JP2004293014A - 複合繊維及びそれからなる不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】ソフトな風合いを有し、かつ使用中の毛羽立ちおよびオイルブリードの問題が生じない不織布、および該不織布に好適な複合繊維を提供する。
【解決手段】メルト・フロー・レート(MFR)が5〜200g/10分である熱可塑性樹脂(A)と、芳香族ビニル単量体単位含有量が5〜50重量%である芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加物を含み、温度190℃、荷重2.16kgfで測定したMFRが0.1〜7g/10分である熱可塑性エラストマー組成物(B)とからなり、熱可塑性エラストマー組成物(B)の少なくとも一部が繊維表面に配置された複合構造を有する複合繊維。該複合繊維からなる不織布。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合繊維及びそれからなる不織布に関し、更に詳しくは、ソフトな風合いを有し、かつ使用中の毛羽立ちおよびオイルブリードの問題が生じない不織布、および該不織布に好適な複合繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
不織布は、おむつ、生理用ナプキン、マスク、貼付材等のような衛生材料用途や、天井材、シート材等のような自動車内装材、農業用資材、建築用資材、土木用資材の他、電池セパレーター、飲料水用フィルター、工業用フィルター等の広い分野において用いられている。不織布は、衛生材料用途に用いられる場合には、ソフトな風合いを有し、使用中に毛羽立ちが無く、かつオイルブリードなどの問題がないことが求められる。
【0003】
これらの要求を満足させようとして、不織布を構成する繊維の原料や、繊維と繊維とを接着させる方法が種々検討されて提案されている。繊維同士を接着させる方法としては、ニードルパンチ法により繊維同士を交絡させる方法や、接着剤を使用して繊維同士を接着させるバインダー法や、熱ロールなどを使用して繊維同士を融着又は圧着させる方法等がある。バインダー法は、接着剤溶液をウェブに付着させ、次いで溶液の溶媒を除くため、エネルギーを必要とし、作業衛生上好ましくない。また、環境汚染の見地からも除いた溶媒を後処理する必要がある等の問題があるため、バインダー法は用いられなくなってきている。そのため、現在は、熱ロールなどを使用して繊維同士を融着又は圧着させる方法が主流となっている。
【0004】
熱ロールなどを使用して繊維と繊維とを融着又は圧着させて不織布を製造する場合、鞘成分として比較的融点の低い樹脂を用い、芯成分として鞘成分に比べて融点が高くかつ強度の高い樹脂を用いた、いわゆる芯鞘構造を有する複合繊維が利用されるのが普通である。このような複合繊維を用いることにより、融着時の加熱(圧着)温度を極力低く抑えて、かつ、得られた不織布の風合いを改善することが可能になる。
【0005】
このような複合繊維としては、例えば、特許文献1には、芯材として特定のメルト・フロー・レート(MFR)を有する融点の高いポリプロピレン樹脂を用い、鞘材として融点の低いポリプロピレン樹脂を用いた芯鞘構造を有する複合繊維、およびそれからなる不織布が開示されている。しかしながら、このような複合繊維からなる不織布は、風合いの改善が幾分かなされるもの、その改善度合いは不十分であり、芯材と鞘材との界面剥離により、使用中に不織布表面の毛羽立ちが発生する問題を有している。
【0006】
また、特許文献2には、芯材として特定のMFRを有するポリプロピレンと特定のポリエチレンとからなる樹脂組成物を用い、鞘材として特定のMFRを有するポリエチレンを用いた芯鞘構造を有するポリオレフィン複合繊維、およびそれからなる不織布が開示されている。このような複合繊維からなる不織布は、使用中における不織布表面の毛羽立ちが幾分か改善されるものの、風合いの改善度合いは不十分であった。
【0007】
一方、特許文献3には、鞘材として、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物、パラフィン系オイルおよびオレフィン系樹脂からなり、そのMFRが8〜30g/10分である熱可塑性エラストマー組成物を用い、芯材として特定のMFRのオレフィン系樹脂を用いた芯鞘構造を有する複合繊維を用いた織布が開示されている。このような複合繊維を用いて製造した不織布は、風合いに優れるものの、使用中に不織布表面の毛羽立ちが発生し、オイルがブリードする問題がある。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−219521号公報
【特許文献2】
特開2002−69753号公報
【特許文献3】
特開平9−3725号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記事情に鑑み、ソフトな風合いを有し、かつ使用中の毛羽立ちおよびオイルブリードの問題がない不織布、および該不織布に好適な複合繊維を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述した課題を解決すべく鋭意検討したところ、鞘材として、特定組成の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はそれの水素添加物を含み、そのMFRが特定範囲にある熱可塑性エラストマー組成物を用いることによって、上記の目的を達成することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして、本発明によれば、メルト・フロー・レート(MFR)が5〜200g/10分である熱可塑性樹脂(A)と、芳香族ビニル単量体単位含有量が5〜50重量%である芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加物を含み、温度190℃、荷重2.16kgfで測定したMFRが0.1〜7g/10分である熱可塑性エラストマー組成物(B)とからなり、熱可塑性エラストマー組成物(B)の少なくとも一部が繊維表面に配置された複合構造を有する複合繊維が提供される。
