JP2004293230A - 鋼管の接続構造および接続方法 - Google Patents

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Akitoshi Toyohara
陽登志 豊原
Yuuichi Tatsumi
夕一 辰見
Hiroshi Wakiya
泰士 脇屋
Takeshi Oki
健 沖
Kimihisa Takano
公寿 高野
Shinji Horikawa
慎司 堀川
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Abstract

【課題】大口径の鋼管の場合であっても、鋼管同士を簡単に接続することができると共に、引き抜き荷重に対する抵抗力を十分高くすることができ、かつ継手材料の使用量も少なくできる鋼管の接続構造およびその接続方法を提供する。
【解決手段】2つの鋼管を継手を介して接続する鋼管の接続構造であって、2つの鋼管のうちの、一方の鋼管の端部には雄継手が設けられ、他方の鋼管の端部には雄継手と嵌合可能に形成された雌継手が設けられ、さらに雌継手には、チャック部材と係止ボルトとからなる雄継手を把持可能な把持機構がチャック部材を内側として、雌継手の周方向位置に2ヶ所以上設けられている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼管の接続構造に関するもので、特に、土木、建築等の構造物の基礎杭として使用される鋼管杭の接続構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼管は製造上あるいは輸送上、長さに限度がある。そこで、たとえば土木、建築等の構造物の基礎杭として使用される鋼管杭は、現地で地盤に埋設する際に、所定の深度に到達させるために、2つ以上の鋼管杭を長さ方向に接続して使用する場合が多い。
【0003】
鋼管杭の接続構造としては、従来、図5に示すように、開先を設けた2つの鋼管130 、160 の端部を突き合わせ、溶接箇所の内面に裏当てリング140 を配置して円周溶接し、接続部150 により接続する構造が知られていた。
このような円周溶接した接続部150 により鋼管を接続する場合、現地での溶接に長時間を要し、他の作業に支障をきたしたり、良好な溶接結果を得るには、熟練した技術を要するという欠点があった。
【0004】
そこで、このような欠点を解消させた鋼管杭の接続構造として、一方の鋼管の端部外周面に螺設された雄ねじ部と、他方の鋼管の端部内周面に螺設された雌ねじ部とをねじ結合して接続部とする接続構造が提案されている。
例えば、特開平6−193054号公報には、図6(a)、図6(b)に示すように、鋼管130 、160 をねじ結合することにより、接続部100 で接続する鋼管杭の接続構造が提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、鋼管が大口径の場合、、鋼管の周面は口径に比例して広くなるが、鋼管の厚みはそれほど厚くならないのが普通である。このため、ねじ結合により接続した大口径の鋼管杭を比較的大きな引き抜き荷重が作用するような地盤中に埋設した場合、接続部での厚み当たりの引き抜き荷重が大きくなって、雄ねじ部と雌ねじ部との間で山越えが発生してしまうことがあり、引き抜き荷重に対する接続部での抵抗力が不十分であるという問題があった。
【0006】
また、ねじ結合による鋼管杭の接続構造は、鋼管が小口径である場合、接続時間はあまり問題にはならないが、鋼管が大口径で重量物である場合、螺合中に、雌ねじ部と雄ねじ部の間でこじれが生じやすく、慎重に接続作業を行うようになるので、接続時間が長くなるという問題があった。
ところで、図7に示すフランジ継手による鋼管杭の接続構造では、上下のフランジ230 、240 に設けた貫通孔の位置合わせを行って、上下のフランジ230 、240 に設けた貫通孔に締結ボルト250 を通し、締結ボルト250 を締め付けることにより鋼管同士を接続すればよいので、接続時間をかなり短かくできるようにはなっている。
【0007】
