JP2004292605A - ポリオレフィン系エポキシ化合物の製造方法 - Google Patents

ポリオレフィン系エポキシ化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】炭素数2以上のオレフィンを重合させたポリオレフィンを原料とし、ポリオレフィン系エポキシ化合物を、高選択率及び高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】炭素数2以上のオレフィンを重合させたポリオレフィンを原料とし、これを有機ハイドロパーオキサイドの存在下に酸化させるオレフィン系エポキシ化合物の製造方法において、触媒にモリブデン化合物、及び助触媒にホウ酸エステルとを用いて酸化することを特徴とするエポキシ化合物の製造方法。モリブデン化合物がモリブデン酸アンモニウム又はモリブデンアセチルアセトナートであるポリオレフィン系エポキシ化合物の製造方法。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素数2以上のオレフィンを重合させたポリオレフィンを原料とするポリオレフィン系エポキシ化合物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィンを原料としたポリオレフィン系エポキシ化合物の製造方法として、過酸化水素水を用いるエポキシ化方法が知られている。この方法は一般に使用されているが、低温反応であるためエポキシへの転化率が低い。さらに反応系にある水或いは反応で生じる水が原因となり加水分解によりエポキシ環が開環してポリオールが副生し、その結果として選択性が低下することが知られている。
また、過ギ酸などの過酸を用いるエポキシ化方法も知られているが、反応系中に存在するギ酸などの酸によって生成したエポキシ化合物が開環し、その結果としてエポキシ化合物への選択率が低下する問題を抱えている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
前記のような問題を回避するために、近年では、有機ハイドロパーオキサイドを用いるエポキシ化の方法が提案されている。
例えば、バナジウム、モリブデン、タングステン、チタン、ニオブ、ジルコニウム、テルル及びウランの各化合物の中から選ばれた触媒の存在下、有機ハイドロパーオキサイドを用い、エポキシ化合物を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながらこれらの方法もオレフィンの構造によっては反応性が低下する等の問題を抱えている。
【0004】
【非特許文献1】Polymers for Advanced Technologies、1996年、7巻(第67−72頁)。
【特許文献1】米国特許第3350422号明細書(第1〜2頁)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
非特許文献1に開示された過酸化水素や過酸を用いるエポキシ化方法は、エポキシ化物の加水分解を生じ易く結果として選択率が低下する。一方、特許文献1に開示された金属触媒を用いた有機ハイドロパーオキサイドによるエポキシ化の方法は、原料が直鎖オレフィンやシクロオレフィンである場合には適用できるが、枝分れ構造を形成するオレフィンや、長鎖のオレフィンでは反応性が劣り、エポキシ化物の収率も十分なものとはならなかった。
本発明の目的は、炭素数2以上のオレフィンを重合させたポリオレフィンを原料とし、エポキシ化合物を、高選択率及び高収率で製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明を以下に示す。
(1)炭素数2以上のオレフィンを重合させたポリオレフィンを原料とし、これを有機ハイドロパーオキサイドの存在下に酸化させるポリオレフィン系エポキシ化合物の製造方法において、触媒にモリブデン化合物、及び助触媒にホウ酸エステルとを用いて酸化させることを特徴とするポリオレフィン系エポキシ化合物の製造方法。
(2)ポリオレフィンが液状ポリオレフィンである前記(1)のポリオレフィン系エポキシ化合物の製造方法。
【0007】
(3)モリブデン化合物がモリブデン酸アンモニウム又はモリブデンアセチルアセトナートである前記(1)又は(2)のエポキシ化合物の製造方法。
(4)有機ハイドロパーオキサイドが、t−ブチルハイドロパーオキサイドである前記(1)〜(3)のエポキシ化合物の製造方法。
