JP2004293016A - 水変色性雨具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】雨具の表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた非吸水状態で不透明であり、吸水状態で透明化する多孔質層が設けられていると共に、前記多孔質層の一部に内在し、共存状態に撥水性樹脂層が配設されてなり、多孔質層中の撥水性樹脂層を設けていない部分と撥水性樹脂層を設けた部分の面積比率が、50:50〜1:99である水変色性雨具。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水変色性雨具に関する。更に詳細には、常態では潜像状態にある像を、水を媒体として顕出させて視覚判別させる水変色性雨具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、支持体上に低屈折率顔料を含有する多孔質層を設け、更に、前記多孔質層の一部に内在し、共存状態に撥水性樹脂層を設けた水変色性積層体が開示されており、前記積層体を雨具に用いることができることも開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記した積層体は、常態では不可視状態にある潜像を水を媒体として顕色像として現出させることができると共に、前記水の蒸発により元の様相に互変的に復する意外性と装飾性に富む積層体である。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−59500号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記積層体を雨具に適用する際、水の適用により様相変化を示すため、多孔質層に水が浸透して雨具が重たくなったり、水が多孔質層から乾燥し難くなって、雨具としての実用性を損なう虞がある。
本発明は、前記した従来の水変色性雨具における不具合を解消しようとするものであって、即ち、雨具としての軽快感や防水性、更には衛生性を損なうことなく、水の付着と蒸発により像を現出させたり、元の様相に復する意外性と装飾性を有する水変色性雨具を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、雨具の表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた非吸水状態で不透明であり、吸水状態で透明化する多孔質層が設けられていると共に、前記多孔質層の一部に内在し、共存状態に撥水性樹脂層が配設されてなり、前記撥水性樹脂層の非配設部分の多孔質層が吸水状態で透明化して、前記両層が視覚判別できるよう構成された雨具であって、前記多孔質層中の撥水性樹脂層を設けていない部分と撥水性樹脂層を設けた部分の面積比率が、50:50〜1:99である水変色性雨具を要件とする。
更には、前記多孔質層中の撥水性樹脂層を設けていない部分と撥水性樹脂層を設けた部分の面積比率が、40:60〜5:95であること、前記雨具が雨傘、雨靴、レインコート、ポンチョから選ばれること等を要件とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
前記低屈折率顔料としては、微粒子状珪酸、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、塩基性炭酸マグネシウム等の一種又は2種以上を併用して用いることができ、これらの顔料は屈折率が1.4〜1.7の範囲にあり、水等を吸液すると良好な透明性を示すものである。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
前記低屈折率顔料のうち、好適には微粒子状珪酸が用いられる。
前記微粒子状珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるもの(以下、乾式法微粒子状珪酸と称する)と、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるもの(以下、湿式法微粒子状珪酸と称する)とに大別され、いずれを用いることも可能であるが、湿式法微粒子状珪酸を用いた場合、乾式法微粒子状珪酸の系に較べて常態での隠蔽性が大きいため、微粒子状珪酸に対するバインダー樹脂の配合比率を大きくすることが可能となり、多孔質層自体の皮膜強度を向上させることができ、より好適に用いられる。
前記したように多孔質層の常態での隠蔽性を満足させるために用いられる微粒子状珪酸としては、湿式法微粒子状珪酸が好ましい。これは、乾式法微粒子状珪酸と、湿式法微粒子状珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法微粒子状珪酸は珪酸が密に結合した三次元構造を形成するのに対して、湿式法微粒子状珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した、所謂、二次元構造部分を有している。
