JP2004294644A - 有機感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、電子写真画像を形成する際に、高速複写や低温低湿環境下で発生じやすい有機感光体の感度の低下に原因し、反転現像におけるべた黒画像の電位上昇による画像濃度の低下や文字細り等の発生による鮮鋭性の低下を防止した有機感光体及び該有機感光体を用いたプロセスカートリッジ、画像形成装置を提供することにある。
【解決手段】分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を含有したことを特徴とする有機感光体。
【選択図】 なし
【解決手段】分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を含有したことを特徴とする有機感光体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いる有機感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関し、更に詳しくは、複写機やプリンターの分野で用いられる電子写真方式の画像形成に用いる有機感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体はセレン系感光体、アモルファスシリコン感光体のような無機感光体に比して素材の選択の幅が広いこと、環境適性に優れていること、生産コストが安いこと等の大きなメリットがあり、近年無機感光体に代わって有機感光体の主流となっている。
【0003】
一方、近年の電子写真方式の画像形成方法は、パソコンのハードコピー用のプリンターとして、また通常の複写機においても画像処理の容易さや複合機への展開の容易さから、LEDやレーザを像露光光源とするデジタル方式の画像形成方式が急激に浸透してきた。更に、デジタル画像の精細化を進めて、高画質の電子写真画像を作製する技術が開発されている。例えば、スポット面積の小さいレーザ光で像露光を行い、ドット潜像の密度を上げて、高精細の潜像を形成し、該潜像を小粒径トナーで現像し、高画質の電子写真画像を作製する技術が公開されている。(特許文献1)
このような高画質のデジタル画像の形成に際しては、高感度で且つ温室度環境の変化に対して安定な特性を有する有機感光体(以後、単に感光体とも云う)が要求される。
【0004】
従来、上記のような有機感光体の要求を満たすために、有機感光体は、感光層を電荷発生層と電荷輸送層に機能分離した層構成にし、該電荷輸送層に、分子量500前後の低分子量の電荷輸送物質を多量に含有させた構成にしていた。しかしながら、このような構成の電荷輸送層では、膜質が低下し、表面層の電荷輸送層が異物で汚染されやすい。即ち、感光体周辺に配置された現像手段、転写手段、クリーニング手段等により、感光体表面が紙粉やトナー組成物で汚染されやすく、その結果、ブラックスポット(苺状の斑点画像)や、転写ヌケ等の周期性の画像欠陥が発生しやすい。又、露光工程から現像工程間の時間が短い高速の複写機や低温低湿環境等で、十分な感度が得られず、その結果、ドット画像が忠実に再現されず、細線が切断された画像が発生したりしやすい。
【0005】
このような課題を解決する方法として、電荷輸送性ポリマーと電荷輸送物質を併用して用いることが報告されている(特許文献2)。しかしながら、これらの電荷輸送性ポリマーは電荷輸送層のバインダー樹脂との相溶性が不十分となりやすく、又、電荷輸送物質との相溶性も不十分となりやすく、電荷輸送物質が均一に分散されず、感度が十分にでない或いは電荷輸送層にクラック等の破断傷が発生しやすいと云う問題があった。
【0006】
又、感光体表面の汚染を防止するために、表面層にフッ素系樹脂粒子を含有させた有機感光体が提案されている(特許文献3)。しかしながら、フッ素系樹脂粒子を含有させた有機感光体は、画像ボケが発生しやすい。又表面層の機械的強度も低下させやすく、前記クリーニング手段等との接触摩擦により、感光体表面が減耗しやすく、必ずしも良好な電子写真画像を提供し得ていない。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−255685号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2001−265034号公報
【0009】
【特許文献3】
特開昭63−65449号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記のような課題を解決するために提案されたものであり、その目的とするところは、電子写真画像を形成する際に、高速複写や低温低湿環境下で発生じやすい有機感光体の感度の低下に原因し、反転現像におけるべた黒画像の電位上昇による画像濃度の低下や文字細り等の発生による鮮鋭性の低下を防止することであり、又、有機感光体の表面汚染により発生しやすいブラックスポットや、転写ヌケ等の周期性の画像欠陥を防止し、又、クラック等の破断傷等の発生を起こさず、高濃度、高解像性の鮮明な電子写真画像が安定して得られる有機感光体、及び該有機感光体を用いたプロセスカートリッジ、画像形成装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、本発明の上記課題を解決するためには、有機感光体の電荷輸送層を構成するバインダー樹脂と電荷輸送物質について、詳細な検討を加えた結果、分子量が異なる電荷輸送物質を混合することにより、即ち、大分子量の電荷輸送物質と小分子量の電荷輸送物質を混合して用いることにより、大分子量の電荷輸送物質を用いても、電荷輸送物質の溶媒溶解性が改善され、バインダー樹脂との相溶性も良好であり、且つ高速プロセスでしかも低温低湿環境下での感度の応答性が改善され、且つ表面層が汚染されにくく、ブラックスポット、転写ヌケ等の周期性の画像欠陥を防止し、クラック等の破断傷等の発生を起こさず、高濃度、高解像力の鮮明な画像が安定して得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明の目的は、下記構成のいずれかを採ることにより達成される。
1.分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を含有したことを特徴とする有機感光体。
【0013】
2.導電性支持体上に電荷発生物質を有する電荷発生層、電荷輸送層を有する電荷輸送層を積層した有機感光体において、前記電荷輸送層が、分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を含有したことを特徴とする有機感光体。
【0014】
3.前記1又は2に記載の有機感光体と該有機感光体上を一様に帯電する帯電手段、該有機感光体上の静電潜像を顕像化する現像手段、該有機感光体上に顕像化されたトナー像を転写材上に転写する転写手段、転写後の該有機感光体上の電荷を除去する除電手段及び転写後の該有機感光体上の残留するトナーをクリーニングするクリーニング手段の少なくとも1つとが一体的に支持され、画像形成装置本体に着脱自在に装着されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0015】
4.前記3に記載のプロセスカートリッジを用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【0016】
以下、本発明について、詳細に説明する。
有機感光体の構成
本発明に用いられる有機感光体は、分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を含有したことを特徴とする。又、本発明に用いられる有機感光体は、導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層を有し、電荷輸送層が分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を含有したことを特徴とする。
【0017】
本発明の有機感光体は、上記構成を有することにより、高速複写や低温低湿環境下で発生しやすい、感度の低下に原因する文字細り等の鮮鋭性低下を防止でき、前記したブラックスポットや、転写ヌケ等の周期性の画像欠陥の発生もなく、クラック等の破断傷等の発生も起こさず、高濃度、高解像力の鮮明な電子写真画像を作製することができる。
一方、電荷輸送物質の分子量が800〜2000の電荷輸送物質のみを用いると、電荷輸送物質と電荷輸送層のバインダー樹脂との溶解性が悪くなりやすく、感度の低下やクラックの発生を起こしやすい。
【0018】
又、分子量が800未満の電荷輸送物質のみを用いると、電荷輸送物質と電荷輸送層のバインダー樹脂との溶解性はよいが、高速条件の画像プロセスや低温低湿環境下での感度が悪くなりやすく、又、電荷輸送層の膜質が柔らかくなり、ブラックスポットや転写抜け等の画像欠陥を発生させやすい。
【0019】
本発明の分子量が800〜2000の電荷輸送物質としては、下記に示すビス、トリ又はクワトロブタジエン系化合物((−C=CHCH=C−)基を2〜4個有する電荷輸送物質)やトリフェニルアミン多量体(トリフェニルアミン基を多量、好ましくは2〜5個有する電荷輸送物質)が好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
