JP2004290157A - ハナビラタケ組成物および飲食品 - Google Patents
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Abstract
【課題】有用性が認められているハナビラタケについて商業規模で供給可能なハナビラタケ組成物およびそれを含有する飲食品、ペットフードを提供する。
【解決手段】ハナビラタケ(Sparassis crispa)子実体(ユニチカ製)を凍結乾燥した粉末50gに1Lの水を加え、常温で6時間撹拌を行いハナビラタケの溶媒処理を行いハナビラタケの溶媒処理を行い、その後ろ過により残渣画分を回収し、それを50℃で12時間乾燥させハナビラタケ組成物を得、このハナビラタケ組成物を含有する飲食品並びにペットフード。
【選択図】 なし
【解決手段】ハナビラタケ(Sparassis crispa)子実体(ユニチカ製)を凍結乾燥した粉末50gに1Lの水を加え、常温で6時間撹拌を行いハナビラタケの溶媒処理を行いハナビラタケの溶媒処理を行い、その後ろ過により残渣画分を回収し、それを50℃で12時間乾燥させハナビラタケ組成物を得、このハナビラタケ組成物を含有する飲食品並びにペットフード。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハナビラタケ組成物およびそれを含有する飲食品、ペットフードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
きのこ類は古くから食用として利用されているが、最近その成分の生理活性が明らかにされ、クレスチン、レンチナン、シゾフィラン(いずれも商品名)などは、医薬品としてその有用性が認められており、アガリクス、メシマコブ、霊芝などは抗腫瘍作用を期待して、子実体や菌糸体の乾燥物や抽出物を健康食品素材として利用することが試みられている。例えば、マンネンダケは、子実体またはその抽出物を健康食品の原料として利用することが報告されている(例えば、特許文献1参照)。さらに培養で得られる菌糸体の利用も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
これらのきのこの主要有効成分はβ−グルカンであることが知られており、従来からβ−グルカン等の多糖をこれらのきのこから抽出する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
このようなきのこ類に属するハナビラタケは、カラマツに生えるきのこであって、非常に僅少なきのこである。歯ごたえがよく、その純白の色合いと葉牡丹のような形態が特徴である食用きのこである。これまで、このハナビラタケは成長が遅く人工栽培は非常に困難であるとされてきたが、最近になって、比較的短期間で栽培可能な新しい栽培法が確立され、商業規模での供給が可能となってきている。
このハナビラタケについても溶媒でβ‐グルカンを抽出する方法が提案され、その抽出物について医薬品、食品分野での用途が提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。
【0005】
【特許文献1】
特公昭58−36946号公報
【特許文献2】
特公昭58−15108号公報
【特許文献3】
特開平1−6719号公報
【特許文献4】
特開2000−217543号公報
【特許文献5】
特開2002−125460号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ハナビラタケからの溶媒による抽出方法ではβ−グルカンの収量が極めて低く、商業規模で供給するには有効な方法であるとは言いがたかった。
本発明は、有用性が認められているハナビラタケについて商業規模で供給可能なハナビラタケ組成物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、有用性は認められてはいるものの、有効成分を効率よく取得する方法がないという課題を解決するために鋭意検討の結果、ハナビラタケの子実体または菌糸体を溶媒で洗浄した残渣中に目的の有用成分が含まれていることを見出し、発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ハナビラタケを溶媒で処理して得られるハナビラタケ組成物を要旨とするものであり、好ましくは主成分としてβ−グルカンを含有することを特徴とするものである。別の本発明は、ハナビラタケを溶媒で処理することを特徴とするハナビラタケ組成物の製造法を要旨とするものである。また別の本発明は、前記したハナビラタケ組成物を含有する飲食品を要旨とするものであり、さらに別の本発明は、前記したハナビラタケ組成物を含有するペットフードを要旨とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するハナビラタケの子実体は天然のものでもよいし、あるいは人工栽培により得られたものであってもよい。人工栽培は、人工栽培用の菌床を作成することにより行うことができる(例えば、特開平11−56098号公報、特開2002−369621号公報、特開2002−125460号公報参照)。
