JP2004272170A - 光学シフト素子およびそれを備えた画像表示装置ならびに投影型画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】画像表示装置に好適に用いられる光学シフト素子、および、それを備え、高品位の表示が可能な画像表示装置ならびに投影型画像表示装置を提供する。
【解決手段】入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子2と、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる複屈折素子3とを含む光学シフト部1を少なくとも1つ備えた光学シフト素子である。光学シフト部1は、複屈折素子3を通過する常光と異常光との換算距離の差を補償する補償素子を有する。
【選択図】 図1
【解決手段】入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子2と、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる複屈折素子3とを含む光学シフト部1を少なくとも1つ備えた光学シフト素子である。光学シフト部1は、複屈折素子3を通過する常光と異常光との換算距離の差を補償する補償素子を有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘッド・マウント・ディスプレイや投影型画像表示装置などにおいて画像の位置がシフトするよう光の光軸をシフトさせる光学シフト素子に関する。また、本発明はそのような光学シフト素子を用いた画像表示装置や投影型画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、一対の透明基板と、これらの基板間に挟まれた液晶層とを備えている。透明基板は、行及び列(マトリクス)状に規則的に配列された複数の画素電極を有しており、画像信号に対応した駆動電圧が画素電極のそれぞれに印加される。この印加電圧によって液晶層の光学特性(光の透過率や反射率)が画素毎に変化するため、画像や文字などを表示することができる。
【0003】
基板上の各画素電極に独立した駆動電圧を印加する方式には「単純マトリクス方式」と「アクティブマトリクス方式」とがある。
【0004】
アクティブマトリクス方式の場合、各画素電極に対応する薄膜トランジスタ(TFT)や金属−絶縁体−金属(MIM)素子等のスイッチング素子や、信号配線等が基板上に一緒に形成され、スイッチング素子や配線が形成された領域はブラックマトリクス(BM)と呼ばれる遮光層で遮光されている。画素のうち、光を通す領域を画素開口部と呼ぶが、ブラックマトリクスの存在は画素開口部の割合(開口率)を小さくしてしまう。
【0005】
画素を正常に駆動するためにはスイッチング素子や配線領域にある程度の占有面積を必要とするので、高精細画面を実現しようとして同じ画面サイズのまま画素数を増やすと、開口率が低下して画面が暗くなってしまうし、画素サイズをそのままで画面サイズを大きくするとコストが大幅に上昇することになる。
【0006】
そこで、ブラックマトリクス上の非表示領域を利用して高精細化をはかる目的で、表示画像を画素ピッチ程度だけ光学的に移動(シフト)させる技術が特許文献1に開示されている。この技術によれば、画素のシフトに同期させて移動した画素位置に対応する映像を表示する。その結果見かけ上の画素数が増えるので解像度の低い表示素子を用いても高精細の表示パネルを用いた場合と同様の表示が可能になる。また、高精細の表示パネルを製造する場合と比較して開口率の低下が抑制される。
【0007】
上記のような画像をシフトさせる技術は、投影レンズでスクリーンに表示画像を拡大投影する投影型画像表示装置や、観察光学系を用いて虚像の拡大像を観察するHMDにも適用することができる。
【0008】
液晶表示素子を用いた投影型画像表示装置における画像表示方式には、光の3原色のそれぞれに対応した3枚の液晶表示パネル(液晶表示素子)を用いる3板式と、1枚の液晶表示パネルを用いる単板式とがある。
【0009】
前者の3板式の投影型画像表示装置は、光源から発せられた白色光を赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の光束(色光)に分離し、それぞれの色光を各液晶表示パネルに向かわせる光学系と、各色光を変調するための3枚の液晶表示パネルとを備えており、変調された各色の光をスクリーン上で光学的に重畳することによってフルカラー表示を行うことができる。
【0010】
3板式の投影型画像表示装置では、光源からの光を有効に利用でき、また、表示画像の色純度が高いという利点も得られる。しかしながら、色光を各液晶表示パネルに向かわせるための光学系と、各パネルで変調された色光を合成するための光学系とが必要であり、また、液晶表示パネルを3枚用いるので、光学系が繁雑で部品点数が多くなってしまい、低コスト化及び小型化の点では、後述の単板式に比べて一般的に不利である。
【0011】
これに対して、後者の単板式の投影型画像表示装置では、使用する液晶表示パネルが1枚で足り、光学系の構成も3板式に比べて単純になるので、低コスト化および小型化に適している。単板式の投影型画像表示装置としては、モザイク状やストライプ状に配列された3原色のカラーフィルタが設けられた液晶表示パネルを用い、この液晶表示パネルで変調された光を投影光学系によって投影するものが知られており、例えば特許文献2などに開示されている。
【0012】
また、特許文献3に開示されている単板式の投影型画像表示装置では、扇形に配列されたダイクロイックミラーと、マイクロレンズアレイが貼り付けられた液晶パネルとを用いて、液晶パネルの各画素にRGBの光を分離・集光させるので、カラーフィルタを用いずにフルカラー表示を実現することができ、その結果、投影画像の明るさが向上する。
【0013】
ここで3板式と単板式とを画像の解像度の点から比較する。同じ解像度(画素数)の液晶表示パネルを用いる場合には、3板式と単板式とではその使用枚数の違いからスクリーン上に投影される画像の解像度に差が生じる。3板式では、各液晶表示パネルから出射されたRGB光をスクリーン上で混合してカラー表示を行なうため、各液晶表示パネルの画素数と同じ画素数のフルカラー画像をスクリーン上で表示できる。これに対して、単板式では液晶表示パネルの1画素はRGBのいずれか1色にしか対応していないため、スクリーン上では液晶表示パネルの画素数の1/3の画素数を持つフルカラー画像しか表示できない。
【0014】
勿論、液晶表示パネルの画素数を3倍にすれば、単板式でも3板式の場合と同様の解像度を実現することができるが、それに伴う問題点は既に述べた通りである。このような問題点を解決して単板式の投影型画像表示装置で解像度の高い表示を行うために、上述した画像をシフトさせる技術を用いることができる。
【0015】
特許文献4には、赤(R)、緑(G)、青(B)の各画素を光学シフト素子によって光学的に順次シフトさせ、シフトした画素を重ね合わせて表示する方式が開示されている。この方式では、1つの画素に対応する領域において、RGBの各画素が時分割で表示される。その結果、表示パネルの画素数を増やさずに、見かけ上の解像度を3倍に向上させることができる。
【0016】
図15に、特許文献4に開示されている方式を用いた投影型画像表示装置を模式的に示す。この投影型画像表示装置は、図15に示すように、カラーフィルタを備えた画像表示素子907と、画像表示素子907に表示された画像をスクリーン上に拡大投影する投影レンズ908と、画像表示素子907で変調された光の光軸の位置をシフトさせることによってスクリーン909上での画像の位置をシフトさせる光学シフト素子900とを備えている。
【0017】
光学シフト素子900は、光路上に直列的に配置された2つの光学シフト部901、902を有している。光学シフト部901、902は、光の伝搬方向に沿って直列的に配置された液晶セル903、905と複屈折素子904、906とを備えている。
【0018】
液晶セル903、905は、液晶層を含み、入射する直線偏光の電場ベクトルの振動面(以下「偏光面」と称する。)を制御する。液晶セル903、905の液晶層は、TNモードの液晶層である。液晶セル903、905の液晶層に電圧が印加されていないとき(オフ状態)には、液晶層の液晶分子は液晶層の厚さ方向に沿って90°ねじれており、入射光の偏光面は液晶分子の旋光性によって90°回転する。一方、液晶セル903、905の液晶層に適切なレベル電圧が印加されているとき(オン状態)には、液晶分子の向きは電界の向きに整合しているので、入射光の偏光面は光が液晶層を通過する過程で回転しない。液晶セル903、905は、画像表示素子907のような画素構造は有しておらず、その構造が単純であるので、比較的容易に作製できる。
【0019】
複屈折素子904、906は、一軸性の結晶材料(例えば水晶)から形成された平行平板型の素子であり、その光学軸904´、906´の方向は、図15に示したように、紙面と平行で光の入射する面の法線に対して45°傾いている。従って、偏光面が紙面に垂直な入射光は複屈折素子904、906にとっては常光であり、通常のスネルの法則に従って複屈折素子904、906を通過する。そのため、偏光面が紙面に垂直な光が複屈折素子904、906の入射面に垂直に入射すると、まっすぐに通過することになる。一方、偏光面が紙面に平行な光は複屈折素子904、906にとっては異常光であり、入射光の光軸と複屈折素子904、906の光学軸904´、906´とを含む面内で屈折してその進行方向が変わる。異常光が複屈折素子904、906から出射すると、その進行方向はまた常光と同じに戻るが、異常光の光軸の位置は、複屈折素子904、906を通過する間にその厚さに比例した分のシフトを受ける。
【0020】
光が先に通過する複屈折素子904によるシフト量と後に通過する複屈折素子906によるシフト量は、共に画像表示素子907の1画素ピッチ相当であり、これらの複屈折素子904、906によるシフトの向きは同じ方向(紙面上方向)である。従って、光学シフト素子900は、光の光軸の位置を、シフト量がゼロの位置、1画素分シフトした位置、2画素分シフトした位置の3つの位置に設定することができる。
【0021】
なお、「光学軸(optic axis)」とは、水晶や方解石等の1軸性の複屈折結晶において、複屈折の生じない光線の進行方向の軸である。光学軸は、光学系の光軸(optical axis)とは異なりただ1本だけ存在する訳ではなく、例示された一本の光学軸に平行な方向は全て光学軸とみなせる。
【0022】
図15では、光学シフト素子900に入射する光の偏光面が紙面に平行な場合を例示している。このときの液晶セル903、905への印加電圧(オン/オフ)とシフト位置との対応関係を表1に示す。表1に示すように、液晶セル903、905への印加電圧を適宜選択することによってシフト位置を選択することができる。
【0023】
【表1】
【0024】
RGBの画素を重ね合わせるためには、具体的には、以下の操作を行う。
【0025】
まず、各フレーム期間を3つの期間(「サブフレーム期間」と称する)に分割し、各フレーム画像からシフト軸上で1画素分ずつずれた画像(「サブフレーム画像」と称する)を各サブフレーム期間ごとに作成する。そして、作成した3つのサブフレーム画像を画像表示素子907に順次表示させる。画像表示素子907が有するRGBの画素はシフト方向に沿って周期的に並んでおり、あるフレーム画像を構成する1つの画素に注目すると、この画素は、R、G、B光がそれぞれ照射されている画像表示素子907の画素領域に対応する。
【0026】
3つのサブフレーム画像の表示の切り替えに同期して、サブフレーム画像の作成の際にずらしたのとは逆方向に、光学シフト素子900で画像シフトを行う。サブフレーム画像をシフト位置A、B、Cに対応させ、例えばABCABC・・・と周期的に切替表示するとき、光学シフト素子900には表1の印加電圧をシフト位置ABCに応じて切替えた駆動波形が与えられる。
【0027】
図16(a)〜(c)は、スクリーン909上での各サブフレームの表示状態を視点を動かさずに観察したときの画面の一部である。図16(a)、(b)および(c)は、それぞれ図15に示したシフト位置A、B、Cに対応している。ただし、投影レンズ908で投影する際に画像が180°回転するので、図15のシフト位置A、B、Cと図16(a)、(b)、(c)とではシフト方向が逆向きにみえる。
【0028】
図16(a)〜(c)では、シフトの状態が分かり易い様に同一のG画素に白丸を付している。図16(a)のシフト位置Aでの白丸の位置に注目すると、シフト位置B(図16(b))では、全体が1画素分右にシフトするのでG画素の左側にあるR画素が表示され、シフト位置C(図16(c))では、G画素の2画素左にあるB画素が表示される。
【0029】
各サブフレーム画像は、この位置に対応する画素のRGBの色情報をそれぞれ表示し、他の場所についてもRGBの情報が画素シフトと共に順次選択表示されるので、3つのサブフレームを通じて、スクリーン909上では全ての画素位置においてRGBの情報がそれぞれ1回ずつ表示される。サブフレーム表示とシフトの切替え周期は元映像のフレーム表示の3倍速で行なわれており、本来1画素がRGBの内1色しか表示できない単板式の投影型画像表示装置を用いて、3板式と同様の1画素毎にRGBのカラー表示能力を持った投影画像を人間の目に映すことができ、表示装置の解像度を向上させることができる。
【0030】
【特許文献1】
米国特許第4984091号明細書
【特許文献2】
特開昭59−230383号公報
【特許文献3】
特開平4−60538号公報
【特許文献4】
特開平9−15548号公報
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、光学シフト素子を用いて解像度を向上させる画像表示装置、とりわけ、比較的画面のサイズが小さな画像表示素子の表示画面を何十倍にも拡大することによって大画面表示を行う投影型の画像表示装置においては、以下のような問題が発生することを本願発明者は見出した。
【0032】
図16に示した各サブフレームの表示とシフトとの関係は、実は理想的な状態を示している。画像表示素子907の画素開口部によって形成される光点のサイズ(≒画素サイズ)は、理想的には、図16(a)〜(c)に示した2本の点線からもわかるようにそれぞれのシフト位置で揃っており、スクリーン909上の1つの画素に対応する領域では、均一な大きさのRGBの画素が重なって表示される。
【0033】
ところが、実際のスクリーン909上で、シフト位置A(シフト量がゼロ)にピントを合わせて各シフト位置における表示状態を観察すると、図17(a)〜(c)に示すように、画素開口部によって形成される光点のサイズ(≒画素のサイズ)がシフト位置によって変化する現象が起きている。図17(a)、(b)および(c)はそれぞれ図15におけるシフト位置A、B、Cに対応している。図17(a)〜(c)からわかるように、スクリーン909上に映る画素のサイズは、シフト量が大きくなるにつれて大きくなり、シフト位置Aにおいてもっとも小さく、シフト位置Cにおいてもっとも大きい。
【0034】
スクリーン909上に映る画素のサイズがもっとも大きくなるシフト位置(ここではシフト位置C)において、RGBのどの色の画素が表示されるのかは、スクリーン909上の画素に対応する領域ごとに異なり、もっとも大きく表示される画素の色は、スクリーン909上で周期的に変化する。つまり、ある領域においてR画素がもっとも大きく表示される場合には、その領域に隣接する領域ではGまたはBの画素がもっとも大きく表示される。例えば、図17(a)において白丸を付したG画素の位置では、シフト位置CにおいてB画素が表示されるので、B画素がもっとも大きく表示される。また、図17(b)において白丸を付したG画素の位置では、シフト位置CにおいてR画素が表示されるので、R画素がもっとも大きく表示される。
【0035】
従って、光学的なシフトによって解像度を向上させた場合、たとえ白一色の画像であっても、よく見ると、各画素の白表示の色味がR、G、B、R、G、B・・・と周期的に変化する3画素単位の周期構造、あるいは、各画素の白表示の色味がRGBの補色であるシアン、マゼンタ、イエロー、シアン、マゼンタ、イエロー・・・と周期的に変化する3画素単位の周期構造が観察されてしまうので、表示品位が低下してしまう。また、1本線を表示した場合には、上述の色味の変化と共に、線幅が周期的に変化するうねりが観察されてしまい、非常に表示品位が低下してしまう。なお、もっともシフト量が大きいシフト位置Cにピントを合わせると、今度はシフト位置Aにおいて画素のサイズがもっとも大きくなり、同様に表示品位が低下する。
【0036】
ここでは、RGBの各画素が重なり合うように画素のシフトを行う場合について説明したが、ブラックマトリクスによる非表示領域に画素開口部による光点が位置するように画素のシフトを行う方式でも同様であり、シフト位置によって画素のサイズが異なるため、大きさが不揃いの画素が並んだ表示画像を見ることになって画質が低下する。
【0037】
上述したように、従来の光学シフト素子を用いて画像表示装置の解像度を向上させると、高品位の表示を行うことができない。
【0038】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、投影型画像表示装置に好適に用いられる光学シフト素子、および、それを備え、高解像度で高品位の表示が可能な画像表示装置ならびに投影型画像表示装置を提供することにある。
【0039】
【課題を解決するための手段】
本発明による光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子と、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第1の複屈折素子とを含む光学シフト部を少なくとも1つ備えた光学シフト素子であって、前記少なくとも1つの光学シフト部のうちの少なくとも一部の光学シフト部は、前記第1の複屈折素子を通過する常光と異常光との換算距離の差を補償する補償素子を有し、そのことによって上記目的が達成される。
【0040】
ある好適な実施形態において、前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第2の複屈折素子および第3の複屈折素子を含み、前記第2の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向と略直交し、前記第3の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第2の複屈折素子による光軸位置のシフト方向とは反対であり、前記第2の複屈折素子および前記第3の複屈折素子による光軸位置のシフト量は互いに略等しい。
【0041】
前記第2の複屈折素子および前記第3の複屈折素子は、前記第1の複屈折素子と同じ材料から形成されており、前記第2の複屈折素子および前記第3の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、それぞれ前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量の略半分であることが好ましい。
【0042】
ある好適な実施形態において、前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第4の複屈折素子を含み、前記第4の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向と略直交し、前記第4の複屈折素子は、前記第1の複屈折素子と同じ材料から形成されており、前記第4の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量と略等しい。
【0043】
ある好適な実施形態において、前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なる第5の複屈折素子を含み、前記第5の複屈折素子が有する光学軸は、前記少なくとも一部の光学シフト部に入射する光の光軸に対して略垂直である。
【0044】
ある好適な実施形態において、前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第6の複屈折素子と、入射光の偏光方向と出射光の偏光方向とが直交するように光の偏光方向を回転させる第1の偏光回転素子とを含み、前記第1の偏光回転素子は、前記第1の複屈折素子と前記第6の複屈折素子との間に配置されており、前記第6の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向とは反対であり、前記第6の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量と略等しい。
【0045】
前記第6の複屈折素子は、前記第1の複屈折素子と同じ材料から形成されていることが好ましい。
【0046】
ある好適な実施形態において、前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第7の複屈折素子および第8の複屈折素子と、入射光の偏光方向と出射光の偏光方向とが直交するように光の偏光方向を回転させる第2の偏光回転素子および第3の偏光回転素子とを含み、前記第2の偏光回転素子は、前記第1の複屈折素子と前記第7の複屈折素子との間に配置され、前記第3の偏光回転素子は、前記第7の複屈折素子と前記第8の複屈折素子との間に配置されており、前記第7の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向とは反対で、前記第7の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量の略2倍であり、前記第8の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向と同じで、前記第8の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量と略等しい。
