JP2004292283A - 高強度コンクリ−ト - Google Patents

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JP2004292283A JP2003089994A JP2003089994A JP2004292283A JP 2004292283 A JP2004292283 A JP 2004292283A JP 2003089994 A JP2003089994 A JP 2003089994A JP 2003089994 A JP2003089994 A JP 2003089994A JP 2004292283 A JP2004292283 A JP 2004292283A
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Hiroshi Nakanishi
博 中西
Masaki Ishimori
正樹 石森
Minoru Yaguchi
稔 矢口
Takumi Sugamata
匠 菅俣
Tomomi Sugiyama
知巳 杉山
Mitsuo Kinoshita
光男 木之下
Shinji Tamaki
伸二 玉木
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Taiheiyo Cement Corp
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Taiheiyo Cement Corp
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Abstract

【課題】高強度コンクリ−トの自己収縮を改良(低減)すること。
にあり、これによって全収縮量が改良(低減)された高強度コンクリ−トを提供すること。
【解決手段】下記の多機能型セメント分散剤を用い、かつ、水/セメントが30重量%以下の範囲で製造された高強度コンクリ−トであること。
多機能型セメント分散剤:無水マレイン酸などのラジカル重合性単量体混合物から共重合体を合成(第1工程)したのち、共重合体100重量部に対し、例えばポリオキシアルキレンモノアルキルエステル3〜35重量部の割合でグラフト重合(第2工程)させたグラフト共重合体、または、それを中和処理したグラフト共重合体の塩。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度コンクリ−トに関し、特に自己収縮が改良(低減)された高強度コンクリ−トに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、多機能型セメント混和剤が知られている。
該混和剤は、例えば、
・モノマ−(a):CH=C(R)−(X)−(CO)mR(注1)
例;ポリオキシエチレンメチルメタクリレ−ト
・モノマ−(b):CH=C(R)−(Y)−(AO)nR(注2)
例;オキシプロピレンアリルメチルエ−テル
・モノマ−(c):CH=C(R)−COOM(注3)
例;メタクリル酸
・スルホン酸基含有モノマ−
などを含有する共重合体である。
そして、該混和剤は、普通コンクリ−ト、高強度コンクリ−トなどのセメント混練物に配合することができ、優れた流動性を付与すると共に、収縮低減効果をも発揮する旨、が記載されている(特許文献1参照)。
(注1)R;水素またはメチル基、R;水素、アルキル基など、X;O、 CHOまたはCOO、m;平均重合度(6〜100の数)
(注2)R;水素またはメチル基、R;炭素数1〜24の脂肪族基、Y;OまたはCHO、AO;炭素数2〜4の単独または混合したオキシアルキレン基、n;平均重合度(Rの炭素数に応じ変化する数
) (注3)R;水素またはメチル基、M;水素または塩形成性陽イオン
【0003】
【特許文献1】
特開2000−34151号公報([特許請求の範囲][0003][0018][0020][0027]など)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の多機能型セメント混和剤は、水/セメント(重量比)が50%というような比較的水量の多い混練物の流動性の改良、その硬化体の収縮の低減を意図した混和剤である。
通常、セメント硬化体の収縮は、水に基づく乾燥収縮および配合材料の体積変化に基づく自己収縮に分けられる。従来の混和剤を収縮の点から見れば、乾燥収縮の低減に主眼が置かれている。
【0005】
しかるに、高強度コンクリ−トを製造する場合、一般的に、強度増進のため水量をできるだけ少なく、水/セメント(質量比)が低く配合設計される。そのため、高強度コンクリ−トにおける収縮は、主に自己収縮が問題となる。
以上のような水/セメント(質量比)が低い配合物から高強度コンクリ−トを製造する場合、前記従来の多機能型セメント混和剤では自己収縮の改良(低減)効果が小さい、という欠点を有していた。
【0006】
本発明は、上記従来技術の欠点に鑑みなされたものであって、その目的は、
高強度コンクリ−ト(硬化体)の
・自己収縮を改良(低減)すること
