JP2004296315A - 電解質およびそれを用いた電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】サイクル特性および保存特性を向上させることができる電池およびそれに用いる電解質を提供する。
【解決手段】負極22は、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとを有している。負極活物質層22Bは、Si,Snあるいはこれらの合金を含み、気相法,液相法または焼結法で形成されたものであり、負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において負極集電体22Aと合金化している。セパレータ23には電解液が含浸されている。電解液は、添加剤としてMg(PF,Mg(BFあるいはMg[N(CFSOなどの2族元素のフッ素含有塩を含んでいる。2族元素のフッ素含有塩が解離して生じた2族元素のイオンが負極22に吸着し、あるいは、負極22において充電時に還元されて被膜が形成され、負極22における副反応が抑制される。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、正極および負極と共に電解質を備えた電池、およびそれに用いる電解質に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子技術の進歩に伴い、カメラ一体型ビデオテープレコーダ,携帯電話あるいはラップトップコンピュータなどの小型の携帯用電子機器が開発され、これらを使用するための電源として、小型かつ軽量で高エネルギー密度を有する二次電池の開発が強く要請されている。
【0003】
これまで、黒鉛層間へのリチウム(Li)のインターカレーション反応を利用した黒鉛材料、あるいは細孔中へのリチウムの吸蔵・離脱作用を応用した炭素質材料を負極活物質として用いた二次電池が開発され、広く実用化されている。
【0004】
その一方で、近年の携帯用電子機器の高性能化に伴い、二次電池の容量に対する要求は更に強いものとなってきた。また、携帯用電子機器の普及に伴い、特性に対する種々幅広い要求がなされるようになってきた。例えば、機器使用時間の長時間化に伴い、高容量化が要求され、更に電池を多数回繰り返し使用できるようにサイクル特性の向上が強く望まれている。また、電池の使用者の保存状況が多様化しているため、保存特性についても高性能化が要求されるようになってきた。
【0005】
このような要請に応える電池としては、リチウム金属等の軽金属を負極活物質として用いたものがある。しかし、この電池では、充電過程において負極に軽金属がデンドライトとして析出しやすく、デンドライトの先端で電流密度が非常に高くなるため、電解質の分解などにより寿命が低下したり、また、過度にデンドライトが成長して電池の内部短絡が発生したりするという問題があった。
【0006】
これに対して、金属とリチウムとの合金化反応を用いた二次電池が提案されている。このような二次電池に用いる負極活物質としては、リチウム−鉛合金(例えば、特許文献1〜4参照。)、ビスマスースズ−鉛−カドミウム合金(例えば、特許文献5,6参照。)がある。しかし、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)およびカドミウム(Cd)は、近年の地球環境保護の点からその使用は好ましくない。この他にも、リチウムとケイ素(Si)との合金(例えば、特許文献7〜11参照。)、リチウムとアルミニウム(Al)とスズ(Sn)との合金(例えば、特許文献12参照。)、スズと亜鉛(Zn)との合金(例えば、特許文献13参照。)もあるが、いずれもリチウムの吸蔵および離脱に伴い大きく膨張および収縮するのでサイクル劣化が激しいという欠点がある。
【0007】
また、リン(P)を1質量%〜55質量%含有するスズ合金(例えば、特許文献14参照。)、リチウムを吸蔵するスズ含有相と、マンガン(Mn),鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni)あるいは銅(Cu)から構成されるリチウムを吸蔵しない相との混合物を含むもの(例えば、特許文献15参照。)も提案されているが、これらもまたサイクル特性が十分ではない。更に、CuNiSnあるいはMgSn(例えば、特許文献16参照。)もあるが、CuNiSnでは、ニッケルが人体に悪影響を及ぼし、また、MgSnは、マグネシウム(Mg)が酸素(O)と反応し発熱するため空気中で扱いにくいなど実用には十分なものではない。加えて、スズと銅との合金もあるが、これを用いた電池(例えば、特許文献17参照。)では、第1サイクル目の放電容量が300mAh/gと、現用の炭素質材料と比べても低く、実用に供するには不十分であった。
【0008】
このように負極活物質の組成の最適化が検討されている一方、添加剤により特性の向上を図った電池も開発されている。例えば、正極,負極あるいは電解液にアルカリ土類塩、特に、炭酸塩,シュウ酸塩,硝酸塩,酢酸塩,リン酸塩あるいはホウ酸塩を添加した電池がある(特許文献18参照)。
【0009】
【特許文献1】
特公平3−53743号公報
【特許文献2】
特公平5−34787号公報
【特許文献3】
特公平7−73044号公報
【特許文献4】
特公平8−138654号公報
【特許文献5】
特公平4−47431号公報
【特許文献6】
特公平3−64987号公報
【特許文献7】
特開平7−302588号公報
【特許文献8】
特開平10−199524号公報
【特許文献9】
特開平7−326342号公報
【特許文献10】
特開平10−255768号公報
【特許文献11】
特開平10−302770号公報
【特許文献12】