【0047】
前記第7の複屈折素子および前記第8の複屈折素子は、前記第1の複屈折素子と同じ材料から形成されていることが好ましい。
【0048】
ある好適な実施形態において、前記少なくとも1つの光学シフト部は、光路上に直列的に配列された複数の光学シフト部であり、前記複数の光学シフト部を通過した光の光軸を3つ以上の位置に設定することができる。
【0049】
ある好適な実施形態において、前記複数の光学シフト部のうち前記光路上で光が最後に入射する光学シフト部が前記補償素子を有している。
【0050】
ある好適な実施形態において、前記複数の光学シフト部のうち光軸位置のシフト量がもっとも大きい光学シフト部が前記補償素子を有している。
【0051】
ある好適な実施形態において、前記複数の光学シフト部を通過して光軸が前記3つ以上の位置に設定された光の換算距離が2種類である。
【0052】
ある好適な実施形態において、前記複数の光学シフト部のそれぞれが前記補償素子を有している。
【0053】
ある好適な実施形態において、前記複数の光学シフト部を通過して光軸が前記3つ以上の位置に設定された光の換算距離が1種類である。
【0054】
本発明による画像表示装置は、各々が光を変調することができる複数の画素領域を有する画像表示パネルと、前記画像表示パネルから出射した光が入射するように配置された上記構成を有する光学シフト素子とを備えており、そのことによって上記目的が達成される。
【0055】
本発明による投影型画像表示装置は、光源と、各々が光を変調することができる複数の画素領域を有する画像表示パネルと、前記表示パネルで変調された光によって被投影面上に画像を形成する光学系と、前記画像表示パネルから出射した光が入射するように配置された上記構成を有する光学シフト素子とを備えており、そのことによって上記目的が達成される。
【0056】
【発明の実施の形態】
まず、スクリーン上の画素の大きさがシフト位置によって変化する原因を説明する。
【0057】
画素の大きさが変化するのは、画像のシフトによってスクリーン上からピントがずれてしまうためであり、このピントのずれは、光学シフト素子の「換算距離」がシフトの有無やシフト量に応じて異なることによって発生する。以下、画素の大きさが変化するメカニズムを説明する。
【0058】
「換算距離」とは、一般には光の伝播する媒質の距離(厚さ)をその屈折率で割った値を指し、空気換算距離または(空気)換算厚と呼ぶこともある。図15に示した従来の投影型画像表示装置において、光学シフト素子900に入射する光は、シフト位置Aの表示をしているときには複屈折素子904および906の両方を常光として通過し、シフト位置Cの表示をしているときには複屈折素子904および906の両方を異常光として通過する。また、光学シフト素子900に入射する光は、シフト位置Bにおいては、複屈折素子904および906の一方を常光、他方を異常光として通過する。
【0059】
複屈折素子904および906は、入射する異常光と常光とに対してそれぞれ異なる屈折率を示すので、光学シフト素子900の、特に複屈折素子904および906において、常光と異常光とで換算距離に差が生じる。
【0060】
ここで、図15に示した投影型画像表示装置におけるスクリーンへの画像投影を幾何光学的に考える。
【0061】
画像表示素子907の画面サイズ(対角線長さ)をA、画像表示素子907から投影レンズ908までの「物側距離」をa、スクリーン909における投影画面サイズ(対角線長さ)をB、投影レンズ908からスクリーン909までの「像側距離」をb、投影レンズ908の焦点距離をfとし、各画面サイズA、Bと、各距離a、b、fとに理想的な結像公式が適用できるとすると、これらは以下の式(1)と式(2)との関係を有している。
【0062】
B/A=b/a・・・・・・・・(1)
1/a+1/b=1/f・・・・(2)
【0063】
式(1)は画面の拡大率B/Aを示す式であり、式(2)は結像関係を示す式であるといえる。
【0064】
この投影型画像表示装置では、小型の画像表示素子907の画面を大画面に拡大するので、拡大率B/Aの値は大きい。また、物側距離aは焦点距離fより大きいものの焦点距離fにごく近い値である。そのため、物側距離aの変化は敏感に像側距離bに反映される。つまり、画面拡大の倍率に応じて、物側距離aの変化に対する像側距離bの変化の度合いが増大される。
【0065】
画像表示素子907と投影レンズ908との間に配置された光学シフト素子900は、画像シフトに際して換算距離を変化させる。この換算距離の変化は物側距離aの変化を意味するので、像側距離bの変化(その度合いは拡大率に応じて増大されている)を引き起こす。そのため、あるシフト位置でスクリーンにピントを合わせても別のシフト位置ではピントがずれ、画素サイズが大きくなってしまう。
【0066】
本発明は、本願発明者が見出した上記知見に基づいて想到されたものである。以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0067】
(実施形態1)
本発明による光学シフト素子の第1の実施形態を説明する。図1(a)および(b)は、本実施形態における光学シフト素子100を模式的に示す図である。なお、ここでは光軸位置のシフトがわかりやすいように、互いに直交する2つの方向からみた断面を示している。光学シフト素子100を通過する光の進行方向をZ軸とするXYZ座標系を考えたとき、図1(a)は、光学シフト素子100をY軸方向から見た(紙面がXZ平面になる向きから見た)図に相当し、図1(b)は、光学シフト素子100をX軸方向から見た(紙面がYZ平面になる向きから見た)図に相当する。
【0068】
光学シフト素子100は、入射した光をその光軸位置をシフトさせて出射し得る光学シフト部1を備えており、この光学シフト部1は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子2と、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる複屈折素子3とを含んでいる。偏光変調素子2と複屈折素子3とは、光路上に直列的に配置されており、偏光変調素子2を通過した光が複屈折素子3に入射するように配置されている。
【0069】
本実施形態における偏光変調素子2は、液晶層と、液晶層に電圧を印加する少なくとも一対の透明電極と、これらを挟持する一対の透明基板とを備えた液晶素子(液晶セル)である。ここでは、液晶素子2は、TNモードの液晶素子であり、印加電圧のオン/オフに応じて、入射光の偏光面(偏光方向)を略90°回転させる状態(オフ状態)と、入射光の偏光面を実質的に回転させずにそのまま出射する状態(オン状態)との間でスイッチングされる。勿論、液晶素子2としては、TNモードの液晶素子に限定されず、偏光方向の変調が可能であれば如何なるものであってもよい。例えば、ECBモードの液晶素子を用いることもできる。
【0070】
また、本実施形態における複屈折素子3は、正の一軸性結晶である水晶から形成された平行平板である。複屈折素子3の光学軸3´の方向は図1(a)において紙面と平行で、入射光の光軸(ここでは光が入射する面の法線と一致する)に対して45°傾いている。従って、偏光面が図1(a)において紙面に垂直な光は、複屈折素子3にとって常光であり、通常のスネルの法則に従って通過するので光軸位置をシフトされない。
【0071】
これに対して、偏光面が図1(a)において紙面に平行な光は、複屈折素子3にとって異常光であるので、XZ平面内で光学軸3´の方向へそれて屈折する。異常光は、複屈折素子3から出射するとまた常光と同じ進行方向に戻るが、複屈折素子3を通過する間にその厚さに比例した分光軸位置をシフトされることになる。ここでは、複屈折素子3を通過する異常光は、X軸方向、つまり図1(a)における紙面上方向に光軸位置をシフトされる。
【0072】
以下、光学シフト素子100のより具体的な構成を説明するが、以下では特に断らない限り、後に述べる画像表示素子(画像表示パネル)と組み合せることを想定して、21μmのシフト量を持つ光学シフト部を作製する場合を例として説明する。
【0073】
平行平板型の複屈折素子3の常光屈折率をNo、異常光屈折率をNe、光学軸の傾斜角度(入射光の光軸に対してなす角度)をθ、厚さをdとすると、この複屈折素子3に垂直に入射した異常光のシフト量ΔDは以下の式(3)で表される。
【0074】
【数1】
【0075】
水晶の場合、λ=589nmの光に対する異常光屈折率Neは1.5534であり、常光屈折率Noは1.5443である。従って、θ=45°となるように複屈折素子3を配置したときに、シフト量ΔDを21μmとするために必要な複屈折素子3の厚さd(図1(b)中のt1)は、式(3)より約3.6mmと求められる。
【0076】
複屈折素子3は、常光として入射する光と異常光として入射する光とに対して異なる屈折率を示すので、複屈折素子3を通過する常光と異常光との換算距離に差が生じている。
【0077】
本発明による光学シフト素子100では、光学シフト部1は、複屈折素子3を通過する常光と異常光との換算距離の差を補償する(実質的にゼロにする)補償素子を有している。本実施形態では、液晶素子2および複屈折素子3に対して直列的に光路上に配列された複屈折素子4および5が補償素子として機能する。
【0078】
複屈折素子4および5は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる。本実施形態では、複屈折素子4および5として、複屈折素子3と同じ材料である水晶から形成された平行平板を用いる。
【0079】
補償素子として機能する複屈折素子4および5は、その「主断面」(入射光の光軸と複屈折素子の光学軸とを含む平面)が複屈折素子3の主断面と直交するように配置されている。そのため、複屈折素子3にとっての常光が複屈折素子4および5にとって異常光となり、複屈折素子3にとっての異常光が複屈折素子4および5にとっての常光となる。
【0080】
複屈折素子4の光学軸4´と複屈折素子5の光学軸5´とはそれぞれYZ平面に平行で、光軸から45°傾けられており、異常光が入射すると光はYZ平面内でそれて屈折する。そのため、複屈折素子4および複屈折素子5によるシフト方向は、複屈折素子3によるシフト方向と直交する。ただし、複屈折素子4の光学軸4´と複屈折素子5の光学軸5´とは、同じ平面に含まれるものの互いに直交しているので、複屈折素子5によるシフト方向は、複屈折素子4によるシフト方向とは反対である。
【0081】
複屈折素子4および5の厚さt2およびt3は互いに等しく、複屈折素子4および5によるシフト量は互いに等しい。また、複屈折素子4および5の厚さt2およびt3は、具体的には、1.8mmであり、複屈折素子3の厚さt1(=3.6mm)の半分である。そのため、複屈折素子4および5のそれぞれによるシフト量は10.5μmであり、複屈折素子3によるシフト量の半分である。
【0082】
複屈折素子4に異常光として入射した光は、Y軸方向(図1(b)における紙面上方向)に10.5μmシフトされ、その後、複屈折素子5において今度は反対の方向(図1(b)における紙面下方向)に10.5μmシフトされる。そのため、複屈折素子4と複屈折素子5とによるY軸方向のシフト量は実質的にはゼロになっている。つまり、複屈折素子4と複屈折素子5とを一個の素子として考えると、異常光成分と常光成分は、内部での光の経路が異なるものの、出射光は分離されない。
【0083】
次に、本実施形態の光学シフト素子100の動作を説明する。
【0084】
図1(a)および(b)に示すように偏光面がY軸方向(図1(a)の紙面垂直方向)に平行な光が光学シフト素子100に入射する場合を考える。
【0085】
液晶素子2をオフ状態にしたときには、液晶素子2を通過した光は、X軸方向に平行な偏光面を有する光となるので、複屈折素子3でシフトされ、複屈折素子4および5ではシフトされない。従って、シフト量の合計はX軸方向に21μmである。このとき、光学シフト素子100に入射した光が常光として通過する複屈折素子の厚さは、複屈折素子4および5の厚さの合計3.6mmであり、異常光として通過する複屈折素子の厚さは、複屈折素子3の厚さの3.6mmである。
【0086】
一方、液晶素子2をオン状態にしたときには、液晶素子2を通過した光は、Y軸方向に平行な偏光面を有する光のままであるので、複屈折素子3ではシフトされず、複屈折素子4でY軸方向に10.5μmシフトされ、複屈折素子5で複屈折素子4とは反対方向に等量の10.5μmシフトされる。従って、シフト量の合計はゼロである。このとき、光学シフト素子100に入射した光が常光として通過する複屈折素子の厚さは、複屈折素子3の厚さの3.6mmであり、異常光として通過する複屈折素子の厚さは、複屈折素子4および複屈折素子5の厚さの合計3.6mmである。
【0087】
このように、光学シフト素子100は、液晶素子2がオフ状態のときには光の光軸位置をX軸方向に21μmシフトさせ、液晶素子2がオン状態のときには光軸位置をシフトさせないので、液晶素子2の電圧印加状態を切り替えることによって光軸をシフト位置Aまたはシフト位置Bに設定することができる。なお、液晶素子2のオン/オフとシフトの有無との関係は、光学シフト素子100への入射光(液晶素子2への入射光)の偏光面の向きや液晶素子2の液晶層の設定次第で逆転させることができることは言うまでもない。
【0088】
本発明による光学シフト素子100では、光軸をシフトさせない場合(すなわち位置Aに設定する場合)においても、光は補償素子としての複屈折素子4および5を異常光として通過するので、シフトの有無に関わらず複屈折素子を常光として3.6mm通過し、異常光として同じく3.6mm通過する。そのため、位置Aを選択した場合と位置Bを選択した場合とで、複屈折素子による換算距離は一定であり、換算距離の差が生じない。
【0089】
つまり、複屈折素子4および5は、複屈折素子3にとっての常光を異常光として通過させ、複屈折素子3にとっての異常光を常光として通過させることによって、複屈折素子3を通過する常光と異常光との換算距離の差を補償し、各シフト位置における換算距離を実質的に同じにする。
【0090】
従って、光学シフト素子100を用いて投影型画像表示装置を製作すると、光学的なシフトを行っても物側距離が変化しないので、投影画像にピントずれは発生せず、スクリーン上での画素サイズを一定に保つことができる。従って、どの画素位置でも均一なサイズのRGB画素が重なり合うので、色味の周期むらや線幅のうねりをなくすことができる。その結果、解像度を向上させても高品位な表示を実現することができる。
【0091】
なお、光学シフト素子100においては、複屈折素子3、4および5だけでなく、液晶素子2においても換算距離は存在するが、液晶素子2における換算距離は実質的に無視することができる。例えば、液晶素子2を構成する一対の透明基板(ガラス基板等)は、光学的にほぼ等方性であるので、光の偏光状態によって換算距離は変化せず、画素サイズの変化を生じさせない。また、液晶素子2の液晶層は、複屈折性を有する液晶分子の向きによって偏光面の回転を制御するので、オン状態とオフ状態とでその換算距離が変化するが、複屈折素子の厚さがミリメートル(mm)のオーダーであるのに対して液晶層の厚さは数μmしかないので、液晶層の状態による換算距離の変化は複屈折素子で生じる換算距離の変化と比べると非常に小さく、実質的に無視することができる。
【0092】
光学シフト素子100のシフト量は、ここで例示した数値に限定されるものではなく、解像度を向上させる画像表示素子の画素構造・画素ピッチに応じて任意に設定することができる。
【0093】
また、複屈折素子3、4および5に用いられる材料は、水晶に限定されず、一軸性の結晶材料であれば如何なるものであってもよい。例えば、ニオブ酸リチウム、方解石、雲母、ルチル(TiO2)、チリ硝石(NaNO3)などの材料を用いることができる。
【0094】
なお、複屈折素子3と、複屈折素子4および5とを異なる材料から形成する場合には、複屈折素子3の厚さと、複屈折素子4および5の厚さの合計とを単に等しくするだけでは、常光と異常光との換算距離を等しくすることができない。そのため、光が複屈折素子3を異常光として通過するときの換算距離と、常光として通過するときの換算距離とをそれぞれ計算し、その差を補償することができるように、補償素子としての複屈折素子4および5の厚さを計算する必要がある。このことは、複屈折素子3と複屈折素子4および5とを同じ材料から形成する場合であっても、光学軸の傾斜角度が異なるときには同様である。なお、換算距離の計算方法については、他の実施形態の説明において詳述する。
【0095】
これに対して、本実施形態のように、専ら光軸位置のシフトに寄与する(つまりシフト用の)複屈折素子3と、補償素子として機能する複屈折素子4および5とを同じ材料を用いて形成し、それらの光学軸の傾斜角度も同一とすれば、わざわざ換算距離を計算しなくても、複屈折素子3の厚さと、複屈折素子4および5の厚さの合計とを同じとするだけで換算距離の差を補償することができるので、設計・製造が容易となるという利点が得られる。従って、複屈折素子3と、補償素子としての複屈折素子4および5とは、同じ材料から形成されていることが好ましく、光学軸の傾きも同じであることが好ましい。また、複屈折素子4と複屈折素子5とが同じ材料から形成されていると、それぞれの厚さを同じとすることでそれぞれのシフト量を同じとすることができ、補償素子による光軸位置のシフト量をゼロとすることが容易となる。
【0096】
本実施形態では、図1(a)および(b)に示したように、補償素子としての複屈折素子4および5を、シフト用の複屈折素子3よりも後に光が入射するように配置するが、これらの複屈折素子の配置順序はこれに限定されない。
【0097】
複屈折素子3、4および5は、いずれも通過する光の偏光面を回転させないので、光路上において液晶素子2よりも後に光が入射するように配置されていればよい。例えば、図2(a)に示すように、液晶素子2側から複屈折素子4、複屈折素子5、複屈折素子3の順に配置されていてもよいし、図2(b)に示すように、複屈折素子4、複屈折素子3、複屈折素子5の順に配置されていてもよく、同じ効果を得ることができる。さらには複屈折素子4と複屈折素子5とを入れ替えて配置してもよい。
【0098】
また、図1および図2では、液晶素子2、複屈折素子3、4および5は、それぞれ所定の間隔で配置されているが、これらが光学接着剤などによって一体化されていてもよい。このことは、他の実施形態についても同様である。
【0099】
(実施形態2)
図3を参照しながら、本発明による光学シフト素子の第2の実施形態を説明する。図3は、本実施形態における光学シフト素子200を模式的に示している。
【0100】
光学シフト素子200が備える光学シフト部1Aは、液晶素子2および複屈折素子3を有しており、これらの液晶素子2および複屈折素子3は、実施形態1における光学シフト素子100の液晶素子2および複屈折素子3と実質的に同じ構造・機能を有している。
【0101】
光学シフト部1Aは、さらに、補償素子として、光の偏光方向によって屈折率が異なる複屈折素子6を有している。本実施形態では、複屈折素子6として、複屈折素子3と同じ材質である水晶から形成された平行平板を用いる。複屈折素子6は、その主断面が複屈折素子3の主断面と直交するように配置されている。ただし、複屈折素子6は、その光学軸6´が、光学シフト部1Aに入射する光の光軸に対して垂直である点において図1(a)、(b)などに示した複屈折素子4および5とは異なる。図3において、複屈折素子3の光学軸3´が紙面に平行であるのに対して、複屈折素子6の光学軸6´は紙面に垂直である。
【0102】
複屈折素子3の主断面と複屈折素子6の主断面とは直交しているので、複屈折素子3にとっての異常光(複屈折素子3でシフトされる光)は複屈折素子6にとっての常光であり、複屈折素子3にとっての常光(複屈折素子3でシフトされない光)は複屈折素子6にとっての異常光である。ただし、複屈折素子6の光学軸6´は、光軸に対して略垂直であるので、式(3)における右辺の分子が常にゼロとなり、複屈折素子6を通過する光は、たとえ異常光であっても複屈折素子6によって光軸位置をシフトされない。
【0103】
複屈折素子6は、その厚さが、複屈折素子3による常光と異常光との換算距離の差を補償できるように設定されている。そのため、本実施形態の光学シフト素子200を画像表示装置に用いることによって、実施形態1における光学シフト素子100と同様に、高品位の表示を実現することができる。
【0104】
ここで、複屈折素子6の厚さの設定方法を説明する。複屈折素子3と複屈折素子6とを同じ材料を用いて作成しても、これらの光学軸の傾斜角度が互いに異なっていると、複屈折素子3の厚さと複屈折素子6の最適な厚さとの関係は単純ではない。本実施形態や、実施形態1の光学シフト素子100において複屈折素子3と複屈折素子4および5とで光学軸の傾斜角度が異なっている場合には、複屈折素子3を通過する常光および異常光の換算距離を以下のようにして求めればよい。
【0105】
まず、図4を参照しながら、常光の換算距離を求める方法を説明する。図4は、空気中に置かれた屈折率N、厚さdの透明な平行平板7を光が通過するときの振舞いを示している。常光の場合には、複屈折性のない媒質を通過するときと同じ扱いをすることができ、また、異常光であっても複屈折素子6を通過する場合のようにシフトされないときも同様である。
【0106】
平行平板7の左側にある物点Pから右側へ向かう光線は、平行平板7を通過する際に屈折し、経路PEABまたは経路PFCDをとる。平行平板12の右側から眺めると、点Pは経路BAおよび経路DCの延長線の交点P´に位置するように見えるので、図4上では本来の距離よりもL−L´だけ近づいて見える。
