JP2004286795A - 熱現像写真感光材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、湿度耐性が良好で、耐擦り傷性の改良された熱現像写真感光材料を提供することにある。
【解決手段】支持体上に有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、及び還元剤を含有する感光層を有し、該感光層側の最外層にラテックス、ワックスエマルジョン及び下記一般式(1)、(2)または(3)で表されるフッ素系界面活性剤で構成された防湿層を有することを特徴とする熱現像写真感光材料。
一般式(1) Rf−(L1)m−(Y1)n−X
一般式(2) Rf−(O−Rf’)n’−L2−X’m’
一般式(3) 〔(Rf”O)n”−(PFC)−CO−Y2〕k−L3−X”m”
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像写真感光材料に関し、更に詳しくは、湿度耐性が良好で耐擦り傷性の改良された熱現像写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
支持体上に感光性層を有し、画像露光することで画像形成を行う感光材料は、数多く知られている。それらの中でも、環境保全や画像形成手段が簡易化できるシステムとして、熱現像により画像を形成する技術が挙げられる。近年写真製版分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・スキャナーまたはレーザー・イメージセッターにより効率的に露光させることができ、高解像度及び鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる、写真製版用途の熱現像感光材料に関する技術が必要とされている。これら熱現像感光材料では、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することができる。
【0003】
熱現像により画像を形成する方法は、例えば米国特許第3,152,904号、同3,457,075号、及びD.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely)による「熱によって処理される銀システム(ThermallyProcessed Silver Systems)A」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processesand Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウォールワーズ(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第2頁、1969年)に記載されている。
【0004】
印刷製版用感光材料は、カラー印刷をする場合には、通常、各色別に分解されたフィルムを複数枚使用する。それらをそれぞれの刷版に焼き付け、重ねて印刷する。複数の色別に分解されたフィルムを重ねた時、全く同一に重ならないと、印刷物にした場合に、色がずれてしまうという現象が生ずる。よって印刷製版用の熱現像感光材料では、熱による版の寸法変化をいかに抑えるかが重要な課題である。感光材料の耐熱寸法安定性を向上させる方法としては、特開平10−10676、同10−10677号公報に、80〜200℃の高温および0.04〜6kg/cmの低張力で搬送しながら熱処理し、支持体の熱収縮を小さくする技術が開示されている。
【0005】
熱現像感光材料は、還元可能な非感光性の銀源(例えば、有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えば、ハロゲン化銀)、及び銀の還元剤を通常有機バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している。感光材料は常温で安定であるが、露光後高温(例えば、80℃以上)に加熱した場合に、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は、露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。
【0006】
このような熱現像写真感光材料は、冬場の低湿期においては感光材料中の水分量が少なくなり現像反応が進みにくく濃度が出なくなったり、夏場の多湿期においては、反対に感光材料中の水分量が多くなり、現像反応が進みやすく感度が大きくなり、文字線幅が太るという問題があった。
【0007】
従来の技術としては、保護層に塩化ビニリデンを使用し高湿下の文字線幅の影響を少なくする技術(例えば、特許文献1参照。)や下引きに塩化ビニリデンを使用し寸法性能の湿度の影響を少なくする技術(例えば、特許文献2参照。)が知られているが、環境上問題がある。また低湿の濃度確保のために保護層を厚くする技術(例えば、特許文献3参照。)や高湿下の文字線幅の影響を少なくするために乾燥温度を変えたりする技術(例えば、特許文献4参照。)も知られているが不十分であった。
【0008】
本発明者は上記のような問題点に対し鋭意検討した結果、特定のラテックスとワックスエマルジョンを混合した水性塗布液を感光層の最外層に塗布することにより写真性能の湿度耐性を改良できることを発見したが、その後の検討で上記の系では耐擦り傷性が不十分であることが分かった。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−272742号公報
【0010】
【特許文献2】
特開2001−287298号公報
【0011】
【特許文献3】
特開2001−249425号公報
【0012】
【特許文献4】
特開2002−55413号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、湿度耐性が良好で、耐擦り傷性の改良された熱現像写真感光材料を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0015】
1.支持体上に有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、及び還元剤を含有する感光層を有し、該感光層側の最外層にラテックス、ワックスエマルジョン及び前記一般式(1)、(2)または(3)で表されるフッ素系界面活性剤で構成された防湿層を有することを特徴とする熱現像写真感光材料。
【0016】
2.前記防湿層の透湿度が1〜40g/m・24hrであることを特徴とする前記1項に記載の熱現像写真感光材料。
【0017】
3.前記ラテックスを構成する組成に官能基を有することを特徴とする前記1または2項に記載の熱現像写真感光材料。
【0018】
4.前記官能基がグリシジル基または活性メチレン基であることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
【0019】
5.前記ワックスエマルジョンがパラフィン系であることを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
【0020】
6.前記感光層に造核剤を含有することを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
【0021】
7.前記支持体が低熱収縮性支持体であることを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
【0022】
本発明者は上記のような問題点に対し鋭意検討した結果、ラテックスとワックスエマルジョンで構成した層に特定の構造を持った化合物(フッ素系界面活性剤)を添加する、また構成するラテックス成分に官能基を導入することにより、写真性能の湿度耐性に優れ、更には耐擦り傷性に優れた熱現像写真感光材料が得られることを見出した。
【0023】
以下、本発明について詳細に述べる。
《防湿層》
本発明の防湿層は、感光層側の最外層に設置し、ラテックスとワックスエマルジョンで構成されたものである。ラテックスとエマルジョンの比率は、100:2〜100:100が好ましい。更に好ましくは100:10〜100:50である。100:2より低いと、防湿の効果が発揮されず、写真性能の湿度耐性が劣化する。また100:100を越えてWAX量が超過になると、防湿層としての膜が弱くなり、ブロッキング性が劣化する。
【0024】
本発明の防湿層の透湿度は、1〜40g/m・24hrであることが好ましい。更に好ましくは1〜20g/m・24hrである。1g/m・24hrより低いと、WAX比率を高くする必要があり、防湿層としての膜が弱くなり、ブロッキング性が劣化する。また40g/m・24hrを越えると、防湿の効果が発揮されず、写真性能の湿度耐性が劣化する。
【0025】
透湿度の測定方法は、JIS Z−208(カップ法)に準じて測定できる。
(ラテックス)
本発明のラテックスは、その種類は特に限定されるものではないが、耐ブロッキング性、造膜性に起因する防湿性の点で、合成樹脂系または合成ゴム系のラテツクスが好ましい。特に合成樹脂系のものが好ましい。
【0026】
本発明におけるラテックスは、水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水または水溶性の分散媒中に分散したものにおいてポリマー成分を指す。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、或いはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよい。尚、本発明に係るラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。