【化2】
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
又、これらの化合物の合成法については特開平9−244278号、特開2001−316336号等に記載されている。
【0028】
上記ビス、トリ又はクワトロブタジエン系化合物((−C=CHCH=C−)基を2〜4個有する電荷輸送物質)やトリフェニルアミン多量体は、ブタジエン構造やトリフェニルアミン構造等の剛直な基を多く含有して、分子量を大きくしているので、本来、電荷輸送性に優れた特性を有していても、これらの化合物を単独で用いると、電荷輸送層の塗布液溶媒への溶解性が十分でなく、電荷輸送能が低下したり、形成された電荷輸送層の膜質が柔軟性を欠き、クラックが発生しやすい。しかしながら、これら800〜2000の高分子量の電荷輸送物質と分子量800未満の低分子量の電荷輸送物質を混合して用いることにより、これら800〜2000の高分子量の電荷輸送物質の溶媒溶解性を大きくし、且つ電荷輸送層の膜質にも柔軟性を付与することができ、低温低湿環境下での高速応答性を十分に達成でき、且つクラック等の画像欠陥も発生させない感光体を作製することができる。
【0029】
本発明の電荷輸送物質の分子量は800〜2000であるが、分子量1000〜1500の電荷輸送物質がより好ましい。分子量1000〜1500の電荷輸送物質は低分子量、即ち、800未満の電荷輸送物質と併用すると、電荷輸送層内の分散性が良好であり、且つ低温低湿環境下の感度応答性、或いは高速プロセスでの感度応答性が優れている。
【0030】
一方、分子量が800未満の電荷輸送物質としては、一般に現在用いられている電荷輸送物質を用いることができる。例えば、例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。分子量が800未満の電荷輸送物質の中でも、分子量250〜700の電荷輸送物質がより好ましい。分子量800未満の電荷輸送物質としては、上記した種々の化合物が用いられるが、例えば、以下のような構造式の化合物を例として挙げることができる。
【0031】
【化8】
【0032】
【化9】
【0033】
又、分子量が800〜2000の電荷輸送物質と分子量800未満の電荷輸送物質の混合比は、質量比で前者100質量部に対し、後者の分子量800未満の電荷輸送物質が10〜150質量部が好ましく、30〜80質量部がより好ましい。即ち、分子量が800〜2000の電荷輸送物質が分子量800未満の電荷輸送物質に比べ多い方が高速時や低温低湿時の感度の応答が高く、且つ電荷輸送層の膜が強靱に形成され、ブラックスポットや転写ヌケ等の周期性の画像欠陥が発生しにくく、クラック等の破断傷等の発生も起こさず、高濃度、高解像力の鮮明な電子写真画像を作製する有機感光体を作製できる。
【0034】
次に、上記のような電荷輸送物質を用いた有機感光体の層構成について記載する。
【0035】
本発明の有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された有機感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0036】
以下に本発明に用いられる有機感光体の構成について記載する。
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0037】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0038】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0039】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/L、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/L、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0040】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0041】
本発明においては導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0042】
又、本発明に好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
【0043】
又、本発明に好ましく用いられる中間層は無機粒子をバインダー樹脂中に分散した中間層が挙げられる。無機粒子の平均粒径は0.01〜1μmが好ましい。特に、表面処理をしたN型半導性微粒子をバインダー中に分散した中間層が好ましい。例えばシリカ・アルミナ処理及びシラン化合物で表面処理した平均粒径が0.01〜1μmの酸化チタンをポリアミド樹脂中に分散した中間層が挙げられる。このような中間層の膜厚は、1〜20μmが好ましい。
【0044】
N型半導性微粒子とは、導電性キャリアを電子とする性質をもつ微粒子を示す。すなわち、導電性キャリアを電子とする性質とは、該N型半導性微粒子を絶縁性バインダーに含有させることにより、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性を示さない性質を有するものをいう。
【0045】
ここで、N型半導性粒子の判別方法について説明する。
導電性支持体上に膜厚5μmの中間層(中間層を構成するバインダー樹脂中に粒子を50質量%分散させた分散液を用いて中間層を形成する)を形成する。該中間層に負極性に帯電させて、光減衰特性を評価する。又、正極性に帯電させて同様に光減衰特性を評価する。
【0046】
N型半導性粒子とは、上記評価で、負極性に帯電させた時の光減衰が正極性に帯電させた時の光減衰よりも大きい場合に、中間層に分散された粒子をN型半導性粒子という。
【0047】
前記N型半導性微粒子は、具体的には酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等の微粒子が挙げられるが、本発明では、特に酸化チタンが好ましく用いられる。
【0048】
本発明に用いられるN型半導性微粒子の平均粒径は、数平均一次粒径において10nm以上500nm以下の範囲のものが好ましく、より好ましくは10nm〜200nm、特に好ましくは、15nm〜50nmである。
【0049】
数平均一次粒径の値が前記範囲内にあるN型半導性微粒子を用いた中間層は層内での分散を緻密なものとすることができ、十分な電位安定性、及び黒ポチ発生防止機能を有する。
【0050】
前記N型半導性微粒子の数平均一次粒径は、例えば酸化チタンの場合、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定される。
【0051】
本発明に用いられるN型半導性微粒子の形状は、樹枝状、針状および粒状等の形状があり、このような形状のN型半導性微粒子は、例えば酸化チタン粒子では、結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型及びアモルファス型等があるが、いずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型を混合して用いてもよい。その中でもルチル型のものが最も良い。
【0052】
N型半導性微粒子に行われる疎水化表面処理の1つは、複数回の表面処理を行い、かつ該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物による表面処理を行うものである。また、該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ、シリカ、及びジルコニアから選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理であり、最後に反応性有機ケイ素化合物の表面処理を行うことが好ましい。
【0053】
尚、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とはN型半導性微粒子表面にアルミナ、シリカ、或いはジルコニアを析出させる処理を云い、これらの表面に析出したアルミナ、シリカ、ジルコニアにはアルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含まれる。又、反応性有機ケイ素化合物の表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を用いることを意味する。
【0054】
この様に、酸化チタン粒子の様なN型半導性微粒子の表面処理を少なくとも2回以上行うことにより、N型半導性微粒子表面が均一に表面被覆(処理)され、該表面処理されたN型半導性微粒子を中間層に用いると、中間層内における酸化チタン粒子等のN型半導性微粒子の分散性が良好で、かつ黒ポチ等の画像欠陥を発生させない良好な感光体を得ることができるのである。
