JP2004294482A - 表示装置およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】明るく、高解像度の表示を行うことができ、小型化・軽量化および低コスト化に適した表示装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネル10Gと、表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子20と、光学シフト素子20から出射された光を受けるレンズ30とを備えた表示装置である。表示面の上下方向に沿った、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha1と、表示面の左右方向に沿った、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha2とが、表示面の端部から出射する光の広がり角とレンズの画角とに応じて規定されている。
【選択図】 図4
【解決手段】各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネル10Gと、表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子20と、光学シフト素子20から出射された光を受けるレンズ30とを備えた表示装置である。表示面の上下方向に沿った、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha1と、表示面の左右方向に沿った、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha2とが、表示面の端部から出射する光の広がり角とレンズの画角とに応じて規定されている。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表示装置およびその製造方法に関し、特に、画像をシフトさせる光学シフト素子を備えた表示装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、一対の基板と、これらの基板間に挟持された液晶層と、マトリクス状に配列された複数の画素電極とを備えており、画像信号に対応した駆動電圧が各画素電極に印加されて液晶層の光学特性が変化することによって、画像や文字などを表示する。
【0003】
各画素電極に独立に駆動電圧を印加する方式としては、「単純マトリクス方式」と、「アクティブマトリクス方式」とが挙げられる。
【0004】
アクティブマトリクス方式では、各画素電極に対応したスイッチング素子と、スイッチング素子に信号を供給する配線群とが基板上に設けられる。スイッチング素子としては、非線形の2端子素子や3端子素子が好適に用いられ、具体的には、MIM(金属−絶縁体−金属)素子やTFT(薄膜トランジスタ)素子などが好適に用いられる。
【0005】
スイッチング素子は、オフ状態(非導通状態)において高い素子抵抗を示すことが好ましいが、オフ状態のスイッチング素子に強い光が入射すると、その素子抵抗が低下してしまう。そのため、オン状態(導通状態)において画素電極に蓄積された電荷が放電されてしまうという問題が生じる。また、画素電極に正規の駆動電圧が印加されず、本来の表示動作が行われないので、黒表示状態においても光漏れが発生し、コントラスト比が低下してしまうという問題も生じる。
【0006】
透過型の液晶表示素子においては、このような問題を解決するために、スイッチング素子が形成されたアクティブマトリクス基板上、または、アクティブマトリクス基板に液晶層を介して対向する対向基板上に、ブラックマトリクスと呼ばれる遮光層が配置される。しかしながら、一般に遮光性の材料を用いて形成されるスイッチング素子および配線に加えてブラックマトリクスが存在することにより、画素内で光の透過する領域が占める割合、すなわち開口率が低下してしまう。
【0007】
このような開口率の低下は、HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)や液晶プロジェクタに使用されるような小型で高精細の液晶表示素子において特に顕著である。スイッチング素子や配線は、電気的な特性や製造技術等の制約から、ある程度以下の大きさで形成することは困難であり、小型・高精細の液晶表示素子においては、基板上でスイッチング素子や配線が占める割合が高くなってしまうからである。また、液晶表示素子は、高精細になるほどコストが高くなるという問題も有している。
【0008】
ブラックマトリクス上の非表示面を利用して高精細化をはかる目的で、特許文献1は、光学シフト素子を用いてブラックマトリクス上に画素を光学的にシフトさせる技術を開示している。この技術によれば、画素のシフトに同期させ、シフトした画素位置に対応した画像が表示されるので、見かけ上の画素数が増える。その結果、解像度の低い表示素子を用いても、高精細の表示素子を用いたのと同様の表示が可能になる。
【0009】
また、特許文献2は、赤、緑、青の各画素を光学的に順次シフトさせ、シフトした画素を重ね合わせて表示する方法を開示している。この方式によれば、1つの画素に対応した領域において赤、緑、青の各画素が時分割で表示されるので、見かけ上の解像度が3倍に向上する。
【0010】
上記特許文献2には、画素を光学的にシフトさせる手段として、液晶素子と複屈折素子とを組み合わせた光学シフト素子が開示されている。
【0011】
図23に従来の光学シフト素子800を模式的に示す。光学シフト素子800は、光の伝搬方向に沿って直列的に配列された液晶素子822と複屈折素子824とを備えている。
【0012】
図23では、液晶素子822に入射する光が紙面に垂直な方向に偏光している場合を示している。液晶素子822の液晶層に電圧を印加していない状態(オフ状態)では、液晶素子822に入射した光の偏光方向は、液晶層によって90°回転させられる。これに対し、液晶素子822の液晶層に適切なレベル電圧を印加している状態(オン状態)では、光の偏光方向は、光が液晶素子822を通過する過程で回転しない。
【0013】
複屈折素子824は、光の偏光方向によって異なる屈折率を有しており、偏光方向が紙面に平行な光の光軸をシフトさせる一方、偏光方向が紙面に垂直な光の光軸はシフトさせない。
【0014】
光学シフト素子800は、液晶素子822のオン状態とオフ状態とを切り替えることによって複屈折素子824に入射する光の偏光方向を制御し、それによって光軸のシフトを調整することができる。
【0015】
【特許文献1】
米国特許第4984091号明細書
【特許文献2】
米国特許第6061103号明細書
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特許文献1および2に開示されている方式ではいずれも光学シフト素子を用いるが、この光学シフト素子のサイズが大きいと、表示装置の大型化や重量化を招いてしまう。特に、HMDなどではこの問題は深刻となる。また、特許文献2に開示されているような複屈折素子を備えた光学シフト素子では、複屈折素子の材料として、水晶やニオブ酸リチウム等の高価な材料が一般的に用いられるので、光学シフト素子のサイズが大きくなると、製造コストが高くなってしまうという問題もある。
【0017】
上述したように、小型化や軽量化あるいは低コスト化といった観点からは、光学シフト素子のサイズはできるだけ小さいことが好ましいが、光学シフト素子のサイズをいたずらに小さくすると、画像のシフトを好適に行えなかったり、光の利用効率が低下したりしてしまい、表示装置の表示に支障をきたしてしまう。表示に支障をきたさない光学シフト素子のサイズ、すなわち、光学シフト素子の必要最小限なサイズについての詳細な検討はいまだなされていない。
【0018】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、明るく、高解像度の表示を行うことができ、小型化・軽量化および低コスト化に適した表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1の表示装置は、各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネルと、前記複数の画素領域で変調されて前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置であって、前記表示面の上端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の上側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθa1、前記表示面の下端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の下側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθa2、前記表示面の右端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の右側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθa3、前記表示面の左端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の左側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθa4、前記レンズの画角をθa5、前記表示面の上下方向に沿った幅をIa1、前記表示面の左右方向に沿った幅をIa2、前記表示面から前記光学シフト素子の光出射側の端部までの空気換算距離をG、前記表示面の上下方向に沿った、前記光学シフト素子の前記光出射側の端部の幅をHa1、前記表示面の左右方向に沿った、前記光学シフト素子の前記光出射側の端部の幅をHa2とし、前記θa1およびθa5のうちの小さい方の角をθa6、前記θa2およびθa5のうちの小さい方の角をθa7、前記θa3およびθa5のうちの小さい方の角をθa8、前記θa4およびθa5のうちの小さい方の角をθa9としたとき、前記Ha1およびHa2が、
Ha1≧Ia1+G・(tanθa6+tanθa7) 式(1)
Ha2≧Ia2+G・(tanθa8+tanθa9) 式(2)
の少なくとも一方の関係を満足し、そのことによって上記目的が達成される。
【0020】
前記Ha1およびHa2が、式(1)および式(2)の両方の関係を満足することが好ましい。
【0021】
前記θa1およびθa5のうちの大きい方の角をθa10、前記θa2およびθa5のうちの大きい方の角をθa11、前記θa3およびθa5のうちの大きい方の角をθa12、前記θa4およびθa5のうちの大きい方の角をθa13としたとき、前記Ha1およびHa2が、
Ha1<Ia1+G・(tanθa10+tanθa11) 式(3)
Ha2<Ia2+G・(tanθa12+tanθa13) 式(4)
の少なくとも一方の関係を満足することが好ましく、前記Ha1およびHa2が、式(3)および式(4)の両方の関係を満足することがさらに好ましい。
【0022】
本発明による第2の表示装置は、光源と、各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネルと、前記光源からの光を、波長域に応じて同一平面内に含まれる異なる方向に向け、波長域に応じて前記複数の画素領域のうちの対応する画素領域に集光させる光制御手段と、前記複数の画素領域で変調されて前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置であって、前記平面に直交する第1方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθb1、前記第1方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθb2、前記レンズの画角をθb3、前記第1方向に沿った前記表示面の幅をIb1、前記平面に平行な第2方向に沿った前記表示面の幅をIb2、前記表示面から前記光学シフト素子の光出射側の端部までの空気換算距離をG、前記第1方向に沿った、前記光学シフト素子の前記光出射側の端部の幅をHb1、前記第2方向に沿った、前記光学シフト素子の前記光出射側の端部の幅をHb2としたとき、前記Hb1およびHb2が、
Hb1≧Ib1+G・(tanθb1+tanθb2) 式(5)
Hb2≧Ib2+2・G・tanθb3 式(6)
の少なくとも一方の関係を満足し、そのことによって上記目的が達成される。
【0023】
前記Hb1およびHb2が、式(5)および式(6)の両方の関係を満足することが好ましい。
【0024】
前記第2方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθb4、前記第2方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθb5としたとき、前記Hb1およびHb2が、
Hb1<Ib1+2・G・tanθb3 式(7)
Hb2<Ib2+G・(tanθb4+tanθb5) 式(8)
の少なくとも一方の関係を満足することが好ましく、前記Hb1およびHb2が、式(7)および式(8)の両方の関係を満足することがさらに好ましい。
【0025】
ある好適な実施形態において、前記表示パネルは、線走査されることによって駆動される表示パネルであり、前記光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する少なくとも1つの偏光変調素子を有し、前記少なくとも1つの偏光変調素子は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得るL(Lは2以上の整数)個の領域を前記表示パネルの走査方向に沿って有しており、前記L個の領域のうち前記走査方向に沿ってもっとも端側に位置する2つの領域の前記走査方向に沿った幅をaおよびb、前記表示面の前記走査方向に沿った幅をIとしたとき、前記aおよびbが、
a>I/L 式(9)
b>I/L 式(10)
の両方の関係を満足している。
【0026】
ある好適な実施形態において、前記表示パネルは、線走査されることによって駆動される表示パネルであり、前記光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する少なくとも1つの偏光変調素子を有し、前記少なくとも1つの偏光変調素子は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得るL(Lは2以上の整数)個の領域を前記表示パネルの走査方向に沿って有しており、前記L個の領域のうち前記走査方向に沿ってもっとも端側に位置する2つの領域の前記走査方向に沿った幅をaおよびb、前記表示面の前記走査方向に沿った幅をI、前記走査方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθc1、前記走査方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθc2、前記レンズの画角をθc3、前記θc1およびθc3のうちの小さい方の角をθc4、前記θc2およびθc3のうちの小さい方の角をθc5、前記表示面から前記光学シフト素子の光出射側の端部までの空気換算距離をGcとしたとき、前記aおよびbが、
a≧I/L+Gc・tanθc4 式(11)
b≧I/L+Gc・tanθc5 式(12)
の両方の関係を満足している。
【0027】
本発明による第3の表示装置は、各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネルと、前記複数の画素領域で変調されて前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、
前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置であって、前記光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子と、光の偏光方向によって屈折率の異なる複屈折素子とをN組(Nは1以上の整数)有し、前記表示面の上端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の上側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθd1、前記表示面の下端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の下側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθd2、前記表示面の右端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の右側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθd3、前記表示面の左端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の左側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθd4、前記レンズの画角をθd5、前記表示面の上下方向に沿った幅をId1、前記表示面の左右方向に沿った幅をId2、前記表示面から前記光学シフト素子のM組目(Mは1以上N以下の整数)の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部までの空気換算距離をGM1およびGM2、前記表示面の上下方向に沿った、前記M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHd1およびHd2、前記表示面の左右方向に沿った、前記M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHd3およびHd4とし、前記θd1およびθd5のうちの小さい方の角をθd6、前記θd2およびθd5のうちの小さい方の角をθd7、前記θd3およびθd5のうちの小さい方の角をθd8、前記θd4およびθd5のうちの小さい方の角をθd9としたとき、前記Hd1およびHd3が、
Hd1≧Id1+GM1・(tanθd6+tanθd7) 式(13)
Hd3≧Id2+GM1・(tanθd8+tanθd9) 式(14)
の少なくとも一方の関係を満足し、前記Hd2およびHd4が、
Hd2≧Id1+GM2・(tanθd6+tanθd7) 式(15)
Hd4≧Id2+GM2・(tanθd8+tanθd9) 式(16)
の少なくとも一方の関係を満足し、そのことによって上記目的が達成される。
【0028】
前記Hd1およびHd3が、式(13)および式(14)の両方の関係を満足することが好ましい。
【0029】
前記Hd2およびHd4が、式(15)および式(16)の両方の関係を満足することが好ましい。
【0030】
前記θd1およびθd5のうちの大きい方の角をθd10、前記θd2およびθd5のうちの大きい方の角をθd11、前記θd3およびθd5のうちの大きい方の角をθd12、前記θd4およびθd5のうちの大きい方の角をθd13としたとき、前記Hd1およびHd3が、
Hd1<Id1+GM1・(tanθd10+tanθd11) 式(17)
Hd3<Id2+GM1・(tanθd12+tanθd13) 式(18)
の少なくとも一方の関係を満足することが好ましく、前記Hd1およびHd3が、式(17)および式(18)の両方の関係を満足することがさらに好ましい。
【0031】
前記θd1およびθd5のうちの大きい方の角をθd10、前記θd2およびθd5のうちの大きい方の角をθd11、前記θd3およびθd5のうちの大きい方の角をθd12、前記θd4およびθd5のうちの大きい方の角をθd13としたとき、前記Hd2およびHd4が、
Hd2<Id1+GM2・(tanθd10+tanθd11) 式(19)
Hd4<Id2+GM2・(tanθd12+tanθd13) 式(20)
の少なくとも一方の関係を満足することが好ましく、前記Hd2およびHd4が、式(19)および式(20)の両方の関係を満足することがさらに好ましい。
【0032】
本発明による第4の表示装置は、光源と、各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネルと、前記光源からの光を、波長域に応じて同一平面内に含まれる異なる方向に向け、波長域に応じて前記複数の画素領域のうちの対応する画素領域に集光させる光制御手段と、前記複数の画素領域で変調されて前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置であって、前記光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子と、光の偏光方向によって屈折率の異なる複屈折素子とをN組(Nは1以上の整数)有し、前記平面に直交する第1方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe1、前記第1方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe2、前記レンズの画角をθe3、前記第1方向に沿った前記表示面の幅をIe1、前記平面に平行な第2方向に沿った前記表示面の幅をIe2、前記表示面から前記光学シフト素子のM組目(Mは1以上N以下の整数)の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部までの空気換算距離をGM1およびGM2、前記第1方向に沿った、前記M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHe1およびHe2、前記第2方向に沿った、前記M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHe3およびHe4としたとき、前記He1およびHe3が、
He1≧Ie1+GM1・(tanθe1+tanθe2) 式(21)
He3≧Ie2+2・GM1・tanθe3 式(22)
の少なくとも一方の関係を満足し、前記He2およびHe4が、
He2≧Ie1+GM2・(tanθe1+tanθe2) 式(23)
He4≧Ie2+2・GM2・tanθe3 式(24)
の少なくとも一方の関係を満足し、そのことによって上記目的が達成される。
【0033】
前記He1およびHe3が、式(21)および式(22)の両方の関係を満足することが好ましい。
【0034】
前記He2およびHe4が、式(23)および式(24)の両方の関係を満足することが好ましい。
【0035】
前記第2方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe4、前記第2方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe5としたとき、前記He1およびHe3が、
He1<Ie1+2・GM1・tanθe3 式(25)
He3<Ie2+GM1・(tanθe4+tanθe5) 式(26)
の少なくとも一方の関係を満足することが好ましく、前記He1およびHe3が、式(25)および式(26)の両方の関係を満足することがさらに好ましい。
【0036】
また、前記第2方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe4、前記第2方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe5としたとき、前記He2およびHe4が、
He2<Ie1+2・GM2・tanθe3 式(27)
He4<Ie2+GM2・(tanθe4+tanθe5) 式(28)
の少なくとも一方の関係を満足することが好ましく、前記He2およびHe4が、式(27)および式(28)の両方の関係を満足することがさらに好ましい。
【0037】
ある好適な実施形態において、前記表示パネルは、線走査されることによって駆動される表示パネルであり、前記M組目の偏光変調素子は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得るL(Lは2以上の整数)個の領域を前記表示パネルの走査方向に沿って有しており、前記L個の領域のうち前記走査方向に沿ってもっとも端側に位置する2つの領域の前記走査方向に沿った幅をaおよびb、前記走査方向に沿った前記表示面の幅をIとしたとき、前記aおよびbが、
a>I/L 式(29)
b>I/L 式(30)
の両方の関係を満足している。
【0038】
ある好適な実施形態において、前記表示パネルは、線走査されることによって駆動される表示パネルであり、前記M組目の偏光変調素子は、前記M組目の偏光変調素子は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得るL(Lは2以上の整数)個の領域を前記表示パネルの走査方向に沿って有しており、前記L個の領域のうち前記走査方向に沿ってもっとも端側に位置する2つの領域の前記走査方向に沿った幅をaおよびb、前記走査方向に沿った前記表示面の幅をI、前記走査方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθf1、前記走査方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθf2、前記レンズの画角をθf3、前記θf1およびθf3のうちの小さい方の角をθf4、前記θf2およびθf3のうちの小さい方の角をθf5、前記表示面から前記M組目の偏光変調素子の光出射側の端部までの空気換算距離をGfとしたとき、前記aおよびbが、
a≧I/L+Gf・tanθf4 式(31)
b≧I/L+Gf・tanθf5 式(32)
の両方の関係を満足している。
【0039】
本発明による表示装置の製造方法は、表示面を有する表示パネルと、前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置の製造方法であって、表示面を有する表示パネルとレンズとを用意する工程と、前記表示パネルの前記表示面の端部から出射する光の広がり角と、前記レンズの画角とに応じて光学シフト素子のサイズを決定する工程と、前記サイズを決定する工程において決定されたサイズを有する光学シフト素子を用意する工程と、前記表示パネル、前記レンズおよび前記光学シフト素子を用いて表示装置を組み立てる工程と、を包含し、そのことによって上記目的が達成される。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0041】
