JP2004293642A - 液体栓用摺動部材およびその製造方法 - Google Patents
液体栓用摺動部材およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004293642A JP2004293642A JP2003085943A JP2003085943A JP2004293642A JP 2004293642 A JP2004293642 A JP 2004293642A JP 2003085943 A JP2003085943 A JP 2003085943A JP 2003085943 A JP2003085943 A JP 2003085943A JP 2004293642 A JP2004293642 A JP 2004293642A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- plate
- sliding member
- hole
- carbon
- valve body
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Images
Landscapes
- Sliding Valves (AREA)
- Domestic Plumbing Installations (AREA)
Abstract
【解決手段】液体栓用摺動部材3は、筒体10の内周面に側面が全周にわたって取着されているとともに主面間を貫通する第一の貫通孔32が形成されている板状体とされ、板状体の一方の主面に主面間を貫通する第二の貫通孔22が形成されている板状の可動弁体2の一主面が回動可能に当接されており、第一の貫通孔32と第二の貫通孔22とが重なったときに液体を通過させる液体栓用摺動部材3において、板状体はセラミックスから成るとともに一方の主面に炭化珪素と二酸化珪素と炭素とを含む被膜33が形成されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水栓、シングルレバー混合栓、サーモスタット混合栓等の湯水混合栓などに用られる液体栓用摺動部材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水栓や湯水混合栓などを構成するフォーセットバルブは、2枚の円板状弁体をそれらの一主面同士が互いに当接した状態で相対的に回動させることによって、各円板状弁体に形成した流体通路としての貫通孔の開閉を行なうようになっている。すなわち、図1に示すように、筒体の内周面に側面が取着された円板状の固定弁体(液体栓用摺動部材)3と、固定弁体3より小径でレバー1により回動可能とされた円板状の可動弁体2とを、それらの対向する主面21,31が当接した状態とし、レバー1の操作で可動弁体2を回動させることによって、可動弁体2に形成された貫通孔22の下側開口と固定弁体3に形成された貫通孔32の上側開口とを重ね合せて、貫通孔22,32を水が通過するようにしていた。貫通孔22の下側開口と貫通孔32の上側開口との重ね合せ具合(重ね合わされた部分の面積)を調整することにより、水の流量を調整することができる。
【0003】
このようなフォーセットバルブは、可動弁体2と固定弁体3との当接面におけるシール性が保持されていること、レバー1の操作力が小さいこと、レバー1の操作力が長期間使用しても変化しないことなどが要求されており、これらの要求を満たすために、近年、様々なセラミック製の固定弁体3の表面にDLC(Diamond Like Carbon)等のダイヤモンド状炭素被膜を形成したものが提案されている。
【0004】
例えば、可動弁体や固定弁体を成すセラミックディスク基体の摺動表面にダイヤモンド状炭素被膜を直接被覆したもの(下記の特許文献1参照)、また、セラミックディスク基体の表面とダイヤモンド状炭素被膜との密着強度を向上させるために、両者の間に介在層として金属、金属の炭化物、窒化物、炭窒化物から選ばれる少なくとも1種から成る薄膜を形成した構成のもの(下記の特許文献2参照)が提案されている。
【0005】
このようにダイヤモンド状炭素被膜を被覆した可動弁体や固定弁体は、炭素の自己潤滑作用により優れた摺動特性を有するとともに、ダイヤモンド状炭素被膜が化学的に非常に安定した材質であるため、耐磨耗性、耐食性、耐熱性に優れたものである。
【0006】
〔特許文献1〕
特開平9−96367号公報
〔特許文献2〕
特開平5−79069号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のダイヤモンド状炭素被膜を被覆した可動弁体や固定弁体は以下のような問題点があった。
【0008】
すなわち、特許文献1に記載された、セラミックディスク基体の摺動表面に直接ダイヤモンド状炭素被膜を被覆したものにおいては、CVD法やイオンプレーティング法等のPVD法によりダイヤモンド状炭素被膜を成膜する際に、セラミックディスク基体の体積固有抵抗が大きいために、炭化水素系のガスより生じた炭素イオンをセラミックディスク基体に十分引き寄せることができず、必要とされる密着力が得られなかった。また、CVD法やPVD法は、高度で特殊な成膜技術を要するため、コスト高となるという問題点があった。
