JP2004290181A - 低温におけるポリペプチドの無細胞翻訳 - Google Patents

低温におけるポリペプチドの無細胞翻訳 Download PDF

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Abstract

【課題】 低温で増殖可能なシュードモナス属微生物抽出液またはロドコッカス属微生物抽出液を含む無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を製造する方法の提供。
【解決手段】 低温条件下において無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を製造する方法であって、低温で増殖可能なシュードモナス属微生物抽出液またはロドコッカス属微生物抽出液を含む無細胞タンパク質合成系中で低温条件下でタンパク質をコードする核酸の転写および翻訳を行なわせてタンパク質を製造する方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、低温において無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を製造する方法に関する。特に本発明は低温で増殖可能なシュードモナス属微生物抽出液またはロドコッカス属微生物抽出液を含む無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を製造する方法に関する。
従来、組換えタンパク質を生産する方法としては、大腸菌、酵母菌などの宿主細胞に標的遺伝子を組込んだ発現ベクターを形質転換して、宿主細胞に生産させる生細胞発現系での方法が一般的であった(Weickert et al., Curr. Opin. Biotechnol. 7 494-499 [1996])。しかし、最近になって、大腸菌や、コムギ胚芽からリボソーム、アミノアシルtRNA合成酵素、翻訳開始因子(translation initiation factor)、翻訳伸長因子(translation elongation factor)、翻訳終結因子(translation termination factor)等を含む無細胞翻訳抽出液(S30エクストラクト)を調製し、プラスミドDNAを鋳型とした無細胞翻訳系で組換えタンパク質を生産する方法が注目されている(特表2000-514298、特開2000-175695、特開2002-338597、Zubay, Annu. Rev. Genet. 7 267-287 [1973]、Pratt, Transcription and Translation - a practical approach, Henes, B. D. and Higgins, S. J. ed., IRL Press, Oxford. 179-209 [1984]、Kim et al., Eur. J. Biochem. 239 881-886 [1996]、Nakano et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 58 631-634 [1994]、Madin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 559-564 [2000])。無細胞翻訳系の長所は、ハイスループットであること、生細胞発現系での生産に比べて生産困難なタンパク質が少ないこと、などが挙げられるが、一方ではコストがかかるなどの短所もある。
無細胞翻訳系が生細胞発現系に比べて最も有利な点は、生細胞発現系で必要な発現ベクターの宿主細胞への形質転換、培養、集菌、細胞の破砕といった過程が不要であることである。これにより、短時間に、容易に組換えタンパク質を生産することが可能になっている。
一般に、無細胞翻訳は試験管内に鋳型プラスミドDNA、トランスファーRNA(tRNA)、無機塩類、バッファー類、ATP、GTP、CTP、UTP、ATP再生系、20種類のアミノ酸、S30エクストラクト等を混合し、適当な温度でインキュベートすることで実施される(バッチ法)。しかし、1980代後半になって所謂、フロー法(Spirin et al., Science 242 1162-1164 [1988])が開発され、それまでのバッチ法による無細胞翻訳系の最大の問題だった生産性も向上した。フロー法とは、タンパク質合成に際して、反応系から枯渇しやすい物質であるATP、GTP等をポンプ等で連続的に供給し、かつ、タンパク質合成を阻害する反応副産物を除去することで、タンパク質合成を長時間行わせる方法である。現在ではSpirinらの方法をふまえ、フロー法の改良が進み(Kim and Choi, Biotechnol. Prog. 12 645-649)、1 ml合成反応液あたり数ミリグラムの組換えタンパク質が得られることもあり、十分実用的なレベルに達している。事実、複数の企業より無細胞翻訳系を実施し、組換えタンパク質を生産するキットが販売されている。
一方、本発明者は既に宿主微生物を用いて低温でタンパク質を発現する発現ベクターを開発し(特願2002-235008号、PCT/JP03/10209)、該ベクターは常温で発現させることが困難なタンパク質の発現に利用されている。低温での無細胞翻訳系に関する報告は存在するものの(Araki, J. Gen. Microbiol. 137 817-826 [1991]、Lasztity et al., Plant Sci. 14959-62 [1999])、無細胞翻訳系において放射性アミノ酸が酸不溶性画分に取り込まれたことを示すのみで、タンパク質が迅速にかつ大量に製造できるか否か不明であったし、またVibriosp.とWheat seedlingsを無細胞翻訳の供給源として用いており、他の生物種を無細胞翻訳の供給源として用いて低温での無細胞タンパク質合成が行なわれるかどうかは予測できなかった。
特表2000-514298号公報 特開2000-175695号公報 特開2002-338597号公報 Zubay, Annu. Rev. Genet. 7 267-287 [1973] Pratt, Transcription and Translation - a practical approach, Henes, B. D. and Higgins, S. J. ed., IRL Press, Oxford. 179-209 [1984] Kim et al., Eur. J. Biochem. 239 881-886 [1996]、Nakano et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 58 631-634 [1994] Madin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 559-564 [2000] Spirin et al., Science 242 1162-1164 [1988] Kim and Choi, Biotechnol. Prog. 12 645-649 Araki, J. Gen. Microbiol. 137 817-826 [1991] Lasztity et al., Plant Sci. 149 59-62 [1999]
上述のように、大腸菌抽出液等を用いた常温での無細胞翻訳系が開発されている。しかし、無細胞翻訳系でもなお合成困難なタンパク質が存在する事実があり、また、ヌクレアーゼなど、無細胞翻訳に必須な因子に対して悪影響を及ぼすタンパク質なども合成が困難だと予想される。これは、従来の無細胞翻訳系においては大腸菌やコムギ胚芽をS30エクストラクトの供給源としていたために、常温(16℃から37℃)でしかタンパク質の大量合成ができなかったことに起因すると考えられる。即ち、ヒトなどの真核生物由来のタンパク質を標的タンパク質とした場合、それらタンパク質もまた常温で生理的活性をもつので、場合によっては無細胞翻訳に必須な因子、例えばS30エクストラクト中の蛋白質群や鋳型DNA等、に対して何らかの悪影響を及ぼすと予想されるのである。そのような合成困難なタンパク質としては、鋳型DNAを分解するヌクレアーゼ、非特異的に蛋白質群を分解するプロテアーゼ、エネルギー供給源であるATPやGTPを分解し、かつ無細胞翻訳を阻害する無機リン酸を生産せしめるホスファターゼ(Kawarasaki et al., J. Biotechnol. 61 199-208 [1998])などが予想される。
そこで本発明者は、上記の合成困難なタンパク質群を生産するために、10℃以下での無細胞翻訳系を構築することで、かかる問題を解決しようとした。即ち、10℃以下でも増殖可能な細菌(低温菌)を用いた無細胞翻訳系を構築し、10℃以下の低温で組換えタンパク質を合成することとした。本発明者は低温菌の中でも、大腸菌と比較的近縁種のPseudomonas fluorescensを用いることとした。これは、培養、細胞破砕などが大腸菌と類似の方法で良く、従来の大腸菌S30エクストラクト作成法がそのままP. fluorescensに応用可能だと考えられたからである。また、P. fluorescensは、低温菌の中でも最も研究が進んでいる種であることもこれを選んだ理由の一つである。
P. fluorescensを用いた低温無細胞翻訳系を構築するにあたってATPの再生系が一番の問題になると考えられた。大腸菌無細胞翻訳系の場合、ホスホエノールピルビン酸(PEP)-ピルビン酸キナーゼ(PK)の組み合わせか、クレアチンリン酸(CP)-クレアチンキナーゼ(CK)の組み合わせを用いてATPの再生を行うことが多い。このうち、PK、CKは共にウサギの筋肉から精製された市販品などが合成反応液に添加されることがほとんどである。それ故、低温無細胞翻訳系の場合、リン酸ドナーとしてのPEP、CPは低温でも問題なく機能すると考えられるが、PK、CKが低温で機能しないことが考えられた。そこで、本発明者は、アセチルリン酸(AP) - アセテートキナーゼ(AK)の組み合わせを利用することとした。AKは、細菌細胞に広く内在している酵素であるので(Ryabova et al., Anal. Biochem. 226 184-186 [1995])、AP - AKの組み合わせの場合、PK、CKとは違い、合成反応液に外部からAKを添加する必要がない。P. fluorescens由来のAKはおそらくは低温でも十分機能すると考えられることから、合成反応液中にリン酸ドナーのAPを加えるだけで低温でのATPの再生系の問題を解決できると考えた。ただし、P. fluorescens由来S30エクストラクト中にAKが含まれていると予想はされるが、実際に含まれているかどうかは定かではない。また、大腸菌無細胞翻訳系においてAP - AKによるATPの再生系が機能することは、少ないながらも報告がある(Ryabova et al., Anal. Biochem. 226 184-186 [1995]、Kigawa et al., FEBS Lett. 442 15-19 [1999])。また、大腸菌無細胞翻訳系においては、ピルビン酸やグルコース-6-リン酸もAP同様、内在性の酵素群を用いてのリン酸ドナーになりうると報告されているが、この場合、補酵素としてNAD(ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド)やCoenzyme Aが必要である(Kim and Swartz, Biotechnol. Prog. 70 309-316 [2001])。
大腸菌無細胞翻訳系の場合、標的遺伝子はT7プロモーターの制御下に置かれ、合成反応液中に市販のT7 RNAポリメラーゼを加えることで発現させることが多い。一方、大腸菌細胞に内在するRNAポリメラーゼによって転写されるプロモーター(例えばTrcプロモーターなど)でも発現させることが可能であるが、一般的にT7プロモーターを用いた時より若干発現量は少ないとされている。低温無細胞翻訳系の場合は、T7 RNAポリメラーゼの低温での機能性が定かではないことから、Trcプロモーターを用いることとした。
大腸菌無細胞翻訳系の場合、市販のtRNA、例えばSIGMA社製の大腸菌由来tRNAなど、を反応液中に添加するが、P. fluorescensのtRNAは市販されていないので、P. fluorescensから精製することとした。
無細胞翻訳系の挙動を知るためにはまず、レポーター遺伝子を標的遺伝子として発現させ、生産されたレポータータンパク質の活性等を調べて、系の効率等を評価する必要がある。大腸菌無細胞翻訳系の場合、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼや、蛍光緑色タンパク質などがレポーターとしてよく利用されているが、本発明者は、Thermoplasma acidophilum由来プロリンイミノペプチダーゼ(PIP;Tamura et al., FEBS Lett. 398 101-105 [1996])を用いることとした。これはPIPのペプチダーゼ活性が容易に迅速に調べられること、また、ペプチダーゼ活性測定が非常に高感度で行えることなどが、理由に挙げられる。これまで、無細胞翻訳系のレポーターとしてPIPを用いた例はない。
本発明者は、このように低温における無細胞タンパク質合成系を開発すべく鋭意検討を行い本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 低温条件下において無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を製造する方法であって、低温で増殖可能なシュードモナス属微生物抽出液またはロドコッカス属微生物抽出液を含む無細胞タンパク質合成系中で低温条件下でタンパク質をコードする核酸の転写および翻訳を行なわせてタンパク質を製造する方法、
[2] 微生物抽出液が微生物S30エクストラクトである、[1]の方法、
[3] 微生物抽出液が微生物S30エクストラクトからペリプラズム画分を除いたものである、[1]の方法、
[4] 低温で増殖可能なシュードモナス属微生物がシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)である[1]から[3]のいずれかの方法、
[5] 低温で増殖可能なロドコッカス属微生物がロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)である、[1]から[3]のいずれかの方法、
[6] 無細胞タンパク質合成系がTrcプロモーターおよびタンパク質をコードする核酸を含有するプラスミドを含む、[1]から[5]のいずれかの方法、
[7] 無細胞タンパク質合成系がCspAプロモーター、同CspAの5’-非翻訳領域(5’-UTR)、およびタンパク質をコードする核酸を含有するプラスミドを含む、[1]から[5]のいずれかの方法、
[8] CspAの5’-UTR領域において、少なくとも1つの塩基の置換、欠失、挿入または付加が存在する[7]の方法、
[9] 配列表中の配列番号107に示されたCspAの配列中、5’-UTR配列にあたる、532番目のCがAに置換されている[8]の方法、
[10] 目的のタンパク質をコードする核酸を含むプラスミドで転写した該タンパク質をコードするmRNAを、低温で増殖可能なシュードモナス属微生物抽出液またはロドコッカス属微生物抽出液を含む無細胞タンパク質合成系中に添加する、[1]から[5]のいずれかの方法、
[11] 無細胞タンパク質合成系が、ATP再生系としてアセチルリン酸とアセテートキナーゼの組み合わせを含む、[1]から[10]のいずれかの方法、
[12] 大腸菌抽出液を含む無細胞タンパク質合成系であって、核酸の転写および翻訳をCspAプロモーターおよび同CspAの5’-UTRを用いて行なわせてタンパク質を製造する方法。
[13] 無細胞タンパク質合成系がタンパク質合成反応液を含む反応部とタンパク質合成基質溶液を含む供給部からなり、反応部と供給部が半透膜により隔てられており、半透膜を通して供給部から反応部へタンパク質合成に必要な物質が供給され反応部でタンパク質が合成される、[1]から[12]のいずれかの方法、
[14] 無細胞抽出液が濃縮無細胞抽出液である[1]から[13]のいずれかの方法、
[15] 16℃以上の常温における無細胞タンパク質合成系で発現させたときにタンパク質の合成を阻害するタンパク質をコードする核酸の転写および翻訳を行なわせてタンパク質を製造する、[1]から[14]のいずれかの方法、
[16] 16℃以上の常温における無細胞タンパク質合成系で発現させたときにタンパク質の合成を阻害するタンパク質がヌクレアーゼ、プロテアーゼおよびホスファターゼからなる群から選択される[15]の方法、
[17] 低温で増殖可能なシュードモナス属微生物抽出液またはロドコッカス属微生物抽出液、目的タンパク質をコードする核酸を組込むためのプラスミド、およびATP再生系試薬を含む、低温条件下において無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を製造するためのキット、
[18] 微生物抽出液が微生物S30エクストラクトである、[17]のキット、
[19] 微生物抽出液が微生物S30エクストラクトからペリプラズム画分を除去したものである、[17]のキット、
[20] 低温で増殖可能なシュードモナス属微生物がシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)である[17]から[19]のいずれかのキット、
[21] 低温で増殖可能なロドコッカス属微生物がロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)である、[17]から[19]のいずれかのキット、
[22] CspAプロモーター、同CspAの5’-UTR、およびタンパク質をコードする核酸を含有するプラスミドを含み、CspAの5’-UTR領域において、少なくとも1つの塩基の置換、欠失、挿入または付加が存在する、[17]から[21]のいずれかのキット、
