JP2004287105A - 光スイッチと光スイッチを用いたファイバレーザ - Google Patents
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Abstract
【課題】活性イオンをファイバにドープしイオン準位励起を利用して反転分布を出現させレーザ発振させるファイバレーザ装置において、光スイッチをファイバで作る事ができず一端ファイバの外部へ光を出してオンオフし、それをまたファイバへ戻すようにしている。外部へ光を出してまた戻すようにするから光軸合わせが難しく高コストになってしまう。ファイバ型の光スイッチを提供することが目的である。
【解決手段】Er添加光ファイバにWDMを介して励起用LDを接続し励起用LDによってErイオンを励起できるようにする。励起用LDによってErイオンを励起して第1励起準位を充満させることによって発振光λoに対しErファイバを透明にする。それがオンということである。Erイオンが基底状態にあれば発振光λoは吸収されるからスイッチはオフとなる。
【選択図】図3
【解決手段】Er添加光ファイバにWDMを介して励起用LDを接続し励起用LDによってErイオンを励起できるようにする。励起用LDによってErイオンを励起して第1励起準位を充満させることによって発振光λoに対しErファイバを透明にする。それがオンということである。Erイオンが基底状態にあれば発振光λoは吸収されるからスイッチはオフとなる。
【選択図】図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光ファイバから光を外部に出すことなく光ファイバを伝搬する光を通過あるいは遮断できる新規な光スイッチ素子と、その光スイッチ素子を用いた、光ファイバ内に光を限定したQスイッチレーザおよび光ファイバ内に光を限定したモードロックレーザに関する。
【0002】
Er添加光ファイバ増幅器は光ファイバにErイオンをドープし、半導体レーザの光を励起光として用い、Erイオンの3準位を利用して、入射光を増幅するようにしたものである。Er添加光ファイバの増幅機能を利用して半導体レーザ励起によりレーザ発振させるようにしたものがファイバレーザである。
【0003】
コイル状のEr添加光ファイバとWDMと光スイッチとミラーとを共振空間をなすように組み合わせ、WDMから半導体レーザの光を導入し、光スイッチをオンオフすることによって発振・停止を繰り返すようになっている。レーザ媒質がバルクガラスの中にドープされていれば固体レーザであるが、ファイバにドープされているのでファイバレーザという。
【0004】
本発明はそのうち光スイッチを問題にする。光スイッチは音響光学素子を用い素子の両側に光ファイバの端部を斜めに接着しておき定在波を発生させ光を回折させることによって光路を曲げてポート間で光を交換できるようになっている。光ファイバからなる光スイッチは現在も存在しないので光スイッチを設けるためには一部光ファイバでない部分が生ずる。
【0005】
【従来の技術】
そのようにファイバレーザといってもEr添加光ファイバはファイバであるが、光スイッチの部分は光をファイバの外部に取り出して音響光学素子によって回折させてミラーと結合するようになっている。一旦光ファイバから外部に光を取り出し、ミラーで反射して再び光ファイバへ入れている。ファイバレーザと言っても、全部が光ファイバによって構成されているのではない。
【0006】
本発明は新規な光スイッチを用い、それによって全ファイバ型のレーザを提供しようとするものである。本発明の光スイッチは、Qスイッチ型のレーザやモードロックレーザへ適用することができる。
【0007】
【非特許文献1】
安尾浩行、石原朋浩、山口正義、西村正幸、「アイセーフ小型Qスイッチファイバレーザの開発」、1995年9月、住友電気、第147号、p41−45
【0008】
非特許文献1によって提案されたQスイッチ型光ファイバレーザの構造を図1に示す。
このレーザ光学系は、部分透過ミラー2、波長分波器(WDM:wavelength division multiplexer)3、Er添加光ファイバ4、音響光学セル6、全反射ミラー8、励起半導体レーザ(LD)9などよりなる。励起半導体レーザ(LD)9というのは一定波長λrの励起光を発生するレーザである。その光λrは光ファイバ22からWDM3を経てEr添加光ファイバ4の一端に入る。
【0009】
励起光λrの方がレーザ発振光λoより波長が短く(λr<λo)、LD9から励起光λrが光ファイバ光路へ入るためにWDM3が必要である。レーザ発振光λoは光ファイバの中を直進すべきであって、LD9の方へ分岐してはならない。そのために波長選択性をもつWDM3が用いられる。WDM3は励起光λrをEr添加ファイバ4の方に導き、反射された励起光λrを分岐ファイバ22に戻し、発振光λoを左右方向に通過させる。
【0010】
Er添加光ファイバ4は、石英中にEr3+のイオンが含まれた光ファイバである。それはf軌道に3個の電子が存在する。図8にEr3+のエネルギー準位を示す。フント規則でエネルギーの低いレベルでは、スピン最大、軌道角運動量最大となる。LSカプリングの係数kが負であるから、LとSが平行である方がエネルギーが低くなる。
【0011】
Er3+の基底状態g(S=3/2、L=6、J=15/2)は4I15/2である。励起状態として4I13/2の第1励起状態w(S=3/2、L=6、J=13/2)と第2励起状態v(S=3/2、L=5、J=13/2)、4I11/2の第3励起状態u(S=3/2、L=5、J=11/2)がある。左サフィックスの4はスピン多重度(2S+1)の値を示す。右下の半整数は全角運動量J(=L+S)の値を示す。kが負なのでLとSが平行に近いものがエネルギーが低く、J=15/2が最低エネルギー(基底)状態になる。J=13/2はそれに次いでエネルギーが低い。
【0012】
図8に示すように下の方の励起状態(S=3/2、L=5,6、J=13/2)が二つに分裂している。それを下から第1、第2励起状態w、vと呼ぶ。基底状態gと第1励起状態wのエネルギー差が1.53μm〜1.55μmに対応する。基底状態gと第2励起状態vのエネルギー差が1.48μmに対応する。第3励起状態uは0.98μmの波長のエネルギー差をもっている。だから、Er+3イオンは、1.48μmの光でも、0.98μmの光でも励起することができる。
【0013】
0.98μmのエネルギーの強い光によって励起すると基底状態のEr3+が第3励起状態(u)4I11/2まで上がる。それはΔL=1であって許容遷移である。それが直接に基底状態gまで下がってしまえばレーザ作用は起こらない。第3励起状態→第2励起状態は非発光遷移である。
【0014】
そのレベルは基底状態から波長1.48μmのエネルギー(0.83eV)高い。第2励起状態vから第1励起状態wへ緩和過程によって落ちる(非発光遷移)。そこでどんどんと第1励起状態wにEr3+がたまってゆくことになる。それがエネルギーの蓄積であり反転分布の形成ということである。反転分布というのは基底状態のイオン数よりも第1励起状態のイオン数の方が多くなったということである。どんどん第1励起状態のイオン数が増えてゆくとエネルギーが大量に蓄積されたということである。Qスイッチによって誘導放出させるとレーザ発振が起こり第1励起状態のイオンは基底状態gに戻る。
【0015】
励起光は0.98μm(1.26eV)に限らず、1.48μm(0.83eV)であってもよい。その場合は第2励起状態vへ直接に励起される。それが熱緩和によって第1励起状態wへ推移する。第1励起状態wのイオンが蓄積されるという点は同じである。本発明は1.48μmによる励起光を主に使う。そのように第1励起準位にイオンの状態を高めることをポンピングという。ポンピングをするのは図1の励起LD9である。それは1.48μmの光を出すレーザでWDM3を通りEr添加光ファイバ4へ入る。そこでErイオンの状態を基底状態gから第2励起状態vへ電子を励起する。それが第1励起準位wにたまる。
【0016】
Er添加光ファイバは石英中にEr3+イオンを分散させたものである。パルスレーザのパワーを大きくするためにはパルス幅を狭くする必要がある。そのためには短い長さにErを集中してドープするのがよい。ところが高濃度にErを添加するとイオン同士の遮蔽効果があり、かえって増幅率が減る。ドープできるErイオン濃度に限界がある。限界以下の濃度のErイオンを加え、しかも所望の増幅率を得なければならないのでEr添加光ファイバはかなりの長さのものが必要である。
【0017】
そのままであればポンピングによって励起状態のErイオンが増えるだけである。レーザ発振させるためにQスイッチを動作しなければならない。図1の装置では音響光学セル6を使っている。Qスイッチ5は音響光学素子6と変調器7の組み合わせになる。図9にその組み合わせの斜視図を示す。音響光学素子6(AO素子)の端面に圧電素子があり、それに適当な周波数の交流を掛けると弾性波が生じて端面から反対側の端面へと伝搬する。弾性波は粗密波であるから屈折率が周期的に変動する。音速をcとし周波数をfとすると音響光学素子にできる屈折率の周期的変化の空間周期はd=c/fとなる。
【0018】
光ファイバの終端のコリメータ10から出た光は音響光学セル6の側面に入射するが、弾性波が存在しないときはそのまま透過してしまう。その先に全反射ミラー8が傾けて置いてあるが直進した光はそれによって斜めに反射され光ファイバへ戻らない。だからQスイッチは起こらない。励起LD9によるEr添加光ファイバ4のポンピングが進むだけである。
【0019】
弾性波が存在するときは空間周期d=c/fの回折格子が存在することになる。それによって光ファイバ終端のコリメータ10から出た光は回折される。一次回折の方向(dsinθ=λ)に全反射ミラー8を設けている。回折された光は全反射ミラー8によって反射される。それはコリメータ10の端面に入りEr添加光ファイバ4の中へ戻る。
【0020】
その場合図1において、部分透過ミラーA、WDMB、光ファイバC、コリメータD、AO素子E、全反射ミラーFを結ぶ往復の光路が形成される。閉じ込められた光はABCDEFEDCBA…という往復運動をしErファイバの反転分布からエネルギーを得て増幅され位相のそろった光となる。それがレーザ発振である。位相の揃った発振光の一部が部分透過ミラー2を透過して外部へ出て行く。Er添加光ファイバのうちの全ての反転分布がなくなるまでレーザ発振が持続する。それは短い時間で消滅する。
【0021】
非特許文献1はそのように励起LDによってErファイバに反転分布を形成し、変調器によってQスイッチ動作をさせて強いパワーのパルスレーザ発振を起こさせている。
【0022】
