JP2004291078A - ろう付け用複合材及びそれを用いたろう付け製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】ろう付け特性が良好で、かつ、ろう付け接合部の耐熱性、耐食性、及び耐高温酸化性が良好なろう付け用複合材、及びろう付け接合部の信頼性が良好で、製造コストが安価なろう付け製品を提供するものである。
【解決手段】本発明に係るろう付け用複合材10は、被ろう付け材同士をろう付けするものであって、Ti又はTi合金層12、Cu又はCu合金層13或いはNi又はNi合金層78、及びAl又はAl合金層14を組み合わせたものを3層以上に重ねてなるろう付け層15で構成したものである。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ろう付け用複合材及びそれを用いたろう付け製品に係り、特に、熱交換器及び燃料電池用部材のろう付けに用いられる複合材及びそれを用いたろう付け製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用オイルクーラの接合材としてステンレス基クラッド材が使用されている。これは、基材であるステンレス鋼板の片面又は両面に、ろう材としての機能を有するCu材がクラッドされている。
【0003】
また、ステンレス鋼や、Ni基又はCo基合金などからなる部材のろう付け材として、ろう付け接合部の耐酸化性や耐食性に優れる各種Niろう材が、JIS規格により規定されている。
【0004】
さらに、熱交換器の接合に用いられるNiろう材として、粉末状のNiろう材に、Ni、Cr、又はNi−Cr合金の中から選択される金属粉末を4〜22wt%添加してなる粉末Niろう材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、基材であるステンレス鋼の表面にNi及びTiからなるろう付け層を有する、即ちNi/Ti/ステンレス鋼というろう付け層構造を有する自己ろう付け性複合材がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−107883号公報
【特許文献2】
特開平7−299592号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のろう材又はろう付け用複合材を、高温・高腐食性のガス又は液体に晒される熱交換器(排ガス再循環装置(以下、EGR(Exhaust Gas Recirculation)と示す)用クーラ)の接合用ろう材として使用する場合、以下に示すような問題があった。
【0008】
▲1▼ 前述したステンレス基クラッド材を自動車用オイルクーラの接合材として使用する場合、耐熱性及び耐食性については全く問題がないが、このステンレス基クラッド材をEGR用クーラの接合材として使用する場合、EGR用クーラ内は高温で、かつ、腐食性の高い排気ガスが循環されることから、ステンレス基クラッド材のろう材(Cu材)では、耐熱性、耐食性、及び耐高温酸化性が十分でないという問題があった。
【0009】
▲2▼ 前述した各種Niろう材は粉末状であることから、各ろう付け接合部に粉末Niろう材をそれぞれ塗布するという作業が必要になる。つまり、ろう付け作業に多大な労力を要するため、ろう付け製品の生産性が著しく低く、その結果、製造コストの上昇を招くという問題があった。
【0010】
▲3▼ 前述した自己ろう付け性複合材は、低温湿潤環境下においては耐食性を有するものの、高温下の酸素中においては十分な耐食性を有さない(十分な耐高温酸化性を有さない)という問題があった。
【0011】
以上の事情を考慮して創案された本発明の一の目的は、ろう付け特性が良好で、かつ、ろう付け接合部の耐熱性、耐食性、及び耐高温酸化性が良好なろう付け用複合材を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、ろう付け接合部の信頼性が良好で、製造コストが安価なろう付け製品を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係るろう付け用複合材は、被ろう付け材同士をろう付けするろう付け用複合材において、Ti又はTi合金層、Cu又はCu合金層或いはNi又はNi合金層、及びAl又はAl合金層を組み合わせたものを3層以上に重ねてなるろう付け層で構成したものである。また、被ろう付け材同士をろう付けするろう付け用複合材において、Ti又はTi合金層、Cu又はCu合金層、Ni又はNi合金層、及びAl又はAl合金層を組み合わせたものを4層以上に重ねてなるろう付け層で構成したものである。
