JP2004288605A - 直流リレー - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構造で、小型化できながら短時間で直流高電圧を遮断できる直流リレーを提供する。
【解決手段】電流を分流させる少なくとも2つの接触部13,23とこれら接触部13,23が固定される接点固定体11,21とを有する一対の開閉可能な接点1,2を具え、一方の接点の接点固定体11は、接触部13が固定される固定面12の中心位置に一つの磁石71を具え、接触部13を磁石71の周りに固定させて、前記接点を遮断する時に接触部13、23の間に生じるアークを、磁石71を中心として円弧状に引き伸ばすようにしている。
【選択図】 図1
【解決手段】電流を分流させる少なくとも2つの接触部13,23とこれら接触部13,23が固定される接点固定体11,21とを有する一対の開閉可能な接点1,2を具え、一方の接点の接点固定体11は、接触部13が固定される固定面12の中心位置に一つの磁石71を具え、接触部13を磁石71の周りに固定させて、前記接点を遮断する時に接触部13、23の間に生じるアークを、磁石71を中心として円弧状に引き伸ばすようにしている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、直流電流のリレーに関するものである。特に、簡易な構造にて確実に直流電流を遮断できる直流リレーに関するものである。
近年、環境問題からハイブリッド自動車や燃料電池自動車のような高電圧(約300V)の自動車が開発されてきている。これらの自動車は、直流高電圧の主電池と高電圧回路からなる制御回路を具えている。また、主電池は直流高電圧であるので、事故時などには電池を制御回路から切り離す必要があり、電池と制御回路との間にはメカニカル接点の直流リレーを具える。
これらリレーは、直流高電圧を遮断するときに発生するアークが非常に大きくなることから、遮断速度が非常に遅く、短時間で遮断するのは非常に難しい。
そこで、従来では、水素などの冷却効果の大きい気体をアーク発生部に封入してアークの発生を抑える構造(例えば特許文献1参照。)がある。また、アーク発生部に磁石を設置してローレンツ力によりアークを引き伸ばす構造(例えば特許文献2参照。)がある。
しかし、従来の直流リレーにおいて、特許文献1に示すように、水素などの気体でアークの発生を抑制する構造とする場合には、気体をケース内に完全に密閉できるケース構造を必要とする。この場合、ケースはアークによる耐熱性が必要となって高価なもの(例えばセラミックなど)となる。気密性および耐熱性を上げるためには、ケースの厚みを大きくとる必要があり、ケースの形状が大きくなる問題もある。また、耐熱性が得られない場合には、廃車までメンテナンスをせずに気密性を維持することは非常に困難となる。
このように、水素などの気体を封入する場合には、気体が封入された状態を長期間保持するために大型化が要求され、さらに構造も複雑となる。その結果、自動車という限られたスペースに搭載する機器において性能を落とすことなく小型化を実現することは非常に困難であった。
また、特許文献2に示すリレーでは、互いに接触する接点を挟むように、2枚の磁石を極性が対面するように配設して、磁石の磁力線の作用により、アークを接点開閉方向と直交する方向で、接点から遠ざかる方向に直線的に引き伸ばすようにしている。
その結果、特許文献2に示すリレーでは、リレーの即時遮断に必要なアークの引き伸ばし量を接点開閉方向と直交する方向に大きく確保する必要がある。そのため、アークを引き伸ばす空間を確保しなければならない。その結果、リレー全体が接点開閉方向と直交する方向に大型化してしまう問題がある。
従って、本発明の目的は、簡易な構造で、小型化できながら短時間で直流高電圧を遮断できる直流リレーを提供することにある。
本発明は、接点間に生じるアークが円弧を描きながら引き伸ばされるように磁石を配設することにより、リレー全体を小型化してアークを短時間で消弧させて上記目的を達成する。
即ち、本発明の直流リレーは、電流を分流させる少なくとも2つの接触部とこれら接触部が固定される接点固定体とを有する一対の開閉可能な接点を具える。そして、一方の接点の接点固定体は、接触部が固定される固定面の中心位置に一つの磁石を具える。また、接触部は、固定面に配設される磁石の回りに配置されるように固定面に固定する。
この磁石の磁力線と電流によるローレンツ力により、前記接点を遮断する時に接触部の間に生じるアークを、磁石を中心として周回するよう円弧状に引き伸ばすようにする。
接点は、少なくとも一方を可動接点とすることが好ましい。可動接点の開閉動作により、可動接点の接触部を固定接点の接触部に対して接触または非接触状態にする。そして、一方の接点に電流を流して、接触部を介して他方の接点に電流を流すようにしている。このとき複数の接触部により電流を分流させる。
接点固定体は、円柱形状にすることが好ましい。接点固定体を円柱形状とする場合には、円柱の長手方向一方側端面(接触部の固定面)の中心位置に磁石を設ける。そして、複数の接触部は、円柱中心から等距離の位置に設ける。
例えば、接触部を2つ設ける場合には、円柱中心を通る直線上で、二つの接触部を結ぶ直線の中間位置が接点固定体の中心位置となるように接触部を設ける。また、接触部を三つ以上設ける場合には、接触部を結んで形成される多角形の中心位置が接点固定体の中心位置となるように設ける。このように各接触部を磁石の周りに配置させることにより、磁石を接点固定体の中心位置とし、かつ、各接触部を磁石から等距離の位置に設けることができる。
一方の接点固定体に設ける磁石は、接点開閉方向に極性が向くように配設する。例えば、接点固定体における接点開閉方向の一方側(接点が閉じる方向側)にN極が、他方側(接点が開く方向側)にS極が向くように磁石を設ける。ただしこの極性の向きは反対としてもよい。
このように磁石を一方の接点固定体に配設することにより、磁石の磁力線は、接点固定体の中心から外方にまたはその反対に放射状に伸びることになる。そして、この磁石の磁力線と各接点を流れる電流によるローレンツ力により、前記接点を遮断する時に接触部の間に生じるアークは、磁石を中心に磁石と接触部を結ぶ線を半径として描かれる円弧状に引き伸ばされる。
以上の構成により、導通時には、可動接点を閉動作させることにより、可動接点の接触部を固定接点の接触部に接触させ、遮断時には、可動接点を開動作させることにより、可動接点の接触部を固定接点の接触部から離隔させて非接触にする。
