JP2005056819A - 直流リレー - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構造で、短時間で直流高電圧を遮断できる直流リレーを提供する。
【解決手段】互いに開閉する接点接触部41a〜50aを有する接点対を3対以上具え、接点対の一方の接点21,22,43,44,47,48の全てを第1絶縁支持部11に取り付け、他方の接点41,42,45,46,49,50の全てを第2絶縁支持部12に取り付ける。それぞれの絶縁支持部には、同一の絶縁支持部に取り付ける接点接触部のうちの2つの接点接触部を直列に接続する連結部61〜65が少なくとも一つ固定される。そして、絶縁支持部の少なくとも一方を開閉方向に駆動可能にする。
【選択図】 図1
【解決手段】互いに開閉する接点接触部41a〜50aを有する接点対を3対以上具え、接点対の一方の接点21,22,43,44,47,48の全てを第1絶縁支持部11に取り付け、他方の接点41,42,45,46,49,50の全てを第2絶縁支持部12に取り付ける。それぞれの絶縁支持部には、同一の絶縁支持部に取り付ける接点接触部のうちの2つの接点接触部を直列に接続する連結部61〜65が少なくとも一つ固定される。そして、絶縁支持部の少なくとも一方を開閉方向に駆動可能にする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、直流電流のリレーに関するものである。特に、簡易な構造にて確実に直流電流を遮断できる直流リレーに関するものである。
近年、環境問題からハイブリッド自動車や燃料電池自動車のような高電圧(約300V)の自動車が開発されてきている。これらの自動車は、直流高電圧の主電池と高電圧回路からなる制御回路を具えている。また、主電池は直流高電圧であるので、事故時などには電池を制御回路から切り離す必要があり、電池と制御回路との間にはメカニカル接点の直流リレーを具える。
これらリレーは、直流高電圧を遮断するときに発生するアークが非常に大きくなることから、遮断速度が非常に遅く、短時間で遮断するのは非常に難しい。
そこで、従来では、2対の接点対を設けて、これら接点対のアーク発生部に磁石を設置してローレンツ力によりアークを引き伸ばす構造(例えば特許文献1参照。)がある。また、水素などの冷却効果の大きい気体をアーク発生部に封入してアークの発生を抑える構造(例えば特許文献2参照。)もある。
しかし、従来の直流リレーにおいて、特許文献1に示すように、アーク発生部に磁石を設置して、磁界の作用によりアークを引き伸ばす場合、リレーの即時遮断に必要なアークの引き伸ばし量を確保する必要がある。そのため、アークを引き伸ばす空間を確保するとともに、そのアーク引き伸ばし量に見合った磁力を有する磁石を配置しなければならない。その結果、リレー全体が大型化してしまう問題がある。
また、特許文献2に示すように、水素などの気体でアークの発生を抑制する構造とする場合には、気体をケース内に完全に密閉できるケース構造を必要とする。この場合、ケースはアークによる耐熱性が必要となって高価なもの(例えばセラミックなど)となる。気密性および耐熱性を上げるためには、ケースの厚みを大きくとる必要があり、ケースの形状が大きくなる問題もある。また、耐熱性が得られない場合には、廃車までメンテナンスをせずに気密性を維持することは非常に困難となる。
このように、水素などの気体を封入する場合には、気体が封入された状態を長期間保持するために大型化が要求され、さらに構造も複雑となる。その結果、自動車という限られたスペースに搭載する機器において性能を落とすことなく小型化を実現することは非常に困難であった。
従って、本発明の目的は、簡易な構造で、短時間で直流高電圧を遮断できる直流リレーを提供することにある。
本発明は、開閉する接点接触部を有する接点対を3対以上具えるようにして、これら接点接触部を直列に配置させて、遮断時にはこれら接点接触部を同時に非接触とすることにより、遮断時の電圧を分圧してアークを短時間で消弧させて上記目的を達成する。
即ち、本発明は、互いに開閉する接点接触部を有する接点対を3対以上具え、接点対の一方の接点の全てを第1絶縁支持部に取り付け、他方の接点の全てを第2絶縁支持部に取り付ける。それぞれの絶縁支持部には、同一の絶縁支持部に取り付ける接点接触部のうちの2つの接点接触部を直列に接続する連結部が少なくとも一つ固定される。そして、絶縁支持部の少なくとも一方を開閉方向に駆動可能にする。絶縁支持部は、合成樹脂などの絶縁材料から形成され、板状部材や接点を収納するケースなどで構成することができる。
本発明の直流リレーは、接点対を3対以上設ける。特に、入力接点と出力接点とを同じ絶縁支持部に設けるようにするためには、4対以上の偶数対の接点対を設けることが好ましい。接点接触部を有する接点は、円柱状に形成することが好ましく、この円柱の先端面を接点接触部とする。
そして、例えば一方の第1絶縁支持部に取り付ける接点のうちの一つを入力接点とし、他の一つの接点を出力接点とすることができる。入力接点と出力接点には外部端子が接続されるため、入力接点と出力接点とは、絶縁支持部に貫通状に取り付けられる。
また、接点を円柱状にする場合、入力接点と出力接点を除く接点は、一つの接点と他の一つの接点とを連結部で直列に繋ぐことができる。この場合の連結部は、例えば長方形状の平板状にすることができる。平板状とする場合には、平板の一方の面を絶縁支持部に固定し、他方の面に接点接触部を有する接点を2つ固定する。
また、連結部は、U字状、]状(コの字状)に形成することもできる。このようにU字状や]状の場合には、両端の突出部を接点対の一方の接点として、接点を連結部に一体化することができる。この場合、連結部に2つの接点接触部が設けられたことになり、一つの連結部に接点対における一方の接点が二箇所設けられたことになる。
第1絶縁支持部と第2絶縁支持部は、一方を可動とし、他方を固定としてもよいし、双方を可動としてもよい。絶縁支持部の少なくとも一方を開閉方向に駆動可能にしているので、絶縁支持部を開方向に駆動させるだけで、全ての接点対の接点接触部を同時に非接触状態にして、リレーの遮断を行える。また、絶縁支持部を閉方向に駆動させることにより、全ての接点対の接点接触部を同時に接触状態にして、リレーの通電を行える。
本発明では、複数の接点は絶縁支持部と絶縁された状態で当該絶縁支持部に取り付けられ、同一の絶縁支持部において入力接点と出力接点を除く接点のうちの2つの接点を連結部で直列に接続するようにしている。そして、第1絶縁支持部の接点接触部と、これに対向する第2絶縁支持部の接点接触部とを接触させることにより、各接点接触部を連結部を介して直列に接続可能にできる。
接点対を連結部を介して直列に接続可能としているので、絶縁支持部を開方向に駆動させて各接点接触部を離隔させると、全ての接点接触部が同時に非接触状態となる。そして対向している接点接触部の間にアークが発生するが、各接点を直列に接続させているので、遮断時の電圧を分圧してアークの消弧が行える。
さらに、本発明では、一方の絶縁支持部に取り付ける接点のうちの一つを入力接点とし、一つを出力接点とし、双方の絶縁支持部に取り付けられている他の接点の全てを入力接点と出力接点との間に直列に配置させることができる。
本発明の直流リレーの接点を例えば6対の接点対とする場合、第1絶縁支持部に取り付ける接点のうちの一つを入力接点とし、一つを出力接点とし、他の4つの接点を2つの連結部で連結するとともに、第2絶縁支持部に取り付ける6つの接点を3つの連結部で連結することにより、導通時に直列に接続できるようにする。
このように全ての接点接触部を直列に配置することにより、リレーの遮断時の電圧を分圧する箇所を多くすることができ、アークの消弧がより良好に行える。
また、本発明は、一方の絶縁支持部に取り付ける接点のうち、2つ以上を入力接点とし、入力接点と同じ個数を出力接点として、対となる入力接点と出力接点とを、他の入力接点と出力接点とは個別に他の接点および連結部を介して直列に接続するようにしてもよい。
また、前記接点対は、円状に配置させることが好ましいが、4対ある場合には四角形状に配置させることが好ましい。接点対を一本の直線上に配置させる場合には、接点対を配置させるスペースを長尺に大きくとる必要があるが、円状または四角形状に接点対を配置させることにより配置スペースをできるだけ小さくすることができる。さらに、接点対を円状または四角形状に等間隔に配置させれば、接点が接触した際の接点の荷重を均等化でき、接点の接触抵抗のばらつきを抑えることができる。
また、接点対を円状に配置する場合、絶縁支持部は円板とすることが好ましい。このように絶縁支持部を円板にすることにより、接点対の配置に合わせて絶縁支持部をできるだけ小さくすることができる。なお、接点対を多数設ける場合、円状に配置することなく絶縁支持部のスペース内にできるだけ多くの接点対を取り付けることもできる。
本発明の直流リレーは、遮断時に接点の間に生じるアークを磁界により歪曲させる磁石を具えるようにすることが好ましい。