3000ppmのErイオンを添加した3mのEr添加石英光ファイバを用い、発振波長1.48μmの半導体レーザを励起レーザとして使用し、1.53μm〜1.55μmをマルチモード発振させた。繰り返し周波数2kHz以下で、ピークパワーが400W以上で、20nsのパルス幅(半値幅)のパルスレーザ発振が実現した。装置の寸法は120mm×90mm×35mmであり、小型の装置となった、と非特許文献1は述べている。
【0023】
【特許文献1】
特開平7−231131号「光ファイバレーザ装置」(特願平6−41851号)
【0024】
これはEr添加光ファイバを用いたレーザであるが反射ミラーを省いたものである。Er添加光ファイバの光路をループ状としてその一箇所に光スイッチを設けQスイッチ動作させている。スイッチが開いているときは開ループとなるのでレーザ発振は起こらない。光スイッチが閉じているときは閉ループとなり光は何回もループを廻り得るので反転準位からエネルギーを吸収して発振することができる。
【0025】
リングレーザと同じ形式であるが光スイッチの部分はやはり音響光学素子を使っており音響光学素子の上に超音波を発生させ光ファイバから出た光を回折させて、もう一方の光ファイバ端へと接続するようにしている。だからこれも全体が光ファイバであるのではなくて、光スイッチの部分が音響光学素子であり一部に光ファイバから自由空間へ光を出している。だから軸合わせの難しさがある。
【0026】
次にモードロックファイバレーザについて述べる。これもミラーによる反射のために光スイッチが使われるので同様の問題がある。気体レーザでモードロックレーザ自体はよく知られている。モードロックErファイバレーザというのは別段存在しないが原理からその構成を考える事ができる。
【0027】
それを図2に示す。Er添加光ファイバ4の左端にはWDM3がありWDM3によって励起LD9から励起光を導入できる。その前方には遅延ファイバ31があり、その前に部分透過ミラー2がある。Er添加光ファイバ4の後方には端部32があって、そこから光が外部空間へ出るようになっている。その光路の途中に光スイッチ33があり、光スイッチ33のさらに後方にミラー8があって光を反射することができる。周波数シンセサイザ34が光スイッチ33を開閉することができる。
【0028】
モードロックされたパルス光が出力される周期Tは、T=2L/cによって与えられる。ここでLは共振器長、cは光速である。遅延ファイバ31の長さを調節して任意の周期に設定することができる。光スイッチの開閉の周期はシンセサイザ34によって自由に変化させることができる。適当な周期で光スイッチを開閉して、特定の周波数f=m/T (mは自然数)だけのモードロック発振させることができる。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
上に述べたQスイッチErファイバレーザは、音響光学素子を使い瞬間的に光を回折させ光路を変えて全反射ミラーで反射させ光ファイバへ戻すようにしてQスイッチ動作をさせている。音響光学素子により光路を切り換えミラーで反射させるのは巧みな方法であるが、一旦光ファイバの外部に光を出してしまい、自由空間中にあるミラーに反射させて、また細い光ファイバへ戻すという難しい手法である。
【0030】
実際にはコリメータによって平行光を広げて音響光学素子に当て、ミラーからの平行光をコリメータによって光ファイバ端へ収束させるようにしているが、それでも軸合わせが難しくてなかなか反射された光が光ファイバへ戻らない。レーザ発振させるためには光路を何度も往復しなければならない。スイッチが機能しているときの光軸が厳密に一致していなければならない。もしも光軸が僅かな角度でもずれた場合、光は光ファイバへ100%戻る事ができない。
【0031】
コリメータがあっても自由空間を伝搬する光をなかなか光ファイバ端に戻すことができない。1往復することによって得られるゲインよりも軸ズレによる損失が大きいと最早レーザ発振しない。その軸合わせが極めて難しくて調整が難しい。練達の作業者が手作業で軸合わせをするが、それが何時間もかかる。困難な手作業となる。それが製造コストを押し上げる。また部品の関係を固定しておいても温度変化や衝撃などによって回折の方向が変わり反射ミラーに入射するスポット位置も変わり、反射光が光ファイバに結合しなくなる。それによってレーザ発振パワーが低下したり、レーザ発振しなくなることがある。そのように一旦ビームを外部に出してスイッチングするので軸合わせ調整が困難でコスト高になるという難点がある。
【0032】
それは特許文献1のリング型のファイバレーザでも同じことである。光ファイバから一旦光を自由空間へ出し回折させて他端へ入射させるのだから、それは難しい軸合わせを必要とする。たとえ出荷時は軸が合っていても経年変化、温度変化によって狂いが生ずることもある。
【0033】
それらは光スイッチが光を一旦外部に出し外部の音響光学素子などで回折させ光路を曲げることによって光路を開閉するから起こる欠点である。つまり光スイッチが光ファイバの外部にあるのが問題なのである。光スイッチが光ファイバによってできていないのでいけない。
【0034】
もしも光スイッチも光ファイバの中に納めることができれば、そのような軸合わせの困難はない。光ファイバ内に光スイッチを形成できれば、そのような軸合わせの問題は全て解決する。経年変化による軸ずれの問題も起こらない。光ファイバ内部で光の進行を遮断、許容できればまことに都合が良い。つまり「ファイバ光スイッチ」というようなものがあれば良い。それがあれば先述のQスイッチファイバレーザでも全部をファイバ化することができる。先述のモードロックファイバレーザも全ファイバ型のものを簡単に構成することができる。
【0035】
しかし光ファイバの中を通過する光を止めたり通過したりするというようなことは簡単にはできない。光ファイバに圧力を掛けても光の伝搬の状態は殆ど変わらない。光ファイバを加熱しても光の伝搬状況は変わらない。光ファイバを薬品につけても内部を通る光の状態には影響しない。光ファイバを過度に曲げると放射モードになって伝搬光が外部へ出て行くし、まっすぐにすると伝搬するというようにはできる。が、光ファイバを曲げることは寿命を短くし望ましいことではない。
【0036】
そもそも光ファイバは化学的にも強くて、電磁力の影響も受けないし物理的な圧力にも殆ど不感であり安定した媒体である。だから光ファイバ自体に光スイッチを形成するというようなことは難しい。光ファイバに内蔵された光スイッチというものはこれまでになかった。そのようなことは光ファイバの安定した性質からしても無理な事だと誰もが考えている。
【0037】
光ファイバの内部を通過する光を停止あるいは透過させることができる光ファイバ型の光スイッチを提供する事が本発明の第1の目的である。光ファイバ型の光スイッチを使ってQスイッチ型ファイバレーザを提供することが本発明の第2の目的である。光ファイバ型の光スイッチを使ってモードロック型光ファイバレーザを提供することが本発明の第3の目的である。つまり本発明で提供しようとするものは、空間出射を必要としない光スイッチと、それを用いた全てをインラインで構成するファイバレーザである。
【0038】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Er添加光ファイバにWDMによって励起LDから励起光を与えることによって光路を開き、励起LDからの励起光を断つことによって光路を閉じるようにした光ファイバ型の光スイッチを提案する。Er添加光ファイバは1.48μmによって第2励起準位に電子励起し、それが第1励起準位に落ちて反転分布を形成するものであるが、それを励起用LDを使って光スイッチに応用したのが本発明である。
【0039】
本発明の光スイッチの装置を図3に示す。Er添加光ファイバ24と励起用半導体レーザ(LD)29、WDM(Wavelength Division Multiplexer)23、変調器30を含む系の全体が光スイッチとなっている。ファイバ経路G、H、J、M、Kが光スイッチの経路となり光を一旦外部へ出す必要がなく光ファイバ内に閉じ込めることができる。
【0040】
変調器30によって励起用LD29を発振させると、それはλr=1.48μmの励起光を発生する。励起光λrはN、WDM23、J、Mという経路を通りEr添加光ファイバ24に入る。それはErの基底状態の電子を第2励起状態へ上げる。それはすぐに第1励起状態に落ちる。励起光λrがあると第1励起状態が電子で満ちる。励起用LDが発振しないときはλrがないので、Erファイバ24のErイオンの第1励起状態は空である。全部のErイオンは基底状態にある。そのように励起用LD29の動作、非動作によって第1励起状態を充填するか空にするかという2状態を切り換える。
【0041】
それは、音響光学素子と変調器の組み合わせになるものとは大いに違う。それは第1に、光の光路を変化させてQスイッチを行うのではない。光路自体は変わらない。第2に、自由空間に一旦光を出してオン・オフし、光ファイバへ収束させるというものではない。だから自由空間へ出して戻す時のような軸合わせの困難がない。本発明で提案するものは、スイッチという概念からかなり離れ得たものであり少し理解しにくいものである。
【0042】
本発明のファイバ型光スイッチは、図1のEr添加光ファイバ4の先端を図3のG点に接続して用いるようなスイッチである。G点からの光はWDM23を通りEr添加光ファイバ24を通過して、K点に出て行く。図3はスイッチの部分だけを図示しているが、K点の背後にはミラーの部分がある。自由空間へ光を出してはなんにもならないからミラー作用も光ファイバによって担うようになっている。ミラーについては後に説明する。
【0043】
LD29は励起光(λr=1.48μm)を発生し、それがEr添加光ファイバのErイオンを励起して反転分布を発生させる。
それがどうしてスイッチ作用を行うのか?。LD29によって励起光を入れるとEr添加ファイバ24に反転分布が生じているので、G点から入ってきた光は吸収されずにErファイバ24を通過することができる。つまりEr添加ファイバは単に透明の光ファイバとして機能する。
【0044】
ところがLD29の励起光λrを断つと、Er添加ファイバは吸収性をもつ。Erは光を吸収するのでG点からの光はEr添加ファイバで吸収される。つまりそのまま透過することができないので、それはスイッチオフだということである。 つまりEr添加ファイバの吸収状態、飽和状態を切り換えることによって光をスイッチするような方式となっているのである。
【0045】
図1に示すような光路を変えるようなスイッチとは全く違う。Er添加ファイバを吸収状態にするか、飽和状態にするかによってスイッチをオン、オフするという斬新なアイデアによるスイッチである。