【0107】
この距離の差L−L´は、平行平板7の実際の厚さdと平行平板7の換算距離(幾何光学的なみかけ上の距離、換算厚と呼ぶ場合もある)d´との差に等しいので、d−d´=L−L´である。また、空気から平行平板7への入射角度(空気中)をi、平行平板7中での屈折角度(スネルの法則から求めることができる)をrとすると、L´=HA/tani、L=d+(HA―d・tanr)/taniである。そのため、換算距離d´は下式(4)で表される。
【0108】
d´=d×(tanr/tani)・・・・(4)
【0109】
三角関数の定義からtanθ=sinθ/cosθであり、スネルの法則からsini=Nsinrであるので、式(4)は下式(5)のように表現することもできる。
【0110】
d´=d×(cosi/Ncosr)・・・・(5)
【0111】
従って、iが十分に小さい場合(ゼロに近づいた場合)には、換算距離d´は、下式(6)で表すことができる。
【0112】
d´=d/N・・・・・(6)
【0113】
次に、図5を参照しながら異常光がシフトされる場合の換算距離を求める方法を説明する。図5は、空気中に置かれた厚さdの平行平板型の複屈折板8を異常光が通過するときの振舞いを示している。
【0114】
複屈折板8の下側にある物点Pから複屈折板8に垂直に入射する異常光線は、複屈折板8を通過する際に屈折して経路PDOAをとる。また、物点Pから複屈折板8に角度iで入射する異常光線は、複屈折板8を通過する際に屈折して経路PFCBを通る。図5中、rは空気中から入射角度iで入射したときの異常光の屈折角度、r0はi=0°のとき、すなわち垂直入射時の屈折角度である。
【0115】
図5において、複屈折板8の上側から眺めると、点Pは経路AO及び経路BCの延長線の交点P´に位置するように見え、図5上では本来の距離よりも、L−L´の分だけ近づいて見える。この距離の差L−L´は、複屈折板8の実際の厚さdと複屈折板8の換算距離d´との差に等しいので、d−d´=L−L´である。また、L´=OC/tani、L=d+(OC+d・tanr0−d・tanr)/taniであるので、換算距離d’は下式(7)で表される。
【0116】
d´=d×(tanr−tanr0)/tani・・・・(7)
【0117】
一方、入射角度iと屈折角度rの関係は下式(8)または(8´)で表される。
【0118】
【数2】
【0119】
【数3】
【0120】
複屈折板8として水晶を用いる場合、λ=589nmにおける異常光屈折率Neは1.5534、常光屈折率Noは1.5443であるので、複屈折板8の光学軸8´の傾斜角θを45°とすると、垂直入射時の屈折角度r0は0.3366°になる。ここで入射角度iが十分小さい場合(例えばi=1°)を考えると、式(8)より、屈折角度rは0.9822°であり、式(7)より、換算距離d´は0.6456dである。
【0121】
一方、常光の場合は式(6)に水晶の常光屈折率No(=1.5443)を代入することによって、換算距離d´は0.6475dと求められる。
【0122】
従って、ここでは、常光の方が換算距離が大きく、常光と異常光との換算距離の差Δd´は0.0019dであり、複屈折板8の厚さの約2/1000であることが判る。
【0123】
本実施形態では複屈折素子3の厚さは3.6mmなので、換算距離の差Δd´は約6.8μmになる。
【0124】
この換算距離の差を補償するために、補償素子としての複屈折素子6を常光が通過するときと異常光が通過するときとの換算距離の差を上記の値と一致させる。複屈折素子6を通過する際に生じる換算距離d´は、式(6)より、異常光の場合は式(9)で表され、常光の場合は式(10)で表される。
【0125】
d´=d/Ne=0.6437d・・・・・(9)
d´=d/No=0.6475d・・・・・(10)
【0126】
従って、換算距離の差Δd´は0.0038dであるので、複屈折素子6の厚さを約1.8mmとすることによって、複屈折素子3において生じる換算距離の差と複屈折素子6において生じる換算距離の差とを一致させることができる。勿論、すでに述べたように、複屈折素子3を異常光として通過した光が複屈折素子6にとっての常光になるように複屈折素子6の光学軸の方向が定められている。
【0127】
本実施形態では、補償素子としての複屈折素子6は、その光学軸6´が入射光の光軸に対して垂直であるので、シフト用の複屈折素子3や、光学シフト素子100の複屈折素子4および5よりも、単位厚さあたりの換算距離の差が大きい(ここではほぼ2倍)。従って、実施形態1の光学シフト素子100と比較すると、補償に必要な複屈折素子の厚さや総体積を小さく(具体的には約半分)することができるので、製造コストを低減することができる。
【0128】
図3では、補償素子としての複屈折素子6を光路上において複屈折素子3よりも光出射側に(後に光が入射するように)配置する場合を示したが、図6に示したように、複屈折素子6が液晶素子2と複屈折素子3との間に配置されていてもよい。
【0129】
なお、本実施形態では、複屈折素子として用いる水晶の常光屈折率および異常光屈折率と光学軸の傾斜角度とから、補償用の複屈折素子6の最適な厚さを求めた結果、複屈折素子3の厚さのほぼ1/2となったが、他の複屈折材料を用いた場合にも必ず半分の厚さになるわけではない。
【0130】
また、複屈折素子3のシフト量が異なる場合、複屈折素子3と複屈折素子6とを異なる材料で構成した場合、あるいは複屈折素子3の光学軸角度が45°でない場合でも、式(6)や式(7)あるいは式(8)を用いて補償するのに最適な複屈折素子6の厚さを求めることができる。
【0131】
さらに、例えば複屈折素子3の材料として正の一軸性の結晶材料(例えば水晶)を用い、複屈折素子6に負の一軸性の結晶材料(例えば方解石)を用いた場合には、屈折率の違いを複屈折素子6の厚さに反映させるのは勿論であるが、方解石では常光の方が換算距離が小さくなるので、複屈折素子3を常光で通過した光が複屈折素子6でも常光となるように、光学軸6´の向きを光軸周りに、図3の場合よりも90°回転させればよい。
【0132】
(実施形態3)
図7を参照しながら、本発明による光学シフト素子の第3の実施形態を説明する。図7は、本実施形態における光学シフト素子300を模式的に示している。
【0133】
光学シフト素子300が備える光学シフト部1Bは、偏光変調素子としての液晶素子2と、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる複屈折素子9および10と、入射光の偏光方向と出射光の偏光方向とが直交するように光の偏光方向を回転させる偏光回転素子11とを有している。液晶素子2、複屈折素子9、偏光回転素子11、複屈折素子10は、光路上に光入射側からこの順に配列されている。
【0134】
液晶素子2は、実施形態1および実施形態2の光学シフト素子100、200が備える液晶素子と同様の構造・機能を有している。
【0135】
本実施形態における複屈折素子9および10は、正の一軸性結晶である水晶から形成された平行平板である。複屈折素子9および10の光学軸9´および10´の方向は図7において紙面と平行で、かつ、光軸に対して45°傾いている。ただし、複屈折素子9の光学軸9´と複屈折素子10の光学軸10´とは光軸に対して互いに反対方向に傾斜しており、互いに直交している。従って、複屈折素子9による光軸位置のシフト方向は、複屈折素子10による光軸位置のシフト方向とは反対である。
【0136】
複屈折素子9および10の厚さは、互いに等しい。そのため、複屈折素子9および10による光軸位置のシフト量は、互いに等しい。具体的には、複屈折素子および10の厚さはそれぞれ1.8mmである。
【0137】
なお、複屈折素子9と複屈折素子10とは光学軸の向きが異なっているが、実質的には同じ部材であり、重ね方を変えるだけで上記の光学軸配置を実現できる。
【0138】
偏光回転素子11は、複屈折素子9と複屈折素子10との間に配置されている。本実施形態では、偏光回転素子11は、入射光の偏光面を90°回転させる素子であり、例えばアートン(ARTON)フィルムを延伸して作られた1/2波長板である。
【0139】
液晶素子2に紙面に垂直な偏光面を有する光が入射する場合について光学シフト素子300の動作を説明する。
【0140】
液晶素子2がオフ状態であるときには、偏光面が紙面に垂直な光は、液晶素子2を通過する際に偏光面を90°回転されるので、複屈折素子9に異常光として入射して紙面上方向に10.5μmシフトされる。複屈折素子9でシフトされた光は、偏光回転素子11で偏光面を90°回転され、複屈折素子10に常光として入射するので、複屈折素子10を通過する際にはシフトされない。従って、液晶素子2がオフ状態である場合、光学シフト素子300に入射した光は、光軸位置を紙面上方向に10.5μmシフトされる(シフト位置B)。
【0141】
一方、液晶素子2がオン状態である場合は、偏光面が紙面に垂直な光は、液晶素子2を通過する際に偏光面を回転されないので、複屈折素子9に常光として入射して、シフトされずに複屈折素子9を通過する。複屈折素子9からシフトされずに出射した光は、偏光回転素子11で偏光面を90°回転され、複屈折素子10に異常光として入射するので、紙面下方向に10.5μmシフトされる。従って、液晶素子2がオン状態である場合、光学シフト素子300に入射した光は、光軸位置を紙面下方向に10.5μmシフトされる(シフト位置A)。
【0142】
従って、シフト位置Aとシフト位置Bとの間のずれ量は、10.5μm+10.5μm=21μmであり、光学シフト素子300は、液晶素子2のオン状態とオフ状態とを切り替えることによって、互いに21μm離れた2つの位置に光軸を設定することができる。
【0143】
光学シフト素子300では、液晶素子2がオン状態であるときとオフ状態であるときとで、光が異常光として複屈折素子を通過する厚さと、光が常光として複屈折素子を通過する厚さとがそれぞれ1.8mmと等しく、シフト位置Aにおいてもシフト位置Bにおいても、換算距離が等しい。
【0144】
そのため、本実施形態においても、光学シフト素子100や光学シフト素子200と同様に、解像度が高く、且つ、高品位の表示を行うことができる。
【0145】
光学シフト素子100および200では、シフト用の複屈折素子3とは別途に、光軸位置のシフトに寄与しない補償用の複屈折素子4、5、6を設けているのに対して、本実施形態では、複屈折素子9と複屈折素子10とがそれぞれ光軸位置のシフト機能を担いつつ、偏光回転素子11が存在することによって互いに相補的に補償素子としても機能する。つまり、複屈折素子9および偏光回転素子11によって、複屈折素子10によって生じる換算距離の差が補償されるし、また、複屈折素子10および偏光回転素子11によって複屈折素子9によって生じる換算距離の差が補償される。
【0146】
そのため、光学シフト部1Bに必要とされる複屈折素子の総厚さや総体積を、光学シフト素子100、200に比べて小さくすることができる。具体的には、光学シフト素子100、200と同じだけのシフト量を確保するためには、光学シフト素子100、200の複屈折素子3と同じだけの厚さ(体積)の複屈折素子材料を用意すればよい。従って、従来の光学シフト素子と同じだけの複屈折素子材料を用意すればよく、製造コストの増加は、複屈折素子を2枚に分けたことによる加工費用と偏光回転素子11の分だけで済む。その結果、補償素子を設けることによる製造コストの上昇を抑制することができる。
【0147】
なお、2枚の複屈折板と、これらの間に設けられた1/2波長板とから構成された素子が、ビオ・サバール板の変形として「続・光の鉛筆」鶴田匡夫著 p.376に紹介されているが、この素子は、レーザー光などの単波長光線の干渉実験(波動光学)に考案されたものであり、入射光を常光成分と異常光成分に分離する際の「光路長」を揃えるためのものである。この素子は、液晶セルなどの偏光状態を変調する素子を有しておらず、偏光成分に従って常光成分と異常光成分とを分離する働きしかない。本発明による光学シフト素子は、非コヒーレント光を用いる画像表示装置に好適に用いられるものであり、レンズ結像(幾何光学)のための「換算距離」を揃えるための構成を有している点で、上記文献に記載されている素子とは使用用途も構成も大きく異なっている。「光路長」が素子の厚さに屈折率を乗じたものであるのに対して、「換算距離」は素子の厚さを屈折率で割ったものであり、光学的意味が全く異なる。
【0148】
図7に示した光学シフト素子300では、液晶素子2よりも光出射側に偏光回転素子11が配置されているので、液晶素子2を出射するときと、光学シフト部1Bから出射するときとでは光の偏光面の向きが異なっている。偏光変調素子から出射したときと光学シフト部から出射したときとで偏光面の向きが同じであることが好ましい場合には、図8に示す光学シフト素子400のような構成を用いてもよい。
【0149】
光学シフト素子400が備える光学シフト部1Cは、図8に示したように、偏光変調素子としての液晶素子2と、複屈折素子12、13および14と、偏光回転素子15および16とを有している。これらは、光路上に光入射側から液晶素子2、複屈折素子12、偏光回転素子15、複屈折素子13、偏光回転素子16、複屈折素子14の順に配列されている。
【0150】
複屈折素子12、13および14は、正の一軸性結晶である水晶から形成された平行平板である。複屈折素子12、13および14の光学軸12´、13´および14´の方向は図8において紙面と平行で、かつ、光軸に対して45°傾いている。ただし、複屈折素子12および14の光学軸12´および14´と複屈折素子13の光学軸13´とは光軸に対して互いに反対方向に傾斜しており、互いに直交している。従って、複屈折素子12および14による光軸位置のシフト方向は、複屈折素子13による光軸位置のシフト方向とは反対である。
【0151】
複屈折素子12および14の厚さは互いに等しく、複屈折素子13の厚さの半分である。そのため、複屈折素子12および14のそれぞれによるシフト量は複屈折素子13によるシフト量の半分である。
【0152】
複屈折素子12と複屈折素子13との間に配置された偏光回転素子15と、複屈折素子13と複屈折素子14との間に配置された偏光回転素子16は、入射光の偏光方向と出射光の偏光方向とが直交するように光の偏光方向を回転させる。本実施形態では、偏光回転素子15および16は、入射光の偏光面を90°回転させる素子であり、例えばアートン(ARTON)フィルムを延伸して作られた1/2波長板である。
【0153】
液晶素子2に紙面に垂直な偏光面を有する光が入射する場合について光学シフト素子400の動作を説明する。
【0154】
液晶素子2がオフ状態であるときには、偏光面が紙面に垂直な光は、液晶素子2を通過する際に偏光面を90°回転されるので、複屈折素子12に異常光として入射して紙面上方向にシフトされる。複屈折素子12でシフトされた光は、偏光回転素子15で偏光面を90°回転され、複屈折素子13に常光として入射するので、複屈折素子13を通過する際にはシフトされない。複屈折素子13からシフトされずに出射した光は、偏光回転素子16で偏光面を90°回転され、複屈折素子14に異常光として入射するので紙面上方向にシフトされる。従って、液晶素子2がオフ状態である場合、光学シフト素子400に入射した光は、光軸位置を紙面上方向にシフトされる(シフト位置B)。
【0155】
一方、液晶素子2がオン状態である場合は、偏光面が紙面に垂直な光は、液晶素子2を通過する際に偏光面を回転されないので、複屈折素子12に常光として入射して、シフトされずに複屈折素子12を通過する。複屈折素子12からシフトされずに出射した光は、偏光回転素子15で偏光面を90°回転され、複屈折素子13に異常光として入射するので、紙面下方向にシフトされる。複屈折素子13でシフトされた光は、偏光回転素子16で偏光面を90°回転され、複屈折素子14に常光として入射するので、複屈折素子14を通過する際にはシフトされない。従って、液晶素子2がオン状態である場合、光学シフト素子400に入射した光は、光軸位置を紙面下方向にシフトされる(シフト位置A)。
【0156】
従って、シフト位置Aとシフト位置Bとの間のずれ量は、複屈折素子12によるシフト量と、複屈折素子13によるシフト量と、複屈折素子14によるシフト量の合計であり、複屈折素子12によるシフト量の4倍である。このように、光学シフト素子400は、液晶素子2のオン状態とオフ状態とを切り替えることによって異なる2つの位置に光軸を設定することができる。
【0157】
なお、21μmのシフト量を確保するために必要な各複屈折素子の厚さは、材料として水晶を用いる場合、複屈折素子12および14では0.9mm、複屈折素子13では1.8mmになる。
【0158】
光学シフト素子400では、液晶素子2がオン状態であるときとオフ状態であるときとで、光が異常光として複屈折素子を通過する厚さと、光が常光として複屈折素子を通過する厚さとがそれぞれ等しく、シフト位置Aにおいてもシフト位置Bにおいても、換算距離が等しい。そのため、本実施形態においても、光学シフト素子300と同様に、解像度が高く、且つ、高品位の表示を行うことができる。光学シフト素子400では、光学シフト素子300に比べて複屈折素子が1つ増えるので、部品点数は増えるものの、複屈折素子の総厚さや総体積は変わらないので、製造コストの上昇はほとんど生じない。
【0159】
なお、ここでは複屈折素子12および複屈折素子14の厚さが互いに等しい構成を示したが、複屈折素子12および複屈折素子14の厚さの合計が複屈折素子13の厚さと等しければ、シフト量を変化させることなく換算距離の補償を行うことができる。図8に示した光学シフト部1Cにおいて複屈折素子14の厚さをゼロにし、その代わりに複屈折素子12の厚さを1.8mmから3.6mmにした構成は、図7に示した光学シフト部1Bの光出射側にさらに偏光回転素子を追加した構成と同じものとなる。ここで例示したように、複屈折素子12および複屈折素子14の厚さが互いに等しい構成とすると、同じ部材を使用できるので製造上の利点が得られる。
【0160】
偏光回転素子としては、例示したものに限定されず、入射光の偏光面と出射光の偏光面とが直交するように光の偏光面を回転できる素子であれば、一般に知られている素子を用いることが可能である。例えば、液晶素子2とほぼ同じ構成の液晶セルを用いることもできる。このとき、これらの液晶セルは、偏光面を回転させるために常にオフ状態で用いるので、電圧印加のための透明電極を省略することができ、そのことによって光透過率を向上することができる。
【0161】
ここまで述べたように、補償素子が光軸位置のシフトに寄与する構成を採用することもできるし、補償素子が光軸位置のシフトに寄与しない構成を採用することもできる。補償素子が光軸位置のシフトに寄与する構成としては、図9(a)および(b)に示す光学シフト素子500のような構成としてもよい。
【0162】
光学シフト素子500は、光学シフト素子100の複屈折素子4および5を、1枚の複屈折素子17に置き換えたものである。光学シフト素子100では、
光学シフト素子500の光学シフト部1Dが備える複屈折素子17は、その主断面が複屈折素子3の主断面と直交するように配置されている。具体的には、複屈折素子17の光学軸17´は、図9(b)において紙面に平行な面内に含まれ、光軸に対して45°傾斜している。従って、複屈折素子17による光軸位置のシフト方向は、複屈折素子3による光軸位置のシフト方向と直交している。
【0163】
また、複屈折素子17の厚さは、複屈折素子3の厚さと等しく、複屈折素子17による光軸位置のシフト量は、複屈折素子3による光軸位置のシフト量と等しい。
【0164】
光学シフト素子500においても、液晶素子2がオン状態であるとき(シフト位置A)とオフ状態であるとき(シフト位置B)とで、光が異常光として複屈折素子を通過する厚さと、光が常光として複屈折素子を通過する厚さとがそれぞれ等しく、シフト位置Aにおいてもシフト位置Bにおいても、換算距離が等しい。そのため、光学シフト素子500を用いても、解像度が高く、且つ、高品位の表示を行うことができる。
【0165】
なお、光学シフト素子500は、光学シフト素子100とは異なり光軸位置をXY平面内で斜め方向(より具体的にはX軸、Y軸と45°をなす方向)にシフトさせる。
【0166】
(実施形態4)
図10を参照しながら、本発明による画像表示装置の実施形態を説明する。図10は、本実施形態における画像表示装置600を模式的に示している。この画像表示装置600は、カラーフィルタを用いないでフルカラー画像を表示する単板式の投影型画像表示装置である。
【0167】
画像表示装置600は、図10に示すように、光源としての白色光源601と、各々が光を変調することができる複数の画素領域を有する画像表示パネル607と、画像表示パネル607から出射した光が入射するように配置された光学シフト素子(画像シフト素子)700と、画像表示パネル607で変調された光によって被投影面上に画像を形成する光学系としての投影レンズ609とを有している。画像表示パネル607に表示された画像は、投影レンズ609の後方に配置されたスクリーン上に投影表示される。
【0168】
画像表示パネル607は、本実施形態では、液晶表示パネルであり、画像表示装置600は、さらに、ダイクロイックミラー604R・604G・604Bと、液晶表示パネル607の光入射側に設けられたマイクロレンズアレイ605とを備えている。
【0169】
白色光源601としては、ここではメタルハライドランプを用いるが、ハロゲンランプやキセノンランプなどを用いてもよい。白色光源601は、球面鏡602、コンデンサーレンズ603とともに光源部を構成している。なお、図10では省略しているが、画像表示装置600には、液晶表示パネル607への無用な紫外線および赤外線をカットするためのUV−IRカットフィルタがコンデンサーレンズ603の光束の出射口に挿入配置されている。これによって、紫外線および赤外線による液晶表示パネル607の不要な温度上昇を低減できる。
