化器29とが設けられる。非反応ガスとしての不活性ガスを供給する不活性ガス供給ユニット10と、不活性ガスの供給流量を制御する流量制御手段としてのマスフローコントローラ46が設けられる。成膜原料としてはHf−(MMP)4などの有機材料を用いる。また、不活性ガスとしてはAr、He、N2などを用いる。成膜原料供給ユニット9に設けられた原料ガス供給管5bと、不活性ガス供給ユニット10に設けられた不活性ガス供給管5aとを一本化して、シャワーヘッド6に接続される原料供給管5が設けられる。原料供給管5は、基板4上にHfO2膜を形成する成膜工程で、シャワーヘッド6に成膜ガスと不活性ガスとの混合ガスを供給するようになっている。原料ガス供給管5b、不活性ガス供給管5aにはそれぞれバルブ21、20を設け、これらのバルブ21、20を開閉することにより、成膜ガスと不活性ガスとの混合ガスの供給を制御することが可能となっている。
【0039】
また、反応室1外に、ガスをプラズマにより活性化させて反応物としてのラジカルを形成するプラズマ源となる反応物活性化ユニット(リモートプラズマユニット)11が設けられる。改質工程で用いるラジカルは、原料としてHf−(MMP)4などの有機材料を用いる場合は、例えば酸素ラジカルが良い。これは酸素ラジカルにより、HfO2膜形成直後にCやHなどの不純物除去処理を効率的に実施することができるからである。また、クリーニング工程で用いるラジカルはClF3ラジカルが良い。改質工程において、酸素含有ガス(O2、N2O、NO等)をプラズマによって分解した酸素ラジカル雰囲気中で、膜を酸化させる処理をリモートプラズマ酸化処理(RPO[Remote Plasma Oxidation]処理)という。
【0040】
反応物活性化ユニット11の上流側には、ガス供給管37が設けられる。このガス供給管37には、酸素(O2)を供給する酸素供給ユニット47、プラズマを発生させるガスであるアルゴン(Ar)を供給するAr供給ユニット48、及びフッ化塩素(ClF3)を供給するClF3供給ユニット49が、供給管52、53、54を介して接続されて、改質工程で使用するO2とAr、及びクリーニング工程で使用するClF3を反応物活性化ユニット11に対し供給するようになっている。酸素供給ユニット47、Ar供給ユニット48、及びClF3供給ユニット49には、それぞれのガスの供給流量を制御する流量制御手段としてのマスフローコントローラ55、56、57が設けられている。供給管52、53、54にはそれぞれバルブ58、59、60を設け、これらのバルブ58、59、60を開閉することにより、O2ガス、Arガス、及びClF3の供給を制御することが可能となっている。
【0041】
反応物活性化ユニット11の下流側には、シャワーヘッド6に接続されるラジカル供給管13が設けられ、改質工程又はクリーニング工程で、シャワーヘッド6に酸素ラジカル又はフッ化塩素ラジカルを供給するようになっている。また、ラジカル供給管13にはバルブ24を設け、バルブ24を開閉することにより、ラジカルの供給を制御することが可能となっている。
【0042】
反応室1に排気口7aが設けられ、その排気口7aは除害装置(図示せず)に連通する排気管7に接続されている。排気管7には、成膜原料を回収するための原料回収トラップ16が設置される。この原料回収トラップ16は、成膜工程と改質工程とに共用で用いられる。前記排気口7a及び排気管7で排気ラインを構成する。
【0043】
また、原料ガス供給管5b及びラジカル供給管13には、排気管7に設けた原料回収トラップ16に接続される原料ガスバイパス管14a及びラジカルバイパス管14b(これらを単に、バイパス管14という場合もある)がそれぞれ設けられる。原料ガスバイパス管14a及びラジカルバイパス管14bに、それぞれバルブ22、23を設ける。これらのバルブの開閉により、成膜工程で反応室1内の基板4に成膜ガスを供給する際は、改質工程で使用するラジカルの供給は停止させずに反応室1をバイパスするようラジカルバイパス管14b、原料回収トラップ16を介して排気しておく。また、改質工程で基板4にラジカルを供給する際は、成膜工程で使用する成膜ガスの供給は停止させずに反応室1をバイパスするよう原料ガスバイパス管14a、原料回収トラップ16を介して排気しておく。
【0044】
そして、反応室1内で基板4上にHfO2膜を形成する成膜工程と、成膜工程で形成したHfO2膜中の特定元素であるC、H等の不純物を反応物活性化ユニット11を用いたプラズマ処理により除去する改質工程とを、前記バルブ20〜24の開閉等を制御することにより、連続して複数回繰り返すように制御する制御装置25が設けられている。
【0045】
次に上述した図1のような構成の枚葉式CVD装置を用いて、従来とは異なる高品質なHfO2膜を堆積するための手順を示す。この手順には、昇温工程、成膜工程、パージ工程、改質工程が含まれる。
【0046】
まず、図1に示す反応室1内のサセプタ2上に基板4を載置し、基板4を基板回転ユニット12により回転させながら、ヒータ3に電力を供給して基板4の温度を350〜500℃に均一に加熱する(昇温工程)。尚、基板温度は用いる有機材料の反応性により異なるが、Hf−(MMP)4においては、390〜450℃の範囲内が良い。また、基板4の搬送時や基板加熱時は、不活性ガス供給管5aに設けたバルブ20を開けて、Ar、He、N2などの不活性ガスを常に流しておくとパーティクルや金属汚染物の基板4への付着を防ぐことができる。
【0047】
昇温工程終了後、成膜工程に入る。成膜工程では、成膜原料供給ユニット9から供給した有機液体原料例えばHf−(MMP)4を、液体流量制御装置28で流量制御し、気化器29へ供給して気化させる。原料ガス供給管5bに設けたバルブ21を開くことにより、気化した原料ガスをシャワーヘッド6を介して基板4上へ供給する。このときも、バルブ20を開いたままにして、不活性ガス供給ユニット10から不活性ガス(N2など)を常に流して、成膜ガスを撹拌させるようにする。成膜ガスは不活性ガスで希釈すると撹拌しやすくなる。原料ガス供給管5bから供給される成膜ガスと、不活性ガス供給管5aから供給される不活性ガスとは原料供給管5で混合され、混合ガスとしてシャワーヘッド6に導びかれ、多数の孔8を経由して、サセプタ2上の基板4上へシャワー状に供給される。なお、このときO2等の酸素原子を含むガスは供給せず、反応性ガスとしてはHf−(MMP)4ガスのみ供給する。
【0048】
この混合ガスの供給を所定時間実施することにより、基板4上に基板との界面層(第1の絶縁層)としてのHfO2膜を0.5Å〜30Å、例えば15Å形成する。この間、基板4は回転しながらヒータ3により所定温度(成膜温度)に保たれているので、基板面内にわたり均一な膜を形成できる。次に、原料ガス供給管5bに設けたバルブ21を閉じて、原料ガスの基板4への供給を停止する。なお、この際、原料ガスバイパス管14aに設けたバルブ22を開き、成膜ガスの供給を原料ガスバイパス管14aで反応室1をバイパスして排気し、成膜原料供給ユニット9からの成膜ガスの供給を停止しないようにする。液体原料を気化して、気化した原料ガスを安定供給するまでには時間がかかるので、成膜ガスの供給を停止させずに、反応室1をバイパスするように流しておくと、次の成膜工程では流れを切換えるだけで、直ちに成膜ガスを基板4へ供給できる。
【0049】
成膜工程終了後、パージ工程に入る。パージ工程では、反応室1内を不活性ガスによりパージして残留ガスを除去する。なお、成膜工程ではバルブ20は開いたままにしてあり、反応室1内には不活性ガス供給ユニット10から不活性ガス(N2など)が常に流れているので、バルブ21を閉じて原料ガスの基板4への供給を停止すると同時にパージが行われることとなる。
【0050】
パージ工程終了後、改質工程に入る。改質工程はRPO(Remote Plasma Oxidation)処理によって行う。ここでRPO処理とは、酸素含有ガス(O2、N2O、NO等)をプラズマによって活性化させて発生させた反応物としての酸素ラジカルを用いて、膜を酸化させるリモートプラズマ酸化処理のことである。改質工程では、供給管53に設けたバルブ59を開き、Ar供給ユニット48から供給したArをマスフローコントローラ56で流量制御して反応物活性化ユニット11へ供給し、Arプラズマを発生させる。Arプラズマを発生させた後、供給管52に設けたバルブ58を開き、酸素供給ユニット47から供給したO2をマスフローコントローラ55で流量制御してArプラズマを発生させている反応物活性化ユニット11へ供給し、O2を活性化する。これにより酸素ラジカルが生成される。ラジカル供給管13に設けたバルブ24を開き、反応物活性化ユニット11から酸素ラジカルを含むガスを、シャワーヘッド6を介して基板4上へ供給する。この間、基板4は回転しながらヒータ3により所定温度(成膜温度と同一温度)に保たれているので、成膜工程において基板4上に形成された15ÅのHfO2膜よりC、H等の不純物を素早く均一に除去できる。
【0051】
その後、ラジカル供給管13に設けたバルブ24を閉じて、酸素ラジカルの基板4への供給を停止する。なお、この際、ラジカルバイパス管14bに設けたバルブ23を開くことにより、酸素ラジカルを含むガスの供給を、ラジカルバイパス管14bで反応室1をバイパスして排気し、酸素ラジカルの供給を停止しないようにする。酸素ラジカルは生成から安定供給するまでに時間がかかるので、酸素ラジカルの供給を停止させずに、反応室1をバイパスするように流しておくと、次の改質工程では、流れを切換えるだけで、直ちにラジカルを基板4へ供給できる。
【0052】
改質工程終了後、再びパージ工程に入る。パージ工程では、反応室1内を不活性ガスによりパージして残留ガスを除去する。なお、改質工程でもバルブ20は開いたままにしてあり、反応室1内には不活性ガス供給ユニット10から不活性ガス(N2など)が常に流れているので、酸素ラジカルの基板4への供給を停止すると同時にパージが行われることとなる。
【0053】
パージ工程終了後、再び成膜工程に入り、原料ガスバイパス管14aに設けたバルブ22を閉じて、原料ガス供給管5bに設けたバルブ21を開くことにより、成膜ガスをシャワーヘッド6を介して基板4上へ供給し、また15ÅのHfO2膜を、前回の成膜工程で形成した薄膜上に堆積する。
【0054】
以上のような、成膜工程→パージ工程→改質工程→パージ工程を複数回繰り返すというサイクル処理により、CH、OHの混入が極めて少ない所定膜厚の薄膜を形成することができる。
【0055】
ここで、Hf−(MMP)4を用いた場合の好ましい成膜条件は、次の通りである。温度範囲は400〜450℃、圧力範囲は100Pa程度以下である。温度については、400℃より低くなると膜中に取り込まれる不純物(C、H)の量が急激に多くなる。400℃以上になると、不純物が離脱し易くなり、膜中に取り込まれる不純物量が減少する。また、450℃より高くなるとステップカバレッジが悪くなるが、450℃以下の温度であると、良好なステップカバレッジが得られ、また、アモルファス状態を保つこともできる。
【0056】
また、圧力については、例えば1TORR(133Pa)以上の高い圧力とするとガスは粘性流となり、パターン溝の奥までガスが入って行かなくなる。ところが、100Pa程度以下の圧力とすることにより、流れを持たない分子流とすることができ、パターン溝の奥までガスが行き届く。