[23] 配列表中の配列番号107に示されたCspAの配列中、5’-UTR配列にあたる、532番目のCがAに置換されている[22]のキット、
[24] 5’-UTR領域において、少なくとも1つの塩基の置換、欠失、挿入または付加が存在するCspA
[25] 配列表中の配列番号107に示されたCspAの配列中、5’-UTR配列にあたる、532番目のCがAに置換されている[24]のCspA、ならびに
[26] [24]または[25]のCspAプロモーター、5’-UTR、およびタンパク質をコードする核酸を含有するプラスミド。
実施例に示すように、通常常温で行う大腸菌細胞抽出液を用いた低温での無細胞タンパク質合成系で製造できないタンパク質が本発明の方法により大量に合成することが可能である。低温無細胞翻訳系が構築されれば、S30エクストラクトに悪影響を及ぼすタンパク質ばかりでなく、従来の無細胞翻訳系ではその生産が困難だった低温菌などの低温に適応した生物種由来のタンパク質(Gerday et al., Trends in Biotechnol. 18 103-107 [2000])も、ハイスループットに生産される。本発明者は以前に、4 ℃から35 ℃まで増殖可能な放線菌の一種、Rhodococcus erythropolisを宿主とした低温組換えタンパク質生産系(生細胞発現系)を示していて(特願2002-235008、PCT/JP03/10209)、この中で、10 ℃以下の低温で発現させることで、確かに組換えタンパク質の生産性が改善する場合があったことから、無細胞翻訳系でも同様に10 ℃以下の低温で発現させることで、組換えタンパク質の生産性が改善すると期待される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は低温条件下において無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を製造する方法であって、低温で増殖可能な微生物抽出液を含む無細胞タンパク質合成系中でタンパク質をコードする核酸の転写および翻訳を行なわせて低温条件下でタンパク質を製造する方法である。
本発明の方法により合成するタンパク質の由来や種類は限定されないが、無細胞翻訳に必須な因子、例えばS30エクストラクト中の蛋白質群や鋳型DNA等に対して何らかの悪影響を及ぼし得るタンパク質が挙げられる。そのような合成困難なタンパク質としては、鋳型DNAを分解するヌクレアーゼ、非特異的にタンパク質群を分解するプロテアーゼ、エネルギー供給源であるATPやGTPを分解し、かつ無細胞翻訳を阻害する無機リン酸を生産せしめるホスファターゼ等が挙げられる。さらに、低温菌などの低温に適応した生物種由来のタンパク質(Gerday et al., Trends in Biotechnol. 18 103-107 [2000])も本発明の無細胞タンパク質合成方法で製造するのに適している。
低温条件とは、通常の細菌の至適増殖温度よりも低い温度をいい、23℃未満、好ましくは16℃以下、さらに好ましくは10 ℃以下または8 ℃以下、特に好ましくは4 ℃前後の温度をいう。
無細胞タンパク質合成系とは、発現させようとするタンパク質をコードする核酸を宿主細胞に導入することなく、転写および翻訳を行わせて、該タンパク質を合成する系をいう。無細胞タンパク質合成系は、mRNAの有する遺伝情報を読み取ってリボソーム上でタンパク質を合成する無細胞翻訳系のみをさす場合もあるし、DNAをテンプレートとしてRNAを合成する無細胞転写系と前記無細胞翻訳系の両方を包含するものをさす場合もある。
低温で増殖可能な微生物は限定されず、低温で増殖できる微生物ならばいずれの微生物も使用可能であり、例えばVibrio属微生物(Vibrio marinas等)、Pseudomonas属微生物(Pseudomonas fluorescensPseudomonas syringae等)、Rhodococcus属微生物(Rhodococcus erythropolis等)、Shewanella属微生物(Shewanella violacea等)、Pseudoalteromonas属微生物(Pseudoalteromonas haloplanktis等)、Sphingomonas属微生物(Sphingomonas paucimobilis等)、Psychrobacter属微生物(Psychrobacter immobilis等)、Arthrobacter属微生物(Arthrobacter sp. TAD20株等)、Cytophaga属微生物(Cytophagasp. KUC-1株等)、Moraxella属微生物(Moraxella sp. TAE123株等)等が挙げられる。但し、これらの微生物には限られず他の低温で増殖し得る微生物も本発明の方法に用いることができる。確実に低温で増殖し得るという点でシュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌、特にシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)またはロドコッカス(Rhodococcus)属に属する細菌、特にロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)が好ましい。
微生物抽出液とは、リボソーム、20種類のアミノアシルtRNA合成酵素、メチオニル-tRNAトランスフォルミラーゼ、3種類の翻訳開始因子(translation initiation factor;IF1、IF2、IF3)、3種類の翻訳伸長因子(translation elongation factor;EF-G、EF-Tu、EF-Ts)、3種類の翻訳終結因子(translation termination factor;RF1、RF2、RF3)、リボソームリサイクリング因子(RRF)、RNAポリメラーゼ等のタンパク質合成に必要な成分を含む微生物の抽出液をいう。ここに挙げた以外のタンパク質を効率的な翻訳のために添加してもよく、当業者ならばより効率的な添加のために如何なるタンパク質を添加すればよいか決定できる。微生物抽出液はフレンチプレスによる破砕またはグラスビーズを用いた破砕等によって得ることができる。微生物抽出液としては好ましくはS30エクストラクトが用いられ、例えばPrattらの方法により得ることができる(Pratt, Transcription and Translation - a practical approach, Henes, B. D. and Higgins, S. J. ed., IRL Press, Oxford., 179-209 [1984])。S30エクストラクトは、リボソーム、20種類のアミノアシルtRNA合成酵素、メチオニル-tRNAトランスフォルミラーゼ、3種類の翻訳開始因子(translation initiation factor;IF1、IF2、IF3)、3種類の翻訳伸長因子(translation elongation factor;EF-G、EF-Tu、EF-Ts)、3種類の翻訳終結因子(translation termination factor;RF1、RF2、RF3)、リボソームリサイクリング因子(RRF)等を含む。また、微生物抽出液は濃縮して用いてもよく、濃縮した場合、抽出液中のタンパク質合成に必要な成分の濃度が高まるので、タンパク質合成反応がより効率的に進行する。濃縮方法は限定されないが、例えば透析、PEG沈殿、限外濾過等の手法により行なうことができる。どの程度濃縮すればよいかも限定されないが、抽出液中の総タンパク質濃度を1.5倍以上、好ましくは2倍以上濃縮して用いるのがよい。透析により濃縮する場合、分子量限界が1000〜14000の透析膜内部に微生物抽出液を入れ、適当な緩衝液を含む透析外液に対して透析をすればよい。PEG沈殿により濃縮する場合、細胞抽出液に適当な濃度のPEG水溶液を添加させ、タンパク質、核酸等を沈殿させ、適当な緩衝液に溶解させればよい。限外濾過により濃縮する場合、例えば市販の限外濾過用のデバイスを用いて行なうことができる。
また、S30エクストラクトを作成する際、Kangらの方法(Kang et al., J. Microbiol. Methods 43 91-96 [2000])によって、予めペリプラズム画分を除去していてもよい。大腸菌、Pseudomonas属細菌などのグラム陰性菌のペリプラズム画分には、RNA分解酵素(RNase)や脱リン酸化酵素(ホスファターゼ)を多量に含んでおり、これらは無細胞翻訳を阻害することが知られている(Kim and Choi, J. Biotechnol. 84 27-32 [2000])。また、RNaseやホスファターゼ等に対する抗体を用いてS30エクストラクトからこれらの阻害因子を免疫沈降し、除去しても良い。
本発明の無細胞タンパク質合成系は、上記微生物抽出液の他、ATP再生系、プロモーターおよび発現させようとするタンパク質をコードする核酸を含むプラスミドまたは発現させようとするタンパク質をコードするmRNA、tRNA、RNAポリメラーゼ、RNAアーゼ阻害剤、ATP、GTP、CTP、UTP等のエネルギー源、緩衝剤、アミノ酸、塩類、抗菌剤等を含んでいてもよく、それぞれの濃度は適宜決定すればよい。緩衝剤としてはHepes-KOH、Tris-Acetateなどが挙げられるが、これらには限定されない。また、塩類としては酢酸塩、グルタミン酸塩等が挙げられ、特にグルタミン酸塩、例えばグルタミン酸カリウムが含まれていることが望ましい。グルタミン酸塩を用いることにより合成量が上昇する。グルタミン酸塩の好適な濃度は、無細胞翻訳の最終反応組成液中、50mM〜400mM、好ましくは100mM〜300mMである。
ATP再生系は限定されず、公知のリン酸ドナーおよびキナーゼの組合せを用いることができる。この組合せとして例えば、ホスホエノールピルビン酸(PEP)-ピルビン酸キナーゼ(PK)の組み合わせ、クレアチンリン酸(CP)-クレアチンキナーゼ(CK)の組み合わせ、アセチルリン酸(AP)-アセテートキナーゼ(AK)の組み合わせ等が挙げられ、これらの組合せでATP再生系を無細胞タンパク質合成系に加えればよい。但し、通常ピルビン酸キナーゼおよびクレアチンキナーゼの至適温度は、本発明の方法において無細胞タンパク質合成を行なう低温条件より高いので、そのままでは効率的なATP再生が行なわれない。従って、細菌が有するキナーゼであるアセテートキナーゼであって、低温で増殖し得る細菌由来のアセテートキナーゼとアセチルリン酸の組合せが好ましい。この場合、本発明の方法で用いる低温で増殖可能な微生物抽出物中に低温条件に適応したアセテートキナーゼが含まれる可能性が高いので、リン酸ドナーであるアセチルリン酸キナーゼだけを無細胞タンパク質合成系に添加してもよい。また、アセテートキナーゼとアセチルリン酸の組み合わせ以外でも、例えば突然変異等により低温条件でも作用可能なキナーゼとそのキナーゼに対応するリン酸ドナーの組合せを用いることができる。さらに、本発明の方法で用いる低温で増殖可能な微生物がもともと有しており抽出液中に含まれる他のキナーゼを用いてもよく、この場合そのキナーゼの基質となるリン酸ドナーを無細胞タンパク質合成系に添加すればよい。このようなリン酸ドナーとしてピルビン酸、グルコース−6−リン酸が挙げられるが、これらのリン酸ドナーを用いる場合、補酵素としてNADやCoenzyme Aを添加する。当業者ならば、ATP合成反応系に関する技術常識に基づいて本発明の抽出液を用いる低温で増殖可能な微生物中のキナーゼとしていかなるキナーゼがあり、その基質、補酵素として何を添加すればよいか容易に決定することが可能である。
本発明の無細胞タンパク質合成系には製造しようとするタンパク質をコードするmRNAも必要である。該mRNAは本発明の無細胞タンパク質合成系に核酸を転写する系、すなわち該タンパク質をコードするmRNAを産生する系を包含させてもよいし、別途mRNAを転写させて得られたmRNAを本発明の無細胞タンパク質合成系に含ませてもよい。mRNAの産生は、適当なプロモーターおよび該プロモーターの下流に位置する製造しようとするタンパク質をコードするDNAを含むプラスミドならびに該プロモーターに作用するRNAポリメラーゼにより達成できる。ここで、用いるプラスミドは限定されず、公知のものが用いられ、公知の遺伝子工学的手法により、適当なプロモーターやリボソーム結合部位等を導入して用いることができる。当業者ならば、本発明で用いるプラスミドを適宜選択し、また自ら設計して構築することができる。プロモーターは本発明の無細胞タンパク質合成系で用いる微生物が有する内在性のプロモーターを用いてもよいし、外来性のプロモーターを用いてもよい。外来性のプロモーターを用いる場合で、無細胞タンパク質合成系で用いる微生物が有する内在性のポリメラーゼが転写出来ないプロモーターの場合、そのプロモーターに作用するRNAポリメラーゼを本発明の系に添加する。例えば、プロモーターとしてT7プロモーターを用いる場合、T7 RNAポリメラーゼを添加する。但し、外来性のプロモーターを用いる場合、それに対応するRNAポリメラーゼが低温で作用することが必要である。この点で、低温で増殖し得る微生物が有するものを用いるのが好ましい。また、低温で増殖し得る生物以外に由来するものであっても低温での増殖に適応した変異体RNAポリメラーゼを用いることにより、低温条件で効率的に転写が行なわれる。本発明で用いる低温で増殖し得る微生物の内在性プロモーターを用いる場合は、その微生物が有するRNAポリメラーゼを利用することができ、該RNAポリメラーゼは微生物抽出物に含まれる。例えば、プロモーターとして細菌に内在するRNAポリメラーゼによって転写されるTrcプロモーター等を用いることができる。また、その他本発明で無細胞抽出液を用いる微生物で機能し得るプロモーターならば如何なるプロモーターを用いてもよい。例えば、微生物としてシュードモナス属微生物を用いる場合、シュードモナスのゲノム上にあるプロモーター、他生物由来のプロモーターのうちシュードモナスのRNAポリメラーゼが認識出来るプロモーターが用いられ、この場合は内在性のポリメラーゼを利用することが可能なので、ポリメラーゼを外から添加する必要はない。プロモーターとしては、上記Trcプロモーター、T7プロモーターやTacプロモーターが効率の面で優れており好適に用いられる。
また、大腸菌由来CspA遺伝子は同菌を生育至適温度の37 ℃から15 ℃等の低温に曝露すると発現誘導される遺伝子で(Goldstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87 283-287 [1990]、Jiang et al., J. Bacteriol. 178 4919-4925 [1996]、Takayama et al., WO99/27117)、CspA遺伝子プロモーターから転写されたmRNAに含まれるCspA遺伝子5’非翻訳領域(5’-UTR)、CspA遺伝子リボソーム結合部位、CspA遺伝子の開始コドンから12塩基下流の15塩基からなるダウンストリームボックス(downstream box)、は低温で効率よく翻訳されるように設計されている(Etchegaray et al., J. Biol. Chem. 274 10079-10085 [1999]、Takayama et al., WO99/27117)。さらにIn vitroにおいて、大腸菌CspA遺伝子がPseudomonas属由来のRNAポリメラーゼによって低温で、非常に効率よく転写されることが知られている(Uma et al., FEBS Lett. 453 313-317 [1999])。これらの事実から、内在性のポリメラーゼを用いる場合には、CspA遺伝子のプロモーター、5’-UTR、リボソーム結合部位、ダウンストリームボックスの下流に標的遺伝子を連結すれば、最も低温での合成に適した鋳型プラスミドとなると考えられる。事実、後述のように、CspA遺伝子プロモーターを用いた場合(さらに、CspAの5’-UTR、リボソーム結合部位、ダウンストリームボックスの少なくと一つを含む)が、TrcプロモーターやT7プロモーターを用いたときよりも効率よくタンパク質を低温で合成することができた。
ただし、CspA遺伝子のプロモーター、5’-UTR、リボソーム結合部位、ダウンストリームボックス、レポーター遺伝子をコードするDNA配列を含むプラスミドは、その構築過程において、宿主細胞中(大腸菌)で維持することが困難な場合が多い(Takayama et al., WO99/27117)。これは、該遺伝子群中のCspA遺伝子プロモーターから転写された、5’-UTR、リボソーム結合部位、ダウンストリームボックス、レポーター遺伝子配列を含むmRNAが、37 ℃でも細胞内に存在しており、宿主細胞に悪影響を及ぼしていることによると考えられている。WO99/27117ではかかる問題を解決すべく、CspA遺伝子プロモーター下流、5’-UTR配列の上流にlacオペレーター配列を挿入し、厳密に遺伝子発現を制御する方法を開発している。後述のように、本発明者はCspA遺伝子の5’-UTR領域に点突然変異を導入することによって、この問題を解決した。5’-UTR領域における点突然変異は、少なくとも1つの塩基の置換、欠失、挿入または付加であり、好ましくは1から10個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個、最も好ましくは1個である。CspA遺伝子の5’-UTR領域の点突然変異として、例えば配列表中の配列番号107中532番目のCのAへの置換が挙げられる。