また、本発明によれば、前記の複合繊維からなる不織布が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の複合繊維は、メルト・フロー・レート(MFR)が5〜200g/10分である熱可塑性樹脂(A)と、芳香族ビニル単量体単位含有量が5〜50重量%である芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加物を含み、温度190℃、荷重2.16kgfで測定したMFRが0.1〜7g/10分である熱可塑性エラストマー組成物(B)とからなり、熱可塑性エラストマー組成物(B)の少なくとも一部が繊維表面に配置された複合構造を有するものである。
【0013】
本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)としては、熱可塑性を有し、繊維として形成し得るものであれば特に限定されない。
熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。なかでも、本発明の効果が発現し易い点で、オレフィン系樹脂が好ましく使用できる。
【0014】
オレフィン系樹脂として、例えば、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。オレフィン系樹脂の中でも、プロピレン系重合体が好ましく使用できる。
【0015】
エチレン系重合体としては、例えば、高密度、中密度または低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−ヘプテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−4−メチルペンテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
プロピレン系重合体としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−4−メチルペンテン−1共重合体等が例示される。プロピレン系重合体の中でも、ポリプロピレンが好ましく使用できる。
これらの熱可塑性樹脂は、単独でも、2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)のメルト・フロー・レート(MFR)は5〜200g/10分、好ましくは20〜150g/10分である。MFRは、JIS K7210に準拠して測定する。その測定条件は、プロピレンを主体とするプロピレン系重合体の場合は温度230℃、荷重2.16kgfであり、エチレンを主体とするエチレン系重合体の場合は温度190℃、荷重2.16kgfである。MFRが低いと、溶融紡糸温度を高温に設定しなければならず、紡糸安定性が悪化し、逆にMFRが高いと、紡糸安定性が悪化する上、得られる複合繊維の繊維物性も悪化する。
【0017】
本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)は、本発明の効果を本質的に損なわない範囲において、軟化剤、滑材、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、艶消剤、抗菌剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0018】
本発明で用いる熱可塑性エラストマー組成物(B)は、芳香族ビニル単量体単位含有量が5〜50重量である芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加物を含むものである。なかでも、未水添の、芳香族ビニル単量体単位含有量が5〜50重量である芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物が好ましい。
【0019】
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体は、芳香族ビニル単量体単位を主体とするポリ芳香族ビニルブロックaと共役ジエン単量体単位を主体とするポリ共役ジエンブロックbとを有する。
【0020】
ポリ芳香族ビニルブロックaは、芳香族ビニル単量体単位を主たる構成単位として含有するものであり、ポリ芳香族ビニルブロックa中の芳香族ビニル単量体単位含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。ポリ芳香族ビニルブロックaは、芳香族ビニル単量体を単独重合させたものであることが特に好ましい。ポリ芳香族ビニルブロックa中の芳香族ビニル単量体単位含有量が少ないと、複合繊維の強度に劣る傾向がある。
【0021】
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等が挙げられる。中でも、スチレンが好ましい。
【0022】
ポリ芳香族ビニルブロックaは、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、芳香族ビニル単量体と、それと共重合可能な単量体とを共重合させたものを用いてもよい。芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体の好ましい例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエン単量体を挙げることができる。
