JP2004293484A - 火花点火式エンジン - Google Patents
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Abstract
【課題】吸気通路に配置した弁体を低吸気量時に閉成させ、これにより部分的に絞られた吸気が吸気通路の湾曲部を通過することで、強力なタンブル流を生成させる場合において、高吸気量時は、ピストン頂部に形成した凸状部によりこの時に生成されるタンブル流を減衰させることによって、大幅な点火リタードを実行することなく、ノッキング防止及びエンジン出力向上を図る。
【解決手段】低吸気量状態のときは、吸気通路に配置した流動制御弁20を閉成させて、これにより部分的に絞られた吸気は湾曲部5eを通過して強力なタンブル流f1を生成する。高吸気量状態のときは、流動制御弁20は開弁されるものの湾曲部5eにより強力なタンブル流f1が発生することになり、ピストン頂部3aに形成した凸状部3bによりこのタンブル流f1を減衰させる。
【選択図】 図2
【解決手段】低吸気量状態のときは、吸気通路に配置した流動制御弁20を閉成させて、これにより部分的に絞られた吸気は湾曲部5eを通過して強力なタンブル流f1を生成する。高吸気量状態のときは、流動制御弁20は開弁されるものの湾曲部5eにより強力なタンブル流f1が発生することになり、ピストン頂部3aに形成した凸状部3bによりこのタンブル流f1を減衰させる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、火花点火式エンジンに関し、特に、吸気通路形状と吸気通路の設けた弁体の閉弁制御との組み合わせにより、燃焼室内に強力なタンブル流を形成するよう構成された技術に属すものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、エンジンの燃焼室内において、ピストンの往復動方向に略沿った方向に旋回するタンブル流(縦渦流)を生成させることにより、成層燃焼による燃焼性を改善させたり、燃料と吸気とからなる混合気のミキシング性向上により燃焼性を改善させたりする技術が知られている。
このようなタンブル流は、例えば、吸気通路に設けた流動制御弁(弁体)と吸気通路に形成させた湾曲部とにより生成可能である。つまり、流動制御弁を閉成させて一部の吸気を絞り、これによって吸気通路の断面から見て、吸気を一部分に偏流させる。こうした偏流が、吸気通路の燃焼室への開口部の直ぐ上流側に形成されて吸気流の方向をピストン頂部が位置する方向に変更させる湾曲部の湾曲外方側を通過することで、燃焼室内に供給された偏流が、強力なタンブル流を生成する。
【0003】
こうした技術に関し、例えば、下記特許文献1には、流動制御弁に切欠部を形成するとともに、吸気通路の燃焼室への開口部の直ぐ上流に湾曲部を設け、流動制御弁を閉成させて吸気を絞ることで、タンブル流が増大生成されることが記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−107764号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなタンブル流の増大生成は、燃焼安定性を向上させるために有効な手段である。そこで、例えば、吸入空気量が少ない低吸気量状態に、空燃比を理論空燃比よりもリーンに設定させる、所謂、リーンバーン運転を行うエンジンや、排気ガスの一部を吸気に還流させるEGR装置を備えて、低吸気量状態に排気還流ガスを増量させるエンジンなどにおいては、このような低吸気量状態であっても燃焼安定性をより向上させることができるように、タンブル流を増大させ得る吸気通路形状と流動制御弁の位置や形状に関して日々検討し、改良を加えてきた。
このような吸気通路形状や流動制御弁の改良により、低吸気量状態におけるタンブル流は増大することが略可能となったが、一方で、この改良に伴って高吸気状態におけるタンブル流の増大生成も促進されることになった。ところが、高吸気状態ではタンブル流が強すぎて着火性が必要以上に向上し、自着火によるノッキング発生が増大することが判明した。そこで、こうしたノッキングを抑制するために、大幅な点火リタードを行うことが考えられるが、このような大幅な点火リタードを行うとエンジン出力が低減されてしまうといった問題が生じる。
【0006】
本発明は、以上のような課題に勘案してなされたもので、その目的は、低吸気量運転領域で吸気通路に設けた弁体を閉成させ、この時にタンブル流が増大されるよう形成された吸気通路を備える火花点火式エンジンにおいて、該エンジンのピストン頂部に凸状部を形成することにより、高吸気運転領域におけるタンブル流の過剰な増大生成を抑制して大幅な点火リタードを実行することなく、エンジン出力を向上させることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明においては、燃焼室に供給される吸気が、ピストンの往復動方向に対して所定角度傾斜した方向で、該燃焼室に向かうよう形成された吸気通路と、該吸気通路と該燃焼室とを連通する開口部を開閉させる吸気弁と、該吸気弁上流の上記吸気通路に配置された弁体と、該弁体を、吸入空気量が少ない低吸気量運転領域で閉成させる弁体制御手段と、上記燃焼室において、上記ピストン頂部に対向する位置に配置された点火プラグにより、該燃焼室に供給された混合気を点火させる点火制御手段とを備え、上記吸気通路には、該弁体制御手段により上記弁体が閉成された状態及び開成された状態で、該弁体を通過する吸気が上記燃焼室内における吸気のタンブル流を増大生成させるように、上記開口部の直ぐ上流における該吸気通路の傾斜角度を所定角度より小さくさせる湾曲部が形成されるとともに、上記ピストンの頂部には、上記燃焼室の内方側に隆起した凸状部が形成されることを特徴としている。
このような構成により、吸入空気量が多い高吸気運転領域では、燃焼室内において一旦増大生成されたタンブル流が、ピストン頂部に形成された凸状部によって早期に減衰されることになる。従って、着火性が必要以上に促進されることを抑制することができるため、自着火に伴うノッキングの発生が抑制されることになり、高吸気運転領域といったエンジン出力の増大が要求されるような状態でも、大幅に点火リタードすることなく、エンジン出力向上を図ることが可能となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1において、エンジンの空燃比を制御する空燃比制御手段を備え、該空燃比制御手段は、上記低吸気量運転領域において、空燃比を理論空燃比よりもリーンに設定するとともに、吸入空気量が多い高吸気運転領域では、空燃比を理論空燃比近傍あるいは理論空燃比よりリッチに設定することを特徴としている。
このような構成により、低吸気量運転領域においてタンブル流を増大生成することで、リーンバーン運転時の燃焼性を向上できるとともに、高吸気運転領域においてタンブル流の増大生成を抑制してエンジン出力を向上させることが可能となる。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1において、上記点火制御手段は、吸入空気量が多い高吸気運転領域では、圧縮上死点よりも前で燃焼室内において生成されたタンブル流が上記凸状部により減衰された後に、点火するよう点火時期を制御することを特徴としている。
このような構成により、増大生成されたタンブル流が早期に減衰した後に点火が実行されるため、十分なタンブル流生成中の着火性が過剰に良すぎる状態で点火されて自着火が誘発されることを抑制しつつ、点火時期を進角側に設定でき、従ってノッキング防止とエンジン出力向上との両立を図ることが可能となる。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1において上記ピストンの凸状部は、該ピストンが上死点に位置している状態において、該凸状部の頂部が上記点火プラグから所定距離離間するよう形成されることを特徴としている。
ピストン頂部に凸状部を設けた場合、点火後、火炎が短時間で凸状部に接触し、その後火炎伝播が凸状部の面に沿って進行することで冷損が増大するといった不具合が発生することがあるが、このような構成により、こうした冷損を防止してエンジン出力の向上が図れる。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1において、上記ピストンの凸状部は、該ピストンが上死点に位置している状態において、該凸状部の頂部と上記点火プラグとが、ピストンの往復動方向に平行な同じ線上に配置されないように形成されることを特徴としている。
ピストン頂部に凸状部を設けた場合、点火後、火炎が短時間で凸状部に接触し、その後火炎伝播が凸状部の面に沿って進行することで冷損が増大するといった不具合が発生することがあるが、このような構成により、こうした冷損を防止してエンジン出力の向上が図れる。
【0012】
【発明の実施の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(全体構成)
図1は、本実施形態の吸気ポート噴射式・レシプロ・ガソリンエンジン全体の概略図である。
エンジン1は例えば4気筒などの多気筒エンジンであり、その気筒(シリンダ)2にはピストン3が装填されてその上方側(ピストン3の往復動方向でピストン3の頂部3aが指向する方向。以下同じ)に燃焼室4が形成されている。燃焼室4には吸気ポート5と排気ポート6とが形成され、これらは各々吸気弁7、排気弁8により開閉される。吸気弁7及び排気弁8は各々の頂部に設けられた吸気カムシャフト9,排気カムシャフト10の回転によって駆動され、吸気弁7側の頂部11には、吸気弁7の弁のリフト量(弁リフト量)を変化することができるように、切換え可能な複数のカムから成る弁リフト可変機構12が設けられている。
【0014】
燃焼室4の上部には、先端のスパーク部分が燃焼室4に臨むように点火プラグ13が配設されている。また、シリンダヘッド14には燃料噴射弁15が配設され、この燃料噴射弁15から吸気ポート5に燃料が噴射される。尚、燃料噴射弁15は、図示しないニードル弁及びソレノイドを内蔵し、このソレノイドにパルス信号が印加されてパルス幅に応じた量の燃料を噴射する。
【0015】
吸気ポート5には、独立吸気通路16が接続され、該独立吸気通路16の上流は、高速用通路17と低速用通路18とに分岐して、それぞれエンジン1の全ての気筒2、2、…に対し吸気を供給するサージタンク19に接続されている。この場合、サージタンク19から高速用通路17を介した燃焼室4までの吸気通路の吸気管長さは、サージタンク19から低速用通路18を介した燃焼室4までの吸気通路の吸気管の長さよりも小さく設定されており、また、サージタンク19から高速用通路17を介した燃焼室4までの吸気管容積は、サージタンク19から低速用通路18を介した燃焼室4までの吸気管容積よりも小さく設定されている。
【0016】
また、高速用通路17には、低速用通路18による燃焼室4への吸気の供給を行うか、あるいは高速用通路17による吸気の供給を行うか、どちらか一方に切換えることにより、独立吸気通路16内を流通する吸気の固有振動数を制御可能な固有振動数制御弁21が設けられている。
また、独立吸気通路16には、燃焼室4内で生成されるピストン3の往復動方向に略沿った乱流であるタンブル流(縦渦流)を制御する流動制御弁20が設けられ、こうした、流動制御弁20及び上記の固有振動数制御弁21は、図示しないが、それぞれ弁開閉動作機構により動作される。
【0017】
サージタンク19の上流には、エンジン1の全ての気筒2、2、…に吸気を供給するための共通吸気通路22が接続されており、該共通吸気通路には、その上流側から順に、大気から吸引した吸気中のダストを除去するエアーフィルター23、全ての気筒2、2、…への新気の吸入空気量を検出するエアーフローセンサ24、吸入空気量を調整するとともに図示しないステップモータ等の電気的なアクチュエータにより動作されるスロットル弁25が配置される。なお、共通吸気通路22に、スロットル弁25をバイパスするバイパス通路を形成し、このパイバス通路にバイパス弁を設けて開閉することにより、アイドル運転時に吸入空気量を制御するアイドル回転数制御装置を構成させることもできる。
【0018】
排気ポート6には、排気通路26が接続され、その途中に三元触媒27が配設され、酸化触媒27のさらに下流側にはNOx吸収触媒28が配設されている。三元触媒27は、コージェライト製のハニカム担体に貴金属(Pt、Rh、Pd)を含有するγ−アルミナから成る触媒層をコーティングしたものであり、排気ガス中に含有するHC、COを浄化し、エンジン1の空燃比が理論空燃比(λ=1)か理論空燃比よりも小さいリッチな状態でNOxを浄化する。
NOx吸収触媒28は、コージライト製のハニカム担体に、NOx吸収材(Baなどのアルカリ土類金属、Kなどのアルカリ金属)と貴金属(Pt、Rh、Pd)と含有するγ−アルミナから成る触媒層をコーティングしたものである。これにより、エンジン1の空燃比が、定常的に理論空燃比よりも大きいリーン状態では排ガス中のNOxをNOx吸収材に吸収させ、空燃比が、一時的に理論空燃比か理論空燃比よりも大きいリッチ状態となった時、吸収されたNOxを放出且つ浄化する。
【0019】
また、排気通路26における三元触媒27よりも上流側には、エンジン1の空燃比を検出するため、排ガスの酸素濃度を検出するO2センサ29が設けられている。
【0020】
排気通路26と吸気系のサージタンク19の間には、排ガスの一部を吸気系に還流するEGR(Exhaust Gas Recirculation)通路30が接続され、このEGR通路30は、図示しない弁開閉機構により開閉動作されるEGR弁31によってEGR量(EGRガスの体積量)あるいはEGR率(EGR量を、燃焼室4内に吸入される全ガス量で割った値)を調節可能になっている。
【0021】
また、ECU(Electronic Control Unit)32には、エアーフローセンサ24、O2センサ29、クランク角センサ33、アクセル開度センサ34、エンジン水温センサ35等からの検出信号が入力されるようになっている。