このように磁石を設けることにより、接点の遮断を行う際に、磁石の磁界により接点間に生じるアークを接点の周囲へ拡散させるように吹き飛ばすことができる。即ち、各接点を直列に配置する場合、電流の流れが交互に逆になっても磁力線は常に同一方向に向かって生じさせることができる。その結果、フレミングの左手の法則により、ローレンツ力によってアークは、磁力線と直交する方向に伸びるように歪曲する。
その結果、遮断時の電圧を分圧させるとともに、磁石によるアークの吹き飛ばしで、アークの電圧をさらに短時間で上昇させて、短時間でリレーを確実に遮断させることが可能となる。
特に、接点対を円状に配置し、絶縁支持部が円板の場合には、絶縁支持部の周囲に、絶縁支持部の一端側と他端側において磁極が異なるリング状の一つの磁石を設けることができる。また、絶縁支持部の中心に、一つの磁石を設けるようにしてもよい。さらに、絶縁支持部の周囲と中心に磁石を設けるようにしてもよい。
また、磁石を絶縁支持部の周囲に設ける場合、磁極が絶縁支持部中心側と絶縁支持部外方側とで異なる長尺な磁石を周方向に複数設け、かつ、隣り合う磁極が交互に異なるようにしてもよい。また、絶縁支持部の中心に、扇形状の磁石を円形が形成できるように複数設け、かつ、隣り合う磁極が交互に異なるようにしてもよい。さらに、これらの磁石を絶縁支持部の周囲と中心とに設けるようにしてもよい。
このように多数の磁石を設ける場合には、接点の遮断を行う際、磁石の磁界により接点間に生じるアークを接点の周囲へ拡散させるように吹き飛ばすことができるだけでなく、アーク同士が常に干渉しないように吹き飛ばすことができる。
さらに、このように多数の磁石を配置する場合には、接点の磁石に対する配設位置によっては、回生エネルギーなどの逆電流が生じても、アーク同士が繋がらないようにすることもできる。そのように構成する場合には、逆電流にも十分対応することができる。
また、接点対が4対であり、これら接点対を四角形状に配置させる場合は、一方の絶縁支持部に取付けられる接点は、4つの接点のうち対角線上にある2つの接点を連結部で連結し、他方の絶縁支持部に取付けられる接点は、2つの連結部を平行して配置させて連結部で2つずつ接点を連結して、全ての接点を直列に接続可能とすることが好ましい。
このように接点を配置させて、少なくとも2枚の磁石を4つの接点対を挟むようにして磁極が同一方向に向くように配置させることにより、アーク同士が常に干渉しないように吹き飛ばすことができる。
特に、2対ずつの接点対に分けるようにさらにもう一枚磁石を配置させるようにすれば、高密度磁気回路を形成することができ、磁力をさらに大きくできるので、さらなる遮断性能の向上が期待できる。
本発明では、以上のように磁石を設けることにより、多接点による電圧遮断を行いながら、磁石によるアークの引き伸ばしでアークエネルギーを消費させるので、従来のような電圧遮断に必要な所定のアーク引き伸ばし量を確保する必要がなくなり小型化できる。
ここで、接点対の開閉動作を行うための絶縁支持部の駆動には、種々の駆動源を利用できる。回転系駆動源ではモータが、直動系駆動源ではソレノイドやシリンダが利用できる。回転系駆動源を用いる場合は、回転運動を往復運動に変換する変換機構を介して絶縁支持部を駆動させる。また、直動系駆動源を用いる場合には、直動系駆動源を絶縁支持部に連結して接点を駆動させる。
また、接点接触部は、Snを1〜9質量%含み、Inを1〜9質量%含む化学組成のAg合金からなり、表面部の第一層と内部の第二層とを有し、第一層のマイクロビッカース硬度が190以上、第二層のマイクロビッカース硬度が130以下であり、第一層の厚みが、10〜360μmの範囲内にあるように形成することが好ましい。
Snの含有量を1〜9質量%とするのは、1質量%未満では、接点の耐溶着特性が低下し、9質量%を超えると接点の温度特性が低下するからである。好ましくは、2〜7質量%である。
ここで、耐溶着特性とは、接点が切れない状態、特に接点がくっついたまま離れない溶着の起こりにくさをいう。また、温度特性とは、通電時の接点の温度上昇の度合いをいい、温度特性が良いとは、通電により接点の温度が上昇しにくく、リレーに接続されるケーブルや機器に熱的な影響を与えにくいことをいう。
また、Inの含有量を1〜9質量%とするのは、この範囲外の含有量の場合には接点の温度特性が低下するからであり、さらに、9質量%を超えると、Snの含有量にもよるが、耐溶着特性が低下するからである。好ましくは、3〜7質量%である。
第一層の硬度(通常5g荷重負荷)をマイクロビッカース硬度で190以上にするのは、このレベル未満になると、耐溶着特性や温度特性が低下するからであり、第二層の硬度をマイクロビッカース硬度で130以下にするのは、このレベルを超えると、接点が脆弱化して耐摩耗性が低下するからである。
第一層の硬度は240以上、第二層のそれは120以下であるのが望ましい。なお、本発明での硬度は、接点の表面に垂直な断面上の第一層および第二層のそれぞれの域内における任意の地点でマイクロビッカース硬度にて確認したものである。本発明における接点では、第一層、第二層それぞれの層内に硬度分布があっても構わない。
また、通常第一層から第二層にかけて境目に硬度落差(マイクロビッカース硬度で60以上)があり、この境目には両層の中間の硬度を有する(すなわちその硬度が、第一層の下限硬度未満かつ第二層の上限硬度を超える範囲内にある)領域(以下中間部という。)がある。
第一層の厚みは、10〜360μmとする。下限未満では、耐溶着特性や温度特性が低下し、上限を超えると接点の温度特性が低下するからである。好ましくは30〜120μmである。また、第一層と第二層を有する接点接触部は、中間部のあるものも含まれるが、その場合の中間部の厚みは200μm以下であるのが望ましい。200μmを超えると接点の温度特性が低下しやすくなる。好ましくは100μm以下である。
前記接点接触部には、上記基本成分に加え、さらに、Sb、Ca、Bi、Ni、Co、ZnおよびPbの群から選ばれた少なくとも1種の元素が、従成分として含まれていてもよい。通常、これらの成分の大部分は、Agマトリックス中に化合物、特に酸化物の形態で分散される。
但し、個々の成分によって望ましい分散量範囲が異なる。例えば、いずれも元素換算された質量%単位で0.05〜2(Sb)、0.03〜0.3(Ca)、0.01〜1(Bi)、0.02〜1.5(Ni)、0.02〜0.5(Co)、0.02〜8.5(Zn)、0.05〜5(Pb)である。なお、括弧内は対象元素である。以上の各成分種において、その量が上記の範囲外になると、直流リレーの種類によっては温度特性が低下することがあり、特に上限を超えるとリレーの種類によっては同時に耐溶着特性も低下することがある。
通常は、以上の従成分が接点の性能に若干影響を及ぼすが、これ以外の成分としては、例えば以下のものが挙げられる。これらはいずれも本発明の目的の範囲内で微量に含まれても構わない。なお成分によって望ましい含有量が異なるが、括弧内数値のうち元素記号で表示されたものは、元素換算された質量%単位で、分子式で表示のものは、同分子換算された質量%単位で表したその許容上限値である。Ce(5)、Li(5)、Cr(5)、Sr(5)、Ti(5)、Te(5)、Mn(5)、AlF3(5)、CrF3(5)およびCaF2(5)、Ge(3)およびGa(3)、Si(0.5)、Fe(0.1)およびMg(0.1)。
第一層および第二層を有する接点接触部を作製する方法としては、溶解・鋳造法、粉末冶金法などが挙げられる。例えば、溶解・鋳造法では、以下の手順がある。まず第一層および第二層それぞれの化学組成となるように溶解・鋳造されたインゴットを作り、これらを粗く圧延した後、二種の圧延材を熱間圧着する。その際、またはその後、必要により上記した純Agなどの薄い接続層を圧着する。
これをさらに圧延して所定の厚みの板状に形成した後、打ち抜き、またはさらに成形し、最終形状に近いサイズのAg合金素材とし、さらに、この素材を内部酸化(後酸化法)してSn、Inなどの金属成分を酸化物に転換する。
なお、溶解・鋳造に先立ち成分元素の酸化物以外の化合物を含ませることもできる。また、必要に応じて、圧延以降に適宜熱処理や形状を調整する工程などを入れる。この場合、熱処理条件の工夫によって、各層の微細組織を意識的に制御して材料特性やそのレベルなどを変えることができる。
また、粉末冶金法で接触部を作る場合は、例えば、予めSnやInなどの粉末とAgの粉末とを二種の所定組成にて配合・混合した後、熱処理して内部酸化(前酸化法)させ、得られた二種の粉末を型内に積層・充填して圧縮成形しプリフォームとする。なお、SnやInなどの粉末とAgの粉末とは、他の化合物も一緒に混合してもよい。
そして、このプリフォームには熱間押し出し、熱間・冷間ロール圧延、熱間鍛造など各種の塑性加工が適用できる。さらに上記した鋳造法と同様に、必要に応じて圧延以降に熱処理や形状を調整する工程などを入れる。熱処理条件の工夫によって各層の所望の特性制御が可能になる。