【0023】
ポリ芳香族ビニルブロックaの重量平均分子量は、好ましくは3,000〜100,000、より好ましくは5,000〜70,000、特に好ましくは10,000〜50,000である。この重量平均分子量が低いと、複合繊維の強度が不足し、逆に高いと、流動性が悪くなり、紡糸し難くなる。
【0024】
ポリ芳香族ビニルブロックaの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
【0025】
ポリ共役ジエンブロックbは、共役ジエン単量体単位を主たる構成単位として含有するものであり、ポリ共役ジエンブロックb中の共役ジエン単量体単位含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。ポリ共役ジエンブロックbは、共役ジエン単量体を単独重合させたものであることが特に好ましい。ポリ共役ジエンブロックb中の共役ジエン単量体単位含有量が少ないと、風合いに劣る傾向がある。
【0026】
共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましく、イソプレンがより好ましい。
【0027】
ポリ共役ジエンブロックbは、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、共役ジエン単量体と、それと共重合可能な単量体とを共重合させたものを用いてもよい。共役ジエン単量体と共重合可能な単量体の好ましい例としては、前記の芳香族ビニル単量体を挙げることができる。
【0028】
本発明で用いる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体のポリマー構造としては、例えば、A−B式又はA−B−A式で表される線状ブロック共重合体、或は(A−B)nX式(式中、Aは芳香族ビニル単量体単位を主体とするポリ芳香族ビニルブロックであり、Bは共役ジエン単量体単位を主体とするポリ共役ジエンブロックであり、nは2以上の整数であり、Xはカップリング剤の残基、例えば、四塩化ケイ素、四塩化スズ、トリクロロエタン、ジメチルジクロロシランなどの残基を表す。)で表される線状又はラジアルブロック共重合体が挙げられる。
なお、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体としては、前記のポリマー構造を有するブロック共重合体を任意の割合で混合して使用することができる。
【0029】
A−B式で表されるジブロック共重合体を用いる場合、その量は、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体全量に対して、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。この量が多すぎると、紡糸し難くなる上、ベトツキ感が出てくる。
【0030】
本発明で用いる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位含有量は5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。この量が少ないと、紡糸し難くなる上、ベトツキ感が出てくる問題があり、逆に多すぎると、ソフトな風合いがなくなる。
【0031】
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の重量平均分子量は、好ましくは30,000〜1,000,000、より好ましくは40,000〜500,000、特に好ましくは70,000〜300,000である。この重量平均分子量が低いと、複合繊維の強度が不足し、逆に高いと、流動性が悪くなり、紡糸し難くなる。
【0032】
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、特に限定されず、通常、50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは5〜10重量%である。
【0033】
本発明で用いる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができ、例えば、アニオンリビング重合法により、ポリ芳香族ビニルブロック及びポリ共役ジエンブロックを、それぞれ逐次的に重合させる方法や、リビング性の活性末端を有するブロック共重合体を製造した後に、それとカップリング剤とを反応させてカップリングさせたブロック共重合体として製造する方法を採用することができる。
【0034】
本発明においては、上記の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中の二重結合の一部または全部を水素添加したものを用いることができる。芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中の二重結合は、該共重合体における共役ジエン単量体単位中の二重結合および/または芳香族ビニル単量体単位中の二重結合である。
【0035】
かかる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物は、例えば、不活性溶媒中で、パラジウム系触媒のような水素添加触媒の存在下に、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体に水素添加して製造できる。かかる水素添加の方法は、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭60−79005号公報に記載されており、良く知られている。
【0036】
熱可塑性エラストマー組成物(B)における前記の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加物の含有量は、90重量%以上、より好ましくは95重量%以上であることが好ましい。