しかしながら、フランジ継手による鋼管杭の接続構造は、引き抜き荷重Pが作用した場合、接続部に比較的大きな曲げモーメントが作用するために、引き抜き荷重に対する抵抗力が小さく、一方、引き抜き荷重に対する抵抗力を十分なものにしようとすると、フランジ230 、240 に補強部材260 を取り付けたり、フランジ230 、240 の厚みを厚くしなければならず、継手材料の使用量が増えるという問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−193054号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解消することにあり、大口径の鋼管の場合であっても、鋼管同士を簡単に接続することができると共に、引き抜き荷重に対する抵抗力を十分高くすることができ、かつ継手材料の使用量も少なくできる鋼管の接続構造およびその接続方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る鋼管の接続構造は、2つの鋼管を継手を介して接続する鋼管の接続構造であって、前記2つの鋼管のうちの、一方の鋼管の端部には雄継手が設けられ、他方の鋼管の端部には前記雄継手と嵌合可能に形成された雌継手が設けられ、さらに前記雌継手には、チャック部材と係止ボルトとからなる雄継手を把持可能な把持機構が前記チャック部材を内側として、前記雌継手の周方向位置に2ヶ所以上設けられていることを特徴とする。
【0011】
その場合、前記把持機構が前記雌継手の周方向位置に等間隔で設けられていることが好適であり、またさらに、前記チャック部材の内向き面、および前記チャック部材の内向き面と対向する位置の前記雄継手の外周面のどちらか一方の面、もしくは両方の面が粗面とされているようにすることも好適である。
あるいは、前記チャック部材の内向き面と対向する位置の前記雄継手の外周面が長さ方向に同一曲率半径Rで形成されていると共に、前記チャック部材の内向き面の周方向曲率半径が前記曲率半径Rで形成されていることも好適である。
【0012】
また、前記把持機構の係止ボルトは、その先端部に逆ねじの雄ねじが形成された6角穴付きボルトとされ、一方、前記把持機構のチャック部材は、その外向き面に前記6角穴付きボルトの先端部に形成された雄ねじと螺合する逆ねじを有するキャップ部材を取り付けてなるようにすることも好適である。
また、本発明に係る鋼管の接続方法は、2つの鋼管を継手を介して接続する鋼管の接続方法であって、前記2つの鋼管を接続するに当たり、一方の鋼管の端部に雄継手を設け、他方の鋼管の端部に雌継手を前記雄継手と嵌合可能に形成して設け、前記雄継手と前記雌継手とを嵌合する前に、チャック部材と係止ボルトとからなる把持機構を前記雌継手の周方向位置に2ヶ所以上設けておき、前記雄継手と前記雌継手とを嵌合した後、前記係止ボルトを回し、チャック部材を内方向に移動させ、前記チャック部材と前記雄継手とを接触させ、その間に押圧力を生じさせた状態で前記係止ボルトを回すのを止め、前記チャック部材を前記雌継手に係止し、前記チャック部材の内向き面と前記雄継手の外周面との間に働く摩擦力により前記雄継手を把持することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の実施の形態に係る鋼管の接続構造について、図1〜3を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る鋼管の接続構造を示す(a)は一部縦断面図、(b)は(a)のX−X断面図である。図1には、接続する一方の鋼管1を図中上方に、接続する他方の鋼管2を図中下方に示してある。また、図2(a)、(b)はそれぞれ図1に示す接続構造に用いた雄継手3、雌継手4を示す一部縦断面図である。
【0014】
図1、図2に示すように、本発明の実施の形態に係る鋼管の接続構造では一方の鋼管1の端部には雄継手3が設けられ、他方の鋼管2の端部には雌継手4が雄継手3と嵌合可能に形成されて設けられている。
またさらに、雌継手4には、チャック部材6と係止ボルト7とからなる雄継手4を把持可能な把持機構5がチャック部材6を内側として雌継手4の周方向位置に2ヶ所以上設けられている。この場合、把持機構5は、雌継手4の周方向位置に等間隔で設けられている。
【0015】