【0027】
ラテックスを構成する重合体のTgは、−20〜60℃であることが好ましい。更に好ましくは0〜50℃である。−20℃より低いと、膜に流動性が発生し、ブロッキング性が劣化する。また60℃を越えると、造膜性が劣化し、防湿の効果が発揮されず、写真性能の湿度耐性が劣化する。尚、ラテックスのTg(ガラス転移温度)は、1956年発行のBull.Am.Phys.Soc.に記載のT.G.Foxの方法によって、計算で求められる数値を示すものである。複数のラテックスを混合して使用する場合には、構成するラテックスの質量比を加算することで算出する。
【0028】
ラテックスの分散粒子の平均粒径は1〜5万nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0029】
本発明に係るラテックスとしては通常の均一構造のラテックス以外、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度や組成を変えると好ましい場合がある。またラテックスは、2種以上のものを併用する方が造膜性、防湿性、ブロッキング性を両立するためには好ましい。この場合、コアシェル型同様、ガラス転移温度や組成を変えることが好ましい。
【0030】
本発明に係るラテックスは、下記のエチレン性不飽和単量体を初めとする単量体を乳化重合することによって得られる。この際使用する乳化剤としては、一般に市販されている陰イオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤などを使用することができる。これらのうち、防湿性をより高めるためには反応性乳化剤を用いることが好ましい。この反応性乳化剤を用いることによりソープフリー型のエマルジョンが得られる。反応性乳化剤としては、例えばスチレンスルホン酸ソーダ、ビニルスルホン酸ソーダ、各種エチレン性不飽和基を有する乳化剤などを挙げることができる。この中でも、特開昭58−203960号公報で示される下記化合物が最も好ましい。
【0031】
〈合成樹脂ラテックス〉
合成樹脂ラテックスとしては、以下に示すエチレン性不飽和単量体をそれぞれ単量重合体または複数組み合わせて共重合体として製造される。エチレン性不飽和単量体としては例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタルクル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタルリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、などで例示されるアクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステル;1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の脂肪族共役ジエン単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン2,4−ジブロモスチレン等で示されるエチレン性不飽和芳香族単量体;アクリロニトリル、メタクロニトリル等の不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸およびその無水物、フマル酸、イタコン酸並びに、不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル例えば、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノノルマルブチル等のエチレン性不飽和カルボン酸;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の如きビニルエステル;塩化ビニリデン臭化ビニリデン等の如き、ビニリデンハライド;アクリル酸−2−ヒドロキシエチレル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキルエチル等の如きエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の如きエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステルおよび、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルミド等、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、2−アセトアセトキシエチルアクリレート、2−アセトアセトキシプロピルメタクリレート、2−アセトアセトキシプロピルアクリレート等の活性メチレン基を有するアセトアセトキシエステル等のラジカル重合可能な単量体が挙げられる。
【0032】
この中で化学結合が可能な官能基を有するものが湿度耐性及び耐傷性を向上させるのに好ましい。特に好ましいのは、グリシジル基を有するものと活性メチレン基を有するものである。
【0033】
官能基としては構成するラテックス成分の5〜80%であることが好ましく、更に好ましくは20〜60%である。5%より少ない場合、湿度耐性及び耐傷性が不足し好ましくない。また80%を越えるとラテックスの安定性が劣化し、塗布等で故障が発生する可能性があり好ましくない。
【0034】
(ワックスエマルジョン)
本発明に用いられるワックスエマルジョンはワックスを乳化したものである。そのワックスとしては、例えばパラフィンワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム、フィッシャー・トリブッシュワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、硬化ひまし油、流動パラフィン、ステアリン酸アミドなどが挙げられ、特にパラフィンワックスが好ましく用いられる。また、これらワックスエマルジョンを調製する方法は公知の方法でよく、例えばワックス、樹脂、及び流動化剤などを混合加熱するなどして溶融し、これに乳化剤を加えて乳化すればよい。樹脂としては、例えばロジン、ロジンエステル化合物、石油樹脂などが用いられ、流動化剤としては、例えば多価アルコール、多価アルコールのエステル化物などが用いられる。これらの混合物は溶融後、例えば、アニオン、カチオン、ノニオンなどの界面活性剤、或いは、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性化合物、有機アミン、スチレンーマレイン酸共重合体などを添加し乳化することによりワックスエマルジョンとすることができる。
【0035】
ワックスエマルジョンは単独使用してもまたは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
ワックスエマルジョンの示差走査熱量計(DSC)による融点は好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜80℃である。ここで融点が40℃未満ではブロッキング性が劣化し好ましくない。また100℃より高い温度では防湿層を設ける際の塗膜乾燥に際し、ワックスが十分に軟化、流動しないため、防湿性を損ない、結果として湿度耐性が劣化する。
【0037】
(フッ素系界面活性剤)
本発明に於いては、防湿層に前記一般式(1)、(2)または(3)で表されるフッ素系界面活性剤を含有する。前記一般式(1)、(2)または(3)で表されるフッ素系界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性いずれでもよいが、その中でもアニオン性のものが好ましい。更にこれらは低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。
【0038】
本発明に係る一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物について説明する。
【0039】
一般式(1)、一般式(2)において、Rfは少なくとも1つのフッ素原子を含有する脂肪族基を表すが、その該脂肪族基は炭素数が1〜18であることが好ましく、更に炭素数が2〜12であることが好ましく、炭素数が3〜7であることが特に好ましい。
【0040】
一般式(1)において、L1は2価の連結基を表すが、2価の連結基としてはスルホンアミド基、アルキレンオキサイド基、フェノキシ基、アルキレンカルボニル基が特に好ましい。
【0041】
一般式(1)において、Y1は置換基を有してもよいアルキレンオキサイド基またはアルキレン基を表すが、アルキレンオキサイド基としてはエチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基等が挙げられ、エチレンオキサイド基が特に好ましい。また、アルキレン基としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられ、エチレン基が特に好ましい。
【0042】
一般式(1)において、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アニオン性基またはカチオン性基を表すが、アニオン性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基が好ましく、該アニオン性基のカウンターカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンなどが好ましい。また、カチオン性基としては、4級アルキルアンモニウム基が好ましく、該カチオン性基のカウンターアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオンなどが好ましい。
