JP2004290239A - 患者介護車 - Google Patents
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Abstract
【課題】患者の上肢に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査を施行する際に、患者の安楽を保つことが可能な患者介護車を提供する。
【解決手段】患者介護車1は、座部10と、座部10から延設され、座部10に対して上方に向けて略垂直となる椅子状態と座部とともに略水平となるベッド状態との間で回動可能な背当部20と、床面に対して移動自在な左右一対の前輪62および後輪63を有し、座部10を支持する支持体60と、治療または検査のため上肢に針を穿刺して留置した患者の上肢を支持するのに必要な広さを有し、背当部20の側方に配設された穿刺台70とを備えるものである。
【選択図】 図1
【解決手段】患者介護車1は、座部10と、座部10から延設され、座部10に対して上方に向けて略垂直となる椅子状態と座部とともに略水平となるベッド状態との間で回動可能な背当部20と、床面に対して移動自在な左右一対の前輪62および後輪63を有し、座部10を支持する支持体60と、治療または検査のため上肢に針を穿刺して留置した患者の上肢を支持するのに必要な広さを有し、背当部20の側方に配設された穿刺台70とを備えるものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、患者介護車に関するものである。特に、患者の上肢に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査の際に主に用いられる患者介護車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、病人、病弱者、および高齢者などを含む下肢の弱い患者が移動する際、腰掛として機能する座部と、背もたれとして機能する背当部と、多軌道な移動が可能な左右一対の車輪とを備え、患者自身、介添者、または電動モータなどの動力源によって推進される車椅子が広く用いられている。また、このような車椅子に類似するものとして、背当部が座部に対して略垂直な椅子状態と座部とともに略水平なベッド状態との間で回動可能に設けられ、移動機能はもとより患者を横にして休ませることが可能な患者介護車なども提供されている。
【0003】
このような車椅子・患者介護車は、単に移動に用いる以外にも様々な状況下における用途があるが、例えば、患者に治療または検査を施行する際に、据え置きのベッドを利用せず、患者を車椅子・患者介護車に乗車させたまま治療または検査を施行すれば、次に挙げるような利点を享受できる。それは、下肢の弱い患者のベッドなどへの移乗を省略できるため、移乗行為に伴う患者および医療従事者の負担を軽減できること、患者が治療または検査を施行した領域から速やかに離れることが可能となり、治療または検査行為を滞留させることなく、次々に患者を受け入れて治療または検査を効率的に施行できること、さらに、据え置きのベッドでは治療または検査を行う領域でベッドの清掃および布団・シーツ交換などを行わなければならないが、車椅子・患者介護車であれば治療または検査を行う領域とは別の領域で清掃および布団・シーツ交換などが可能となることなどである。
【0004】
なお、このような車椅子・患者介護車は、一般的なものである。本出願人は、これを特定する文献を特には知見していない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような車椅子・患者介護車を治療または検査の際に用いると、上述のような利点が享受できる一方で、次に挙げる不都合があった。それは、患者の上肢に針を穿刺するとともに留置する必要がある治療または検査、例えば、老廃物蓄積および水電解質異常を是正する透析治療、栄養分の補給、脱水症状の改善、または輸血などの目的で行われる点滴治療などを施行する場合に、このような車椅子・患者介護車に患者を乗車させたままで治療または検査を施行すると、患者が針を留置した上肢を安楽な状態で保つことができないということである。
【0006】
特に、透析治療では、人工透析中に血液を体外に取り出して透析装置のダイアライザーに供給し、ダイアライザーにて浄化された血液を再び体内に戻すために、上肢のシャント血管内に二本の透析針を穿刺して留置しておくのであるが、シャント血管からこれらの透析針が外れないように、またこれらの透析針が血管壁を損傷しないように、人工透析中は二時間から五時間程度もの間、透析針を留置してある上肢を、伸展させたままで、かつ手掌を上方ないし体幹方向約45度に向けた上で、不動の状態で横たえておかなければならない。
【0007】
このとき、患者は、姿勢を座った状態にすることも一時的には可能であるが、ほとんどの間仰向けに横になった状態で人工透析を施行されるので、背当部が傾動しない通常の車椅子を利用することはそもそも無理であるし、背当部が傾動してベッドを兼用する患者介護車であっても、移動を考慮してその横幅が通常の据え置きの大型ベッドよりも狭いため、透析針を留置してある上肢を伸展させて横たえておくベッド上のスペースが制限され、以って透析針を留置してある上肢と体幹の長軸との成す角度も制限されるのであった。そのため、患者は、人工透析中、透析針を留置したうえで伸展させてある上肢を、安楽な状態でベッド上に横たえておくことができず、快適ではない状態で透析を受けなければならなかった。
【0008】
本発明は上記の実情を鑑み、患者の上肢に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査を施行する際に、患者の安楽を保つことが可能な患者介護車の提供を課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる患者介護車は、「座部と、該座部から延設され、該座部に対して上方に向けて略垂直となる椅子状態と該座部とともに略水平となるベッド状態との間で回動可能な背当部と、床面に対して移動自在な車輪を有し、前記座部を支持する支持体と、治療または検査のため上肢に針を穿刺して留置した患者の該上肢を支持するのに必要な広さを有し、前記背当部の側方に配設される穿刺台とを備えること」を、上述の課題を解決するための主要な手段とする。
【0010】
ここで、穿刺台の「治療または検査のため上肢に針を穿刺して留置した患者の上肢を支持するのに必要な広さ」とは、具体的には、患者が患者介護車に乗車した状態で、手掌を上方ないし体幹方向30〜50度程度、好ましくは45度程度に向けても、患者の上肢の大部分が支持されるだけの広さのことであり、縦幅が200mm以上、300mm以上、400mm以上、または500mm以上に形成され、横幅が60mm以上、100mm以上、200mm以上、または300mm以上に形成されているものであり、通常の車椅子・椅子などに設けられている横幅が40〜50mm程度に形成された肘掛などとは異なるものである。
【0011】
また、ここで、穿刺台の主な用途は、患者の上肢に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査、例えば、老廃物蓄積および水電解質異常を是正する透析治療、栄養分の補給、脱水症状の改善、または輸血などの目的で行われる点滴治療などにおいて、針を穿刺して留置した患者の上肢を支持することであるが、これ以外の治療または検査の際に用いることを排除するものではなく、例えば、血圧測定などの治療または検査に患者の上肢を支持することも可能で、その場合も同様の作用および効果を奏することができる。
【0012】
また、ここで、支持体に設けられる車輪は、上述の用途上、介添者が推進させる構成を備えたものであることが好ましいが、患者が自分で推進させる構成を備えたもの、または、電動モータなどの動力源により推進させる構成を備えたものであってもよい。
【0013】
本発明に係る患者介護車では、患者が乗車すると、通常の車椅子などと同様、座部が腰掛として機能し、背当部が背もたれとして機能し、また、座部を支持する支持体の車輪によって乗車したまま床面を移動することが可能となる。また、背当部は、患者が座った状態で支持する椅子状態と、患者が横になった状態で支持するベッド状態との間で回動可能であるため、例えば、移動する際などは背当部を椅子状態とし、治療、検査、または静養を行う際などには背当部をベッド状態とするなど、状況に応じて患者の姿勢を変化させることが可能となる。また、背当部の側方に配設された穿刺台により、上肢に針を穿刺して留置する必要のある治療または検査を施行する際、針を留置してある患者の上肢を伸展させて横たえておくスペースが広がるため、上肢と体幹との成す角度が制限されることなく、患者介護車上で患者が最も安楽な姿勢となることが可能となる。
【0014】
したがって、患者がこの患者介護車に乗車したまま治療または検査を受ければ、据え置きのベッドなどで治療または検査を受ける場合と異なり、移乗行為に伴う患者および医療従事者の負担を軽減できること、治療または検査を効率的に施行できること、および治療または検査を行う領域とは別の領域で清掃および布団・シーツ交換などができることなどの利点が享受できる上に、患者が治療または検査を快適に受けることができる。
【0015】
上記患者介護車を、「前記穿刺台は、上肢の支持角度を調節可能に構成されている」ものとしてもよい。
【0016】
ここで、穿刺台が上肢の支持角度を調節可能な具体的な構成を示す。例えば、背当部に支持されたフレームと、一端側がフレームに回動可能に支持されるとともに他端側がフレームから段階的に突出可能なアームを介して支持された台本体とを備え、アームにより台本体の角度を調節して上肢の支持角度を調節するものなど挙げられる。または、背当部に側方へと一部が突出する支軸と、その支軸の背当部から突出した部分に回動可能に取付けられた台本体とを備え、支軸に対して台本体を回動させることにより、台本体の角度を調節して上肢の支持角度を調節するものなどであってもよい。その場合、支軸とは別に背当部の側方へと突出する軸を適宜設けて、台本体の回動を規制するようにしてもよく、台本体に支軸との位置を固定する固定手段を設けて、台本体の回動を規制するようにしてもよい。
【0017】
このようにすれば、患者がこの患者介護車に乗車し、患者の上肢に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査を施行する際、穿刺台に針を留置した患者の上肢が支持されるのであるが、患者が患者自身にとって最も安楽な上肢の角度に対応させて、上肢を穿刺台に支持させることが可能となる。特に、透析治療を施行する場合、シャント血管内に透析針を留置した側の上肢を伸展し、かつ手掌を上方ないし体幹方向約45度に向けるという人工透析に特有の姿勢であり、また、人工透析に要する時間が二時間から五時間程度と長時間に及ぶため、背当部の背当面に対する穿刺台の角度によって、上肢をこの穿刺台に支持させている側の肩の凝りによる患者の苦痛が大幅に異なるが、このとき、上肢を穿刺台に支持させている側の肩が背当部上に密着し、以って穿刺台に置いた側の肩周辺の筋肉の緊張度が最小となるように穿刺台の角度を調節すれば、患者の肩が凝ることがない。したがって、患者自身にとって最も安楽な上肢の状態を保つことが可能となり、長時間に渡っても肩が凝るなど苦痛を感じることなく、患者が快適に治療または検査を受けることができる。
【0018】
また、穿刺台が上肢の支持角度を調節可能であれば、背当部の傾斜状態にかかわらず、患者の上肢を最適な状態で支持することができる。つまり、穿刺台が、背当部の状態が座部とともに略水平なベッド状態であるときか、座部に対して上方に向けて略垂直な椅子状態であるときのどちらか一方を想定して患者の上肢を支持するように配設されていれば、背当部が想定した状態以外であるとき、患者の上肢を最適な状態で支持することができないが、穿刺台が上肢の支持角度を調節可能に構成されていれば、背当部が椅子状態、ベッド状態、または椅子状態とベッド状態との間で傾斜した状態のうちでいずれであっても、穿刺台の角度を調節し、患者の上肢を最適な状態で支持することが可能となるのである。
