JP2004289916A - 電力系統信号測定装置 - Google Patents

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Hideyuki Nakatani
英之 中谷
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Abstract

【課題】アナログ式ローパスフィルタの監視装置は、系統には基準高調波信号が存在しないという想定で、測定した信号から基準高調波信号の周波数帯域成分を抽出し、その値が警報設定値を超えているかで異常を検出する様にしている。
【解決方法】電力系統信号と基準高調波信号との加算回路において、基準高調波信号を加算回路に入力する部分にスイッチを設ける。当該スイッチをON/OFFする事により、基準高調波信号成分を求め、警報判断は当該基準高調波信号値を引いた値で実施する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は電力系統における電気量を計測、監視又は制御する装置におけるアナログ入力回路の自動監視装置に関する。
【従来の技術】
【0002】
電力系統を計測、監視又は制御する装置においては、ノイズによる測定値の影響を押さえる為、およびディジタルフィルタでは除去出来ない高調波成分を除去する為にアナログ式ローパスフィルタを設けるのが一般的である。
【0003】
ところが、アナログ式ローパスフィルタにはコンデンサおよび抵抗を用いるのでディジタル回路とは異なり経年変化が発生し測定精度に影響する。この為、常時計測、常時監視又は制御をする装置においては当該経年変化を把握し、一定以上の変化に対して警報出力する機能を付加する事が一般的である。
【0004】
アナログ式ローパスフィルタの精度監視機能は、測定したい周波数領域の数倍の高調波信号をアナログ式ローパスフィルタの入力部で測定信号に加算し、この高調波成分を出力部であらかじめ定めた設定値を超える値となった時に、アナログ式ローパスフィルタの異常と判断し警報を発生する様にしている。図8が当該方式の回路例である。これに用いる高調波信号を基準高調波信号、高調波信号を発生する回路を基準高調波信号発生回路と呼ぶ事にする。
【0005】
測定したい信号についてはアナログ式ローパスフィルタの出力信号を、ディジタル的ローパスフィルタにより基準高調波信号の周波数成分を除去する事で求める事が出来る。当該方式を用いた測定システムは、従来から存在する。(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−223533号公報(段落0009、図9)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
アナログ式ローパスフィルタの監視装置は、電力系統には基準高調波信号の周波数成分が存在しないという想定で、測定した信号から基準高調波信号の周波数帯域成分を抽出し、その値が警報設定値を超えているかで異常を検出する様にしている。
【0008】
ところが、電力系統には本来50Hzもしくは60Hz成分のみが存在するのみであるにもかかわらず、インバータ機器やパソコン機器などの普及により、当該装置が高調波電流を電力系統側に発生させ、電力系統においては高調波歪み率が数%〜数十%含まれているのが実状である。この値は年々増加している。また、電力系統の電圧クラスが特別高圧以上では比較的高調波歪み率が低いが、配電系統などの低圧クラスになると高調波歪み率は大きくなる傾向にある。
【0009】
この為、基準高調波信号の周波数成分と同一の電力系統の高調波成分が存在するとき、アナログ式ローパスフィルタの精度が悪く無いのにもかかわらず、信号の加算値が警報設定レベルを超える事により、アナログ式ローパスフィルタ精度異常と認識してしまう事となる。本発明は、電力系統の高調波歪み率に左右されずに、アナログ式ローパスフィルタの精度確認を行う事にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成する為、精度基準となる高調波信号を発生する基準高調波信号発生回路と、電力系統の系統電気量を計測するアナログ計測回路と、前記2回路の信号を合成する加算回路と、加算回路入力に基準高調波信号発生回路の入力有無を切換える高調波スイッチと、加算回路出力値よりディジタル処理により高調波信号を分離したディジタル処理値と、ディジタル処理値の高調波スイッチを入としたものより、切としたものの差の絶対値を求め、当該値とあらかじめ設定しておいた値との差が一定以上存在する時に警報を出力する機能を有する電力系統信号測定装置とする。