【0170】
ダイクロイックミラー604R、604G、604Bは、それぞれ赤、緑、青の各波長帯の光を選択的に反射するものであって、1種類の波長帯の光以外は透過するようになっており、光源部からの略平行光の進行方向に対してそれぞれ異なる角度で配置されている。これらダイクロイックミラー604R、604G、604Bは、公知の多層膜コーティング技術によって作製することができる。
【0171】
ダイクロイックミラー604R、604G、604Bで反射されたそれぞれの光束は、マイクロレンズアレイ605に入射される。このとき光束は、マイクロレンズアレイ605に対してダイクロイックミラー604Rからの反射光(以下、R光と称する)はほぼ垂直に、ダイクロイックミラー604Gからの反射光(以下、G光と称する)とダイクロイックミラー604Bからの反射光(以下、B光と称する)とはR光を中心にして水平面内でそれぞれ反対方向に、所定の角度だけ傾いて、且つマイクロレンズアレイ605上で各色の光束の照射領域が互いに重なり合うように入射するようになっている。
【0172】
図11はRGB光が液晶表示パネル607に入射する様子を示す断面図である。
液晶表示パネル607の光入射側には3つの画素(R用画素、G用画素、B用画素)にひとつの割合でマイクロレンズ606が配置されている。
【0173】
マイクロレンズアレイ605および液晶表示パネル607は一体的に積層されている。各マイクロレンズ606は異なる角度で入射してきたRGB光を、対応する3つの画素に入射させる。各画素は独立して駆動されるため、RGB光はそれぞれ独立して変調される。
【0174】
液晶表示パネル607は、画素ピッチが縦横ともに21μm、画素数が横1286、縦720の対角約31mmサイズで、解像度1280×720のハイビジョン映像を表示することができる。また、画面横方向にはその方向に画像シフトを行うために余分の画素が存在する。
【0175】
液晶表示パネル607の画素配列は、図16のように、RGB各色の正方形画素が横方向に配列されたデルタ配列である。ただし、液晶表示パネル607にはカラーフィルタは設けられていない。液晶表示パネル607に画像信号を入力する映像回路は対応する色用の階調信号を送り込むだけであり、液晶表示パネル607単体ではモノクロ映像を表示するにすぎない。扇形に配置されたダイクロイックミラー604R、604G、604Bとマイクロレンズアレイ605とによってRGBに色分離された光が各画素に集光されることでカラー表示が実現される。
【0176】
液晶表示パネル607を透過することによって変調された光は、光学シフト素子700を通過して投影レンズ609に入射し、投影レンズ609を経た光がスクリーン上に画像を形成する。スクリーン上の画像は、光学シフト素子700によって周期的に画面横方向にシフトされる。
【0177】
画像表示装置600に入力されたフレーム周波数60Hzの映像信号は、各フレーム画像が3つのサブフレームに分解され、3倍の速さの180Hzで順次切替表示される。光学シフト素子608は、シフト素子駆動回路(不図示)から印加電圧を供給され、表示されるサブフレーム画像の切り替えに同期して画像のシフトを行う。3つのサブフレームを通じて、スクリーン上では全ての画素位置においてRGBがそれぞれ1回ずつ表示される。サブフレーム表示とシフトの切り替え周期は映像源の画像フレームの3倍と早く行なわれており、結果として人間の目には3板式と同様、1画素毎にRGBのカラー表示能力を持った投影画像として映る。本実施形態では、単板式で3板式と同様のフルカラーの投影画像を実現できるので、3板式と比較して製造コストが低減される。
【0178】
本実施形態における光学シフト素子700は、光路上に直列的に配列された複数の光学シフト部を備えており、複数の光学シフト部を通過した光の光軸を3つ以上の位置に設定することができる。光学シフト素子700としては、例えば、図12、図13および図14に示す光学シフト素子700A、700Bおよび700Cを用いることができる。
【0179】
図12に示す光学シフト素子700Aは、光路上に直列的に配置された2つの光学シフト部1Eおよび1Fを有している。2つの光学シフト部1Eおよび1Fのうち、光出射側に配置された(後に光が入射する)光学シフト部1Fのみが補償素子を有しており、光入射側に配置された(先に光が入射する)光学シフト部1Eは、補償素子を有していない。
【0180】
光入射側の光学シフト部1Eは、液晶素子2と複屈折素子18とを有しており、複屈折素子18の光学軸18´は、紙面に平行で、かつ、光軸に対して45°傾斜している。複屈折素子18は、ここでは、水晶から形成されており、その厚さは3.6mmである。
【0181】
光出射側の光学シフト部1Fは、液晶素子2と、複屈折素子19および20と、複屈折素子19および20の間に配置された偏光回転素子21とを有しており、図7に示した光学シフト素子300の光学シフト部1Bと実質的に同じ構成を有している。複屈折素子19および20の光学軸19´および20´は、ともに紙面に平行で、光軸に対して45°傾斜している。ただし、光学軸19´および20´とは、光軸に対して反対方向に傾いており、互いに直交している。複屈折素子19および20は、ともに水晶から形成されており、これらの厚さはそれぞれ1.8mmである。
【0182】
光学シフト部1Eおよび1Fのそれぞれは、液晶表示パネル607の画面横方向(図12の紙面における上下方向)に沿って光軸を1画素ピッチ(21μm)シフトさせる。
【0183】
2つの液晶素子2がともにオン状態であると、光軸はシフト位置Aに設定される。このとき、光が常光として通過する複屈折素子の厚さは5.4mm、異常光として通過する複屈折素子の厚さは1.8mmである。
【0184】
光入射側の液晶素子2がオン状態、光出射側の液晶素子2がオフ状態であると、光軸はシフト位置Bに設定される。このとき、光が常光として通過する複屈折素子の厚さは5.4mm、異常光として通過する複屈折素子の厚さは1.8mmであり、シフト位置Aの場合と換算距離が同一になる。
【0185】
2つの液晶素子2がともにオフ状態であると、光軸はシフト位置B´に設定される。シフト位置B´は、シフト位置Bと同じ位置であるが、最終的に出射される光の偏光面がシフト位置Bとは異なっている。このとき、光が常光として通過する複屈折素子の厚さは1.8mm、異常光として通過する複屈折素子の厚さは5.4mmである。なお、シフトさせる際には、シフト位置Bとシフト位置B´とを両方用いてもよいし、一方のみを用いてもよい。
【0186】
光入射側の液晶素子2がオフ状態、光出射側の液晶素子2がオン状態であると、光軸はシフト位置Cに設定される。このとき、光が常光として通過する複屈折素子の厚さは1.8mm、異常光として通過する複屈折素子の厚さは5.4mmであり、シフト位置B´の場合と換算距離が同一になる。
【0187】
光学シフト素子700Aを用いてA、B(またはB´)、Cの3つの位置間でシフトを行うと、補償素子を有しない光学シフト部1Eの分だけ換算距離の差が残存する。
【0188】
しかしながら、2つの光学シフト部の両方が補償素子を有しない場合(例えば、光学シフト部1Eを2つ直列的に配置した場合)には、最大では7.2mm厚の複屈折素子をすべて常光として通過するときとすべて異常光として通過するときとの換算距離の差が生じるのに対して、光学シフト素子700Aでは一方の光学シフト部1Fにおいて換算距離の差が補償されるので、換算距離の差およびスクリーン上での画素サイズの変化を抑制(ここでは半分に)することができる。そのため、表示品位の低下を抑制することができる。
【0189】
また、2つの光学シフト部の両方が補償素子を有しない場合には、3種類の換算距離が生じるので、スクリーン上の画素サイズも図17(a)〜(c)に示すように3種類になる。これに対して、光学シフト素子700Aでは一方の光学シフト部1Fにおいて換算距離の差が補償されることによって換算距離が2種類になるので、スクリーン上の画素サイズも2種類になる。そのため、スクリーンのピント位置をこれらの中間に設定して、両方とも同程度のピントぼけになるように焦点をあわせると、画像のシフトを行っても、スクリーン上の画素のサイズが変化しなくなる。その結果、同一のサイズのRGB画素が重なり合うことになるので、すべての光学シフト部において換算距離の差を補償しなくても画質を改善することができる。
【0190】
ここでは、光学シフト素子が2つの光学シフト部を備える場合について説明したが、3つ以上の光学シフト部を備える場合についても、少なくとも1つの光学シフト部が補償素子を備えていることによって、換算距離の差を小さくすることができるので、表示品位を向上することができる。また、複数の光学シフト部のうちの一部に補償素子を設けて換算距離を2種類とすることによって、十分に画質を改善することができる。
【0191】
なお、光路上に直列的に配列された複数の光学シフト部のうちのいずれに補償素子を設けてもよいが、偏光回転素子の性能が悪い場合や、組立て精度の制約により偏光面の回転を異常光と常光との間でうまく切り替えられない場合には、通過光がさらに常光成分と異常光成分とに分離されて二重像を生じる可能性がある。このような場合には、複数の光学シフト部のうち光路上で光が最後に入射する光学シフト部に補償素子を設けることによって、二重像の発生を抑制することができる。
【0192】
なお、図12では、光学シフト部1Fとして、光学シフト素子300の光学シフト部1Bと実質的に同じものを用いたが、光学シフト素子100の光学シフト部1や光学シフト素子200の光学シフト部1Aと実質的に同じものを用いてもよい。光学シフト素子500の光学シフト部1Dを用いる場合には、この光学シフト部1Dは他の光学シフト部とは異なり斜め方向(X軸、Y軸と45°の角度をなす方向)にシフトを行うので、光学シフト部1Dおよびこれに入射する光の偏光面を予め光軸(Z軸)周りに45°回転させることによって画面横方向(X軸方向)にシフトを行うようにするか、あるいは、シフトした画素が斜め方向に隣接した画素と重なるように光学シフト素子を設計すればよい。このとき、デルタ配列の画像表示パネルでは斜め方向に隣接した画素が比較的遠いので、ストライプ配列の画像表示パネルを用いることが好ましい。勿論、光学シフト素子100、200、300、400の光学シフト部をストライプ配列の画像表示パネルと組み合わせてもよい。
【0193】
また、図12には、2つの光学シフト部1Eおよび1Fによる光軸位置のシフト量が互いに等しい構成を示したが、複屈折素子の厚さを2つの光学シフト部間で異ならせることによって、光軸位置のシフト量が2つの光学シフト部間で異なる構成としてもよい。例えば、一方の光学シフト部に2画素ピッチ分、他方の光学シフト部に1画素ピッチ分のシフト量を持たせることによって、光学シフト素子全体でのシフト量をゼロ、1画素ピッチ、2画素ピッチ、3画素ピッチの4種類にすることができる。
【0194】
複数の光学シフト部間でシフト量が異なる場合、シフト量が大きい光学シフト部ほど複屈折素子の厚さが厚く、換算距離の差が大きい。そのため、シフト量が大きい光学シフト部に優先的に補償素子を設けることが好ましく、光軸位置のシフト量がもっとも大きい光学シフト部が補償素子を有していることが好ましい。
【0195】
図13に示す光学シフト素子700Bは、互いに光軸位置のシフト量が異なる2つの光学シフト部1Gおよび1Hを有しており、光軸位置のシフト量がより大きい光学シフト部1Gにおいて換算距離の差を補償している。
【0196】
光入射側の光学シフト部1Gは、液晶素子2と、複屈折素子22および23と、複屈折素子22および23の間に配置された偏光回転素子24とを有しており、図7に示した光学シフト素子300の光学シフト部1Bと実質的に同じ構成を有している。複屈折素子22および23の光学軸22´および23´は、ともに紙面に平行で、光軸に対して45°傾斜している。ただし、光学軸22´および23´は、光軸に対して互いに反対方向に傾いており、互いに直交している。複屈折素子22および23は、ともに水晶から形成されており、これらの厚さはそれぞれ3.6mmである。
【0197】
光出射側の光学シフト部1Hは、液晶素子2と複屈折素子25とを有しており、複屈折素子25の光学軸25´は、紙面に平行で、かつ、光軸に対して45°傾斜している。複屈折素子25は、ここでは、水晶から形成されており、その厚さは3.6mmである。
【0198】
光入射側の光学シフト部1Gによるシフト量は、2画素ピッチ分であり、光出射側の光学シフト部1Hによるシフト量は、1画素ピッチ分である。
【0199】
ここで、仮に、光学シフト部1Gにおいて換算距離の差を補償せず、光学シフト部1Hにおいて換算距離の差を補償するものとした場合には、2画素ピッチシフトさせる分の複屈折素子に起因した換算距離の差が残存する。
【0200】
これに対して、2画素ピッチ分のシフトを行う光学シフト部1Gの方において換算距離の差を補償すれば、残存する換算距離の差は、1画素ピッチシフトさせる分の複屈折素子に起因したものであるので、画素サイズの変化量をより小さくすることができる。
【0201】
また、光学シフト素子700Bにおいても、一方の光学シフト部において換算距離の差が補償されていることによって換算距離が4種類から2種類に減少するので、先に述べた手法でスクリーンのピント位置を調整することによって、スクリーン上での画素サイズの変化を抑制でき、画質を向上することができる。
【0202】
ここまでは、複数の光学シフト部のうちの一部の光学シフト部が補償素子を備えている場合について説明したが、複数の光学シフト部のそれぞれが補償素子を有している構成とすることによって、より高品位の表示を行うことができる。
【0203】
図14に示す光学シフト素子700Cは、2つの光学シフト部1Iおよび1Jの両方が補償素子を有している。この光学シフト素子700Cは光学シフト部1Iおよび1Jが有する液晶素子2のオン/オフ状態を切り替えることによって、シフト位置A、B、C、Dの4つの位置を選択することができる。
【0204】
光入射側の光学シフト部1Iは、液晶素子2、複屈折素子26、偏光回転素子28および複屈折素子27を光路に沿って光入射側からこの順に有しており、図13に示した光学シフト部1Gと実質的に同じ構成を有している。
【0205】
光出射側の光学シフト部1Jは、液晶素子2、複屈折素子29、偏光回転素子31および複屈折素子30を光路に沿って光入射側からこの順に有しており、図12に示した光学シフト部1Fと実質的に同じ構成を有している。
【0206】
光学シフト素子700Cにおいては、光学シフト部1Iおよび1Jのそれぞれにおいて換算距離の差が補償されているので、光の換算距離が1種類となる。すなわち、4つのシフト位置ABCDのどのシフト位置においても換算距離は一定に保たれる。従ってスクリーンに投影される画素サイズは常に一定の大きさになり、より高画質の表示画像を得ることができる。
【0207】
なお、上述の実施形態1から4では、図9に示した光学シフト素子500を除いて、画像シフトの方向が表示画面の横方向である場合について説明したが、表示画面の縦方向にシフトさせる場合においても本発明を適用できることは言うまでもないし、横方向へのシフトと縦方向へのシフトの両方を行う場合や、斜め方向へのシフトを行う場合においても本発明を適用して画質を改善させることができる。
【0208】
勿論、例示した光学シフト部を1つまたは2つ備える構成に限定されず、光学シフト部を3つ以上備える場合にも、少なくとも1つの光学シフト部が補償素子を備えていることによって表示品位を向上させることができる。光学シフト部の数が増えるほど、換算距離の差が大きくなり、画素サイズの種類も増加してしまうので、本発明による効果が顕著に得られる。
【0209】
また、RGBの画素を重ね合わせるのではなく、シフト方向とシフト量とを調整し、画素と画素の間のブラックマトリクスの位置に画素をシフトさせることによって解像度を向上する方式においても、本発明を用いることによって表示品位の向上を図ることができる。また、単板式だけでなく3板式の投影型画像表示装置の高解像度化においても本発明を用いることができる。
【0210】
さらに、投影型画像表示装置だけでなく、HMDタイプの画像表示装置にも本発明を用いることができる。HMDではスクリーンが存在しないが、レンズを通して表示素子の拡大虚像を観察する構成上、光学シフト素子に起因した換算距離の変化が、拡大虚像の微小な前後位置の変化と画面サイズの振動を発生させるからである。
【0211】
【発明の効果】
本発明によると、画像表示装置、特に、投影型画像表示装置に好適に用いられる光学シフト素子が提供される。本発明による光学シフト素子においては、シフトの有無やシフト量に応じた換算距離の差の発生が抑制されるので、本発明による画像シフト素子を画像表示装置や投影型画像表示装置に用いると、高解像度で高品位の表示が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)および(b)は、本発明による実施形態の光学シフト素子100を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)および(b)は、光学シフト素子100が備える液晶素子および複屈折素子の他の配置を模式的に示す図である。
【図3】本発明による実施形態の光学シフト素子200を模式的に示す断面図である。
【図4】常光の換算距離を求める方法を説明するための図である。
【図5】異常光の換算距離を求める方法を説明するための図である。
【図6】光学シフト素子200が備える液晶素子および複屈折素子の他の配置を模式的に示す図である。
【図7】本発明による実施形態の光学シフト素子300を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明による実施形態の光学シフト素子400を模式的に示す断面図である。
【図9】(a)および(b)は、本発明による実施形態の光学シフト素子500を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明による実施形態の画像表示装置600を模式的に示す図である。
【図11】画像表示装置600の画像表示パネルに光が入射する様子を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明による実施形態の光学シフト素子700Aを模式的に示す断面図である。
【図13】本発明による実施形態の光学シフト素子700Bを模式的に示す断面図である。
【図14】本発明による実施形態の光学シフト素子700Cを模式的に示す断面図である。
【図15】光学シフト素子を備えた従来の画像表示装置を模式的に示す図である。
【図16】(a)、(b)および(c)は、スクリーン上において画素がシフトする理想的な様子を示す図である。
【図17】(a)、(b)および(c)は、スクリーン上において画素がシフトする実際の様子を示す図である。
【符号の説明】
1 光学シフト部
2 液晶素子
3、4、5 複屈折素子
11 偏光回転素子
100、200、300、400、500 光学シフト素子
600 画像表示装置
700、700A、700B、700C 光学シフト素子
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘッド・マウント・ディスプレイや投影型画像表示装置などにおいて画像の位置がシフトするよう光の光軸をシフトさせる光学シフト素子に関する。また、本発明はそのような光学シフト素子を用いた画像表示装置や投影型画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、一対の透明基板と、これらの基板間に挟まれた液晶層とを備えている。透明基板は、行及び列(マトリクス)状に規則的に配列された複数の画素電極を有しており、画像信号に対応した駆動電圧が画素電極のそれぞれに印加される。この印加電圧によって液晶層の光学特性(光の透過率や反射率)が画素毎に変化するため、画像や文字などを表示することができる。
【0003】
基板上の各画素電極に独立した駆動電圧を印加する方式には「単純マトリクス方式」と「アクティブマトリクス方式」とがある。
【0004】
アクティブマトリクス方式の場合、各画素電極に対応する薄膜トランジスタ(TFT)や金属−絶縁体−金属(MIM)素子等のスイッチング素子や、信号配線等が基板上に一緒に形成され、スイッチング素子や配線が形成された領域はブラックマトリクス(BM)と呼ばれる遮光層で遮光されている。画素のうち、光を通す領域を画素開口部と呼ぶが、ブラックマトリクスの存在は画素開口部の割合(開口率)を小さくしてしまう。
【0005】
画素を正常に駆動するためにはスイッチング素子や配線領域にある程度の占有面積を必要とするので、高精細画面を実現しようとして同じ画面サイズのまま画素数を増やすと、開口率が低下して画面が暗くなってしまうし、画素サイズをそのままで画面サイズを大きくするとコストが大幅に上昇することになる。
【0006】
そこで、ブラックマトリクス上の非表示領域を利用して高精細化をはかる目的で、表示画像を画素ピッチ程度だけ光学的に移動(シフト)させる技術が特許文献1に開示されている。この技術によれば、画素のシフトに同期させて移動した画素位置に対応する映像を表示する。その結果見かけ上の画素数が増えるので解像度の低い表示素子を用いても高精細の表示パネルを用いた場合と同様の表示が可能になる。また、高精細の表示パネルを製造する場合と比較して開口率の低下が抑制される。
【0007】
上記のような画像をシフトさせる技術は、投影レンズでスクリーンに表示画像を拡大投影する投影型画像表示装置や、観察光学系を用いて虚像の拡大像を観察するHMDにも適用することができる。
【0008】