本発明によれば、各接点を接触させた状態のときは、例えば固定接点の接触部から可動接点の接触部に分流されながら電流が流れる。そして、接点を離隔させると、接点が非接触状態となり、対向している接点の接触部の間にアークが発生するが、磁石を前記したように配設しているので、発生したアークは、接触部から磁石を中心として円弧状に引き伸ばされる。
その結果、発生したアークは接点固定体の中心からさらに外方に向けて直線状に引き伸ばされることがなくなり、アークの引き伸ばしのための空間を従来よりも小さくすることができ、リレー全体としての小型化が図れる。そして、消弧ガスを封止する気密構造とする必要がなくなり、安価に直流リレーを製造することができる。
さらに、回生エネルギーなどの逆電流が生じても、周方向にアークが引き伸ばされるため、アーク同士が繋がってしまうことがなく、逆電流にも十分対応することができる。
また、一対の接点固定体は、接触部の接触面を接点開閉方向に対して傾斜させるように構成することが好ましい。
具体的には、例えば、一対の接点固定体を円柱状に形成する場合は、一対の接点固定体の固定面について、一方の接点固定体は中心部に平面部を有するすり鉢状に形成する。他方の接点固定体については、このすり鉢状に嵌め合わされる頂部が平面な山形に形成する。そして、これら固定面の傾斜面に、この傾斜面と平行する接触面を有するように接触部を固定する。さらに、固定体の中心に設ける平面部に磁石を設ける。
また、接点固定体は、角柱状に形成してもよく、この場合には、角柱の横断面が長方形状になるように接点固定体を形成する。そして、接点固定体の固定面について、一方の接点固定体の固定面は、長手方向両端側が傾斜するように長手方向中央に平面部を有する谷状に形成する。他方の接点固定体の固定面は一方の谷形状に沿う山形に形成する。そして、これら固定面の傾斜面に接触部を固定する。
このように、接触部を接点開閉方向に対して傾斜させることにより、接触部間に発生するアークが磁石による磁力線に対してほぼ90度の角度をなすようにすることができる。その結果、アークを円弧状に引き伸ばすととともに、接点固定体の傾斜面に沿って螺旋状にアークを引き伸ばすことができ、アークの接点固定体の中心から径方向外方への広がりをより効果的に抑えることができる。
さらに、一方の接点固定体の中心位置に磁石を設ける場合、他方の接点固定体には、その周囲に磁石を配設することが好ましい。この場合、他方の接点固定体に設ける磁石については、接点固定体の側面と対向する側の極性を、一方の接点固定体に設ける磁石の接点閉方向側の極性と異なる極性とする。
このように極性が向くように磁石を配置させることにより、アークに作用させるローレンツ力を増大させることができる。ローレンツ力の増大により、円弧状に引き伸ばされるアークの引き伸ばし長さをさらに長くすることができ、アークの消弧をより短時間に行える。
また、本発明では、複数の接触部を有する接点を複数設けて、これらを直列に接続可能にすることもできる。具体的には、複数の接触部が固定される固定面を有する入力接点固定体と、複数の接触部が固定される固定面を有する出力接点固定体と、これら入力接点固定体と出力接点固定体との間に配設される少なくとも一つの連結接点固定体とを具える構成とする。
入力接点固定体と出力接点固定体とは、前記した一対の接点固定体と同じ構成で固定面を一つ具える構成としている。連結接点固定体は、複数の入力側接触部が固定される入力側固定面と複数の出力側接触部が固定される出力側固定面とを有する構成としている。
また、連結接点固定体は、長尺形状に形成し、長手方向一方側端部に、入力側固定面を設け、長手方向他方側端部に出力側固定面を設ける。そして、例えば連結接点固定体を一つだけ設ける場合には、入力側固定面の接触部を入力接点固定体の接触部と接触可能とし、出力側固定面の接触部を、出力接点固定体の接触部と接触可能にする。
そして、これら入力接点固定体、連結接点固定体、出力接点固定体の各接触部を順次直列に接続可能としている。さらに、入力接点固定体、連結接点固定体、出力接点固定体は、対向する一方の固定面の中心位置に一つの磁石を設けるようにする。そして、この磁石を接点開閉方向に極性が向くように配設し、磁石の周りに接触部を固定する。
磁石は、例えば、接点固定体における接点開閉方向の一方側(接点が閉じる方向側)にN極が、他方側(接点が開く方向側)にS極が向くように設ける。ただしこの極性の向きは反対としてもよい。
このように磁石を一方の固定面に配設することにより、磁石の磁力線は、固定面の中心から外方に、またはその反対に放射状に伸びることになる。そして、この磁石の磁力線と各接点を流れる電流によるローレンツ力により、前記接点を遮断する時に接触部の間に生じるアークは、磁石を中心に磁石と接触部を結ぶ線を半径として描かれる円弧状に引き伸ばされる。
以上の構成により、接点を直列に接続可能とする場合でも、本発明によれば、接点を遮断する時に対向する接触部の間にアークが生じた際に、このアークを固定面の中心からさらに外方に向けて直線状に引き伸ばされることがない。即ち、発生したアークは、磁石を中心として円弧状に引き伸ばされるので、アークの引き伸ばしのための空間を従来よりも小さくすることができ、リレー全体としての小型化が図れる。
さらに、本発明では、接点数を増やして各接点を電気的に直列に接続し、遮断時に接点間の電圧を分圧することにより、さらに短時間で電圧を遮断することができる。その結果、消弧ガスを封止する気密構造とする必要がなく、安価に直流リレーを製造することができるばかりでなく、接点間にかかる電圧を下げることでアーク電流による接点の損傷を抑制することができる。
また、各固定面は、接触部の接触面を接点開閉方向に対して傾斜させるように構成することが好ましい。具体的には、例えば、入力接点固定体、出力接点固定体については、円柱状に形成し、これらの固定面について、中心部に平面部を有するすり鉢状に形成する。
また、連結接点固定体については、入力接点固定体、出力接点固定体のすり鉢状の固定面に嵌め合わされる頂部が平面な山部を二つ形成する。そして、これら固定面の傾斜面に、この傾斜面と平行する接触面を有するように接触部を固定する。
さらに、入力接点固定体、連結接点固定体、出力接点固定体を有する構成の場合の磁石は、接点開閉方向に対して極性が全て同じ方向に向くように配置することができる。また、隣り合う磁石について、接点開閉方向に対して極性の向きが異なるように配置することもできる。
特に、連結接点固定体が一つの場合には、入力接点固定体と出力接点固定体について固定面の中心に磁石を設け、連結接点固定体の固定面の中心には磁石を設けないようにすることが好ましい。