本発明の無細胞タンパク質合成系は、上記試薬類を一つの容器中に混合して行うこともできるが、容器をタンパク質を合成する反応部とタンパク質合成に必要な物質を供給する供給部に分けてもよい。この場合、供給部の溶液をポンプ等により反応部に供給してもよいし、反応部と供給部を透析膜等の半透膜で区切っておいてもよい。半透膜を介して2つの部分に分けることにより、供給部から反応部にタンパク質合成に必要な物質が供給され反応部でタンパク質合成が進行し、合成反応により生じた老廃物が供給部に戻るので、長時間にわたってより効率的にタンパク質合成反応が進み大量のタンパク質を得ることができる。この場合、反応部には、少なくとも微生物抽出液、ATP再生系、プロモーターおよび発現させようとするタンパク質をコードする核酸を含むプラスミドまたは発現させようとするタンパク質をコードするmRNAを含み、供給部は上述の無細胞タンパク質合成系が含む試薬類から微生物抽出液、プラスミド(もしくはmRNA)、ATP再生系のうちのキナーゼ、さらにRNAポリメラーゼを用いている場合は該RNAポリメラーゼを除いたものを含んでいればよい。反応部と供給部の容積比には限定はないが、長時間の試薬類の供給を可能にするために供給部の容積が大きい方が望ましい。また、供給部内の液は常に攪拌しておくことが望ましい。さらに、供給部に液流入部と液流出部を設けて供給部内に常に新鮮な試薬溶液が流れるようにしてもよい。このような方法は従来の常温での無細胞翻訳系において、例えばCECF (Continuous Exchange Cell Free)システムとして知られており(Spirin et al., Science 2421162-1164 [1988]、Kim and Choi, Biotechnol. Prog. 12 645-649)、本発明の方法においても公知のCECFシステムの手法を取り入れることにより、長時間にわたって効率的にタンパク質を合成することが可能である。
また、反応部と供給部を半透膜で区切る代わりに、供給液にグリセリン等の比重の大きい物質を混合し、反応液に対する比重を大きくして用いてもよい。比重を大きくした供給液を最初に反応器中に入れ、その上に反応液を重層することにより、容器下部の供給液から容器上部の反応液から反応に必要な物質が供給される(重層法)。
このようにして本発明の方法により製造されたタンパク質は、反応液よりゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー等の公知のタンパク質精製法を適宜組合せることにより、単離精製することが可能である。
本発明は、さらに本発明の方法によりタンパク質を低温下での無細胞系で合成するためのキットをも包含する。該キットは、少なくとも低温で増殖可能な微生物抽出液、目的タンパク質をコードする核酸を組込むためのプラスミド、ATP再生系試薬を含む。本キットは、また上記本発明の方法に必要な試薬類の全部または一部を含んでいてもよく、さらに反応用容器を含んでいてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
〔参考例1〕
(1) Rhodococcus erythropolis由来の、Rhodococcus属細菌内で自律複製可能なプラスミドの分離とその一部DNA配列の決定
Rhodococcus erythropolisと大腸菌の複合ベクターを作成するために、まずRhodococcus属細菌内に存在する小型の内在性プラスミドを検索した。すると、Rhodococcus erythropolis JCM2895 株にその存在が確認された。このプラスミドにpRE2895と名前を付けた。以下にプラスミドの分離と、そのDNA配列決定について具体的に述べる。
Rhodococcus erythropolis JCM2895株を5 mlのLB培地(1% Difco Bacto Tryptone、0.5% Difco Yeast Extract、1.0% 塩化ナトリウム)にて、30 ℃で30時間培養した菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いてpRE2895を精製した。この際、Buffer P1 250 μlに懸濁後、Buffer P2 250 μlを加える前に、5 μlのリゾチーム(100 mg/ml)を加え37 ℃で30分インキュベートした点を除いては、使用説明書通りに作業した。
上記DNAサンプルを制限酵素EcoRIで処理し、1.0%アガロースゲル電気泳動(100 V、30分)に供したところ、約5.4 kbのDNA断片1本の存在が確認された。
この約5.4 kbのDNA断片をゲルから切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、使用説明書通りに精製した。得られたEcoRI断片を常法(Sambrook et al., Molecular Cloning: a laboratory manual, 2nd edition [1989], Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)に従って、プラスミドpBluescript II SK (+)(STRATAGENE社製)のEcoRI部位にサブクローンし、このプラスミドにpHN79と名前を付けた。
pHN79をReverse、M13-20両プライマー(共にSTRATAGENE社製)を用い、DNAシークエンサーABI PRISM(R) 3100 Genetic Analyzer(ABI社製)を用いて、使用説明書に準じて、pHN79の塩基配列を約400塩基ずつそれぞれ決定した。相同性検索の結果、pHN79にサブクローンされたRhodococcus erythropolis JCM2895株由来のDNA領域はその99.8%の配列がGenBankに受入番号AF312210として登録されている5403塩基対の環状DNA、pN30と一致した。
分離したpRE2895は全塩基配列を決定しなかったが、pN30との相同性は極めて高く、また制限酵素切断地図もpN30の配列から予想されるものと一致したことから、これらの相同性はプラスミド全体にわたっていると予想された。また、pN30はMycobacterium fortuitum 002株から分離された内在性プラスミドpAL5000 (Rauzer et al., Gene 71 315-321 [1988]、 Stolt and Stoker, Microbiology 142 2795-2802 [1996])、Rhodococcus erythropolis NI86/21株から分離されたpFAJ2600(De Mot et al., Microbiology 1433137-3147 [1997])と相同性が高く、類似の機構で自律複製していると考えられた。pAL5000は推定RepA遺伝子、推定RepB遺伝子、推定複製開始点を含む領域のみで各細菌内で自律複製するために十分であるため、本発明者らが分離したpRE2895も同様の領域のみを発現ベクター中に組み込めば、Rhodococcus属細菌内で自律複製するために十分と考えられた。
(2) ベクタープラスミドpHN136の構築
前記(1)で分離したpRE2895の一部と大腸菌内で自律複製可能なプラスミドの一部を用いて両菌の複合ベクターを作成するため以下の作業を行った。
プラスミドpBluescript II SK (-) (STRATAGENE社製)をテンプレートとして、配列表中の配列番号1、2に記載の合成オリゴデオキシリボヌクレオチドプライマー(以下プライマーと略記)を用いて、ポリメラーゼチェーンリアクション法(以下、PCRと略記: Saiki et al., Science, 239 487-491 [1988])によるDNAの増幅を行った。なお、用いたPCR用の酵素はPfu turbo (STRATAGENE社製)である。その結果、アンピシリン耐性遺伝子と大腸菌内で自律複製させるために必要なColE1配列領域を含む2.0kbの増幅されたDNAを得た。このDNA断片を制限酵素SacIとBsrGIで二重消化し、1.0%アガロースゲル電気泳動(100 V、30分)に供し、該DNA断片を切り出し、QIAquick Gel Extraction Kitを用いて、使用説明書に準じて精製した。
一方、pN30(前記(1))の配列をもとにRhodococcus属細菌内で自律複製するために必要と思われる領域を増幅するプライマーを設計した。なお、同プライマーの配列は配列表中の配列番号3、4で示される。プラスミドpHN79をテンプレートとして、両プライマーを用いてPCRによる増幅を行ったところ1.9 kbの増幅されたDNAを得た。このDNA断片を制限酵素BsrGIとSacIで二重消化し、1.0%アガロースゲル電気泳動(100 V、30分)に供し、該DNA断片を切り出し、上述の方法と同様に精製した。
上記2つの精製されたDNA断片をDNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いて、使用説明書通りにライゲーションし、得られたプラスミドにpHN129と名前を付けた。
次にpHN129に存在する制限酵素認識部位BamHI、SalIを除去するため以下の作業をおこなった。まず、pHN129をテンプレートとして、配列表中の配列番号5、6に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。このPCR断片をBglIIとPstIで二重消化して得られた0.5 kbのDNA断片をpHN129のBamHI、PstI部位にサブクローンした。結果、BglIIとBamHIで連結された部分においては推定RepA遺伝子のオープンリーディングフレーム(以下ORFと略記)内であるが、コードされるアミノ酸が置換されることなく、BamHI認識部位が除去された。またSalI認識部位はBamHI認識部位のごく近傍に存在したが、配列番号5に記載のプライマー中において、SalI認識部位が除かれ、かつ、コードされるアミノ酸が置換されないよう設計されていることから、BamHI認識部位と同時にSalI認識部位も除去されている。このプラスミドにpHN135と名前を付けた。
次にpHN135に存在する制限酵素認識部位BglIIを除去するため以下の作業をおこなった。まず、プラスミドpHN135をテンプレートとして、配列表中の配列番号5、6に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。このPCR断片をPstIとBamHIで二重消化して得られた0.5 kbのDNA断片をpHN135のPstI、BglII部位にサブクローンした。結果、BamHIとBglIIで連結された部分においては推定RepB遺伝子のORF部分であるが、コードされるアミノ酸が置換されることなく、BglII認識部位が除去された。この結果得られたプラスミドにpHN136と名前をつけた。
(3) ベクタープラスミドpHN143の構築
タンパク質の発現誘導には抗生物質チオストレプトンを用いるが、Rhodococcus erythropolisは同物質に対して感受性であるために、耐性を付与させなければならない。そこでStreptomyces azureusが持つチオストレプトン耐性遺伝子、tsr遺伝子(Bibb et al., Mol. Gen. Genet. 199 26-36 [1985])を複合ベクター中に組み込むこととした。なお、この遺伝子がRhodococcus erythropolis内で機能し、チオストレプトン耐性を付与することはすでに報告されている(Shao and Behki, Lett. Appl. Microbiol. 21 261-266 [1995])。以下に、同遺伝子の分離について具体的に述べる。
まず、PCRのテンプレートに使用するStreptomyces azureus JCM4217株のゲノムDNAを以下のように調製した。5mlのSB培地(1% Difco Bacto Tryptone、0.5% Difco Yeast Extract、0.5% 塩化ナトリウム、0.1% Glucose、5 mM塩化マグネシウム、0.5% グリシン)にて30 ℃で培養した同菌株を500 μlのSETバッファー(75 mM 塩化ナトリウム、25 mM EDTA [pH8.0]、20 mM Tris-HCl[pH7.5])に懸濁した。そこに、5 μlのリゾチーム溶液(100 mg/ml)を加え、37 ℃で30分インキュベートした。そして、14 μlのプロテアーゼK溶液(20 mg/ml)と60 μlの硫酸ドデシルナトリウム溶液(10%)を加え、よく混合した後55 ℃で2時間インキュベートした。その後、200 μlの塩化ナトリウム溶液(5 M)と500 μlのクロロホルムを加え、20分間室温で回転撹拌した。遠心分離し、700 μlの上清をとった。これをイソプロパノール沈殿後、乾燥させ、50 μlのTE溶液(10 mM Tris-HCl[pH8.0]、1 mM EDTA [pH8.0])に溶解した。
上記のように精製したStreptomyces azureus JCM4217株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列表中の配列番号7、8に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、チオストレプトン耐性遺伝子を含む1.1 kbの増幅されたDNAを得た。なおこのDNA断片はプラチナ Pfx DNA ポリメラーゼ(Gibco BRL社製)を用いたため、その末端は平滑末端である。このDNA断片を精製し、常法(Sambrook et al., Molecular Cloning: a laboratory manual, 2nd edition [1989], Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)に従い5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した後、プラスミドpGEM-3Zf(+)(Promega社製)のHincII部位にサブクローンした(サブクローンされた向きはDNAの5’方向からHindIII認識部位-tsr遺伝子ORF-EcoRI認識部位である)。このプラスミドにpHN137と名前を付けた。
次にpHN137に存在する制限酵素認識部位SalIを除去するため以下の作業をおこなった。まず、プラスミドpHN137をテンプレートとして、配列表中の配列番号9、10に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。なおこのPCRにはプラチナPfx DNAポリメラーゼを用いた。このPCR断片の片方の末端をHindIIIで消化して得られた0.6 kbのDNA断片を精製し、さらに常法により平滑末端側の5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した。一方、プラスミドpHN137をテンプレートとして、配列表中の配列番号11、12に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。なおこのPCRにはプラチナPfx DNAポリメラーゼを用いた。このPCR断片の片方の末端をEcoRIで消化して得られた0.5 kbのDNA断片を精製し、さらに常法により平滑末端側の5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した。これら2つのPCR断片を同時にプラスミドpGEM-3Zf(+)のHindIII、EcoRI部位にサブクローンした結果、平滑末端同士で連結された部分においてはtsr遺伝子のORF部分であるが、コードされるアミノ酸が置換されることなく、SalI認識部位が除去された。このプラスミドにpHN143と名前を付けた。
(4) ベクタープラスミドpHN62の構築
チオストレプトンによって誘導型発現をさせるためにはRhodococcus属細菌内にTipAタンパク質を存在させなければならない。そのために、Rhodococcus erythropolisから構成的なプロモーターを分離し、その下流にTipAタンパク質をコードする構造遺伝子を連結した。構成的に機能するプロモーターとしてはRhodococcus erythropolisのアルデヒドデヒドロゲナーゼ様タンパク質をコードするThcA遺伝子(Nagy et al., J. Bacteriol. 177 676-687 [1995])のプロモーター配列を用いた。
テンプレートに使用するStreptomyces coelicolor A3(2)株のゲノムDNAはStreptomyces azureusからゲノムDNAを調製したときと同様に作業し、精製した。また、Rhodococcus erythropolis JCM3201株のゲノムDNAは5 mlのLB培地で培養した点を除いてはStreptomyces azureusからゲノムDNAを調製したときと同様に作業し、精製した。
上述のように精製したStreptomyces coelicolor A3(2)株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列表中の配列番号13、14に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。なおこのPCRにはプラチナPfx DNAポリメラーゼを用いた。その結果、TipA遺伝子のORF並びにその下流の転写終結配列を含むDNAを得た。
このPCR断片の片方の末端をBglIIで消化して得られた0.9 kbのDNA断片を精製し、さらに常法により平滑末端側の5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した。一方、上述のように精製したRhodococcus erythropolis JCM3201株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列表中の配列番号15、16に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、アルデヒドデヒドロゲナーゼ様タンパク質をコードするThcA遺伝子(Nagy et al., J. Bacteriol. 177 676-687 [1995])のプロモーター配列を含むDNAを得た。なおこのPCRにはプラチナPfx DNAポリメラーゼを用いた。このPCR断片の片方の末端をXbaIで消化して得られた0.2kbのDNA断片を精製し、さらに常法により平滑末端側の5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した。これら2つのPCR断片を同時にプラスミドpGEM-3Zf(+)のXbaI、BamHI部位にサブクローンした結果、ThcA遺伝子のプロモーター配列のすぐ下流にTipA遺伝子のORF並びに転写終結配列を含むプラスミドが作成され、pHN33と名前を付けた。