なお、雌継手4の内周面には、把持機構5のチャック部材6を半径方向に移動可能に収納するチャック部材収納部8が刻設されていると共に、雌継手4の外周面からチャック部材収納部8に至るように貫通孔が穿設され、係止ボルト7を螺合可能なねじ部8aが形成されている(図1(b)、図2(b)参照)。
本発明における把持機構5は、チャック部材6と雄継手3との間に押圧力を生じさせた状態で、チャック部材6を係止ボルト7により雌継手4に係止してあり、チャック部材6の内向き面と雄継手3の外周面との間に働く摩擦力によって雄継手3を把持するようにしている。
【0016】
このため、把持機構5を設ける周方向位置は重要であって、図1(a)、(b)に示すように、把持機構5を雌継手4の周方向位置に等間隔で設けるようにするのが、継手3、4を介して接続された鋼管1、2の使用時、引き抜き荷重に対する抵抗力を周方向により均一にすることができると共に、引き抜き荷重に対する抵抗力をより高めることができるので好ましい。
【0017】
なお、把持機構5が雌継手4の周方向位置に2ヶ所以上設けてあるのは、雌継手4の異なる周方向位置に設けてある把持機構5により、効果的にチャック部材6の内向き面と雄継手3の外周面との間に摩擦力を生じせしめ、把持機構5により雄継手3を把持するためである。一方、把持機構5を雌継手4の周方向に1ヶ所だけ設けた場合、引き抜き荷重が掛かった場合は、周方向で抵抗力が不均一となる不都合がある。
【0018】
また、図2(a)に示すように、上述したチャック部材6の内向き面と対向する位置の雄継手3の外周面3cが粗面とされている。粗面に形成するには、例えばローレット加工により、三角山状、または角ねじ山状とすることができる。このように粗面を形成することにより、継手3、4を介して接続された鋼管1、2の使用時、引き抜き荷重に対する抵抗力をより高めることができるので好適である。
【0019】
上述した継手3、4の材質としては鋼とすることができ、またチャック部材6および係止ボルト7は鋼材を用いて形成することができる。
ところで、この実施の形態では、図1、図2に示すように、接続する鋼管1、2の外径および厚みは略同じとされ、継手3、4は、最大外径が接続する鋼管1、2の外径と略同じとなるように形成されている。一方、継手3、4の最小内径は接続する鋼管1、2の内径よりも小さくされ、かつ雄継手3は外周面にフランジ部を残して上、下部の外周側が除去され、雌継手4は下部内周面にフランジ部を残して上部内周側と下部外周側がそれぞれ除去されている。
【0020】
このような形状の雄継手3の上部外周側には、図1、図2に示すように、鋼管1の下端部が円周方向溶接部9により接合され、同様に雌継手4の下部外周側には、鋼管2の上端部が円周方向溶接部9により接合されている。
また、図2(a)、図2(b)に示すように、雄継手3の外周面に残されたフランジ部の下側には下向きリング状周溝3aが形成されていると共に、雌継手4の内周面に残されたフランジ部の上側には上向きリング状周溝4aが形成され、かつ雌継手4の上端部には、上記の下向きリング状周溝3aと嵌合可能なように環状凸部4bが形成され、また雄継手3の下端部には、上記の上向きリング状周溝4aと嵌合可能なように環状凸部3bが形成されている。このような形状の継手3、4を介して図1に示すように鋼管1、2が接続されている。
【0021】
このため、この実施の形態では、チャック部材6と雄継手3とを接触させ、その間に押圧力を生じさせた場合、チャック部材6の内向き面と雄継手3の外周面3cとの間隔が過大に開いてしまうことを抑制でき、接続された鋼管1、2の使用時、引き抜き荷重に対する抵抗力をより高めることができるので好適である。
また、雌継手4の最上部内周面は、上端にいくほど開口部が広く形成されている(図2(b)参照)。このように形成しておくのも、雌継手4と雄継手3とを嵌合する際、スムーズに嵌合することができるので好ましい。
【0022】
ここで、雄継手の外周面3cが長さ方向に同一曲率半径Rで形成されていると共に、チャック部材6の内向き面の周方向曲率半径がRで形成されていることも好適である( 図2(a)、図3参照)。