【0037】
熱可塑性エラストマー組成物(B)のMFR(JIS K7210に従い、温度190℃、荷重2.16kgfの条件で測定した。)は0.1〜7g/10分、好ましくは1〜7g/10分の範囲である。このMFRが低いと、紡糸温度を高温にする必要があり、劣化等の問題を含み紡糸が安定せず、逆に高すぎると、使用中に毛羽立ちが発生したり、オイルブリードしたりする問題がある。
【0038】
本発明で用いる熱可塑性エラストマー組成物(B)は、本発明の効果を本質的に損なわない範囲において、熱可塑性樹脂、軟化剤、滑材、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、艶消剤、抗菌剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0039】
本発明の複合繊維は、熱可塑性エラストマー組成物(B)が繊維表面の少なくとも一部に配置された複合構造を有するものである。この複合構造は、熱可塑性エラストマー組成物(B)を繊維表面の一部に配置させた、貼り合わせ構造であっても、熱可塑性エラストマー組成物(B)を鞘材として、繊維表面全体に配置させた芯鞘構造であってもよい。なかでも、本発明の効果が発現し易い点で、熱可塑性樹脂(A)を芯材とし、熱可塑性エラストマー組成物(B)を鞘材として繊維表面全体に配置させた芯鞘構造であることが好ましい。複合繊維が芯鞘構造を有する場合、芯部分が複合繊維の断面に対して偏心した状態で配置された構造であってもよい。
【0040】
熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性エラストマー組成物(B)との重量比は、(A):(B)が、好ましくは1:7〜7:1、より好ましくは1:1〜6:1の範囲である。熱可塑性樹脂(A)の量が少なすぎると、熱可塑性樹脂(A)が連続した層を形成し難くなるため、紡糸し難くなり、逆に多すぎると、風合いに劣る傾向がある。
【0041】
本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)または熱可塑性エラストマー組成物(B)は、予め、配合成分を溶融混練して、均質な組成物としても、紡糸する際に、配合成分の混合物を調製し、溶融混練しながら該組成物の繊維に成形してもよい。
【0042】
本発明の複合繊維は、上記の熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性エラストマー組成物(B)から容易に紡糸して得ることができる。
熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性エラストマー組成物(B)を繊維状に成形する方法は、特に限定されず、従来公知の方法が採用できる。例えば、先ず、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性エラストマー組成物(B)にそれぞれ必要に応じて添加剤等を添加し、芯鞘型複合紡糸口金を使用して溶融紡糸を行い、その後、必要に応じて、エアサッカーにて延伸し、複合繊維を得ることができる。
【0043】
本発明の複合繊維の繊維径は、特に限定されないが、好ましくは1〜1000μm、より好ましくは10〜400μmである。
繊維長は、特に限定されず、短繊維でも、長繊維でもよい。
本発明の複合繊維の断面形状も、特に限定されず、円、楕円及びそれら以外の任意の形状とすることができる。
【0044】
本発明の複合繊維は、例えば、織布、不織布の製造原料として好適に使用できる。なかでも、不織布に特に好適に使用できる。
【0045】
本発明の不織布は、前記の複合繊維からなる。
【0046】
本発明の不織布は、従来公知の成形法によって、前記の複合繊維から成形することができる。具体的には、スプレー法により、短繊維をスクリーン上に集積してウェブを形成したり、スパンボンド法により、繊維をスクリーン上に集積してウェブを形成した後、溶融接着したり、接着剤を用いて、繊維同士を接着して、不織布を得ることができる。
本発明においては、高速でかつ繊維から一貫して不織布を製造することができることから、熱ロールを使用したいわゆる熱圧縮法によって不織布を製造するのが好ましい。具体的には、上述した通りにして得た複合繊維をエアサッカー下方にあるコンベアーに集積させた後、加熱したエンボスロール等により複合繊維同士を融着させるスパンボンド法により不織布を得ることができる。
【0047】
本発明の不織布の厚み及び繊維密度は、特に限定されず、用途に応じて適宜調整できる。
【0048】
本発明の不織布は、ソフトな風合いを有し、かつ使用中の毛羽立ちおよびオイルブリードの問題が生じないものであり、衛生材料の表面材として好適に使用することができる。これより、本発明の不織布は、おむつ、生理用ナプキン、マスク、貼付材等のような衛生材料用途は言うまでもなく、天井材、シート材等のような自動車内装材、農業用資材、建築用資材、土木用資材の他、電池セパレーター、飲料水用フィルター、工業用フィルター等の広範囲な分野においても使用することができる。
【0049】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下の記載における「部」及び「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0050】
(重合体の特性値の測定)
(1)重合体の重量平均分子量
テトラヒドロフランをキャリアーとし、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として測定した。
(2)スチレン単位含有量