また、第二層の素材のみを上記に準じた溶解・鋳造法や粉末冶金法の手順で作成した後、第一層を、溶射、CVDなどによる厚膜形成、スクリーン印刷などによる厚膜印刷、塗布後焼付けなど様々な手段によって形成してもよい。さらに、第一層を構成する合金板と第二層を構成する合金板との接合には、例えば熱間静水圧成形法による拡散接合、熱間押し出しなど種々の手段が適用できる。また、熱処理を施すことによって、各層の微細組織を意識的に制御して、所望の特性を得ることもできる。
さらに、本発明リレーでは、接点接触部を形成するAg合金素材を上記の条件の範囲内にあり、第一層と第二層とが同じ化学組成であるものも含まれる。第一層と第二層とを同じ化学組成にする場合、後述する手段により両層の硬度レベルを異なるようにする。
例えば第一層だけを急熱・急冷し、第一層の残留応力を第二層のそれより大きくする方法、表面の第一層だけにショットブラスト加工を施して加工硬化する方法がある。
また、Ag合金板に熱間圧延や冷間圧延に加え熱処理を施す、いわゆるサーモメカニカルプロセッシング(熱加工処理)を行った後、内部酸化を行って、第一層に第二層より微細な針状の酸化物粒子を析出させ、表面の硬度を高める方法がある。また、第一層および第二層のAg合金板を圧延加工や熱間圧着する際に第一層と第二層の鍛錬加工比を変えて行う方法もある。
さらに、接触部の素材は、上記条件の範囲内にあり、しかも第一層中のSnの含有量が第二層のそれと同じか、またはそれよりも多いものも含まれる。これによって、第二層の硬度よりも第一層の硬度の方が、ほぼ確実に高くなる。
前記接触部は、溶解・鋳造法や、粉末冶金法などにより形成するが、このとき、第一層および第二層を内部酸化させることが好ましい。内部酸化法には、後酸化法と前酸化法とがある。後酸化法とは、合金の状態で最終接点形状に仕上げるか、その近くまで成形した後に、内部酸化をする方法である。前酸化法とは、合金の粉末または粒を内部酸化させておいて、これらを成形、圧縮・焼結する方法である。
本発明では、3対以上の接点対を通電時に直列に配置するとともに、これらの接点対を同時に遮断することができるので、リレー遮断時において接点間の電圧を分圧することでアークの発生を抑制して、短時間で電圧を遮断することができる。さらに、接点間にかかる電圧を下げることでアーク電流による接点の損傷を抑制することもできる。
本発明では、接点対が多数あっても、一枚の絶縁支持部に接点対における一方の接点の全てを取り付けているので、絶縁支持部を駆動させるだけで、全ての接点接触部を同時に非接触状態にできる。その結果、接点対ごとに開閉動作を行わせる駆動機構を設ける必要がなくなり、開閉駆動機構の簡素化が可能となる。
本発明では、一対の絶縁支持部に複数の入力接点および出力接点を設けることにより、一つのリレーセット(第1絶縁支持部と第2絶縁支持部)の中に、複数の線路を遮断するための複数のリレー部を有する構造にすることができる。その結果、限られたスペース内に複数のリレー部を配置することが可能となる。
さらに、本発明リレーを、ハイブリッド自動車などの高電圧(約300V)の自動車における高電圧回路をON・OFFするためのリレーとして利用する場合、本発明のリレーはコンパクトであるため、限られたスペースでも十分対応できる。
また、本発明では、直流リレーに、遮断時に接点の間に生じるアークを磁界により歪曲させる磁石を具えるようにすれば、遮断時の電圧を分圧させるとともに、磁石によるアークの吹き飛ばしで、アークの電圧をさらに短時間で上昇させて、短時間でリレーを遮断させることが可能となる。
さらに、接点接触部を耐溶着特性に優れた材料で形成することにより、リレーの短絡時に大電流が流れても接点が溶着せずに確実に遮断することができる。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態にかかるリレーの基本構成を示す概略構成図であって、接点が非接触の状態を示す。
図1は本発明の第1実施形態にかかるリレーの基本構成を示す概略構成図であって、接点が非接触の状態を示す。
第1実施形態にかかる直流リレーは、図1に示すように、2枚の円板状の第1絶縁支持部11と第2絶縁支持部12とを具える。第1絶縁支持部11と第2絶縁支持部12とは、合成樹脂などの絶縁材料から構成している。
そして、各絶縁支持部11,12の対向面において、第1絶縁支持部11には、入力接点21と、出力接点22とを一つずつと、4つの中間接点43,44,47,48とが取り付けられ、また、第2絶縁支持部12には、6つの中間接点41,42,45,46,49,50が取り付けられている。
入力接点21と、出力接点22と、中間接点41〜50は、対向する絶縁支持部に取り付けられる接点と接触する接点接触部21a,22a,41a〜50aを有する円柱金属ブロックを用いている。
しかも、接点接触部21a,22a,41a〜50aは、Snを1〜9質量%含み、Inを1〜9質量%含む化学組成のAg合金からなり、表面部の第一層と内部の第二層とを有し、第一層のマイクロビッカース硬度が190以上、第二層のマイクロビッカース硬度が130以下であり、第一層の厚みが、10〜360μmの範囲内にある材料で形成している。さらに各接触部は、チップ状態で後酸化法により内部酸化させている。例えば、チップを4気圧(405.3kPa)の酸素雰囲気中750℃で170時間保持する。
なお、以下に示す第2実施形態から第10実施形態も各接点接触部は、第1実施形態と同じ材料で形成している。
また、入力接点21と出力接点22とは、第1絶縁支持部11を貫通させるように、第1絶縁支持部11に取り付けられている。そして、入力接点21と出力接点22には、接点接触部21a,22aとは反対側端部に端子接続部21b,22bを形成している。
また、中間接点は2つをペアとして長方形状の平板からなる連結部61〜65の長手方向両端側に固定されている。連結部61〜65は導体からなり、平板の一方の面が各絶縁支持部11,12に固定されている。そして、他方の面に中間接点が固定され、各中間接点が連結部を介して絶縁支持部11,12から突出された状態になっている。
本実施形態では、第1絶縁支持部11には、2枚の連結部62,64が固定され、第2絶縁支持部12には、3枚の連結部61,63,65が固定されている。
そして、入力接点21の接点接触部21aに、第2絶縁支持部12の第1中間接点41の接点接触部41aを対向させる。この第1中間接点41と第2中間接点42とを第1連結部61で連結する。さらに、第2中間接点42の接点接触部42aに、第1絶縁支持部11の第3中間接点43の接点接触部43aを対向させる。この第3中間接点43と第4中間接点44とを第2連結部62で連結する。
第4中間接点44の接点接触部44aに、第2絶縁支持部12の第5中間接点45の接点接触部45aを対向させる。この第5中間接点45と第6中間接点46とを第3連結部63で連結する。
第6中間接点46の接点接触部46aに、第1絶縁支持部11の第7中間接点47の接点接触部47aを対向させる。この第7中間接点47と第8中間接点48とを第4連結部64で連結する。
第8中間接点48の接点接触部48aに、第2絶縁支持部12の第9中間接点49の接点接触部49aを対向させる。この第9中間接点49と第10中間接点50とを第5連結部65で連結する。
そして、第10中間接点50の接点接触部50aに、第1絶縁支持部11の出力接点22の接点接触部22aを対向させる。
本実施形態では、入力接点21と第1中間接点41が一つの接点対となり、第2中間接点42と第3中間接点43が一つの接点対となる。第4中間接点44と第5中間接点45が一つの接点対となり、第6中間接点46と第7中間接点47が一つの接点対となる。第8中間接点48と第9中間接点49が一つの接点対となり、第10中間接点50と出力接点22とが一つの接点対となる。
これら接点対は、絶縁支持部11,12と同心の円弧曲線上に配置される。したがって、各連結部61〜65はこの円弧曲線に沿って配置される。
第1実施形態では、このように各接点および連結部を配置して、入力接点21、中間接点41〜50、出力接点22の接点接触部を接触させることにより、連結部61〜65を介して通電時に入力接点21から出力接点22へと直列に接続される。
第1実施形態では、第2絶縁支持部12を、図示していない駆動機構により接点開閉方向に往復移動させるようになっている。駆動機構には、ソレノイドを用いている。駆動機構により第2絶縁支持部12を接点開閉方向に往復駆動させることにより、第1絶縁支持部11側の接点接触部に、第2絶縁支持部12側の接点接触部を同時に接触させたり、または同時に非接触にすることができる。
そして、入力接点21の端子接続部21bに端子(図示せず)を介して直流電源が接続されて、各接点が接触・離隔することで通電・遮断を行う。
次に、接点の通電・遮断について説明する。接点間を閉じて通電させる場合、第2絶縁支持部12を閉動作させて対向する接点(接点対)の接点接触部を接触させて導通をとる(図示せず)。
また、両接点間を開いて遮断する場合は、第2絶縁支持部12の開動作により、各接点対の接点接触部間が離隔されて遮断が行われる(図1の状態)。図1において、電流は、矢印に示すように上向きと下向きに交互に流れる。
この遮断時においては、各接点接触部の間にアークが発生するが、第1実施形態では、6対の接点対を直列に接続させているので、遮断時の電圧を分圧して、アークの消弧が行え、短時間で電圧を遮断することができる。