【0011】
また別の方式では、精度基準となる高調波信号を発生する基準高調波信号発生回路と、電力系統の系統電気量を計測するアナログ計測回路と、前記2回路の信号を合成する加算回路と、あらかじめ基準高調波発生回路の値を計測し基準高調波値として記録する機能と、加算回路出力値よりディジタル処理により高調波信号を分離したディジタル処理値と、ディジタル処理値から基準高調波値との差の絶対値を求め、当該値とあらかじめ設定しておいた値との差が一定以上存在する時に警報を出力する機能を有する電力系統信号測定装置とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)図1は本発明を実現する為の回路形態である。電力系統の系統を簡易モデル化している。電源側として発電所の発電機1が存在する。発電所の電力は電力線2を通り需要家に到達する。電力線2には複数の需要家3が存在し、インバータ機器等の高調波発発生源を用いている需要家3からは高調波電流を発生する。当該高調波電流の一部が電力線2に流れ、電力系統等のインピーダンスにより高調波電圧歪みとなる。
【0013】
この電力線2の値を計器用変成器4で1100または5A程度の信号レベルにし、計測装置10の入力トランス11で微弱信号に変換しアナログ回路信号電圧レベルにする。入力トランス11の出力にはアナログ式ローパスフィルタ13を設置し高帯域のノイズおよび高調波を除去する。複数チャネルの変換をA/D変換器16を1個で行う為に、ローパスフィルタの出力にマルチプレクサ15を付けて時分割切り換えをする。
【0014】
アナログ式ローパスフィルタ回路13の遮断周波数特性を把握する目的で、入力トランス11の出力信号に基準高調波信号14を加算する加算器12を付加する。基準高調波信号14については、基準高調波信号14を付加するか、しないかを切り換えする為に高調波スイッチ20を設ける。高調波スイッチ20がOFF時に信号が安定するように高抵抗21にてプルダウンする。
【0015】
前記回路構成に対して、図2の通りにソフト制御を行う。記録時刻監視としてiを用いる。iは記録回数毎にカウントアップする(S14)。装置電源投入時に初期化の為にiを0(S1)、高調波スイッチ20をOFFとする(S2)。装置は自動監視時刻かどうかを判断する機能を有する(S3、S9)、自動監視時刻でないならば高調波スイッチをOFFの状態のままでデータサンプリングを行い(S8)、フーリエ変換を行う事で系統信号の基本波成分Dfi(i)と高調波成分Dhi(i)を分離し(S7)、この時の値を一時的に保存する。(S13)
【0016】
自動監視時刻の時は、高調波スイッチをON(S4)後にデータサンプリング(S5)を行い、その後に高調波スイッチをOFFする(S6)。測定した信号をフーリエ変換する(S7)。ここでS7で測定した高調波成分Dh(i)は、図3に示す様に測定したい電力系統の高調波と基準高調波信号の合成値が記録された事になる。この合成値によりアナログ式ローパスフィルタの警報検出を行うと、電力系統の高調波の成分だけ誤る可能性がある。
【0017】
この為、今回計測した高調波成分Dh(i)より前回S13で一次記録しておいた高調波成Dh(i−1)を引いた値を用いて、警報設定レベルを超えているかを判断する(S10)。当該処理を繰り返す事になる。
【0018】
図2には記載していないが、警報設定レベルを超えている時に警報出力する(S11)場合に、一度警報設定レベルを超えているだけで異常判断するだけでなく、超えている事(S10にてY)が例えば連続10回継続した時に異常出力する事を行うと、一時的な系統変換に対して誤警報を出力する事は無くなる。当該継続10回と記載しているのは、測定する電力系統の状態および計測時間間隔により2回としても1000回としても良い。
【0019】
また、S10の判断は前回値との差で求めているが、数回前の値でも、数十回前の値でも良い。この値も測定する電力系統の状態および計測時間間隔に合わせて任意に設定する。
【0020】
通常の保護継電器の場合、基本波成分Df(i)により系統状態を判断し制御する(S12)。S7にて基本波成分のみを求めている為、基準高調波信号の影響を受けずに制御できる。電力系統の高調波フィルタやコンデンサ用の保護継電器等の高調波成分で系統状態を判断する保護継電器が存在する。この場合の基準高調波信号の周波数は、系統状態の判断を行う高調波成分の数倍の周波数値を用いる。
【0021】