【0057】
また、Hf−(MMP)4を用いた成膜工程に連続して行なう改質工程であるRPO(Remote Plasma Oxidation)処理の好ましい条件は、温度範囲は390〜450℃程度(成膜温度と略同一温度)、圧力範囲は100〜1000Pa程度である。また、ラジカル用のO2流量は100sccm、不活性ガスAr流量は1slmである。
【0058】
成膜工程と、改質工程は、略同一温度で行なうのが好ましい(ヒータの設定温度は変更せずに一定とするのが好ましい)。これは、温度変動を生じさせないことにより、シャワーヘッドやサセプタ等の周辺部材の熱膨張によるパーティクルが発生しにくくなり、また、金属部品からの金属の飛び出し(金属汚染)を抑制できるからである。
【0059】
尚、クリーニングガスラジカルによる累積膜のセルフクリーニング工程を実施するには、反応物活性化ユニット11でクリーニングガス(Cl2やClF3など)をラジカルにして反応室1に導入する。このセルフクリーニングにより、反応室1でクリーニングガスと累積膜とを反応させ、累積膜を塩化金属などに変換して揮発させて、これを排気する。これにより反応室内の累積膜が除去される。
【0060】
上述した実施の形態によれば、HfO2膜形成→改質処理(RPO処理)→HfO2膜形成→…を複数回繰り返すというサイクル処理をしているので、CH、OHの混入が極めて少ない所定膜厚のHfO2膜を形成することができる。以下、これを次の観点から具体的に説明する。
(1)成膜時O2の不使用
(2)RPO処理
(3)サイクル処理
(4)回転機構
(5)シャワーヘッドの共有
(6)変形例
【0061】
(1)成膜時O2の不使用
成膜工程におけるHfO2膜の成膜時に、原料ガス以外には酸素(O2)等の酸素原子を含むガスを用いないようにすると、膜中のCH、OHの混入量を少なくできる。
【0062】
HfO2膜を形成する際、原料ガスと不活性ガスの混合ガス中にO2を混合するケースもある。これは下地に対する密着性、成膜レートを考慮すると、一般的には原料ガスと一緒にO2を入れた方がよいからである。しかし、本発明者らは、実験によりHf−(MMP) 4については、O2を入れない方が不純物の混入量が減り膜質が向上し、逆にO2を入れた方が不純物の混入量が増え膜質が低下することを見い出した。従って、成膜原料としてHf−(MMP)4を用いる実施の形態では、O2を混合しない方が、膜中のCH、OHの混入量を少なくできるため、O2を混合していない。
【0063】
Hf−(MMP)4を用いる場合に、酸素を供給しない方が不純物の混入量を少なくできるメカニズムは次の通りである。Hf−(MMP)4を用いて酸素を混合する場合(以下、酸素ありともいう)、酸素を混合しない場合(以下、酸素なしともいう)で理想的な化学反応式を比較すると次のようになる。
【0064】
A.酸素なしで理想的な反応が起こった場合(熱のみによる理想的な自己分解反応):
Hf[OC(CH3) 2CH2OCH3] 4→Hf(OH) 4+4C(CH3) 2CH2OCH2↑ (1)
Hf(OH) 4→HfO2+2H2O (2)
B.酸素ありで理想的な反応が起こった場合(完全燃焼の場合):
Hf[OC(CH3) 2CH2OCH3] 4+24O2→HfO2+16CO2↑+22H2O↑ (3)
ただし、↑は揮発性物質を意味する。
上記の反応化学式で、大文字の数値は、そのまま基板上における原料のモル比と考えると、酸素なしでは、
HfO2:(その他の不純物)=1:(4+2)=1:6
となる。酸素ありでは、
HfO2:(その他の不純物)=1:(16+22)=1:38となる。
【0065】
したがって、1モルのHfO2を生成する時に発生する不純物の総モル数は、酸素ありの方が大きくなる。
【0066】
さらに、各結合を切断するための化学式上の切断回数を比較すると、酸素なしの場合:O−C、C−H、O−Hの切断が各4回、計12回酸素ありの場合:O−Cが12回、C−Hが44回、計56回
この切断回数が多いほど、ラジカル量が多くなるので、膜中に不純物が混入しやすくなる。
【0067】
結論として酸素なしで成膜し、上記式(1)の[C(CH3) 2CH2OCH3]を分解させない温度で揮発させ、HfO2膜を成膜するとよい。
【0068】
ここで、原料の自己分解反応、半自己分解反応、吸着反応を用いたそれぞれの成膜のメカニズム、温度帯について、本発明との関係を説明する。全てのCVD反応は自己分解反応、吸着反応が重なり合っている状態になっている。基板温度を下げれば吸着反応が主体的になり、温度を上げれば自己分解反応が主体的になる。その中間の温度とすれば半自己分解反応も生じる。Hf−(MMP)4を用いる場合では、300℃以下が吸着反応主体となり、それより温度が高ければ自己分解反応が主体的になっていると考えられる。しかし、どの温度帯でも吸着反応が全く無くなるわけではない。Hf−(MMP)4の自己分解反応の反応式は、上記式(1)、式(2)のとおりである。また、吸着反応により基板上にHf−(MMP)4を吸着させ、RPO処理等により酸化させて成膜反応を生じさせる場合の反応式は、上述の気相でHf−(MMP)4とO2とが反応する場合(気相反応)と同じで、上記式(3)のとおりである。本発明におけるMOCVDでは、上記のいずれの反応が主体的であってもRPOによる不純物除去効果が得られるので、特に反応形式を特定するものではないが、自己分解反応を主体的としたほうが不純物がより少なくできるという実験結果が得られている。
【0069】
(2)RPO処理
成膜後の改質工程で用いるRPO処理により、膜中の水素(H)や炭素(C)などの不純物を有効に除去でき、その濃度を低減できるので、電気特性を向上させることができる。また、水素(H)の離脱によってHf原子の移動が抑制され結晶化を防ぎ、電気特性を向上させることができる。また膜の酸化を促進することもでき、さらに膜中の酸素欠陥を補修できる。また、反応室内壁やサセプタ等の基板以外の部分に堆積した累積膜からの離脱ガスを素早く低減でき、再現性の高い膜厚制御が可能となる。
【0070】
なお、実施の形態では、改質工程でRPO処理を用いているが、本発明はこれに限定されない。RPO処理(下記▲1▼)の代替物としては、例えば次のようなものがある(下記▲2▼〜▲9▼)。
▲1▼Ar(不活性ガス)にO2を混合させて行うRPO処理
▲2▼ArにN2を混合させて行うRPN処理
▲3▼ArにN2とH2を混合させて行うRPNH処理
▲4▼ArにH2を混合させて行うRPH処理
▲5▼ArにH2Oを混合させて行うRPOH処理
▲6▼ArにO2とH2を混合させて行うRPOH処理
▲7▼ArにN2Oを混合させて行うRPON処理
▲8▼ArにN2とO2を混合させて行うRPON処理
▲9▼Arのみを用いて行うRPAr処理
【0071】
また、実施の形態では同一反応室でHfO2膜形成とRPO処理を行っているが、そのメリットは、次の通りである。HfO2膜を成膜すると反応室内壁やシャワーヘッドやサセプタ等にもHfO2膜が形成される。これを累積形成膜と呼ぶ。別々の反応室で行う場合、RPO処理を行わないHfO2膜反応室では、この累積形成膜からC、Hが出てきて反応室内が汚染されることとなる。また累積形成膜から出てくるC、H量は、その厚みの増加とともに多くなっていく。従って、全ての被処理基板のC、H量を一定にすることが難しい。
【0072】
これに対して、HfO2膜形成とRPO処理を同一反応室で実施する場合においては、基板上に形成した膜中のC、Hのみならず、反応室内に付着した累積形成膜からもC、Hを除去できるため(クリーニング効果)、全ての基板についてC、H含有量を一定にすることができる。
【0073】
(3)サイクル処理
サイクル処理により、既述のように膜中の不純物除去効率を向上させることができる。また、膜をアモルファス状態に維持することができ、結果としてリーク電流を低減することができる。また、膜表面の平坦性を改善することができ、膜厚均一性を向上させることができる。この他、膜を緻密化することもできるし(欠陥補修効果の最大化)、堆積速度の精密な制御も可能となる。さらには、成膜の下地と、堆積する膜の界面に形成される望ましくない界面層を薄くできる。
【0074】
サイクル処理で形成したHfO2膜(例えば膜厚10nm)に含まれているC、Hの不純物量は、図2のようにサイクル数の増加に従って大幅に減少させることができる。横軸にサイクル数、縦軸にC、Hの総量(任意単位)を示している。尚、サイクル数が1のときが従来方法によるものに相当する。
【0075】
図2によれば、サイクル処理により形成するHfO2膜のトータル膜厚が10nm(100Å)のとき3サイクル程度でCH、OHなどのHfO2膜中の不純物量の低減効果が大きくなることから、1サイクル当りの膜厚は30Å程度以下が好ましい。なお、CVDでは、1度の成膜で形成できる膜厚は0.5Å程度であることから、1サイクル当たりの膜厚は、0.5Å〜30Åとするのが好ましい。特に、7サイクル程度でCH、OHなどのHfO2膜中の不純物量の低減効果は極めて大きくなり、それ以上サイクル数を増やしても、不純物量の低減効果は若干よくなるものの、さほど変化はなくなることから、1サイクル当りの膜厚は15Å程度(5原子層)がより好ましいと考えられる。1サイクルで30Å以上堆積すると膜中の不純物が多くなり、即座に結晶化して多結晶状態となってしまう。多結晶状態というのは隙間がない状態なので、C、H等を除去しにくくなる。しかし、1サイクルにより形成される膜厚が30Åより薄い場合は、結晶化構造を作りにくくなり、不純物があっても薄膜をアモルファス状態に維持できる。アモルファス状態というのは隙間が多い(スカスカな状態)ので、アモルファス状態を維持して薄膜を堆積し、薄膜が結晶化する前にRPO処理を行うことにより膜中のC、H等の不純物を除去し易くなる。すなわち、1サイクル当たりの膜厚を0.5Å〜30Å程度として複数回のサイクル処理で得られた膜は結晶化しにくい状態となる。なおアモルファス状態の方が、多結晶状態よりもリーク電流が流れにくいというメリットがある。
【0076】
なお、HfO2膜形成→RPO処理を複数回繰り返すことにより、HfO2膜中の不純物の除去効率を上げることができるのは、次の理由による。深いパターン溝に対してカバレッジ良く形成されたHfO2膜に対してRPO処理(C、H等の改質処理)を実施する場合、1度にHfO2膜を厚く、例えば100Å形成してからRPO処理を実施すると、図3の溝の奥bの部分に対して酸素ラジカルが供給されにくくなる。これは、酸素ラジカルが溝の奥bまで到達する過程において、図3の表面aの部位にてC、Hと反応してしまう確率が高くなり(膜厚が100Åと厚くその分不純物量も多いため)、相対的に溝の奥bに到達するラジカル量が減ってしまうからである。よって、短時間で均一なC、H除去を行うことが難しくなる。
【0077】
これに対し100ÅのHfO2膜を形成する際に、HfO2膜形成→RPO処理を7回に分けて行う場合は、RPO処理は15Å当りのHfO2膜についてのみC、H除去処理を実施すれば良いことになる。この場合、酸素ラジカルが図3の平面aの部位にてC、Hと反応する確率は高くならないので(膜厚が15Åと薄くその分不純物量も少ないため)、溝の奥bにも均一にラジカルが到達すること