次にpHN33に存在する制限酵素NcoI認識部位2カ所(以下、NcoI(1)、NcoI(2)と表記する)を除去するため以下の作業をおこなった。
まず、プラスミドpHN33をテンプレートとして、配列表中の配列番号9、17に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。なおこのPCRにはプラチナPfx DNAポリメラーゼを用いた。このPCR断片の片方の末端をXbaIで消化して得られた0.5 kbのDNA断片を精製し、さらに常法により平滑末端側の5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した。一方、プラスミドpHN33をテンプレートとして、配列表中の配列番号18、12に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。なおこのPCRにはプラチナPfx DNAポリメラーゼを用いた。このPCR断片の片方の末端をKpnIで消化して得られた0.6 kbのDNA断片を精製し、さらに常法により平滑末端側の5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した。これら2つのPCR断片を同時にプラスミドpGEM-3Zf(+)のXbaI、KpnI部位にサブクローンした結果、平滑末端同士で連結された部分においてはTipA遺伝子のORF部分であるが、コードされるアミノ酸が置換されることなく、NcoI(1)認識部位が除去された。このプラスミドにpHN50と名前を付けた。
次にpHN33に存在する制限酵素認識部位NcoI(2)を除去するため以下の作業をおこなった。まず、プラスミドpHN33をテンプレートとして、配列表中の配列番号9、19に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。なおこのPCRにはプラチナPfx DNAポリメラーゼを用いた。このPCR断片の片方の末端をXbaIで消化して得られた0.8 kbのDNA断片を精製し、さらに常法により平滑末端側の5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した。一方、プラスミドpHN33をテンプレートとして、配列表中の配列番号20、12に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。なおこのPCRにはプラチナPfx DNAポリメラーゼを用いた。このPCR断片の片方の末端をKpnIで消化して得られた0.3 kbのDNA断片を精製し、さらに常法により平滑末端側の5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した。これら2つのPCR断片を同時にプラスミドpGEM-3Zf(+)のXbaI、KpnI部位にサブクローンした結果、平滑末端同士で連結された部分においてはTipA遺伝子のORF部分であるが、コードされるアミノ酸が置換されることなく、NcoI(2)認識部位が除去された。このプラスミドにpHN51と名前を付けた。
最後に以下の作業を行った。pHN50をXbaIとSacIで二重消化して得られた0.7kbのDNA断片とpHN51をSacIとKpnIで二重消化した0.4kbの断片を同時にプラスミドpGEM-3Zf(+)のXbaI、KpnI部位にサブクローンした。結果、NcoI(1)とNcoI(2)両方の制限酵素部位を欠いたTipA遺伝子を持つプラスミドを取得し、これにpHN62と名前をつけた。
(5) ベクタープラスミドpHN153の構築
目的のタンパク質を誘導的に発現せしめることができるかどうか確認するために、TipA遺伝子のプロモーターの下流にレポーター遺伝子としてThermoplasma acidophilum由来のプロリンイミノペプチダーゼ(Tamura et al., FEBS Lett. 398 101-105 [1996]:以下PIPと略記する)をコードする遺伝子のORFを連結し、さらにその下流に転写のリードスルーを抑制するために転写終結配列を連結した。以下に具体的に述べる。
前記(4)にて精製したStreptomyces coelicolor A3(2)株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列表中の配列番号21、22に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、TipA遺伝子のプロモーター配列を含む0.2 kbの増幅されたDNAを得た。なおこのPCRにはプラチナPfx DNAポリメラーゼを用いた。この断片を精製し、常法により5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した後、プラスミドpBluescript II SK (+)のSmaI部位にサブクローンした(サブクローンされた向きはDNAの5’方向からKpnI認識部位-TipA遺伝子プロモーター配列-SacI認識部位である)。このプラスミドにpHN150uと名前を付けた。
次に、プラスミドpRSET-PIP (Tamura et al., FEBS Lett. 398 101-105 [1996])をテンプレートとして、配列表中の配列番号23,24に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。なお、配列表中の配列番号24のプライマーはPIP遺伝子の終止コドンを除いて、かつタンパク質の精製を容易にするために6×HisタグがPIPタンパク質のC末端に付くように設計されている。6×Hisタグは、6つの連続したヒスチジン残基から成る連続配列で、これを融合したタンパク質は、ニッケルイオン等に高い親和性を示すようになる。従って、ニッケルイオン等を用いた金属キレートクロマトグラフィーで精製が容易になる(Crowe et al., Methods Mol. Biol. 31 371-387 [1994])。このPIP遺伝子を含む0.9 kbのDNA断片を制限酵素NcoIとSpeIで二重消化し、pHN150uのNcoI、SpeI部位にサブクローンした結果、TipA遺伝子のプロモーター配列のすぐ下流にPIP遺伝子のORFを含むプラスミドが作成され、pHN151uと名前を付けた。
次に、前記(4)にて精製したRhodococcus erythropolis JCM3201株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列表中の配列番号25,26に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、ThcA遺伝子の転写終結配列(Nagy et al., J. Bacteriol. 177 676-687 [1995])を含むDNAを得た。この0.2kbのDNA断片を制限酵素SpeIとXbaIで二重消化し、pHN151uのSpeI、XbaI部位にサブクローンした。その結果、TipA遺伝子のプロモーター配列のすぐ下流にPIP遺伝子のORFを含み、またそのすぐ下流にThcA遺伝子の転写終結配列を含むプラスミドが作成され、pHN153と名前を付けた。
(6) ベクタープラスミドpHN169の構築
Rhodococcus erythropolisをプラスミドで形質転換するためには適当な形質転換マーカーが必要になる。そこでRhodococcus属細菌内で機能する強力なプロモーターの下流に薬剤耐性遺伝子を連結し、使用することとした。プロモーターとしては、Streptomyces属細菌由来の Elongation factor TuをコードするTuf1遺伝子プロモーターを用いることとしたが、これは同プロモーターが強力に下流の遺伝子を転写せしめるとの報告があるからである(Wezel et al., Biochim. Biophys. Acta 1219 543-547 [1994])。また、薬剤耐性遺伝子は入手が容易なテトラサイクリン耐性遺伝子を用いた。以下に具体的に述べる。
前記(4)にて精製したStreptomyces coelicolor A3(2)株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列表中の配列番号27、28に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、Tuf1遺伝子のプロモーター配列を含む0.2 kbの増幅されたDNAを得た。なおこのPCRにはプラチナPfx DNAポリメラーゼを用いた。この断片を精製し、常法により5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した後、プラスミドpBluescript II SK (+) のHincII部位にサブクローンした(サブクローンされた向きはDNAの5’方向からKpnI認識部位-Tuf1遺伝子プロモーター配列-EcoRI認識部位である)。このプラスミドにpHN158と名前を付けた。
次に、プラスミドpACYC184(Rose, Nucleic Acids Res. 16 355 [1988])をテンプレートとして、配列表中の配列番号29、30に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、テトラサイクリン耐性遺伝子を含むDNAを得た。この1.3kbのDNA断片を制限酵素XhoIとSpeIで二重消化し、pHN158のSalI、SpeI部位にサブクローンした結果、Tuf1遺伝子のプロモーター配列のすぐ下流にテトラサイクリン耐性遺伝子を含むプラスミドが作成され、pHN159と名前を付けた。
次にpHN159に存在する制限酵素認識部位BamHIを除去するため以下の作業をおこなった。まず、プラスミドpHN159をテンプレートとして、配列表の配列番号31、32に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。なおこのDNA断片はPfu turbo DNA ポリメラーゼを用いたため、その末端は平滑末端である。このPCR断片の片方の末端をXhoIで消化して得られた0.5 kbのDNA断片を精製し、さらに常法により平滑末端側の5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した。一方、プラスミドpHN159をテンプレートとして、配列表中の配列番号33、34に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。なおこのPCRにはPfu turbo DNAポリメラーゼを用いた。このPCR断片の片方の末端をNotIで消化して得られた1.1kbのDNA断片を精製し、さらに常法により平滑末端側の5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した。これら2つのPCR断片を同時にプラスミドpBluescript II SK (+)のXhoI、NotI部位にサブクローンした結果、平滑末端同士で連結された部分においてはテトラサイクリン耐性遺伝子のORF部分であるが、コードされるアミノ酸が置換されることなく、BamHI部位が除去された。このプラスミドにpHN165と名前を付けた。
次にpHN159に存在する制限酵素認識部位SalIを除去するため以下の作業をおこなった。まず、プラスミドpHN159をテンプレートとして、配列表中の配列番号31、35に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。なおこのPCRにはPfu turbo DNAポリメラーゼを用いた。このPCR断片の片方の末端をXhoIで消化して得られた0.8 kbのDNA断片を精製し、さらに常法により平滑末端側の5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した。一方、プラスミドpHN159をテンプレートとして、配列表中の配列番号36、34に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。なおこのPCRにはPfu turbo DNA ポリメラーゼを用いた。このPCR断片の片方の末端をNotIで消化して得られた0.8 kbのDNA断片を精製し、さらに常法により平滑末端側の5’末端をT4-ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した。これら2つのPCR断片を同時にプラスミドpBluescript II SK (+) のXhoI、NotI部位にサブクローンした結果、平滑末端同士で連結された部分においてはテトラサイクリン耐性遺伝子のORF部分であるが、コードされるアミノ酸が置換されることなく、SalI認識部位が除去された。このプラスミドにpHN166と名前を付けた。
最後に以下の作業を行った。pHN166をSphIとSpeIで二重消化して得られた0.9 kbのDNA断片をpHN165のSphI、SpeI部位にサブクローンした。結果、BamHIとSalI両方の制限酵素認識部位を欠くテトラサイクリン耐性遺伝子クローンを取得し、このプラスミドにpHN169と名前をつけた。
(7) ベクタープラスミドpHN170、pHN171の構築
前記(2)から(6)までに分離してきた遺伝子群を連結し、Rhodococcus属細菌内で誘導可能な発現ベクターを構築するために以下の作業を行った。
pHN143をSacIで消化して得られた1.1 kbのDNA断片をpHN136のSacI部位にサブクローンした(サブクローンされた向きはDNAの5’方向から推定RepB遺伝子ORF-tsr遺伝子ORF-アンピシリン耐性遺伝子ORFである)。その結果できたプラスミドにpHN144と名前をつけた。
次に、pHN62をXbaIとKpnIで二重消化して得られた1.1 kbのDNA断片をpHN144のXbaI、KpnI部位にサブクローンした。その結果できたプラスミドにpHN152と名前をつけた。
次に、pHN153をBsrGIとXbaIで二重消化して得られた1.2 kbのDNA断片をpHN152のBsrGI、SpeI部位にサブクローンした。その結果できたプラスミドにpHN154と名前をつけた。
次に、pHN169をXbaIとSpeIで二重消化して得られた1.6 kbのDNA断片をpHN154のXbaI部位にサブクローンした(サブクローンされた向きはDNAの5’方向からtsr遺伝子ORF-テトラサイクリン耐性遺伝子ORF-ThcA遺伝子プロモーター配列である)。その結果TipA遺伝子プロモーターの制御下に置かれたPIP遺伝子を含むプラスミドが作成され、できたプラスミドにpHN170と名前をつけた。
また組み換えタンパク質の高発現化のため、TipA遺伝子プロモーター下流のリボソーム結合部位を翻訳効率の良いとされるラムダファージgene10由来の配列(Gold and Stormo, Methods Enzymol. 185 89-93 [1990])に変化させた。以下に具体的に述べる。
プラスミドpHN170をテンプレートとして、配列表中の配列番号21,37に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、TipA遺伝子プロモーターとラムダファージgene10由来リボソーム結合部位からなるハイブリッドプロモーター(以下TipA-LG10プロモーターと表記する)を得た。この0.2 kbのDNA断片を制限酵素BsrGIとNcoIで二重消化し、pHN170のBsrGI、NcoI部位にサブクローンした。その結果TipA-LG10プロモーターの制御下に置かれたPIP遺伝子を含むプラスミドが作成され、できたプラスミドにpHN171と名前をつけた。
(8) ベクタープラスミドpTip-NH1、pTip-CH1、pTip-LNH1、pTip-LCH1の構築
前記(7)で述べたプラスミドからレポーターであるPIP遺伝子を除き、マルチクローニング部位を導入するため以下の作業を行った。
配列表中の配列番号38、39に記載の合成オリゴデオキシリボヌクレオチドはマルチクローニング部位になる配列を含み、お互いに相補的な配列を持つ。これら2つを等モル量ずつ混合し、70 ℃で10分処理し、20分かけて室温に冷却し、2本鎖化させた。その結果、その末端はNcoIとSpeIで二重消化されたベクターと連結可能な状態になり、この2本鎖化した合成DNAをpHN170のNcoI、SpeI部位にサブクローンした。その結果できたプラスミドにpTip-NH1と名前をつけた。また、配列表中の配列番号40、41に記載の合成オリゴデオキシリボヌクレオチド(マルチクローニング部位になる配列を含み、お互いに相補的な配列を持つ)を同様に2本鎖化させた合成DNAをpHN170のNcoI、SpeI部位にサブクローンした。その結果できたプラスミドにpTip-CH1と名前をつけた。
前記(7)で述べたTipA遺伝子プロモーター配列とラムダファージgene10由来リボソーム結合部位からなるハイブリッドDNAを制限酵素BsrGIとNcoIで二重消化し、pTip-NH1とpTip-CH1のBsrGI、NcoI部位にそれぞれサブクローンした。結果得られたプラスミドにpTip-LNH1、pTip-LCH1とそれぞれ名前を付けた。
(9) ベクタープラスミドpTip-NH2、pTip-CH2、pTip-LNH2、pTip-LCH2の構築
前記(8)で述べたプラスミドpTip-NH1、pTip-CH1、pTip-LNH1、pTip-LCH1において、マルチクローニング部位の最も上流のNcoI部位をNdeIに変更するために以下の作業を行った。