なお、連結接点固定体が複数設けられる場合には、連結接点固定体における固定面の少なくとも一方に磁石を設けることができる。
隣り合う磁石を接点開閉方向に対して極性の向きが異なるように配置する場合には、磁気回路が複数の接点の間で閉じられることになり、磁石から発生する磁束の空間への漏れを減少させることができる。その結果、アークに作用する磁束密度を向上させられ、ローレンツ力をさらに増大させることができる。
さらに、連結接点固定体の接触部と対向する接点固定体の固定面の中心に磁石を設ける場合には、連結接点固定体の入力側固定面と出力側固定面との間に、対向する接点固定体に設ける磁石と閉じた磁気回路が形成されるように磁石を設けることが好ましい。
例えば、連結接点固定体を一つ設ける場合には、入力接点固定体と出力接点固定体について、固定面の中心に磁石を設け、連結接点固定体の入力側固定面と出力側固定面との間に磁石を設ける。
このとき、入力接点固定体に設ける磁石と出力接点固定体に設ける磁石は、極性の向きが異なるように配置し、連結接点固定体の磁石は、入力接点固定体と出力接点固定体の磁石に対し、それら磁石の極性と異なる極性となるように磁極面を対向させることが好ましい。
このように磁石を配置させることにより、磁気回路がさらに短い距離で閉じられることになり、磁石から発生する磁束の空間への漏れをさらに減少させることができ、ローレンツ力のさらなる増大が図れ、高速遮断が可能となる。
また、以上の接点直列構造のものについて、連結接点固定体の周囲に磁石を設けるようにしてもよい。このように連結接点固定体の周囲に磁石を設けることにより、さらに、ローレンツ力の増大を図ることができる。
さらに、接触部の接触面は、Snを1〜9質量%含み、Inを1〜9質量%含む化学組成のAg合金からなり、表面部の第一層と内部の第二層とを有し、第一層のマイクロビッカース硬度が190以上、第二層のマイクロビッカース硬度が130以下であり、第一層の厚みが、10〜360μmの範囲内にあるように形成することが好ましい。
Snの含有量を1〜9質量%とするのは、1質量%未満では、接点の耐溶着特性が低下し、9質量%を超えると接点の温度特性が低下するからである。好ましくは、2〜7質量%である。
ここで、耐溶着特性とは、接点が切れない状態、特に接点がくっついたまま離れない溶着の起こりにくさをいう。また、温度特性とは、通電時の接点の温度上昇の度合いをいい、温度特性が良いとは、通電により接点の温度が上昇しにくく、リレーに接続されるケーブルや機器に熱的な影響を与えにくいことをいう。
また、Inの含有量を1〜9質量%とするのは、この範囲外の含有量の場合には接点の温度特性が低下するからであり、さらに、9質量%を超えると、Snの含有量にもよるが、耐溶着特性が低下するからである。好ましくは、3〜7質量%である。
第一層の硬度(通常5g荷重負荷)をマイクロビッカース硬度で190以上にするのは、このレベル未満になると、耐溶着特性や温度特性が低下するからであり、第二層の硬度をマイクロビッカース硬度で130以下にするのは、このレベルを超えると、接点が脆弱化して耐摩耗性が低下するからである。
第一層の硬度は240以上、第二層のそれは120以下であるのが望ましい。なお、本発明において硬度は、接点の表面に垂直な断面上の第一層および第二層のそれぞれの域内における任意の地点でマイクロビッカース硬度にて確認したものである。本発明において接点では、第一層、第二層それぞれの層内に硬度分布があっても構わない。
また、通常第一層から第二層にかけて境目に硬度落差(マイクロビッカース硬度で60以上)があり、この境目には両層の中間の硬度を有する(すなわちその硬度が、第一層の下限硬度未満かつ第二層の上限硬度を超える範囲内にある)領域(以下中間部という。)がある。
第一層の厚みは、10〜360μmとする。下限未満では、耐溶着特性や温度特性が低下し、上限を超えると接点の温度特性が低下するからである。好ましくは30〜120μmである。また、第一層と第二層を有する接触部は、中間部のあるものも含まれるが、その場合の中間部の厚みは200μm以下であるのが望ましい。200μmを超えると接点の温度特性が低下しやすくなる。好ましくは100μm以下である。
前記接触部には、上記基本成分に加え、さらに、Sb、Ca、Bi、Ni、Co、ZnおよびPbの群から選ばれた少なくとも1種の元素が、従成分として含まれていてもよい。通常、これらの成分の大部分は、Agマトリックス中に化合物、特に酸化物の形態で分散される。
但し、個々の成分によって望ましい分散量範囲が異なる。例えば、いずれも元素換算された質量%単位で0.05〜2(Sb)、0.03〜0.3(Ca)、0.01〜1(Bi)、0.02〜1.5(Ni)、0.02〜0.5(Co)、0.02〜8.5(Zn)、0.05〜5(Pb)である。なお、括弧内は対象元素である。以上の各成分種において、その量が上記の範囲外になると、直流リレーの種類によっては温度特性が低下することがあり、特に上限を超えるとリレーの種類によっては同時に耐溶着特性も低下することがある。
通常は、以上の従成分が接点の性能に若干影響を及ぼすが、これ以外の成分としては、例えば以下のものが挙げられる。これらはいずれも本発明の目的の範囲内で微量に含まれても構わない。なお成分によって望ましい含有量が異なるが、括弧内数値のうち元素記号で表示されたものは、元素換算された質量%単位で、分子式で表示のものは、同分子換算された質量%単位で表したその許容上限値である。Ce(5)、Li(5)、Cr(5)、Sr(5)、Ti(5)、Te(5)、Mn(5)、AlF3(5)、CrF3(5)およびCaF2(5)、Ge(3)およびGa(3)、Si(0.5)、Fe(0.1)およびMg(0.1)。
第一層および第二層を有する接触部を作製する方法としては、溶解・鋳造法、粉末冶金法などが挙げられる。
例えば、溶解・鋳造法では、以下の手順がある。まず第一層および第二層それぞれの化学組成となるように溶解・鋳造されたインゴットを作り、これらを粗く圧延した後、二種の圧延材を熱間圧着する。その際、またはその後、必要により上記した純Agなどの薄い接続層を圧着する。
これをさらに圧延して所定の厚みの板状に形成した後、打ち抜き、またはさらに成形し、最終形状に近いサイズのAg合金素材とし、さらに、この素材を内部酸化(後酸化法)してSn、Inなどの金属成分を酸化物に転換する。
なお、溶解・鋳造に先立ち成分元素の酸化物以外の化合物を含ませることもできる。また、必要に応じて、圧延以降に適宜熱処理や形状を調整する工程などを入れる。この場合、熱処理条件の工夫によって、各層の微細組織を意識的に制御して材料特性やそのレベルなどを変えることができる。
