JP2004292369A - ハロゲン化アルキル芳香族誘導体の製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハロゲン化アルキル芳香族誘導体、特に、クロロアルキルベンゼン誘導体中に不純物として含まれ、蒸留で分離し難いα−クロロアルキルベンゼン誘導体を微量の金属添加により、迅速かつ選択的に分解後、無処理で蒸留することができる手法を得る。
【解決手段】以下の一般式(A)で示されるハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)に、不純物として以下の一般式(B)で示されるα−ハロゲン化アルキル芳香族誘導体(B)を1種類以上含む混合物に対して0.001〜10重量%の金属および/または金属の塩類を加えることを特徴とするハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)の製法。
(A) RjArYi
(B) RjArZi
[式(A)中、Arは芳香環を表す、YiはCH2Riであり、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表す]
[式(B)中、Arは芳香環を表す、ZiはCHXRiであり、Xはハロゲンを表し、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のα−ハロゲン化アルキルを表す]
【選択図】なし
【解決手段】以下の一般式(A)で示されるハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)に、不純物として以下の一般式(B)で示されるα−ハロゲン化アルキル芳香族誘導体(B)を1種類以上含む混合物に対して0.001〜10重量%の金属および/または金属の塩類を加えることを特徴とするハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)の製法。
(A) RjArYi
(B) RjArZi
[式(A)中、Arは芳香環を表す、YiはCH2Riであり、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表す]
[式(B)中、Arは芳香環を表す、ZiはCHXRiであり、Xはハロゲンを表し、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のα−ハロゲン化アルキルを表す]
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬及び農薬をはじめとする各種有機合成化学物質やポリマー原料として利用されうるハロゲン化アルキル芳香族誘導体、特に、クロロアルキルベンゼン誘導体中の不純物分解および精製方法に関する。さらに詳しくは、クロロアルキルベンゼン誘導体中に不純物として含まれるα−クロロアルキルベンゼン誘導体(ベンジルクロリド誘導体)を選択的に分解後、処理することなく、迅速に蒸留すること等により高純度クロロアルキルベンゼン誘導体を得る方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化アルキル芳香族誘導体、特に、クロロアルキルベンゼン誘導体は多くの化合物の原料中間体として工業的に重要な化合物である。芳香環炭素原子に直接ハロゲン原子が結合した核ハロゲン化ジアルキルベンゼン誘導体には、オルト,メタ,パラの三種類の異性体が存在するが、特にパラ置換ハロゲン化アルキルベンゼン誘導体は各種の有機化合物の原料として重要である。例えば、1位と2位にメチル基、4位にクロロ基を有する4−クロロオルトキシレンはポリマー原料など、多くの有用な化合物の原料中間体として用いられる。
【0003】
核ハロゲン化アルキルベンゼン誘導体は、一般的には、塩化第二鉄、塩化アルミニウム等のルイス酸を触媒として、アルキルベンゼン誘導体をハロゲン化して製造されている。例えば、4−クロロオルトキシレンは、ルイス酸の存在下、オルトキシレンを塩素化する事により得られるが、この際、4−クロロオルトキシレンと沸点差が少ない3−クロロオルトキシレンが生成する。有用な4−クロロオルトキシレンを選択的に得る方法として、L型ゼオライトを触媒として用いるオルトキシレンの塩素化による4−クロロオルトキシレンの製造方法が開示されている(特許文献1参照)。ニトロ基含有化合物を添加剤として加えると、4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレンの生成比が高くなることも開示されている。また、スジット・ビー・クマールらは、溶媒として1,2−ジクロロエタンを利用することにより4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレンの生成比が高くなることを開示している(非特許文献1参照)。
【0004】
最近になって、ジアルキルベンゼン誘導体(オルトキシレン)をハロゲン化するに当たり、触媒としてフッ素を含有するゼオライトを使用することによって、4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレンの生成比が画期的に高くなることを開示している(特許文献2,3,4参照)。しかしながら、同方法においても未だ、4−クロロオルトキシレンと沸点差の近いα−クロロオルトキシレンが微量副生成し、蒸留精製の妨げとなる。
【0005】
ベルナルド・ミラーは、3種の4−クロロ−ベンジルクロリド誘導体を亜鉛/濃塩酸/エタノールを作用させ、α位のハロゲンを選択的に還元分解法できることを開示しているが、原料に対して、323重量%の亜鉛/1000重量%の濃塩酸/200重量%のエタノールの多量使用、反応時間および蒸留前処理(抽出・塩基処理・乾燥・濾過)操作が長いという問題があり、大量製造を考慮すると原価・生産性で必ずしも許容されるものではない(非特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平3−81234号公報、p3、実施例1
【0007】
【特許文献2】特願2002−150204
【0008】
【特許文献3】特願2002−210494
【0009】
【特許文献4】特願2002−214928
【0010】
【非特許文献1】ジャーナル オブ キャタリシス(Journal of Catalysis)、1994年、150巻、p.430−433
【0011】
【非特許文献2】ジャーナル オブ オルガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)、1973年、38巻、6号、p.1243−1245
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち本発明の目的は、ハロゲン化アルキル芳香族誘導体、特に、クロロアルキルベンゼン誘導体中に不純物として含まれるα−クロロアルキルベンゼン誘導体を微量の金属添加により、迅速かつ選択的に分解後、無処理で蒸留することにより高純度のクロロアルキルベンゼン誘導体を効率的に得ることにある。例えば、クロロオルトキシレン中に不純物として含まれる沸点差が小さく、蒸留後も除くことができないα−クロロオルトキシレンを触媒などを大量に用いることなく、迅速かつ選択的に分解後、無処理で蒸留することにより高純度の4−クロロオルトキシレンを効率的に得ることできれば、蒸留前処理および精製工程の負荷が軽減・簡略化され精製工程の固定費が下がり、生産性が上がる。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、以下の一般式(A)で示されるハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)に、不純物として以下の一般式(B)で示されるα−ハロゲン化アルキル芳香族誘導体(B)を1種類以上含む混合物に対して0.001〜10重量%の金属および/または金属の塩類を加えることを特徴とするハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)の製法
(A) RjArYi
(B) RjArZi
[式(A)中、Arは芳香環を表す、またYiとRjはそれぞれ少なくとも1個あり、両者の合計は芳香環の置換可能数であり、YiはCH2Riであり、置換基Ri、Rjは、それぞれに独立であり、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表す]
[式(B)中、Arは芳香環を表す、またZiとRjはそれぞれ少なくとも1個あり、両者の合計は芳香環の置換可能数であり、ZiはCHXRiであり、Xはハロゲンを表し、置換基Ri、Rjは、それぞれ独立であり、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のα−ハロゲン化アルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、ハロゲン、水素を表す ]
又は、
