JP2004288266A - スタンパー製造方法およびスタンパー製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】情報記録媒体用基材のグルーブやランドの表面を十分に平滑に形成し得るスタンパーのスタンパー製造方法を提供する。
【解決手段】その表面に凹凸部が形成されたマスタースタンパー2をアルカリ水溶液に浸して非通電状態で浸漬洗浄し、浸漬洗浄したマスタースタンパー2を超音波洗浄し、超音波洗浄したマスタースタンパー2を酸化処理液に浸して凹凸部の表面を酸化処理し、酸化処理した凹凸部の表面に電解ニッケル層11を形成し、凹凸部の凹凸形状が転写された電解ニッケル層11をマスタースタンパー2から剥離することにより、情報記録媒体用基材を形成するための電解ニッケル層11からなるスタンパーを製造する。
【選択図】 図7
【解決手段】その表面に凹凸部が形成されたマスタースタンパー2をアルカリ水溶液に浸して非通電状態で浸漬洗浄し、浸漬洗浄したマスタースタンパー2を超音波洗浄し、超音波洗浄したマスタースタンパー2を酸化処理液に浸して凹凸部の表面を酸化処理し、酸化処理した凹凸部の表面に電解ニッケル層11を形成し、凹凸部の凹凸形状が転写された電解ニッケル層11をマスタースタンパー2から剥離することにより、情報記録媒体用基材を形成するための電解ニッケル層11からなるスタンパーを製造する。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原盤に形成された凹凸部の凹凸形状を転写して情報記録媒体用基材を形成するためのスタンパーを製造するスタンパー製造方法およびスタンパー製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
CD、DVDおよびブルーレイディスク(Blu−ray Disc:BD)等の情報記録媒体用のディスク基材は、一般的に、グルーブやランドを形成するための微細な凹凸部を有するディスク基材作製用のスタンパー(以下、単に「スタンパー」ともいう)をセットした金型に例えばポリカーボネート等の樹脂を射出成形して作製される。この場合、このスタンパーは、射出成形で繰り返して使用されることによって凹凸部が徐々に摩耗する。このため、ディスク状基材を大量に作製するためには、同じ形状の凹凸部を有するスタンパーを複数製造しておく必要がある。この種のスタンパーを製造するスタンパー製造方法として、微細な凹凸部が形成されたマスタースタンパーを使用して、その凹凸部の凹凸形状を転写することによって同一形状の凹凸部を有するスタンパーを複数製造するスタンパー製造方法(一例として、特開平11−7663公報に開示されているスタンパ製造方法)が従来から知られている。
【0003】
この種のスタンパー製造方法に従ってスタンパーを製造する際には、最初に、マスタースタンパーを製造する。このマスタースタンパーの製造では、まず、ガラス基材の表面にフォトレジスト層を形成した後に、例えばフォトリソグラフィ法によって所定の形状の凹凸部をフォトレジスト層に形成する。次に、例えば無電解めっき処理を施すことによってフォトレジスト層における凹凸部の表面に無電解ニッケル層を形成する。次いで、無電解ニッケル層を電極として使用して電解めっき処理を施すことにより、無電解ニッケル層の上に電解ニッケル層を積層する。続いて、両ニッケル層からなる積層体をフォトレジスト層から剥離する。これにより、フォトレジスト層における凹凸部の凹凸形状が反転した状態で転写されたマスタースタンパーが製造される。次に、マスタースタンパーを例えば酸化処理液中に浸すことにより、その凹凸部の表面に酸化膜を形成する。次いで、電解めっき処理を施すことによってマスタースタンパーの凹凸部の表面にニッケル層を形成する。続いて、このニッケル層をマスタースタンパーから剥離する。これにより、マスタスタンパーの凹凸部の凹凸形状が反転した状態で転写されたスタンパーが製造される。以下、同様にして各工程を繰り返して実行することにより、互いに同一形状の凹凸部を有するスタンパーが複数製造される。
【0004】
この場合、スタンパーを製造する際に、マスタスタンパーの凹凸部の表面に残留レジスト材や異物などの汚れ(以下、「汚れ等」ともいう)が付着しているときには、その汚れ等の形状がスタンパーに転写されることとなる。このため、この種のスタンパー製造方法では、マスタースタンパーの酸化処理に先立って超音波洗浄することでマスタスタンパーを洗浄している。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−7663公報(第2−3頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のスタンパー製造方法には、以下の課題がある。すなわち、このスタンパー製造方法では、汚れ等を除去するためにマスタースタンパーを超音波洗浄している。しかし、超音波洗浄だけでは汚れ等を完全に除去することが困難なため、このスタンパー製造方法には、マスタースタンパーの凹凸部の表面に微細な汚れ等が残留してその形状が転写されることに起因して、スタンパーの凹凸部の表面を十分に平滑化するのが困難であるという課題が存在する。この場合、このスタンパーを使用してディスク基材を作製する際には、グルーブやランドの表面に荒れ(微細な凹凸)が生じる(形成される)こととなる。このため、このディスク基材を用いた情報記録媒体では、データ読み出し用のレーザービームを照射した際に、反射光に含まれるノイズ量がグルーブやランドの表面の荒れによって大きくなることに起因して、再生エラーが発生するおそれがあり、この点を改善するのが好ましい。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、情報記録媒体用基材のグルーブやランドの表面を十分に平滑に形成し得るスタンパーのスタンパー製造方法およびスタンパー製造装置を提供することを主目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係るスタンパー製造方法は、その表面に凹凸部が形成された原盤をアルカリ水溶液に浸して非通電状態で浸漬洗浄し、当該浸漬洗浄した原盤を超音波洗浄し、当該超音波洗浄した原盤を酸化処理液に浸して前記凹凸部の表面を酸化処理し、当該酸化処理した前記凹凸部の表面に金属層を形成し、前記凹凸部の凹凸形状が転写された前記金属層を前記原盤から剥離することにより、情報記録媒体用基材を形成するための当該金属層からなるスタンパーを製造する。