【0010】
また、本発明においては、ハナビラタケの菌糸体も用いることができる。菌糸体は液体培養法によって得ることが出来る。培地に使用する炭素源としては、グルコースなどの単糖の他、デキストリン、グリセロールなど通常用いられる炭素源が使用できる。また、窒素源としては無機または有機窒素源が使用できるが、生育速度の観点からは有機窒素源を用いるほうが好ましい。また、必要に応じて微量元素やビタミン等の生育因子を添加することは通常の培養と何ら変わりはない。培養温度は15℃〜30℃、好ましくは18℃〜28℃、20℃〜25℃が最も好ましい。pHは2.5〜8.0、好ましくは3.0〜7.0、3.5〜5.0が最も好ましい。培地成分には不溶成分を添加することが均一に生育させることができることから好ましい。培養期間は菌株により、数日から数週間程度に設定されうる。
【0011】
本発明において、ハナビラタケより本発明の組成物を得るに際しては、上記のようにして得られたハナビラタケをあらかじめ細断して小塊ないし粉末としておくことが望ましい。細断後の大きさについては特に限定はないが、より小さくしておくことが溶媒による処理を容易とする。
【0012】
本発明においてはハナビラタケを溶媒により処理を行うが必要である。ここで用いられる溶媒は、水系溶媒または非水系溶媒が使用できる。水系溶媒として具体的には水そのもの、あるいはアルカリや他の塩基性物質を添加したアルカリ水、アルコール等とも相溶性のある有機溶媒を加えた水性溶媒、酸や酸性物質を添加した酸性水、有機酸(例えば、乳酸、酢酸等)、無機塩類を含む水溶液、あるいはこれらの2種以上の混合物などが好適に使用できる。
また非水系溶媒として具体的には、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒を使用することもできる。
【0013】
本発明において溶媒による処理とは、以下のような操作を行うことをいう。すなわち、細かく破砕あるいはスライスした新鮮なハナビラタケ子実体または菌糸体1質量部に溶媒2〜50質量部を加え、好ましくは20℃〜120℃、さらに好ましくは30℃〜100℃、さらに好ましくは40℃〜90℃で処理する。処理時間は5分〜240分、好ましくは20分〜180分、さらに好ましくは30分〜90分間処理する。その後固液分離を行い、残渣の方を常法により乾燥等することで本発明のハナビラタケ組成物を得ることができる。
【0014】
この溶媒による処理は、多段階で行ってもよく、また、異なる溶媒を用いた多段処理として行ってもよい。洗浄により得られるこの発明のハナビラタケ組成物には、主成分としてのグルカンの他未同定の成分も含有している。
【0015】
本発明の飲食品は、上記のようにして得られたハナビラタケ組成物を含有するものである。乾燥粉末品としたハナビラタケ組成物はそのままで錠剤、細粒、顆粒などに加工することもでき、さらに賦型剤やフレーバーなどを加えてから加工することもできる。このようにして得られたハナビラタケ組成物はいわゆる健康食品として利用することができる。また、本発明のハナビラタケ組成物は水あるいは水とアルコールとの混液に溶解または懸濁することができるので、茶、ソフトドリンク、酒類に添加して利用することができる。また、スープ、カレー、シチュウ、飴、クッキーを製造したり、そのほか豆腐、パン、うどん(めん類)や、かまぼこなどの水産加工品、ハム、ソーセージなどの畜産加工品など多種の食品に添加加工したり、冷凍食品類、インスタント食品類などにも利用できる。また、必要に応じて他の健康食品素材に加えより優れた健康食品への加工も可能である。いずれも各種細胞を賦活させ健康を保つのに有用な健康食品として価値の高い食品が得られる。
【0016】
ハナビラタケ組成物の食品中の存在量としては、1日当たり2〜6gの粉末量を摂食ないし飲用する程度が適当である。しかし、過剰に摂取したとしてもそれが原因となる障害は全くない。
【0017】
また本発明のペットフードは、ハナビラタケ組成物を含有するものである。