液晶表示素子を用いた投影型画像表示装置における画像表示方式には、光の3原色のそれぞれに対応した3枚の液晶表示パネル(液晶表示素子)を用いる3板式と、1枚の液晶表示パネルを用いる単板式とがある。
【0009】
前者の3板式の投影型画像表示装置は、光源から発せられた白色光を赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の光束(色光)に分離し、それぞれの色光を各液晶表示パネルに向かわせる光学系と、各色光を変調するための3枚の液晶表示パネルとを備えており、変調された各色の光をスクリーン上で光学的に重畳することによってフルカラー表示を行うことができる。
【0010】
3板式の投影型画像表示装置では、光源からの光を有効に利用でき、また、表示画像の色純度が高いという利点も得られる。しかしながら、色光を各液晶表示パネルに向かわせるための光学系と、各パネルで変調された色光を合成するための光学系とが必要であり、また、液晶表示パネルを3枚用いるので、光学系が繁雑で部品点数が多くなってしまい、低コスト化及び小型化の点では、後述の単板式に比べて一般的に不利である。
【0011】
これに対して、後者の単板式の投影型画像表示装置では、使用する液晶表示パネルが1枚で足り、光学系の構成も3板式に比べて単純になるので、低コスト化および小型化に適している。単板式の投影型画像表示装置としては、モザイク状やストライプ状に配列された3原色のカラーフィルタが設けられた液晶表示パネルを用い、この液晶表示パネルで変調された光を投影光学系によって投影するものが知られており、例えば特許文献2などに開示されている。
【0012】
また、特許文献3に開示されている単板式の投影型画像表示装置では、扇形に配列されたダイクロイックミラーと、マイクロレンズアレイが貼り付けられた液晶パネルとを用いて、液晶パネルの各画素にRGBの光を分離・集光させるので、カラーフィルタを用いずにフルカラー表示を実現することができ、その結果、投影画像の明るさが向上する。
【0013】
ここで3板式と単板式とを画像の解像度の点から比較する。同じ解像度(画素数)の液晶表示パネルを用いる場合には、3板式と単板式とではその使用枚数の違いからスクリーン上に投影される画像の解像度に差が生じる。3板式では、各液晶表示パネルから出射されたRGB光をスクリーン上で混合してカラー表示を行なうため、各液晶表示パネルの画素数と同じ画素数のフルカラー画像をスクリーン上で表示できる。これに対して、単板式では液晶表示パネルの1画素はRGBのいずれか1色にしか対応していないため、スクリーン上では液晶表示パネルの画素数の1/3の画素数を持つフルカラー画像しか表示できない。
【0014】
勿論、液晶表示パネルの画素数を3倍にすれば、単板式でも3板式の場合と同様の解像度を実現することができるが、それに伴う問題点は既に述べた通りである。このような問題点を解決して単板式の投影型画像表示装置で解像度の高い表示を行うために、上述した画像をシフトさせる技術を用いることができる。
【0015】
特許文献4には、赤(R)、緑(G)、青(B)の各画素を光学シフト素子によって光学的に順次シフトさせ、シフトした画素を重ね合わせて表示する方式が開示されている。この方式では、1つの画素に対応する領域において、RGBの各画素が時分割で表示される。その結果、表示パネルの画素数を増やさずに、見かけ上の解像度を3倍に向上させることができる。
【0016】
図15に、特許文献4に開示されている方式を用いた投影型画像表示装置を模式的に示す。この投影型画像表示装置は、図15に示すように、カラーフィルタを備えた画像表示素子907と、画像表示素子907に表示された画像をスクリーン上に拡大投影する投影レンズ908と、画像表示素子907で変調された光の光軸の位置をシフトさせることによってスクリーン909上での画像の位置をシフトさせる光学シフト素子900とを備えている。
【0017】
光学シフト素子900は、光路上に直列的に配置された2つの光学シフト部901、902を有している。光学シフト部901、902は、光の伝搬方向に沿って直列的に配置された液晶セル903、905と複屈折素子904、906とを備えている。
【0018】
液晶セル903、905は、液晶層を含み、入射する直線偏光の電場ベクトルの振動面(以下「偏光面」と称する。)を制御する。液晶セル903、905の液晶層は、TNモードの液晶層である。液晶セル903、905の液晶層に電圧が印加されていないとき(オフ状態)には、液晶層の液晶分子は液晶層の厚さ方向に沿って90°ねじれており、入射光の偏光面は液晶分子の旋光性によって90°回転する。一方、液晶セル903、905の液晶層に適切なレベル電圧が印加されているとき(オン状態)には、液晶分子の向きは電界の向きに整合しているので、入射光の偏光面は光が液晶層を通過する過程で回転しない。液晶セル903、905は、画像表示素子907のような画素構造は有しておらず、その構造が単純であるので、比較的容易に作製できる。
【0019】
複屈折素子904、906は、一軸性の結晶材料(例えば水晶)から形成された平行平板型の素子であり、その光学軸904´、906´の方向は、図15に示したように、紙面と平行で光の入射する面の法線に対して45°傾いている。従って、偏光面が紙面に垂直な入射光は複屈折素子904、906にとっては常光であり、通常のスネルの法則に従って複屈折素子904、906を通過する。そのため、偏光面が紙面に垂直な光が複屈折素子904、906の入射面に垂直に入射すると、まっすぐに通過することになる。一方、偏光面が紙面に平行な光は複屈折素子904、906にとっては異常光であり、入射光の光軸と複屈折素子904、906の光学軸904´、906´とを含む面内で屈折してその進行方向が変わる。異常光が複屈折素子904、906から出射すると、その進行方向はまた常光と同じに戻るが、異常光の光軸の位置は、複屈折素子904、906を通過する間にその厚さに比例した分のシフトを受ける。
【0020】
光が先に通過する複屈折素子904によるシフト量と後に通過する複屈折素子906によるシフト量は、共に画像表示素子907の1画素ピッチ相当であり、これらの複屈折素子904、906によるシフトの向きは同じ方向(紙面上方向)である。従って、光学シフト素子900は、光の光軸の位置を、シフト量がゼロの位置、1画素分シフトした位置、2画素分シフトした位置の3つの位置に設定することができる。
【0021】
なお、「光学軸(optic axis)」とは、水晶や方解石等の1軸性の複屈折結晶において、複屈折の生じない光線の進行方向の軸である。光学軸は、光学系の光軸(optical axis)とは異なりただ1本だけ存在する訳ではなく、例示された一本の光学軸に平行な方向は全て光学軸とみなせる。
【0022】
図15では、光学シフト素子900に入射する光の偏光面が紙面に平行な場合を例示している。このときの液晶セル903、905への印加電圧(オン/オフ)とシフト位置との対応関係を表1に示す。表1に示すように、液晶セル903、905への印加電圧を適宜選択することによってシフト位置を選択することができる。
【0023】
【表1】
【0024】
RGBの画素を重ね合わせるためには、具体的には、以下の操作を行う。
【0025】
まず、各フレーム期間を3つの期間(「サブフレーム期間」と称する)に分割し、各フレーム画像からシフト軸上で1画素分ずつずれた画像(「サブフレーム画像」と称する)を各サブフレーム期間ごとに作成する。そして、作成した3つのサブフレーム画像を画像表示素子907に順次表示させる。画像表示素子907が有するRGBの画素はシフト方向に沿って周期的に並んでおり、あるフレーム画像を構成する1つの画素に注目すると、この画素は、R、G、B光がそれぞれ照射されている画像表示素子907の画素領域に対応する。
【0026】
3つのサブフレーム画像の表示の切り替えに同期して、サブフレーム画像の作成の際にずらしたのとは逆方向に、光学シフト素子900で画像シフトを行う。サブフレーム画像をシフト位置A、B、Cに対応させ、例えばABCABC・・・と周期的に切替表示するとき、光学シフト素子900には表1の印加電圧をシフト位置ABCに応じて切替えた駆動波形が与えられる。
【0027】
図16(a)〜(c)は、スクリーン909上での各サブフレームの表示状態を視点を動かさずに観察したときの画面の一部である。図16(a)、(b)および(c)は、それぞれ図15に示したシフト位置A、B、Cに対応している。ただし、投影レンズ908で投影する際に画像が180°回転するので、図15のシフト位置A、B、Cと図16(a)、(b)、(c)とではシフト方向が逆向きにみえる。
【0028】
図16(a)〜(c)では、シフトの状態が分かり易い様に同一のG画素に白丸を付している。図16(a)のシフト位置Aでの白丸の位置に注目すると、シフト位置B(図16(b))では、全体が1画素分右にシフトするのでG画素の左側にあるR画素が表示され、シフト位置C(図16(c))では、G画素の2画素左にあるB画素が表示される。
【0029】
各サブフレーム画像は、この位置に対応する画素のRGBの色情報をそれぞれ表示し、他の場所についてもRGBの情報が画素シフトと共に順次選択表示されるので、3つのサブフレームを通じて、スクリーン909上では全ての画素位置においてRGBの情報がそれぞれ1回ずつ表示される。サブフレーム表示とシフトの切替え周期は元映像のフレーム表示の3倍速で行なわれており、本来1画素がRGBの内1色しか表示できない単板式の投影型画像表示装置を用いて、3板式と同様の1画素毎にRGBのカラー表示能力を持った投影画像を人間の目に映すことができ、表示装置の解像度を向上させることができる。
【0030】
【特許文献1】
米国特許第4984091号明細書
【特許文献2】
特開昭59−230383号公報
【特許文献3】
特開平4−60538号公報
【特許文献4】
特開平9−15548号公報
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、光学シフト素子を用いて解像度を向上させる画像表示装置、とりわけ、比較的画面のサイズが小さな画像表示素子の表示画面を何十倍にも拡大することによって大画面表示を行う投影型の画像表示装置においては、以下のような問題が発生することを本願発明者は見出した。
【0032】
図16に示した各サブフレームの表示とシフトとの関係は、実は理想的な状態を示している。画像表示素子907の画素開口部によって形成される光点のサイズ(≒画素サイズ)は、理想的には、図16(a)〜(c)に示した2本の点線からもわかるようにそれぞれのシフト位置で揃っており、スクリーン909上の1つの画素に対応する領域では、均一な大きさのRGBの画素が重なって表示される。
【0033】
ところが、実際のスクリーン909上で、シフト位置A(シフト量がゼロ)にピントを合わせて各シフト位置における表示状態を観察すると、図17(a)〜(c)に示すように、画素開口部によって形成される光点のサイズ(≒画素のサイズ)がシフト位置によって変化する現象が起きている。図17(a)、(b)および(c)はそれぞれ図15におけるシフト位置A、B、Cに対応している。図17(a)〜(c)からわかるように、スクリーン909上に映る画素のサイズは、シフト量が大きくなるにつれて大きくなり、シフト位置Aにおいてもっとも小さく、シフト位置Cにおいてもっとも大きい。
【0034】
スクリーン909上に映る画素のサイズがもっとも大きくなるシフト位置(ここではシフト位置C)において、RGBのどの色の画素が表示されるのかは、スクリーン909上の画素に対応する領域ごとに異なり、もっとも大きく表示される画素の色は、スクリーン909上で周期的に変化する。つまり、ある領域においてR画素がもっとも大きく表示される場合には、その領域に隣接する領域ではGまたはBの画素がもっとも大きく表示される。例えば、図17(a)において白丸を付したG画素の位置では、シフト位置CにおいてB画素が表示されるので、B画素がもっとも大きく表示される。また、図17(b)において白丸を付したG画素の位置では、シフト位置CにおいてR画素が表示されるので、R画素がもっとも大きく表示される。
【0035】
従って、光学的なシフトによって解像度を向上させた場合、たとえ白一色の画像であっても、よく見ると、各画素の白表示の色味がR、G、B、R、G、B・・・と周期的に変化する3画素単位の周期構造、あるいは、各画素の白表示の色味がRGBの補色であるシアン、マゼンタ、イエロー、シアン、マゼンタ、イエロー・・・と周期的に変化する3画素単位の周期構造が観察されてしまうので、表示品位が低下してしまう。また、1本線を表示した場合には、上述の色味の変化と共に、線幅が周期的に変化するうねりが観察されてしまい、非常に表示品位が低下してしまう。なお、もっともシフト量が大きいシフト位置Cにピントを合わせると、今度はシフト位置Aにおいて画素のサイズがもっとも大きくなり、同様に表示品位が低下する。
【0036】
ここでは、RGBの各画素が重なり合うように画素のシフトを行う場合について説明したが、ブラックマトリクスによる非表示領域に画素開口部による光点が位置するように画素のシフトを行う方式でも同様であり、シフト位置によって画素のサイズが異なるため、大きさが不揃いの画素が並んだ表示画像を見ることになって画質が低下する。
【0037】
上述したように、従来の光学シフト素子を用いて画像表示装置の解像度を向上させると、高品位の表示を行うことができない。
【0038】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、投影型画像表示装置に好適に用いられる光学シフト素子、および、それを備え、高解像度で高品位の表示が可能な画像表示装置ならびに投影型画像表示装置を提供することにある。
【0039】
【課題を解決するための手段】
本発明による光学シフト素子は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子と、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第1の複屈折素子とを含む光学シフト部を少なくとも1つ備えた光学シフト素子であって、前記少なくとも1つの光学シフト部のうちの少なくとも一部の光学シフト部は、前記第1の複屈折素子を通過する常光と異常光との換算距離の差を補償する補償素子を有し、そのことによって上記目的が達成される。
【0040】
ある好適な実施形態において、前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第2の複屈折素子および第3の複屈折素子を含み、前記第2の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向と略直交し、前記第3の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第2の複屈折素子による光軸位置のシフト方向とは反対であり、前記第2の複屈折素子および前記第3の複屈折素子による光軸位置のシフト量は互いに略等しい。
【0041】
前記第2の複屈折素子および前記第3の複屈折素子は、前記第1の複屈折素子と同じ材料から形成されており、前記第2の複屈折素子および前記第3の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、それぞれ前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量の略半分であることが好ましい。
【0042】
ある好適な実施形態において、前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第4の複屈折素子を含み、前記第4の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向と略直交し、前記第4の複屈折素子は、前記第1の複屈折素子と同じ材料から形成されており、前記第4の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量と略等しい。
【0043】
ある好適な実施形態において、前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なる第5の複屈折素子を含み、前記第5の複屈折素子が有する光学軸は、前記少なくとも一部の光学シフト部に入射する光の光軸に対して略垂直である。
【0044】
ある好適な実施形態において、前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第6の複屈折素子と、入射光の偏光方向と出射光の偏光方向とが直交するように光の偏光方向を回転させる第1の偏光回転素子とを含み、前記第1の偏光回転素子は、前記第1の複屈折素子と前記第6の複屈折素子との間に配置されており、前記第6の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向とは反対であり、前記第6の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量と略等しい。
【0045】
前記第6の複屈折素子は、前記第1の複屈折素子と同じ材料から形成されていることが好ましい。
【0046】
ある好適な実施形態において、前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第7の複屈折素子および第8の複屈折素子と、入射光の偏光方向と出射光の偏光方向とが直交するように光の偏光方向を回転させる第2の偏光回転素子および第3の偏光回転素子とを含み、前記第2の偏光回転素子は、前記第1の複屈折素子と前記第7の複屈折素子との間に配置され、前記第3の偏光回転素子は、前記第7の複屈折素子と前記第8の複屈折素子との間に配置されており、前記第7の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向とは反対で、前記第7の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量の略2倍であり、前記第8の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向と同じで、前記第8の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量と略等しい。
【0047】
前記第7の複屈折素子および前記第8の複屈折素子は、前記第1の複屈折素子と同じ材料から形成されていることが好ましい。
【0048】
ある好適な実施形態において、前記少なくとも1つの光学シフト部は、光路上に直列的に配列された複数の光学シフト部であり、前記複数の光学シフト部を通過した光の光軸を3つ以上の位置に設定することができる。
【0049】
ある好適な実施形態において、前記複数の光学シフト部のうち前記光路上で光が最後に入射する光学シフト部が前記補償素子を有している。
【0050】
ある好適な実施形態において、前記複数の光学シフト部のうち光軸位置のシフト量がもっとも大きい光学シフト部が前記補償素子を有している。
【0051】
ある好適な実施形態において、前記複数の光学シフト部を通過して光軸が前記3つ以上の位置に設定された光の換算距離が2種類である。
【0052】
ある好適な実施形態において、前記複数の光学シフト部のそれぞれが前記補償素子を有している。
【0053】
ある好適な実施形態において、前記複数の光学シフト部を通過して光軸が前記3つ以上の位置に設定された光の換算距離が1種類である。
【0054】
本発明による画像表示装置は、各々が光を変調することができる複数の画素領域を有する画像表示パネルと、前記画像表示パネルから出射した光が入射するように配置された上記構成を有する光学シフト素子とを備えており、そのことによって上記目的が達成される。
【0055】
本発明による投影型画像表示装置は、光源と、各々が光を変調することができる複数の画素領域を有する画像表示パネルと、前記表示パネルで変調された光によって被投影面上に画像を形成する光学系と、前記画像表示パネルから出射した光が入射するように配置された上記構成を有する光学シフト素子とを備えており、そのことによって上記目的が達成される。
【0056】
【発明の実施の形態】
まず、スクリーン上の画素の大きさがシフト位置によって変化する原因を説明する。
【0057】
画素の大きさが変化するのは、画像のシフトによってスクリーン上からピントがずれてしまうためであり、このピントのずれは、光学シフト素子の「換算距離」がシフトの有無やシフト量に応じて異なることによって発生する。以下、画素の大きさが変化するメカニズムを説明する。
【0058】
「換算距離」とは、一般には光の伝播する媒質の距離(厚さ)をその屈折率で割った値を指し、空気換算距離または(空気)換算厚と呼ぶこともある。図15に示した従来の投影型画像表示装置において、光学シフト素子900に入射する光は、シフト位置Aの表示をしているときには複屈折素子904および906の両方を常光として通過し、シフト位置Cの表示をしているときには複屈折素子904および906の両方を異常光として通過する。また、光学シフト素子900に入射する光は、シフト位置Bにおいては、複屈折素子904および906の一方を常光、他方を異常光として通過する。
【0059】
複屈折素子904および906は、入射する異常光と常光とに対してそれぞれ異なる屈折率を示すので、光学シフト素子900の、特に複屈折素子904および906において、常光と異常光とで換算距離に差が生じる。
【0060】
ここで、図15に示した投影型画像表示装置におけるスクリーンへの画像投影を幾何光学的に考える。
【0061】
画像表示素子907の画面サイズ(対角線長さ)をA、画像表示素子907から投影レンズ908までの「物側距離」をa、スクリーン909における投影画面サイズ(対角線長さ)をB、投影レンズ908からスクリーン909までの「像側距離」をb、投影レンズ908の焦点距離をfとし、各画面サイズA、Bと、各距離a、b、fとに理想的な結像公式が適用できるとすると、これらは以下の式(1)と式(2)との関係を有している。