【0009】
この場合、前記アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液を用いるのが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るスタンパー製造装置は、その表面に凹凸部が形成された原盤をアルカリ水溶液に浸して非通電状態で浸漬洗浄する浸漬洗浄装置と、前記浸漬洗浄した原盤を超音波洗浄する超音波洗浄装置と、前記超音波洗浄した原盤を酸化処理液に浸して前記凹凸部の表面を酸化処理する酸化処理装置と、前記酸化処理した前記凹凸部の表面に当該凹凸部の凹凸形状が転写されて情報記録媒体用基材を形成するためのスタンパーとして機能可能な金属層を形成する金属層形成装置とを備えている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るスタンパー製造方法およびスタンパー製造装置の好適な実施の形態について説明する。
【0012】
図1に示すスタンパー1は、情報記録媒体(例えばブルーレイディスク)用のディスク基材を作製するためのスタンパーであって、本発明に係るスタンパー製造方法に従って本発明に係るスタンパー製造装置によって製造される。また、スタンパー1は、例えばニッケルによって全体として平板状に形成されて、ディスク基材の表面にグルーブやランドを形成するための微細な凹凸部がその表面(同図では上面)に形成されて構成されている。この場合、凹凸部における隣り合う凹部1a,1aは、ディスク基材におけるグルーブの形成ピッチに応じて例えば0.32μmのピッチで形成されている。一方、図6に示すマスタースタンパー2は、本発明における原盤に相当し、スタンパー1を製造する際に使用される。また、マスタースタンパー2は、例えばニッケルによって全体として平板状に形成されて、スタンパー1の表面に凹凸部を形成(転写)するための微細な凹凸部がその表面(同図では下面)に形成されて構成されている。この場合、凹凸部における隣り合う凸部2a,2aは、スタンパー1における凹部1a,1aのピッチと同一のピッチで形成されている。
【0013】
次に、このスタンパー1を製造する製造システム41について、図面を参照して説明する。
【0014】
製造システム41は、図2に示すように、マスタースタンパー製造装置42およびスタンパー製造装置43を備えている。マスタースタンパー製造装置42は、同図に示すように、フォトレジスト層形成装置51、露光装置52、現像装置53、導電層付与装置54および金属層形成装置55を備えて構成され、マスタースタンパー2を製造する。フォトレジスト層形成装置51は、図3に示すように、フォトレジスト材を例えばスピンコート法によってガラス基材21の表面に塗布することにより、薄膜状のフォトレジスト層22を形成する。露光装置52は、同図に示すように、露光用のレーザービームLを照射することにより、フォトレジスト層22に潜像を形成する。現像装置53は、潜像が形成されたフォトレジスト層22を現像してレーザービームLの照射部位を除去して凹部を形成することにより、図4に示すように、フォトレジスト層22に凹凸部を形成する。導電層付与装置54は、無電解めっき処理を施すことにより、フォトレジスト層22の凹凸部の表面に無電解ニッケル層23(図5参照)を形成する。金属層形成装置55は、無電解ニッケル層23を電極として使用して電解めっき処理を施すことにより、図5に示すように、無電解ニッケル層23の上に電解ニッケル層24を形成する。この場合、無電解ニッケル層23と電解ニッケル層24とからなる積層体(図6参照)がマスタースタンパー2を構成する。
【0015】
スタンパー製造装置43は、図2に示すように、浸漬洗浄装置61、超音波洗浄装置62、酸化処理装置63および金属層形成装置64を備えて構成され、マスタースタンパー2を使用してスタンパー1を製造する。浸漬洗浄装置61は、マスタースタンパー製造装置42によって製造されたマスタースタンパー2をアルカリ水溶液としての例えば水酸化ナトリウム水溶液に浸すことによって浸漬洗浄する。超音波洗浄装置62は、浸漬洗浄後のマスタースタンパー2を界面活性剤が添加された洗浄水に浸した状態において超音波を印加することによって超音波洗浄する。酸化処理装置63は、酸化処理液としての例えば過マンガン酸カリウム水溶液に超音波洗浄後のマスタースタンパー2を浸すことにより、マスタースタンパー2の凹凸部の表面を酸化処理する。金属層形成装置64は、図7に示すように、酸化処理後のマスタースタンパー2に電解めっき処理を施すことにより、その凹凸部の表面に電解ニッケル層11を形成する。この場合、この電解ニッケル層11がスタンパー1として機能する。
【0016】
次に、製造システム41を用いてスタンパー1を形成する工程について、図面を参照して説明する。
【0017】
最初に、マスタースタンパー製造装置42を用いてマスタースタンパー2を製造する。このマスタースタンパー2の製造工程では、まず、フォトレジスト層形成装置51が、ガラス基材21(図3参照)の表面にフォトレジスト材(一例として、日本ゼオン(株)製のDVR100)をスピンコートする。次に、フォトレジスト層形成装置51は、ベーキングによってフォトレジスト材の残留溶剤を蒸発させる。これにより、図3に示すように、ガラス基材21の表面にフォトレジスト層22が形成される。次に、露光装置52が、露光用のレーザービームLをフォトレジスト層22に照射すことにより、例えば形成ピッチが0.32μm程度で、幅が0.15μm程度の螺旋状の潜像を形成する。次いで、現像装置53が、この状態のフォトレジスト層22を現像する。これにより、図4に示すように、レーザービームLの照射部位が除去されてフォトレジスト層22に凹凸部が形成される。