にあり、それによって、全収縮量が改良(低減)された高強度コンクリ−トを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を掲げた本発明は、特定の多機能型セメント分散剤を用い、かつ、限定された水/セメント(重量比)の範囲で製造された高強度コンクリ−トを提供するものである。
【0008】
すなわち、本発明(高強度コンクリ−ト)は、
「(1)下記の第1工程および第2工程を経て得られるグラフト共重合体からなる 多機能型セメント分散剤が配合され、かつ、
(2)水/セメント比が30重量%以下に調整された組成物を硬化させたものであること。
第1工程:
・無水マレイン酸と下記の式(1)で示される単量体とが合計で85モル%以上、かつ、
・(無水マレイン酸)/(下記の式(1)で示される単量体)=50/50〜80/20(モル比)の割合
で含有するラジカル重合性単量体混合物をラジカル重合し、数平均分子量3000〜50000の共重合体を得る工程
CH=CH−CH−O−A−O−R (1)
(式中、
R:炭素数1〜18のアシル基、炭素数1〜3のアルキル基又は水素
A:オキシエチレン単位のみまたはオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の双方からなるオキシアルキレン単位の繰り返し数5〜80のポリアルキレングリコ−ルから全ての水酸基を除いた残基)
第2工程:
・上記共重合体100重量部に対し、下記ポリオキシアルキレンモノアルキルエステル、下記ポリオキシアルキレンモノアルキルエ−テルおよびオキシプロピレン単位の繰り返し数3〜15のポリプロピレングリコ−ルから選ばれる一つ又は二つ以上を
・3〜35重量部の割合で
塩基性触媒の存在下にグラフト反応してグラフト共重合体を得る工程。
・・ポリオキシアルキレンモノアルキルエステル:炭素数1〜6の脂肪族カルボン酸1モル当たり、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを合計1〜20モルの割合で付加したもの
・・ポリオキシアルキレンモノアルキルエ−テル:炭素数1〜6の脂肪族アルコ−ル1モル当たり、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを合計1〜20モルの割合で付加したもの 」(請求項1)
を要旨とする。
【0009】
また、本発明は、
「多機能型セメント分散剤が下記の第3工程を経て得られるグラフト共重合体の塩であること。
第3工程:
・前記第2工程で得たグラフト共重合体を
・アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物およびアミン類から選ばれる1種または2種以上
で中和処理し、グラフト共重合体の塩を得る工程 」(請求項2)
を特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
最初に、本発明で使用する多機能型セメント分散剤について説明する。
該多機能型セメント分散剤は、▲1▼グラフト共重合体、または▲2▼グラフト共重合体の塩である。
グラフト共重合体は、第1工程および第2工程を経て得られ、その塩は、さらに第3工程を経ることによって合成される。
【0011】
各工程を順次説明する。
[第1工程]
第1工程は、ラジカル重合性単量体混合物をラジカル重合し、共重合体を合成する工程である。
該ラジカル重合性単量体混合物は、無水マレイン酸および前記式(1)で示される単量体であって、かつ、(無水マレイン酸)/(式(1)で示される単量体)=50/50〜80/20(モル比)の割合で含有する。好ましくは、60/40〜70/30(モル比)の割合である。
【0012】
式(1)中の「A」としては、
1)オキシアルキレン単位がオキシエチレン単位のみからなる(ポリ)エチレングリコ−ルから全ての水酸基を除いた残基、
2)オキシアルキレン単位がオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の双方からなる(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコ−ルから全ての水酸基を除いた残基
などが挙げられる。好ましいのは、1)に示すの残基である。
また、該オキシアルキレン単位の繰り返し数は5〜80、好ましくは15〜70である。
なお、後者2)の場合、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位との結合様式は、ランダム結合、ブロック結合いずれでも良い。
【0013】
式(1)中の「R」としては、
1)ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、ヘキサデセノイル基、オクタデセノイル基などの炭素数1〜18のアシル基、
2)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの炭素数1〜3のアルキル基、
3)水素
などが挙げられる。
なかでも上記1)のアシル基が好ましく、特にアセチル基が好ましい。
【0014】
式(1)で示される単量体には、