従って、前記乾式法微粒子状珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法微粒子状珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法微粒子状珪酸を用いる系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、よって、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
又、前記多孔質層に含まれる低屈折率顔料は、吸液する媒体が主に水であることから、湿式法微粒子状珪酸は乾式法微粒子状珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、従って、適度の親水性を有するため好適に用いられる。
【0007】
前記湿式法微粒子状珪酸を低屈折率顔料として用いる場合、湿式法微粒子状珪酸の種類、粒子径、比表面積、吸油量等の性状に左右されるが、常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を共に満足するためには、塗布量が1g/m2 〜30g/m2 であることが好ましく、より好ましくは、5g/m2 〜20g/m2 である。1g/m2 未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、又、30g/m2 を越えると吸液時に十分な透明性を得ることが困難である。
前記低屈折率顔料は、バインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散させて分散インキとなし、対象の雨具表面に印刷、塗布、吹き付け等の手段により多孔質層を形成する。
【0008】
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記微粒子状珪酸とこれらのバインダー樹脂の混合比率は、微粒子状珪酸の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、微粒子状珪酸1重量部に対してバインダー樹脂固形分0.5〜2重量部であり、より好ましくは、0.8〜1.5重量部である。微粒子状珪酸1重量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5重量部未満の場合には、前記多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2重量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が悪くなる。
前記多孔質層は、従来より公知の一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、耐擦過強度を高めるために、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いると効果的である。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、本発明においては水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分重量比率で30%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
【0009】
撥水性樹脂層は、シリコン系、パラフィン系、ポリエチレン系、アルキルエチレン尿素系、フッ素系等の撥水性樹脂から選ばれる撥水性樹脂を含む撥水処理液を多孔質層上に適宜形状の像を形成するよう付着させ、浸透乾燥して得られる、多孔質層に内在し、共存する層である。
前記撥水性樹脂のうち、フッ素系撥水剤が、撥水効果及び加工適性の面で効果的であり、固形分として、1g/m2 〜50g/m2 、好適には、2g/m2 〜30g/m2 の範囲の付着量が有効である。
【0010】
前記雨具としては、例えば、レインコート、傘、雨靴、ポンチョ、レインハット等が挙げられる。
【0011】
前記構成により、撥水性樹脂層が多孔質層の一部に内在し、共存状態に配設されているので、前記撥水性樹脂層の共存箇所の多孔質層は、撥水効果により吸水状態が形成されず、不透明状態が保持されている(前記撥水性樹脂は透明性であるため、多孔質層の不透明状態が透視できるのである)。
従って、常態(非吸水状態)では、判別し難い、撥水性樹脂層と多孔質層が、撥水性樹脂層の非配設部分の多孔質層への吸水により、判別可能となる。
前記様相変化は、互変的である。
【0012】
本発明においては、前記多孔質層中の撥水性樹脂層を設けていない部分と撥水性樹脂層を設けた部分の面積比率が、50:50〜1:99、好ましくは40:60〜5:95である。