(第2の実施形態)図1回路の高調波スイッチ20を用いない方法を示す。回路構成は図4である。図4内の記号と図1内の記号が同一のものは、同一機能を有する。第2の実施形態は2種類の動作モードを用いる。図5に示す調整モードと図6に示す通常モードを持つ。図2に記載の文章と図6に記載の文章が同一のものは同一の機能を有する。
【0022】
図5の調整モードは装置設置時、もしくは定期点検時に用いるモードである。当該モードを実行する時にはあらかじめ電力系統の信号成分を0にする為に入力信号端子を短絡する(S31)。装置の自己発熱による温度変化の影響を押さえる為に、電源投入後数十分間待つ。その後、データサンプリングを行い(S32)、フーリエ変換を行い(S33)、基準高調波信号成分を記録する(S34)。基準高調波成分Dhkの記録は、ベクトル情報(大きさと位相)を記録する。当該データは不揮発性のメモリまたはハードディスク22に記録し、装置の電源がオフの状態にしても消えない様にする。
【0023】
通常モード図6は、系統データサンプリングを行い(S42)、系統データのフーリエ変換を行いDf(i)Dh(i)を求める(S43)。自動監視時刻かどうかを判断し(S44)、自動監視時刻の時に警報判断を行うが、S42,S43で求めた系統データDh(i)は基準高調波信号成分も含まれるので、ベクトル的に図7の様に引き算したものを用いてアナログ式ローパスフィルタ13の精度チェックをする(S45)。当該値が一定レベルを超えていた時に警報出力を行う。(S46)
【0024】
当該方式は第1の実施形態に比べて不揮発性のメモリ22が必要となるが、高調波信号スイッチ20が不用となるメリットがある。
【0025】
第1の実施形態、第2の実施形態双方においての説明ではフーリエ変換を行うと記載しているが、ディジタルフィルタならばどの様な方式でも良い。また、アナログ式ローパスフィルタ回路の異常検出を中心に記載しているが、信号の有無でA/Dコンバータを含めたアナログ計測回路30全般の異常状態も検出する事もできる。また、加算回路と記載しているが単なるワイヤードOR回路も含む。図2と図6では、警報判定を絶対値で判断する様にしているが、符号付きで判断し、警報判定値の下限値と上限値それぞれを別々に設定する方法でも良い。判定対象は電圧計測回路または、電流計測回路のどちらでも良い。従って図1と図4と図8の計器用変成器4及び入力トランス11は計器用変圧器または計器用変流器のどちらでも良い。
【0026】
【発明の効果】
この発明によれば系統高調波成分の多い所でも、アナログ式ローパスフィルタ異常確認を間違いなく行う事が可能であり、かつ、基準高調波信号の計測専用チャネルを不用とできる。これにより電力系統の電気量を計測、監視又は制御する装置におけるアナログ入力回路の監視機能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の回路図
【図2】実施例1のフローチャート
【図3】実施例1のベクトル図
【図4】実施例2の回路図
【図5】実施例2の調整モード フローチャート
【図6】実施例2の通常モード フローチャート
【図7】実施例2のベクトル図
【図8】従来例の回路図
【符号の説明】
12 加算回路
14 基準高調波信号発生回路
20 高調波スイッチ
30 アナログ計測回路

Claims (3)

  1. 精度基準となる高調波信号を発生する基準高調波信号発生回路と、電力系統の系統電気量を計測するアナログ計測回路と、前記2回路の信号を合成する加算回路と、加算回路入力に基準高調波信号発生回路の入力有無を切換える高調波スイッチと、加算回路出力値よりディジタル処理により高調波信号を分離したディジタル処理値と、ディジタル処理値の高調波スイッチを入としたものより、切としたものの差の絶対値を求め、当該値とあらかじめ設定しておいた値との差が一定以上存在する時に警報を出力する機能とを有する電力系統信号測定装置
  2. 精度基準となる高調波信号を発生する基準高調波信号発生回路と、電力系統の系統電気量を計測するアナログ計測回路と、前記2回路の信号を合成する加算回路と、あらかじめ基準高調波発生回路の値を計測し基準高調波値として記録する機能と、加算回路出力値よりディジタル処理により高調波信号を分離したディジタル処理値と、ディジタル処理値から基準高調波値との差の絶対値を求め、当該値とあらかじめ設定しておいた値との差が一定以上存在する時に警報を出力する機能とを有する電力系統信号測定装置
  3. 請求項1または請求項2の機能を持つディジタル保護継電器
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