JP2004286664A - 故障診断用コイルの設計方法、プリント基板、故障診断システム - Google Patents

故障診断用コイルの設計方法、プリント基板、故障診断システム Download PDF

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Eigo Nakagawa
英悟 中川
Koji Adachi
康二 足立
Kaoru Yasukawa
薫 安川
Kiichi Yamada
紀一 山田
Koki Uetoko
弘毅 上床
Tetsukazu Satonaga
哲一 里永
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Abstract

【課題】基板の故障を診断するために使用される磁界センサ用のコイルを適切な形状や位置に予め配置することを可能とするコイルの設計方法を提供する。
【解決手段】検査対象の配線パターン22を流れる駆動電流の周波数とコイルにより観測される誘導起電力との関係を示す誘導起電力周波数特性に基づいて、誘導起電力検出感度が所定レベル以上である周波数範囲を特定する。駆動周波数とコイル線長との関係を示すコイル長周波数特性に基づいて、特定した周波数範囲に対応する配線長の範囲に、コイル30の配線長を設定する。この配線長の範囲で、配線パターン22に対してのコイル30の配置位置と形状を、パターン形成時の物理的制約や磁束密度分布・開口面積・巻回数などを考慮して、コイル30で観測される誘導起電力に対する検出感度がより高くなるように設定する。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回路基板の配線や搭載部品の故障の有無を診断する故障診断システムに使用される、磁界センサとして機能するコイル部材(センサコイル)の設計方法、並びにコイル部材が搭載されたプリント基板、このプリント基板を備えた故障診断システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータや複写機などの電子機器は、近年、性能、機能の向上に伴い、益々、それらを実現するための様々な用途のアナログおよびデジタルの電子回路がプリント基板の形で格納されてきている。
【0003】
また、自動車や航空、ロボットや半導体設計装置など、他の産業機器においても動作制御などの手段として、信頼性が高く、高速・高精度での動作が可能な電子回路基板が数多く搭載されている。これらの電子回路基板は一連の機能を実現するために、様々な形でケーブルを介して接続されることにより、所望のスペックが実現されている。
【0004】
このような基板が搭載される機器が使用される環境は、通常はオフィス内であったり、家屋内であったりするが、それ以外の過酷な環境下で使用される場合もあり、非常に多岐にわたっている。特に使用環境が劣悪である場合には、通常の方法で使用していたとしても、検出が困難な様々な異常や故障が発生し、その修復には多大な労力を要することになる。
【0005】
また、通常の使用環境下で使用している場合でも、電子回路の異常や故障が発生し、その頻度は必ずしも低いとは言えず、検出箇所を特定できないこともしばしば生じていた。さらに、電子回路基板に異常が発生した場合には、安全性やコストなどの面から早急な対応が必要でもあった。
【0006】
故障診断の一般的手法としては、テスターなどの測定装置を用いて主要な個所の電圧や信号波形を監視(モニタ)しながら故障個所の特定する。しかし、このような診断方法では様々な個所の測定を行なわなければならず、故障診断に手間がかかってしまい、作業効率が悪いという問題があった。
【0007】
そこで、効率のよい診断手法として、装置の起動時などに装置自身が各基板の診断を行なうようにした自己診断システム(Diagnostics system)がある。この自己診断システムでは、たとえば、装置が動作しているときの信号パターンを回路モジュールごとあるいは基板ごとにモニタして予め記憶してある期待値と比較し、故障発生の有無を診断し、故障箇所を特定するようにしている。
【0008】
たとえば、複写機やプリンタなどの異常や故障情報の連絡がサービスセンタに入った場合、修理担当者が現地に駆けつけて機器に記録されている故障個所情報や故障履歴の情報などをもとに故障部位の特定を行ない、交換する、あるいは修復作業を行なう、などの措置手段を講ずることがある。あるいは、これらの機器がネットワークに接続されており、自動的にこれらの情報を管理する部署へ、状態の管理や故障情報などを伝送する場合には、これらの情報をあらかじめ解析した上で、修理担当者により、同様の措置が取られることもある。