また、粉末冶金法で接触面を作る場合は、例えば、予めSnやInなどの粉末とAgの粉末とを二種の所定組成にて配合・混合した後、熱処理して内部酸化(前酸化法)させ、得られた二種の粉末を型内に積層・充填して圧縮成形しプリフォームとする。なお、SnやInなどの粉末とAgの粉末とは、他の化合物も一緒に混合してもよい。
そして、このプリフォームには熱間押し出し、熱間・冷間ロール圧延、熱間鍛造など各種の塑性加工が適用できる。さらに上記した鋳造法と同様に、必要に応じて圧延以降に熱処理や形状を調整する工程などを入れる。熱処理条件の工夫によって各層の所望の特性制御が可能になる。
また、第二層の素材のみを上記に準じた溶解・鋳造法や粉末冶金法の手順で作成した後、第一層を、溶射、CVDなどによる厚膜形成、スクリーン印刷などによる厚膜印刷、塗布後焼付けなど様々な手段によって形成してもよい。さらに、第一層を構成する合金板と第二層を構成する合金板との接合には、例えば熱間静水圧成形法による拡散接合、熱間押し出しなど種々の手段が適用できる。また、熱処理を施すことによって、各層の微細組織を意識的に制御して、所望の特性を得ることもできる。
さらに、本発明リレーでは、接触部を形成するAg合金素材を上記の条件の範囲内にあり、第一層と第二層とが同じ化学組成であるものも含まれる。第一層と第二層とを同じ化学組成にする場合、後述する手段により両層の硬度レベルを異なるようにする。
例えば第一層だけを急熱・急冷し、第一層の残留応力を第二層のそれより大きくする方法、表面の第一層だけにショットブラスト加工を施して加工硬化する方法がある。
また、Ag合金板に熱間圧延や冷間圧延に加え熱処理を施す、いわゆるサーモメカニカルプロセッシング(熱加工処理)を行った後、内部酸化を行って、第一層に第二層より微細な針状の酸化物粒子を析出させ、表面の硬度を高める方法がある。また、第一層および第二層のAg合金板を圧延加工や熱間圧着する際に第一層と第二層の鍛錬加工比を変えて行う方法もある。
さらに、接触面の素材は、上記条件の範囲内にあり、しかも第一層中のSnの含有量が第二層のそれと同じか、またはそれよりも多いものも含まれる。これによって、第二層の硬度よりも第一層の硬度の方が、ほぼ確実に高くなる。
前記接触面は、溶解・鋳造法や、粉末冶金法などにより形成するが、このとき、第一層および第二層を内部酸化させることが好ましい。内部酸化法には、後酸化法と前酸化法とがある。後酸化法とは、合金の状態で最終接点形状に仕上げるか、その近くまで成形した後に、内部酸化をする方法である。前酸化法とは、合金の粉末または粒を内部酸化させておいて、これらを成形、圧縮・焼結する方法である。
発生したアークを、磁石を中心として円弧状に引き伸ばすことができるので、アークの引き伸ばしのための空間を従来よりも小さくすることができ、リレー全体としての小型化が図れる。
その結果、消弧ガスを封止する気密構造とする必要がなくなり、安価に直流リレーを製造することができる。
また、接点を直列に接続する場合には、電圧を分圧して、接点間にかかる電圧を下げることでアークの発生を抑制し、短時間での遮断を実現することができる。さらに、アーク電流による接点の損傷を抑制することができる。
さらに、接触部の接触面を耐溶着特性に優れた材料で形成することにより、リレーの短絡時に大電流が流れても接点が溶着せずに確実に遮断することができる。
(第1実施形態)
図1から図3は本発明の第1実施形態にかかる直流リレーの概略構成図であって、図1は、接点が非接触の状態のときの断面図を示し、図2は接点が非接触の状態のときの平面図を示す。また、図3は、接点が非接触状態の斜視図を示す。
図1から図3は本発明の第1実施形態にかかる直流リレーの概略構成図であって、図1は、接点が非接触の状態のときの断面図を示し、図2は接点が非接触の状態のときの平面図を示す。また、図3は、接点が非接触状態の斜視図を示す。
本発明リレーは、図1および図3に示すように、固定接点1と可動接点2とを具えている。固定接点1は、接点固定体11と、接点固定体11の固定面12に固定される二つの接触部13とを具えている。可動接点2も、接点固定体21と、接点固定体21の固定面22に固定される二つの接触部23とを具えている。
可動接点2の開閉動作により、可動接点2の接触部23を固定接点1の接触部13に対して接触または非接触状態にする。そして、固定接点1に電流を流して、各接触部を介して可動接点2に電流を流すようにしている。このとき複数の接触部13,23により電流を分流させる。
各接点固定体11,21は、図3に示すように、円柱形状に形成されている。円柱の長手方向一方側端面を固定面12,22としている。
これら固定面12,22は、固定接点1については、固定面12を中心部に平面部を有するすり鉢状に形成する。可動接点2の固定面22については、固定接点1の固定面12のすり鉢状に嵌め合わされる頂部が平面な山形に形成する。そして、これら固定面12,22の傾斜面に、この傾斜面と平行する接触面を有するように接触部13,23を固定する。
固定接点1および可動接点2の接触部13,23は、円板状の金属ブロックから形成され、接触部13,23の接触面は、Snを1〜9質量%含み、Inを1〜9質量%含む化学組成のAg合金からなり、表面部の第一層と内部の第二層とを有し、第一層のマイクロビッカース硬度が190以上、第二層のマイクロビッカース硬度が130以下であり、第一層の厚みが、10〜360μmの範囲内にある材料で形成している。さらに各接触面は、チップ状態で後酸化法により内部酸化させている。例えば、チップを4気圧(405.3kPa)の酸素雰囲気中750℃で170時間保持する。なお、以下に示す第2実施形態から第7実施形態の各接触部の接触面も、第1実施形態と同じ材料で形成している。
そして、固定接点1および可動接点2の接触部13,23は、固定面12,22の中心を通る直線上で、二つの接触部を結ぶ直線の中間位置が固定面の中心位置となるように設ける。
さらに、固定接点1の固定面12の中心位置である水平部に磁石71を設ける。磁石71は、固定面12に取り付けられる際に、接点開閉方向の閉方向側にN極が、開方向側にS極が向くように設ける。
このように磁石71を固定接点1の接点固定体11に配設することにより、磁石71の磁力線Bは、図2に示すように、接点固定体11の中心から外方に放射状に伸びることになる。そして、この磁石71の磁力線Bと各接点を流れる電流によるローレンツ力Fは、放射状に伸びるそれぞれの磁力線Bに対してほぼ90度の角度をなすので、前記接点を遮断する時に接触部の間に生じるアーク100は、磁石71を中心に磁石71と接触部13のある一点を結ぶ線を半径として描かれる円弧状に引き伸ばされる。