【0046】
図4のようにEr添加光ファイバ4、24を二重に用いるから、図1のポンピング機構を二つ並べただけのような感じもする。レーザ部分を二つ直列に接続したように見える。
【0047】
しかしそうではない。Er添加光ファイバやLDの作用は両者で異なっている。まずレーザ用のEr添加光ファイバ4と、スイッチ用のEr添加光ファイバ24を区別しなければならない。さらにレーザ準位のポンピングに使うLD9と、スイッチ用Er添加光ファイバを励起するためのLD29を峻別しなければならない。
【0048】
まず最初に挙がる疑問は、レーザ用のLD9によってスイッチ用Er添加光ファイバ24が励起されるとすれば、単にEr添加光ファイバの長さが長くなっただけであり全部のErイオンについて反転分布が生成されるのに要する時間が長くなっただけではないか?ということであろう。もしもそうであればLD9によるポンピングが進行すると、いつしかスイッチ部のEr添加光ファイバ24も飽和して光が通るようになる。それは緩慢に起こるのでスイッチングを引き起こす事ができないだろう、と思われる。
【0049】
それが最も大きい疑問であろう。レーザ用Er添加光ファイバ4の長さをL1、スイッチ用Er添加光ファイバ24の長さをL2とすると、単にEr添加光ファイバの長さをL1+L2に延長しただけではないか?というものである。しかしそうではない。WDMがあるから初めの励起用LD9は後ろのEr添加光ファイバ24まで行かない。だから初段のLD9が2段目のファイバ24を励起することはないのである。
【0050】
WDM23において二つの入力ファイバH、Nと二つの出力ファイバJ、Lがある。それは波長選択性をもつ入力、出力ファイバである。出力と入力は交代するからH、N、J、Lを単に端子と呼ぶことにしよう。H端子にレーザ発振波長λoが入力されると、出力Jにλoが出て行く。N入力に励起波長λrを入力すると、出力Jにλrが出て行く。反対にJ端子からλoが左向きに入ると、それはWDM23を通り抜けてH端子に出て行くことができる。つまりλoはH→J、J→Hという相反性をもち、λrはN→J、J→Nというような相反性をもつ。
【0051】
励起用LD9の励起光λrはWDM3で初段のEr添加光ファイバ4に導入されイオンを励起状態にする。残りの励起光λrがあって次のWDM23の端子Hに到ったとしても励起光λrは空端子Lへ出てしまう(H→L)。だから余分の励起光λrが第2ファイバのイオンを励起するということはない。対象となるより長波長のλoはH→Jとなる。つまり初段の励起用レーザLD9からの励起光λrはWDM23によって遮られ、2段目のEr添加光ファイバ24に到らない。だから初段レーザLD9から見て、単にEr添加光ファイバの長さがL1からL1+L2になったという訳ではない。
【0052】
もう一つの疑問があろう。それはより根元的なものである。図3の光スイッチは、励起用LD29によって第2のEr添加光ファイバ24へ励起光λrを注入すると、イオン状態を第2励起状態vから第1励起状態wへと遷移させ、第1励起状態wにあるイオンが殆ど優勢になり基底状態gのイオンの数が減少するというオン状態と、そうでないオフ状態を作り出している。
【0053】
Erイオンのうち基底状態の数をNgとし、第1励起状態にある数をNwとする。Ng+Nw+Ne=N0である。N0は全Erイオンの数である。Neはその他の励起状態にある数である。Neは数が少ないのでここでは無視する。
【0054】
オン状態というのは、LDが動作しており、第1励起状態wが優勢で基底状態gが少ないというものである。つまり反転準位が出現している。だからNw>Ngがオン状態ということである。それは基底状態(準位)gが殆ど空に近いということである。
【0055】
オフ状態というのはLDが非動作であり、イオンは殆ど基底状態gにある。だからNw<Ngがオフ状態だということである。それは第1励起準位wが空に近いということである。
【0056】
そのような2状態は、エネルギーの高い励起光λrに対しては明確な選択性がある筈である。
(1) 基底準位が殆ど空である状態(オン)に励起光λrが入っても電子励起できない。だから吸収されないでそのままファイバを通過できる。つまり励起光λrに対してはオンだということは明白である。
(2) 基底状態がたくさん存在している状態(オフ)に励起光λrが入ると電子励起できるからどんどんエネルギーが吸い取られる。つまり励起光が吸収される。その状態は励起光に対してはオフ動作する、それは明白である。
【0057】
ところが本発明では励起光λrに対する選択性を主張しているのではない。そうでなくて励起光よりもエネルギーの低い(長波長の)対象光(レーザ発振光)λoに対して、そのような2状態がやはり経路をオン・オフする作用があると主張しているのである。それはどういうことか?
【0058】
エネルギーのより低い対象光(レーザ発振光)λoに対し、前記の(1)のオンの状態は同様によく理解できる。つまり、基底状態が殆ど空である(オン)状態で対象光λoがそのままファイバを透過する、というのは当然である。λoがそのイオンを励起できないからである。
【0059】
しかし反対の(2)の場合に、対象光λoが光ファイバに吸収されオフとなるのか?というのは疑問であろう。対象光λoのエネルギーは、基底準位gと第1励起状態のエネルギー差(Ew−Eg)と同一だからである。つまりEw−Eg=hc/λoである。ここでhはプランク定数、cは真空中での光速である。つまり対象光(発振光)から見ると、基底準位gと第1励起準位wのエネルギー差は共鳴準位だということができる。共鳴準位にある二つのレベルに丁度エネルギーが等しい光が大量に照射されるのだから対象光はそれによって吸収される。
【0060】
また第1励起準位から光の放出もおこる。吸収の方が優勢となるので、結局対象光λoは減衰する。Nwが0から幾分増えるが、それもやがて消えてしまう。だから、λo=hc/(Ew−Eg)の対象光に対しても、空の第1励起準位、充満した基底準位という組み合わせは遮断作用をもつのである。
【0061】
反転準位が発生するためには、基底準位gに最も近い第1励起準位wは安定でなくてはならない。それはつまりg・w間が禁制遷移であるか、そうでなくても遷移確率が小さいということである。
【0062】
そうであって初めて反転分布が成り立つ。そうであれば丁度共鳴エネルギーに等しい光が夥しく外部から入射すればg→wの遷移が強制的に起こるが、反対にw→gの遷移はなかなか起こらないものである。だから丁度エネルギー差に等しい波長をもつ対象光(発振光)λo=hc/(Ew−Eg)に対し、基底準位gと第1励起準位wの組み合わせが光スイッチとして機能するのである。本発明はレーザ作用の機序に対する深い省察によって初めてなされたものである。類例を見ない光スイッチである。光ファイバ内部での光スイッチだから全ファイバ型の装置をそれによって作り出すことができる。
【0063】
【発明の実施の形態】
[1.Qスイッチ型ファイバレーザへの適用]
図4に本発明をQスイッチ型ファイバレーザに適用した場合の構成図を示す。大別して3つの部分からなる。左端は図1にも示したErレーザの部分であり、中間部は図3で述べたスイッチの部分である。右端が反射ミラーに代わるループミラーである。初めに述べたように従来例(図1)は光を一旦空間に出し、それを反射ミラーで反射してファイバへ戻すので反射ミラーの軸合わせが難しいという欠点をもっていると述べた。だから反射ミラーを工夫改善しなければならない。
【0064】
本発明では光を自由空間に出すことなく方向を反転させるようにしたい。そこでミラーとはかけ離れた素子で光の方向を反転させることを考える。
そのように反射ミラーの代わりとして本発明者が考えついたものがループを利用した反転素子である。ここでは作用に着眼してループミラーと呼ぶことにする。それが図4のループミラー26である。1ターンでも数十ターンのコイル状でもよいのであるが、カプラ25の両端に続くような閉じたファイバループをミラーとして用いる。このカプラ25は入力2端子O、P、出力2端子Q、Rをもつ。その出力の2端子Q、Rにループの両端がつながっている。先述のスイッチ機構の終端Kはカプラの入力Oにつながっている。
【0065】
ループミラーの原理については後に詳しく述べる。
レーザ動作についてまず述べる。左端のレーザ部分では励起用LD9が連続励起光λr(例えば1.48μm)を発生しており、それが端子VからWDM3を透過し端子Bに出て第1Er添加ファイバ4のErイオンを励起して4I13/2の第1励起状態に上げ反転分布を形成する。そのようなポンピングは連続して行われる。先述のように余剰の励起光λrがあっても2番目のWDM23の端子Hに行くのでWDM23でせき止められて第2のEr添加光ファイバ24には行かない。スイッチ部でのLD29は繰り返し周波数fで瞬時にオンになり、それ以外の時間はオフとなる。
【0066】
変調器30がLD29を駆動せず、LD29がオフである場合、第2Er添加光ファイバ24は非励起だから反転分布がなく、レーザ光波長λoに対しては第2Er添加光ファイバ24は吸収体として機能する。だからλoのエネルギーはEr添加ファイバ24に吸収されて透過することができない。つまりレーザ発振が起こらずポンピングだけが起こる。
【0067】
繰り返し周波数fで瞬時にLD29が駆動される。LD29が励起光λrを発生すると、それは第2WDM23を端子Nから通過することができ、第2Er添加光ファイバ24に入る。基底状態にあったErイオンが第2励起状態(或いは第3励起状態)に上げられ、第1励起状態に落ちて反転分布を作る。第2Er添加ファイバがそのようにして飽和すると、レーザ発振光λoに対する吸収がなくなる。
【0068】
つまり第2Er添加光ファイバ24は吸収のないファイバとなりλoをそのまま透過する。それがスイッチオンだということである。スイッチオンとなりλoが第2Er添加光ファイバ24を通過できるようになると、それはループミラー26に入ってそれぞれループをめぐり反対側の端子Q、Rから反対向きの光となって光路を逆戻りしてくる。それは飽和した第1Er添加光ファイバ4、第2Er添加光ファイバ24の反転分布を震わせ第1励起状態から基底状態への遷移を同期して起こさせ誘導放出を促す。それによって位相の揃ったλoが発生する。左端の部分透過ミラーAと、右端のループミラー26が左右の共振器を形成する。
【0069】
λoはAUBCGHJMKOQROKMJHGCBUA、AUBCGHJMKORQOKMJHGCBUAというように往復反射されEr添加光ファイバの励起準位から基底準位への遷移によりパワーを得て増幅される。一部は部分透過ミラーAから左方へ出て行く。つまりパルスレーザ光が発生したということである。全ての反転準位がなくなるとレーザ光は消失する。そのときはすでにLD29はオフになっている。再びLD9によるポンピングによって第1Er添加光ファイバ4において励起が起こる。以下同様に繰り返し周波数fでパルス発振が起こる。