【0043】
一般式(1)において、mは0または1〜5の整数を表し、nは0または1〜40の整数を表すが、mが0であって、nが10〜20であることが特に好ましい。
【0044】
一般式(2)において、Rf’は少なくとも1つのフッ素原子を含有するアルキレン基を表すが、その炭素数が1〜8であることが好ましく、更に2〜5であることが好ましく、特に2または3であることが好ましい。
【0045】
一般式(2)において、L2は単なる連結手かまたは連結基を表すが、該連結基としてはアルキレン基、アリーレン基、あるいは、ヘテロ原子を含有した2価の連結基が好ましい。
【0046】
一般式(2)において、X’はヒドロキシル基、アニオン性基またはカチオン性基を表すが、アニオン性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基が好ましく、該アニオン性基のカウンターカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンなどが好ましい。また、カチオン性基としては、4級アルキルアンモニウム基が好ましく、該カチオン性基のカウンターアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオンなどが好ましい。
【0047】
一般式(2)において、n’及びm’はそれぞれ1以上の整数を表すが、n’が1以上、10以下、m’が1以上、3以下であることが好ましい。
【0048】
一般式(3)において、Rf”は炭素原子を1〜4個有するペルフルオロアルキル基を表すが、該ペルフルオロアルキル基としてはトリフロロメチル基が特に好ましい。
【0049】
一般式(3)において、(PFC)は、パーフルオロシクロアルキレン基を表すが、該パーフルオロシクロアルキレン基としては、パーフルオロシクロオクチレン基、パーフルオロシクロヘプチレン基、パーフルオロシクロヘキシレン基、パーフルオロシクロペンチレン基などが挙げられ、パーフルオロシクロヘキシレン基が特に好ましい。
【0050】
一般式(3)において、Y2は酸素原子または窒素原子を含む連結基を表すが、該連結基としては−OCH−、−NHCH−が特に好ましい。
【0051】
一般式(3)において、L3は単なる連結手または連結基を表すが、該連結基としては置換または未置換のアルキレン(例えば、エチレン、n−プロピレン、またはイソーブチレン)、アリレン(例えば、フェニレン)、アルキレンとアリレンの組み合わせ(例えば、キシリレン)、オキシジアルキレン(例えば、CHCH0CHCH)、チオジアルキレン(例えば、CHCHSCHCH)などの多価、一般に二価の連結基が挙げられる。
【0052】
一般式(3)において、X”はアニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基、または両性基を含む水可溶化極性基を表すが、アニオン性基としては、COH、COM、SOH、SOM、OSOH、OSOM、(OCHCH)OSOM、OPO(OH)およびOPO(OM)(式中、Mはナトリウム、カリウム、またはカルシウム等の金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す)等が挙げられ、これらの中でカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基が好ましく、該アニオン性基のカウンターカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンなどが好ましい。カチオン性基としては、4級アルキルアンモニウム基が好ましく、該カチオン性基のカウンターアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオンなどが好ましい。また、ノニオン性基としてはヒドロキシル基が好ましい。
【0053】
一般式(3)において、n”は1〜5の整数を表し、kは1〜3の整数を表し、m”は1〜5の整数を表すが、n”としては3が好ましく、kとしては1または2が好ましく、m”としては1であることが特に好ましい。
【0054】
以下に、本発明で用いることができる化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
〈一般式(1)の化合物〉
1−1.C17SO
1−2.C17SOLi
1−3.C17COONH
1−4.C17COOK
1−5.C19O−C−SO
1−6.C19O−C−SONa
1−7.C13O−C−SO
1−8.C13O−C−SONa
1−9.C15COONH
1−10.NaOS(CHCOOCHCH17)(CHCOOCHCH17
1−11.C17SON(C)(CHCOOK)
1−12.C17SON(C)(CHCHOPONa
1−13.C17SON(C1225)(−(CO)−CSONa)
1−14.C13CHCHSONH
1−15.CFCF(CFCFCHCHSONH
1−16.CFCF(CFCFCHCHSONH
1−17.C13CHCHO−PO(ONH
1−18.C13CHCHO−PO(ONH)(OCHCHOH)
1−19.C(CHSONH
1−20.C(CHSONH
1−21.C(CHCOOLi
1−22.C(CHO−C−SO
1−23.NaOS(CHCOO(CH)(CHCOO(CH
1−24.C(CHSON(C)(CHCOOK)
1−25.C(CHSON(C1225)(−(CO)−CSONa)
1−26.(CCHO)PO(OH)
1−27.CCHCHOPO(OH)
1−28.CCHCHSCHCHCOOLi
1−29.C13CHCHSCHCHCOOLi
1−30.(C13CHCHO)PO(OH)
1−31.C13CHCHO−(CHCHO)10−H
1−32.C17CHCHO−(CHCHO)12−H
1−33.C1021CHCHO−(CHCHO)−H
1−34.CCHCHO−(CHCHO)20−H
1−35.CCHCHO−(CHCHO)10−H
1−36.CCHCHO−(CHCHO)12−H
1−37.CCHCHO−(CHCHO)15−H
1−38.C−(CHCHO)−(CHC(OH)H−CHO)10−H
1−39.C−CH(CH)CHO−(CHCHO)−H
1−40.C13−(CHCHO)−(CHC(OH)H−CHO)12−H
1−41.CCHCHO−(CHCHO)31−H
〈一般式(2)の化合物〉
2−1.C11−(O−CF)−O−PO(ONa)
2−2.HC12−(O−CF)−O−PO(ONa)
2−3.C17−(O−CF)−O−PO(ONa)
2−4.C1021−(O−CF)−O−PO(ONa)
2−5.C1225−(O−CF)−O−PO(ONa)
2−6.C−(O−C)−O−PO(ONa)
2−7.C−(O−C)−O−PO(ONa)
2−8.C11−(O−C)−O−PO(ONa)
2−9.HC12−(O−C)−O−PO(ONa)
2−10.C15−(O−C)−O−PO(ONa)
2−11.C19−(O−C)−O−PO(ONa)
2−12.C1123−(O−C)−O−PO(ONa)
2−13.C−(O−CF−O−PO(ONa)
2−14.C−(O−CF−O−PO(ONa)
2−15.C11−(O−CF−O−PO(ONa)
2−16.HC12−(O−CF−O−PO(ONa)
2−17.C−〔O−(CF〕−COONa
2−18.C−〔O−(CF〕−COONa
2−19.C11−〔O−(CF〕−COONa
2−20.HC14−〔O−(CF〕−O−CH(COONa)
2−21.C17−〔O−(CF〕−O−CH(COONa)
2−22.C−〔O−(CF〕−COONa
2−23.C−〔O−(CF〕−COONa
2−24.C11−〔O−(CF〕−COONa
2−25.C15−〔O−(CF〕−COONa
2−26.C−(O−C−COONa
2−27.C−(O−C−COONa
2−28.C11−(O−C−COONa
2−29.HC14−(O−C−COONa
2−30.C19−(O−C−COONa
2−31.C−(O−C−COONa
2−32.C−(O−C−COONa
2−33.C−(O−C−COONa
2−34.C−(O−C−COONa
2−35.C11−(O−C−NHCOCH(COONa)
2−36.HC12−(O−C−NHCOCH(COONa)
2−37.C−(O−C−OCFCOONa
2−38.C11−(O−C−OCFCOONa
2−39.C15−(O−C−OCFCOONa
2−40.C−OCF−〔O−(CF〕−COOK
2−41.C11−OCF−〔O−(CF〕−COOK
2−42.HC12−OCF−〔O−(CF〕−COOK
2−43.C−(O−C−〔O−(CF〕−COOK
2−44.C11−(O−C−〔O−(CF〕−COOK
2−45.C13−(O−C−〔O−(CF〕−COOK
2−46.C1225−(O−CF)−O−SONa
2−47.C15−(O−C)−OC−SONa
2−48.C−(O−CF−O−SONa
2−49.HC10−(O−CF−OC−SONa
2−50.HC12−(O−CF−O−SONa
2−51.C11−(O−C−OC−SONa
2−52.C15−(O−C−O−SONa
2−53.C−(O−C−OC−SONa
2−54.C−(O−C−O−SONa
2−55.HC10−(O−C−OC−SONa
2−56.C11−OCF−〔O−(CF〕−O−SONa
2−57.C−(O−C−〔O−(CF〕−O−SONa
2−58.(HCFC−(O−C−O−SONa
2−59.(CFCFCFCF−(O−CF−OC−SONa
2−60.C1123−(O−C)−O−SONa