配合量はペットフードに対して0.01%〜20%、好ましくは0.05%〜10%。さらに好ましくは0.1%〜5%(重量%)を配合して使用する。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
β−グルカンの定量は従来用いられている以下の方法でおこなうことができる。▲1▼試料に0.08Mのリン酸緩衝液(pH 6.0)を加えて全量50mLとする。これにターマミル(Novo Nordisk製120L)を0.1mL添加して沸騰湯浴中で30分間インキュベートする。▲2▼これを放冷した後0.275MのNaOH溶液10mLでpH7.5±0.1に調整する。プロテアーゼ(Sigma社製P−5380)溶液(50mg/ml)を0.1ml添加し、60℃で30分間インキュベートする。▲3▼放冷した後0.325M塩酸10mLでpH4.3±0.1に調整する。さらに、アミログルコシダーゼ(Sigma社製A−9913)溶液0.1mlを添加し、60℃で30分間インキュベートする。これに95%エタノールを4倍容添加し、室温で1時間以上放置する。▲4▼生成した沈殿をガラスフィルターでろ過し、80%エタノール、アセトンで洗浄する。これに72%硫酸を10mL添加し、20℃で4時間放置する。さらに、水140mLを添加し、沸騰湯浴中で2時間加水分解をおこなう。▲5▼冷却した後、中和し、水で300mLに定容する。▲6▼ろ紙(アドバンテック5B)を用いてろ過し、グルコースオキシダーゼ法(和光純薬工業株式会社製Glucose CII−Test Wako)を用いてろ液中のブドウ糖を定量する。このとき、β−グルカン(g/100g)=ブドウ糖(g/100g)×0.9である。
【0019】
実施例1
ハナビラタケ(Sparassis crispa)子実体(ユニチカ製)を凍結乾燥した粉末50gに1Lの水を加え、常温で6時間撹拌を行いハナビラタケの溶媒処理を行った。その後ろ過により残渣画分を回収し、50℃で12時間乾燥させた。得られたハナビラタケ組成物は49gであった。本ハナビラタケ組成物中のβ−グルカン含量は39.0%であった。ハナビラタケ粉末からの収量は、(49×0.39)/50×100=38%であった。
【0020】
実施例2
実施例1において、水の代わりにエチルアルコールを使用し、同様に処理操作を行った。ろ過残渣を回収し同様に乾燥し、ハナビラタケ組成物48gを得た。本ハナビラタケ組成物中のβ−グルカン含量は38.5%であり、収量は(48×0.385)/50×100=37%であった。
【0021】
実施例3
新鮮なハナビラタケ子実体1kgに、0.5質量%クエン酸水溶液3kgを加えてpH5.0以下とし、80℃で2時間処理し、フィルターで濾過して抽出残渣800gを得た。これを凍結乾燥して80gのハナビラタケ組成物を得た。
【0022】
比較例1
ハナビラタケ(Sparassis crispa)子実体(ユニチカ製)を凍結乾燥した粉末50gに1Lの水を加え、2時間オートクレーブ中で加熱抽出を行った。この抽出操作をさらに繰り返したのち、ろ過により抽出画分を得た。このようにして得られた抽出画分を凍結乾燥し1.8gの抽出物粉末を得た。本ハナビラタケ抽出物中のβ−グルカン含量は49.0%であった。ハナビラタケ粉末からのβ−グルカンの収量は、(1.8×0.49)/50×100=7.3%であった。
【0023】
実施例4〔佃煮〕
水1リットル、醤油4リットル、水あめ10Kg、砂糖1.7Kg、寒天少々からなる調味液を煮る。さらに、この調味液で昆布を煮込み、焦付かないようにして煮汁がなくなるまで煮詰める。煮詰まる少し前に実施例1で得られたハナビラタケ組成物を昆布の1%の重量になるように加えて完全に煮詰める。以上のようにして佃煮を作った。
【0024】
実施例5〔ふりかけ〕
醤油1リットルにグルタミン酸ソーダ10g(必要に応じてイノシン酸2gを加えてもよい)、砂糖100gを加えて煮る。冷却後、実施例1で得られたハナビラタケ組成物1gを加え、蒸発乾固して得られる粉末をふるいにかけて粒子を揃え、さらに80℃で2時間乾燥したのち、必要に応じて昆布、青のり、ゴマなどを加えて防湿包装してふりかけをつくった。
【0025】
実施例6〔ドリンク〕
実施例1で得られたハナビラタケ組成物2gを溶かした水溶液200mlを作る。この水溶液に糖類30g、蜂蜜3g、カラメル1g、アスコルビン酸とクエン酸を少々、さらに香料適量を加え、93℃で20分間殺菌し、無菌的に缶またはびんに充填してソフトドリンクを作製した。蜂蜜、カラメルの代わりに、オレンジ、グレープまたはピーチの濃縮液を加えて果実ジュースも作製した。また前記水溶液に緑茶、ウーロン茶、霊芝、アマチャズル、アロエなどの茶類を加え、さらに必要に応じて少量の調味料、香料を加えてお茶飲料も作製した。