特開昭61−66369号公報
【特許文献13】
特開昭62−145650号公報
【特許文献14】
特開平8−273602号公報
【特許文献15】
特開平11−86854号公報
【特許文献16】
特開平10−223221号公報
【特許文献17】
特開平10−308207号公報
【特許文献18】
特開平9ー180758号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの塩は、電解液に対する溶解性が低いためか、電解液に添加しても十分な効果が得られない他、正極あるいは負極に添加すると、活物質の含有量が低下し容量などが低下したり、塩を構成する炭酸アニオン、酢酸アニオンなどの酸化あるいは還元雰囲気に対する安定性が十分でないため、分解しガスが発生するという欠点があった。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、サイクル特性および保存特性を向上させることができる電池およびそれに用いる電解質を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による電解質は、リチウムのフッ素含有塩と、長周期型周期表における2族元素のフッ素含有塩とを含むものである。
【0014】
本発明による電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、電解質は、リチウムのフッ素含有塩と、長周期型周期表における2族元素のフッ素含有塩とを含むものである。
【0015】
本発明による電解質および電池では、2族元素のフッ素含有塩が2族元素のイオンとフッ素含有アニオンとに解離し、その2族元素のイオンが例えば負極に吸着して吸着層が形成される、あるいは、負極において充電時に還元され薄い被膜が形成されると考えられる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施の形態に係る電解質は、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んで構成されている。溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、アニソール、酢酸エステルあるいはプロピオン酸エステル等を使用することができる。溶媒には、いずれか1種を用いてもよいが、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0018】
電解質塩としては、リチウムのフッ素含有塩を含んでいる。上記溶媒に対する溶解性が高く、安定性も高いからである。リチウムのフッ素含有塩としては、LiAsF,LiPF,LiBF,LiCFSO,LiN(CFSO,LiN(CSOあるいはLiN(CSO)(CFSO)が好ましく、中でも、LiPFあるいはLiBFが特に好ましい。リチウムのフッ素含有塩には、いずれか1種を用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
なお、電解質塩として、リチウムのフッ素含有塩を単独で用いてもよいが、目的に応じた特性を得るために、他の電解質塩と混合して用いてもよい。他の電解質塩としては、例えば、LiClO,LiCHSO,LiClあるいはLiBrが好ましい。
【0020】
この電解質は、また、添加剤として、長周期型周期表における2族元素のフッ素含有塩を含んでいる。このフッ素含有塩は、上述の溶媒に対する溶解性が高いので、電解質中において2族元素のイオンとフッ素含有アニオンとに解離し、その2族元素のイオンが例えば電池において負極に吸着して吸着層を形成する、あるいは負極において充電時に還元され、薄い被膜を形成し、それにより負極における好ましくない副反応を抑制するものと考えられるからである。更に、フッ素含有アニオンが、酸化あるいは還元雰囲気において安定であるということもその理由として挙げられる。
【0021】
2族元素のフッ素含有塩としては、Mg(PF,Mg(BF,Mg(CFSO,Mg[N(CFSO,Mg[N(CSO,Mg[N(CSO)(CFSO)],Mg[C(CFSO,Ca(PF,Ca(BF,Ca(CFSO,Ca[N(CFSO,Ca[N(CSO,Ca[N(CSO)(CFSO)]あるいはCa[C(CFSOが好ましく、特に、Mg(PFあるいはCa(PFなどのヘキサフルオロリン酸塩、またはMg(BFあるいはCa(BFなどのテトラフルオロホウ酸塩が最も好ましい。酸化還元に対する安定性に優れるからである。なお、2族元素のフッ素含有塩には、いずれか1種を用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
この電解液において、2族元素の含有量は、リチウムの含有量の30原子%以下であることが好ましく、20原子%以下であればより好ましい。多すぎると、例えば、後述するように電池に用いた場合に、電池容量の減少、サイクル特性および保存特性の低下が見られるからである。この原因は未だ明らかではないが、2族元素のイオンが負極上で還元される量が多すぎ、リチウムの充放電を阻害するからと考えられる。
【0023】
また、2族元素の含有量はリチウムの含有量の0.001原子%以上であることが好ましく、0.01原子%以上であればより好ましい。少なすぎると、上述した効果が顕著でないからである。
【0024】
なお、この電解質は、これら電解質塩,溶媒および添加剤などからなる液状のいわゆる電解液とされていてもよいが、更に、これらを保持する高分子化合物を含み、ゲル状とされていてもよい。
【0025】
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートが挙げられる。特に、電気化学的安定性の点からは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物が好ましい。