また、ECU32からは、スロットル弁25の開閉をリニアに制御する制御信号、固定振動数制御弁21の開閉動作を制御する制御信号、流動制御弁20の開閉動作を制御する制御信号、燃料噴射弁15によって所望する燃料供給量を所定時期に噴射するよう制御する制御信号、弁リフト可変機構12に対し吸気弁7の弁リフト量を変更させるための制御信号、および点火プラグ13に所定時期に点火させるための制御信号を出力している。
【0022】
次に、図2から図6を参照して、吸気装置及びその周辺構造について詳細に説明する。
図2は、低吸気量状態におけるシリンダヘッド14とその周辺構造に関する側断面の概略図である。
気筒2内には、気筒2の中心軸線の延長上に対応する頂面部36、ピストン3、気筒2に開口する吸気ポート5の2つの開口部5a、5aを開閉させるための夫々2つの吸気弁7、7、及び気筒2に開口する排気ポート6の2つの開口部6a、6aを開閉させるための2つの排気弁8、8により閉塞されたペントルーフ型燃焼室4が形成されている。頂面部36には火花を発生して燃焼室4内に充填、圧縮された混合気を着火させる点火プラグ13が、シリンダヘッド14に形成されたシリンダヘッド取付孔13aを介して配設されており、これにより点火プラグ13先端のスパーク部分が燃焼室4に露出される。
【0023】
また、本実施形態において、ピストン3の頂部3aには、その中心部が燃焼室4に向かって隆起した凸状部3bが形成されている。これは、吸入空気量が多くタンブル流f1が極めて強くなる場合に、タンブル流f1を抑制させて、着火性が必要以上に促進されるのを防止するためで、これによりノッキングを伴うことなく点火時期を進角させてエンジン出力を向上することができる。これについては、後で詳細に説明する。
【0024】
吸気弁7は、バルブステム37の一端部に設けられたタペット38が、シリンダヘッド14上方側でシリンダヘッド14に軸支された吸気カムシャフト9に形成される吸気カム39に当接するよう配置されている。これにより、エンジン1のクランク軸(図示せず)に連結されこの回転に同期した吸気カムシャフト9の回転、つまり吸気カム39の回転によって、吸気弁7は、開口部5aの直上流までの開口通路(スロート部)5bの軸線と同軸に往復動するようにバルブガイド40にて案内されて駆動される。このような構成により、吸気弁7と弁シート5dとが当接した状態では、開口部5aは全閉となり、吸気弁7と弁シート5dとが離間した状態では、開口部5aは開成状態となる。
【0025】
排気ポート4には、吸気ポート5と同様に排気弁8が設けられ、排気弁8は、バルブステム41の一端部に設けられたタペット42が、シリンダヘッド14の上部側でシリンダヘッド14に軸支された排気カムシャフト10に形成される排気カム43に当接する。これにより、エンジン1のクランク軸に連結されこの回転に同期した排気カムシャフト10の回転、つまり排気カム43の回転によって、排気弁8は、開口部6a直上流までの通路の軸線と同軸に往復動するようにバルブガイド44にて案内されるよう駆動される。
【0026】
吸気カム39は、吸気弁7の燃焼室4側へのリフト量である弁リフト量をエンジン回転数やエンジン負荷に応じて可変とするため、低リフトカム39aと高リフトカム39bとを有しており、上述の弁リフト可変機構12は、これら2つのカム39a、39bと、これらのカムを切換え可能とする切換え機構(図示せず)とにより構成される周知の構造である。
低リフトカム39aのカムプロフィールは、低リフトカム39aによる吸気弁7の最大の弁リフト量が、高リフトカム39bによる最大弁リフト量より小さくなるように形成されている。そして、後述するように、吸気弁7は、エンジン1が希薄燃焼運転(リーンバーン運転)される低吸気運転領域においては低リフトカム39aにより駆動される。
また、高リフトカム39bのカムプロフィールは、高リフトカム39bによる吸気弁7の最大の弁リフト量が、低リフトカム39aによる最大弁リフト量より大きくなるように形成されており、後述するように、吸気弁7はエンジン1が高速運転され、且つ高負荷となる高吸気運転領域において高リフトカム39bにより駆動される。
【0027】
独立吸気通路16は、吸気ポート5の上流端が開口しているシリンダヘッド14端面に接続されており、流動制御弁20は、この独立吸気通路16のシリンダヘッド14の端面近傍に配置されている。
図3は、図2における吸気ポート5と独立吸気通路16におけるX−X断面について示した模式図であるが、図2及び図3に示すように、流動制御弁20は、弁軸20aを中心として独立吸気通路16内を流通する吸気流方向に沿って回動可能に支持されている。また、流動制御弁20は、開成させた状態では燃焼室4の弁軸20aよりも上方側の一部が切断されたような形状であり、これにより流動制御弁20が閉状態の場合は、独立吸気通路16の流動制御弁20が位置する部分を、流動制御弁20の上流側から流動制御弁20のある下流側を見て、通路内形状の下側(ピストン3が位置する側)の半分以上が遮断さられた形状となる。この場合、独立吸気通路16内の流動制御弁20上側の一部は開口しており、この開口空間を通過する吸気により燃焼室4内への必要量の吸気供給が可能となる。尚、図2及び図3は、流動制御弁20が閉じた状態を示している。
【0028】
図4は、図2において、流動制御弁20が開弁し、且つ吸気弁7の弁リフト量が大きい状態を示しているが、このように流動制御弁20が全開した状態では、独立吸気通路16の流動制御弁20が位置する部分を流動制御弁20よりも上流側から見て、全通路内が開口した状態となっており、全通路内を通過する吸気によって、燃焼室4への十分な吸気供給が可能となる。
【0029】
吸気ポート5は、シリンダヘッド14における吸気ポート5の上流端から開口通路5b部付近に至るまで1本で形成されているが、開口通路5b付近の隔壁5eで互いに隣接して2本に分岐し、これらは2つある開口部5aにそれぞれ接続されている。このような構成は、一般に、コモンポートと呼ばれており、こうしたポートの採用により吸気抵抗を低減できる効果がある。
【0030】
また、吸気ポート5は、開口部5aから全体的に斜め上方側に向かうように形成されており、開口部5aの直ぐ上流の開口通路5b付近では、上方側に向かうに従って、徐々にその傾斜が緩やかになるよう湾曲部5eが形成されている。
上流通路5c近傍で吸気ポート5の傾斜が所定角度となると、吸気ポート5は、それから実質的に湾曲や段差を生じることなく、直線的に斜め上方に向けて、シリンダヘッド14の端面まで延設形成される。更に独立吸気通路16においても、流動制御弁20が配置される位置までは、この所定角度の傾斜が維持されて、この角度のまま直線的に延設されている。
このような吸気ポート5及び独立吸気通路16の形状により、吸気は、独立吸気通路16から吸気ポート5の開口通路5bまでは吸気抵抗を殆ど受けることなく燃焼室4の位置より少し上方側の位置に向かって斜め下方に所定角度で吸気管路内を進む。その後、開口通路5b近傍の湾曲部5eにおける湾曲外方の通路内壁面により、その進行方向がピストン3の頂部3a方向(下方向)に徐々に変更された後、燃焼室4内に流入することになる。こうして燃焼室4内に流入した吸気は、燃焼室4内で強力なタンブル流f1を生成することになる。
【0031】
また、流動制御弁20が閉弁している状態で比較的吸入空気量が多い時は、特に吸気ポート5の上方側の面を沿って流れる吸気の流速が高まるため、湾曲部5eの湾曲外方の通路内壁面により湾曲される吸気が多くなり、更にタンブル流f1は強化されることとなる。
尚、燃料噴射弁15は、吸気ポート5が2本に分岐する手前で、上流通路5cの上方側の面に配置されており、これにより2つの開口部5a、5aに向けた霧状燃料の噴射が可能となる。
【0032】
(壁部)
次に壁部について、詳細に説明する。
マスク部45は、シリンダヘッド14から燃焼室4に突出した膨出部分であり、これには、吸気ポート5の2つの開口部5a、5aの内壁から延出するように燃焼室4内に向けて突出した壁部45aが形成されている。そして、燃焼室4側からマスク部45を見たときの模式図の図5(但し、吸気弁7は図5の紙面左に位置する。)に示すように、壁部45aは、開口部5aの流動制御弁20が位置する側の開口部5aの略半周に亘って形成されている。また、壁部45aの高さ(膨出したマスク部45の高さと同じ)、つまり燃焼室4への突出量は、吸気弁7が低リフトカム39aにより駆動される場合の最大弁リフト量よりも少し低く設定されている(2mmから5mmの間)。
【0033】
このように吸気弁7が低リフトカム39aにより駆動される場合では、図6に示すように、2つの吸気ポート5、5とも、開口部5aの全周において、燃焼室4と連通することになるが、開口部5aにおいて、流動制御弁20が位置する側、つまり開口通路5b近傍の湾曲部5eの湾曲内方側を通過した吸気が燃焼室4内に流入する側の開口部5aにおける、該壁部45aと吸気弁7との間隙は微小となる。また、開口部5aにおいて、排気ポート8が位置する側、つまり開口通路5b近傍の湾曲部5eの湾曲外方側を通過した吸気が燃焼室4内に流入する側の開口部5aにおける、該開口部5aと吸気弁7との間隙は大きい状態となる。従って、吸気弁7が低リフトカム39aにより駆動される場合では、排気ポート8が位置する側の開口部5aから燃焼室4内に供給される吸気は多く、この吸気によって強力なタンブル流が生成される。一方、流動制御弁20が位置する側の開口部5aから燃焼室4へ供給される吸気は比較的少量に低減されているため、この開口部5aから燃焼室4内に流入した吸気が、燃焼室4内で強力なタンブル流に対向することを防止でき、これによりタンブル流の生成の阻害を抑制できる。また、壁部45aと吸気弁7との間隙は少しではあるが開成されるので、これにより吸気抵抗を低減できて吸入充填量の増量を図ることができる。
尚、図6において破線で示す吸気弁5、5は、高リフトカム39bにより開弁された時の吸気弁5、5の状態を概略的に示したものである。
【0034】
一方、図7は、吸気弁7、7が、高リフトカム39aにより開弁された時の状態を概略的に示したものであるが、この状態では、吸気弁7、7が低リフトカム39aにより開弁された時よりも、吸気弁7と排気ポート6が位置する側の開口部5aの開口、及び吸気弁7と流動制御弁20が位置する側の開口部5aの開口の双方は大きくなる。
従って、吸気弁7、7が、高リフトカム39aにより開弁された時には、開口部5aの全周から燃焼室4内に吸気を大量に供給することが可能となるが、一方で、燃焼室4内におけるタンブル流の生成は抑制されることになる。
尚、図7において点線で示す吸気弁7、7は、低リフトカム39aにより開弁された時の吸気弁5、5の状態を概略的に示したものである。
【0035】
吸気弁7の弁リフト量について、排気行程から吸気行程に架けての排気弁8と吸気弁7の弁リフト量変化を示した図8を参照して詳細に説明すると、吸気弁7が低リフトカム39aにより駆動されるときは、吸気弁7は破線IVLで示すようにその最大の弁リフト量が壁部45aの高さよりも若干高くなるよう駆動される。一方、吸気弁7が高リフトカム39bにより駆動されるときは、吸気弁7は実線IVHで示すように、弁リフト量が壁部45aの高さよりも全般的に高くなるよう駆動されることになる。尚、図8において、EVは、排気弁8の弁リフト量の変化を示している。
【0036】
尚、マスク部45の形状に関して、図2においては、マスク部45(壁部45a)はエンジン1のクランク軸方向(紙面に対して垂直な方向)から見て、その高さが略一定の略台形形状としたが、これに限らず、開口通路5bの流動制御弁20が位置する側の壁部45aの高さを最大として、それから排気ポート6が位置する側の開口通路5bに向かって緩やかに低くするようなスラント状であってもよく(図2、図4の45b参照)、この場合、壁部45a近傍を通過して燃焼室4内に流入する吸気の吸気抵抗をより低減できる。
【0037】
上述したようにサージタンク19の下流には、高速用通路17と、高速用通路17よりも管路が長く且つ高容量の低速用通路18を設けるとともに、高速用通路17には、固有振動数制御弁21を設けている。サージタンク19から独立吸気通路16に対して吸気を供給する際には、固有振動数制御弁21によって、これら2つの吸気通路を切換えることで、吸気管の有する固有振動数を調整し、吸気脈動を利用した吸気充填量の増量と、タンブル流の安定生成とを図っている。これについては、後で詳細に説明する。
【0038】
(エンジン制御)
次に、以上のような吸気装置に対するエンジン制御について説明する。
ECU32は、入力されたアクセル開度センサ34からの検出信号からアクセル開度量を算出し、クランク角センサ11からの検出信号からエンジン回転数を算出し、これらの算出結果をECU32内のスロットル弁制御部(図示せず)に出力して基本的なスロットル弁開度量を設定する。そして、設定されたスロットル弁開度となるようスロットル弁25の弁開閉機構に制御信号を出力することで、スロットル弁25は、要求開度量に開度制御される。
【0039】
このようなスロットル弁25の制御により吸入空気量が変化し、エアフローセンサ23はこれを検出し、その検出信号はECU32に出力される。ECU32は、燃料制御部(図示せず)によって、吸入空気量自体、あるいは吸入空気量から求まるエンジン負荷と、エンジン回転数とに基づいて燃料噴射量と燃料噴射時期とを決定し、燃料噴射弁15から所望する噴射時期に、所望する燃料噴射量の燃料噴射が実行されるよう制御する。この場合、基本的に、燃料噴射量は吸入空気量が多い程あるいはエンジン回転数が高回転程増量されている。また、噴射時期は、排気行程から吸気行程に架けての所定時期に少なくとも1回噴射実行されるよう設定される。
【0040】
本実施形態のエンジン1においては、エンジン回転数が所定回転以下の低回転で、エンジン負荷が所定負荷以下の運転状態のときは、成層燃焼によるリーンバーンを実行するよう制御される。
このために、ECU32は、図9に示すような横軸をエンジン回転数、縦軸をエンジン負荷とする制御マップを記憶しており、このマップに基づいて、燃料噴射部は、エンジン回転数が所定値Ne1以下且つエンジン負荷が所定値Qa1以下のリーンバーン運転領域L(低吸気量運転領域)のときには、エンジン1の空燃比が定常的に理論空燃比よりもリーン(例えばA/Fで18から25)となるように燃料噴射を制御する。