プラスミドpHN170をテンプレートとして、配列表中の配列番号21、42に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、TipA遺伝子プロモーターを含むDNAを得た。この0.2 kbのDNA断片を制限酵素BsrGIとNdeIで二重消化し、pHN170のBsrGI、NdeI部位にサブクローンした。結果得られたプラスミドにpHN183と名前を付けた。
配列表中の配列番号43、44に記載の合成オリゴデオキシリボヌクレオチドはマルチクローニング部位になる配列を含み、お互いに相補的な配列を持つ。これら2つを等モル量ずつ混合し、70 ℃で10分処理し、20分かけて室温に冷却し、2本鎖化させた。その結果、その末端はNdeIとSpeIで二重消化されたベクターと連結可能な状態になり、この2本鎖化した合成DNAをpHN183のNdeI、SpeI部位にサブクローンした。その結果できたプラスミドにpTip-NH2と名前をつけた。また、配列表中の配列番号45、46に記載の合成オリゴデオキシリボヌクレオチド(マルチクローニング部位になる配列を含み、お互いに相補的な配列を持つ)を同様に2本鎖化させた合成DNAをpHN183のNdeI、SpeI部位にサブクローンした。その結果できたプラスミドにpTip-CH2と名前をつけた。
プラスミドpTip-LNH1をテンプレートとして、配列表中の配列番号21、47に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、TipA遺伝子プロモーターとラムダファージgene10由来リボソーム結合部位からなるハイブリッドDNAを得た。この0.2kbのDNA断片を制限酵素BsrGIとNdeIで二重消化し、pTip-NH2とpTip-CH2のBsrGI、NdeI部位にそれぞれサブクローンした。結果得られたプラスミドにpTip-LNH2、pTip-LCH2とそれぞれ名前を付けた。
(10) ベクタープラスミドpTip-CH1.1、pTip-CH2.1、pTip-LCH1.1、pTip-LCH2.1の構築
前記(8)及び(9)で述べたプラスミドpTip-CH1、pTip-CH2、pTip-LCH1、pTip-LCH2において、マルチクローニング部位のXhoI部位以降の読み枠を市販のpETベクター(Novagen社)の読み枠と一致させるために以下の作業を行った。
プラスミドpTip-CH1をテンプレートとして、配列表中の配列番号21、48に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、TipA遺伝子プロモーターとマルチクローニング部位を含むDNAを得た。この0.3 kbのDNA断片を制限酵素BsrGIとSpeIで二重消化し、pTip-CH1のBsrGI、SpeI部位にサブクローンした。結果得られたプラスミドにpTip-CH1.1と名前を付けた。
プラスミドpTip-CH2をテンプレートとして、配列表中の配列番号21、48に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、TipA遺伝子プロモーターとマルチクローニング部位を含むDNAを得た。この0.3 kbのDNA断片を制限酵素BsrGIとSpeIで二重消化し、pTip-CH1のBsrGI、SpeI部位にサブクローンした。結果得られたプラスミドにpTip-CH2.1と名前を付けた。
プラスミドpTip-LCH1をテンプレートとして、配列表中の配列番号21、48に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、TipA-LG10プロモーターとマルチクローニング部位を含むDNAを得た。この0.3kbのDNA断片を制限酵素BsrGIとSpeIで二重消化し、pTip-CH1のBsrGI、SpeI部位にサブクローンした。結果得られたプラスミドにpTip-LCH1.1と名前を付けた。
プラスミドpTip-LCH2をテンプレートとして、配列表中の配列番号21、48に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、TipA-LG10プロモーターとマルチクローニング部位を含むDNAを得た。この0.3 kbのDNA断片を制限酵素BsrGIとSpeIで二重消化し、pTip-CH1のBsrGI、SpeI部位にサブクローンした。結果得られたプラスミドにpTip-LCH2.1と名前を付けた。
(11) ベクタープラスミドpHN172、pHN173の構築
発現の誘導が厳密に調節されているかを調べるために以下のようなコントロール実験用プラスミドを作成した。
pHN169をXbaIとSpeIで二重消化して得られた1.6 kbのDNA断片をpHN144のXbaI部位にサブクローンした(サブクローンされた向きはDNAの5’方向からtsr遺伝子ORF-テトラサイクリン耐性遺伝子ORF-アンピシリン耐性遺伝子ORFである)。その結果できたプラスミドにpHN172と名前をつけた。
次に、pHN153をBsrGIとXbaIで二重消化して得られた1.2 kbのDNA断片をpHN144のBsrGI、SpeI部位にサブクローンした。その結果できたプラスミドにpHN164と名前をつけた。次いで、pHN169をXbaIとSpeIで二重消化して得られた1.6kbのDNA断片をpHN164のXbaI部位にサブクローンした(サブクローンされた向きはDNAの5’方向からtsr遺伝子ORF-テトラサイクリン耐性遺伝子ORF-アンピシリン耐性遺伝子ORFである)。その結果できたプラスミドにpHN173と名前をつけた。
pHN170は、TipA遺伝子プロモーター、その下流にPIP ORF、さらにその下流にThcA遺伝子転写終結配列、の3因子が連結された遺伝子カセット(以下Expression cassetteと表記)と、ThcA遺伝子プロモーター、その下流にTipA遺伝子、の2因子が連結された遺伝子カセット(以下Inducer cassetteと表記)両方をもつ。pHN173はExpression cassetteのみをもち、pHN172は両cassetteを持たない。
(12) R. erythropolisに存在する新規内在性プラスミドpRE8424の分離
本発明者はR. erythropolisに存在する新規内在性プラスミドを探索し、R. erythropolis JCM2893、R. erythropolis JCM2894、R. erythropolis DSM43200、R. erythropolisDSM8424の4株から小型の環状プラスミドを分離し、それぞれpRE2893、pRE2894、pRE43200、pRE8424と名前を付けた。
これらのうち、pRE2893、pRE2894、pRE43200のDNA配列を一部決定したところ、R. erythropolis JCM2895株から分離したpRE2895(前述)とほぼ同一の配列を有していた。pRE2895はプラスミドの複製に関与するRepA、RepBタンパク質をコードする遺伝子をRepABオペロンとして有しているが、これらのタンパク質はMycobacterium fortuitumから分離されたpAL5000プラスミドがコードするRepA、RepBタンパク質と高度に類似しており、pRE2895とpAL5000が類似の様式で自律複製していることが示唆された(Stolt and Stoker, Microbiology 142 2795-2802 [1996])。pRE2895とpAL5000の複製様式は明らかでないが、両プラスミドのRepAタンパク質がColE2プラスミドのRepタンパク質に相同性があるため、ColE2プラスミド同様「θ型」の自律複製様式を有することが考えられた(Hiraga et al., J. Bacteriol. 176 7233-7243 [1994])。
一方、pRE8424はpRE2895と全く異なるDNA配列を有していた。このプラスミドは6つのオープンリーディングフレーム(ORF;ORF1からORF6)を持ち、うちORF6がコードするタンパク質はローリングサークル様式で自律複製する一群のプラスミドが持つRep遺伝子がコードするタンパク質と相同性が高かった(Khan, Microiol. Mol. Biol. Rev. 61 442-455 [1997])。中でも、 Arcanobacterium pyrogenes由来pAP1(Billington et al., J. Bacteriol. 180 3233-3236 [1998])、Streptomyces lividans由来pIJ101(Kendall et al., J. Bacteriol. 1704634-4651 [1988])、Streptomyces phaeochromogenes由来pJV1(Servin-Gonzalez et al., Microbiology 141 2499-2510 [1995])、Brevibacterium lactofermentum由来pBL1(Fernandez-Gonzalez et al., J. Bacteriol. 176 3154-3161 [1994])、Streptomyces nigrifaciens由来pSN22(Kataoka et al., Plasmid 32 55-69 [1994])と相同性が高かった。これらのプラスミドは、いずれもローリングサークル型プラスミドの中でもpIJ101/pJV1ファミリーに属するもので(Khan, Microiol. Moi. Biol. Rev. 61 442-455 [1997])、pRE8424もこのファミリーに属するローリングサークル型プラスミドである可能性が示唆された。以下、ORF6Repと記載する。
一般に、ローリングサークル型プラスミドが宿主細胞内で自律複製するためには、前出のRepの他に、2本鎖複製起点(double-stranded origin;以下DSO)、1本鎖複製起点(single-stranded origin;以下SSO)となるDNA配列が必要である。本発明者は様々なpRE8424の変異体を作成し、R. erythropolisを形質転換し、様々な解析を行い、DSO、SSO配列の所在を同定した。SSO配列は一般に、ステム - ループ構造など高度な二次構造を持ち、さらに、pIJ101/pJV1ファミリーのプラスミドの場合、ステム - ループ構造のループ部分にTAGCGTなどからなる共通配列が存在する場合が多い。pRE8424のSSOも高度な二次構造を持ち、ループ部分にTAGCGG配列を持つ。
本発明者は、上記TAGCGGに変異を持つpRE8424の派生プラスミドがR. erythropolis細胞内に大量に一本鎖DNAとして蓄積していたことを見いだした。一本鎖DNAの蓄積はローリングサークル型プラスミドのホールマークであることから(Khan, Microiol. Moi. Biol. Rev. 61 442-455 [1997])、pRE8424はローリングサークル様式で自律複製していることが明らかとなった。
pRE8424の派生プラスミドが宿主細胞であるR. erythropolis内で自律複製するためには、Rep、DSO、SSOを含む2.0 kbの領域、で十分であった(以下参照)。
(13) pHN372の構築
pRE8424の自律複製に必須な2.0 kbの領域には、不必要な制限酵素認識部位BamHIが存在していたので、これを除去する作業を以下のように行った。
pRE8424をテンプレートとし、配列表中の配列番号49(sHN389)、50(sHN390)に記載の合成オリゴデオキシリボヌクレオチドプライマー(以下プライマーと略記)を用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた1.0 kbの断片はRepの5’末端側の一部を含む。この断片の5’末端をリン酸化し、pBluescript II SK (+)(STRATAGENE社製)のHincII部位に導入し、できたプラスミドにpHN371と名前を付けた。pRE8424をテンプレートとし、配列表中の配列番号51(sHN391)、52(sHN321)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた1.0 kbの断片はRepの3’末端側の一部を含む。この断片をBamHIで消化した後、5’末端をリン酸化し、pHN371のEcoRV / BglII部位に導入した。できたプラスミドにpHN372と名前を付けた。pHN372は、pRE8424の自律複製に必須な2.0 kbの領域を持ち、かつ、pRE8424には存在したBamHI部位は除去されている。また、BamHI部位の除去は、pRE8424の自律複製の機能には影響しなかった。
(14) pHN346の構築
Rhodococcus属細菌の形質転換体選択マーカーとして、これまでにしめしたベクターの構築においてはテトラサイクリン耐性遺伝子のみ開発していたが、複数のプラスミドで形質転換するためには、別の抗生物質に対する耐性遺伝子を新規に開発する必要がある。本発明者は、R. erythropolis DSM 313株がクロラムフェニコールに対して耐性をであることを見いだし、耐性を付与している遺伝子を分離することとした。Rhodococcus属細菌からは、すでに2つのクロラムフェニコール耐性遺伝子が分離されており(cmrA遺伝子、ならびにcmr遺伝子)、これらの遺伝子は互いに高い相同性を有している(De Mot et al., Microbiology 143 3137-3147 [1997]、Desomer et al., Mol. Microbiol. 6 2377-2385 [1992])。
R. erythropolis DSM 313株のクロラムフェニコール耐性遺伝子もこれらに相同であることが予想されたので、R. erythropolis DSM 313株ゲノムDNAをテンプレートとし、配列表中の配列番号53(sHN335)、54(sHN336)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。なお、該プライマーはcmrA遺伝子とcmr遺伝子において最も相同性が高かった配列をもとにデザインした。その結果、0.7 kbの増幅されたバンドが確認された。このPCR産物のDNA配列を決定したところ、cmrA遺伝子に極めて高い相同性を有していた。決定された配列を元に、配列表中の配列番号55(sHN349)、56(sHN351)に記載のプライマーを設計し、インバースPCR(Ochman et al., Genetics 120 621-623[1988])にてR. erythropolis DSM 313株のクロラムフェニコール耐性遺伝子の全長を分離した。テンプレートとして用いたDNAはR. erythropolis DSM313株のゲノムDNA 0.1 μgをSalIで切断し、リガーゼにより自己閉環化したものである。得られたPCR産物は2.3 kbで、この断片の全DNA配列を決定した。この断片中には1つのORFが存在し、この遺伝子にChlAと名前を付けた。
R. erythropolis DSM 313株ゲノムDNAをテンプレートとし、配列表中の配列番号57(sHN361)、58(sHN362)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた0.5 kbの断片はクロラムフェニコール耐性遺伝子の5’末端部分を含む。この断片をSacIで消化し、その5’末端をリン酸化した。一方、R. erythropolis DSM 313株ゲノムDNAをテンプレートとし、配列表中の配列番号59(sHN363)、60(sHN364)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた1.3 kbの断片はクロラムフェニコール耐性遺伝子の3’末端部分を含む。この断片をSpeIで消化し、その5’末端をリン酸化した。これら2つのDNA断片を同時にpBluescript II SK (+)のSacI / SpeI部位に導入し、できたプラスミドにpHN346と名前を付けた。pHN346は全長のクロラムフェニコール耐性遺伝子を含むが、該ORF中にもともと存在していたEcoRI部位が除かれている(ただし、コードするタンパク質のアミノ酸配列は変化しない)。
(15) Proline iminopeptidase(PIP)をレポーター遺伝子として有する誘導型発現ベクターの構築;pHN171、pHN379、pHN348、pHN380の構築
pHN346から1.8 kbのクロラムフェニコール耐性遺伝子を含む断片をXbaIとSpeIで切り出し、pHN154のXbaI部位に導入した。この結果できたプラスミドにpHN347と名前を付けた。pHN171から1.1 kbの断片をBsrGIとSpeIで切り出し、pHN347のBsrGI / SpeI部位に導入した。出来たプラスミドにpHN348と名前を付けた。
pHN171もpHN348もpTipベクターのMCSにレポーター遺伝子、PIPが導入された発現ベクターであるが、pHN171がテトラサイクリン耐性遺伝子を形質転換マーカーとして持つのに対して、pHN348がクロラムフェニコール耐性遺伝子を持っていることのみが異なる。また、いずれのプラスミドもTipA遺伝子プロモーターの下流に元来存在していたリボソーム結合部位配列(TipA-RBS)は翻訳効率の良い、バクテリオファージgene 10由来のリボソーム結合部位配列に変更されている(TipA-LG10プロモーター)。PIPのCの末端側には、タンパク質の精製を容易にするために6×Hisタグが付くように設計されている。6×Hisタグは、6つの連続したヒスチジン残基から成る連続配列で、これを融合したタンパク質は、ニッケルイオン等に高い親和性を示すようになる。従って、ニッケルイオン等を用いた金属キレートクロマトグラフィーで精製が容易になる(Crowe et al., Methods Mol. Biol. 31 371-387 [1994])。