2−61.C−(O−C−NHCO−(CH−N(CH、Br
2−62.C11−(O−C−NHCO−(CH−N+(CH、Br
2−63.HC12−(O−C−NHCO−(CH−N(CH、Br
2−64.C−(O−C−O−CH−N(CH(COH)、Br
2−65.C11−(O−C−O−CH−N(CH(COH)、Br
2−66.HC12−(O−C−O−CH−N(CH(COH)、Br
2−67.C11−OCF−(O−C)−NHCO−(CH−N(CH、Br
2−68.(CFC−(O−C−O−CH−N(CH(COH)、Br
2−69.C1225−(O−CF)−OH
2−70.C15−(O−C)−OH
2−71.C−(O−CF−OC−OH
2−72.C11−(O−CF−OC−OH
2−73.HC12−(O−CF−OH
2−74.C11−(O−C−OC−OH
2−75.C15−(O−C−OC−OH
2−76.C−(O−C−OC−OH
2−77.HC−(O−C−O−C(COH)
2−78.C11−(O−C−OC−OH
2−79.C11−OCF−〔O−(CF〕−OH
2−80.C−(O−C−〔O−(CF〕−OH
2−81.(CFC−(O−C−OH
2−82.(HCFCFCFCF−(O−CF−OH
2−83.C1123−(O−COH
上記一般式(1)、(2)で表される化合物の合成方法については、特表平10−500950号公報、同11−504360号公報を参考にすることができる。
【0056】
〈一般式(3)の化合物〉
3−1.(CFO)(PFC)−CONHC(CHCOO
3−2.(CFO)(PFC)−CONHC(CHSO
3−3.(CFO)(PFC)−CONHC(CHSO
3−4.(CFO)(PFC)−CON(CSO−)C(CH
3−5.(CFO)(PFC)−CON(CSO−)C(CH
3−6.[(CFO)(PFC)−COOCHCH−CONHC(CHSO
3−7.[(CFO)(PFC)−COOCHCH−CONHC(CHSO
3−8.[(CFO)(PFC)−COOCHCH−CONHC(CHSO
〈カチオン型〉
3−9.(CFO)(PFC)−CONHC(CHOH、Cl
3−10.(CFO)(PFC)−CONHC(CHOH、Cl
3−11.(CFO)(PFC)−CONHC(CHOH、Cl
3−12.(CFO)(PFC)−CONHC(CHH、Cl
3−13.(CFO)(PFC)−CONHC(CHH、Cl
3−14.(CFO)(PFC)−CONHC(CHH、Cl
3−15.[(CFO)(PFC)−COOCHC(CH)N(CHH、Cl
3−16.[(CFO)(PFC)−COOCHC(CH)N(CHH、Cl
3−17.[(CFO)(PFC)−COOCHC(CH)N(CHH、Cl
3−18.[(CFO)(PFC)−COOCHCHC(CHH、Cl
3−19.[(CFO)(PFC)−COOCHCHC(CHH、Cl
3−20.[(CFO)(PFC)−COOCHCHC(CHH、Cl
3−21.(CFO)(PFC)−COO(CO)12
3−22.(CFO)(PFC)−COO(CO)12
3−23.(CFO)(PFC)−COO(CO)12
3−24.(CFO)(PFC)−COO(CO)15CH
3−25.(CFO)(PFC)−COO(CO)15CH
3−26.(CFO)(PFC)−COO(CO)15CH
3−27.[(CFO)(PFC)−COOCHCHCOH
3−28.[(CFO)(PFC)−COOCHCHCOH
3−29.[(CFO)(PFC)−COOCHCHCOH
3−30.(CFO)(PFC)−CONHCCOONa
3−31.(CFO)(PFC)−CONHCCOONa
3−32.(CFO)(PFC)−CONHCCOOK
3−33.(CFO)(PFC)−CONHCSONa
3−34.(CFO)(PFC)−CONHCSONa
3−35.(CFO)(PFC)−CONHCSO
3−36.(CFO)(PFC)−CON(CSONa)C
3−37.(CFO)(PFC)−CON(CSONa)C
3−38.(CFO)(PFC)−CON(CSONa)C
3−39.[(CFO)(PFC)−COOCHC(CH)COONa
3−40.[(CFO)(PFC)−COOCHC(CH)COONa
3−41.[(CFO)(PFC)−COOCHC(CH)COONa
3−42.[(CFO)(PFC)−COOCHC(COONa)
3−43.[(CFO)(PFC)−COOCHC(COONa)
3−44.[(CFO)(PFC)−COOCHC(COONa)
3−45.[(CFO)(PFC)−COOCHC(CH)SONa
3−46.[(CFO)(PFC)−COOCHC(CH)SONa
3−47.[(CFO)(PFC)−COOCHC(CH)SONa
3−48.[(CFO)(PFC)−COOCHCHCSONa
3−49.[(CFO)(PFC)−COOCHCHCSONa
3−50.[(CFO)(PFC)−COOCHCHCSONa
ただし上記において、(PFC)はパーフルオロシクロアルキレン基を表し、(CFO)の置換位置は、カルボニル基を1位として、(CFO)の場合は3、4、5位であり、(CFO)の場合は3、4位であり、(CFO)の場合は4位である。上記一般式(3)で表される化合物の合成方法については、特開平10−158218号公報、特表2000−505803号公報を参考にすることができる。
【0057】
(その他)
本発明の防湿層には架橋剤を用いてもよい。架橋剤を上記ラテックスとワックスエマルジョンと併用することで、防湿性が向上し湿度耐性が良化する。本発明で用いることのできる架橋剤は、従来写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば、特開昭50−96216号に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系架橋剤が挙げられる。
【0058】
また本発明の防湿層には耐傷性を向上させるためにマット剤を用いることもできる。本発明においてマット剤として添加される微粒子は、一般に水に不溶性の有機または無機化合物の微粒子であり、任意のものを使用できる。例えば米国特許第1,939,213号、同第2,701,245号、同第2,322,037号、同第3,262,6782号、同第3,539,344号、同第3,767,448号等の各明細書に記載の有機マット剤、同第1,260,772号、同第2,192,241号、同第3,257,206号、同第3,370,951号、同第3,523,022号、同第3,769,020号等の各明細書に記載の無機マット剤など当業界でよく知られたものを用いることができる。上記のマット剤は必要に応じて異なる種類の物質を混合して用いることができる。マット剤の大きさ、形状に特に限定はなく、任意の粒径のものを用いることができる。本発明の実施に際しては0.1μm〜30μmの粒径のものを用いるのが好ましい。また、マット剤の粒径分布は狭くても広くてもよい。一方、マット剤は感光材料のヘイズ、表面光沢に大きく影響することから、マット剤作製時あるいは複数のマット剤の混合により、粒径、形状および粒径分布を必要に応じた状態にすることが好ましい。
【0059】
《感光層》
(有機銀)
本発明の熱現像写真感光材料の感光性層に含有される有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特に長鎖(10〜30、好ましくは5〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環カルボン酸が好ましい。配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機または無機の銀塩錯体も有用である。好適な銀塩の例は、Research Disclosure(以下RDと記す)第17029及び29963に記載されており、次のものがある。有機酸の塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドのようなアルデヒド類とサリチル酸、ベンジル酸3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸のようなヒドロキシ置換酸類);チオン類の銀塩または錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン及び3−カルボキシメチル−4−メチル−4−チアゾリン−2−チオン);イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;メルカプチド類の銀塩等が挙げられる。好ましい銀源はベヘン酸銀、アラキジン酸銀またはステアリン酸銀である。
【0060】
有機銀塩は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)を作製した後に、コントロールドダブルジェットにより、前記ソープと硝酸銀などを添加して有機銀塩の結晶を作製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0061】
(ハロゲン化銀)
本発明の熱現像写真感光材料の感光性層に含有されるハロゲン化銀粒子は光センサーとして機能するものである。本発明においては、画像形成後の白濁を低く抑えるため、及び良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが好ましくは0.03μm以下、より好ましくは0.01〜0.03μmの範囲である。尚、本発明の熱現像写真感光材料のハロゲン化銀粒子は前記有機銀塩調製時に同時に作製されるか、または前記有機銀塩調製時に該ハロゲン化銀粒子を混在させて調製することにより、有機銀塩に融着した状態でハロゲン化銀粒子を形成させて微小粒子のいわゆるin situ銀とするのが好ましい。尚、上記ハロゲン化銀粒子の平均粒子径の測定方法は、電子顕微鏡により50000倍で撮影し、それぞれのハロゲン化銀粒子の長辺と短辺を実測し、100個の粒子を測定し、平均したものを平均粒径とする。