【0009】
しかし、上述のような異常や故障が発生した場合には、通常、機器は使用不可能となり、ダウンタイムが生じてしまう、というユーザ側にとってのデメリットが発生する。また、メーカ側にとっても、故障部位の特定に手間取ったり、故障部位が必ずしも正確に特定できるとは限らず、故障と考えられる部分を全て交換するなどの措置により、多大なコストが発生したり、あるいは修理そのものに時間がかかってしまう、マンパワー的な対応が追いつかない、といったような状況が発生している。したがって、ユーザ側およびメーカ側双方にとって、多大な損失を被る状況が多発しているという事実がある。
【0010】
そこで、故障部位を特定したり発生自体を予測したりする場合、特定する精度を上げたり、特定するまでの時間的なロスを削減したりするなど、様々な異常状態や故障状態を漏れなく把握する、これらの構成を簡単かつ低コストで実現する、といった方法について様々な試みがなされている。
【0011】
たとえば、非特許文献1には、渦電流探傷技術を使ってプリント配線の欠陥を検出する手法が提案されている。この手法は、ターゲット(故障診断の対象部位)とする配線を流れる電流から発生する磁界を検出するための超小型でかつ独自の形状を有する磁界検出プローブを使用して、図6に示すように、非接触方法により、基板の配線を非接触スキャンする方式によって、ICの故障なども含めた基板で発生する異常を検出する手法である。この方式によれば、現状の高密度配線プリント基板における配線の断線や線幅異常を、高速かつ機械的なストレスのない状態で実現することができる。
【0012】
【非特許文献1】
藤城久・山田外史・岩原正吉、“渦電流探傷技術によるプリント配線の欠陥検出”、[online]、[平成14年9月1日検索]、インターネット<URL:http://magmac1.ec.t.kanazawa−u.ac.jp/magcap−j/research−j/ecta−j.html>
【0013】
また、特許文献1には、微小集積回路配線を流れる電流の電流値を、図7に示すように磁気センサヘッドを用いて、非接触かつ高精度に検出する技術が開示されている。
【0014】
また、特許文献2には、プリント基板の腐食、マイグレーションに起因する短絡などの劣化を定量的に診断可能にする技術が開示されている。また、特許文献3には、放射パターンを有する基板を、故障診断を行ないたい基板に接触させ、時間的に変化する電圧を入力して電流を検出することにより、配線断線を見つけ出す技術が開示されている。
【0015】
【特許文献1】
特開平10−177062号公報
【特許文献2】
特開平7−249840号公報
【特許文献3】
特開平8−240628号公報
【0016】
上述した非特許文献1および特許文献1の何れの手法も、回路基板の配線や搭載部品内部を流れる電流から発生する磁束を磁界センシング部としての機能をなすコイル(センサコイル)に通過させることで、磁界センシング部に発生する誘導起電力を読み取り、この読み取った誘導起電力と予め測定しておいた正常状態の誘導起電力とを比較することにより、故障の有無を診断するという手法である点で共通する。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、非特許文献1および特許文献1の何れのものも、磁界をセンシングする手段として高価な専用プローブ(センシング用プローブ)を使用する必要があるため、故障検出コストが掛かる。
【0018】
また、特許文献1に記載の技術のように、コイルセンサにより磁界を測定することにより電子回路システムの状態を把握する故障回路基板特定装置に関する技術では、電子回路駆動時に発生する磁界を読み取ることにより回路の状態を検知するようにしており、読み取る電流変動量が微小であればあるほど高感度である必要がある。したがって、検査の都度、磁界を読み取るターゲットに対してセンサ出力として得られる誘導起電力が最適感度を有するような配置を試行錯誤で見つける必要があった。このことは、故障検査を行なう上で、時間やコストの面で問題となっていた。
【0019】
また、特許文献2や3に記載の技術では、基板上で発生する故障すべてについて非接触で検出を行うことが困難である、という問題がある。