(実施形態1)
本発明による表示装置の第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態における表示装置100を模式的に示している。表示装置100は、いわゆる3板式の投影型画像表示装置である。
【0042】
表示装置100は、図1に示すように、それぞれ赤(R)、緑(G)、青(B)の光を変調する表示パネル10R、10G、10Bと、表示パネル10R、10G、10Bで変調された光を合成する色合成素子(例えばダイクロイックプリズム)8と、色合成素子8から出射した光をスクリーンなどの被投影面上に投射する投影レンズ30とを備えている。
【0043】
表示パネル10R、10G、10Bは、各々が光を変調することができる複数の画素領域を有しており、典型的にはマトリクス状に配列されたこれら複数の画素領域によって表示面が規定される。表示パネル10R、10G、10Bは、本実施形態では、一対の基板とこれらの間に挟持された液晶層とを有する透過型の液晶表示パネルである。表示パネル10R、10G、10Bのそれぞれに対応した色光を入射させるには、例えば、光源から出射された白色光を、ダイクロイックミラーを含む光学系でR、G、Bの色光に分離すればよい。
【0044】
表示装置100は、さらに、表示パネル10R、10G、10Bから出射した光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子20を備えている。光学シフト素子20は、表示パネル10R、10G、10Bから出射した光が投影レンズ30に到達するまでの光路上に設けられている。本実施形態では、光学シフト素子20は、色合成素子8と投影レンズ30との間に設けられている。
【0045】
この光学シフト素子20は、ここでは、図2に示すように、入射した光の光軸をシフトさせ得る光学シフト部21を2つ備えている。それぞれの光学シフト部21は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子22と、光の偏光方向によって屈折率の異なる複屈折素子24とを備えている。
【0046】
本実施形態における偏光変調素子22は、液晶層および液晶層に電圧を印加する一対の電極を含む液晶セルから形成された液晶素子である。液晶素子22は、液晶層に印加された電圧に応じて光の偏光方向を変調する。液晶素子22は、例えば、TNモードの液晶素子であり、液晶層に電圧が印加されていない場合に光の偏光方向を90°回転させ、液晶層に適切なレベル電圧が印加されている場合に光の偏光方向を回転させないように設計されている。
【0047】
複屈折素子24は、入射光の偏光方向によって異なる屈折率を示す複屈折材料(例えば水晶)から形成されており、その光入射面に対して傾斜した光学軸を有している。このため、光の進行方向と光学軸とを含む平面(「主断面」と称される。)に対して平行な偏光面を有する光が複屈折素子24に入射すると、光は光学軸を含む面内で屈折し、光軸に対して垂直方向にシフトする。一方、主断面に対して偏光面が垂直な光が複屈折素子24に入射すると、光は屈折せず、光のシフトも生じない。
【0048】
このように、液晶素子22の液晶層に電圧を印加するか否かによって、複屈折素子24に入射する光の偏光方向を制御し、また、偏光方向の異なる光を複屈折素子24に入射させることにより、複屈折素子24から出射する光のシフトを調節することができる。
【0049】
本実施形態では、光学シフト素子20が備える2つの光学シフト部21は、色合成素子8からの光の光路上に直列的に配置されており、一方が光の光軸を垂直方向にシフトさせるように配置され、他方が光の光軸を水平方向にシフトさせるように配置されている。そのため、光学シフト素子20は、本来図3(a)に示す位置Aに表示されるべき画素を、図3(b)に示すように、A→B→C→D→A・・・と異なる4つの位置にシフトさせることができる。その結果、見かけ上の画素数が4倍となり、明るく、解像度の高い表示が可能になる。
【0050】
なお、ここでは、光学シフト素子20が2つの光学シフト部21を有する場合について説明したが、光学シフト素子20の構成はここで例示したものに限定されない。図3(b)において、A→B→A・・・と2つの異なる位置にシフトさせる場合には、光学シフト部21は1つでもよい。
【0051】
上述したように、光学シフト素子20は、光学的には、表示パネル10R、10G、10Bと投影レンズ30との間に配置される。本願発明者は、表示パネル10R、10G、10Bから出射される光の特性と、光学シフト素子20から出射された光を受けるレンズ30の光学的な特性とに着目して詳細な検討を重ねた結果、光学シフト素子20のサイズに関する知見を見出した。以下、G(緑)光を変調する表示パネル10Gを例として、この知見をより詳しく説明する。
【0052】
図4に示すように、表示パネル10Gの画素領域で変調されて表示面Pから出射する光(図中に破線で示されている)は、完全な平行光ではなく、ある程度の広がり角を持った拡散光として出射する。
【0053】
このように、表示面Pから出射される光は、表示面Pの法線方向に対して表示面の外側に傾いた方向に出射する光を含んでいる。そのため、表示光を有効に利用する観点から、光学シフト素子20は、このような光をもシフトできるように設計されることが好ましく、表示面Pの端部から出射される拡散光をシフトできるように設計されることが好ましい。
【0054】
ここで、図4および図5に示すように、表示面Pの上端部から表示面Pの法線方向に対して表示面Pの上側に傾いた方向に出射する光と表示面Pの法線方向とがなす最大の角をθa1、表示面Pの下端部から表示面Pの法線方向に対して表示面Pの下側に傾いた方向に出射する光と前記表示面Pの法線方向とがなす最大の角をθa2、表示面Pの上下方向に沿った幅をIa1とする。
【0055】
さらに、表示面Pから光学シフト素子20の光出射側の端部までの距離G´の空気換算距離をGとすると、表示面Pの上下方向に沿った、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha1が、下式(A)の関係を満足していることによって、表示面Pの上端部および下端部から出射する拡散光を光学シフト素子20でシフトさせることができる。
Ha1≧Ia1+G・(tanθa1+tanθa2)・・・・・・(A)
【0056】
なお、空気換算距離(空気換算光路長とも呼ぶ。)は、光が通過する媒体の幾何学的な厚さtをその屈折率nで割った値(t/n)である。また、本願明細書において光学シフト素子20の端部の「幅」は、特にことわらない限り、光をシフトする機能を光学的に担う部分の幅(「有効幅」ともよぶ。)であり、必ずしも光学シフト素子20の実際の幅と一致しない。
【0057】
同様に、図4および図6に示すように、表示面Pの右端部から表示面Pの法線方向に対して表示面Pの右側に傾いた方向に出射する光と表示面Pの法線方向とがなす最大の角をθa3、表示面Pの左端部から表示面Pの法線方向に対して表示面Pの左側に傾いた方向に出射する光と表示面Pの法線方向とがなす最大の角をθa4、表示面Pの左右方向に沿った幅をIa2としたとき、表示面Pの左右方向に沿った、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha2が、下式(B)の関係を満足していると、表示面Pの右端部および左端部から出射する拡散光を光学シフト素子20でシフトさせることができる。
Ha2≧Ia2+G・(tanθa3+tanθa4)・・・・・・(B)
【0058】
なお、上述した角θa1、θa2、θa3およびθa4(以下では、これらの角を、表示面Pの端部から出射する光の「広がり角」ともよぶ。)は、スネルの法則に基づく光線追跡の結果によって決定することができる。また、本願明細書において、表示面Pの「上端部」、「下端部」、「右端部」、「左端部」および「上側」、「下側」、「右側」、「左側」という表現を用いるが、これらは便宜的な呼称にすぎない。表示面のいずれの端部を「上端部」と規定しても差し支えない。
【0059】
式(A)および式(B)を満足させるということは、言い換えれば、光学シフト素子20の幅Ha1、Ha2を、表示面Pの幅Ia1、Ia2よりも、表示面Pの端部から出射する拡散光をシフトさせるに足りうる分(G・(tanθa1+tanθa2)、G・(tanθa3+tanθa4))だけあるいはそれ以上に長くするということである。
【0060】
ところが、表示面Pの端部から出射する光の広がり角θa1、θa2、θa3およびθa4のみを考慮して、すなわち、式(A)および(B)に基づいて光学シフト素子20の設計を行うと、光学シフト素子20のサイズが必要以上に大きくなることがある。この理由は、光学シフト素子20から出射された光を受ける投影レンズ30が、所定の角度範囲以外からの入射光を投影することができないからである。つまり、たとえ、表示面Pの端部から出射される光をすべてシフトできるように光学シフト素子20が設計されていたとしても、必ずしも光学シフト素子20から出射された光のすべてが投影レンズ30によって投影されるわけではないからである。一般に、レンズが画像を写し込むことができる角度範囲は「画角」と称され、投影レンズ30が投影できる入射角の範囲も「画角」と称される。
【0061】
投影レンズ30の画角をθa5とするとき、光学シフト素子20から出射された光のすべてが投影レンズ30によって投影されるかどうかは、投影レンズ30の画角θa5と、表示面Pの端部から出射する光の広がり角θa1、θa2、θa3およびθa4との大小関係によって決まる。
【0062】
図7に示すように、表示面Pの上端部から出射する光の広がり角θa1が投影レンズ30の画角θa5よりも小さい(θa1<θa5)ときには、表示面Pの上端部から出射される光のすべてが、投影レンズ30に画角θa5の範囲内の角度で入射する。
【0063】
一方、図8に示すように、表示面Pの上端部から出射する光の広がり角θa1が投影レンズ30の画角θa5よりも大きい(θa1>θa5)ときには、表示面Pの上端部から出射される光のうち、図中にθU(=θa1−θa5)で示す角度範囲で出射した光は、投影レンズ30に画角θa5の範囲内にない角度で入射するので、投影されない。そのため、光学シフト素子20は、表示面Pの上端部から出射する光のすべてをシフトさせ得るように設計される必要はなく、表示面Pの上端部から出射する光のうち、投影レンズ30の画角θa5と同じ角度範囲内で出射する光のみをシフトさせ得るように設計されていればよい。
【0064】
このように、表示面Pの上端部から出射される拡散光については、その広がり角θa1と投影レンズ30の画角θa5とのうちの小さい方の角度に基づいて、光学シフト素子20の幅を設定すればよい。
【0065】
表示面Pの下端部、右端部、左端部から出射する光についても同様であり、それぞれの端部から出射される光の広がり角と投影レンズの画角θa5とのうち、小さい方の角度に基づいて光学シフト素子20の幅を設定すればよい。
【0066】
従って、θa1およびθa5のうちの小さい方の角をθa6、θa2およびθa5のうちの小さい方の角をθa7、θa3およびθa5のうちの小さい方の角をθa8、θa4およびθa5のうちの小さい方の角をθa9としたとき、光学シフト素子20の上下方向に沿った幅Ha1および左右方向に沿った幅Ha1に必要とされる最小値は、下式(C)および(D)で表される。
Ha1=Ia1+G・(tanθa6+tanθa7)・・・・・・(C)
Ha2=Ia2+G・(tanθa8+tanθa9)・・・・・・(D)
【0067】
本実施形態における表示装置100は、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha1、Ha2が、下式(1)および(2)の両方の関係を満足するように構成されている。
Ha1≧Ia1+G・(tanθa6+tanθa7)・・・・・・(1)
Ha2≧Ia2+G・(tanθa8+tanθa9)・・・・・・(2)
【0068】
従って、表示光の利用効率が低下するなどの表示への支障をきたすことなく、小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。なお、式(1)および(2)の一方の関係のみを満足することによっても上述した効果を得ることはできるが、表示への悪影響をより確実に防止する観点からは、式(1)および式(2)の両方の関係を満足していることが好ましい。
【0069】
小型化、軽量化および低コスト化の観点からは、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha1およびHa2は、上記式(1)および(2)を満足する範囲でできるだけ小さいことが好ましい。
【0070】
また、光学シフト素子20の幅は、表示面Pの端部から出射する光の広がり角と投影レンズの画角θa5とのうち、大きい方の角度に基づいて設定した幅よりも小さいことが好ましい。具体的には、θa1およびθa5のうちの大きい方の角をθa10、θa2およびθa5のうちの大きい方の角をθa11、θa3およびθa5のうちの大きい方の角をθa12、θa4およびθa5のうちの大きい方の角をθa13としたとき、光学シフト素子20の幅Ha1およびHa2が、下式(3)および(4)の少なくとも一方の関係を満足していると、単に表示面Pの端部から出射する光の広がり角のみを考慮して光学シフト素子20の幅を設定した場合よりも、小型化、軽量化および低コスト化という効果が確実に得られる。さらなる小型化、軽量化および低コスト化をはかる観点からは、Ha1およびHa2が、式(3)および(4)の両方の関係を満足していることが好ましい。
Ha1<Ia1+G・(tanθa10+tanθa11) 式(3)
Ha2<Ia2+G・(tanθa12+tanθa13) 式(4)
【0071】
なお、光学シフト素子20の幅を決定する際には、光学シフト素子20を構成する素子の生産性などをさらに考慮してもよい。例えば、本実施形態のように、光学シフト素子20の光出射側の端部が複屈折素子24の端部によって規定される場合には、複屈折素子24をその材料(例えば水晶)の母材から切り出す際の生産性などを考慮してもよい。
【0072】
以下、本実施形態の表示装置100における光学シフト素子20のサイズの具体例を示す。なお、本発明が以下に示した数値に限定されないのはいうまでもない。
【0073】
光学シフト素子20が備える複屈折素子24の内部における光の分離角度をθ1とすると、分離角度θ1は、以下の式(E)で表される。
【0074】
【数1】
【0075】
ここで、θ0は複屈折素子24の光学軸の傾斜角、noは複屈折素子24の常光屈折率、neは複屈折素子24の異常光屈折率である。
【0076】
複屈折素子24として、光学軸の傾斜角θ0=45°、常光屈折率=1.544、異常光屈折率=1.553の水晶板を用いた場合、式(E)より、内部分離角度θ1は、以下の数値となる。
θ1=0.337°
【0077】
また、複屈折素子24によるシフト量をΔdとすると、複屈折素子24の厚さtBは、以下の式で表される。
tB=Δd/tanθ1
【0078】
従って、画素ピッチを21μm、複屈折素子24に必要とされるシフト量Δdを10.5μmとすると、複屈折素子24の厚さtBは、以下の数値となる。
【0079】
本実施形態では、複屈折素子24を2つ用いるので、2つの複屈折素子24の総厚さTBは、以下の数値となる。
【0080】
光学シフト素子20が備える2つの液晶素子22の総厚さTLを2.8mmとすると、光学シフト素子20の厚さ(入射光の伝搬方向に沿った厚さ)Tは、以下の数値となる。
【0081】
水晶板の屈折率nを1.54、液晶素子22を構成するガラス基板の屈折率nLを1.52とすると、光学シフト素子20の空気換算厚さT´は、以下の数値となる。
【0082】
表示パネル10R、10G、10Bの表示面Pから光学シフト素子20の光入射側の端部までの空気換算距離Fを40mmとすると、表示面Pから光学シフト素子20の光出射側の端部までの空気換算距離Gは、以下の数値となる。
【0083】
表示面Pの上端部、下端部、右端部および左端部から出射する拡散光の広がり角θa1、θa2、θa3およびθa4がいずれも18°、投影レンズ30の画角θa5が16.39°である場合、θa1およびθa5のうちの小さい方の角θa6、θa2およびθa5のうちの小さい方の角θa7、θa3およびθa5のうちの小さい方の角θa8、θa4およびθa5のうちの小さい方の角θa9は、いずれもθa5である。そのため、表示面Pの上下方向に沿った幅Ia1が15.12mm、表示面Pの左右方向に沿った幅Ia2が26.88mmであると、光学シフト素子20の光出射側の端部の、表示面Pの上下方向に沿った幅Ha1および左右方向に沿った幅Ha2の必要最小限の値は、以下の数値となる。
【0084】
従って、Ha1≧41.1(mm)およびHa2≧52.86(mm)の関係を満足するように光学シフト素子20の幅Ha1およびHa2を設定することによって、光の利用効率が低下するなどの表示への支障をきたすことなく、表示装置の小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。
【0085】
(実施形態2)
本発明による表示装置の第2の実施形態を説明する。図9は、本実施形態における表示装置200を模式的に示している。
【0086】
表示装置200は、図9に示すように、表示パネル10と、表示パネル10の背面側に配置された照明装置6と、観察光学系としての接眼レンズ32とを備えている。
【0087】
表示パネル10は、各々が光を変調することができる複数の画素領域を有しており、照明装置(バックライト)6からの光を変調する。複数の画素領域は、典型的にはマトリクス状に配列され、表示面を規定する。表示パネル10は、本実施形態では、一対の基板とこれらの間に挟持された液晶層とを有する透過型の液晶表示パネルである。この表示パネル10は、駆動回路(不図示)から駆動信号や映像信号を受け取り、映像信号に応じた画像を表示する。表示パネル10が表示する「画像」は、2次元的な情報の配列を広く含むものであり、単なる映像だけでなく、文字(テキスト)情報などであってもよい。
【0088】
表示装置200は、さらに、表示パネル10から出射した光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子20を備えている。光学シフト素子20は、表示パネル10から出射した光の光路上に設けられており、表示パネル10と接眼レンズ32との間に設けられている。
【0089】
光学シフト素子20は、図2に示した光学シフト素子20と同様に、液晶素子22と複屈折素子24とを備えた光学シフト部21を2つ含んでいる。この光学シフト素子20によって、図3(b)に示したように、A→B→C→D→A・・・と異なる4つの位置に画素をシフトさせることができる。その結果、見かけ上の画素数が4倍となり、明るく、解像度の高い表示が可能になる。
【0090】
接眼レンズ32は、光学シフト素子20から出射された光を受ける。表示パネル10によって表示された画像は、観察光学系としてのこの接眼レンズ32によって光学的に拡大されて観察者に観察される。
【0091】
本実施形態の表示装置200においても、表示パネル10から出射される光はある程度の広がり角を有している。また、接眼レンズ32は、一定の角度範囲内で入射した光に対応した画像のみを拡大する。接眼レンズ32が画像を拡大できる入射角の範囲も「画角」と称される。
【0092】
本実施形態の表示装置200は、接眼レンズ32の画角を、投影レンズ30の画角と同様にθa5と表記したとき、実施形態1の表示装置100と同様に、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha1、Ha2が、式(1)および式(2)の両方の関係を満足するように構成されている。従って、表示に支障をきたすことなく、小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。
【0093】
以下、本実施形態の表示装置200における光学シフト素子20のサイズの具体例を示す。なお、本発明が以下に示した数値に限定されないのはいうまでもない。
【0094】
複屈折素子24として、光学軸の傾斜角θ0=45°、常光屈折率=1.544、異常光屈折率=1.553の水晶板を用いた場合、式(E)より、複屈折素子24の内部における光の分離角度θ1は、以下の数値となる。
θ1=0.337°
【0095】
また、複屈折素子24によるシフト量をΔdとすると、複屈折素子24の厚さtBは、以下の式で表される。
tB=Δd/tanθ1
【0096】
画素ピッチを21μm、複屈折素子24に必要とされるシフト量Δdを10.5μmとすると、複屈折素子24の厚さtBは、以下の数値となる。
【0097】
本実施形態では、複屈折素子24を2つ用いるので、2つの複屈折素子24の総厚さTBは、以下の数値となる。
【0098】
光学シフト素子20が備える2つの液晶素子22の総厚さTLを2.8mmとすると、光学シフト素子20の厚さ(入射光の伝搬方向に沿った厚さ)Tは、以下の数値となる。
【0099】
水晶板の屈折率nを1.54、液晶素子22を構成するガラス基板の屈折率nLを1.52とすると、光学シフト素子20の空気換算厚さT´は、以下の数値となる。
【0100】
表示パネル10の表示面から光学シフト素子20の光入射側の端部までの空気換算距離Fを6mmとすると、表示面から光学シフト素子20の光出射側の端部までの空気換算距離Gは、以下の数値となる。
【0101】
表示面の上端部、下端部、右端部および左端部から出射する拡散光の広がり角θa1、θa2、θa3およびθa4がいずれも15°、接眼レンズ32の画角θa5が18.43°である場合、θa1およびθa5のうちの小さい方の角θa6、θa2およびθa5のうちの小さい方の角θa7、θa3およびθa5のうちの小さい方の角θa8、θa4およびθa5のうちの小さい方の角θa9は、それぞれ、θa1、θa2、θa3、θa4である。そのため、表示面の上下方向に沿った幅Ia1が15.12mm、表示面の左右方向に沿った幅Ia2が26.88mmであると、光学シフト素子20の光出射側の端部の、表示面の上下方向に沿った幅Ha1および左右方向に沿った幅Ha2の必要最小限の値は、以下の数値となる。
【0102】
従って、Ha1≧20.56(mm)およびHa2≧32.32(mm)の関係を満足するように光学シフト素子20の幅Ha1およびHa2を設定することによって、光の利用効率が低下するなどの表示への支障をきたすことなく、表示装置の小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。
【0103】
(実施形態3)
本発明による表示装置の第3の実施形態を説明する。図10は、本実施形態における表示装置300を模式的に示している。表示装置300は、単板式の投影型画像表示装置である。
【0104】
表示装置300は、図10に示すように、光源1と、表示パネル10と、光源1からの光を、波長域に応じて同一平面内に含まれる異なる方向に向け、波長域に応じて表示パネル10の対応する画素領域に集光させる光制御手段と、表示パネル10で変調された光をスクリーンなどの被投影面上に投射する投影レンズ30とを備えている。
【0105】
表示装置300は、さらに、表示パネル10で変調された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子20を備えている。この光学シフト素子20は、表示パネル10と投影レンズ30との間に設けられており、投影レンズ30は、光学シフト素子20から出射された光を受けて被投影面上に画像を形成する。
【0106】
光源1は、赤(R)、緑(G)、青(B)に対応した3つの波長域の光を含む白色光を放射する。光源1としては、例えば、メタルハライドランプやハロゲンランプを用いることができる。
【0107】
光源1から出射された光は、ダイクロイックミラー4a、4bおよび4cによってR、GおよびB光に分離され、R、GおよびB光は、それぞれ異なる角度で表示パネル10に入射する。本実施形態では、図10に示したように、R光の主光線は表示パネル10の光入射面に対して垂直に入射し、GおよびB光の主光線は、R光の主光線に対して所定の角度θrgbをなして表示パネル10に入射する。
【0108】
表示パネル10は、各々が光を変調する複数の画素領域を有しており、典型的にはマトリクス状に配列されたこれら複数の画素領域によって表示面が規定される。表示パネル10は、表示パネル10用の駆動回路から駆動信号や映像信号を受け取り、映像信号に応じた画像を表示する。表示パネル10が表示する「画像」は、2次元的な情報の配列を広く含むものであり、単なる映像だけでなく、文字(テキスト)情報などであってもよい。
【0109】
本実施形態における表示パネル10は、一対の基板と、これら一対の基板間に挟持された液晶層とを備えた透過型の液晶表示パネルである。一対の基板のそれぞれには典型的には偏光板が所定の配置(例えばクロスニコル状態)で取り付けられる。また、光源側の基板には、図11に示すようにマイクロレンズアレイ7が取り付けられている。ダイクロイックミラー4a、4bおよび4cで反射されたR、GおよびB光は、マイクロレンズアレイ7にそれぞれ異なる角度で入射し、マイクロレンズアレイ7によって対応した画素領域に集められる。画素領域に集められた光は、画素領域で変調された後、波長域に応じて異なる角度で出射する。なお、本実施形態では、3原色の光を対応する画素領域に集めるために、ダイクロイックミラー4a、4bおよび4cとマイクロレンズアレイ7とを用いるが、他の光学的な手段(例えば、回折格子)を用いてもよい。
【0110】
光学シフト素子20は、本実施形態では、図2に示した光学シフト素子20と同様に、入射した光の光軸をシフトさせ得る光学シフト部21を2つ備えており、それぞれの光学シフト部21は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子22と、光の偏光方向によって屈折率の異なる複屈折素子24とを備えている。ただし、本実施形態では、それぞれの光学シフト部20は、光軸をシフトさせる方向が互いに同じになるように配置されているので、画素を同一直線上の異なる3つの位置にシフトさせることができる。
【0111】
本実施形態における偏光変調素子22は、液晶層と、液晶層を介して対向する一対の透明基板とを有する液晶素子である。液晶素子22は、透明基板の液晶層側に、液晶層に電圧を印加するための透明電極(透明導電層)を有している。
【0112】