(5)炭素数2以上のオレフィンがブテン又はブテンを含む混合物である前記(1)〜(4)のエポキシ化合物の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明において、原料とする炭素数2以上のオレフィンを重合させたポリオレフィンは、分子末端に不飽和結合を有するポリマーである。オレフィンを重合すると、ポリオレフィンの重合末端が停止反応において不均化し不飽和結合を有することになる。
具体的には、オレフィンとしてエチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、アミレン、1−ヘキセン、イソヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンから選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられ、そのオレフィンを酸触媒、有機金属触媒等により重合させて目的のポリオレフィンを得ることができる。
【0009】
ここで、分子中の不飽和結合の量は臭素価により評価することができるが、本発明の製造方法では臭素価20以上のポリオレフィンが、エポキシ化合物の製造に適している。臭素価が19未満では、エポキシ化合物の反応収率が著しく低下するので原料として適さない。
本発明の製造方法においては、無溶媒系で製造できることから、ポリオレフィンであって液状のポリオレフィンを原料とすることが好ましい。液状ポリオレフィンとして、数平均分子量100〜800の範囲のものを使用できる。
さらに、本発明の製造方法はオレフィンが炭素数4である1−ブテン又は2−ブテンであるブテン、あるいはブテンを含む混合物を重合した分岐鎖を有するポリオレフィンでも、対応するポリオレフィン系エポキシ化合物を高収量、高選択率で製造できる。
【0010】
本発明の製造方法では、有機ハイドロパーオキサイドを酸化剤とし、モリブデン化合物を触媒に用い、ホウ酸エステルを助触媒に用いることを特徴とする。
本発明に用いる有機ハイドロパーオキサイドは、一般式ROOHで表される化合物である。ここで、Rはアルキル基又はアラルキル基であり、炭素数1〜12、好ましくは2〜10である。
具体的には、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−アミルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、エチルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンモノハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンジハイドロパーオキサイドなどの1種又は2種以上の混合物が挙げられる。これらの中で好ましい有機ハイドロパーオキサイドは、反応後に生成するアルコールの沸点が低く、エポキシ化反応後の分離精製が容易な点からt−ブチルハイドロパーオキサイドである。
【0011】
これらの有機ハイドロパーオキサイドは、オレフィン類又は第三級アルコール類の過酸化水素による酸化、又は第二級水素及び第三級水素の少なくとも1種を有する炭化水素類の酸素酸化によって製造される。
本発明において、有機ハイドロパーオキサイドには製造時に原料として用いられるオレフィン類、第三級アルコール類、炭化水素類及び有機ハイドロパーオキサイドから副生するアルコール類が含まれてもよい。例えば、t−ブタノール及びイソブタンを含むt−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルアルコール及びクメンを含むクメンハイドロパーオキサイド、α−フェニルエチルアルコール及びエチルベンゼンを含むエチルベンゼンハイドロパーオキサイド等が利用できる。さらに、これを公知の濃縮方法や精製方法によって処理したものである高純度の有機ハイドロパーオキサイドであってもかまわない。
【0012】
有機ハイドロパーオキサイドとポリオレフィンの使用量は特に限定しないが、ポリオレフィンは有機ハイドロパーオキサイドに対して通常0.8〜60モル倍量が好ましく使用される。前記不飽和結合を残存する液状ポリマーの使用量が、有機ハイドロパーオキサイドに対して0.8モル倍量未満の場合、エポキシ化合物の収率が著しく低くなる傾向がある。また、60モル倍量を超えて使用してもエポキシ化合物の収率への影響はほとんど認められなくなり、むしろ原料とするポリオレフィンの回収のために経済性が損なわれる傾向にある。
【0013】