1)α−アリル−ω−アルキロイル−(ポリ)オキシエチレン、
2)α−アリル−ω−アルキロイル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、
3)α−アリル−ω−アルキル(炭素数1〜3)−(ポリ)オキシエチレン、
4)α−アリル−ω−アルキル(炭素数1〜3)−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、
5)α−アリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、
6)α−アリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン
などが例示される。
【0015】
第1工程において規定する数平均分子量を具備する共重合体を合成するためには、ラジカル重合性単量体混合物に含まれる無水マレイン酸と式(1)で示される単量体とが合計で85モル%以上含有されていることが重要であり、好ましいのは90モル%以上である。
逆に、該混合物に含まれる他のラジカル重合性単量体は、15モル%以下である。そのラジカル重合性単量体には、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸塩などが挙げられる。
【0016】
第1工程では、ラジカル重合性単量体混合物にラジカル開始剤を加えてラジカル重合させて共重合体を合成する。該共重合体の数平均分子量(注)は、3000〜50000、好ましくは5000〜25000である。
(注)GPC法によるプルラン換算の数平均分子量である(以下同様)。
【0017】
上記ラジカル重合には、公知の方法が適用される。
例えば、ラジカル重合性単量体混合物を
イ)溶剤を用いない方法、または
ロ)溶剤に溶解する方法
でラジカル重合する方法である。
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、ジオキサンなどが用いられる。
好ましいのは、イ)の方法である。
【0018】
前記イ)溶剤を用いない方法は、ラジカル重合性単量体混合物を反応容器に仕込み、窒素雰囲気下でラジカル開始剤を加え、60〜90℃、5〜10時間ラジカル重合反応させることにより共重合体を合成する方法である。
【0019】
ラジカル重合反応の制御は、溶剤の使用の有無に関係なく、ラジカル重合開始剤、ラジカル連鎖移動剤の種類および使用量、重合温度、重合時間などを適宜選択して行なう。
ラジカル重合開始剤を例示すると、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、クメンハイドロパ−オキサイドなどの有機過酸化物系開始剤がある。
【0020】
[第2工程]
第2工程は、第1工程で得た共重合体からグラフト共重合体を合成する工程である。
グラフト共重合体は、共重合体にポリオキシアルキレンモノアルキルエステル、ポリオキシアルキレンモノアルキルエ−テルおよびポリプロピレングリコ−ルから選ばれる一つまたは二つ以上をグラフト反応させることによって得られる。
【0021】
上記ポリオキシアルキレンモノアルキルエステルは、炭素数1〜6の脂肪族カルボン酸1モル当たりエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを合計1〜20モルの割合で付加したものを用いる。
なかでも、該脂肪族カルボン酸1モル当たりエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを1〜6モルの割合で付加したものや、該脂肪族カルボン酸1モル当たりエチレンオキサイドを1〜4モルおよびプロピレンオキサイドを1〜4モルの割合で付加したものが好ましい。
特に、炭素数3〜5の該脂肪族カルボン酸1モル当たりエチレンオキサイドを2〜4モルおよびプロピレンオキサイドを2〜4モルの割合でブロック状に付加したものが好ましい。
【0022】
前記ポリオキシアルキレンモノアルキルエ−テルは、炭素数1〜6の脂肪族アルコ−ル1モル当たりエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを合計1〜20モルの割合で付加したものを用いる。
なかでも、該脂肪族アルコ−ル1モル当たりエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを1〜6モルの割合で付加したものや、炭素数3〜5の脂肪族アルコ−ル1モル当たりエチレンオキサイドを1〜4モルおよびプロピレンオキサイドを1〜4モルの割合でブロック状に付加したものが好ましい。
【0023】
前記ポリプロピレングリコ−ルは、プロピレンオキサイド単位の繰り返し数が3〜15のものを用いる。
なかでも、プロピレンオキサイドを4〜10モル付加したものが好ましい。
【0024】
前述したポリオキシアルキレンモノアルキルエステル、ポリオキシアルキレンモノアルキルエ−テルおよびポリプロピレングリコ−ルは、公知の方法で合成することができる。