【0062】
B/A=b/a・・・・・・・・(1)
1/a+1/b=1/f・・・・(2)
【0063】
式(1)は画面の拡大率B/Aを示す式であり、式(2)は結像関係を示す式であるといえる。
【0064】
この投影型画像表示装置では、小型の画像表示素子907の画面を大画面に拡大するので、拡大率B/Aの値は大きい。また、物側距離aは焦点距離fより大きいものの焦点距離fにごく近い値である。そのため、物側距離aの変化は敏感に像側距離bに反映される。つまり、画面拡大の倍率に応じて、物側距離aの変化に対する像側距離bの変化の度合いが増大される。
【0065】
画像表示素子907と投影レンズ908との間に配置された光学シフト素子900は、画像シフトに際して換算距離を変化させる。この換算距離の変化は物側距離aの変化を意味するので、像側距離bの変化(その度合いは拡大率に応じて増大されている)を引き起こす。そのため、あるシフト位置でスクリーンにピントを合わせても別のシフト位置ではピントがずれ、画素サイズが大きくなってしまう。
【0066】
本発明は、本願発明者が見出した上記知見に基づいて想到されたものである。以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0067】
(実施形態1)
本発明による光学シフト素子の第1の実施形態を説明する。図1(a)および(b)は、本実施形態における光学シフト素子100を模式的に示す図である。なお、ここでは光軸位置のシフトがわかりやすいように、互いに直交する2つの方向からみた断面を示している。光学シフト素子100を通過する光の進行方向をZ軸とするXYZ座標系を考えたとき、図1(a)は、光学シフト素子100をY軸方向から見た(紙面がXZ平面になる向きから見た)図に相当し、図1(b)は、光学シフト素子100をX軸方向から見た(紙面がYZ平面になる向きから見た)図に相当する。
【0068】
光学シフト素子100は、入射した光をその光軸位置をシフトさせて出射し得る光学シフト部1を備えており、この光学シフト部1は、入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子2と、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる複屈折素子3とを含んでいる。偏光変調素子2と複屈折素子3とは、光路上に直列的に配置されており、偏光変調素子2を通過した光が複屈折素子3に入射するように配置されている。
【0069】
本実施形態における偏光変調素子2は、液晶層と、液晶層に電圧を印加する少なくとも一対の透明電極と、これらを挟持する一対の透明基板とを備えた液晶素子(液晶セル)である。ここでは、液晶素子2は、TNモードの液晶素子であり、印加電圧のオン/オフに応じて、入射光の偏光面(偏光方向)を略90°回転させる状態(オフ状態)と、入射光の偏光面を実質的に回転させずにそのまま出射する状態(オン状態)との間でスイッチングされる。勿論、液晶素子2としては、TNモードの液晶素子に限定されず、偏光方向の変調が可能であれば如何なるものであってもよい。例えば、ECBモードの液晶素子を用いることもできる。
【0070】
また、本実施形態における複屈折素子3は、正の一軸性結晶である水晶から形成された平行平板である。複屈折素子3の光学軸3´の方向は図1(a)において紙面と平行で、入射光の光軸(ここでは光が入射する面の法線と一致する)に対して45°傾いている。従って、偏光面が図1(a)において紙面に垂直な光は、複屈折素子3にとって常光であり、通常のスネルの法則に従って通過するので光軸位置をシフトされない。
【0071】
これに対して、偏光面が図1(a)において紙面に平行な光は、複屈折素子3にとって異常光であるので、XZ平面内で光学軸3´の方向へそれて屈折する。異常光は、複屈折素子3から出射するとまた常光と同じ進行方向に戻るが、複屈折素子3を通過する間にその厚さに比例した分光軸位置をシフトされることになる。ここでは、複屈折素子3を通過する異常光は、X軸方向、つまり図1(a)における紙面上方向に光軸位置をシフトされる。
【0072】
以下、光学シフト素子100のより具体的な構成を説明するが、以下では特に断らない限り、後に述べる画像表示素子(画像表示パネル)と組み合せることを想定して、21μmのシフト量を持つ光学シフト部を作製する場合を例として説明する。
【0073】
平行平板型の複屈折素子3の常光屈折率をNo、異常光屈折率をNe、光学軸の傾斜角度(入射光の光軸に対してなす角度)をθ、厚さをdとすると、この複屈折素子3に垂直に入射した異常光のシフト量ΔDは以下の式(3)で表される。
【0074】
【数1】
【0075】
水晶の場合、λ=589nmの光に対する異常光屈折率Neは1.5534であり、常光屈折率Noは1.5443である。従って、θ=45°となるように複屈折素子3を配置したときに、シフト量ΔDを21μmとするために必要な複屈折素子3の厚さd(図1(b)中のt1)は、式(3)より約3.6mmと求められる。
【0076】
複屈折素子3は、常光として入射する光と異常光として入射する光とに対して異なる屈折率を示すので、複屈折素子3を通過する常光と異常光との換算距離に差が生じている。
【0077】
本発明による光学シフト素子100では、光学シフト部1は、複屈折素子3を通過する常光と異常光との換算距離の差を補償する(実質的にゼロにする)補償素子を有している。本実施形態では、液晶素子2および複屈折素子3に対して直列的に光路上に配列された複屈折素子4および5が補償素子として機能する。
【0078】
複屈折素子4および5は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる。本実施形態では、複屈折素子4および5として、複屈折素子3と同じ材料である水晶から形成された平行平板を用いる。
【0079】
補償素子として機能する複屈折素子4および5は、その「主断面」(入射光の光軸と複屈折素子の光学軸とを含む平面)が複屈折素子3の主断面と直交するように配置されている。そのため、複屈折素子3にとっての常光が複屈折素子4および5にとって異常光となり、複屈折素子3にとっての異常光が複屈折素子4および5にとっての常光となる。
【0080】
複屈折素子4の光学軸4´と複屈折素子5の光学軸5´とはそれぞれYZ平面に平行で、光軸から45°傾けられており、異常光が入射すると光はYZ平面内でそれて屈折する。そのため、複屈折素子4および複屈折素子5によるシフト方向は、複屈折素子3によるシフト方向と直交する。ただし、複屈折素子4の光学軸4´と複屈折素子5の光学軸5´とは、同じ平面に含まれるものの互いに直交しているので、複屈折素子5によるシフト方向は、複屈折素子4によるシフト方向とは反対である。
【0081】
複屈折素子4および5の厚さt2およびt3は互いに等しく、複屈折素子4および5によるシフト量は互いに等しい。また、複屈折素子4および5の厚さt2およびt3は、具体的には、1.8mmであり、複屈折素子3の厚さt1(=3.6mm)の半分である。そのため、複屈折素子4および5のそれぞれによるシフト量は10.5μmであり、複屈折素子3によるシフト量の半分である。
【0082】
複屈折素子4に異常光として入射した光は、Y軸方向(図1(b)における紙面上方向)に10.5μmシフトされ、その後、複屈折素子5において今度は反対の方向(図1(b)における紙面下方向)に10.5μmシフトされる。そのため、複屈折素子4と複屈折素子5とによるY軸方向のシフト量は実質的にはゼロになっている。つまり、複屈折素子4と複屈折素子5とを一個の素子として考えると、異常光成分と常光成分は、内部での光の経路が異なるものの、出射光は分離されない。
【0083】
次に、本実施形態の光学シフト素子100の動作を説明する。
【0084】
図1(a)および(b)に示すように偏光面がY軸方向(図1(a)の紙面垂直方向)に平行な光が光学シフト素子100に入射する場合を考える。
【0085】
液晶素子2をオフ状態にしたときには、液晶素子2を通過した光は、X軸方向に平行な偏光面を有する光となるので、複屈折素子3でシフトされ、複屈折素子4および5ではシフトされない。従って、シフト量の合計はX軸方向に21μmである。このとき、光学シフト素子100に入射した光が常光として通過する複屈折素子の厚さは、複屈折素子4および5の厚さの合計3.6mmであり、異常光として通過する複屈折素子の厚さは、複屈折素子3の厚さの3.6mmである。
【0086】
一方、液晶素子2をオン状態にしたときには、液晶素子2を通過した光は、Y軸方向に平行な偏光面を有する光のままであるので、複屈折素子3ではシフトされず、複屈折素子4でY軸方向に10.5μmシフトされ、複屈折素子5で複屈折素子4とは反対方向に等量の10.5μmシフトされる。従って、シフト量の合計はゼロである。このとき、光学シフト素子100に入射した光が常光として通過する複屈折素子の厚さは、複屈折素子3の厚さの3.6mmであり、異常光として通過する複屈折素子の厚さは、複屈折素子4および複屈折素子5の厚さの合計3.6mmである。
【0087】
このように、光学シフト素子100は、液晶素子2がオフ状態のときには光の光軸位置をX軸方向に21μmシフトさせ、液晶素子2がオン状態のときには光軸位置をシフトさせないので、液晶素子2の電圧印加状態を切り替えることによって光軸をシフト位置Aまたはシフト位置Bに設定することができる。なお、液晶素子2のオン/オフとシフトの有無との関係は、光学シフト素子100への入射光(液晶素子2への入射光)の偏光面の向きや液晶素子2の液晶層の設定次第で逆転させることができることは言うまでもない。
【0088】
本発明による光学シフト素子100では、光軸をシフトさせない場合(すなわち位置Aに設定する場合)においても、光は補償素子としての複屈折素子4および5を異常光として通過するので、シフトの有無に関わらず複屈折素子を常光として3.6mm通過し、異常光として同じく3.6mm通過する。そのため、位置Aを選択した場合と位置Bを選択した場合とで、複屈折素子による換算距離は一定であり、換算距離の差が生じない。
【0089】
つまり、複屈折素子4および5は、複屈折素子3にとっての常光を異常光として通過させ、複屈折素子3にとっての異常光を常光として通過させることによって、複屈折素子3を通過する常光と異常光との換算距離の差を補償し、各シフト位置における換算距離を実質的に同じにする。
【0090】
従って、光学シフト素子100を用いて投影型画像表示装置を製作すると、光学的なシフトを行っても物側距離が変化しないので、投影画像にピントずれは発生せず、スクリーン上での画素サイズを一定に保つことができる。従って、どの画素位置でも均一なサイズのRGB画素が重なり合うので、色味の周期むらや線幅のうねりをなくすことができる。その結果、解像度を向上させても高品位な表示を実現することができる。
【0091】
なお、光学シフト素子100においては、複屈折素子3、4および5だけでなく、液晶素子2においても換算距離は存在するが、液晶素子2における換算距離は実質的に無視することができる。例えば、液晶素子2を構成する一対の透明基板(ガラス基板等)は、光学的にほぼ等方性であるので、光の偏光状態によって換算距離は変化せず、画素サイズの変化を生じさせない。また、液晶素子2の液晶層は、複屈折性を有する液晶分子の向きによって偏光面の回転を制御するので、オン状態とオフ状態とでその換算距離が変化するが、複屈折素子の厚さがミリメートル(mm)のオーダーであるのに対して液晶層の厚さは数μmしかないので、液晶層の状態による換算距離の変化は複屈折素子で生じる換算距離の変化と比べると非常に小さく、実質的に無視することができる。
【0092】
光学シフト素子100のシフト量は、ここで例示した数値に限定されるものではなく、解像度を向上させる画像表示素子の画素構造・画素ピッチに応じて任意に設定することができる。
【0093】
また、複屈折素子3、4および5に用いられる材料は、水晶に限定されず、一軸性の結晶材料であれば如何なるものであってもよい。例えば、ニオブ酸リチウム、方解石、雲母、ルチル(TiO2)、チリ硝石(NaNO3)などの材料を用いることができる。
【0094】
なお、複屈折素子3と、複屈折素子4および5とを異なる材料から形成する場合には、複屈折素子3の厚さと、複屈折素子4および5の厚さの合計とを単に等しくするだけでは、常光と異常光との換算距離を等しくすることができない。そのため、光が複屈折素子3を異常光として通過するときの換算距離と、常光として通過するときの換算距離とをそれぞれ計算し、その差を補償することができるように、補償素子としての複屈折素子4および5の厚さを計算する必要がある。このことは、複屈折素子3と複屈折素子4および5とを同じ材料から形成する場合であっても、光学軸の傾斜角度が異なるときには同様である。なお、換算距離の計算方法については、他の実施形態の説明において詳述する。
【0095】
これに対して、本実施形態のように、専ら光軸位置のシフトに寄与する(つまりシフト用の)複屈折素子3と、補償素子として機能する複屈折素子4および5とを同じ材料を用いて形成し、それらの光学軸の傾斜角度も同一とすれば、わざわざ換算距離を計算しなくても、複屈折素子3の厚さと、複屈折素子4および5の厚さの合計とを同じとするだけで換算距離の差を補償することができるので、設計・製造が容易となるという利点が得られる。従って、複屈折素子3と、補償素子としての複屈折素子4および5とは、同じ材料から形成されていることが好ましく、光学軸の傾きも同じであることが好ましい。また、複屈折素子4と複屈折素子5とが同じ材料から形成されていると、それぞれの厚さを同じとすることでそれぞれのシフト量を同じとすることができ、補償素子による光軸位置のシフト量をゼロとすることが容易となる。
【0096】
本実施形態では、図1(a)および(b)に示したように、補償素子としての複屈折素子4および5を、シフト用の複屈折素子3よりも後に光が入射するように配置するが、これらの複屈折素子の配置順序はこれに限定されない。
【0097】
複屈折素子3、4および5は、いずれも通過する光の偏光面を回転させないので、光路上において液晶素子2よりも後に光が入射するように配置されていればよい。例えば、図2(a)に示すように、液晶素子2側から複屈折素子4、複屈折素子5、複屈折素子3の順に配置されていてもよいし、図2(b)に示すように、複屈折素子4、複屈折素子3、複屈折素子5の順に配置されていてもよく、同じ効果を得ることができる。さらには複屈折素子4と複屈折素子5とを入れ替えて配置してもよい。
【0098】
また、図1および図2では、液晶素子2、複屈折素子3、4および5は、それぞれ所定の間隔で配置されているが、これらが光学接着剤などによって一体化されていてもよい。このことは、他の実施形態についても同様である。
【0099】
(実施形態2)
図3を参照しながら、本発明による光学シフト素子の第2の実施形態を説明する。図3は、本実施形態における光学シフト素子200を模式的に示している。
【0100】
光学シフト素子200が備える光学シフト部1Aは、液晶素子2および複屈折素子3を有しており、これらの液晶素子2および複屈折素子3は、実施形態1における光学シフト素子100の液晶素子2および複屈折素子3と実質的に同じ構造・機能を有している。
【0101】
光学シフト部1Aは、さらに、補償素子として、光の偏光方向によって屈折率が異なる複屈折素子6を有している。本実施形態では、複屈折素子6として、複屈折素子3と同じ材質である水晶から形成された平行平板を用いる。複屈折素子6は、その主断面が複屈折素子3の主断面と直交するように配置されている。ただし、複屈折素子6は、その光学軸6´が、光学シフト部1Aに入射する光の光軸に対して垂直である点において図1(a)、(b)などに示した複屈折素子4および5とは異なる。図3において、複屈折素子3の光学軸3´が紙面に平行であるのに対して、複屈折素子6の光学軸6´は紙面に垂直である。
【0102】
複屈折素子3の主断面と複屈折素子6の主断面とは直交しているので、複屈折素子3にとっての異常光(複屈折素子3でシフトされる光)は複屈折素子6にとっての常光であり、複屈折素子3にとっての常光(複屈折素子3でシフトされない光)は複屈折素子6にとっての異常光である。ただし、複屈折素子6の光学軸6´は、光軸に対して略垂直であるので、式(3)における右辺の分子が常にゼロとなり、複屈折素子6を通過する光は、たとえ異常光であっても複屈折素子6によって光軸位置をシフトされない。
【0103】
複屈折素子6は、その厚さが、複屈折素子3による常光と異常光との換算距離の差を補償できるように設定されている。そのため、本実施形態の光学シフト素子200を画像表示装置に用いることによって、実施形態1における光学シフト素子100と同様に、高品位の表示を実現することができる。
【0104】
ここで、複屈折素子6の厚さの設定方法を説明する。複屈折素子3と複屈折素子6とを同じ材料を用いて作成しても、これらの光学軸の傾斜角度が互いに異なっていると、複屈折素子3の厚さと複屈折素子6の最適な厚さとの関係は単純ではない。本実施形態や、実施形態1の光学シフト素子100において複屈折素子3と複屈折素子4および5とで光学軸の傾斜角度が異なっている場合には、複屈折素子3を通過する常光および異常光の換算距離を以下のようにして求めればよい。
【0105】
まず、図4を参照しながら、常光の換算距離を求める方法を説明する。図4は、空気中に置かれた屈折率N、厚さdの透明な平行平板7を光が通過するときの振舞いを示している。常光の場合には、複屈折性のない媒質を通過するときと同じ扱いをすることができ、また、異常光であっても複屈折素子6を通過する場合のようにシフトされないときも同様である。
【0106】
平行平板7の左側にある物点Pから右側へ向かう光線は、平行平板7を通過する際に屈折し、経路PEABまたは経路PFCDをとる。平行平板12の右側から眺めると、点Pは経路BAおよび経路DCの延長線の交点P´に位置するように見えるので、図4上では本来の距離よりもL−L´だけ近づいて見える。
【0107】
この距離の差L−L´は、平行平板7の実際の厚さdと平行平板7の換算距離(幾何光学的なみかけ上の距離、換算厚と呼ぶ場合もある)d´との差に等しいので、d−d´=L−L´である。また、空気から平行平板7への入射角度(空気中)をi、平行平板7中での屈折角度(スネルの法則から求めることができる)をrとすると、L´=HA/tani、L=d+(HA―d・tanr)/taniである。そのため、換算距離d´は下式(4)で表される。
【0108】
d´=d×(tanr/tani)・・・・(4)
【0109】
三角関数の定義からtanθ=sinθ/cosθであり、スネルの法則からsini=Nsinrであるので、式(4)は下式(5)のように表現することもできる。
【0110】
d´=d×(cosi/Ncosr)・・・・(5)
【0111】
従って、iが十分に小さい場合(ゼロに近づいた場合)には、換算距離d´は、下式(6)で表すことができる。
【0112】
d´=d/N・・・・・(6)
【0113】
次に、図5を参照しながら異常光がシフトされる場合の換算距離を求める方法を説明する。図5は、空気中に置かれた厚さdの平行平板型の複屈折板8を異常光が通過するときの振舞いを示している。
【0114】
複屈折板8の下側にある物点Pから複屈折板8に垂直に入射する異常光線は、複屈折板8を通過する際に屈折して経路PDOAをとる。また、物点Pから複屈折板8に角度iで入射する異常光線は、複屈折板8を通過する際に屈折して経路PFCBを通る。図5中、rは空気中から入射角度iで入射したときの異常光の屈折角度、r0はi=0°のとき、すなわち垂直入射時の屈折角度である。
【0115】
図5において、複屈折板8の上側から眺めると、点Pは経路AO及び経路BCの延長線の交点P´に位置するように見え、図5上では本来の距離よりも、L−L´の分だけ近づいて見える。この距離の差L−L´は、複屈折板8の実際の厚さdと複屈折板8の換算距離d´との差に等しいので、d−d´=L−L´である。また、L´=OC/tani、L=d+(OC+d・tanr0−d・tanr)/taniであるので、換算距離d’は下式(7)で表される。
【0116】
d´=d×(tanr−tanr0)/tani・・・・(7)
【0117】
一方、入射角度iと屈折角度rの関係は下式(8)または(8´)で表される。
【0118】
【数2】
【0119】
【数3】
【0120】
複屈折板8として水晶を用いる場合、λ=589nmにおける異常光屈折率Neは1.5534、常光屈折率Noは1.5443であるので、複屈折板8の光学軸8´の傾斜角θを45°とすると、垂直入射時の屈折角度r0は0.3366°になる。ここで入射角度iが十分小さい場合(例えばi=1°)を考えると、式(8)より、屈折角度rは0.9822°であり、式(7)より、換算距離d´は0.6456dである。
【0121】
一方、常光の場合は式(6)に水晶の常光屈折率No(=1.5443)を代入することによって、換算距離d´は0.6475dと求められる。
【0122】
従って、ここでは、常光の方が換算距離が大きく、常光と異常光との換算距離の差Δd´は0.0019dであり、複屈折板8の厚さの約2/1000であることが判る。
【0123】
本実施形態では複屈折素子3の厚さは3.6mmなので、換算距離の差Δd´は約6.8μmになる。
【0124】
この換算距離の差を補償するために、補償素子としての複屈折素子6を常光が通過するときと異常光が通過するときとの換算距離の差を上記の値と一致させる。複屈折素子6を通過する際に生じる換算距離d´は、式(6)より、異常光の場合は式(9)で表され、常光の場合は式(10)で表される。
【0125】
d´=d/Ne=0.6437d・・・・・(9)
d´=d/No=0.6475d・・・・・(10)