となる。よって、HfO2膜形成→RPO処理を複数回繰り返すことによって、短時間で均一なC、H除去を行うことができる。
【0078】
さらに、成膜工程と改質工程とを連続して複数回繰り返すサイクル処理を行うことにより、反応室内に付着した累積膜に含まれるC、H等の不純物の混入量を大幅に低減でき、また累積膜からの離脱ガスを大幅に低減できるので、連続して生産されたHfO2膜の品質を一定に保持することが可能となる。従って、従来と比較してセルフクリーニングによる累積膜の除去処理を頻繁に実施しなくても良くなり、生産コストの削減を図ることができる。
【0079】
図4は、実施の形態の7サイクル処理(本発明)により得られたHfO2膜と、1サイクル処理(従来方法)により得られたHfO2膜とについて、RTA処理前後の電気的絶縁特性を示す。横軸にHfO2膜(10nm)へ印加した電界(任意単位)、縦軸にリーク電流(任意単位)を示している。尚、ここでのRTA処理とは、基板を700℃前後に加熱しながら大気圧(O2雰囲気中)で高速に熱アニール処理を施すものである。図中、従来HfO2とは、1サイクル処理により得られたHfO2膜を表し、本発明HfO2とは7サイクル処理により得られたHfO2膜を表している。またRTAなしとは、RTA処理前のもの、RTAありとは、RTA処理後のものを表している。図4によれば、1サイクル処理により得られるもの(従来HfO(RTAなし))は、CH、OH混入量が多く絶縁特性がRTA前後で大幅に変るが、これに比べて、実施の形態の7サイクル処理により得られる絶縁膜(本発明HfO(RTAなし))は、CH、OH混入量が少ないため、初期(長時間の電気的ストレスがかからない状態)での絶縁特性がRTA前後でほとんど変わらないことがわかる。これより本実施の形態のサイクル処理を行なうことにより、薄膜の電気的絶縁性の向上、およびその安定性を確保するために要求されたRTA処理を削減することができる。このRTA処理を削減することにより、クラスタ装置の構成を簡素化できる。
【0080】
(4)回転機構
実施の形態では、基板回転ユニット12により基板4を回転させているので、成膜原料供給ユニットから導入する原料ガス及び反応物活性化ユニット11から導入する反応物としてのプラズマにより活性化したガス(以下、ラジカルという)が、それぞれ基板面内に素早く均一にいきわたり、膜を基板面内にわたって均一に堆積させることができ、また膜中の不純物を基板面内で素早く均一に除去して、膜全体を改質できる。
【0081】
(5)シャワーヘッドの共有
成膜工程で基板に供給する成膜ガスと、改質工程で基板に供給する反応物としてのラジカルとを同一の供給口となるシャワーヘッド6から供給すると、シャワーヘッド6内部に付着した異物(パーティクル源)をHfO2膜で覆ってコーティングすることができ、異物が基板4上へ落ちてくることを抑制できる。また、シャワーヘッド内部にコーティングされた膜は、コーティング後に反応物にさらされ、これによりシャワーヘッド内部のコーティング膜に含まれるC、H等の不純物の混入量を大幅に低減できる。また、反応室1をClF3などのClを含むガスでクリーニングした場合、反応室1内やシャワーヘッド6内部に残留した副生成物やクリーニングガスが吸着しているが(これをクリーニング残渣という)、原料ガスと反応物の供給口を共用することにより、このクリーニング残渣を有効に除去することができる。
【0082】
(6)変形例
なお、上述した実施の形態では、成膜工程で基板に供給する原料ガスと、改質工程で基板に供給する反応物としての酸素ラジカルとを、シャワーヘッドの共用化で同一の供給口より反応室内に供給するようにしたが、シャワーヘッドの内部空間を成膜用と反応物用とに分割して、原料ガスと反応物はそれぞれ別々の供給口より供給するようにしてもよい。この場合、成膜工程で原料ガス用の供給口より基板に原料ガスを供給する際は反応物用の供給口に非反応性ガスを供給し、改質工程で反応物用の供給口より基板に反応物を供給する際は、原料ガス用の供給口に非反応性ガスを供給するとよい。このように、原料ガスと反応物とを別々の供給口より供給するようにして、各工程で互いに関与しない供給口から不活性ガスなどの非反応性ガスを供給すると、供給口の内部への累積膜形成を十分に抑制することができる。以下、これを図5を用いて詳述する。なお、図5に示す構成は、シャワーヘッド6に仕切板15を設けた点を除いて図1の構成と同じである。
【0083】
シャワーヘッド6の内部に吸着している原料と、反応物としての酸素ラジカルとが反応するとシャワーヘッド6の内部にも累積膜が形成される。この累積膜の形成を抑制するために、シャワーヘッド6を、仕切板15で2つ(6a、6b)に仕切る。原料ガスと酸素ラジカルとが供給されるシャワーヘッド6を仕切ることにより、原料と酸素ラジカルとの反応を有効に防止できる。
【0084】
シャワーヘッド6を仕切ることに加えて、さらに成膜ガスを基板4へ流す場合は、ラジカル供給側(反応物活性化ユニット11)から活性化ガスシャワーヘッド部6bへ不活性ガスを流し、酸素ラジカルを基板4へ流す場合は、原料供給側(成膜原料供給ユニット9、不活性ガス供給ユニット10)から成膜シャワーヘッド部6aへ不活性ガスを流すのが良い。このように成膜工程と改質工程でそれぞれ使用しない側のシャワーヘッド部6b、6aに不活性ガスを流すようにすると、さらに効果的にシャワーヘッド6内部への累積膜形成を抑制することができる。
【0085】
【実施例】
図6に、本実施例における周期的なリモートプラズマ処理(RPX:Remote Plasma X(X=O、Ar))を用いたMOCVD手法の成膜シーケンス(MOCVDによる成膜とRPX(RPO、RPAr)を複数回繰り返すサイクル手法の手順)を示す。ここでは、図1の基板処理装置を用いて処理を行った。
【0086】
反応室内のサセプタ上に基板としてのシリコンウェハを載置し、シリコンウェハの温度が安定化したら、
(1)気化器で気化させた気体状のHf−(MMP)4原料が希釈N2と共に反応室内に△Mt秒間導入される(MOCVD)。
(2)その後、気体状のHf−(MMP)4原料の導入が停止され、反応室内は希釈N2により6秒間パージされる(Interval)。
(3)反応室内のパージ後、リモートプラズマユニットにより活性化されたガスが反応室内に△Rt秒間導入される(RPX)。この間も希釈N2は導入され続けている。
(4)リモートプラズマで活性化したガスの導入が停止された後、反応室内は再び希釈N2により6秒間パージされる(Interval)。
(5)この(1)から(4)までのステップ(1cycle)は、膜厚が所望の値(厚さ)に到達するまで(n cycle)繰り返される。
本実施例では、成膜温度を425℃、反応室内の圧力を100Pa、Hf−(MMP)4の流量を0.05g/min、希釈ガスN2の流量を0.5SLM(standard liter per minute)、リモートプラズマユニットに導入する酸素の流量を0.1SLM、トータル膜厚20nmとし、成膜時間すなわちHf−(MMP)4の供給時間(ΔMt)、RPX時間(ΔRt)を変えて実験を行った。また、RPX処理時の酸素の添加有無の実験、すなわちRPX処理時に酸素を添加した場合(RPO処理)と、酸素を添加しない場合(RPAr処理)の実験も行った。
【0087】
図7は、不純物除去効果を絶縁特性で検証した結果であり、HfO2に印加した電界とリーク電流との関係を表す図である。図の横軸はHfO2に印加した電界、縦軸はリーク電流を示している。図7に示すように、1ステップ(1サイクル)でG−(MMP)4原料を1秒間供給した場合は、0.8ÅのHfO2膜が成膜されるが、これに対して8秒のリモートプラズマ酸素を用いた処理(RPO処理)を行った場合は、十分な絶縁特性が得られておらずリーク電流が大きくなっている。一方16秒のRPO処理を行った場合においては、十分な絶縁特性が得られている
【0088】
これに対し、1ステップでHf−(MMP)4原料を3秒供給した場合では、約1.8ÅのHfO2膜が成膜されるが、これに対して16秒のRPO処理を行った場合には、Hf−(MMP)4原料を1秒供給しRPO処理を16秒行った場合と同様の効果が得られている。このことから、RPO処理時間(ΔRt)は、長い方が、またΔMt/ΔRtは小さい方が絶縁性は良くなると考えられる。また、不純物除去処理に要するRPO時間には、1ステップに成膜する膜厚に依存する部分もあるが、それに要する閾値が存在するともいえる。これは、RPO処理条件によって大きく変化するし、装置形態によって変わる可能性もあるので、その装置ごとに最適化する必要性があるという不便な点がある。しかしながら、本実施例によれば不純物除去による膜質の改良が確実に行えることを実証しており、この手法の優位性を示している
【0089】
また、同図には、酸素を供給しないで、すなわちArだけのリモートプラズマ処理(RPAr処理)を行った場合の絶縁特性も示しているが、酸素を同時間流した場合と比較すると、Hf−(MMP)4の供給1秒およびRPO処理16秒の場合には及ばないものの、絶縁特性の改善が見られている。これは、図8に概念図を示すように、酸素を流した場合は、酸素ラジカルにより不純物除去が?2O、CO2の脱離といった形で行われるのに対し、酸素を流さないArだけの場合は、アルゴンラジカルにより、不純物除去がCH4、H2の脱離といった形で行われるからである
【0090】
ここで、RPO処理の場合は、H2Oの発生や活性酸素により、HfO2とSi基板界面では、低誘電率界面層(SiO2に近い組成の層)が形成され、これが電気的膜厚、いわゆるEOTの増大を招き、High―k膜(高誘電体膜)を用いて電気的膜厚を薄膜化しようという試みを妨げる原因になってしまう可能性が考えられる。しかし、RPAr処理を行えば、H2Oや活性な酸素は発生しないので、低誘電率界面層は形成されることが無く、このRPAr処理は、この観点からすると有効な方法である
【0091】
ただし、図7にも示したように、絶縁特性は、RPO処理の方が良いので、Si基板に近いHfO2膜を形成する初期のステップには、RPAr処理を用い、その後のステップには、RPO処理を用いると、低誘電率層の形成の抑制、絶縁特性の向上といった、二つの利点を有する膜を形成することができる
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、原料ガスを用いて基板上に薄膜を形成する成膜工程と、酸素原子を含まない反応物を用いて成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程と、を連続して複数回繰り返すようにしたので、膜中の不純物等の特定元素を有効に除去することができる。
また、酸素原子を含まない反応物を用いて改質工程を行うので、酸素を含む反応物を用いる場合とは異なり、H2Oや活性な酸素は発生しないので、HfO2とSi基板界面に低誘電率界面層が形成されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における反応室の概要説明図である。
【図2】サイクル数とHfO2膜中のC、H不純物総量の関係を示すグラフである。