【0019】
上記患者介護車を、「前記穿刺台は、前記背当部に対して着脱自在に配設される」ものとしてもよい。
【0020】
ここで、穿刺台が背当部に対して着脱自在に配設されている具体的な構成としては、例えば、雄雌の組み合わせによって着脱自在としたものなどが挙げられる。このとき、背当部側に雌部材を設け、穿刺台側に雄部材を設けるようにすることが好ましい。このようにすれば、穿刺台を取外せば、背当部の側方へと突出する部材がなくなるためである。また、これ以外の構成であってもよく、一部が背当部の側方に突出した状態と背当部の側面より内側に収納された状態との間でスライド可能な支軸を背当部にさらに備え、穿刺台がその支軸に回動可能であるとともに着脱可能に支持されているものでもよい。これは、患者の上肢に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査を施行する際など穿刺台が必要なときは、支軸を一部が背当部から突出した状態とするとともにその突出した部分に穿刺台を支持させることにより、穿刺台を患者の上肢を支持することが可能な使用状態とするものであり、また、背当部を椅子状態として移動する際など穿刺台が不必要なときは、穿刺台を支軸から取外し、支軸を背当部の側面より内側に収納した状態とするものである。なお、取外した穿刺台は、背当部の側面より内側に収納した支軸に係止して収納してもよい。また、このような構成であれば、支軸を中心として穿刺台を回動させることも可能であるため、上肢の支持角度を調節することも可能になる。このため、背当部に対して着脱自在に配設されるとともに、上肢の支持角度を調節可能な構成を、支軸を用いた比較的簡単な構成で実現することができるので、工業的実施に際して最も有利である。
【0021】
このようにすれば、治療または検査を行うとき以外の穿刺台を必要としないときは、穿刺台を取外すことが可能となり、患者介護車全体の横幅を狭くして、通常の車椅子などとほぼ同様の横幅にすることが可能となる。したがって、病院・自宅などにおける通路・ドア・玄関などを椅子状態で移動する際になどに有利である。
【0022】
上記患者介護車を、「前記穿刺台は、前記背当部の側方に配設される使用状態と前記背当部の側面より内側に配設される収納状態とに変位可能に構成されている」ものとしてもよい。
【0023】
ここで、穿刺台が使用状態と収納状態とに変位可能な具体的な構成としては、例えば、穿刺台が使用状態と収納状態との間でスライド可能に設けられたもの、穿刺台が背当部の側部に長手方向に沿って設けられた軸に回動可能に軸支され、背当部の側方へ展開することで使用状態となり、背当部の裏側へ折り畳むことで収納状態となるように設けられたもの、または、収納状態で背当部の一部を構成するように設けられるとともに一端が背当部に回動可能に軸支され、回動することで一部が背当部の側方に配設されて使用状態となるものなどが挙げられる。
【0024】
このようにすれば、治療または検査を行うとき以外の穿刺台を必要としないときは、穿刺台を背当部の内側に収納した収納状態とすれば、患者介護車全体の横幅を狭くして、通常の車椅子などとほぼ同様の横幅にすることが可能となる。したがって、病院・自宅などにおける通路・ドア・玄関などを椅子状態で移動する際になどに有利である。
【0025】
上記患者介護車を、「基台と、該基台に変位可能に支持され、前記基台の上面に載置される折り畳み状態および前記基台の上面と略面一となる展開状態に変位する変位台とを有するアームレストをさらに備える」ものとしてもよい。
【0026】
ここで、アームレストは、変位台を基台の一端に回動可能に取付けることにより、変位台を回動させることにより折り畳み状態および展開状態に変位させる構成を備えたものであってもよく、また、変位台と基台とを平行リンクにより連結して、変位台を横方向に移動させるとともに基台の上面と略面一となる位置まで下方向に移動させることにより折り畳み状態および展開状態に変位させる構成を備えたものであってもよい。
【0027】
また、アームレストは、高さを調節可能に設けられていることが好ましい。これにより、患者の身長の高低にかかわらず、アームレストを利用できるし、また、穿刺台を支軸で回動可能に支持した構成を備えたものの場合、アームレストにより穿刺台の一端を支持すれば、アームレストの高さを調節することで穿刺台の回動、つまり穿刺台の角度の調節が可能となる。また、アームレストを座部と同じ高さまで下げることにより、患者が患者介護車へ乗降しやすいようにすることもできる。さらに、アームレストを着脱可能に設けて、状況に応じてアームレストを適宜外して、利便性を高めてもよい。
【0028】
このようにすれば、背当部が椅子状態である場合、アームレストの変位台を折り畳み状態とすれば、通常の車椅子などに設けられている肘掛と同様に機能して、患者介護車に乗車した患者が肘をかけることが可能となり、また、アームレストの変位台を展開状態とすれば、治療または検査のため上肢に針を穿刺して留置した患者の上肢を支持するのに必要な広さを有した簡易的な穿刺台として機能して、針を留置した患者の上肢を支持することが可能となる。したがって、背当部が椅子状態である場合にアームレストの変位台を折り畳み状態とすれば、患者介護車全体の横幅が狭くなり、通常の車椅子などとほぼ同様の横幅にすることが可能となり、病院・自宅などにおける通路・ドア・玄関などを椅子状態で移動する際になどに有利であるし、また、背当部が椅子状態である場合にアームレストの変位台を展開状態とすれば、上肢に針を穿刺して留置する必要のある治療または検査を施行する際、針を留置してある患者の上肢を伸展させて横たえておくスペースが通常の肘掛よりも広がるため、上肢と体幹との成す角度が制限されることなく、患者介護車上で患者が最も安楽な姿勢となることが可能となり、患者が治療または検査を快適に受けることができる。
【0029】
上記患者介護車を、「前記背当部が前記ベッド状態のとき、前記背当部を床面に支持する背当支持部材をさらに備える」ものとしてもよい。
【0030】
このようにすれば、患者介護車はベッド状態で、背当部が背当支持部材により支持されることになる。患者介護車に患者を乗せてベッド状態とすると、患者の動きによっては重心が移動して患者介護車が後方に倒れる可能性があるが、背当支持部材を設けたことにより、重心が移動しても安定が保たれ、患者介護車が後方に倒れることがない。したがって、ベッド状態で患者の安全を確実に確保できる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態である患者介護車1について、図1から図6までに基づき説明する。患者介護車1は、通常の車椅子と同様の移動機能に加え、患者2の上肢3に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査、例えば、老廃物蓄積および水電解質異常を是正する透析治療、栄養分の補給、脱水症状の改善、または輸血などの目的で行われる点滴治療などを施行する場合に、患者2を乗車させたままで治療または検査を施行することを主な用途とするものである。患者介護車1は、図1に示すように、座部10、背当部20、下腿当部30、フットレスト40、支持体60、穿刺台70、およびアームレスト80を主に備えている。
【0032】
座部10は、患者介護車1に乗車した患者2の腰部・臀部などを主に支持するものであり、外枠を形成する金属製の座部フレーム11と、座部フレーム11に端部を固定されて座部フレーム11の内側に張設され、所定の強度を有し非伸縮性の生地を素材として使用した座部シート12と、座部シート12上に面ファスナなどを介して着脱可能に配設された座部クッション13とを主に備えている。また、座部10は、座部フレーム11と座部シート12の端部とに係止孔をそれぞれ穿設し、その係止孔にボルトを貫通させて締結することにより座部フレーム11と座部シート12の端部とを固定している。
【0033】
背当部20は、患者介護車1に乗車した患者2の背中・頭などを主に支持するものであり、外枠を形成する金属製の背当部フレーム21と、背当部フレーム21に端部を固定されて背当部フレーム21の内側に張設され、所定の強度を有する非伸縮性の生地を素材として使用した背当部シート22と、背当部シート22上に面ファスナなどを介して着脱可能に配設された背当部クッション23とを主に備えている。また、背当部20は、背当部フレーム21が座部フレーム11に回動可能に接続されており、座部10に対して上方に向けて略垂直となる椅子状態(図2参照)と、座部10とともに略水平となるベッド状態(図3参照)との間で変位可能に設けられている。また、背当部20は、図示省略の固定手段により座部10に対する傾斜位置を、椅子状態とベッド状態との間で無段階的に固定することができる。また、背当部20は、背当部フレーム21が図示省略のリンク機構に接続されており、背当部20の椅子状態とベッド状態との変化に下腿当部30およびフットレスト40が連動するように設けられている。
【0034】
また、背当部20は、背当部フレーム21と背当部シート22の端部とにそれぞれ係止孔を穿設し、その係止孔にボルトなどを貫通させて締結することにより背当部フレーム21と背当部シート22の端部とを固定している。また、背当部20は、背当部クッション23において患者介護車1に乗車した患者2の頭と相対する部分に面ファスナなどを介して着脱可能に設けられた枕24と、後述の穿刺台70を支持する支軸71を一部が背当部20の側方に突出した使用状態と背当部20の側面より内側に収納された収納状態との間でスライド可能に支持する支軸受け25(図4(a)参照)と、医療従事者または介添者が患者介護車1を推進する際に利用する取手部26とを備えている。なお、取手部26には、図示省略のブレーキ機構を操作する操作部27が併設されており、医療従事者または介添者が患者介護車1の推進を適宜止めることが可能である。
【0035】
さらに、背当部20は、横設された背当部フレーム21に回動可能に設けられた背当支持部材28を備えている。背当支持部材28は、図3に示すように、背当部20がベッド状態のとき、背当部20に対して略垂直となり、背当部20を床面4に支持するものである。患者介護車1に患者2を乗せてベッド状態とすると、患者2の動きによっては重心が移動して患者介護車1が後方に倒れる可能性があるが、背当支持部材28を設けたことにより、重心が移動しても安定が保たれ、患者介護車1が後方に倒れることがない。また、背当支持部材28は、背当部フレーム21との接続箇所に、背当部フレームに設けられた支持片に支持される軸を貫通させる貫通孔と、背当部フレームに当接する当接片とを備え、この構成により、背当部フレームに回動可能に取付けられている。なお、背当部20が椅子状態のときは、図2に示すように、背当支持部材28を背当部20と平行になるように回動させて収納すれば移動に際して有利である。
【0036】
ここで、座部10と背当部20との間には、連結部材29が配設されている。連結部材29は、適度な伸縮性を有する部材で形成されており、一端が座部10の座部フレーム11に固定され、他端が背当部20の背当部フレーム21に固定されている。これにより、座部10と背当部20とが連結されて間にできる隙間が連結部材29によって少なくなり、座部クッション13または背当部クッション23の一部がこの隙間に陥没する可能性が少なくなる。特に、背当部20をベッド状態としたとき、座部10と背当部20との間の隙間に支持するものがなく座部クッション13または背当部クッション23の一部が陥没していると、患者2が患者介護車1上でやすらかにすごすことができないが、この連結部材29を設けたことにより、座部10と背当部20との間にできる隙間においても座部クッション13または背当部クッション23が支持されるので、陥没する部分がなくなり、患者介護車1上で患者2の安楽を確保できる。なお、連結部材29は、座部シート12および背当部シート22を連結するものでもよいし、座部シート12および背当部シート22に一体としたものでもよい。