【0018】
続いて、導電層付与装置54が、無電解めっき処理を施すことにより、図5に示すように、フォトレジスト層22におけるレジストパターンの表面に導電性を有する無電解ニッケル層23(導電層)を形成する。これにより、フォトレジスト層22の表面が導電性を有することとなる。この場合、フォトレジスト層22の表面に導電性を付与するための導電層の形成用素材はニッケルに限定されず、各種金属材料を用いることができる。また、導電層の形成方法は無電解めっき処理に限定されず、蒸着法やスパッタ法などの各種成膜方法によって各種金属材料層(例えば、ニッケル層)を形成してもよい。次いで、金属層形成装置55が、無電解ニッケル層23を電極として使用して電解めっき処理を施すことにより、同図に示すように、無電解ニッケル層23の上に電解ニッケル層24を形成(積層)する。この場合、両ニッケル層23,24からなる積層体が、後にマスタースタンパー2を構成する。続いて、両ニッケル層23,24からなる積層体をフォトレジスト層22(ガラス基材21)から剥離する。具体的には、フォトレジスト層22および両ニッケル層23,24が形成されているガラス基材21全体に水(純粋)をシャワー状に掛け流す。この場合、これらが電解めっきによって例えば50度程度まで温度上昇しているため、水の掛け流しによってこれらがそれぞれ温度低下して収縮する。この際に、フォトレジスト材、ニッケルおよびガラスの収縮率(熱膨張率)が互いに異なるため、両ニッケル層23,24からなる積層体とフォトレジスト層22(ガラス基材21)との間に隙間が生じて、両ニッケル層23,24からなる積層体がフォトレジスト層22から剥離する。これにより、図6に示すように、その表面にフォトレジスト層22の凹凸部の凹凸形状が反転した状態で転写された両ニッケル層23,24からなるマスタースタンパー2が製造される。
【0019】
次に、スタンパー製造装置43を用いてスタンパー1を製造する。このスタンパー1の製造工程では、まず、浸漬洗浄装置61が、例えば20質量%の水酸化ナトリウム水溶液にマスタースタンパー2を例えば3分間浸漬する。この場合、浸漬洗浄装置61は、電解用の電圧を印加する(電流を流す)ことなく(非通電状態で)マスタースタンパー2を浸漬する。この際に、水酸化ナトリウム水溶液の洗浄作用により、マスタースタンパー2における凹凸部の汚れ等が微細なものまで十分に除去される。なお、水酸化ナトリウムの濃度は20質量%に限定されず任意の濃度に規定することができる。この場合、水酸化ナトリウム水溶液の濃度に応じた適正な時間だけマスタースタンパー2を浸漬するのが好ましい。また、水酸化ナトリウム水溶液に代えて、水酸化カリウム水溶液を用いることもできる。
【0020】
次いで、超音波洗浄装置62が、浸漬洗浄後のマスタースタンパー2を界面活性剤が添加された洗浄水に浸して、その状態で超音波を印加することによって超音波洗浄する。これにより、汚れ等がさらに十分に除去される。続いて、酸化処理装置63が、酸化処理液としての例えば過マンガン酸カリウム水溶液に超音波洗浄後のマスタースタンパー2を浸して酸化処理を行う。この際に、過マンガン酸カリウム水溶液によってマスタースタンパー2における凹凸部の表面が酸化されて、その表面に酸化皮膜が形成される。この場合、この酸化皮膜が形成されたことにより、後にマスタースタンパー2の凹凸部の表面に形成される電解ニッケル層11の剥離処理が容易となる。次に、金属層形成装置64が、図7に示すように、酸化処理後のマスタースタンパー2に電解めっき処理を施すことによりその凹凸部の表面に電解ニッケル層11を形成する。次いで、マスタースタンパー2の表面に形成された電解ニッケル層11をマスタースタンパー2から剥離する。具体的には、マスタースタンパー2における凹凸部の表面と、電解ニッケル層11との境目に例えば刃物の刃先を挿入する。この際に、マスタースタンパー2の凹凸部の表面に酸化皮膜が形成されているため、電解ニッケル層11は、マスタースタンパー2から容易に剥離する。この場合、剥離装置等を用いて電解ニッケル層11の剥離作業を自動化してもよい。これにより、図1に示すように、その表面にマスタースタンパー2の凹凸部の凹凸形状が反転した状態で転写された電解ニッケル層11からなるスタンパー1が製造される。この場合、マスタースタンパー2における凹凸部の表面の汚れ等が十分に除去されているため、スタンパー1の凹凸部の表面が十分に平滑な状態に形成される。
【0021】
次に、スタンパー1を使用して情報記録媒体用のディスク基材を製造する。この際には、スタンパー1をセットした射出成形用の金型に例えばポリカーボネート等の樹脂を射出する。これにより、スタンパー1の凹凸部が樹脂に転写されることによってその表面にグルーブおよびランドが形成されて、ディスク基材が製造される。この場合、スタンパー1の凹凸部の表面が十分に平滑な状態に形成されているため、ディスク基材は、そのグルーブおよびランドの表面が、十分に平滑な状態に形成される。したがって、このディスク基材を用いた情報記録媒体(例えばブルーレイディスク)において、読み出し用レーザービームの照射時に反射した光に含まれるノイズが十分に低減される結果、情報記録媒体から高いC/N比で記録データを読み出すことができる。
【0022】
なお、スタンパー1、および従来のスタンパー製造方法によって製造したスタンパー71(図9参照)の凹凸部を走査電子顕微鏡で観察した。この結果、図8に示すように、スタンパー1の凹凸部には、汚れ等に起因すると思われる模様や影が視認されなかった。一方、図9に示すように、スタンパー71では、その凹凸部における凹部71aに汚れ等に起因すると思われる斑点状の模様が視認された。
【0023】