上述のpHN171とpHN348のDNA配列のうち、pRE2895に由来するプラスミドの自律複製に必須な1.9 kbの領域を、pRE8424に由来するプラスミドの自律複製に必須な2.0 kbの領域に変更するために以下の作業を行った。
pHN171をテンプレートとし、配列表中の配列番号61(sHN368)、62(sHN373)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた0.2 kbの断片はチオストレプトン耐性遺伝子(Bibb et al., Mol.Gen.Genet. 199 26-36 [1985])の5’末端部分を含む。この断片をBsrGIとClaIで消化し、pHN171とpHN348のBsrGI / ClaI部位にそれぞれ導入した。この結果出来たプラスミドにそれぞれpHN357とpHN358と名前を付けた。pHN372から2.0 kbのpRE8424に由来するプラスミドの自律複製に必須な領域を含む断片をBsrGIとHpaIで切り出し、pHN357とpHN358のBsrGI / HpaI部位にそれぞれ導入した。この結果できたプラスミドにpHN379、pHN380とそれぞれ名前を付けた。
(16) pTipベクターの構築
pHN171、pHN348、pHN379、pHN380のPIP遺伝子の代わりに、MCSを導入し、8種類のpTipベクターを構築した過程を示す。なお、今回作成した、pTipベクターのうち、4つ(pTip-RT1、pTip-RT2、pTip-RC1、pTip-RC2;後述)は、これまでに記載のpTipベクターとは、Rhodococcus属細菌でプラスミドが自律複製するのに必要なDNA領域が異なり、これまでに記載のpTipベクター全てとRhodococcus属細菌内での不和合性を起こさない(後述)。また、残りの4つ(pTip-QT1、pTip-QT2、pTip-QC1、pTip-QC2;後述)は、これまでに記載のpTipベクターとはMCSの配列が一部異なっている。
配列表中の配列番号63、64に記載の合成オリゴデオキシリボヌクレオチドはMCS部位になる配列を含み、お互いに相補的な配列を持つ。これら2つを等モル量ずつ混合し、70 ℃で10分処理し、20分かけて室温に冷却し、2本鎖化させた(MCS type 1)。その結果、その末端はNcoIとSpeIで二重消化されたベクターと連結可能な状態になり、この2本鎖化した合成DNAをpHN379、pHN380のNcoI / SpeI部位にそれぞれサブクローンした。その結果できたプラスミドにpTip-RT1、pTip-RC1とそれぞれ名前をつけた。配列表中の配列番号65、66に記載の合成オリゴデオキシリボヌクレオチドを同様に2本鎖化させ(MCS type 2)、一方、pTip-LNH2から0.2 kbのTipA遺伝子プロモーターとLG10-RBSを含む断片をBsrGIとNdeIで切り出した。これら2つのDNA断片を同時に、pHN379とpHN380のBsrGI / SpeI部位にそれぞれ導入した。この結果できたプラスミドにpTip-RT2、pTip-RC2と名前を付けた。pTip-RT1から0.3 kbのTipA遺伝子プロモーター、LG10-RBS、MCS type 1を含む断片をBsrGIとSpeIで切り出し、pHN171とpHN348のBsrGI / SpeI部位にそれぞれ導入した。この結果できたプラスミドにpTip-QT1、pTip-QC1と名前を付けた。pTip-RT2から0.3 kbのTipA遺伝子プロモーター、LG10-RBS、MCS type 2を含む断片をBsrGIとSpeIで切り出し、pHN171とpHN348のBsrGI / SpeI部位にそれぞれ導入した。この結果できたプラスミドにpTip-QT2、pTip-QC2と名前を付けた。
(17) pHN231の構築
まず本発明者は、TipA遺伝子プロモーターに変異を導入して、誘導型から構成型プロモーターに改変することとした。TipA遺伝子プロモーター配列中の「Inverted repeat」領域にチオストレプトン - TipAタンパク質複合体が結合し、自らの遺伝子の転写を促進することは以前から知られていた(Holmes et al., EMBO J. 123183-3191 [1993])。そこで、本発明者は該DNA領域に、inverted repeat構造を破壊する変異を導入したら、TipA遺伝子プロモーターの転写活性に何らかの変化が現れるのではないかと考え、様々なTipA遺伝子プロモーター変異体を作成した。それらのうち、TipA遺伝子プロモーターの所謂-10領域(Fenton and Gralla. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98 9020-9025 [2001])に変異を導入したもの(CAGCGTからTATAATへの変異)では、チオストレプトン非存在下でも、レポーター遺伝子の発現が観察された。なお、このTATAATからなるDNA配列は、大腸菌において非常に強力なプロモーターとして機能するDNA配列中の-10領域によく見られる配列である。以上のことからこの変異TipA遺伝子プロモーターは構成型プロモーターであると結論された。また、この構成型プロモーターにNit(Non-Inducible TipA)プロモーターと名前を付けた。
Nitプロモーターを構築した過程を以下に示す。pHN150uをテンプレートとし、配列表中の配列番号67(sHN217)、68(sHN218)に記載のプライマーを用いてインバースPCRにてDNAの増幅を行った。なお、pHN150uは、p Bluescript II SK (+) のMCSに、野生型TipA遺伝子プロモーターがクローン化されたプラスミドで、また上記2つのプライマーはその5’末端がそれぞれリン酸化されている。このインバースPCR断片をリガーゼ反応により自己閉環化し、結果出来たプラスミドにpHN231と名前を付けた。pHN231はNitプロモーターがp Bluescript II SK (+) のMCSにクローン化された形になっている。
(18) PIPをレポーター遺伝子として有する構成型発現ベクターの構築;pHN407、pHN385、pHN409、pHN389の構築
pTip-NH1をテンプレートとし、配列表中の配列番号69(sHN395)、70(sHN396)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた1.6 kbの断片はテトラサイクリン耐性遺伝子を含む。この断片をHpaIとKpnIで消化し、pHN379のHpaI / KpnI部位に導入した。この結果出来たプラスミドにpHN381と名前を付けた。pHN346をテンプレートとし、配列表中の配列番号71(sHN397)、72(sHN398)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた1.8 kbの断片はクロラムフェニコール耐性遺伝子を含む。この断片をHpaIとKpnIで消化し、pHN380のHpaI / KpnI部位に導入した。この結果出来たプラスミドにそれぞれpHN382と名前を付けた。pHN231から0.2 kbのNitプロモーターを含む断片をBsrGIとNcoIで切り出し、pHN381とpHN382のBsrGI / NcoI部位にそれぞれ導入した。この結果できたプラスミドにpHN383、pHN387とそれぞれ名前を付けた。pHN231をテンプレートとし、配列表中の配列番号73(sHN147)、74(sHN376)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた0.2 kbの断片はNitプロモーターのうちRBS部分は含んでいない。この断片をBsrGIとXbaIで消化し、pHN381とpHN382のBsrGI / XbaI部位にそれぞれ導入した。この結果出来たプラスミドにpHN385、pHN389とそれぞれ名前を付けた。また、このNitプロモーター(RBS部分除く) - LG10RBSのハイブリッドDNAをNit-LG10プロモーターとする。pHN171をテンプレートとし、配列表中の配列番号75(sHN388)、76(sHN120)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた1.9 kbの断片はpRE2895由来のRepABオペロンを含む。この断片をBsrGIとHpaIで消化し、pHN387とpHN389のBsrGI / HpaI部位にそれぞれ導入した。この結果出来たプラスミドにpHN407、pHN409とそれぞれ名前を付けた。
またコントロール実験用プラスミドとして、pHN387から、0.2 kbのNitプロモーターをBsrGIとNcoIで切り出した。このDNA断片をpHN380のBsrGI / NcoI部位に導入した。この結果できたプラスミドにpHN410と名前を付けた。
(19) pNitベクターの構築
pHN407、pHN385、pHN409、pHN389のPIP遺伝子の代わりに、MCSを導入し、8種類のpNitベクターを構築した過程を示す。
pTip-RT1から2.2 kbの断片をNcoIとKpnIで切り出し、pHN407、pHN385、pHN409、pHN389のNcoI / KpnI部位にそれぞれ導入した。この結果できたプラスミドにpNit-QT1、pNit-RT1、pNit-QC1、pNit-RC1とそれぞれ名前を付けた。pHN385をテンプレートとし、配列表中の配列番号73(sHN147)、77(sHN160)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた0.2 kbの断片はNit-LG10プロモーターを含む。この断片をBsrGIとNdeIで消化した。一方、pTip-RT2から、2.0 kbのMCS type 2、アンピシリン耐性遺伝子、ColE1を含む断片をNdeIとKpnIで切り出した。上記2つのDNA断片を同時に、pHN407、pHN385、pHN409、pHN389のBsrGI / KpnI部位にそれぞれ導入した。この結果できたプラスミドにpNit-QT2、pNit-RT2、pNit-QC2、pNit-RC2とそれぞれ名前を付けた。
(20) GFP発現ベクターの構築
まず、pHN187をテンプレートとし、配列表中の配列番号78(sHN337)、79(sHN338)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた0.2 kbの断片はGFP遺伝子の5’末端側を含む。この断片をNcoIで消化し、この断片の5’末端をリン酸化した。一方、pHN187をテンプレートとし、配列表中の配列番号80(sHN339)、81(sHN340)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた0.5 kbの断片はGFP遺伝子の3’末端側を含む。この断片をBgllIで消化し、その5’末端をリン酸化した。これら2つのDNA断片を同時にpNit-QT1とpNit-RT1のNcoI / BglII部位にそれぞれ導入し、できたプラスミドにそれぞれpHN425、pHN426と名前を付けた。pHN425、pHN426は全長のGFP遺伝子含み、GFPのC末端側に6×Hisタグが付加されるような配列が融合されている。また、GFP遺伝子内部に存在していたNcoI部位は上記作業中に除かれているが、GFPの機能に変化はない。
〔実験手法〕
以下の実施例1から実施例7において繰り返し用いた実験手法を列挙する。
プラスミドは全て、常法(Sambrook et al., Molecular Cloning: a laboratory manual, 2nd edition [1989], Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)に従って構築した。プラスミドから切り出したDNA断片は1.0%アガロースゲル電気泳動に供し、目的のDNA断片を切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、使用説明書に準じて精製した。リガーゼ反応にはNew England Biolabs社製のT4 DNA ligaseを用いた。大腸菌の培養はLuria Broth(LB; 1% Bacto trypton, 0.5% Bacto yeast extract, 1% 塩化ナトリウム)で行った。ポリメラーゼチェーンリアクション法(以下、PCRと略記: Saiki et al., Science, 239 487-491 [1988])によるDNAの増幅にはすべてKOD Plus [Toyobo社製]もしくはPfu turbo[STRATAGENE社製]を用いた。DNA断片の5’末端をリン酸化する際には、T4-ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolab社製)を用いた。RNaseフリーの超純水、ジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水は、超純水に終濃度0.1%のDEPCを加え、一晩室温で撹拌し、その後45分間オートクレーブすることで作成した。RNaseの混入を避けるため、試薬等はDEPC処理水で溶解し、無細胞翻訳の反応液にもDEPC処理水を用いた。以下に書かれた「20種類のアミノ酸」とは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、アルギニン塩酸塩、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン塩酸塩、プロリンを指し、全て和光純薬社製のものを用いた。無細胞翻訳後のサンプルをSDS-PAGEに供するために、反応液8 μlを取り出し、冷却アセトンを32 μl加え、氷上に15分静置し、20,000 x gで5分遠心分離し、上清を捨て、沈殿物を52 μlの1 x SDSサンプルバッファー(80 mM Tris-HCl [pH6.8]、2% SDS、10%グリセリン、5% 2-メルカプトエタノール、0.2 mg/mlブロモフェノールブルー)で溶解し、96℃で4分加熱した。イムノブロッティングはBio-Rad社製TRANS-BLOT SD SEMI-DRY TRANSFER CELLを用い、タンパク質をアクリルアミドゲルからPVDF膜(Millipore社製Immobilon-P, 0.45 μm)に転写し、一次抗体としてCOVANCE社製Monoclonal Antibody 6-Hisを、二次抗体としてPromega社製Anti-Mouse IgG (H&L) AP conjugateを用い、Amersham Bioscience社製ECF Substrateを用い、Bio-Rad社製Molecular-imager FX Proを用いて検出した。図7のイムノブロッティングではPVDF膜の代わりにニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell社製PROTRAN, 0.22 μm)を、ECF Substrateの代わりにPromega社製のNBTとBCIPを用いて発色させた。
〔実施例1〕
鋳型となるプラスミドDNA(pHN368)の構築、精製
Trcプロモーター制御下にPIPを導入するために、以下の作業を行った。
本発明者が先にRhodococcus erythropolis JCM2895株から得た内在性プラスミドpRE2895から構築したPIP遺伝子を含むプラスミドであるpHN170(特願2002-235008、PCT/JP03/10209;配列表中の配列番号102)から0.9 kbのPIPを含む断片をNcoIとSalIで切り出し、pTrc99Aベクター(GenBank Accession Number U13872)のNcoI / SalI部位に導入した。図1にpHN170の制限地図を示す。できたプラスミドにpH368と名前を付けた。なお、該PIPは6つの連続したヒスチジン残基から成るタグ(6×Hisタグ)をコードする配列がその3'末端側に融合されている。
また、プラスミドDNAはQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用い、使用説明書通りに精製した後、RNaseを完全に取り除くため、終濃度50μg / mlのプロテイナーゼKで、37 ℃で1時間処理し、次にプロテイナーゼKを取り除くため、フェノール-クロロホルム(1 : 1)で2回抽出した。これをエタノール沈殿で精製した後、プラスミドDNAが1μg /μl程度になるようにDEPC処理水で溶解した。
〔実施例2〕
P. fluorescensのtRNAの精製
P. fluorescensのtRNAはNucleoBond RNA/DNA Kit(Clontech社製)を用い、その使用説明書通りに精製し、DEPC処理水に溶解した。
〔実施例3〕
P. fluorescensのS30エクストラクトの調製
P. fluorescensのS30エクストラクトはPrattらの方法に準じて調製した(Pratt, Transcription and Translation - a practical approach, Henes, B. D. and Higgins, S. J. ed., IRL Press, Oxford., 179-209 [1984])。以下に詳細するが、特に明記しない限り、その作業は4 ℃で行った。