その結果、接点周辺を気密構造にする必要がなくなるのでケースを大型化する必要がなくなり、しかも、アークの引き伸ばし量を大きくとることなく、アークを消弧させることができるので、非常にコンパクトな直流リレーを実現できる。さらに、各接点を直列に配置して遮断時の電圧を分圧するので、接点の耐久性向上を実現できる。
さらに、接点接触部を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、短絡時に大電流が流れても、接点が溶着することなく接点を確実に遮断することができる。
第1実施形態では、絶縁支持部を円形にしたが、矩形状に形成してもよい。絶縁支持部を本実施形態のように円形にし、かつ、各接点対を円弧曲線上に配置することにより、非常にコンパクトなリレーを構成できる。なお、絶縁支持部は、双方の絶縁支持部を開閉駆動させるようにしてもよい。
(第2実施形態)
第2実施形態について図2および図3に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態のリレーにおいて、第1絶縁支持部11と第2絶縁支持部12の周囲に、絶縁支持部11,12の一端側と他端側において磁極が異なるリング状の一つの磁石71を設けている。
第2実施形態について図2および図3に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態のリレーにおいて、第1絶縁支持部11と第2絶縁支持部12の周囲に、絶縁支持部11,12の一端側と他端側において磁極が異なるリング状の一つの磁石71を設けている。
図2は、第2実施形態にかかるリレーの基本構成を示す概略構成図であって、接点が非接触の状態を示す。図3は、第2絶縁支持部の平面図である。磁石71以外は、第1実施形態と構成が同じであるので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
リング状磁石71は、図3に示すように、図3において左から右に向かう磁極線が発生するようになっている。そして、この磁極線に対して、中間接点41,42,45,46,49,50を図3のように配置させる。
なお、図3において、各接点に示す黒丸が電流の流れ方向先端側を示し、×印が電流の流れ方向後側を示している。
第2実施形態では、図3に示すように、磁石71および各接点を配置させることにより、接点接触部の間に発生するアークは、図3に示すように接点の周囲に拡散させるように吹き飛ばされる。
第2実施形態では、磁石71を設けることにより、遮断時の電圧を分圧させるとともに、磁石によるアークの吹き飛ばしで、アークの電圧をさらに短時間で上昇させて、短時間でリレーを遮断させることが可能となる。
また、第2実施形態では、絶縁支持部を円形にしているので、絶縁支持部の周りでリング状磁石71を回転させることができることから、リング状磁石71と絶縁支持部11,12に取り付けられている各接点の位置合わせも容易に行える。
第2実施形態においても、接点接触部を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、短絡時に大電流が流れても、接点が溶着することなく接点を確実に遮断することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態について図4に基づいて説明する。図4は、第3実施形態にかかるリレーの第2絶縁支持部の平面図である。第3実施形態は、第1実施形態のリレーにおいて、第2絶縁支持部12の中心に、絶縁支持部の一端側と他端側において磁極が異なる円形の磁石72を一つ設けている。磁石72および各接点の配置以外は、第1実施形態と構成が同じであるので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
第3実施形態について図4に基づいて説明する。図4は、第3実施形態にかかるリレーの第2絶縁支持部の平面図である。第3実施形態は、第1実施形態のリレーにおいて、第2絶縁支持部12の中心に、絶縁支持部の一端側と他端側において磁極が異なる円形の磁石72を一つ設けている。磁石72および各接点の配置以外は、第1実施形態と構成が同じであるので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
磁石72は、図4に示すように、左にN極が右にS極がくるように第2絶縁支持部12上に配置されている。このとき発生する磁極線は図4の点線矢印に示すように曲線を描く。そして、この磁極線に対して、中間接点41,42,45,46,49,50を図4のように配置させる。なお、図4において、各接点に示す黒丸が電流の流れ方向先端側を示し、×印が電流の流れ方向後側を示している。
第3実施形態では、図4に示すように、各接点を遮断時に発生するアークが互いに干渉しないように磁力線の所定の位置に配置させることにより、接点接触部の間に発生するアークは、図4に示すように接点の周囲へ拡散させるように吹き飛ばされる。
第3実施形態においても、磁石72を設けることにより、遮断時の電圧を分圧させるとともに、磁石によるアークの吹き飛ばしで、アークの電圧をさらに短時間で上昇させて、短時間でリレーを遮断させることが可能となる。
第3実施形態においても、接点接触部を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、短絡時に大電流が流れても、接点が溶着することなく接点を確実に遮断することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態について図5に基づいて説明する。図5は、第4実施形態にかかるリレーの第2絶縁支持部の平面図である。第4実施形態は、第1実施形態のリレーにおいて、第2実施形態にかかるリング状磁石71と第3実施形態にかかる磁石72とを組み合わせたものである。磁石71は第2実施形態と、磁石72は第3実施形態と、その他の構成部材は第1実施形態と同じであるので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
第4実施形態について図5に基づいて説明する。図5は、第4実施形態にかかるリレーの第2絶縁支持部の平面図である。第4実施形態は、第1実施形態のリレーにおいて、第2実施形態にかかるリング状磁石71と第3実施形態にかかる磁石72とを組み合わせたものである。磁石71は第2実施形態と、磁石72は第3実施形態と、その他の構成部材は第1実施形態と同じであるので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
第4実施形態においても、磁石71と磁石72を設けることにより、接点接触部の間に発生するアークは、図5に示すように接点の周囲へ拡散させるように吹き飛ばされる。その結果、遮断時の電圧を分圧させるとともに、磁石によるアークの吹き飛ばしで、アークの電圧をさらに短時間で上昇させて、短時間でリレーを遮断させることが可能となる。
第4実施形態においても、接点接触部を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、短絡時に大電流が流れても、接点が溶着することなく接点を確実に遮断することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態について図6に基づいて説明する。第5実施形態は、第1実施形態のリレーにおいて、第1絶縁支持部11と第2絶縁支持部12の周囲に円弧状の磁石73を複数設けている。図6は、第5実施形態にかかるリレーの第2絶縁支持部の平面図である。磁石73以外は、第1実施形態と構成が同じであるので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
第5実施形態について図6に基づいて説明する。第5実施形態は、第1実施形態のリレーにおいて、第1絶縁支持部11と第2絶縁支持部12の周囲に円弧状の磁石73を複数設けている。図6は、第5実施形態にかかるリレーの第2絶縁支持部の平面図である。磁石73以外は、第1実施形態と構成が同じであるので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
本実施形態では、円弧状磁石73を複数用いてリング状にしている。磁石73は、磁極が絶縁支持部中心側と絶縁支持部外方側とで異なり、各磁石73の磁極面の磁極が隣り合う磁石73の磁極面の磁極と異なるように設けている。この場合、磁石73の個数は、接点対の対の数と同数とすることが好ましい。本実施形態では、接点対が6対なので、磁石73も6個設ける。そして、第2絶縁支持部12における連結部61,63,65に固定される2つの接点を磁石73のS極と対向させるようにする。
そして図6において磁極線を点線矢印で示し、ローレンツ力を実線矢印で示すと、第5実施形態では、各接点接触部でのローレンツ力は、第2絶縁支持部12の径方向外方に向けて発生する。なお、第5実施形態においても、図6において、各接点に示す黒丸が電流の流れ方向先端側を示し、×印が電流の流れ方向後側を示している。