以上の構成により、第1実施形態によれば、接点を遮断する時に接触部の間にアークが生じても、このアークを接点固定体の中心からさらに外方(径方向外方)に向けて直線状に引き伸ばされることがない。即ち、発生したアーク100は、磁石71を中心として固定面12,22の範囲内で円弧状に引き伸ばされるので、アークの引き伸ばしのための空間を従来よりも小さくすることができ、リレー全体としての小型化が図れる。
さらに、第1実施形態では、各固定面12,22および接触部13,23の接触面を接点開閉方向に対して傾斜させているので、アークを固定面の傾斜面に沿って螺旋状に引き伸ばすことができ、アークの接点固定体の中心から径方向外方へ広がりをより効果的に抑えることができる。
また、回生エネルギーなどの逆電流が生じても、周方向にアークが引き伸ばされる。そのため、逆電流が生じても、アーク同士が繋がってしまうことがなく、逆電流にも十分対応することができる。
さらに、本実施形態では、接触部の接触面を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、リレーの短絡時に大電流が流れても接点が溶着せずに確実に遮断することができる。
(第2実施形態)
図4および図5は本発明の第2実施形態にかかる直流リレーを示す。図4は、接点が非接触の状態のときの断面図を示し、図5は接点が非接触の状態のときの平面図を示す。
図4および図5は本発明の第2実施形態にかかる直流リレーを示す。図4は、接点が非接触の状態のときの断面図を示し、図5は接点が非接触の状態のときの平面図を示す。
第2実施形態は、第1実施形態の構成にリング状の磁石72を追加したものである。リング状磁石72を除いては、全て第1実施形態と同じ構成なので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
リング状磁石72は、可動接点2の接点固定体21の周囲に、接点固定体21と密着させた状態で配設される。リング状磁石72は、内面がS極で外面がN極となるように配設されている。
第2実施形態では、このリング状磁石72により、第1実施形態のリレーよりもアークに作用させるローレンツ力Fを増大させることができる。ローレンツ力の増大により、アークの引き伸ばし量が増大し、アークの消弧時間をさらに短縮できる。
さらに、本実施形態も、接触部の接触面を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、リレーの短絡時に大電流が流れても接点が溶着せずに確実に遮断することができる。
また、本発明は、図6から図10の第3実施形態から第7実施形態に示すように、複数の接触部を有する接点を複数設けて、これらを直列に接続可能にすることもできる。
(第3実施形態)
図6に示す第3実施形態は、固定接点となる入力接点3と、出力接点4と、可動接点となる連結接点5とを具えている。
図6に示す第3実施形態は、固定接点となる入力接点3と、出力接点4と、可動接点となる連結接点5とを具えている。
入力接点3と出力接点4には外部端子が接続される。これら入力接点3と出力接点4の間に連結接点5を具える。入力接点3は、複数の接触部33と、これら接触部33が固定される一つの固定面32を有する入力接点固定体31を具える。出力接点4も、複数の接触部43と、これら接触部43が固定される一つの固定面42を有する出力接点固定体41を具える。入力接点固定体31と出力接点固定体41とは、前記した第1実施形態の固定接点1の接点固定体11と同じ形状をしており、円柱状で固定面がすり鉢状をしている。
連結接点5は、複数の入力側接触部52が固定される入力側固定面53と複数の出力側接触部54が固定される出力側固定面55とを有する連結接点固定体51を具える。連結接点固定体51は、長尺形状に形成され、長手方向一方側端部に、入力側固定面53を設け、長手方向他方側端部に出力側固定面55を設けている。
そして、入力側固定面53の接触部52を入力接点固定体31の接触部33と接触可能とし、出力側固定面55の接触部54を出力接点固定体41の接触部43と接触可能にしている。そして、これら入力接点固定体31、連結接点固定体51、出力接点固定体41の各接触部を順次直列に接続可能としている。
また、連結接点固定体51は、入力接点固定体31、出力接点固定体41のすり鉢状の固定面に嵌め合わされる頂部が平面な山部を二つ形成している。これら山部が入力側固定面53と出力側固定面55となる。そして、これら固定面の傾斜面に、この傾斜面と平行する接触面を有するように接触部52,54を固定する。
さらに、入力接点固定体31と出力接点固定体41の固定面32,42の中心位置に一つの磁石71を設けている。これら磁石71は、全て接点開閉方向の閉方向側にN極が、開方向側にS極が向くように設けている。そして、磁石71の周りに接触部33,43を固定している。
このように入力接点固定体31と出力接点固定体41に磁石71を設けることにより、磁石71の磁力線Bは、固定面の中心から外方に放射状に伸びることになる。そして、この磁石の磁力線Bと各接点を流れる電流によるローレンツ力により、前記接点を遮断する時に接触部の間に生じるアークは、磁石71を中心に磁石71と接触部33または接触部43を結ぶ線を半径として描かれる円弧状に引き伸ばされる。
以上の構成により、接点を直列に接続可能とする場合でも、接点を遮断する時に接触部間にアークが生じても、アークは、磁石を中心としてそれぞれの固定面の範囲内で円弧状に引き伸ばされるので、アークの引き伸ばしのための空間を従来よりも小さくすることができ、リレー全体としての小型化が図れる。
さらに、第3実施形態では、接点数を増やして各接点を電気的に直列に接続し、遮断時に接点間の電圧を分圧することにより、さらに短時間で電圧を遮断することができる。その結果、消弧ガスを封止する気密構造とする必要がなく、安価に直流リレーを製造することができながら、接点間にかかる電圧を下げることでアーク電流による接点の損傷を抑制することができる。
さらに、本実施形態も、接触部の接触面を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、リレーの短絡時に大電流が流れても接点が溶着せずに確実に遮断することができる。
(第4実施形態)
次に、図7に示す第4実施形態の直流リレーは、第3実施形態(図6)の構成において、磁石71の極性の向きをそれぞれ異なるようにしたものである。磁石71の極性の向きを除いては、全て第3実施形態と同じ構成なので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