【0020】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、感度の高いセンサ位置を見つける手間を省くことができるように、磁界センサ用のコイルを適切な形状や位置に予め配置することを可能とするコイルの設計方法を提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、磁界センサ用のコイルを搭載したプリント基板や、このプリント基板を用いた故障診断システムを提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る磁界センシング部としての機能をなすコイルの設計方法は、回路基板上の搭載部品による駆動電流に基づき発生する磁束をコイル開口部に通過させることで誘導起電力を読み取り、この読み取った誘導起電力と予め測定しておいた正常状態の誘導起電力とを比較することにより、回路基板の配線や搭載部品の故障の有無を診断する故障診断方法に使用されるコイルの設計方法であって、駆動電流の周波数とコイルにより観測される誘導起電力との関係を示す誘導起電力周波数特性に基づいてコイルで観測される誘導起電力に対する検出感度が所定レベル以上である周波数範囲を特定し、駆動電流の周波数とコイルをなす電線の長さとの関係を示すコイル長周波数特性に基づいて、特定した周波数範囲に対応する配線の長さの範囲に、磁界センシング部としての機能をなすコイルを形成するための配線の長さを設定することとした。
【0023】
検出感度が所定レベル以上である周波数範囲は、より具体的には、誘導起電力振幅の最大値を含むピーク周波数の半値幅とするとよい。勿論、半値幅に限らず、所定感度以上が得られる周波数幅に設定することでも、その希望の所定感度を維持可能なコイルの配線長を特定可能である。
【0024】
高感度を確実に維持可能なコイル長を特定することで、コイルの配置位置にある程度の余裕が生まれる。これにより、最適感度を有するようなコイルの配置を試行錯誤で見つける煩わしさを軽減することが可能となる。
【0025】
本発明に係るコイルの設計方法を実施することで、コイルを基板上に形成する装置を発明として抽出し得る。この装置は、駆動電流の周波数と前記コイルにより観測される前記誘導起電力との関係を示す誘導起電力周波数特性に基づいてコイルで観測される誘導起電力に対する検出感度が所定レベル以上である周波数範囲を特定する手段と、駆動電流の周波数とコイルをなす電線の長さとの関係を示すコイル長周波数特性に基づいて、特定した周波数範囲に対応する配線の長さの範囲に、磁界センシング部としての機能をなすコイルを形成するための配線の長さを設定する手段とを備えるものとすればよい。さらに好ましくは、設定された配線の長さの範囲で、駆動電流が流れる信号配線に対してのコイルの配置位置とコイルの形状とを、コイルで観測される誘導起電力に対する検出感度がより高くなるように設定する手段を備えるものとするとよい。
【0026】
この装置は、電子計算機(コンピュータ)を用いてソフトウェアで本発明のコイル設計方法を実施するように構成することで実現することもできる。また、このためのプログラムやこのプログラムを格納した記録媒体を発明として抽出することも可能である。なお、プログラムは、コンピュータ読取り可能な記憶媒体に格納されて提供されてもよいし、有線あるいは無線による通信手段を介して配信されてもよい。
【0027】
本発明に係る第1のプリント基板は、本発明に係る上記コイルの設計方法を利用することで形成されるプリント基板であって、駆動電流の周波数とコイルにより観測される誘導起電力との関係を示す誘導起電力周波数特性、並びに駆動電流の周波数とコイルをなす電線の長さとの関係を示すコイル長周波数特性との関わりにおいて、コイルで観測される誘導起電力振幅の最大値を含むピーク周波数の半値幅を決定する周波数に対応する長さの範囲に、コイルを形成する配線の長さが設定されているものとした。
【0028】
本発明に係る第2のプリント基板は、コイルを形成する配線の一部が、検査対象である信号配線に対して並行となるように配置されているものとした。なお、このよう配置手法は、本発明に係る第1のプリント基板にも適用可能である。
【0029】