以下の一般式(I)で示されるハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(I)に、不純物として以下の一般式(II)で示されるα−ハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(II)を1種類以上含む混合物に対して0.001〜10重量%の金属および/または金属の塩類を加えることを特徴とするハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(I)の製法
【0014】
【化3】
【0015】
[式(I)中、置換基R1〜R6は、互いに独立であり、R1は水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、R2〜R6は、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、塩素、炭素数1〜5のアルキルを表す ]
[式(II)中、Xはハロゲン、置換基R1〜R6は、互いに独立であり、R1は水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、R2〜R6は、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のα−ハロゲン化アルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、塩素、水素を表す ]
により、不純物分解後、金属除去することなく、無処理で蒸留が可能となり、クロロアルキルベンゼン誘導体の精製を高回収率、高純度で達成できることを見出し、本発明に至った。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に記述する。
【0017】
本発明は、以下の一般式(A)で示されるハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)に、不純物として以下の一般式(B)で示されるα−ハロゲン化アルキル芳香族誘導体(B)を1種類以上含む混合物に対して0.001〜10重量%の金属および/または金属の塩類を加えることを特徴とするハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)の製法
(A) RjArYi
(B) RjArZi
[式(A)中、Arは芳香環を表す、またYiとRjはそれぞれ少なくとも1個あり、両者の合計は芳香環の置換可能数であり、YiはCH2Riであり、置換基Ri、Rjは、それぞれに独立であり、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表す]
[式(B)中、Arは芳香環を表す、またZiとRjはそれぞれ少なくとも1個あり、両者の合計は芳香環の置換可能数であり、ZiはCHXRiであり、Xはハロゲンを表し、置換基Ri、Rjは、それぞれ独立であり、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のα−ハロゲン化アルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、ハロゲン、水素を表す ]
に関するものである。なお、前記芳香環としてはベンゼンは用途が広く好ましいものであり、又、Yi、Ziは1個であると合成反応が簡便で好ましいので、以下ではこの好適な態様を例に挙げて本発明を説明するが何等これに限定されるものではない。
【0018】
以下の一般式(I)で示されるハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(I)に、不純物として以下の一般式(II)で示されるα−ハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(II)を1種類以上含む混合物に対して0.001〜10重量%の金属および/または金属の塩類を加えることにより、α−ハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(II)を選択的に分解し、前記混合物を好ましくは、蒸留することにより高純度の核ハロゲン化アルキルベンゼン誘導体を精製することが可能となるものである。
【0019】
【化4】
【0020】
[式(I)中、置換基R1〜R6は、互いに独立であり、R1は水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、R2〜R6は、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、塩素、炭素数1〜5のアルキルを表す ]
[式(II)中、Xはハロゲン、置換基R1〜R6は、互いに独立であり、R1は水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、R2〜R6は、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のα−ハロゲン化アルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、塩素、水素を表す ]
前記ハロゲンとしては、塩素であることが医薬及び農薬をはじめとする各種有機合成化学物質やポリマー原料として利用されること、塩素ガスが最もハロゲン化剤として安価で扱いやすいことから好ましく、以下、この場合、すなわち、クロロアルキルベンゼン誘導体を例に挙げて説明するが、これに限られるわけではない。
【0021】
本発明において高純度化するクロロアルキルベンゼン誘導体を主成分とするα−クロロアルキルベンゼン誘導体等の不純物を含んだ混合物は、例えば、アルキルベンゼン誘導体に溶媒および、核ハロゲン化触媒を加え、塩素ガスと窒素ガスを吹き込み、核ハロゲン化反応を行い、触媒回収後、溶媒を留去することにより得られる。
【0022】
使用する溶媒は蒸留などで回収して再利用することが製造コストの観点から好ましい。従って、生成物と沸点差が十分あり、しかも低い沸点のものが好ましい。溶媒の種類は、特に限定されないが、従来公知のハロゲン含有化合物、ニトロ含有化合物が好ましく使用される。ハロゲン含有化合物の方が、ニトロ含有化合物より位置選択性が高くなるので好ましい。ハロゲン含有化合物は、脂肪族が好ましい。例えば、クロロ化合物では、クロロホルム、四塩化炭素、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン等である。後の工程やリサイクル性の点から沸点160℃以下の化合物が好ましい。特に、1,2−ジクロロエタン等のジクロロエタンや1,2−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロパン等ジクロロプロパンが、活性、選択性ともに高くなるので好ましい。塩素化反応時には溶媒は必ずしも必要ではないが、溶媒を加えることが好ましい。例えば、4−クロロオルトキシレンの製造においては、従来公知の方法で、溶媒としてジクロロエタンを、触媒としてK−L型ゼオライトを使用することによって、4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレン生成比が向上することが知られている。更に特許文献4は、触媒のゼオライトにフッ素を含有させることによって予想以上に選択性が向上することを見出している。
【0023】
核ハロゲン化触媒としてフッ素を含有するゼオライトを使用する。ゼオライトとは、結晶性マイクロポーラス物質のことで、分子サイズの均一な細孔径を有する結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性メタロアルミノシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、結晶性メタロアルミノフォスフェート、結晶性シリコアルミノフォスフェートのことである。ここでいうメタロシリケート、メタロアルミノシリケートとは、アルミノシリケートのアルミニウムの一部又は全部がガリウム、鉄、チタン、ボロン、コバルト、クロム等のアルミニウム以外の金属で置換されたものである。メタロアルミノフォスフェートも同様にアルミノフォスフェートのアルミニウム又はリンに対してその一部がそれ以外の金属で置換されたものをいう。本発明の出発原料混合物を得るために用いられる触媒のゼオライトは、アトラス オブ ゼオライト ストラクチャー タイプス(Atlas of Zeolite Structure types)(ダブリュー.エム.マイヤー,デイー.エイチ.オルソン、シーエイチ.ベロチャー,ゼオライツ(W.M.Meier,D.H.Olson,Ch.Baerlocher, Zeolites)1996年、17巻(1/2)参照)に掲載されているすべてのゼオライト構造を意味する。上記の文献に掲載されていない構造の新種のゼオライトを用いても良い。しかし、好ましくは簡単に入手できるL型ゼオライト、フォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、MFI型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、β型ゼオライト、Ω型ゼオライト、AFI型ゼオライト、AEL型ゼオライト、ATO型ゼオライトが好ましい。好ましくは、陽イオンとしてアルカリ金属を有しているゼオライトである。その理由は、アルカリ金属が塩素を活性化する活性点と推定できるからである。
【0024】