【0014】
また、本発明に係るろう付け用複合材は、前述したろう付け層を、基材表面に形成したものである。
【0015】
具体的には、請求項4に示すように、上記基材はステンレス鋼で形成されることが好ましい。
【0016】
これによって、ろう付け特性が良好で、かつ、ろう付け接合部の耐熱性、耐食性、及び耐高温酸化性が良好なろう付け用複合材が得られる。
【0017】
一方、本発明に係るろう付け用複合材を用いたろう付け製品は、上述したろう付け用複合材を用いて接合したものである。
【0018】
これによって、ろう付け接合部の信頼性が良好で、製造コストが安価なろう付け製品が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0020】
本発明者らが鋭意研究した結果、ろう付け層を、Ti又はTi合金層、Cu又はCu合金層或いはNi又はNi合金層、及びAl又はAl合金層を組み合わせたものをクラッドして構成することで、ろう付け特性が良好で、かつ、ろう付け接合部の耐熱性、耐食性、及び耐高温酸化性が良好で、かつ、ろう付け加工のコストを大幅に低減させるろう付け用複合材が得られることを見出した。
【0021】
(第1の実施の形態)
本発明に係るろう付用複合材の第1実施形態の断面図を図1に示す。
【0022】
図1に示すように、第1の実施形態のろう付用複合材10は、被ろう付け材同士をろう付けするためのものであり、薄板状の、Ti又はTi合金層12、Cu又はCu合金層13(或いはNi又はNi合金層78)、及びAl又はAl合金層14を組み合わせたものを3層に重ねて(クラッドして)なるろう付け層15で構成したものである。この複合材10(ろう付け層15)を、基材11の表面(図1中では上面のみ)にクラッドし、図2に示すろう付用複合材20が得られる。ここで言う基材11の表面は、外部に露出する全ての面を示している。
【0023】
この複合材20に、適宜、圧延加工を施すことで、所望の厚さのろう付け用複合材(最終製品)が得られる。
【0024】
ろう付け層15全体に占めるAl濃度を2〜5wt%と限定したのは、Al濃度が2wt%未満だと、後述するように、ろう付け接合部35(図3参照)を高温の酸化雰囲気下に晒した際に、ろう付け接合部の表面にAlを主成分とする保護膜(酸化被膜)を十分な厚さで形成できないためである。また、Al濃度が5wt%を超えると、ろう付け層15全体を合金化する際の融点が上昇してしまい、湯流れ性が悪くなるためである。
【0025】
Ti又はTi合金層12は、ろう付け層15の最外層(図2中では最上層)以外に配置することが望ましい。これは、Tiは高強度であるものの脆いため、Ti又はTi合金層12が最外層に配置されていると、クラッド加工及び後加工(例えば、熱間圧延加工、冷間圧延加工など)が困難になるからである。また、Al又はAl合金層14は、後述する酸化被膜47の形成を容易にするために、ろう付け層15の最外層(図2中では最上層)又は最外層に近い位置に配置することが望ましい。
【0026】
基材31の構成材は、Feを主成分とするFe基合金が好ましく、特にステンレス鋼が好ましい。
【0027】
基材11の両面(図2中では上・下面)にろう付け層15,15を形成し、本実施形態のろう付用複合材20としてもよい。
【0028】
次に、本実施の形態に係る複合材10の作用について説明する。
【0029】
本実施の形態に係る複合材10においては、ろう付け層15を、Ti又はTi合金層12、Cu又はCu合金層13(或いはNi又はNi合金層78)、及びAl又はAl合金層14を組み合わせたものを3層にクラッドして構成しているため、ろう付けの際、Tiろう材中にCuろう材のCu成分(或いはNiろう材のNi成分)が混入する(溶け込む)。これによって、耐熱性及び耐食性に優れるものの、その融点の高さからろう材として機能させることが困難であったTi又はTi合金を含むろう材の融点を下げることができ、このろう材を用いたろう付けを約900〜1000℃の範囲で行うことが可能となる。その結果、本実施の形態に係る複合材10を、高温・高腐食性のガス又は液体に晒されるEGR用クーラの接合用ろう材として使用しても、優れた耐熱性及び耐食性を有し、かつ、優れたろう付け性を有するCu−Ti−Al系(或いはNi−Ti−Al系)ろう付け接合部を得ることができる。
【0030】