光学シフト素子20の動作は、光学シフト素子20用の駆動回路(不図示)によって制御される。光学シフト素子20用の駆動回路は、光学シフト素子20が含む複数の液晶素子22に対して個別に複数のレベル電圧を印加するための電圧印加部を有しており、表示パネル10の画像表示に同期した駆動信号を光学シフト素子20に供給する。
【0113】
以下、本実施形態の表示装置300における、画像の表示方法を説明する。
【0114】
表示装置300では、光源1から出射する白色光をダイクロイックミラー4a、4bおよび4cを用いて、赤(R)、緑(G)、青(B)の波長領域にその成分を持つ光に分離する。分離されたR、G、B光は、マイクロレンズアレイ7によって表示パネルの異なる画素領域に異なった角度で入射される。時間の経過にかかわらず、同一の画素領域には同じ色の光が照射される。
【0115】
表示パネル10には、画像を構成する各フレーム画像のデータから生成された複数のサブフレーム画像のデータを時分割で表示させる。例えば、各フレーム画像は、3つのサブフレーム画像に分割され、3つのサブフレーム画像は、表示パネル10上において、1画素分ずつシフトして表示される。このとき、あるフレーム画像を構成する1つの画素に注目すると、この画素は、R、G、B光がそれぞれ照射されている表示パネル10上の画素領域に対応する。
【0116】
表示パネル10に異なった角度で入射したR、G、Bの光は互いに異なった角度で表示パネル10から出射する。出射するR、G、Bの光は、サブフレーム画像のデータを用いて表示パネル10により変調されるため、サブフレーム画像となる。
【0117】
これら複数のサブフレーム画像のうち、選択されたサブフレーム画像は、光学シフト素子20によって、被投影面上においてその位置がシフトされて表示される。
【0118】
ここで、あるフレーム画像から複数のサブフレーム画像を形成する方法を説明する。
【0119】
例えば、あるフレーム画像が図12(a)に示すような画像であるとする。このフレーム画像はカラー表示されるべきものであり、各画素の色は、上記フレーム画像を規定するデータに基づいて決定される。なお、インターレース駆動の場合は、あるフィールドの画像が本願明細書における「フレーム画像」と同様に取り扱われ得る。
【0120】
まず、図12(a)に示すカラー表示用のフレームデータから各画素についてR、G、およびB光用のデータを分離し、図12(b)、(c)、および(d)に示すように、R画像用フレーム、G画像用フレーム、およびB画像用フレームの各データを生成する。これらのデータは図13の左側に示すように、R、G、およびB用フレームメモリにそれぞれ格納される。
【0121】
図13の右側部分には、表示サブフレーム1〜3が示されている。本実施形態によれば、あるフレームの最初の3分の1の期間(第1サブフレーム期間)において、被投影面上には表示サブフレーム1の画像が被投影面上に表示される。そして、次の3分の1の期間(第2サブフレーム期間)には、表示サブフレーム2の画像が表示され、最後の3分の1の期間(第3サブフレーム期間)には、表示サブフレーム3の画像が表示される。本実施形態では、これら3つのサブフレーム画像が図14に示すようにシフトし、時間的にずれながら合成される結果、人間の目には図12(a)に示すような原画像が認識されることになる。
【0122】
次に、表示サブフレーム1を例にとり、サブフレーム画像のデータ構成を詳細に説明する。まず、表示サブフレーム1の第1行画素領域用データは、図13に示すように、R用フレームメモリに記憶されている第1行目画素(R1)に関するデータから形成される。表示サブフレーム1の第2行画素領域用データは、G用フレームメモリに記憶されている第2行目画素(G2)に関するデータから形成される。表示サブフレーム1の第3行画素領域用データは、B用フレームメモリに記憶されている第3行目画素(B3)に関するデータから形成される。表示サブフレーム1の第4行画素領域用データは、R用フレームメモリに記憶されている第4行目画素(R4)に関するデータから形成される。以下、同様の手順で表示サブフレーム1のデータが構成される。
【0123】
表示サブフレーム2および3のデータも、表示サブフレーム1の場合と同様にして構成される。例えば表示サブフレーム2の場合、第0行画素領域用データは、B用フレームメモリに記憶されている第1行目画素(B1)に関するデータから形成され、表示サブフレーム2の第1行画素領域用データはR用フレームメモリに記憶されている第2行目画素(R2)に関するデータから形成される。表示サブフレーム2の第2行画素領域用データはG用フレームメモリに記憶されている第3行目画素(G3)に関するデータから形成され、表示サブフレーム2の第3行画素領域用データはB用フレームメモリに記憶されている第4行目画素(B4)に関するデータから形成される。
【0124】
このようにしてR、G、およびB用フレームメモリの各々から読み出したデータを予め設定された順序で組み合わせることによって、時分割表示されるサブフレームの各々のデータが生成される。この結果、サブフレーム用データの各々は、R、G、およびBの全ての色に関する情報を含んでいるが、R、G、およびBのそれぞれについて、空間的には全体の3分の1の領域に関する情報を有しているだけである。より詳細に述べれば、図13から明らかにように、表示サブフレーム1は、R画像フレームの第1、4、7、10…行の画素に関するデータと、G画像フレームの第2、5、8、11…行の画素に関するデータと、B画像フレームの第3、6、9、12…行の画素に関するデータとを含む。表示サブフレーム2は、B画像フレームの第1、4、7、10…行の画素に関するデータと、R画像フレームの第2、5、8、11…行の画素に関するデータと、G画像フレームの第3、6、9、12…行の画素に関するデータとを含む。また、表示サブフレーム3は、G画像フレームの第1、4、7、10…行の画素に関するデータと、B画像フレームの第2、5、8、11…行の画素に関するデータと、R画像フレームの第3、6、9、12…行の画素に関するデータとを含む。なお、図13からわかるように、表示パネルの画素領域の全行数は、1つのサブフレーム画像を構成する画素の全行数よりも2行だけ多い。この2行は光学シフトのマージンとして機能する。
【0125】
原画像フレームを再現するためには、R画像フレームの第1行、B画像フレームの第1行およびG画像フレームの第1行を合成しなければならない。図13に示すように、これらの情報は、表示サブフレーム1、2および3において、1行目、0行目および−1行目に割り当てられる。したがって、これらのサブフレーム画像を被投影面上において、表示サブフレーム1に対して、表示サブフレーム2は1画素分、シフトさせて表示し、表示サブフレーム1に対して、表示サブフレーム3は2画素分シフトさせて表示する。つまり、投影面上の各画素では、3つの表示サブフレームが順次シフトして表示される。この各サブフレーム間における画像のシフトは光学シフト素子20によって行われる。
【0126】
上述したように、本実施形態の表示装置300では、各フレーム期間に3つのサブフレーム画像を生成し、それらの画像を光学的にシフトさせながら合成するので、カラーフィルタを用いた単板式の投影型表示装置に比べて光利用効率が大幅に向上し、しかも、3倍の解像度を実現することができる。
【0127】
次に、本実施形態の表示装置300における、光学シフト素子20の好適なサイズを説明する。
【0128】
本実施形態の表示装置300においても、基本的には、表示パネル10の表示面の端部から出射する光の広がり角と投影レンズ30の画角とを考慮して光学シフト素子20の幅を決定すればよい。
【0129】
ただし、本実施形態では、光源1からの光は、光制御手段によって同一平面(以下では「色分離平面」とよぶ。)内に含まれる異なる方向に向けられて、波長域に応じて対応した画素領域に集められるので、表示パネル10から光が出射する角度は波長域ごとに異なる。そのため、表示パネル10の表示面から出射する光の広がり角は、等方的ではなく、波長域の異なる光を含む平面(色分離平面に平行)に平行な方向により大きな広がり角を有している。
【0130】
つまり、本実施形態では、表示面から出射される光は、光制御手段の色分離平面に直交する方向(便宜的に「第1方向」と称する。)に相対的に小さな広がり角を有し、色分離平面に平行な方向(便宜的に「第2方向」と称する。)に相対的に大きな広がり角を有している。
【0131】
表示面から出射する光が上述したように異方的な広がり角を有しているということを、投影レンズ30の入射瞳とこれに入射する光との関係に即して説明すると、図15に示すように、投影レンズ30の入射瞳を通過する光の幅が、第1方向に沿っては光それ自身の幅によって規定され、第2方向に沿っては投影レンズ30の入射瞳の径によって規定されるということである。
【0132】
従って、表示面から出射する光の第1方向に沿った広がり角と、投影レンズ30の画角とを比較すると、典型的には、第1方向に沿った広がり角の方が小さい。また、表示面から出射する光の第2方向に沿った広がり角と、投影レンズ30との画角とを比較すると、典型的には投影レンズ30の画角の方が小さい。
【0133】
そのため、上記の第1方向における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して表示面の一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθb1、第1方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して表示面の他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθb2、表示面の前記第1方向に沿った幅をIb1、表示面から光学シフト素子20の光出射側の端部までの空気換算距離をGとすると、第1方向に沿った、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅をHb1が、下式(5)を満足していることが好ましい。
Hb1≧Ib1+G・(tanθb1+tanθb2) 式(5)
【0134】
また、レンズの画角をθb3、表示面の第2方向に沿った幅をIb2とすると、第2方向に沿った、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Hb2が、下式(6)の関係を満足していることが好ましい。
Hb2≧Ib2+2・G・tanθb3 式(6)
【0135】
本実施形態における表示装置300は、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Hb1、Hb2が、式(5)および(6)の両方の関係を満足するように構成されている。
【0136】
従って、表示に支障をきたすことなく、小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。なお、式(5)および(6)の一方の関係のみを満足することによっても上述した効果を得ることはできるが、表示への悪影響をより確実に防止する観点からは、式(5)および式(6)の両方の関係を満足していることが好ましい。
【0137】
小型化、軽量化および低コスト化の観点からは、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Hb1およびHb2は、上記式(5)および(6)を満足する範囲でできるだけ小さいことが好ましい。
【0138】
また、第2方向における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して第2方向における一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθb4、第2方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して第2方向における他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθb5としたとき、光学シフト素子20の幅Hb1およびHb2が下式(7)および(8)の少なくとも一方の関係を満足していると、小型化、軽量化および低コスト化という効果がより確実に得られる。さらなる小型化、軽量化および低コスト化をはかる観点からは、Hb1およびHb2が、式(7)および(8)の両方の関係を満足していることが好ましい。
Hb1<Ib1+2・G・tanθb3 式(7)
Hb2<Ib2+G・(tanθb4+tanθb5) 式(8)
【0139】
次に、表示パネル10が線走査されることによって駆動される場合における好ましい構成を説明する。
【0140】
表示パネル10に表示されるサブフレーム画像を切り替える方式には、大きく分けて2種類ある。第1の方式は「線走査(ライン走査)方式」であり、この方式によれば、表示パネル10において行列状に配列された複数の画素領域を1行または数行ごとに駆動し、表示面の上部から下部に向けて垂直に新しいサブフレーム画像を表示していく。第2の方式は、「面(一括)書き込み方式」であり、この方式によれば、表示パネル10において行列状に配列された複数の画素領域の全てを一括的に駆動し、表示面全体に新しい画像を表示する。
【0141】
表示パネル10が線走査されることによって駆動される場合には、光学シフト素子20に含まれる偏光変調素子22は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得る複数の領域(以下では「変調領域」ともよぶ。)を、表示パネル10の走査方向に沿って有していることが好ましい。本実施形態における偏光変調素子22は液晶素子であるので、液晶素子が、液晶層に部分的に電圧を印加できる構成を有していることが好ましい。例えば、透明電極が所定の形状にパターニングされていることによって、このような電圧の印加が可能になる。
【0142】
偏光変調素子22が走査方向に沿って複数の変調領域を有していると、光学シフト素子20は、表示画像を一括的にシフトさせるだけでなく、部分的、段階的にシフトさせることができる。そのため、表示パネル10の走査に同期して画像のシフトを行うことができるので、表示パネル10による画像表示のタイミングと、光学シフト素子20による画像シフトのタイミングとのずれを低減することができる。その結果、表示品位を向上できる。
【0143】
図16に、偏光変調素子22が単一の変調領域を有している場合の画像表示のタイミングと画像シフトのタイミングとのずれを示す。図16では、1垂直走査期間がn秒であり、表示パネル10の表示面の半分に書き込みが行われた時点(走査開始からn/2秒後)で画像シフトを行う場合を例示している。偏光変調素子22が単一の変調領域しか有していない場合、光学シフト素子20は、表示画像を一括して同時にシフトさせる。そのため、図16に示すように、画像の上端および下端ではそれぞれn/2秒のタイミングずれが発生してしまう。
【0144】
これに対して、例えば、偏光変調素子22が走査方向に沿って2つの変調領域22Aおよび22Bを有している場合、図17に示すように、表示面の1/4まで書き込みが行われた時点(走査開始からn/4秒後)で表示面の上半分に対応した変調領域22Aを駆動し、表示面の3/4まで書き込みが行われた時点(走査開始から3n/4秒後)で表示面の下半分に対応した変調領域22Bを駆動することによって、タイミングのずれをn/4秒に低減することができる。
【0145】
なお、ここでは変調領域が2つの場合を例示したが、偏光変調素子22は3つ以上の変調領域を有してもよい。タイミングのずれをより低減する観点からは、偏光変調素子22がより多くの変調領域を有していることが好ましい。
【0146】
ここで、偏光変調素子22の変調領域の幅の好ましい設定を説明する。
【0147】
光学シフト素子20の好適な幅についての説明と同様に、偏光変調素子22の幅も、表示パネル10から出射される光をすべて変調できるように設定されていることが好ましい。つまり、表示パネル10の表示面の端部から出射する光の広がり角を考慮して設定されることが好ましい。従って、偏光変調素子22の幅は、表示パネル10の表示面の幅よりも広いことが好ましい。
【0148】
ただし、偏光変調素子22が有する変調領域の走査方向に沿った幅は、偏光変調素子22の走査方向に沿った幅を単純に等分したものではないことが好ましい。
【0149】
例えば、図18に示すように、偏光変調素子22が有する3つの変調領域22A、22B、22Cの幅を、偏光変調素子22の幅を3等分したものとすると、表示品位が低下することがある。表示パネル10の表示面において等幅の3つの領域P1、P2およびP3を想定すると、表示面の上側の領域P1から出射される光は、上側の変調領域22Aだけでなく、中央の変調領域22Bにも入射してしまう。また、表示面の下側の領域P3から出射される光も、下側の変調領域22Cだけでなく、中央の変調領域22Bにも入射してしまう。このように、本来入射すべき変調領域に隣接した領域にも光が入射するので、2重像やタイミングずれなどが発生して表示品位が損なわれることがある。
【0150】
これに対して、偏光変調素子22が表示パネル10の走査方向に沿ってL個(Lは2以上の整数)の変調領域を有している場合、もっとも端側に位置する2つの領域の走査方向に沿った幅をaおよびb、走査方向に沿った表示面の幅をIとしたとき、aおよびbが、下式(9)および(10)を満足していることによって、上述したような2重像の発生やタイミングのずれの増大を抑制することができる。
a>I/L 式(9)
b>I/L 式(10)
【0151】
つまり、図19に示すように、偏光変調素子22が有する複数の変調領域22A〜22Eのうち、両端に位置する2つの領域22A、22Eの幅a、bを選択的に広くすると、その他の変調領域22B、22C、22D、22Eの幅cを相対的に狭くし、表示面に設定される等幅の領域P1〜P5の幅I/Lに近くすることができるので、表示面の領域P1〜P5のそれぞれから出射される光を、同期して駆動される変調領域に正確に入射させることができる。そのため、2重像の発生やタイミングのずれの増大を抑制することができる。なお、2重像の発生やタイミングのずれの増大のいっそうの抑制をはかるためには、偏光変調素子22が有する複数の変調領域のうちのその他の領域(両端の2つの領域以外の領域)の幅cは、I/Lに近いことが好ましく、I/Lであることがより好ましい。
【0152】
上述したように、偏光変調素子22の両端の変調領域の幅a、bは、I/Lよりも広いことが好ましい。I/Lよりもどれだけ広くするかは、走査方向に沿った表示面の端部から出射する光の広がり角と、投影レンズ30の画角とを考慮して決定することが好ましい。すなわち、走査方向における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して表示面の一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθc1、走査方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して表示面の他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθc2、レンズの画角をθc3、θc1およびθc3のうちの小さい方の角をθc4、θc2およびθc3のうちの小さい方の角をθc5、表示面から光学シフト素子20の光出射側の端部までの空気換算距離をGcとしたとき、aおよびbが、下式(11)および(12)を満足することが好ましい。
a≧I/L+G・tanθc4 式(11)
b≧I/L+G・tanθc5 式(12)
【0153】
なお、実施形態1の表示装置100や実施形態2の表示装置200においても、表示パネル10が線走査され、偏光変調素子22が複数の変調領域を有している場合には、両端の変調領域の幅が、上記の式(9)および(10)、あるいは、式(11)および(12)を満足することが好ましい。
【0154】
(実施形態4)
上記実施形態1〜3では、光学シフト素子を1つの素子として捉えてそのサイズの最適化をはかっている。これに対して、光学シフト素子を構成する複数の素子のそれぞれのサイズを最適化し、そのことによって光学シフト素子のサイズの最適化をはかることもできる。
【0155】
図20を参照しながら、本発明による表示装置の第4の実施形態を説明する。図20は、本実施形態における表示装置400を模式的に示している。表示装置400は、実施形態2の表示装置200とほぼ同様の構成を有しているので、以下では、表示装置200と異なる点を中心に説明する。
【0156】
表示装置400が備える光学シフト素子20は、図2に示した光学シフト素子20と同様に、直列的に配列された2組の偏光変調素子22および複屈折素子24を有している。ただし、本実施形態では、2つの偏光変調素子22のそれぞれの幅および2つの複屈折素子24のそれぞれの幅が、表示面の端部から出射する光の広がり角と接眼レンズ32の画角とに基づいて決定されている。以下、このことを数式を用いて説明する。
【0157】
ここで、光学シフト素子20が、偏光変調素子22と複屈折素子24とをN組(Nは1以上の整数)有しているとし、表示面の上端部から表示面の法線方向に対して表示面の上側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθd1、表示面の下端部から表示面の法線方向に対して表示面の下側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθd2、表示面の右端部から表示面の法線方向に対して表示面の右側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθd3、表示面の左端部から表示面の法線方向に対して表示面の左側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθd4、接眼レンズ32の画角をθd5とする。
【0158】
また、表示面の上下方向に沿った幅をId1、表示面の左右方向に沿った幅をId2、表示面から光学シフト素子20のM組目(Mは1以上N以下の整数)の偏光変調素子22および複屈折素子24の光出射側の端部までの空気換算距離をGM1およびGM2、表示面の上下方向に沿った、M組目の偏光変調素子22および複屈折素子24の光出射側の端部の幅をHd1およびHd2、表示面の左右方向に沿った、M組目の偏光変調素子22および複屈折素子24の光出射側の端部の幅をHd3およびHd4とする。
【0159】
さらに、θd1およびθd5のうちの小さい方の角をθd6、θd2およびθd5のうちの小さい方の角をθd7、θd3およびθd5のうちの小さい方の角をθd8、θd4およびθd5のうちの小さい方の角をθd9としたとき、本実施形態の表示装置400では、上記Hd1およびHd3が、下式(13)および(14)の両方の関係を満足し、上記Hd2およびHd4が、下式(15)および(16)の両方の関係を満足している。
Hd1≧Id1+GM1・(tanθd6+tanθd7) 式(13)
Hd3≧Id2+GM1・(tanθd8+tanθd9) 式(14)
Hd2≧Id1+GM2・(tanθd6+tanθd7) 式(15)
Hd4≧Id2+GM2・(tanθd8+tanθd9) 式(16)
【0160】
従って、表示光の利用効率が低下するなどの表示への支障をきたすことなく、小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。なお、式(13)および(14)の一方、あるいは、式(15)および(16)の一方の関係のみを満足することによっても上述した効果を得ることはできるが、表示への悪影響をより確実に防止する観点からは、式(13)および(14)の両方の関係を満足し、式(15)および(16)の両方の関係を満足していることが好ましい。
【0161】
小型化、軽量化および低コスト化の観点からは、偏光変調素子22の幅Hd1、Hd3は、上記式(13)および(14)を満足する範囲でできるだけ小さいことが好ましい。ただし、生産性の観点から、光学シフト素子20に含まれる複数の偏光変調素子22の幅を式(13)および(14)を満足する範囲で同じとしてもよい。
【0162】
また、偏光変調素子22の幅は、表示面の端部から出射する光の広がり角と接眼レンズ32の画角とのうち、大きい方の角度に基づいて設定した幅よりも小さいことが好ましい。具体的には、θd1およびθd5のうちの大きい方の角をθd10、θd2およびθd5のうちの大きい方の角をθd11、θd3およびθd5のうちの大きい方の角をθd12、θd4およびθd5のうちの大きい方の角をθd13としたとき、偏光変調素子22の幅Hd1およびHd2が、下式(17)および(18)の少なくとも一方の関係を満足していると、単に表示面の端部から出射する光の広がり角のみを考慮して偏光変調素子22の幅を設定した場合よりも、小型化、軽量化および低コスト化という効果が顕著に得られる。さらなる小型化、軽量化および低コスト化をはかる観点からは、Hd1およびHd2が、式(17)および(18)の両方の関係を満足していることが好ましい。
Hd1<Id1+GM1・(tanθd10+tanθd11) 式(17)
Hd3<Id2+GM1・(tanθd12+tanθd13) 式(18)
【0163】
同様に、複屈折素子24の幅Hd2、Hd4は、上記式(15)および(16)を満足する範囲でできるだけ小さいことが好ましい。ただし、生産性の観点から、光学シフト素子20に含まれる複数の複屈折素子24の幅を式(15)および(16)を満足する範囲で同じとしてもよい。
【0164】
また、複屈折素子24の幅は、表示面の端部から出射する光の広がり角と接眼レンズ32の画角とのうち、大きい方の角度に基づいて設定した幅よりも小さいことが好ましい。具体的には、θd1およびθd5のうちの大きい方の角をθd10、θd2およびθd5のうちの大きい方の角をθd11、θd3およびθd5のうちの大きい方の角をθd12、θd4およびθd5のうちの大きい方の角をθd13としたとき、複屈折素子24の幅Hd2およびHd4が、下式(19)および(20)の少なくとも一方の関係を満足していると、単に表示面の端部から出射する光の広がり角のみを考慮して複屈折素子24の幅を設定した場合よりも、小型化、軽量化および低コスト化という効果が顕著に得られる。さらなる小型化、軽量化および低コスト化をはかる観点からは、Hd2およびHd4が、式(19)および(20)の両方の関係を満足していることが好ましい。
Hd2<Id1+GM2・(tanθd10+tanθd11) 式(19)
Hd4<Id2+GM2・(tanθd12+tanθd13) 式(20)
【0165】
(実施形態5)