次に、図7に示す第4実施形態の直流リレーは、第3実施形態(図6)の構成において、磁石71の極性の向きをそれぞれ異なるようにしたものである。磁石71の極性の向きを除いては、全て第3実施形態と同じ構成なので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
第4実施形態の直流リレーは、入力接点固定体31の磁石71については、接点開閉方向の閉方向側にN極が、開方向側にS極が向くように設けている。そして、出力接点固定体41の磁石71については、接点開閉方向の閉方向側にS極が、開方向側にN極が向くように設けている。
このように入力接点固定体31と出力接点固定体41に磁石71を設けることにより、入力接点固定体31の磁石71の磁力線Bについては、固定面32の中心から外方に放射状に伸びることになる。また、出力接点固定体41の磁石71の磁力線Bについては、固定面42の外周全体から中心に向けて伸びる。
第4実施形態では、入力接点固定体31と出力接点固定体41の隣り合う磁石71を接点開閉方向に対して極性の向きが異なるように配置している。その結果、磁気回路が複数の接点の間で閉じられることになり、磁石から発生する磁束の空間への漏れを減少させることができ、アークに作用する磁束密度を向上させられ、ローレンツ力をさらに増大させられる。
さらに、本実施形態も、接触部の接触面を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、リレーの短絡時に大電流が流れても接点が溶着せずに確実に遮断することができる。
(第5実施形態)
次に、図8に示す第5実施形態の直流リレーは、第4実施形態(図7)の構成において、連結接点5に磁石73を設けたものである。磁石73を設けたことを除いては、全て第4実施形態と同じ構成なので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
次に、図8に示す第5実施形態の直流リレーは、第4実施形態(図7)の構成において、連結接点5に磁石73を設けたものである。磁石73を設けたことを除いては、全て第4実施形態と同じ構成なので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
第5実施形態は、連結接点固定体51の入力側固定面53と出力側固定面55との間に、磁石73を設けている。この磁石73は、入力側固定面53に向いてS極が、出力側固定面55に向いてN極が向くように配設されている。
このように磁石73を設けることにより、入力接点固定体31の磁石71と出力接点固定体41の磁石71との間で磁気回路が閉じるようにすることができる。その結果、磁石73を設けることにより、第4実施形態に比べて磁気回路がさらに短い距離で閉じられることになり、磁石から発生する磁束の空間への漏れをさらに減少させることができ、ローレンツ力の増大が図れ、高速遮断が可能となる。
さらに、本実施形態も、接触部の接触面を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、リレーの短絡時に大電流が流れても接点が溶着せずに確実に遮断することができる。
(第6実施形態)
次に、図9に示す第6実施形態の直流リレーは、第3実施形態(図6)の構成において、連結接点5の連結接点固定体51の周囲にリング状の磁石74を設けたものである。磁石74を設けたことを除いては、全て第3実施形態と同じ構成なので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
次に、図9に示す第6実施形態の直流リレーは、第3実施形態(図6)の構成において、連結接点5の連結接点固定体51の周囲にリング状の磁石74を設けたものである。磁石74を設けたことを除いては、全て第3実施形態と同じ構成なので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
第6実施形態は、連結接点固定体51の周囲にリング状の磁石74を設けている。この磁石74は、連結接点固定体51の外周面に密着させるように配設させている。さらに、リング状磁石74の内面がS極に、外面がN極となるようにしている。
第6実施形態では、このように連結接点固定体51の周囲に磁石74を設けているので、第3実施形態に比べてさらにローレンツ力の増大を図ることができる。
さらに、本実施形態も、接触部の接触面を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、リレーの短絡時に大電流が流れても接点が溶着せずに確実に遮断することができる。
(第7実施形態)
次に、図10に示す第7実施形態の直流リレーは、第5実施形態(図8)の構成において、連結接点5の連結接点固定体51の周囲に複数の磁石75を設けたものである。磁石75を設けたことを除いては、全て第5実施形態と同じ構成なので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
次に、図10に示す第7実施形態の直流リレーは、第5実施形態(図8)の構成において、連結接点5の連結接点固定体51の周囲に複数の磁石75を設けたものである。磁石75を設けたことを除いては、全て第5実施形態と同じ構成なので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
第7実施形態は、連結接点固定体51の周囲に所定の距離をおいて複数(6個)の磁石75を設けている。この磁石75は、連結接点固定体51の外周面に密着させるように配設させている。さらに、各磁石75は、入力接点固定体31の磁石71の近くに設ける磁石75については、連結接点固定体51との対向面がS極になるようにしている。
出力接点固定体41の磁石71の近くに設ける磁石75については、連結接点固定体51との対向面がN極になるようにしている。第7実施形態では、このように連結接点固定体51の周囲に磁石75を設けているので、第5実施形態に比べてさらにローレンツ力の増大を図ることができる。
さらに、本実施形態も、接触部の接触面を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、リレーの短絡時に大電流が流れても接点が溶着せずに確実に遮断することができる。
さらに、前記した第1実施形態に係る構造の直流リレーについて、各接触部の接触面に表1に示す「化学組成」欄に示す第一層と第二層の二種の化学組成のAg合金を用いたものを作製して耐溶着特性および温度特性を調べてみた。