L型ゼオライトは、陽イオンとして一般にKイオンを含有しているが、これ以外のものが含まれていても構わない。
【0025】
次にフッ素を含有するゼオライトについて説明する。フッ素を含有するとは、フッ素を検知しうる機器分析を用いてゼオライトを分析したときにフッ素が検知されれば、フッ素を含有するゼオライトと定義する。フッ素を検知する機器分析とは、例えば、原子吸光分析、X線光電子分光法、X線マイクロアナライザー、ICP(誘導結合プラズマ)分析、蛍光X線分析等のことである。これらの分析法で、フッ素が検出されれば特に限定されないが、好ましくは絶乾状態のフッ素を含有するゼオライトに対して0.05重量%以上のフッ素が検出されることが好ましい。絶乾状態のゼオライトとは、500℃で2時間焼成し、5酸化2リンを充填したデシケーターで冷却したゼオライトをいう。
【0026】
このようなフッ素を含有するゼオライトは、フッ素を含む化合物とゼオライトを接触させた後、焼成することにより得られる。接触のさせ方は、特に限定されないが、固相でも液相でも気相でも構わない。最も好ましいは、フッ素を含有する塩を水溶液にし、ゼオライトと接触させる。水溶液とすることで均一にゼオライトと接触できるので好ましい。接触させた後、そのまま乾燥させるか、一度濾過してから水洗を加えずに乾燥する。最終的にフッ素をゼオライト上に固定化するため、温度は特に限定されないが例えば300〜500℃で焼成する。フッ素を含有する塩は、特に制限はないが、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム等のアルカリ金属塩やフッ化アンモニウム等が好ましく用いられる。
【0027】
それ以外にフッ素ガスやフッ化水素のガスとゼオライトを接触させる方法でもよい。
【0028】
このようなフッ素を含有するゼオライトを触媒として用いると、パラ置換ハロゲン化ベンゼン誘導体もしくは1,2,4−置換ハロゲン化ベンゼン誘導体の選択性が高くなる。理由は現時点では明らかではない。
【0029】
フッ素を含有するゼオライトの使用量は、特に限定されないが基質1モルに対して通常0.5〜60gである。
【0030】
高純度化するクロロアルキルベンゼン誘導体を主成分とする混合物を得るには、前記核ハロゲン化反応において、基質(クロロアルキルベンゼン誘導体の原料)としてベンゼン又はベンゼン誘導体を出発原料として使用する。ベンゼン誘導体とは、クロロベンゼン,アルキルベンゼン等のようにベンゼンの水素がハロゲンあるいはアルキル基等の置換基で置換された化合物を意味し、例えば、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、モノアルキル化ベンゼン、ジアルキル化ベンゼンが好ましい。特にクロロベンゼン、トルエン、オルトキシレン等を挙げることができる。また、ベンゼン又はベンゼン誘導体は、特に純度など限定されることなく、工業的に入手できるものを使用できる。純度は、高いほど好ましいが、不純物が若干量含まれているのが通常であり、これらが含まれていても構わない。
【0031】
本混合物を得る方法は、塩素化反応である。塩素化剤は、価格や扱い易さ、吹き込みのコントロールのしやすさ、反応圧力制御のし易さから塩素ガスを使用するのが最も好ましい。
【0032】
本塩素化反応は、反応温度は任意の温度で達成できるが、反応温度が余り高いと副反応が多くなる。好ましくは−50℃〜150℃、特に好ましくは0℃〜100℃である。反応は、ベンゼン又はベンゼン誘導体に塩素ガスを吹き込む形で接触させる。吹き込みに際しては、攪拌しながら吹き込む方が好ましい。また、塩素を効率よく利用するために、充分な深さで塩素を吹き込む方が好ましい。
反応系内は、加圧でも、常圧でも、減圧でも構わないが、α−クロロアルキルベンゼン誘導体の副生率を低くすること、および設備投資を低くする観点から、常圧の方が好ましい。
【0033】
本混合物を得る方法に用いる反応装置は、連続式、回分式、半回分式のいずれでも良い。
【0034】
本発明において高純度化するクロロアルキルベンゼン誘導体は、核モノクロロアルキルベンゼン、核ジクロロアルキルベンゼン、核トリクロロアルキルベンゼン、核クロロジアルキルベンゼン、核ジクロロジアルキルベンゼンが好ましいが、もちろんこれらに限られるわけではない。
【0035】
本発明において、混合物中に含まれる不純物は、1種以上のα−クロロアルキルベンゼン誘導体(II)、クロロアルキルベンゼン誘導体の位置異性体、欲するクロロアルキルベンゼン誘導体が過剰塩素化した化合物群および残留溶媒が挙げられるが、もちろんこれらに限られるわけではない。
【0036】
本発明によるα−クロロアルキルベンゼン誘導体を選択的に分解する方法は、フリーデル−クラフツタイプのアルキル化反応が起こっていると考えられる。α−クロロアルキルベンゼン誘導体を選択的に分解する微量の金属としては、鉄、アルミニウム、アンチモン、ガリウム、ジルコニウム、スズ、ホウ素および、これらの塩類から選ばれる少なくとも1種以上の金属を使用する。塩類は、FeCl3、AlCl3、AlBr3、SbCl5、GaCl3、ZrCl4、BCl3、BF3であることが好ましく、特に反応速度の迅速性、金属の価格面を考慮するとFeCl3、AlCl3、Feが特に好ましいがもちろんこれらに限られるわけではない。また、添加する金属量は、高純度化するクロロアルキルベンゼン誘導体を主成分とする混合物に対して、10重量%以下で数分以内で選択的分解が完結するが、生産性、コスト面を考慮すると0.001から10重量%が好ましい。より好ましくは0.01〜5重量%である。ここで、高純度化するクロロアルキルベンゼン誘導体を主成分とする混合物とは、アルキルベンゼン誘導体に溶媒および、ゼオライト触媒を加え、塩素ガスと窒素ガスを吹き込み、ゼオライト触媒回収後、溶媒を留去することにより得られる混合物を指し、蒸留で除去しにくい不純物が式(II)で示されるα−クロロアルキルベンゼン誘導体(ベンジルクロリド誘導体)である。
【0037】
本発明の分解反応温度は、室温以上の反応温度で達成できるが、反応温度が低いと反応速度が遅くなる。好ましくは室温〜200℃、より好ましくは、60℃〜200℃である。溶媒は、無くても反応は、進行するが、不純物のα−クロロアルキルベンゼン含量が5%を越える場合は、収率が減じるため、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系の溶媒を、α−クロロアルキルベンゼンに対して等モル加えると良い。また、必要に応じてジクロロプロパン、エチレンジクロリド、塩化メチレン、クロロホルム、塩酸/エタノール、塩酸/メタノール系溶媒を使用しても良い。塩酸/エタノール、塩酸/メタノールを溶媒として加える場合以外は、分解反応の混合溶液中の水分含量は、できるだけ少ないほうが良く、1000ppm以下が好ましく、より好ましくは、100ppm以下であるが、これ以上、水分が含有する場合でも、過剰に金属および/またはこれらの塩類を加えれば良いため、特に水分含量が規定されるわけではない。分解反応時間は、分解温度・金属種・金属量が適当であれば、10分以内で完結する。また、分解反応後、金属除去等のための処理操作は、不要であり、無処理で蒸留精製が可能である。
【0038】
分解反応は、加圧でも、常圧でも、減圧でも構わないが、設備投資を低くする観点から、常圧の方が好ましい。
【0039】
本発明方法に用いる分解反応装置は、連続式、回分式、半回分式のいずれでも良い。
【0040】
【実施例】
以下に、本発明を実施例をもって説明する。
【0041】
(参考例1)フッ素を含有するL型ゼオライトの調製
東ソー製ゼオライト10g(絶乾状態)に無水のフッ化カリウムを5.81g、蒸留水60mlを加え5時間攪拌し(75℃)、濾過した後、ケークを120℃で一晩乾燥した。
【0042】
(参考例2)クロロアルキルベンゼン誘導体に不純物としてα−クロロアルキルベンゼン(ベンジルクロリド)誘導体を含む混合物の調製
200mlの4つ口フラスコにリフラックス管、温度計、塩素吹き込み口、サンプリング口を設置した。廃塩素ガスは、リフラックス管の上部から排気し、水酸化ナトリウム溶液でトラップするようにした。加熱は、オイルバスで行った。
【0043】
上記フラスコに、オルトキシレン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、試薬1級)17.1gに1,2−ジクロロエタン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、1級)74.8g、400℃で1時間焼成しデシケーター中で冷却した参考例1で調製したフッ素を含有するK−L型ゼオライト(東ソー製)3.43gを添加し、窒素ガスを塩素ガス吹き込み口から吹き込みながら80℃に加熱した。80℃の加熱後、窒素ガスを塩素ガスに切り替え反応を開始した。塩素ガス吹き込み速度は、約0.03mol/時間に調整した。
【0044】
3時間40分後、塩素ガス吹き込みを停止し、窒素バブリングを1時間実施後、反応溶液を室温まで冷却し、触媒を濾過した。反応液(濾液)を濃縮後、表1に示した組成比の粗生成物31gを得た。
【0045】
(参考例3)クロロアルキルベンゼン誘導体に不純物としてα−クロロアルキルベンゼン(ベンジルクロリド)誘導体を含む混合物の調製