また、スタンパー1を使用して作製したディスク基材を用いた情報記録媒体のグルーブにデータ読み出し用レーザービームを照射して反射光に含まれているノイズ量を測定した。さらに、従来のスタンパー製造方法によって製造したスタンパー71を使用して作製したディスク基材を用いた情報記録媒体に対しても、同様にして反射光のノイズを測定した。この結果、図10の特性Aが示すように、スタンパー1を使用して作製した情報記録媒体のノイズ量は、スタンパー71を使用して作製した情報記録媒体のノイズ量(同図の特性B)と比較して、15MHz以下の低い周波数帯において最大で2dB程度小さかった。以上の結果から、超音波洗浄に先立って浸漬洗浄を行って製造したスタンパー1を使用することにより、照射したレーザービームの反射光に含まれるノイズ量を低減し得る情報記録媒体用のディスク基材を作製できるのが明らかである。
【0024】
このように、このスタンパー製造方法およびスタンパー製造装置43によれば、マスタースタンパー2をアルカリ溶液に浸して浸漬洗浄した後に超音波洗浄し、超音波洗浄したマスタースタンパー2の凹凸部の表面を酸化処理した後に電解ニッケル層11を形成し、その電解ニッケル層11をマスタースタンパー2から剥離してスタンパー1を製造することにより、マスタースタンパー2における凹凸部の表面の汚れ等を十分に除去することができるため、その凹凸部の表面が十分に平滑なスタンパー1を製造することができる。したがって、スタンパー1を使用して情報記録媒体のディスク基材を作製した際に、グルーブおよびランドの表面を十分に平滑に形成することができるため、このディスク基材を用いた情報記録媒体において、照射したレーザービームの反射光に含まれるノイズを十分に低減させることができる結果、再生エラーの発生を十分に防止することができる。
【0025】
また、洗浄作用に優れた水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液をアルカリ水溶液として用いることにより、マスタースタンパー2における凹凸部の表面の汚れ等をより十分に除去することができる。
【0026】
なお、本発明は、上記した発明の実施の形態に限定されない、例えば上記した発明の実施の形態では、スタンパー1を使用して情報記録媒体用のディスク基材を作製する例について説明したが、スタンパー1をマスタースタンパー(マザースタンパー)として使用して上記した製造方法と同様にしてスタンパー1の凹凸部の凹凸形状を転写したスタンパー(チャイルドスタンパー)を製造することもできる。この場合、スタンパー1をアルカリ溶液に浸して浸漬洗浄することにより、スタンパー1における凹凸部の表面の汚れ等を十分に除去することができるため、その凹凸部の表面が十分に平滑なスタンパー(チャイルドスタンパー)を製造することができる。また、上記した発明の実施の形態では、アルカリ水溶液としてNaOH水溶液またはKOH水溶液を用いる例について説明したが、他のアルカリ水溶液を用いることもできる。また、上記した発明の実施の形態では、情報記録媒体としてブルーレイディスク作製用のスタンパー1を製造する例について説明したが、CD、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RおよびDVD−RWなどの各種情報記録媒体(光記録媒体)用のディスク基材を作製するためのスタンパーを製造することができる。さらに、所定の配列ピッチで互いに分離された同心円状のデータ記録用トラックが数多く形成されたディスクリートトラック型の記録媒体などの磁気記録媒体を作製するためのスタンパーを製造することもできる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るスタンパー製造方法およびスタンパー製造方法によれば、その表面に凹凸部が形成された原盤をアルカリ溶液に浸して浸漬洗浄した後に超音波洗浄し、超音波洗浄した原盤の凹凸部の表面を酸化処理した後に金属層を形成し、その金属層を原盤から剥離してスタンパーを製造することにより、原盤における凹凸部の表面の汚れ等を十分に除去することができるため、その凹凸部の表面が十分に平滑なスタンパーを製造することができる。したがって、そのスタンパーを使用して情報記録媒体用基材を作製した際に、グルーブおよびランドの表面を十分に平滑に形成することができるため、この情報記録媒体用基材を用いた情報記録媒体において、照射したレーザービームの反射光に含まれるノイズを十分に低減させることができる結果、エラーの発生を防止することができる。
【0028】
また、本発明に係るレジストパターン形成方法によれば、洗浄作用に優れた水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液をアルカリ水溶液として用いることにより、原盤における凹凸部の表面の汚れ等をより十分に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るスタンパー1の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るスタンパーの製造システム41の構成を示すブロック図である。
【図3】ガラス基材21の表面に形成したフォトレジスト層22に露光用のレーザービームLを照射している状態の断面図である。
【図4】フォトレジスト層22に凹凸部を形成した状態の断面図である。
【図5】フォトレジスト層22の凹凸部の表面に無電解ニッケル層23および電解ニッケル層24を形成した状態の断面図である。
【図6】マスタースタンパー2の断面図である。
【図7】マスタースタンパー2の凹凸部の表面に電解ニッケル層11を形成した状態の断面図である。
【図8】スタンパー1における凹凸部の表面を観察した観察図である。
【図9】従来のスタンパー71における凹凸部の表面を観察した観察図である。
【図10】スタンパー1およびスタンパー71を使用して作製したディスク基材を用いた各情報記録媒体にレーザービームを照射して、その反射光におけるノイズ量を測定した測定結果図である。
【符号の説明】
1 スタンパー
2 マスタースタンパー
11 電解ニッケル層
41 製造システム
42 マスタースタンパー製造装置
43 スタンパー製造装置
61 浸漬洗浄装置
62 超音波洗浄装置