これらのAg合金は、まず、第一層と第二層の二種の化学組成のAg合金を溶解・鋳造してインゴットを作製した。これらをそれぞれ粗加工した後、第一層と第二層のインゴットを重ね合わせ、アルゴン雰囲気中850℃で熱間ロールによって熱間圧着し、二層のAg合金からなる複合素材を作製した。
得られた複合素材を熱間圧着と同じ条件下で予備加熱した後、最終的に全体の厚みの1/10の厚みとなるように薄い純Ag板を第一層とは反対側の第二層の面に熱間圧着した。その後、さらに冷間圧延してフープ状素材とし、これを打ち抜いて、幅6mm、長さ8mm、厚み2.5mmの形状の複合接点チップを作製した。
得られたチップを4気圧(405.3kPa)の酸素雰囲気中750℃で170時間保持(内部酸化)して複合接点試片とした。得られた試片の第一層の厚みは表1の通りであり、Ag層の厚みは、各チップ厚みのほぼ1/10であった。
上記第一層の厚みは、接点の中心を通り表面に垂直な断面試片を用いて、例えば、以下のようにして確認することができる。まず、表面付近の試片面上で表面に水平な方向に等間隔に5箇所の起点を設定する。次いで、これら各々の点から表面に垂直な(厚み)方向に表面から順次ほぼ等間隔に硬度を確認し、5本の硬度曲線(折れ線グラフ)をつくる。
そして、ある起点において、硬度レベルが190である水平線とこの曲線との交点をとり、表面からこの交点までの水平距離をその起点での第一層の厚みとする。以下、残り4箇所の起点についてもその起点での第一層の厚みをとり、得られた5つのデータの算術平均値を第一層の厚みとしてもよい。第二層の厚みも同様にして測定することができる。
このとき、硬度レベルが130である水平線との交点をとり、表面からこの交点までの水平距離をある起点における第二層の厚みとするとよい。そして、中間層を具える場合、硬度レベルが190である水平線との交点と、硬度レベルが130である水平線との交点間の水平距離をある起点における中間層の厚みとするとよい。本例では、上記の手順にて第一層の厚みを測定した。
なお、表中の試料番号に*を付したものは比較例である。試料11から試料18のその他の成分Sb、Ni、Biの量は、何れも0.2質量%である。また、試料19から試料27の第一層・第二層の化学組成は、何れも同じであり、その他の成分とその量は、両層とも質量%単位でSb、Co、Znが何れも0.2である。
試料28のその他の成分とその量は、質量%単位でSb、Pb、Ni、Bi、Co、Znが何れも0.1、Caが0.2である。試料29のその他の成分とその量は、質量%単位でSb、Ni、Ca、Bi、Co、Znが何れも0.1、Pbが0.5である。試料30から試料32のその他の成分とその量は、質量%単位でNi、Znが何れも0.2である。なお、第一層・第二層の化学組成は、表に記載された成分以外の残部は、Agおよび不可避的不純物からなる。
なお、表1で試料1から試料10は、SnおよびInの量を変化させて各層の硬度を制御した試料群である。試料11から試料18は、SnおよびInの量を変えるとともに、これら以外のその他の成分をさらに添加した試料群である。試料19から試料27は、第一層の厚みを変化させた試料群である。
また試料28から試料34は、第一層・第二層の両層が同じ化学組成のものである。これらのものでは、以下のようにして第一層の硬度を制御した。まず試料28から試料33は、第一層の圧延加工断面積比を第二層の50%増しとするとともに、第一層素材の圧延加工途中において同素材を真空中、450℃で30分間焼鈍を行い、さらに、内部酸化後に♯120のアルミナビーズによって第一層表面に投射圧3kgf/cm2(294kPa)で3分間ショットブラスト加工を加えた。
試料34は、圧延加工途中の焼鈍温度と時間をそれぞれ750℃、5時間とした以外は以上の試料と同じ条件で作製したものである。なお、表1には記載しないが、試料33と試料34ではそれぞれ厚みが190μm、230μmの中間部が形成されていた。
なお、試料35は、第一層のSnやInの酸化物の量を第二層よりも少なくして、第一層の硬度を第二層の硬度よりも低くしたものであって、表1に記載の化学組成の第一層と第二層のAg合金を溶解鋳造後、熱間圧着・圧延した後、これを上記と同じ条件にて内部酸化したものである。
また、試料36は、表1に記載の化学組成の第一層と第二層のAg合金を溶解鋳造後、互いの二層の合わせ面上に水平な一方向に1mmピッチで幅1mm、深さ0.5mmの凹凸を形成して、その部分で凹部と凸部とを互いに噛み合わせた状態で熱間圧着し、その後圧延し、さらにそれを上記と同じ条件にて内部酸化したものである。
以上の方法で作製した各試料の硬度の第一層の厚みは、前述の手順にて確認した。以上の結果を表1に示した。なお、表には記載されていないが、試料33、試料34以外の試料の中間部の厚みは、何れも100μm未満であった。
次いで、上記複合接点チップを図1に示す各接触部に銀ロウ付けして接触面を形成した。その後、定格AC30Aフレームおよび50Aフレームの二種の直流リレーに固定した。このようなリレーを各試料番号の複合接点チップ対毎に各5台用意した。まず各試料の全てのアッセンブリーを使って、定格電流を100分間通電してこの通電時の温度を測定することにより初期の温度特性を確認した。
次に、220V負荷状態で、30Aフレームの場合は、1.5kAの遮断電流で、50Aフレームの場合は5kAの遮断電流で、各々1台ずつのアッセンブリーを使って遮断試験を行い、耐溶着特性を確認した。
遮断試験後の温度特性は、その後引き続いて定格電流を100分間通電し、この通電時の温度を測定することにより遮断試験後の温度特性を確認した。過負荷試験は、初期温度特性を確認したアッセンブリーを使い、30Aフレーム、50Aフレームとも同定格電流の5倍の電流を流した状態で5秒間隔で開閉を50回繰り返し、その後上記初期確認時と同じ条件で通電時の温度を測定することにより過負荷試験後の温度特性を確認した。
耐久試験は、初期温度特性を確認したアッセンブリーを使い、30Aフレーム、50Aフレームとも同定格電流を流した状態で、5秒間隔で開閉を6000回繰り返し、その後上記初期確認時と同じ条件で通電時の温度を測定することにより耐久試験後の温度特性を確認した。
なお、これらの一連の試験での評価は、温度特性については30A・50A両フレームの機種別の結果を総合して5段階評価し、耐溶着特性については、溶着するかしないかで評価した。
温度特性の5段階評価は、通電時の温度上昇が50℃以下を5、50℃超60℃以下を4、60℃超70℃以下を3、70℃超80℃以下を2、80℃以上を1とした。これらの評価は、表1の試料番号に対応させて表2に示した。なお、表2において、比較例の試料番号には*を付している。