【0037】
下腿当部30は、患者介護車1に乗車した患者2の下腿(膝から足までの部分)を主に支持するものであり、外枠を形成する金属製の下腿当部フレーム31と、下腿当部フレーム31に端部を固定されて下腿当部フレーム31の内側に張設され、所定の強度を有する非伸縮性の生地を素材として使用した下腿当部シート32と、下腿当部シート32上に面ファスナなどを介して着脱可能に配設された下腿当部クッション33とを主に備えている。また、下腿当部30は、下腿当部フレーム31が座部フレーム11に回動可能に接続されており、座部10に対して下方に向けて略垂直となる椅子状態(図2参照)と、座部10とともに略水平となるベッド状態(図3参照)との間で変位可能に設けられている。また、下腿当部30は、下腿当部フレーム31が図示省略のリンク機構に接続されており、背当部20の椅子状態とベッド状態との変化に連動して、椅子状態とベッド状態とに変化するように設けられている。また、下腿当部30は、下腿当部フレーム31と下腿当部シート32の端部とにそれぞれ係止孔を穿設し、その係止孔にボルトなどを貫通させて締結することで下腿当部フレーム31と下腿当部シート32の端部と固定している。
【0038】
フットレスト40は、患者介護車1に乗車した患者2の足を主に支持するものであり、外枠を形成する金属製のフットレストフレーム41と、フットレストフレーム41の内側に配設された板部材42とを主に備えている。また、フットレスト40は、フットレストフレーム41が下腿当部フレーム31に回動可能に接続されており、下腿当部30に対して略垂直となる椅子状態(図2参照)と、背当部20、座部10、および下腿当部30とともに略水平となるベッド状態(図3参照)と、下腿当部30に対して略平行となるように折り畳まれる収納状態との間で変位可能に設けられている。また、フットレスト40は、フットレストフレーム41が図示省略のリンク機構に接続されており、背当部20および下腿当部30の椅子状態とベッド状態との変化に連動して、椅子状態とベッド状態とに変化するように設けられている。
【0039】
ここで、座部10、背当部20、下腿当部30、およびフットレスト40の横幅は、通常の車椅子などとほぼ同様に、病院・自宅などにおける通路・ドア・玄関などを楽に通ることができる程度のものとしてある。
【0040】
支持体60は、座部10を床面4に移動自在に支持するものであり、座部フレーム11を主に支持し外郭を形成する金属製の支持体フレーム61と、床面4に対して移動自在な左右一対の前輪62および後輪63とを主に備えている。前輪62は、支持体フレーム61に水平方向に回動可能に取付けられており、この前輪62により患者介護車1の多軌道な移動が可能となる。後輪63は、背当部20が椅子状態であるときに背当部20よりうしろに位置するように設けられている(図2参照)。これは、背当部20がベッド状態となり、患者介護車1全体の重心がうしろにずれても、患者介護車1が後方へと倒れないようにするためである。この他、支持体60は、座部10の両側に、後述のアームレスト80の支軸83を挿通して取付けるために円筒状に形成されたアームレスト取付部材64と、アームレスト取付部材64に回動可能に設けられアームレスト80の支軸83の下端を支持するアームレスト支持部材65と、テーブル67の支軸68を挿通してテーブル67を取付けるために円筒状に形成されたテーブル取付部材66とをそれぞれ備えている。ここで、テーブル67は、四角形状に形成され、その四隅のうちの一つの隅付近に支軸68を設けたものである。テーブル67は、図6(a)に示すように、支軸68を座部10の右側のテーブル取付部材66に挿通して取付けてもよく、図6(b)に示すように、座部10の左側のテーブル取付部材66に挿通して取付けてもよい。このとき、支軸68を座部10の右側のテーブル取付部材66に取付ければ、テーブル67が患者2の腹部に寄った位置に配置され、支軸68を座部10の左側のテーブル取付部材66に取付ければ、テーブル67が患者2の腹部から離れた位置に配置されることとなる。このため、患者2の体型に合わせてテーブル67の位置を調節することが可能となる。なお、テーブル取付部材66の支軸68を取付けていない方は、点滴治療のときに灌注器を取付けた支柱を挿通して支持するのに用いることも可能である。また、支持体60は、図示は省略するが、後輪63の推進を完全に停止させるロック機構を備えている。
【0041】
穿刺台70は、患者介護車1に乗車した患者2の上肢3を支持するものであり、治療または検査のため上肢3に針を穿刺して留置した患者2の上肢3を支持するのに必要な広さを有している。具体的には、患者2が患者介護車1に乗車した状態で、手掌を上方ないし体幹方向30〜50度程度、好ましくは45度程度に向けても、患者2の上肢3の大部分が支持されるだけの広さであり、縦幅が450mm程度、横幅が300mm程度に形成されている。また、穿刺台70は、裏側に、円筒状に形成され支軸71を挿通する取付部材72と、取付部材72に挿通された支軸71を横側から押圧することで穿刺台70の位置を固定する固定ボルト73とを備えている。このように、穿刺台70は、円筒状の取付部材72に断面円形状の支軸71を挿通して支持されているため、支軸71を中心として回動することが可能である。また、穿刺台70は、固定ボルト73による支軸71の押圧を緩めれば、取付部材72を支軸71から外すことが可能であるため、背当部20に対して着脱することが可能である。ここで、支軸71は、支軸受け25に支持されており、一部が背当部20の側方に突出した使用状態と背当部20の側面より内側に収納された収納状態との間でスライド可能に設けられている。患者2がこの患者介護車1に乗車し、患者2の上肢3に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査を施行する際は、支軸71の一部を背当部20の側方へと突出した使用状態とし、その支軸71の背当部20から突出した部分に穿刺台70を支持させて、穿刺台70を患者2の上肢3を支持する使用状態(図4(a)参照)とするのである。また、背当部20を椅子状態とし移動する際など、患者2の上肢3を支持する必要がないときは、固定ボルト73による支軸71の押圧を緩め穿刺台70を支軸71から外して、支軸71を背当部20の内側に収納した収納状態とするのである。なお、支軸71から取外した穿刺台70は、図4(b)に示すように、背当部20の裏側に取付けて収納するようにしてもよい。
【0042】
なお、支軸71は、長手方向の中央に突起部71aを備えている。また、支軸受け25は、長手方向の中央付近と両端付近とに、支軸71の突起部71aと嵌合して支軸71のスライドを規制する切欠25a,25b,25cが設けられている。すなわち、支軸71が背当部20の内側に収納された収納状態では、支軸71の突起部71aが支軸受け25の中央付近の切欠25aと嵌合し、支軸71の一部が背当部20の側方へと突出した使用状態では、支軸71の突起部71aが支軸受け25の両端付近の切欠25b,25cのどちらかと嵌合することで、支軸71の横方向へのスライドを規制するのである。
【0043】
アームレスト80は、患者介護車1に乗車した患者2の肘掛または簡易的な穿刺台となるものであり、基台81と、基台81の一端に回動可能に支持され、基台81の上面に載置される折り畳み状態(図6(a)参照)および基台81の上面と略面一となる展開状態(図6(b)参照)に変位する変位台82と、変位台82を支持し、支持体60のアームレスト取付部材64に挿通されて取付けられる支軸83とを備えている。アームレスト80の支軸83は、アームレスト取付部材64に挿通されて下端面がアームレスト支持部材65の上面に載置されているが、アームレスト支持部材65を回動させて支軸83の下端面の支持を外すことにより、アームレスト80の高さを調節することが可能となる。なお、アームレスト取付部材64には図示省略の固定手段が設けられており、支軸83を固定してアームレスト80の高さを調節することが可能である。ここで、固定手段は、アームレスト取付部材64の側部に止めねじなどを設け、この止めねじにより支軸83を任意の位置で固定して、アームレスト80の高さを無段階的に調節するようにしたものであってもよく、また、支軸83にアームレスト支持部材65と嵌合する切欠を段階的に設けて、アームレスト80の高さを段階的に調節するようにしたものであってもよい。また、アームレスト80は、図2または図3に示すように、穿刺台70の一端がアームレスト80に支持されているので、アームレスト80の高さを調節することで穿刺台70の回動、つまり穿刺台70の角度の調節が可能となるのである。また、アームレスト80は、アームレスト取付部材64に対して着脱可能に設けられているため、患者介護車1に患者が乗降する際など状況に応じて適宜外すことが可能である。
【0044】
次に、本実施形態の患者介護車1の使用方法について説明する。患者介護車1は様々な状況下における使用方法がある。例えば、通常の車椅子などとほぼ同様に、病人、病弱者、および高齢者などを含む下肢の弱い患者2が移動する際の移動手段として使用可能である。このとき、小回りよく移動するために、患者介護車1を椅子状態とする方が好適である。また、穿刺台70を収納状態とするとともにアームレスト80の変位台82を折り畳み状態とする方が好適である。穿刺台70を収納状態とし、アームレスト80の変位台82を折り畳み状態とすれば、座部10、背当部20、下腿当部30、およびフットレスト40の横幅は、通常の車椅子などとほぼ同様であるため、病院・自宅などにおける通路・ドア・玄関などを楽に通ることが可能となる。なお、汚れなどがつくことを防止するために背当部クッション23、座部クッション13、および下腿当部クッション33の上にシーツなどを敷いて使用する方が好適である。また、寝たきりの患者2などをベッドなどから移乗させる場合は、患者介護車1をベッド状態としてベッドに併設し、アームレスト80を取外すか座部10の高さまで下げれば、移乗に伴う作業が行いやすくなる。
【0045】
また、患者介護車1は、患者2を静養させる手段としても使用可能である。患者介護車1は、車椅子などには設けられていない厚めの背当部クッション23、座部クッション13、下腿当部クッション33を備えているため、患者2が長時間に渡って乗車しても身体に苦痛を感じたりすることが少ない。また、患者介護車1は、椅子状態とベッド状態との間で変位可能であることから、患者2の要求に応じて、患者2を座った状態で休ませることもできるし、患者2を横にした状態で休ませることもできる。また、患者介護車1は、座部10および背当部20のみならず、下腿当部30およびフットレスト40が設けられていることから患者2の身体の大部分が支持されることとなり、これによっても苦痛を感じることが少なくやすらかに静養できる。
【0046】
また、患者介護車1は、患者2の上肢3に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査を施行する際に、据え置きのベッドなどに換えて患者2を支持する手段として使用可能である。患者2の上肢3に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査とは、具体的には、老廃物蓄積および水電解質異常を是正する透析治療、栄養分の補給、脱水症状の改善、または輸血などの目的で行われる点滴治療などが挙げられるが、透析治療の場合を例にとって説明すると、透析治療では、人工透析中に血液を体外に取り出して透析装置5のダイアライザーに供給し、ダイアライザーにて浄化された血液を再び体内に戻すために、上肢のシャント血管内に二本の透析針を穿刺して留置しておくのであるが、このとき、シャント血管からこれらの透析針が外れないように、またこれらの透析針が血管壁を損傷しないように、人工透析中は二時間から五時間程度もの間、透析針を留置してある上肢を、伸展させたままで、かつ手掌を上方ないし体幹方向約45度に向けた上で、不動の状態で横たえておかなければならない。背当部20は移動を考慮して設計されているため、患者2が上肢3を伸展させたままでかつ手掌を上方ないし体幹方向約45度に向けると、患者2の上肢3を支持することができない。そこで、図5に示すように、患者介護車1の穿刺台70を使用状態とすることにより、背当部20の側方に患者2の上肢を横たえておくスペースが広がることになり、透析針を留置した患者2の上肢3を伸展させたままでかつ手掌を上方ないし体幹方向約45度に向けても支持することが可能となるのである。なお、穿刺台70は、支軸71の一部を背当部20の左側の側方へと突出させることにより、図5の二点鎖線に示すように、背当部20の左側の側方に配設することも可能である。すなわち、支軸71は背当部20の左右どちらでも一部を突出させることが可能であり、これにより、穿刺台70を背当部20の左右どちらでも配設することが可能となるのである。