63 酸化処理装置
64 金属層形成装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、原盤に形成された凹凸部の凹凸形状を転写して情報記録媒体用基材を形成するためのスタンパーを製造するスタンパー製造方法およびスタンパー製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
CD、DVDおよびブルーレイディスク(Blu−ray Disc:BD)等の情報記録媒体用のディスク基材は、一般的に、グルーブやランドを形成するための微細な凹凸部を有するディスク基材作製用のスタンパー(以下、単に「スタンパー」ともいう)をセットした金型に例えばポリカーボネート等の樹脂を射出成形して作製される。この場合、このスタンパーは、射出成形で繰り返して使用されることによって凹凸部が徐々に摩耗する。このため、ディスク状基材を大量に作製するためには、同じ形状の凹凸部を有するスタンパーを複数製造しておく必要がある。この種のスタンパーを製造するスタンパー製造方法として、微細な凹凸部が形成されたマスタースタンパーを使用して、その凹凸部の凹凸形状を転写することによって同一形状の凹凸部を有するスタンパーを複数製造するスタンパー製造方法(一例として、特開平11−7663公報に開示されているスタンパ製造方法)が従来から知られている。
【0003】
この種のスタンパー製造方法に従ってスタンパーを製造する際には、最初に、マスタースタンパーを製造する。このマスタースタンパーの製造では、まず、ガラス基材の表面にフォトレジスト層を形成した後に、例えばフォトリソグラフィ法によって所定の形状の凹凸部をフォトレジスト層に形成する。次に、例えば無電解めっき処理を施すことによってフォトレジスト層における凹凸部の表面に無電解ニッケル層を形成する。次いで、無電解ニッケル層を電極として使用して電解めっき処理を施すことにより、無電解ニッケル層の上に電解ニッケル層を積層する。続いて、両ニッケル層からなる積層体をフォトレジスト層から剥離する。これにより、フォトレジスト層における凹凸部の凹凸形状が反転した状態で転写されたマスタースタンパーが製造される。次に、マスタースタンパーを例えば酸化処理液中に浸すことにより、その凹凸部の表面に酸化膜を形成する。次いで、電解めっき処理を施すことによってマスタースタンパーの凹凸部の表面にニッケル層を形成する。続いて、このニッケル層をマスタースタンパーから剥離する。これにより、マスタスタンパーの凹凸部の凹凸形状が反転した状態で転写されたスタンパーが製造される。以下、同様にして各工程を繰り返して実行することにより、互いに同一形状の凹凸部を有するスタンパーが複数製造される。
【0004】
この場合、スタンパーを製造する際に、マスタスタンパーの凹凸部の表面に残留レジスト材や異物などの汚れ(以下、「汚れ等」ともいう)が付着しているときには、その汚れ等の形状がスタンパーに転写されることとなる。このため、この種のスタンパー製造方法では、マスタースタンパーの酸化処理に先立って超音波洗浄することでマスタスタンパーを洗浄している。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−7663公報(第2−3頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のスタンパー製造方法には、以下の課題がある。すなわち、このスタンパー製造方法では、汚れ等を除去するためにマスタースタンパーを超音波洗浄している。しかし、超音波洗浄だけでは汚れ等を完全に除去することが困難なため、このスタンパー製造方法には、マスタースタンパーの凹凸部の表面に微細な汚れ等が残留してその形状が転写されることに起因して、スタンパーの凹凸部の表面を十分に平滑化するのが困難であるという課題が存在する。この場合、このスタンパーを使用してディスク基材を作製する際には、グルーブやランドの表面に荒れ(微細な凹凸)が生じる(形成される)こととなる。このため、このディスク基材を用いた情報記録媒体では、データ読み出し用のレーザービームを照射した際に、反射光に含まれるノイズ量がグルーブやランドの表面の荒れによって大きくなることに起因して、再生エラーが発生するおそれがあり、この点を改善するのが好ましい。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、情報記録媒体用基材のグルーブやランドの表面を十分に平滑に形成し得るスタンパーのスタンパー製造方法およびスタンパー製造装置を提供することを主目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係るスタンパー製造方法は、その表面に凹凸部が形成された原盤をアルカリ水溶液に浸して非通電状態で浸漬洗浄し、当該浸漬洗浄した原盤を超音波洗浄し、当該超音波洗浄した原盤を酸化処理液に浸して前記凹凸部の表面を酸化処理し、当該酸化処理した前記凹凸部の表面に金属層を形成し、前記凹凸部の凹凸形状が転写された前記金属層を前記原盤から剥離することにより、情報記録媒体用基材を形成するための当該金属層からなるスタンパーを製造する。
【0009】
この場合、前記アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液を用いるのが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るスタンパー製造装置は、その表面に凹凸部が形成された原盤をアルカリ水溶液に浸して非通電状態で浸漬洗浄する浸漬洗浄装置と、前記浸漬洗浄した原盤を超音波洗浄する超音波洗浄装置と、前記超音波洗浄した原盤を酸化処理液に浸して前記凹凸部の表面を酸化処理する酸化処理装置と、前記酸化処理した前記凹凸部の表面に当該凹凸部の凹凸形状が転写されて情報記録媒体用基材を形成するためのスタンパーとして機能可能な金属層を形成する金属層形成装置とを備えている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るスタンパー製造方法およびスタンパー製造装置の好適な実施の形態について説明する。