第5実施形態では、図6に示すように、磁石73により、接点接触部の間に発生するアークは、図6に示すように絶縁支持部の外側に向けて吹き飛ばされる。
第5実施形態においても、磁石73を設けることにより、遮断時の電圧を分圧させるとともに、磁石によりアークを絶縁支持部の外側に向けて吹き飛ばすので、アークの電圧をさらに短時間で確実にリレーを遮断させることが可能となる。
また、第5実施形態でも、絶縁支持部を円形にしているので、絶縁支持部の周りに円弧状の磁石73を配設する際に、絶縁支持部11,12に取り付けられている各接点との位置合わせが容易に行える。
第5実施形態においても、接点接触部を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、短絡時に大電流が流れても、接点が溶着することなく接点を確実に遮断することができる。
(第6実施形態)
第6実施形態について図7に基づいて説明する。図7は、第6実施形態にかかるリレーの第2絶縁支持部の平面図である。第6実施形態は、第1実施形態のリレーにおいて、第2絶縁支持部12の中心に、扇形状の磁石74を隣り合う磁極が交互に異なるように複数設けている。磁石74以外は、第1実施形態と構成が同じなので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
第6実施形態について図7に基づいて説明する。図7は、第6実施形態にかかるリレーの第2絶縁支持部の平面図である。第6実施形態は、第1実施形態のリレーにおいて、第2絶縁支持部12の中心に、扇形状の磁石74を隣り合う磁極が交互に異なるように複数設けている。磁石74以外は、第1実施形態と構成が同じなので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
磁石74は、図7に示すように、扇形状の磁石を複数用いて平面視円形状となるように第2絶縁支持部12上の中心に配置させている。磁石74は、扇形状の先端部が第2絶縁支持部12の中心に位置するように第2絶縁支持部12上に配置される。
さらに、各磁石74の円弧面の磁極は隣り合う磁石の磁極と異なるように設けられている。この場合、磁石74の個数は、接点対の対の数と同数とすることが好ましい。本実施形態では、接点対が6対なので、磁石74も6個設ける。そして、第2絶縁支持部12における連結部61,63,65に固定される2つの接点を磁石74のS極と対向させるようにする。
そして図7において磁極線を点線矢印で示し、ローレンツ力を実線矢印で示すと、第6実施形態では、各接点接触部でのローレンツ力は、絶縁支持部の外方に向けて発生する。なお、第6実施形態においても、図7において、各接点に示す黒丸が電流の流れ方向先端側を示し、×印が電流の流れ方向後側を示している。
第6実施形態では、図7に示すように、磁石74により、接点接触部の間に発生するアークは、図7に示すように絶縁支持部の外側に向けて吹き飛ばされる。
第6実施形態においても、磁石74を設けることにより、遮断時の電圧を分圧させるとともに、磁石によりアークを絶縁支持部の外側に向けて吹き飛ばすので、アークの電圧をさらに短時間で確実にリレーを遮断させることが可能となる。
第6実施形態においても、接点接触部を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、短絡時に大電流が流れても、接点が溶着することなく接点を確実に遮断することができる。
(第7実施形態)
第7実施形態について図8に基づいて説明する。図8は、第7実施形態にかかるリレーの第2絶縁支持部の平面図である。第7実施形態は、第1実施形態のリレーにおいて、第5実施形態にかかる磁石73と第6実施形態にかかる磁石74とを組み合わせたものである。磁石73は第5実施形態と、磁石74は第6実施形態と、その他の構成部材は第1実施形態と同じであるので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
第7実施形態について図8に基づいて説明する。図8は、第7実施形態にかかるリレーの第2絶縁支持部の平面図である。第7実施形態は、第1実施形態のリレーにおいて、第5実施形態にかかる磁石73と第6実施形態にかかる磁石74とを組み合わせたものである。磁石73は第5実施形態と、磁石74は第6実施形態と、その他の構成部材は第1実施形態と同じであるので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
第7実施形態においても、磁石73と磁石74を設けることにより、接点接触部の間に発生するアークは、図8に示すように接点の周囲へ拡散させるように吹き飛ばされる。特に、絶縁支持部の周囲と中心とに磁石を設けるので、ローレンツ力を更に大きくすることができるので、アークをさらに大きく引き伸ばしてさらに短時間での遮断が可能となる。
第7実施形態においても、接点接触部を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、短絡時に大電流が流れても、接点が溶着することなく接点を確実に遮断することができる。
(第8実施形態)
前記第1実施形態から第7実施形態は、入力接点と出力接点を一つずつ設けた場合について説明したが、図9に示す第8実施形態のように2つの入力接点31,32と2つの出力接点33,34を設けるようにしてもよい。
前記第1実施形態から第7実施形態は、入力接点と出力接点を一つずつ設けた場合について説明したが、図9に示す第8実施形態のように2つの入力接点31,32と2つの出力接点33,34を設けるようにしてもよい。
図9は本発明の第8実施形態にかかるリレーの基本構成を示す概略構成図であって、接点が非接触の状態を示す。
第8実施形態にかかる直流リレーは、図9に示すように、2枚の円板状の第1絶縁支持部11と第2絶縁支持部12とを具える。第1絶縁支持部11と第2絶縁支持部12とは、合成樹脂などの絶縁材料から構成している。そして、各絶縁支持部11,12の対向面において、第1絶縁支持部11には、第1入力接点31、第2入力接点32、第1出力接点33、第2出力接点34と、2つの中間接点85,86とが取り付けられている。また、第2絶縁支持部12には、6つの中間接点81,82,83,84,87,88が取り付けられている。
第1入力接点31、第2入力接点32、第1出力接点33、第2出力接点34、中間接点81〜88は、対向する絶縁支持部に取り付けられる接点と接触する接点接触部31a〜34a,81a〜88aを有する円柱金属ブロックを用いている。また、第1入力接点31、第2入力接点32、第1出力接点33、第2出力接点34は、第1絶縁支持部11に貫通させて取り付けられている。そして、各入力接点31,32と各出力接点33,34には、接点接触部31a〜34aとは反対側端部に端子接続部31b〜34bを形成している。
また、中間接点は2つをペアとして長方形状の平板からなる連結部91〜94の長手方向両端側に固定されている。4つの連結部91〜94は導体からなり、平板の一方の面が各絶縁支持部11,12に固定されている。そして、他方の面に中間接点が固定され、各中間接点が連結部を介して絶縁支持部から突出された状態になっている。
本実施形態では、第1絶縁支持部11には、1枚の連結部93が固定され、第2絶縁支持部12には、3枚の連結部91,92,94が固定されている。
そして、第1入力接点31の接点接触部31aに、第2絶縁支持部12の第1中間接点81の接点接触部81aを対向させる。この第1中間接点81と第2中間接点82とを第1連結部91で連結する。さらに、第2中間接点82の接点接触部82aに、第1絶縁支持部11の第1出力接点33の接点接触部33aを対向させる。この第1入力接点31と、第1中間接点81、第1連結部91、第2中間接点82、そして、第1出力接点33により第1リレー部が構成される。
そして、第2入力接点32の接点接触部32aに、第2絶縁支持部12の第3中間接点83の接点接触部83aを対向させる。この第3中間接点83と第4中間接点84とを第2連結部92で連結する。さらに、第4中間接点84の接点接触部84aに、第1絶縁支持部11の第5中間接点85の接点接触部85aを対向させる。この第5中間接点85と第6中間接点86とを第3連結部93で連結する。
第6中間接点86の接点接触部86aに、第2絶縁支持部12の第7中間接点87の接点接触部87aを対向させる。この第7中間接点87と第8中間接点88とを第4連結部94で連結する。
第8中間接点88の接点接触部88aに、第2出力接点34の接点接触部34aを対向させる。この第2入力接点32と、第3中間接点83〜第8中間接点88、第2連結部92〜第4連結部94、そして第2出力接点34により第2リレー部が構成される。
本実施形態では、第1入力接点31と第1中間接点81が一つの接点対となり、第2中間接点82と第1出力接点33が一つの接点対となる。第2入力接点32と第3中間接点83が一つの接点対となり、第4中間接点84と第5中間接点85が一つの接点対となる。第6中間接点86と第7中間接点87が一つの接点対となり、第8中間接点88と第2出力接点34とが一つの接点対となる。