【図3】基板上にHfO2膜を形成した状態を示す断面図である。
【図4】サイクル数と絶縁特性の関係を示すグラフである。
【図5】変形例における反応室の概要説明図である。
【図6】実施例における成膜シーケンスを示す図である。
【図7】HfO2に印加した電界とリーク電流との関係を表す図であるである。
【図8】RPAr処理とRPO処理の不純物脱離の概念図である。
【図9】従来例におけるCVD反応室の概念説明図である。
【符号の説明】
1 反応室
4 基板
5 原料供給管
6 シャワーヘッド
7 排気管
9 成膜原料供給ユニット
11 反応物活性化ユニット
14 バイパス管
15 仕切板
16 トラップ
25 制御装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に薄膜を形成する基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工程の1つに基板(シリコンウェハやガラスなどをベースとする微細な電気回路のパターンが形成された被処理基板)の表面に所定の成膜処理を行うCVD(Chemical Vapor Deposition)工程がある。これは、気密な反応室に基板を装填し、室内に設けた加熱手段により基板を加熱し、成膜ガスを基板上へ導入しながら化学反応を起こし、基板上に設けた微細な電気回路のパターン上へ薄膜を均一に形成するものである。このような反応室では、薄膜は基板以外の構造物へも形成される。図9に示すCVD装置では、反応室1内にシャワーヘッド6とサセプタ2を設け、サセプタ2上に基板4を載置している。成膜ガスは、シャワーヘッド6に接続された原料供給管5を通って反応室1内へ導入され、シャワーヘッド6に設けた多数の孔8より基板4上へ供給される。基板4上へ供給されたガスは、排気管7を通って排気処理される。尚、基板4はサセプタ2の下方に設けたヒータ3によって加熱される。
【0003】
このようなCVD装置として、成膜原料に有機化学材料を使ってアモルファスHfO2膜やアモルファスHfシリケート膜(以下、単にHfO膜と略す)を形成するMOCVD(Metal Organic Chemical VaporDeposition)装置や、ALD(Atomic Layer Deposition)装置がある。ここで、MOCVD装置で実施するCVD法と、ALD装置で実施するALD法との違いは次の通りである。ALD法は処理温度、圧力が低く、膜を1原子層ずつ形成する。これに対して、CVD法は、ALD法よりも処理温度、圧力は高く、膜を略1/6原子層〜数十原子層ずつ形成する。
【0004】
成膜原料としては、Hf[OC(CH3)3]4(以下、Hf−(OtBu)4と略す)、Hf[OC(CH3)2CH2OCH3]4(以下、Hf−(MMP)4と略す(MMP:メチルメトキシプロポキシ))、Hf[O−Si−(CH3)]4などが使用されている。
【0005】
このなかで、例えばHf−(OtBu)4、Hf−(MMP)4など、多くの有機材料は常温常圧において液相である。このため、例えばHf−(MMP)4は加熱して蒸気圧により気体に変換して利用されている。このような原料を利用して前記のCVD法を用いて例えば基板温度450℃以下でHfO膜を形成する。このHfO膜は、有機材料に起因するCH、OHなどの不純物が数%と多量に含まれている。その結果、物質の電気的性質を示す区分としては、絶縁体を確保したいとの意図に反して半導体、あるいは導体に属することになる。
【0006】
このような薄膜の電気的絶縁性、およびその安定性を確保するため、HfO膜をO2やN2雰囲気中で650℃〜800℃前後の高速アニール処理(以下、RTA[ラピッドサーマルアニーリング]と略す)を施すことにより、CやHを離脱させて緻密化し安定した絶縁体薄膜に変換しようとする試みが、従来より行われている。ここでRTAの目的は、膜中のC、H等の不純物を離脱するとともに、緻密化することである。緻密化は、結晶化まではさせないが、アモルファス状態の平均原子間距離を縮めるために行なう。しかしながら、RTA処理によりHfO膜からC、Hを離脱させると、その表面状態は平坦性を失い凹凸な表面状態に変化するという問題が生じる。また、RTA処理によりHfO膜は部分的に結晶化しやすく、その結晶粒界を通って大きな電流が流れやすくなり、絶縁性やその安定性がかえって損なわれるという問題が生じる。これらの問題は、絶縁物に限らず全ての有機化学材料を用いたMOCVD法あるいはALD法を利用した薄膜堆積方法に共通する。
【0007】
また、反応室1では、基板以外の構造物にも薄膜が形成される。これを累積膜といい、この累積膜にもC、Hが多量に混入している。このため、処理した基板枚数の増加と共に、累積膜から離脱するC、H量は増加し、基板上に形成されるHfO膜に含まれるC、H混入量は処理基板枚数の増加と共に徐々に増加することになる。この現象により、連続して生産されるHfO膜の品質を一定に
することが非常に難しくなっている。このような憂慮すべき事象を解決するため、セルフクリーニングによる累積膜の除去処理を頻繁に実施することが必要になり、それが生産性を低下させる要因になっている。
【0008】
上述したようにアモルファス薄膜を形成する従来の技術では、RTA処理によりHfO膜の表面状態が平坦性を失い凹凸な表面状態に変化したり、HfO膜が部分的に結晶化して結晶粒界が発生し、絶縁性やその安定性が低くなるという問題があった。
【0009】
また、連続して生産されたHfO膜の品質を一定にするために、C、Hが多量に混入する累積膜のクリーニング処理を頻繁に実施することが必要になり、生産性が低下するという問題があった。
【0010】
なお、HfO膜に関するものではないが、薄膜形成技術として、Ta2O5成膜と改質処理を同一反応室内で複数回繰り返す方法(例えば、特許文献1参照)、高誘電率酸化膜、強誘電体酸化膜の成膜と、酸化雰囲気ガスを用いて生成したプラズマを用いた熱処理を同一反応室内で複数回繰り返す方法(例えば、特許文献2参照)、金属膜の形成と窒化剤ガス導入による金属窒化物膜形成を複数回繰り返す方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−50622号公報
【特許文献2】
特開平11−177057号公報
【特許文献3】
特開平11−217672号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上述した特許文献1〜3に記載された従来技術を用いて、金属酸化膜を形成しようとしても、成膜工程の際、原料ガス以外に酸素原子を含むガスを用いて金属酸化膜を形成するので、改質工程の際、金属酸化膜中の特定元素を有効に除去できず、膜の改質が十分ではなかった。
【0014】
また、成膜ガスと反応物とが異なる供給口より供給されるので、供給口の内部に付着した異物が基板上へ落ちてくることを抑制できず、また、クリーニングしても供給口内部に吸着している副生成物やクリーニングガスの除去が十分ではなかった。
【0015】
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解消して、改質工程の際、金属酸化膜中の特定元素を有効に除去することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。また、本発明の課題は、供給口の内部に付着した異物が基板上へ落ちてくることを抑制でき、クリーニングによって供給口内部に吸着している副生成物やクリーニングガスを除去することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。また、本発明の課題は、Hfを含む膜中の特定元素を速やかに除去することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。さらに、本発明の課題は、スループットを向上することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、原料ガスを用いて基板上に薄膜を形成する成膜工程と、酸素原子を含まない反応物を用いて成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程と、を連続して複数回繰り返すことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、前記成膜工程と改質工程は同一反応室内で行われることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0018】
第3の発明は、第1の発明において、前記反応物とはアルゴンガスを活性化したガスであることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0019】
第4の発明は、第1の発明において、前記反応物とはアルゴンガスをプラズマにより活性化したガスであることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0020】
第5の発明は、第1の発明において、前記反応物とはアルゴンガスをプラズマにより活性化することにより生成したアルゴンラジカルであることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0021】
第6の発明は、第1の発明において、前記薄膜とはHfを含む膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0022】
第7の発明は、第1の発明において、前記原料とはHf[OC(CH3)2CH2OCH3]4であり、前記薄膜とはHfを含む膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0023】
第8の発明は、第1の発明において、前記薄膜とはHfを含む膜であり、1回の成膜工程で形成する薄膜の膜厚が0.5Å〜30Åであることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0024】
第9の発明は、第2の発明において、前記成膜工程で基板に供給する原料ガスと、改質工程で基板に供給する反応物とを同一の供給口より供給することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0025】
第10の発明は、第2の発明において、前記成膜工程で基板に供給する原料ガスと、改質工程で基板に供給する反応物はそれぞれ別々の供給口より供給するとともに成膜工程で原料ガス用の供給口より基板に原料ガスを供給する際は反応物用の供給口に非反応性ガスを供給し、改質工程で反応物用の供給口より基板に反応物を供給する際は、原料ガス用の供給口に非反応性ガスを供給することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0026】
第11の発明は、第2の発明において、成膜工程で基板に原料ガスを供給する際は、改質工程で使用する反応物は停止させることなく反応室をバイパスするよう排気しておき、改質工程で基板に反応物を供給する際は成膜工程で使用する原料ガスは停止させることなく反応室をバイパスするよう排気しておくことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0027】