この制御は、現在の吸入空気量に基づいて空燃比が制御マップから決定された目標空燃比となるよう燃料噴射量を制御することで行われる。その際、リーンバーン運転領域L内においては、制御マップ上に、目標空燃比が、運転状態に応じて高回転程、及び高負荷程、理論空燃比に近づくように書込まれており、こうした制御マップから現在の運転状態に対応する目標空燃比を読込むことで、空燃比が制御されることになる。
尚、この時の空燃比制御は、O2センサ29がリニアO2センサの場合であれば、これを用いて、実空燃比が目標のリーン空燃比となるように制御してもよい。
【0041】
一方、制御マップに基づき、エンジン回転数が所定値Ne1以上あるいはエンジン負荷が所定値Qa1以上の領域S(高吸気量運転領域)では、O2センサ29の検出信号により、理論空燃比を目標空燃比とする空燃比F/B(フィードバック)制御が行われ、これにより実空燃比が理論空燃比を含む微小な空燃比の範囲(ウインド)で理論空燃比を挟んでリーンとリッチとを繰返すよう制御して、三元触媒27の触媒機能の向上を図っている。
【0042】
また、ECU32は、流動制御弁20を制御する制御部(図示せず)を備えており、これにより、流動制御弁20は、上記の図9の制御マップに基づいて、リーンバーン運転領域Lにおいて閉成されるよう制御される。具体的には、図9に示すように、エンジン回転数が所定値Ne1以下且つエンジン負荷が所定値Qa1以下の運転領域Lのときに、流動制御弁20は閉じられ、一方、エンジン回転数が所定値Ne1以上、あるいはエンジン負荷が所定値Qa1以上の高吸気運転領域Sのときに、流動制御弁20は全開状態に開成される。
このように、リーンバーン運転領域Lでは、流動制御弁20が閉成されて流動制御弁20によるタンブル流f1の強化が図れるが、高吸気量状態となる領域Sでは、流動制御弁20が開成されるために流動制御弁20によるタンブル流f1の強化は行われないことになる。
【0043】
また、ECU32は弁リフト可変機構12を制御する弁リフト可変機構制御部(図示せず)を備えており、これによって、弁リフト可変機構12による吸気弁7の弁リフト量の可変制御が、図9の制御マップに基づいて行われることになる。具体的には、図9に示すように、リーンバーンを行う領域Lの時には、弁リフト可変機構12は、吸気カム39を低リフトカム39aに切換え、理論空燃比での運転を行う領域Sのときは吸気カム39を高リフトカム39bに切換えている。
これにより、リーンバーン運転領域Lでは、弁リフト可変機構12により低リフトカム39aが選択されることになる。
【0044】
また、ECU32は、固有振動数制御弁21を制御する制御部(図示せず)を備えており、これによって、固有振動数制御弁21の制御が、図9の制御マップに基づいて行われることになる。
具体的には図9に示すように、エンジン負荷に関係なくエンジン回転数がNe2より高回転のときは、固有振動数制御弁21を開弁させて、サージタンク19から燃焼室4に架けての吸気管が有する固有振動数が高くなるよう設定し、これにより高回転での吸気脈動を大きくすることで、燃焼室4内に流入する吸気の吸気充填量を増量している。
一方、エンジン負荷に関係なくエンジン回転数がNe2よりも低回転のときは、固有振動数制御弁21を全閉させて、サージタンク19から燃焼室4の直ぐ上流(つまり、開口部5a)に架けての吸気管が有する固有振動数が低くなるよう設定し、これにより低回転での吸気脈動を大きくすることで、低回転での吸気充填量が増量している。こうして、エンジンの多様な運転領域において、エンジン出力を向上できる。
【0045】
ところで、エンジン回転数がNe2よりも低回転のときであっても、流動制御弁20を閉成させるリーンバーン運転領域Lでは、固有振動数制御弁21を開弁させて、これにより安定したタンブル流f1の生成を図っている。これは、流動制御弁20を閉成させた状態で固有振動数制御弁21を全閉にすると、タンブル流f1の安定した生成が阻害されるためである。
この理由は、流動制御弁20を閉成させた状態で固有振動数制御弁21を全閉にすると、吸気は、閉成された流動制御弁20の上端部と独立吸気通路16の内壁面との間の狭められた開口部分を通過することとなる。この狭められた開口を通過する吸気に対し、サージタンク19から低速用通路18を介した燃焼室4の直ぐ上流までの吸気管に基づく低い固有振動数による吸気脈動が大きく影響を及ぼしているものと考えられる。
【0046】
これに対して、固有振動数制御弁21を開成させることで、サージタンク19から高速用通路17を介した燃焼室4の直ぐ上流までの吸気管に基づく高い固有振動数による吸気脈動が発生することになる。この吸気脈動は、高周波で生成されるため、その分減衰するのも早く、これにより狭められた開口を通過する吸気に対する吸気脈動の影響も早急に低減されて、比較的安定なタンブル流f1の生成が可能となるものと考えられる。また、この時は、エンジン回転数は低回転であり、固有振動数制御弁21を開成させると、サージタンク19から高速用通路17を介した燃焼室4の直ぐ上流までの吸気管による固有振動数と、この時のエンジン回転数とが同調し難くなり、これにより吸気脈動自体が小さくなって、安定したタンブル流f1の生成が可能となるものとも考えられる。
【0047】
更に、本実施形態において、リーンバーン運転領域Lでは、流動制御弁20を閉成させるだけでなく、弁リフト可変機構12により吸気弁7の弁リフト量を低減させ、吸気弁7と開口部5aとの開口面積を減少している。特に開口部5aの壁部45aが形成された側における、吸気弁7と壁部45aとの開口は、微小に狭められる。この状態で、固有振動数制御弁を全閉にした場合も、流動制御弁20を閉成た時と同様にタンブル流f1の安定生成が阻害されることになる。
この理由は、流動制御弁20を閉成た時と同様で、この狭められた開口を通過する吸気に対し、サージタンク19から低速用通路18を介した燃焼室4直前までの吸気管に基づく低い固有振動数による吸気脈動が、大きく影響を及ぼしているものと考えられる。
これに対して、固有振動数制御弁21を全閉させることで、上述と同様に吸気脈動を低減させることができ、安定したタンブル流f1の生成が可能となる。
【0048】
また、ECU32は、点火制御部(図示せず)によって、エンジン負荷とエンジン回転数とに基づいて点火時期を決定し、点火プラグ13により所望の点火時期に、点火するよう制御する。
この場合、本実施形態では、特に高吸気量運転領域Sにおいては、ピストン頂部3aに形成された凸状部3bによって、燃焼室4内で増大生成されたタンブル流f1が略減衰された後に、点火が実行されるよう点火時期を設定する。これはノッキングを防止するためであり、これについては後述する。
また、リーンバーン運転領域では、運転状態に応じた目標空燃比に対し、予め設定された最適な点火時期で点火するよう制御する。
【0049】
(タンブル流)
次に、上述のエンジン1とタンブル流f1との関係について説明する。
エンジン1の運転状態が、リーンバーン運転領域Lにある時(エンジン回転数がNe1より低回転で、エンジン負荷Qa1より低負荷の場合)は、ECU32により弁リフト量可変機構12は、吸気カム39を低リフトカム39aに切換えるため、吸気ポート5と燃焼室4との全体の開口面積は小さくなる。特に、この時、開口部5aの内、流動制御弁20が位置する側の開口部5aは、壁部45aにより更に微小となる。
【0050】
また、このようなリーンバーン運転領域Lにおいて、流動制御弁20は閉成されるように切換えられる。
リーンバーン状態で流動制御弁20が閉成されると、独立吸気通路16の上流から流入する吸気は、流動制御弁20により独立吸気通路16と吸気ポート5との上方側の面に沿って、この面に偏って流通する。こうした吸気流は、開口通路5bの排気ポート6側で進行方向を大きく下側(ピストン3の頂部3aが位置する方向)に湾曲され、開口部5aの内の排気ポート6が位置する側の開口部5aから燃焼室4に流入することになる。また、この吸気は、流動制御弁20により絞れられて、流速が増大されており、これにより燃焼室4内では低吸気量状態でありながら強力なタンブル流f1が生成されることになる(図2参照)。
【0051】
また、この状態では、壁部45aにより、開口部5aの内、流動制御弁20が位置する側の開口部5aにおける壁部45aと吸気弁7との間は狭まっているため、この部分を通過して燃焼室4に供給される吸気が減少される。従って、この部分から燃焼室4に供給される吸気が、燃焼室4内で既に生成されてタンブル流f1に対向することで、タンブル流f1が抑制されるのを防止できる。こうして、流動制御弁20の閉弁によって生成された強力なタンブル流f1の勢いを衰えさせることなく、その強度を比較的長時間維持でき、リーンバーン運転時の燃焼性を向上できる。
【0052】
しかも、この時、固有振動数制御弁21が全閉されて、サージタンク19下流から燃焼室4の直ぐ上流までの吸気通路の有する固有振動数が高い振動数に設定される。これにより、流動制御弁20の閉成による狭められた開口に作用する吸気脈動の影響や、吸気弁7の弁リフト量の低減とによる狭められた開口に作用する吸気脈動の影響によって、これらの開口を通過する吸気流が不安定となるのを防止できる。従って、上述のような流動制御弁20の閉成、及び壁部45aと吸気弁7の弁リフト量の低減とによる強力なタンブル流f1の生成が、吸気脈動により阻害されるのを防止でき、タンブル流f1の安定した生成が可能となる。
【0053】
また、上述のように流動制御弁20が閉成された低吸気量状態であっても、例えば、吸入空気量が比較的少ない極低吸気量状態では、タンブル流f1の生成が阻害される場合がある。これは、流動制御弁20により一旦絞られた吸気が、流動制御弁20と開口部5aとの間で不安定な乱流を発生させ、これにより、開口部5aの流動制御弁20が位置する側から燃焼室4内に流入する吸気が増量することで、こうした吸気が燃焼室4内のタンブル流f1に対向し、タンブル流f1を打ち消してしまうことに起因するものと考えられている。
しかしながら、壁部45aと弁リフト量の制御とにより、開口部5aの内、流動制御弁20が位置する側の開口部5aの開口は狭まっており、この部分を通過して燃焼室4に流入する吸気が減少されるので、タンブル流f1の抑制が防止できる。
【0054】
当然ながら、極低吸気量状態においても固有振動数制御弁21の全閉による吸気脈動の低減は図られているので、開口部5aの内、排気ポート6が位置する側の開口部5aを通過する吸気の安定化を図り、タンブル流f1を確実に生成するとともに、一方、壁部45aが近傍に位置する開口部5aを通過する吸気の安定化を図り、タンブル流f1に対向する吸気を、確実に減少させることができる。
【0055】
以上のように、リーンバーン運転領域Lの低吸気量状態では、流動制御弁20の閉弁と壁部45aと吸気弁7の弁リフト量の制御とによって、常に強力で安定したタンブル流f1を生成させることができるとともに、この時は固有振動数制御弁21も全閉することで、タンブル流f1を更に安定生成させることが可能となる。従って、燃焼安定性が向上し、リーンバーン運転時の燃焼安定限界がよりリーンな状態にシフトするため、リーンバーン運転領域Lにおける目標空燃比をより大きく設定することができ、燃費向上とNOx低減との両立が図れる。
【0056】
次にエンジン1の運転状態が、理論空燃比での運転状態にある時(エンジン回転数がNe1より高回転、あるいはエンジン負荷Qa1より高負荷の場合)の吸気装置と吸気流との関係について説明する。
エンジン回転数がNe1より高回転、あるいはエンジン負荷Qa1より高負荷となる高吸気量状態の場合(領域S)には、エンジン1の出力増大が要求される領域であり、リーンバーン運転ではこのような出力増大を賄うことが困難となるため、燃料噴射制御部は、理論空燃比による運転に切換える(図9参照)。但し、運転状態が、全負荷に近い領域では、空燃比は理論空燃比よりもリッチに制御され、これにより触媒が異常高温となるのを防止している。
流動制御弁20は、このような高吸気量状態では開弁されることになり、これにより流動制御弁20によるタンブル流f1の増大生成は抑制されるものの、開弁によりポンピング損失が低減するため、燃費の向上が図れる。(図4参照)
【0057】
また、弁リフト量可変機構12は、この状態において、ECU32の弁リフト可変機構制御部により吸気カム39を高リフトカム39bに切換えて、開口部5aの開口をその全周に亘って大きくする。この時は、開口部5aの内、壁部21aがある側の開口部5aも大きく開口することになり、これによりタンブル流f1の生成が抑制されるが、多量の吸入空気量を燃焼室4内に供給することが可能となり、高いエンジン出力を確保することができる。(図4、図7参照)
【0058】
ところで、開口通路5bの排気ポート6側に形成される湾曲部5eの湾曲外方は、流動制御弁20が閉弁した状態において、流動制御弁20を通過する吸気が燃焼室4内でタンブル流f1を増大生成しやすいように形成されているが、これは、高吸気量運転状態でも有効である。従って、上述のように流動制御弁20の開成、及び吸気弁7の弁リフト量の増大制御によって、吸入空気量が増大された状態でも、湾曲部5eによるタンブル流f1の増大生成が行われることになり、しかも、この時の吸気の流速は速いため、タンブル流f1の勢いは、低吸気量状態と比べ衰えることはない。
【0059】
こうした状態において、特に高負荷運転状態にある時は、ノッキングが発生し易くなる。これは、吸入空気量の増大とタンブル流f1の増大生成とにより着火性が大きく促進されて、自着火が発生しやすくなることに起因する。
従来であれば、こうしたノッキングに対して点火時期を遅角側に設定することでこれを防止してきたが、点火時期の遅角化により燃焼が緩慢に行われてエンジンの発生トルクのピークが圧縮行程上死点よりも大きく遅角側が発生することなるため、エンジン出力が悪化するといった問題が生じていた。
【0060】
これに対し、本実施形態では、ピストン3頂部3aにタンブル流f1を早期に崩壊させて減衰させる凸状部3bを形成させた。これにより、高吸気量状態において、燃焼室4内で生成されたタンブル流は、凸状部3bによって圧縮行程中の比較的早い時期から崩壊して乱れエネルギに変換し始めることになるため、これに対応して、点火時期を、乱れエネルギーが早急に減衰された後に設定することで、高負荷時のノッキング防止とエンジン出力の向上とを図っている。以下、図10を参照してこれを詳細に説明する。