本発明による表示装置の第5の実施形態を説明する。図21は、本実施形態における表示装置500を模式的に示している。表示装置500は、実施形態3の表示装置300とほぼ同様の構成を有しているので、以下では、表示装置300と異なる点を中心に説明する。
【0166】
表示装置500が備える光学シフト素子20は、図2に示した光学シフト素子20と同様に、直列的に配列された2組の偏光変調素子22および複屈折素子24を有している。ただし、本実施形態では、2つの偏光変調素子22のそれぞれの幅および2つの複屈折素子24のそれぞれの幅が、表示面の端部から出射する光の広がり角と接眼レンズ32の画角とに基づいて決定されている。以下、このことを数式を用いて説明する。
【0167】
ここで、光学シフト素子20が、偏光変調素子22と、複屈折素子24とをN組(Nは1以上の整数)有しているとし、光制御手段による色分離平面に直交する方向(第1方向)における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して表示面の一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθe1、第1方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して表示面の他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθe2、投影レンズ30の画角をθe3とする。
【0168】
また、第1方向に沿った表示面の幅をIe1、色分離平面に平行な第2方向に沿った表示面の幅をIe2、表示面から光学シフト素子20のM組目(Mは1以上N以下の整数)の偏光変調素子22および複屈折素子24の光出射側の端部までの空気換算距離をGM1およびGM2、第1方向に沿った、M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHe1およびHe2、第2方向に沿った、M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHe3およびHe4とする。
【0169】
本実施形態の表示装置500では、上記He1およびHe3が、下式(21)および(22)の両方の関係を満足し、上記He2およびHe4が、下式(23)および(24)の両方の関係を満足している。
He1≧Ie1+GM1・(tanθe1+tanθe2) 式(21)
He3≧Ie2+2・GM1・tanθe3 式(22)
He2≧Ie1+GM2・(tanθe1+tanθe2) 式(23)
He4≧Ie2+2・GM2・tanθe3 式(24)
【0170】
従って、表示光の利用効率が低下するなどの表示への支障をきたすことなく、小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。なお、式(21)および(22)の一方、あるいは、式(23)および(24)の一方の関係のみを満足することによっても上述した効果を得ることはできるが、表示への悪影響をより確実に防止する観点からは、式(21)および(22)の両方の関係を満足し、式(23)および(24)の両方の関係を満足していることが好ましい。
【0171】
小型化、軽量化および低コスト化の観点からは、偏光変調素子22の幅He1、He3は、上記式(21)および(22)を満足する範囲でできるだけ小さいことが好ましい。ただし、生産性の観点から、光学シフト素子20に含まれる複数の偏光変調素子22の幅を式(21)および(22)を満足する範囲で同じとしてもよい。
【0172】
また、第2方向における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して第2方向における一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθe4、第2方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して第2方向における他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθe5としたとき、偏光変調素子22の幅He1およびHe3が、下式(25)および(26)の少なくとも一方の関係を満足していると、小型化、軽量化および低コスト化という効果がより確実に得られる。さらなる小型化、軽量化および低コスト化をはかる観点からは、He1およびHe3が、式(25)および(26)の両方の関係を満足していることが好ましい。
He1<Ie1+2・GM1・tanθe3 式(25)
He3<Ie2+GM1・(tanθe4+tanθe5) 式(26)
【0173】
同様に、複屈折素子24の幅He2、He4は、上記式(23)および(24)を満足する範囲でできるだけ小さいことが好ましい。ただし、生産性の観点から、光学シフト素子20に含まれる複数の複屈折素子24の幅を式(23)および(24)を満足する範囲で同じとしてもよい。
【0174】
また、第2方向における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して第2方向における一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθe4、第2方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して第2方向における他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθe5としたとき、複屈折素子24の幅He2およびHe4が、下式(27)および(28)の少なくとも一方の関係を満足していると、小型化、軽量化および低コスト化という効果がより確実に得られる。さらなる小型化、軽量化および低コスト化をはかる観点からは、He2およびHe4が、式(27)および(28)の両方の関係を満足していることが好ましい。
He2<Ie1+2・GM2・tanθe3 式(27)
He4<Ie2+GM2・(tanθe4+tanθe5) 式(28)
【0175】
なお、本実施形態の表示装置500や、実施形態4の表示装置400においても、表示パネル10が線走査駆動される場合には、光学シフト素子20に含まれる偏光変調素子22が複数の変調領域を走査方向に沿って有していることによって、表示タイミングとシフトタイミングとのずれを低減することができる。
【0176】
また、M組目の偏光変調素子22が表示パネル10の走査方向に沿ってL個(Lは2以上の整数)の変調領域を有しているとし、もっとも端側に位置する2つの領域の走査方向に沿った幅をaおよびb、走査方向に沿った表示面の幅をIとしたとき、図18や図19を参照しながら説明したのと同様の理由から、aおよびbが、下式(29)および(30)を満足していることによって、2重像の発生やタイミングのずれの増大を抑制することができる。
a>I/L 式(29)
b>I/L 式(30)
【0177】
さらに、走査方向における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して表示面の一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθf1、走査方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して表示面の他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθf2、投影レンズ32の画角をθf3、θf1およびθf3のうちの小さい方の角をθf4、θf2およびθf3のうちの小さい方の角をθf5、表示面からM組目の偏光変調素子22の光出射側の端部までの空気換算距離をGfとしたとき、aおよびbが、下式(31)および(32)を満足することが好ましい。
a≧I/L+Gf・tanθf4 式(31)
b≧I/L+Gf・tanθf5 式(32)
【0178】
以下、本実施形態の表示装置500における光学シフト素子20のサイズの具体例を示す。なお、本発明が以下に示した数値に限定されないのはいうまでもない。
【0179】
図22に示すように、表示パネル10の表示面から1組目(表示パネル10側)の液晶素子22までの距離をt1、1組目の液晶素子22および複屈折素子24の厚さをt2およびt3、2組目の液晶素子22および複屈折素子24の厚さをt4およびt5とする。なお、ここでは、表示パネル10の表示面と光学シフト素子20の光入射面(1組目の液晶素子22の光入射面)との間に空気が介在しているものとして計算しているが、これらの間に波長板、偏光板、ガラス板などが介在する場合には、それらの材料の屈折率から空気換算距離を計算すればよい。
【0180】
複屈折素子24として、光学軸の傾斜角θ0=45°、常光屈折率=1.544、異常光屈折率=1.553の水晶板を用いた場合、式(E)より、複屈折素子24の内部における光の分離角度θ1は、以下の数値となる。
θ1=0.337°
【0181】
また、複屈折素子24によるシフト量をΔdとすると、複屈折素子24の厚さt3、t5は、以下の式で表される。
t3=t5=Δd/tanθ1
【0182】
従って、画素ピッチを21μm、複屈折素子24に必要とされるシフト量Δdを21μmとすると、複屈折素子24の厚さt3、t5は、以下の数値となる。
【0183】
表示面から1組目の液晶素子22までの距離t1を6mm、液晶素子22の厚さt2、t4を1.4mm、空気の屈折率n0を1.0、水晶板の屈折率nを1.54、液晶素子22を構成するガラス基板の屈折率nLを1.52とすると、表示面から1組目の偏光変調素子22の光出射側の端部までの空気換算距離G11、表示面から1組目の複屈折素子24の光出射側の端部までの空気換算距離G12、表示面から2組目の偏光変調素子22の光出射側の端部までの空気換算距離G21、表示面から2組目の複屈折素子24の光出射側の端部までの空気換算距離G22は、以下の数値となる。
【0184】
従って、第1方向(光制御手段の色分離平面に直交する方向)における表示面の一端部および他端部から出射する光の広がり角θe1およびθe2がいずれも15°、投影レンズ30の画角θe3が18.43°、第1方向に沿った表示面の幅Ie1が15.12mm、第2方向に沿った表示面の幅Ie2が26.88mmであると、1組目の液晶素子22の光出射側端部の、第1方向に沿った幅He1.1および第2方向に沿った幅He3.1の必要最小限の値は、式(21)および式(22)より、以下の数値となる。
【0185】
また、1組目の複屈折素子24の光出射側端部の、第1方向に沿った幅He2.1および第2方向に沿った幅He4.1の必要最小限の値は、式(23)および式(24)より、以下の数値となる。
【0186】
さらに、2組目の液晶素子22の光出射側端部の、第1方向に沿った幅He1.2および第2方向に沿った幅He3.2の必要最小限の値は、式(21)および式(22)より、以下の数値となる。
【0187】
また、2組目の複屈折素子24の光出射側端部の、第1方向に沿った幅He2.2および第2方向に沿った幅He4.2の必要最小限の値は、式(23)および式(24)より、以下の数値となる。
【0188】
また、1組目および2組目の液晶素子22がいずれも走査方向に沿って5つの変調領域を有しているとすると、1組目の液晶素子22の両端の変調領域の幅a1およびb1、2組目の液晶素子22の両端の変調領域の幅a2およびb2の必要最小限の値は、式(31)および(32)より、以下の数値となる。
【0189】
従って、1組目の液晶素子22をHe1.1≧18.83(mm)およびHe3.1≧31.49(mm)の関係を満足するように設計し、1組目の複屈折素子24をHe2.1≧20.07(mm)およびHe4.1≧33.04(mm)の関係を満足するように設計するとともに、2組目の液晶素子22をHe1.2≧20.56(mm)およびHe3.2≧33.65(mm)の関係を満足するように設計し、2組目の複屈折素子24をHe2.2≧21.81(mm)およびHe4.2≧35.20(mm)の関係を満足するように設計することによって、光の利用効率が低下するなどの表示への支障をきたすことなく、表示装置の小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。
【0190】
また、1組目の液晶素子22をa1≧4.88(mm)およびb1≧4.88(mm)の関係を満足するように設計するとともに、2組目の液晶素子22をa2≧5.75(mm)およびb2≧5.75(mm)の関係を満足するように設計することによって、2重像の発生やタイミングずれの増大を抑制でき、表示品位を向上することができる。
【0191】
なお、光学シフト素子20や偏光変調素子22あるいは複屈折素子24の幅は、表示装置の製造上のずれや誤差などを考慮して、2mm程度のマージンが確保されるように決定されてもよい。
【0192】
また、ここでは、液晶素子22としてTNモードの液晶素子を例示したが、勿論これに限定されず、強誘電性液晶を備えた液晶素子やOCBモードの液晶素子あるいはECBモードの液晶素子など、光の偏光方向を変調(回転)できるものであればよい。
【0193】
複屈折素子24の材料としては、例示した水晶に限定されず、ニオブ酸リチウム、方解石、雲母、ルチル(TiO2)、チリ硝石(NaNO3)など一軸性の結晶材料を広く用いることができる。
【0194】
また、ここでは、表示パネル10として透過型の液晶表示パネルを例示しているが、表示パネル10としては画像を表示できる素子を広く用いることができる。例えば、反射型の液晶表示パネルを用いることもできるし、有機EL表示素子やプラズマディスプレイパネル(PDP)などの自発光型の表示素子を用いることもできる。
【0195】
以上説明したように、本発明による表示装置において、光学シフト素子のサイズは、表示面の端部から出射する光の広がり角と、レンズの画角とに応じて決定される。したがって、本発明による表示装置は、まず、表示面を有する表示パネルとレンズとを用意し、次に、表示パネルの表示面の端部から出射する光の広がり角とレンズの画角とに応じて光学シフト素子のサイズを決定し、続いて、決定されたサイズを有する光学シフト素子を用意し、その後、これらの表示パネル、レンズおよび光学シフト素子を用いて表示装置を組み立てることによって得られる。光学シフト素子のサイズを決定する工程は、具体的には、光学シフト素子や光学シフト素子を構成する素子が上記の数式を満足するように実行される。
【0196】
【発明の効果】
本発明によると、明るく、高解像度の表示を行うことができ、小型化・軽量化および低コスト化に適した表示装置およびその製造方法が提供される。
【0197】
本発明は、光学シフト素子を備えた表示装置に好適に用いられ、ヘッド・マウント・ディスプレイなどの直視型表示装置にも液晶プロジェクタなどの投影型表示装置にも好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施形態1の表示装置100を模式的に示す図である。
【図2】表示装置100が備える光学シフト素子20を模式的に示す図である。
【図3】(a)および(b)は、画素のシフトを模式的に示す図である。
【図4】表示パネルの表示面から拡散光が出射する様子を模式的に示す図である。
【図5】表示面の上端部および下端部から拡散光が出射する様子を模式的に示す図である。
【図6】表示面の右端部および左端部から拡散光が出射する様子を模式的に示す図である。
【図7】表示面の上端部から出射する光の広がり角θa1が投影レンズ32の画角θa5よりも大きい場合を模式的に示す図である。
【図8】表示面の上端部から出射する光の広がり角θa1が投影レンズ32の画角θa5よりも小さい場合を模式的に示す図である。
【図9】本発明による実施形態2の表示装置200を模式的に示す図である。
【図10】本発明による実施形態3の表示装置300を模式的に示す図である。
【図11】表示装置300が備える液晶表示パネルを模式的に示す断面図である。
【図12】(a)〜(d)は、原画像フレームから色別画像フレームを生成する方法を説明するための図である。
【図13】色別画像フレームのデータから3つのサブフレームデータを生成する方法を説明するための図である。
【図14】サブフレーム画像のシフト(画像シフト)の態様を示す図である。
【図15】投影レンズの入射瞳を通過する光の幅を模式的に示す図である。
【図16】偏光変調素子が単一の変調領域を有している場合の表示タイミングとシフトタイミングとのずれを説明するための図である。
【図17】偏光変調素子が複数の変調領域を有している場合にタイミングのずれが低減されることを説明するための図である。
【図18】各変調領域の走査方向に沿った幅が等しい場合に、表示パネルから偏光変調素子に光が入射する様子を模式的に示す図である。
【図19】もっとも端側に位置する2つの変調領域の幅を選択的に広くした場合に、表示パネルから偏光変調素子に光が入射する様子を模式的に示す図である。
【図20】本発明による実施形態4の表示装置400を模式的に示す図である。
【図21】本発明による実施形態5の表示装置500を模式的に示す図である。
【図22】表示パネルおよび光学シフト素子を模式的に示す断面図である。
【図23】従来の光学シフト素子を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 光源
4a、4b、4c ダイクロイックミラー
6 照明装置(バックライト)
7 マイクロレンズアレイ
8 色合成素子(ダイクロイックプリズム)
10、10R、10G、10B 表示パネル
20 光学シフト素子
21 光学シフト部
22 偏光変調素子(液晶素子)
24 複屈折素子
30 投影レンズ
32 接眼レンズ
100、200、300 表示装置
400、500 表示装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、表示装置およびその製造方法に関し、特に、画像をシフトさせる光学シフト素子を備えた表示装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、一対の基板と、これらの基板間に挟持された液晶層と、マトリクス状に配列された複数の画素電極とを備えており、画像信号に対応した駆動電圧が各画素電極に印加されて液晶層の光学特性が変化することによって、画像や文字などを表示する。
【0003】
各画素電極に独立に駆動電圧を印加する方式としては、「単純マトリクス方式」と、「アクティブマトリクス方式」とが挙げられる。
【0004】
アクティブマトリクス方式では、各画素電極に対応したスイッチング素子と、スイッチング素子に信号を供給する配線群とが基板上に設けられる。スイッチング素子としては、非線形の2端子素子や3端子素子が好適に用いられ、具体的には、MIM(金属−絶縁体−金属)素子やTFT(薄膜トランジスタ)素子などが好適に用いられる。
【0005】
スイッチング素子は、オフ状態(非導通状態)において高い素子抵抗を示すことが好ましいが、オフ状態のスイッチング素子に強い光が入射すると、その素子抵抗が低下してしまう。そのため、オン状態(導通状態)において画素電極に蓄積された電荷が放電されてしまうという問題が生じる。また、画素電極に正規の駆動電圧が印加されず、本来の表示動作が行われないので、黒表示状態においても光漏れが発生し、コントラスト比が低下してしまうという問題も生じる。
【0006】
透過型の液晶表示素子においては、このような問題を解決するために、スイッチング素子が形成されたアクティブマトリクス基板上、または、アクティブマトリクス基板に液晶層を介して対向する対向基板上に、ブラックマトリクスと呼ばれる遮光層が配置される。しかしながら、一般に遮光性の材料を用いて形成されるスイッチング素子および配線に加えてブラックマトリクスが存在することにより、画素内で光の透過する領域が占める割合、すなわち開口率が低下してしまう。
【0007】
このような開口率の低下は、HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)や液晶プロジェクタに使用されるような小型で高精細の液晶表示素子において特に顕著である。スイッチング素子や配線は、電気的な特性や製造技術等の制約から、ある程度以下の大きさで形成することは困難であり、小型・高精細の液晶表示素子においては、基板上でスイッチング素子や配線が占める割合が高くなってしまうからである。また、液晶表示素子は、高精細になるほどコストが高くなるという問題も有している。
【0008】
ブラックマトリクス上の非表示面を利用して高精細化をはかる目的で、特許文献1は、光学シフト素子を用いてブラックマトリクス上に画素を光学的にシフトさせる技術を開示している。この技術によれば、画素のシフトに同期させ、シフトした画素位置に対応した画像が表示されるので、見かけ上の画素数が増える。その結果、解像度の低い表示素子を用いても、高精細の表示素子を用いたのと同様の表示が可能になる。
【0009】
また、特許文献2は、赤、緑、青の各画素を光学的に順次シフトさせ、シフトした画素を重ね合わせて表示する方法を開示している。この方式によれば、1つの画素に対応した領域において赤、緑、青の各画素が時分割で表示されるので、見かけ上の解像度が3倍に向上する。
【0010】
上記特許文献2には、画素を光学的にシフトさせる手段として、液晶素子と複屈折素子とを組み合わせた光学シフト素子が開示されている。
【0011】
図23に従来の光学シフト素子800を模式的に示す。光学シフト素子800は、光の伝搬方向に沿って直列的に配列された液晶素子822と複屈折素子824とを備えている。
【0012】
図23では、液晶素子822に入射する光が紙面に垂直な方向に偏光している場合を示している。液晶素子822の液晶層に電圧を印加していない状態(オフ状態)では、液晶素子822に入射した光の偏光方向は、液晶層によって90°回転させられる。これに対し、液晶素子822の液晶層に適切なレベル電圧を印加している状態(オン状態)では、光の偏光方向は、光が液晶素子822を通過する過程で回転しない。
【0013】
複屈折素子824は、光の偏光方向によって異なる屈折率を有しており、偏光方向が紙面に平行な光の光軸をシフトさせる一方、偏光方向が紙面に垂直な光の光軸はシフトさせない。
【0014】
光学シフト素子800は、液晶素子822のオン状態とオフ状態とを切り替えることによって複屈折素子824に入射する光の偏光方向を制御し、それによって光軸のシフトを調整することができる。
【0015】
【特許文献1】
米国特許第4984091号明細書
【特許文献2】
米国特許第6061103号明細書
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特許文献1および2に開示されている方式ではいずれも光学シフト素子を用いるが、この光学シフト素子のサイズが大きいと、表示装置の大型化や重量化を招いてしまう。特に、HMDなどではこの問題は深刻となる。また、特許文献2に開示されているような複屈折素子を備えた光学シフト素子では、複屈折素子の材料として、水晶やニオブ酸リチウム等の高価な材料が一般的に用いられるので、光学シフト素子のサイズが大きくなると、製造コストが高くなってしまうという問題もある。
【0017】
上述したように、小型化や軽量化あるいは低コスト化といった観点からは、光学シフト素子のサイズはできるだけ小さいことが好ましいが、光学シフト素子のサイズをいたずらに小さくすると、画像のシフトを好適に行えなかったり、光の利用効率が低下したりしてしまい、表示装置の表示に支障をきたしてしまう。表示に支障をきたさない光学シフト素子のサイズ、すなわち、光学シフト素子の必要最小限なサイズについての詳細な検討はいまだなされていない。
【0018】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、明るく、高解像度の表示を行うことができ、小型化・軽量化および低コスト化に適した表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1の表示装置は、各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネルと、前記複数の画素領域で変調されて前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置であって、前記表示面の上端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の上側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθa1、前記表示面の下端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の下側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθa2、前記表示面の右端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の右側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθa3、前記表示面の左端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の左側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθa4、前記レンズの画角をθa5、前記表示面の上下方向に沿った幅をIa1、前記表示面の左右方向に沿った幅をIa2、前記表示面から前記光学シフト素子の光出射側の端部までの空気換算距離をG、前記表示面の上下方向に沿った、前記光学シフト素子の前記光出射側の端部の幅をHa1、前記表示面の左右方向に沿った、前記光学シフト素子の前記光出射側の端部の幅をHa2とし、前記θa1およびθa5のうちの小さい方の角をθa6、前記θa2およびθa5のうちの小さい方の角をθa7、前記θa3およびθa5のうちの小さい方の角をθa8、前記θa4およびθa5のうちの小さい方の角をθa9としたとき、前記Ha1およびHa2が、
Ha1≧Ia1+G・(tanθa6+tanθa7) 式(1)
Ha2≧Ia2+G・(tanθa8+tanθa9) 式(2)
の少なくとも一方の関係を満足し、そのことによって上記目的が達成される。
【0020】
前記Ha1およびHa2が、式(1)および式(2)の両方の関係を満足することが好ましい。
【0021】
前記θa1およびθa5のうちの大きい方の角をθa10、前記θa2およびθa5のうちの大きい方の角をθa11、前記θa3およびθa5のうちの大きい方の角をθa12、前記θa4およびθa5のうちの大きい方の角をθa13としたとき、前記Ha1およびHa2が、
Ha1<Ia1+G・(tanθa10+tanθa11) 式(3)