100mlの4つ口フラスコにリフラックス管、温度計、塩素吹き込み口、サンプリング口を設置した。廃塩素ガスは、リフラックス管の上部から排気し、水酸化ナトリウム溶液でトラップするようにした。加熱は、オイルバスで行った。
【0046】
上記フラスコに、オルトキシレン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、試薬1級)12.7gに1,2−ジクロロエタン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、1級)30ml、1,4−ジオキサン(片山化学工業製、特級)0.56g、400℃で1時間焼成しデシケーター中で冷却したK−L型ゼオライト(東ソー製)1.69gを添加し、窒素ガスを塩素ガス吹き込み口から吹き込みながら80℃に加熱した。80℃の加熱後、窒素ガスを塩素ガスに切り替え反応を開始した。塩素ガス吹き込み速度は、約0.04mol/時間に調整した。
【0047】
6時間45分後、塩素ガス吹き込みを停止し、窒素バブリングを1時間実施後、反応溶液を室温まで冷却し、触媒を濾過した。反応液(濾液)を濃縮後、表1に示した組成比の生成物23gを得た。
【0048】
(参考例4)クロロアルキルベンゼン誘導体に不純物としてα−クロロアルキルベンゼン(ベンジルクロリド)誘導体を含む混合物の調製
1000mlの4つ口フラスコにリフラックス管、温度計、塩素吹き込み口、サンプリング口を設置した。廃塩素ガスは、リフラックス管の上部から排気し、水酸化ナトリウム溶液でトラップするようにした。加熱は、オイルバスで行った。
【0049】
上記フラスコに、オルトキシレン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、試薬1級)89.18gに1,2−ジクロロエタン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、1級)315ml、400℃で1時間焼成しデシケーター中で冷却した参考例1で調製したフッ素を含有するK−L型ゼオライト(東ソー製)17.8gを添加し、窒素ガスを塩素ガス吹き込み口から吹き込みながら80℃に加熱した。80℃の加熱後、窒素ガスを塩素ガスに切り替え反応を開始した。塩素ガス吹き込み速度は、約0.82mol/時間に調整した。
【0050】
1時間45分後、塩素ガス吹き込みを停止し、窒素バブリングを1時間実施後、反応溶液を室温まで冷却し、触媒を濾過した。反応液(濾液)を濃縮後、表1に示した組成比の生成物144gを得た。
(比較例1)Znを用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例3で得られた粗生成物13.5gにエタノール(ナカライテスク(株)製、試薬1級)25mlを加えた後、濃塩酸(関東化学株式会社製、試薬1級)25mlをゆっくり流し込んだ。反応溶液を激しく攪拌しながら、活性化した亜鉛粉末(関東化学株式会社製、試薬特級)6.17gをゆっくり加えた。4時間後、反応溶液を分析し、反応が完結していなかったため、さらに濃塩酸25ml、亜鉛粉末3.3gを加えた後、反応が完結するまで1.5時間要した。反応溶液にクロロホルム(関東化学株式会社製、試薬1級)30mlを加え、濾過・分液後、有機層を重曹水・水で洗浄後、無水硫酸ナトリウム(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、試薬1級)で一昼夜乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過で除去後、濾液を濃縮し、表2に示した組成比の生成物13gを得た。
α−クロロオルトキシレンが還元分解され、オルトキシレンに変換されていることが表1から容易に理解できる。
(実施例1)微量Feを用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例2で得られた粗生成物2.07gにFe(片山化学株式会社製、試薬特級)7.3mgを加え、160℃で90min攪拌後、選択的分解反応が完結した。従来法(比較例1)より、格段に金属使用量を抑え、かつ簡易操作で短時間で選択的分解が可能となったことが表1、2から理解することができる。
(実施例2)微量FeCl3を用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例2で得られた粗生成物1.02gに無水FeCl3(キシダ化学製、試薬1級)1.5mgを加え、160℃で10min攪拌後、選択的分解反応が完結した。実施例1より、さらに金属使用量を1/2以上抑え、かつ短時間で選択的分解が可能となったことが、表1、2から理解することができる。
(実施例3)微量FeCl3を用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例2で得られた粗生成物2.00gに無水FeCl3(キシダ化学製、試薬1級)2.0mgを加え、100℃で10min攪拌後、選択的分解反応が完結した。実施例2より、さらに金属使用量を抑え、かつ低温で選択的分解が可能となったことが、表1、2から理解することができる。
(実施例4)微量FeCl3を用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例2で得られた粗生成物12.2gに無水FeCl3(キシダ化学製、試薬1級)7.8mgを加え、室温で280min攪拌したが、選択的分解反応は、未完結であり、反応温度は、室温より高い方が好ましいことが、表1、2から理解することができる。
(実施例5)微量FeCl3を用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例2で得られた粗生成物12.2gに無水FeCl3(キシダ化学製、試薬1級)7.8mgを加え、100℃で20min攪拌後、選択的分解反応が完結した。実施例3より、さらに金属使用量を抑え、選択的分解が可能となったことが、表1、2から理解することができる。
(実施例6)微量FeCl3を用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
実施例5で反応が完結した溶液をさらに160℃に昇温後、6h40min攪拌加熱したが、精製するクロロアルキルベンゼン誘導体の顕著な分解は、ほとんど認められず、熱に対して安定であることから、分解反応後、無処理で蒸留精製が可能となることが表1、2から理解することができる。
(実施例7)微量AlCl3を用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例2で得られた粗生成物2.03gに無水AlCl3(片山化学株式会社製、試薬特級)2.5mgを加え、室温で120min攪拌したが、選択的分解反応は、若干未完結であった。反応混合液の組成は、表1から理解することができる。
(比較例2)反応・蒸留前(塩基)処理後・15段蒸留
参考例4で得られた粗生成物を飽和炭酸ソーダ(関東化学株式会社製、試薬1級)水で洗浄し、分液後、無水硫酸マグネシウム(ナカライテスク株式会社製、試薬特級)を加え、乾燥し、濾過後、理論段数15段の蒸留を実施したが、本留分中に不純物のα−クロロオルトキシレンが0.35%残っていた(3+4−クロロオルトキシレン純度:99.1%)。表1からα−クロロオルトキシレンが純度低下の原因であることが理解できる。
(比較例3)微量金属無処理・2回単蒸留
参考例4で得られた粗生成物45.2gの蒸留を実施したが、本留分中に不純物のα−クロロオルトキシレンが0.4%残っていた。本留分の組成は、表1から理解することができる(3+4−クロロオルトキシレン純度:98.9%、収量:17.8g)。
(実施例8)選択的分解(微量金属処理)・蒸留前無処理2回単蒸留
参考例4で得られた粗生成物45.2gにFeCl320.6mgを加え、100℃に昇温し、10min攪拌後、α−クロロオルトキシレンが完全分解したことを確認後、室温に冷却し、2回減圧蒸留を実施した。比較例3より高収量で、高純度のクロロオルトキシレンが得られた。また、比較例2より簡易操作、低コストで高純度品が得られることが、表1、2から理解することができる(3+4−クロロオルトキシレン純度:99.3%、収量:19.9g)。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
(*)OX=オルトキシレン、CPX=クロロパラキシレン、CMX=クロロメタキシレン、COX=クロロオルトキシレン、α−Cl=α−クロロオルトキシレン、DCOX=ジクロロオルトキシレン、α−Cl−3−COX=α−クロロ−3−クロロオルトキシレン、α−Cl−4−COX=α−クロロ−4−クロロオルトキシレンを表す。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、高純度のハロゲン化アルキル芳香族誘導体、特に、クロロアルキルベンゼン誘導体を効率的・低コストで得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬及び農薬をはじめとする各種有機合成化学物質やポリマー原料として利用されうるハロゲン化アルキル芳香族誘導体、特に、クロロアルキルベンゼン誘導体中の不純物分解および精製方法に関する。さらに詳しくは、クロロアルキルベンゼン誘導体中に不純物として含まれるα−クロロアルキルベンゼン誘導体(ベンジルクロリド誘導体)を選択的に分解後、処理することなく、迅速に蒸留すること等により高純度クロロアルキルベンゼン誘導体を得る方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化アルキル芳香族誘導体、特に、クロロアルキルベンゼン誘導体は多くの化合物の原料中間体として工業的に重要な化合物である。芳香環炭素原子に直接ハロゲン原子が結合した核ハロゲン化ジアルキルベンゼン誘導体には、オルト,メタ,パラの三種類の異性体が存在するが、特にパラ置換ハロゲン化アルキルベンゼン誘導体は各種の有機化合物の原料として重要である。例えば、1位と2位にメチル基、4位にクロロ基を有する4−クロロオルトキシレンはポリマー原料など、多くの有用な化合物の原料中間体として用いられる。