【0047】
また、このとき、穿刺台70は、支軸71に対して回動可能に取付けられていることから、患者2が患者2自身にとって最も安楽な上肢3の角度に対応させて、上肢3を穿刺台70に支持させることが可能となる。特に、透析治療を施行する場合、シャント血管内に透析針を留置した側の上肢3を伸展し、かつ手掌を上方ないし体幹方向約45度に向けるという人工透析に特有の姿勢であり、また、人工透析に要する時間が二時間から五時間程度と長時間に及ぶため、背当部20の背当面に対する穿刺台70の角度によって、上肢3をこの穿刺台70に支持させている側の肩の凝りによる患者2の苦痛が大幅に異なるが、このとき、上肢3を穿刺台70に支持させている側の肩が背当部20上に密着し、以って穿刺台70に置いた側の肩周辺の筋肉の緊張度が最小となるように穿刺台の角度を調節すれば、患者2の肩が凝ることがない。したがって、患者2自身にとって最も安楽な上肢3の状態を保つことが可能となり、長時間に渡っても肩が凝るなど苦痛を感じることなく、患者2が快適に治療または検査を受けることができるのである。
【0048】
また、穿刺台70が上肢3の支持角度を調節可能であれば、背当部20の傾斜状態にかかわらず、患者2の上肢3を最適な状態で支持することができる。つまり、穿刺台70が、背当部20の状態が座部10とともに略水平なベッド状態であるときか、座部10に対して上方に向けて略垂直な椅子状態であるときのどちらか一方を想定して患者2の上肢3を支持するように配設されていれば、背当部20が想定した状態以外であるとき、患者2の上肢3を最適な状態で支持することができないが、穿刺台70が上肢3の支持角度を調節可能に構成されていれば、背当部20が椅子状態、ベッド状態、または椅子状態とベッド状態との間で傾斜した状態のうちでいずれであっても、穿刺台70の角度を調節し、患者2の上肢3を最適な状態で支持することが可能となるのである。
【0049】
また、通常、透析治療は、図5に示すように、患者介護車1をベッド状態とし、患者2を仰向けに横にした状態で施行するが、図6(a)に示すように、患者介護車1を椅子状態として、患者2を座った状態で施行することも可能である。この場合も、穿刺台70によりアームレスト80よりも広いスペースを背当部20の側方に確保できるので、患者が快適に治療または検査を受けることができる。さらに、図6(b)に示すように、穿刺台70を収納状態とし、アームレスト80の変位台82を展開状態とすることで、アームレスト80を簡易的な穿刺台70として使用することも可能である。この場合、患者2自身が患者介護車1に乗車したままでも、アームレスト80の変位台82を展開状態とすることが可能であるため、穿刺台70を収納状態から使用状態にするよりも手間なく上肢3を支持するスペースを広げることができる。
【0050】
このように、本実施形態の患者介護車1は、通常の車椅子と同じように移動することができるとともに通常のベッドと同じように静養することができるのであるが、これらに加え、背当部20の側方に配設された穿刺台70により、上肢3に針を穿刺して留置する必要のある治療または検査を施行する際、針を留置してある患者2の上肢3を伸展させて横たえておくスペースが広がるため、上肢3と体幹との成す角度が制限されることなく、患者介護車1上で患者2が最も安楽な姿勢となることが可能となる。したがって、患者がこの患者介護車に乗車したまま治療または検査を受ければ、据え置きのベッドなどで治療または検査を受ける場合と異なり、移乗行為に伴う患者および医療従事者の負担を軽減できること、治療または検査を効率的に施行できること、および治療または検査を行う領域とは別の領域で清掃および布団・シーツ交換などができることなどの利点が享受できる上に、患者が治療または検査を快適に受けることができる。
【0051】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明した。しかし、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0052】
すなわち、上記実施形態の患者介護車1では、穿刺台70の大きさを縦幅450mm程度、横幅300mm程度に形成したが、穿刺台70の大きさは患者が患者介護車に乗車した状態で、手掌を上方ないし体幹方向30〜50度程度、好ましくは45度程度に向けても、患者の上肢の大部分が支持されるだけの広さを有していればよいので、縦幅が200mm以上、300mm以上、400mm以上、または500mm以上に形成され、横幅が60mm以上、100mm以上、200mm以上、または300mm以上に形成されているものであればよい。
【0053】
また、上記実施形態の患者介護車1では、穿刺台70の主な用途は、患者2の上肢3に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査、例えば、老廃物蓄積および水電解質異常を是正する透析治療、栄養分の補給、脱水症状の改善、または輸血などの目的で行われる点滴治療などにおいて、針を穿刺して留置した患者2の上肢3を支持することであるが、これ以外の治療または検査の際に用いることを排除するものではなく、例えば、血圧測定などの治療または検査に患者2の上肢3を支持することも可能で、その場合も同様の作用および効果を奏することができる。
【0054】
また、上記実施形態の患者介護車1では、介添者が推進させる構成を備えたものを示した。しかし、この構成に特に限定されるものではなく、通常の車椅子などと同様に後輪63の径を大きくし、患者2が自分で推進させる構成を備えたものであってよく、または、電動モータなどの動力源により推進させる構成を備えたものであってもよい。
【0055】
また、上記実施形態の患者介護車1では、下腿当部30とフットレスト40とを備えたものを示した。しかし、この構成に特に限定されるものではなく、下腿当部30とフットレスト40とは省略してもよい。その場合、患者介護車1の構成を簡易にすることが可能となり、工業的実施に有利となる。
【0056】
また、上記実施形態の患者介護車1では、一部が背当部20の側方に突出した使用状態と背当部20の内側に収納された収納状態との間でスライド可能な支軸71に穿刺台70が回動可能であるとともに着脱可能に支持されているものを示した。しかし、穿刺台70の構成はこれに特に限定されるものではなく、例えば、背当部20に対して雄雌の組み合わせによって着脱自在としたものなどでもよい。このとき、背当部20側に雌部材を設け、穿刺台側に雄部材を設けるようにすることが好ましい。このようにすれば、穿刺台を取外せば、背当部20の側方へと突出する部材がなくなるためである。また、穿刺台70は、背当部20の側部に沿ってスライド可能に設けられていてもよい。穿刺台70が背当部20の側部にスライド可能であれば、患者介護車に乗車した患者2の上肢3の位置に、穿刺台70の位置を合わせることが可能となり、身長の高低にかかわらず、穿刺台70に患者2の上肢3を支持させることができる。また、穿刺台が使用状態と収納状態との間でスライド可能に設けられたものであってもよい。例えば、使用状態と収納状態との間でスライド可能に背当部20に支持され、外枠を形成するフレームと、長さの異なる一対の平行リンクを介してフレームに支持された台本体とを備えた穿刺台であって、平行リンクの一方に段階的に切欠などを設けることにより、平行リンクの一方のフレームからの突出長さを調節できるようにして、台本体の角度を調節して上肢の支持角度を調節するようにしたものなどが挙げられる。また、穿刺台が背当部20の側部に長手方向に沿って設けられた軸に回動可能に軸支され、背当部20の側方へ展開することで使用状態となり、背当部20の裏側へ折り畳むことで収納状態となるように設けられたもの、または、収納状態で背当部20の一部を構成するように設けられるとともに一端が背当部20に回動可能に軸支され、回動することで一部が背当部20の側方に配設されて使用状態となるものなどであってもよい。
【0057】
また、上記実施形態の患者介護車1では、変位台82を基台81の一端に回動可能に取付け、変位台82を回動させることにより折り畳み状態および展開状態に変位させる構成を備えたアームレスト80を示した。しかし、アームレストは、これに特に限定されるものではなく、変位台と基台とを平行リンクにより連結して、変位台を横方向に移動させるとともに基台の上面と略面一となる位置まで下方向に移動させることにより折り畳み状態および展開状態に変位させる構成を備えたものであってもよい。
【0058】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る患者介護車は、患者がこの患者介護車に乗車したまま治療または検査を受ければ、据え置きのベッドなどで治療または検査を受ける場合と異なり、移乗行為に伴う患者および医療従事者の負担を軽減できること、治療または検査を効率的に施行できること、および治療または検査を行う領域とは別の領域で清掃および布団・シーツ交換などができることなどの利点が享受できる上に、治療または検査を患者が快適に受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である患者介護車の椅子状態での構成を示す斜視図である。
【図2】患者介護車の椅子状態での構成を示す側面図である。
【図3】患者介護車のベッド状態での構成を示す側面図である。
【図4】(a)患者介護車の椅子状態における穿刺台の使用状態を示す背面図、(b)患者介護車のベッド状態における穿刺台の収納状態を示す背面図である。
【図5】患者介護車のベッド状態での使用の形態を説明する平面図である。
【図6】(a)患者介護車の椅子状態での穿刺台の使用の形態を説明する平面図、(b)患者介護車の椅子状態でのアームレストの使用の形態を説明する平面図である。
【符号の説明】
1 患者介護車
2 患者
3 上肢
4 床面
10 座部
20 背当部
28 背当支持部材
60 支持体
62 前輪(車輪)
63 後輪(車輪)
70 穿刺台
80 アームレスト
【発明の属する技術分野】
本発明は、患者介護車に関するものである。特に、患者の上肢に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査の際に主に用いられる患者介護車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、病人、病弱者、および高齢者などを含む下肢の弱い患者が移動する際、腰掛として機能する座部と、背もたれとして機能する背当部と、多軌道な移動が可能な左右一対の車輪とを備え、患者自身、介添者、または電動モータなどの動力源によって推進される車椅子が広く用いられている。また、このような車椅子に類似するものとして、背当部が座部に対して略垂直な椅子状態と座部とともに略水平なベッド状態との間で回動可能に設けられ、移動機能はもとより患者を横にして休ませることが可能な患者介護車なども提供されている。
【0003】