Ha2<Ia2+G・(tanθa12+tanθa13) 式(4)
の少なくとも一方の関係を満足することが好ましく、前記Ha1およびHa2が、式(3)および式(4)の両方の関係を満足することがさらに好ましい。
【0022】
本発明による第2の表示装置は、光源と、各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネルと、前記光源からの光を、波長域に応じて同一平面内に含まれる異なる方向に向け、波長域に応じて前記複数の画素領域のうちの対応する画素領域に集光させる光制御手段と、前記複数の画素領域で変調されて前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置であって、前記平面に直交する第1方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθb1、前記第1方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθb2、前記レンズの画角をθb3、前記第1方向に沿った前記表示面の幅をIb1、前記平面に平行な第2方向に沿った前記表示面の幅をIb2、前記表示面から前記光学シフト素子の光出射側の端部までの空気換算距離をG、前記第1方向に沿った、前記光学シフト素子の前記光出射側の端部の幅をHb1、前記第2方向に沿った、前記光学シフト素子の前記光出射側の端部の幅をHb2としたとき、前記Hb1およびHb2が、
Hb1≧Ib1+G・(tanθb1+tanθb2) 式(5)
Hb2≧Ib2+2・G・tanθb3 式(6)
の少なくとも一方の関係を満足し、そのことによって上記目的が達成される。
【0023】
前記Hb1およびHb2が、式(5)および式(6)の両方の関係を満足することが好ましい。
【0024】
前記第2方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθb4、前記第2方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθb5としたとき、前記Hb1およびHb2が、
Hb1<Ib1+2・G・tanθb3 式(7)
Hb2<Ib2+G・(tanθb4+tanθb5) 式(8)
の少なくとも一方の関係を満足することが好ましく、前記Hb1およびHb2が、式(7)および式(8)の両方の関係を満足することがさらに好ましい。
【0025】
ある好適な実施形態において、前記表示パネルは、線走査されることによって駆動される表示パネルであり、前記光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する少なくとも1つの偏光変調素子を有し、前記少なくとも1つの偏光変調素子は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得るL(Lは2以上の整数)個の領域を前記表示パネルの走査方向に沿って有しており、前記L個の領域のうち前記走査方向に沿ってもっとも端側に位置する2つの領域の前記走査方向に沿った幅をaおよびb、前記表示面の前記走査方向に沿った幅をIとしたとき、前記aおよびbが、
a>I/L 式(9)
b>I/L 式(10)
の両方の関係を満足している。
【0026】
ある好適な実施形態において、前記表示パネルは、線走査されることによって駆動される表示パネルであり、前記光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する少なくとも1つの偏光変調素子を有し、前記少なくとも1つの偏光変調素子は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得るL(Lは2以上の整数)個の領域を前記表示パネルの走査方向に沿って有しており、前記L個の領域のうち前記走査方向に沿ってもっとも端側に位置する2つの領域の前記走査方向に沿った幅をaおよびb、前記表示面の前記走査方向に沿った幅をI、前記走査方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθc1、前記走査方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθc2、前記レンズの画角をθc3、前記θc1およびθc3のうちの小さい方の角をθc4、前記θc2およびθc3のうちの小さい方の角をθc5、前記表示面から前記光学シフト素子の光出射側の端部までの空気換算距離をGcとしたとき、前記aおよびbが、
a≧I/L+Gc・tanθc4 式(11)
b≧I/L+Gc・tanθc5 式(12)
の両方の関係を満足している。
【0027】
本発明による第3の表示装置は、各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネルと、前記複数の画素領域で変調されて前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、
前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置であって、前記光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子と、光の偏光方向によって屈折率の異なる複屈折素子とをN組(Nは1以上の整数)有し、前記表示面の上端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の上側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθd1、前記表示面の下端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の下側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθd2、前記表示面の右端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の右側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθd3、前記表示面の左端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の左側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθd4、前記レンズの画角をθd5、前記表示面の上下方向に沿った幅をId1、前記表示面の左右方向に沿った幅をId2、前記表示面から前記光学シフト素子のM組目(Mは1以上N以下の整数)の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部までの空気換算距離をGM1およびGM2、前記表示面の上下方向に沿った、前記M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHd1およびHd2、前記表示面の左右方向に沿った、前記M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHd3およびHd4とし、前記θd1およびθd5のうちの小さい方の角をθd6、前記θd2およびθd5のうちの小さい方の角をθd7、前記θd3およびθd5のうちの小さい方の角をθd8、前記θd4およびθd5のうちの小さい方の角をθd9としたとき、前記Hd1およびHd3が、
Hd1≧Id1+GM1・(tanθd6+tanθd7) 式(13)
Hd3≧Id2+GM1・(tanθd8+tanθd9) 式(14)
の少なくとも一方の関係を満足し、前記Hd2およびHd4が、
Hd2≧Id1+GM2・(tanθd6+tanθd7) 式(15)
Hd4≧Id2+GM2・(tanθd8+tanθd9) 式(16)
の少なくとも一方の関係を満足し、そのことによって上記目的が達成される。
【0028】
前記Hd1およびHd3が、式(13)および式(14)の両方の関係を満足することが好ましい。
【0029】
前記Hd2およびHd4が、式(15)および式(16)の両方の関係を満足することが好ましい。
【0030】
前記θd1およびθd5のうちの大きい方の角をθd10、前記θd2およびθd5のうちの大きい方の角をθd11、前記θd3およびθd5のうちの大きい方の角をθd12、前記θd4およびθd5のうちの大きい方の角をθd13としたとき、前記Hd1およびHd3が、
Hd1<Id1+GM1・(tanθd10+tanθd11) 式(17)
Hd3<Id2+GM1・(tanθd12+tanθd13) 式(18)
の少なくとも一方の関係を満足することが好ましく、前記Hd1およびHd3が、式(17)および式(18)の両方の関係を満足することがさらに好ましい。
【0031】
前記θd1およびθd5のうちの大きい方の角をθd10、前記θd2およびθd5のうちの大きい方の角をθd11、前記θd3およびθd5のうちの大きい方の角をθd12、前記θd4およびθd5のうちの大きい方の角をθd13としたとき、前記Hd2およびHd4が、
Hd2<Id1+GM2・(tanθd10+tanθd11) 式(19)
Hd4<Id2+GM2・(tanθd12+tanθd13) 式(20)
の少なくとも一方の関係を満足することが好ましく、前記Hd2およびHd4が、式(19)および式(20)の両方の関係を満足することがさらに好ましい。
【0032】
本発明による第4の表示装置は、光源と、各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネルと、前記光源からの光を、波長域に応じて同一平面内に含まれる異なる方向に向け、波長域に応じて前記複数の画素領域のうちの対応する画素領域に集光させる光制御手段と、前記複数の画素領域で変調されて前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置であって、前記光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子と、光の偏光方向によって屈折率の異なる複屈折素子とをN組(Nは1以上の整数)有し、前記平面に直交する第1方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe1、前記第1方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe2、前記レンズの画角をθe3、前記第1方向に沿った前記表示面の幅をIe1、前記平面に平行な第2方向に沿った前記表示面の幅をIe2、前記表示面から前記光学シフト素子のM組目(Mは1以上N以下の整数)の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部までの空気換算距離をGM1およびGM2、前記第1方向に沿った、前記M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHe1およびHe2、前記第2方向に沿った、前記M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHe3およびHe4としたとき、前記He1およびHe3が、
He1≧Ie1+GM1・(tanθe1+tanθe2) 式(21)
He3≧Ie2+2・GM1・tanθe3 式(22)
の少なくとも一方の関係を満足し、前記He2およびHe4が、
He2≧Ie1+GM2・(tanθe1+tanθe2) 式(23)
He4≧Ie2+2・GM2・tanθe3 式(24)
の少なくとも一方の関係を満足し、そのことによって上記目的が達成される。
【0033】
前記He1およびHe3が、式(21)および式(22)の両方の関係を満足することが好ましい。
【0034】
前記He2およびHe4が、式(23)および式(24)の両方の関係を満足することが好ましい。
【0035】
前記第2方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe4、前記第2方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe5としたとき、前記He1およびHe3が、
He1<Ie1+2・GM1・tanθe3 式(25)
He3<Ie2+GM1・(tanθe4+tanθe5) 式(26)
の少なくとも一方の関係を満足することが好ましく、前記He1およびHe3が、式(25)および式(26)の両方の関係を満足することがさらに好ましい。
【0036】
また、前記第2方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe4、前記第2方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe5としたとき、前記He2およびHe4が、
He2<Ie1+2・GM2・tanθe3 式(27)
He4<Ie2+GM2・(tanθe4+tanθe5) 式(28)
の少なくとも一方の関係を満足することが好ましく、前記He2およびHe4が、式(27)および式(28)の両方の関係を満足することがさらに好ましい。
【0037】
ある好適な実施形態において、前記表示パネルは、線走査されることによって駆動される表示パネルであり、前記M組目の偏光変調素子は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得るL(Lは2以上の整数)個の領域を前記表示パネルの走査方向に沿って有しており、前記L個の領域のうち前記走査方向に沿ってもっとも端側に位置する2つの領域の前記走査方向に沿った幅をaおよびb、前記走査方向に沿った前記表示面の幅をIとしたとき、前記aおよびbが、
a>I/L 式(29)
b>I/L 式(30)
の両方の関係を満足している。
【0038】
ある好適な実施形態において、前記表示パネルは、線走査されることによって駆動される表示パネルであり、前記M組目の偏光変調素子は、前記M組目の偏光変調素子は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得るL(Lは2以上の整数)個の領域を前記表示パネルの走査方向に沿って有しており、前記L個の領域のうち前記走査方向に沿ってもっとも端側に位置する2つの領域の前記走査方向に沿った幅をaおよびb、前記走査方向に沿った前記表示面の幅をI、前記走査方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθf1、前記走査方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθf2、前記レンズの画角をθf3、前記θf1およびθf3のうちの小さい方の角をθf4、前記θf2およびθf3のうちの小さい方の角をθf5、前記表示面から前記M組目の偏光変調素子の光出射側の端部までの空気換算距離をGfとしたとき、前記aおよびbが、
a≧I/L+Gf・tanθf4 式(31)
b≧I/L+Gf・tanθf5 式(32)
の両方の関係を満足している。
【0039】
本発明による表示装置の製造方法は、表示面を有する表示パネルと、前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置の製造方法であって、表示面を有する表示パネルとレンズとを用意する工程と、前記表示パネルの前記表示面の端部から出射する光の広がり角と、前記レンズの画角とに応じて光学シフト素子のサイズを決定する工程と、前記サイズを決定する工程において決定されたサイズを有する光学シフト素子を用意する工程と、前記表示パネル、前記レンズおよび前記光学シフト素子を用いて表示装置を組み立てる工程と、を包含し、そのことによって上記目的が達成される。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0041】
(実施形態1)
本発明による表示装置の第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態における表示装置100を模式的に示している。表示装置100は、いわゆる3板式の投影型画像表示装置である。
【0042】
表示装置100は、図1に示すように、それぞれ赤(R)、緑(G)、青(B)の光を変調する表示パネル10R、10G、10Bと、表示パネル10R、10G、10Bで変調された光を合成する色合成素子(例えばダイクロイックプリズム)8と、色合成素子8から出射した光をスクリーンなどの被投影面上に投射する投影レンズ30とを備えている。
【0043】
表示パネル10R、10G、10Bは、各々が光を変調することができる複数の画素領域を有しており、典型的にはマトリクス状に配列されたこれら複数の画素領域によって表示面が規定される。表示パネル10R、10G、10Bは、本実施形態では、一対の基板とこれらの間に挟持された液晶層とを有する透過型の液晶表示パネルである。表示パネル10R、10G、10Bのそれぞれに対応した色光を入射させるには、例えば、光源から出射された白色光を、ダイクロイックミラーを含む光学系でR、G、Bの色光に分離すればよい。
【0044】
表示装置100は、さらに、表示パネル10R、10G、10Bから出射した光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子20を備えている。光学シフト素子20は、表示パネル10R、10G、10Bから出射した光が投影レンズ30に到達するまでの光路上に設けられている。本実施形態では、光学シフト素子20は、色合成素子8と投影レンズ30との間に設けられている。
【0045】
この光学シフト素子20は、ここでは、図2に示すように、入射した光の光軸をシフトさせ得る光学シフト部21を2つ備えている。それぞれの光学シフト部21は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子22と、光の偏光方向によって屈折率の異なる複屈折素子24とを備えている。
【0046】
本実施形態における偏光変調素子22は、液晶層および液晶層に電圧を印加する一対の電極を含む液晶セルから形成された液晶素子である。液晶素子22は、液晶層に印加された電圧に応じて光の偏光方向を変調する。液晶素子22は、例えば、TNモードの液晶素子であり、液晶層に電圧が印加されていない場合に光の偏光方向を90°回転させ、液晶層に適切なレベル電圧が印加されている場合に光の偏光方向を回転させないように設計されている。
【0047】
複屈折素子24は、入射光の偏光方向によって異なる屈折率を示す複屈折材料(例えば水晶)から形成されており、その光入射面に対して傾斜した光学軸を有している。このため、光の進行方向と光学軸とを含む平面(「主断面」と称される。)に対して平行な偏光面を有する光が複屈折素子24に入射すると、光は光学軸を含む面内で屈折し、光軸に対して垂直方向にシフトする。一方、主断面に対して偏光面が垂直な光が複屈折素子24に入射すると、光は屈折せず、光のシフトも生じない。
【0048】
このように、液晶素子22の液晶層に電圧を印加するか否かによって、複屈折素子24に入射する光の偏光方向を制御し、また、偏光方向の異なる光を複屈折素子24に入射させることにより、複屈折素子24から出射する光のシフトを調節することができる。
【0049】
本実施形態では、光学シフト素子20が備える2つの光学シフト部21は、色合成素子8からの光の光路上に直列的に配置されており、一方が光の光軸を垂直方向にシフトさせるように配置され、他方が光の光軸を水平方向にシフトさせるように配置されている。そのため、光学シフト素子20は、本来図3(a)に示す位置Aに表示されるべき画素を、図3(b)に示すように、A→B→C→D→A・・・と異なる4つの位置にシフトさせることができる。その結果、見かけ上の画素数が4倍となり、明るく、解像度の高い表示が可能になる。
【0050】
なお、ここでは、光学シフト素子20が2つの光学シフト部21を有する場合について説明したが、光学シフト素子20の構成はここで例示したものに限定されない。図3(b)において、A→B→A・・・と2つの異なる位置にシフトさせる場合には、光学シフト部21は1つでもよい。
【0051】
上述したように、光学シフト素子20は、光学的には、表示パネル10R、10G、10Bと投影レンズ30との間に配置される。本願発明者は、表示パネル10R、10G、10Bから出射される光の特性と、光学シフト素子20から出射された光を受けるレンズ30の光学的な特性とに着目して詳細な検討を重ねた結果、光学シフト素子20のサイズに関する知見を見出した。以下、G(緑)光を変調する表示パネル10Gを例として、この知見をより詳しく説明する。
【0052】
図4に示すように、表示パネル10Gの画素領域で変調されて表示面Pから出射する光(図中に破線で示されている)は、完全な平行光ではなく、ある程度の広がり角を持った拡散光として出射する。
【0053】
このように、表示面Pから出射される光は、表示面Pの法線方向に対して表示面の外側に傾いた方向に出射する光を含んでいる。そのため、表示光を有効に利用する観点から、光学シフト素子20は、このような光をもシフトできるように設計されることが好ましく、表示面Pの端部から出射される拡散光をシフトできるように設計されることが好ましい。
【0054】
ここで、図4および図5に示すように、表示面Pの上端部から表示面Pの法線方向に対して表示面Pの上側に傾いた方向に出射する光と表示面Pの法線方向とがなす最大の角をθa1、表示面Pの下端部から表示面Pの法線方向に対して表示面Pの下側に傾いた方向に出射する光と前記表示面Pの法線方向とがなす最大の角をθa2、表示面Pの上下方向に沿った幅をIa1とする。
【0055】
さらに、表示面Pから光学シフト素子20の光出射側の端部までの距離G´の空気換算距離をGとすると、表示面Pの上下方向に沿った、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha1が、下式(A)の関係を満足していることによって、表示面Pの上端部および下端部から出射する拡散光を光学シフト素子20でシフトさせることができる。
Ha1≧Ia1+G・(tanθa1+tanθa2)・・・・・・(A)
【0056】
なお、空気換算距離(空気換算光路長とも呼ぶ。)は、光が通過する媒体の幾何学的な厚さtをその屈折率nで割った値(t/n)である。また、本願明細書において光学シフト素子20の端部の「幅」は、特にことわらない限り、光をシフトする機能を光学的に担う部分の幅(「有効幅」ともよぶ。)であり、必ずしも光学シフト素子20の実際の幅と一致しない。
【0057】
同様に、図4および図6に示すように、表示面Pの右端部から表示面Pの法線方向に対して表示面Pの右側に傾いた方向に出射する光と表示面Pの法線方向とがなす最大の角をθa3、表示面Pの左端部から表示面Pの法線方向に対して表示面Pの左側に傾いた方向に出射する光と表示面Pの法線方向とがなす最大の角をθa4、表示面Pの左右方向に沿った幅をIa2としたとき、表示面Pの左右方向に沿った、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha2が、下式(B)の関係を満足していると、表示面Pの右端部および左端部から出射する拡散光を光学シフト素子20でシフトさせることができる。
Ha2≧Ia2+G・(tanθa3+tanθa4)・・・・・・(B)
【0058】
なお、上述した角θa1、θa2、θa3およびθa4(以下では、これらの角を、表示面Pの端部から出射する光の「広がり角」ともよぶ。)は、スネルの法則に基づく光線追跡の結果によって決定することができる。また、本願明細書において、表示面Pの「上端部」、「下端部」、「右端部」、「左端部」および「上側」、「下側」、「右側」、「左側」という表現を用いるが、これらは便宜的な呼称にすぎない。表示面のいずれの端部を「上端部」と規定しても差し支えない。
【0059】
式(A)および式(B)を満足させるということは、言い換えれば、光学シフト素子20の幅Ha1、Ha2を、表示面Pの幅Ia1、Ia2よりも、表示面Pの端部から出射する拡散光をシフトさせるに足りうる分(G・(tanθa1+tanθa2)、G・(tanθa3+tanθa4))だけあるいはそれ以上に長くするということである。
【0060】
ところが、表示面Pの端部から出射する光の広がり角θa1、θa2、θa3およびθa4のみを考慮して、すなわち、式(A)および(B)に基づいて光学シフト素子20の設計を行うと、光学シフト素子20のサイズが必要以上に大きくなることがある。この理由は、光学シフト素子20から出射された光を受ける投影レンズ30が、所定の角度範囲以外からの入射光を投影することができないからである。つまり、たとえ、表示面Pの端部から出射される光をすべてシフトできるように光学シフト素子20が設計されていたとしても、必ずしも光学シフト素子20から出射された光のすべてが投影レンズ30によって投影されるわけではないからである。一般に、レンズが画像を写し込むことができる角度範囲は「画角」と称され、投影レンズ30が投影できる入射角の範囲も「画角」と称される。
【0061】
投影レンズ30の画角をθa5とするとき、光学シフト素子20から出射された光のすべてが投影レンズ30によって投影されるかどうかは、投影レンズ30の画角θa5と、表示面Pの端部から出射する光の広がり角θa1、θa2、θa3およびθa4との大小関係によって決まる。
【0062】
図7に示すように、表示面Pの上端部から出射する光の広がり角θa1が投影レンズ30の画角θa5よりも小さい(θa1<θa5)ときには、表示面Pの上端部から出射される光のすべてが、投影レンズ30に画角θa5の範囲内の角度で入射する。
【0063】
一方、図8に示すように、表示面Pの上端部から出射する光の広がり角θa1が投影レンズ30の画角θa5よりも大きい(θa1>θa5)ときには、表示面Pの上端部から出射される光のうち、図中にθU(=θa1−θa5)で示す角度範囲で出射した光は、投影レンズ30に画角θa5の範囲内にない角度で入射するので、投影されない。そのため、光学シフト素子20は、表示面Pの上端部から出射する光のすべてをシフトさせ得るように設計される必要はなく、表示面Pの上端部から出射する光のうち、投影レンズ30の画角θa5と同じ角度範囲内で出射する光のみをシフトさせ得るように設計されていればよい。
【0064】
このように、表示面Pの上端部から出射される拡散光については、その広がり角θa1と投影レンズ30の画角θa5とのうちの小さい方の角度に基づいて、光学シフト素子20の幅を設定すればよい。
【0065】