本発明に用いる触媒は、モリブデン化合物であり、モリブデンアセチルアセトナート、モリブデン酸アンモニウム、塩化モリブデン、酸化モリブデン等を例示できるが、反応活性が高い触媒としてモリブデンアセチルアセトナート、モリブデン酸アンモニウムが好ましく、触媒の分離、回収や経済性の点からはモリブデン酸アンモニウムがさらに好ましい。一方、ホウ酸エステルはモリブデン化合物の反応活性を向上、調整するための助触媒として使用され、例えばホウ酸エチル、ホウ酸ブチルが挙げられる。
【0014】
触媒のモリブデン化合物の使用量は、ポリオレフィンと有機ハイドロパーオキサイドの仕込み比により異なるが、通常は有機ハイドロパーオキサイド100重量部に対して0.1〜70重量部である。より好ましくは0.2〜40重量部である。
0.1重量部未満では反応速度が遅くなるので、長時間反応させることになり、副反応生成物が増え、エポキシ化合物の収率が下がる傾向にある。70重量部を超えると副反応が増加し選択率が低下する傾向にある。
ホウ酸エステルの使用量は、モリブデン化合物100重量部に対して1〜2000重量部用いられ、好ましくは10〜1500重量部である。2000重量部を超えるとエポキシ化合物の収量は一定となる。また、1重量部未満では、助触媒としての効果が生じなくなる。
【0015】
本発明の製造方法は、エポキシ化の反応は無溶媒で実施できるが、ベンゼン、クロロベンゼンのような芳香族炭化水素溶剤;オクタン、デカンのような脂肪族炭化水素溶剤;アルコール類、エステル類、エーテル類のような不活性な公知の溶媒を使用することもできる。また、有機ハイドロパーオキサイドとして、t−ブチルハイドロパーオキサイドを用いた場合、エポキシ化反応により比較的沸点の低いt−ブタノールが副生する。この場合、反応液組成を単純化でき、留出除去の容易な点からt−ブタノールが好ましい溶媒となる。
【0016】
本発明の製造方法において、エポキシ化反応の温度は、通常50〜120℃であり、より好ましくは80〜110℃である。50℃未満では反応速度が遅いため反応時間が長くなり、そして120℃を超えると有機ハイドロパーオキサイド自身の分解が生じ、また、エポキシ基の開環反応などの副反応によりエポキシ化合物の選択性が低下する傾向にある。エポキシ化反応の時間については、有機ハイドロパーオキサイドとポリオレフィンの濃度、反応温度、あるいは触媒、助触媒の使用量等によって変化するが、通常は0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間である。反応方法は、回分式の反応や、複数の反応釜を有する多段式の連続反応など任意の公知の反応形式によって行うことができる。
【0017】
このようにして得られた反応液には、目的のエポキシ化合物、他に未反応のポリオレフィン、有機ハイドロパーオキサイド、種々の副反応生成物、触媒、助触媒等が含まれているが、これらは、蒸留、濾過などの公知の手法によって分離・精製でき、回収により再利用することができる。
【0018】
本発明の製造方法は、例えば、分岐鎖を有するポリマーのような反応性の低い不飽和結合を有する液状のポリオレフィンのエポキシ化に有効で、得られるエポキシ化合物は、相溶性を改良した溶剤、エポキシ樹脂原料、エポキシ樹脂の希釈剤、ポリエーテル及びグリコールなどの各種化学品の中間体として有用な化合物である。
【0019】
【発明の効果】
本発明の製造方法によると、炭素数2以上のオレフィンを重合させたポリオレフィンを原料とし、得られたポリオレフィン系エポキシ化合物を高選択率及び高収率で製造する方法を提供することができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例等に限定されるものではない。例中、TBHPはt−ブチルハイドロパーオキサイドの略記号である。
なお、製品であるエポキシ化合物の臭素価転化率は、石油製品臭素価試験方法(電気滴定法、JIS K 2605)にて原料のポリレフィン及び得られた製品の臭素価を測定し、下記(式1)より求めた。
エポキシ価選択率は、塩酸・ジオキサン法により製品のエポキシ価を測定し、理論エポキシ価を基準として下記(式2)より求めた。ここで、理論エポキシ価は、1個の高分子鎖あたりに1分子の酸素が付加されるものとして求めたものである。
また製品の収率は、下記(式3)より臭素価転化率とエポキシ価選択率より求めた。
製品の臭素価転化率(%)=(原料の臭素価−製品の臭素価)÷(原料の臭素価)×100・・(式1)
製品のエポキシ価選択率(%)=(製品のエポキシ価)÷(製品の理論エポキシ価)×100・・(式2)
製品の収率(%)=(製品の臭素価転化率)×(製品のエポキシ価転化率)÷100・・・(式3)
【0021】
実施例1