以上の結果から以下のことがわかる。
(1)第一層、第二層ともSnを1〜9質量%、Inを1〜9質量%の範囲内に制御し、第一層のマイクロビッカース硬度を190以上、第二層のマイクロビッカース硬度を130以下とし、さらに、第一層の厚みを10〜360μmの範囲内に制御した接点を用いたリレーは、上記総合評価において十分実用可能な範囲内にある。一方、上記範囲外の接点を用いたリレーは、総合評価において実用レベルに達していない。
(1)第一層、第二層ともSnを1〜9質量%、Inを1〜9質量%の範囲内に制御し、第一層のマイクロビッカース硬度を190以上、第二層のマイクロビッカース硬度を130以下とし、さらに、第一層の厚みを10〜360μmの範囲内に制御した接点を用いたリレーは、上記総合評価において十分実用可能な範囲内にある。一方、上記範囲外の接点を用いたリレーは、総合評価において実用レベルに達していない。
(2)SnおよびInに加えSbやNiなどの成分を少量含んだ場合でも、同様のことが言える。
(3)比較例となる試料1、試料10、試料18、試料31、試料32、試料35および試料36の接点チップは、硬度レベルが上記範囲外となり、これらの接点チップを組み込んだ直流リレーは、ともに一部の特性を除き総合的に実用レベルの性能が得られなかった。
表1の試料24を用いて接点対を構成した模擬的なリレーを作製し、トランスで昇圧してコンデンサに充電し、サイリスタでコンデンサの容量放出と接点を開くタイミングを調整して、短時間大電流が流れる間に接点を開くようにしたときの電圧と電流の状態を調べてみた。その結果を図11に示す。このとき、2600Aの大電流が流れても、接点は溶着せず、接点間の電圧は急激に上昇し確実に遮断できた。
図11のグラフは、遮断電圧が200Vに達したときに遮断が完了したと判断して、電力供給をやめるようにしているため、電力供給がなくった時点で、電圧がゼロになっている。このことから、上記特定の材料を接点材料に用いたリレーは、耐溶着性に優れ、高速で遮断できると推測される。
これに対し、試料27を用いて接点対を構成した場合は、図12に示すように1500Aの大電流が流れたとき、接点が瞬時に溶着してしまい、コンデンサは自然放電し、接点間の電圧の挙動は1msの間しか起こらずしかも10V程度しか変動しないことがわかる。
本発明リレーは、ハイブリッド自動車などの高電圧(約300V)の自動車における高電圧回路をON・OFFするためのリレーとして利用する場合、コンパクトであるため、限られたスペースの有効利用ができる。
1 固定接点
11 接点固定体
12 固定面
13 接触部
2 可動接点
21 接点固定体
22 固定面
23 接触部
3 入力接点
31 接点固定体
32 固定面
33 接触部
4 出力接点
41 接点固定体
42 固定面
43 接触部
71,72,73,74,75 磁石
5 連結接点
51 連結接点固定体
52 入力側接触部
53 入力側固定面
54 出力側接触部
55 出力側固定面
11 接点固定体
12 固定面
13 接触部
2 可動接点
21 接点固定体
22 固定面
23 接触部
3 入力接点
31 接点固定体
32 固定面
33 接触部
4 出力接点
41 接点固定体
42 固定面
43 接触部
71,72,73,74,75 磁石
5 連結接点
51 連結接点固定体
52 入力側接触部
53 入力側固定面
54 出力側接触部
55 出力側固定面
Claims (10)
- 電流を分流させる少なくとも2つの接触部とこれら接触部が固定される接点固定体とを有する一対の開閉可能な接点を具え、
一方の接点の接点固定体は、接触部が固定される固定面の中心位置に一つの磁石を具え、接触部を磁石の周りに固定させて、
前記接点を遮断する時に接触部の間に生じるアークを、磁石を中心として円弧状に引き伸ばすようにしていることを特徴とする直流リレー。 - 接触部の接触面を接点開閉方向に対して傾斜させていることを特徴とする請求項1に記載の直流リレー。
- 一方の接点固定体の中心位置に磁石を設けるとき、他方の接点固定体の周囲に磁石を配設し、他方の接点固定体に設ける磁石の接点固定体の側面と対向する側の極性を、一方の接点固定体に設ける磁石の接点閉方向側の極性と異なる極性としていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直流リレー。
- 複数の接触部が固定される固定面を有する入力接点固定体と、複数の接触部が固定される固定面を有する出力接点固定体と、これら入力接点固定体と出力接点固定体との間に配設され、複数の入力側接触部が固定される入力側固定面および複数の出力側接触部が固定される出力側固定面を有する少なくとも一つの連結接点固定体とを具え、これら入力接点固定体、連結接点固定体、出力接点固定体の接触部を順次直列に接続可能とするとともに、対向する一方の固定面の中心位置に一つの磁石を設け、磁石の周りに接触部を固定していることを特徴とする直流リレー。
- 接触部の接触面を接点開閉方向に対して傾斜させていることを特徴とする請求項4に記載の直流リレー。
- 磁石は、接点開閉方向に対して極性が全て同じ方向に向くように配置されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の直流リレー。
- 隣り合う磁石は、接点開閉方向に対して極性の向きが異なるように配置されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の直流リレー。
- 連結接点固定体の接触部と対向する接点固定体の固定面の中心に磁石を設けるとともに、連結接点固定体の入力側固定面と出力側固定面との間に、対向する接点固定体に設ける磁石と閉じた磁気回路が形成されるように磁石を設けていることを特徴とする請求項4から請求項7の何れかに記載の直流リレー。
- 連結接点固定体の周囲に磁石を設けていることを特徴とする請求項4から請求項8の何れかに記載の直流リレー。
- 接触部の接触面は、Snを1〜9質量%含み、Inを1〜9質量%含む化学組成のAg合金からなり、表面部の第一層と内部の第二層とを有し、第一層のマイクロビッカース硬度が190以上、第二層のマイクロビッカース硬度が130以下であり、第一層の厚みが、10〜360μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載の直流リレー。
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