第12の発明は、第1の発明において、前記成膜工程では、原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく薄膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0028】
第13の発明は、第1の発明において、前記成膜工程または/および改質工程は基板を回転させながら行うことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0029】
第14の発明は、原料ガスを用いて基板上に薄膜を形成する成膜工程と、アルゴンガスをプラズマにより活性化したガスを用いて成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程と、を連続して複数回繰り返すことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0030】
第15の発明は、酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを用い、原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく基板上に薄膜を形成する成膜工程と、酸素原子を含まない反応物を用いて成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程と、を連続して複数回繰り返すことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0031】
第16の発明は、基板を処理する反応室と、前記反応室内に酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを供給する第1供給口と、前記反応室内に前記ガスとは異なる反応物を供給する第2供給口と、前記反応室内を排気する排気口とを備え、前記反応室内で前記原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく前記基板上に金属酸化膜を形成する成膜工程と、前記原料ガスとは異なる反応物を用いて前記成膜工程において形成した前記金属酸化膜の改質を行う改質工程とを連続して複数回繰り返すように制御する制御装置とを有する基板処理装置である。
【0032】
Hfを含む膜の例として、HfO2、HfON、HfSiO、HfSiON、HfAlO、HfAlONなどがある。また、H
fを含む膜以外の膜の例としては、下記のものがある。
PET(Ta(OC2H5)5)を利用したTaO膜(酸化タンタル膜)
Zr−(MMP) 4を利用したZrO膜(酸化ジルコニウム膜)
Al−(MMP) 3を利用したAlO膜(酸化アルミニウム膜)
Zr−(MMP) 4とSi−(MMP) 4を利用したZrSiO膜(酸化Zrシリケート膜)やZrSiON膜(酸窒化Zrシリケート膜)
Zr−(MMP) 4とAl−(MMP) 3を利用したZrAlO膜やZrAlON膜
Ti−(MMP) 4を利用したTiO膜(酸化チタン膜)
Ti−(MMP) 4とSi−(MMP) 4を利用したTiSiOやTiSiON膜
Ti−(MMP) 4とAl−(MMP) 3を利用したTiAlO、TiAlON膜
【0033】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。実施の形態では、CVD法、より具体的にはMOCVD法を使って、HfO膜のうち特にアモルファス状態のHfO2膜(以下、単にHfO2膜と略す)を形成する場合について説明する。
【0034】
図1は実施の形態に係る基板処理装置である枚葉式CVD装置の一例を示す概略図である。従来の反応室1(図9)に対して、プラズマ源となる反応物活性化ユニット11、基板回転ユニット12、不活性ガス供給ユニット10、バイパス管14を主に追加してある。
【0035】
図に示すように、反応室1内に、上部開口がサセプタ2によって覆われた中空のヒータユニット18が設けられる。ヒータユニット18の内部にはヒータ3が設けられ、ヒータ3によってサセプタ2上に載置される基板4を加熱するようになっている。サセプタ2上に載置される基板4は、例えば半導体シリコンウェハ、ガラス等である。
【0036】
反応室1外に基板回転ユニット12が設けられ、基板回転ユニット12によって反応室1内のヒータユニット18を回転して、サセプタ2上の基板4を回転できるようになっている。基板4を回転させるのは、後述する成膜工程、改質工程における基板への処理を基板面内において素早く均一に行うためである。
【0037】
また、反応室1内のサセプタ2の上方に多数の孔8を有するシャワーヘッド6が設けられる。このシャワーヘッド6には、成膜ガスを供給する原料供給管5とラジカルを供給するラジカル供給管13とが共通に接続されて、成膜ガス又はラジカルをシャワーヘッド6からシャワー状に反応室1内へ噴出できるようになっている。ここで、シャワーヘッド6は、成膜工程で基板4に供給する成膜ガスと、改質工程で基板4に供給するラジカルとをそれぞれ供給する同一の供給口を構成する。
【0038】
反応室1外に、成膜原料としての有機液体原料を供給する成膜原料供給ユニット9と、成膜原料の液体供給流量を制御する流量制御手段としての液体流量制御装置28と、成膜原料を気化する気化器29とが設けられる。非反応ガスとしての不活性ガスを供給する不活性ガス供給ユニット10と、不活性ガスの供給流量を制御する流量制御手段としてのマスフローコントローラ46が設けられる。成膜原料としてはHf−(MMP)4などの有機材料を用いる。また、不活性ガスとしてはAr、He、N2などを用いる。成膜原料供給ユニット9に設けられた原料ガス供給管5bと、不活性ガス供給ユニット10に設けられた不活性ガス供給管5aとを一本化して、シャワーヘッド6に接続される原料供給管5が設けられる。原料供給管5は、基板4上にHfO2膜を形成する成膜工程で、シャワーヘッド6に成膜ガスと不活性ガスとの混合ガスを供給するようになっている。原料ガス供給管5b、不活性ガス供給管5aにはそれぞれバルブ21、20を設け、これらのバルブ21、20を開閉することにより、成膜ガスと不活性ガスとの混合ガスの供給を制御することが可能となっている。
【0039】
また、反応室1外に、ガスをプラズマにより活性化させて反応物としてのラジカルを形成するプラズマ源となる反応物活性化ユニット(リモートプラズマユニット)11が設けられる。改質工程で用いるラジカルは、原料としてHf−(MMP)4などの有機材料を用いる場合は、例えば酸素ラジカルが良い。これは酸素ラジカルにより、HfO2膜形成直後にCやHなどの不純物除去処理を効率的に実施することができるからである。また、クリーニング工程で用いるラジカルはClF3ラジカルが良い。改質工程において、酸素含有ガス(O2、N2O、NO等)をプラズマによって分解した酸素ラジカル雰囲気中で、膜を酸化させる処理をリモートプラズマ酸化処理(RPO[Remote Plasma Oxidation]処理)という。
【0040】
反応物活性化ユニット11の上流側には、ガス供給管37が設けられる。このガス供給管37には、酸素(O2)を供給する酸素供給ユニット47、プラズマを発生させるガスであるアルゴン(Ar)を供給するAr供給ユニット48、及びフッ化塩素(ClF3)を供給するClF3供給ユニット49が、供給管52、53、54を介して接続されて、改質工程で使用するO2とAr、及びクリーニング工程で使用するClF3を反応物活性化ユニット11に対し供給するようになっている。酸素供給ユニット47、Ar供給ユニット48、及びClF3供給ユニット49には、それぞれのガスの供給流量を制御する流量制御手段としてのマスフローコントローラ55、56、57が設けられている。供給管52、53、54にはそれぞれバルブ58、59、60を設け、これらのバルブ58、59、60を開閉することにより、O2ガス、Arガス、及びClF3の供給を制御することが可能となっている。
【0041】
反応物活性化ユニット11の下流側には、シャワーヘッド6に接続されるラジカル供給管13が設けられ、改質工程又はクリーニング工程で、シャワーヘッド6に酸素ラジカル又はフッ化塩素ラジカルを供給するようになっている。また、ラジカル供給管13にはバルブ24を設け、バルブ24を開閉することにより、ラジカルの供給を制御することが可能となっている。
【0042】
反応室1に排気口7aが設けられ、その排気口7aは除害装置(図示せず)に連通する排気管7に接続されている。排気管7には、成膜原料を回収するための原料回収トラップ16が設置される。この原料回収トラップ16は、成膜工程と改質工程とに共用で用いられる。前記排気口7a及び排気管7で排気ラインを構成する。
【0043】
また、原料ガス供給管5b及びラジカル供給管13には、排気管7に設けた原料回収トラップ16に接続される原料ガスバイパス管14a及びラジカルバイパス管14b(これらを単に、バイパス管14という場合もある)がそれぞれ設けられる。原料ガスバイパス管14a及びラジカルバイパス管14bに、それぞれバルブ22、23を設ける。これらのバルブの開閉により、成膜工程で反応室1内の基板4に成膜ガスを供給する際は、改質工程で使用するラジカルの供給は停止させずに反応室1をバイパスするようラジカルバイパス管14b、原料回収トラップ16を介して排気しておく。また、改質工程で基板4にラジカルを供給する際は、成膜工程で使用する成膜ガスの供給は停止させずに反応室1をバイパスするよう原料ガスバイパス管14a、原料回収トラップ16を介して排気しておく。
【0044】
そして、反応室1内で基板4上にHfO2膜を形成する成膜工程と、成膜工程で形成したHfO2膜中の特定元素であるC、H等の不純物を反応物活性化ユニット11を用いたプラズマ処理により除去する改質工程とを、前記バルブ20〜24の開閉等を制御することにより、連続して複数回繰り返すように制御する制御装置25が設けられている。
【0045】
次に上述した図1のような構成の枚葉式CVD装置を用いて、従来とは異なる高品質なHfO2膜を堆積するための手順を示す。この手順には、昇温工程、成膜工程、パージ工程、改質工程が含まれる。
【0046】
まず、図1に示す反応室1内のサセプタ2上に基板4を載置し、基板4を基板回転ユニット12により回転させながら、ヒータ3に電力を供給して基板4の温度を350〜500℃に均一に加熱する(昇温工程)。尚、基板温度は用いる有機材料の反応性により異なるが、Hf−(MMP)4においては、390〜450℃の範囲内が良い。また、基板4の搬送時や基板加熱時は、不活性ガス供給管5aに設けたバルブ20を開けて、Ar、He、N2などの不活性ガスを常に流しておくとパーティクルや金属汚染物の基板4への付着を防ぐことができる。
【0047】