【0070】
ここでループミラーの原理は以下の通りである。
図5のような2×2分岐(O、P、Q、R)のファイバカプラにおいて、図6のようにQポートとRポートを結合し、またO:P(Q:R)の分岐比をf:(1−f)とすると、Oから入射した光Lがループを廻ってOポート、Pポートのそれぞれに出力される光の強度LO、LPは以下のようになる。
【0071】
LO=(−4f2+4f)L、 LP=(4f2−4f+1)L
fに対してLOとLPの比率を下表に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
上の表の通り、fの値を0.5にするとLO=1となる。だからf=0.5として全反射ミラーをファイバループによって構成することができる。すなわち、50:50の分岐比のカプラを用いると、100%の反射ミラーを形成できる。それによってミラーをもファイバにすることができる。従来例は、光スイッチとミラーが外部に出ていたので軸合わせという困難な問題が発生したが、本発明はファイバ光スイッチとファイバミラーを使って全ファイバ型のレーザを作ることができるのである。つまりQスイッチ型ファイバレーザの構成図のように、光スイッチ部に今回の発明品を用い反射ミラー部にループミラーを用いることによって、共振器内に空間出射部(電気光学素子など)を持たないQスイッチ型ファイバレーザを構成できる。
【0074】
[2.モードロック型ファイバレーザへの適用]
モードロック型レーザについては図2によって既に説明した。図7に示すように本発明の光スイッチはモードロック型のレーザにも適用することができる。
【0075】
遅延ファイバ31の先端Yには部分透過ミラー2が設けられる。遅延ファイバ31の後端はWDM3の左側のUに接続される。励起LD9がWDM3の左側のVに接続される。WDM3の右側のWは空端子である。WDM3の右側のBはEr添加光ファイバ4に接続される。そのような構造は図2に示したものと同様である。本発明の光スイッチをEr添加光ファイバ4の後ろに接続する。光スイッチは図3に示したものと同じである。光ファイバ光路GHの先にWDM23があり、その先にEr添加光ファイバ24が接続される。GHJMKが主な光路となる。側方のファイバの先に励起用LD29があって、それがN点でWDM23の他端に入力している。励起用LD29は変調器30によって任意の繰り返し周期、パルス幅で駆動・停止できるようになっている。
【0076】
光スイッチの終りの端子Kに、ループミラーが接続される。それはループミラー26とカプラ25とからなる。Kからカプラ25へ入った光は、Qへfの割合で、Rへ(1−f)の割合で分配される。それが時計廻り、反時計廻りにループを廻り、一部は空端子Pへ、残りは元の端子Kへと抜ける。f=0.5の場合は空端子Pへの出力は0になり光路上の端子Kの出力が100%となる。
【0077】
励起用LD29がオフであると、光スイッチのEr添加光ファイバ24は第1励起準位wが空になっている。それが発振波長λoを吸収する。つまりそれは光スイッチがオフだということである。励起用LD29がオンであると、光スイッチのEr添加光ファイバ24の第1励起準位wが満たされる。もはや発振波長λoを吸収できない。つまりEr添加光ファイバ23が発振波長λoに対して透明になったということである。だから、それは光スイッチがオンだということである。その場合、前方の部分透過ミラー2からループミラー26にいたる経路YSUBCGHJMKOQRが発振光に対し透明になり両端に反射ミラーが存在し共振器を構成するということである。その場合はLD9によってEr添加光ファイバ4を励起することによってレーザ発振を起こすようにすることができる。
【0078】
図2のものと同じように、図7の構成に関してモードロックの出力周波数は
T=2L/c T:周期、L:共振器長、c:光速
となり、遅延ファイバの長さを調節して、任意の周期に設定できる。
【0079】
また光スイッチのオンタイミングの周期をモードロックの出力周期と等しくなるように周波数シンセサイザにて光スイッチのオン周期を調節することにより、その周波数に対応した周波数(f=m×1/T、m:自然数)のレーザ光のみをモードロック発振する。
【0080】
【発明の効果】
Er添加光ファイバは強い光増幅作用があるのでファイバレーザを構成することができる。しかしQスイッチするための部分は音響光学素子などを使い、光を一端ファイバの外部へ出してしまう。それをまた光ファイバへ入れる必要がある。レンズを使っても細いファイバコアに光を完全に入力させるのは難しくて軸合わせに時間がかかる。それは製造コストを押し上げる。それに経年変化によって軸ズレが起こるという可能性もある。ファイバレーザであるから全体がファイバによって構成されるのが望ましい。本発明はファイバ自体によるスイッチとしているので、ファイバレーザ系の光スイッチとして最適である。光を外部に出す必要はなくファイバ内で光を遮断したり透過させたりすることができる。だから外部の素子との軸合わせのような作業は不要になる。それが製造を容易にしコストを下げるという効果がある。また部品点数も削減されるから部品コストも低減される。経年変化によって軸がずれるという恐れもない。長寿命で安定した性能をもつファイバレーザを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】安尾浩行、石原朋浩、山口正義、西村正幸、「アイセーフ小型Qスイッチファイバレーザの開発」、1995年9月、住友電気、第147号、p41−45によって提案されたQスイッチEr添加ファイバレーザの構成図。
【図2】Er添加光ファイバと励起LDと遅延ファイバを用いたモードロック型ファイバレーザの仮想的な構成図。
【図3】Er添加光ファイバにWDMをつなぎ励起用LDから励起光を導入することによってErイオンを励起して発振光λoに対しファイバを透明とし、励起光がないときはErイオンが基底状態にあって発振光λoに対し不透明とするようにした本発明の光スイッチの概略構成図。
【図4】本発明のファイバ型の光スイッチを音響光学素子の代わりに利用した全ファイバ型のQスイッチ型ファイバレーザ装置の概略構成図。
【図5】2つの入力O、Pと二つの出力Q、Rをもつ4端子ファイバカプラの端子を示すための図。
【図6】二つの入力O、Pと二つの出力Q、Rをもつ4端子ファイバカプラの出力Q、Rにループファイバを接続したファイバループミラーを示すための図。
【図7】Er添加光ファイバと励起LDと遅延ファイバと本発明のファイバ型光スイッチを用いた全ファイバ型のモードロック型ファイバレーザの構成図。
【図8】Er+3イオンのエネルギーレベルを示す図。
【図9】安尾浩行、石原朋浩、山口正義、西村正幸、「アイセーフ小型Qスイッチファイバレーザの開発」、1995年9月、住友電気、第147号、p41−45によって提案されたQスイッチEr添加ファイバレーザのQスイッチ部分の概略斜視図。
【符号の説明】
2 部分透過ミラー
3 WDM
4 Er添加光ファイバ
5 Qスイッチ
6 音響光学セル
7 変調器
8 全反射ミラー
9 励起用LD
10 コリメータ
20、22 光ファイバ
23 WDM
24 Er添加光ファイバ
25 カプラ
26 ループミラー
29 励起用LD
30 変調器
31 遅延ファイバ
32 ファイバ端
33 光スイッチ
34 周波数シンセサイザ
【発明の属する技術分野】
この発明は、光ファイバから光を外部に出すことなく光ファイバを伝搬する光を通過あるいは遮断できる新規な光スイッチ素子と、その光スイッチ素子を用いた、光ファイバ内に光を限定したQスイッチレーザおよび光ファイバ内に光を限定したモードロックレーザに関する。
【0002】
Er添加光ファイバ増幅器は光ファイバにErイオンをドープし、半導体レーザの光を励起光として用い、Erイオンの3準位を利用して、入射光を増幅するようにしたものである。Er添加光ファイバの増幅機能を利用して半導体レーザ励起によりレーザ発振させるようにしたものがファイバレーザである。
【0003】
コイル状のEr添加光ファイバとWDMと光スイッチとミラーとを共振空間をなすように組み合わせ、WDMから半導体レーザの光を導入し、光スイッチをオンオフすることによって発振・停止を繰り返すようになっている。レーザ媒質がバルクガラスの中にドープされていれば固体レーザであるが、ファイバにドープされているのでファイバレーザという。
【0004】
本発明はそのうち光スイッチを問題にする。光スイッチは音響光学素子を用い素子の両側に光ファイバの端部を斜めに接着しておき定在波を発生させ光を回折させることによって光路を曲げてポート間で光を交換できるようになっている。光ファイバからなる光スイッチは現在も存在しないので光スイッチを設けるためには一部光ファイバでない部分が生ずる。
【0005】
【従来の技術】
そのようにファイバレーザといってもEr添加光ファイバはファイバであるが、光スイッチの部分は光をファイバの外部に取り出して音響光学素子によって回折させてミラーと結合するようになっている。一旦光ファイバから外部に光を取り出し、ミラーで反射して再び光ファイバへ入れている。ファイバレーザと言っても、全部が光ファイバによって構成されているのではない。
【0006】
本発明は新規な光スイッチを用い、それによって全ファイバ型のレーザを提供しようとするものである。本発明の光スイッチは、Qスイッチ型のレーザやモードロックレーザへ適用することができる。
【0007】
【非特許文献1】
安尾浩行、石原朋浩、山口正義、西村正幸、「アイセーフ小型Qスイッチファイバレーザの開発」、1995年9月、住友電気、第147号、p41−45
【0008】
非特許文献1によって提案されたQスイッチ型光ファイバレーザの構造を図1に示す。
このレーザ光学系は、部分透過ミラー2、波長分波器(WDM:wavelength division multiplexer)3、Er添加光ファイバ4、音響光学セル6、全反射ミラー8、励起半導体レーザ(LD)9などよりなる。励起半導体レーザ(LD)9というのは一定波長λrの励起光を発生するレーザである。その光λrは光ファイバ22からWDM3を経てEr添加光ファイバ4の一端に入る。
【0009】
励起光λrの方がレーザ発振光λoより波長が短く(λr<λo)、LD9から励起光λrが光ファイバ光路へ入るためにWDM3が必要である。レーザ発振光λoは光ファイバの中を直進すべきであって、LD9の方へ分岐してはならない。そのために波長選択性をもつWDM3が用いられる。WDM3は励起光λrをEr添加ファイバ4の方に導き、反射された励起光λrを分岐ファイバ22に戻し、発振光λoを左右方向に通過させる。