まず、P. fluorescens DSM50090株(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)を1リットルの2×YT培地(1.6% Bacto trypton, 1.0% Bacto yeast extract, 0.5% 塩化ナトリウム)で、23 ℃にて培養し、600 nmの波長で測定したオプティカルデンシティー(O.D.600)が0.8になるまで培養した。氷上で、培養液を10分間冷却した後、菌体を回収し、50 mlのS30バッファーA(10 mM Tris-Acetate [pH 7.4]、1 mM ジチオスレイトール[DTT]、14 mM酢酸マグネシウム、60 mM酢酸カリウム、0.5 μl/ml 2-メルカプトエタノール)で、菌体を2回洗浄した。さらに、15 mlのS30バッファーB(10 mM Tris-Acetate [pH 7.4]、1 mM DTT、14 mM酢酸マグネシウム、60 mM酢酸カリウム、0.067μl / ml 2-メルカプトエタノール)で、1回菌体を洗浄した。菌体の湿重量1グラムあたり、1.27 mlのS30バッファーC(10 mM Tris-Acetate [pH 7.4]、1 mM DTT、14 mM酢酸マグネシウム、60 mM酢酸カリウム)で菌体を懸濁し、菌体の懸濁液1.2 mlあたり1 gのガラスビーズ(直径0.105〜0.125ミリメートル;乾熱滅菌処理済み)を加えた。これをFast-prep FP120(SAVANT社製)にて6メートル毎秒の速度で、30秒間往復振とうさせることで、細胞を破壊した。なお、この細胞破砕はマイナス1℃の部屋で、速やかに行った。このエクストラクトからガラスビーズを取り除き、1 ml あたり1.8 μlの0.55 MのDTTを加えた。30,000×gにて30分間遠心し、その上清をもう一度30,000×gにて30分間した。その上清を取り、1 mlエクストラクトあたり300μlのPI mixture(0.3 M Tris-Acetate [pH 7.4]、4.4 mM DTT、9.4 mM酢酸マグネシウム、13.2 mM ATP [Na2;pH 7.0]、84 mMホスホエノールピルビン酸[pH 7.0]、各0.044 mMずつの20種類のアミノ酸、13 U / ml ピルビン酸キナーゼ[ロシュ・ダイアグノスティックス社製])を加え、23℃で、穏やかに振とうしながら90分インキュベートした。次に、エクストラクトを透析チューブ(Dispo / Dialyzer 5 ml MWCO 8000;Spectrum社製)に移し、150 mlのS30バッファーCに対して透析を3回、1時間ずつ行った。透析後、4,000 × gで、10分遠心し、この上清をP. fluorescensのS30エクストラクトとした。S30エクストラクトは分注し、使用するまでマイナス80 ℃で保存した。
〔実施例4〕
P. fluorescensのS30エクストラクトを用いたタンパク質の合成
30 μl でタンパク質を合成する時は、1 μg 鋳型プラスミドDNA、2 μg P. fluorescens tRNA(実施例3)、0.3 M 酢酸マグネシウム 1 μl、40%ポリエチレングリコール6000 1.5 μl、1 M AP(Lithium potassium acetyl phosphate;SIGMA社製) 1 μl、低分子量ミックス(226 mM Tris-Acetate [pH 7.4]、4.9 mM ATP [Na2]、3.4 mM GTP [Na2]、3.4 mM CTP [Na2]、3.4 mM UTP [Na2]、160 mM クレアチンリン酸、0.62 mg / ml クレアチンキナーゼ[Boeringer Manheim社製]、各2.1 mMずつの20種類のアミノ酸、7.7%ポリエチレングリコール6000、0.14 mg / ml N5-ホルミル-5, 6, 8, -テトラヒドロ葉酸、641 mM 酢酸カリウム、144 mM 酢酸アンモニウム) 7.5 μl、P. fluorescens S30エクストラクト 12 μl を混合し、DEPC処理水で30 μlに調整した。
上述の条件でpHN368を鋳型プラスミドDNAとし、4 ℃、8 ℃、16 ℃、23 ℃、30 ℃、37 ℃でPIPを合成した。また、コントロールとして上述の条件中、P. fluorescens S30エクストラクト12 μlをプロメガ社製大腸菌S30エクストラクト(S30 Extract System for Circular DNA)12μlに、P. fluorescens tRNA 2 μgをSIGMA社製大腸菌tRNA 2 μg(Ribonucleic acid, transfer from Escherichia coli)に置き換えて、同様にPIPを合成する実験も行った。各温度で、合成開始から一定時間ごとにPIPペプチダーゼ活性を測定した結果を図2に示す。
PIPペプチダーゼ活性は以下のように測定した。PIPを合成した反応液中から3 μlを取り出し、27 μlのS30バッファーCで希釈した。このサンプルを60 ℃で10分間加温することで、S30エクストラクト中に内在する酵素群を失活させた(Thermoplasma acidophilumのPIPは60 ℃が至適温度)。そこに、1 μlの10 mM H - Pro - AMC(Bachem社製)を基質として加え、60 ℃で30分間インキュベートした。そこに、70 μlの5% SDS(硫酸ドデシルナトリウム)を加え、反応を停止させた。この100 μlのサンプルをCostar社製96 Well Flat Bottom Assay Plate(Black polystyrene)に移し替え、TECAN社製SAFIREを用いて遊離AMCの蛍光強度を測定した。測定時のSAFIREは、XFLOR4プログラムを用い、励起波長380 nm、蛍光波長460 nm、Excitation bandwidth 12 nm、Emission bandwidth 12 nm、Gain (manual) 72、Number of flashes 10、Z-Position (Manual) 11020μm、Lag time 0 μs、Integration time 40μsの設定で行った。
図2中、縦軸は相対蛍光強度(RFU)、横軸は合成時間を示す。すべてのパネルで、黒丸がP. fluorescens無細胞翻訳系での、白四角が大腸菌無細胞翻訳系でのPIPの合成を示す。タンパク質合成の各反応温度が各パネルの左上にそれぞれ記載されている。
この結果から、P. fluorescens無細胞翻訳系は、大腸菌無細胞翻訳系が機能し得なかった低温(4 ℃、8 ℃)で機能することが示された。37 ℃では、P. fluorescens無細胞翻訳系は蛋白質合成効率が非常に低かったが、これは、P. fluorescensが、37 ℃で増殖できないことと相関していると考えられる。また、16 ℃においてでも、大腸菌無細胞翻訳系よりもP. fluorescens無細胞翻訳系の方が、蛋白質合成効率が非常に高かった。23 ℃で両無細胞翻訳系での蛋白質の合成量を比較したところ、さほどの差異は見られなかった。
また、鋳型プラスミドDNA(pHN368)を入れずに全く同じ実験を行ったところ、PIPペプチダーゼ活性はいずれの合成温度でも、全く認められなかった。
〔実施例5〕
合成量を増大させるための改良1;反応液組成の改変
大腸菌由来S30エクストラクトを用いて無細胞翻訳を行う場合、いくつかの反応液組成が知られている。そこで、それらの情報を元に、実施例4に示した反応液組成を改変した。P. fluorescens由来S30エクストラクトでの無細胞翻訳で、最もタンパク質合成量が多かった反応液組成は以下の通りであった。30 μl でタンパク質を合成する時の組成;1 μg 鋳型プラスミドDNA、2 μg P. fluorescens tRNA(実施例3)、0.3 M 酢酸マグネシウム 1 μl、40%ポリエチレングリコール6000 1.5 μl、低分子量ミックス(220 mM Hepes-KOH [pH 7.5]、4.9 mM ATP [Na2]、3.4 mM GTP [Na2]、3.4 mM CTP [Na2]、3.4 mM UTP [Na2]、160 mM クレアチンリン酸、0.62 mg / ml クレアチンキナーゼ [Boeringer Manheim社製]、各2.1 mMずつの20種類のアミノ酸、7.7%ポリエチレングリコール6000、0.14 mg / ml N5-ホルミル-5, 6, 8, -テトラヒドロ葉酸、840 mMグルタミン酸カリウム、115 mM 酢酸アンモニウム) 7.5 μl、P. fluorescens S30エクストラクト 12 μl を混合し、DEPC処理水で30 μlに調整した。これ以降に記載の無細胞翻訳はこの反応液組成で行った。
〔実施例6〕
合成量を増大させるための改良2;S30エクストラクトの作成法の改良
Kangらによれば(Kang et al., J. Microbiol. Methods 43 91-96 [2000])、大腸菌由来のS30エクストラクトを用いた無細胞翻訳において、ペリプラズム画分を除去した菌体からS30エクストラクトを作成すると、除去しない菌体から作成したときよりも効率の良いものが作成できる、と報告されている。そこで、本発明者は全く同様の手法でペリプラズム画分を含まないP. fluorescens S30エクストラクトを作成し、同様な比較を行った。
以下に、改変S30エクストラクト調製法を示す。まず、P. fluorescens DSM50090株(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)を1リットルの2×YT培地(1.6% Bacto trypton, 1.0% Bacto yeast extract, 0.5% 塩化ナトリウム)で、23 ℃にて培養し、600 nmの波長で測定したオプティカルデンシティー(O.D.600)が0.8になるまで培養した。氷上で培養液を10分間冷却した後、4℃で菌体を回収し、200 mlの氷冷S30バッファーW(50 mM Tris-Acetate [pH 7.4])で、菌体を2回洗浄した。菌体の湿重量1グラムあたり、6 mlのS30バッファーS(50 mM Tris-Acetate [pH 7.4]、15 % ショ糖、3 μM EDTA)で菌体を懸濁し、100 mg/mlリゾチーム溶液(溶媒は10 mM Tris-HCl[pH8.0]、1 mM EDTA)を1 mlの懸濁液あたり、2 μl加えた。室温で30分静置した後、4℃、7,000 x gにて菌体を回収した。15 mlの氷冷S30バッファーC(10 mM Tris-Acetate [pH 7.4]、1 mM DTT、14 mM酢酸マグネシウム、60 mM酢酸カリウム)で、菌体を1回洗浄した後、菌体の湿重量1グラムあたり、1.27 mlの氷冷S30バッファーCで菌体を懸濁し、菌体の懸濁液1.2 mlあたり1 gのガラスビーズ(直径0.105〜0.125ミリメートル;乾熱滅菌処理済み)を加えた。これをマルチビーズショッカー(安井器械社製)を用い、0℃にて、2500rpmの速度で30秒振とう30秒冷却のサイクルを6回繰り返すことで、細胞を破壊した。なお、この細胞破砕は上記実施例3ではFast-prep FP120(SAVANT社製)を用いていたが、これ以降の実験ではマルチビーズショッカーを用いた。このエクストラクトからガラスビーズを取り除き、1 ml あたり1.8 μlの0.55 MのDTTを加えた。30,000×gにて30分間遠心し、その上清をもう一度30,000×gにて30分間した。その上清を取り、1 mlエクストラクトあたり300μlのPI mixture(0.3 M Tris-Acetate [pH 7.4]、4.4 mM DTT、9.4 mM酢酸マグネシウム、13.2 mM ATP [Na2;pH 7.0]、84 mMホスホエノールピルビン酸[pH 7.0]、各0.044 mMずつの20種類のアミノ酸、13 U / ml ピルビン酸キナーゼ[ロシュ・ダイアグノスティックス社製])を加え、23℃で、穏やかに振とうしながら90分インキュベートした。次に、エクストラクトを透析チューブ(Dispo / Dialyzer 5 ml MWCO 8000;Spectrum社製)に移し、150 mlのS30バッファーCに対して透析を3回、1時間ずつ行った。透析後、4,000 × gで、10分遠心し、この上清をP. fluorescensのS30エクストラクトとした。S30エクストラクトは分注し、使用するまでマイナス80 ℃で保存した。
ペリプラズム画分を除去したP. fluorescensから作成したS30エクストラクトを用いた方が、有意に多くのタンパク質を合成できることがわかった。
〔実施例7〕
合成量を増大させるための改良3;CspA遺伝子プロモーター、5’-UTR、リボソーム結合部位、ダウンストリームボックス配列を用いた無細胞翻訳
(1)使用するプラスミドの構築
まず、レポーターとして使用する各遺伝子のクローン化を行った。プラスミドpRSET-ATPIP(Tamura et al., FEBS Lett. 398 101-105 [1996])をテンプレートとして、配列表中の配列番号82(sHN97)、83(sHN98)に記載のオリゴヌクレオチドプライマー(以下、プライマー)を用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、Arabidopsis thaliana由来PIP遺伝子(以下、AtPIPと略記)を含むDNAを得た。この1.0kbのDNA断片を制限酵素NcoIとXhoIで二重消化し、pTip-CH1(参考例1;配列表中の配列番号103)のNcoI/XhoI部位にサブクローンし、pHN176と名前を付けた。pHN176中のAtPIP遺伝子はそのC末端に6×Hisタグの付いた融合タンパク質をコードする。pACYC184(Rose, Nucl. Acids Res. 16 355 [1988])をテンプレートとして、配列表中の配列番号84(sHN206)、85(sHN427)に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、クロラムフェニコール耐性遺伝子(以下、CAT)のORF内部の一部分を含むDNA断片を得た。この断片の5’末端をリン酸化し、EcoRIで消化し、0.3kbの断片を得た。一方、pACYC184をテンプレートとして、配列表中の配列番号86(sHN424)、87(sHN211)に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、CAT遺伝子の3’末端を含むDNA断片を得た。この断片の5’末端をリン酸化し、SpeIで消化し、0.1kbの断片を得た。これら2つの断片を同時にpBluscript II SK (+)(STRATAGENE社)のEcoRI/SpeI部位にサブクローンし、出来たプラスミドにpHN436と名前を付けた。pACYC184をテンプレートとして、配列表中の配列番号84(sHN206)、85(sHN427)に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、CAT遺伝子の5’末端を含むDNA断片を得た。この断片の5’末端をリン酸化し、EcoRIで消化し、0.2kbの断片を得た。この断片をpHN436のEcoRI/HincII部位にサブクローンし、出来たプラスミドにpHN437と名前を付けた。pHN437は完全長のCAT遺伝子を含み、また、その内部に元々存在していたNcoI部位は該作業中に除かれている。ただし、コードするアミノ酸配列に変化はない。pHN437をNdeI/SpeIで切断し得られた0.7kbのCATを含むDNA断片を、pNit-QT1(参考例1;配列表中の配列番号104)のNdeI/SpeI部位にサブクローンし、pHN445と名前を付けた。pHN445中のCAT遺伝子はそのN末端に6×Hisタグの付いた融合タンパク質をコードする。プラスミドpTrc99a-GFPをテンプレートとして、配列表中の配列番号88(sHN337)、89(sHN338R)に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、Aequorea victoria由来蛍光緑色タンパク質をコードする遺伝子(以下GFPと略記)の5’末端側一部を含むDNAを得た。その5’末端をリン酸化後、制限酵素NcoIで消化し、0.2kbの断片を得た。一方、プラスミドpTrc99a-GFPをテンプレートとして、配列表中の配列番号90(sHN339)、91(sHN340)に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、GFPの3’末端側一部を含むDNAを得た。その5’末端をリン酸化後、制限酵素BglIIで消化し、0.6kbの断片を得た。これら2つの断片を同時にpTip-NH1(参考例1;配列表中の配列番号105)のNcoI/BglII部位にサブクローンした結果、完全長GFP遺伝子を含むプラスミドが作成され、pHN332uと名前を付けた。GFP遺伝子内部に元々存在していたNcoI部位は該作業中に除かれているが、GFPの機能に変化はない。pHN332u中のGFP遺伝子はそのC末端に6×Hisタグの付いた融合タンパク質をコードする。
次に、T7プロモーター制御下に各レポーター遺伝子を以下のようにして配置した。pHN176をNcoI/SalIで切断し得られた1.0kbのAtPIPを含むDNA断片を、pRSET-6dベクター(Schoepfer, Gene 124 83-85 [1993])のNcoI/XhoI部位にサブクローンし、pHN433と名前を付けた。pHN445をNcoI/SalIで切断し得られた0.7kbのCATを含むDNA断片を、pRSET-6dのNcoI/XhoI部位にサブクローンし、pHN446と名前を付けた。pHN332uをNcoI/BglIIで切断し得られた0.7kbのGFPを含むDNA断片を、pRSET-6dのNcoI/BamHI部位にサブクローンし、pHN423と名前を付けた。