【0026】
実施例7〔豆腐〕
一般的な豆腐の製造過程で、ニガリを加える時に一緒に実施例1で得られたハナビラタケ組成物2g(一丁に付き)を加え、よくかきまぜ固化させて豆腐を得た。
【0027】
実施例8〔パン〕
醗酵前のパン生地に実施例1で得られたハナビラタケ組成物3g(1斤に付き)を練り込み、これを焼き上げることでβ−グルカン入りパンを作った。アンパンやクリームパンなどの菓子パンでは、中に入れるあんこやクリームを練り込んで作ることができる。
【0028】
実施例9〔飴〕
砂糖10kgに実施例1で得られたハナビラタケ組成物10gを加え、さらに水飴1kgを加えて煮詰めた。やや放冷後、色素、香料、酸味料を加えよく練り混ぜた後、油をひいた冷却盤またはタブレット機にかけて冷却し、形を整え飴とした。
【0029】
実施例10〔うどん〕
うどん生地を練る前に実施例1で得られたハナビラタケ組成物を全体の0.1%程度加え、常法に従って生うどん、乾うどん、インスタントうどんとした。そば、ラーメンなども同様の方法で製造することができる。
【0030】
実施例11〔練り製品〕
かまぼこ、ソーセージ魚肉またはミンチ肉中に実施例1で得られたハナビラタケ組成物を全体の0.1%程度ねり込み、常法に従って加工した。
【0031】
実施例12〔サプリメント〕
錠剤、細粒、トローチ携帯性や服用の簡便性を考慮して、実施例1で得られたハナビラタケ組成物全量の1%程度に乳糖やデンプン、乾燥酵母などの賦型剤を加え、常法によって成型加工した。
【0032】
実施例13〔調味料〕
調理用細粒酵母エキス、かつおエキスなどの調味料と実施例1で得られたハナビラタケ組成物とを、100対20から100対70までの間で随意に配合し、常法によって加工した。
【0033】
実施例14〔発泡酒〕
醸造工程の麦芽汁に実施例1で得られたハナビラタケ組成物を10%相当混合し、しかる後に酵母による発酵を行い、以下常法でビール様発泡酒を製造した。
【0034】
実施例15〔アルコール飲料〕
梅酒、果実酒、ウイスキー、焼酎、その他酒類の飲用に際し、実施例1で得られたハナビラタケ組成物を全量に対して1〜15%適宜混合した。あるいは混合した後にビン又は缶に充填した。
【0035】
実施例16〔嘗め味噌〕
米、麦、豆を加工して出来た醸造用味噌に、実施例1で得られたハナビラタケ組成物を味噌1kgに対して50〜100g混合し、その他にゆずや魚具を使用し、常法で加工して嘗め味噌を製造した。
【0036】
実施例17〔お茶(飲料、振り出し)〕
緑茶、烏龍茶及び各種生薬の単体又は複合品の煎じ液あるいは振り出し用パックに、実施例1で得られたハナビラタケ組成物を予め加えた。配合量は各素材重量の5〜10%とした。
【0037】
実施例18〔各種健康食品の追加素材〕
市販されている各種健康食品の配合素材として、実施例1で得られたハナビラタケ組成物を使用することで、従来のものより機能性の高い食品を製造することが出来た。加える粉末量は1日摂取量として0.5〜5gが適量であった。
【0038】
実施例19〔ペットフード〕
実施例1で得られたハナビラタケ組成物を従来のペットフードに添加することで、従来のものより機能性の高いものを製造することが出来た。1日摂取量として0.5〜5gとなるように配合した。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、各種の栄養補助食品などの飲食品として有用なハナビラタケ由来の組成物を効率よく得ることができる。
また、本発明の飲食品によれば、生理活性を有するハナビラタケ中の有効成分そのものが経口投与によって生体の各種細胞を賦活させ、抗腫瘍作用や生活習慣病の治療や予防に、また他の健康食品との併用による有用性の向上など、従来の製品に比べてもすぐれた効果が認められるとともに、人間に対しての悪影響を及ぼさないので、これを主材とする食品は健康に対してすぐれた効果を発揮するものである。
【0040】
また、生理活性を有する有功成分を精製する必要がないので、健康食品を安価且つ容易に製造できる利点がある。また、医薬品とは異なって一般の家庭でも気軽に利用することができるといった効果もある。さらに、粉末として利用できるので取扱いが容易であり保存上も有利であるばかりでなく、水または、水・アルコールの混液に溶解、懸濁するので液剤としての利用も可能であり、食品加工上も幅広く利用できる効果がある。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハナビラタケ組成物およびそれを含有する飲食品、ペットフードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