【0010】
Er添加光ファイバ4は、石英中にEr3+のイオンが含まれた光ファイバである。それはf軌道に3個の電子が存在する。図8にEr3+のエネルギー準位を示す。フント規則でエネルギーの低いレベルでは、スピン最大、軌道角運動量最大となる。LSカプリングの係数kが負であるから、LとSが平行である方がエネルギーが低くなる。
【0011】
Er3+の基底状態g(S=3/2、L=6、J=15/2)は4I15/2である。励起状態として4I13/2の第1励起状態w(S=3/2、L=6、J=13/2)と第2励起状態v(S=3/2、L=5、J=13/2)、4I11/2の第3励起状態u(S=3/2、L=5、J=11/2)がある。左サフィックスの4はスピン多重度(2S+1)の値を示す。右下の半整数は全角運動量J(=L+S)の値を示す。kが負なのでLとSが平行に近いものがエネルギーが低く、J=15/2が最低エネルギー(基底)状態になる。J=13/2はそれに次いでエネルギーが低い。
【0012】
図8に示すように下の方の励起状態(S=3/2、L=5,6、J=13/2)が二つに分裂している。それを下から第1、第2励起状態w、vと呼ぶ。基底状態gと第1励起状態wのエネルギー差が1.53μm〜1.55μmに対応する。基底状態gと第2励起状態vのエネルギー差が1.48μmに対応する。第3励起状態uは0.98μmの波長のエネルギー差をもっている。だから、Er+3イオンは、1.48μmの光でも、0.98μmの光でも励起することができる。
【0013】
0.98μmのエネルギーの強い光によって励起すると基底状態のEr3+が第3励起状態(u)4I11/2まで上がる。それはΔL=1であって許容遷移である。それが直接に基底状態gまで下がってしまえばレーザ作用は起こらない。第3励起状態→第2励起状態は非発光遷移である。
【0014】
そのレベルは基底状態から波長1.48μmのエネルギー(0.83eV)高い。第2励起状態vから第1励起状態wへ緩和過程によって落ちる(非発光遷移)。そこでどんどんと第1励起状態wにEr3+がたまってゆくことになる。それがエネルギーの蓄積であり反転分布の形成ということである。反転分布というのは基底状態のイオン数よりも第1励起状態のイオン数の方が多くなったということである。どんどん第1励起状態のイオン数が増えてゆくとエネルギーが大量に蓄積されたということである。Qスイッチによって誘導放出させるとレーザ発振が起こり第1励起状態のイオンは基底状態gに戻る。
【0015】
励起光は0.98μm(1.26eV)に限らず、1.48μm(0.83eV)であってもよい。その場合は第2励起状態vへ直接に励起される。それが熱緩和によって第1励起状態wへ推移する。第1励起状態wのイオンが蓄積されるという点は同じである。本発明は1.48μmによる励起光を主に使う。そのように第1励起準位にイオンの状態を高めることをポンピングという。ポンピングをするのは図1の励起LD9である。それは1.48μmの光を出すレーザでWDM3を通りEr添加光ファイバ4へ入る。そこでErイオンの状態を基底状態gから第2励起状態vへ電子を励起する。それが第1励起準位wにたまる。
【0016】
Er添加光ファイバは石英中にEr3+イオンを分散させたものである。パルスレーザのパワーを大きくするためにはパルス幅を狭くする必要がある。そのためには短い長さにErを集中してドープするのがよい。ところが高濃度にErを添加するとイオン同士の遮蔽効果があり、かえって増幅率が減る。ドープできるErイオン濃度に限界がある。限界以下の濃度のErイオンを加え、しかも所望の増幅率を得なければならないのでEr添加光ファイバはかなりの長さのものが必要である。
【0017】
そのままであればポンピングによって励起状態のErイオンが増えるだけである。レーザ発振させるためにQスイッチを動作しなければならない。図1の装置では音響光学セル6を使っている。Qスイッチ5は音響光学素子6と変調器7の組み合わせになる。図9にその組み合わせの斜視図を示す。音響光学素子6(AO素子)の端面に圧電素子があり、それに適当な周波数の交流を掛けると弾性波が生じて端面から反対側の端面へと伝搬する。弾性波は粗密波であるから屈折率が周期的に変動する。音速をcとし周波数をfとすると音響光学素子にできる屈折率の周期的変化の空間周期はd=c/fとなる。
【0018】
光ファイバの終端のコリメータ10から出た光は音響光学セル6の側面に入射するが、弾性波が存在しないときはそのまま透過してしまう。その先に全反射ミラー8が傾けて置いてあるが直進した光はそれによって斜めに反射され光ファイバへ戻らない。だからQスイッチは起こらない。励起LD9によるEr添加光ファイバ4のポンピングが進むだけである。
【0019】
弾性波が存在するときは空間周期d=c/fの回折格子が存在することになる。それによって光ファイバ終端のコリメータ10から出た光は回折される。一次回折の方向(dsinθ=λ)に全反射ミラー8を設けている。回折された光は全反射ミラー8によって反射される。それはコリメータ10の端面に入りEr添加光ファイバ4の中へ戻る。
【0020】
その場合図1において、部分透過ミラーA、WDMB、光ファイバC、コリメータD、AO素子E、全反射ミラーFを結ぶ往復の光路が形成される。閉じ込められた光はABCDEFEDCBA…という往復運動をしErファイバの反転分布からエネルギーを得て増幅され位相のそろった光となる。それがレーザ発振である。位相の揃った発振光の一部が部分透過ミラー2を透過して外部へ出て行く。Er添加光ファイバのうちの全ての反転分布がなくなるまでレーザ発振が持続する。それは短い時間で消滅する。
【0021】
非特許文献1はそのように励起LDによってErファイバに反転分布を形成し、変調器によってQスイッチ動作をさせて強いパワーのパルスレーザ発振を起こさせている。
【0022】
3000ppmのErイオンを添加した3mのEr添加石英光ファイバを用い、発振波長1.48μmの半導体レーザを励起レーザとして使用し、1.53μm〜1.55μmをマルチモード発振させた。繰り返し周波数2kHz以下で、ピークパワーが400W以上で、20nsのパルス幅(半値幅)のパルスレーザ発振が実現した。装置の寸法は120mm×90mm×35mmであり、小型の装置となった、と非特許文献1は述べている。
【0023】
【特許文献1】
特開平7−231131号「光ファイバレーザ装置」(特願平6−41851号)
【0024】
これはEr添加光ファイバを用いたレーザであるが反射ミラーを省いたものである。Er添加光ファイバの光路をループ状としてその一箇所に光スイッチを設けQスイッチ動作させている。スイッチが開いているときは開ループとなるのでレーザ発振は起こらない。光スイッチが閉じているときは閉ループとなり光は何回もループを廻り得るので反転準位からエネルギーを吸収して発振することができる。
【0025】
リングレーザと同じ形式であるが光スイッチの部分はやはり音響光学素子を使っており音響光学素子の上に超音波を発生させ光ファイバから出た光を回折させて、もう一方の光ファイバ端へと接続するようにしている。だからこれも全体が光ファイバであるのではなくて、光スイッチの部分が音響光学素子であり一部に光ファイバから自由空間へ光を出している。だから軸合わせの難しさがある。
【0026】
次にモードロックファイバレーザについて述べる。これもミラーによる反射のために光スイッチが使われるので同様の問題がある。気体レーザでモードロックレーザ自体はよく知られている。モードロックErファイバレーザというのは別段存在しないが原理からその構成を考える事ができる。
【0027】
それを図2に示す。Er添加光ファイバ4の左端にはWDM3がありWDM3によって励起LD9から励起光を導入できる。その前方には遅延ファイバ31があり、その前に部分透過ミラー2がある。Er添加光ファイバ4の後方には端部32があって、そこから光が外部空間へ出るようになっている。その光路の途中に光スイッチ33があり、光スイッチ33のさらに後方にミラー8があって光を反射することができる。周波数シンセサイザ34が光スイッチ33を開閉することができる。
【0028】
モードロックされたパルス光が出力される周期Tは、T=2L/cによって与えられる。ここでLは共振器長、cは光速である。遅延ファイバ31の長さを調節して任意の周期に設定することができる。光スイッチの開閉の周期はシンセサイザ34によって自由に変化させることができる。適当な周期で光スイッチを開閉して、特定の周波数f=m/T (mは自然数)だけのモードロック発振させることができる。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
上に述べたQスイッチErファイバレーザは、音響光学素子を使い瞬間的に光を回折させ光路を変えて全反射ミラーで反射させ光ファイバへ戻すようにしてQスイッチ動作をさせている。音響光学素子により光路を切り換えミラーで反射させるのは巧みな方法であるが、一旦光ファイバの外部に光を出してしまい、自由空間中にあるミラーに反射させて、また細い光ファイバへ戻すという難しい手法である。
【0030】
実際にはコリメータによって平行光を広げて音響光学素子に当て、ミラーからの平行光をコリメータによって光ファイバ端へ収束させるようにしているが、それでも軸合わせが難しくてなかなか反射された光が光ファイバへ戻らない。レーザ発振させるためには光路を何度も往復しなければならない。スイッチが機能しているときの光軸が厳密に一致していなければならない。もしも光軸が僅かな角度でもずれた場合、光は光ファイバへ100%戻る事ができない。
【0031】
コリメータがあっても自由空間を伝搬する光をなかなか光ファイバ端に戻すことができない。1往復することによって得られるゲインよりも軸ズレによる損失が大きいと最早レーザ発振しない。その軸合わせが極めて難しくて調整が難しい。練達の作業者が手作業で軸合わせをするが、それが何時間もかかる。困難な手作業となる。それが製造コストを押し上げる。また部品の関係を固定しておいても温度変化や衝撃などによって回折の方向が変わり反射ミラーに入射するスポット位置も変わり、反射光が光ファイバに結合しなくなる。それによってレーザ発振パワーが低下したり、レーザ発振しなくなることがある。そのように一旦ビームを外部に出してスイッチングするので軸合わせ調整が困難でコスト高になるという難点がある。
【0032】
それは特許文献1のリング型のファイバレーザでも同じことである。光ファイバから一旦光を自由空間へ出し回折させて他端へ入射させるのだから、それは難しい軸合わせを必要とする。たとえ出荷時は軸が合っていても経年変化、温度変化によって狂いが生ずることもある。