雄継手の外周面3cが長さ方向に同一曲率半径Rで形成されているのが好ましい理由は、図2(a)に示す縦断面でみて、雄継手の外周面3cが下方になるほど曲率半径が小さいテーパー状に形成した場合より、継手3、4を介して接続された鋼管1、2の使用時、チャック部材6と雄継手3との間に働く雄継手3を上方に押し出そうとする分力を小さくすることができ、引き抜き荷重に対する抵抗力を高めることになるからである。
【0023】
また、図3に示すように、チャック部材6の内向き面の周方向曲率半径を雄継手の外周面3cにおける曲率半径Rと同じとして形成するのが好ましい理由は、チャック部材6の内向き面と雄継手3の外周面との間に働く摩擦力によって雄継手3を効果的に把持することができるからである。
なお、図3中Rは周方向曲率半径で、チャック部材6はその内向き面の曲率半径がRである方向を雌継手4の周方向に一致させてチャック部材収納部8に収納されている。
【0024】
このチャック部材6の内向き面も、図3(b)に示すように、粗面としておくのが好ましい。この理由は、継手3、4を介して接続された鋼管1、2の使用時、粗面とした場合の方が平滑面とした場合より、同じ押圧力であってもチャック部材6の内向き面と雄継手3の外周面との間に働く摩擦力を大きくすることができるからである。勿論、このようにしておくことにより、鋼管同士の周方向への抵抗力も同じ理由によりより高めることができる。
【0025】
ここで図3は、図1に示す鋼管の接続構造に用いて好適な係止ボルト7の一例を示す(a)は分解図、(b)は好適な一例のチャック部材6の形状を示す図である。
一例の係止ボルト7は、その先端部7aに逆ねじの雄ねじが形成された6角穴付きボルトとされ、また、一例のチャック部材6は、チャック部材本体6aの外向き面にキャップ部材6bを取り付けてなる。このキャップ部材6bには、上記6角穴付きボルトの先端部7aに形成された雄ねじと螺合する逆ねじが刻設されている。
【0026】
このような係止ボルト7を用いるのが、雄継手3と雌継手4とを嵌合する際、チャック部材6がチャック部材収納部8から脱落してしまうことがなく、確実に鋼管1、2を接続することができるから好ましい。
次いで、本発明に係る鋼管の接続方法について、図4を用いて説明する。
図4(a)、(b)は、それぞれ鋼管1、2を接続する前、後の継手3、4の状態を示す部分横断面図である。
【0027】
なお、図4(a)には、雄継手3と雌継手4とを嵌合する前に、係止ボルト7の先端部7aに形成された逆ねじの雄ねじと、逆ねじが刻設されているキャップ部材6bとを十分螺合した状態を示してある。図4(a)中符号aは、チャック部材6の内向き面と雄継手3の外周面3cの間の隙間である。
本発明に係る鋼管の接続方法では、2つの鋼管1、2を継手3、4を介して接続するに当たり、一方の鋼管1の端部に雄継手3を設け、他方の鋼管2の端部に雌継手4を上記雄継手3と嵌合可能に形成して設け、この雄継手3と雌継手4とを嵌合する前に、上述したチャック部材6と係止ボルト7とからなる把持機構5を雌継手4の周方向位置に2ヶ所以上設けておく。
【0028】
そして、2つの鋼管1、2を接続する際、雄継手3と雌継手4とを嵌合し、その後、係止ボルト7を回し、チャック部材6を内方向に移動させ、雄継手3に接触させてチャック部材6と雄継手3との間に押圧力を生じさせてから係止ボルト7を回すのを止める。
このようにして、把持機構5により雄継手3を把持し、2つの鋼管1、2を接続する。なお、係止ボルト7は、チャック部材6と雄継手3との間に必要な押圧力を生じさせることができ、かつチャック部材6の外方向への移動が係止できるものであればよい。
【0029】
図4(b)中符号bは、係止ボルト7を回すのを止めたときの、係止ボルト7の基部7bとキャップ部材6bとの間隔である。
図4に示した一例の係止ボルト7の作用について説明する。
係止ボルト7の基部7bを右に回すと、6角穴付きボルトの先端部7aに形成された雄ねじも同方向に回るものの、チャック部材本体6aが回ることができないから、それに取り付けられているキャップ部材6bも回ることができず、係止ボルト7の先端部7aとキャップ部材6bとは、逆ねじにより螺合されているため、先端部7aが右に回ると共にキャップ部材6bと螺合しているねじ部の螺合長さが減少し、その減少した長さだけ、係止ボルト7の基部7bとキャップ部材6bとの間が開いて間隔が生じるようになる。一方、係止ボルト7の基部7bには、通常の雄ねじが形成されているから、係止ボルト7を右に1回転回すと1ピッチ内方向へ移動し、そうして係止ボルト7をある回転数だけ回したとき、係止ボルト7が内方向へ移動すると共に、係止ボルト7の基部7bとキャップ部材6bとの間が開いて、チャック部材6が雄継手3に接触するようになるのである。