【0003】
核ハロゲン化アルキルベンゼン誘導体は、一般的には、塩化第二鉄、塩化アルミニウム等のルイス酸を触媒として、アルキルベンゼン誘導体をハロゲン化して製造されている。例えば、4−クロロオルトキシレンは、ルイス酸の存在下、オルトキシレンを塩素化する事により得られるが、この際、4−クロロオルトキシレンと沸点差が少ない3−クロロオルトキシレンが生成する。有用な4−クロロオルトキシレンを選択的に得る方法として、L型ゼオライトを触媒として用いるオルトキシレンの塩素化による4−クロロオルトキシレンの製造方法が開示されている(特許文献1参照)。ニトロ基含有化合物を添加剤として加えると、4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレンの生成比が高くなることも開示されている。また、スジット・ビー・クマールらは、溶媒として1,2−ジクロロエタンを利用することにより4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレンの生成比が高くなることを開示している(非特許文献1参照)。
【0004】
最近になって、ジアルキルベンゼン誘導体(オルトキシレン)をハロゲン化するに当たり、触媒としてフッ素を含有するゼオライトを使用することによって、4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレンの生成比が画期的に高くなることを開示している(特許文献2,3,4参照)。しかしながら、同方法においても未だ、4−クロロオルトキシレンと沸点差の近いα−クロロオルトキシレンが微量副生成し、蒸留精製の妨げとなる。
【0005】
ベルナルド・ミラーは、3種の4−クロロ−ベンジルクロリド誘導体を亜鉛/濃塩酸/エタノールを作用させ、α位のハロゲンを選択的に還元分解法できることを開示しているが、原料に対して、323重量%の亜鉛/1000重量%の濃塩酸/200重量%のエタノールの多量使用、反応時間および蒸留前処理(抽出・塩基処理・乾燥・濾過)操作が長いという問題があり、大量製造を考慮すると原価・生産性で必ずしも許容されるものではない(非特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平3−81234号公報、p3、実施例1
【0007】
【特許文献2】特願2002−150204
【0008】
【特許文献3】特願2002−210494
【0009】
【特許文献4】特願2002−214928
【0010】
【非特許文献1】ジャーナル オブ キャタリシス(Journal of Catalysis)、1994年、150巻、p.430−433
【0011】
【非特許文献2】ジャーナル オブ オルガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)、1973年、38巻、6号、p.1243−1245
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち本発明の目的は、ハロゲン化アルキル芳香族誘導体、特に、クロロアルキルベンゼン誘導体中に不純物として含まれるα−クロロアルキルベンゼン誘導体を微量の金属添加により、迅速かつ選択的に分解後、無処理で蒸留することにより高純度のクロロアルキルベンゼン誘導体を効率的に得ることにある。例えば、クロロオルトキシレン中に不純物として含まれる沸点差が小さく、蒸留後も除くことができないα−クロロオルトキシレンを触媒などを大量に用いることなく、迅速かつ選択的に分解後、無処理で蒸留することにより高純度の4−クロロオルトキシレンを効率的に得ることできれば、蒸留前処理および精製工程の負荷が軽減・簡略化され精製工程の固定費が下がり、生産性が上がる。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、以下の一般式(A)で示されるハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)に、不純物として以下の一般式(B)で示されるα−ハロゲン化アルキル芳香族誘導体(B)を1種類以上含む混合物に対して0.001〜10重量%の金属および/または金属の塩類を加えることを特徴とするハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)の製法
(A) RjArYi
(B) RjArZi
[式(A)中、Arは芳香環を表す、またYiとRjはそれぞれ少なくとも1個あり、両者の合計は芳香環の置換可能数であり、YiはCH2Riであり、置換基Ri、Rjは、それぞれに独立であり、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表す]
[式(B)中、Arは芳香環を表す、またZiとRjはそれぞれ少なくとも1個あり、両者の合計は芳香環の置換可能数であり、ZiはCHXRiであり、Xはハロゲンを表し、置換基Ri、Rjは、それぞれ独立であり、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のα−ハロゲン化アルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、ハロゲン、水素を表す ]
又は、
以下の一般式(I)で示されるハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(I)に、不純物として以下の一般式(II)で示されるα−ハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(II)を1種類以上含む混合物に対して0.001〜10重量%の金属および/または金属の塩類を加えることを特徴とするハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(I)の製法
【0014】
【化3】
【0015】
[式(I)中、置換基R1〜R6は、互いに独立であり、R1は水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、R2〜R6は、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、塩素、炭素数1〜5のアルキルを表す ]
[式(II)中、Xはハロゲン、置換基R1〜R6は、互いに独立であり、R1は水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、R2〜R6は、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のα−ハロゲン化アルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、塩素、水素を表す ]
により、不純物分解後、金属除去することなく、無処理で蒸留が可能となり、クロロアルキルベンゼン誘導体の精製を高回収率、高純度で達成できることを見出し、本発明に至った。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に記述する。
【0017】
本発明は、以下の一般式(A)で示されるハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)に、不純物として以下の一般式(B)で示されるα−ハロゲン化アルキル芳香族誘導体(B)を1種類以上含む混合物に対して0.001〜10重量%の金属および/または金属の塩類を加えることを特徴とするハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)の製法
(A) RjArYi
(B) RjArZi
[式(A)中、Arは芳香環を表す、またYiとRjはそれぞれ少なくとも1個あり、両者の合計は芳香環の置換可能数であり、YiはCH2Riであり、置換基Ri、Rjは、それぞれに独立であり、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表す]
[式(B)中、Arは芳香環を表す、またZiとRjはそれぞれ少なくとも1個あり、両者の合計は芳香環の置換可能数であり、ZiはCHXRiであり、Xはハロゲンを表し、置換基Ri、Rjは、それぞれ独立であり、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のα−ハロゲン化アルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、ハロゲン、水素を表す ]