【0009】
また、特許文献2に記載された、セラミックディスク基体とダイヤモンド状炭素被膜の間の介在層としてセラミックディスク基体側よりTi,TiN,TiCN,TiCの傾斜膜を形成したものにおいては、可動弁体と固定弁体とを長期間摺動させるとダイヤモンド状炭素被膜が摩滅して介在層のTiが露出するが、Tiは熱伝導性が低いため可動弁体と固定弁体との焼き付きが起こりやすく、長期信頼性に欠けるという問題点があった。
【0010】
したがって、本発明は上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、アルミナセラミックス等のセラミックスから成る固定弁体の摺動面に、密着力の高い炭素を含む被膜をCVD法等の薄膜形成技術を用いずに安価に形成できるとともに、長期にわたって可動弁体および固定弁体が磨耗せずに良好な摺動特性が得られる液体栓用摺動部材およびその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の液体栓用摺動部材は、筒体の内周面に側面が全周にわたって取着されているとともに主面間を貫通する第一の貫通孔が形成されている板状体とされ、該板状体の一方の前記主面に主面間を貫通する第二の貫通孔が形成されている板状の可動弁体の一主面が回動可能に当接されており、前記第一の貫通孔と前記第二の貫通孔とが重なったときに液体を通過させる液体栓用摺動部材において、前記板状体はセラミックスから成るとともに一方の前記主面に炭化珪素と二酸化珪素と炭素とを含む被膜が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の液体栓用摺動部材は、液体栓用摺動部材を成す板状体はセラミックスから成るとともに一方の主面に炭化珪素と二酸化珪素と炭素とを含む被膜が形成されていることから、被膜に含まれる炭化珪素は炭素および二酸化珪素との結合力が強く、かつ二酸化珪素はセラミックス中に含まれるガラス成分との結合力が強いため、被膜はそれ自体の硬度が大きいとともにセラミックスから成る板状体にきわめて強固に密着することとなる。したがって、長期にわたって可動弁体および液体栓用摺動部材(固定弁体)が磨耗せずに良好な摺動特性が得られる信頼性の高い液体栓用摺動部材となる。
【0013】
本発明の液体栓用摺動部材の製造方法は、上記本発明の液体栓用摺動部材となる前記板状体の一方の前記主面に、ポリイミドおよびアルコキシシランを含む混合溶液を塗布し乾燥して非酸化性雰囲気で焼成することにより、炭化珪素と二酸化珪素と炭素とを含む被膜を形成することを特徴とする。
【0014】
本発明の液体栓用摺動部材の製造方法は、液体栓用摺動部材となる板状体の一方の主面に、ポリイミドおよびアルコキシシランを含む混合溶液を塗布し乾燥して非酸化性雰囲気で焼成することにより、炭化珪素と二酸化珪素と炭素とを含む被膜が形成されることから、その被膜が板状体の一方の主面に強固に密着することとなる。すなわち、アルコキシシラン(Si(OR)4)は、非酸化性雰囲気において、分子レベルで一部が二酸化珪素(SiO2)に、一部が炭化珪素(SiC)に、残部カーボンになるが、SiO2は板状体のガラス成分とSiCとに対して密着性が良く、SiCはSiO2と、ポリイミドの熱分解で生じたカーボンとに対して密着性が良い。従って、板状体とカーボンとは、分子レベルでカーボン中に分散したSiO2とSiCとを介して、強固に密着することとなる。
【0015】
また、CVD法等の薄膜形成技術を用いずに被膜を形成することができるため、液体栓用摺動部材を安価に製造することができる。
【0016】
本発明の液体栓用摺動部材の製造方法において、好ましくは、80乃至95重量部のポリイミドと5乃至20重量部のアルコキシシランと有機溶剤とを含む混合溶液を、前記板状体の一方の前記主面に塗布し乾燥して非酸化性雰囲気で800乃至1500℃で焼成することを特徴とする。
【0017】
本発明の液体栓用摺動部材の製造方法は、好ましくは80乃至95重量部のポリイミドと5乃至20重量部のアルコキシシランと有機溶剤とを含む混合溶液を、板状体の一方の主面に塗布し乾燥して非酸化性雰囲気で800乃至1500℃で焼成することから、硬度の大きい炭素を含む被膜を、セラミックスから成る板状体により強固に密着させて形成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の液体栓用摺動部材について以下の詳細に説明する。図1は本発明の液体栓用摺動部材としての固定弁体を有する水道栓の要部断面図である。図1において、2は可動弁体、3は固定弁体、10は水道栓を成す筒体、33は被膜である。
【0019】
本発明の液体栓用摺動部材としての固定弁体3は、ステンレススチール,鉛,銅(Cu)−亜鉛(Zn)合金等から成る筒体10の内周面に側面が全周にわたって取着されているとともに主面間を貫通する第一の貫通孔32が形成されている板状体とされ、板状体の一方の主面に主面間を貫通する第二の貫通孔22が形成されている板状の可動弁体2の一主面が回動可能に当接されており、第一の貫通孔32と第二の貫通孔22とが重なったときに液体を通過させるものにおいて、板状体はセラミックスから成るとともに一方の主面に炭化珪素と二酸化珪素と炭素とを含む被膜33が形成されている。