【0033】
それらは光スイッチが光を一旦外部に出し外部の音響光学素子などで回折させ光路を曲げることによって光路を開閉するから起こる欠点である。つまり光スイッチが光ファイバの外部にあるのが問題なのである。光スイッチが光ファイバによってできていないのでいけない。
【0034】
もしも光スイッチも光ファイバの中に納めることができれば、そのような軸合わせの困難はない。光ファイバ内に光スイッチを形成できれば、そのような軸合わせの問題は全て解決する。経年変化による軸ずれの問題も起こらない。光ファイバ内部で光の進行を遮断、許容できればまことに都合が良い。つまり「ファイバ光スイッチ」というようなものがあれば良い。それがあれば先述のQスイッチファイバレーザでも全部をファイバ化することができる。先述のモードロックファイバレーザも全ファイバ型のものを簡単に構成することができる。
【0035】
しかし光ファイバの中を通過する光を止めたり通過したりするというようなことは簡単にはできない。光ファイバに圧力を掛けても光の伝搬の状態は殆ど変わらない。光ファイバを加熱しても光の伝搬状況は変わらない。光ファイバを薬品につけても内部を通る光の状態には影響しない。光ファイバを過度に曲げると放射モードになって伝搬光が外部へ出て行くし、まっすぐにすると伝搬するというようにはできる。が、光ファイバを曲げることは寿命を短くし望ましいことではない。
【0036】
そもそも光ファイバは化学的にも強くて、電磁力の影響も受けないし物理的な圧力にも殆ど不感であり安定した媒体である。だから光ファイバ自体に光スイッチを形成するというようなことは難しい。光ファイバに内蔵された光スイッチというものはこれまでになかった。そのようなことは光ファイバの安定した性質からしても無理な事だと誰もが考えている。
【0037】
光ファイバの内部を通過する光を停止あるいは透過させることができる光ファイバ型の光スイッチを提供する事が本発明の第1の目的である。光ファイバ型の光スイッチを使ってQスイッチ型ファイバレーザを提供することが本発明の第2の目的である。光ファイバ型の光スイッチを使ってモードロック型光ファイバレーザを提供することが本発明の第3の目的である。つまり本発明で提供しようとするものは、空間出射を必要としない光スイッチと、それを用いた全てをインラインで構成するファイバレーザである。
【0038】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Er添加光ファイバにWDMによって励起LDから励起光を与えることによって光路を開き、励起LDからの励起光を断つことによって光路を閉じるようにした光ファイバ型の光スイッチを提案する。Er添加光ファイバは1.48μmによって第2励起準位に電子励起し、それが第1励起準位に落ちて反転分布を形成するものであるが、それを励起用LDを使って光スイッチに応用したのが本発明である。
【0039】
本発明の光スイッチの装置を図3に示す。Er添加光ファイバ24と励起用半導体レーザ(LD)29、WDM(Wavelength Division Multiplexer)23、変調器30を含む系の全体が光スイッチとなっている。ファイバ経路G、H、J、M、Kが光スイッチの経路となり光を一旦外部へ出す必要がなく光ファイバ内に閉じ込めることができる。
【0040】
変調器30によって励起用LD29を発振させると、それはλr=1.48μmの励起光を発生する。励起光λrはN、WDM23、J、Mという経路を通りEr添加光ファイバ24に入る。それはErの基底状態の電子を第2励起状態へ上げる。それはすぐに第1励起状態に落ちる。励起光λrがあると第1励起状態が電子で満ちる。励起用LDが発振しないときはλrがないので、Erファイバ24のErイオンの第1励起状態は空である。全部のErイオンは基底状態にある。そのように励起用LD29の動作、非動作によって第1励起状態を充填するか空にするかという2状態を切り換える。
【0041】
それは、音響光学素子と変調器の組み合わせになるものとは大いに違う。それは第1に、光の光路を変化させてQスイッチを行うのではない。光路自体は変わらない。第2に、自由空間に一旦光を出してオン・オフし、光ファイバへ収束させるというものではない。だから自由空間へ出して戻す時のような軸合わせの困難がない。本発明で提案するものは、スイッチという概念からかなり離れ得たものであり少し理解しにくいものである。
【0042】
本発明のファイバ型光スイッチは、図1のEr添加光ファイバ4の先端を図3のG点に接続して用いるようなスイッチである。G点からの光はWDM23を通りEr添加光ファイバ24を通過して、K点に出て行く。図3はスイッチの部分だけを図示しているが、K点の背後にはミラーの部分がある。自由空間へ光を出してはなんにもならないからミラー作用も光ファイバによって担うようになっている。ミラーについては後に説明する。
【0043】
LD29は励起光(λr=1.48μm)を発生し、それがEr添加光ファイバのErイオンを励起して反転分布を発生させる。
それがどうしてスイッチ作用を行うのか?。LD29によって励起光を入れるとEr添加ファイバ24に反転分布が生じているので、G点から入ってきた光は吸収されずにErファイバ24を通過することができる。つまりEr添加ファイバは単に透明の光ファイバとして機能する。
【0044】
ところがLD29の励起光λrを断つと、Er添加ファイバは吸収性をもつ。Erは光を吸収するのでG点からの光はEr添加ファイバで吸収される。つまりそのまま透過することができないので、それはスイッチオフだということである。 つまりEr添加ファイバの吸収状態、飽和状態を切り換えることによって光をスイッチするような方式となっているのである。
【0045】
図1に示すような光路を変えるようなスイッチとは全く違う。Er添加ファイバを吸収状態にするか、飽和状態にするかによってスイッチをオン、オフするという斬新なアイデアによるスイッチである。
【0046】
図4のようにEr添加光ファイバ4、24を二重に用いるから、図1のポンピング機構を二つ並べただけのような感じもする。レーザ部分を二つ直列に接続したように見える。
【0047】
しかしそうではない。Er添加光ファイバやLDの作用は両者で異なっている。まずレーザ用のEr添加光ファイバ4と、スイッチ用のEr添加光ファイバ24を区別しなければならない。さらにレーザ準位のポンピングに使うLD9と、スイッチ用Er添加光ファイバを励起するためのLD29を峻別しなければならない。
【0048】
まず最初に挙がる疑問は、レーザ用のLD9によってスイッチ用Er添加光ファイバ24が励起されるとすれば、単にEr添加光ファイバの長さが長くなっただけであり全部のErイオンについて反転分布が生成されるのに要する時間が長くなっただけではないか?ということであろう。もしもそうであればLD9によるポンピングが進行すると、いつしかスイッチ部のEr添加光ファイバ24も飽和して光が通るようになる。それは緩慢に起こるのでスイッチングを引き起こす事ができないだろう、と思われる。
【0049】
それが最も大きい疑問であろう。レーザ用Er添加光ファイバ4の長さをL1、スイッチ用Er添加光ファイバ24の長さをL2とすると、単にEr添加光ファイバの長さをL1+L2に延長しただけではないか?というものである。しかしそうではない。WDMがあるから初めの励起用LD9は後ろのEr添加光ファイバ24まで行かない。だから初段のLD9が2段目のファイバ24を励起することはないのである。
【0050】
WDM23において二つの入力ファイバH、Nと二つの出力ファイバJ、Lがある。それは波長選択性をもつ入力、出力ファイバである。出力と入力は交代するからH、N、J、Lを単に端子と呼ぶことにしよう。H端子にレーザ発振波長λoが入力されると、出力Jにλoが出て行く。N入力に励起波長λrを入力すると、出力Jにλrが出て行く。反対にJ端子からλoが左向きに入ると、それはWDM23を通り抜けてH端子に出て行くことができる。つまりλoはH→J、J→Hという相反性をもち、λrはN→J、J→Nというような相反性をもつ。
【0051】
励起用LD9の励起光λrはWDM3で初段のEr添加光ファイバ4に導入されイオンを励起状態にする。残りの励起光λrがあって次のWDM23の端子Hに到ったとしても励起光λrは空端子Lへ出てしまう(H→L)。だから余分の励起光λrが第2ファイバのイオンを励起するということはない。対象となるより長波長のλoはH→Jとなる。つまり初段の励起用レーザLD9からの励起光λrはWDM23によって遮られ、2段目のEr添加光ファイバ24に到らない。だから初段レーザLD9から見て、単にEr添加光ファイバの長さがL1からL1+L2になったという訳ではない。
【0052】
もう一つの疑問があろう。それはより根元的なものである。図3の光スイッチは、励起用LD29によって第2のEr添加光ファイバ24へ励起光λrを注入すると、イオン状態を第2励起状態vから第1励起状態wへと遷移させ、第1励起状態wにあるイオンが殆ど優勢になり基底状態gのイオンの数が減少するというオン状態と、そうでないオフ状態を作り出している。
【0053】
Erイオンのうち基底状態の数をNgとし、第1励起状態にある数をNwとする。Ng+Nw+Ne=N0である。N0は全Erイオンの数である。Neはその他の励起状態にある数である。Neは数が少ないのでここでは無視する。
【0054】
オン状態というのは、LDが動作しており、第1励起状態wが優勢で基底状態gが少ないというものである。つまり反転準位が出現している。だからNw>Ngがオン状態ということである。それは基底状態(準位)gが殆ど空に近いということである。
【0055】
オフ状態というのはLDが非動作であり、イオンは殆ど基底状態gにある。だからNw<Ngがオフ状態だということである。それは第1励起準位wが空に近いということである。
【0056】
そのような2状態は、エネルギーの高い励起光λrに対しては明確な選択性がある筈である。
(1) 基底準位が殆ど空である状態(オン)に励起光λrが入っても電子励起できない。だから吸収されないでそのままファイバを通過できる。つまり励起光λrに対してはオンだということは明白である。
(2) 基底状態がたくさん存在している状態(オフ)に励起光λrが入ると電子励起できるからどんどんエネルギーが吸い取られる。つまり励起光が吸収される。その状態は励起光に対してはオフ動作する、それは明白である。
【0057】
ところが本発明では励起光λrに対する選択性を主張しているのではない。そうでなくて励起光よりもエネルギーの低い(長波長の)対象光(レーザ発振光)λoに対して、そのような2状態がやはり経路をオン・オフする作用があると主張しているのである。それはどういうことか?