【0062】
ここで、上記粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、正常晶でない場合、例えば、球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えた時の直径をいう。また、ハロゲン化銀粒子は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%となる粒子である。
【0063】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
本発明において、ハロゲン化銀粒子は平均粒径0.01〜0.03μmで、かつ単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで画像の粒状性も向上する。
【0064】
ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0065】
また、もう一つの好ましいハロゲン化銀粒子の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとして、垂直方向の厚みをhμmとした場合のアスペクト比=r/hが3以上のものをいう。その中でも好ましくは、アスペクト比が3以上、50以下である。また、粒径は0.03μm以下であることが好ましく、更に0.01〜0.03μmが好ましい。これらの製法は米国特許第5,264,337号、同5,314,798号、同5,320,958号等の各明細書に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。本発明においてこれらの平板状粒子を用いた場合、更に画像の鮮鋭性も向上する。
【0066】
ハロゲン化銀粒子の組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。本発明に用いられる写真乳剤は、P.Glafkides著Chimie et PhysiquePhotographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0067】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には、照度不軌改良や改良調整のために、元素周期律表の6族から10族に属する金属のイオンまたは錯体イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0068】
ハロゲン化銀粒子は、ヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが、本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0069】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は、化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては、当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。
【0070】
本発明においては熱現像写真感光材料の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀粒子及び有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m当たり0.3〜2.2gであり、0.5〜1.5gがより好ましい。この範囲にすることで硬調な画像が得られる。また、銀総量に対するハロゲン化銀の量は、質量比で50%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは0.1〜15%の間である。
【0071】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は350〜450μmに光の極大吸収を有し、特に増感色素を有してなくてもよいが、必要に応じて含有させてもよい。
【0072】
(還元剤)
本発明の熱現像写真感光材料の感光性層に含有される好適な還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同第3,773,512号、同第3,593,863号等の各明細書及びRD第17029号及び同29963に記載されており、次のものが挙げられる。
【0073】
アミノヒドロキシシクロアルケノン化合物(例えば、2−ヒドロキシ−3−ピペリジノ−2−シクロヘキセノン);還元剤の前駆体としてアミノレダクトン類(reductones)エステル(例えば、ピペリジノヘキソースレダクトンモノアセテート);N−ヒドロキシ尿素誘導体(例えば、N−p−メチルフェニル−N−ヒドロキシ尿素);アルデヒドまたはケトンのヒドラゾン類(例えば、アントラセンアルデヒドフェニルヒドラゾン);ホスファーアミドフェノール類;ホスファーアミドアニリン類;ポリヒドロキシベンゼン類(例えば、ヒドロキノン、t−ブチル−ヒドロキノン、イソプロピルヒドロキノン及び(2,5−ジヒドロキシ−フェニル)メチルスルホン);スルフヒドロキサム酸類(例えば、ベンゼンスルフヒドロキサム酸);スルホンアミドアニリン類(例えば、4−(N−メタンスルホンアミド)アニリン);2−テトラゾリルチオヒドロキノン類(例えば、2−メチル−5−(1−フェニル−5−テトラゾリルチオ)ヒドロキノン);テトラヒドロキノキサリン類(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン);アミドオキシム類;アジン類;脂肪族カルボン酸アリールヒドラザイド類とアスコルビン酸の組み合わせ;ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミンの組み合わせ;レダクトンまたはヒドラジン;ヒドロキサン酸類;アジン類とスルホンアミドフェノール類の組み合わせ;α−シアノフェニル酢酸誘導体;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体の組み合わせ;5−ピラゾロン類;スルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオン等;クロマン;1,4−ジヒドロピリジン類(例えば、2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジン);ビスフェノール類(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(6−ヒドロキシ−m−トリ)メシトール(mesitol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール))、紫外線感応性アスコルビン酸誘導体;ヒンダードフェノール類;3−ピラゾリドン類。中でも特に好ましい還元剤は、ヒンダードフェノール類である。
【0074】
還元剤の使用量は、好ましくは銀1モル当たり1×10−2〜10モル、特に1×10−2〜1.5モルである。
【0075】
(造核剤(硬調化剤))
本発明の熱現像写真感光材料の感光性層に含有する硬調化剤は、ヒドラジン化合物としては、RD第23515(1983年11月号、P.346)及びそこに引用された文献の他、米国特許第4,080,207号、同第4,269,929号、同第4,276,364号、同第4,278,748号、同第4,385,108号、同第4,459,347号、同第4,478,928号、同第4,560,638号、同第4,686,167号、同第4,912,016号、同第4,988,604号、同第4,994,365号、同第5,041,355号、同第5,104,769号、英国特許第2,011,391B号、欧州特許第217,310号、同第301,799号、同第356,898号、特開昭60−179734号、同61−170733号、同61−270744号、同62−178246号、同62−270948号、同63−29751号、同63−32538号、同63−104047号、同63−121838号、同63−129337号、同63−223744号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号、同63−294552号、同63−306438号、同64−10233号、特開平1−90439号、同1−100530号、同1−105941号、同1−105943号、同1−276128号、同1−280747号、同1−283548号、同1−283549号、同1−285940号、同2−2541号、同2−77057号、同2−139538号、同2−196234号、同2−196235号、同2−198440号、同2−198441号、同2−198442号、同2−220042号、同2−221953号、同2−221954号、同2−285342号、同2−285343号、同2−289843号、同2−302750号、同2−304550号、同3−37642号、同3−54549号、同3−125134号、同3−184039号、同3−240036号、同3−240037号、同3−259240号、同3−280038号、同3−282536号、同4−51143号、同4−56842号、同4−84134号、同2−230233号、同4−96053号、同4−216544号、同5−45761号、同5−45762号、同5−45763号、同5−45764号、同5−45765号、同6−289524号、同9−160164号等の各公報に記載されたものを挙げることができる。