昇温工程終了後、成膜工程に入る。成膜工程では、成膜原料供給ユニット9から供給した有機液体原料例えばHf−(MMP)4を、液体流量制御装置28で流量制御し、気化器29へ供給して気化させる。原料ガス供給管5bに設けたバルブ21を開くことにより、気化した原料ガスをシャワーヘッド6を介して基板4上へ供給する。このときも、バルブ20を開いたままにして、不活性ガス供給ユニット10から不活性ガス(N2など)を常に流して、成膜ガスを撹拌させるようにする。成膜ガスは不活性ガスで希釈すると撹拌しやすくなる。原料ガス供給管5bから供給される成膜ガスと、不活性ガス供給管5aから供給される不活性ガスとは原料供給管5で混合され、混合ガスとしてシャワーヘッド6に導びかれ、多数の孔8を経由して、サセプタ2上の基板4上へシャワー状に供給される。なお、このときO2等の酸素原子を含むガスは供給せず、反応性ガスとしてはHf−(MMP)4ガスのみ供給する。
【0048】
この混合ガスの供給を所定時間実施することにより、基板4上に基板との界面層(第1の絶縁層)としてのHfO2膜を0.5Å〜30Å、例えば15Å形成する。この間、基板4は回転しながらヒータ3により所定温度(成膜温度)に保たれているので、基板面内にわたり均一な膜を形成できる。次に、原料ガス供給管5bに設けたバルブ21を閉じて、原料ガスの基板4への供給を停止する。なお、この際、原料ガスバイパス管14aに設けたバルブ22を開き、成膜ガスの供給を原料ガスバイパス管14aで反応室1をバイパスして排気し、成膜原料供給ユニット9からの成膜ガスの供給を停止しないようにする。液体原料を気化して、気化した原料ガスを安定供給するまでには時間がかかるので、成膜ガスの供給を停止させずに、反応室1をバイパスするように流しておくと、次の成膜工程では流れを切換えるだけで、直ちに成膜ガスを基板4へ供給できる。
【0049】
成膜工程終了後、パージ工程に入る。パージ工程では、反応室1内を不活性ガスによりパージして残留ガスを除去する。なお、成膜工程ではバルブ20は開いたままにしてあり、反応室1内には不活性ガス供給ユニット10から不活性ガス(N2など)が常に流れているので、バルブ21を閉じて原料ガスの基板4への供給を停止すると同時にパージが行われることとなる。
【0050】
パージ工程終了後、改質工程に入る。改質工程はRPO(Remote Plasma Oxidation)処理によって行う。ここでRPO処理とは、酸素含有ガス(O2、N2O、NO等)をプラズマによって活性化させて発生させた反応物としての酸素ラジカルを用いて、膜を酸化させるリモートプラズマ酸化処理のことである。改質工程では、供給管53に設けたバルブ59を開き、Ar供給ユニット48から供給したArをマスフローコントローラ56で流量制御して反応物活性化ユニット11へ供給し、Arプラズマを発生させる。Arプラズマを発生させた後、供給管52に設けたバルブ58を開き、酸素供給ユニット47から供給したO2をマスフローコントローラ55で流量制御してArプラズマを発生させている反応物活性化ユニット11へ供給し、O2を活性化する。これにより酸素ラジカルが生成される。ラジカル供給管13に設けたバルブ24を開き、反応物活性化ユニット11から酸素ラジカルを含むガスを、シャワーヘッド6を介して基板4上へ供給する。この間、基板4は回転しながらヒータ3により所定温度(成膜温度と同一温度)に保たれているので、成膜工程において基板4上に形成された15ÅのHfO2膜よりC、H等の不純物を素早く均一に除去できる。
【0051】
その後、ラジカル供給管13に設けたバルブ24を閉じて、酸素ラジカルの基板4への供給を停止する。なお、この際、ラジカルバイパス管14bに設けたバルブ23を開くことにより、酸素ラジカルを含むガスの供給を、ラジカルバイパス管14bで反応室1をバイパスして排気し、酸素ラジカルの供給を停止しないようにする。酸素ラジカルは生成から安定供給するまでに時間がかかるので、酸素ラジカルの供給を停止させずに、反応室1をバイパスするように流しておくと、次の改質工程では、流れを切換えるだけで、直ちにラジカルを基板4へ供給できる。
【0052】
改質工程終了後、再びパージ工程に入る。パージ工程では、反応室1内を不活性ガスによりパージして残留ガスを除去する。なお、改質工程でもバルブ20は開いたままにしてあり、反応室1内には不活性ガス供給ユニット10から不活性ガス(N2など)が常に流れているので、酸素ラジカルの基板4への供給を停止すると同時にパージが行われることとなる。
【0053】
パージ工程終了後、再び成膜工程に入り、原料ガスバイパス管14aに設けたバルブ22を閉じて、原料ガス供給管5bに設けたバルブ21を開くことにより、成膜ガスをシャワーヘッド6を介して基板4上へ供給し、また15ÅのHfO2膜を、前回の成膜工程で形成した薄膜上に堆積する。
【0054】
以上のような、成膜工程→パージ工程→改質工程→パージ工程を複数回繰り返すというサイクル処理により、CH、OHの混入が極めて少ない所定膜厚の薄膜を形成することができる。
【0055】
ここで、Hf−(MMP)4を用いた場合の好ましい成膜条件は、次の通りである。温度範囲は400〜450℃、圧力範囲は100Pa程度以下である。温度については、400℃より低くなると膜中に取り込まれる不純物(C、H)の量が急激に多くなる。400℃以上になると、不純物が離脱し易くなり、膜中に取り込まれる不純物量が減少する。また、450℃より高くなるとステップカバレッジが悪くなるが、450℃以下の温度であると、良好なステップカバレッジが得られ、また、アモルファス状態を保つこともできる。
【0056】
また、圧力については、例えば1TORR(133Pa)以上の高い圧力とするとガスは粘性流となり、パターン溝の奥までガスが入って行かなくなる。ところが、100Pa程度以下の圧力とすることにより、流れを持たない分子流とすることができ、パターン溝の奥までガスが行き届く。
【0057】
また、Hf−(MMP)4を用いた成膜工程に連続して行なう改質工程であるRPO(Remote Plasma Oxidation)処理の好ましい条件は、温度範囲は390〜450℃程度(成膜温度と略同一温度)、圧力範囲は100〜1000Pa程度である。また、ラジカル用のO2流量は100sccm、不活性ガスAr流量は1slmである。
【0058】
成膜工程と、改質工程は、略同一温度で行なうのが好ましい(ヒータの設定温度は変更せずに一定とするのが好ましい)。これは、温度変動を生じさせないことにより、シャワーヘッドやサセプタ等の周辺部材の熱膨張によるパーティクルが発生しにくくなり、また、金属部品からの金属の飛び出し(金属汚染)を抑制できるからである。
【0059】
尚、クリーニングガスラジカルによる累積膜のセルフクリーニング工程を実施するには、反応物活性化ユニット11でクリーニングガス(Cl2やClF3など)をラジカルにして反応室1に導入する。このセルフクリーニングにより、反応室1でクリーニングガスと累積膜とを反応させ、累積膜を塩化金属などに変換して揮発させて、これを排気する。これにより反応室内の累積膜が除去される。
【0060】
上述した実施の形態によれば、HfO2膜形成→改質処理(RPO処理)→HfO2膜形成→…を複数回繰り返すというサイクル処理をしているので、CH、OHの混入が極めて少ない所定膜厚のHfO2膜を形成することができる。以下、これを次の観点から具体的に説明する。
(1)成膜時O2の不使用
(2)RPO処理
(3)サイクル処理
(4)回転機構
(5)シャワーヘッドの共有
(6)変形例
【0061】
(1)成膜時O2の不使用
成膜工程におけるHfO2膜の成膜時に、原料ガス以外には酸素(O2)等の酸素原子を含むガスを用いないようにすると、膜中のCH、OHの混入量を少なくできる。
【0062】
HfO2膜を形成する際、原料ガスと不活性ガスの混合ガス中にO2を混合するケースもある。これは下地に対する密着性、成膜レートを考慮すると、一般的には原料ガスと一緒にO2を入れた方がよいからである。しかし、本発明者らは、実験によりHf−(MMP) 4については、O2を入れない方が不純物の混入量が減り膜質が向上し、逆にO2を入れた方が不純物の混入量が増え膜質が低下することを見い出した。従って、成膜原料としてHf−(MMP)4を用いる実施の形態では、O2を混合しない方が、膜中のCH、OHの混入量を少なくできるため、O2を混合していない。
【0063】
Hf−(MMP)4を用いる場合に、酸素を供給しない方が不純物の混入量を少なくできるメカニズムは次の通りである。Hf−(MMP)4を用いて酸素を混合する場合(以下、酸素ありともいう)、酸素を混合しない場合(以下、酸素なしともいう)で理想的な化学反応式を比較すると次のようになる。
【0064】
A.酸素なしで理想的な反応が起こった場合(熱のみによる理想的な自己分解反応):
Hf[OC(CH3) 2CH2OCH3] 4→Hf(OH) 4+4C(CH3) 2CH2OCH2↑ (1)
Hf(OH) 4→HfO2+2H2O (2)
B.酸素ありで理想的な反応が起こった場合(完全燃焼の場合):
Hf[OC(CH3) 2CH2OCH3] 4+24O2→HfO2+16CO2↑+22H2O↑ (3)
ただし、↑は揮発性物質を意味する。
上記の反応化学式で、大文字の数値は、そのまま基板上における原料のモル比と考えると、酸素なしでは、
HfO2:(その他の不純物)=1:(4+2)=1:6
となる。酸素ありでは、
HfO2:(その他の不純物)=1:(16+22)=1:38となる。
【0065】
したがって、1モルのHfO2を生成する時に発生する不純物の総モル数は、酸素ありの方が大きくなる。
【0066】
さらに、各結合を切断するための化学式上の切断回数を比較すると、酸素なしの場合:O−C、C−H、O−Hの切断が各4回、計12回酸素ありの場合:O−Cが12回、C−Hが44回、計56回
この切断回数が多いほど、ラジカル量が多くなるので、膜中に不純物が混入しやすくなる。
【0067】
結論として酸素なしで成膜し、上記式(1)の[C(CH3) 2CH2OCH3]を分解させない温度で揮発させ、HfO2膜を成膜するとよい。
【0068】
ここで、原料の自己分解反応、半自己分解反応、吸着反応を用いたそれぞれの成膜のメカニズム、温度帯について、本発明との関係を説明する。全てのCVD反応は自己分解反応、吸着反応が重なり合っている状態になっている。基板温度を下げれば吸着反応が主体的になり、温度を上げれば自己分解反応が主体的になる。その中間の温度とすれば半自己分解反応も生じる。Hf−(MMP)4を用いる場合では、300℃以下が吸着反応主体となり、それより温度が高ければ自己分解反応が主体的になっていると考えられる。しかし、どの温度帯でも吸着反応が全く無くなるわけではない。Hf−(MMP)4の自己分解反応の反応式は、上記式(1)、式(2)のとおりである。また、吸着反応により基板上にHf−(MMP)4を吸着させ、RPO処理等により酸化させて成膜反応を生じさせる場合の反応式は、上述の気相でHf−(MMP)4とO2とが反応する場合(気相反応)と同じで、上記式(3)のとおりである。本発明におけるMOCVDでは、上記のいずれの反応が主体的であってもRPOによる不純物除去効果が得られるので、特に反応形式を特定するものではないが、自己分解反応を主体的としたほうが不純物がより少なくできるという実験結果が得られている。
【0069】
(2)RPO処理