これら接点対は、第1実施形態と同様に、絶縁支持部と同心の円弧曲線上に配置される。したがって、各連結部91〜94はこの円弧曲線に沿って配置される。
第8実施形態では、このように各接点および連結部を配置して、各接点の接点接触部を接触させることにより、連結部を介して通電時に第1入力接点31から第1出力接点33へ、第2入力接点32から第2出力接点34へと直列に接続される。
第8実施形態では、前記した第1実施形態と同様に、第2絶縁支持部12を、図示していない駆動機構により接点開閉方向に往復移動させるようになっている。駆動機構には、ソレノイドを用いている。
そして、第1入力接点31および第2入力接点32の端子接続部31a,32aに端子(図示せず)を介して直流電源が接続されて、各接点が接触・離隔することで通電・遮断を行う。
接点間を閉じて通電させる場合、第2絶縁支持部12を閉動作させて対向する接点(接点対)の接点接触部を接触させて導通をとる(図示せず)。
また、両接点間を開いて遮断する場合は、第2絶縁支持部12の開動作により、各接点対の接点接触部間が離隔されて遮断が行われる(図9の状態)。図9において、電流は、矢印に示すように上向きと下向きに交互に流れる。第8実施形態では、第1入力接点31側は、2対の接点対で、第2入力接点32側は、4対の接点対を直列に接続させる。
この遮断時においては、各接点接触部の間にアークが発生するが、第8実施形態では、第1入力接点31側の2対の接点対(第1リレー部)と、第2入力接点32側の4対の接点対(第2リレー部)で遮断時の電圧を分圧してアークの消弧が行え、短時間で電圧を遮断することができる。
なお、第8実施形態でも、絶縁支持部を円形にしたが、矩形状に形成してもよい。絶縁支持部を本実施形態のように円形にし、かつ、各接点対を円弧曲線上に配置することにより、非常にコンパクトなリレーを構成できる。なお、絶縁支持部は、双方の絶縁支持部を開閉駆動させるようにしてもよい。
また、本実施形態では、2つの入力接点と2つの出力接点を設けているので、一対の絶縁支持部に線路の異なる第1リレー部と第2リレー部とを設けることができる。即ち、一つのリレーセット(第1絶縁支持部と第2絶縁支持部)の中に、複数の線路を遮断するための複数のリレー部を有する構造にすることができる。その結果、限られたスペース内に複数のリレー部を配置することができる。
第8実施形態においても、接点接触部を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、短絡時に大電流が流れても、接点が溶着することなく接点を確実に遮断することができる。
(第9実施形態)
第9実施形態について図10に基づいて説明する。図10は、第9実施形態にかかるリレーの基本構成を示す概略構成図であって、接点が非接触の状態を示す。第9実施形態は、第8実施形態のリレーにおいて、第1絶縁支持部11と第2絶縁支持部12の周囲に、絶縁支持部11,12の一端側と他端側において磁極が異なるリング状の一つの磁石71を設けている。磁石71以外は、第8実施形態と構成が同じであるので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
第9実施形態について図10に基づいて説明する。図10は、第9実施形態にかかるリレーの基本構成を示す概略構成図であって、接点が非接触の状態を示す。第9実施形態は、第8実施形態のリレーにおいて、第1絶縁支持部11と第2絶縁支持部12の周囲に、絶縁支持部11,12の一端側と他端側において磁極が異なるリング状の一つの磁石71を設けている。磁石71以外は、第8実施形態と構成が同じであるので、同じ構成部分については、同じ符号で示し、説明を省略する。
さらに、リング状磁石71は、第2実施形態と同じものを使用しているので、図10において左から右に向かう磁極線が発生する。そして、この磁極線に対して、第1入力接点31、第2入力接点32、第1出力接点33、第2出力接点34、中間接点81〜88を図10のように配置させる。
また、第9実施形態では、複数の入力接点と出力接点を設けているが、電流の流れは、第1実施形態と同じであるので、リレーの遮断時において、接点接触部の間には、第2実施形態の図3と同じようにローレンツ力が生じる。
したがって、第9実施形態においても、図3と同様に、磁石71により、接点接触部の間に発生するアークは、周囲へ拡散させるように吹き飛ばされる。その結果、遮断時の電圧を分圧させるとともに、磁石によるアークの吹き飛ばしで、アークの電圧をさらに短時間で上昇させて、短時間でリレーを遮断させることが可能となる。
さらに、第8実施形態のように入力接点と出力接点とを2つずつ設ける場合でも、電流の流れ方が第1実施形態と同じであるので、前記した第3実施形態から第7実施形態と同様に磁石を設けることができる。このように磁石を設けることにより、入力接点と出力接点とを2つずつ設ける場合でも図4から図8に示した場合と同様のローレンツ力が生ずるので、短時間でのアーク遮断が可能となる。
第9実施形態においても、接点接触部を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、短絡時に大電流が流れても、接点が溶着することなく接点を確実に遮断することができる。
(第10実施形態)
前記第1実施形態から第9実施形態は、円板状の絶縁支持部に6対の接点対を設けた場合について説明したが、図11から図16に示す第10実施形態では、4対の接点対を設けている。
前記第1実施形態から第9実施形態は、円板状の絶縁支持部に6対の接点対を設けた場合について説明したが、図11から図16に示す第10実施形態では、4対の接点対を設けている。
本実施形態では、図11から図13に示すように、接点収納ケース1内に、4つの固定接点25,26,27,28と4つの可動接点35,36,37,38と複数の磁石7とを具え、この接点収納ケース1の下方に可動接点35,36,37,38を開閉駆動させるための駆動部5を具える。本実施形態では、図12および図13に示すように、4対の接点対を四角形状に配置させている。
固定接点は、図14および図15に概略で示すように、外部端子が接続される入力接点となる第1固定接点25と、出力接点となる第2固定接点26と、4つの接点のうち対角線上にある2つの第3固定接点27と第4固定接点28とが一体に形成される固定側連結部95とを具えている。
この固定側連結部95は第3固定接点27と第4固定接点28とを一体に具えるため、断面がU字状となっている。第1固定接点25と第2固定接点26は、接点収納ケース1外に突出させた状態となっており、固定側連結部95は接点収納ケース1の内部に固定され、第3固定接点27と第4固定接点28とは導通されている。
可動接点は、第1固定接点25と接触する第1可動接点35、第3固定接点27と接触する第2可動接点36、第4固定接点28と接触する第3可動接点37、第2固定接点26と接触する第4可動接点38とを有する。
さらに、第1可動接点35および第2可動接点36を有する第1可動側連結部96と、第3可動接点37および第4可動接点38を有する第2可動側連結部97を具えている。第1可動側連結部96と第2可動側連結部97とは図16に示すように平行に配置されている。
第1可動接点35と第2可動接点36とは第1可動側連結部96により導通されており、第3可動接点37と第4可動接点38とは第2可動側連結部97により導通されている。
前記した固定接点25,26,27,28および可動接点35,36,37,38を収納する接点収納ケース1は、横断面が四角形状をした筒状側壁部13と、固定接点25,26,27,28を固定するための蓋部14と底板15とを具える。側壁部13の筒内上部には、図11に示すように、固定接点を支持するための支持壁16を横断状に具えている。この支持壁16には、第1固定接点25、第2固定接点26、第3固定接点27、第4固定接点28を下方に向けて突出させる4つの孔17が形成されている。
また、蓋部14には第1固定接点25、第2固定接点26を貫通させる孔18が形成されており、第1固定接点25、第2固定接点26、固定側連結部95を支持壁16と蓋部14とで挟んだ状態で蓋部14を支持壁16にネジ止めにより固定する。本実施形態では、側壁部13と、蓋部14により固定接点の絶縁支持部が構成されている。また、側壁部13は、下部が開放されており、この下部底面に底板15が固定され、底板15が駆動部5の上面に固定される。
接点収納ケース1内には、第1可動側連結部96と第2可動側連結部97とを絶縁状態で支持する板状の接点支持体66を具えている。本実施形態では、この接点支持体66が可動接点35,36,37,38を支持する絶縁支持部となる。
このように各接点を配置して、固定接点25,26,27,28と可動接点35,36,37,38を接触させることにより、各接点は、第1固定接点25から、第1可動接点35、第2可動接点36、第3固定接点27、第4固定接点28、第3可動接点37、第4可動接点38、第2固定接点26へと直列に接続される。