【0126】
従って、換算距離の差Δd´は0.0038dであるので、複屈折素子6の厚さを約1.8mmとすることによって、複屈折素子3において生じる換算距離の差と複屈折素子6において生じる換算距離の差とを一致させることができる。勿論、すでに述べたように、複屈折素子3を異常光として通過した光が複屈折素子6にとっての常光になるように複屈折素子6の光学軸の方向が定められている。
【0127】
本実施形態では、補償素子としての複屈折素子6は、その光学軸6´が入射光の光軸に対して垂直であるので、シフト用の複屈折素子3や、光学シフト素子100の複屈折素子4および5よりも、単位厚さあたりの換算距離の差が大きい(ここではほぼ2倍)。従って、実施形態1の光学シフト素子100と比較すると、補償に必要な複屈折素子の厚さや総体積を小さく(具体的には約半分)することができるので、製造コストを低減することができる。
【0128】
図3では、補償素子としての複屈折素子6を光路上において複屈折素子3よりも光出射側に(後に光が入射するように)配置する場合を示したが、図6に示したように、複屈折素子6が液晶素子2と複屈折素子3との間に配置されていてもよい。
【0129】
なお、本実施形態では、複屈折素子として用いる水晶の常光屈折率および異常光屈折率と光学軸の傾斜角度とから、補償用の複屈折素子6の最適な厚さを求めた結果、複屈折素子3の厚さのほぼ1/2となったが、他の複屈折材料を用いた場合にも必ず半分の厚さになるわけではない。
【0130】
また、複屈折素子3のシフト量が異なる場合、複屈折素子3と複屈折素子6とを異なる材料で構成した場合、あるいは複屈折素子3の光学軸角度が45°でない場合でも、式(6)や式(7)あるいは式(8)を用いて補償するのに最適な複屈折素子6の厚さを求めることができる。
【0131】
さらに、例えば複屈折素子3の材料として正の一軸性の結晶材料(例えば水晶)を用い、複屈折素子6に負の一軸性の結晶材料(例えば方解石)を用いた場合には、屈折率の違いを複屈折素子6の厚さに反映させるのは勿論であるが、方解石では常光の方が換算距離が小さくなるので、複屈折素子3を常光で通過した光が複屈折素子6でも常光となるように、光学軸6´の向きを光軸周りに、図3の場合よりも90°回転させればよい。
【0132】
(実施形態3)
図7を参照しながら、本発明による光学シフト素子の第3の実施形態を説明する。図7は、本実施形態における光学シフト素子300を模式的に示している。
【0133】
光学シフト素子300が備える光学シフト部1Bは、偏光変調素子としての液晶素子2と、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる複屈折素子9および10と、入射光の偏光方向と出射光の偏光方向とが直交するように光の偏光方向を回転させる偏光回転素子11とを有している。液晶素子2、複屈折素子9、偏光回転素子11、複屈折素子10は、光路上に光入射側からこの順に配列されている。
【0134】
液晶素子2は、実施形態1および実施形態2の光学シフト素子100、200が備える液晶素子と同様の構造・機能を有している。
【0135】
本実施形態における複屈折素子9および10は、正の一軸性結晶である水晶から形成された平行平板である。複屈折素子9および10の光学軸9´および10´の方向は図7において紙面と平行で、かつ、光軸に対して45°傾いている。ただし、複屈折素子9の光学軸9´と複屈折素子10の光学軸10´とは光軸に対して互いに反対方向に傾斜しており、互いに直交している。従って、複屈折素子9による光軸位置のシフト方向は、複屈折素子10による光軸位置のシフト方向とは反対である。
【0136】
複屈折素子9および10の厚さは、互いに等しい。そのため、複屈折素子9および10による光軸位置のシフト量は、互いに等しい。具体的には、複屈折素子および10の厚さはそれぞれ1.8mmである。
【0137】
なお、複屈折素子9と複屈折素子10とは光学軸の向きが異なっているが、実質的には同じ部材であり、重ね方を変えるだけで上記の光学軸配置を実現できる。
【0138】
偏光回転素子11は、複屈折素子9と複屈折素子10との間に配置されている。本実施形態では、偏光回転素子11は、入射光の偏光面を90°回転させる素子であり、例えばアートン(ARTON)フィルムを延伸して作られた1/2波長板である。
【0139】
液晶素子2に紙面に垂直な偏光面を有する光が入射する場合について光学シフト素子300の動作を説明する。
【0140】
液晶素子2がオフ状態であるときには、偏光面が紙面に垂直な光は、液晶素子2を通過する際に偏光面を90°回転されるので、複屈折素子9に異常光として入射して紙面上方向に10.5μmシフトされる。複屈折素子9でシフトされた光は、偏光回転素子11で偏光面を90°回転され、複屈折素子10に常光として入射するので、複屈折素子10を通過する際にはシフトされない。従って、液晶素子2がオフ状態である場合、光学シフト素子300に入射した光は、光軸位置を紙面上方向に10.5μmシフトされる(シフト位置B)。
【0141】
一方、液晶素子2がオン状態である場合は、偏光面が紙面に垂直な光は、液晶素子2を通過する際に偏光面を回転されないので、複屈折素子9に常光として入射して、シフトされずに複屈折素子9を通過する。複屈折素子9からシフトされずに出射した光は、偏光回転素子11で偏光面を90°回転され、複屈折素子10に異常光として入射するので、紙面下方向に10.5μmシフトされる。従って、液晶素子2がオン状態である場合、光学シフト素子300に入射した光は、光軸位置を紙面下方向に10.5μmシフトされる(シフト位置A)。
【0142】
従って、シフト位置Aとシフト位置Bとの間のずれ量は、10.5μm+10.5μm=21μmであり、光学シフト素子300は、液晶素子2のオン状態とオフ状態とを切り替えることによって、互いに21μm離れた2つの位置に光軸を設定することができる。
【0143】
光学シフト素子300では、液晶素子2がオン状態であるときとオフ状態であるときとで、光が異常光として複屈折素子を通過する厚さと、光が常光として複屈折素子を通過する厚さとがそれぞれ1.8mmと等しく、シフト位置Aにおいてもシフト位置Bにおいても、換算距離が等しい。
【0144】
そのため、本実施形態においても、光学シフト素子100や光学シフト素子200と同様に、解像度が高く、且つ、高品位の表示を行うことができる。
【0145】
光学シフト素子100および200では、シフト用の複屈折素子3とは別途に、光軸位置のシフトに寄与しない補償用の複屈折素子4、5、6を設けているのに対して、本実施形態では、複屈折素子9と複屈折素子10とがそれぞれ光軸位置のシフト機能を担いつつ、偏光回転素子11が存在することによって互いに相補的に補償素子としても機能する。つまり、複屈折素子9および偏光回転素子11によって、複屈折素子10によって生じる換算距離の差が補償されるし、また、複屈折素子10および偏光回転素子11によって複屈折素子9によって生じる換算距離の差が補償される。
【0146】
そのため、光学シフト部1Bに必要とされる複屈折素子の総厚さや総体積を、光学シフト素子100、200に比べて小さくすることができる。具体的には、光学シフト素子100、200と同じだけのシフト量を確保するためには、光学シフト素子100、200の複屈折素子3と同じだけの厚さ(体積)の複屈折素子材料を用意すればよい。従って、従来の光学シフト素子と同じだけの複屈折素子材料を用意すればよく、製造コストの増加は、複屈折素子を2枚に分けたことによる加工費用と偏光回転素子11の分だけで済む。その結果、補償素子を設けることによる製造コストの上昇を抑制することができる。
【0147】
なお、2枚の複屈折板と、これらの間に設けられた1/2波長板とから構成された素子が、ビオ・サバール板の変形として「続・光の鉛筆」鶴田匡夫著 p.376に紹介されているが、この素子は、レーザー光などの単波長光線の干渉実験(波動光学)に考案されたものであり、入射光を常光成分と異常光成分に分離する際の「光路長」を揃えるためのものである。この素子は、液晶セルなどの偏光状態を変調する素子を有しておらず、偏光成分に従って常光成分と異常光成分とを分離する働きしかない。本発明による光学シフト素子は、非コヒーレント光を用いる画像表示装置に好適に用いられるものであり、レンズ結像(幾何光学)のための「換算距離」を揃えるための構成を有している点で、上記文献に記載されている素子とは使用用途も構成も大きく異なっている。「光路長」が素子の厚さに屈折率を乗じたものであるのに対して、「換算距離」は素子の厚さを屈折率で割ったものであり、光学的意味が全く異なる。
【0148】
図7に示した光学シフト素子300では、液晶素子2よりも光出射側に偏光回転素子11が配置されているので、液晶素子2を出射するときと、光学シフト部1Bから出射するときとでは光の偏光面の向きが異なっている。偏光変調素子から出射したときと光学シフト部から出射したときとで偏光面の向きが同じであることが好ましい場合には、図8に示す光学シフト素子400のような構成を用いてもよい。
【0149】
光学シフト素子400が備える光学シフト部1Cは、図8に示したように、偏光変調素子としての液晶素子2と、複屈折素子12、13および14と、偏光回転素子15および16とを有している。これらは、光路上に光入射側から液晶素子2、複屈折素子12、偏光回転素子15、複屈折素子13、偏光回転素子16、複屈折素子14の順に配列されている。
【0150】
複屈折素子12、13および14は、正の一軸性結晶である水晶から形成された平行平板である。複屈折素子12、13および14の光学軸12´、13´および14´の方向は図8において紙面と平行で、かつ、光軸に対して45°傾いている。ただし、複屈折素子12および14の光学軸12´および14´と複屈折素子13の光学軸13´とは光軸に対して互いに反対方向に傾斜しており、互いに直交している。従って、複屈折素子12および14による光軸位置のシフト方向は、複屈折素子13による光軸位置のシフト方向とは反対である。
【0151】
複屈折素子12および14の厚さは互いに等しく、複屈折素子13の厚さの半分である。そのため、複屈折素子12および14のそれぞれによるシフト量は複屈折素子13によるシフト量の半分である。
【0152】
複屈折素子12と複屈折素子13との間に配置された偏光回転素子15と、複屈折素子13と複屈折素子14との間に配置された偏光回転素子16は、入射光の偏光方向と出射光の偏光方向とが直交するように光の偏光方向を回転させる。本実施形態では、偏光回転素子15および16は、入射光の偏光面を90°回転させる素子であり、例えばアートン(ARTON)フィルムを延伸して作られた1/2波長板である。
【0153】
液晶素子2に紙面に垂直な偏光面を有する光が入射する場合について光学シフト素子400の動作を説明する。
【0154】
液晶素子2がオフ状態であるときには、偏光面が紙面に垂直な光は、液晶素子2を通過する際に偏光面を90°回転されるので、複屈折素子12に異常光として入射して紙面上方向にシフトされる。複屈折素子12でシフトされた光は、偏光回転素子15で偏光面を90°回転され、複屈折素子13に常光として入射するので、複屈折素子13を通過する際にはシフトされない。複屈折素子13からシフトされずに出射した光は、偏光回転素子16で偏光面を90°回転され、複屈折素子14に異常光として入射するので紙面上方向にシフトされる。従って、液晶素子2がオフ状態である場合、光学シフト素子400に入射した光は、光軸位置を紙面上方向にシフトされる(シフト位置B)。
【0155】
一方、液晶素子2がオン状態である場合は、偏光面が紙面に垂直な光は、液晶素子2を通過する際に偏光面を回転されないので、複屈折素子12に常光として入射して、シフトされずに複屈折素子12を通過する。複屈折素子12からシフトされずに出射した光は、偏光回転素子15で偏光面を90°回転され、複屈折素子13に異常光として入射するので、紙面下方向にシフトされる。複屈折素子13でシフトされた光は、偏光回転素子16で偏光面を90°回転され、複屈折素子14に常光として入射するので、複屈折素子14を通過する際にはシフトされない。従って、液晶素子2がオン状態である場合、光学シフト素子400に入射した光は、光軸位置を紙面下方向にシフトされる(シフト位置A)。
【0156】
従って、シフト位置Aとシフト位置Bとの間のずれ量は、複屈折素子12によるシフト量と、複屈折素子13によるシフト量と、複屈折素子14によるシフト量の合計であり、複屈折素子12によるシフト量の4倍である。このように、光学シフト素子400は、液晶素子2のオン状態とオフ状態とを切り替えることによって異なる2つの位置に光軸を設定することができる。
【0157】
なお、21μmのシフト量を確保するために必要な各複屈折素子の厚さは、材料として水晶を用いる場合、複屈折素子12および14では0.9mm、複屈折素子13では1.8mmになる。
【0158】
光学シフト素子400では、液晶素子2がオン状態であるときとオフ状態であるときとで、光が異常光として複屈折素子を通過する厚さと、光が常光として複屈折素子を通過する厚さとがそれぞれ等しく、シフト位置Aにおいてもシフト位置Bにおいても、換算距離が等しい。そのため、本実施形態においても、光学シフト素子300と同様に、解像度が高く、且つ、高品位の表示を行うことができる。光学シフト素子400では、光学シフト素子300に比べて複屈折素子が1つ増えるので、部品点数は増えるものの、複屈折素子の総厚さや総体積は変わらないので、製造コストの上昇はほとんど生じない。
【0159】
なお、ここでは複屈折素子12および複屈折素子14の厚さが互いに等しい構成を示したが、複屈折素子12および複屈折素子14の厚さの合計が複屈折素子13の厚さと等しければ、シフト量を変化させることなく換算距離の補償を行うことができる。図8に示した光学シフト部1Cにおいて複屈折素子14の厚さをゼロにし、その代わりに複屈折素子12の厚さを1.8mmから3.6mmにした構成は、図7に示した光学シフト部1Bの光出射側にさらに偏光回転素子を追加した構成と同じものとなる。ここで例示したように、複屈折素子12および複屈折素子14の厚さが互いに等しい構成とすると、同じ部材を使用できるので製造上の利点が得られる。
【0160】
偏光回転素子としては、例示したものに限定されず、入射光の偏光面と出射光の偏光面とが直交するように光の偏光面を回転できる素子であれば、一般に知られている素子を用いることが可能である。例えば、液晶素子2とほぼ同じ構成の液晶セルを用いることもできる。このとき、これらの液晶セルは、偏光面を回転させるために常にオフ状態で用いるので、電圧印加のための透明電極を省略することができ、そのことによって光透過率を向上することができる。
【0161】
ここまで述べたように、補償素子が光軸位置のシフトに寄与する構成を採用することもできるし、補償素子が光軸位置のシフトに寄与しない構成を採用することもできる。補償素子が光軸位置のシフトに寄与する構成としては、図9(a)および(b)に示す光学シフト素子500のような構成としてもよい。
【0162】
光学シフト素子500は、光学シフト素子100の複屈折素子4および5を、1枚の複屈折素子17に置き換えたものである。光学シフト素子100では、
光学シフト素子500の光学シフト部1Dが備える複屈折素子17は、その主断面が複屈折素子3の主断面と直交するように配置されている。具体的には、複屈折素子17の光学軸17´は、図9(b)において紙面に平行な面内に含まれ、光軸に対して45°傾斜している。従って、複屈折素子17による光軸位置のシフト方向は、複屈折素子3による光軸位置のシフト方向と直交している。
【0163】
また、複屈折素子17の厚さは、複屈折素子3の厚さと等しく、複屈折素子17による光軸位置のシフト量は、複屈折素子3による光軸位置のシフト量と等しい。
【0164】
光学シフト素子500においても、液晶素子2がオン状態であるとき(シフト位置A)とオフ状態であるとき(シフト位置B)とで、光が異常光として複屈折素子を通過する厚さと、光が常光として複屈折素子を通過する厚さとがそれぞれ等しく、シフト位置Aにおいてもシフト位置Bにおいても、換算距離が等しい。そのため、光学シフト素子500を用いても、解像度が高く、且つ、高品位の表示を行うことができる。
【0165】
なお、光学シフト素子500は、光学シフト素子100とは異なり光軸位置をXY平面内で斜め方向(より具体的にはX軸、Y軸と45°をなす方向)にシフトさせる。
【0166】
(実施形態4)
図10を参照しながら、本発明による画像表示装置の実施形態を説明する。図10は、本実施形態における画像表示装置600を模式的に示している。この画像表示装置600は、カラーフィルタを用いないでフルカラー画像を表示する単板式の投影型画像表示装置である。
【0167】
画像表示装置600は、図10に示すように、光源としての白色光源601と、各々が光を変調することができる複数の画素領域を有する画像表示パネル607と、画像表示パネル607から出射した光が入射するように配置された光学シフト素子(画像シフト素子)700と、画像表示パネル607で変調された光によって被投影面上に画像を形成する光学系としての投影レンズ609とを有している。画像表示パネル607に表示された画像は、投影レンズ609の後方に配置されたスクリーン上に投影表示される。
【0168】
画像表示パネル607は、本実施形態では、液晶表示パネルであり、画像表示装置600は、さらに、ダイクロイックミラー604R・604G・604Bと、液晶表示パネル607の光入射側に設けられたマイクロレンズアレイ605とを備えている。
【0169】
白色光源601としては、ここではメタルハライドランプを用いるが、ハロゲンランプやキセノンランプなどを用いてもよい。白色光源601は、球面鏡602、コンデンサーレンズ603とともに光源部を構成している。なお、図10では省略しているが、画像表示装置600には、液晶表示パネル607への無用な紫外線および赤外線をカットするためのUV−IRカットフィルタがコンデンサーレンズ603の光束の出射口に挿入配置されている。これによって、紫外線および赤外線による液晶表示パネル607の不要な温度上昇を低減できる。
【0170】
ダイクロイックミラー604R、604G、604Bは、それぞれ赤、緑、青の各波長帯の光を選択的に反射するものであって、1種類の波長帯の光以外は透過するようになっており、光源部からの略平行光の進行方向に対してそれぞれ異なる角度で配置されている。これらダイクロイックミラー604R、604G、604Bは、公知の多層膜コーティング技術によって作製することができる。
【0171】
ダイクロイックミラー604R、604G、604Bで反射されたそれぞれの光束は、マイクロレンズアレイ605に入射される。このとき光束は、マイクロレンズアレイ605に対してダイクロイックミラー604Rからの反射光(以下、R光と称する)はほぼ垂直に、ダイクロイックミラー604Gからの反射光(以下、G光と称する)とダイクロイックミラー604Bからの反射光(以下、B光と称する)とはR光を中心にして水平面内でそれぞれ反対方向に、所定の角度だけ傾いて、且つマイクロレンズアレイ605上で各色の光束の照射領域が互いに重なり合うように入射するようになっている。
【0172】
図11はRGB光が液晶表示パネル607に入射する様子を示す断面図である。
液晶表示パネル607の光入射側には3つの画素(R用画素、G用画素、B用画素)にひとつの割合でマイクロレンズ606が配置されている。
【0173】
マイクロレンズアレイ605および液晶表示パネル607は一体的に積層されている。各マイクロレンズ606は異なる角度で入射してきたRGB光を、対応する3つの画素に入射させる。各画素は独立して駆動されるため、RGB光はそれぞれ独立して変調される。
【0174】
液晶表示パネル607は、画素ピッチが縦横ともに21μm、画素数が横1286、縦720の対角約31mmサイズで、解像度1280×720のハイビジョン映像を表示することができる。また、画面横方向にはその方向に画像シフトを行うために余分の画素が存在する。
【0175】
液晶表示パネル607の画素配列は、図16のように、RGB各色の正方形画素が横方向に配列されたデルタ配列である。ただし、液晶表示パネル607にはカラーフィルタは設けられていない。液晶表示パネル607に画像信号を入力する映像回路は対応する色用の階調信号を送り込むだけであり、液晶表示パネル607単体ではモノクロ映像を表示するにすぎない。扇形に配置されたダイクロイックミラー604R、604G、604Bとマイクロレンズアレイ605とによってRGBに色分離された光が各画素に集光されることでカラー表示が実現される。
【0176】
液晶表示パネル607を透過することによって変調された光は、光学シフト素子700を通過して投影レンズ609に入射し、投影レンズ609を経た光がスクリーン上に画像を形成する。スクリーン上の画像は、光学シフト素子700によって周期的に画面横方向にシフトされる。
【0177】
画像表示装置600に入力されたフレーム周波数60Hzの映像信号は、各フレーム画像が3つのサブフレームに分解され、3倍の速さの180Hzで順次切替表示される。光学シフト素子608は、シフト素子駆動回路(不図示)から印加電圧を供給され、表示されるサブフレーム画像の切り替えに同期して画像のシフトを行う。3つのサブフレームを通じて、スクリーン上では全ての画素位置においてRGBがそれぞれ1回ずつ表示される。サブフレーム表示とシフトの切り替え周期は映像源の画像フレームの3倍と早く行なわれており、結果として人間の目には3板式と同様、1画素毎にRGBのカラー表示能力を持った投影画像として映る。本実施形態では、単板式で3板式と同様のフルカラーの投影画像を実現できるので、3板式と比較して製造コストが低減される。
【0178】