本発明に係る故障診断システムは、本発明に係る第1や第2のプリント基板と、回路基板の配線や搭載部品内部を流れる電流から発生する磁束が磁界センシング部としての機能をなす前記プリント基板に配されたコイルの開口部を通過することで磁界センシング部に発生する誘導起電力を読み取り、この読み取った誘導起電力と予め測定しておいた正常状態の誘導起電力とを比較することにより、回路基板の配線や搭載部品の故障の有無を診断する故障診断部とを備えるものとした。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。最初に、基本的な仕組みについて説明する。
【0031】
<第1実施形態>
図1は、本発明を実現するための基本的な構成と考え方を説明する図である。ここで図1(A)は、基板レイアウトと故障診断システムの概要を示す。また図1(B)は、図1(A)に示す回路基板に設けたコイル部分を拡大して示した概略図であり、図1(C)は、このコイル部分の等価回路図である。
【0032】
図1(A)に示すように、故障診断システム1を構成する回路基板10には、回路部材20(たとえばIC3,IC4やコネクタなど)が搭載され、この回路部材20から配線が引き出されて、回路基板10上にプリントパターンとして形成されている。このプリントパターンで形成された配線を以下配線パターン22という。回路部材20としては、抵抗素子、誘導素子、あるいは容量素子などの受動部品であってもよいし、トランジスタやIC(Integrated Circuit)などの能動部品であってもよい。また、回路基板10には、故障診断対象の回路部材20の動作状態を検知するため、磁界検知部をなすコイル30を、開口部30aが故障診断対象の回路部材20から引き出されている配線パターン22に対して非接触となるように形成する。コイル30をプリントパターンで形成しているので、配線パターン22に対してコイル30を固定して設けることができる。
【0033】
このような構成によれば、プリント配線パターン22によりコイル30を形成しているので、特段の固定部材を用いることなく、磁界センシング部として機能するコイル30と回路基板10の物理的な位置関係を固定することができる。そしてこれにより、故障診断中の誘導起電力の状態を確実に安定化させることができる。つまり、故障診断の判断指標となる誘導起電力を精度よく取得することができ、診断性能も向上する。
【0034】
コイル30は、一部(図の矢指部32)において両端を開放状態にして、検証対象の配線パターン22の近傍で、プリントパターンにてコイル巻線を形成するとよい。コイル30の開口部30aは、1ターンもしくは数ターンのコイルを形成し、磁界検出部として機能するようになる。
【0035】
コイル30の開放端32には、回路基板10における故障の有無を検出するための故障診断部90が接続されるようになっている。故障診断部90は、回路基板10に電源が供給され回路部材20が動作することにより発生する、この回路基板10に垂直方向(図の奥行き方向)の磁界によりコイル30に誘起される誘導起電力を検出する。そして、予め測定しておいた正常状態の誘導起電力(つまり期待値)と比較することにより、その診断対象箇所、惹いては回路基板10における故障の有無を診断する。なお、故障診断部90を回路基板10上に設けることで、装置の起動時などに装置自身が基板の診断を行なう自己診断システムを構築するようにしてもよい。
【0036】
図示した例では、回路基板10上に実装されている回路部材20としてのIC(集積回路)3とIC4間の動作状態を知るために、2つのICを接続している配線パターン22の近傍にコイル30を形成し、配線パターン22を流れる電流が発生する磁界HBをコイル30で検出し、それによってコイル30の開放端32の両端32a,32bに生じる誘導起電力を読み取る。つまり、開放端32は、コイル30により検知される信号を抽出し故障診断部90に引き渡す信号抽出部としての機能を備える。開口部30aの外側から引き出された配線パターンは、導出部30bを介してそのまま開放端32aまで導かれている。これに対して、開口部30aの内側の配線パターンは、バイアホールパターン(スルーホールパターンともいわれる)34にて一旦他の層を経由し、再度バイアホールパターン34にて元の層に戻されて開放端32まで導かれる。
【0037】
なお、ここでの開放端32は、回路基板10上に設けられたコイル30と故障診断部90とのインタフェース部分を意味するものとする。コイル30の開口部30aから引き回された配線部分(導出部30b)が開放端32に接続され、概ね回路基板10の端縁部分にこの開放端32が設けられ、この開放端32からさらに延長ケーブルを介して故障診断部90に信号が供給される。
【0038】