本実施の形態に係る複合材10を用いたろう付け製品は、接合を行う一組の被ろう付け材(図示せず)間に、複合材10を配置して加熱することで得られる。具体的なろう付け方法は、略真空中で低温熱処理することでなされる。熱処理条件としては、例えば、2.0×10−1〜2.0×10−2Paの真空度で800〜1100℃×5〜20minの熱処理を行い、好ましくは8.0×10−2Pa前後の真空度で850〜1050℃×10min前後の熱処理を行う。
【0031】
これによって、図2に示した複合材20のろう付け層15における各層12,13,14が拡散・合金化し、図3に示すように、ろう付け接合部35(又は35,35)が形成される。その後、このろう付け接合部35を高温の酸化雰囲気下に晒すことによって、ろう付け接合部35中のAl成分が表面に拡散し、酸化される。その結果、図4に示すように、ろう付け接合本体部46の表面が、Alを主成分とする保護膜(酸化被膜)47で覆われたろう付け接合部45(又は45,45)が形成される。ろう付け接合部45は、その表面にAlを主成分とする緻密な酸化被膜47を有していることから、このろう付け接合部45の耐高温酸化性を著しく向上させることができる。その結果、高温(約500〜700℃)酸化に伴うろう付け接合部の接合強度の低下が生じにくくなり、ろう付け製品の接合部の信頼性が良好となる。
【0032】
よって、第1の実施の形態に係る複合材10を用いてろう付けすることで、耐熱性、耐食性、及び耐高温酸化性に優れたろう付け接合部を安価に得ることができ、高温・高腐食性のガス又は液体に晒されるEGR用クーラ等のろう付け接合部のろう付け材として最適となる。
【0033】
また、複合材20は、基材11の表面にろう付け層15を一体に設けているため、ろう付けの際、従来の各種Niろう材のように、各ろう付け接合部に粉末Niろう材をそれぞれ塗布する必要、又は複合材10のように、接合を行う一組の被ろう付け材間に複合材10を配置する必要はなく、ろう付け作業に多大な労力を要することはない(ろう付け作業性が良好となる)。つまり、複合材20を用いたろう付け製品は、接合を行う一組の被ろう付け材の内、一方の被ろう付け材を基材11として複合材20を形成し、この複合材20と他方の被ろう付け材を重ね合わせて加熱することで得られる。その結果、ろう付け製品の歩留まり・生産性が良好となり、延いては製造コストの低減を図ることができる。
【0034】
よって、複合材20を用いてろう付けすることで、耐熱性、耐食性、及び耐高温酸化性に優れたろう付け接合部を、更に容易、安価に得ることができ、高温・高腐食性のガス又は液体に晒されるEGR用クーラ等のろう付け接合部のろう付け材として最適となる。
【0035】
次に、本発明の他の実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0036】
(第2の実施の形態)
本発明に係るろう付用複合材の第2実施形態の断面図を図5に示す。尚、図1と同様の部材には同じ符号を付しており、これらの部材については詳細な説明を省略する。
【0037】
第1の実施の形態に係る複合材10は、ろう付け層15が3層構造のものであった。
【0038】
これに対して、図5に示すように、第2の実施形態のろう付用複合材50は、薄板状の、Cu又はCu合金層13、Ti又はTi合金層12、Cu又はCu合金層13、及びAl又はAl合金層14を組み合わせたものを4層に重ねて(クラッドして)なるろう付け層55で構成したものである。この複合材50(ろう付け層55)を、基材11の表面(図5中では上面のみ)にクラッドし、図6に示すろう付用複合材60が得られる。ここで言う基材11の表面は、外部に露出する全ての面を示している。
【0039】
この複合材60に、適宜、圧延加工を施すことで、所望の厚さのろう付け用複合材(最終製品)が得られる。
【0040】
基材11の両面(図6中では上・下面)にろう付け層55,55を形成し、本実施形態のろう付用複合材60としてもよい。
【0041】
また、本実施の形態に係る複合材50,60においては、4層構造のろう付け層55について説明を行ったが、ろう付け層は5層以上の構造であってもよい。
次に、本実施の形態に係る複合材50,60の作用について説明する。
【0042】
本実施の形態に係る複合材50,60においても、前実施の形態に係る複合材10,20と同様の作用効果が得られる。
【0043】
また、本実施の形態に係る複合材60は、ろう付け層55の基材11と直接接する部分に、Ti又はTi合金層12ではなくCu又はCu合金層13を配置していることから(Ti又はTi合金層12と基材11との間に、Cu又はCu合金層13を配置していることから)、ろう付けの際に、ステンレス鋼からなる基材11とTiとの反応を抑制することができ、その結果、ろう付け接合部の信頼性がより高まる。