【0076】
この他にも、特公平6−77138号公報に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁、4頁に記載された化合物、特公平6−93082号公報に記載された一般式(1)で表される化合物で具体的には同公報8頁〜18頁に記載の1〜38の化合物、特開平6−23049号公報に記載の一般式(4)、(5)及び(6)で表される化合物で、具体的には同公報25頁、26頁に記載の化合物4−1〜4−10、28頁〜36頁に記載の化合物5−1〜5−42、及び39頁、40頁に記載の化合物6−1〜6−7、特開平6−289520号公報に記載の一般式(1)及び(2)で表される化合物で、具体的には同公報5頁から7頁に記載の化合物1−1)〜1−17)及び2−1)、特開平6−313936号公報に記載の(化2)及び(化3)で表される化合物で具体的には同公報6頁から19頁に記載の化合物、特開平6−313951号公報に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁から5頁に記載された化合物、特開平7−5610号公報に記載の一般式(I)で表される化合物で、具体的には同公報の5頁から10頁に記載の化合物I−1〜I−38、特開平7−77783号公報に記載の一般式(II)で表される化合物で、具体的には同公報10頁〜27頁に記載の化合物II−1〜II−102、特開平7−104426号公報に記載の一般式(H)及び一般式(Ha)で表される化合物で、具体的には同公報8頁〜15頁に記載の化合物H−1〜H−44に記載されたもの等を用いることができる。
【0077】
更に本発明に用いられるその他の硬調化剤としては特開平11−316437号公報の33頁から53頁に記載の化合物であり、更に好ましくは特開2000−298327号公報に記載の下記一般式(C−1)、一般式(C−2)及び一般式(C−3)のビニル系化合物が好ましく用いられる。
【0078】
【化1】
Figure 2004286795
【0079】
一般式(C−1)において、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Zは電子吸引基またはシリル基を表し、R11とZ、R12とR13、及びR13とZとはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0080】
また、一般式(C−2)において、R14は置換基を表す。また、一般式(C−3)において、X及びYはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A及びBはそれぞれ独立にアルコオキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基またはヘテロ環アミノ基を表す。一般式(C−3)において、XとY及びAとBは、それぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0081】
上記一般式(C−1)、一般式(C−2)及び一般式(C−3)の具体的化合物としては、下記化合物があるが、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0082】
【化2】
Figure 2004286795
【0083】
【化3】
Figure 2004286795
【0084】
【化4】
Figure 2004286795
【0085】
【化5】
Figure 2004286795
【0086】
本発明の熱現像写真感光材料に含有される硬調化剤の量は銀1モルに対して0.1〜0.001モルが好ましく、0.05〜0.005モルがより好ましい。
【0087】
(その他)
本発明の熱現像写真感光材料の感光性層、非感光性層に用いられるバインダーは親水性バインダー(水に溶解するバインダーもしくはラテックス類)または疎水性バインダー(有機溶剤に溶解するバインダー)のいずれでもよいが、各層のバインダーが互いに同一の溶剤系に溶解するバインダーであるのが好ましく、例えば感光性層、中間層、保護層の各層のバインダーがいずれも有機溶剤系バインダーであるか、または親水性バインダーであるのが好ましい。
【0088】
各層に用いられるバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマーや合成モノポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体となるものが用いられる。上記バインダーの具体例としては、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、デンプン等の水溶性バインダー、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)等の疎水性バインダー、好ましくはポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等の疎水性バインダー、特にはポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル等の疎水性バインダー、及びそれらのバインダー樹脂のモノマーを乳化重合法または懸濁重合法等により水中で重合して得られるラテックス等が挙げられる。
【0089】
疎水性バインダーを溶解するための主溶媒としては、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブ等が好ましく用いられる。
【0090】
感光層のバインダーのTgは40℃以上であることが好ましい。好ましくは40〜120℃、更に好ましくは40〜100℃、特に好ましくは40〜80℃である。40℃未満であると、現像性が高くなり、高湿下での感度上昇(文字線幅)が大きく好ましくない。また120℃より高いと熱現像温度とほぼ同じくらいの温度になることから、熱伝達が遅れ現像性が低くなり好ましくない。
【0091】
感光性層に通過する光の量または波長分布を制御するために、感光性層と同じ側にフィルター染料層、または反対側にアンチハレーション染料層、いわゆるバッキング層等の補助層を形成してもよいし、感光性層に染料または顔料を含ませてもよい。これらの補助層にはバインダーやマット剤の他に、ポリシロキサン化合物、ワックス、流動パラフィンのような滑り剤を含有してもよい。
【0092】
また、本発明の熱現像写真感光材料には、塗布助剤として各種の界面活性剤が用いられ、中でもフッ素系界面活性剤が、帯電特性を改良したり、斑点状の塗布故障を防ぐために好ましく用いられる。
【0093】
本発明の熱現像写真感光材料の感光性層は複数層にしても良く、また階調の調節のため、感光性層の構成として高感度層/低感度層、または低感度層/高感度層にしてもよい。
【0094】
また、本発明に用いられる好適な色調剤の例は、RD第17029号に開示されている。
【0095】
本発明の熱現像写真感光材料にはカブリ防止剤が用いられてもよく、これらの添加剤は感光性層、中間層、保護層またはその他の形成層のいずれに添加してもよい。
【0096】
本発明の熱現像写真感光材料には例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、被覆助剤等を用いてもよい。これらの添加剤及び上述したその他の添加剤はRD第17029号(1978年6月p.9〜15)に記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0097】
《低熱収縮性支持体》
本発明の好ましい低熱収縮性支持体とは、印刷製版用の熱現像感光材料として使用するにあたって、熱現像時の温度(熱)による版の寸法変化を抑えるために、支持体の熱現像に相当する120℃、60秒での寸法変化率の絶対値がMD(長手)、TD(幅手)方向ともに0.001〜0.06%の範囲、好ましくは0.001〜0.04%の範囲、特に好ましくは0.001〜0.02%の範囲のものである。
【0098】
本発明における前述の寸法変化率の測定は次のように行われる。すなわち支持体を、23℃、55%RH条件下で、該支持体のMD、TD方向に一定のある長さに印を付けてから、120℃に60秒間加熱後、再び23℃、55%RHの条件下に3時間調湿後して、各方向の長さを測定して、その寸法変化率を評価する。加熱前の寸法から加熱後の寸法を引いて、加熱前の寸法で除したものを百分率で寸法変化率を正の値または負の値として表す。
【0099】
支持体の基材となるフィルムは熱可塑性樹脂が好ましく、力学強度、熱寸法安定性、透明性から特に好ましいのがポリエステル樹脂である。更に好ましいのが芳香族ポリエステル樹脂であり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を挙げることができる。これらのフィルムの厚みは50μm以上、500μm以下が好ましく、75μm以上、300μm以下が更に好ましく、90μm以上、200μm以下が更に好ましい。
【0100】
本発明の支持体は、前述の寸法変化率にするために以下のような熱処理をすることで達成できる。
【0101】
本発明に係わる熱処理は、熱収縮の進行を妨げずに、その後の熱処理(熱現像)時の寸法変化を小さくする上で、できるだけ搬送張力を低くし、熱処理時間を長くすることが望ましい。処理温度としてはポリエステルフィルムのTg+50〜Tg+150℃の温度範囲が好ましく、その温度範囲で、搬送張力としては9.8kPa〜2MPaが好ましく、より好ましくは9.8kPa〜980kPa、更に好ましくは9.8kPa〜490kPaであり、処理時間としては30〜10分が好ましく、より好ましくは30〜5分である。上記の温度範囲、搬送張力範囲及び処理時間にすることにより、熱処理時に支持体の熱収縮の部分的な差により支持体の平面性が劣化することもなく、搬送ロールとの摩擦等により細かいキズ等の発生も押さえることができる。