【0061】
図10は、クランク角に対応する燃焼室4内の点火プラグ13近傍における吸気の乱流強度(乱れエネルギー)を測定した結果を示している。ラインA(プロット:+)が、ピストン頂部3aに凸状部3bを形成させたエンジンに関するデータで、ラインB(プロット:×)が、ピストン頂部3aが平面状に形成されたエンジンに関するデータである。実験条件は、エンジン回転数が低回転でエンジン負荷が高負荷の状態とした。尚、エンジン回転数が低回転でエンジン負荷が低負荷の状態であっても、乱流強度の大きさは全体的に低下するが同様な傾向を示す。
この図10によれば、ピストン頂部3aが凸状に形成された場合は、平面状に形成された場合に比べ、乱流強度が大きい状態が進角側で見られることが理解できる。
【0062】
このように乱流強度が大きい状態では、着火性が過度に良好な状態となっていることに加えて、高吸気量状態では吸入空気量が多いことによっても着火性が向上しているため、この状態で点火されると、自着火が発生し易くなりノッキングの発生頻度が増大する。一方、乱流強度が小さい状態では、元々、高吸気量状態のときであれば吸入空気量が多く着火性が向上されているので、この状態で点火さると自着火は抑制されることになる。
【0063】
そこで、本実施形態では、ピストン頂部3aを凸状形成にするとともに、点火制御部により高吸気量状態における点火時期を、乱流強度が増大後に所定値以下に小さくなった時期θiより遅角側に設定している。しかも、エンジン出力が大きく低下しないように当該時期θiよりも遅角側となる所定時期θfを予め求め、点火時期を、上記の時期θiと上記時期θfとの間の所定期間内における所定時期に設定している。尚、好ましくは、点火時期を、乱流強度が増大後に所定値以下に小さくなった直後の所定時期(時期θi近傍)に設定すれば良い。
具体的には、この所定期間はエンジンの種類によって絶対的な点火時期は若干異なるが、図10によれば、クランク角で圧縮行程上死点の略18°前以降から、略5°前の間が好ましい。(より好ましくは、圧縮行程上死点の略18°前以降から、略10°前の間。)これにより、高吸気量状態において、ノッキングを抑制しつつ、エンジン出力を向上できることになる。
【0064】
一方、ピストン頂部3aを平面形状にした場合では、乱流強度が小さくなる期間は、圧縮上死点の5°以降となるが、これより進角側で点火すると、着火性は上述のように過度に良好であるためノッキングを発生する。また、これより遅角側で点火すると、ノッキングは防止されるが燃焼トルクは低下する。
従って、ピストン頂部3aが平面形状の場合では、高吸気量運転状態の特に高負荷において、ノッキングを抑制しつつ、エンジン出力を向上させることはできない。
【0065】
尚、このようなピストン頂部3aの凸状部3bは、以下のように、上述のリーンバーン運転領域Lでの点火時期制御においても有効である。
つまり、リーンバーン運転領域Lとなる低吸気量状態において、リーンバーン運転中は燃焼速度が遅く、燃焼性が悪化し易いため、従来はリーンバーン運転中は、理論空燃比での運転時に比べ点火時期を進角側に設定することで、燃焼性を向上させていたが、本実施形態のようにピストン頂部3aに凸状部3bを形成することで、点火時期の進角による燃焼性向上効果をより高めることができる。
具体的には、点火時期を乱流強度が大きくなる時よりも進角側、例えば図10によれば、最適には、圧縮上死点の35°前から30°前ぐらいに設定する。これにより、点火後、凸状部3bによる乱流強度が比較的大きい状態で、初期燃焼中(噴射された燃料の10%前後による初期の燃焼)させることができ、これにより初期燃焼の燃焼性を改善し、燃焼変動を低減することになる。こうした燃焼性向上により、リーン限界空燃比がよりリーン空燃比にシフトされ、目標空燃比をより大きな空燃比に設定することができ、燃費向上が図れる。
更に、このような点火時期の進角化により、初期燃焼後のトルクを実質的に生じさせる主燃焼(初期燃焼後、残りの噴射燃料による燃焼)の発生も、圧縮上死点近傍の比較的進角した時期に設定することが可能となり、リーンバーンによるエンジン出力の改善もでき、これによって燃費向上が図れる。
また、このように乱流エネルギーの発生時期を進角化できるため、ポンピング損失低減やNOx低減を目的として流動制御弁20の下流にEGRガスを供給するような場合でも、エンジン出力の改善が可能となる。
つまり、通常EGRガスを供給すると燃焼速度が低下することになるが、本実施形態のように、凸状部3bにより乱流強度を初期燃焼時期に合致させることができるため、これによって、燃焼速度の低下を抑制できる。しかも、この時の燃焼性も向上でき、エンジン出力が改善することになる。
【0066】
(実験結果)
次に、高吸気量状態における本実施形態の実験結果を、図11を参照して以下に説明する。
図11は、エンジン回転数に対する点火時期特性を示しており、実線のラインMT(プロット:▲)は、ピストン頂部3aに凸状部3bを形成した場合において、各回転数に対する最大トルクを発生する点火時期(MBT)を示し、実線のラインFT(プロット:◆)は、ピストン頂部3aを平面状に形成した場合において、各回転数に対する最大トルクを発生する点火時期を示す。また、破線のラインMN(プロット:△)は、ピストン頂部3aに凸状部3bを形成した場合において、各回転数に対するノッキング限界(これより進角側でノッキングが発生する限界値)となる点火時期を示し、破線のラインFN(プロット:◇)は、ピストン頂部3aを平面状に形成した場合において、各回転数に対するノッキング限界となる点火時期を示す。
尚、実験条件は、エンジン回転数が低回転で、エンジン負荷が全負荷状態で実験を行った。
【0067】
これによると、ノッキング限界となる点火時期は、いずれの回転数においても、ピストン頂部3aに凸状部3bを形成したエンジンの方が、ピストン頂部3aが平面状のエンジンよりも、MBTに近づいており、従って、凸状部3bを形成したエンジンの方が、トルク改善効果が大きいことが分かる。
【0068】
次に、エンジン回転数が増大して、エンジン回転数が負荷に関係なくNe2以上となった時について説明する。
この状態では、固有振動数制御弁の制御部により固有振動数制御弁21は開成されて、高速用通路17を利用した吸気脈動による吸入空気量増大が図られて、これにより更に高いエンジン出力を確保できることになる。
また、この状態においても、高負荷状態においては、上述のような乱れエネルギーの減衰性能の向上によるノッキング防止、及びエンジン出力の向上が図れる。
【0069】
(本実施形態に係る作用及び効果)
次に、以上のような実施形態による作用及び効果を説明する。
リーンバーン運転領域Lのような低吸気量状態では、流動制御弁20を閉弁させたり、あるいは、吸気ポート5の開口部5a近傍に壁部45aを設けて、吸気弁7の弁リフト量を減少させることにより、燃焼室4内で生成されるタンブル流f1を強化させ、且つピストン頂部3aに凸状部3bを形成させることで、最適な点火時期を設定した場合、燃焼初期に乱れエネルギーを大きくすることができる。これにより、燃焼性が向上できるとともに燃焼安定性も向上するため、空燃比をよりリーンに設定して、燃費向上とリーン化に伴うNOx低減とを図ることが可能となる。
【0070】
一方、上述のように低吸気量状態でタンブル流f1を増大生成し易いように吸気装置を構成させると、高吸気量状態時においても、吸入空気量が増大された吸気によるタンブル流f1の増大生成がおこなわれることになり、これにより、特に高負荷時はノッキングが発生し易くなる。これを改善しようとして点火時期の遅角設定(点火リタード)を行うとするとエンジン出力が損なわれることになる。
これに対し、本実施形態では、ピストン3の頂部3aに凸状部3bを形成するとともに、これによるタンブル流f1の崩壊によって乱流強度が増大した後に該乱流強度が所定値以下に低下した時期より遅角側で、且つ点火によりエンジン出力が比較的悪化する時期より進角側の所定期間内に点火時期を設定した。これにより、高吸気量状態において、ノッキングを防止しつつエンジン出力の悪化を防止できる。
また、リーンバーン運転領域において、点火時期を進角側に設定させることにより、ピストン3の凸状部3bによって生成されるタンブル流f1崩壊に起因する乱流発生中に、点火による初期燃焼を行わせることができる。これにより、初期燃焼の燃焼性を改善して燃焼変動を低減できるとともに、同時に主燃焼の発生時期を圧縮上死点近傍に合致させることができるので、これらによって、リーンバーン運転中での燃費向上が図れる。
【0071】
(他の実施形態)
上述のような実施形態においては、ピストン頂部3aの凸状部3bの頂部をその先が尖るように形成させたが、これに代えて、凸状部3bの頂部は、ピストン3が圧縮上死点近傍に位置する状態で、点火プラグ13のスパーク部分から所定距離離間するように平面状に形成させたり、あるいは凹状に形成させても良い。(図2の3c参照)
これにより、点火プラグ13による点火後、大部分の火炎伝播が凸状部3bに接触しながらこれに沿って進行することがないので、冷損を抑制して燃焼性を改善でき、燃焼効率の向上が図れる。
【0072】
また、これと同様に、点火プラグ13のスパーク部分と凸状部3bの頂部とが、ピストン3の往復動方向に平行な同じ軸線上に配置されないように形成させても良い。つまり、ピストン3が圧縮行程上死点近傍に位置する状態において、凸状部3bの頂点は、点火プラグ13のスパーク部分に対向する地点に位置せず、エンジン1の前後方向(図2の紙面の表裏方向)から見て、横方向にオフセットするように位置される(図2の3d参照)。これによっても冷損の抑制による燃焼効率の向上が可能である。
【0073】
また、本実施形態においては、リーンバーン運転を行うエンジンに対して、本発明を適用した場合について説明したが、これに代えて、低回転あるいは低負荷でEGR量あるいはEGR率を増量制御してNOx低減やポンピング損失低減を図るエンジンにも適応可能である。
この場合において、エンジン1のECU32は、EGR制御部(図示せず)によりEGR弁31の開度を制御可能であるとともに、図9に示す制御マップと同様に運転状態を区画した制御マップを記録している。制御マップは、全負荷に近い高回転あるは高負荷を除いて、基本的に理論空燃比での運転を行うよう設定するとともに、領域LでEGR量の増量制御を行うよう設定している。流動制御弁の制御部による流動制御弁20の開閉制御と、弁リフト可変機構制御部による弁リフト量の切換制御と、固有振動数制御弁の制御部による固有振動数制御弁21の切換制御は、上述の実施例と同じである。
これにより、低吸気量運転領域において、強力なタンブル流f1によりEGR増量に対する燃焼性を向上させるとともに、高吸気量運転状態において、ノッキング防止とエンジン出力向上とを図ることができる。
【0074】
また、本実施形態においては、マスク部45により形成される壁部45aによって、開口部から流入してタンブル流f1を抑制する吸気流を低減させたが、これに限らず、吸気ポート5の開口通路5bの流動制御弁20側の内壁に窪みや凸部を設けることで、開口部5aから流入してタンブル流f1を抑制する吸気流を低減させてもよい。
また、吸気流動制御弁20は、本実施形態の構造に限定されず、例えばロータリタイプの弁であっても良い。
また、本実施形態においては、EGR弁31の制御により排気還流量を制御したが、これに代えてあるいは併用して、弁リフト可変機構12に、更に吸気弁7の開弁時期を調整する機構を設け、これにより吸気弁7と排気弁8との開弁時期とのオーバーラップ期間を可変にし、例えば第2の実施形態におけるEGR量制御のように燃焼室4に残留する燃焼ガス(既燃ガス)量を制御してもよい。また、吸気弁7の開弁時期を制御するのではなく、排気弁8の開弁時期を制御する開弁時期制御機構を排気弁8に設けて、これにより吸気弁7と排気弁8とのオーバーラップ期間を調整して、既燃ガス量を制御しても良い。
また、エンジン1は、直噴ガソリンエンジンであっても構わない。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明においては、低吸気量運転領域で吸気通路に設けた弁体を閉成させ、この時にタンブル流が増大されるよう形成された吸気通路を備える火花点火式エンジンにおいて、該エンジンのピストン頂部に凸状部を形成することにより、高吸気運転領域におけるタンブル流の過剰な増大生成を抑制して、耐ノッキング性を向上できるため、これにより大幅な点火リタードを実行することなく、エンジン出力を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンを示す全体構成図。
【図2】シリンダヘッド及びその周辺部の吸気装置に関し、吸気弁7が低リフト量状態となる時の側断面を模式的に示した概略図。
【図3】図2のX−X断面を模式的に示した概略図。
【図4】シリンダヘッド14及びその周辺部の吸気装置に関し、吸気弁7が高リフト量状態となる時の側断面を模式的に示した概略図。
【図5】燃焼室4側からマスク部45を見た図。
【図6】吸気弁7が低リフト量状態となるときの吸気弁7の開弁状態を示す模式図。
【図7】吸気弁7が高リフト量状態となるときの吸気弁7の開弁状態を示す模式図。
【図8】吸気弁7の弁リフト量について説明する説明図。
【図9】ECU32の制御マップを示す説明図。
【図10】クランク角と乱流強度との関連を示すグラフ。
【図11】エンジン回転数に対する点火時期特性の実験結果を示すグラフ。
【符号の説明】
2:気筒
3:ピストン
3a:ピストン頂部
3b:凸状部
4:燃焼室
5:吸気ポート
5e:湾曲部
7:吸気弁
12:弁リフト可変機構
13:点火プラグ
20:流動制御弁(弁体)
31:EGR弁(排気還流制御手段)
45a:壁部
f1:タンブル流
L:リーンバーン運転領域(低吸気量運転領域)
S:理論空燃比運転領域(高吸気量運転領域)
【発明の属する技術分野】
本発明は、火花点火式エンジンに関し、特に、吸気通路形状と吸気通路の設けた弁体の閉弁制御との組み合わせにより、燃焼室内に強力なタンブル流を形成するよう構成された技術に属すものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、エンジンの燃焼室内において、ピストンの往復動方向に略沿った方向に旋回するタンブル流(縦渦流)を生成させることにより、成層燃焼による燃焼性を改善させたり、燃料と吸気とからなる混合気のミキシング性向上により燃焼性を改善させたりする技術が知られている。
このようなタンブル流は、例えば、吸気通路に設けた流動制御弁(弁体)と吸気通路に形成させた湾曲部とにより生成可能である。つまり、流動制御弁を閉成させて一部の吸気を絞り、これによって吸気通路の断面から見て、吸気を一部分に偏流させる。こうした偏流が、吸気通路の燃焼室への開口部の直ぐ上流側に形成されて吸気流の方向をピストン頂部が位置する方向に変更させる湾曲部の湾曲外方側を通過することで、燃焼室内に供給された偏流が、強力なタンブル流を生成する。
【0003】
こうした技術に関し、例えば、下記特許文献1には、流動制御弁に切欠部を形成するとともに、吸気通路の燃焼室への開口部の直ぐ上流に湾曲部を設け、流動制御弁を閉成させて吸気を絞ることで、タンブル流が増大生成されることが記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−107764号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなタンブル流の増大生成は、燃焼安定性を向上させるために有効な手段である。そこで、例えば、吸入空気量が少ない低吸気量状態に、空燃比を理論空燃比よりもリーンに設定させる、所謂、リーンバーン運転を行うエンジンや、排気ガスの一部を吸気に還流させるEGR装置を備えて、低吸気量状態に排気還流ガスを増量させるエンジンなどにおいては、このような低吸気量状態であっても燃焼安定性をより向上させることができるように、タンブル流を増大させ得る吸気通路形状と流動制御弁の位置や形状に関して日々検討し、改良を加えてきた。
このような吸気通路形状や流動制御弁の改良により、低吸気量状態におけるタンブル流は増大することが略可能となったが、一方で、この改良に伴って高吸気状態におけるタンブル流の増大生成も促進されることになった。ところが、高吸気状態ではタンブル流が強すぎて着火性が必要以上に向上し、自着火によるノッキング発生が増大することが判明した。そこで、こうしたノッキングを抑制するために、大幅な点火リタードを行うことが考えられるが、このような大幅な点火リタードを行うとエンジン出力が低減されてしまうといった問題が生じる。
【0006】
本発明は、以上のような課題に勘案してなされたもので、その目的は、低吸気量運転領域で吸気通路に設けた弁体を閉成させ、この時にタンブル流が増大されるよう形成された吸気通路を備える火花点火式エンジンにおいて、該エンジンのピストン頂部に凸状部を形成することにより、高吸気運転領域におけるタンブル流の過剰な増大生成を抑制して大幅な点火リタードを実行することなく、エンジン出力を向上させることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明においては、燃焼室に供給される吸気が、ピストンの往復動方向に対して所定角度傾斜した方向で、該燃焼室に向かうよう形成された吸気通路と、該吸気通路と該燃焼室とを連通する開口部を開閉させる吸気弁と、該吸気弁上流の上記吸気通路に配置された弁体と、該弁体を、吸入空気量が少ない低吸気量運転領域で閉成させる弁体制御手段と、上記燃焼室において、上記ピストン頂部に対向する位置に配置された点火プラグにより、該燃焼室に供給された混合気を点火させる点火制御手段とを備え、上記吸気通路には、該弁体制御手段により上記弁体が閉成された状態及び開成された状態で、該弁体を通過する吸気が上記燃焼室内における吸気のタンブル流を増大生成させるように、上記開口部の直ぐ上流における該吸気通路の傾斜角度を所定角度より小さくさせる湾曲部が形成されるとともに、上記ピストンの頂部には、上記燃焼室の内方側に隆起した凸状部が形成されることを特徴としている。
このような構成により、吸入空気量が多い高吸気運転領域では、燃焼室内において一旦増大生成されたタンブル流が、ピストン頂部に形成された凸状部によって早期に減衰されることになる。従って、着火性が必要以上に促進されることを抑制することができるため、自着火に伴うノッキングの発生が抑制されることになり、高吸気運転領域といったエンジン出力の増大が要求されるような状態でも、大幅に点火リタードすることなく、エンジン出力向上を図ることが可能となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1において、エンジンの空燃比を制御する空燃比制御手段を備え、該空燃比制御手段は、上記低吸気量運転領域において、空燃比を理論空燃比よりもリーンに設定するとともに、吸入空気量が多い高吸気運転領域では、空燃比を理論空燃比近傍あるいは理論空燃比よりリッチに設定することを特徴としている。
このような構成により、低吸気量運転領域においてタンブル流を増大生成することで、リーンバーン運転時の燃焼性を向上できるとともに、高吸気運転領域においてタンブル流の増大生成を抑制してエンジン出力を向上させることが可能となる。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1において、上記点火制御手段は、吸入空気量が多い高吸気運転領域では、圧縮上死点よりも前で燃焼室内において生成されたタンブル流が上記凸状部により減衰された後に、点火するよう点火時期を制御することを特徴としている。
このような構成により、増大生成されたタンブル流が早期に減衰した後に点火が実行されるため、十分なタンブル流生成中の着火性が過剰に良すぎる状態で点火されて自着火が誘発されることを抑制しつつ、点火時期を進角側に設定でき、従ってノッキング防止とエンジン出力向上との両立を図ることが可能となる。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1において上記ピストンの凸状部は、該ピストンが上死点に位置している状態において、該凸状部の頂部が上記点火プラグから所定距離離間するよう形成されることを特徴としている。
ピストン頂部に凸状部を設けた場合、点火後、火炎が短時間で凸状部に接触し、その後火炎伝播が凸状部の面に沿って進行することで冷損が増大するといった不具合が発生することがあるが、このような構成により、こうした冷損を防止してエンジン出力の向上が図れる。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1において、上記ピストンの凸状部は、該ピストンが上死点に位置している状態において、該凸状部の頂部と上記点火プラグとが、ピストンの往復動方向に平行な同じ線上に配置されないように形成されることを特徴としている。
ピストン頂部に凸状部を設けた場合、点火後、火炎が短時間で凸状部に接触し、その後火炎伝播が凸状部の面に沿って進行することで冷損が増大するといった不具合が発生することがあるが、このような構成により、こうした冷損を防止してエンジン出力の向上が図れる。
【0012】
【発明の実施の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(全体構成)
図1は、本実施形態の吸気ポート噴射式・レシプロ・ガソリンエンジン全体の概略図である。
エンジン1は例えば4気筒などの多気筒エンジンであり、その気筒(シリンダ)2にはピストン3が装填されてその上方側(ピストン3の往復動方向でピストン3の頂部3aが指向する方向。以下同じ)に燃焼室4が形成されている。燃焼室4には吸気ポート5と排気ポート6とが形成され、これらは各々吸気弁7、排気弁8により開閉される。吸気弁7及び排気弁8は各々の頂部に設けられた吸気カムシャフト9,排気カムシャフト10の回転によって駆動され、吸気弁7側の頂部11には、吸気弁7の弁のリフト量(弁リフト量)を変化することができるように、切換え可能な複数のカムから成る弁リフト可変機構12が設けられている。
【0014】
燃焼室4の上部には、先端のスパーク部分が燃焼室4に臨むように点火プラグ13が配設されている。また、シリンダヘッド14には燃料噴射弁15が配設され、この燃料噴射弁15から吸気ポート5に燃料が噴射される。尚、燃料噴射弁15は、図示しないニードル弁及びソレノイドを内蔵し、このソレノイドにパルス信号が印加されてパルス幅に応じた量の燃料を噴射する。
【0015】
吸気ポート5には、独立吸気通路16が接続され、該独立吸気通路16の上流は、高速用通路17と低速用通路18とに分岐して、それぞれエンジン1の全ての気筒2、2、…に対し吸気を供給するサージタンク19に接続されている。この場合、サージタンク19から高速用通路17を介した燃焼室4までの吸気通路の吸気管長さは、サージタンク19から低速用通路18を介した燃焼室4までの吸気通路の吸気管の長さよりも小さく設定されており、また、サージタンク19から高速用通路17を介した燃焼室4までの吸気管容積は、サージタンク19から低速用通路18を介した燃焼室4までの吸気管容積よりも小さく設定されている。
【0016】
また、高速用通路17には、低速用通路18による燃焼室4への吸気の供給を行うか、あるいは高速用通路17による吸気の供給を行うか、どちらか一方に切換えることにより、独立吸気通路16内を流通する吸気の固有振動数を制御可能な固有振動数制御弁21が設けられている。
また、独立吸気通路16には、燃焼室4内で生成されるピストン3の往復動方向に略沿った乱流であるタンブル流(縦渦流)を制御する流動制御弁20が設けられ、こうした、流動制御弁20及び上記の固有振動数制御弁21は、図示しないが、それぞれ弁開閉動作機構により動作される。
【0017】
サージタンク19の上流には、エンジン1の全ての気筒2、2、…に吸気を供給するための共通吸気通路22が接続されており、該共通吸気通路には、その上流側から順に、大気から吸引した吸気中のダストを除去するエアーフィルター23、全ての気筒2、2、…への新気の吸入空気量を検出するエアーフローセンサ24、吸入空気量を調整するとともに図示しないステップモータ等の電気的なアクチュエータにより動作されるスロットル弁25が配置される。なお、共通吸気通路22に、スロットル弁25をバイパスするバイパス通路を形成し、このパイバス通路にバイパス弁を設けて開閉することにより、アイドル運転時に吸入空気量を制御するアイドル回転数制御装置を構成させることもできる。
【0018】
排気ポート6には、排気通路26が接続され、その途中に三元触媒27が配設され、酸化触媒27のさらに下流側にはNOx吸収触媒28が配設されている。三元触媒27は、コージェライト製のハニカム担体に貴金属(Pt、Rh、Pd)を含有するγ−アルミナから成る触媒層をコーティングしたものであり、排気ガス中に含有するHC、COを浄化し、エンジン1の空燃比が理論空燃比(λ=1)か理論空燃比よりも小さいリッチな状態でNOxを浄化する。
NOx吸収触媒28は、コージライト製のハニカム担体に、NOx吸収材(Baなどのアルカリ土類金属、Kなどのアルカリ金属)と貴金属(Pt、Rh、Pd)と含有するγ−アルミナから成る触媒層をコーティングしたものである。これにより、エンジン1の空燃比が、定常的に理論空燃比よりも大きいリーン状態では排ガス中のNOxをNOx吸収材に吸収させ、空燃比が、一時的に理論空燃比か理論空燃比よりも大きいリッチ状態となった時、吸収されたNOxを放出且つ浄化する。
【0019】
また、排気通路26における三元触媒27よりも上流側には、エンジン1の空燃比を検出するため、排ガスの酸素濃度を検出するO2センサ29が設けられている。
【0020】
排気通路26と吸気系のサージタンク19の間には、排ガスの一部を吸気系に還流するEGR(Exhaust Gas Recirculation)通路30が接続され、このEGR通路30は、図示しない弁開閉機構により開閉動作されるEGR弁31によってEGR量(EGRガスの体積量)あるいはEGR率(EGR量を、燃焼室4内に吸入される全ガス量で割った値)を調節可能になっている。
【0021】
また、ECU(Electronic Control Unit)32には、エアーフローセンサ24、O2センサ29、クランク角センサ33、アクセル開度センサ34、エンジン水温センサ35等からの検出信号が入力されるようになっている。
また、ECU32からは、スロットル弁25の開閉をリニアに制御する制御信号、固定振動数制御弁21の開閉動作を制御する制御信号、流動制御弁20の開閉動作を制御する制御信号、燃料噴射弁15によって所望する燃料供給量を所定時期に噴射するよう制御する制御信号、弁リフト可変機構12に対し吸気弁7の弁リフト量を変更させるための制御信号、および点火プラグ13に所定時期に点火させるための制御信号を出力している。
【0022】
次に、図2から図6を参照して、吸気装置及びその周辺構造について詳細に説明する。
図2は、低吸気量状態におけるシリンダヘッド14とその周辺構造に関する側断面の概略図である。
気筒2内には、気筒2の中心軸線の延長上に対応する頂面部36、ピストン3、気筒2に開口する吸気ポート5の2つの開口部5a、5aを開閉させるための夫々2つの吸気弁7、7、及び気筒2に開口する排気ポート6の2つの開口部6a、6aを開閉させるための2つの排気弁8、8により閉塞されたペントルーフ型燃焼室4が形成されている。頂面部36には火花を発生して燃焼室4内に充填、圧縮された混合気を着火させる点火プラグ13が、シリンダヘッド14に形成されたシリンダヘッド取付孔13aを介して配設されており、これにより点火プラグ13先端のスパーク部分が燃焼室4に露出される。
【0023】
また、本実施形態において、ピストン3の頂部3aには、その中心部が燃焼室4に向かって隆起した凸状部3bが形成されている。これは、吸入空気量が多くタンブル流f1が極めて強くなる場合に、タンブル流f1を抑制させて、着火性が必要以上に促進されるのを防止するためで、これによりノッキングを伴うことなく点火時期を進角させてエンジン出力を向上することができる。これについては、後で詳細に説明する。
【0024】
吸気弁7は、バルブステム37の一端部に設けられたタペット38が、シリンダヘッド14上方側でシリンダヘッド14に軸支された吸気カムシャフト9に形成される吸気カム39に当接するよう配置されている。これにより、エンジン1のクランク軸(図示せず)に連結されこの回転に同期した吸気カムシャフト9の回転、つまり吸気カム39の回転によって、吸気弁7は、開口部5aの直上流までの開口通路(スロート部)5bの軸線と同軸に往復動するようにバルブガイド40にて案内されて駆動される。このような構成により、吸気弁7と弁シート5dとが当接した状態では、開口部5aは全閉となり、吸気弁7と弁シート5dとが離間した状態では、開口部5aは開成状態となる。
【0025】
排気ポート4には、吸気ポート5と同様に排気弁8が設けられ、排気弁8は、バルブステム41の一端部に設けられたタペット42が、シリンダヘッド14の上部側でシリンダヘッド14に軸支された排気カムシャフト10に形成される排気カム43に当接する。これにより、エンジン1のクランク軸に連結されこの回転に同期した排気カムシャフト10の回転、つまり排気カム43の回転によって、排気弁8は、開口部6a直上流までの通路の軸線と同軸に往復動するようにバルブガイド44にて案内されるよう駆動される。
【0026】
吸気カム39は、吸気弁7の燃焼室4側へのリフト量である弁リフト量をエンジン回転数やエンジン負荷に応じて可変とするため、低リフトカム39aと高リフトカム39bとを有しており、上述の弁リフト可変機構12は、これら2つのカム39a、39bと、これらのカムを切換え可能とする切換え機構(図示せず)とにより構成される周知の構造である。
低リフトカム39aのカムプロフィールは、低リフトカム39aによる吸気弁7の最大の弁リフト量が、高リフトカム39bによる最大弁リフト量より小さくなるように形成されている。そして、後述するように、吸気弁7は、エンジン1が希薄燃焼運転(リーンバーン運転)される低吸気運転領域においては低リフトカム39aにより駆動される。
また、高リフトカム39bのカムプロフィールは、高リフトカム39bによる吸気弁7の最大の弁リフト量が、低リフトカム39aによる最大弁リフト量より大きくなるように形成されており、後述するように、吸気弁7はエンジン1が高速運転され、且つ高負荷となる高吸気運転領域において高リフトカム39bにより駆動される。
【0027】
独立吸気通路16は、吸気ポート5の上流端が開口しているシリンダヘッド14端面に接続されており、流動制御弁20は、この独立吸気通路16のシリンダヘッド14の端面近傍に配置されている。
図3は、図2における吸気ポート5と独立吸気通路16におけるX−X断面について示した模式図であるが、図2及び図3に示すように、流動制御弁20は、弁軸20aを中心として独立吸気通路16内を流通する吸気流方向に沿って回動可能に支持されている。また、流動制御弁20は、開成させた状態では燃焼室4の弁軸20aよりも上方側の一部が切断されたような形状であり、これにより流動制御弁20が閉状態の場合は、独立吸気通路16の流動制御弁20が位置する部分を、流動制御弁20の上流側から流動制御弁20のある下流側を見て、通路内形状の下側(ピストン3が位置する側)の半分以上が遮断さられた形状となる。この場合、独立吸気通路16内の流動制御弁20上側の一部は開口しており、この開口空間を通過する吸気により燃焼室4内への必要量の吸気供給が可能となる。尚、図2及び図3は、流動制御弁20が閉じた状態を示している。
【0028】
図4は、図2において、流動制御弁20が開弁し、且つ吸気弁7の弁リフト量が大きい状態を示しているが、このように流動制御弁20が全開した状態では、独立吸気通路16の流動制御弁20が位置する部分を流動制御弁20よりも上流側から見て、全通路内が開口した状態となっており、全通路内を通過する吸気によって、燃焼室4への十分な吸気供給が可能となる。
【0029】
吸気ポート5は、シリンダヘッド14における吸気ポート5の上流端から開口通路5b部付近に至るまで1本で形成されているが、開口通路5b付近の隔壁5eで互いに隣接して2本に分岐し、これらは2つある開口部5aにそれぞれ接続されている。このような構成は、一般に、コモンポートと呼ばれており、こうしたポートの採用により吸気抵抗を低減できる効果がある。
【0030】
また、吸気ポート5は、開口部5aから全体的に斜め上方側に向かうように形成されており、開口部5aの直ぐ上流の開口通路5b付近では、上方側に向かうに従って、徐々にその傾斜が緩やかになるよう湾曲部5eが形成されている。
上流通路5c近傍で吸気ポート5の傾斜が所定角度となると、吸気ポート5は、それから実質的に湾曲や段差を生じることなく、直線的に斜め上方に向けて、シリンダヘッド14の端面まで延設形成される。更に独立吸気通路16においても、流動制御弁20が配置される位置までは、この所定角度の傾斜が維持されて、この角度のまま直線的に延設されている。
このような吸気ポート5及び独立吸気通路16の形状により、吸気は、独立吸気通路16から吸気ポート5の開口通路5bまでは吸気抵抗を殆ど受けることなく燃焼室4の位置より少し上方側の位置に向かって斜め下方に所定角度で吸気管路内を進む。その後、開口通路5b近傍の湾曲部5eにおける湾曲外方の通路内壁面により、その進行方向がピストン3の頂部3a方向(下方向)に徐々に変更された後、燃焼室4内に流入することになる。こうして燃焼室4内に流入した吸気は、燃焼室4内で強力なタンブル流f1を生成することになる。
【0031】
また、流動制御弁20が閉弁している状態で比較的吸入空気量が多い時は、特に吸気ポート5の上方側の面を沿って流れる吸気の流速が高まるため、湾曲部5eの湾曲外方の通路内壁面により湾曲される吸気が多くなり、更にタンブル流f1は強化されることとなる。
尚、燃料噴射弁15は、吸気ポート5が2本に分岐する手前で、上流通路5cの上方側の面に配置されており、これにより2つの開口部5a、5aに向けた霧状燃料の噴射が可能となる。
【0032】
(壁部)
次に壁部について、詳細に説明する。
マスク部45は、シリンダヘッド14から燃焼室4に突出した膨出部分であり、これには、吸気ポート5の2つの開口部5a、5aの内壁から延出するように燃焼室4内に向けて突出した壁部45aが形成されている。そして、燃焼室4側からマスク部45を見たときの模式図の図5(但し、吸気弁7は図5の紙面左に位置する。)に示すように、壁部45aは、開口部5aの流動制御弁20が位置する側の開口部5aの略半周に亘って形成されている。また、壁部45aの高さ(膨出したマスク部45の高さと同じ)、つまり燃焼室4への突出量は、吸気弁7が低リフトカム39aにより駆動される場合の最大弁リフト量よりも少し低く設定されている(2mmから5mmの間)。
【0033】
このように吸気弁7が低リフトカム39aにより駆動される場合では、図6に示すように、2つの吸気ポート5、5とも、開口部5aの全周において、燃焼室4と連通することになるが、開口部5aにおいて、流動制御弁20が位置する側、つまり開口通路5b近傍の湾曲部5eの湾曲内方側を通過した吸気が燃焼室4内に流入する側の開口部5aにおける、該壁部45aと吸気弁7との間隙は微小となる。また、開口部5aにおいて、排気ポート8が位置する側、つまり開口通路5b近傍の湾曲部5eの湾曲外方側を通過した吸気が燃焼室4内に流入する側の開口部5aにおける、該開口部5aと吸気弁7との間隙は大きい状態となる。従って、吸気弁7が低リフトカム39aにより駆動される場合では、排気ポート8が位置する側の開口部5aから燃焼室4内に供給される吸気は多く、この吸気によって強力なタンブル流が生成される。一方、流動制御弁20が位置する側の開口部5aから燃焼室4へ供給される吸気は比較的少量に低減されているため、この開口部5aから燃焼室4内に流入した吸気が、燃焼室4内で強力なタンブル流に対向することを防止でき、これによりタンブル流の生成の阻害を抑制できる。また、壁部45aと吸気弁7との間隙は少しではあるが開成されるので、これにより吸気抵抗を低減できて吸入充填量の増量を図ることができる。
尚、図6において破線で示す吸気弁5、5は、高リフトカム39bにより開弁された時の吸気弁5、5の状態を概略的に示したものである。
【0034】
一方、図7は、吸気弁7、7が、高リフトカム39aにより開弁された時の状態を概略的に示したものであるが、この状態では、吸気弁7、7が低リフトカム39aにより開弁された時よりも、吸気弁7と排気ポート6が位置する側の開口部5aの開口、及び吸気弁7と流動制御弁20が位置する側の開口部5aの開口の双方は大きくなる。
従って、吸気弁7、7が、高リフトカム39aにより開弁された時には、開口部5aの全周から燃焼室4内に吸気を大量に供給することが可能となるが、一方で、燃焼室4内におけるタンブル流の生成は抑制されることになる。
尚、図7において点線で示す吸気弁7、7は、低リフトカム39aにより開弁された時の吸気弁5、5の状態を概略的に示したものである。
【0035】
吸気弁7の弁リフト量について、排気行程から吸気行程に架けての排気弁8と吸気弁7の弁リフト量変化を示した図8を参照して詳細に説明すると、吸気弁7が低リフトカム39aにより駆動されるときは、吸気弁7は破線IVLで示すようにその最大の弁リフト量が壁部45aの高さよりも若干高くなるよう駆動される。一方、吸気弁7が高リフトカム39bにより駆動されるときは、吸気弁7は実線IVHで示すように、弁リフト量が壁部45aの高さよりも全般的に高くなるよう駆動されることになる。尚、図8において、EVは、排気弁8の弁リフト量の変化を示している。
【0036】
尚、マスク部45の形状に関して、図2においては、マスク部45(壁部45a)はエンジン1のクランク軸方向(紙面に対して垂直な方向)から見て、その高さが略一定の略台形形状としたが、これに限らず、開口通路5bの流動制御弁20が位置する側の壁部45aの高さを最大として、それから排気ポート6が位置する側の開口通路5bに向かって緩やかに低くするようなスラント状であってもよく(図2、図4の45b参照)、この場合、壁部45a近傍を通過して燃焼室4内に流入する吸気の吸気抵抗をより低減できる。
【0037】
上述したようにサージタンク19の下流には、高速用通路17と、高速用通路17よりも管路が長く且つ高容量の低速用通路18を設けるとともに、高速用通路17には、固有振動数制御弁21を設けている。サージタンク19から独立吸気通路16に対して吸気を供給する際には、固有振動数制御弁21によって、これら2つの吸気通路を切換えることで、吸気管の有する固有振動数を調整し、吸気脈動を利用した吸気充填量の増量と、タンブル流の安定生成とを図っている。これについては、後で詳細に説明する。
【0038】
(エンジン制御)
次に、以上のような吸気装置に対するエンジン制御について説明する。
ECU32は、入力されたアクセル開度センサ34からの検出信号からアクセル開度量を算出し、クランク角センサ11からの検出信号からエンジン回転数を算出し、これらの算出結果をECU32内のスロットル弁制御部(図示せず)に出力して基本的なスロットル弁開度量を設定する。そして、設定されたスロットル弁開度となるようスロットル弁25の弁開閉機構に制御信号を出力することで、スロットル弁25は、要求開度量に開度制御される。
【0039】
このようなスロットル弁25の制御により吸入空気量が変化し、エアフローセンサ23はこれを検出し、その検出信号はECU32に出力される。ECU32は、燃料制御部(図示せず)によって、吸入空気量自体、あるいは吸入空気量から求まるエンジン負荷と、エンジン回転数とに基づいて燃料噴射量と燃料噴射時期とを決定し、燃料噴射弁15から所望する噴射時期に、所望する燃料噴射量の燃料噴射が実行されるよう制御する。この場合、基本的に、燃料噴射量は吸入空気量が多い程あるいはエンジン回転数が高回転程増量されている。また、噴射時期は、排気行程から吸気行程に架けての所定時期に少なくとも1回噴射実行されるよう設定される。
【0040】
本実施形態のエンジン1においては、エンジン回転数が所定回転以下の低回転で、エンジン負荷が所定負荷以下の運転状態のときは、成層燃焼によるリーンバーンを実行するよう制御される。
このために、ECU32は、図9に示すような横軸をエンジン回転数、縦軸をエンジン負荷とする制御マップを記憶しており、このマップに基づいて、燃料噴射部は、エンジン回転数が所定値Ne1以下且つエンジン負荷が所定値Qa1以下のリーンバーン運転領域L(低吸気量運転領域)のときには、エンジン1の空燃比が定常的に理論空燃比よりもリーン(例えばA/Fで18から25)となるように燃料噴射を制御する。
この制御は、現在の吸入空気量に基づいて空燃比が制御マップから決定された目標空燃比となるよう燃料噴射量を制御することで行われる。その際、リーンバーン運転領域L内においては、制御マップ上に、目標空燃比が、運転状態に応じて高回転程、及び高負荷程、理論空燃比に近づくように書込まれており、こうした制御マップから現在の運転状態に対応する目標空燃比を読込むことで、空燃比が制御されることになる。
尚、この時の空燃比制御は、O2センサ29がリニアO2センサの場合であれば、これを用いて、実空燃比が目標のリーン空燃比となるように制御してもよい。
【0041】
一方、制御マップに基づき、エンジン回転数が所定値Ne1以上あるいはエンジン負荷が所定値Qa1以上の領域S(高吸気量運転領域)では、O2センサ29の検出信号により、理論空燃比を目標空燃比とする空燃比F/B(フィードバック)制御が行われ、これにより実空燃比が理論空燃比を含む微小な空燃比の範囲(ウインド)で理論空燃比を挟んでリーンとリッチとを繰返すよう制御して、三元触媒27の触媒機能の向上を図っている。
【0042】
また、ECU32は、流動制御弁20を制御する制御部(図示せず)を備えており、これにより、流動制御弁20は、上記の図9の制御マップに基づいて、リーンバーン運転領域Lにおいて閉成されるよう制御される。具体的には、図9に示すように、エンジン回転数が所定値Ne1以下且つエンジン負荷が所定値Qa1以下の運転領域Lのときに、流動制御弁20は閉じられ、一方、エンジン回転数が所定値Ne1以上、あるいはエンジン負荷が所定値Qa1以上の高吸気運転領域Sのときに、流動制御弁20は全開状態に開成される。
このように、リーンバーン運転領域Lでは、流動制御弁20が閉成されて流動制御弁20によるタンブル流f1の強化が図れるが、高吸気量状態となる領域Sでは、流動制御弁20が開成されるために流動制御弁20によるタンブル流f1の強化は行われないことになる。
【0043】
また、ECU32は弁リフト可変機構12を制御する弁リフト可変機構制御部(図示せず)を備えており、これによって、弁リフト可変機構12による吸気弁7の弁リフト量の可変制御が、図9の制御マップに基づいて行われることになる。具体的には、図9に示すように、リーンバーンを行う領域Lの時には、弁リフト可変機構12は、吸気カム39を低リフトカム39aに切換え、理論空燃比での運転を行う領域Sのときは吸気カム39を高リフトカム39bに切換えている。
これにより、リーンバーン運転領域Lでは、弁リフト可変機構12により低リフトカム39aが選択されることになる。
【0044】
また、ECU32は、固有振動数制御弁21を制御する制御部(図示せず)を備えており、これによって、固有振動数制御弁21の制御が、図9の制御マップに基づいて行われることになる。
具体的には図9に示すように、エンジン負荷に関係なくエンジン回転数がNe2より高回転のときは、固有振動数制御弁21を開弁させて、サージタンク19から燃焼室4に架けての吸気管が有する固有振動数が高くなるよう設定し、これにより高回転での吸気脈動を大きくすることで、燃焼室4内に流入する吸気の吸気充填量を増量している。
一方、エンジン負荷に関係なくエンジン回転数がNe2よりも低回転のときは、固有振動数制御弁21を全閉させて、サージタンク19から燃焼室4の直ぐ上流(つまり、開口部5a)に架けての吸気管が有する固有振動数が低くなるよう設定し、これにより低回転での吸気脈動を大きくすることで、低回転での吸気充填量が増量している。こうして、エンジンの多様な運転領域において、エンジン出力を向上できる。
【0045】
ところで、エンジン回転数がNe2よりも低回転のときであっても、流動制御弁20を閉成させるリーンバーン運転領域Lでは、固有振動数制御弁21を開弁させて、これにより安定したタンブル流f1の生成を図っている。これは、流動制御弁20を閉成させた状態で固有振動数制御弁21を全閉にすると、タンブル流f1の安定した生成が阻害されるためである。
この理由は、流動制御弁20を閉成させた状態で固有振動数制御弁21を全閉にすると、吸気は、閉成された流動制御弁20の上端部と独立吸気通路16の内壁面との間の狭められた開口部分を通過することとなる。この狭められた開口を通過する吸気に対し、サージタンク19から低速用通路18を介した燃焼室4の直ぐ上流までの吸気管に基づく低い固有振動数による吸気脈動が大きく影響を及ぼしているものと考えられる。
【0046】
これに対して、固有振動数制御弁21を開成させることで、サージタンク19から高速用通路17を介した燃焼室4の直ぐ上流までの吸気管に基づく高い固有振動数による吸気脈動が発生することになる。この吸気脈動は、高周波で生成されるため、その分減衰するのも早く、これにより狭められた開口を通過する吸気に対する吸気脈動の影響も早急に低減されて、比較的安定なタンブル流f1の生成が可能となるものと考えられる。また、この時は、エンジン回転数は低回転であり、固有振動数制御弁21を開成させると、サージタンク19から高速用通路17を介した燃焼室4の直ぐ上流までの吸気管による固有振動数と、この時のエンジン回転数とが同調し難くなり、これにより吸気脈動自体が小さくなって、安定したタンブル流f1の生成が可能となるものとも考えられる。
【0047】
更に、本実施形態において、リーンバーン運転領域Lでは、流動制御弁20を閉成させるだけでなく、弁リフト可変機構12により吸気弁7の弁リフト量を低減させ、吸気弁7と開口部5aとの開口面積を減少している。特に開口部5aの壁部45aが形成された側における、吸気弁7と壁部45aとの開口は、微小に狭められる。この状態で、固有振動数制御弁を全閉にした場合も、流動制御弁20を閉成た時と同様にタンブル流f1の安定生成が阻害されることになる。
この理由は、流動制御弁20を閉成た時と同様で、この狭められた開口を通過する吸気に対し、サージタンク19から低速用通路18を介した燃焼室4直前までの吸気管に基づく低い固有振動数による吸気脈動が、大きく影響を及ぼしているものと考えられる。
これに対して、固有振動数制御弁21を全閉させることで、上述と同様に吸気脈動を低減させることができ、安定したタンブル流f1の生成が可能となる。
【0048】
また、ECU32は、点火制御部(図示せず)によって、エンジン負荷とエンジン回転数とに基づいて点火時期を決定し、点火プラグ13により所望の点火時期に、点火するよう制御する。
この場合、本実施形態では、特に高吸気量運転領域Sにおいては、ピストン頂部3aに形成された凸状部3bによって、燃焼室4内で増大生成されたタンブル流f1が略減衰された後に、点火が実行されるよう点火時期を設定する。これはノッキングを防止するためであり、これについては後述する。
また、リーンバーン運転領域では、運転状態に応じた目標空燃比に対し、予め設定された最適な点火時期で点火するよう制御する。
【0049】
(タンブル流)
次に、上述のエンジン1とタンブル流f1との関係について説明する。
エンジン1の運転状態が、リーンバーン運転領域Lにある時(エンジン回転数がNe1より低回転で、エンジン負荷Qa1より低負荷の場合)は、ECU32により弁リフト量可変機構12は、吸気カム39を低リフトカム39aに切換えるため、吸気ポート5と燃焼室4との全体の開口面積は小さくなる。特に、この時、開口部5aの内、流動制御弁20が位置する側の開口部5aは、壁部45aにより更に微小となる。
【0050】
また、このようなリーンバーン運転領域Lにおいて、流動制御弁20は閉成されるように切換えられる。
リーンバーン状態で流動制御弁20が閉成されると、独立吸気通路16の上流から流入する吸気は、流動制御弁20により独立吸気通路16と吸気ポート5との上方側の面に沿って、この面に偏って流通する。こうした吸気流は、開口通路5bの排気ポート6側で進行方向を大きく下側(ピストン3の頂部3aが位置する方向)に湾曲され、開口部5aの内の排気ポート6が位置する側の開口部5aから燃焼室4に流入することになる。また、この吸気は、流動制御弁20により絞れられて、流速が増大されており、これにより燃焼室4内では低吸気量状態でありながら強力なタンブル流f1が生成されることになる(図2参照)。
【0051】
また、この状態では、壁部45aにより、開口部5aの内、流動制御弁20が位置する側の開口部5aにおける壁部45aと吸気弁7との間は狭まっているため、この部分を通過して燃焼室4に供給される吸気が減少される。従って、この部分から燃焼室4に供給される吸気が、燃焼室4内で既に生成されてタンブル流f1に対向することで、タンブル流f1が抑制されるのを防止できる。こうして、流動制御弁20の閉弁によって生成された強力なタンブル流f1の勢いを衰えさせることなく、その強度を比較的長時間維持でき、リーンバーン運転時の燃焼性を向上できる。
【0052】
しかも、この時、固有振動数制御弁21が全閉されて、サージタンク19下流から燃焼室4の直ぐ上流までの吸気通路の有する固有振動数が高い振動数に設定される。これにより、流動制御弁20の閉成による狭められた開口に作用する吸気脈動の影響や、吸気弁7の弁リフト量の低減とによる狭められた開口に作用する吸気脈動の影響によって、これらの開口を通過する吸気流が不安定となるのを防止できる。従って、上述のような流動制御弁20の閉成、及び壁部45aと吸気弁7の弁リフト量の低減とによる強力なタンブル流f1の生成が、吸気脈動により阻害されるのを防止でき、タンブル流f1の安定した生成が可能となる。
【0053】
また、上述のように流動制御弁20が閉成された低吸気量状態であっても、例えば、吸入空気量が比較的少ない極低吸気量状態では、タンブル流f1の生成が阻害される場合がある。これは、流動制御弁20により一旦絞られた吸気が、流動制御弁20と開口部5aとの間で不安定な乱流を発生させ、これにより、開口部5aの流動制御弁20が位置する側から燃焼室4内に流入する吸気が増量することで、こうした吸気が燃焼室4内のタンブル流f1に対向し、タンブル流f1を打ち消してしまうことに起因するものと考えられている。
しかしながら、壁部45aと弁リフト量の制御とにより、開口部5aの内、流動制御弁20が位置する側の開口部5aの開口は狭まっており、この部分を通過して燃焼室4に流入する吸気が減少されるので、タンブル流f1の抑制が防止できる。
【0054】
当然ながら、極低吸気量状態においても固有振動数制御弁21の全閉による吸気脈動の低減は図られているので、開口部5aの内、排気ポート6が位置する側の開口部5aを通過する吸気の安定化を図り、タンブル流f1を確実に生成するとともに、一方、壁部45aが近傍に位置する開口部5aを通過する吸気の安定化を図り、タンブル流f1に対向する吸気を、確実に減少させることができる。
【0055】
以上のように、リーンバーン運転領域Lの低吸気量状態では、流動制御弁20の閉弁と壁部45aと吸気弁7の弁リフト量の制御とによって、常に強力で安定したタンブル流f1を生成させることができるとともに、この時は固有振動数制御弁21も全閉することで、タンブル流f1を更に安定生成させることが可能となる。従って、燃焼安定性が向上し、リーンバーン運転時の燃焼安定限界がよりリーンな状態にシフトするため、リーンバーン運転領域Lにおける目標空燃比をより大きく設定することができ、燃費向上とNOx低減との両立が図れる。
【0056】
次にエンジン1の運転状態が、理論空燃比での運転状態にある時(エンジン回転数がNe1より高回転、あるいはエンジン負荷Qa1より高負荷の場合)の吸気装置と吸気流との関係について説明する。
エンジン回転数がNe1より高回転、あるいはエンジン負荷Qa1より高負荷となる高吸気量状態の場合(領域S)には、エンジン1の出力増大が要求される領域であり、リーンバーン運転ではこのような出力増大を賄うことが困難となるため、燃料噴射制御部は、理論空燃比による運転に切換える(図9参照)。但し、運転状態が、全負荷に近い領域では、空燃比は理論空燃比よりもリッチに制御され、これにより触媒が異常高温となるのを防止している。
流動制御弁20は、このような高吸気量状態では開弁されることになり、これにより流動制御弁20によるタンブル流f1の増大生成は抑制されるものの、開弁によりポンピング損失が低減するため、燃費の向上が図れる。(図4参照)
【0057】
また、弁リフト量可変機構12は、この状態において、ECU32の弁リフト可変機構制御部により吸気カム39を高リフトカム39bに切換えて、開口部5aの開口をその全周に亘って大きくする。この時は、開口部5aの内、壁部21aがある側の開口部5aも大きく開口することになり、これによりタンブル流f1の生成が抑制されるが、多量の吸入空気量を燃焼室4内に供給することが可能となり、高いエンジン出力を確保することができる。(図4、図7参照)
【0058】
ところで、開口通路5bの排気ポート6側に形成される湾曲部5eの湾曲外方は、流動制御弁20が閉弁した状態において、流動制御弁20を通過する吸気が燃焼室4内でタンブル流f1を増大生成しやすいように形成されているが、これは、高吸気量運転状態でも有効である。従って、上述のように流動制御弁20の開成、及び吸気弁7の弁リフト量の増大制御によって、吸入空気量が増大された状態でも、湾曲部5eによるタンブル流f1の増大生成が行われることになり、しかも、この時の吸気の流速は速いため、タンブル流f1の勢いは、低吸気量状態と比べ衰えることはない。
【0059】
こうした状態において、特に高負荷運転状態にある時は、ノッキングが発生し易くなる。これは、吸入空気量の増大とタンブル流f1の増大生成とにより着火性が大きく促進されて、自着火が発生しやすくなることに起因する。
従来であれば、こうしたノッキングに対して点火時期を遅角側に設定することでこれを防止してきたが、点火時期の遅角化により燃焼が緩慢に行われてエンジンの発生トルクのピークが圧縮行程上死点よりも大きく遅角側が発生することなるため、エンジン出力が悪化するといった問題が生じていた。
【0060】
これに対し、本実施形態では、ピストン3頂部3aにタンブル流f1を早期に崩壊させて減衰させる凸状部3bを形成させた。これにより、高吸気量状態において、燃焼室4内で生成されたタンブル流は、凸状部3bによって圧縮行程中の比較的早い時期から崩壊して乱れエネルギに変換し始めることになるため、これに対応して、点火時期を、乱れエネルギーが早急に減衰された後に設定することで、高負荷時のノッキング防止とエンジン出力の向上とを図っている。以下、図10を参照してこれを詳細に説明する。
【0061】
図10は、クランク角に対応する燃焼室4内の点火プラグ13近傍における吸気の乱流強度(乱れエネルギー)を測定した結果を示している。ラインA(プロット:+)が、ピストン頂部3aに凸状部3bを形成させたエンジンに関するデータで、ラインB(プロット:×)が、ピストン頂部3aが平面状に形成されたエンジンに関するデータである。実験条件は、エンジン回転数が低回転でエンジン負荷が高負荷の状態とした。尚、エンジン回転数が低回転でエンジン負荷が低負荷の状態であっても、乱流強度の大きさは全体的に低下するが同様な傾向を示す。
この図10によれば、ピストン頂部3aが凸状に形成された場合は、平面状に形成された場合に比べ、乱流強度が大きい状態が進角側で見られることが理解できる。
【0062】
このように乱流強度が大きい状態では、着火性が過度に良好な状態となっていることに加えて、高吸気量状態では吸入空気量が多いことによっても着火性が向上しているため、この状態で点火されると、自着火が発生し易くなりノッキングの発生頻度が増大する。一方、乱流強度が小さい状態では、元々、高吸気量状態のときであれば吸入空気量が多く着火性が向上されているので、この状態で点火さると自着火は抑制されることになる。
【0063】
そこで、本実施形態では、ピストン頂部3aを凸状形成にするとともに、点火制御部により高吸気量状態における点火時期を、乱流強度が増大後に所定値以下に小さくなった時期θiより遅角側に設定している。しかも、エンジン出力が大きく低下しないように当該時期θiよりも遅角側となる所定時期θfを予め求め、点火時期を、上記の時期θiと上記時期θfとの間の所定期間内における所定時期に設定している。尚、好ましくは、点火時期を、乱流強度が増大後に所定値以下に小さくなった直後の所定時期(時期θi近傍)に設定すれば良い。
具体的には、この所定期間はエンジンの種類によって絶対的な点火時期は若干異なるが、図10によれば、クランク角で圧縮行程上死点の略18°前以降から、略5°前の間が好ましい。(より好ましくは、圧縮行程上死点の略18°前以降から、略10°前の間。)これにより、高吸気量状態において、ノッキングを抑制しつつ、エンジン出力を向上できることになる。
【0064】
一方、ピストン頂部3aを平面形状にした場合では、乱流強度が小さくなる期間は、圧縮上死点の5°以降となるが、これより進角側で点火すると、着火性は上述のように過度に良好であるためノッキングを発生する。また、これより遅角側で点火すると、ノッキングは防止されるが燃焼トルクは低下する。
従って、ピストン頂部3aが平面形状の場合では、高吸気量運転状態の特に高負荷において、ノッキングを抑制しつつ、エンジン出力を向上させることはできない。
【0065】
尚、このようなピストン頂部3aの凸状部3bは、以下のように、上述のリーンバーン運転領域Lでの点火時期制御においても有効である。
つまり、リーンバーン運転領域Lとなる低吸気量状態において、リーンバーン運転中は燃焼速度が遅く、燃焼性が悪化し易いため、従来はリーンバーン運転中は、理論空燃比での運転時に比べ点火時期を進角側に設定することで、燃焼性を向上させていたが、本実施形態のようにピストン頂部3aに凸状部3bを形成することで、点火時期の進角による燃焼性向上効果をより高めることができる。
具体的には、点火時期を乱流強度が大きくなる時よりも進角側、例えば図10によれば、最適には、圧縮上死点の35°前から30°前ぐらいに設定する。これにより、点火後、凸状部3bによる乱流強度が比較的大きい状態で、初期燃焼中(噴射された燃料の10%前後による初期の燃焼)させることができ、これにより初期燃焼の燃焼性を改善し、燃焼変動を低減することになる。こうした燃焼性向上により、リーン限界空燃比がよりリーン空燃比にシフトされ、目標空燃比をより大きな空燃比に設定することができ、燃費向上が図れる。
更に、このような点火時期の進角化により、初期燃焼後のトルクを実質的に生じさせる主燃焼(初期燃焼後、残りの噴射燃料による燃焼)の発生も、圧縮上死点近傍の比較的進角した時期に設定することが可能となり、リーンバーンによるエンジン出力の改善もでき、これによって燃費向上が図れる。
また、このように乱流エネルギーの発生時期を進角化できるため、ポンピング損失低減やNOx低減を目的として流動制御弁20の下流にEGRガスを供給するような場合でも、エンジン出力の改善が可能となる。
つまり、通常EGRガスを供給すると燃焼速度が低下することになるが、本実施形態のように、凸状部3bにより乱流強度を初期燃焼時期に合致させることができるため、これによって、燃焼速度の低下を抑制できる。しかも、この時の燃焼性も向上でき、エンジン出力が改善することになる。
【0066】
(実験結果)
次に、高吸気量状態における本実施形態の実験結果を、図11を参照して以下に説明する。
図11は、エンジン回転数に対する点火時期特性を示しており、実線のラインMT(プロット:▲)は、ピストン頂部3aに凸状部3bを形成した場合において、各回転数に対する最大トルクを発生する点火時期(MBT)を示し、実線のラインFT(プロット:◆)は、ピストン頂部3aを平面状に形成した場合において、各回転数に対する最大トルクを発生する点火時期を示す。また、破線のラインMN(プロット:△)は、ピストン頂部3aに凸状部3bを形成した場合において、各回転数に対するノッキング限界(これより進角側でノッキングが発生する限界値)となる点火時期を示し、破線のラインFN(プロット:◇)は、ピストン頂部3aを平面状に形成した場合において、各回転数に対するノッキング限界となる点火時期を示す。
尚、実験条件は、エンジン回転数が低回転で、エンジン負荷が全負荷状態で実験を行った。
【0067】
これによると、ノッキング限界となる点火時期は、いずれの回転数においても、ピストン頂部3aに凸状部3bを形成したエンジンの方が、ピストン頂部3aが平面状のエンジンよりも、MBTに近づいており、従って、凸状部3bを形成したエンジンの方が、トルク改善効果が大きいことが分かる。
【0068】
次に、エンジン回転数が増大して、エンジン回転数が負荷に関係なくNe2以上となった時について説明する。
この状態では、固有振動数制御弁の制御部により固有振動数制御弁21は開成されて、高速用通路17を利用した吸気脈動による吸入空気量増大が図られて、これにより更に高いエンジン出力を確保できることになる。
また、この状態においても、高負荷状態においては、上述のような乱れエネルギーの減衰性能の向上によるノッキング防止、及びエンジン出力の向上が図れる。
【0069】
(本実施形態に係る作用及び効果)
次に、以上のような実施形態による作用及び効果を説明する。
リーンバーン運転領域Lのような低吸気量状態では、流動制御弁20を閉弁させたり、あるいは、吸気ポート5の開口部5a近傍に壁部45aを設けて、吸気弁7の弁リフト量を減少させることにより、燃焼室4内で生成されるタンブル流f1を強化させ、且つピストン頂部3aに凸状部3bを形成させることで、最適な点火時期を設定した場合、燃焼初期に乱れエネルギーを大きくすることができる。これにより、燃焼性が向上できるとともに燃焼安定性も向上するため、空燃比をよりリーンに設定して、燃費向上とリーン化に伴うNOx低減とを図ることが可能となる。
【0070】
一方、上述のように低吸気量状態でタンブル流f1を増大生成し易いように吸気装置を構成させると、高吸気量状態時においても、吸入空気量が増大された吸気によるタンブル流f1の増大生成がおこなわれることになり、これにより、特に高負荷時はノッキングが発生し易くなる。これを改善しようとして点火時期の遅角設定(点火リタード)を行うとするとエンジン出力が損なわれることになる。
これに対し、本実施形態では、ピストン3の頂部3aに凸状部3bを形成するとともに、これによるタンブル流f1の崩壊によって乱流強度が増大した後に該乱流強度が所定値以下に低下した時期より遅角側で、且つ点火によりエンジン出力が比較的悪化する時期より進角側の所定期間内に点火時期を設定した。これにより、高吸気量状態において、ノッキングを防止しつつエンジン出力の悪化を防止できる。
また、リーンバーン運転領域において、点火時期を進角側に設定させることにより、ピストン3の凸状部3bによって生成されるタンブル流f1崩壊に起因する乱流発生中に、点火による初期燃焼を行わせることができる。これにより、初期燃焼の燃焼性を改善して燃焼変動を低減できるとともに、同時に主燃焼の発生時期を圧縮上死点近傍に合致させることができるので、これらによって、リーンバーン運転中での燃費向上が図れる。
【0071】
(他の実施形態)
上述のような実施形態においては、ピストン頂部3aの凸状部3bの頂部をその先が尖るように形成させたが、これに代えて、凸状部3bの頂部は、ピストン3が圧縮上死点近傍に位置する状態で、点火プラグ13のスパーク部分から所定距離離間するように平面状に形成させたり、あるいは凹状に形成させても良い。(図2の3c参照)
これにより、点火プラグ13による点火後、大部分の火炎伝播が凸状部3bに接触しながらこれに沿って進行することがないので、冷損を抑制して燃焼性を改善でき、燃焼効率の向上が図れる。
【0072】
また、これと同様に、点火プラグ13のスパーク部分と凸状部3bの頂部とが、ピストン3の往復動方向に平行な同じ軸線上に配置されないように形成させても良い。つまり、ピストン3が圧縮行程上死点近傍に位置する状態において、凸状部3bの頂点は、点火プラグ13のスパーク部分に対向する地点に位置せず、エンジン1の前後方向(図2の紙面の表裏方向)から見て、横方向にオフセットするように位置される(図2の3d参照)。これによっても冷損の抑制による燃焼効率の向上が可能である。
【0073】
また、本実施形態においては、リーンバーン運転を行うエンジンに対して、本発明を適用した場合について説明したが、これに代えて、低回転あるいは低負荷でEGR量あるいはEGR率を増量制御してNOx低減やポンピング損失低減を図るエンジンにも適応可能である。
この場合において、エンジン1のECU32は、EGR制御部(図示せず)によりEGR弁31の開度を制御可能であるとともに、図9に示す制御マップと同様に運転状態を区画した制御マップを記録している。制御マップは、全負荷に近い高回転あるは高負荷を除いて、基本的に理論空燃比での運転を行うよう設定するとともに、領域LでEGR量の増量制御を行うよう設定している。流動制御弁の制御部による流動制御弁20の開閉制御と、弁リフト可変機構制御部による弁リフト量の切換制御と、固有振動数制御弁の制御部による固有振動数制御弁21の切換制御は、上述の実施例と同じである。
これにより、低吸気量運転領域において、強力なタンブル流f1によりEGR増量に対する燃焼性を向上させるとともに、高吸気量運転状態において、ノッキング防止とエンジン出力向上とを図ることができる。
【0074】
また、本実施形態においては、マスク部45により形成される壁部45aによって、開口部から流入してタンブル流f1を抑制する吸気流を低減させたが、これに限らず、吸気ポート5の開口通路5bの流動制御弁20側の内壁に窪みや凸部を設けることで、開口部5aから流入してタンブル流f1を抑制する吸気流を低減させてもよい。
また、吸気流動制御弁20は、本実施形態の構造に限定されず、例えばロータリタイプの弁であっても良い。
また、本実施形態においては、EGR弁31の制御により排気還流量を制御したが、これに代えてあるいは併用して、弁リフト可変機構12に、更に吸気弁7の開弁時期を調整する機構を設け、これにより吸気弁7と排気弁8との開弁時期とのオーバーラップ期間を可変にし、例えば第2の実施形態におけるEGR量制御のように燃焼室4に残留する燃焼ガス(既燃ガス)量を制御してもよい。また、吸気弁7の開弁時期を制御するのではなく、排気弁8の開弁時期を制御する開弁時期制御機構を排気弁8に設けて、これにより吸気弁7と排気弁8とのオーバーラップ期間を調整して、既燃ガス量を制御しても良い。
また、エンジン1は、直噴ガソリンエンジンであっても構わない。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明においては、低吸気量運転領域で吸気通路に設けた弁体を閉成させ、この時にタンブル流が増大されるよう形成された吸気通路を備える火花点火式エンジンにおいて、該エンジンのピストン頂部に凸状部を形成することにより、高吸気運転領域におけるタンブル流の過剰な増大生成を抑制して、耐ノッキング性を向上できるため、これにより大幅な点火リタードを実行することなく、エンジン出力を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンを示す全体構成図。
【図2】シリンダヘッド及びその周辺部の吸気装置に関し、吸気弁7が低リフト量状態となる時の側断面を模式的に示した概略図。
【図3】図2のX−X断面を模式的に示した概略図。
【図4】シリンダヘッド14及びその周辺部の吸気装置に関し、吸気弁7が高リフト量状態となる時の側断面を模式的に示した概略図。
【図5】燃焼室4側からマスク部45を見た図。
【図6】吸気弁7が低リフト量状態となるときの吸気弁7の開弁状態を示す模式図。
【図7】吸気弁7が高リフト量状態となるときの吸気弁7の開弁状態を示す模式図。
【図8】吸気弁7の弁リフト量について説明する説明図。
【図9】ECU32の制御マップを示す説明図。
【図10】クランク角と乱流強度との関連を示すグラフ。
【図11】エンジン回転数に対する点火時期特性の実験結果を示すグラフ。
【符号の説明】
2:気筒
3:ピストン
3a:ピストン頂部
3b:凸状部
4:燃焼室
5:吸気ポート
5e:湾曲部
7:吸気弁
12:弁リフト可変機構
13:点火プラグ
20:流動制御弁(弁体)
31:EGR弁(排気還流制御手段)
45a:壁部
f1:タンブル流
L:リーンバーン運転領域(低吸気量運転領域)
S:理論空燃比運転領域(高吸気量運転領域)
Claims (5)
- 燃焼室に供給される吸気が、ピストンの往復動方向に対して所定角度傾斜した方向で、該燃焼室に向かうよう形成された吸気通路と、
該吸気通路と該燃焼室とを連通する開口部を開閉させる吸気弁と、
該吸気弁上流の上記吸気通路に配置された弁体と、
該弁体を、吸入空気量が少ない低吸気量運転領域で閉成させる弁体制御手段と、
上記燃焼室において、上記ピストン頂部に対向する位置に配置された点火プラグにより、該燃焼室内の混合気を点火させる点火制御手段とを備え、
上記吸気通路には、該弁体制御手段により上記弁体が閉成された状態及び開成された状態で、該弁体を通過する吸気が上記燃焼室内における吸気のタンブル流を増大生成させるように、上記開口部の直ぐ上流における該吸気通路の傾斜角度を所定角度より小さくさせる湾曲部が形成されるとともに、
上記ピストンの頂部には、上記燃焼室の内方側に隆起した凸状部が形成されることを特徴とする火花点火式エンジン。 - エンジンの空燃比を制御する空燃比制御手段を備え、
該空燃比制御手段は、上記低吸気量運転領域において、空燃比を理論空燃比よりもリーンに設定するとともに、吸入空気量が多い高吸気運転領域では、空燃比を理論空燃比近傍あるいは理論空燃比よりリッチに設定することを特徴とする請求項1記載の火花点火式エンジン。 - 上記点火制御手段は、吸入空気量が多い高吸気運転領域では、圧縮上死点よりも前で燃焼室内において生成されたタンブル流が上記凸状部により減衰された後に、点火するよう点火時期を制御することを特徴とする請求項1記載の火花点火式エンジン。
- 上記ピストンの凸状部は、該ピストンが上死点に位置している状態において、該凸状部の頂部が上記点火プラグから所定距離離間するよう形成されることを特徴とする請求項1記載の火花点火式エンジン。
- 上記ピストンの凸状部は、該ピストンが上死点に位置している状態において、該凸状部の頂部と上記点火プラグとが、ピストンの往復動方向に平行な同じ線上に配置されないように形成されることを特徴とする請求項1記載の火花点火式エンジン。
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- 2003-03-28 JP JP2003089452A patent/JP2004293484A/ja not_active Abandoned
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