【0012】
図1に示すスタンパー1は、情報記録媒体(例えばブルーレイディスク)用のディスク基材を作製するためのスタンパーであって、本発明に係るスタンパー製造方法に従って本発明に係るスタンパー製造装置によって製造される。また、スタンパー1は、例えばニッケルによって全体として平板状に形成されて、ディスク基材の表面にグルーブやランドを形成するための微細な凹凸部がその表面(同図では上面)に形成されて構成されている。この場合、凹凸部における隣り合う凹部1a,1aは、ディスク基材におけるグルーブの形成ピッチに応じて例えば0.32μmのピッチで形成されている。一方、図6に示すマスタースタンパー2は、本発明における原盤に相当し、スタンパー1を製造する際に使用される。また、マスタースタンパー2は、例えばニッケルによって全体として平板状に形成されて、スタンパー1の表面に凹凸部を形成(転写)するための微細な凹凸部がその表面(同図では下面)に形成されて構成されている。この場合、凹凸部における隣り合う凸部2a,2aは、スタンパー1における凹部1a,1aのピッチと同一のピッチで形成されている。
【0013】
次に、このスタンパー1を製造する製造システム41について、図面を参照して説明する。
【0014】
製造システム41は、図2に示すように、マスタースタンパー製造装置42およびスタンパー製造装置43を備えている。マスタースタンパー製造装置42は、同図に示すように、フォトレジスト層形成装置51、露光装置52、現像装置53、導電層付与装置54および金属層形成装置55を備えて構成され、マスタースタンパー2を製造する。フォトレジスト層形成装置51は、図3に示すように、フォトレジスト材を例えばスピンコート法によってガラス基材21の表面に塗布することにより、薄膜状のフォトレジスト層22を形成する。露光装置52は、同図に示すように、露光用のレーザービームLを照射することにより、フォトレジスト層22に潜像を形成する。現像装置53は、潜像が形成されたフォトレジスト層22を現像してレーザービームLの照射部位を除去して凹部を形成することにより、図4に示すように、フォトレジスト層22に凹凸部を形成する。導電層付与装置54は、無電解めっき処理を施すことにより、フォトレジスト層22の凹凸部の表面に無電解ニッケル層23(図5参照)を形成する。金属層形成装置55は、無電解ニッケル層23を電極として使用して電解めっき処理を施すことにより、図5に示すように、無電解ニッケル層23の上に電解ニッケル層24を形成する。この場合、無電解ニッケル層23と電解ニッケル層24とからなる積層体(図6参照)がマスタースタンパー2を構成する。
【0015】
スタンパー製造装置43は、図2に示すように、浸漬洗浄装置61、超音波洗浄装置62、酸化処理装置63および金属層形成装置64を備えて構成され、マスタースタンパー2を使用してスタンパー1を製造する。浸漬洗浄装置61は、マスタースタンパー製造装置42によって製造されたマスタースタンパー2をアルカリ水溶液としての例えば水酸化ナトリウム水溶液に浸すことによって浸漬洗浄する。超音波洗浄装置62は、浸漬洗浄後のマスタースタンパー2を界面活性剤が添加された洗浄水に浸した状態において超音波を印加することによって超音波洗浄する。酸化処理装置63は、酸化処理液としての例えば過マンガン酸カリウム水溶液に超音波洗浄後のマスタースタンパー2を浸すことにより、マスタースタンパー2の凹凸部の表面を酸化処理する。金属層形成装置64は、図7に示すように、酸化処理後のマスタースタンパー2に電解めっき処理を施すことにより、その凹凸部の表面に電解ニッケル層11を形成する。この場合、この電解ニッケル層11がスタンパー1として機能する。
【0016】
次に、製造システム41を用いてスタンパー1を形成する工程について、図面を参照して説明する。
【0017】
最初に、マスタースタンパー製造装置42を用いてマスタースタンパー2を製造する。このマスタースタンパー2の製造工程では、まず、フォトレジスト層形成装置51が、ガラス基材21(図3参照)の表面にフォトレジスト材(一例として、日本ゼオン(株)製のDVR100)をスピンコートする。次に、フォトレジスト層形成装置51は、ベーキングによってフォトレジスト材の残留溶剤を蒸発させる。これにより、図3に示すように、ガラス基材21の表面にフォトレジスト層22が形成される。次に、露光装置52が、露光用のレーザービームLをフォトレジスト層22に照射すことにより、例えば形成ピッチが0.32μm程度で、幅が0.15μm程度の螺旋状の潜像を形成する。次いで、現像装置53が、この状態のフォトレジスト層22を現像する。これにより、図4に示すように、レーザービームLの照射部位が除去されてフォトレジスト層22に凹凸部が形成される。
【0018】
続いて、導電層付与装置54が、無電解めっき処理を施すことにより、図5に示すように、フォトレジスト層22におけるレジストパターンの表面に導電性を有する無電解ニッケル層23(導電層)を形成する。これにより、フォトレジスト層22の表面が導電性を有することとなる。この場合、フォトレジスト層22の表面に導電性を付与するための導電層の形成用素材はニッケルに限定されず、各種金属材料を用いることができる。また、導電層の形成方法は無電解めっき処理に限定されず、蒸着法やスパッタ法などの各種成膜方法によって各種金属材料層(例えば、ニッケル層)を形成してもよい。次いで、金属層形成装置55が、無電解ニッケル層23を電極として使用して電解めっき処理を施すことにより、同図に示すように、無電解ニッケル層23の上に電解ニッケル層24を形成(積層)する。この場合、両ニッケル層23,24からなる積層体が、後にマスタースタンパー2を構成する。続いて、両ニッケル層23,24からなる積層体をフォトレジスト層22(ガラス基材21)から剥離する。具体的には、フォトレジスト層22および両ニッケル層23,24が形成されているガラス基材21全体に水(純粋)をシャワー状に掛け流す。この場合、これらが電解めっきによって例えば50度程度まで温度上昇しているため、水の掛け流しによってこれらがそれぞれ温度低下して収縮する。この際に、フォトレジスト材、ニッケルおよびガラスの収縮率(熱膨張率)が互いに異なるため、両ニッケル層23,24からなる積層体とフォトレジスト層22(ガラス基材21)との間に隙間が生じて、両ニッケル層23,24からなる積層体がフォトレジスト層22から剥離する。これにより、図6に示すように、その表面にフォトレジスト層22の凹凸部の凹凸形状が反転した状態で転写された両ニッケル層23,24からなるマスタースタンパー2が製造される。