【0102】
本発明において、熱処理の前の熱固定後に縦弛緩処理または横弛緩処理を行っておくのも好ましい態様である。また熱処理は所望の寸法変化率を得るために、少なくとも1回は必要であり、必要に応じて2回以上実施することも可能である。更に熱処理したポリエステルフィルムをTg付近の温度から常温まで冷却してから巻き取り、この時の冷却による平面性の劣化を防ぐために、Tgを跨いで常温まで下げるまでに、少なくとも−5℃/秒以上の速度で冷却するのが好ましい。
【0103】
熱処理条件としての熱処理時間は、フィルムの搬送速度を変えたり、熱処理ゾーンの長さを変えたりすることでコントロールできる。この熱処理時間が短すぎると本発明は効果的でなく支持体の熱寸法安定性が低下してしまう。また60分以上であると支持体の平面性や透明性の劣化がみられ、熱現像感光材料用の支持体としては不適となるので好ましくない。また熱処理の張力調整は、巻き取りロールまたは送り出しロールのトルクを調整することによりできる。また工程内にダンサーロールを設置し、これに加える荷重を調整することでも達成できる。熱処理中または熱処理後の冷却時に張力を変化させる場合、これらの工程前後または工程内にダンサーロールを設置し、それらの荷重を調整することで所望の張力状態を設定してもよい。また振動的に搬送張力を変化させるには熱処理ロール間スパンを小さくすることにより有効に行うことができる。
【0104】
本発明の支持体は、酸化珪素薄膜を設ける前に下引き層を設けていることが好ましい。下引き層を設ける場合、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロースエステル樹脂、スチレン樹脂及びゼラチン等が好ましい。また必要に応じて、トリアジン系、エポキシ系、メラミン系、ブロックイソシアネートを含むイソシアネート系、アジリジン系、オキサザリン系等の架橋剤、コロイダルシリカ等の無機粒子、界面活性剤、増粘剤、染料、防腐剤などを添加してもよい。
【0105】
また酸化珪素薄膜を設ける側と反対側に帯電防止層を設けることが好ましい。本発明の帯電防止層は、帯電防止剤とバインダーから構成されている。
【0106】
帯電防止剤としては、金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物の例としては、ZnO、TiO、SnO、Al、In、SiO、MgO、BaO、MoO、V等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にバインダーとの混和性、導電性、透明性等の点から、SnO(酸化スズ)が好ましい。異元素を含む例としてはSnOに対してはSb、Nb、ハロゲン元素等を添加することができる。これらの異元素の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。酸化スズは、非晶性ゾルまたは結晶性粒子の形態が好ましい。水系塗布の場合は非晶性ゾルが好ましく、溶剤系塗布の場合は結晶性粒子の形態が好ましい。特に環境上、作業の取り扱い性の点で水系塗布の非晶性ゾルの形態が好ましい。
【0107】
非晶性SnOゾルの製造方法に関しては、SnO微粒子を適当な溶媒に分散して製造する方法、もしくは溶媒に可溶なSn化合物の溶媒中における分解反応から製造する方法等、いずれの方法でもよい。一方、結晶性粒子は、特開昭56−143430号、同60−258541号に詳細に記載されている。これら導電性金属酸化物微粒子の作製法としては、第一に金属酸化物微粒子を焼成により作製し、導電性を向上させるために異種原子の存在下で熱処理する方法、第二に焼成により金属酸化物微粒子作製時に異種原子を共存させる方法、第三に焼成時に酸素濃度を下げて酸素欠陥を導入する方法等の単独及び組み合わせが用いられる。
【0108】
本発明に用いられる金属酸化物の一次粒子の平均粒径は、0.001〜0.5μm、特に0.001〜0.2μmが好ましい。本発明に用いられる金属酸化物の固型分付量は1m当たり0.05〜2g、特に0.1〜1gが好ましい。また本発明における帯電防止層における金属酸化物の体積分率は、8〜40体積%、好ましくは10〜35体積%がよい。上記範囲は金属酸化物微粒子の色、形態、組成等により変化するが、透明性及び導電性の点から、上記範囲が最も好ましい。
【0109】
帯電防止層を構成するバインダーについては、上記下引き層と同じ樹脂を用いることが好ましい特に金属酸化物の分散性や導電性の点から、ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、アクリル樹脂、セルロースエステルが好ましい。
【0110】
帯電防止層の厚さは、透明性や塗布ムラ(干渉ムラ)の点から、0.30〜0.70μmが好ましい。より好ましくは0.35〜0.55μmである.0.30μm未満であると所望の高温の導電性の確保及びBC層を設けた時の擦り傷性が劣化し、好ましくない。また0.70μm以上では干渉ムラが強く、商品価値上、劣化するとともに、透明性が劣化し、実用に耐えない。
【0111】
下引き層、帯電防止層の塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばキスコート法、リバースコート法、ダイコート法、リバースキスコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤーバーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法などを単独または組み合わせて適用するとよい。
【0112】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0113】
尚、以下の実施例に記載されている評価方法は以下の通りである。
[写真性能の耐湿性]
(露光)
製造した各熱現像写真感光材料に対して、ビーム径(ビーム強度の1/2のFWHM)12.56μm、レーザー出力50mW、出力波長783nmの半導体レーザーを搭載した単チャンネル円筒内面方式のレーザー露光装置を使用して、ミラー回転数60000rpm、露光時間1.2×10−8秒の条件下で露光を実施した。この時のオーバーラップ係数は0.449にし、熱現像写真感光材料面上のレーザーエネルギー密度は75μJ/cmとした。
【0114】
(熱現像処理)
現像はImation社製フィルムプロセッサーmodel 2771を用い、120℃、48秒の設定で熱現像処理した。その際、露光は23℃50%RHに調湿した部屋で行い、現像処理はそれぞれ23℃20%RH、および23℃80%RHの環境で行った。
【0115】
(写真性能の評価)
熱現像写真感光材料を23℃80%RH(高湿)12時間調湿の試料と23℃20%RH(低湿)12時間調湿の試料を作製し、同一環境下で50μmの文字線幅露光を行い、熱現像処理を行った。
【0116】
23℃20%RHで調湿した試料の熱現像処理後のDmax(最高濃度)について評価した。濃度測定はマクベスTD904濃度計で行った。
【0117】
また、湿度変化に対する感度変動を以下の式で定義し、変動を求めた。
感度変動(μm)=(23℃80%RH(高湿)調湿試料の処理後の文字線幅)−(23℃20%RH(低湿)調湿試料の処理後の文字線幅)
文字線幅の測定はマイクロデンシトメータを用いて測定した。
【0118】
値が小さい程、湿度変化に対する感度変動が小さいことを示す。
(耐傷性試験)
擦過用対象物として、水平で凹凸の無い平滑な台に各試料の裏面を上にして貼りつけ、その裏面に接触する向きに同じ試料の感光層側を置き、100g/cmの圧力で10cmの距離を10往復させた。このサンプルを以下の基準で評価を行った。
【0119】
A:透過傷なし
B:透過傷かすかに見えるレベル(1〜2本)
C:透過傷が明らかに1〜4本見える
D:透過傷が明らかに5本以上見える
[熱現像感光材料用支持体の作製]
以下のようにしてPET樹脂を得た。
【0120】
(PET樹脂)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール65質量部にエステル交換触媒として酢酸マグネシウム水和物0.05質量部を添加し、常法に従ってエステル交換を行った。得られた生成物に、三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.03質量部を添加した。次いで、徐々に昇温、減圧にし、280℃、66.5Paで重合を行い、固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を得た。
【0121】
以上のようにして得られたPET樹脂を用いて、以下のようにして下塗り層付き二軸延伸PETフィルムを作製した。
【0122】
(下塗り層付き二軸延伸PETフィルム)
PET樹脂をペレット化したものを150℃で8時間真空乾燥した後、285℃でTダイから層状に溶融押しだし、30℃の冷却ドラム上で静電印加しながら密着させ、冷却固化させ、未延伸フィルムを得た。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、80℃で縦方向に3.3倍延伸した。得られた一軸延伸フィルムに下記下引き塗布液A(固形分4質量%)をキスコート法にて片面にWET膜厚2g/mになるように塗布した。引き続き、テンター式横延伸機を用いて、第一延伸ゾーン90℃で総横延伸倍率の50%延伸し、更に第二延伸ゾーン100℃で総横延伸倍率3.3倍になるように延伸した。次いで、70℃2秒間、前熱処理し、更に第一固定ゾーン150℃で5秒間熱固定し、第二固定ゾーン220℃で15秒間熱固定した。次いで160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し、テンターを出た後に、駆動ロールの周速差を利用して、140℃で縦(長手)方向に弛緩処理を行い、室温まで60秒かけて冷却し、フィルムをクリップから解放、スリットし、それぞれ巻き取り、厚さ125μmの二軸延伸PETフィルムを得た。この二軸延伸PETフィルムのTgは79℃であった。