表示面Pの下端部、右端部、左端部から出射する光についても同様であり、それぞれの端部から出射される光の広がり角と投影レンズの画角θa5とのうち、小さい方の角度に基づいて光学シフト素子20の幅を設定すればよい。
【0066】
従って、θa1およびθa5のうちの小さい方の角をθa6、θa2およびθa5のうちの小さい方の角をθa7、θa3およびθa5のうちの小さい方の角をθa8、θa4およびθa5のうちの小さい方の角をθa9としたとき、光学シフト素子20の上下方向に沿った幅Ha1および左右方向に沿った幅Ha1に必要とされる最小値は、下式(C)および(D)で表される。
Ha1=Ia1+G・(tanθa6+tanθa7)・・・・・・(C)
Ha2=Ia2+G・(tanθa8+tanθa9)・・・・・・(D)
【0067】
本実施形態における表示装置100は、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha1、Ha2が、下式(1)および(2)の両方の関係を満足するように構成されている。
Ha1≧Ia1+G・(tanθa6+tanθa7)・・・・・・(1)
Ha2≧Ia2+G・(tanθa8+tanθa9)・・・・・・(2)
【0068】
従って、表示光の利用効率が低下するなどの表示への支障をきたすことなく、小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。なお、式(1)および(2)の一方の関係のみを満足することによっても上述した効果を得ることはできるが、表示への悪影響をより確実に防止する観点からは、式(1)および式(2)の両方の関係を満足していることが好ましい。
【0069】
小型化、軽量化および低コスト化の観点からは、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha1およびHa2は、上記式(1)および(2)を満足する範囲でできるだけ小さいことが好ましい。
【0070】
また、光学シフト素子20の幅は、表示面Pの端部から出射する光の広がり角と投影レンズの画角θa5とのうち、大きい方の角度に基づいて設定した幅よりも小さいことが好ましい。具体的には、θa1およびθa5のうちの大きい方の角をθa10、θa2およびθa5のうちの大きい方の角をθa11、θa3およびθa5のうちの大きい方の角をθa12、θa4およびθa5のうちの大きい方の角をθa13としたとき、光学シフト素子20の幅Ha1およびHa2が、下式(3)および(4)の少なくとも一方の関係を満足していると、単に表示面Pの端部から出射する光の広がり角のみを考慮して光学シフト素子20の幅を設定した場合よりも、小型化、軽量化および低コスト化という効果が確実に得られる。さらなる小型化、軽量化および低コスト化をはかる観点からは、Ha1およびHa2が、式(3)および(4)の両方の関係を満足していることが好ましい。
Ha1<Ia1+G・(tanθa10+tanθa11) 式(3)
Ha2<Ia2+G・(tanθa12+tanθa13) 式(4)
【0071】
なお、光学シフト素子20の幅を決定する際には、光学シフト素子20を構成する素子の生産性などをさらに考慮してもよい。例えば、本実施形態のように、光学シフト素子20の光出射側の端部が複屈折素子24の端部によって規定される場合には、複屈折素子24をその材料(例えば水晶)の母材から切り出す際の生産性などを考慮してもよい。
【0072】
以下、本実施形態の表示装置100における光学シフト素子20のサイズの具体例を示す。なお、本発明が以下に示した数値に限定されないのはいうまでもない。
【0073】
光学シフト素子20が備える複屈折素子24の内部における光の分離角度をθ1とすると、分離角度θ1は、以下の式(E)で表される。
【0074】
【数1】
【0075】
ここで、θ0は複屈折素子24の光学軸の傾斜角、noは複屈折素子24の常光屈折率、neは複屈折素子24の異常光屈折率である。
【0076】
複屈折素子24として、光学軸の傾斜角θ0=45°、常光屈折率=1.544、異常光屈折率=1.553の水晶板を用いた場合、式(E)より、内部分離角度θ1は、以下の数値となる。
θ1=0.337°
【0077】
また、複屈折素子24によるシフト量をΔdとすると、複屈折素子24の厚さtBは、以下の式で表される。
tB=Δd/tanθ1
【0078】
従って、画素ピッチを21μm、複屈折素子24に必要とされるシフト量Δdを10.5μmとすると、複屈折素子24の厚さtBは、以下の数値となる。
【0079】
本実施形態では、複屈折素子24を2つ用いるので、2つの複屈折素子24の総厚さTBは、以下の数値となる。
【0080】
光学シフト素子20が備える2つの液晶素子22の総厚さTLを2.8mmとすると、光学シフト素子20の厚さ(入射光の伝搬方向に沿った厚さ)Tは、以下の数値となる。
【0081】
水晶板の屈折率nを1.54、液晶素子22を構成するガラス基板の屈折率nLを1.52とすると、光学シフト素子20の空気換算厚さT´は、以下の数値となる。
【0082】
表示パネル10R、10G、10Bの表示面Pから光学シフト素子20の光入射側の端部までの空気換算距離Fを40mmとすると、表示面Pから光学シフト素子20の光出射側の端部までの空気換算距離Gは、以下の数値となる。
【0083】
表示面Pの上端部、下端部、右端部および左端部から出射する拡散光の広がり角θa1、θa2、θa3およびθa4がいずれも18°、投影レンズ30の画角θa5が16.39°である場合、θa1およびθa5のうちの小さい方の角θa6、θa2およびθa5のうちの小さい方の角θa7、θa3およびθa5のうちの小さい方の角θa8、θa4およびθa5のうちの小さい方の角θa9は、いずれもθa5である。そのため、表示面Pの上下方向に沿った幅Ia1が15.12mm、表示面Pの左右方向に沿った幅Ia2が26.88mmであると、光学シフト素子20の光出射側の端部の、表示面Pの上下方向に沿った幅Ha1および左右方向に沿った幅Ha2の必要最小限の値は、以下の数値となる。
【0084】
従って、Ha1≧41.1(mm)およびHa2≧52.86(mm)の関係を満足するように光学シフト素子20の幅Ha1およびHa2を設定することによって、光の利用効率が低下するなどの表示への支障をきたすことなく、表示装置の小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。
【0085】
(実施形態2)
本発明による表示装置の第2の実施形態を説明する。図9は、本実施形態における表示装置200を模式的に示している。
【0086】
表示装置200は、図9に示すように、表示パネル10と、表示パネル10の背面側に配置された照明装置6と、観察光学系としての接眼レンズ32とを備えている。
【0087】
表示パネル10は、各々が光を変調することができる複数の画素領域を有しており、照明装置(バックライト)6からの光を変調する。複数の画素領域は、典型的にはマトリクス状に配列され、表示面を規定する。表示パネル10は、本実施形態では、一対の基板とこれらの間に挟持された液晶層とを有する透過型の液晶表示パネルである。この表示パネル10は、駆動回路(不図示)から駆動信号や映像信号を受け取り、映像信号に応じた画像を表示する。表示パネル10が表示する「画像」は、2次元的な情報の配列を広く含むものであり、単なる映像だけでなく、文字(テキスト)情報などであってもよい。
【0088】
表示装置200は、さらに、表示パネル10から出射した光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子20を備えている。光学シフト素子20は、表示パネル10から出射した光の光路上に設けられており、表示パネル10と接眼レンズ32との間に設けられている。
【0089】
光学シフト素子20は、図2に示した光学シフト素子20と同様に、液晶素子22と複屈折素子24とを備えた光学シフト部21を2つ含んでいる。この光学シフト素子20によって、図3(b)に示したように、A→B→C→D→A・・・と異なる4つの位置に画素をシフトさせることができる。その結果、見かけ上の画素数が4倍となり、明るく、解像度の高い表示が可能になる。
【0090】
接眼レンズ32は、光学シフト素子20から出射された光を受ける。表示パネル10によって表示された画像は、観察光学系としてのこの接眼レンズ32によって光学的に拡大されて観察者に観察される。
【0091】
本実施形態の表示装置200においても、表示パネル10から出射される光はある程度の広がり角を有している。また、接眼レンズ32は、一定の角度範囲内で入射した光に対応した画像のみを拡大する。接眼レンズ32が画像を拡大できる入射角の範囲も「画角」と称される。
【0092】
本実施形態の表示装置200は、接眼レンズ32の画角を、投影レンズ30の画角と同様にθa5と表記したとき、実施形態1の表示装置100と同様に、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Ha1、Ha2が、式(1)および式(2)の両方の関係を満足するように構成されている。従って、表示に支障をきたすことなく、小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。
【0093】
以下、本実施形態の表示装置200における光学シフト素子20のサイズの具体例を示す。なお、本発明が以下に示した数値に限定されないのはいうまでもない。
【0094】
複屈折素子24として、光学軸の傾斜角θ0=45°、常光屈折率=1.544、異常光屈折率=1.553の水晶板を用いた場合、式(E)より、複屈折素子24の内部における光の分離角度θ1は、以下の数値となる。
θ1=0.337°
【0095】
また、複屈折素子24によるシフト量をΔdとすると、複屈折素子24の厚さtBは、以下の式で表される。
tB=Δd/tanθ1
【0096】
画素ピッチを21μm、複屈折素子24に必要とされるシフト量Δdを10.5μmとすると、複屈折素子24の厚さtBは、以下の数値となる。
【0097】
本実施形態では、複屈折素子24を2つ用いるので、2つの複屈折素子24の総厚さTBは、以下の数値となる。
【0098】
光学シフト素子20が備える2つの液晶素子22の総厚さTLを2.8mmとすると、光学シフト素子20の厚さ(入射光の伝搬方向に沿った厚さ)Tは、以下の数値となる。
【0099】
水晶板の屈折率nを1.54、液晶素子22を構成するガラス基板の屈折率nLを1.52とすると、光学シフト素子20の空気換算厚さT´は、以下の数値となる。
【0100】
表示パネル10の表示面から光学シフト素子20の光入射側の端部までの空気換算距離Fを6mmとすると、表示面から光学シフト素子20の光出射側の端部までの空気換算距離Gは、以下の数値となる。
【0101】
表示面の上端部、下端部、右端部および左端部から出射する拡散光の広がり角θa1、θa2、θa3およびθa4がいずれも15°、接眼レンズ32の画角θa5が18.43°である場合、θa1およびθa5のうちの小さい方の角θa6、θa2およびθa5のうちの小さい方の角θa7、θa3およびθa5のうちの小さい方の角θa8、θa4およびθa5のうちの小さい方の角θa9は、それぞれ、θa1、θa2、θa3、θa4である。そのため、表示面の上下方向に沿った幅Ia1が15.12mm、表示面の左右方向に沿った幅Ia2が26.88mmであると、光学シフト素子20の光出射側の端部の、表示面の上下方向に沿った幅Ha1および左右方向に沿った幅Ha2の必要最小限の値は、以下の数値となる。
【0102】
従って、Ha1≧20.56(mm)およびHa2≧32.32(mm)の関係を満足するように光学シフト素子20の幅Ha1およびHa2を設定することによって、光の利用効率が低下するなどの表示への支障をきたすことなく、表示装置の小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。
【0103】
(実施形態3)
本発明による表示装置の第3の実施形態を説明する。図10は、本実施形態における表示装置300を模式的に示している。表示装置300は、単板式の投影型画像表示装置である。
【0104】
表示装置300は、図10に示すように、光源1と、表示パネル10と、光源1からの光を、波長域に応じて同一平面内に含まれる異なる方向に向け、波長域に応じて表示パネル10の対応する画素領域に集光させる光制御手段と、表示パネル10で変調された光をスクリーンなどの被投影面上に投射する投影レンズ30とを備えている。
【0105】
表示装置300は、さらに、表示パネル10で変調された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子20を備えている。この光学シフト素子20は、表示パネル10と投影レンズ30との間に設けられており、投影レンズ30は、光学シフト素子20から出射された光を受けて被投影面上に画像を形成する。
【0106】
光源1は、赤(R)、緑(G)、青(B)に対応した3つの波長域の光を含む白色光を放射する。光源1としては、例えば、メタルハライドランプやハロゲンランプを用いることができる。
【0107】
光源1から出射された光は、ダイクロイックミラー4a、4bおよび4cによってR、GおよびB光に分離され、R、GおよびB光は、それぞれ異なる角度で表示パネル10に入射する。本実施形態では、図10に示したように、R光の主光線は表示パネル10の光入射面に対して垂直に入射し、GおよびB光の主光線は、R光の主光線に対して所定の角度θrgbをなして表示パネル10に入射する。
【0108】
表示パネル10は、各々が光を変調する複数の画素領域を有しており、典型的にはマトリクス状に配列されたこれら複数の画素領域によって表示面が規定される。表示パネル10は、表示パネル10用の駆動回路から駆動信号や映像信号を受け取り、映像信号に応じた画像を表示する。表示パネル10が表示する「画像」は、2次元的な情報の配列を広く含むものであり、単なる映像だけでなく、文字(テキスト)情報などであってもよい。
【0109】
本実施形態における表示パネル10は、一対の基板と、これら一対の基板間に挟持された液晶層とを備えた透過型の液晶表示パネルである。一対の基板のそれぞれには典型的には偏光板が所定の配置(例えばクロスニコル状態)で取り付けられる。また、光源側の基板には、図11に示すようにマイクロレンズアレイ7が取り付けられている。ダイクロイックミラー4a、4bおよび4cで反射されたR、GおよびB光は、マイクロレンズアレイ7にそれぞれ異なる角度で入射し、マイクロレンズアレイ7によって対応した画素領域に集められる。画素領域に集められた光は、画素領域で変調された後、波長域に応じて異なる角度で出射する。なお、本実施形態では、3原色の光を対応する画素領域に集めるために、ダイクロイックミラー4a、4bおよび4cとマイクロレンズアレイ7とを用いるが、他の光学的な手段(例えば、回折格子)を用いてもよい。
【0110】
光学シフト素子20は、本実施形態では、図2に示した光学シフト素子20と同様に、入射した光の光軸をシフトさせ得る光学シフト部21を2つ備えており、それぞれの光学シフト部21は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子22と、光の偏光方向によって屈折率の異なる複屈折素子24とを備えている。ただし、本実施形態では、それぞれの光学シフト部20は、光軸をシフトさせる方向が互いに同じになるように配置されているので、画素を同一直線上の異なる3つの位置にシフトさせることができる。
【0111】
本実施形態における偏光変調素子22は、液晶層と、液晶層を介して対向する一対の透明基板とを有する液晶素子である。液晶素子22は、透明基板の液晶層側に、液晶層に電圧を印加するための透明電極(透明導電層)を有している。
【0112】
光学シフト素子20の動作は、光学シフト素子20用の駆動回路(不図示)によって制御される。光学シフト素子20用の駆動回路は、光学シフト素子20が含む複数の液晶素子22に対して個別に複数のレベル電圧を印加するための電圧印加部を有しており、表示パネル10の画像表示に同期した駆動信号を光学シフト素子20に供給する。
【0113】
以下、本実施形態の表示装置300における、画像の表示方法を説明する。
【0114】
表示装置300では、光源1から出射する白色光をダイクロイックミラー4a、4bおよび4cを用いて、赤(R)、緑(G)、青(B)の波長領域にその成分を持つ光に分離する。分離されたR、G、B光は、マイクロレンズアレイ7によって表示パネルの異なる画素領域に異なった角度で入射される。時間の経過にかかわらず、同一の画素領域には同じ色の光が照射される。
【0115】
表示パネル10には、画像を構成する各フレーム画像のデータから生成された複数のサブフレーム画像のデータを時分割で表示させる。例えば、各フレーム画像は、3つのサブフレーム画像に分割され、3つのサブフレーム画像は、表示パネル10上において、1画素分ずつシフトして表示される。このとき、あるフレーム画像を構成する1つの画素に注目すると、この画素は、R、G、B光がそれぞれ照射されている表示パネル10上の画素領域に対応する。
【0116】
表示パネル10に異なった角度で入射したR、G、Bの光は互いに異なった角度で表示パネル10から出射する。出射するR、G、Bの光は、サブフレーム画像のデータを用いて表示パネル10により変調されるため、サブフレーム画像となる。
【0117】
これら複数のサブフレーム画像のうち、選択されたサブフレーム画像は、光学シフト素子20によって、被投影面上においてその位置がシフトされて表示される。
【0118】
ここで、あるフレーム画像から複数のサブフレーム画像を形成する方法を説明する。
【0119】
例えば、あるフレーム画像が図12(a)に示すような画像であるとする。このフレーム画像はカラー表示されるべきものであり、各画素の色は、上記フレーム画像を規定するデータに基づいて決定される。なお、インターレース駆動の場合は、あるフィールドの画像が本願明細書における「フレーム画像」と同様に取り扱われ得る。
【0120】
まず、図12(a)に示すカラー表示用のフレームデータから各画素についてR、G、およびB光用のデータを分離し、図12(b)、(c)、および(d)に示すように、R画像用フレーム、G画像用フレーム、およびB画像用フレームの各データを生成する。これらのデータは図13の左側に示すように、R、G、およびB用フレームメモリにそれぞれ格納される。
【0121】
図13の右側部分には、表示サブフレーム1〜3が示されている。本実施形態によれば、あるフレームの最初の3分の1の期間(第1サブフレーム期間)において、被投影面上には表示サブフレーム1の画像が被投影面上に表示される。そして、次の3分の1の期間(第2サブフレーム期間)には、表示サブフレーム2の画像が表示され、最後の3分の1の期間(第3サブフレーム期間)には、表示サブフレーム3の画像が表示される。本実施形態では、これら3つのサブフレーム画像が図14に示すようにシフトし、時間的にずれながら合成される結果、人間の目には図12(a)に示すような原画像が認識されることになる。
【0122】
次に、表示サブフレーム1を例にとり、サブフレーム画像のデータ構成を詳細に説明する。まず、表示サブフレーム1の第1行画素領域用データは、図13に示すように、R用フレームメモリに記憶されている第1行目画素(R1)に関するデータから形成される。表示サブフレーム1の第2行画素領域用データは、G用フレームメモリに記憶されている第2行目画素(G2)に関するデータから形成される。表示サブフレーム1の第3行画素領域用データは、B用フレームメモリに記憶されている第3行目画素(B3)に関するデータから形成される。表示サブフレーム1の第4行画素領域用データは、R用フレームメモリに記憶されている第4行目画素(R4)に関するデータから形成される。以下、同様の手順で表示サブフレーム1のデータが構成される。
【0123】
表示サブフレーム2および3のデータも、表示サブフレーム1の場合と同様にして構成される。例えば表示サブフレーム2の場合、第0行画素領域用データは、B用フレームメモリに記憶されている第1行目画素(B1)に関するデータから形成され、表示サブフレーム2の第1行画素領域用データはR用フレームメモリに記憶されている第2行目画素(R2)に関するデータから形成される。表示サブフレーム2の第2行画素領域用データはG用フレームメモリに記憶されている第3行目画素(G3)に関するデータから形成され、表示サブフレーム2の第3行画素領域用データはB用フレームメモリに記憶されている第4行目画素(B4)に関するデータから形成される。
【0124】
このようにしてR、G、およびB用フレームメモリの各々から読み出したデータを予め設定された順序で組み合わせることによって、時分割表示されるサブフレームの各々のデータが生成される。この結果、サブフレーム用データの各々は、R、G、およびBの全ての色に関する情報を含んでいるが、R、G、およびBのそれぞれについて、空間的には全体の3分の1の領域に関する情報を有しているだけである。より詳細に述べれば、図13から明らかにように、表示サブフレーム1は、R画像フレームの第1、4、7、10…行の画素に関するデータと、G画像フレームの第2、5、8、11…行の画素に関するデータと、B画像フレームの第3、6、9、12…行の画素に関するデータとを含む。表示サブフレーム2は、B画像フレームの第1、4、7、10…行の画素に関するデータと、R画像フレームの第2、5、8、11…行の画素に関するデータと、G画像フレームの第3、6、9、12…行の画素に関するデータとを含む。また、表示サブフレーム3は、G画像フレームの第1、4、7、10…行の画素に関するデータと、B画像フレームの第2、5、8、11…行の画素に関するデータと、R画像フレームの第3、6、9、12…行の画素に関するデータとを含む。なお、図13からわかるように、表示パネルの画素領域の全行数は、1つのサブフレーム画像を構成する画素の全行数よりも2行だけ多い。この2行は光学シフトのマージンとして機能する。
【0125】
原画像フレームを再現するためには、R画像フレームの第1行、B画像フレームの第1行およびG画像フレームの第1行を合成しなければならない。図13に示すように、これらの情報は、表示サブフレーム1、2および3において、1行目、0行目および−1行目に割り当てられる。したがって、これらのサブフレーム画像を被投影面上において、表示サブフレーム1に対して、表示サブフレーム2は1画素分、シフトさせて表示し、表示サブフレーム1に対して、表示サブフレーム3は2画素分シフトさせて表示する。つまり、投影面上の各画素では、3つの表示サブフレームが順次シフトして表示される。この各サブフレーム間における画像のシフトは光学シフト素子20によって行われる。
【0126】
上述したように、本実施形態の表示装置300では、各フレーム期間に3つのサブフレーム画像を生成し、それらの画像を光学的にシフトさせながら合成するので、カラーフィルタを用いた単板式の投影型表示装置に比べて光利用効率が大幅に向上し、しかも、3倍の解像度を実現することができる。
【0127】
次に、本実施形態の表示装置300における、光学シフト素子20の好適なサイズを説明する。
【0128】
本実施形態の表示装置300においても、基本的には、表示パネル10の表示面の端部から出射する光の広がり角と投影レンズ30の画角とを考慮して光学シフト素子20の幅を決定すればよい。
【0129】
ただし、本実施形態では、光源1からの光は、光制御手段によって同一平面(以下では「色分離平面」とよぶ。)内に含まれる異なる方向に向けられて、波長域に応じて対応した画素領域に集められるので、表示パネル10から光が出射する角度は波長域ごとに異なる。そのため、表示パネル10の表示面から出射する光の広がり角は、等方的ではなく、波長域の異なる光を含む平面(色分離平面に平行)に平行な方向により大きな広がり角を有している。
【0130】
つまり、本実施形態では、表示面から出射される光は、光制御手段の色分離平面に直交する方向(便宜的に「第1方向」と称する。)に相対的に小さな広がり角を有し、色分離平面に平行な方向(便宜的に「第2方向」と称する。)に相対的に大きな広がり角を有している。
【0131】
表示面から出射する光が上述したように異方的な広がり角を有しているということを、投影レンズ30の入射瞳とこれに入射する光との関係に即して説明すると、図15に示すように、投影レンズ30の入射瞳を通過する光の幅が、第1方向に沿っては光それ自身の幅によって規定され、第2方向に沿っては投影レンズ30の入射瞳の径によって規定されるということである。
【0132】
従って、表示面から出射する光の第1方向に沿った広がり角と、投影レンズ30の画角とを比較すると、典型的には、第1方向に沿った広がり角の方が小さい。また、表示面から出射する光の第2方向に沿った広がり角と、投影レンズ30との画角とを比較すると、典型的には投影レンズ30の画角の方が小さい。
【0133】
そのため、上記の第1方向における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して表示面の一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθb1、第1方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して表示面の他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθb2、表示面の前記第1方向に沿った幅をIb1、表示面から光学シフト素子20の光出射側の端部までの空気換算距離をGとすると、第1方向に沿った、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅をHb1が、下式(5)を満足していることが好ましい。
Hb1≧Ib1+G・(tanθb1+tanθb2) 式(5)
【0134】
また、レンズの画角をθb3、表示面の第2方向に沿った幅をIb2とすると、第2方向に沿った、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Hb2が、下式(6)の関係を満足していることが好ましい。
Hb2≧Ib2+2・G・tanθb3 式(6)
【0135】
本実施形態における表示装置300は、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Hb1、Hb2が、式(5)および(6)の両方の関係を満足するように構成されている。
【0136】
従って、表示に支障をきたすことなく、小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。なお、式(5)および(6)の一方の関係のみを満足することによっても上述した効果を得ることはできるが、表示への悪影響をより確実に防止する観点からは、式(5)および式(6)の両方の関係を満足していることが好ましい。