【0020】
本発明における固定弁体3を成す板状体は、アルミナ質焼結体(アルミナセラミックス)、ジルコニアセラミックス等のセラミックスから成るが、アルミナセラミックスが、耐磨耗性、耐食性に優れているため好適である。セラミックスから成る板状体は、そのままでは摩擦係数が高いために摺動回数が増えるに伴ってトルクが増大し、レバー1の操作が困難となってしまう。そこで、摺動面である一方の主面に本発明による炭素等を含む被膜33を形成して摩擦係数を小さくし、トルクが増大しないようにしている。
【0021】
固定弁体3は、筒体10の内周面に側面が全周にわたって取着されているが、その取着は筒体10の内周面に形成された溝等に固定弁体3の外周部を嵌め込むといった方法等によって行なわれる。
【0022】
また固定弁体3の主面間を貫通する第一の貫通孔32は、その断面積が20〜50mm2程度のものであり、可動弁体2の主面間を貫通する第二の貫通孔22についても同程度である。
【0023】
固定弁体3の厚みは1〜5mm程度がよく、1mm未満では、固定弁体3に対する可動弁体2の摺動時の圧接力により割れる危険性があり、5mmを超えると、水道栓自体の形状が大きくなり、コスト高となる。
【0024】
固定弁体3および可動弁体2は、円板状、楕円板状、四角形状等の多角板状等の種々の形状とし得るが、製造加工のし易さ、外周縁における摩擦の均一化、強度等の点で円板状がよい。
【0025】
また、固定弁体3および可動弁体2は同軸状に配置されるのがよく、第一の貫通孔32と第二の貫通孔22とを重ね合せることによる水通過の開閉が容易にできるとともに、開閉度の調整も容易になる。すなわち、第一の貫通孔32と第二の貫通孔22とを重ね合せの度合い(重ね合わされる面積)を、レバー1の回転角度によってなめらかに調整でき、急激な開閉によって急激な水流の増減が生じるのを防ぐことができる。
【0026】
可動弁体2は固定弁体3に対してレバー1等によって回動可能に設けられているが、図1に示すようにレバー1は筒体10の蓋体の中央部の貫通孔に回転可能に設けられており、これにより可動弁体2は固定弁体3に対して回動可能とされている。可動弁体2を固定弁体3に対して回動可能とするには、図1の構成に限るものではなく、レバー1を上下動させて歯車等を介して可動弁体2を回動可能としてもよい。
【0027】
本発明の固定弁体3の製造方法は、固定弁体3となる板状体の一方の主面に、ポリイミドおよびアルコキシシランを含む混合溶液を塗布し乾燥して非酸化性雰囲気で焼成することにより、炭化珪素(SiC)と二酸化珪素(SiO2)と炭素(C)とを含む被膜33を形成するものである。すなわち、ポリイミドの非酸化性雰囲気中での熱分解を用いたものである。
【0028】
本発明においてはポリイミドおよびアルコキシシランを含む混合溶液を用いているが、フェノール樹脂,フラン樹脂,エポキシ樹脂などの熱硬化樹脂も、非酸化性雰囲気(水素雰囲気,窒素雰囲気,アルゴン雰囲気等)中で、熱分解により炭素(カーボン)が残りカーボン化するが、分解過程で発生する一酸化炭素,二酸化炭素,水素,メタン,エタンなどのガスや揮発性モノマーが雰囲気中へ拡散されにくく、炭素を含む被膜33中に多数のボイドが発生し、緻密な膜質とならない。これに対して、ポリイミドは、上記ガスや揮発性モノマーが極めて少なく、緻密な被膜33が得られる。
【0029】
ポリイミドおよびアルコキシシランを含む混合溶液は、アルミナセラミックス等のセラミックスの表面に容易に塗布できるため、炭素を含む被膜33の形成に適している。しかしながら、アルコキシシランを含まないポリイミドのみの溶液をセラミックスの表面に塗布し乾燥して非酸化性雰囲気で焼成すると、炭素を含む被膜33は形成できるものの、セラミックスの表面に対する密着性に乏しいため、熱水中に長時間浸す試験を施すと、被膜33が次第に剥離してくるという問題点がある。
【0030】
そこで、種々検討した結果、ポリイミドにアルコキシシランを混合することにより上記問題点が克服できることを見い出した。すなわち、一般式Si(OR)4(Rはアルキル基)で表されるアルコキシシランは、非酸化性雰囲気での熱分解でSiCとSiO2とC(カーボン)の複合物を生成する。SiCはCと密着性が良く、SiO2はセラミックス中に含まれるガラス成分(酸化物成分)との密着性が良い。これにより、炭素を含む被膜33は、それ自体の硬度が高くなるとともにセラミックスの表面に対する密着性が格段に向上する。
【0031】
すなわち、本発明における被膜33は、アルコキシシランが非酸化性雰囲気中で熱分解して分子レベルで生じた、SiO2とSiCを介して、セラミックスから成る板状体に強固に密着させて形成することができる。
【0032】
本発明の被膜33は、具体的には、好ましくは80乃至95重量部のポリイミドと、5乃至20重量部のアルコキシシランと、イソプロピルアルコール等の溶剤とを含む混合溶液を、固定弁体3となる板状体の一方の主面に、スクリーン印刷,筆塗り法,刷毛法,スプレー法,浸漬法,スピンコート法等により塗布し乾燥して非酸化性雰囲気で800乃至1500℃で焼成することによって、形成される。
【0033】