ブロック共重合体中のスチレン単位含有量は、H−NMR分析により求めた。
(3)カップリング率
カップリング剤と反応させる前に生成している重合体及び最終的に得られたブロック共重合体をGPC測定し、非カップリング体(スチレン−イソプレンジブロック共重合体)とカップリング体の全量に対する、カップリング体の重量割合を求めた。
(4)メルト・フロー・レート(MFR)
プロピレン単独重合体のMFRは、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。
スチレン−イソプレンブロック共重合体および熱可塑性エラストマー組成物のMFRは、JIS K7210に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgfで測定した。
【0051】
(紡糸性および不織布の評価方法)
(5)紡糸性
12個の紡糸孔を有する芯鞘型複合紡糸口より、樹脂温度240℃、吐出量1.0g/分・孔で紡糸を行い、更に高速気流を用いて引き取り延伸を行い、20分間の紡糸作業において糸切れの起こる回数で示す。この回数が少ないほど、紡糸性に優れている。
(6)風合い
10人のパネラーによる官能試験で以下の基準で評価した。
◎:全員が明らかにソフトな風合いを有していると判定した。
○:8〜9人がソフトな風合いを有していると判定した。
△:5〜7人がソフトな風合いを有していると判定した。
×:ソフトな風合いを有していると判定したパネラーが4人以下であった。
(7)毛羽立ち
不織布の表面を100回指でこすった後に、肉眼で観察して以下の基準で評価した。
○:毛羽立ちが全くなかった。
△:毛羽立ちが少し観察された。
×:毛羽立ちが顕著に観察された。
(8)オイルブリード性
オイルしみ出し率(%)をブリード性の指標とした。その測定は、不織布を20枚重ねて3cm×3cmのシート状に切断しサンプルとした。その両面にクラフト紙を貼り、30g/cmの荷重を加え、70℃において24時間と−5℃において24時間の1サイクル放置した後に、クラフト紙を取り除き、クラフト紙を貼り付ける前とクラフト紙を貼り付けた後とのサンプルの重量変化から算出した。
【0052】
(参考例1)
耐圧反応器に、シクロヘキサン112部、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(「TMEDA」と略号で示す。)0.00103部及びスチレン6.72部を仕込み、40℃に昇温した後、n−ブチルリチウム0.038部を添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。この時点でのスチレンの重合転化率は100%であった。
【0053】
引き続き、イソプレン41.28部を、重合温度が50〜60℃の間になるように温度制御しながら、1時間に亘り連続的に反応器に添加し、添加終了後、更に1時間重合した。この時点での重合転化率は100%であった。
【0054】
次いで、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン0.0325部を添加して2時間カップリング反応を行なった後、メタノール0.0569部を添加して重合反応を停止した。得られた重合溶液に、重合体100部に対して、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.1部を添加した後、スチームストリッピング法により、重合溶媒を除去して、スチレン−イソプレンブロック共重合体Iを得た。
スチレン−イソプレンブロック共重合体Iの特性値を測定し、その結果を表1に示す。
【0055】
(参考例2〜5)
重合処方を、表1に示すように変更する以外は、参考例1と同様にして、スチレン−イソプレンブロック共重合体II〜Vを得た。それらの特性値を測定し、それらの結果を表1に示す。
【0056】
(参考例6)
耐圧反応器に、シクロヘキサン112部、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(「TMEDA」と略号で示す。)0.00218部及びスチレン6.72部を仕込み、40℃に昇温した後、n−ブチルリチウム0.080部を添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。この時点でのスチレンの重合転化率は100%であった。
【0057】
引き続き、イソプレン41.28部を、重合温度が50〜60℃の間になるように温度制御しながら、1時間に亘り連続的に反応器に添加し、添加終了後、更に1時間重合した。この時点での重合転化率は100%であった。
【0058】
次いで、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン0.0685部を添加して2時間カップリング反応を行なった後、メタノール0.1198部を添加して重合反応を停止した。ここで得られたスチレン−イソプレンブロック共重合体のカップリング率は85%であり、スチレン単位含有量は14%であった。
得られたスチレン−イソプレンブロック共重合体の5%シクロヘキサン溶液を調製し、それと重合体全量の0.5%に相当するパラジウム系水素添加触媒とを、耐圧反応器に仕込み、12Kg/cmの水素雰囲気下で、水素添加率98%となるように、重合体の水素添加反応を行った。
【0059】
得られた反応溶液に、重合体100部に対して、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.1部を添加した後、スチームストリッピング法により、重合溶媒を除去して、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物を得た。この重合体の重量平均分子量は101,000であり、MFRは5g/10分であった。
【0060】
【表1】