【0030】
以上説明したとおり、本発明に係る鋼管の接続構造においては、鋼管1、2同士を接続するに当たり、雄継手3と雌継手4とを嵌合する前に、チャック部材6と係止ボルト7とからなる把持機構5を雌継手4に装着しておき、雄継手3と雌継手4とを嵌合し、その後、係止ボルトを回すという、簡単かつ短時間の接続作業により、鋼管1、2同士を鋼管長さ方向に抜け止め状態で確実に接続することができるのである。
【0031】
このため、図1に示したような鋼管の接続構造によれば、従来の円周溶接による鋼管の接続、あるいは大口径の鋼管同士のねじ結合による接続のように、接続に長時間を要することも、熟練した技術を要するということもない。
また、本発明に係る鋼管の接続構造では、鋼管1、2同士を鋼管長さ方向に抜け止め状態で把持している把持機構5のチャック部材の内向き面が鋼管の厚み中央の面を延長した面からあまり外れていないので、接続された鋼管1、2を基礎杭として用いた場合、引き抜き荷重Pに対して、接続部に生じる曲げモーメントを小さくすることができる。このため、大口径の鋼管杭の場合でも、引き抜き荷重Pに対して、十分な抵抗力を有する鋼管杭の接続構造とすることができる。
【0032】
以上説明した実施の形態に係る鋼管の接続構造においては、鋼管1、2への継手3、4の接合を周面溶接で行っているが、本発明では鋼管と継手との接合は周面溶接に限定されない。
また、実施の形態に係る鋼管の接続構造においては、鋼管1、2を継手3、4を介して鋼管長さ方向に抜け止め状態で接続している把持機構5が雌継手4の長さ方向位置に1段、設けられているとして説明したが、鋼管1、2を基礎杭として用いる場合、鋼管1、2に作用する引き抜き力に応じて、長さ方向位置に複数段設けるようにすることができる。その際、把持機構5は雌継手4の長さ方向位置に1〜3段とするのが接続された継手製作コスト、鋼管1、2同士の接続時間および継手の必要耐力等の観点から望ましい。
【0033】
本発明を適用して好適な鋼管杭は、鋼管1、2の径が300〜2000mm、鋼管1、2の厚みtが6〜50mmである。
なお、把持機構5が雌継手4の周方向位置に4ヶ所、かつ長さ方向位置に1段設けられているとした場合、チャック部材6の厚みを15mm〜30mm、1つのチャック部材6の内向き面の面積を36cm〜144cm(一例のチャック部材の周方向弦の長さが60cm、縦方向長さが6cm)とすることが鋼管1、2を基礎杭として用いる場合、鋼管内に掘削用オーガスクリューを挿入することがあり、オーガスクリュー内挿入に支障がない、チャック部材の厚み30mm以下におさえておく。
【0034】
本発明では、把持機構5を雌継手4の周方向位置に設け、チャック部材6と雄継手3との間に押圧力を作用させ、チャック部材6の内向き面と雄継手3の外周面との間に働く摩擦力によっ、雄継手3を把持する接続構造であるから、摩擦力Fを鋼管本体1、2のいずれか一方の小さい軸方向引っ張り強度Smin よりも小さくしてあることが、引っ張り強度Smin よりも大きい引き抜き荷重が作用した場合、鋼管本体よりも先に接続部分が外れるので接続部分が過剰な強度を有するようなことがなく、無駄がないので好ましい。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、大口径の鋼管の場合であっても、簡単に、鋼管同士を鋼管長さ方向へ抜け止め状態で接続することができる。また、本発明によれば、引き抜き荷重に対して接続部に生じる曲げモーメントを小さくすることができるので、継手材料の使用量を少なくでき、かつ引き抜き荷重に対する接続部の抵抗力を十分高くすることができる。そのうえ本発明によれば、鋼管同士を周方向へ回り止め状態で接続することができる。
【0036】
このため、土木、建築等の構造物の基礎杭として使用される鋼管杭の接続構造に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る鋼管の接続構造を示す(a)は一部縦断面図、(b)は(a)のX−X断面図である。