そして、第1可動側連結部96と第2可動側連結部97とは、接点支持体66を介して駆動部5により接点開閉方向に往復移動させるようになっている。駆動部5により接点間を開閉して、可動接点35,36,37,38を、固定接点25,26,27,28に対して、接触または非接触状態にする。
次に、駆動部5について具体的に説明する。駆動部5はソレノイドから構成されている。ソレノイド5は、接点支持体66を接点開閉方向に往復動作させるものであり、接点支持体66に一端が固定される駆動軸51と、駆動軸51を接点開閉方向に往復動作させる軸作動部52とを有する。駆動軸51は、軸作動部52の内部に配設されるコイルばね(図示せず)により接点開方向に付勢されている。
軸作動部52は、電流が流れてオン状態のときに、駆動軸51を挿入孔から突出する方向(接点閉方向)に移動させるようになっている。即ち、軸作動部52がオン状態のときには、駆動軸51をコイルばねのばね力に抗して固定接点25,26,27,28に向けて(接点閉方向)移動させて、可動接点35,36,37,38を固定接点25,26,27,28に接触させる。そして、軸作動部52がオフ状態のときには、駆動軸51を、コイルばねのばね力により固定接点25,26,27,28から離れる方向(接点開方向)に移動させる。
そして、ソレノイド5の駆動軸51の動きに伴って接点支持体66が往復動作する。接点支持体66が接点閉方向に移動したときは、接点支持体66により第1可動側連結部96と第2可動側連結部97が固定接点側に移動して可動接点35,36,37,38が固定接点25,26,27,28に接触する。
また、接点支持体66が接点開方向に移動したときは、各可動側連結部96,97が引き戻されて、可動接点35,36,37,38が固定接点25,26,27,28から離れる。このように駆動部5により、可動接点35,36,37,38を固定接点25,26,27,28に対して開閉するようになっている。
本実施形態では、接点収納ケース1内に3つの板状の永久磁石7を具えている。これら永久磁石7は、図16に示すように、可動側連結部96,97の間と、可動側連結部96,97の外側に磁極が同じ側となるように配設される。このように磁石7を配置させることにより、図16において点線矢印aで示す方向に磁界が発生する。
そして、本実施形態では、図16に示すように、中央の磁石7に対して左右対称に電流の流れ方向(図16において矢印bで示す)が同じになるように磁石7を設けている。
このように接点および磁石を配置させることにより、接点の遮断時、各接点の間に生じるアークが、ローレンツ力を受けてアーク同士が干渉しないように接点収納ケース1の側壁部13の外側に向けて(図16において矢印cの方向)引き伸ばされ歪曲する。なお、本実施形態では、図15、図16に示すように、各接点に示す黒丸が電流の流れ方向先端側を示し、×印が電流の流れ方向後側を示している。
第10実施形態も、磁石7を設けることにより、遮断時の電圧を分圧させるとともに、磁石によりアークを接点収納ケース1の外側に向けて吹き飛ばすので、アークの電圧をさらに短時間で確実にリレーを遮断させることが可能となる。
さらに、第10実施形態においても、接点接触部を耐溶着特性に優れた材料で形成しているので、短絡時に大電流が流れても、接点が溶着することなく接点を確実に遮断することができる。
次に、前記した第1実施形態に係る構造の直流リレーについて、各接点の接触部に表1に示す「化学組成」欄に示す第一層と第二層の二種の化学組成のAg合金を用いたもの作製して耐溶着特性および温度特性を調べてみた。
これらのAg合金は、まず、第一層と第二層の二種の化学組成のAg合金を溶解・鋳造してインゴットを作製した。これらをそれぞれ粗加工した後、第一層と第二層のインゴットを重ね合わせ、アルゴン雰囲気中850℃で熱間ロールによって熱間圧着し、二層のAg合金からなる複合素材を作製した。
得られた複合素材を熱間圧着と同じ条件下で予備加熱した後、最終的に全体の厚みの1/10の厚みとなるように薄い純Ag板を第一層とは反対側の第二層の面に熱間圧着した。その後、さらに冷間圧延してフープ状素材とし、これを打ち抜いて、幅6mm、長さ8mm、厚み2.5mmの複合接点チップを作製した。
得られたチップを4気圧(405.3kPa)の酸素雰囲気中750℃で170時間保持(内部酸化)して複合接点試片とした。得られた試片の第一層の厚みは表1の通りであり、Ag層の厚みは、各チップ厚みのほぼ1/10であった。
上記第一層の厚みは、接点の中心を通り表面に垂直な断面試片を用いて、例えば、以下のようにして確認することができる。まず、表面付近の試片面上で表面に水平な方向に等間隔に5箇所の起点を設定する。次いで、これら各々の点から表面に垂直な(厚み)方向に表面から順次ほぼ等間隔に硬度を確認し、5本の硬度曲線(折れ線グラフ)をつくる。
そして、ある起点において、硬度レベルが190である水平線とこの曲線との交点をとり、表面からこの交点までの水平距離をその起点での第一層の厚みとする。以下、残り4箇所の起点についてもその起点での第一層の厚みをとり、得られた5つのデータの算術平均値を第一層の厚みとしてもよい。第二層の厚みも同様にして測定することができる。
このとき、硬度レベルが130である水平線との交点をとり、表面からこの交点までの水平距離をある起点における第二層の厚みとするとよい。そして、中間層を具える場合、硬度レベルが190である水平線との交点と、硬度レベルが130である水平線との交点間の水平距離をある起点における中間層の厚みとするとよい。本例では、上記の手順にて第一層の厚みを測定した。
なお、表中の試料番号に*を付したものは比較例である。試料11から試料18のその他の成分Sb、Ni、Biの量は、何れも0.2質量%である。また、試料19から試料27の第一層・第二層の化学組成は、何れも同じであり、その他の成分とその量は、両層とも質量%単位でSb、Co、Znが何れも0.2である。
試料28のその他の成分とその量は、質量%単位でSb、Pb、Ni、Bi、Co、Znが何れも0.1、Caが0.2である。試料29のその他の成分とその量は、質量%単位でSb、Ni、Ca、Bi、Co、Znが何れも0.1、Pbが0.5である。試料30から試料32のその他の成分とその量は、質量%単位でNi、Znが何れも0.2である。なお、第一層・第二層の化学組成は、表に記載された成分以外の残部は、Agおよび不可避的不純物からなる。
なお、表1で試料1から試料10は、SnおよびInの量を変化させて各層の硬度を制御した試料群である。試料11から試料18は、SnおよびInの量を変えるとともに、これら以外のその他の成分をさらに添加した試料群である。試料19から試料27は、第一層の厚みを変化させた試料群である。
また試料28から試料34は、第一層・第二層の両層が同じ化学組成のものである。これらのものでは、以下のようにして第一層の硬度を制御した。まず試料28から試料33は、第一層の圧延加工断面積比を第二層の50%増しとするとともに、第一層素材の圧延加工途中において同素材を真空中、450℃で30分間焼鈍を行い、さらに、内部酸化後に♯120のアルミナビーズによって第一層表面に投射圧3kgf/cm2(294kPa)で3分間ショットブラスト加工を加えた。
試料34は、圧延加工途中の焼鈍温度と時間をそれぞれ750℃、5時間とした以外は以上の試料と同じ条件で作製したものである。なお、表1には記載しないが、試料33と試料34ではそれぞれ厚みが190μm、230μmの中間部が形成されていた。
なお、試料35は、第一層のSnやInの酸化物の量を第二層よりも少なくして、第一層の硬度を第二層の硬度よりも低くしたものであって、表1に記載の化学組成の第一層と第二層のAg合金を溶解鋳造後、熱間圧着・圧延した後、これを上記と同じ条件にて内部酸化したものである。
また、試料36は、表1に記載の化学組成の第一層と第二層のAg合金を溶解鋳造後、互いの二層の合わせ面上に水平な一方向に1mmピッチで幅1mm、深さ0.5mmの凹凸を形成して、その部分で凹部と凸部とを互いに噛み合わせた状態で熱間圧着し、その後圧延し、さらにそれを上記と同じ条件にて内部酸化したものである。
以上の方法で作製した各試料の硬度の第一層の厚みは、前述の手順にて確認した。以上の結果を表1に示した。なお、表には記載されていないが、試料33、試料34以外の試料の中間部の厚みは、何れも100μm未満であった。
次いで、上記複合接点チップを図1に示す各接点に銀ロウ付けしてそれぞれ接触部を形成した。その後、定格AC30Aフレームおよび50Aフレームの二種の直流リレーに固定した。このようなリレーを各試料番号の複合接点チップ対毎に各5台用意した。まず各試料の全てのアッセンブリーを使って、定格電流を100分間通電してこの通電時の温度を測定することにより初期の温度特性を確認した。
次に、220V負荷状態で、30Aフレームの場合は、1.5kAの遮断電流で、50Aフレームの場合は5kAの遮断電流で、各々1台ずつのアッセンブリーを使って遮断試験を行い、耐溶着特性を確認した。