【0055】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0056】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0057】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる結晶構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θが12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0058】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01μm〜2μmが好ましい。
【0059】
電荷輸送層
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0060】
電荷輸送物質(CTM)としては、前記した分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質の混合物を用いる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。又、上記範囲外の分子量の電荷輸送物質を混合してもよいが、その割合は、分子量800〜2000の電荷輸送物質100質量部に対し、50質量部以下が好ましい。
【0061】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
【0062】
これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂はCTMの分散性、電子写真特性を良好にすることにおいて、最も好ましい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。
【0063】
又、電荷輸送層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。代表的には下記の化合物群が挙げられる。
【0064】
【化10】
【0065】
【化11】
【0066】
【化12】
【0067】
【化13】
【0068】
電荷輸送層は2層以上の層構成にしてもよい。この場合は表面の電荷輸送層が本発明の構成を満たせばよい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0069】
上記では本発明の最も好ましい感光体の層構成を例示したが、本発明では上記以外の感光体層構成でも良い。
【0070】
感光層、中間層、表面層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0071】
又、これらの各層の塗布溶液は塗布工程に入る前に、塗布溶液中の異物や凝集物を除去するために、金属フィルター、メンブランフィルター等で濾過することが好ましい。例えば、日本ポール社製のプリーツタイプ(HDC)、デプスタイプ(プロファイル)、セミデプスタイプ(プロファイルスター)等を塗布液の特性に応じて選択し、濾過をすることが好ましい。
【0072】
次に有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお保護層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0073】
次に、本発明の有機感光体を用いた画像形成装置の説明をする。
図1は本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面構成図である。
【0074】
図1に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器(帯電手段)で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0075】
感光体への一様帯電の後、像露光手段としての像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0076】
ここで反転現像プロセスとは帯電器52により、感光体表面を一様に帯電し、像露光が行われた領域、即ち感光体の露光部電位(露光部領域)を現像工程(手段)により、顕像化する画像形成方法である。一方未露光部電位は現像スリーブ541に印加される現像バイアス電位により現像されない。
【0077】
その静電潜像は次いで現像手段としての現像器54で現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される有機感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
【0078】
現像剤は、例えば前述のフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、前述のスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム50と現像スリーブ541の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。感光体の電位測定は電位センサー547を図1のように現像位置上部に設けて行う。
【0079】
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
【0080】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写電極(転写手段:転写器)58が作動し、給紙された記録紙Pにトナーと反対極性の帯電を与えてトナーを転写する。
【0081】
次いで記録紙Pは分離電極(分離器)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写電極58及び分離電極59は記録紙Pの通過後、一次作動を中止し、次なるトナー像の形成に備える。図1では転写電極58にコロトロンの転写帯電極を用いている。転写電極の設定条件としては、感光体のプロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、転写電流としては+100〜+400μA、転写電圧としては+500〜+2000Vを設定値とすることができる。
【0082】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器(クリーニング手段)62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0083】
尚、70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0084】
本発明の有機感光体は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【0085】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。但し、下記文中の「部」は「質量部」を示す。
【0086】
下記のごとくして、感光体を作製した。
感光体1の作製
上記成分を混合溶解して中間層塗布液を調製した。この塗布液を直径80mm、長さ360mmの円筒状アルミニウム基体上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.3μmの中間層を形成した。
上記成分を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
上記成分を混合溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、十分に乾燥して(残留溶媒を300ppm以下に乾燥した)、膜厚22μmの電荷輸送層を形成し感光体1を作製した。
【0087】
感光体2〜25の作製
感光体1において、電荷発生物質、電荷輸送層の電荷輸送物質1、電荷輸送物質2及びその量、溶媒の種類等を表1のように変更した以外は同様にして感光体2〜25を作製した。
【0088】
【表1】
【0089】
表中、Yはチタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトルで、ブラッグ角2θの最大ピークが27.3°の顔料)
Zはベンズイミダゾールペリレン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトルで、ブラッグ角2θの最大ピークが12.4°の顔料)を示す。
【0090】
T25は下記の化学構造の化合物(電荷輸送物質)を示す。
【0091】
【化14】
【0092】
評価
以上のようにして得た感光体1〜25を組み込んだコニカ(株)製の反転現像方式デジタル複写機「Konica7085」(スコロトロン帯電器、半導体レーザ像露光器(波長680nm)、反転現像手段を有するA4紙85枚/分機)を用い、下記評価項目について評価した。評価は、評価項目毎に、環境条件(温湿度条件)を変えて行なった。評価は、基本的に画素率が7%の文字画像、ハーフトーン画像、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4で1枚間欠モードにて1万枚の複写を行い、評価した。評価結果を表2に示す。