アルコキシシランが5重量%に満たないと、被膜33の密着性が十分でなく、熱水中での耐久試験で剥離が生じ易くなる。アルコキシシランが20重量%を超えると、被膜33表面のSiO2が多くなって摩擦係数が高くなり、摺動特性が低下する。
【0034】
また、焼成温度が800℃未満では、アルコキシシランの熱分解が不十分となり、高い密着性が得られない。1500℃を超えると、セラミックス中のガラス成分が被膜33中に入り込み、被膜33の摩擦係数が高くなる。
【0035】
一般式Si(OR)4で表されるアルコキシシランとしては、メチルシリケート{Si(OCH3)4},エチルシリケート{Si(OC2H5)4}等を用いることができる。溶剤としては、エチルアルコール,イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤と、粘度調整のためのDBP(フタル酸ジブチル),DOP(フタル酸ジオクチル)などのフタル酸エステル系溶剤を用いることができる。
【0036】
【実施例】
本発明の液体栓用摺動部材としての固定弁体の実施例を以下に説明する。
【0037】
図1の断面図に示す水道栓に用いられる固定弁体3は、その可動弁体2側の主面31に被膜33が形成されており、固定弁体3と可動弁体2とがそれらの対向する主面21,31が接した状態で可動弁体2をレバー1により回動させることによって、固定弁体3および可動弁体2に形成された貫通孔22,32の開閉を行ない、水の通過量の調整などの制御をするものである。
【0038】
そして、固定弁体3および可動弁体2は、硬度が高いアルミナセラミックスから成り、以下のようにして作製した。93重量%のアルミナ原料粉末と5重量%のSiO2粉末と2重量%のMgO粉末と混合し、さらにポリビニルアルコールから成る樹脂バインダーを加え、24時間撹拌した後にスプレードライし、平均粒子径50μmのアルミナ造粒体を得た。このアルミナ造粒体を金型プレスによって円板形状に成形した後に大気雰囲気中で約1600℃で焼結した。
【0039】
その焼結体の表面に研削加工と研磨加工を施すことにより、第一の貫通孔32を有し、外径32mm、厚み3mm、平坦度(主面の最大高低差)1μm以下の固定弁体3となる板状体を得た。同様にして、第二の貫通孔22を有し、外径30mm、厚み3mm、平坦度(主面の最大高低差)1μm以下の可動弁体2を得た。
【0040】
次に、種々の含有比率(表1参照)のポリイミドとアルコキシシランの混合溶液を、スクリーン印刷で、板状体の主面31に塗布した。なお、ポリイミドは感光性でも非感光性でもよい。また、アルコキシシランとしてエチルシリケート{Si(OC2H5)4}を用い、溶剤にはエチルアルコールと粘度調整のためのDBPを用いた。
【0041】
混合溶液を塗布した板状体を大気中80℃で熱風乾燥し溶剤を蒸発させた後、N2雰囲気で種々の温度(表1参照)で焼成し被膜33を形成した。得られた固定弁体3のサンプルの摩擦係数をトライボメーターにより測定した。また、沸騰水中に100時間浸漬し、被膜33の密着性を評価した。その結果を表1に示す。なお、摩擦係数は0.4以上で摺動特性が劣化するものである。
【0042】
【表1】
表1より、試料No.1,2は、エチルシリケートの量が少ないため、熱分解によって生成したSiO2が不足して、被膜33の密着性が劣化した。
【0043】
試料No.6は、焼成温度が低過ぎるため、エチルシリケートの熱分解が不十分であり、被膜33の密着性が劣化した。
【0044】
試料No.8は、焼成温度が高過ぎるため、板状体からのガラス成分の被膜33中への入り込みが多くなり、摩擦係数が高くなった。
【0045】
試料No.10,11は、エチルシリケートの量が多いため、熱分解によって生成したSiO2が過剰となり、摩擦係数が高くなった。
【0046】
本発明の試料No.3,4,5,7,9は、エチルシリケートの量が5〜20重量%、焼成温度が800〜1500℃であり、被膜33の密着性は良好であり、かつ摩擦係数が0.3以下と低いものとなった。したがって、優れた摺動特性を有する固定弁体3が得られた。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。たとえば、上記実施の形態では、本発明の液体栓用摺動部材を水道栓用として説明したが、液体としては水に限らず、湯、油、アルコール、各種薬液、茶,コーヒー,酒等の液状の嗜好品、牛乳等の液状の栄養品などの種々の液体を用いることができる。
【0048】
【発明の効果】
本発明の液体栓用摺動部材は、液体栓用摺動部材を成す板状体はセラミックスから成るとともに一方の主面に炭化珪素と二酸化珪素と炭素とを含む被膜が形成されていることから、被膜に含まれる炭化珪素は炭素と二酸化珪素との結合力が強く、かつ二酸化珪素はセラミックス中に含まれるガラス成分との結合力が強いため、被膜はそれ自体の硬度が大きいとともにセラミックスから成る板状体にきわめて強固に密着することとなる。したがって、長期にわたって可動弁体および液体栓用摺動部材(固定弁体)が磨耗せずに良好な摺動特性が得られる信頼性の高い液体栓用摺動部材となる。
【0049】