前記面積比率の範疇において、乾燥状態と水の適用による多孔質層の吸液状態の様相変化に富むと共に、雨具としての軽快感、防水性、衛生性を満足する。
撥水性樹脂層を設けていない部分の比率が高いと、多孔質層に浸透する水が多くなって雨具が重たくなり、軽快感を損なうと共に防水性も損ない易く、長時間の水の保有により衛生上も好ましくない。
一方、撥水性樹脂層を設けた部分の比率が高いと、水を適用した際の変色効果が十分に発揮されず、様相変化に乏しくなる。
なお、前記多孔質層は雨具表面の面積に対して0.5%〜100%配設されることが好ましい。
0.5%未満では雨具全体としての様相変化に乏しくなる。
【0013】
また、必要により多孔質層上に着色像を設けて複雑な様相変化を示すものにしたり、雨具と多孔質層の間に着色像を設けることもできる。
前記支持体と多孔質層の間に設けた着色像は多孔質層が吸水状態のとき、透視されて視覚効果を高めることができる。
前記着色層中に含まれる色材は、汎用の染料や顔料等の着色剤を含む色材により形成されたものに限らず、可逆熱変色性材料を含む色材により形成された可逆熱変色性のものであってもよい。
なお、雨具自体が前記汎用の着色剤や可逆熱変色性材料がブレンドされた着色状態のものであってもよい。
【0014】
前記した水変色性積層体の製造方法としては、雨具或いは雨具を形成する基材表面に、低屈折率顔料とバインダー樹脂と含むインキにより多孔質層を設け、更に前記多孔質層上に、撥水性樹脂を含有する撥水加工液を付着させて多孔質層内に浸透させた後、乾燥させることにより、多孔質層に内在し、共存状態にある撥水性樹脂層を形成して得られる。
前記撥水性樹脂層の印刷手段としては、スクリーン印刷、グラビヤ印刷、オフセット印刷等が例示できる。なかでも、スクリーン印刷手段によるものは、スクリーンの開孔率、孔径、線径等の調整により、目的に応じた文字、記号、英数字、点、線、図柄等や網点模様等の任意の像を比較的簡易に形成でき、撥水性樹脂層の厚み(撥水加工液の塗布量)の調整の面でも効果的である。
【0015】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明は実施例に限定されない。尚、実施例中の部は重量部を示す。
実施例1(図1乃至3参照)
布帛21として表面張力を25mN/mに調整した撥水性の白色ナイロンタフタ生地の下層に、アクリル樹脂溶液をナイフコーターで塗工し、乾燥、硬化させることにより、水不浸透性樹脂層22を設けて雨具用基材2を得た。
前記雨具用基材2の布帛21上に、蛍光ピンク色顔料15部、アクリル酸エステルエマルジョン50部、水性インキ増粘剤3部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.3部、及びブロックイソシアネート系架橋剤5部を均一に混合攪拌してなる蛍光ピンク色スクリーン印刷用インキを用いて120メッシュのスクリーン版にてベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて、着色層3を設けた。
次いで、前記着色層3上に、湿式法微粉末シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、黄色顔料〔商品名:NL Yellow HL−N、大日精化工業(株)製〕0.5部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30重量%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、及びブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる黄色のスクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層4を形成した。
次いで、前記多孔質層4上に、フッ素系樹脂撥水剤〔商品名:NKガードNDN−7、日華化学(株)製、固形分22重量%〕50部、アルギン酸ナトリウム1.5部、水48.5部、シリコーン系消泡剤0.5部、ブロックイソシアネート系架橋剤5部を均一に混合攪拌してなる透明スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて熊の抜き柄を印刷し、170℃で2分間乾燥硬化させて、多孔質層4中に撥水性樹脂層5を形成して水変色性雨具用基材を得た。
尚、前記水変色性雨具用基材の多孔質層4中の撥水性樹脂層5を設けていない部分と撥水性樹脂層5を設けた部分の面積比率は、10:90であった。
前記水変色性雨具用基材を裁断、縫製して子供用の水変色性雨具1(レインコート)を作製した。
【0016】
前記水変色性雨具は、常態(非吸水状態)では多孔質層は黄色であり、撥水性樹脂自体は無色透明であるため、前記両者が共存状態にある熊の抜き柄も黄色を呈して潜像状態にあり、全面が黄色の雨具が視認された。