【0044】
(第3の実施の形態)
本発明に係るろう付用複合材の第3実施形態の断面図を図7に示す。尚、図1、図5と同様の部材には同じ符号を付しており、これらの部材については詳細な説明を省略する。
【0045】
前実施の形態に係る複合材50は、Cu又はCu合金層13、Ti又はTi合金層12、Cu又はCu合金層13、及びAl又はAl合金層14を組み合わせたものを4層に重ねて(クラッドして)なるろう付け層55で構成したものであり、層12を、同種の金属又は合金(層13,13)で挟み込んだ構造を有していた。
【0046】
これに対して、図7に示すように、第3の実施の形態に係る複合材70は、薄板状の、Cu又はCu合金層13、Ti又はTi合金層12、Ni又はNi合金層78、及びAl又はAl合金層14を組み合わせたものを4層に重ねて(クラッドして)なるろう付け層75で構成したものであり、層12を、異種の金属又は合金(層13,78)で挟み込んだ構造を有したものである。この複合材70(ろう付け層75)を、基材11の表面(図7中では上面のみ)にクラッドし、図8に示すろう付用複合材80が得られる。ここで言う基材11の表面は、外部に露出する全ての面を示している。
【0047】
この複合材80に、適宜、圧延加工を施すことで、所望の厚さのろう付け用複合材(最終製品)が得られる。
【0048】
基材11の両面(図8中では上・下面)にろう付け層75,75を形成し、本実施形態のろう付用複合材80としてもよい。
【0049】
また、本実施の形態に係る複合材70,80においては、4層構造のろう付け層75について説明を行ったが、ろう付け層は5層以上の構造であってもよい。第3の実施の形態に係る複合材70,80においても、前実施の形態に係る複合材50,60と同様の作用効果が得られる。
【0050】
本実施の形態に係る複合材10,20,50〜80は、EGR用クーラなどの高温・高腐食性のガス又は液体に晒される熱交換器のみに、その用途を限定するものではなく、その他にも、例えば、燃料電池の改質器用クーラや、燃料電池部材などの各種用途にも適用可能である。また、この他にも、オイルクーラ、ラジエータ、二次電池部材などにも適用可能である。
【0051】
以上、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。複合材の形状は薄板状に特に限定するものではなく、例えば、棒状又はワイヤ状の基材の表面に、前述したろう付け層15,55,75を形成し、ろう付け用複合材としてもよい。
【0052】
【実施例】
(実施例1)
厚さ0.5mmのコイル状純Al板、厚さ2.0mmのコイル状純Cu板、および厚さ2.0mmのコイル状純Ti板を3層に重ね合わせ、熱間圧延によりクラッドを行い、厚さ1.4mmのクラッド板を形成した。続いて、冷間圧延によりクラッドを行い、厚さ1.0mmのろう付け層を作製した。
【0053】
その後、SUS304(JIS規格)からなり、厚さ2.5mmのステンレス鋼条材の表面に、このろう付け層を重ね合わせ、熱間圧延によりクラッドを行い、続いて、冷間圧延によりクラッドを行い、最終的に、厚さ0.5mmのろう付け用複合材を作製した。
【0054】
(実施例2)
厚さ0.5mmのコイル状純Al板、厚さ1.0mmのコイル状純Ni板、厚さ2.0mmのコイル状純Ti板、および厚さ2.0mmのコイル状純Cu板を4層に重ね合わせ、熱間圧延によりクラッドを行い、厚さ1.4mmのクラッド板を形成する以外は、実施例1と同様にしてろう付け用複合材を作製した。
【0055】
(比較例1)
コイル状純Al板の厚さが1.0mmである以外は、実施例1と同様にしてろう付け用複合材を作製した。
【0056】
(比較例2)
コイル状純Al板の厚さが0.1mmである以外は、実施例2と同様にしてろう付け用複合材を作製した。
【0057】
(比較例3)
コイル状純Al板を用いない以外は、実施例1と同様にしてろう付け用複合材を作製した。
【0058】
(比較例4)
コイル状純Al板を用いない以外は、実施例2と同様にしてろう付け用複合材を作製した。
【0059】
実施例1及び比較例1,3の複合材について、8.0×10−2Paの真空度において900℃×10min保持した後、冷却するという熱処理を行ってろう付け層を溶融させた。また、実施例2及び比較例2,4の複合材について、8.0×10−2Paの真空度において1000℃×10min保持した後、冷却するという熱処理を行ってろう付け層を溶融させた。
【0060】