【0026】
これら高分子化合物には、イオン伝導性を有さないものもあるが、電解質塩を解離させることができ、イオン伝導性を有するものもあり、そのどちらを用いてもよい。但し、電解質塩を解離させることができ、イオン伝導性を有する高分子化合物は、溶媒としても機能する。
【0027】
この電解質は、例えば、溶媒に、リチウムのフッ素含有塩と、2族元素のフッ素含有塩とを溶解させることにより製造することができる。また、ゲル状とする場合には、例えば、この電解液を高分子化合物と希釈溶剤と混合して乾燥させることにより製造することができる。また、例えば、この電解液を高分子化合物の出発原料であるモノマーと混合し、モノマーを重合させることにより製造することもできる。
【0028】
この電解質は、例えば、次のようにして二次電池に用いられる。
【0029】
図1はその二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回された電極素子20を有している。電池缶11は、例えばニッケルのめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、電極素子20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0030】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と電極素子20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0031】
電極素子20は、例えば、センターピン24を中心に巻回されている。電極素子20の正極21にはアルミニウムなどよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0032】
図2は図1に示した電極素子20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、正極集電体21Aと、正極集電体21Aに設けられた正極活物質層21Bとを有している。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム,ニッケルあるいはステンレスなどにより構成されている。
【0033】
正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質を含み、必要に応じて炭素質材料などの導電助剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。正極活物質としては、例えば、一般式LiMIOで表されるリチウム含有金属複合酸化物が好ましい。リチウム含有金属複合酸化物は、高電圧を発生可能であると共に、高密度であるため、二次電池の更なる高容量化を図ることが可能だからである。なお、MIは1種類以上の遷移金属であり、例えばコバルトおよびニッケルのうちの少なくとも一方が好ましい。xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。このようなリチウム含有金属複合酸化物の具体例としては、LiCoOあるいはLiNiOなどが挙げられる。なお、正極活物質には、いずれか1種を用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
負極22は、例えば、負極集電体22Aと、負極集電体22Aに設けられた負極活物質層22Bとを有している。負極集電体22Aは、例えば、銅,ステンレス,ニッケル,チタン(Ti),タングステン(W),モリブデン(Mo)あるいはアルミニウムなどにより構成することが好ましく、中でも、負極活物質層22Bとの合金化を起こしやすい金属により構成した方がより好ましい場合もある。例えば、後述するように負極活物質層22Bがケイ素またはスズの単体および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む場合には、銅,チタン,アルミニウムあるいはニッケルなどが合金化しやすい材料として挙げられる。なお、負極集電体22Aは、単層により構成してもよいが、複数層により構成してもよい。その場合、負極活物質層22Bと接する層を負極活物質層22Bと合金化しやすい金属材料により構成し、他の層を他の金属材料により構成するようにしてもよい。
【0035】
負極活物質層22Bは、例えば、気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により形成されたものであり、負極活物質を含んで構成されている。これにより、充放電に伴う負極活物質層22Bの膨張・収縮による破壊を抑制することができると共に、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとを一体化することができ、負極22における電子伝導性を向上させることができるようになっている。また、負極活物質層を塗布により形成した塗布型負極、具体的には、負極活物質と必要に応じてポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを含んだ従来の塗布型負極と異なり、結着剤および空隙などを低減または排除でき、薄膜化することも可能となっている。
【0036】