前記水変色性雨具表面に水が付着すると、撥水性樹脂層は水を弾いて吸液せず、撥水性樹脂層を設けていない部分の多孔質層が水の吸液により透明化して、下層の着色層によるピンク色と多孔質層による黄色が混色となった鮮やかな蛍光オレンジ色が視覚され、黄色の背景に蛍光オレンジ色の熊の絵柄が現出した。
水が付着した状態では、前記様相を示しているが、水が蒸発すると再び全面が黄色になり、熊の絵柄は潜像状態に復した。
また、前記水変色性雨具にシャワーで水量7.5l/分にて1時間連続して水をかけても、撥水性樹脂層への水の含浸は見られず、鮮明なオレンジ色の熊の絵柄と黄色の背景を永続して視覚することができると共に、多孔質層に含浸された水は、水不浸透性樹脂層によって裏側迄浸透することなく、変色の妙味に加えて雨具としての軽快感と実用性を十分に備えていた。
【0017】
実施例2
布帛としてポリエステルと綿を混紡(65%:35%)した青色ブロード生地の下層に、ウレタン樹脂溶液をナイフコーターで塗工し、乾燥、硬化させることにより、水不浸透性樹脂層を設けて設けて雨具用基材を得た。
前記雨具用基材の青色ブロード生地上に、湿式法微粉末シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30重量%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、及びブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を設けた。
次いで、前記多孔質層上に、フッ素系樹脂撥水剤〔商品名:NKガードNDN−7、日華化学(株)製、固形分22重量%〕50部、アルギン酸ナトリウム1.5部、水48.5部、シリコーン系消泡剤0.5部、ブロックイソシアネート系架橋剤5部を均一に混合攪拌してなる透明スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて星の抜き柄を印刷し、150℃で2分間乾燥硬化させて、多孔質層中に撥水性樹脂層を形成して水変色性雨具用基材を得た。尚、前記水変色性雨具用基材の多孔質層中の撥水性樹脂層を設けていない部分と撥水性樹脂層を設けた部分の面積比率は、20:80であった。
前記水変色性雨具用基材を裁断、縫製した後、傘骨に固定して子供用の水変色性雨具(傘)を作製した。
【0018】
前記水変色性雨具は、常態(非吸水状態)では多孔質層は白色であり、撥水性樹脂自体は無色透明であるため、前記両者が共存状態にある星の抜き柄も白色を呈して潜像状態にあり、全面が白色の雨具が視認された。
前記水変色性雨具表面に水が付着すると、撥水性樹脂層は水を弾いて吸液せず、撥水性樹脂層を設けていない部分の多孔質層が水の吸液により透明化して、下層の布帛による青色が視覚されることになり、白色のバックに青色の星柄が現出した。
水が付着した状態では、前記様相を呈していたが、水が蒸発すると再び全面が白色になり、星柄は潜像状態に復した。
また、前記水変色性雨具にシャワーで水量7.5l/分にて1時間連続して水をかけても、撥水性樹脂層への水の含浸は見られず、鮮明な青色の星柄と白色の背景を永続して視覚することができると共に、 柄と黄色の背景を永続して視覚することができると共に、多孔質層に含浸された水は、水不浸透性樹脂層によって裏側迄浸透することなく、変色の妙味に加えて雨具としての軽快感と実用性を十分に備えていた。
【0019】
実施例3
布帛として表面張力を20mN/mに調整した白色ポリエステルタフタ生地の上層に、アクリル樹脂溶液をナイフコーターで塗工し、乾燥、硬化させることにより、水不浸透性樹脂層を設けて雨具用基材を得た。
前記雨具用基材の水不浸透性樹脂層上に、蛍光ピンク色顔料15部、アクリル酸エステルエマルジョン50部、水系インキ増粘剤3部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.3部、エポキシ系架橋剤5部を均一に混合攪拌してなる蛍光ピンク色スクリーン印刷用インキを用いて120メッシュのスクリーン版にて全面をベタ印刷し、100℃で5分間乾燥硬化させて、着色層を設けた。
次いで、前記着色層上に、湿式法微粉末シリカ〔商品名:ニップシールE−1009、日本シリカ工業(株)製〕15部、青色顔料〔商品名:サンダイスーパーブルーGLL、山陽色素(株)製〕5部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−20、大日本インキ化学工業(株)製、固形分35重量%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる青色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にてベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて常態で淡青色の多孔質層を形成した。