きのこ類は古くから食用として利用されているが、最近その成分の生理活性が明らかにされ、クレスチン、レンチナン、シゾフィラン(いずれも商品名)などは、医薬品としてその有用性が認められており、アガリクス、メシマコブ、霊芝などは抗腫瘍作用を期待して、子実体や菌糸体の乾燥物や抽出物を健康食品素材として利用することが試みられている。例えば、マンネンダケは、子実体またはその抽出物を健康食品の原料として利用することが報告されている(例えば、特許文献1参照)。さらに培養で得られる菌糸体の利用も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
これらのきのこの主要有効成分はβ−グルカンであることが知られており、従来からβ−グルカン等の多糖をこれらのきのこから抽出する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
このようなきのこ類に属するハナビラタケは、カラマツに生えるきのこであって、非常に僅少なきのこである。歯ごたえがよく、その純白の色合いと葉牡丹のような形態が特徴である食用きのこである。これまで、このハナビラタケは成長が遅く人工栽培は非常に困難であるとされてきたが、最近になって、比較的短期間で栽培可能な新しい栽培法が確立され、商業規模での供給が可能となってきている。
このハナビラタケについても溶媒でβ‐グルカンを抽出する方法が提案され、その抽出物について医薬品、食品分野での用途が提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。
【0005】
【特許文献1】
特公昭58−36946号公報
【特許文献2】
特公昭58−15108号公報
【特許文献3】
特開平1−6719号公報
【特許文献4】
特開2000−217543号公報
【特許文献5】
特開2002−125460号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ハナビラタケからの溶媒による抽出方法ではβ−グルカンの収量が極めて低く、商業規模で供給するには有効な方法であるとは言いがたかった。
本発明は、有用性が認められているハナビラタケについて商業規模で供給可能なハナビラタケ組成物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、有用性は認められてはいるものの、有効成分を効率よく取得する方法がないという課題を解決するために鋭意検討の結果、ハナビラタケの子実体または菌糸体を溶媒で洗浄した残渣中に目的の有用成分が含まれていることを見出し、発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ハナビラタケを溶媒で処理して得られるハナビラタケ組成物を要旨とするものであり、好ましくは主成分としてβ−グルカンを含有することを特徴とするものである。別の本発明は、ハナビラタケを溶媒で処理することを特徴とするハナビラタケ組成物の製造法を要旨とするものである。また別の本発明は、前記したハナビラタケ組成物を含有する飲食品を要旨とするものであり、さらに別の本発明は、前記したハナビラタケ組成物を含有するペットフードを要旨とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するハナビラタケの子実体は天然のものでもよいし、あるいは人工栽培により得られたものであってもよい。人工栽培は、人工栽培用の菌床を作成することにより行うことができる(例えば、特開平11−56098号公報、特開2002−369621号公報、特開2002−125460号公報参照)。
【0010】
また、本発明においては、ハナビラタケの菌糸体も用いることができる。菌糸体は液体培養法によって得ることが出来る。培地に使用する炭素源としては、グルコースなどの単糖の他、デキストリン、グリセロールなど通常用いられる炭素源が使用できる。また、窒素源としては無機または有機窒素源が使用できるが、生育速度の観点からは有機窒素源を用いるほうが好ましい。また、必要に応じて微量元素やビタミン等の生育因子を添加することは通常の培養と何ら変わりはない。培養温度は15℃〜30℃、好ましくは18℃〜28℃、20℃〜25℃が最も好ましい。pHは2.5〜8.0、好ましくは3.0〜7.0、3.5〜5.0が最も好ましい。培地成分には不溶成分を添加することが均一に生育させることができることから好ましい。培養期間は菌株により、数日から数週間程度に設定されうる。