延長ケーブルが、後述するコイル30のインピーダンス解析に影響を与えないよう、開放端32の極近傍にバッファアンプを設けることが望ましい。バッファアンプを設けない場合、この延長ケーブルも、コイル30の一部(導出部)をなすこととなる。
【0039】
ここで、コイル30により磁界を測定することで故障の有無を判断する場合、磁界を読み取るターゲット(本例では配線パターン22)に対してコイル出力(すなわちセンサ出力)として得られる誘導起電力が最適感度を有するように、コイルを形成する配線の長さやコイル形状、および配線パターン22との配置関係について、下記のように決定する。そして、この決定した状態を維持するように、実際に、プリント基板(回路基板10でもよいし別基板でもよい)上にコイル30をパターン形成する。
【0040】
図1(B)は、長方形型に形成された4巻きのコイル30を例にとり図示したものである。このコイル30を形成する開口部30aの縦と横の長さをp2およびp3、コイルから開放端32までの導出部30bの距離をp1とすると、このコイル30をなす配線の総延長Pは、P=2p1+8(p2+p3)である。このうち、誘導起電力の発生に寄与する部分は、コイル巻線を形成する開口部30aでありその線長は8(p2+p3)である。導出部30b(その線長2p1)は寄与しない。
【0041】
開放端32以降を総延長に含めて考えてもよい。コイル30とそれを外部に取り出す開放端32の双方を総延長として考える理由は、たとえば10巻きコイルの両端がコイルから1mm離れているか1m離れているかによって伝送路の観点からセンシングされる磁界に基づく誘導起電力の振幅が異なってくるからである。ただし、コイル30を構成する開口部30aや導出部30bでの影響と導出部30bでのそれとを比較すると後者の影響の方が小さいことが実験から分かっている。すなわち、コイル構成部はコイル間の浮遊容量と伝送路としての寄生容量が存在するが、開放端32側は後者のみであるので、効果の部分ではコイル30のみの調整に関して考えることで十分である。
【0042】
図1(C)は、この総延長Pのコイル30についてのインピーダンス成分に着目した等価回路を示しており、容量成分Cとインダクタンス成分Lによるフィルタ回路が形成されている。
【0043】
したがって、配線パターン22にて磁界を発生する回路部材20にて駆動される信号の駆動周波数fの値と、コイル30のインピーダンス成分との関係によって、コイル30が検知する誘導起電力の大きさが増減する。これは、コイル30の開放端32に生じる誘導起電力波形の出力振幅に反映される。
【0044】
図2は、駆動電流の周波数に対する誘導起電力やコイル長の関係を示す特性図である。ここで、図2(A)は、駆動電流の周波数とコイルにより観測される誘導起電力との関係を示す誘導起電力周波数特性図である。また図2(B)は、駆動電流の周波数とコイルをなす電線の長さとの関係を示すコイル長周波数特性図である。
【0045】
図2(A)に示すように、ある総延長Pで形成されたコイルについて、形成するコイルの巻き数を一定とすると、ある駆動周波数まではその周波数に基づいた電流Iの時間変動量dI/dtの増加に応じて極大値を示しながら出力振幅が増加する傾向を示す。そして、コイルを形成する材料などで決定されるインピーダンス成分の影響により、ピーク周波数fpeak以降には出力振幅が減少する。このピークを有するグラフ形状は、コイルを形成する総延長Pの値が増加するほど低周波数側へシフトする。
【0046】
そこで、グラフ形状に含まれる1つ1つの極大値を、個々の周波数スペクトルの重ね合わせのように見立て、ピークを与える周波数fpeakから振幅が所定値以上を維持し得る周波数範囲を、コイル総延長Pの範囲に使用する。こうすることで、振幅が所定値以上を維持した状態で、回路基板10上に磁界検知用のコイルを形成できる。換言すれば、所定感度以上を維持することの可能なコイル巻線の長さを決定し、その範囲でコイルを実際にパターン形成する。磁界検出部に適用し得るコイル30の総延長Pが、診断対象部位の動作中心周波数(たとえば回路側の駆動周波数)で決定される。
【0047】
“振幅が所定値以上”としては、たとえば、誘導起電力振幅のピークを示すスペクトル(周波数fpeak)についての半値幅(振幅が1/2となる部分)をとり、そのときの周波数をf0,f1とし、次に説明するコイル総延長Pの決定に使用する。図中、周波数fc0は、ピークを示すスペクトルの、低周波側の半値幅に対応する周波数であり、周波数fc1は、周波数fpeakの高周波側の半値幅に対応する周波数である。