に関するものである。なお、前記芳香環としてはベンゼンは用途が広く好ましいものであり、又、Yi、Ziは1個であると合成反応が簡便で好ましいので、以下ではこの好適な態様を例に挙げて本発明を説明するが何等これに限定されるものではない。
【0018】
以下の一般式(I)で示されるハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(I)に、不純物として以下の一般式(II)で示されるα−ハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(II)を1種類以上含む混合物に対して0.001〜10重量%の金属および/または金属の塩類を加えることにより、α−ハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(II)を選択的に分解し、前記混合物を好ましくは、蒸留することにより高純度の核ハロゲン化アルキルベンゼン誘導体を精製することが可能となるものである。
【0019】
【化4】
【0020】
[式(I)中、置換基R1〜R6は、互いに独立であり、R1は水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、R2〜R6は、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、塩素、炭素数1〜5のアルキルを表す ]
[式(II)中、Xはハロゲン、置換基R1〜R6は、互いに独立であり、R1は水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、R2〜R6は、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のα−ハロゲン化アルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、塩素、水素を表す ]
前記ハロゲンとしては、塩素であることが医薬及び農薬をはじめとする各種有機合成化学物質やポリマー原料として利用されること、塩素ガスが最もハロゲン化剤として安価で扱いやすいことから好ましく、以下、この場合、すなわち、クロロアルキルベンゼン誘導体を例に挙げて説明するが、これに限られるわけではない。
【0021】
本発明において高純度化するクロロアルキルベンゼン誘導体を主成分とするα−クロロアルキルベンゼン誘導体等の不純物を含んだ混合物は、例えば、アルキルベンゼン誘導体に溶媒および、核ハロゲン化触媒を加え、塩素ガスと窒素ガスを吹き込み、核ハロゲン化反応を行い、触媒回収後、溶媒を留去することにより得られる。
【0022】
使用する溶媒は蒸留などで回収して再利用することが製造コストの観点から好ましい。従って、生成物と沸点差が十分あり、しかも低い沸点のものが好ましい。溶媒の種類は、特に限定されないが、従来公知のハロゲン含有化合物、ニトロ含有化合物が好ましく使用される。ハロゲン含有化合物の方が、ニトロ含有化合物より位置選択性が高くなるので好ましい。ハロゲン含有化合物は、脂肪族が好ましい。例えば、クロロ化合物では、クロロホルム、四塩化炭素、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン等である。後の工程やリサイクル性の点から沸点160℃以下の化合物が好ましい。特に、1,2−ジクロロエタン等のジクロロエタンや1,2−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロパン等ジクロロプロパンが、活性、選択性ともに高くなるので好ましい。塩素化反応時には溶媒は必ずしも必要ではないが、溶媒を加えることが好ましい。例えば、4−クロロオルトキシレンの製造においては、従来公知の方法で、溶媒としてジクロロエタンを、触媒としてK−L型ゼオライトを使用することによって、4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレン生成比が向上することが知られている。更に特許文献4は、触媒のゼオライトにフッ素を含有させることによって予想以上に選択性が向上することを見出している。
【0023】
核ハロゲン化触媒としてフッ素を含有するゼオライトを使用する。ゼオライトとは、結晶性マイクロポーラス物質のことで、分子サイズの均一な細孔径を有する結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性メタロアルミノシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、結晶性メタロアルミノフォスフェート、結晶性シリコアルミノフォスフェートのことである。ここでいうメタロシリケート、メタロアルミノシリケートとは、アルミノシリケートのアルミニウムの一部又は全部がガリウム、鉄、チタン、ボロン、コバルト、クロム等のアルミニウム以外の金属で置換されたものである。メタロアルミノフォスフェートも同様にアルミノフォスフェートのアルミニウム又はリンに対してその一部がそれ以外の金属で置換されたものをいう。本発明の出発原料混合物を得るために用いられる触媒のゼオライトは、アトラス オブ ゼオライト ストラクチャー タイプス(Atlas of Zeolite Structure types)(ダブリュー.エム.マイヤー,デイー.エイチ.オルソン、シーエイチ.ベロチャー,ゼオライツ(W.M.Meier,D.H.Olson,Ch.Baerlocher, Zeolites)1996年、17巻(1/2)参照)に掲載されているすべてのゼオライト構造を意味する。上記の文献に掲載されていない構造の新種のゼオライトを用いても良い。しかし、好ましくは簡単に入手できるL型ゼオライト、フォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、MFI型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、β型ゼオライト、Ω型ゼオライト、AFI型ゼオライト、AEL型ゼオライト、ATO型ゼオライトが好ましい。好ましくは、陽イオンとしてアルカリ金属を有しているゼオライトである。その理由は、アルカリ金属が塩素を活性化する活性点と推定できるからである。
【0024】
L型ゼオライトは、陽イオンとして一般にKイオンを含有しているが、これ以外のものが含まれていても構わない。
【0025】
次にフッ素を含有するゼオライトについて説明する。フッ素を含有するとは、フッ素を検知しうる機器分析を用いてゼオライトを分析したときにフッ素が検知されれば、フッ素を含有するゼオライトと定義する。フッ素を検知する機器分析とは、例えば、原子吸光分析、X線光電子分光法、X線マイクロアナライザー、ICP(誘導結合プラズマ)分析、蛍光X線分析等のことである。これらの分析法で、フッ素が検出されれば特に限定されないが、好ましくは絶乾状態のフッ素を含有するゼオライトに対して0.05重量%以上のフッ素が検出されることが好ましい。絶乾状態のゼオライトとは、500℃で2時間焼成し、5酸化2リンを充填したデシケーターで冷却したゼオライトをいう。
【0026】
このようなフッ素を含有するゼオライトは、フッ素を含む化合物とゼオライトを接触させた後、焼成することにより得られる。接触のさせ方は、特に限定されないが、固相でも液相でも気相でも構わない。最も好ましいは、フッ素を含有する塩を水溶液にし、ゼオライトと接触させる。水溶液とすることで均一にゼオライトと接触できるので好ましい。接触させた後、そのまま乾燥させるか、一度濾過してから水洗を加えずに乾燥する。最終的にフッ素をゼオライト上に固定化するため、温度は特に限定されないが例えば300〜500℃で焼成する。フッ素を含有する塩は、特に制限はないが、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム等のアルカリ金属塩やフッ化アンモニウム等が好ましく用いられる。
【0027】
それ以外にフッ素ガスやフッ化水素のガスとゼオライトを接触させる方法でもよい。
【0028】
このようなフッ素を含有するゼオライトを触媒として用いると、パラ置換ハロゲン化ベンゼン誘導体もしくは1,2,4−置換ハロゲン化ベンゼン誘導体の選択性が高くなる。理由は現時点では明らかではない。
【0029】
フッ素を含有するゼオライトの使用量は、特に限定されないが基質1モルに対して通常0.5〜60gである。
【0030】
高純度化するクロロアルキルベンゼン誘導体を主成分とする混合物を得るには、前記核ハロゲン化反応において、基質(クロロアルキルベンゼン誘導体の原料)としてベンゼン又はベンゼン誘導体を出発原料として使用する。ベンゼン誘導体とは、クロロベンゼン,アルキルベンゼン等のようにベンゼンの水素がハロゲンあるいはアルキル基等の置換基で置換された化合物を意味し、例えば、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、モノアルキル化ベンゼン、ジアルキル化ベンゼンが好ましい。特にクロロベンゼン、トルエン、オルトキシレン等を挙げることができる。また、ベンゼン又はベンゼン誘導体は、特に純度など限定されることなく、工業的に入手できるものを使用できる。純度は、高いほど好ましいが、不純物が若干量含まれているのが通常であり、これらが含まれていても構わない。
【0031】
本混合物を得る方法は、塩素化反応である。塩素化剤は、価格や扱い易さ、吹き込みのコントロールのしやすさ、反応圧力制御のし易さから塩素ガスを使用するのが最も好ましい。
【0032】
本塩素化反応は、反応温度は任意の温度で達成できるが、反応温度が余り高いと副反応が多くなる。好ましくは−50℃〜150℃、特に好ましくは0℃〜100℃である。反応は、ベンゼン又はベンゼン誘導体に塩素ガスを吹き込む形で接触させる。吹き込みに際しては、攪拌しながら吹き込む方が好ましい。また、塩素を効率よく利用するために、充分な深さで塩素を吹き込む方が好ましい。
反応系内は、加圧でも、常圧でも、減圧でも構わないが、α−クロロアルキルベンゼン誘導体の副生率を低くすること、および設備投資を低くする観点から、常圧の方が好ましい。
【0033】
本混合物を得る方法に用いる反応装置は、連続式、回分式、半回分式のいずれでも良い。
【0034】
本発明において高純度化するクロロアルキルベンゼン誘導体は、核モノクロロアルキルベンゼン、核ジクロロアルキルベンゼン、核トリクロロアルキルベンゼン、核クロロジアルキルベンゼン、核ジクロロジアルキルベンゼンが好ましいが、もちろんこれらに限られるわけではない。
【0035】
本発明において、混合物中に含まれる不純物は、1種以上のα−クロロアルキルベンゼン誘導体(II)、クロロアルキルベンゼン誘導体の位置異性体、欲するクロロアルキルベンゼン誘導体が過剰塩素化した化合物群および残留溶媒が挙げられるが、もちろんこれらに限られるわけではない。
【0036】
本発明によるα−クロロアルキルベンゼン誘導体を選択的に分解する方法は、フリーデル−クラフツタイプのアルキル化反応が起こっていると考えられる。α−クロロアルキルベンゼン誘導体を選択的に分解する微量の金属としては、鉄、アルミニウム、アンチモン、ガリウム、ジルコニウム、スズ、ホウ素および、これらの塩類から選ばれる少なくとも1種以上の金属を使用する。塩類は、FeCl3、AlCl3、AlBr3、SbCl5、GaCl3、ZrCl4、BCl3、BF3であることが好ましく、特に反応速度の迅速性、金属の価格面を考慮するとFeCl3、AlCl3、Feが特に好ましいがもちろんこれらに限られるわけではない。また、添加する金属量は、高純度化するクロロアルキルベンゼン誘導体を主成分とする混合物に対して、10重量%以下で数分以内で選択的分解が完結するが、生産性、コスト面を考慮すると0.001から10重量%が好ましい。より好ましくは0.01〜5重量%である。ここで、高純度化するクロロアルキルベンゼン誘導体を主成分とする混合物とは、アルキルベンゼン誘導体に溶媒および、ゼオライト触媒を加え、塩素ガスと窒素ガスを吹き込み、ゼオライト触媒回収後、溶媒を留去することにより得られる混合物を指し、蒸留で除去しにくい不純物が式(II)で示されるα−クロロアルキルベンゼン誘導体(ベンジルクロリド誘導体)である。
【0037】
本発明の分解反応温度は、室温以上の反応温度で達成できるが、反応温度が低いと反応速度が遅くなる。好ましくは室温〜200℃、より好ましくは、60℃〜200℃である。溶媒は、無くても反応は、進行するが、不純物のα−クロロアルキルベンゼン含量が5%を越える場合は、収率が減じるため、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系の溶媒を、α−クロロアルキルベンゼンに対して等モル加えると良い。また、必要に応じてジクロロプロパン、エチレンジクロリド、塩化メチレン、クロロホルム、塩酸/エタノール、塩酸/メタノール系溶媒を使用しても良い。塩酸/エタノール、塩酸/メタノールを溶媒として加える場合以外は、分解反応の混合溶液中の水分含量は、できるだけ少ないほうが良く、1000ppm以下が好ましく、より好ましくは、100ppm以下であるが、これ以上、水分が含有する場合でも、過剰に金属および/またはこれらの塩類を加えれば良いため、特に水分含量が規定されるわけではない。分解反応時間は、分解温度・金属種・金属量が適当であれば、10分以内で完結する。また、分解反応後、金属除去等のための処理操作は、不要であり、無処理で蒸留精製が可能である。
【0038】
分解反応は、加圧でも、常圧でも、減圧でも構わないが、設備投資を低くする観点から、常圧の方が好ましい。
【0039】
本発明方法に用いる分解反応装置は、連続式、回分式、半回分式のいずれでも良い。
【0040】
【実施例】
以下に、本発明を実施例をもって説明する。
【0041】
(参考例1)フッ素を含有するL型ゼオライトの調製
東ソー製ゼオライト10g(絶乾状態)に無水のフッ化カリウムを5.81g、蒸留水60mlを加え5時間攪拌し(75℃)、濾過した後、ケークを120℃で一晩乾燥した。
【0042】
(参考例2)クロロアルキルベンゼン誘導体に不純物としてα−クロロアルキルベンゼン(ベンジルクロリド)誘導体を含む混合物の調製
200mlの4つ口フラスコにリフラックス管、温度計、塩素吹き込み口、サンプリング口を設置した。廃塩素ガスは、リフラックス管の上部から排気し、水酸化ナトリウム溶液でトラップするようにした。加熱は、オイルバスで行った。
【0043】
上記フラスコに、オルトキシレン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、試薬1級)17.1gに1,2−ジクロロエタン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、1級)74.8g、400℃で1時間焼成しデシケーター中で冷却した参考例1で調製したフッ素を含有するK−L型ゼオライト(東ソー製)3.43gを添加し、窒素ガスを塩素ガス吹き込み口から吹き込みながら80℃に加熱した。80℃の加熱後、窒素ガスを塩素ガスに切り替え反応を開始した。塩素ガス吹き込み速度は、約0.03mol/時間に調整した。
【0044】
3時間40分後、塩素ガス吹き込みを停止し、窒素バブリングを1時間実施後、反応溶液を室温まで冷却し、触媒を濾過した。反応液(濾液)を濃縮後、表1に示した組成比の粗生成物31gを得た。
【0045】
(参考例3)クロロアルキルベンゼン誘導体に不純物としてα−クロロアルキルベンゼン(ベンジルクロリド)誘導体を含む混合物の調製
100mlの4つ口フラスコにリフラックス管、温度計、塩素吹き込み口、サンプリング口を設置した。廃塩素ガスは、リフラックス管の上部から排気し、水酸化ナトリウム溶液でトラップするようにした。加熱は、オイルバスで行った。
【0046】
上記フラスコに、オルトキシレン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、試薬1級)12.7gに1,2−ジクロロエタン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、1級)30ml、1,4−ジオキサン(片山化学工業製、特級)0.56g、400℃で1時間焼成しデシケーター中で冷却したK−L型ゼオライト(東ソー製)1.69gを添加し、窒素ガスを塩素ガス吹き込み口から吹き込みながら80℃に加熱した。80℃の加熱後、窒素ガスを塩素ガスに切り替え反応を開始した。塩素ガス吹き込み速度は、約0.04mol/時間に調整した。
【0047】
6時間45分後、塩素ガス吹き込みを停止し、窒素バブリングを1時間実施後、反応溶液を室温まで冷却し、触媒を濾過した。反応液(濾液)を濃縮後、表1に示した組成比の生成物23gを得た。
【0048】
(参考例4)クロロアルキルベンゼン誘導体に不純物としてα−クロロアルキルベンゼン(ベンジルクロリド)誘導体を含む混合物の調製
1000mlの4つ口フラスコにリフラックス管、温度計、塩素吹き込み口、サンプリング口を設置した。廃塩素ガスは、リフラックス管の上部から排気し、水酸化ナトリウム溶液でトラップするようにした。加熱は、オイルバスで行った。
【0049】
上記フラスコに、オルトキシレン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、試薬1級)89.18gに1,2−ジクロロエタン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、1級)315ml、400℃で1時間焼成しデシケーター中で冷却した参考例1で調製したフッ素を含有するK−L型ゼオライト(東ソー製)17.8gを添加し、窒素ガスを塩素ガス吹き込み口から吹き込みながら80℃に加熱した。80℃の加熱後、窒素ガスを塩素ガスに切り替え反応を開始した。塩素ガス吹き込み速度は、約0.82mol/時間に調整した。
【0050】
1時間45分後、塩素ガス吹き込みを停止し、窒素バブリングを1時間実施後、反応溶液を室温まで冷却し、触媒を濾過した。反応液(濾液)を濃縮後、表1に示した組成比の生成物144gを得た。