【0011】
本発明において、ハナビラタケより本発明の組成物を得るに際しては、上記のようにして得られたハナビラタケをあらかじめ細断して小塊ないし粉末としておくことが望ましい。細断後の大きさについては特に限定はないが、より小さくしておくことが溶媒による処理を容易とする。
【0012】
本発明においてはハナビラタケを溶媒により処理を行うが必要である。ここで用いられる溶媒は、水系溶媒または非水系溶媒が使用できる。水系溶媒として具体的には水そのもの、あるいはアルカリや他の塩基性物質を添加したアルカリ水、アルコール等とも相溶性のある有機溶媒を加えた水性溶媒、酸や酸性物質を添加した酸性水、有機酸(例えば、乳酸、酢酸等)、無機塩類を含む水溶液、あるいはこれらの2種以上の混合物などが好適に使用できる。
また非水系溶媒として具体的には、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒を使用することもできる。
【0013】
本発明において溶媒による処理とは、以下のような操作を行うことをいう。すなわち、細かく破砕あるいはスライスした新鮮なハナビラタケ子実体または菌糸体1質量部に溶媒2〜50質量部を加え、好ましくは20℃〜120℃、さらに好ましくは30℃〜100℃、さらに好ましくは40℃〜90℃で処理する。処理時間は5分〜240分、好ましくは20分〜180分、さらに好ましくは30分〜90分間処理する。その後固液分離を行い、残渣の方を常法により乾燥等することで本発明のハナビラタケ組成物を得ることができる。
【0014】
この溶媒による処理は、多段階で行ってもよく、また、異なる溶媒を用いた多段処理として行ってもよい。洗浄により得られるこの発明のハナビラタケ組成物には、主成分としてのグルカンの他未同定の成分も含有している。
【0015】
本発明の飲食品は、上記のようにして得られたハナビラタケ組成物を含有するものである。乾燥粉末品としたハナビラタケ組成物はそのままで錠剤、細粒、顆粒などに加工することもでき、さらに賦型剤やフレーバーなどを加えてから加工することもできる。このようにして得られたハナビラタケ組成物はいわゆる健康食品として利用することができる。また、本発明のハナビラタケ組成物は水あるいは水とアルコールとの混液に溶解または懸濁することができるので、茶、ソフトドリンク、酒類に添加して利用することができる。また、スープ、カレー、シチュウ、飴、クッキーを製造したり、そのほか豆腐、パン、うどん(めん類)や、かまぼこなどの水産加工品、ハム、ソーセージなどの畜産加工品など多種の食品に添加加工したり、冷凍食品類、インスタント食品類などにも利用できる。また、必要に応じて他の健康食品素材に加えより優れた健康食品への加工も可能である。いずれも各種細胞を賦活させ健康を保つのに有用な健康食品として価値の高い食品が得られる。
【0016】
ハナビラタケ組成物の食品中の存在量としては、1日当たり2〜6gの粉末量を摂食ないし飲用する程度が適当である。しかし、過剰に摂取したとしてもそれが原因となる障害は全くない。
【0017】
また本発明のペットフードは、ハナビラタケ組成物を含有するものである。
配合量はペットフードに対して0.01%〜20%、好ましくは0.05%〜10%。さらに好ましくは0.1%〜5%(重量%)を配合して使用する。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
β−グルカンの定量は従来用いられている以下の方法でおこなうことができる。▲1▼試料に0.08Mのリン酸緩衝液(pH 6.0)を加えて全量50mLとする。これにターマミル(Novo Nordisk製120L)を0.1mL添加して沸騰湯浴中で30分間インキュベートする。▲2▼これを放冷した後0.275MのNaOH溶液10mLでpH7.5±0.1に調整する。プロテアーゼ(Sigma社製P−5380)溶液(50mg/ml)を0.1ml添加し、60℃で30分間インキュベートする。▲3▼放冷した後0.325M塩酸10mLでpH4.3±0.1に調整する。さらに、アミログルコシダーゼ(Sigma社製A−9913)溶液0.1mlを添加し、60℃で30分間インキュベートする。これに95%エタノールを4倍容添加し、室温で1時間以上放置する。▲4▼生成した沈殿をガラスフィルターでろ過し、80%エタノール、アセトンで洗浄する。これに72%硫酸を10mL添加し、20℃で4時間放置する。さらに、水140mLを添加し、沸騰湯浴中で2時間加水分解をおこなう。▲5▼冷却した後、中和し、水で300mLに定容する。▲6▼ろ紙(アドバンテック5B)を用いてろ過し、グルコースオキシダーゼ法(和光純薬工業株式会社製Glucose CII−Test Wako)を用いてろ液中のブドウ糖を定量する。このとき、β−グルカン(g/100g)=ブドウ糖(g/100g)×0.9である。