本発明の液体栓用摺動部材の製造方法は、液体栓用摺動部材となる板状体の一方の主面に、ポリイミドおよびアルコキシシランを含む混合溶液を塗布し乾燥して非酸化性雰囲気で焼成することにより、炭化珪素と二酸化珪素と炭素とを含む被膜が形成されることから、その被膜が板状体の一方の主面に強固に密着することとなる。すなわち、アルコキシシラン(Si(OR)4)は、非酸化性雰囲気において、分子レベルで一部が二酸化珪素(SiO2)に、一部が炭化珪素(SiC)に、残部カーボンになるが、SiO2は板状体のガラス成分とSiCとに対して密着性が良く、SiCはSiO2と、ポリイミドの熱分解で生じたカーボンとに対して密着性が良い。従って、板状体とカーボンとは、分子レベルでカーボン中に分散したSiO2とSiCとを介して、強固に密着することとなる。
【0050】
また、CVD法等の薄膜形成技術を用いずに被膜を形成することができるため、液体栓用摺動部材を安価に製造することができる。
【0051】
本発明の液体栓用摺動部材の製造方法は、好ましくは80乃至95重量部のポリイミドと5乃至20重量部のアルコキシシランと有機溶剤とを含む混合溶液を、板状体の一方の主面に塗布し乾燥して非酸化性雰囲気で800乃至1500℃で焼成することから、硬度の大きい炭素を含む被膜を、セラミックスから成る板状体により強固に密着させて形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液体栓用摺動部材を用いた水道栓の要部断面図。
【符号の説明】
1:操作レバー
2:可動弁体
3:液体栓用摺動部材(固定弁体)
10:筒体
21:主面
31:一方の主面
22:第二の貫通孔
32:第一の貫通孔
33:被膜
Claims (3)
- 筒体の内周面に側面が全周にわたって取着されているとともに主面間を貫通する第一の貫通孔が形成されている板状体とされ、該板状体の一方の前記主面に主面間を貫通する第二の貫通孔が形成されている板状の可動弁体の一主面が回動可能に当接されており、前記第一の貫通孔と前記第二の貫通孔とが重なったときに液体を通過させる液体栓用摺動部材において、前記板状体はセラミックスから成るとともに一方の前記主面に炭化珪素と二酸化珪素と炭素とを含む被膜が形成されていることを特徴とする液体栓用摺動部材。
- 請求項1記載の液体栓用摺動部材となる前記板状体の一方の前記主面に、ポリイミドおよびアルコキシシランを含む混合溶液を塗布し乾燥して非酸化性雰囲気で焼成することにより、炭化珪素と二酸化珪素と炭素とを含む被膜を形成することを特徴とする液体栓用摺動部材の製造方法。
- 80乃至95重量部のポリイミドと5乃至20重量部のアルコキシシランと有機溶剤とを含む混合溶液を、前記板状体の一方の前記主面に塗布し乾燥して非酸化性雰囲気で800乃至1500℃で焼成することを特徴とする請求項2記載の液体栓用摺動部材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003085943A JP4231318B2 (ja) | 2003-03-26 | 2003-03-26 | 液体栓用摺動部材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003085943A JP4231318B2 (ja) | 2003-03-26 | 2003-03-26 | 液体栓用摺動部材の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004293642A true JP2004293642A (ja) | 2004-10-21 |
JP4231318B2 JP4231318B2 (ja) | 2009-02-25 |
Family
ID=33400726
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003085943A Expired - Fee Related JP4231318B2 (ja) | 2003-03-26 | 2003-03-26 | 液体栓用摺動部材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4231318B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020531770A (ja) * | 2017-08-17 | 2020-11-05 | シュンク ケーレンシュトッフテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | 圧力安全装置とその製造方法 |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105570492B (zh) * | 2016-03-25 | 2017-11-07 | 泉州万利得节能科技有限公司 | 多功能抽拉式直饮龙头 |
-
2003
- 2003-03-26 JP JP2003085943A patent/JP4231318B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020531770A (ja) * | 2017-08-17 | 2020-11-05 | シュンク ケーレンシュトッフテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | 圧力安全装置とその製造方法 |