【0019】
次に、スタンパー製造装置43を用いてスタンパー1を製造する。このスタンパー1の製造工程では、まず、浸漬洗浄装置61が、例えば20質量%の水酸化ナトリウム水溶液にマスタースタンパー2を例えば3分間浸漬する。この場合、浸漬洗浄装置61は、電解用の電圧を印加する(電流を流す)ことなく(非通電状態で)マスタースタンパー2を浸漬する。この際に、水酸化ナトリウム水溶液の洗浄作用により、マスタースタンパー2における凹凸部の汚れ等が微細なものまで十分に除去される。なお、水酸化ナトリウムの濃度は20質量%に限定されず任意の濃度に規定することができる。この場合、水酸化ナトリウム水溶液の濃度に応じた適正な時間だけマスタースタンパー2を浸漬するのが好ましい。また、水酸化ナトリウム水溶液に代えて、水酸化カリウム水溶液を用いることもできる。
【0020】
次いで、超音波洗浄装置62が、浸漬洗浄後のマスタースタンパー2を界面活性剤が添加された洗浄水に浸して、その状態で超音波を印加することによって超音波洗浄する。これにより、汚れ等がさらに十分に除去される。続いて、酸化処理装置63が、酸化処理液としての例えば過マンガン酸カリウム水溶液に超音波洗浄後のマスタースタンパー2を浸して酸化処理を行う。この際に、過マンガン酸カリウム水溶液によってマスタースタンパー2における凹凸部の表面が酸化されて、その表面に酸化皮膜が形成される。この場合、この酸化皮膜が形成されたことにより、後にマスタースタンパー2の凹凸部の表面に形成される電解ニッケル層11の剥離処理が容易となる。次に、金属層形成装置64が、図7に示すように、酸化処理後のマスタースタンパー2に電解めっき処理を施すことによりその凹凸部の表面に電解ニッケル層11を形成する。次いで、マスタースタンパー2の表面に形成された電解ニッケル層11をマスタースタンパー2から剥離する。具体的には、マスタースタンパー2における凹凸部の表面と、電解ニッケル層11との境目に例えば刃物の刃先を挿入する。この際に、マスタースタンパー2の凹凸部の表面に酸化皮膜が形成されているため、電解ニッケル層11は、マスタースタンパー2から容易に剥離する。この場合、剥離装置等を用いて電解ニッケル層11の剥離作業を自動化してもよい。これにより、図1に示すように、その表面にマスタースタンパー2の凹凸部の凹凸形状が反転した状態で転写された電解ニッケル層11からなるスタンパー1が製造される。この場合、マスタースタンパー2における凹凸部の表面の汚れ等が十分に除去されているため、スタンパー1の凹凸部の表面が十分に平滑な状態に形成される。
【0021】
次に、スタンパー1を使用して情報記録媒体用のディスク基材を製造する。この際には、スタンパー1をセットした射出成形用の金型に例えばポリカーボネート等の樹脂を射出する。これにより、スタンパー1の凹凸部が樹脂に転写されることによってその表面にグルーブおよびランドが形成されて、ディスク基材が製造される。この場合、スタンパー1の凹凸部の表面が十分に平滑な状態に形成されているため、ディスク基材は、そのグルーブおよびランドの表面が、十分に平滑な状態に形成される。したがって、このディスク基材を用いた情報記録媒体(例えばブルーレイディスク)において、読み出し用レーザービームの照射時に反射した光に含まれるノイズが十分に低減される結果、情報記録媒体から高いC/N比で記録データを読み出すことができる。
【0022】
なお、スタンパー1、および従来のスタンパー製造方法によって製造したスタンパー71(図9参照)の凹凸部を走査電子顕微鏡で観察した。この結果、図8に示すように、スタンパー1の凹凸部には、汚れ等に起因すると思われる模様や影が視認されなかった。一方、図9に示すように、スタンパー71では、その凹凸部における凹部71aに汚れ等に起因すると思われる斑点状の模様が視認された。
【0023】
また、スタンパー1を使用して作製したディスク基材を用いた情報記録媒体のグルーブにデータ読み出し用レーザービームを照射して反射光に含まれているノイズ量を測定した。さらに、従来のスタンパー製造方法によって製造したスタンパー71を使用して作製したディスク基材を用いた情報記録媒体に対しても、同様にして反射光のノイズを測定した。この結果、図10の特性Aが示すように、スタンパー1を使用して作製した情報記録媒体のノイズ量は、スタンパー71を使用して作製した情報記録媒体のノイズ量(同図の特性B)と比較して、15MHz以下の低い周波数帯において最大で2dB程度小さかった。以上の結果から、超音波洗浄に先立って浸漬洗浄を行って製造したスタンパー1を使用することにより、照射したレーザービームの反射光に含まれるノイズ量を低減し得る情報記録媒体用のディスク基材を作製できるのが明らかである。
【0024】
このように、このスタンパー製造方法およびスタンパー製造装置43によれば、マスタースタンパー2をアルカリ溶液に浸して浸漬洗浄した後に超音波洗浄し、超音波洗浄したマスタースタンパー2の凹凸部の表面を酸化処理した後に電解ニッケル層11を形成し、その電解ニッケル層11をマスタースタンパー2から剥離してスタンパー1を製造することにより、マスタースタンパー2における凹凸部の表面の汚れ等を十分に除去することができるため、その凹凸部の表面が十分に平滑なスタンパー1を製造することができる。したがって、スタンパー1を使用して情報記録媒体のディスク基材を作製した際に、グルーブおよびランドの表面を十分に平滑に形成することができるため、このディスク基材を用いた情報記録媒体において、照射したレーザービームの反射光に含まれるノイズを十分に低減させることができる結果、再生エラーの発生を十分に防止することができる。