ポリオキシアルキレンモノアルキルエステルの合成には、原料である炭素数1〜6の脂肪族カルボン酸として蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸などが挙げられる。中でも好ましいのは、炭素数3〜5のプロピオン酸、酪酸、吉草酸である。
【0025】
ポリオキシアルキレンモノアルキルエ−テルの合成には、原料である炭素数1〜6の脂肪族アルコ−ルとしてメタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、ペンタノ−ル、ヘキサノ−ルなどが挙げらる。なかでも好ましいのは、炭素数3〜5のプロパノ−ル、ブタノ−ル、ペンタノ−ルである。
【0026】
なお、上記合成において、脂肪族カルボン酸、脂肪族アルコ−ルなどにエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを付加するときの順序は、特に制限されない。
好ましいのは、先にプロピレンオキサイドを付加し、その後にエチレンオキサイドを付加した場合である。
【0027】
第2工程では、第1工程で得られた共重合体100重量部に対し、前記ポリオキシアルキレンモノアルキルエステル、ポリオキシアルキレンモノアルキルエ−テルおよびポリプロピレングリコ−ルから選ばれる一つまたは二つ以上を3〜35重量部の割合でグラフト反応して、グラフト共重合体を合成する。
好ましいのは、5〜25重量部の割合である。
【0028】
上記グラフト反応には、公知の方法が適用できる。
例えば、該共重合体と、該ポリオキシアルキレンモノアルキルエステル、ポリオキシアルキレンモノアルキルエ−テルおよびポリプロピレングリコ−ルから選ばれる一つまたは二つ以上と、塩基性触媒とを反応容器に仕込み、窒素雰囲気とした後、100℃で4〜6時間グラフト反応させることにより、グラフト共重合体を合成することができる。
該塩基性触媒としては、酸無水物とアルコ−ルとの開環エステル化反応に用いる公知のものを使用できる。なかでも、アミン触媒が好ましく、低級アルキルアミンがより好ましい。
合成されたグラフト共重合体は、その40重量%水溶液の粘度が20℃において、60〜700MPa・sになるものが好ましい。
【0029】
[第3工程]
該第3工程は、第2工程で合成されたグラフト共重合体を塩基性化合物で完全にまたは部分的に中和処理して、グラフト共重合体の塩を得る工程である。
該塩基性化合物としては、
1)水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、
2)水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、
3)アンモニア、トリエタノ−ルアミンなどのアミン類
などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用する。
【0030】
前述した第1工程および第2工程を経て得られるグラフト共重合体からなる多機能型セメント分散剤の合成法の1例を説明する。
第1工程において、無水マレイン酸およびα−アリル−ω−アセチル−ポリオキシエチレン(オキシエチレン単位の繰り返し数30、以下n=30と略記する)とを合計で100モル%含有し、かつ、(無水マレイン酸)/(α−アリル−ω−アセチル−ポリオキシエチレン(n=30))=65/35(モル比)の割合で含有するラジカル重合性単量体混合物をラジカル重合させて、数平均分子量13000の共重合体を得る。
次いで、第2工程において、該共重合体100重量部に対し、酪酸1モル当たりエチレンオキサイド2モルおよびプロピレンオキサイド2モルをブロック状に付加したポリオキシアルキレンモノアルキルエステルを16重量部の割合で、触媒としてトリブチルアミンの存在下にグラフト反応させることによって、グラフト共重合体が合成される。
【0031】
次に、高強度コンクリ−トの製造について説明する。
本発明に係る高強度コンクリ−トは、前述したグラフト共重合体またはその塩からなる多機能型セメント分散剤を配合し、水/セメント比が30重量%以下に調整された高強度コンクリ−ト組成物(混練物)を硬化させたものである。
【0032】
高強度コンクリ−ト組成物(混練物)を製造するにあたり、多機能型セメント分散剤を配合と共に、水/セメント比を30重量%以下に調整された場合、両者相俟ってコンクリ−ト自体の自己収縮を著しく改良する(実施例参照)。
また、グラフト共重合体またはその塩は、普通のコンクリ−ト組成物(混練物)に配合した場合、組成物(混練物)の流動性の経時的低下を改良、硬化体の初期強度を向上、凍結融解作用に対する抵抗性の向上など多数の特性の改良するため、いわゆる「多機能型」の混和剤として使用される。その多機能の効果は、本発明の高強度コンクリ−トに配合した場合にあっても十分に発揮される。
【0033】
高強度コンクリ−トの製造には、慣用の原料が使用される。
すなわち、セメント、骨材、水などが使用され、配合される。
そして、前記多機能型セメント分散剤は、セメント100重量部当たり、固形分換算で0.05〜4.0重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部の割合で配合される。