【0137】
小型化、軽量化および低コスト化の観点からは、光学シフト素子20の光出射側の端部の幅Hb1およびHb2は、上記式(5)および(6)を満足する範囲でできるだけ小さいことが好ましい。
【0138】
また、第2方向における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して第2方向における一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθb4、第2方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して第2方向における他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθb5としたとき、光学シフト素子20の幅Hb1およびHb2が下式(7)および(8)の少なくとも一方の関係を満足していると、小型化、軽量化および低コスト化という効果がより確実に得られる。さらなる小型化、軽量化および低コスト化をはかる観点からは、Hb1およびHb2が、式(7)および(8)の両方の関係を満足していることが好ましい。
Hb1<Ib1+2・G・tanθb3 式(7)
Hb2<Ib2+G・(tanθb4+tanθb5) 式(8)
【0139】
次に、表示パネル10が線走査されることによって駆動される場合における好ましい構成を説明する。
【0140】
表示パネル10に表示されるサブフレーム画像を切り替える方式には、大きく分けて2種類ある。第1の方式は「線走査(ライン走査)方式」であり、この方式によれば、表示パネル10において行列状に配列された複数の画素領域を1行または数行ごとに駆動し、表示面の上部から下部に向けて垂直に新しいサブフレーム画像を表示していく。第2の方式は、「面(一括)書き込み方式」であり、この方式によれば、表示パネル10において行列状に配列された複数の画素領域の全てを一括的に駆動し、表示面全体に新しい画像を表示する。
【0141】
表示パネル10が線走査されることによって駆動される場合には、光学シフト素子20に含まれる偏光変調素子22は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得る複数の領域(以下では「変調領域」ともよぶ。)を、表示パネル10の走査方向に沿って有していることが好ましい。本実施形態における偏光変調素子22は液晶素子であるので、液晶素子が、液晶層に部分的に電圧を印加できる構成を有していることが好ましい。例えば、透明電極が所定の形状にパターニングされていることによって、このような電圧の印加が可能になる。
【0142】
偏光変調素子22が走査方向に沿って複数の変調領域を有していると、光学シフト素子20は、表示画像を一括的にシフトさせるだけでなく、部分的、段階的にシフトさせることができる。そのため、表示パネル10の走査に同期して画像のシフトを行うことができるので、表示パネル10による画像表示のタイミングと、光学シフト素子20による画像シフトのタイミングとのずれを低減することができる。その結果、表示品位を向上できる。
【0143】
図16に、偏光変調素子22が単一の変調領域を有している場合の画像表示のタイミングと画像シフトのタイミングとのずれを示す。図16では、1垂直走査期間がn秒であり、表示パネル10の表示面の半分に書き込みが行われた時点(走査開始からn/2秒後)で画像シフトを行う場合を例示している。偏光変調素子22が単一の変調領域しか有していない場合、光学シフト素子20は、表示画像を一括して同時にシフトさせる。そのため、図16に示すように、画像の上端および下端ではそれぞれn/2秒のタイミングずれが発生してしまう。
【0144】
これに対して、例えば、偏光変調素子22が走査方向に沿って2つの変調領域22Aおよび22Bを有している場合、図17に示すように、表示面の1/4まで書き込みが行われた時点(走査開始からn/4秒後)で表示面の上半分に対応した変調領域22Aを駆動し、表示面の3/4まで書き込みが行われた時点(走査開始から3n/4秒後)で表示面の下半分に対応した変調領域22Bを駆動することによって、タイミングのずれをn/4秒に低減することができる。
【0145】
なお、ここでは変調領域が2つの場合を例示したが、偏光変調素子22は3つ以上の変調領域を有してもよい。タイミングのずれをより低減する観点からは、偏光変調素子22がより多くの変調領域を有していることが好ましい。
【0146】
ここで、偏光変調素子22の変調領域の幅の好ましい設定を説明する。
【0147】
光学シフト素子20の好適な幅についての説明と同様に、偏光変調素子22の幅も、表示パネル10から出射される光をすべて変調できるように設定されていることが好ましい。つまり、表示パネル10の表示面の端部から出射する光の広がり角を考慮して設定されることが好ましい。従って、偏光変調素子22の幅は、表示パネル10の表示面の幅よりも広いことが好ましい。
【0148】
ただし、偏光変調素子22が有する変調領域の走査方向に沿った幅は、偏光変調素子22の走査方向に沿った幅を単純に等分したものではないことが好ましい。
【0149】
例えば、図18に示すように、偏光変調素子22が有する3つの変調領域22A、22B、22Cの幅を、偏光変調素子22の幅を3等分したものとすると、表示品位が低下することがある。表示パネル10の表示面において等幅の3つの領域P1、P2およびP3を想定すると、表示面の上側の領域P1から出射される光は、上側の変調領域22Aだけでなく、中央の変調領域22Bにも入射してしまう。また、表示面の下側の領域P3から出射される光も、下側の変調領域22Cだけでなく、中央の変調領域22Bにも入射してしまう。このように、本来入射すべき変調領域に隣接した領域にも光が入射するので、2重像やタイミングずれなどが発生して表示品位が損なわれることがある。
【0150】
これに対して、偏光変調素子22が表示パネル10の走査方向に沿ってL個(Lは2以上の整数)の変調領域を有している場合、もっとも端側に位置する2つの領域の走査方向に沿った幅をaおよびb、走査方向に沿った表示面の幅をIとしたとき、aおよびbが、下式(9)および(10)を満足していることによって、上述したような2重像の発生やタイミングのずれの増大を抑制することができる。
a>I/L 式(9)
b>I/L 式(10)
【0151】
つまり、図19に示すように、偏光変調素子22が有する複数の変調領域22A〜22Eのうち、両端に位置する2つの領域22A、22Eの幅a、bを選択的に広くすると、その他の変調領域22B、22C、22D、22Eの幅cを相対的に狭くし、表示面に設定される等幅の領域P1〜P5の幅I/Lに近くすることができるので、表示面の領域P1〜P5のそれぞれから出射される光を、同期して駆動される変調領域に正確に入射させることができる。そのため、2重像の発生やタイミングのずれの増大を抑制することができる。なお、2重像の発生やタイミングのずれの増大のいっそうの抑制をはかるためには、偏光変調素子22が有する複数の変調領域のうちのその他の領域(両端の2つの領域以外の領域)の幅cは、I/Lに近いことが好ましく、I/Lであることがより好ましい。
【0152】
上述したように、偏光変調素子22の両端の変調領域の幅a、bは、I/Lよりも広いことが好ましい。I/Lよりもどれだけ広くするかは、走査方向に沿った表示面の端部から出射する光の広がり角と、投影レンズ30の画角とを考慮して決定することが好ましい。すなわち、走査方向における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して表示面の一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθc1、走査方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して表示面の他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθc2、レンズの画角をθc3、θc1およびθc3のうちの小さい方の角をθc4、θc2およびθc3のうちの小さい方の角をθc5、表示面から光学シフト素子20の光出射側の端部までの空気換算距離をGcとしたとき、aおよびbが、下式(11)および(12)を満足することが好ましい。
a≧I/L+G・tanθc4 式(11)
b≧I/L+G・tanθc5 式(12)
【0153】
なお、実施形態1の表示装置100や実施形態2の表示装置200においても、表示パネル10が線走査され、偏光変調素子22が複数の変調領域を有している場合には、両端の変調領域の幅が、上記の式(9)および(10)、あるいは、式(11)および(12)を満足することが好ましい。
【0154】
(実施形態4)
上記実施形態1〜3では、光学シフト素子を1つの素子として捉えてそのサイズの最適化をはかっている。これに対して、光学シフト素子を構成する複数の素子のそれぞれのサイズを最適化し、そのことによって光学シフト素子のサイズの最適化をはかることもできる。
【0155】
図20を参照しながら、本発明による表示装置の第4の実施形態を説明する。図20は、本実施形態における表示装置400を模式的に示している。表示装置400は、実施形態2の表示装置200とほぼ同様の構成を有しているので、以下では、表示装置200と異なる点を中心に説明する。
【0156】
表示装置400が備える光学シフト素子20は、図2に示した光学シフト素子20と同様に、直列的に配列された2組の偏光変調素子22および複屈折素子24を有している。ただし、本実施形態では、2つの偏光変調素子22のそれぞれの幅および2つの複屈折素子24のそれぞれの幅が、表示面の端部から出射する光の広がり角と接眼レンズ32の画角とに基づいて決定されている。以下、このことを数式を用いて説明する。
【0157】
ここで、光学シフト素子20が、偏光変調素子22と複屈折素子24とをN組(Nは1以上の整数)有しているとし、表示面の上端部から表示面の法線方向に対して表示面の上側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθd1、表示面の下端部から表示面の法線方向に対して表示面の下側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθd2、表示面の右端部から表示面の法線方向に対して表示面の右側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθd3、表示面の左端部から表示面の法線方向に対して表示面の左側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθd4、接眼レンズ32の画角をθd5とする。
【0158】
また、表示面の上下方向に沿った幅をId1、表示面の左右方向に沿った幅をId2、表示面から光学シフト素子20のM組目(Mは1以上N以下の整数)の偏光変調素子22および複屈折素子24の光出射側の端部までの空気換算距離をGM1およびGM2、表示面の上下方向に沿った、M組目の偏光変調素子22および複屈折素子24の光出射側の端部の幅をHd1およびHd2、表示面の左右方向に沿った、M組目の偏光変調素子22および複屈折素子24の光出射側の端部の幅をHd3およびHd4とする。
【0159】
さらに、θd1およびθd5のうちの小さい方の角をθd6、θd2およびθd5のうちの小さい方の角をθd7、θd3およびθd5のうちの小さい方の角をθd8、θd4およびθd5のうちの小さい方の角をθd9としたとき、本実施形態の表示装置400では、上記Hd1およびHd3が、下式(13)および(14)の両方の関係を満足し、上記Hd2およびHd4が、下式(15)および(16)の両方の関係を満足している。
Hd1≧Id1+GM1・(tanθd6+tanθd7) 式(13)
Hd3≧Id2+GM1・(tanθd8+tanθd9) 式(14)
Hd2≧Id1+GM2・(tanθd6+tanθd7) 式(15)
Hd4≧Id2+GM2・(tanθd8+tanθd9) 式(16)
【0160】
従って、表示光の利用効率が低下するなどの表示への支障をきたすことなく、小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。なお、式(13)および(14)の一方、あるいは、式(15)および(16)の一方の関係のみを満足することによっても上述した効果を得ることはできるが、表示への悪影響をより確実に防止する観点からは、式(13)および(14)の両方の関係を満足し、式(15)および(16)の両方の関係を満足していることが好ましい。
【0161】
小型化、軽量化および低コスト化の観点からは、偏光変調素子22の幅Hd1、Hd3は、上記式(13)および(14)を満足する範囲でできるだけ小さいことが好ましい。ただし、生産性の観点から、光学シフト素子20に含まれる複数の偏光変調素子22の幅を式(13)および(14)を満足する範囲で同じとしてもよい。
【0162】
また、偏光変調素子22の幅は、表示面の端部から出射する光の広がり角と接眼レンズ32の画角とのうち、大きい方の角度に基づいて設定した幅よりも小さいことが好ましい。具体的には、θd1およびθd5のうちの大きい方の角をθd10、θd2およびθd5のうちの大きい方の角をθd11、θd3およびθd5のうちの大きい方の角をθd12、θd4およびθd5のうちの大きい方の角をθd13としたとき、偏光変調素子22の幅Hd1およびHd2が、下式(17)および(18)の少なくとも一方の関係を満足していると、単に表示面の端部から出射する光の広がり角のみを考慮して偏光変調素子22の幅を設定した場合よりも、小型化、軽量化および低コスト化という効果が顕著に得られる。さらなる小型化、軽量化および低コスト化をはかる観点からは、Hd1およびHd2が、式(17)および(18)の両方の関係を満足していることが好ましい。
Hd1<Id1+GM1・(tanθd10+tanθd11) 式(17)
Hd3<Id2+GM1・(tanθd12+tanθd13) 式(18)
【0163】
同様に、複屈折素子24の幅Hd2、Hd4は、上記式(15)および(16)を満足する範囲でできるだけ小さいことが好ましい。ただし、生産性の観点から、光学シフト素子20に含まれる複数の複屈折素子24の幅を式(15)および(16)を満足する範囲で同じとしてもよい。
【0164】
また、複屈折素子24の幅は、表示面の端部から出射する光の広がり角と接眼レンズ32の画角とのうち、大きい方の角度に基づいて設定した幅よりも小さいことが好ましい。具体的には、θd1およびθd5のうちの大きい方の角をθd10、θd2およびθd5のうちの大きい方の角をθd11、θd3およびθd5のうちの大きい方の角をθd12、θd4およびθd5のうちの大きい方の角をθd13としたとき、複屈折素子24の幅Hd2およびHd4が、下式(19)および(20)の少なくとも一方の関係を満足していると、単に表示面の端部から出射する光の広がり角のみを考慮して複屈折素子24の幅を設定した場合よりも、小型化、軽量化および低コスト化という効果が顕著に得られる。さらなる小型化、軽量化および低コスト化をはかる観点からは、Hd2およびHd4が、式(19)および(20)の両方の関係を満足していることが好ましい。
Hd2<Id1+GM2・(tanθd10+tanθd11) 式(19)
Hd4<Id2+GM2・(tanθd12+tanθd13) 式(20)
【0165】
(実施形態5)
本発明による表示装置の第5の実施形態を説明する。図21は、本実施形態における表示装置500を模式的に示している。表示装置500は、実施形態3の表示装置300とほぼ同様の構成を有しているので、以下では、表示装置300と異なる点を中心に説明する。
【0166】
表示装置500が備える光学シフト素子20は、図2に示した光学シフト素子20と同様に、直列的に配列された2組の偏光変調素子22および複屈折素子24を有している。ただし、本実施形態では、2つの偏光変調素子22のそれぞれの幅および2つの複屈折素子24のそれぞれの幅が、表示面の端部から出射する光の広がり角と接眼レンズ32の画角とに基づいて決定されている。以下、このことを数式を用いて説明する。
【0167】
ここで、光学シフト素子20が、偏光変調素子22と、複屈折素子24とをN組(Nは1以上の整数)有しているとし、光制御手段による色分離平面に直交する方向(第1方向)における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して表示面の一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθe1、第1方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して表示面の他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθe2、投影レンズ30の画角をθe3とする。
【0168】
また、第1方向に沿った表示面の幅をIe1、色分離平面に平行な第2方向に沿った表示面の幅をIe2、表示面から光学シフト素子20のM組目(Mは1以上N以下の整数)の偏光変調素子22および複屈折素子24の光出射側の端部までの空気換算距離をGM1およびGM2、第1方向に沿った、M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHe1およびHe2、第2方向に沿った、M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHe3およびHe4とする。
【0169】
本実施形態の表示装置500では、上記He1およびHe3が、下式(21)および(22)の両方の関係を満足し、上記He2およびHe4が、下式(23)および(24)の両方の関係を満足している。
He1≧Ie1+GM1・(tanθe1+tanθe2) 式(21)
He3≧Ie2+2・GM1・tanθe3 式(22)
He2≧Ie1+GM2・(tanθe1+tanθe2) 式(23)
He4≧Ie2+2・GM2・tanθe3 式(24)
【0170】
従って、表示光の利用効率が低下するなどの表示への支障をきたすことなく、小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。なお、式(21)および(22)の一方、あるいは、式(23)および(24)の一方の関係のみを満足することによっても上述した効果を得ることはできるが、表示への悪影響をより確実に防止する観点からは、式(21)および(22)の両方の関係を満足し、式(23)および(24)の両方の関係を満足していることが好ましい。
【0171】
小型化、軽量化および低コスト化の観点からは、偏光変調素子22の幅He1、He3は、上記式(21)および(22)を満足する範囲でできるだけ小さいことが好ましい。ただし、生産性の観点から、光学シフト素子20に含まれる複数の偏光変調素子22の幅を式(21)および(22)を満足する範囲で同じとしてもよい。
【0172】
また、第2方向における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して第2方向における一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθe4、第2方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して第2方向における他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθe5としたとき、偏光変調素子22の幅He1およびHe3が、下式(25)および(26)の少なくとも一方の関係を満足していると、小型化、軽量化および低コスト化という効果がより確実に得られる。さらなる小型化、軽量化および低コスト化をはかる観点からは、He1およびHe3が、式(25)および(26)の両方の関係を満足していることが好ましい。
He1<Ie1+2・GM1・tanθe3 式(25)
He3<Ie2+GM1・(tanθe4+tanθe5) 式(26)
【0173】
同様に、複屈折素子24の幅He2、He4は、上記式(23)および(24)を満足する範囲でできるだけ小さいことが好ましい。ただし、生産性の観点から、光学シフト素子20に含まれる複数の複屈折素子24の幅を式(23)および(24)を満足する範囲で同じとしてもよい。
【0174】
また、第2方向における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して第2方向における一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθe4、第2方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して第2方向における他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθe5としたとき、複屈折素子24の幅He2およびHe4が、下式(27)および(28)の少なくとも一方の関係を満足していると、小型化、軽量化および低コスト化という効果がより確実に得られる。さらなる小型化、軽量化および低コスト化をはかる観点からは、He2およびHe4が、式(27)および(28)の両方の関係を満足していることが好ましい。
He2<Ie1+2・GM2・tanθe3 式(27)
He4<Ie2+GM2・(tanθe4+tanθe5) 式(28)
【0175】
なお、本実施形態の表示装置500や、実施形態4の表示装置400においても、表示パネル10が線走査駆動される場合には、光学シフト素子20に含まれる偏光変調素子22が複数の変調領域を走査方向に沿って有していることによって、表示タイミングとシフトタイミングとのずれを低減することができる。
【0176】
また、M組目の偏光変調素子22が表示パネル10の走査方向に沿ってL個(Lは2以上の整数)の変調領域を有しているとし、もっとも端側に位置する2つの領域の走査方向に沿った幅をaおよびb、走査方向に沿った表示面の幅をIとしたとき、図18や図19を参照しながら説明したのと同様の理由から、aおよびbが、下式(29)および(30)を満足していることによって、2重像の発生やタイミングのずれの増大を抑制することができる。
a>I/L 式(29)
b>I/L 式(30)
【0177】
さらに、走査方向における表示面の一端部から表示面の法線方向に対して表示面の一端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθf1、走査方向における表示面の他端部から表示面の法線方向に対して表示面の他端部側に傾いた方向に出射する光と表示面の法線方向とがなす最大の角をθf2、投影レンズ32の画角をθf3、θf1およびθf3のうちの小さい方の角をθf4、θf2およびθf3のうちの小さい方の角をθf5、表示面からM組目の偏光変調素子22の光出射側の端部までの空気換算距離をGfとしたとき、aおよびbが、下式(31)および(32)を満足することが好ましい。
a≧I/L+Gf・tanθf4 式(31)
b≧I/L+Gf・tanθf5 式(32)
【0178】
以下、本実施形態の表示装置500における光学シフト素子20のサイズの具体例を示す。なお、本発明が以下に示した数値に限定されないのはいうまでもない。
【0179】
図22に示すように、表示パネル10の表示面から1組目(表示パネル10側)の液晶素子22までの距離をt1、1組目の液晶素子22および複屈折素子24の厚さをt2およびt3、2組目の液晶素子22および複屈折素子24の厚さをt4およびt5とする。なお、ここでは、表示パネル10の表示面と光学シフト素子20の光入射面(1組目の液晶素子22の光入射面)との間に空気が介在しているものとして計算しているが、これらの間に波長板、偏光板、ガラス板などが介在する場合には、それらの材料の屈折率から空気換算距離を計算すればよい。
【0180】
複屈折素子24として、光学軸の傾斜角θ0=45°、常光屈折率=1.544、異常光屈折率=1.553の水晶板を用いた場合、式(E)より、複屈折素子24の内部における光の分離角度θ1は、以下の数値となる。
θ1=0.337°
【0181】
また、複屈折素子24によるシフト量をΔdとすると、複屈折素子24の厚さt3、t5は、以下の式で表される。
t3=t5=Δd/tanθ1
【0182】
従って、画素ピッチを21μm、複屈折素子24に必要とされるシフト量Δdを21μmとすると、複屈折素子24の厚さt3、t5は、以下の数値となる。
【0183】
表示面から1組目の液晶素子22までの距離t1を6mm、液晶素子22の厚さt2、t4を1.4mm、空気の屈折率n0を1.0、水晶板の屈折率nを1.54、液晶素子22を構成するガラス基板の屈折率nLを1.52とすると、表示面から1組目の偏光変調素子22の光出射側の端部までの空気換算距離G11、表示面から1組目の複屈折素子24の光出射側の端部までの空気換算距離G12、表示面から2組目の偏光変調素子22の光出射側の端部までの空気換算距離G21、表示面から2組目の複屈折素子24の光出射側の端部までの空気換算距離G22は、以下の数値となる。
【0184】
従って、第1方向(光制御手段の色分離平面に直交する方向)における表示面の一端部および他端部から出射する光の広がり角θe1およびθe2がいずれも15°、投影レンズ30の画角θe3が18.43°、第1方向に沿った表示面の幅Ie1が15.12mm、第2方向に沿った表示面の幅Ie2が26.88mmであると、1組目の液晶素子22の光出射側端部の、第1方向に沿った幅He1.1および第2方向に沿った幅He3.1の必要最小限の値は、式(21)および式(22)より、以下の数値となる。
【0185】
また、1組目の複屈折素子24の光出射側端部の、第1方向に沿った幅He2.1および第2方向に沿った幅He4.1の必要最小限の値は、式(23)および式(24)より、以下の数値となる。
【0186】
さらに、2組目の液晶素子22の光出射側端部の、第1方向に沿った幅He1.2および第2方向に沿った幅He3.2の必要最小限の値は、式(21)および式(22)より、以下の数値となる。
【0187】
また、2組目の複屈折素子24の光出射側端部の、第1方向に沿った幅He2.2および第2方向に沿った幅He4.2の必要最小限の値は、式(23)および式(24)より、以下の数値となる。
【0188】