Figure 2004293014
【0061】
(実施例1)
芯材として、MFRが80g/10分であるプロピレン単独重合体を用い、鞘材として、スチレン−イソプレンブロック共重合体Iを用い、孔数12個の芯鞘型複合紡糸口金を使用して溶融紡糸を行った。溶融紡糸は、紡糸温度240℃、吐出量1.0g/分・孔、芯鞘の重量比率1/1で行い、その後、エアサッカーにて延伸し、繊維径が20μmの芯鞘構造を有する複合繊維を得た。この紡糸時における紡糸性を観察し、その結果を表2に示す。
得られた複合繊維を、エアサッカー下方にあるコンベアーに集積させた後、125℃に設定したエンボスロールにより複合繊維同士を融着させ、目付量50g/mの不織布を得た。得られた不織布の評価結果を表2に示す。
【0062】
(実施例2〜4)
鞘材として、スチレン−イソプレンブロック共重合体Iに代えて、表2に示す材料を用いる以外は、実施例1と同様にして複合繊維および不織布を製造した。得られた不織布の評価結果を表2に示す。
【0063】
(比較例1)
鞘材として、スチレン−イソプレンブロック共重合体Iに代えて、MFRが低いスチレン−イソプレンブロック共重合体IVを用いる以外は、実施例1と同様にして複合繊維を製造した。しかしながら、複合繊維を製造する過程で、繊維切れが多発して満足すべき複合繊維を得ることができなかった。
【0064】
(比較例2)
鞘材として、スチレン−イソプレンブロック共重合体Iに代えて、MFRが高いスチレン−イソプレンブロック共重合体Vを用いる以外は、実施例1と同様にして複合繊維及び不織布を製造した。得られた不織布の評価結果を表2に示す。
【0065】
(比較例3)
単軸押出機を用いて、スチレン−イソプレンブロック共重合体Iを90部およびパラフィンオイル(ダイアナプロセスオイルPW−380:出光興産(株)製)10部を混練した熱可塑性エラストマー組成物を調製した。この熱可塑性エラストマー組成物のMFRは、10g/10分であった。
鞘材として、スチレン−イソプレンブロック共重合体Iに代えて、MFRが高い上記の熱可塑性エラストマー組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして複合繊維及び不織布を製造した。得られた不織布の評価結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
Figure 2004293014
【0067】
表2から、以下のようなことがわかる。
MFRが本発明で規定する範囲より低いスチレン−イソプレンブロック共重合体IVを鞘材として用いた比較例1の複合繊維は、紡糸性に劣り、繊維として製造するには不適である。
MFRが本発明で規定する範囲より高いスチレン−イソプレンブロック共重合体Vを鞘材として用いた比較例2の不織布は、使用中に毛羽立ちし易い。
MFRが本発明で規定する範囲より高い、パラフィンオイルを配合した熱可塑性エラストマー組成物を鞘材として用いた比較例3の不織布は、使用中に毛羽立ちし易く、かつオイルブリード性にも劣る。
【0068】
これらの比較例に比して、本発明の範囲内の複合繊維からなる不織布は、風合いに優れ、かつ使用中の毛羽立ちおよびオイルブリードの問題も生じない。また、複合繊維を製造する際の紡糸性にも優れている(実施例1〜4)。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、ソフトな風合いを有し、かつ使用中の毛羽立ちおよびオイルブリードの問題が生じない不織布、および該不織布に好適な複合繊維が提供される。

Claims (6)

  1. メルト・フロー・レート(MFR)が5〜200g/10分である熱可塑性樹脂(A)と、芳香族ビニル単量体単位含有量が5〜50重量%である芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加物を含み、温度190℃、荷重2.16kgfで測定したMFRが0.1〜7g/10分である熱可塑性エラストマー組成物(B)とからなり、熱可塑性エラストマー組成物(B)の少なくとも一部が繊維表面に配置された複合構造を有する複合繊維。
  2. 複合構造が、熱可塑性樹脂(A)を芯材とし、熱可塑性エラストマー組成物(B)を鞘材とする芯鞘構造である請求項1記載の複合繊維。
  3. 熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂である請求項1または2に記載の複合繊維。
  4. オレフィン系樹脂がポリプロピレンである請求項3記載の複合繊維。
  5. 芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体がスチレン−イソプレンブロック共重合体である請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合繊維。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合繊維からなる不織布。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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ITPD20090085A1 (it) * 2009-04-09 2010-10-10 Plastitex Societa Per Azioni Abbr Eviata In Plas Filo di materia plastica particolarmente per tessuti tecnici, e tessuto tecnico realizzato con tale filo

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