【0034】
高強度コンクリ−ト組成物において、配合されるセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントの各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュ−ムセメントなどの各種混合セメント、高ビ−ライト型セメント、エコセメント、アルミナセメントなどである。
また、セメントの一部代用として、石灰石粉、炭酸カルシウム、シリカフュ−ム、高炉スラグ微粉末、フライアッシュなどの微粉末混和材料を添加したセメントも使用することができる。
配合される骨材は、慣用のものが使用される。
【0035】
本発明に係る高強度コンクリ−ト組成物(混練物)の調製方法には、
1)セメントおよび骨材を混合したのち、多機能型セメント分散剤および水を加えて混練する方法、
2)セメント、骨材および多機能型セメント分散剤を混合したのち、水を加えて混練する方法、
3)セメント、骨材、多機能型セメント分散剤および水を同時に混練する方法
など慣用の方法が採用できる。
いずれの場合も、多機能型セメント分散剤は、水溶液としても粉末としても配合することができる。
なお、調製するさいに、空気量調節剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘材、防水剤、防腐剤、防錆剤などの添加剤を本発明の目的を損なわない範囲内で使用することができる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
なお、特記しない限り、「部」は重量部を、「%」は重量%(ただし、空気量を除く)を意味する。
(実施例1)
1)グラフト共重合体[1]の合成
下記要領でグラフト共重合体を合成した。
(1)第1工程[共重合体の合成]
原料として、
・無水マレイン酸;186g(1.9モル)、および
・α−アリル−ω−アセチル−ポリオキシエチレン(n=30);143g(1.0モル)[→式(1)で示された単量体]
を用い、それらを反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解したのち、雰囲気を窒素に置換した。
【0037】
続いて、温水浴にて反応系の温度を80℃に保持し、アゾビスイソブチロニトリル;4gを投入して反応を開始させた。さらにアゾビスイソブチロニトリルを合計で8g分割投入し、6時間ラジカル重合反応を行ない共重合体を得た。
得られた共重合体は、原料換算で(無水マレイン酸)/(α−アリル−ω−アセチル−ポリオキシエチレン(n=30))=65/35(モル比)の割合を有し、数平均分子量=13000であった。
【0038】
(2)第2工程[グラフト共重合体の合成]
次いで、上記共重合体からグラフト共重合体を合成した。
・共重合体;100重量部
・ポリオキシアルキレンモノアルキルエステル;16部
(酪酸1モル当たりエチレンオキサイド2モルおよびプロピレンオキサイド2モルをブロック状に付加したもの)、および
・トリブチルアミン(触媒);6部
を反応容器に仕込み、雰囲気を窒素に置換した。
その後、撹拌しながら、100℃、4時間エステル化反応させてグラフト共重合体[1]を合成し、試製の多機能型セメント分散剤を得た。
なお、得られたグラフト共重合体の40%水溶液の20℃における粘度は、92MPa・sであった。
【0039】
(実施例2)
2)グラフト共重合体[2]の合成
(1)第1工程において合成された上記共重合体を用いて、グラフト共重合体[2]を合成した。
・共重合体;100重量部
・ポリオキシアルキレンモノアルキルエ−テル;17部
(ブタノ−ル1モル当たりエチレンオキサイド2モルを付加したもの)、および
・トリブチルアミン(触媒);6部
を反応容器に仕込み、以下実施例1と同じ要領でグラフト共重合体[2]を合成し、試製の多機能型セメント分散剤を得た。
なお、得られたグラフト共重合体の40%水溶液の20℃における粘度は、88MPa・sであった。
【0040】
3)高強度コンクリ−トの製造および測定
上記多機能型セメント分散剤(グラフト共重合体[1]および[2])を使用して、高強度コンクリ−トを製造し、自己収縮率を測定した。
(1)使用した原材料
・セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、密度=3.16g/cm、ブレ−ン値3300cm/g)
・細骨材:陸砂(小笠産、密度=2.60g/cm
・粗骨材:砕石(岩瀬産、密度=2.64g/cm
・混和材:シリカフュ−ム(BET比表面積;200000cm/g)(以下「SF」と略す)
・高性能AE減水剤:ポリカルボン酸系(太平洋セメント社製,商品名「コアフロ−CP300」)
・多機能型セメント分散剤:上記試製のグラフト共重合体(固形分;25%)
・水:水道水
【0041】
(2)高強度コンクリ−トの製造
上記原材料を用い、表1に示す配合にしたがってコンクリ−トを製造した。