また、1組目および2組目の液晶素子22がいずれも走査方向に沿って5つの変調領域を有しているとすると、1組目の液晶素子22の両端の変調領域の幅a1およびb1、2組目の液晶素子22の両端の変調領域の幅a2およびb2の必要最小限の値は、式(31)および(32)より、以下の数値となる。
【0189】
従って、1組目の液晶素子22をHe1.1≧18.83(mm)およびHe3.1≧31.49(mm)の関係を満足するように設計し、1組目の複屈折素子24をHe2.1≧20.07(mm)およびHe4.1≧33.04(mm)の関係を満足するように設計するとともに、2組目の液晶素子22をHe1.2≧20.56(mm)およびHe3.2≧33.65(mm)の関係を満足するように設計し、2組目の複屈折素子24をHe2.2≧21.81(mm)およびHe4.2≧35.20(mm)の関係を満足するように設計することによって、光の利用効率が低下するなどの表示への支障をきたすことなく、表示装置の小型化、軽量化および低コスト化を実現することができる。
【0190】
また、1組目の液晶素子22をa1≧4.88(mm)およびb1≧4.88(mm)の関係を満足するように設計するとともに、2組目の液晶素子22をa2≧5.75(mm)およびb2≧5.75(mm)の関係を満足するように設計することによって、2重像の発生やタイミングずれの増大を抑制でき、表示品位を向上することができる。
【0191】
なお、光学シフト素子20や偏光変調素子22あるいは複屈折素子24の幅は、表示装置の製造上のずれや誤差などを考慮して、2mm程度のマージンが確保されるように決定されてもよい。
【0192】
また、ここでは、液晶素子22としてTNモードの液晶素子を例示したが、勿論これに限定されず、強誘電性液晶を備えた液晶素子やOCBモードの液晶素子あるいはECBモードの液晶素子など、光の偏光方向を変調(回転)できるものであればよい。
【0193】
複屈折素子24の材料としては、例示した水晶に限定されず、ニオブ酸リチウム、方解石、雲母、ルチル(TiO2)、チリ硝石(NaNO3)など一軸性の結晶材料を広く用いることができる。
【0194】
また、ここでは、表示パネル10として透過型の液晶表示パネルを例示しているが、表示パネル10としては画像を表示できる素子を広く用いることができる。例えば、反射型の液晶表示パネルを用いることもできるし、有機EL表示素子やプラズマディスプレイパネル(PDP)などの自発光型の表示素子を用いることもできる。
【0195】
以上説明したように、本発明による表示装置において、光学シフト素子のサイズは、表示面の端部から出射する光の広がり角と、レンズの画角とに応じて決定される。したがって、本発明による表示装置は、まず、表示面を有する表示パネルとレンズとを用意し、次に、表示パネルの表示面の端部から出射する光の広がり角とレンズの画角とに応じて光学シフト素子のサイズを決定し、続いて、決定されたサイズを有する光学シフト素子を用意し、その後、これらの表示パネル、レンズおよび光学シフト素子を用いて表示装置を組み立てることによって得られる。光学シフト素子のサイズを決定する工程は、具体的には、光学シフト素子や光学シフト素子を構成する素子が上記の数式を満足するように実行される。
【0196】
【発明の効果】
本発明によると、明るく、高解像度の表示を行うことができ、小型化・軽量化および低コスト化に適した表示装置およびその製造方法が提供される。
【0197】
本発明は、光学シフト素子を備えた表示装置に好適に用いられ、ヘッド・マウント・ディスプレイなどの直視型表示装置にも液晶プロジェクタなどの投影型表示装置にも好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施形態1の表示装置100を模式的に示す図である。
【図2】表示装置100が備える光学シフト素子20を模式的に示す図である。
【図3】(a)および(b)は、画素のシフトを模式的に示す図である。
【図4】表示パネルの表示面から拡散光が出射する様子を模式的に示す図である。
【図5】表示面の上端部および下端部から拡散光が出射する様子を模式的に示す図である。
【図6】表示面の右端部および左端部から拡散光が出射する様子を模式的に示す図である。
【図7】表示面の上端部から出射する光の広がり角θa1が投影レンズ32の画角θa5よりも大きい場合を模式的に示す図である。
【図8】表示面の上端部から出射する光の広がり角θa1が投影レンズ32の画角θa5よりも小さい場合を模式的に示す図である。
【図9】本発明による実施形態2の表示装置200を模式的に示す図である。
【図10】本発明による実施形態3の表示装置300を模式的に示す図である。
【図11】表示装置300が備える液晶表示パネルを模式的に示す断面図である。
【図12】(a)〜(d)は、原画像フレームから色別画像フレームを生成する方法を説明するための図である。
【図13】色別画像フレームのデータから3つのサブフレームデータを生成する方法を説明するための図である。
【図14】サブフレーム画像のシフト(画像シフト)の態様を示す図である。
【図15】投影レンズの入射瞳を通過する光の幅を模式的に示す図である。
【図16】偏光変調素子が単一の変調領域を有している場合の表示タイミングとシフトタイミングとのずれを説明するための図である。
【図17】偏光変調素子が複数の変調領域を有している場合にタイミングのずれが低減されることを説明するための図である。
【図18】各変調領域の走査方向に沿った幅が等しい場合に、表示パネルから偏光変調素子に光が入射する様子を模式的に示す図である。
【図19】もっとも端側に位置する2つの変調領域の幅を選択的に広くした場合に、表示パネルから偏光変調素子に光が入射する様子を模式的に示す図である。
【図20】本発明による実施形態4の表示装置400を模式的に示す図である。
【図21】本発明による実施形態5の表示装置500を模式的に示す図である。
【図22】表示パネルおよび光学シフト素子を模式的に示す断面図である。
【図23】従来の光学シフト素子を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 光源
4a、4b、4c ダイクロイックミラー
6 照明装置(バックライト)
7 マイクロレンズアレイ
8 色合成素子(ダイクロイックプリズム)
10、10R、10G、10B 表示パネル
20 光学シフト素子
21 光学シフト部
22 偏光変調素子(液晶素子)
24 複屈折素子
30 投影レンズ
32 接眼レンズ
100、200、300 表示装置
400、500 表示装置
Claims (27)
- 各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネルと、
前記複数の画素領域で変調されて前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、
前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置であって、
前記表示面の上端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の上側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθa1、前記表示面の下端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の下側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθa2、前記表示面の右端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の右側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθa3、前記表示面の左端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の左側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθa4、前記レンズの画角をθa5、前記表示面の上下方向に沿った幅をIa1、前記表示面の左右方向に沿った幅をIa2、前記表示面から前記光学シフト素子の光出射側の端部までの空気換算距離をG、前記表示面の上下方向に沿った、前記光学シフト素子の前記光出射側の端部の幅をHa1、前記表示面の左右方向に沿った、前記光学シフト素子の前記光出射側の端部の幅をHa2とし、
前記θa1およびθa5のうちの小さい方の角をθa6、前記θa2およびθa5のうちの小さい方の角をθa7、前記θa3およびθa5のうちの小さい方の角をθa8、前記θa4およびθa5のうちの小さい方の角をθa9としたとき、
前記Ha1およびHa2が、
Ha1≧Ia1+G・(tanθa6+tanθa7) 式(1)
Ha2≧Ia2+G・(tanθa8+tanθa9) 式(2)
の少なくとも一方の関係を満足する表示装置。 - 前記Ha1およびHa2が、式(1)および式(2)の両方の関係を満足する請求項1に記載の表示装置。
- 前記θa1およびθa5のうちの大きい方の角をθa10、前記θa2およびθa5のうちの大きい方の角をθa11、前記θa3およびθa5のうちの大きい方の角をθa12、前記θa4およびθa5のうちの大きい方の角をθa13としたとき、
前記Ha1およびHa2が、
Ha1<Ia1+G・(tanθa10+tanθa11) 式(3)
Ha2<Ia2+G・(tanθa12+tanθa13) 式(4)
の少なくとも一方の関係を満足する請求項1または2に記載の表示装置。 - 前記Ha1およびHa2が、式(3)および式(4)の両方の関係を満足する請求項3に記載の表示装置。
- 光源と、
各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネルと、
前記光源からの光を、波長域に応じて同一平面内に含まれる異なる方向に向け、波長域に応じて前記複数の画素領域のうちの対応する画素領域に集光させる光制御手段と、
前記複数の画素領域で変調されて前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、
前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置であって、
前記平面に直交する第1方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθb1、前記第1方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθb2、前記レンズの画角をθb3、前記第1方向に沿った前記表示面の幅をIb1、前記平面に平行な第2方向に沿った前記表示面の幅をIb2、前記表示面から前記光学シフト素子の光出射側の端部までの空気換算距離をG、前記第1方向に沿った、前記光学シフト素子の前記光出射側の端部の幅をHb1、前記第2方向に沿った、前記光学シフト素子の前記光出射側の端部の幅をHb2としたとき、
前記Hb1およびHb2が、
Hb1≧Ib1+G・(tanθb1+tanθb2) 式(5)
Hb2≧Ib2+2・G・tanθb3 式(6)
の少なくとも一方の関係を満足する表示装置。 - 前記Hb1およびHb2が、式(5)および式(6)の両方の関係を満足する請求項5に記載の表示装置。
- 前記第2方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθb4、前記第2方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθb5としたとき、
前記Hb1およびHb2が、
Hb1<Ib1+2・G・tanθb3 式(7)
Hb2<Ib2+G・(tanθb4+tanθb5) 式(8)
の少なくとも一方の関係を満足する請求項5または6に記載の表示装置。 - 前記Hb1およびHb2が、式(7)および式(8)の両方の関係を満足する請求項7に記載の表示装置。
- 前記表示パネルは、線走査されることによって駆動される表示パネルであり、
前記光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する少なくとも1つの偏光変調素子を有し、
前記少なくとも1つの偏光変調素子は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得るL(Lは2以上の整数)個の領域を前記表示パネルの走査方向に沿って有しており、
前記L個の領域のうち前記走査方向に沿ってもっとも端側に位置する2つの領域の前記走査方向に沿った幅をaおよびb、前記表示面の前記走査方向に沿った幅をIとしたとき、前記aおよびbが、
a>I/L 式(9)
b>I/L 式(10)
の両方の関係を満足する請求項1から8のいずれかに記載の表示装置。 - 前記表示パネルは、線走査されることによって駆動される表示パネルであり、
前記光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する少なくとも1つの偏光変調素子を有し、
前記少なくとも1つの偏光変調素子は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得るL(Lは2以上の整数)個の領域を前記表示パネルの走査方向に沿って有しており、
前記L個の領域のうち前記走査方向に沿ってもっとも端側に位置する2つの領域の前記走査方向に沿った幅をaおよびb、前記表示面の前記走査方向に沿った幅をI、前記走査方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθc1、前記走査方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθc2、前記レンズの画角をθc3、前記θc1およびθc3のうちの小さい方の角をθc4、前記θc2およびθc3のうちの小さい方の角をθc5、前記表示面から前記光学シフト素子の光出射側の端部までの空気換算距離をGcとしたとき、
前記aおよびbが、
a≧I/L+Gc・tanθc4 式(11)
b≧I/L+Gc・tanθc5 式(12)
の両方の関係を満足する請求項1から8のいずれかに記載の表示装置。 - 各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネルと、
前記複数の画素領域で変調されて前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、
前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置であって、
前記光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子と、光の偏光方向によって屈折率の異なる複屈折素子とをN組(Nは1以上の整数)有し、
前記表示面の上端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の上側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθd1、前記表示面の下端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の下側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθd2、前記表示面の右端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の右側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθd3、前記表示面の左端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の左側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθd4、前記レンズの画角をθd5、前記表示面の上下方向に沿った幅をId1、前記表示面の左右方向に沿った幅をId2、前記表示面から前記光学シフト素子のM組目(Mは1以上N以下の整数)の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部までの空気換算距離をGM1およびGM2、前記表示面の上下方向に沿った、前記M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHd1およびHd2、前記表示面の左右方向に沿った、前記M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHd3およびHd4とし、
前記θd1およびθd5のうちの小さい方の角をθd6、前記θd2およびθd5のうちの小さい方の角をθd7、前記θd3およびθd5のうちの小さい方の角をθd8、前記θd4およびθd5のうちの小さい方の角をθd9としたとき、
前記Hd1およびHd3が、
Hd1≧Id1+GM1・(tanθd6+tanθd7) 式(13)
Hd3≧Id2+GM1・(tanθd8+tanθd9) 式(14)
の少なくとも一方の関係を満足し、
前記Hd2およびHd4が、
Hd2≧Id1+GM2・(tanθd6+tanθd7) 式(15)
Hd4≧Id2+GM2・(tanθd8+tanθd9) 式(16)
の少なくとも一方の関係を満足する表示装置。 - 前記Hd1およびHd3が、式(13)および式(14)の両方の関係を満足する請求項11に記載の表示装置。
- 前記Hd2およびHd4が、式(15)および式(16)の両方の関係を満足する請求項11または12に記載の表示装置。
- 前記θd1およびθd5のうちの大きい方の角をθd10、前記θd2およびθd5のうちの大きい方の角をθd11、前記θd3およびθd5のうちの大きい方の角をθd12、前記θd4およびθd5のうちの大きい方の角をθd13としたとき、
前記Hd1およびHd3が、
Hd1<Id1+GM1・(tanθd10+tanθd11) 式(17)
Hd3<Id2+GM1・(tanθd12+tanθd13) 式(18)
の少なくとも一方の関係を満足する請求項11から13のいずれかに記載の表示装置。 - 前記Hd1およびHd3が、式(17)および式(18)の両方の関係を満足する請求項14に記載の表示装置。
- 前記θd1およびθd5のうちの大きい方の角をθd10、前記θd2およびθd5のうちの大きい方の角をθd11、前記θd3およびθd5のうちの大きい方の角をθd12、前記θd4およびθd5のうちの大きい方の角をθd13としたとき、前記Hd2およびHd4が、
Hd2<Id1+GM2・(tanθd10+tanθd11) 式(19)
Hd4<Id2+GM2・(tanθd12+tanθd13) 式(20)
の少なくとも一方の関係を満足する請求項11から15のいずれかに記載の表示装置。 - 前記Hd2およびHd4が、式(19)および式(20)の両方の関係を満足する請求項16に記載の表示装置。
- 光源と、
各々が光を変調し得る複数の画素領域によって規定される表示面を有する表示パネルと、
前記光源からの光を、波長域に応じて同一平面内に含まれる異なる方向に向け、波長域に応じて前記複数の画素領域のうちの対応する画素領域に集光させる光制御手段と、
前記複数の画素領域で変調されて前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、
前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置であって、
前記光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子と、光の偏光方向によって屈折率の異なる複屈折素子とをN組(Nは1以上の整数)有し、
前記平面に直交する第1方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe1、前記第1方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe2、前記レンズの画角をθe3、前記第1方向に沿った前記表示面の幅をIe1、前記平面に平行な第2方向に沿った前記表示面の幅をIe2、前記表示面から前記光学シフト素子のM組目(Mは1以上N以下の整数)の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部までの空気換算距離をGM1およびGM2、前記第1方向に沿った、前記M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHe1およびHe2、前記第2方向に沿った、前記M組目の偏光変調素子および複屈折素子の光出射側の端部の幅をHe3およびHe4としたとき、
前記He1およびHe3が、
He1≧Ie1+GM1・(tanθe1+tanθe2) 式(21)
He3≧Ie2+2・GM1・tanθe3 式(22)
の少なくとも一方の関係を満足し、
前記He2およびHe4が、
He2≧Ie1+GM2・(tanθe1+tanθe2) 式(23)
He4≧Ie2+2・GM2・tanθe3 式(24)
の少なくとも一方の関係を満足する表示装置。 - 前記He1およびHe3が、式(21)および式(22)の両方の関係を満足する請求項18に記載の表示装置。
- 前記He2およびHe4が、式(23)および式(24)の両方の関係を満足する請求項18または19に記載の表示装置。
- 前記第2方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe4、前記第2方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe5としたとき、
前記He1およびHe3が、
He1<Ie1+2・GM1・tanθe3 式(25)
He3<Ie2+GM1・(tanθe4+tanθe5) 式(26)
の少なくとも一方の関係を満足する請求項18から20のいずれかに記載の表示装置。 - 前記He1およびHe3が、式(25)および式(26)の両方の関係を満足する請求項21に記載の表示装置。
- 前記第2方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe4、前記第2方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記第2方向における前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθe5としたとき、
前記He2およびHe4が、
He2<Ie1+2・GM2・tanθe3 式(27)
He4<Ie2+GM2・(tanθe4+tanθe5) 式(28)
の少なくとも一方の関係を満足する請求項18から22のいずれかに記載の表示装置。 - 前記He2およびHe4が、式(27)および式(28)の両方の関係を満足する請求項23に記載の表示装置。
- 前記表示パネルは、線走査されることによって駆動される表示パネルであり、
前記M組目の偏光変調素子は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得るL(Lは2以上の整数)個の領域を前記表示パネルの走査方向に沿って有しており、
前記L個の領域のうち前記走査方向に沿ってもっとも端側に位置する2つの領域の前記走査方向に沿った幅をaおよびb、前記走査方向に沿った前記表示面の幅をIとしたとき、前記aおよびbが、
a>I/L 式(29)
b>I/L 式(30)
の両方の関係を満足する請求項18から24のいずれかに記載の表示装置。 - 前記表示パネルは、線走査されることによって駆動される表示パネルであり、
前記M組目の偏光変調素子は、前記M組目の偏光変調素子は、それぞれが独立に光の偏光方向を変調し得るL(Lは2以上の整数)個の領域を前記表示パネルの走査方向に沿って有しており、
前記L個の領域のうち前記走査方向に沿ってもっとも端側に位置する2つの領域の前記走査方向に沿った幅をaおよびb、前記走査方向に沿った前記表示面の幅をI、前記走査方向における前記表示面の一端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記一端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθf1、前記走査方向における前記表示面の他端部から前記表示面の法線方向に対して前記表示面の前記他端部側に傾いた方向に出射する光と前記表示面の法線方向とがなす最大の角をθf2、前記レンズの画角をθf3、前記θf1およびθf3のうちの小さい方の角をθf4、前記θf2およびθf3のうちの小さい方の角をθf5、前記表示面から前記M組目の偏光変調素子の光出射側の端部までの空気換算距離をGfとしたとき、
前記aおよびbが、
a≧I/L+Gf・tanθf4 式(31)
b≧I/L+Gf・tanθf5 式(32)
の両方の関係を満足する請求項18から24のいずれかに記載の表示装置。 - 表示面を有する表示パネルと、前記表示面から出射された光の光軸をシフトさせ得る光学シフト素子と、前記光学シフト素子から出射された光を受けるレンズとを備えた表示装置の製造方法であって、
表示面を有する表示パネルとレンズとを用意する工程と、
前記表示パネルの前記表示面の端部から出射する光の広がり角と前記レンズの画角とに応じて光学シフト素子のサイズを決定する工程と、
前記サイズを決定する工程において決定されたサイズを有する光学シフト素子を用意する工程と、
前記表示パネル、前記レンズおよび前記光学シフト素子を用いて表示装置を組み立てる工程と、
を包含する表示装置の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2003082896A JP2004294482A (ja) | 2003-03-25 | 2003-03-25 | 表示装置およびその製造方法 |
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JP2006153918A (ja) * | 2004-11-25 | 2006-06-15 | Ricoh Co Ltd | 画像表示装置 |
-
2003
- 2003-03-25 JP JP2003082896A patent/JP2004294482A/ja active Pending
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JP4672343B2 (ja) * | 2004-11-25 | 2011-04-20 | 株式会社リコー | 画像表示装置 |
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