US11359737B2 (en) | 2017-08-17 | 2022-06-14 | Schunk Kohlenstofftechnik Gmbh | Pressure relief device and method for its production |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP4231318B2 (ja) | 2009-02-25 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP3166460B1 (fr) | Revêtement antiadhésif comprenant au moins une couche de décor fonctionnel et article muni d'un tel revêtement | |
KR101276506B1 (ko) | 표면 처리 세라믹스 부재, 그 제조 방법 및 진공 처리 장치 | |
JP2005527934A5 (ja) | ||
EP0712821B1 (en) | Porous ceramic material and producing method of same, and valve unit | |
MX2008004339A (es) | Componente de valvula para grifo. | |
Hu et al. | A robust quasi‐superhydrophobic ceria coating prepared using air‐plasma spraying | |
EP0718256B1 (en) | Ceramic sliding member and process of fabricating the same | |
JP4231318B2 (ja) | 液体栓用摺動部材の製造方法 | |
WO2017153698A1 (fr) | Procede de fabrication d'un revetement thermostable par impression digitale | |
JP6343161B2 (ja) | 遠心噴霧法粉末製造用ディスク | |
EP3861899A1 (en) | Cooking utensil | |
JP2015102240A (ja) | 摺動装置 | |
JP4091761B2 (ja) | ディスクバルブ | |
CN206213807U (zh) | 锅具 | |
JP4398043B2 (ja) | フッ素樹脂塗膜を有する物品及びその製造方法 | |
JP3620910B2 (ja) | セラミックス製摺動部材の製造方法 | |
JP2003336751A (ja) | アルミナセラミックス弁体およびそれを用いた温水栓バルブ | |
CN104768435A (zh) | 具有包括由非氧化或至少部分非氧化的陶瓷制成的防粘涂层的烹饪表面的烹饪装置及包括这种烹饪装置的厨用器具或烹饪家电设备 | |
WO2023277102A1 (ja) | 調理用具 | |
JPS639781A (ja) | バルブ用弁体 | |
JPH08233121A (ja) | フォーセットバルブ | |
JPH10281312A (ja) | 湯水混合栓 | |
JP2004324890A (ja) | 摺動装置及びフォーセットバルブ | |
JPH09317912A (ja) | 湯水混合栓 | |
JPH0693277A (ja) | 酸化物セラミックス製摺動部材 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050909 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20080610 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080617 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080818 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20081111 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20081205 |
|
R150 | Certificate of patent (=grant) or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111212 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111212 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121212 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131212 Year of fee payment: 5 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |