JP2004293355A - エンジンの冷却装置 - Google Patents

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JP2004293355A JP2003084373A JP2003084373A JP2004293355A JP 2004293355 A JP2004293355 A JP 2004293355A JP 2003084373 A JP2003084373 A JP 2003084373A JP 2003084373 A JP2003084373 A JP 2003084373A JP 2004293355 A JP2004293355 A JP 2004293355A
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Yosuke Tateishi
洋介 立石
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Abstract

【課題】空調装置のヒータのためのヒータ用熱交換器側の流路とオイルの温度調節のためのオイル用熱交換器側の流路のいずれか一方に冷却液を流すように制御した場合であっても、他方の流路に対してヒータの熱源やオイルの温度調節のために最低限必要な冷却液の流量を確保できるようにするとともに、弁機構を小型化することを可能とする。
【解決手段】ヒータ側流路9aとオイル側流路9bとを並列に配設し、これらのヒータ側流路9aとオイル側流路9bとの接続部に流量制御弁10を設ける。そして、この流量制御弁10は、ヒータ側流路9a及びオイル側流路9bの冷却液の流量配分を調節する弁であって、ヒータ側流路9a又はオイル側流路9bのいずれか一方の冷却液の流量が最大となる状態で、他方の流路にも冷却液の一部が流れるように構成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのジャケットに冷却液を通過させて冷却するエンジンの冷却装置に関し、特に、この冷却液をヒータ用熱交換器とオイル用熱交換器において利用する場合にこれらへの冷却液の循環を必要に応じて効率的に行うことが可能な装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの冷却装置において、その冷却液をヒータの熱源として利用するとともに、自動変速機(オートマチック・トランスミッション:AT)の作動油(オートマチック・トランスミッション・フルード:ATF)等のオイルの温度調節にも利用する技術として、例えば特許文献1には、以下のような装置が開示されている。すなわち、自動変速機の作動油の温度調節を行う熱交換器からなるATFウォーマと空調用ヒータとを配した冷却液の流路を有するエンジンの冷却装置において、前記ATFウォーマを配した流路と前記空調用ヒータを配した流路とを互いに並列に設けるとともに、両流路を流れるエンジンの冷却液の流れ割合を変える弁を設け、空調用ヒータへの流量が必要な時に前記弁により空調用ヒータへの流路に必要量の冷却液を流すようにした装置である。ここで、前記弁としては、両流路の分岐部に設けた三方弁であってもよいし、あるいはそれに代わる二方弁2個であってもよいし、あるいは流れを絞るサーモバルブであってもよいことが開示されている。
【0003】
そして、このようなエンジンの冷却装置は、空調用ヒータへの冷却液の流量が必要な時に弁により空調用ヒータへの流路に必要量の冷却液を流す構成とされているので、極冷間時におけるエンジン始動時などの空調用ヒータへの冷却液の流量が必要な時に冷却液をATFウォーマ側の流路ではなく空調用ヒータ側の流路に流すこととなり、空調用ヒータ側の流路を通る冷却液の流量がとくに減少することはなく、必要流量の冷却液を、ATFウォーマに優先させて、空調用ヒータ側に確保することができるという利点がある。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−364362号公報(第5頁、第10図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来のエンジンの冷却装置における弁は、空調用ヒータ側の流路とATFウォーマ側の流路とに冷却液を流す割合を変えることができるものであるが、弁体をいずれか一方に最大限動作させて一方の流路に冷却液を流すようにした状態では、他方の流路への冷却液の流量はゼロとなる。したがって、空調用ヒータ側の流路に冷却液を流す場合にはATFウォーマ側の流路には冷却液が流れないこととなる。この際、冷却液の循環を止めたとしても直ちにATFウォーマが故障することはないが、ATFウォーマの温度調節を行わないと、自動変速機の作動油の温度が低い場合には粘度が増して駆動系の抵抗が増加するために燃費が悪化し、逆に自動変速機の作動油の温度が高い場合には作動油の劣化が早く進行し、最悪の場合には自動変速機が故障するという問題が生じる。
【0006】
また、前記弁の弁体がいずれか一方に最大限動作し、空調用ヒータ側の流路とATFウォーマ側のいずれか一方の流路のみに冷却液が流れ、他方の流路へ冷却液が全く流れていない状態となっている場合に、冷却液を流す方向を他方の流路に切り換えるためには、完全に閉鎖している流路を開く必要があるため、弁体に大きい抵抗が作用することとなり、弁体の駆動のために大きい出力の駆動機構が必要となるので、弁機構の大きさが大きくなってしまうという問題もある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、空調装置のヒータのためのヒータ用熱交換器側の流路とATFウォーマ等のオイルの温度調節のためのオイル用熱交換器側の流路のいずれか一方に冷却液を流すように制御した場合であっても、他方の流路に対してヒータの熱源やオイルの温度調節のために最低限必要な冷却液の流量を確保できるようにするとともに、弁機構を小型化することを可能とすることを技術課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明に係るエンジンの冷却装置の第1の特徴構成は、請求項1に記載したように、エンジンのジャケットを通過する冷却液を循環させる循環ポンプと、前記冷却液の熱を利用するヒータ用熱交換器と、前記冷却液によりオイルの温度調節を行うオイル用熱交換器と、前記冷却液を前記ヒータ用熱交換器に循環させるヒータ側流路と、前記冷却液を前記オイル用熱交換器に循環させるオイル側流路と、を有するエンジンの冷却装置において、前記ヒータ側流路と前記オイル側流路とは並列に配設されており、これらのヒータ側流路とオイル側流路との接続部に流量制御弁が設けられ、この流量制御弁は、前記ヒータ側流路及びオイル側流路の冷却液の流量配分を調節する弁であって、前記ヒータ側流路又はオイル側流路のいずれか一方の冷却液の流量が最大となる状態で、他方の流路にも冷却液の一部が流れるように構成されているという点にある。
【0009】
これにより、ヒータ用熱交換器又はオイル用熱交換器のいずれかに優先的に冷却液を流す場合にも、他方の熱交換器に少量の冷却液が流れることとなるので、ヒータ用熱交換器又はオイル用熱交換器におけるヒータの熱源やオイルの温度調節のために最低限必要な冷却液の流量を確保することができる。すなわち、夏季等の空調装置からの暖房要求が少ない場合にはオイル用熱交換器側に優先的に冷却液の流量が配分されることとなるが、その場合であっても空調装置の温度調節に必要な最低限度の流量の冷却液をヒータ用熱交換器側に流すことができ、一方、冬季等の空調装置からの暖房要求が多い場合にはヒータ用熱交換器に優先的に冷却液の流量が配分されることとなるが、その場合であっても自動変速機の作動油やエンジンオイル等のオイルの温度調節に必要な最低限度の流量の冷却液をオイル用熱交換器側に流すことができる。
【0010】
また、流量制御弁の弁体が、ヒータ側流路又はオイル側流路のいずれか一方の冷却液の流量が最大となるように動作した場合であっても、他方の流路へも冷却液の一部が流れるように流量制御弁内に小さい流路が確保されているので、他方の流路が完全に閉鎖されている場合と比較して、弁体の位置の切り換え際に作用する抵抗が小さく、弁体の駆動のための駆動機構の出力も小さくすることができる。したがって、弁機構の大きさを小型化することが可能となる。
【0011】
本発明に係るエンジンの冷却装置の第2の特徴構成は、請求項2に記載したように、前記第1の特徴構成に加えて、前記流量制御弁は、弁箱内に配置された弁体の動作により前記ヒータ側流路及びオイル側流路の冷却液の流量配分を調節するものであって、前記ヒータ側流路又はオイル側流路のいずれか一方の冷却液の流量が最大となるように前記弁体が動作した状態で、前記弁体により流量が制限される側の流路に対する前記弁箱と前記弁体との間に冷却液が通過可能な隙間が形成されているという点にある。
【0012】
これにより、ヒータ側流路及びオイル側流路の冷却液の流量配分を調節することができ、且つヒータ側流路又はオイル側流路のいずれか一方の冷却液の流量が最大となる状態で、他方の流路にも冷却液の一部が流れるような構成の流量制御弁を、簡易な構成により実現することができる。
【0013】
本発明に係るエンジンの冷却装置の第3の特徴構成は、請求項3に記載したように、前記第1又は第2の特徴構成に加えて、前記流量制御弁は、所定の制御装置により動作制御される弁であって、前記制御装置は、所定の動作規則に基づいてヒータ用熱交換器及びオイル用熱交換器に対する冷却液の必要流量を判断し、前記流量制御弁の前記ヒータ側流路及びオイル側流路の冷却液の流量配分の調節動作を制御するという点にある。
【0014】
これにより、空調装置からの暖房要求やATFやエンジンオイル等のオイルの温度調節要求に応じて、ヒータ用熱交換器及びオイル用熱交換器に対して適切な流量の冷却液を自動的に判断して供給することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るエンジンの冷却装置の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態では、車両のエンジン1のジャケット2に冷却液を通過させて冷却を行うエンジン1の冷却装置であって、このエンジン1のジャケット2を通過後の冷却液を、冷却液と熱交換を行うことにより空調装置のヒータの熱を取り出すヒータ用熱交換器3と、冷却液と熱交換を行うことにより自動変速機(オートマチック・トランスミッション:AT)の作動油(オートマチック・トランスミッション・フルード:ATF)の温度調節を行うオイル用熱交換器4とに対して供給する装置について説明する。ここで、エンジン1は車両用として一般的に用いられている水冷式の内燃機関である。図1は、本実施形態に係るエンジン1の冷却装置の全体構成を示す模式図である。
【0016】
この図に示すように、本実施形態に係るエンジン1の冷却装置は、エンジン1に形成されたジャケット2と、このジャケット2を通過する冷却液を循環させる循環ポンプ5と、冷却液の熱を放射するラジエータ6と、冷却液と熱交換を行うことにより空調装置のヒータの熱を取り出すヒータ用熱交換器3と、冷却液と熱交換を行うことにより自動変速機の作動油の温度調節を行うオイル用熱交換器4と、これらの冷却装置の各部をつないで冷却液を循環させる冷却液循環路7と、この冷却液循環路7のうち、冷却液をヒータ用熱交換器3に循環させるヒータ側流路9a、及びこのヒータ側流路9aと並列に配設され、冷却液をオイル用熱交換器4に循環させるオイル側流路9bと、ヒータ側流路9aとオイル側流路9bとの接続部に設けられた流量制御弁10と、を有する。
【0017】
エンジン1は、内部に図示しないピストン等が収められるシリンダが形成されたシリンダブロック1aと、このシリンダの上部を構成するシリンダヘッド1bとを有して構成されている。そして、ジャケット2は、これらのシリンダブロック1a及びシリンダヘッド1bのシリンダ周辺部に冷却液が循環可能なように形成された空洞部により構成されている。また、このジャケット2内を通過する冷却液は、水冷式の内燃機関に用いられるものであって、ここでは水に所定の添加物を加えてなる冷却水が用いられる。
【0018】
循環ポンプ5は、エンジン1のジャケット2を通過する冷却液を循環させるポンプである。本実施形態においては、循環ポンプ5は、冷却液が、ジャケット2のほか、後述するラジエータ6、ヒータ用熱交換器3、オイル用熱交換器4等の冷却装置の各部を通過するように冷却液循環路7を介して循環させる。このような循環ポンプ5としては、流体を送り出すことができるポンプであれば特に限定されることはなく、各種の形式のポンプを使用することが可能である。なお、循環ポンプ5の配置について、ここではジャケット2の上流側に設けているが、これに限定されるものではなく、ジャケット2の下流側に設けることも可能である。
【0019】
ラジエータ6は、冷却液の熱を放射してその温度を下げる装置である。このラジエータ6の構成は、水冷式の内燃機関において一般的に用いられているものと同様の構成を用いることが可能であり、ここでは図示しないが冷却用の多数のフィンに囲まれた複数の水路を有して構成されている。また、ラジエータ6は、エンジン1の高負荷時に前記フィンを通過する空気の量を増加させて冷却を促進するためのファン11を備えている。
【0020】
ヒータ用熱交換器3は、ヒータの熱源として冷却液の熱を利用する熱交換器であって、ここでは、空調装置のヒータの熱交換器として用いられる場合について説明する。このヒータ用熱交換器3は、いわゆるヒータコアと呼ばれるものであって、送り込まれてくる空気とエンジン1のジャケット2を通過して熱せられた冷却液との熱交換を行うことにより空調装置のヒータの熱を取り出す熱交換器である。このヒータ用熱交換器3の構造としては、一般的にはラジエータ6と同様に冷却用の多数のフィンに囲まれた複数の水路を有する構造が用いられるが、この構造は特に限定されるものではなく、各種の構造の熱交換器を用いることが可能である。
【0021】
オイル用熱交換器4は、冷却液の熱を利用してオイルの温度調節を行う熱交換器であって、ここでは、自動変速機の作動油(ATF)の温度調節を行う熱交換器として用いられる場合について説明する。このオイル用熱交換器4は、自動変速機の作動油とエンジン1のジャケット2を通過して熱せられた冷却液との熱交換を行うことにより自動変速機の作動油を適正な温度に調節する熱交換器である。ここで、自動変速機の作動油は、温度が低い場合には粘度が増して駆動系の抵抗が増加するために燃費が悪化し、逆に温度が高い場合には劣化が早く進行し、最悪の場合には自動変速機が故障する可能性があることから、適正な温度に保持する必要があり、このようなオイル用熱交換器4が設けられる。このオイル用熱交換器4の構造としては、一般的にはラジエータ6と同様に冷却用の多数のフィンに囲まれた複数の水路を有する構造が用いられるが、この構造は特に限定されるものではなく、各種の構造の熱交換器を用いることが可能である。
【0022】
冷却液循環路7は、このエンジン1の冷却装置の各部をつないで冷却液を循環させるための冷却液の流路である。そのため、ここでは、冷却液循環路7は、ジャケット2を通過した冷却液をラジエータ6により冷却してジャケット2に戻す冷却回路8と、ジャケット2を通過した冷却液を熱交換に利用するためにヒータ用熱交換器3又はオイル用熱交換器4を通過させてジャケット2に戻す熱交換回路9とを有して構成されている。この冷却回路8と熱交換回路9は、ジャケット2の上流側の一部と下流側の一部において合流しており、ジャケット2の上流側の合流部分に設けられた循環ポンプ5により冷却液の循環が行われる。
【0023】
冷却回路8は、その一部に並行する2つの流路を有しており、そのうちの一方はラジエータ6を通過する流路を形成するラジエータ側流路8aであり、他方はラジエータ6を通過しない流路を形成するバイパス流路8bである。ここで、バイパス流路8bは、エンジン1の始動時等の冷却液の温度が低い場合にラジエータ6を通過させずに冷却液を循環させることにより冷却液の温度上昇を促進するための流路である。そして、このラジエータ側流路8aとバイパス流路8bとの接続部には、切換弁12が設けられている。ここで、両流路の接続部としては、分岐部と合流部の双方が含まれるが、本実施形態では切換弁12は合流部に設けている。この切換弁12は、冷却液の温度が低い場合には冷却液をバイパス流路8bに流し、冷却液の温度が高くなるにしたがい冷却液の一部又は全部をラジエータ側流路8aに流すように切り換えを行う弁である。このような切換弁12としては、冷却液の温度に応じて自動的に切換動作を行うサーモスタット弁が好適に用いられる。
【0024】
熱交換回路9は、その一部に並行する2つの流路を有しており、そのうちの一方はヒータ用熱交換器3を通過する流路を形成して冷却液をヒータ用熱交換器3に循環させるヒータ側流路9aであり、他方はオイル用熱交換器4を通過する流路を形成して冷却液をオイル用熱交換器4に循環させるオイル側流路9bである。この熱交換回路9のヒータ側流路9a及びオイル側流路9bは、それぞれジャケット2を通過して加熱された冷却液を、ヒータの熱源として利用するためにヒータ用熱交換器3に循環させ、あるいはオイルの温度調節に利用するためにオイル用熱交換器4に循環させるための流路である。また、この熱交換回路9は、ヒータ側流路9a及びオイル側流路9bの上流側及び下流側に、これらの両流路が合流してなる共有流路9cを有する。そして、このヒータ側流路9aとオイル側流路9bとの接続部には、流量制御弁10が設けられている。ここで、両流路の接続部としては、分岐部と合流部の双方が含まれるが、本実施形態では流量制御弁10は合流部に設けている。なお、流量制御弁10を設ける位置はこれに限定されるものではなく、両流路の分岐部に設けても全く同様に本発明の効果を奏することができる。
【0025】
流量制御弁10は、ヒータ側流路9a及びオイル側流路9bの冷却液の流量配分を調節する弁である。この流量制御弁10による冷却液の流量配分の調節動作の制御は、後述する制御装置13により行われる。そして、この流量制御弁10は、ヒータ側流路9a又はオイル側流路9bのいずれか一方の冷却液の流量が最大となる状態で、他方の流路にも冷却液の一部が流れるように構成されている。そのため、この流量制御弁10は、各ポートがヒータ側流路9a、オイル側流路9b、及び共有流路9cにそれぞれ接続された三方弁とし、共有流路9cとヒータ側流路9a及びオイル側流路9bとを連通する連通口の開口面積を変化させることによりヒータ側流路9a及びオイル側流路9bの冷却液の流量配分を調節する構成としている。そして、この流量制御弁10では、ヒータ側流路9aの冷却液の流量を最大とすべく共有流路9cとヒータ側流路9aとの連通口の開口面積を最大とした状態においても、共有流路9cとオイル側流路9bとの連通口は完全に閉鎖されることなく開口された状態が維持され、一方、オイル側流路9bの冷却液の流量を最大とすべく共有流路9cとオイル側流路9bとの連通口の開口面積を最大とした状態においても、共有流路9cとヒータ側流路9aとの連通口は完全に閉鎖されることなく開口された状態が維持される。この際、ヒータ側流路9a又はオイル側流路9bのいずれか一方の開口面積が最大となった連通口を通過する冷却液の流量と、他方の連通口を通過する冷却液の流量との配分は、ヒータの熱源やオイルの温度調節のために最低限必要な冷却液の流量に応じて適宜設定することが望ましいが、例えば、それらの流量の比は7:3から8:2程度に設定すると好適である。
【0026】
このような流量制御弁10として、本実施形態においては、図2又は図3に示すような構成のロータリ弁を用いることとしている。これらの図に示す流量制御弁10は、いずれも弁箱14内に配置された弁体15の動作によりヒータ側流路9a及びオイル側流路9bの冷却液の流量配分を調節するものであって、ヒータ側流路9a又はオイル側流路9bのいずれか一方の冷却液の流量が最大となるように弁体15が動作した状態で、弁体15により流量が制限される側の流路に対する弁箱14と弁体15との間に冷却液が通過可能な隙間16が形成された構成を有している。
【0027】
より具体的には、図2に示す流量制御弁10は、以下のような構成を有している。すなわち、弁箱14は、円柱形状の内部空間17を有するとともに、ヒータ側流路9a、オイル側流路9b、及び共有流路9cにそれぞれ接続される3つのポート18を有している。弁体15は、弁箱14の円柱形状の内部空間17の中心軸上に設けられた回転軸19により回転可能に支持された平板状部材により構成されており、回転軸19から共有流路9c側に延設された第一弁板15aと、回転軸19に対して第一弁板15aの反対側に延設された第二弁板15bとを有している。ここで、第一弁板15aはその先端部が弁箱14の内面14aに対して密接せずに一定の隙間16を有して構成されている。一方、第二弁板15bはその先端部が弁箱14の内面14aに密接した状態で回転するように構成されている。また、弁箱14の内面14aには、弁体15が動作した際にその両方向への動作の終点において第二弁板15bが当接する2個の係止部20が内部空間17に突出するように形成されている。そして、この流量制御弁10は、第二弁板15bが2個の係止部20の間で揺動することにより、第一弁板15aが共有流路9cに接続されたポート18の内部においてこのポート18を跨いで揺動する動作を行う。
【0028】
したがって、図2(a)に示すように、弁体15が時計方向に動作して係止部20に当接している状態では、共有流路9cとヒータ側流路9aとの連通口の開口面積が最大となり、ヒータ側流路9aから共有流路9cへ流れる冷却液の流量も最大となる。この際、第一弁板15aの先端部と弁箱14の内面14aとの間に形成された隙間16により共有流路9cとオイル側流路9bとの連通口が開口された状態が維持され、少量であるがこの隙間16を通過して冷却液がオイル側流路9bから共有流路9cへ流れる。一方、図2(b)に示すように、弁体15が反時計方向に動作して係止部20に当接している状態では、共有流路9cとオイル側流路9bとの連通口の開口面積が最大となり、オイル側流路9bから共有流路9cへ流れる冷却液の流量も最大となる。この際、第一弁板15aの先端部と弁箱14の内面14aとの間に形成された隙間16により共有流路9cとヒータ側流路9aとの連通口が開口された状態が維持され、少量であるがこの隙間16を通過して冷却液がヒータ側流路9aから共有流路9cへ流れる。
【0029】
また、図3に示す流量制御弁10は、以下のような構成を有している。すなわち、弁箱14は、円柱形状の内部空間17を有するとともに、ヒータ側流路9a、オイル側流路9b、及び共有流路9cにそれぞれ接続される3つのポート18を有している。弁体15は、弁箱14の円柱形状の内部空間17の中心軸上に設けられた図示しない回転軸により回転可能に支持された円柱状部材により構成されており、その中心軸付近から各ポート18側に向かって放射状に延設された3つの冷却液の通路21を有している。これらは、共有流路9cに接続されるポート18側に向かって形成されている通路を共有通路21c、ヒータ側流路9aに接続されるポート18側に向かって形成されている通路をヒータ側通路21a、オイル側流路9bに接続されるポート18側に向かって形成されている通路をオイル側通路21bとする。ここで、ヒータ側通路21aとオイル側通路21bとの位置関係は、いずれか一方の通路がそれと対応するポート18と完全に連通した状態において他方の通路はそれと対応するポート18と、隙間16を有して部分的に連通した状態となるように、両ポート18間の角度と両通路間の角度とをややずらして形成する。また、共有通路21cは、弁体15がいずれの位置にある状態においても対応するポート18cと完全に連通するように広い先端開口部を有する形状に形成する。また、弁箱14の内面14aには内部空間17に突出する係止凸部22が形成されており、弁体15の外周面には係止凸部22に対応する位置に周方向に一定長さを有する係止凹部23が形成されている。この係止凹部23の周方向の長さにより、弁体15が揺動する角度が定まる。すなわち、この流量制御弁10は、係止凸部22が係止凹部23の両側の側面の間にある範囲で弁体15が揺動することにより、冷却液の流路の切り換えを行う。
【0030】
したがって、図3(a)に示すように、弁体15が時計方向に動作して係止凸部22が係止凹部23の一方の側面に当接している状態では、ヒータ側通路21aはそれと対応するポート18aと完全に連通した状態であって、共有流路9cとヒータ側流路9aとの連通口の開口面積が最大となり、ヒータ側流路9aから共有流路9cへ流れる冷却液の流量も最大となる。この際、オイル側通路21bは、それと対応するポート18bに対して、隙間16を有して部分的に連通した状態であって、共有流路9cとオイル側流路9bとの連通口が開口された状態が維持され、少量であるがこのオイル側通路21bを通過して冷却液がオイル側流路9bから共有流路9cへ流れる。一方、図3(b)に示すように、弁体15が反時計方向に動作して係止凸部22が係止凹部23の他方の側面に当接している状態では、オイル側流路9bはそれと対応するポート18bと完全に連通した状態であって、共有流路9cとオイル側流路9bとの連通口の開口面積が最大となり、オイル側流路9bから共有流路9cへ流れる冷却液の流量も最大となる。この際、ヒータ側通路21aは、それと対応するポート18aに対して、隙間16を有して部分的に連通した状態であって、共有流路9cとヒータ側流路9aとの連通口が開口された状態が維持され、少量であるがこのヒータ側通路21aを通過して冷却液がヒータ側流路9aから共有流路9cへ流れる。
【0031】
なお、流量制御弁10の構成はこのような図2又は図3に示す構成に限定されるものではなく、ヒータ側流路9a及びオイル側流路9bの冷却液の流量配分を調節でき、ヒータ側流路9a又はオイル側流路9bのいずれか一方の冷却液の流量が最大となる状態で、他方の流路にも冷却液の一部が流れるような構成であれば他の構成とすることも可能である。したがって、弁箱14と弁体15との間に隙間16を形成することに替えて、例えば、弁体15自体に冷却液が通過可能な連通孔を形成した構成とすることも可能である。このような構成としては、図2に示すような流量制御弁10において、第一弁板15aに対してこの図における水平方向に貫通する孔を形成した構成等がある。また、本実施形態においては、流量制御弁10がロータリ弁である場合について説明したが、流量制御弁10の構成はロータリ弁に限定されるものではなく、スプール弁等の他の形式の弁も用いることが可能である。
【0032】
制御装置13は、所定の動作規則に基づいてヒータ用熱交換器3及びオイル用熱交換器4に対する冷却液の必要流量を判断し、流量制御弁10のヒータ側流路9a及びオイル側流路9bの冷却液の流量配分の調節動作を制御する装置である。この制御装置13は、流量制御弁10のみの動作制御を行う流量制御装置とすることも可能であるが、エンジン1の冷却装置の動作制御を行う冷却制御装置や、エンジン1の動作制御を行うエンジン制御装置を兼ねた構成とすることも可能である。そして、この制御装置13は、流量制御弁10の動作制御を行うため、空調装置の動作制御を行う空調用制御装置24、及び自動変速機の動作制御を行う変速機用制御装置25との間で信号の受け渡しを行うことが可能な構成を有している。以下、制御装置13による流量制御弁10の動作制御の方法について説明する。本実施形態においては、ヒータ側流路9aに優先的に冷却液を流すかオイル側流路9bに優先的に冷却液を流すかの2通りにのみ流量制御弁10を切り換える制御を行う場合について説明する。
【0033】
図4は、空調用制御装置24に入力される情報とそこから出力される制御信号の一例を示す図である。この図に示すように、空調用制御装置24には、外気温、室内温、水温といった温度情報信号や、ブロア風量設定等のブロア設定信号等の空調装置の動作条件となる各種の情報に関する信号が入力され、それらの入力信号に基づいた演算が行われ、熱交換要求信号やブロア風量信号等の制御信号が出力される。また、図5は、変速機用制御装置25に入力される情報とそこから出力される制御信号の一例を示す図である。この図に示すように、変速機用制御装置25には、変速機油温、水温といった温度情報信号や、車速、エンジン回転数といった速度情報等の変速機の動作条件となる各種の情報に関する信号が入力され、それらの入力信号に基づいた演算が行われ、熱交換要求信号や変速信号等の制御信号が出力される。そして、これらの空調用制御装置24及び変速機用制御装置25から出力される熱交換要求信号は、図1に示すように、制御装置13に入力され、それに基づいて流量制御弁10の動作制御が行われる。
【0034】
図6は、空調用制御装置24及び変速機用制御装置25に入力される情報に基づいて決定される熱交換要求信号のレベルを示す表である。この図に示すように、本実施形態においては、空調用制御装置24及び変速機用制御装置25から出力される熱交換要求信号のレベルは、「高」「低」「無」の3段階としている。空調用制御装置24では、各種の入力信号のうち、「外気温」「室内温」「ブロア風量設定」の3つの入力情報に基づいて熱交換要求信号のレベルが決定される。すなわち、「外気温<5℃」かつ「室内温<5℃」かつ「ブロア風量設定=Max」のとき気温が低い冬季であって空調装置に対するヒータの要求も高い状態であるため、熱交換要求信号のレベルは「高」とされ、「外気温>25℃」又は「ブロア風量設定=0」のとき気温が高い夏季であり、又は空調装置に対する要求がない状態であるため、熱交換要求信号のレベルは「無」とされ、これらの熱交換要求信号が「高」又は「無」とされるいずれの条件にも該当しないとき熱交換要求信号のレベルは「低」とされる。また、変速機用制御装置25では、各種の入力信号のうち、「変速機油温」の入力情報に基づいて熱交換要求信号のレベルが決定される。すなわち、「70℃<変速機油温≦130℃」のとき変速機の作動油の温度は適正であり温度調節の必要性がないため、熱交換要求信号のレベルは「無」とされ、「変速機油温>130℃」のとき変速機の作動油を冷却する必要性があるため、熱交換要求信号のレベルは「高」とされ、「変速機油温≦70℃」のとき変速機の作動油を加熱することが望ましい状況であるため、熱交換要求信号のレベルは「低」とされる。なお、ここで説明した熱交換要求信号のレベルの決定条件は、単なる例示であって、これに限定されるものではなく、冷却装置の性能や構成により適宜定められる。
【0035】
そして、このように空調用制御装置24及び変速機用制御装置25から出力される熱交換要求信号は制御装置13に入力され、それらの熱交換要求信号のレベルに基づいて制御装置13は、ヒータ側流路9a又はオイル側流路9bのいずれかに優先的に冷却液を流すように流量制御弁10の動作制御を行う。図7は、空調用制御装置24及び変速機用制御装置25からの熱交換要求信号のレベルとそれに基づいて決定される冷却液の優先的に配分される流路とを示す表である。上述の通り、本実施形態においては、ヒータ側流路9a又はオイル側流路9bのいずれに優先的に冷却液を流すかを2通りで切り換える流量制御弁10の制御を行う。ここで、空調装置に用いられるヒータ用熱交換器3と、自動変速機の作動油の温度調節を行うオイル用熱交換器4の性質について考慮すると、ヒータ用熱交換器3に冷却液が送られなくても空調装置のヒータの効きが悪くなるだけであるが、オイル用熱交換器4に冷却液が送られなければ自動変速機が故障し、あるいは燃費が悪化する等の悪影響が生じることから、基本的にはオイル用熱交換器4に冷却液を優先的に送る必要がある。一方、空調装置のヒータの効きは乗員の快適性に影響することからできる限りその要求にも応える必要がある。
【0036】
そこで、本実施形態においては、変速機用制御装置25の熱交換要求信号のレベル(以下「変速機要求レベル」という)が「高」である場合には、変速機の作動油の温度が高温であり、自動変速機の故障や作動油の劣化等の悪影響が生じる可能性が高いことから、空調用制御装置24の熱交換要求信号のレベル(以下「空調要求レベル」という)に関わらずオイル側流路9bに優先的に冷却液を流すように流量制御弁10の動作制御を行う。すなわち、ここではオイル側流路9bの冷却液の流量が最大となるように流量制御弁10の弁体15の動作制御を行う。一方、変速機要求レベルが「無」である場合には、変速機の作動油の温度は適正であり温度調節の必要性がないことから、空調装置のヒータの効きを高めるべく、空調要求レベルに関わらずヒータ側流路9aに優先的に冷却液を流すように流量制御弁10の動作制御を行う。すなわち、ここではヒータ側流路9aの冷却液の流量が最大となるように流量制御弁10の弁体15の動作制御を行う。
【0037】
また、変速機要求レベルが「低」である場合、変速機の作動油の温度が低温であり、作動油の粘度が増して駆動系の抵抗が増加するために燃費が悪化する可能性が高い。そのため、できる限りオイル用熱交換器4に冷却液を流して作動油の温度上昇を図ることが望ましい。一方、空調装置のヒータによる室温上昇の要求が高い場合には、多少燃費が悪化したとしてもヒータ用熱交換器3に冷却液を流して室温の上昇を図ることが適切であると考えられる。そこで、空調要求レベルが「高」である場合には、空調装置のヒータの効きを高めるべくヒータ側流路9aに優先的に冷却液を流すように流量制御弁10の動作制御を行う。一方、空調要求レベルが「低」又は「無」である場合には、自動変速機の作動油の温度上昇を図るべくオイル側流路9bに優先的に冷却液を流すように流量制御弁10の動作制御を行う。なお、流量制御弁10の制御は、本実施形態のように2段階で切り換える制御に限定されるものではなく、ヒータ側流路9a及びオイル側流路9bに冷却液を流す流量配分を段階的あるいは連続的に調節する制御とすることも可能である。
【0038】
なお、本実施形態においては、ヒータ用熱交換器3は、冷却液と熱交換を行うことにより空調装置のヒータの熱を取り出す熱交換器である場合について説明したが、ヒータの熱源として冷却液の熱を利用する熱交換器であれば空調装置に用いるものに限定されるものではない。また、オイル用熱交換器4は、冷却液と熱交換を行うことにより自動変速機の作動油の温度調節を行う熱交換器である場合について説明したが、オイルの温度調節を行う熱交換器であれば、例えばエンジンオイル等の他のオイルの温度調節を行うためのものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの冷却装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るエンジンの冷却装置の流量制御弁の構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るエンジンの冷却装置の流量制御弁の構成の他の例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るエンジンの冷却装置の空調用制御装置に入力される情報とそこから出力される制御信号の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るエンジンの冷却装置の変速機用制御装置に入力される情報とそこから出力される制御信号の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るエンジンの冷却装置の空調用制御装置及び変速機用制御装置に入力される情報に基づいて決定される熱交換要求信号のレベルを示す表である。
【図7】本発明の実施形態に係るエンジンの冷却装置の空調用制御装置及び変速機用制御装置からの熱交換要求信号のレベルとそれに基づいて決定される冷却液の優先的に配分される流路とを示す表である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 ジャケット
3 ヒータ用熱交換器
4 オイル用熱交換器
5 循環ポンプ
6 ラジエータ
7 冷却液循環路
8 冷却回路
9 熱交換回路
9a ヒータ側流路
9b オイル側流路
10 流量制御弁
13 制御装置
14 弁箱
15 弁体
16 隙間
24 空調用制御装置
25 変速機用制御装置

Claims (3)

  1. エンジンのジャケットを通過する冷却液を循環させる循環ポンプと、前記冷却液の熱を利用するヒータ用熱交換器と、前記冷却液によりオイルの温度調節を行うオイル用熱交換器と、前記冷却液を前記ヒータ用熱交換器に循環させるヒータ側流路と、前記冷却液を前記オイル用熱交換器に循環させるオイル側流路と、を有するエンジンの冷却装置において、
    前記ヒータ側流路と前記オイル側流路とは並列に配設されており、これらのヒータ側流路とオイル側流路との接続部に流量制御弁が設けられ、この流量制御弁は、前記ヒータ側流路及びオイル側流路の冷却液の流量配分を調節する弁であって、前記ヒータ側流路又はオイル側流路のいずれか一方の冷却液の流量が最大となる状態で、他方の流路にも冷却液の一部が流れるように構成されていることを特徴とするエンジンの冷却装置。
  2. 前記流量制御弁は、弁箱内に配置された弁体の動作により前記ヒータ側流路及びオイル側流路の冷却液の流量配分を調節するものであって、前記ヒータ側流路又はオイル側流路のいずれか一方の冷却液の流量が最大となるように前記弁体が動作した状態で、前記弁体により流量が制限される側の流路に対する前記弁箱と前記弁体との間に冷却液が通過可能な隙間が形成されていることを特徴とする請求項1記載のエンジンの冷却装置。
  3. 前記流量制御弁は、所定の制御装置により動作制御される弁であって、前記制御装置は、所定の動作規則に基づいてヒータ用熱交換器及びオイル用熱交換器に対する冷却液の必要流量を判断し、前記流量制御弁の前記ヒータ側流路及びオイル側流路の冷却液の流量配分の調節動作を制御することを特徴とする請求項1又は2記載のエンジンの冷却装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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