50Lのパン型強制練りミキサ−にセメントおよび細骨材を投入して15秒間空練りし、水を投入して180秒間撹拌したのち、粗骨材を投入して60秒間撹拌し300秒間静置し、さらに30秒間撹拌してコンクリ−ト組成物(混練物)を得た。
多機能型セメント分散剤は、セメント100重量部に対し固形分換算で0.45重量部に相当する量を水と共に添加し撹拌した。
【0042】
【表1】
Figure 2004292283
【0043】
(3)測定
得られたコンクリ−ト組成物(混練物)について下記の特性を測定し、得た測定結果を表2に記載した。
・スランプフロ−;JIS−A1150に準拠して測定した。
・空気量;JIS−A1128に準拠して測定した。
・凝結;混練物を5mm篩にてウエットスクリ−ニングしたのち、JIS−A1147にしたがって測定した。
・圧縮強度;φ10×20cmの供試体を作製し、JIS−A1108に準拠して測定した。所定材齢までは標準水中養生を行なった。
・自己収縮;JCI自己収縮委員会(案)にしたがって10×10×40cmの供試体を作製し、20℃で封緘養生して行なった。測定は、凝結時間の始発より開始した。
・全収縮;JIS−A1129に準拠して、長さ変化を測定した。養生は、材齢7日まで封緘養生し、その後乾燥条件とした。
【0044】
(比較例1)
多機能型セメント分散剤に替えて高性能AE減水剤をセメント100重量部に対して固形分換算で0.45重量部配合した以外は、前記原材料を使用し、表1に示す配合にしたがい、実施例1と同様の方法でコンクリ−ト組成物(混練物)を製造した。
また、上記各特性を測定し、得た測定結果を表2に併記した。
【0045】
【表2】
Figure 2004292283
【0046】
上記実施例1、2から、
・全収縮に占める自己収縮の割合が約60%もあり、自己収縮の改良は全収縮の改良に大きく影響すること
・本発明を実施した場合、自己収縮量が従来法に比して著しく改良されること、などが判明した。
【0047】
【発明の効果】
以上に詳記したように、本発明は、特定の工程を経て合成された多機能型セメント分散剤を配合し、かつ、特定の水/セメント(質量比)の範囲で製造された高強度コンクリ−トを特徴とし、これにより、
・自己収縮を改良(低減)し、つまりは、全収縮を改良(低減)する
という効果を奏する。
また、該多機能型セメント分散剤は、高強度コンクリ−トに適用した場合であっても、優れた流動性を付与し、優れた初期強度を発現し、凍結融解作用に対する抵抗性をも向上させることができる、という効果を発揮する。
さらに、本発明は、実施する上で特段の技術開発を要さず、直ちに実行できるという産業上のメリットをも有している。

Claims (2)

  1. 下記の第1工程および第2工程を経て得られるグラフト共重合体からなる多機能型セメント分散剤が配合され、かつ、水/セメント比が30重量%以下に調整された組成物を硬化させたものであることを特徴とする高強度コンクリ−ト。
    第1工程:無水マレイン酸と下記の式(1)で示される単量体とが合計で85モル%以上、かつ、(無水マレイン酸)/(下記の式(1)で示される単量体)=50/50〜80/20(モル比)の割合で含有するラジカル重合性単量体混合物をラジカル重合し、数平均分子量3000〜50000の共重合体を得る工程。
    CH=CH−CH−O−A−O−R (1)
    (式中、
    R:炭素数1〜18のアシル基、炭素数1〜3のアルキル基又は水素
    A:オキシエチレン単位のみまたはオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の双方からなるオキシアルキレン単位の繰り返し数5〜80のポリアルキレングリコ−ルから全ての水酸基を除いた残基)
    第2工程:上記共重合体100重量部に対し、下記ポリオキシアルキレンモノアルキルエステル、下記ポリオキシアルキレンモノアルキルエ−テルおよびオキシプロピレン単位の繰り返し数3〜15のポリプロピレングリコ−ルから選ばれる一つ又は二つ以上を3〜35重量部の割合で塩基性触媒の存在下にグラフト反応してグラフト共重合体を得る工程。
    ポリオキシアルキレンモノアルキルエステル:炭素数1〜6の脂肪族カルボン酸1モル当たり、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを合計1〜20モルの割合で付加したもの。
    ポリオキシアルキレンモノアルキルエ−テル:炭素数1〜6の脂肪族アルコ−ル1モル当たり、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを合計1〜20モルの割合で付加したもの。
  2. 前記多機能型セメント分散剤が下記の第3工程を経て得られるグラフト共重合体の塩であることを特徴とする請求項1に記載の高強度コンクリ−ト。
    第3工程:前記第2工程で得たグラフト共重合体をアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物およびアミン類から選ばれる1種または2種以上で中和処理し、グラフト共重合体の塩を得る工程。
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