この負極活物質層22Bは、負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において負極集電体22Aと合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに、または負極活物質の構成元素が負極集電体22Aに、またはそれらが互いに拡散していることが好ましい。この合金化は、負極活物質層22Bを気相法,液相法あるいは焼結法により形成する際に同時に起こることが多いが、更に熱処理が施されることにより起こったものでもよい。なお、本明細書では、上述した元素の拡散も合金化の一形態に含める。
【0037】
負極活物質としては、ケイ素またはスズの単体および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。ケイ素またはスズの単体および化合物は、リチウムと合金を形成可能であり、かつリチウムを吸蔵・離脱する能力が大きく、組み合わせによっては、従来の黒鉛と比較して負極22のエネルギー密度を高くすることができるからである。ケイ素またはスズの化合物は、結晶質でも非晶質でもよいが、好ましくは非晶質、または微結晶の集合体である。ここでいう非晶質あるいは微結晶とは、特性X線としてCuKαを用いたX線回折分析で得られる回折パターンのピークの半値幅が2θで0.5°以上であり、かつ、2θで30°から60°にブロードなパターンを有するものである。
【0038】
ケイ素またはスズの化合物としては、例えば、SiB,SiB,MgSi,MgSn,NiSi,TiSi,MoSi,CoSi,NiSi,CaSi,CrSi,CuSi,FeSi,MnSi,NbSi,TaSi,VSi,WSi,ZnSi,SiC,Si,SiO,SiO(0<a≦2),SnO(0<b≦2),SnSiO,LiSiOあるいはLiSnOが挙げられる。
【0039】
このような負極22の厚みは、負極集電体22Aの厚みも含め、10μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であればより好ましい。薄すぎると、負極22における負極集電体22Aの占める割合が増加し、電池容量の低下が見られ、一方、厚すぎると、充放電に伴うケイ素またはスズの膨張収縮によって、負極活物質層22Bの破壊が起きる場合があるからである。
【0040】
セパレータ23は、リチウムイオンを通過させつつ、正極21と負極22との物理的接触による短絡を防止すためのものであり、例えば、ポリエチレンフィルムあるいはポリプロピレンフィルムなどの微孔性ポリオレフィンフィルムなどにより構成されている。このセパレータ23は、安全性確保のため120℃以上で孔を閉塞して抵抗を上げ、電流を遮断する機能を有することが好ましい。
【0041】
セパレータ23には、本実施の形態に係る電解質が含浸されている。これにより、この二次電池では、電解質中の2族元素のイオンが負極22に吸着して吸着層が形成され、あるいは負極22において充電時に還元され、薄い被膜が形成され、負極22における好ましくない副反応が抑制されるようになっている。特に、2族元素のフッ素含有塩は、電解質中にあまり過剰に存在すると、リチウムイオンの円滑な移動に障害をもたらす虞があるが、本実施の形態に係る負極22は負極活物質層22Bが負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において負極集電体22Aと合金化しており、または、気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により形成され、表面積が比較的小さいので、2族元素のフッ素含有塩を多量に用いなくても負極22に有効な吸着層あるいは被膜が形成されるようになっている。なお、この吸着層あるいは被膜の厚みは、リチウムの負極22への出入りを阻害せず、かつ、副反応を抑制しうる程度のものであると考えられる。
【0042】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0043】
まず、例えば、正極活物質と導電助剤と結着剤とを混合して正極合剤を調整したのち、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの分散媒に分散させて正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布して乾燥させたのち、圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し正極21を作製する。
【0044】
次いで、気相法または液相法により、負極活物質、例えば、ケイ素またはスズの単体および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を負極集電体22Aに堆積させることにより負極活物質層22Bを形成する。また、粒子状の負極活物質を含む前駆層を負極集電体22Aに形成したのち、これを焼結させる焼結法により負極活物質層22Bを形成してもよいし、気相法,液相法および焼結法のうちの2つまたは3つの方法を組み合わせて負極活物質層22Bを形成するようにしてもよい。このように気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により負極活物質層22Bを形成することにより、場合によっては、負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において負極集電体22Aと合金化した負極活物質層22Bが形成される。なお、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの界面をより合金化させるために、更に真空雰囲気下または非酸化性雰囲気下で熱処理を行うようにしてもよい。特に、負極活物質層22Bを後述する鍍金により形成する場合、負極活物質層22Bは負極集電体22Aとの界面においても合金化しにくい場合があるので、必要に応じてこの熱処理を行うことが好ましい。また、気相法により形成する場合においても、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの界面をより合金化させることにより特性を向上させることができる場合があるので、必要に応じてこの熱処理を行うことが好ましい。