遮断試験後の温度特性は、その後引き続いて定格電流を100分間通電し、この通電時の温度を測定することにより遮断試験後の温度特性を確認した。過負荷試験は、初期温度特性を確認したアッセンブリーを使い、30Aフレーム、50Aフレームとも同定格電流の5倍の電流を流した状態で5秒間隔で開閉を50回繰り返し、その後上記初期確認時と同じ条件で通電時の温度を測定することにより過負荷試験後の温度特性を確認した。
耐久試験は、初期温度特性を確認したアッセンブリーを使い、30Aフレーム、50Aフレームとも同定格電流を流した状態で、5秒間隔で開閉を6000回繰り返し、その後上記初期確認時と同じ条件で通電時の温度を測定することにより耐久試験後の温度特性を確認した。
なお、これらの一連の試験での評価は、温度特性については30A・50A両フレームの機種別の結果を総合して5段階評価し、耐溶着特性については、溶着するかしないかで評価した。
温度特性の5段階評価は、通電時の温度上昇が50℃以下を5、50℃超60℃以下を4、60℃超70℃以下を3、70℃超80℃以下を2、80℃以上を1とした。これらの評価は、表1の試料番号に対応させて表2に示した。なお、表2において、比較例の試料番号には*を付している。
以上の結果から以下のことがわかる。
(1)第一層、第二層ともSnを1〜9質量%、Inを1〜9質量%の範囲内に制御し、第一層のマイクロビッカース硬度を190以上、第二層のマイクロビッカース硬度を130以下とし、さらに、第一層の厚みを10〜360μmの範囲内に制御した接点を用いたリレーは、上記総合評価において十分実用可能な範囲内にある。一方、上記範囲外の接点を用いたリレーは、総合評価において実用レベルに達していない。
(1)第一層、第二層ともSnを1〜9質量%、Inを1〜9質量%の範囲内に制御し、第一層のマイクロビッカース硬度を190以上、第二層のマイクロビッカース硬度を130以下とし、さらに、第一層の厚みを10〜360μmの範囲内に制御した接点を用いたリレーは、上記総合評価において十分実用可能な範囲内にある。一方、上記範囲外の接点を用いたリレーは、総合評価において実用レベルに達していない。
(2)SnおよびInに加えSbやNiなどの成分を少量含んだ場合でも、同様のことが言える。
(3)比較例となる試料1、試料10、試料18、試料31、試料32、試料35および試料36の接点チップは、硬度レベルが上記範囲外となり、これらの接点チップを組み込んだ直流リレーは、ともに一部の特性を除き総合的に実用レベルの性能が得られなかった。
表1の試料24を用いて接点対を構成した模擬的なリレーを作製し、トランスで昇圧してコンデンサに充電し、サイリスタでコンデンサの容量放出と接点を開くタイミングを調整して、短時間大電流が流れる間に接点を開くようにしたときの電圧と電流の状態を調べてみた。その結果を図17に示す。このとき、2600Aの大電流が流れても、接点は溶着せず、接点間の電圧は急激に上昇し確実に遮断できた。
図17のグラフは、遮断電圧が200Vに達したときに遮断が完了したと判断して、電力供給をやめるようにしているため、電力供給がなくなった時点で、電圧がゼロになっている。このことから、上記特定の材料を接点材料に用いたリレーは、耐溶着性に優れ、高速で遮断できると推測される。
これに対し、表1の試料27を用いて接点対を構成した場合は、図18に示すように1500Aの大電流が流れたとき、接点が瞬時に溶着してしまい、コンデンサは自然放電し、接点間の電圧の挙動は1msの間しか起こらずしかも10V程度しか変動しないことがわかる。
本発明リレーは、ハイブリッド自動車などの高電圧(約300V)の自動車における高電圧回路をON・OFFするためのリレーとして利用する場合、コンパクトであるため、限られたスペースの有効利用ができる。
11 第1絶縁支持部
12 第2絶縁支持部
21,31,32 入力接点
21a,31a,32a 入力接点の接点接触部
22,33,34 出力接点
22a,33a,34a 出力接点の接点接触部
41〜50,81〜88 中間接点
41a〜50a,81a〜88a 中間接点の接点接触部
61〜65,91〜94 連結部
71,72,73,74 磁石
1 接点収納ケース
13 側壁部 14 蓋部 15 底板 16 支持壁
17 孔 18 蓋部の孔
25 第1固定接点 26 第2固定接点
27 第3固定接点 28 第4固定接点
35 第1可動接点 36 第2可動接点
37 第3可動接点 38 第4可動接点
5 駆動部 51 駆動軸 52 軸作動部
66 接点支持体 7 磁石
95 固定側連結部 96 第1可動側連結部 97 第2可動側連結部
12 第2絶縁支持部
21,31,32 入力接点
21a,31a,32a 入力接点の接点接触部
22,33,34 出力接点
22a,33a,34a 出力接点の接点接触部
41〜50,81〜88 中間接点
41a〜50a,81a〜88a 中間接点の接点接触部
61〜65,91〜94 連結部
71,72,73,74 磁石
1 接点収納ケース
13 側壁部 14 蓋部 15 底板 16 支持壁
17 孔 18 蓋部の孔
25 第1固定接点 26 第2固定接点
27 第3固定接点 28 第4固定接点
35 第1可動接点 36 第2可動接点
37 第3可動接点 38 第4可動接点
5 駆動部 51 駆動軸 52 軸作動部
66 接点支持体 7 磁石
95 固定側連結部 96 第1可動側連結部 97 第2可動側連結部
Claims (13)
- 互いに開閉する接点接触部を有する接点対を3対以上具え、
各接点対の一方の接点の全てを第1絶縁支持部に取り付け、他方の接点の全てを第2絶縁支持部に取り付け、それぞれの絶縁支持部には、同一の絶縁支持部に取り付ける接点接触部のうちの2つの接点接触部を直列に接続する連結部が少なくとも一つ固定され、
絶縁支持部の少なくとも一方を開閉方向に駆動可能にしていることを特徴とする直流リレー。 - 一方の絶縁支持部に取り付ける接点のうちの一つの接点を入力接点とし、一つの接点を出力接点とし、絶縁支持部に取り付けられている他の接点の全てを入力接点と出力接点との間に直列に配置させていることを特徴とする請求項1に記載の直流リレー。
- 一方の絶縁支持部に取り付ける接点のうち、2つ以上の接点を入力接点とし、入力接点と同じ個数を出力接点として、対となる入力接点および出力接点と他の入力接点および出力接点とは個別に絶縁支持部に取り付けられている他の接点および連結部を介して直列に接続するようにしていることを特徴とする請求項1に記載の直流リレー。
- 前記接点対を円状に配置させていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の直流リレー。
- 絶縁支持部が円板であることを特徴とする請求項4に記載の直流リレー。
- 絶縁支持部が円板であり、絶縁支持部の周囲に、絶縁支持部の一端側と他端側において磁極が異なるリング状の一つの磁石を設けていることを特徴とする請求項4に記載の直流リレー。
- 絶縁支持部が円板であり、絶縁支持部の中心に、一つの磁石を設けていることを特徴とする請求項4に記載の直流リレー。
- 絶縁支持部が円板であり、絶縁支持部の周囲に、磁極が絶縁支持部中心側と絶縁支持部外方側とで異なる長尺な磁石を周方向に複数設けるとともに、これらの磁石の磁極を隣り合う磁極が交互に異なるようにしていることを特徴とする請求項4に記載の直流リレー。
- 絶縁支持部が円板であり、絶縁支持部の中心に、扇形状の磁石を円形を形成するように複数設けるとともに、隣り合う磁極が交互に異なるようにしていることを特徴とする請求項4または請求項8の何れかに記載の直流リレー。
- 4対の接点対を具え、これら接点対を四角形に配置させていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の直流リレー。
- 遮断時に接点の間に生じるアークを磁界により歪曲させる磁石を具えることを特徴とする請求項10に記載の直流リレー。
- 一方の絶縁支持部に取付けられる接点は、4つの接点のうち対角線上にある2つの接点を連結部で連結し、他方の絶縁支持部に取付けられる接点は、2つの連結部を平行して配置させて連結部で2つずつ接点を連結して、全ての接点を直列に接続可能としていることを特徴とする請求項11に記載の直流リレー。
- 接点の接触部は、Snを1〜9質量%含み、Inを1〜9質量%含む化学組成のAg合金からなり、表面部の第一層と内部の第二層とを有し、第一層のマイクロビッカース硬度が190以上、第二層のマイクロビッカース硬度が130以下であり、第一層の厚みが、10〜360μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の直流リレー。
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EP2551882A4 (en) * | 2010-03-25 | 2013-11-27 | Panasonic Corp | CONTACT DEVICE |
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