【0123】
〈下引き塗布液A〉
アクリル共重合体 40質量部
化合物(G) 50質量部
ポリグリセリン 10質量部
塗布液中の全固形分が4%となるように純水にて仕上げた。
【0124】
アクリル共重合体:メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/アクリル酸/メタクリル酸ヒドロキシエチル/アクリルアミド=30/47.5/10/2.5/10、重量平均分子量50万
【0125】
【化6】
Figure 2004286795
【0126】
(支持体の熱処理)
懸垂式熱弛緩装置を用いて、温度:180℃、搬送張力:230kPa、時間:15secの条件で弛緩熱処理し、更に室温まで10℃/minで冷却してから巻き取った。
【0127】
(帯電防止層)
熱処理した支持体に、下引き塗布液Bを乾燥膜厚0.35μmになるようにワイヤーバーで塗布し、80℃2分で乾燥し、帯電防止層付き支持体を作製した。
【0128】
〈下引き塗布液B〉
Figure 2004286795
[熱現像感光材料の作製]
(バック層面側の塗布)
以下の組成のバック層塗布液1とバック保護層塗布液1を、それぞれ塗布前に絶対濾過精度20μmのフィルターを用いて濾過した後、押し出しコーターで前記作製した帯電防止層付き支持体上に、合計ウェット膜厚が60μmになるよう、毎分50mの速度で同時重層塗布し、70℃で4分間乾燥を行った。
【0129】
〈バック層塗布液1〉
Figure 2004286795
【0130】
【化7】
Figure 2004286795
【0131】
〈バック保護層塗布液1〉
Figure 2004286795
(ハロゲン化銀粒子の調製)
純水900ml中にゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(96/4)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウムと表1のように(NHRhCl(HO)を5×10−6モル/リットルを含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加しNaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.06μm、投影直径面積の変動係数8%、{100}面比率86%の立方体沃臭化銀からなるハロゲン化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整した。
【0132】
(有機脂肪酸銀乳剤の調製)
水300ml中にベヘン酸10.6gを入れ90℃に加熱溶解し、十分攪拌した状態で1Mの水酸化ナトリウム31.1mlを添加し、そのままの状態で1時間放置した。その後30℃に冷却し、1Mのリン酸7.0mlを添加して十分攪拌した状態でN−ブロモ琥珀酸イミド0.01gを添加した。その後、あらかじめ調製したハロゲン化銀粒子をベヘン酸に対して銀量として10モル%となるように40℃に加温した状態で攪拌しながら添加した。更に1M硝酸銀水溶液25mlを2分間かけて連続添加し、そのまま攪拌した状態で1時間放置した。
【0133】
この乳剤に酢酸エチルに溶解したポリビニルブチラールを添加して十分攪拌した後に静置し、ベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を含有する酢酸エチル相と水相に分離した。水相を除去した後、遠心分離にてベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を採取した。その後東ソー(株)社製合成ゼオライトA−3(球状)20gとイソプロピルアルコール22mlを添加し1時間放置した後濾過した。更にバインダー3.4gとイソプロピルアルコール23mlを添加し35℃にて高速で十分攪拌して分散し有機脂肪酸銀乳剤の調製を終了した。
【0134】
(感光層乳剤組成)
Figure 2004286795
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
【0135】
【化8】
Figure 2004286795
【0136】
【化9】
Figure 2004286795
【0137】
(表面保護層組成)
表面保護層塗布液を下記のように調製した。
【0138】
Figure 2004286795
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
【0139】
(防湿層の塗布)
表1及び下記に示す組成となる防湿層になるように塗布液を作製し、絶対濾過精度20μmのフィルターを用いて濾過した後、減圧押し出しコーターで前記作製した熱現像感光材料の表面保護層側に、ウェット膜厚が15μm、ドライ膜厚3μmになるよう、毎分50mの速度で塗布し、70℃で4分間乾燥を行い、熱現像感光材料試料No.1〜11を作製した。
【0140】
Figure 2004286795
尚、試料No.3及び5には上記フッ素系界面活性剤の代わりに、下記炭化水素系界面活性剤を20mg/mの付き量になるよう添加した。
【0141】
【化10】
Figure 2004286795
【0142】
【表1】
Figure 2004286795
【0143】
表1から、本発明の熱現像感光材料用支持体を用いて熱現像感光材料を作製した試料は、写真性能(濃度、感度)の湿度耐性、耐傷性が良好なことが分かる。
【0144】
【発明の効果】
結果からも明らかな様に、本発明の熱現像感光材料用支持体及び熱現像感光材料は、種々の環境条件下での写真性能の変動が少なく、高圧下でも耐傷性が良く、印刷用熱現像感光材料として優れていることが分かる。

Claims (7)

  1. 支持体上に有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、及び還元剤を含有する感光層を有し、該感光層側の最外層にラテックス、ワックスエマルジョン及び下記一般式(1)、(2)または(3)で表されるフッ素系界面活性剤で構成された防湿層を有することを特徴とする熱現像写真感光材料。
    一般式(1)
    Rf−(L1)m−(Y1)n−X
    〔式中、Rfは少なくとも1つのフッ素原子を含有する脂肪族基を表し、L1は2価の連結基を表し、Y1は置換基を有してもよいアルキレンオキサイド基またはアルキレン基を表し、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アニオン性基またはカチオン性基を表し、mは0または1〜5の整数を表し、nは0または1〜40の整数を表す。〕
    一般式(2)
    Rf−(O−Rf’)n’−L2−X’m’
    〔式中、Rfは少なくとも1つのフッ素原子を含有する脂肪族基を表し、Rf’は少なくとも1つのフッ素原子を含有するアルキレン基を表し、L2は単なる連結手または連結基を表し、X’はヒドロキシル基、アニオン性基、カチオン性基を表し、n’及びm’はそれぞれ1以上の整数を表す。〕
    一般式(3)
    〔(Rf”O)n”−(PFC)−CO−Y2〕k−L3−X”m”
    〔式中、Rf”は炭素原子を1〜4個含有するペルフルオロアルキル基を表し、(PFC)はパーフルオロシクロアルキレン基を表し、Y2は酸素原子または窒素原子を含有する連結基を表し、L3は単なる連結手または連結基を示し、X”はアニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基、または両性基を含む水可溶化極性基を表し、n”は1〜5の整数を表し、kは1〜3の整数を表し、m”は1〜5の整数を表す。〕
  2. 前記防湿層の透湿度が1〜40g/m・24hrであることを特徴とする請求項1に記載の熱現像写真感光材料。
  3. 前記ラテックスを構成する組成に官能基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱現像写真感光材料。
  4. 前記官能基がグリシジル基または活性メチレン基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
  5. 前記ワックスエマルジョンがパラフィン系であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
  6. 前記感光層に造核剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
  7. 前記支持体が低熱収縮性支持体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
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US9091873B2 (en) 2006-06-23 2015-07-28 Lg Display Co., Ltd. Apparatus and method of fabricating thin film pattern

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