【0045】
なお、気相法としては、負極活物質の種類によって物理堆積法あるいは化学堆積法を用いることができ、具体的には、真空蒸着法,スパッタ法,イオンプレーティング法,レーザーアブレーション法,熱CVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法あるいはプラズマCVD法等が利用可能である。液相法としては電解鍍金あるいは無電解鍍金等の公知の手法が利用可能である。焼結法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼結法,反応焼結法あるいはホットプレス焼結法が利用可能である。但し、真空蒸着法、スパッタ法,CVD法,電解鍍金または無電解鍍金が好ましい。
【0046】
正極21および負極22を作製したのち、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解質を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
【0047】
この二次電池では、充電を行うと、正極21からリチウムイオンが離脱し、電解質を介して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが離脱し、電解質を介して正極21に吸蔵される。本実施の形態では、電解質が2族元素のフッ素含有塩を含んでいるので、2族元素のフッ素含有塩の解離により生じた2族元素のイオンが負極22に吸着して吸着層が形成され、あるいは負極22において充電時に還元され、薄い被膜が形成され、負極22における副反応が抑制される。
【0048】
このように本実施の形態では、電解質が2族元素のフッ素含有塩を含むようにしたので、2族元素のフッ素含有塩の解離により生じた2族元素のイオンが負極22に吸着して吸着層が形成され、あるいは負極22において充電時に還元され、薄い被膜が形成される。よって、負極22における副反応を抑制することができ、サイクル特性および保存特性を向上させることができる。
【0049】
特に、2族元素の含有量をリチウムの含有量の20原子%以下とするようにすれば、または、電解質が2族元素のフッ素含有塩として、ヘキサフルオロリン酸塩およびテトラフルオロホウ酸塩のうちの少なくとも一方を含むようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0050】
更に、負極22が、負極集電体22Aに設けられ、負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において負極集電体22Aと合金化している負極活物質層22Bを有する、または、負極集電体22Aに気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により形成された負極活物質層22Bを有するようにすれば、円滑なリチウムイオンの移動を妨げることなく、負極22に吸着層あるいは薄い被膜を形成することができる。
【0051】
なお、本実施の形態に係る二次電池は、例えば、ヘッドフォンステレオ、ビデオデッキ、液晶テレビジョン、ポータブルCD(コンパクトディスク)プレーヤー、MD(ミニディスク)プレーヤー、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、ラジオ、玩具、ゲーム機器、時計あるいはペースメーカーなどに用いることができる。更に、太陽電池あるいは燃料電池などの発電機と組み合わせて用いることもできる。
【0052】
【実施例】
更に、本発明の具体的な実施例について、図1および図2を参照して詳細に説明する。
【0053】
(実施例1−1〜1−4)
まず、正極活物質である平均二次粒径15μmのLiNi0.8 Co0.19Al0.0191質量%と、導電助剤であるグラファイト6質量%と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量%とを混合して正極合剤を調整したのち、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。続いて、この正極合剤スラリーを厚み20μmのアルミニウムよりなる正極集電体21Aに塗布して乾燥させ、ローラープレス機で圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製した。そののち、正極集電体21Aの一端に絶縁テープを貼った正極リード25を取り付けた。
【0054】
また、電解銅箔よりなる厚み18μmの負極集電体22Aの両面に電子ビーム蒸着法によりスズよりなる厚み3μmの層をそれぞれ形成したのち、1×10−5Torr(約1.33×10−3Pa)の真空度において、200℃で24時間熱処理することにより負極活物質層22Bを形成し、総厚み24μmの負極22を作製した。得られた負極22をXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy;X線光電子分光法)およびAES( Auger Electron Spectroscopy;オージェ電子分光法)により分析したところ、負極活物質層22Bが、負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において負極集電体22Aと合金化していることが確認された。負極22を作製したのち、負極集電体22Aの一端に負極リード26を取り付けた。