モリブデン酸アンモン(MoNH)0.2g、ホウ酸トリエチル(BEt)2.0g、ポリブテン(日本油脂株式会社、商品名:ポリブテンON、数平均分子量336、臭素価46.6)50.0g(0.15モル)、TBHP/t−ブタノール(TBA)溶液(TBHP:純度85%、TBHP活性酸素量73%)20.4gを攪拌装置、冷却管及び温度計を備えた500mlの反応器に秤り入れた。その後、反応器を90℃のオイルバスに漬けて7時間エポキシ化反応を行った後、冷却して反応を止めた。さらに反応液を充分水洗した後、70℃、20mmHgの減圧下で2時間エバポレーションして目的のエポキシ化合物を分離した。得られた製品の臭素価転化率、エポキシ価選択率及び収率を表1に示す。また、得られたオレフィン系エポキシ化合物を分析するとH−NMR(2.5〜3ppm)、IR(860cm−1)付近の吸収が認められエポキシ基の存在を確認できた。
【0022】
実施例2〜4
エポキシ化反応における反応時間を表1に示すようにした以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィンのエポキシ化反応を行った。その結果を表1に示す。
【0023】
実施例5〜7
エポキシ化反応時に用いるモリブデン化合物としてモリブデンアセチルアセトナート(MoAA)を用い、反応時間を表1に示すようにした以外は実施例1と同様して、ポリオレフィンのエポキシ化反応を行った。その結果を表1に示す。
【0024】
実施例8〜9
原料として、ポリブテン(日本油脂株式会社、商品名NAS−4未水素添加品、数平均分子量224、臭素価69.8)を使用し、反応時間を表1に示すようにした以外は実施例1と同様にしてポリオレフィンのエポキシ化反応を行った。その結果を表1に示す。
【0025】
実施例10〜11
原料として、ポリブテン(日本油脂株式会社、商品名ポリブテン015N、数平均分子量560、臭素価26.9)を使用し、反応時間を表1に示すようにした以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィンのエポキシ化反応を行った。その結果を表1に示す。
【0026】
比較例1
エポキシ化反応時にホウ酸エステルを使用しないこと以外は実施例1と同様とし、ポリオレフィンのエポキシ化反応を行った。その結果を表2に示す。
【0027】
比較例2
実施例1において、ギ酸及び過酸化水素を加えてポリオレフィンのエポキシ化反応を行った。その結果を表2に示す。
【0028】
【表1】
Figure 2004292605
【0029】
表中の略号は以下の通りである。
MoNH:モリブデン酸アンモニウム、
MoAA:モリブデンアセチルアセトナート、
BEt:ホウ酸トリエチル、
( )はモル数を示す。
【0030】
【表2】
Figure 2004292605
【0031】
表中の略号は以下の通りである。
MoNH:モリブデン酸アンモニウム、
BEt:ホウ酸トリエチル、
:過酸化水素、
( )はモル数を示す。
【0032】
表1と表2の対比より、有機ハイドロパーオキサイドを用いて、モリブデン化合物を触媒にしホウ酸エステルを助触媒に使用すると、ポリオレフィンを原料とし高転化率、高選択率及び高収率で、ポリオレフィン系エポキシ化合物を製造できることがわかる。比較例2の、ギ酸と過酸化水素を用いた反応では選択率が低いので収率が低下するので、目的とするエポキシ化合物のほかに多量の副生成物の存在することになるが、本発明の製造方法では高収率でエポキシ化合物を製造できることがわかる。

Claims (5)

  1. 炭素数2以上のオレフィンを重合させたポリオレフィンを原料とし、これを有機ハイドロパーオキサイドの存在下に酸化させるポリオレフィン系エポキシ化合物の製造方法において、触媒にモリブデン化合物、及び助触媒にホウ酸エステルとを用いて酸化させることを特徴とするポリオレフィン系エポキシ化合物の製造方法。
  2. ポリオレフィンが液状ポリオレフィンである請求項1に記載のポリオレフィン系エポキシ化合物の製造方法。
  3. モリブデン化合物がモリブデン酸アンモニウム又はモリブデンアセチルアセトナートである請求項1又は2に記載のエポキシ化合物の製造方法。
  4. 有機ハイドロパーオキサイドが、t−ブチルハイドロパーオキサイドである請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
  5. 炭素数2以上のオレフィンがブテン又はブテンを含む混合物である請求項1〜4のいずれか一項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
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