実施例1,2及び比較例1〜4の各複合材について、ろう付け層の積層構造、ろう付け層全体に占めるAl成分の割合(Al濃度(wt%))、ろうの湯流れ性、及び耐高温酸化性の評価結果を表1に示す。
【0061】
ここで、耐高温酸化性は、実施例1,2及び比較例1〜4の各複合材について、1気圧の大気中、600℃で72時間保持し、試験前後の重量変化、及び酸化被膜の厚さにより評価した。
【0062】
【表1】
Figure 2004291078
【0063】
表1に示すように、本発明に係るろう付け用複合材である実施例1,2の複合材は、いずれもろうの湯流れ性が良好であった。また、実施例1,2の複合材は、いずれもろう付け接合部の表面にAlを主成分とする酸化被膜が十分な厚さで形成されていたため、耐高温酸化性は極めて良好であった。
【0064】
これに対して、比較例1の複合材は、ろう付け層全体に占めるAl濃度が、限定範囲(2〜5wt%)よりも多い10wt%であるため、ろう付け層の融点が高く、湯流れ性が悪かった。このため、ろう材としての機能が損なわれてしまい、良好なろう付け接合部が得られず、ろう材として不合格であった。
【0065】
比較例2の複合材は、ろうの湯流れ性は良好であるものの、ろう付け層全体に占めるAl濃度が、限定範囲(2〜5wt%)よりも少ない1wt%であるため、酸化被膜の厚が薄く、耐高温酸化性が不良であった。
【0066】
比較例3,4の複合材は、ろうの湯流れ性は良好であるものの、ろう付け層中にAl成分を全く含んでいないことから、ろう付け接合部の表面にAlを主成分とする酸化被膜が形成されず、耐高温酸化性が不良であった。
【0067】
以上、本発明に係るろう付け用複合材である実施例1,2の複合材は、ろうの湯流れ性およびろう付け接合部の耐高温酸化性がいずれも良好であることから、ろう付け特性及びろう付け接合部の信頼性に優れたろう付け用複合材であることがわかる。
【0068】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。
(1) Ti又はTi合金層、Cu又はCu合金層及び/又はNi又はNi合金層、及びAl又はAl合金層を組み合わせてなるクラッド層で構成されるろう付け層を形成することで、ろう付け特性が良好で、かつ、ろう付け接合部の耐熱性、耐食性、及び耐高温酸化性が良好なろう付け用複合材を得ることができる。
(2) (1)のろう付け用複合材を用いてろう付けすることで、ろう付け接合部の信頼性が良好で、製造コストが安価なろう付け製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るろう付用複合材の第1実施形態の断面図である。
【図2】図2の変形例であり、図1の複合材と基材とをクラッドしてなる複合材の断面図である。
【図3】図2の複合材の、ろう付け熱処理後の断面図である。
【図4】図3の複合材を、高温の酸化雰囲気に晒した後の断面図である。
【図5】本発明に係るろう付用複合材の第2実施形態の断面図である。
【図6】図5の変形例であり、図5の複合材と基材とをクラッドしてなる複合材の断面図である。
【図7】本発明に係るろう付用複合材の第3実施形態の断面図である。
【図8】図7の変形例であり、図7の複合材と基材とをクラッドしてなる複合材の断面図である。
【符号の説明】
10,20,50,60,70,80 ろう付け用複合材
11 基材
12 Ti又はTi合金層
13 Cu又はCu合金層
14 Al又はAl合金層
15,55,75 ろう付け層
78 Ni又はNi合金層

Claims (5)

  1. 被ろう付け材同士をろう付けするろう付け用複合材において、Ti又はTi合金層、Cu又はCu合金層或いはNi又はNi合金層、及びAl又はAl合金層を組み合わせたものを3層以上に重ねてなるろう付け層で構成したことを特徴とするろう付け用複合材。
  2. 被ろう付け材同士をろう付けするろう付け用複合材において、Ti又はTi合金層、Cu又はCu合金層、Ni又はNi合金層、及びAl又はAl合金層を組み合わせたものを4層以上に重ねてなるろう付け層で構成したことを特徴とするろう付け用複合材。
  3. 請求項1又は2記載のろう付け層を、基材表面に形成したことを特徴とするろう付け用複合材。
  4. 上記基材をステンレス鋼で形成した請求項3記載のろう付け用複合材。
  5. 請求項1から4いずれかに記載のろう付け用複合材を用いて接合したことを特徴とするろう付け用複合材を用いたろう付け製品。
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