【0055】
次いで、正極21と負極22とを厚み30μmの微多孔性ポリエチレンフィルムよりなるセパレータ23を介して積層し、これを巻き取ることにより電極素子20を作製した。
【0056】
電極素子20を作製したのち、電極素子20を一対の絶縁板12,13で挟み、正極リード25を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26を電池缶11に溶接して、電極素子20を鉄製の電池缶11の内部に収納した。そののち、電極素子20の中心にセンターピン24を挿入した。次いで、電池缶11の内部に電解液を注入した。電解液には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを1:1の体積比で混合した溶媒に電解質塩であるLiPFと添加剤であるMg(PFとを加えたものを用いた。その際、LiPFの含有量は1mol/lとした。また、Mg(PFの含有量は実施例1−1〜1−4で表1に示したように変化させた。すなわち、電解液におけるマグネシウムの含有量は、リチウムに対して実施例1−1〜1−4で表1に示した値となる。
【0057】
【表1】
Figure 2004296315
【0058】
電池缶11の内部に電解液を注入したのち、ガスケット17を介して電池蓋14を電池缶11にかしめることにより、実施例1−1〜1−4について直径18mm、高さ65mmの円筒型二次電池を得た。
【0059】
実施例1−1〜1−4に対する比較例1−1として、添加剤を加えなかったことを除き、他は実施例1−2と同様にして二次電池を作製した。また、実施例1−1〜1−4に対する比較例1−2として、添加剤としてMgClを用いたことを除き、他は実施例1−2と同様にして二次電池を作製した。
【0060】
作製した実施例1−1〜1−4および比較例1−1,1−2の二次電池について、充放電を100サイクル行い、容量維持率を求めた。その際、充電は、1Aの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧で充電時間の総計が1サイクル目では20時間、2サイクル目以降では5時間に達するまで行い、放電は、1サイクル目〜100サイクル目のいずれでも1.5Aの定電流で電池電圧が2.5Vに達するまで行った。容量維持率は、2サイクル目の放電容量と100サイクル目の放電容量とから、(100サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量×100)として求めた。得られた結果を表1に示す。
【0061】
また、充放電を2サイクル行ったのち再度充電を行ったものを、50℃で1週間保存したのち、放電を行い、引き続き1サイクル充放電を行って、保存後容量維持率を求めた。その際、充電は、1サイクル目では充電時間の総計が20時間、2,3サイクル目では充電時間の総計が5時間とした以外は上述の条件と同様の条件で行った。放電は、1サイクル目〜4サイクル目のいずれでも上述の条件で行った。保存後容量維持率としては、保存前の2サイクル目の放電容量と保存後の4サイクル目の放電容量とから、(2サイクル目の放電容量/4サイクル目の放電容量×100)として求めた。得られた結果を表1に示す。
【0062】
表1から分かるように、Mg(PFを用いた実施例1−1〜1−4はいずれも、Mg(PFを用いていない比較例1−1に比べて、容量維持率および保存後容量維持率の両方について高い値が得られた。
【0063】
また、比較例1−1,1−2を比較すると分かるように、添加剤としてフッ素を含有しない塩を用いた比較例1−2は、比較例1−1に比べて、容量,容量維持率および保存後容量維持率のいずれについても低かった。これは、フッ素を含有しない塩は、上記溶媒に溶解しにくいためと考えられる。
【0064】
すなわち、電解液がマグネシウムのフッ素含有塩を含むようにすれば、サイクル特性および保存特性を向上させることができることが分かった。
【0065】
更に、実施例1−1〜1−4から分かるように、容量維持率および保存後容量維持率は、リチウムに対するマグネシウムの含有量が増加すると大きくなり極大値を示したのち小さくなる傾向が見られた。すなわち、マグネシウムの含有量は、リチウムの含有量の20原子%以下であることが好ましいことが分かった。
【0066】
(実施例2−1〜2−8)
添加剤の種類を表2に示したように変えたことを除き、他は実施例1−2と同様にして二次電池を作製した。実施例2−1〜2−8の二次電池についても実施例1−2と同様にして、容量維持率および保存後容量維持率を求めた。その結果を実施例1−2および比較例1−1,1−2の結果と共に表2に示す。
【0067】
【表2】
Figure 2004296315
【0068】
表2から分かるように、実施例2−1〜2−8は、実施例1−2と同様に、比較例1−1,1−2に比べて、容量維持率および保存後容量維持率の両方について高い値が得られた。また、その効果は、実施例1−2,2−1〜2−3を比較すると、または、実施例2−4〜2−6を比較すると分かるように、ヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩を用いたものにおいて特に大きかった。
【0069】
すなわち、電解液が2族元素のフッ素含有塩を含むようにすれば、サイクル特性および保存特性を向上させることができ、特に、2族元素のヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩を含むようにすれば、より高い効果を得ることができることが分かった。
【0070】
(実施例3−1)