このような車椅子・患者介護車は、単に移動に用いる以外にも様々な状況下における用途があるが、例えば、患者に治療または検査を施行する際に、据え置きのベッドを利用せず、患者を車椅子・患者介護車に乗車させたまま治療または検査を施行すれば、次に挙げるような利点を享受できる。それは、下肢の弱い患者のベッドなどへの移乗を省略できるため、移乗行為に伴う患者および医療従事者の負担を軽減できること、患者が治療または検査を施行した領域から速やかに離れることが可能となり、治療または検査行為を滞留させることなく、次々に患者を受け入れて治療または検査を効率的に施行できること、さらに、据え置きのベッドでは治療または検査を行う領域でベッドの清掃および布団・シーツ交換などを行わなければならないが、車椅子・患者介護車であれば治療または検査を行う領域とは別の領域で清掃および布団・シーツ交換などが可能となることなどである。
【0004】
なお、このような車椅子・患者介護車は、一般的なものである。本出願人は、これを特定する文献を特には知見していない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような車椅子・患者介護車を治療または検査の際に用いると、上述のような利点が享受できる一方で、次に挙げる不都合があった。それは、患者の上肢に針を穿刺するとともに留置する必要がある治療または検査、例えば、老廃物蓄積および水電解質異常を是正する透析治療、栄養分の補給、脱水症状の改善、または輸血などの目的で行われる点滴治療などを施行する場合に、このような車椅子・患者介護車に患者を乗車させたままで治療または検査を施行すると、患者が針を留置した上肢を安楽な状態で保つことができないということである。
【0006】
特に、透析治療では、人工透析中に血液を体外に取り出して透析装置のダイアライザーに供給し、ダイアライザーにて浄化された血液を再び体内に戻すために、上肢のシャント血管内に二本の透析針を穿刺して留置しておくのであるが、シャント血管からこれらの透析針が外れないように、またこれらの透析針が血管壁を損傷しないように、人工透析中は二時間から五時間程度もの間、透析針を留置してある上肢を、伸展させたままで、かつ手掌を上方ないし体幹方向約45度に向けた上で、不動の状態で横たえておかなければならない。
【0007】
このとき、患者は、姿勢を座った状態にすることも一時的には可能であるが、ほとんどの間仰向けに横になった状態で人工透析を施行されるので、背当部が傾動しない通常の車椅子を利用することはそもそも無理であるし、背当部が傾動してベッドを兼用する患者介護車であっても、移動を考慮してその横幅が通常の据え置きの大型ベッドよりも狭いため、透析針を留置してある上肢を伸展させて横たえておくベッド上のスペースが制限され、以って透析針を留置してある上肢と体幹の長軸との成す角度も制限されるのであった。そのため、患者は、人工透析中、透析針を留置したうえで伸展させてある上肢を、安楽な状態でベッド上に横たえておくことができず、快適ではない状態で透析を受けなければならなかった。
【0008】
本発明は上記の実情を鑑み、患者の上肢に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査を施行する際に、患者の安楽を保つことが可能な患者介護車の提供を課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる患者介護車は、「座部と、該座部から延設され、該座部に対して上方に向けて略垂直となる椅子状態と該座部とともに略水平となるベッド状態との間で回動可能な背当部と、床面に対して移動自在な車輪を有し、前記座部を支持する支持体と、治療または検査のため上肢に針を穿刺して留置した患者の該上肢を支持するのに必要な広さを有し、前記背当部の側方に配設される穿刺台とを備えること」を、上述の課題を解決するための主要な手段とする。
【0010】
ここで、穿刺台の「治療または検査のため上肢に針を穿刺して留置した患者の上肢を支持するのに必要な広さ」とは、具体的には、患者が患者介護車に乗車した状態で、手掌を上方ないし体幹方向30〜50度程度、好ましくは45度程度に向けても、患者の上肢の大部分が支持されるだけの広さのことであり、縦幅が200mm以上、300mm以上、400mm以上、または500mm以上に形成され、横幅が60mm以上、100mm以上、200mm以上、または300mm以上に形成されているものであり、通常の車椅子・椅子などに設けられている横幅が40〜50mm程度に形成された肘掛などとは異なるものである。
【0011】
また、ここで、穿刺台の主な用途は、患者の上肢に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査、例えば、老廃物蓄積および水電解質異常を是正する透析治療、栄養分の補給、脱水症状の改善、または輸血などの目的で行われる点滴治療などにおいて、針を穿刺して留置した患者の上肢を支持することであるが、これ以外の治療または検査の際に用いることを排除するものではなく、例えば、血圧測定などの治療または検査に患者の上肢を支持することも可能で、その場合も同様の作用および効果を奏することができる。
【0012】
また、ここで、支持体に設けられる車輪は、上述の用途上、介添者が推進させる構成を備えたものであることが好ましいが、患者が自分で推進させる構成を備えたもの、または、電動モータなどの動力源により推進させる構成を備えたものであってもよい。
【0013】
本発明に係る患者介護車では、患者が乗車すると、通常の車椅子などと同様、座部が腰掛として機能し、背当部が背もたれとして機能し、また、座部を支持する支持体の車輪によって乗車したまま床面を移動することが可能となる。また、背当部は、患者が座った状態で支持する椅子状態と、患者が横になった状態で支持するベッド状態との間で回動可能であるため、例えば、移動する際などは背当部を椅子状態とし、治療、検査、または静養を行う際などには背当部をベッド状態とするなど、状況に応じて患者の姿勢を変化させることが可能となる。また、背当部の側方に配設された穿刺台により、上肢に針を穿刺して留置する必要のある治療または検査を施行する際、針を留置してある患者の上肢を伸展させて横たえておくスペースが広がるため、上肢と体幹との成す角度が制限されることなく、患者介護車上で患者が最も安楽な姿勢となることが可能となる。
【0014】
したがって、患者がこの患者介護車に乗車したまま治療または検査を受ければ、据え置きのベッドなどで治療または検査を受ける場合と異なり、移乗行為に伴う患者および医療従事者の負担を軽減できること、治療または検査を効率的に施行できること、および治療または検査を行う領域とは別の領域で清掃および布団・シーツ交換などができることなどの利点が享受できる上に、患者が治療または検査を快適に受けることができる。
【0015】
上記患者介護車を、「前記穿刺台は、上肢の支持角度を調節可能に構成されている」ものとしてもよい。
【0016】
ここで、穿刺台が上肢の支持角度を調節可能な具体的な構成を示す。例えば、背当部に支持されたフレームと、一端側がフレームに回動可能に支持されるとともに他端側がフレームから段階的に突出可能なアームを介して支持された台本体とを備え、アームにより台本体の角度を調節して上肢の支持角度を調節するものなど挙げられる。または、背当部に側方へと一部が突出する支軸と、その支軸の背当部から突出した部分に回動可能に取付けられた台本体とを備え、支軸に対して台本体を回動させることにより、台本体の角度を調節して上肢の支持角度を調節するものなどであってもよい。その場合、支軸とは別に背当部の側方へと突出する軸を適宜設けて、台本体の回動を規制するようにしてもよく、台本体に支軸との位置を固定する固定手段を設けて、台本体の回動を規制するようにしてもよい。
【0017】
このようにすれば、患者がこの患者介護車に乗車し、患者の上肢に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査を施行する際、穿刺台に針を留置した患者の上肢が支持されるのであるが、患者が患者自身にとって最も安楽な上肢の角度に対応させて、上肢を穿刺台に支持させることが可能となる。特に、透析治療を施行する場合、シャント血管内に透析針を留置した側の上肢を伸展し、かつ手掌を上方ないし体幹方向約45度に向けるという人工透析に特有の姿勢であり、また、人工透析に要する時間が二時間から五時間程度と長時間に及ぶため、背当部の背当面に対する穿刺台の角度によって、上肢をこの穿刺台に支持させている側の肩の凝りによる患者の苦痛が大幅に異なるが、このとき、上肢を穿刺台に支持させている側の肩が背当部上に密着し、以って穿刺台に置いた側の肩周辺の筋肉の緊張度が最小となるように穿刺台の角度を調節すれば、患者の肩が凝ることがない。したがって、患者自身にとって最も安楽な上肢の状態を保つことが可能となり、長時間に渡っても肩が凝るなど苦痛を感じることなく、患者が快適に治療または検査を受けることができる。
【0018】
また、穿刺台が上肢の支持角度を調節可能であれば、背当部の傾斜状態にかかわらず、患者の上肢を最適な状態で支持することができる。つまり、穿刺台が、背当部の状態が座部とともに略水平なベッド状態であるときか、座部に対して上方に向けて略垂直な椅子状態であるときのどちらか一方を想定して患者の上肢を支持するように配設されていれば、背当部が想定した状態以外であるとき、患者の上肢を最適な状態で支持することができないが、穿刺台が上肢の支持角度を調節可能に構成されていれば、背当部が椅子状態、ベッド状態、または椅子状態とベッド状態との間で傾斜した状態のうちでいずれであっても、穿刺台の角度を調節し、患者の上肢を最適な状態で支持することが可能となるのである。
【0019】
上記患者介護車を、「前記穿刺台は、前記背当部に対して着脱自在に配設される」ものとしてもよい。
【0020】
ここで、穿刺台が背当部に対して着脱自在に配設されている具体的な構成としては、例えば、雄雌の組み合わせによって着脱自在としたものなどが挙げられる。このとき、背当部側に雌部材を設け、穿刺台側に雄部材を設けるようにすることが好ましい。このようにすれば、穿刺台を取外せば、背当部の側方へと突出する部材がなくなるためである。また、これ以外の構成であってもよく、一部が背当部の側方に突出した状態と背当部の側面より内側に収納された状態との間でスライド可能な支軸を背当部にさらに備え、穿刺台がその支軸に回動可能であるとともに着脱可能に支持されているものでもよい。これは、患者の上肢に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査を施行する際など穿刺台が必要なときは、支軸を一部が背当部から突出した状態とするとともにその突出した部分に穿刺台を支持させることにより、穿刺台を患者の上肢を支持することが可能な使用状態とするものであり、また、背当部を椅子状態として移動する際など穿刺台が不必要なときは、穿刺台を支軸から取外し、支軸を背当部の側面より内側に収納した状態とするものである。なお、取外した穿刺台は、背当部の側面より内側に収納した支軸に係止して収納してもよい。また、このような構成であれば、支軸を中心として穿刺台を回動させることも可能であるため、上肢の支持角度を調節することも可能になる。このため、背当部に対して着脱自在に配設されるとともに、上肢の支持角度を調節可能な構成を、支軸を用いた比較的簡単な構成で実現することができるので、工業的実施に際して最も有利である。
【0021】
このようにすれば、治療または検査を行うとき以外の穿刺台を必要としないときは、穿刺台を取外すことが可能となり、患者介護車全体の横幅を狭くして、通常の車椅子などとほぼ同様の横幅にすることが可能となる。したがって、病院・自宅などにおける通路・ドア・玄関などを椅子状態で移動する際になどに有利である。
【0022】
上記患者介護車を、「前記穿刺台は、前記背当部の側方に配設される使用状態と前記背当部の側面より内側に配設される収納状態とに変位可能に構成されている」ものとしてもよい。
【0023】