本実施形態における光学シフト素子700は、光路上に直列的に配列された複数の光学シフト部を備えており、複数の光学シフト部を通過した光の光軸を3つ以上の位置に設定することができる。光学シフト素子700としては、例えば、図12、図13および図14に示す光学シフト素子700A、700Bおよび700Cを用いることができる。
【0179】
図12に示す光学シフト素子700Aは、光路上に直列的に配置された2つの光学シフト部1Eおよび1Fを有している。2つの光学シフト部1Eおよび1Fのうち、光出射側に配置された(後に光が入射する)光学シフト部1Fのみが補償素子を有しており、光入射側に配置された(先に光が入射する)光学シフト部1Eは、補償素子を有していない。
【0180】
光入射側の光学シフト部1Eは、液晶素子2と複屈折素子18とを有しており、複屈折素子18の光学軸18´は、紙面に平行で、かつ、光軸に対して45°傾斜している。複屈折素子18は、ここでは、水晶から形成されており、その厚さは3.6mmである。
【0181】
光出射側の光学シフト部1Fは、液晶素子2と、複屈折素子19および20と、複屈折素子19および20の間に配置された偏光回転素子21とを有しており、図7に示した光学シフト素子300の光学シフト部1Bと実質的に同じ構成を有している。複屈折素子19および20の光学軸19´および20´は、ともに紙面に平行で、光軸に対して45°傾斜している。ただし、光学軸19´および20´とは、光軸に対して反対方向に傾いており、互いに直交している。複屈折素子19および20は、ともに水晶から形成されており、これらの厚さはそれぞれ1.8mmである。
【0182】
光学シフト部1Eおよび1Fのそれぞれは、液晶表示パネル607の画面横方向(図12の紙面における上下方向)に沿って光軸を1画素ピッチ(21μm)シフトさせる。
【0183】
2つの液晶素子2がともにオン状態であると、光軸はシフト位置Aに設定される。このとき、光が常光として通過する複屈折素子の厚さは5.4mm、異常光として通過する複屈折素子の厚さは1.8mmである。
【0184】
光入射側の液晶素子2がオン状態、光出射側の液晶素子2がオフ状態であると、光軸はシフト位置Bに設定される。このとき、光が常光として通過する複屈折素子の厚さは5.4mm、異常光として通過する複屈折素子の厚さは1.8mmであり、シフト位置Aの場合と換算距離が同一になる。
【0185】
2つの液晶素子2がともにオフ状態であると、光軸はシフト位置B´に設定される。シフト位置B´は、シフト位置Bと同じ位置であるが、最終的に出射される光の偏光面がシフト位置Bとは異なっている。このとき、光が常光として通過する複屈折素子の厚さは1.8mm、異常光として通過する複屈折素子の厚さは5.4mmである。なお、シフトさせる際には、シフト位置Bとシフト位置B´とを両方用いてもよいし、一方のみを用いてもよい。
【0186】
光入射側の液晶素子2がオフ状態、光出射側の液晶素子2がオン状態であると、光軸はシフト位置Cに設定される。このとき、光が常光として通過する複屈折素子の厚さは1.8mm、異常光として通過する複屈折素子の厚さは5.4mmであり、シフト位置B´の場合と換算距離が同一になる。
【0187】
光学シフト素子700Aを用いてA、B(またはB´)、Cの3つの位置間でシフトを行うと、補償素子を有しない光学シフト部1Eの分だけ換算距離の差が残存する。
【0188】
しかしながら、2つの光学シフト部の両方が補償素子を有しない場合(例えば、光学シフト部1Eを2つ直列的に配置した場合)には、最大では7.2mm厚の複屈折素子をすべて常光として通過するときとすべて異常光として通過するときとの換算距離の差が生じるのに対して、光学シフト素子700Aでは一方の光学シフト部1Fにおいて換算距離の差が補償されるので、換算距離の差およびスクリーン上での画素サイズの変化を抑制(ここでは半分に)することができる。そのため、表示品位の低下を抑制することができる。
【0189】
また、2つの光学シフト部の両方が補償素子を有しない場合には、3種類の換算距離が生じるので、スクリーン上の画素サイズも図17(a)〜(c)に示すように3種類になる。これに対して、光学シフト素子700Aでは一方の光学シフト部1Fにおいて換算距離の差が補償されることによって換算距離が2種類になるので、スクリーン上の画素サイズも2種類になる。そのため、スクリーンのピント位置をこれらの中間に設定して、両方とも同程度のピントぼけになるように焦点をあわせると、画像のシフトを行っても、スクリーン上の画素のサイズが変化しなくなる。その結果、同一のサイズのRGB画素が重なり合うことになるので、すべての光学シフト部において換算距離の差を補償しなくても画質を改善することができる。
【0190】
ここでは、光学シフト素子が2つの光学シフト部を備える場合について説明したが、3つ以上の光学シフト部を備える場合についても、少なくとも1つの光学シフト部が補償素子を備えていることによって、換算距離の差を小さくすることができるので、表示品位を向上することができる。また、複数の光学シフト部のうちの一部に補償素子を設けて換算距離を2種類とすることによって、十分に画質を改善することができる。
【0191】
なお、光路上に直列的に配列された複数の光学シフト部のうちのいずれに補償素子を設けてもよいが、偏光回転素子の性能が悪い場合や、組立て精度の制約により偏光面の回転を異常光と常光との間でうまく切り替えられない場合には、通過光がさらに常光成分と異常光成分とに分離されて二重像を生じる可能性がある。このような場合には、複数の光学シフト部のうち光路上で光が最後に入射する光学シフト部に補償素子を設けることによって、二重像の発生を抑制することができる。
【0192】
なお、図12では、光学シフト部1Fとして、光学シフト素子300の光学シフト部1Bと実質的に同じものを用いたが、光学シフト素子100の光学シフト部1や光学シフト素子200の光学シフト部1Aと実質的に同じものを用いてもよい。光学シフト素子500の光学シフト部1Dを用いる場合には、この光学シフト部1Dは他の光学シフト部とは異なり斜め方向(X軸、Y軸と45°の角度をなす方向)にシフトを行うので、光学シフト部1Dおよびこれに入射する光の偏光面を予め光軸(Z軸)周りに45°回転させることによって画面横方向(X軸方向)にシフトを行うようにするか、あるいは、シフトした画素が斜め方向に隣接した画素と重なるように光学シフト素子を設計すればよい。このとき、デルタ配列の画像表示パネルでは斜め方向に隣接した画素が比較的遠いので、ストライプ配列の画像表示パネルを用いることが好ましい。勿論、光学シフト素子100、200、300、400の光学シフト部をストライプ配列の画像表示パネルと組み合わせてもよい。
【0193】
また、図12には、2つの光学シフト部1Eおよび1Fによる光軸位置のシフト量が互いに等しい構成を示したが、複屈折素子の厚さを2つの光学シフト部間で異ならせることによって、光軸位置のシフト量が2つの光学シフト部間で異なる構成としてもよい。例えば、一方の光学シフト部に2画素ピッチ分、他方の光学シフト部に1画素ピッチ分のシフト量を持たせることによって、光学シフト素子全体でのシフト量をゼロ、1画素ピッチ、2画素ピッチ、3画素ピッチの4種類にすることができる。
【0194】
複数の光学シフト部間でシフト量が異なる場合、シフト量が大きい光学シフト部ほど複屈折素子の厚さが厚く、換算距離の差が大きい。そのため、シフト量が大きい光学シフト部に優先的に補償素子を設けることが好ましく、光軸位置のシフト量がもっとも大きい光学シフト部が補償素子を有していることが好ましい。
【0195】
図13に示す光学シフト素子700Bは、互いに光軸位置のシフト量が異なる2つの光学シフト部1Gおよび1Hを有しており、光軸位置のシフト量がより大きい光学シフト部1Gにおいて換算距離の差を補償している。
【0196】
光入射側の光学シフト部1Gは、液晶素子2と、複屈折素子22および23と、複屈折素子22および23の間に配置された偏光回転素子24とを有しており、図7に示した光学シフト素子300の光学シフト部1Bと実質的に同じ構成を有している。複屈折素子22および23の光学軸22´および23´は、ともに紙面に平行で、光軸に対して45°傾斜している。ただし、光学軸22´および23´は、光軸に対して互いに反対方向に傾いており、互いに直交している。複屈折素子22および23は、ともに水晶から形成されており、これらの厚さはそれぞれ3.6mmである。
【0197】
光出射側の光学シフト部1Hは、液晶素子2と複屈折素子25とを有しており、複屈折素子25の光学軸25´は、紙面に平行で、かつ、光軸に対して45°傾斜している。複屈折素子25は、ここでは、水晶から形成されており、その厚さは3.6mmである。
【0198】
光入射側の光学シフト部1Gによるシフト量は、2画素ピッチ分であり、光出射側の光学シフト部1Hによるシフト量は、1画素ピッチ分である。
【0199】
ここで、仮に、光学シフト部1Gにおいて換算距離の差を補償せず、光学シフト部1Hにおいて換算距離の差を補償するものとした場合には、2画素ピッチシフトさせる分の複屈折素子に起因した換算距離の差が残存する。
【0200】
これに対して、2画素ピッチ分のシフトを行う光学シフト部1Gの方において換算距離の差を補償すれば、残存する換算距離の差は、1画素ピッチシフトさせる分の複屈折素子に起因したものであるので、画素サイズの変化量をより小さくすることができる。
【0201】
また、光学シフト素子700Bにおいても、一方の光学シフト部において換算距離の差が補償されていることによって換算距離が4種類から2種類に減少するので、先に述べた手法でスクリーンのピント位置を調整することによって、スクリーン上での画素サイズの変化を抑制でき、画質を向上することができる。
【0202】
ここまでは、複数の光学シフト部のうちの一部の光学シフト部が補償素子を備えている場合について説明したが、複数の光学シフト部のそれぞれが補償素子を有している構成とすることによって、より高品位の表示を行うことができる。
【0203】
図14に示す光学シフト素子700Cは、2つの光学シフト部1Iおよび1Jの両方が補償素子を有している。この光学シフト素子700Cは光学シフト部1Iおよび1Jが有する液晶素子2のオン/オフ状態を切り替えることによって、シフト位置A、B、C、Dの4つの位置を選択することができる。
【0204】
光入射側の光学シフト部1Iは、液晶素子2、複屈折素子26、偏光回転素子28および複屈折素子27を光路に沿って光入射側からこの順に有しており、図13に示した光学シフト部1Gと実質的に同じ構成を有している。
【0205】
光出射側の光学シフト部1Jは、液晶素子2、複屈折素子29、偏光回転素子31および複屈折素子30を光路に沿って光入射側からこの順に有しており、図12に示した光学シフト部1Fと実質的に同じ構成を有している。
【0206】
光学シフト素子700Cにおいては、光学シフト部1Iおよび1Jのそれぞれにおいて換算距離の差が補償されているので、光の換算距離が1種類となる。すなわち、4つのシフト位置ABCDのどのシフト位置においても換算距離は一定に保たれる。従ってスクリーンに投影される画素サイズは常に一定の大きさになり、より高画質の表示画像を得ることができる。
【0207】
なお、上述の実施形態1から4では、図9に示した光学シフト素子500を除いて、画像シフトの方向が表示画面の横方向である場合について説明したが、表示画面の縦方向にシフトさせる場合においても本発明を適用できることは言うまでもないし、横方向へのシフトと縦方向へのシフトの両方を行う場合や、斜め方向へのシフトを行う場合においても本発明を適用して画質を改善させることができる。
【0208】
勿論、例示した光学シフト部を1つまたは2つ備える構成に限定されず、光学シフト部を3つ以上備える場合にも、少なくとも1つの光学シフト部が補償素子を備えていることによって表示品位を向上させることができる。光学シフト部の数が増えるほど、換算距離の差が大きくなり、画素サイズの種類も増加してしまうので、本発明による効果が顕著に得られる。
【0209】
また、RGBの画素を重ね合わせるのではなく、シフト方向とシフト量とを調整し、画素と画素の間のブラックマトリクスの位置に画素をシフトさせることによって解像度を向上する方式においても、本発明を用いることによって表示品位の向上を図ることができる。また、単板式だけでなく3板式の投影型画像表示装置の高解像度化においても本発明を用いることができる。
【0210】
さらに、投影型画像表示装置だけでなく、HMDタイプの画像表示装置にも本発明を用いることができる。HMDではスクリーンが存在しないが、レンズを通して表示素子の拡大虚像を観察する構成上、光学シフト素子に起因した換算距離の変化が、拡大虚像の微小な前後位置の変化と画面サイズの振動を発生させるからである。
【0211】
【発明の効果】
本発明によると、画像表示装置、特に、投影型画像表示装置に好適に用いられる光学シフト素子が提供される。本発明による光学シフト素子においては、シフトの有無やシフト量に応じた換算距離の差の発生が抑制されるので、本発明による画像シフト素子を画像表示装置や投影型画像表示装置に用いると、高解像度で高品位の表示が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)および(b)は、本発明による実施形態の光学シフト素子100を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)および(b)は、光学シフト素子100が備える液晶素子および複屈折素子の他の配置を模式的に示す図である。
【図3】本発明による実施形態の光学シフト素子200を模式的に示す断面図である。
【図4】常光の換算距離を求める方法を説明するための図である。
【図5】異常光の換算距離を求める方法を説明するための図である。
【図6】光学シフト素子200が備える液晶素子および複屈折素子の他の配置を模式的に示す図である。
【図7】本発明による実施形態の光学シフト素子300を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明による実施形態の光学シフト素子400を模式的に示す断面図である。
【図9】(a)および(b)は、本発明による実施形態の光学シフト素子500を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明による実施形態の画像表示装置600を模式的に示す図である。
【図11】画像表示装置600の画像表示パネルに光が入射する様子を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明による実施形態の光学シフト素子700Aを模式的に示す断面図である。
【図13】本発明による実施形態の光学シフト素子700Bを模式的に示す断面図である。
【図14】本発明による実施形態の光学シフト素子700Cを模式的に示す断面図である。
【図15】光学シフト素子を備えた従来の画像表示装置を模式的に示す図である。
【図16】(a)、(b)および(c)は、スクリーン上において画素がシフトする理想的な様子を示す図である。
【図17】(a)、(b)および(c)は、スクリーン上において画素がシフトする実際の様子を示す図である。
【符号の説明】
1 光学シフト部
2 液晶素子
3、4、5 複屈折素子
11 偏光回転素子
100、200、300、400、500 光学シフト素子
600 画像表示装置
700、700A、700B、700C 光学シフト素子
Claims (17)
- 入射した光の偏光方向を変調する偏光変調素子と、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第1の複屈折素子とを含む光学シフト部を少なくとも1つ備えた光学シフト素子であって、
前記少なくとも1つの光学シフト部のうちの少なくとも一部の光学シフト部は、前記第1の複屈折素子を通過する常光と異常光との換算距離の差を補償する補償素子を有する、光学シフト素子。 - 前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第2の複屈折素子および第3の複屈折素子を含み、
前記第2の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向と略直交し、
前記第3の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第2の複屈折素子による光軸位置のシフト方向とは反対であり、
前記第2の複屈折素子および前記第3の複屈折素子による光軸位置のシフト量は互いに略等しい、請求項1に記載の光学シフト素子。 - 前記第2の複屈折素子および前記第3の複屈折素子は、前記第1の複屈折素子と同じ材料から形成されており、
前記第2の複屈折素子および前記第3の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、それぞれ前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量の略半分である、請求項2に記載の光学シフト素子。 - 前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第4の複屈折素子を含み、
前記第4の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向と略直交し、
前記第4の複屈折素子は、前記第1の複屈折素子と同じ材料から形成されており、
前記第4の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量と略等しい、請求項1に記載の光学シフト素子。 - 前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なる第5の複屈折素子を含み、前記第5の複屈折素子が有する光学軸は、前記少なくとも一部の光学シフト部に入射する光の光軸に対して略垂直である、請求項1に記載の光学シフト素子。
- 前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第6の複屈折素子と、入射光の偏光方向と出射光の偏光方向とが直交するように光の偏光方向を回転させる第1の偏光回転素子とを含み、
前記第1の偏光回転素子は、前記第1の複屈折素子と前記第6の複屈折素子との間に配置されており、
前記第6の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向とは反対であり、
前記第6の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量と略等しい、請求項1に記載の光学シフト素子。 - 前記第6の複屈折素子は、前記第1の複屈折素子と同じ材料から形成されている、請求項6に記載の光学シフト素子。
- 前記補償素子は、光の偏光方向によって屈折率が異なり、光の偏光方向に応じて光軸位置をシフトさせる第7の複屈折素子および第8の複屈折素子と、入射光の偏光方向と出射光の偏光方向とが直交するように光の偏光方向を回転させる第2の偏光回転素子および第3の偏光回転素子とを含み、
前記第2の偏光回転素子は、前記第1の複屈折素子と前記第7の複屈折素子との間に配置され、前記第3の偏光回転素子は、前記第7の複屈折素子と前記第8の複屈折素子との間に配置されており、
前記第7の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向とは反対で、前記第7の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量の略2倍であり、
前記第8の複屈折素子による光軸位置のシフト方向は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト方向と同じで、前記第8の複屈折素子による光軸位置のシフト量は、前記第1の複屈折素子による光軸位置のシフト量と略等しい、請求項1に記載の光学シフト素子。 - 前記第7の複屈折素子および前記第8の複屈折素子は、前記第1の複屈折素子と同じ材料から形成されている、請求項8に記載の光学シフト素子。
- 前記少なくとも1つの光学シフト部は、光路上に直列的に配列された複数の光学シフト部であり、前記複数の光学シフト部を通過した光の光軸を3つ以上の位置に設定することができる、請求項1から9のいずれかに記載の光学シフト素子。
- 前記複数の光学シフト部のうち前記光路上で光が最後に入射する光学シフト部が前記補償素子を有している、請求項10に記載の光学シフト素子。
- 前記複数の光学シフト部のうち光軸位置のシフト量がもっとも大きい光学シフト部が前記補償素子を有している、請求項10に記載の光学シフト素子。
- 前記複数の光学シフト部を通過して光軸が前記3つ以上の位置に設定された光の換算距離が2種類である、請求項10から12のいずれかに記載の光学シフト素子。
- 前記複数の光学シフト部のそれぞれが前記補償素子を有している、請求項10に記載の光学シフト素子。
- 前記複数の光学シフト部を通過して光軸が前記3つ以上の位置に設定された光の換算距離が1種類である、請求項10または14に記載の光学シフト素子。
- 各々が光を変調することができる複数の画素領域を有する画像表示パネルと、
前記画像表示パネルから出射した光が入射するように配置された請求項1から15のいずれかに記載の光学シフト素子とを備えた画像表示装置。 - 光源と、
各々が光を変調することができる複数の画素領域を有する画像表示パネルと、
前記表示パネルで変調された光によって被投影面上に画像を形成する光学系と、
前記画像表示パネルから出射した光が入射するように配置された請求項1から15のいずれかに記載の光学シフト素子とを備えた投影型画像表示装置。
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2003
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