【0058】
エネルギーのより低い対象光(レーザ発振光)λoに対し、前記の(1)のオンの状態は同様によく理解できる。つまり、基底状態が殆ど空である(オン)状態で対象光λoがそのままファイバを透過する、というのは当然である。λoがそのイオンを励起できないからである。
【0059】
しかし反対の(2)の場合に、対象光λoが光ファイバに吸収されオフとなるのか?というのは疑問であろう。対象光λoのエネルギーは、基底準位gと第1励起状態のエネルギー差(Ew−Eg)と同一だからである。つまりEw−Eg=hc/λoである。ここでhはプランク定数、cは真空中での光速である。つまり対象光(発振光)から見ると、基底準位gと第1励起準位wのエネルギー差は共鳴準位だということができる。共鳴準位にある二つのレベルに丁度エネルギーが等しい光が大量に照射されるのだから対象光はそれによって吸収される。
【0060】
また第1励起準位から光の放出もおこる。吸収の方が優勢となるので、結局対象光λoは減衰する。Nwが0から幾分増えるが、それもやがて消えてしまう。だから、λo=hc/(Ew−Eg)の対象光に対しても、空の第1励起準位、充満した基底準位という組み合わせは遮断作用をもつのである。
【0061】
反転準位が発生するためには、基底準位gに最も近い第1励起準位wは安定でなくてはならない。それはつまりg・w間が禁制遷移であるか、そうでなくても遷移確率が小さいということである。
【0062】
そうであって初めて反転分布が成り立つ。そうであれば丁度共鳴エネルギーに等しい光が夥しく外部から入射すればg→wの遷移が強制的に起こるが、反対にw→gの遷移はなかなか起こらないものである。だから丁度エネルギー差に等しい波長をもつ対象光(発振光)λo=hc/(Ew−Eg)に対し、基底準位gと第1励起準位wの組み合わせが光スイッチとして機能するのである。本発明はレーザ作用の機序に対する深い省察によって初めてなされたものである。類例を見ない光スイッチである。光ファイバ内部での光スイッチだから全ファイバ型の装置をそれによって作り出すことができる。
【0063】
【発明の実施の形態】
[1.Qスイッチ型ファイバレーザへの適用]
図4に本発明をQスイッチ型ファイバレーザに適用した場合の構成図を示す。大別して3つの部分からなる。左端は図1にも示したErレーザの部分であり、中間部は図3で述べたスイッチの部分である。右端が反射ミラーに代わるループミラーである。初めに述べたように従来例(図1)は光を一旦空間に出し、それを反射ミラーで反射してファイバへ戻すので反射ミラーの軸合わせが難しいという欠点をもっていると述べた。だから反射ミラーを工夫改善しなければならない。
【0064】
本発明では光を自由空間に出すことなく方向を反転させるようにしたい。そこでミラーとはかけ離れた素子で光の方向を反転させることを考える。
そのように反射ミラーの代わりとして本発明者が考えついたものがループを利用した反転素子である。ここでは作用に着眼してループミラーと呼ぶことにする。それが図4のループミラー26である。1ターンでも数十ターンのコイル状でもよいのであるが、カプラ25の両端に続くような閉じたファイバループをミラーとして用いる。このカプラ25は入力2端子O、P、出力2端子Q、Rをもつ。その出力の2端子Q、Rにループの両端がつながっている。先述のスイッチ機構の終端Kはカプラの入力Oにつながっている。
【0065】
ループミラーの原理については後に詳しく述べる。
レーザ動作についてまず述べる。左端のレーザ部分では励起用LD9が連続励起光λr(例えば1.48μm)を発生しており、それが端子VからWDM3を透過し端子Bに出て第1Er添加ファイバ4のErイオンを励起して4I13/2の第1励起状態に上げ反転分布を形成する。そのようなポンピングは連続して行われる。先述のように余剰の励起光λrがあっても2番目のWDM23の端子Hに行くのでWDM23でせき止められて第2のEr添加光ファイバ24には行かない。スイッチ部でのLD29は繰り返し周波数fで瞬時にオンになり、それ以外の時間はオフとなる。
【0066】
変調器30がLD29を駆動せず、LD29がオフである場合、第2Er添加光ファイバ24は非励起だから反転分布がなく、レーザ光波長λoに対しては第2Er添加光ファイバ24は吸収体として機能する。だからλoのエネルギーはEr添加ファイバ24に吸収されて透過することができない。つまりレーザ発振が起こらずポンピングだけが起こる。
【0067】
繰り返し周波数fで瞬時にLD29が駆動される。LD29が励起光λrを発生すると、それは第2WDM23を端子Nから通過することができ、第2Er添加光ファイバ24に入る。基底状態にあったErイオンが第2励起状態(或いは第3励起状態)に上げられ、第1励起状態に落ちて反転分布を作る。第2Er添加ファイバがそのようにして飽和すると、レーザ発振光λoに対する吸収がなくなる。
【0068】
つまり第2Er添加光ファイバ24は吸収のないファイバとなりλoをそのまま透過する。それがスイッチオンだということである。スイッチオンとなりλoが第2Er添加光ファイバ24を通過できるようになると、それはループミラー26に入ってそれぞれループをめぐり反対側の端子Q、Rから反対向きの光となって光路を逆戻りしてくる。それは飽和した第1Er添加光ファイバ4、第2Er添加光ファイバ24の反転分布を震わせ第1励起状態から基底状態への遷移を同期して起こさせ誘導放出を促す。それによって位相の揃ったλoが発生する。左端の部分透過ミラーAと、右端のループミラー26が左右の共振器を形成する。
【0069】
λoはAUBCGHJMKOQROKMJHGCBUA、AUBCGHJMKORQOKMJHGCBUAというように往復反射されEr添加光ファイバの励起準位から基底準位への遷移によりパワーを得て増幅される。一部は部分透過ミラーAから左方へ出て行く。つまりパルスレーザ光が発生したということである。全ての反転準位がなくなるとレーザ光は消失する。そのときはすでにLD29はオフになっている。再びLD9によるポンピングによって第1Er添加光ファイバ4において励起が起こる。以下同様に繰り返し周波数fでパルス発振が起こる。
【0070】
ここでループミラーの原理は以下の通りである。
図5のような2×2分岐(O、P、Q、R)のファイバカプラにおいて、図6のようにQポートとRポートを結合し、またO:P(Q:R)の分岐比をf:(1−f)とすると、Oから入射した光Lがループを廻ってOポート、Pポートのそれぞれに出力される光の強度LO、LPは以下のようになる。
【0071】
LO=(−4f2+4f)L、 LP=(4f2−4f+1)L
fに対してLOとLPの比率を下表に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
上の表の通り、fの値を0.5にするとLO=1となる。だからf=0.5として全反射ミラーをファイバループによって構成することができる。すなわち、50:50の分岐比のカプラを用いると、100%の反射ミラーを形成できる。それによってミラーをもファイバにすることができる。従来例は、光スイッチとミラーが外部に出ていたので軸合わせという困難な問題が発生したが、本発明はファイバ光スイッチとファイバミラーを使って全ファイバ型のレーザを作ることができるのである。つまりQスイッチ型ファイバレーザの構成図のように、光スイッチ部に今回の発明品を用い反射ミラー部にループミラーを用いることによって、共振器内に空間出射部(電気光学素子など)を持たないQスイッチ型ファイバレーザを構成できる。
【0074】
[2.モードロック型ファイバレーザへの適用]
モードロック型レーザについては図2によって既に説明した。図7に示すように本発明の光スイッチはモードロック型のレーザにも適用することができる。
【0075】
遅延ファイバ31の先端Yには部分透過ミラー2が設けられる。遅延ファイバ31の後端はWDM3の左側のUに接続される。励起LD9がWDM3の左側のVに接続される。WDM3の右側のWは空端子である。WDM3の右側のBはEr添加光ファイバ4に接続される。そのような構造は図2に示したものと同様である。本発明の光スイッチをEr添加光ファイバ4の後ろに接続する。光スイッチは図3に示したものと同じである。光ファイバ光路GHの先にWDM23があり、その先にEr添加光ファイバ24が接続される。GHJMKが主な光路となる。側方のファイバの先に励起用LD29があって、それがN点でWDM23の他端に入力している。励起用LD29は変調器30によって任意の繰り返し周期、パルス幅で駆動・停止できるようになっている。
【0076】
光スイッチの終りの端子Kに、ループミラーが接続される。それはループミラー26とカプラ25とからなる。Kからカプラ25へ入った光は、Qへfの割合で、Rへ(1−f)の割合で分配される。それが時計廻り、反時計廻りにループを廻り、一部は空端子Pへ、残りは元の端子Kへと抜ける。f=0.5の場合は空端子Pへの出力は0になり光路上の端子Kの出力が100%となる。