ここで、穿刺台が使用状態と収納状態とに変位可能な具体的な構成としては、例えば、穿刺台が使用状態と収納状態との間でスライド可能に設けられたもの、穿刺台が背当部の側部に長手方向に沿って設けられた軸に回動可能に軸支され、背当部の側方へ展開することで使用状態となり、背当部の裏側へ折り畳むことで収納状態となるように設けられたもの、または、収納状態で背当部の一部を構成するように設けられるとともに一端が背当部に回動可能に軸支され、回動することで一部が背当部の側方に配設されて使用状態となるものなどが挙げられる。
【0024】
このようにすれば、治療または検査を行うとき以外の穿刺台を必要としないときは、穿刺台を背当部の内側に収納した収納状態とすれば、患者介護車全体の横幅を狭くして、通常の車椅子などとほぼ同様の横幅にすることが可能となる。したがって、病院・自宅などにおける通路・ドア・玄関などを椅子状態で移動する際になどに有利である。
【0025】
上記患者介護車を、「基台と、該基台に変位可能に支持され、前記基台の上面に載置される折り畳み状態および前記基台の上面と略面一となる展開状態に変位する変位台とを有するアームレストをさらに備える」ものとしてもよい。
【0026】
ここで、アームレストは、変位台を基台の一端に回動可能に取付けることにより、変位台を回動させることにより折り畳み状態および展開状態に変位させる構成を備えたものであってもよく、また、変位台と基台とを平行リンクにより連結して、変位台を横方向に移動させるとともに基台の上面と略面一となる位置まで下方向に移動させることにより折り畳み状態および展開状態に変位させる構成を備えたものであってもよい。
【0027】
また、アームレストは、高さを調節可能に設けられていることが好ましい。これにより、患者の身長の高低にかかわらず、アームレストを利用できるし、また、穿刺台を支軸で回動可能に支持した構成を備えたものの場合、アームレストにより穿刺台の一端を支持すれば、アームレストの高さを調節することで穿刺台の回動、つまり穿刺台の角度の調節が可能となる。また、アームレストを座部と同じ高さまで下げることにより、患者が患者介護車へ乗降しやすいようにすることもできる。さらに、アームレストを着脱可能に設けて、状況に応じてアームレストを適宜外して、利便性を高めてもよい。
【0028】
このようにすれば、背当部が椅子状態である場合、アームレストの変位台を折り畳み状態とすれば、通常の車椅子などに設けられている肘掛と同様に機能して、患者介護車に乗車した患者が肘をかけることが可能となり、また、アームレストの変位台を展開状態とすれば、治療または検査のため上肢に針を穿刺して留置した患者の上肢を支持するのに必要な広さを有した簡易的な穿刺台として機能して、針を留置した患者の上肢を支持することが可能となる。したがって、背当部が椅子状態である場合にアームレストの変位台を折り畳み状態とすれば、患者介護車全体の横幅が狭くなり、通常の車椅子などとほぼ同様の横幅にすることが可能となり、病院・自宅などにおける通路・ドア・玄関などを椅子状態で移動する際になどに有利であるし、また、背当部が椅子状態である場合にアームレストの変位台を展開状態とすれば、上肢に針を穿刺して留置する必要のある治療または検査を施行する際、針を留置してある患者の上肢を伸展させて横たえておくスペースが通常の肘掛よりも広がるため、上肢と体幹との成す角度が制限されることなく、患者介護車上で患者が最も安楽な姿勢となることが可能となり、患者が治療または検査を快適に受けることができる。
【0029】
上記患者介護車を、「前記背当部が前記ベッド状態のとき、前記背当部を床面に支持する背当支持部材をさらに備える」ものとしてもよい。
【0030】
このようにすれば、患者介護車はベッド状態で、背当部が背当支持部材により支持されることになる。患者介護車に患者を乗せてベッド状態とすると、患者の動きによっては重心が移動して患者介護車が後方に倒れる可能性があるが、背当支持部材を設けたことにより、重心が移動しても安定が保たれ、患者介護車が後方に倒れることがない。したがって、ベッド状態で患者の安全を確実に確保できる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態である患者介護車1について、図1から図6までに基づき説明する。患者介護車1は、通常の車椅子と同様の移動機能に加え、患者2の上肢3に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査、例えば、老廃物蓄積および水電解質異常を是正する透析治療、栄養分の補給、脱水症状の改善、または輸血などの目的で行われる点滴治療などを施行する場合に、患者2を乗車させたままで治療または検査を施行することを主な用途とするものである。患者介護車1は、図1に示すように、座部10、背当部20、下腿当部30、フットレスト40、支持体60、穿刺台70、およびアームレスト80を主に備えている。
【0032】
座部10は、患者介護車1に乗車した患者2の腰部・臀部などを主に支持するものであり、外枠を形成する金属製の座部フレーム11と、座部フレーム11に端部を固定されて座部フレーム11の内側に張設され、所定の強度を有し非伸縮性の生地を素材として使用した座部シート12と、座部シート12上に面ファスナなどを介して着脱可能に配設された座部クッション13とを主に備えている。また、座部10は、座部フレーム11と座部シート12の端部とに係止孔をそれぞれ穿設し、その係止孔にボルトを貫通させて締結することにより座部フレーム11と座部シート12の端部とを固定している。
【0033】
背当部20は、患者介護車1に乗車した患者2の背中・頭などを主に支持するものであり、外枠を形成する金属製の背当部フレーム21と、背当部フレーム21に端部を固定されて背当部フレーム21の内側に張設され、所定の強度を有する非伸縮性の生地を素材として使用した背当部シート22と、背当部シート22上に面ファスナなどを介して着脱可能に配設された背当部クッション23とを主に備えている。また、背当部20は、背当部フレーム21が座部フレーム11に回動可能に接続されており、座部10に対して上方に向けて略垂直となる椅子状態(図2参照)と、座部10とともに略水平となるベッド状態(図3参照)との間で変位可能に設けられている。また、背当部20は、図示省略の固定手段により座部10に対する傾斜位置を、椅子状態とベッド状態との間で無段階的に固定することができる。また、背当部20は、背当部フレーム21が図示省略のリンク機構に接続されており、背当部20の椅子状態とベッド状態との変化に下腿当部30およびフットレスト40が連動するように設けられている。
【0034】
また、背当部20は、背当部フレーム21と背当部シート22の端部とにそれぞれ係止孔を穿設し、その係止孔にボルトなどを貫通させて締結することにより背当部フレーム21と背当部シート22の端部とを固定している。また、背当部20は、背当部クッション23において患者介護車1に乗車した患者2の頭と相対する部分に面ファスナなどを介して着脱可能に設けられた枕24と、後述の穿刺台70を支持する支軸71を一部が背当部20の側方に突出した使用状態と背当部20の側面より内側に収納された収納状態との間でスライド可能に支持する支軸受け25(図4(a)参照)と、医療従事者または介添者が患者介護車1を推進する際に利用する取手部26とを備えている。なお、取手部26には、図示省略のブレーキ機構を操作する操作部27が併設されており、医療従事者または介添者が患者介護車1の推進を適宜止めることが可能である。
【0035】
さらに、背当部20は、横設された背当部フレーム21に回動可能に設けられた背当支持部材28を備えている。背当支持部材28は、図3に示すように、背当部20がベッド状態のとき、背当部20に対して略垂直となり、背当部20を床面4に支持するものである。患者介護車1に患者2を乗せてベッド状態とすると、患者2の動きによっては重心が移動して患者介護車1が後方に倒れる可能性があるが、背当支持部材28を設けたことにより、重心が移動しても安定が保たれ、患者介護車1が後方に倒れることがない。また、背当支持部材28は、背当部フレーム21との接続箇所に、背当部フレームに設けられた支持片に支持される軸を貫通させる貫通孔と、背当部フレームに当接する当接片とを備え、この構成により、背当部フレームに回動可能に取付けられている。なお、背当部20が椅子状態のときは、図2に示すように、背当支持部材28を背当部20と平行になるように回動させて収納すれば移動に際して有利である。
【0036】
ここで、座部10と背当部20との間には、連結部材29が配設されている。連結部材29は、適度な伸縮性を有する部材で形成されており、一端が座部10の座部フレーム11に固定され、他端が背当部20の背当部フレーム21に固定されている。これにより、座部10と背当部20とが連結されて間にできる隙間が連結部材29によって少なくなり、座部クッション13または背当部クッション23の一部がこの隙間に陥没する可能性が少なくなる。特に、背当部20をベッド状態としたとき、座部10と背当部20との間の隙間に支持するものがなく座部クッション13または背当部クッション23の一部が陥没していると、患者2が患者介護車1上でやすらかにすごすことができないが、この連結部材29を設けたことにより、座部10と背当部20との間にできる隙間においても座部クッション13または背当部クッション23が支持されるので、陥没する部分がなくなり、患者介護車1上で患者2の安楽を確保できる。なお、連結部材29は、座部シート12および背当部シート22を連結するものでもよいし、座部シート12および背当部シート22に一体としたものでもよい。
【0037】
下腿当部30は、患者介護車1に乗車した患者2の下腿(膝から足までの部分)を主に支持するものであり、外枠を形成する金属製の下腿当部フレーム31と、下腿当部フレーム31に端部を固定されて下腿当部フレーム31の内側に張設され、所定の強度を有する非伸縮性の生地を素材として使用した下腿当部シート32と、下腿当部シート32上に面ファスナなどを介して着脱可能に配設された下腿当部クッション33とを主に備えている。また、下腿当部30は、下腿当部フレーム31が座部フレーム11に回動可能に接続されており、座部10に対して下方に向けて略垂直となる椅子状態(図2参照)と、座部10とともに略水平となるベッド状態(図3参照)との間で変位可能に設けられている。また、下腿当部30は、下腿当部フレーム31が図示省略のリンク機構に接続されており、背当部20の椅子状態とベッド状態との変化に連動して、椅子状態とベッド状態とに変化するように設けられている。また、下腿当部30は、下腿当部フレーム31と下腿当部シート32の端部とにそれぞれ係止孔を穿設し、その係止孔にボルトなどを貫通させて締結することで下腿当部フレーム31と下腿当部シート32の端部と固定している。
【0038】
フットレスト40は、患者介護車1に乗車した患者2の足を主に支持するものであり、外枠を形成する金属製のフットレストフレーム41と、フットレストフレーム41の内側に配設された板部材42とを主に備えている。また、フットレスト40は、フットレストフレーム41が下腿当部フレーム31に回動可能に接続されており、下腿当部30に対して略垂直となる椅子状態(図2参照)と、背当部20、座部10、および下腿当部30とともに略水平となるベッド状態(図3参照)と、下腿当部30に対して略平行となるように折り畳まれる収納状態との間で変位可能に設けられている。また、フットレスト40は、フットレストフレーム41が図示省略のリンク機構に接続されており、背当部20および下腿当部30の椅子状態とベッド状態との変化に連動して、椅子状態とベッド状態とに変化するように設けられている。
【0039】
ここで、座部10、背当部20、下腿当部30、およびフットレスト40の横幅は、通常の車椅子などとほぼ同様に、病院・自宅などにおける通路・ドア・玄関などを楽に通ることができる程度のものとしてある。
【0040】