【0025】
また、洗浄作用に優れた水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液をアルカリ水溶液として用いることにより、マスタースタンパー2における凹凸部の表面の汚れ等をより十分に除去することができる。
【0026】
なお、本発明は、上記した発明の実施の形態に限定されない、例えば上記した発明の実施の形態では、スタンパー1を使用して情報記録媒体用のディスク基材を作製する例について説明したが、スタンパー1をマスタースタンパー(マザースタンパー)として使用して上記した製造方法と同様にしてスタンパー1の凹凸部の凹凸形状を転写したスタンパー(チャイルドスタンパー)を製造することもできる。この場合、スタンパー1をアルカリ溶液に浸して浸漬洗浄することにより、スタンパー1における凹凸部の表面の汚れ等を十分に除去することができるため、その凹凸部の表面が十分に平滑なスタンパー(チャイルドスタンパー)を製造することができる。また、上記した発明の実施の形態では、アルカリ水溶液としてNaOH水溶液またはKOH水溶液を用いる例について説明したが、他のアルカリ水溶液を用いることもできる。また、上記した発明の実施の形態では、情報記録媒体としてブルーレイディスク作製用のスタンパー1を製造する例について説明したが、CD、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RおよびDVD−RWなどの各種情報記録媒体(光記録媒体)用のディスク基材を作製するためのスタンパーを製造することができる。さらに、所定の配列ピッチで互いに分離された同心円状のデータ記録用トラックが数多く形成されたディスクリートトラック型の記録媒体などの磁気記録媒体を作製するためのスタンパーを製造することもできる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るスタンパー製造方法およびスタンパー製造方法によれば、その表面に凹凸部が形成された原盤をアルカリ溶液に浸して浸漬洗浄した後に超音波洗浄し、超音波洗浄した原盤の凹凸部の表面を酸化処理した後に金属層を形成し、その金属層を原盤から剥離してスタンパーを製造することにより、原盤における凹凸部の表面の汚れ等を十分に除去することができるため、その凹凸部の表面が十分に平滑なスタンパーを製造することができる。したがって、そのスタンパーを使用して情報記録媒体用基材を作製した際に、グルーブおよびランドの表面を十分に平滑に形成することができるため、この情報記録媒体用基材を用いた情報記録媒体において、照射したレーザービームの反射光に含まれるノイズを十分に低減させることができる結果、エラーの発生を防止することができる。
【0028】
また、本発明に係るレジストパターン形成方法によれば、洗浄作用に優れた水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液をアルカリ水溶液として用いることにより、原盤における凹凸部の表面の汚れ等をより十分に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るスタンパー1の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るスタンパーの製造システム41の構成を示すブロック図である。
【図3】ガラス基材21の表面に形成したフォトレジスト層22に露光用のレーザービームLを照射している状態の断面図である。
【図4】フォトレジスト層22に凹凸部を形成した状態の断面図である。
【図5】フォトレジスト層22の凹凸部の表面に無電解ニッケル層23および電解ニッケル層24を形成した状態の断面図である。
【図6】マスタースタンパー2の断面図である。
【図7】マスタースタンパー2の凹凸部の表面に電解ニッケル層11を形成した状態の断面図である。
【図8】スタンパー1における凹凸部の表面を観察した観察図である。
【図9】従来のスタンパー71における凹凸部の表面を観察した観察図である。
【図10】スタンパー1およびスタンパー71を使用して作製したディスク基材を用いた各情報記録媒体にレーザービームを照射して、その反射光におけるノイズ量を測定した測定結果図である。
【符号の説明】
1 スタンパー
2 マスタースタンパー
11 電解ニッケル層
41 製造システム
42 マスタースタンパー製造装置
43 スタンパー製造装置
61 浸漬洗浄装置
62 超音波洗浄装置
63 酸化処理装置
64 金属層形成装置
Claims (3)
- その表面に凹凸部が形成された原盤をアルカリ水溶液に浸して非通電状態で浸漬洗浄し、当該浸漬洗浄した原盤を超音波洗浄し、当該超音波洗浄した原盤を酸化処理液に浸して前記凹凸部の表面を酸化処理し、当該酸化処理した前記凹凸部の表面に金属層を形成し、前記凹凸部の凹凸形状が転写された前記金属層を前記原盤から剥離することにより、情報記録媒体用基材を形成するための当該金属層からなるスタンパーを製造するスタンパー製造方法。
- 前記アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液を用いる請求項1記載のスタンパー製造方法。
- その表面に凹凸部が形成された原盤をアルカリ水溶液に浸して非通電状態で浸漬洗浄する浸漬洗浄装置と、前記浸漬洗浄した原盤を超音波洗浄する超音波洗浄装置と、前記超音波洗浄した原盤を酸化処理液に浸して前記凹凸部の表面を酸化処理する酸化処理装置と、前記酸化処理した前記凹凸部の表面に当該凹凸部の凹凸形状が転写されて情報記録媒体用基材を形成するためのスタンパーとして機能可能な金属層を形成する金属層形成装置とを備えているスタンパー製造装置。
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