次いで、前記多孔質層上に、フッ素系樹脂撥水剤〔商品名:アサヒガードLS−6015、明成化学工業(株)製、固形分15重量%〕50部、水系インキ用増粘剤3部、水47部、シリコーン系消泡剤0.5部、ブロックイソシアネート系架橋剤5部を均一に混合攪拌してなる透明スクリーン印刷用インキを用いて、120メッシュのスクリーン版にて、水玉の抜き柄を印刷し、160℃で2分間乾燥硬化させて、前記多孔質層中に撥水性樹脂層を形成して水変色性雨具用基材を得た。
尚、前記水変色性雨具用基材の多孔質層中の撥水性樹脂層を設けていない部分と撥水性樹脂層を設けた部分の面積比率は、30:70であった。
前記水変色性雨具用基材を裁断、縫製して子供用の水変色性雨具(レインハット)を作製した。
【0020】
前記水変色性雨具は、常態(非吸水状態)では多孔質層は淡青色であり、撥水性樹脂自体は無色透明であるため、前記両者が共存状態にある水玉の抜き柄も淡青色を呈して潜像状態にあり、全面が淡青色の雨具が視認された。
前記水変色性雨具表面に水が付着すると、撥水性樹脂層は水を弾いて吸液せず、撥水性樹脂層を設けていない部分の多孔質層が水の吸液により透明化して、下層の着色層によるピンク色と多孔質層による青色が混色となった鮮やかな紫色が視覚され、淡青色の背景に紫色の水玉模様が現出した。
水が付着した状態では、前記様相を呈していたが、水が蒸発すると再び全面が淡青色になり、水玉模様は潜像状態に復した。
また、前記水変色性雨具にシャワーで水量7.5l/分にて1時間連続して水をかけても、撥水性樹脂層への水の含浸は見られず、鮮明な紫色の水玉模様と淡青色の背景を永続して視覚することができると共に、多孔質層に含浸された水は、水不浸透性樹脂層によって裏側迄浸透することなく、変色の妙味に加えて雨具としての軽快感と実用性を十分に備えていた。
【0021】
実施例4
雨具用基材として厚さ0.2mmの赤色ポリ塩化ビニルシートの上層に、湿式法微粉末シリカ〔商品名:ニップシールE−1011、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:Neorez R−966、アビシア(株)製、固形分33重量%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、80メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、70℃で30分間乾燥硬化させて多孔質層を設けた。
次いで、前記多孔質層上に、油性系シリコーン系樹脂撥水剤〔商品名:SG204、(株)日本触媒製、固形分25重量%〕50部、レベリング剤0.5部部、消泡剤0.5部、艶調整用フィラー1部、スクリーン用溶剤48部を均一に混合攪拌してなる半透明スクリーン印刷用インキを用いて、150メッシュのスクリーン版にて水玉柄を印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させて、多孔質層中に格子模様の撥水性樹脂層を形成して水変色性雨具用基材を得た。
尚、前記水変色性雨具用基材の多孔質層中の撥水性樹脂層を設けていない部分と撥水性樹脂層を設けた部分の面積比率は、50:50であった。
前記水変色性雨具用基材を裁断、縫製した後、傘骨に固定して子供用の水変色雨具(傘)を作製した。
【0022】
前記水変色性雨具は、常態(非吸水状態)では多孔質層は白色であり、撥水性樹脂自体は無色半透明であるため、前記両者が共存状態にある格子模様も白色を呈して潜像状態にあり、全面が白色の雨具が視認された。
前記水変色性雨具表面に水が付着すると、撥水性樹脂層は水を弾いて吸液せず、撥水性樹脂層を設けていない部分の多孔質層が水の吸液により透明化して、下層の雨具用基材による赤色が視覚され、白色と赤色の格子模様が現出した。
水が付着した状態では、前記様相を呈していたが、水が蒸発すると、再び全面が白色になり、格子模様は潜像状態に復した。
また、前記水変色性雨具にシャワーで水量7.5l/分にて1時間連続して水をかけても、撥水性樹脂層への水の含浸は見られず、白色と赤色の格子模様を永続して視覚することができると共に、多孔質層に含浸された水は、雨具用基材によって裏側迄浸透することなく、変色の妙味に加えて雨具としての軽快感と実用性を十分に備えていた。
【0023】
実施例5
雨具用基材として表面張力を25mN/mに調整した撥水性の白色ナイロンタフタ生地の上層に、蛍光ピンク色顔料15部、アクリル酸エステルエマルジョン50部、水性インキ増粘剤3部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.3部、及びブロックイソシアネート系架橋剤5部を均一に混合攪拌してなる蛍光ピンク色スクリーン印刷用インキを用いて、120メッシュのスクリーン版にてベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて、着色層を設けた。