支持体60は、座部10を床面4に移動自在に支持するものであり、座部フレーム11を主に支持し外郭を形成する金属製の支持体フレーム61と、床面4に対して移動自在な左右一対の前輪62および後輪63とを主に備えている。前輪62は、支持体フレーム61に水平方向に回動可能に取付けられており、この前輪62により患者介護車1の多軌道な移動が可能となる。後輪63は、背当部20が椅子状態であるときに背当部20よりうしろに位置するように設けられている(図2参照)。これは、背当部20がベッド状態となり、患者介護車1全体の重心がうしろにずれても、患者介護車1が後方へと倒れないようにするためである。この他、支持体60は、座部10の両側に、後述のアームレスト80の支軸83を挿通して取付けるために円筒状に形成されたアームレスト取付部材64と、アームレスト取付部材64に回動可能に設けられアームレスト80の支軸83の下端を支持するアームレスト支持部材65と、テーブル67の支軸68を挿通してテーブル67を取付けるために円筒状に形成されたテーブル取付部材66とをそれぞれ備えている。ここで、テーブル67は、四角形状に形成され、その四隅のうちの一つの隅付近に支軸68を設けたものである。テーブル67は、図6(a)に示すように、支軸68を座部10の右側のテーブル取付部材66に挿通して取付けてもよく、図6(b)に示すように、座部10の左側のテーブル取付部材66に挿通して取付けてもよい。このとき、支軸68を座部10の右側のテーブル取付部材66に取付ければ、テーブル67が患者2の腹部に寄った位置に配置され、支軸68を座部10の左側のテーブル取付部材66に取付ければ、テーブル67が患者2の腹部から離れた位置に配置されることとなる。このため、患者2の体型に合わせてテーブル67の位置を調節することが可能となる。なお、テーブル取付部材66の支軸68を取付けていない方は、点滴治療のときに灌注器を取付けた支柱を挿通して支持するのに用いることも可能である。また、支持体60は、図示は省略するが、後輪63の推進を完全に停止させるロック機構を備えている。
【0041】
穿刺台70は、患者介護車1に乗車した患者2の上肢3を支持するものであり、治療または検査のため上肢3に針を穿刺して留置した患者2の上肢3を支持するのに必要な広さを有している。具体的には、患者2が患者介護車1に乗車した状態で、手掌を上方ないし体幹方向30〜50度程度、好ましくは45度程度に向けても、患者2の上肢3の大部分が支持されるだけの広さであり、縦幅が450mm程度、横幅が300mm程度に形成されている。また、穿刺台70は、裏側に、円筒状に形成され支軸71を挿通する取付部材72と、取付部材72に挿通された支軸71を横側から押圧することで穿刺台70の位置を固定する固定ボルト73とを備えている。このように、穿刺台70は、円筒状の取付部材72に断面円形状の支軸71を挿通して支持されているため、支軸71を中心として回動することが可能である。また、穿刺台70は、固定ボルト73による支軸71の押圧を緩めれば、取付部材72を支軸71から外すことが可能であるため、背当部20に対して着脱することが可能である。ここで、支軸71は、支軸受け25に支持されており、一部が背当部20の側方に突出した使用状態と背当部20の側面より内側に収納された収納状態との間でスライド可能に設けられている。患者2がこの患者介護車1に乗車し、患者2の上肢3に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査を施行する際は、支軸71の一部を背当部20の側方へと突出した使用状態とし、その支軸71の背当部20から突出した部分に穿刺台70を支持させて、穿刺台70を患者2の上肢3を支持する使用状態(図4(a)参照)とするのである。また、背当部20を椅子状態とし移動する際など、患者2の上肢3を支持する必要がないときは、固定ボルト73による支軸71の押圧を緩め穿刺台70を支軸71から外して、支軸71を背当部20の内側に収納した収納状態とするのである。なお、支軸71から取外した穿刺台70は、図4(b)に示すように、背当部20の裏側に取付けて収納するようにしてもよい。
【0042】
なお、支軸71は、長手方向の中央に突起部71aを備えている。また、支軸受け25は、長手方向の中央付近と両端付近とに、支軸71の突起部71aと嵌合して支軸71のスライドを規制する切欠25a,25b,25cが設けられている。すなわち、支軸71が背当部20の内側に収納された収納状態では、支軸71の突起部71aが支軸受け25の中央付近の切欠25aと嵌合し、支軸71の一部が背当部20の側方へと突出した使用状態では、支軸71の突起部71aが支軸受け25の両端付近の切欠25b,25cのどちらかと嵌合することで、支軸71の横方向へのスライドを規制するのである。
【0043】
アームレスト80は、患者介護車1に乗車した患者2の肘掛または簡易的な穿刺台となるものであり、基台81と、基台81の一端に回動可能に支持され、基台81の上面に載置される折り畳み状態(図6(a)参照)および基台81の上面と略面一となる展開状態(図6(b)参照)に変位する変位台82と、変位台82を支持し、支持体60のアームレスト取付部材64に挿通されて取付けられる支軸83とを備えている。アームレスト80の支軸83は、アームレスト取付部材64に挿通されて下端面がアームレスト支持部材65の上面に載置されているが、アームレスト支持部材65を回動させて支軸83の下端面の支持を外すことにより、アームレスト80の高さを調節することが可能となる。なお、アームレスト取付部材64には図示省略の固定手段が設けられており、支軸83を固定してアームレスト80の高さを調節することが可能である。ここで、固定手段は、アームレスト取付部材64の側部に止めねじなどを設け、この止めねじにより支軸83を任意の位置で固定して、アームレスト80の高さを無段階的に調節するようにしたものであってもよく、また、支軸83にアームレスト支持部材65と嵌合する切欠を段階的に設けて、アームレスト80の高さを段階的に調節するようにしたものであってもよい。また、アームレスト80は、図2または図3に示すように、穿刺台70の一端がアームレスト80に支持されているので、アームレスト80の高さを調節することで穿刺台70の回動、つまり穿刺台70の角度の調節が可能となるのである。また、アームレスト80は、アームレスト取付部材64に対して着脱可能に設けられているため、患者介護車1に患者が乗降する際など状況に応じて適宜外すことが可能である。
【0044】
次に、本実施形態の患者介護車1の使用方法について説明する。患者介護車1は様々な状況下における使用方法がある。例えば、通常の車椅子などとほぼ同様に、病人、病弱者、および高齢者などを含む下肢の弱い患者2が移動する際の移動手段として使用可能である。このとき、小回りよく移動するために、患者介護車1を椅子状態とする方が好適である。また、穿刺台70を収納状態とするとともにアームレスト80の変位台82を折り畳み状態とする方が好適である。穿刺台70を収納状態とし、アームレスト80の変位台82を折り畳み状態とすれば、座部10、背当部20、下腿当部30、およびフットレスト40の横幅は、通常の車椅子などとほぼ同様であるため、病院・自宅などにおける通路・ドア・玄関などを楽に通ることが可能となる。なお、汚れなどがつくことを防止するために背当部クッション23、座部クッション13、および下腿当部クッション33の上にシーツなどを敷いて使用する方が好適である。また、寝たきりの患者2などをベッドなどから移乗させる場合は、患者介護車1をベッド状態としてベッドに併設し、アームレスト80を取外すか座部10の高さまで下げれば、移乗に伴う作業が行いやすくなる。
【0045】
また、患者介護車1は、患者2を静養させる手段としても使用可能である。患者介護車1は、車椅子などには設けられていない厚めの背当部クッション23、座部クッション13、下腿当部クッション33を備えているため、患者2が長時間に渡って乗車しても身体に苦痛を感じたりすることが少ない。また、患者介護車1は、椅子状態とベッド状態との間で変位可能であることから、患者2の要求に応じて、患者2を座った状態で休ませることもできるし、患者2を横にした状態で休ませることもできる。また、患者介護車1は、座部10および背当部20のみならず、下腿当部30およびフットレスト40が設けられていることから患者2の身体の大部分が支持されることとなり、これによっても苦痛を感じることが少なくやすらかに静養できる。
【0046】
また、患者介護車1は、患者2の上肢3に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査を施行する際に、据え置きのベッドなどに換えて患者2を支持する手段として使用可能である。患者2の上肢3に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査とは、具体的には、老廃物蓄積および水電解質異常を是正する透析治療、栄養分の補給、脱水症状の改善、または輸血などの目的で行われる点滴治療などが挙げられるが、透析治療の場合を例にとって説明すると、透析治療では、人工透析中に血液を体外に取り出して透析装置5のダイアライザーに供給し、ダイアライザーにて浄化された血液を再び体内に戻すために、上肢のシャント血管内に二本の透析針を穿刺して留置しておくのであるが、このとき、シャント血管からこれらの透析針が外れないように、またこれらの透析針が血管壁を損傷しないように、人工透析中は二時間から五時間程度もの間、透析針を留置してある上肢を、伸展させたままで、かつ手掌を上方ないし体幹方向約45度に向けた上で、不動の状態で横たえておかなければならない。背当部20は移動を考慮して設計されているため、患者2が上肢3を伸展させたままでかつ手掌を上方ないし体幹方向約45度に向けると、患者2の上肢3を支持することができない。そこで、図5に示すように、患者介護車1の穿刺台70を使用状態とすることにより、背当部20の側方に患者2の上肢を横たえておくスペースが広がることになり、透析針を留置した患者2の上肢3を伸展させたままでかつ手掌を上方ないし体幹方向約45度に向けても支持することが可能となるのである。なお、穿刺台70は、支軸71の一部を背当部20の左側の側方へと突出させることにより、図5の二点鎖線に示すように、背当部20の左側の側方に配設することも可能である。すなわち、支軸71は背当部20の左右どちらでも一部を突出させることが可能であり、これにより、穿刺台70を背当部20の左右どちらでも配設することが可能となるのである。
【0047】
また、このとき、穿刺台70は、支軸71に対して回動可能に取付けられていることから、患者2が患者2自身にとって最も安楽な上肢3の角度に対応させて、上肢3を穿刺台70に支持させることが可能となる。特に、透析治療を施行する場合、シャント血管内に透析針を留置した側の上肢3を伸展し、かつ手掌を上方ないし体幹方向約45度に向けるという人工透析に特有の姿勢であり、また、人工透析に要する時間が二時間から五時間程度と長時間に及ぶため、背当部20の背当面に対する穿刺台70の角度によって、上肢3をこの穿刺台70に支持させている側の肩の凝りによる患者2の苦痛が大幅に異なるが、このとき、上肢3を穿刺台70に支持させている側の肩が背当部20上に密着し、以って穿刺台70に置いた側の肩周辺の筋肉の緊張度が最小となるように穿刺台の角度を調節すれば、患者2の肩が凝ることがない。したがって、患者2自身にとって最も安楽な上肢3の状態を保つことが可能となり、長時間に渡っても肩が凝るなど苦痛を感じることなく、患者2が快適に治療または検査を受けることができるのである。
【0048】
また、穿刺台70が上肢3の支持角度を調節可能であれば、背当部20の傾斜状態にかかわらず、患者2の上肢3を最適な状態で支持することができる。つまり、穿刺台70が、背当部20の状態が座部10とともに略水平なベッド状態であるときか、座部10に対して上方に向けて略垂直な椅子状態であるときのどちらか一方を想定して患者2の上肢3を支持するように配設されていれば、背当部20が想定した状態以外であるとき、患者2の上肢3を最適な状態で支持することができないが、穿刺台70が上肢3の支持角度を調節可能に構成されていれば、背当部20が椅子状態、ベッド状態、または椅子状態とベッド状態との間で傾斜した状態のうちでいずれであっても、穿刺台70の角度を調節し、患者2の上肢3を最適な状態で支持することが可能となるのである。