【0093】
評価条件
ラインスピード;420mm/秒
像露光から現像位置までの到達時間;0.108秒
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器(負帯電)
帯電電位;−700V〜−750V
露光条件
べた黒画像電位を−100Vにする露光量に設定。
【0094】
露光ビーム;レーザは680nmの半導体レーザを使用
現像条件
現像剤は、フェライトをコアとして絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアとスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラックの着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる重合法で作製した体積平均粒径5.3μmの着色粒子に、シリカ、酸化チタンを外添したトナーの現像剤を使用した。
【0095】
転写条件
転写極;コロナ帯電方式(正帯電)
分離条件
分離爪ユニットの分離手段を用いた
クリーニング条件
クリーニング部に硬度70°、反発弾性65%、厚さ2(mm)、自由長9mmのクリーニングブレードをカウンター方向に線圧18(g/cm)となるように重り荷重方式で当接した。
【0096】
評価項目及び評価方法
低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性(べた黒画像の電位変化)
低温低湿(10℃20%RH)環境下で、画素率が7%の文字画像、ハーフトーン画像、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4で1枚間欠モードにて1万枚の複写を行い、初期と1万枚後の現像位置でのべた黒画像の電位変化(|ΔV|)を評価した。|ΔV|が小さい方が低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性が優れている。
【0097】
◎;べた黒画像の電位変化|ΔV|が50V未満(良好)
○;べた黒画像の電位変化|ΔV|が50V〜150V(実用上問題なし)
×;べた黒画像の電位変化|ΔV|が150Vより大きい(実用上問題有り)
文字細り(低温低湿(10℃20%RH)の環境下)
0.1mm、0.2mm幅の線画像が印刷されたオリジナル画像を複写し、評価した。
【0098】
◎;複写画像の線幅がオリジナル画像の線幅の75%以上で再現されている(良好)
○;複写画像の線幅がオリジナル画像の線幅の40%〜74%で再現されている(実用上問題ないレベル)
×;複写画像の線幅がオリジナル画像の線幅の39%以下、又は線幅が切断されている(実用上問題となるレベル)
ブラックスポット(高温高湿(30℃80%RH)
ハーフトーン画像上のブラックスポット(苺状のスポット画像)の発生状況を下記の基準で判定した。
【0099】
◎;感光体上にブラックスポットの発生核がみられず、ハーフトーン画像にもブラックスポットの発生なし(良好)
○;感光体上にブラックスポットの発生核がみられるが、ハーフトーン画像にはブラックスポットの発生なし(実用上問題なし)
×;感光体上にブラックスポットの発生核がみられ、ハーフトーン画像にもブラックスポットが発生している(実用上問題有り)
周期性の画像欠陥(高温高湿(30℃80%RH))
周期性が感光体の周期と一致し、目視できる白ヌケ、黒ポチ、筋状の画像欠陥が、A4サイズ当たり何個あるかで判定した。
【0100】
◎;0.4mm以上の画像欠陥の頻度:全ての複写画像が5個/A4以下(良好)
○;0.4mm以上の画像欠陥の頻度:6個/A4以上、10個/A4以下が1枚以上発生(実用上問題なし)
×;0.4mm以上の画像欠陥の頻度:11個/A4以上が1枚以上発生(実用上問題有り)
クラック
上記デジタル複写機Konica7085を30℃、80%RHの環境下で、感光体を搭載したまま、電源をoffにし、2日間放置した。感光体周辺の部材はこの間動作を停止しているだけの状態、即ち、クリーニングブレード、現像剤搬送体等の部材は、感光体に当接したままにした。その後、感光体の表面を観察し、クラックの発生の有無を観察した。又、画像評価も行い、クラック発生に伴う筋状の画像欠陥の発生の有無も評価した。
【0101】
◎;100本の感光体を評価し、クラックの発生も、筋状の画像欠陥の発生もなし(良好))
◯;100本の感光体を評価し、微細なクラックの発生はあるが、筋状の画像欠陥の発生はない(実用上問題ないレベル)
×;100本の感光体を評価し、クラックの発生と筋状の画像欠陥の発生が見られる(実用上問題となるレベル)
画像濃度(低温低湿(10℃20%RH))
べた黒部の画像濃度はマクベス社製RD−918を使用し反射濃度で測定した。相対濃度(複写していないA4紙の濃度を0.00とする)で評価した
◎;1.2以上(良好)
○;1.2未満〜0.8(実用上問題ないレベル)
×;0.8未満(実用上問題となるレベル)
鮮鋭性
画像の鮮鋭性は、低温低湿(10℃20%RH)、高温高湿(30℃80%RH)の両環境において画像を出し、文字潰れで評価した。3ポイント、5ポイントの文字画像を形成し、下記の判断基準で評価した。
【0102】
◎;3ポイント、5ポイントとも明瞭であり、容易に判読可能
○;3ポイントは一部判読不能、5ポイントは明瞭であり、容易に判読可能
×;3ポイントは殆ど判読不能、5ポイントも一部あるいは全部が判読不能
【0103】
【表2】
【0104】
表2より、分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を電荷輸送層に含有した本発明の感光体1〜13及び22〜25は、低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性が優れ(べた黒画像の電位変動が小さい)、このため低温低湿下の文字細りもなく、しかも、ブッラクスポット、周期性画像欠陥、クラック等の発生もなく、画像濃度、鮮鋭性に優れた特性を示している。一方、分子量800〜2000の高分子量の電荷輸送物質のみを電荷輸送層に用いた感光体15〜18は電荷輸送物質の分散性が十分でなく、低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性が劣り、文字細りが発生している。感光体17及び18では、電荷輸送層の膜に柔軟性がなく、クラックも発生し、画像濃度、鮮鋭性が低下している。また、分子量800未満の低分子量の電荷輸送物質のみを電荷輸送層に用いた感光体19〜21は低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性が劣り(べた黒画像の電位変動が大きい)、文字細りが発生している。感光体20、21では、電荷輸送層の膜が柔らかすぎ、ブラックスポットも発生し、画像濃度、鮮鋭性が低下している。分子量が2000を超えた電荷輸送物質を用いた感光体14では、分子量800未満の電荷輸送物質と併用しても、分散性がおとり、低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性が低下し、このため低温低湿下の文字細りが発生し、画像濃度、鮮鋭性も低下している。本発明の中でも、高分子量の電荷輸送物質の分子量が1000〜1500の範囲で、低分子量の電荷輸送物質の分子量が250〜600の範囲の組み合わせ、即ち、感光体2〜4、7〜9、22、24、25は、改良効果が顕著である。
【0105】
【発明の効果】
本発明の有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置を用いることにより、高速で且つ低温低湿環境で発生しやすい感度不良に伴う画像不良と高温高湿で発生しやすい画像欠陥を防止し、画像濃度、鮮鋭性が良好な電子写真画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面構成図である。
【符号の説明】
50 感光体ドラム(感光体)
51 帯電前露光部
52 帯電器
53 像露光器
54 現像器
541 現像スリーブ
543、544 現像剤攪拌搬送部材
547 電位センサー
57 給紙ローラー
58 転写電極
59 分離電極(分離器)
60 定着装置
61 排紙ローラー
62 クリーニング器
70 プロセスカートリッジ
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いる有機感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関し、更に詳しくは、複写機やプリンターの分野で用いられる電子写真方式の画像形成に用いる有機感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体はセレン系感光体、アモルファスシリコン感光体のような無機感光体に比して素材の選択の幅が広いこと、環境適性に優れていること、生産コストが安いこと等の大きなメリットがあり、近年無機感光体に代わって有機感光体の主流となっている。
【0003】