【図2】図1に示す接続構造に用いた(a)は雄継手の一部縦断面図、(b)は雌継手の一部縦断面図である。
【図3】図1に示す接続構造に用いて好適な係止ボルト、チャック部材の図である。
【図4】(a)、(b)は鋼管の接合前、後の把持機構の状態を示す部分横断面図である。
【図5】従来の溶接による接続方法を説明するための要部縦断面図である。
【図6】従来のねじ結合による接続方法を説明するための(a)は正面図、(b)は要部縦断面図である。
【図7】従来のフランジ継手の接続構造を示す(a)は斜視図、(b)は断面を含む正面図である。
【符号の説明】
1、2 鋼管
3、4 継手
3a、4a 周溝
3b、4b 凸部
3c 外周面
5 把持機構
6 チャック部材
6a 本体
6b キャップ部
7 係止ボルト
7a 基部
7b 先端部
8 チャック部材収納部
8a 雌ねじ部
9 溶接部
R チャック部材の内向き面の周方向曲率半径
a チャック部材の内向き面と雄継手の間の隙間
100 接続部
210 、220 鋼管本体
230 、240 フランジ
250 締結ボルト
260 補強部材

Claims (6)

  1. 2つの鋼管(1、2)を継手(3、4)を介して接続する鋼管の接続構造であって、
    前記2つの鋼管(1、2)のうちの、一方の鋼管(1)の端部には雄継手(3)が設けられ、他方の鋼管(2)の端部には前記雄継手(3)と嵌合可能に形成された雌継手(4)が設けられ、
    さらに前記雌継手(4)には、チャック部材(6)と係止ボルト(7)とからなる雄継手(3)を把持可能な把持機構(5)が前記チャック部材(6)を内側として、前記雌継手(4)の周方向位置に2ヶ所以上設けられていることを特徴とする鋼管の接続構造。
  2. 前記把持機構(5)が前記雌継手(4)の周方向位置に等間隔で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鋼管の接続構造。
  3. 前記チャック部材(6)の内向き面、および前記チャック部材(6)の内向き面と対向する位置の前記雄継手(3)の外周面のどちらか一方の面、もしくは両方の面が粗面とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管の接続構造。
  4. 前記チャック部材(6)の内向き面と対向する位置の前記雄継手(3)の外周面が長さ方向に同一曲率半径Rで形成されていると共に、前記チャック部材(6)の内向き面の周方向曲率半径が前記曲率半径Rで形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鋼管の接続構造。
  5. 前記把持機構(5)の係止ボルト(7)は、その先端部(7a)に逆ねじの雄ねじが形成された6角穴付きボルトとされ、一方、前記把持機構(5)のチャック部材(6)は、その外向き面に前記6角穴付きボルトの先端部(7a)に形成された雄ねじと螺合する逆ねじを有するキャップ部材(6b)を取り付けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鋼管の接続構造。
  6. 2つの鋼管(1、2)を継手(3、4)を介して接続する鋼管の接続方法であって、
    前記2つの鋼管(1、2)を接続するに当たり、一方の鋼管(1)の端部に雄継手(3)を設け、他方の鋼管(2)の端部に雌継手(4)を前記雄継手(3)と嵌合可能に形成して設け、
    前記雄継手(3)と前記雌継手(4)とを嵌合する前に、
    チャック部材(6)と係止ボルト(7)とからなる把持機構(5)を前記雌継手(4)の周方向位置に2ヶ所以上設けておき、
    前記雄継手(3)と前記雌継手(4)とを嵌合した後、
    前記係止ボルト(7)を回し、前記チャック部材(6)を内方向に移動させ、前記チャック部材(6)と前記雄継手(3)とを接触させその間に押圧力を生じさせた状態で前記係止ボルト(7)を回すのを止め、
    前記チャック部材(6)の内向き面と前記雄継手(3)の外周面との間に働く摩擦力により前記雄継手(3)を把持することを特徴とする鋼管の接続方法。
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