鍍金により、スズ−ニッケル(Sn−Ni)合金よりなる負極活物質層22Bを形成したことを除き、他は実施例1−2と同様にして二次電池を作製した。負極活物質層22Bは、具体的には、次のようにして形成した。まず、表面を清浄した圧延銅箔よりなる負極集電体22Aをスズ−ニッケル合金鍍金浴中に浸漬して、負極集電体22Aをカソードとして通電することにより、スズ−ニッケル合金を厚み約3μmとなるように析出させた。次いで、それを、水洗し、乾燥させたのち200℃において24時間熱処理した。
【0071】
なお、負極22の総厚みは24μmであった。また、この負極22についても実施例1−2と同様にしてXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy;X線光電子分光法)およびAES( Auger Electron Spectroscopy;オージェ電子分光法)により分析したところ、負極活物質層22Bが、負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において負極集電体22Aと合金化していることが確認された。
【0072】
また、実施例3−1に対する比較例3−1として、添加剤を加えなかったことを除き、他は実施例3−1と同様にして二次電池を作製した。作製した実施例3−1および比較例3−1の二次電池についても、実施例1−2と同様にして、容量維持率および保存後容量維持率を求めた。その結果を表3に示す。
【0073】
【表3】
Figure 2004296315
【0074】
表3から分かるように、Mg(PFを用いた実施例3−1は、用いていない比較例3−1に比べて容量維持率および保存後容量維持率の両方について高い値が得られた。すなわち、負極活物質を合金としても、また、負極活物質層22Bを液相法である鍍金により形成しても、電解液に2族元素のフッ素含有塩を含むようにすれば、サイクル特性および保存特性を向上させることができることが分かった。
【0075】
(実施例4−1)
電子ビーム蒸着法により、非晶質ケイ素よりなる厚み3μmの負極活物質層22Bを形成したことを除き、他は実施例1−2と同様にして二次電池を作製した。なお、負極22の総厚みは24μmであった。また、この負極22についても実施例1−2と同様にしてXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy;X線光電子分光法)およびAES( Auger Electron Spectroscopy;オージェ電子分光法)により分析したところ、負極活物質層22Bが、負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において負極集電体22Aと合金化していることが確認された。
【0076】
また、実施例4−1に対する比較例4−1として、添加剤を加えなかったことを除き、他は実施例4−1と同様にして二次電池を作製した。作製した実施例4−1および比較例4−1の二次電池についても実施例1−2と同様にして容量維持率および保存後容量維持率を求めた。その結果を表4に示す。
【0077】
【表4】
Figure 2004296315
【0078】
表4から分かるように、Mg(PFを用いた実施例4−1は、用いていない比較例4−1に比べて容量維持率および保存後容量維持率の両方について高い値が得られた。すなわち、負極活物質にケイ素を用いても、電解液に2族元素のフッ素含有塩を含むようにすれば、サイクル特性および保存特性を向上させることができることが分かった。
【0079】
なお、上記実施例では、2族元素のフッ素含有塩について、具体例を挙げて説明したが、他の2族元素のフッ素含有塩を用いても同様の結果を得ることができる。また、負極活物質層22Bを、電子ビーム蒸着法以外の気相法、電解鍍金以外の液相法、または焼結法により形成しても、同様の結果を得ることができる。更に、上記実施例では、電解液を用いる場合について説明したが、ゲル状の電解質を用いても同様の結果を得ることができる。
【0080】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、液状の電解質である電解液、またはいわゆるゲル状の電解質を用いる場合について説明したが、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、イオン伝導性を有する固体電解質、固体電解質と電解液とを混合したもの、あるいは固体電解質とゲル状の電解質とを混合したものが挙げられる。
【0081】
また、上記実施の形態および実施例では、負極集電体22Aに負極活物質層22Bを形成するようにしたが、負極集電体と負極活物質層との間に、他の層を形成するようにしてもよい。
【0082】
更に、上記実施の形態および実施例では、負極活物質層22Bを気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により形成するようにしたが、負極活物質層は、塗布により形成したもの、具体的には、負極活物質と必要に応じてポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んだものでもよい。但し、気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により形成したものの方が、塗布により形成したものに比べて表面積が小さので、2族元素のフッ素含有塩の効果を有効に引き出すことができるので好ましい。
【0083】