【0019】
実施例1
ハナビラタケ(Sparassis crispa)子実体(ユニチカ製)を凍結乾燥した粉末50gに1Lの水を加え、常温で6時間撹拌を行いハナビラタケの溶媒処理を行った。その後ろ過により残渣画分を回収し、50℃で12時間乾燥させた。得られたハナビラタケ組成物は49gであった。本ハナビラタケ組成物中のβ−グルカン含量は39.0%であった。ハナビラタケ粉末からの収量は、(49×0.39)/50×100=38%であった。
【0020】
実施例2
実施例1において、水の代わりにエチルアルコールを使用し、同様に処理操作を行った。ろ過残渣を回収し同様に乾燥し、ハナビラタケ組成物48gを得た。本ハナビラタケ組成物中のβ−グルカン含量は38.5%であり、収量は(48×0.385)/50×100=37%であった。
【0021】
実施例3
新鮮なハナビラタケ子実体1kgに、0.5質量%クエン酸水溶液3kgを加えてpH5.0以下とし、80℃で2時間処理し、フィルターで濾過して抽出残渣800gを得た。これを凍結乾燥して80gのハナビラタケ組成物を得た。
【0022】
比較例1
ハナビラタケ(Sparassis crispa)子実体(ユニチカ製)を凍結乾燥した粉末50gに1Lの水を加え、2時間オートクレーブ中で加熱抽出を行った。この抽出操作をさらに繰り返したのち、ろ過により抽出画分を得た。このようにして得られた抽出画分を凍結乾燥し1.8gの抽出物粉末を得た。本ハナビラタケ抽出物中のβ−グルカン含量は49.0%であった。ハナビラタケ粉末からのβ−グルカンの収量は、(1.8×0.49)/50×100=7.3%であった。
【0023】
実施例4〔佃煮〕
水1リットル、醤油4リットル、水あめ10Kg、砂糖1.7Kg、寒天少々からなる調味液を煮る。さらに、この調味液で昆布を煮込み、焦付かないようにして煮汁がなくなるまで煮詰める。煮詰まる少し前に実施例1で得られたハナビラタケ組成物を昆布の1%の重量になるように加えて完全に煮詰める。以上のようにして佃煮を作った。
【0024】
実施例5〔ふりかけ〕
醤油1リットルにグルタミン酸ソーダ10g(必要に応じてイノシン酸2gを加えてもよい)、砂糖100gを加えて煮る。冷却後、実施例1で得られたハナビラタケ組成物1gを加え、蒸発乾固して得られる粉末をふるいにかけて粒子を揃え、さらに80℃で2時間乾燥したのち、必要に応じて昆布、青のり、ゴマなどを加えて防湿包装してふりかけをつくった。
【0025】
実施例6〔ドリンク〕
実施例1で得られたハナビラタケ組成物2gを溶かした水溶液200mlを作る。この水溶液に糖類30g、蜂蜜3g、カラメル1g、アスコルビン酸とクエン酸を少々、さらに香料適量を加え、93℃で20分間殺菌し、無菌的に缶またはびんに充填してソフトドリンクを作製した。蜂蜜、カラメルの代わりに、オレンジ、グレープまたはピーチの濃縮液を加えて果実ジュースも作製した。また前記水溶液に緑茶、ウーロン茶、霊芝、アマチャズル、アロエなどの茶類を加え、さらに必要に応じて少量の調味料、香料を加えてお茶飲料も作製した。
【0026】
実施例7〔豆腐〕
一般的な豆腐の製造過程で、ニガリを加える時に一緒に実施例1で得られたハナビラタケ組成物2g(一丁に付き)を加え、よくかきまぜ固化させて豆腐を得た。
【0027】
実施例8〔パン〕
醗酵前のパン生地に実施例1で得られたハナビラタケ組成物3g(1斤に付き)を練り込み、これを焼き上げることでβ−グルカン入りパンを作った。アンパンやクリームパンなどの菓子パンでは、中に入れるあんこやクリームを練り込んで作ることができる。
【0028】
実施例9〔飴〕
砂糖10kgに実施例1で得られたハナビラタケ組成物10gを加え、さらに水飴1kgを加えて煮詰めた。やや放冷後、色素、香料、酸味料を加えよく練り混ぜた後、油をひいた冷却盤またはタブレット機にかけて冷却し、形を整え飴とした。
【0029】
実施例10〔うどん〕
うどん生地を練る前に実施例1で得られたハナビラタケ組成物を全体の0.1%程度加え、常法に従って生うどん、乾うどん、インスタントうどんとした。そば、ラーメンなども同様の方法で製造することができる。
【0030】
実施例11〔練り製品〕
かまぼこ、ソーセージ魚肉またはミンチ肉中に実施例1で得られたハナビラタケ組成物を全体の0.1%程度ねり込み、常法に従って加工した。
【0031】