一方、近年の電子写真方式の画像形成方法は、パソコンのハードコピー用のプリンターとして、また通常の複写機においても画像処理の容易さや複合機への展開の容易さから、LEDやレーザを像露光光源とするデジタル方式の画像形成方式が急激に浸透してきた。更に、デジタル画像の精細化を進めて、高画質の電子写真画像を作製する技術が開発されている。例えば、スポット面積の小さいレーザ光で像露光を行い、ドット潜像の密度を上げて、高精細の潜像を形成し、該潜像を小粒径トナーで現像し、高画質の電子写真画像を作製する技術が公開されている。(特許文献1)
このような高画質のデジタル画像の形成に際しては、高感度で且つ温室度環境の変化に対して安定な特性を有する有機感光体(以後、単に感光体とも云う)が要求される。
【0004】
従来、上記のような有機感光体の要求を満たすために、有機感光体は、感光層を電荷発生層と電荷輸送層に機能分離した層構成にし、該電荷輸送層に、分子量500前後の低分子量の電荷輸送物質を多量に含有させた構成にしていた。しかしながら、このような構成の電荷輸送層では、膜質が低下し、表面層の電荷輸送層が異物で汚染されやすい。即ち、感光体周辺に配置された現像手段、転写手段、クリーニング手段等により、感光体表面が紙粉やトナー組成物で汚染されやすく、その結果、ブラックスポット(苺状の斑点画像)や、転写ヌケ等の周期性の画像欠陥が発生しやすい。又、露光工程から現像工程間の時間が短い高速の複写機や低温低湿環境等で、十分な感度が得られず、その結果、ドット画像が忠実に再現されず、細線が切断された画像が発生したりしやすい。
【0005】
このような課題を解決する方法として、電荷輸送性ポリマーと電荷輸送物質を併用して用いることが報告されている(特許文献2)。しかしながら、これらの電荷輸送性ポリマーは電荷輸送層のバインダー樹脂との相溶性が不十分となりやすく、又、電荷輸送物質との相溶性も不十分となりやすく、電荷輸送物質が均一に分散されず、感度が十分にでない或いは電荷輸送層にクラック等の破断傷が発生しやすいと云う問題があった。
【0006】
又、感光体表面の汚染を防止するために、表面層にフッ素系樹脂粒子を含有させた有機感光体が提案されている(特許文献3)。しかしながら、フッ素系樹脂粒子を含有させた有機感光体は、画像ボケが発生しやすい。又表面層の機械的強度も低下させやすく、前記クリーニング手段等との接触摩擦により、感光体表面が減耗しやすく、必ずしも良好な電子写真画像を提供し得ていない。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−255685号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2001−265034号公報
【0009】
【特許文献3】
特開昭63−65449号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記のような課題を解決するために提案されたものであり、その目的とするところは、電子写真画像を形成する際に、高速複写や低温低湿環境下で発生じやすい有機感光体の感度の低下に原因し、反転現像におけるべた黒画像の電位上昇による画像濃度の低下や文字細り等の発生による鮮鋭性の低下を防止することであり、又、有機感光体の表面汚染により発生しやすいブラックスポットや、転写ヌケ等の周期性の画像欠陥を防止し、又、クラック等の破断傷等の発生を起こさず、高濃度、高解像性の鮮明な電子写真画像が安定して得られる有機感光体、及び該有機感光体を用いたプロセスカートリッジ、画像形成装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、本発明の上記課題を解決するためには、有機感光体の電荷輸送層を構成するバインダー樹脂と電荷輸送物質について、詳細な検討を加えた結果、分子量が異なる電荷輸送物質を混合することにより、即ち、大分子量の電荷輸送物質と小分子量の電荷輸送物質を混合して用いることにより、大分子量の電荷輸送物質を用いても、電荷輸送物質の溶媒溶解性が改善され、バインダー樹脂との相溶性も良好であり、且つ高速プロセスでしかも低温低湿環境下での感度の応答性が改善され、且つ表面層が汚染されにくく、ブラックスポット、転写ヌケ等の周期性の画像欠陥を防止し、クラック等の破断傷等の発生を起こさず、高濃度、高解像力の鮮明な画像が安定して得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明の目的は、下記構成のいずれかを採ることにより達成される。
1.分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を含有したことを特徴とする有機感光体。
【0013】
2.導電性支持体上に電荷発生物質を有する電荷発生層、電荷輸送層を有する電荷輸送層を積層した有機感光体において、前記電荷輸送層が、分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を含有したことを特徴とする有機感光体。
【0014】
3.前記1又は2に記載の有機感光体と該有機感光体上を一様に帯電する帯電手段、該有機感光体上の静電潜像を顕像化する現像手段、該有機感光体上に顕像化されたトナー像を転写材上に転写する転写手段、転写後の該有機感光体上の電荷を除去する除電手段及び転写後の該有機感光体上の残留するトナーをクリーニングするクリーニング手段の少なくとも1つとが一体的に支持され、画像形成装置本体に着脱自在に装着されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0015】
4.前記3に記載のプロセスカートリッジを用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【0016】
以下、本発明について、詳細に説明する。
有機感光体の構成
本発明に用いられる有機感光体は、分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を含有したことを特徴とする。又、本発明に用いられる有機感光体は、導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層を有し、電荷輸送層が分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を含有したことを特徴とする。
【0017】
本発明の有機感光体は、上記構成を有することにより、高速複写や低温低湿環境下で発生しやすい、感度の低下に原因する文字細り等の鮮鋭性低下を防止でき、前記したブラックスポットや、転写ヌケ等の周期性の画像欠陥の発生もなく、クラック等の破断傷等の発生も起こさず、高濃度、高解像力の鮮明な電子写真画像を作製することができる。
一方、電荷輸送物質の分子量が800〜2000の電荷輸送物質のみを用いると、電荷輸送物質と電荷輸送層のバインダー樹脂との溶解性が悪くなりやすく、感度の低下やクラックの発生を起こしやすい。
【0018】
又、分子量が800未満の電荷輸送物質のみを用いると、電荷輸送物質と電荷輸送層のバインダー樹脂との溶解性はよいが、高速条件の画像プロセスや低温低湿環境下での感度が悪くなりやすく、又、電荷輸送層の膜質が柔らかくなり、ブラックスポットや転写抜け等の画像欠陥を発生させやすい。
【0019】
本発明の分子量が800〜2000の電荷輸送物質としては、下記に示すビス、トリ又はクワトロブタジエン系化合物((−C=CHCH=C−)基を2〜4個有する電荷輸送物質)やトリフェニルアミン多量体(トリフェニルアミン基を多量、好ましくは2〜5個有する電荷輸送物質)が好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
【化2】
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
又、これらの化合物の合成法については特開平9−244278号、特開2001−316336号等に記載されている。
【0028】
上記ビス、トリ又はクワトロブタジエン系化合物((−C=CHCH=C−)基を2〜4個有する電荷輸送物質)やトリフェニルアミン多量体は、ブタジエン構造やトリフェニルアミン構造等の剛直な基を多く含有して、分子量を大きくしているので、本来、電荷輸送性に優れた特性を有していても、これらの化合物を単独で用いると、電荷輸送層の塗布液溶媒への溶解性が十分でなく、電荷輸送能が低下したり、形成された電荷輸送層の膜質が柔軟性を欠き、クラックが発生しやすい。しかしながら、これら800〜2000の高分子量の電荷輸送物質と分子量800未満の低分子量の電荷輸送物質を混合して用いることにより、これら800〜2000の高分子量の電荷輸送物質の溶媒溶解性を大きくし、且つ電荷輸送層の膜質にも柔軟性を付与することができ、低温低湿環境下での高速応答性を十分に達成でき、且つクラック等の画像欠陥も発生させない感光体を作製することができる。
【0029】
本発明の電荷輸送物質の分子量は800〜2000であるが、分子量1000〜1500の電荷輸送物質がより好ましい。分子量1000〜1500の電荷輸送物質は低分子量、即ち、800未満の電荷輸送物質と併用すると、電荷輸送層内の分散性が良好であり、且つ低温低湿環境下の感度応答性、或いは高速プロセスでの感度応答性が優れている。