加えて、上記実施の形態および実施例では、負極活物質としてケイ素またはスズの単体および化合物を例に挙げて説明したが、他の負極活物質を用いるようにしてもよい。他の負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な炭素質材料、金属酸化物あるいは高分子材料などが挙げられる。炭素質材料としては、難黒鉛化性炭素,人造黒鉛,コークス類,グラファイト類,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,炭素繊維,活性炭あるいはカーボンブラック類などが挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール類やフラン類などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。また、金属酸化物としては、酸化鉄,酸化ルテニウム,酸化モリブデンあるいは酸化スズなどが挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0084】
更にまた、上記実施の形態および実施例では、巻回構造を有する円筒型の二次電池について説明したが、本発明は、巻回構造を有する楕円型あるいは多角形型の二次電池、または正極および負極を折り畳んだりあるいは積み重ねた構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。また、いわゆる角型,コイン型あるいはボタン型、またはフィルム状の外装部材を用いた他の形状を有する二次電池についても適用することができる。更に、二次電池に限らず、一次電池についても適用することができる。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電解質または、請求項4ないし請求項10のいずれか1項に記載の電池によれば、2族元素のフッ素含有塩を含むようにしたので、2族元素のフッ素含有塩の解離により生じた2族元素のイオンが負極に吸着して吸着層が形成される、あるいは負極において充電時に還元され、薄い被膜が形成される。よって、負極における副反応を抑制することができ、サイクル特性および保存特性を向上させることができる。
【0086】
特に、請求項2記載の電解質または請求項5記載の電池によれば、2族元素の含有量をリチウム原子の含有量の20原子%以下とするようにしたので、また、請求項3記載の電解質または請求項6記載の電池によれば、2族元素のフッ素含有塩として、ヘキサフルオロリン酸塩およびテトラフルオロホウ酸塩のうちの少なくとも一方を含むようにしたので、より高い効果を得ることができる。
【0087】
また、請求項9または請求項10に記載の電池によれば、負極集電体との界面の少なくとも一部において負極集電体と合金化している負極活物質層を有するように、または、負極集電体に気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により形成された負極活物質層を有するようにしたので、電解質におけるイオンの円滑な移動を妨げることなく、負極に吸着層あるいは薄い被膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した電極素子の一部を拡大して表す断面図である。
【符号の説明】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20…電極素子、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23…セパレータ、24…センターピン、25…正極リード、26…負極リード

Claims (10)

  1. リチウムのフッ素含有塩と、
    長周期型周期表における2族元素のフッ素含有塩と
    を含むことを特徴とする電解質。
  2. 前記2族元素の含有量は、前記リチウムの含有量の20原子%以下であることを特徴とする請求項1記載の電解質。
  3. 前記2族元素のフッ素含有塩として、ヘキサフルオロリン酸塩およびテトラフルオロホウ酸塩のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1記載の電解質。
  4. 正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
    前記電解質は、リチウムのフッ素含有塩と、長周期型周期表における2族元素のフッ素含有塩とを含むことを特徴とする電池。
  5. 前記電解質における前記2族元素の含有量は、前記リチウムの含有量の20原子%以下であることを特徴とする請求項4記載の電池。
  6. 前記電解質は、前記2族元素のフッ素含有塩として、ヘキサフルオロリン酸塩およびテトラフルオロホウ酸塩のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項4記載の電池。
  7. 前記負極の厚みは、10μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項4記載の電池。
  8. 前記負極は、負極集電体と、この負極集電体に設けられ、負極集電体との界面の少なくとも一部において負極集電体と合金化している負極活物質層とを有することを特徴とする請求項4記載の電池。
  9. 前記負極は、負極集電体と、この負極集電体に気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により形成された負極活物質層とを有することを特徴とする請求項4記載の電池。
  10. 前記負極は、ケイ素(Si)またはスズ(Sn)の単体および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項4記載の電池。
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