次いで、前記着色層上に、湿式法微粉末シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、黄色顔料〔商品名:NL Yellow HL−N、大日精化工業(株)製〕0.5部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30重量%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、及びブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる黄色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成した。
次いで、前記多孔質層上に、フッ素系樹脂撥水剤〔商品名:NKガードNDN−7、日華化学(株)製、固形分22重量%〕50部、アルギン酸ナトリウム1.5部、水48.5部、シリコーン系消泡剤0.5部、ブロックイソシアネート系架橋剤5部を均一に混合攪拌してなる透明スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にてハートの抜き柄をランダムに印刷し、160℃で2分間乾燥硬化させて、多孔質層中に撥水樹脂層を形成した。
更に、前記撥水性樹脂層上に青色スクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にてスクリーン印刷し、青色の水玉柄からなる非変色性着色像を設けて、水変色性雨具用基材を得た。
尚、前記水変色性雨具用基材の多孔質層中の撥水性樹脂層を設けていない部分と撥水性樹脂層を設けた部分の面積比率は、5:95であった。
前記水変色性雨具用基材を裁断、縫製して子供用の水変色性雨具(ポンチョ)を作製した。
【0024】
前記水変色性雨具は、常態(非吸水状態)では多孔質層は黄色であり、撥水性樹脂自体は無色透明であるため、前記両者が共存状態にあるハートの抜き柄も黄色を呈して潜像状態にあり、黄色の背景に非変色性着色像による青色の水玉模様が視覚された。
前記水変色性雨具表面に水が付着すると、撥水性樹脂層は水を弾いて吸液せず、撥水性樹脂層を設けていない部分の多孔質層が水の吸液により透明化して、下層の着色層によるピンク色と多孔質層の黄色が混色となった鮮やかな蛍光オレンジ色が視覚され、黄色の背景に蛍光オレンジ色のハート柄が現出し、水が付着した状態では、前記ハート柄と水玉模様が視覚される様相を示す。
水が蒸発すると、再びハート柄は視認されなくなり、黄色の背景に青色の水玉模様が視認される状態に復した。
また、前記水変色性雨具にシャワーで水量7.5l/分にて1時間連続して水をかけても、撥水性樹脂層への水の含浸は見られず、鮮明なオレンジ色のハート柄と青色の水玉柄及び黄色の背景を視覚することができると共に、多孔質層に含浸された水は、雨具用基材によって裏側迄浸透することなく、変色の妙味に加えて雨具としての軽快感と実用性を十分に備えていた。
【0025】
【発明の効果】
本発明の水変色性雨具は、雨具表面に設けられた多孔質層の一部に内在し、共存状態に撥水性樹脂層が配設されてなり、多孔質層中の撥水性樹脂層を設けていない部分と撥水性樹脂層を設けた部分の面積比率が、50:50〜95:5であるため、常態では不可視状態にある潜像を水を媒体として顕色像として現出させる意外性と装飾性を有すると共に、雨具としての軽快感や防水性、衛生性を損なうことなく、実用性に優れた水変色性雨具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水変色性雨具の一実施例の多孔質層が乾燥状態の平面図である。
【図2】図1の水変色性雨具の多孔質層が吸水状態の平面図である。
【図3】図1の水変色性雨具の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
1 水変色性雨具
2 雨具用基材
21 布帛
22 水不浸透性樹脂層
3 着色層
4 多孔質層
5 撥水性樹脂層
Claims (3)
- 雨具の表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた非吸水状態で不透明であり、吸水状態で透明化する多孔質層が設けられていると共に、前記多孔質層の一部に内在し、共存状態に撥水性樹脂層が配設されてなり、前記撥水性樹脂層の非配設部分の多孔質層が吸水状態で透明化して、前記両層が視覚判別できるよう構成された雨具であって、前記多孔質層中の撥水性樹脂層を設けていない部分と撥水性樹脂層を設けた部分の面積比率が、50:50〜1:99である水変色性雨具。
- 前記多孔質層中の撥水性樹脂層を設けていない部分と撥水性樹脂層を設けた部分の面積比率が、40:60〜5:95である請求項1記載の水変色性雨具。
- 前記雨具が雨傘、雨靴、レインコート、ポンチョから選ばれる請求項1又は2記載の水変色性雨具。
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