【0049】
また、通常、透析治療は、図5に示すように、患者介護車1をベッド状態とし、患者2を仰向けに横にした状態で施行するが、図6(a)に示すように、患者介護車1を椅子状態として、患者2を座った状態で施行することも可能である。この場合も、穿刺台70によりアームレスト80よりも広いスペースを背当部20の側方に確保できるので、患者が快適に治療または検査を受けることができる。さらに、図6(b)に示すように、穿刺台70を収納状態とし、アームレスト80の変位台82を展開状態とすることで、アームレスト80を簡易的な穿刺台70として使用することも可能である。この場合、患者2自身が患者介護車1に乗車したままでも、アームレスト80の変位台82を展開状態とすることが可能であるため、穿刺台70を収納状態から使用状態にするよりも手間なく上肢3を支持するスペースを広げることができる。
【0050】
このように、本実施形態の患者介護車1は、通常の車椅子と同じように移動することができるとともに通常のベッドと同じように静養することができるのであるが、これらに加え、背当部20の側方に配設された穿刺台70により、上肢3に針を穿刺して留置する必要のある治療または検査を施行する際、針を留置してある患者2の上肢3を伸展させて横たえておくスペースが広がるため、上肢3と体幹との成す角度が制限されることなく、患者介護車1上で患者2が最も安楽な姿勢となることが可能となる。したがって、患者がこの患者介護車に乗車したまま治療または検査を受ければ、据え置きのベッドなどで治療または検査を受ける場合と異なり、移乗行為に伴う患者および医療従事者の負担を軽減できること、治療または検査を効率的に施行できること、および治療または検査を行う領域とは別の領域で清掃および布団・シーツ交換などができることなどの利点が享受できる上に、患者が治療または検査を快適に受けることができる。
【0051】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明した。しかし、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0052】
すなわち、上記実施形態の患者介護車1では、穿刺台70の大きさを縦幅450mm程度、横幅300mm程度に形成したが、穿刺台70の大きさは患者が患者介護車に乗車した状態で、手掌を上方ないし体幹方向30〜50度程度、好ましくは45度程度に向けても、患者の上肢の大部分が支持されるだけの広さを有していればよいので、縦幅が200mm以上、300mm以上、400mm以上、または500mm以上に形成され、横幅が60mm以上、100mm以上、200mm以上、または300mm以上に形成されているものであればよい。
【0053】
また、上記実施形態の患者介護車1では、穿刺台70の主な用途は、患者2の上肢3に針を穿刺して留置する必要がある治療または検査、例えば、老廃物蓄積および水電解質異常を是正する透析治療、栄養分の補給、脱水症状の改善、または輸血などの目的で行われる点滴治療などにおいて、針を穿刺して留置した患者2の上肢3を支持することであるが、これ以外の治療または検査の際に用いることを排除するものではなく、例えば、血圧測定などの治療または検査に患者2の上肢3を支持することも可能で、その場合も同様の作用および効果を奏することができる。
【0054】
また、上記実施形態の患者介護車1では、介添者が推進させる構成を備えたものを示した。しかし、この構成に特に限定されるものではなく、通常の車椅子などと同様に後輪63の径を大きくし、患者2が自分で推進させる構成を備えたものであってよく、または、電動モータなどの動力源により推進させる構成を備えたものであってもよい。
【0055】
また、上記実施形態の患者介護車1では、下腿当部30とフットレスト40とを備えたものを示した。しかし、この構成に特に限定されるものではなく、下腿当部30とフットレスト40とは省略してもよい。その場合、患者介護車1の構成を簡易にすることが可能となり、工業的実施に有利となる。
【0056】
また、上記実施形態の患者介護車1では、一部が背当部20の側方に突出した使用状態と背当部20の内側に収納された収納状態との間でスライド可能な支軸71に穿刺台70が回動可能であるとともに着脱可能に支持されているものを示した。しかし、穿刺台70の構成はこれに特に限定されるものではなく、例えば、背当部20に対して雄雌の組み合わせによって着脱自在としたものなどでもよい。このとき、背当部20側に雌部材を設け、穿刺台側に雄部材を設けるようにすることが好ましい。このようにすれば、穿刺台を取外せば、背当部20の側方へと突出する部材がなくなるためである。また、穿刺台70は、背当部20の側部に沿ってスライド可能に設けられていてもよい。穿刺台70が背当部20の側部にスライド可能であれば、患者介護車に乗車した患者2の上肢3の位置に、穿刺台70の位置を合わせることが可能となり、身長の高低にかかわらず、穿刺台70に患者2の上肢3を支持させることができる。また、穿刺台が使用状態と収納状態との間でスライド可能に設けられたものであってもよい。例えば、使用状態と収納状態との間でスライド可能に背当部20に支持され、外枠を形成するフレームと、長さの異なる一対の平行リンクを介してフレームに支持された台本体とを備えた穿刺台であって、平行リンクの一方に段階的に切欠などを設けることにより、平行リンクの一方のフレームからの突出長さを調節できるようにして、台本体の角度を調節して上肢の支持角度を調節するようにしたものなどが挙げられる。また、穿刺台が背当部20の側部に長手方向に沿って設けられた軸に回動可能に軸支され、背当部20の側方へ展開することで使用状態となり、背当部20の裏側へ折り畳むことで収納状態となるように設けられたもの、または、収納状態で背当部20の一部を構成するように設けられるとともに一端が背当部20に回動可能に軸支され、回動することで一部が背当部20の側方に配設されて使用状態となるものなどであってもよい。
【0057】
また、上記実施形態の患者介護車1では、変位台82を基台81の一端に回動可能に取付け、変位台82を回動させることにより折り畳み状態および展開状態に変位させる構成を備えたアームレスト80を示した。しかし、アームレストは、これに特に限定されるものではなく、変位台と基台とを平行リンクにより連結して、変位台を横方向に移動させるとともに基台の上面と略面一となる位置まで下方向に移動させることにより折り畳み状態および展開状態に変位させる構成を備えたものであってもよい。
【0058】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る患者介護車は、患者がこの患者介護車に乗車したまま治療または検査を受ければ、据え置きのベッドなどで治療または検査を受ける場合と異なり、移乗行為に伴う患者および医療従事者の負担を軽減できること、治療または検査を効率的に施行できること、および治療または検査を行う領域とは別の領域で清掃および布団・シーツ交換などができることなどの利点が享受できる上に、治療または検査を患者が快適に受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である患者介護車の椅子状態での構成を示す斜視図である。
【図2】患者介護車の椅子状態での構成を示す側面図である。
【図3】患者介護車のベッド状態での構成を示す側面図である。
【図4】(a)患者介護車の椅子状態における穿刺台の使用状態を示す背面図、(b)患者介護車のベッド状態における穿刺台の収納状態を示す背面図である。
【図5】患者介護車のベッド状態での使用の形態を説明する平面図である。
【図6】(a)患者介護車の椅子状態での穿刺台の使用の形態を説明する平面図、(b)患者介護車の椅子状態でのアームレストの使用の形態を説明する平面図である。
【符号の説明】
1 患者介護車
2 患者
3 上肢
4 床面
10 座部
20 背当部
28 背当支持部材
60 支持体
62 前輪(車輪)
63 後輪(車輪)
70 穿刺台
80 アームレスト
Claims (6)
- 座部と、
該座部から延設され、該座部に対して上方に向けて略垂直となる椅子状態と該座部とともに略水平となるベッド状態との間で回動可能な背当部と、
床面に対して移動自在な車輪を有し、前記座部を支持する支持体と、
治療または検査のため上肢に針を穿刺して留置した患者の該上肢を支持するのに必要な広さを有し、前記背当部の側方に配設される穿刺台と
を備えることを特徴とする患者介護車。 - 前記穿刺台は、上肢の支持角度を調節可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の患者介護車。
- 前記穿刺台は、前記背当部に対して着脱自在に配設されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の患者介護車。
- 前記穿刺台は、前記背当部の側方に配設される使用状態と前記背当部の側面より内側に配設される収納状態とに変位可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の患者介護車。
- 基台と、該基台に変位可能に支持され、前記基台の上面に載置される折り畳み状態および前記基台の上面と略面一となる展開状態に変位する変位台とを有するアームレストをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一つに記載の患者介護車。
- 前記背当部が前記ベッド状態のとき、前記背当部を床面に支持する背当支持部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一つに記載の患者介護車。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003083042A JP2004290239A (ja) | 2003-03-25 | 2003-03-25 | 患者介護車 |
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JP2003083042A JP2004290239A (ja) | 2003-03-25 | 2003-03-25 | 患者介護車 |
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Publication Number | Publication Date |
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Family Applications (1)
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JP2003083042A Pending JP2004290239A (ja) | 2003-03-25 | 2003-03-25 | 患者介護車 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010227388A (ja) * | 2009-03-27 | 2010-10-14 | Itoki Corp | 椅子 |
JP2010227389A (ja) * | 2009-03-27 | 2010-10-14 | Itoki Corp | 椅子 |
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-
2003
- 2003-03-25 JP JP2003083042A patent/JP2004290239A/ja active Pending
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