次に、多コピー型プラスミド上において、CspAプロモーター制御下に各レポーター遺伝子を以下のようにして配置した。pHN423をテンプレートとして、配列表中の配列番号92(sHN411)、93(sHN412)に記載のプライマーを用いてPCRを行った。得られた断片の5’末端をリン酸化後、プラスミドpBluescript II SK (+)のPvuII部位にサブクローンし、出来たプラスミドにpHN424と名前を付けた。大腸菌DH5α株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列表中の配列番号94(sHN440)、95(sHN441)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた断片をPstI/NcoIで切断し、pHN424のPstI/NcoI部位にサブクローンし、出来たプラスミドにpHN452と名前を付けた。しかし、pHN452にはCspA遺伝子mRNAの5’-UTR部位に一塩基の置換が認められた(図3、4;後述)。繰り返し、野生型のCspA遺伝子mRNAの5’-UTR部位をサブクローンすることを試みたが、サブクローン出来なかった。以下、この変異型5’-UTRをCspA5’-UTR*と表記する。大腸菌DH5α株のゲノムDNAをテンプレートとして、配列表中の配列番号94(sHN440)、95(sHN441)、に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた断片をBsrGI/NcoIで切断し、pNit-QT1(参考例1;配列表中の配列番号104)のBsrGI/NcoI部位にサブクローンし、このプラスミドにpHN431uと名前を付けた。pHN431uをテンプレートとして、配列表中の配列番号94(sHN440)、96(sHN423)に記載のプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた断片の5’末端をリン酸化後、pBluescript II SK(+)のPvuII部位にサブクローンし、出来たプラスミドにpHN453と名前を付けた。pHN452をPstI/NcoIで切断し得られた0.4kbのCspAプロモーター、5’-UTR*、リボソーム結合部位、ダウンストリームボックス配列を含むDNA断片を、pHN453のPstI/NcoI部位にサブクローンし、pHN453uと名前を付けた。pHN176をNcoI/SpeIで切断し得られた1.0kbのAtPIPを含むDNA断片を、pHN453のNcoI/SpeI部位にサブクローンし、pHN454と名前を付けた。pHN452をPstI/NcoIで切断し得られた0.4kbのCspAプロモーター、5’-UTR*、リボソーム結合部位、ダウンストリームボックス配列を含むDNA断片を、pHN454のPstI/NcoI部位にサブクローンし、pHN479と名前を付けた。
次に、低コピー型プラスミド上において、CspAプロモーター下に各レポーター遺伝子を以下のようにして配置した。pBluscript II SK (+)をテンプレートとして、配列表中の配列番号97(sHN444)、98(sHN445)に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、アンピシリン耐性遺伝子とColE1を含む1.9kbのDNA断片を得た。一方プラスミドpET-28a(Novagen社)をテンプレートとして、配列表中の配列番号99(sHN443)、100(sHN442)に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、LacI q 遺伝子とColE1を含む2.4kbのDNA断片を得た。これら2つの断片の5’末端をそれぞれリン酸化し、PstIで消化し、お互いを連結した。できたプラスミドは、LacI q 遺伝子とColE1、アンピシリン耐性遺伝子を含む、低コピー型のプラスミドである。これにpHN457と名前を付けた。プラスミドpHN453uをテンプレートとして、配列表中の配列番号94(sHN440)、101(sHN446)に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行った。その結果、0.5kbのCspAプロモーター、5’-UTR*、リボソーム結合部位、ダウンストリームボックス、MCS、T7ターミネーター配列を含むDNA断片を得た。この5’末端をリン酸化後、PstIで切断し、pHN457のPstI/SmaI部位にサブクローンした。出来たプラスミドにpCop1と名前を付けた。pHN176をNcoI/SpeIで切断し得られた1.0kbのAtPIPを含むDNA断片を、pCop1のNcoI/SpeI部位にサブクローンし、pHN476と名前を付けた。pHN445をNcoI/SpeIで切断し得られた0.7kbのCATを含むDNA断片を、pCop1のNcoI/SpeI部位にサブクローンし、pHN477と名前を付けた。pHN332uをNcoI/BglIIで切断し得られた0.7kbのGFPを含むDNA断片を、pCop1のNcoI/BglII部位にサブクローンし、pHN478と名前を付けた。
(2)大腸菌細胞内でのCspA 5’-UTRとCspA 5’-UTR*の性質比較
(1)に記述したプラスミドを用いてまず、大腸菌細胞内(DH5α株)でCspA 5’-UTRとCspA 5’-UTR*の性質を比較した。図3に、大腸菌CspA遺伝子の構造と本発明者が作成したCspAプロモーター、5’-UTRまたは5’-UTR*、リボソーム結合部位、ダウンストリームボックス(図中ではCspADB)、MCS、T7ターミネーターからなる配列の模式図を示し、5’-UTR*で起こっていた変異の位置は*印で示してある。図4にCspAの5’-UTRの配列と、mfoldプログラム(M. Zuker, Nucl. Acids Res. 31 3406-3415 [2003])で予測したその取りうる二次構造、CspA 5’-UTR*で起こっていた変異の位置(*印)、転写開始点(+1、二重線)、スタートコドン(実線)、Shine-Dalgarno配列(破線)を示す。該図中、ヌクレオチドの番号はGEnBank登録番号M30139に発表の配列に従った。また、図5にpCop1ベクターの模式図を示す。また、pCop1ベクターの配列を配列表の配列番号106に示す。
多コピー型、低コピー型いずれのプラスミドを用いても、CATGFP遺伝子をCspA 5’-UTR下に連結することは出来なかった。(1)に述べたプラスミドの構築では全て37 ℃で宿主細胞たる大腸菌の培養を行ったが、CspAプロモーターからの発現制御が厳密ではなく37 ℃でCspAプロモーターから転写された5’-UTR、リボソーム結合部位、ダウンストリームボックス、レポーター遺伝子配列を含むmRNA、もしくはその翻訳産物が宿主に悪影響を及ぼしていることに起因すると考えられる。しかし、唯一AtPIPのみは多コピー型プラスミド上のCspA5’-UTR下に連結することが出来た。一方、多コピー型、低コピー型いずれのプラスミドを用いた場合でも、すべてのレポーター遺伝子をCspA 5’-UTR*下に連結することは容易に可能であった。
図6にCspA 5’-UTRとCspA 5’-UTR*を用いた場合の大腸菌細胞内でのレポーター遺伝子発現を調べた結果を示し、また以下にその実験方法を示す。まず、各プラスミドでDH5α細胞を形質転換し、1 mlのLB培地で37 ℃にてO.D.600が0.5になるまで培養した。これを半分ずつ2つに分け、一方は37 ℃で1時間(図6、奇数レーン)、もう一方は15 ℃で3時間培養(図6、偶数レーン)した。各菌体を回収し、250 μlの1 x SDSサンプルバッファーでそれぞれ懸濁した。このうち16 μlをSDS-PAGE(12%ポリアクリルアミドゲル)に供し、クマシーブリリアントグリーンG-250にて染色した。該図中、pHN454、pHN479はpBluescript II SK (+)(図中pBSと表記)のMCSにCspAプロモーター等が配されており、多コピー型である。一方、pHN476、pHN477、pHN478、はpCop1のMCSにCspAプロモーター等が配されており、低コピー型である。
図6の結果から、CspA 5’-UTRとCspA 5’-UTR* CspAではレポーター遺伝子(AtPIP)の発現誘導能力に大きな差がないことがわかった(レーン1から4)。また多コピー型プラスミドを用いた場合、37 ℃でのレポーター遺伝子の発現がかなり多く見られたが、低コピー型プラスミドを用いた場合は同発現が比較的抑えられていた(レーン3と5の比較、ならびにレーン5から10)。
(3)無細胞翻訳でのCspA 5’-UTRとCspA 5’-UTR*の性質比較
図7にCspA 5’-UTRとCspA 5’-UTR*を用いた場合の無細胞翻訳反応でのレポーター遺伝子の合成レベルを比較した結果を示し、また以下にその実験方法を示す。pHN454、pHN479を鋳型として、無細胞翻訳を30 μlの系で行った(実施例5)。合成反応温度は23℃と8℃で行った。該図中の左図はSDS-PAGE後クマシーブリリアントグリーンG-250にて染色したものを、右図には同じサンプルをイムノブロッティング(実験手法参照)したものを示す。この結果、CspA5’-UTRとCspA 5’-UTR*、どちらを用いても、無細胞翻訳でのレポーター遺伝子(AtPIP)の合成量に大きな差がないことが示された。以下の実施例では、特に断らない限りCspAプロモーターの下流にはCspA5’-UTR*が連結されているものを用いた。
(4)T7プロモーターとCspAプロモーターを用いたレポーター遺伝子の翻訳効率の比較
図8にT7プロモーターとCspAプロモーターを用いて様々な温度でAtPIPとGFPを無細胞翻訳した結果を示す。また、図8の結果からAtPIPとGFPの合成量を定量した結果を図9に示す。定量のための標準タンパク質はpHN476もしくはpHN478で形質転換したDH5α細胞を用いて15℃で発現させ、Ni-NTA Super flow(Qiagen社製)で精製し、濃度を決定したものを用いた。図8中、上2つのパネルはAtPIPを、下2枚のパネルはGFPをそれぞれイムノブロッティングで検出したものである。各レーンの上部に合成時に用いたプロモーター、合成時の温度、用いたS30エクストラクトの由来(PはP. fluorescens、Eは大腸菌)を示す。大腸菌由来S30エクストラクトはPromega社製のものを用いた。図9中、上の棒グラフはAtPIPを、下の棒グラフはGFPをそれぞれ定量したものである。縦軸は1 ml合成反応液あたり合成されたタンパク質の質量(μg)を示す。また、黒いバーがP. fluorescens、のS30エクストラクトを用いた場合、網掛けのバーは大腸菌S30エクストラクトを用いた場合、を示す。
この結果から、T7プロモーターを用いた場合より、CspAプロモーターを用いた方が一般に高い翻訳効率を示すことがわかった。また、大腸菌由来S30エクストラクトを用いた場合、低温での合成量は極端に低かったが、P. fluorescens由来S30エクストラクトを用いた場合、低温での合成も効率よく行われることがわかった。
pHN170の制限地図を示す。 大腸菌無細胞翻訳、P. fluorescens無細胞翻訳系でのPIPの合成。縦軸は相対蛍光強度(RFU)、横軸は合成時間を示す。タンパク質合成の反応温度が各パネルの左上にそれぞれ記載されている。 大腸菌CspA遺伝子の構造(上)と本発明者が作成したCspAプロモーター、5’-UTRまたは5’-UTR*、リボソーム結合部位、ダウンストリームボックス(CspA DB)、MCS、T7ターミネーターからなる配列の模式図(下)を示す。 CspAの5’-UTRの配列と、mfoldプログラムで予測したその取りうる二次構造、CspA5’-UTR*で起こっていた変異の位置を示す。 pCop1ベクターの模式図を示す。 CspA 5’-UTRとCspA 5’-UTR*を用いた場合の大腸菌細胞(DH5α)内でのレポーター遺伝子の発現を調べた結果を示す。 CspA 5’-UTRとCspA 5’-UTR*を用いた場合の無細胞翻訳反応でのレポーター遺伝子の合成レベルを比較した結果を示す。 T7プロモーターとCspAプロモーターを用いて様々な温度でAtPIPとGFPを無細胞翻訳した結果を示す。 図8の結果からAtPIPとGFPの合成量を定量した結果を示す。
配列1〜101:プライマー、リンカー
配列102〜106:ベクター

Claims (26)

  1. 低温条件下において無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を製造する方法であって、低温で増殖可能なシュードモナス属微生物抽出液またはロドコッカス属微生物抽出液を含む無細胞タンパク質合成系中で低温条件下でタンパク質をコードする核酸の転写および翻訳を行なわせてタンパク質を製造する方法。
  2. 微生物抽出液が微生物S30エクストラクトである、請求項1記載の方法。
  3. 微生物抽出液が微生物S30エクストラクトからペリプラズム画分を除いたものである、請求項1記載の方法。
  4. 低温で増殖可能なシュードモナス属微生物がシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)である請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 低温で増殖可能なロドコッカス属微生物がロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
  6. 無細胞タンパク質合成系がTrcプロモーターおよびタンパク質をコードする核酸を含有するプラスミドを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 無細胞タンパク質合成系がCspAプロモーター、同CspAの5’-非翻訳領域(5’-UTR)、およびタンパク質をコードする核酸を含有するプラスミドを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
  8. CspAの5’-UTR領域において、少なくとも1つの塩基の置換、欠失、挿入または付加が存在する請求項7記載の方法。
  9. 配列表中の配列番号107に示されたCspAの配列中、5’-UTR配列にあたる、532番目のCがAに置換されている請求項8記載の方法。
  10. 目的のタンパク質をコードする核酸を含むプラスミドで転写した該タンパク質をコードするmRNAを、低温で増殖可能なシュードモナス属微生物抽出液またはロドコッカス属微生物抽出液を含む無細胞タンパク質合成系中に添加する、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
  11. 無細胞タンパク質合成系が、ATP再生系としてアセチルリン酸とアセテートキナーゼの組み合わせを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 大腸菌抽出液を含む無細胞タンパク質合成系であって、核酸の転写および翻訳をCspAプロモーターおよび同CspAの5’-UTRを用いて行なわせてタンパク質を製造する方法。
  13. 無細胞タンパク質合成系がタンパク質合成反応液を含む反応部とタンパク質合成基質溶液を含む供給部からなり、反応部と供給部が半透膜により隔てられており、半透膜を通して供給部から反応部へタンパク質合成に必要な物質が供給され反応部でタンパク質が合成される、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 無細胞抽出液が濃縮無細胞抽出液である請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 16 ℃以上の常温における無細胞タンパク質合成系で発現させたときにタンパク質の合成を阻害するタンパク質をコードする核酸の転写および翻訳を行なわせてタンパク質を製造する、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 16 ℃以上の常温における無細胞タンパク質合成系で発現させたときにタンパク質の合成を阻害するタンパク質がヌクレアーゼ、プロテアーゼおよびホスファターゼからなる群から選択される請求項15記載の方法。
  17. 低温で増殖可能なシュードモナス属微生物抽出液またはロドコッカス属微生物抽出液、目的タンパク質をコードする核酸を組込むためのプラスミド、およびATP再生系試薬を含む、低温条件下において無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を製造するためのキット。
  18. 微生物抽出液が微生物S30エクストラクトである、請求項17記載のキット。
  19. 微生物抽出液が微生物S30エクストラクトからペリプラズム画分を除去したものである、請求項17記載のキット。
  20. 低温で増殖可能なシュードモナス属微生物がシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)である請求項17から19のいずれか1項に記載のキット。
  21. 低温で増殖可能なロドコッカス属微生物がロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)である、請求項17から19のいずれか1項に記載のキット。
  22. CspAプロモーター、同CspAの5’-UTR、およびタンパク質をコードする核酸を含有するプラスミドを含み、CspAの5’-UTR領域において、少なくとも1つの塩基の置換、欠失、挿入または付加が存在する、請求項17から21のいずれか1項に記載のキット。
  23. 配列表中の配列番号107に示されたCspAの配列中、5’-UTR配列にあたる、532番目のCがAに置換されている請求項22記載のキット。
  24. 5’-UTR領域において、少なくとも1つの塩基の置換、欠失、挿入または付加が存在するCspA
  25. 配列表中の配列番号107に示されたCspAの配列中、5’-UTR配列にあたる、532番目のCがAに置換されている請求項24記載のCspA
  26. 請求項24または25に記載のCspAプロモーター、5’-UTR、およびタンパク質をコードする核酸を含有するプラスミド。
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