(比較例1)Znを用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例3で得られた粗生成物13.5gにエタノール(ナカライテスク(株)製、試薬1級)25mlを加えた後、濃塩酸(関東化学株式会社製、試薬1級)25mlをゆっくり流し込んだ。反応溶液を激しく攪拌しながら、活性化した亜鉛粉末(関東化学株式会社製、試薬特級)6.17gをゆっくり加えた。4時間後、反応溶液を分析し、反応が完結していなかったため、さらに濃塩酸25ml、亜鉛粉末3.3gを加えた後、反応が完結するまで1.5時間要した。反応溶液にクロロホルム(関東化学株式会社製、試薬1級)30mlを加え、濾過・分液後、有機層を重曹水・水で洗浄後、無水硫酸ナトリウム(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、試薬1級)で一昼夜乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過で除去後、濾液を濃縮し、表2に示した組成比の生成物13gを得た。
α−クロロオルトキシレンが還元分解され、オルトキシレンに変換されていることが表1から容易に理解できる。
(実施例1)微量Feを用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例2で得られた粗生成物2.07gにFe(片山化学株式会社製、試薬特級)7.3mgを加え、160℃で90min攪拌後、選択的分解反応が完結した。従来法(比較例1)より、格段に金属使用量を抑え、かつ簡易操作で短時間で選択的分解が可能となったことが表1、2から理解することができる。
(実施例2)微量FeCl3を用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例2で得られた粗生成物1.02gに無水FeCl3(キシダ化学製、試薬1級)1.5mgを加え、160℃で10min攪拌後、選択的分解反応が完結した。実施例1より、さらに金属使用量を1/2以上抑え、かつ短時間で選択的分解が可能となったことが、表1、2から理解することができる。
(実施例3)微量FeCl3を用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例2で得られた粗生成物2.00gに無水FeCl3(キシダ化学製、試薬1級)2.0mgを加え、100℃で10min攪拌後、選択的分解反応が完結した。実施例2より、さらに金属使用量を抑え、かつ低温で選択的分解が可能となったことが、表1、2から理解することができる。
(実施例4)微量FeCl3を用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例2で得られた粗生成物12.2gに無水FeCl3(キシダ化学製、試薬1級)7.8mgを加え、室温で280min攪拌したが、選択的分解反応は、未完結であり、反応温度は、室温より高い方が好ましいことが、表1、2から理解することができる。
(実施例5)微量FeCl3を用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例2で得られた粗生成物12.2gに無水FeCl3(キシダ化学製、試薬1級)7.8mgを加え、100℃で20min攪拌後、選択的分解反応が完結した。実施例3より、さらに金属使用量を抑え、選択的分解が可能となったことが、表1、2から理解することができる。
(実施例6)微量FeCl3を用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
実施例5で反応が完結した溶液をさらに160℃に昇温後、6h40min攪拌加熱したが、精製するクロロアルキルベンゼン誘導体の顕著な分解は、ほとんど認められず、熱に対して安定であることから、分解反応後、無処理で蒸留精製が可能となることが表1、2から理解することができる。
(実施例7)微量AlCl3を用いたα−クロロアルキルベンゼン誘導体の分解方法
参考例2で得られた粗生成物2.03gに無水AlCl3(片山化学株式会社製、試薬特級)2.5mgを加え、室温で120min攪拌したが、選択的分解反応は、若干未完結であった。反応混合液の組成は、表1から理解することができる。
(比較例2)反応・蒸留前(塩基)処理後・15段蒸留
参考例4で得られた粗生成物を飽和炭酸ソーダ(関東化学株式会社製、試薬1級)水で洗浄し、分液後、無水硫酸マグネシウム(ナカライテスク株式会社製、試薬特級)を加え、乾燥し、濾過後、理論段数15段の蒸留を実施したが、本留分中に不純物のα−クロロオルトキシレンが0.35%残っていた(3+4−クロロオルトキシレン純度:99.1%)。表1からα−クロロオルトキシレンが純度低下の原因であることが理解できる。
(比較例3)微量金属無処理・2回単蒸留
参考例4で得られた粗生成物45.2gの蒸留を実施したが、本留分中に不純物のα−クロロオルトキシレンが0.4%残っていた。本留分の組成は、表1から理解することができる(3+4−クロロオルトキシレン純度:98.9%、収量:17.8g)。
(実施例8)選択的分解(微量金属処理)・蒸留前無処理2回単蒸留
参考例4で得られた粗生成物45.2gにFeCl320.6mgを加え、100℃に昇温し、10min攪拌後、α−クロロオルトキシレンが完全分解したことを確認後、室温に冷却し、2回減圧蒸留を実施した。比較例3より高収量で、高純度のクロロオルトキシレンが得られた。また、比較例2より簡易操作、低コストで高純度品が得られることが、表1、2から理解することができる(3+4−クロロオルトキシレン純度:99.3%、収量:19.9g)。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
(*)OX=オルトキシレン、CPX=クロロパラキシレン、CMX=クロロメタキシレン、COX=クロロオルトキシレン、α−Cl=α−クロロオルトキシレン、DCOX=ジクロロオルトキシレン、α−Cl−3−COX=α−クロロ−3−クロロオルトキシレン、α−Cl−4−COX=α−クロロ−4−クロロオルトキシレンを表す。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、高純度のハロゲン化アルキル芳香族誘導体、特に、クロロアルキルベンゼン誘導体を効率的・低コストで得ることができる。
Claims (8)
- 以下の一般式(A)で示されるハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)に、不純物として以下の一般式(B)で示されるα−ハロゲン化アルキル芳香族誘導体(B)を1種類以上含む混合物に対して0.001〜10重量%の金属および/または金属の塩類を加えることを特徴とするハロゲン化アルキル芳香族誘導体(A)の製法。
(A) RjArYi
(B) RjArZi
[式(A)中、Arは芳香環を表す、またYiとRjはそれぞれ少なくとも1個あり、両者の合計は芳香環の置換可能数であり、YiはCH2Riであり、置換基Ri、Rjは、それぞれに独立であり、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルを表す]
[式(B)中、Arは芳香環を表す、またZiとRjはそれぞれ少なくとも1個あり、両者の合計は芳香環の置換可能数であり、ZiはCHXRiであり、Xはハロゲンを表し、置換基Ri、Rjは、それぞれ独立であり、Riは水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、Rjは、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のα−ハロゲン化アルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、ハロゲン、水素を表す ] - 以下の一般式(I)で示されるハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(I)に、不純物として以下の一般式(II)で示されるα−ハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(II)を1種類以上含む混合物に対して0.001〜10重量%の金属および/または金属の塩類を加えることを特徴とするハロゲン化アルキルベンゼン誘導体(I)の製法。
[式(II)中、Xはハロゲン、置換基R1〜R6は、互いに独立であり、R1は水素、炭素数1〜4のアルキルを表し、R2〜R6は、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のα−ハロゲン化アルキルを表すが、これらの置換基の少なくとも1つ以上は、ハロゲン、水素を表す ] - 該ハロゲンが塩素であることを特徴とする請求項1または2記載のハロゲン化アルキルベンゼン誘導体の製法。
- 該金属および/または金属の塩類の金属が鉄、アルミニウム、アンチモン、ガリウム、ジルコニウム、スズ、および、ホウ素から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハロゲン化アルキルベンゼン誘導体の製法。
- 溶媒の共存下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高純度のハロゲン化アルキルベンゼン誘導体の製法。
- 該溶媒がトルエン、ベンゼンおよび/または、ハロゲン含有化合物であることを特徴とする請求項5項記載の高純度のハロゲン化アルキルベンゼン誘導体の製法。
- 蒸留により精製することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載のクロロアルキルベンゼン誘導体の製法。
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