【0077】
励起用LD29がオフであると、光スイッチのEr添加光ファイバ24は第1励起準位wが空になっている。それが発振波長λoを吸収する。つまりそれは光スイッチがオフだということである。励起用LD29がオンであると、光スイッチのEr添加光ファイバ24の第1励起準位wが満たされる。もはや発振波長λoを吸収できない。つまりEr添加光ファイバ23が発振波長λoに対して透明になったということである。だから、それは光スイッチがオンだということである。その場合、前方の部分透過ミラー2からループミラー26にいたる経路YSUBCGHJMKOQRが発振光に対し透明になり両端に反射ミラーが存在し共振器を構成するということである。その場合はLD9によってEr添加光ファイバ4を励起することによってレーザ発振を起こすようにすることができる。
【0078】
図2のものと同じように、図7の構成に関してモードロックの出力周波数は
T=2L/c T:周期、L:共振器長、c:光速
となり、遅延ファイバの長さを調節して、任意の周期に設定できる。
【0079】
また光スイッチのオンタイミングの周期をモードロックの出力周期と等しくなるように周波数シンセサイザにて光スイッチのオン周期を調節することにより、その周波数に対応した周波数(f=m×1/T、m:自然数)のレーザ光のみをモードロック発振する。
【0080】
【発明の効果】
Er添加光ファイバは強い光増幅作用があるのでファイバレーザを構成することができる。しかしQスイッチするための部分は音響光学素子などを使い、光を一端ファイバの外部へ出してしまう。それをまた光ファイバへ入れる必要がある。レンズを使っても細いファイバコアに光を完全に入力させるのは難しくて軸合わせに時間がかかる。それは製造コストを押し上げる。それに経年変化によって軸ズレが起こるという可能性もある。ファイバレーザであるから全体がファイバによって構成されるのが望ましい。本発明はファイバ自体によるスイッチとしているので、ファイバレーザ系の光スイッチとして最適である。光を外部に出す必要はなくファイバ内で光を遮断したり透過させたりすることができる。だから外部の素子との軸合わせのような作業は不要になる。それが製造を容易にしコストを下げるという効果がある。また部品点数も削減されるから部品コストも低減される。経年変化によって軸がずれるという恐れもない。長寿命で安定した性能をもつファイバレーザを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】安尾浩行、石原朋浩、山口正義、西村正幸、「アイセーフ小型Qスイッチファイバレーザの開発」、1995年9月、住友電気、第147号、p41−45によって提案されたQスイッチEr添加ファイバレーザの構成図。
【図2】Er添加光ファイバと励起LDと遅延ファイバを用いたモードロック型ファイバレーザの仮想的な構成図。
【図3】Er添加光ファイバにWDMをつなぎ励起用LDから励起光を導入することによってErイオンを励起して発振光λoに対しファイバを透明とし、励起光がないときはErイオンが基底状態にあって発振光λoに対し不透明とするようにした本発明の光スイッチの概略構成図。
【図4】本発明のファイバ型の光スイッチを音響光学素子の代わりに利用した全ファイバ型のQスイッチ型ファイバレーザ装置の概略構成図。
【図5】2つの入力O、Pと二つの出力Q、Rをもつ4端子ファイバカプラの端子を示すための図。
【図6】二つの入力O、Pと二つの出力Q、Rをもつ4端子ファイバカプラの出力Q、Rにループファイバを接続したファイバループミラーを示すための図。
【図7】Er添加光ファイバと励起LDと遅延ファイバと本発明のファイバ型光スイッチを用いた全ファイバ型のモードロック型ファイバレーザの構成図。
【図8】Er+3イオンのエネルギーレベルを示す図。
【図9】安尾浩行、石原朋浩、山口正義、西村正幸、「アイセーフ小型Qスイッチファイバレーザの開発」、1995年9月、住友電気、第147号、p41−45によって提案されたQスイッチEr添加ファイバレーザのQスイッチ部分の概略斜視図。
【符号の説明】
2 部分透過ミラー
3 WDM
4 Er添加光ファイバ
5 Qスイッチ
6 音響光学セル
7 変調器
8 全反射ミラー
9 励起用LD
10 コリメータ
20、22 光ファイバ
23 WDM
24 Er添加光ファイバ
25 カプラ
26 ループミラー
29 励起用LD
30 変調器
31 遅延ファイバ
32 ファイバ端
33 光スイッチ
34 周波数シンセサイザ
Claims (5)
- 少なくとも基底準位gと第1励起準位wと第2励起準位vの3つの準位をもつイオンをドープした光ファイバと、オンオフすべき対象となる波長λoの光を通過させるための端子Hとそれより短い波長λrの励起光を光ファイバへ導入するための端子Nを一方にもち他方の端子Jに前記光ファイバが接続されたファイバ型WDMと、WDMに接続され励起光λrを発生する励起用LDとを含み、励起用LDが停止しているときはイオンが基底状態にあって対象となる波長の光をイオンが吸収し、励起用LDが作動しているときはイオンが第1励起状態にあって対象となる波長の光を透過するようにしたことを特徴とする光スイッチ。
- 少なくとも基底準位gと第1励起準位wと第2励起準位vの3つの準位をもつイオンをドープした第1光ファイバと、オンオフすべき対象となる波長λoの光を通過させるための端子Uとそれより短い波長λrの励起光を光ファイバへ導入するための端子Vを一方にもち他方の端子Bに前記第1光ファイバが接続された第1ファイバ型WDMと、第1ファイバ型WDMに接続され励起光λrを発生する第1励起用LDと、光ファイバの一端に形成された部分透過ミラーと、光ファイバの他端に接続された光スイッチと、光スイッチの他端に接続された光ファイバを閉曲線に組み合わせて入力した光の一部を反射するファイバ型ループミラーとを含み、前記光スイッチが、少なくとも基底準位gと第1励起準位wと第2励起準位vの3つの準位をもつイオンをドープした第2光ファイバと、オンオフすべき対象となる波長λoの光を通過させるための端子Hとそれより短い波長λrの励起光を光ファイバへ導入するための端子Nを一方にもち他方の端子Jに前記第2光ファイバが接続された第2ファイバ型WDMと、第2ファイバ型WDMに接続され励起光λrを発生する第2励起用LDとを含み第2励起用LDが停止しているときはイオンが基底状態にあって対象となる波長λoの光をイオンが吸収し、第2励起用LDが作動しているときはイオンが第1励起状態にあって対象となる波長λoの光を透過するようにしたものであり、光スイッチの第2励起用LDを駆動・非駆動にすることによって、前記第1光ファイバと部分透過ミラーとファイバ型ループミラーとからなるレーザ共振器によりレーザ発振させるようにしたことを特徴とするファイバレーザ。
- 少なくとも基底準位gと第1励起準位wと第2励起準位vの3つの準位をもつイオンをドープした第1光ファイバと、オンオフすべき対象となる波長λoの光を通過させるための端子Uとそれより短い波長λrの励起光を光ファイバへ導入するための端子Vを一方にもち他方の端子Bに前記第1光ファイバが接続された第1ファイバ型WDMと、第1ファイバ型WDMに接続され励起光λrを発生する第1励起用LDと、光ファイバの一端に接続された遅延ファイバと、光ファイバあるいは遅延ファイバの一端に形成された部分透過ミラーと、光ファイバあるいは遅延ファイバの他端に接続された光スイッチと、光スイッチの他端に接続された光ファイバを閉曲線に組み合わせて入力した光の一部を反射するファイバループミラーとを含み、前記光スイッチが、少なくとも基底準位gと第1励起準位wと第2励起準位vの3つの準位をもつイオンをドープした第2光ファイバと、オンオフすべき対象となる波長λoの光を通過させるための端子Hとそれより短い波長λrの励起光を光ファイバへ導入するための端子Nを一方にもち他方の端子Jに前記第2光ファイバが接続された第2ファイバ型WDMと、第2ファイバ型WDMに接続され励起光λrを発生する第2励起用LDとを含み第2励起用LDが停止しているときはイオンが基底状態にあって対象となる波長λoの光をイオンが吸収し、第2励起用LDが作動しているときはイオンが第1励起状態にあって対象となる波長λoの光を透過するようにしたものであり、光スイッチの第2励起用LDを駆動・非駆動にすることによって、前記第1光ファイバと部分透過ミラーとファイバ型ループミラーとからなるレーザ共振器によりレーザ発振させるようにしたことを特徴とするファイバレーザ。
- 光ファイバにドープすべきイオンがエルビウムイオンEr3+であることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
- 光ファイバにドープすべきイオンがエルビウムイオンEr3+であることを特徴とする請求項2または3に記載のファイバレーザ。
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