成膜後の改質工程で用いるRPO処理により、膜中の水素(H)や炭素(C)などの不純物を有効に除去でき、その濃度を低減できるので、電気特性を向上させることができる。また、水素(H)の離脱によってHf原子の移動が抑制され結晶化を防ぎ、電気特性を向上させることができる。また膜の酸化を促進することもでき、さらに膜中の酸素欠陥を補修できる。また、反応室内壁やサセプタ等の基板以外の部分に堆積した累積膜からの離脱ガスを素早く低減でき、再現性の高い膜厚制御が可能となる。
【0070】
なお、実施の形態では、改質工程でRPO処理を用いているが、本発明はこれに限定されない。RPO処理(下記▲1▼)の代替物としては、例えば次のようなものがある(下記▲2▼〜▲9▼)。
▲1▼Ar(不活性ガス)にO2を混合させて行うRPO処理
▲2▼ArにN2を混合させて行うRPN処理
▲3▼ArにN2とH2を混合させて行うRPNH処理
▲4▼ArにH2を混合させて行うRPH処理
▲5▼ArにH2Oを混合させて行うRPOH処理
▲6▼ArにO2とH2を混合させて行うRPOH処理
▲7▼ArにN2Oを混合させて行うRPON処理
▲8▼ArにN2とO2を混合させて行うRPON処理
▲9▼Arのみを用いて行うRPAr処理
【0071】
また、実施の形態では同一反応室でHfO2膜形成とRPO処理を行っているが、そのメリットは、次の通りである。HfO2膜を成膜すると反応室内壁やシャワーヘッドやサセプタ等にもHfO2膜が形成される。これを累積形成膜と呼ぶ。別々の反応室で行う場合、RPO処理を行わないHfO2膜反応室では、この累積形成膜からC、Hが出てきて反応室内が汚染されることとなる。また累積形成膜から出てくるC、H量は、その厚みの増加とともに多くなっていく。従って、全ての被処理基板のC、H量を一定にすることが難しい。
【0072】
これに対して、HfO2膜形成とRPO処理を同一反応室で実施する場合においては、基板上に形成した膜中のC、Hのみならず、反応室内に付着した累積形成膜からもC、Hを除去できるため(クリーニング効果)、全ての基板についてC、H含有量を一定にすることができる。
【0073】
(3)サイクル処理
サイクル処理により、既述のように膜中の不純物除去効率を向上させることができる。また、膜をアモルファス状態に維持することができ、結果としてリーク電流を低減することができる。また、膜表面の平坦性を改善することができ、膜厚均一性を向上させることができる。この他、膜を緻密化することもできるし(欠陥補修効果の最大化)、堆積速度の精密な制御も可能となる。さらには、成膜の下地と、堆積する膜の界面に形成される望ましくない界面層を薄くできる。
【0074】
サイクル処理で形成したHfO2膜(例えば膜厚10nm)に含まれているC、Hの不純物量は、図2のようにサイクル数の増加に従って大幅に減少させることができる。横軸にサイクル数、縦軸にC、Hの総量(任意単位)を示している。尚、サイクル数が1のときが従来方法によるものに相当する。
【0075】
図2によれば、サイクル処理により形成するHfO2膜のトータル膜厚が10nm(100Å)のとき3サイクル程度でCH、OHなどのHfO2膜中の不純物量の低減効果が大きくなることから、1サイクル当りの膜厚は30Å程度以下が好ましい。なお、CVDでは、1度の成膜で形成できる膜厚は0.5Å程度であることから、1サイクル当たりの膜厚は、0.5Å〜30Åとするのが好ましい。特に、7サイクル程度でCH、OHなどのHfO2膜中の不純物量の低減効果は極めて大きくなり、それ以上サイクル数を増やしても、不純物量の低減効果は若干よくなるものの、さほど変化はなくなることから、1サイクル当りの膜厚は15Å程度(5原子層)がより好ましいと考えられる。1サイクルで30Å以上堆積すると膜中の不純物が多くなり、即座に結晶化して多結晶状態となってしまう。多結晶状態というのは隙間がない状態なので、C、H等を除去しにくくなる。しかし、1サイクルにより形成される膜厚が30Åより薄い場合は、結晶化構造を作りにくくなり、不純物があっても薄膜をアモルファス状態に維持できる。アモルファス状態というのは隙間が多い(スカスカな状態)ので、アモルファス状態を維持して薄膜を堆積し、薄膜が結晶化する前にRPO処理を行うことにより膜中のC、H等の不純物を除去し易くなる。すなわち、1サイクル当たりの膜厚を0.5Å〜30Å程度として複数回のサイクル処理で得られた膜は結晶化しにくい状態となる。なおアモルファス状態の方が、多結晶状態よりもリーク電流が流れにくいというメリットがある。
【0076】
なお、HfO2膜形成→RPO処理を複数回繰り返すことにより、HfO2膜中の不純物の除去効率を上げることができるのは、次の理由による。深いパターン溝に対してカバレッジ良く形成されたHfO2膜に対してRPO処理(C、H等の改質処理)を実施する場合、1度にHfO2膜を厚く、例えば100Å形成してからRPO処理を実施すると、図3の溝の奥bの部分に対して酸素ラジカルが供給されにくくなる。これは、酸素ラジカルが溝の奥bまで到達する過程において、図3の表面aの部位にてC、Hと反応してしまう確率が高くなり(膜厚が100Åと厚くその分不純物量も多いため)、相対的に溝の奥bに到達するラジカル量が減ってしまうからである。よって、短時間で均一なC、H除去を行うことが難しくなる。
【0077】
これに対し100ÅのHfO2膜を形成する際に、HfO2膜形成→RPO処理を7回に分けて行う場合は、RPO処理は15Å当りのHfO2膜についてのみC、H除去処理を実施すれば良いことになる。この場合、酸素ラジカルが図3の平面aの部位にてC、Hと反応する確率は高くならないので(膜厚が15Åと薄くその分不純物量も少ないため)、溝の奥bにも均一にラジカルが到達すること
となる。よって、HfO2膜形成→RPO処理を複数回繰り返すことによって、短時間で均一なC、H除去を行うことができる。
【0078】
さらに、成膜工程と改質工程とを連続して複数回繰り返すサイクル処理を行うことにより、反応室内に付着した累積膜に含まれるC、H等の不純物の混入量を大幅に低減でき、また累積膜からの離脱ガスを大幅に低減できるので、連続して生産されたHfO2膜の品質を一定に保持することが可能となる。従って、従来と比較してセルフクリーニングによる累積膜の除去処理を頻繁に実施しなくても良くなり、生産コストの削減を図ることができる。
【0079】
図4は、実施の形態の7サイクル処理(本発明)により得られたHfO2膜と、1サイクル処理(従来方法)により得られたHfO2膜とについて、RTA処理前後の電気的絶縁特性を示す。横軸にHfO2膜(10nm)へ印加した電界(任意単位)、縦軸にリーク電流(任意単位)を示している。尚、ここでのRTA処理とは、基板を700℃前後に加熱しながら大気圧(O2雰囲気中)で高速に熱アニール処理を施すものである。図中、従来HfO2とは、1サイクル処理により得られたHfO2膜を表し、本発明HfO2とは7サイクル処理により得られたHfO2膜を表している。またRTAなしとは、RTA処理前のもの、RTAありとは、RTA処理後のものを表している。図4によれば、1サイクル処理により得られるもの(従来HfO(RTAなし))は、CH、OH混入量が多く絶縁特性がRTA前後で大幅に変るが、これに比べて、実施の形態の7サイクル処理により得られる絶縁膜(本発明HfO(RTAなし))は、CH、OH混入量が少ないため、初期(長時間の電気的ストレスがかからない状態)での絶縁特性がRTA前後でほとんど変わらないことがわかる。これより本実施の形態のサイクル処理を行なうことにより、薄膜の電気的絶縁性の向上、およびその安定性を確保するために要求されたRTA処理を削減することができる。このRTA処理を削減することにより、クラスタ装置の構成を簡素化できる。
【0080】
(4)回転機構
実施の形態では、基板回転ユニット12により基板4を回転させているので、成膜原料供給ユニットから導入する原料ガス及び反応物活性化ユニット11から導入する反応物としてのプラズマにより活性化したガス(以下、ラジカルという)が、それぞれ基板面内に素早く均一にいきわたり、膜を基板面内にわたって均一に堆積させることができ、また膜中の不純物を基板面内で素早く均一に除去して、膜全体を改質できる。
【0081】
(5)シャワーヘッドの共有
成膜工程で基板に供給する成膜ガスと、改質工程で基板に供給する反応物としてのラジカルとを同一の供給口となるシャワーヘッド6から供給すると、シャワーヘッド6内部に付着した異物(パーティクル源)をHfO2膜で覆ってコーティングすることができ、異物が基板4上へ落ちてくることを抑制できる。また、シャワーヘッド内部にコーティングされた膜は、コーティング後に反応物にさらされ、これによりシャワーヘッド内部のコーティング膜に含まれるC、H等の不純物の混入量を大幅に低減できる。また、反応室1をClF3などのClを含むガスでクリーニングした場合、反応室1内やシャワーヘッド6内部に残留した副生成物やクリーニングガスが吸着しているが(これをクリーニング残渣という)、原料ガスと反応物の供給口を共用することにより、このクリーニング残渣を有効に除去することができる。
【0082】
(6)変形例
なお、上述した実施の形態では、成膜工程で基板に供給する原料ガスと、改質工程で基板に供給する反応物としての酸素ラジカルとを、シャワーヘッドの共用化で同一の供給口より反応室内に供給するようにしたが、シャワーヘッドの内部空間を成膜用と反応物用とに分割して、原料ガスと反応物はそれぞれ別々の供給口より供給するようにしてもよい。この場合、成膜工程で原料ガス用の供給口より基板に原料ガスを供給する際は反応物用の供給口に非反応性ガスを供給し、改質工程で反応物用の供給口より基板に反応物を供給する際は、原料ガス用の供給口に非反応性ガスを供給するとよい。このように、原料ガスと反応物とを別々の供給口より供給するようにして、各工程で互いに関与しない供給口から不活性ガスなどの非反応性ガスを供給すると、供給口の内部への累積膜形成を十分に抑制することができる。以下、これを図5を用いて詳述する。なお、図5に示す構成は、シャワーヘッド6に仕切板15を設けた点を除いて図1の構成と同じである。
【0083】
シャワーヘッド6の内部に吸着している原料と、反応物としての酸素ラジカルとが反応するとシャワーヘッド6の内部にも累積膜が形成される。この累積膜の形成を抑制するために、シャワーヘッド6を、仕切板15で2つ(6a、6b)に仕切る。原料ガスと酸素ラジカルとが供給されるシャワーヘッド6を仕切ることにより、原料と酸素ラジカルとの反応を有効に防止できる。
【0084】
シャワーヘッド6を仕切ることに加えて、さらに成膜ガスを基板4へ流す場合は、ラジカル供給側(反応物活性化ユニット11)から活性化ガスシャワーヘッド部6bへ不活性ガスを流し、酸素ラジカルを基板4へ流す場合は、原料供給側(成膜原料供給ユニット9、不活性ガス供給ユニット10)から成膜シャワーヘッド部6aへ不活性ガスを流すのが良い。このように成膜工程と改質工程でそれぞれ使用しない側のシャワーヘッド部6b、6aに不活性ガスを流すようにすると、さらに効果的にシャワーヘッド6内部への累積膜形成を抑制することができる。
【0085】
【実施例】
図6に、本実施例における周期的なリモートプラズマ処理(RPX:Remote Plasma X(X=O、Ar))を用いたMOCVD手法の成膜シーケンス(MOCVDによる成膜とRPX(RPO、RPAr)を複数回繰り返すサイクル手法の手順)を示す。ここでは、図1の基板処理装置を用いて処理を行った。