【0030】
一方、分子量が800未満の電荷輸送物質としては、一般に現在用いられている電荷輸送物質を用いることができる。例えば、例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。分子量が800未満の電荷輸送物質の中でも、分子量250〜700の電荷輸送物質がより好ましい。分子量800未満の電荷輸送物質としては、上記した種々の化合物が用いられるが、例えば、以下のような構造式の化合物を例として挙げることができる。
【0031】
【化8】
【0032】
【化9】
【0033】
又、分子量が800〜2000の電荷輸送物質と分子量800未満の電荷輸送物質の混合比は、質量比で前者100質量部に対し、後者の分子量800未満の電荷輸送物質が10〜150質量部が好ましく、30〜80質量部がより好ましい。即ち、分子量が800〜2000の電荷輸送物質が分子量800未満の電荷輸送物質に比べ多い方が高速時や低温低湿時の感度の応答が高く、且つ電荷輸送層の膜が強靱に形成され、ブラックスポットや転写ヌケ等の周期性の画像欠陥が発生しにくく、クラック等の破断傷等の発生も起こさず、高濃度、高解像力の鮮明な電子写真画像を作製する有機感光体を作製できる。
【0034】
次に、上記のような電荷輸送物質を用いた有機感光体の層構成について記載する。
【0035】
本発明の有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された有機感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0036】
以下に本発明に用いられる有機感光体の構成について記載する。
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0037】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0038】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0039】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/L、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/L、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0040】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0041】
本発明においては導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0042】
又、本発明に好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
【0043】
又、本発明に好ましく用いられる中間層は無機粒子をバインダー樹脂中に分散した中間層が挙げられる。無機粒子の平均粒径は0.01〜1μmが好ましい。特に、表面処理をしたN型半導性微粒子をバインダー中に分散した中間層が好ましい。例えばシリカ・アルミナ処理及びシラン化合物で表面処理した平均粒径が0.01〜1μmの酸化チタンをポリアミド樹脂中に分散した中間層が挙げられる。このような中間層の膜厚は、1〜20μmが好ましい。
【0044】
N型半導性微粒子とは、導電性キャリアを電子とする性質をもつ微粒子を示す。すなわち、導電性キャリアを電子とする性質とは、該N型半導性微粒子を絶縁性バインダーに含有させることにより、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性を示さない性質を有するものをいう。
【0045】
ここで、N型半導性粒子の判別方法について説明する。
導電性支持体上に膜厚5μmの中間層(中間層を構成するバインダー樹脂中に粒子を50質量%分散させた分散液を用いて中間層を形成する)を形成する。該中間層に負極性に帯電させて、光減衰特性を評価する。又、正極性に帯電させて同様に光減衰特性を評価する。
【0046】
N型半導性粒子とは、上記評価で、負極性に帯電させた時の光減衰が正極性に帯電させた時の光減衰よりも大きい場合に、中間層に分散された粒子をN型半導性粒子という。
【0047】
前記N型半導性微粒子は、具体的には酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等の微粒子が挙げられるが、本発明では、特に酸化チタンが好ましく用いられる。
【0048】
本発明に用いられるN型半導性微粒子の平均粒径は、数平均一次粒径において10nm以上500nm以下の範囲のものが好ましく、より好ましくは10nm〜200nm、特に好ましくは、15nm〜50nmである。
【0049】
数平均一次粒径の値が前記範囲内にあるN型半導性微粒子を用いた中間層は層内での分散を緻密なものとすることができ、十分な電位安定性、及び黒ポチ発生防止機能を有する。
【0050】
前記N型半導性微粒子の数平均一次粒径は、例えば酸化チタンの場合、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定される。
【0051】
本発明に用いられるN型半導性微粒子の形状は、樹枝状、針状および粒状等の形状があり、このような形状のN型半導性微粒子は、例えば酸化チタン粒子では、結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型及びアモルファス型等があるが、いずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型を混合して用いてもよい。その中でもルチル型のものが最も良い。
【0052】
N型半導性微粒子に行われる疎水化表面処理の1つは、複数回の表面処理を行い、かつ該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物による表面処理を行うものである。また、該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ、シリカ、及びジルコニアから選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理であり、最後に反応性有機ケイ素化合物の表面処理を行うことが好ましい。
【0053】
尚、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とはN型半導性微粒子表面にアルミナ、シリカ、或いはジルコニアを析出させる処理を云い、これらの表面に析出したアルミナ、シリカ、ジルコニアにはアルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含まれる。又、反応性有機ケイ素化合物の表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を用いることを意味する。
【0054】
この様に、酸化チタン粒子の様なN型半導性微粒子の表面処理を少なくとも2回以上行うことにより、N型半導性微粒子表面が均一に表面被覆(処理)され、該表面処理されたN型半導性微粒子を中間層に用いると、中間層内における酸化チタン粒子等のN型半導性微粒子の分散性が良好で、かつ黒ポチ等の画像欠陥を発生させない良好な感光体を得ることができるのである。
【0055】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0056】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0057】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる結晶構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θが12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0058】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01μm〜2μmが好ましい。
【0059】
電荷輸送層
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0060】
電荷輸送物質(CTM)としては、前記した分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質の混合物を用いる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。又、上記範囲外の分子量の電荷輸送物質を混合してもよいが、その割合は、分子量800〜2000の電荷輸送物質100質量部に対し、50質量部以下が好ましい。
【0061】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
【0062】
これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂はCTMの分散性、電子写真特性を良好にすることにおいて、最も好ましい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。
【0063】
又、電荷輸送層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。代表的には下記の化合物群が挙げられる。
【0064】
【化10】
【0065】
【化11】
【0066】
【化12】
【0067】
【化13】
【0068】
電荷輸送層は2層以上の層構成にしてもよい。この場合は表面の電荷輸送層が本発明の構成を満たせばよい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0069】
上記では本発明の最も好ましい感光体の層構成を例示したが、本発明では上記以外の感光体層構成でも良い。
【0070】
感光層、中間層、表面層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0071】
又、これらの各層の塗布溶液は塗布工程に入る前に、塗布溶液中の異物や凝集物を除去するために、金属フィルター、メンブランフィルター等で濾過することが好ましい。例えば、日本ポール社製のプリーツタイプ(HDC)、デプスタイプ(プロファイル)、セミデプスタイプ(プロファイルスター)等を塗布液の特性に応じて選択し、濾過をすることが好ましい。
【0072】
次に有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお保護層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0073】
次に、本発明の有機感光体を用いた画像形成装置の説明をする。
図1は本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面構成図である。
【0074】
図1に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器(帯電手段)で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0075】
感光体への一様帯電の後、像露光手段としての像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0076】
ここで反転現像プロセスとは帯電器52により、感光体表面を一様に帯電し、像露光が行われた領域、即ち感光体の露光部電位(露光部領域)を現像工程(手段)により、顕像化する画像形成方法である。一方未露光部電位は現像スリーブ541に印加される現像バイアス電位により現像されない。
【0077】
その静電潜像は次いで現像手段としての現像器54で現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される有機感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
【0078】
現像剤は、例えば前述のフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、前述のスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム50と現像スリーブ541の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。感光体の電位測定は電位センサー547を図1のように現像位置上部に設けて行う。
【0079】
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
【0080】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写電極(転写手段:転写器)58が作動し、給紙された記録紙Pにトナーと反対極性の帯電を与えてトナーを転写する。
【0081】
次いで記録紙Pは分離電極(分離器)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写電極58及び分離電極59は記録紙Pの通過後、一次作動を中止し、次なるトナー像の形成に備える。図1では転写電極58にコロトロンの転写帯電極を用いている。転写電極の設定条件としては、感光体のプロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、転写電流としては+100〜+400μA、転写電圧としては+500〜+2000Vを設定値とすることができる。
【0082】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器(クリーニング手段)62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0083】
尚、70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0084】
本発明の有機感光体は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【0085】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。但し、下記文中の「部」は「質量部」を示す。
【0086】
下記のごとくして、感光体を作製した。
感光体1の作製
上記成分を混合溶解して中間層塗布液を調製した。この塗布液を直径80mm、長さ360mmの円筒状アルミニウム基体上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.3μmの中間層を形成した。
上記成分を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
上記成分を混合溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、十分に乾燥して(残留溶媒を300ppm以下に乾燥した)、膜厚22μmの電荷輸送層を形成し感光体1を作製した。
【0087】
感光体2〜25の作製
感光体1において、電荷発生物質、電荷輸送層の電荷輸送物質1、電荷輸送物質2及びその量、溶媒の種類等を表1のように変更した以外は同様にして感光体2〜25を作製した。
【0088】
【表1】
【0089】
表中、Yはチタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトルで、ブラッグ角2θの最大ピークが27.3°の顔料)
Zはベンズイミダゾールペリレン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトルで、ブラッグ角2θの最大ピークが12.4°の顔料)を示す。
【0090】
T25は下記の化学構造の化合物(電荷輸送物質)を示す。
【0091】
【化14】
【0092】
評価
以上のようにして得た感光体1〜25を組み込んだコニカ(株)製の反転現像方式デジタル複写機「Konica7085」(スコロトロン帯電器、半導体レーザ像露光器(波長680nm)、反転現像手段を有するA4紙85枚/分機)を用い、下記評価項目について評価した。評価は、評価項目毎に、環境条件(温湿度条件)を変えて行なった。評価は、基本的に画素率が7%の文字画像、ハーフトーン画像、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4で1枚間欠モードにて1万枚の複写を行い、評価した。評価結果を表2に示す。
【0093】
評価条件
ラインスピード;420mm/秒
像露光から現像位置までの到達時間;0.108秒
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器(負帯電)
帯電電位;−700V〜−750V
露光条件
べた黒画像電位を−100Vにする露光量に設定。
【0094】
露光ビーム;レーザは680nmの半導体レーザを使用
現像条件
現像剤は、フェライトをコアとして絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアとスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラックの着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる重合法で作製した体積平均粒径5.3μmの着色粒子に、シリカ、酸化チタンを外添したトナーの現像剤を使用した。
【0095】
転写条件
転写極;コロナ帯電方式(正帯電)
分離条件
分離爪ユニットの分離手段を用いた
クリーニング条件
クリーニング部に硬度70°、反発弾性65%、厚さ2(mm)、自由長9mmのクリーニングブレードをカウンター方向に線圧18(g/cm)となるように重り荷重方式で当接した。
【0096】
評価項目及び評価方法
低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性(べた黒画像の電位変化)