実施例12〔サプリメント〕
錠剤、細粒、トローチ携帯性や服用の簡便性を考慮して、実施例1で得られたハナビラタケ組成物全量の1%程度に乳糖やデンプン、乾燥酵母などの賦型剤を加え、常法によって成型加工した。
【0032】
実施例13〔調味料〕
調理用細粒酵母エキス、かつおエキスなどの調味料と実施例1で得られたハナビラタケ組成物とを、100対20から100対70までの間で随意に配合し、常法によって加工した。
【0033】
実施例14〔発泡酒〕
醸造工程の麦芽汁に実施例1で得られたハナビラタケ組成物を10%相当混合し、しかる後に酵母による発酵を行い、以下常法でビール様発泡酒を製造した。
【0034】
実施例15〔アルコール飲料〕
梅酒、果実酒、ウイスキー、焼酎、その他酒類の飲用に際し、実施例1で得られたハナビラタケ組成物を全量に対して1〜15%適宜混合した。あるいは混合した後にビン又は缶に充填した。
【0035】
実施例16〔嘗め味噌〕
米、麦、豆を加工して出来た醸造用味噌に、実施例1で得られたハナビラタケ組成物を味噌1kgに対して50〜100g混合し、その他にゆずや魚具を使用し、常法で加工して嘗め味噌を製造した。
【0036】
実施例17〔お茶(飲料、振り出し)〕
緑茶、烏龍茶及び各種生薬の単体又は複合品の煎じ液あるいは振り出し用パックに、実施例1で得られたハナビラタケ組成物を予め加えた。配合量は各素材重量の5〜10%とした。
【0037】
実施例18〔各種健康食品の追加素材〕
市販されている各種健康食品の配合素材として、実施例1で得られたハナビラタケ組成物を使用することで、従来のものより機能性の高い食品を製造することが出来た。加える粉末量は1日摂取量として0.5〜5gが適量であった。
【0038】
実施例19〔ペットフード〕
実施例1で得られたハナビラタケ組成物を従来のペットフードに添加することで、従来のものより機能性の高いものを製造することが出来た。1日摂取量として0.5〜5gとなるように配合した。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、各種の栄養補助食品などの飲食品として有用なハナビラタケ由来の組成物を効率よく得ることができる。
また、本発明の飲食品によれば、生理活性を有するハナビラタケ中の有効成分そのものが経口投与によって生体の各種細胞を賦活させ、抗腫瘍作用や生活習慣病の治療や予防に、また他の健康食品との併用による有用性の向上など、従来の製品に比べてもすぐれた効果が認められるとともに、人間に対しての悪影響を及ぼさないので、これを主材とする食品は健康に対してすぐれた効果を発揮するものである。
【0040】
また、生理活性を有する有功成分を精製する必要がないので、健康食品を安価且つ容易に製造できる利点がある。また、医薬品とは異なって一般の家庭でも気軽に利用することができるといった効果もある。さらに、粉末として利用できるので取扱いが容易であり保存上も有利であるばかりでなく、水または、水・アルコールの混液に溶解、懸濁するので液剤としての利用も可能であり、食品加工上も幅広く利用できる効果がある。
Claims (5)
- ハナビラタケを溶媒で処理して得られるハナビラタケ組成物。
- 主成分としてβ−グルカンを含有することを特徴とする請求項1記載のハナビラタケ組成物。
- ハナビラタケを溶媒で処理することを特徴とするハナビラタケ組成物の製造法。
- 請求項1または2記載のハナビラタケ組成物を含有する飲食品。
- 請求項1または2記載のハナビラタケ組成物を含有するペットフード。
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JP2006137680A (ja) * | 2004-11-10 | 2006-06-01 | Unitika Ltd | コラーゲン産生促進剤 |
JP2007055952A (ja) * | 2005-08-25 | 2007-03-08 | Unitika Ltd | ハナビラタケ由来組成物 |
JP2010100576A (ja) * | 2008-10-24 | 2010-05-06 | Unitika Ltd | 便秘改善剤 |
JP2017131205A (ja) * | 2016-01-29 | 2017-08-03 | 有限会社明日香 | ハナビラタケ酒及びその製造方法 |
-
2003
- 2003-03-28 JP JP2003090995A patent/JP2004290157A/ja active Pending
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