【0086】
反応室内のサセプタ上に基板としてのシリコンウェハを載置し、シリコンウェハの温度が安定化したら、
(1)気化器で気化させた気体状のHf−(MMP)4原料が希釈N2と共に反応室内に△Mt秒間導入される(MOCVD)。
(2)その後、気体状のHf−(MMP)4原料の導入が停止され、反応室内は希釈N2により6秒間パージされる(Interval)。
(3)反応室内のパージ後、リモートプラズマユニットにより活性化されたガスが反応室内に△Rt秒間導入される(RPX)。この間も希釈N2は導入され続けている。
(4)リモートプラズマで活性化したガスの導入が停止された後、反応室内は再び希釈N2により6秒間パージされる(Interval)。
(5)この(1)から(4)までのステップ(1cycle)は、膜厚が所望の値(厚さ)に到達するまで(n cycle)繰り返される。
本実施例では、成膜温度を425℃、反応室内の圧力を100Pa、Hf−(MMP)4の流量を0.05g/min、希釈ガスN2の流量を0.5SLM(standard liter per minute)、リモートプラズマユニットに導入する酸素の流量を0.1SLM、トータル膜厚20nmとし、成膜時間すなわちHf−(MMP)4の供給時間(ΔMt)、RPX時間(ΔRt)を変えて実験を行った。また、RPX処理時の酸素の添加有無の実験、すなわちRPX処理時に酸素を添加した場合(RPO処理)と、酸素を添加しない場合(RPAr処理)の実験も行った。
【0087】
図7は、不純物除去効果を絶縁特性で検証した結果であり、HfO2に印加した電界とリーク電流との関係を表す図である。図の横軸はHfO2に印加した電界、縦軸はリーク電流を示している。図7に示すように、1ステップ(1サイクル)でG−(MMP)4原料を1秒間供給した場合は、0.8ÅのHfO2膜が成膜されるが、これに対して8秒のリモートプラズマ酸素を用いた処理(RPO処理)を行った場合は、十分な絶縁特性が得られておらずリーク電流が大きくなっている。一方16秒のRPO処理を行った場合においては、十分な絶縁特性が得られている
【0088】
これに対し、1ステップでHf−(MMP)4原料を3秒供給した場合では、約1.8ÅのHfO2膜が成膜されるが、これに対して16秒のRPO処理を行った場合には、Hf−(MMP)4原料を1秒供給しRPO処理を16秒行った場合と同様の効果が得られている。このことから、RPO処理時間(ΔRt)は、長い方が、またΔMt/ΔRtは小さい方が絶縁性は良くなると考えられる。また、不純物除去処理に要するRPO時間には、1ステップに成膜する膜厚に依存する部分もあるが、それに要する閾値が存在するともいえる。これは、RPO処理条件によって大きく変化するし、装置形態によって変わる可能性もあるので、その装置ごとに最適化する必要性があるという不便な点がある。しかしながら、本実施例によれば不純物除去による膜質の改良が確実に行えることを実証しており、この手法の優位性を示している
【0089】
また、同図には、酸素を供給しないで、すなわちArだけのリモートプラズマ処理(RPAr処理)を行った場合の絶縁特性も示しているが、酸素を同時間流した場合と比較すると、Hf−(MMP)4の供給1秒およびRPO処理16秒の場合には及ばないものの、絶縁特性の改善が見られている。これは、図8に概念図を示すように、酸素を流した場合は、酸素ラジカルにより不純物除去が?2O、CO2の脱離といった形で行われるのに対し、酸素を流さないArだけの場合は、アルゴンラジカルにより、不純物除去がCH4、H2の脱離といった形で行われるからである
【0090】
ここで、RPO処理の場合は、H2Oの発生や活性酸素により、HfO2とSi基板界面では、低誘電率界面層(SiO2に近い組成の層)が形成され、これが電気的膜厚、いわゆるEOTの増大を招き、High―k膜(高誘電体膜)を用いて電気的膜厚を薄膜化しようという試みを妨げる原因になってしまう可能性が考えられる。しかし、RPAr処理を行えば、H2Oや活性な酸素は発生しないので、低誘電率界面層は形成されることが無く、このRPAr処理は、この観点からすると有効な方法である
【0091】
ただし、図7にも示したように、絶縁特性は、RPO処理の方が良いので、Si基板に近いHfO2膜を形成する初期のステップには、RPAr処理を用い、その後のステップには、RPO処理を用いると、低誘電率層の形成の抑制、絶縁特性の向上といった、二つの利点を有する膜を形成することができる
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、原料ガスを用いて基板上に薄膜を形成する成膜工程と、酸素原子を含まない反応物を用いて成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程と、を連続して複数回繰り返すようにしたので、膜中の不純物等の特定元素を有効に除去することができる。
また、酸素原子を含まない反応物を用いて改質工程を行うので、酸素を含む反応物を用いる場合とは異なり、H2Oや活性な酸素は発生しないので、HfO2とSi基板界面に低誘電率界面層が形成されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における反応室の概要説明図である。
【図2】サイクル数とHfO2膜中のC、H不純物総量の関係を示すグラフである。
【図3】基板上にHfO2膜を形成した状態を示す断面図である。
【図4】サイクル数と絶縁特性の関係を示すグラフである。
【図5】変形例における反応室の概要説明図である。
【図6】実施例における成膜シーケンスを示す図である。
【図7】HfO2に印加した電界とリーク電流との関係を表す図であるである。
【図8】RPAr処理とRPO処理の不純物脱離の概念図である。
【図9】従来例におけるCVD反応室の概念説明図である。
【符号の説明】
1 反応室
4 基板
5 原料供給管
6 シャワーヘッド
7 排気管
9 成膜原料供給ユニット
11 反応物活性化ユニット
14 バイパス管
15 仕切板
16 トラップ
25 制御装置
Claims (16)
- 原料ガスを用いて基板上に薄膜を形成する成膜工程と、酸素原子を含まない反応物を用いて成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程と、を連続して複数回繰り返すことを特徴とする半導体装置の製造方法。
- 前記成膜工程と改質工程は同一反応室内で行われることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
- 前記反応物とはアルゴンガスを活性化したガスであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
- 前記反応物とはアルゴンガスをプラズマにより活性化したガスであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
- 前記反応物とはアルゴンガスをプラズマにより活性化することにより生成したアルゴンラジカルであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
- 前記薄膜とはHfを含む膜であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
- 前記原料とはHf[OC(CH3)2CH2OCH3]4であり、前記薄膜とはHfを含む膜であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
- 前記薄膜とはHfを含む膜であり、1回の成膜工程で形成する薄膜の膜厚が0.5Å〜30Åであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
- 前記成膜工程で基板に供給する原料ガスと、改質工程で基板に供給する反応物とを同一の供給口より供給することを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
- 前記成膜工程で基板に供給する原料ガスと、改質工程で基板に供給する反応物はそれぞれ別々の供給口より供給するとともに成膜工程で原料ガス用の供給口より基板に原料ガスを供給する際は反応物用の供給口に非反応性ガスを供給し、改質工程で反応物用の供給口より基板に反応物を供給する際は、原料ガス用の供給口に非反応性ガスを供給することを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
- 成膜工程で基板に原料ガスを供給する際は、改質工程で使用する反応物は停止させることなく反応室をバイパスするよう排気しておき、改質工程で基板に反応物を供給する際は成膜工程で使用する原料ガスは停止させることなく反応室をバイパスするよう排気しておくことを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
- 前記成膜工程では、原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく薄膜を形成することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
- 前記成膜工程または/および改質工程は基板を回転させながら行うことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
- 原料ガスを用いて基板上に薄膜を形成する成膜工程と、アルゴンガスをプラズマにより活性化したガスを用いて成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程と、を連続して複数回繰り返すことを特徴とする半導体装置の製造方法。
- 酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを用い、原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく基板上に薄膜を形成する成膜工程と、酸素原子を含まない反応物を用いて成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程と、を連続して複数回繰り返すことを特徴とする半導体装置の製造方法。
- 基板を処理する反応室と、前記反応室内に酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを供給する第1供給口と、前記反応室内に前記ガスとは異なる反応物を供給する第2供給口と、前記反応室内を排気する排気口とを備え、前記反応室内で前記原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく前記基板上に金属酸化膜を形成する成膜工程と、前記原料ガスとは異なる反応物を用いて前記成膜工程において形成した前記金属酸化膜の改質を行う改質工程とを連続して複数回繰り返すように制御する制御装置とを有する基板処理装置。
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