低温低湿(10℃20%RH)環境下で、画素率が7%の文字画像、ハーフトーン画像、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4で1枚間欠モードにて1万枚の複写を行い、初期と1万枚後の現像位置でのべた黒画像の電位変化(|ΔV|)を評価した。|ΔV|が小さい方が低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性が優れている。
【0097】
◎;べた黒画像の電位変化|ΔV|が50V未満(良好)
○;べた黒画像の電位変化|ΔV|が50V〜150V(実用上問題なし)
×;べた黒画像の電位変化|ΔV|が150Vより大きい(実用上問題有り)
文字細り(低温低湿(10℃20%RH)の環境下)
0.1mm、0.2mm幅の線画像が印刷されたオリジナル画像を複写し、評価した。
【0098】
◎;複写画像の線幅がオリジナル画像の線幅の75%以上で再現されている(良好)
○;複写画像の線幅がオリジナル画像の線幅の40%〜74%で再現されている(実用上問題ないレベル)
×;複写画像の線幅がオリジナル画像の線幅の39%以下、又は線幅が切断されている(実用上問題となるレベル)
ブラックスポット(高温高湿(30℃80%RH)
ハーフトーン画像上のブラックスポット(苺状のスポット画像)の発生状況を下記の基準で判定した。
【0099】
◎;感光体上にブラックスポットの発生核がみられず、ハーフトーン画像にもブラックスポットの発生なし(良好)
○;感光体上にブラックスポットの発生核がみられるが、ハーフトーン画像にはブラックスポットの発生なし(実用上問題なし)
×;感光体上にブラックスポットの発生核がみられ、ハーフトーン画像にもブラックスポットが発生している(実用上問題有り)
周期性の画像欠陥(高温高湿(30℃80%RH))
周期性が感光体の周期と一致し、目視できる白ヌケ、黒ポチ、筋状の画像欠陥が、A4サイズ当たり何個あるかで判定した。
【0100】
◎;0.4mm以上の画像欠陥の頻度:全ての複写画像が5個/A4以下(良好)
○;0.4mm以上の画像欠陥の頻度:6個/A4以上、10個/A4以下が1枚以上発生(実用上問題なし)
×;0.4mm以上の画像欠陥の頻度:11個/A4以上が1枚以上発生(実用上問題有り)
クラック
上記デジタル複写機Konica7085を30℃、80%RHの環境下で、感光体を搭載したまま、電源をoffにし、2日間放置した。感光体周辺の部材はこの間動作を停止しているだけの状態、即ち、クリーニングブレード、現像剤搬送体等の部材は、感光体に当接したままにした。その後、感光体の表面を観察し、クラックの発生の有無を観察した。又、画像評価も行い、クラック発生に伴う筋状の画像欠陥の発生の有無も評価した。
【0101】
◎;100本の感光体を評価し、クラックの発生も、筋状の画像欠陥の発生もなし(良好))
◯;100本の感光体を評価し、微細なクラックの発生はあるが、筋状の画像欠陥の発生はない(実用上問題ないレベル)
×;100本の感光体を評価し、クラックの発生と筋状の画像欠陥の発生が見られる(実用上問題となるレベル)
画像濃度(低温低湿(10℃20%RH))
べた黒部の画像濃度はマクベス社製RD−918を使用し反射濃度で測定した。相対濃度(複写していないA4紙の濃度を0.00とする)で評価した
◎;1.2以上(良好)
○;1.2未満〜0.8(実用上問題ないレベル)
×;0.8未満(実用上問題となるレベル)
鮮鋭性
画像の鮮鋭性は、低温低湿(10℃20%RH)、高温高湿(30℃80%RH)の両環境において画像を出し、文字潰れで評価した。3ポイント、5ポイントの文字画像を形成し、下記の判断基準で評価した。
【0102】
◎;3ポイント、5ポイントとも明瞭であり、容易に判読可能
○;3ポイントは一部判読不能、5ポイントは明瞭であり、容易に判読可能
×;3ポイントは殆ど判読不能、5ポイントも一部あるいは全部が判読不能
【0103】
【表2】
【0104】
表2より、分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を電荷輸送層に含有した本発明の感光体1〜13及び22〜25は、低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性が優れ(べた黒画像の電位変動が小さい)、このため低温低湿下の文字細りもなく、しかも、ブッラクスポット、周期性画像欠陥、クラック等の発生もなく、画像濃度、鮮鋭性に優れた特性を示している。一方、分子量800〜2000の高分子量の電荷輸送物質のみを電荷輸送層に用いた感光体15〜18は電荷輸送物質の分散性が十分でなく、低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性が劣り、文字細りが発生している。感光体17及び18では、電荷輸送層の膜に柔軟性がなく、クラックも発生し、画像濃度、鮮鋭性が低下している。また、分子量800未満の低分子量の電荷輸送物質のみを電荷輸送層に用いた感光体19〜21は低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性が劣り(べた黒画像の電位変動が大きい)、文字細りが発生している。感光体20、21では、電荷輸送層の膜が柔らかすぎ、ブラックスポットも発生し、画像濃度、鮮鋭性が低下している。分子量が2000を超えた電荷輸送物質を用いた感光体14では、分子量800未満の電荷輸送物質と併用しても、分散性がおとり、低温低湿(10℃20%RH)環境下での高速応答性が低下し、このため低温低湿下の文字細りが発生し、画像濃度、鮮鋭性も低下している。本発明の中でも、高分子量の電荷輸送物質の分子量が1000〜1500の範囲で、低分子量の電荷輸送物質の分子量が250〜600の範囲の組み合わせ、即ち、感光体2〜4、7〜9、22、24、25は、改良効果が顕著である。
【0105】
【発明の効果】
本発明の有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置を用いることにより、高速で且つ低温低湿環境で発生しやすい感度不良に伴う画像不良と高温高湿で発生しやすい画像欠陥を防止し、画像濃度、鮮鋭性が良好な電子写真画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面構成図である。
【符号の説明】
50 感光体ドラム(感光体)
51 帯電前露光部
52 帯電器
53 像露光器
54 現像器
541 現像スリーブ
543、544 現像剤攪拌搬送部材
547 電位センサー
57 給紙ローラー
58 転写電極
59 分離電極(分離器)
60 定着装置
61 排紙ローラー
62 クリーニング器
70 プロセスカートリッジ
Claims (4)
- 分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を含有したことを特徴とする有機感光体。
- 導電性支持体上に電荷発生物質を有する電荷発生層、電荷輸送層を有する電荷輸送層を積層した有機感光体において、前記電荷輸送層が、分子量800〜2000及び分子量800未満の電荷輸送物質を含有したことを特徴とする有機感光体。
- 請求項1又は2に記載の有機感光体と該有機感光体上を一様に帯電する帯電手段、該有機感光体上の静電潜像を顕像化する現像手段、該有機感光体上に顕像化されたトナー像を転写材上に転写する転写手段、転写後の該有機感光体上の電荷を除去する除電手段及び転写後の該有機感光体上の残留するトナーをクリーニングするクリーニング手段の少なくとも1つとが一体的に支持され、画像形成装置本体に着脱自在に装着されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項3に記載のプロセスカートリッジを用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
Priority Applications (1)
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JP2003085020A JP2004294644A (ja) | 2003-03-26 | 2003-03-26 | 有機感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 |
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JP2003085020A JP2004294644A (ja) | 2003-03-26 | 2003-03-26 | 有機感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 |
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ID=33400046
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2003
- 2003-03-26 JP JP2003085020A patent/JP2004294644A/ja active Pending
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