【0048】
図2(B)は、コイル30に発生する誘導起電力Vの振幅が最大になるための総延長Pとピーク周波数fpeakの関係を示したグラフである。図中、Pmaxは半値幅を規定する低周波側の周波数fc0に対応するコイル総延長であり、Pminは半値幅を規定する高周波側の周波数fc1に対応するコイル総延長である。読取り対象の信号周波数fに対して、コイル30を形成する配線の材料ごとに一元的に、コイル30の総延長Pが決定されることを示している。
【0049】
横軸を“ピーク周波数fpeak”としているのは、以下の理由による。すなわち、図2(A)が総延長ごとに存在する訳であるから、図2(B)では逆に総延長Pごとのピーク周波数が横軸に採られるということである。つまり、図2(B)で示されているピーク周波数fpeakはあくまである総延長Pに対してfpeakが決まる、と言っているので、他の総延長P’ではfpeakが存在する、ということになる。
【0050】
図2(A)において、ピークを示すスペクトルの半値幅に対応する周波数f0,f1に対応するコイル総延長PminおよびPmaxが決定される。そこで、読み取る信号の周波数fに応じて適用するコイル30の総延長PをPminからPmaxの範囲に調整するように設計する。特に、微小信号を読み取る際には、高い感度が必要となるので、出力振幅がピーク近傍にくるように、総延長Pを調整する必要がある。
【0051】
このようにして、好ましい感度にするには、動作中心周波数に応じてコイル30の総延長Pの範囲が決定される。次に、この決定された総延長Pの範囲で、さらに、最大感度を得るためのコイル形状や配置を求める。以下、コイル形状や配置の決定方法について説明する。
【0052】
図3は、上述した適用手順に基づいて、実際にコイルを配置する手法の基本的な考え方を示した図である。ここでは、4つの頂点を持ち、4つの線分(直線に限らず、曲線を含む;折線は頂点を形成するので含まない)で囲まれた4角形の領域にてコイル30を形成するものとする。
【0053】
図中、線分Lx1,Lx2,Lx3,Lx4(纏めてLxαともいう;αは1,2,3,4)は、回路上の配線パターン22を流れる電流により生じる磁界を読み取るコイルの配置領域を示している。
【0054】
なお、ここで「並行に配置」とは、「対象の配線パターン22のパターン形成状態に沿って、配線パターン22とLx1やLx4の各間が、ほぼ等距離を維持して」という意味である。配線パターン22が直線であれば、Lx1,Lx4も直線となり、Lx2,Lx3とともになす開口部30aの形状が方形となるが、図示するように、配線パターン22が曲線の場合には、方形とはならない。しかしながら、この場合にも、開口部30aは4つの頂点、4つの辺で形成される4角形の概念に含まれるものとする。
【0055】
また、線分Lxαの全てが、配線パターン22に対して一方の側に配されるようにする。こうすることで、配線パターン22がコイル30の開口部30aを跨ぐことを防止することできる。すなわち、コイル形状の磁界センシング部で包囲する領域(開口部30a)には、センシング対象の電流経路を含まないように構成する。そして、これにより、その開口部30aには、配線パターン22に流れる電流により発生する同一方向の磁力線のみが通過するようになる。このような位置に設定することで、逆方向の磁力線による相殺を防止し、感度を確実に向上させるようにする。
【0056】
なお、実際にコイルをパターニングする際には、既存の回路基板の構成に手を加えることないように配慮するとよい。たとえば、診断対象の回路基板と別体のプリント基板である支持基板上にパターニングする手法は、その典型例である。
【0057】
具体的には、この距離(Lx2とLx3がLx1とLx4を繋ぐ距離)によってコイル内(すなわち開口部30a)を通過する磁束の量が異なってくる。たとえば、Lx1とLx4を長くし、Lx2とLx3を短くすると、コイル内を通過する磁束の量は増加し、反対にLx1とLx4を短くし、Lx2とLx3を長くすると、コイル内を通過する磁束の量は減少する。これは、配線パターン22に近い部分ほど磁束密度が高く、遠い部分ほど磁束密度が低いからである。したがって、回路を回路基板10上に構成するアートワーク(パターン設計)の制約と絡めて、4つの長さLxαを決定するようにする。
【0058】
ただし、本実施形態では、前述のように、「配線パターン22を流れる電流の駆動周波数fから決定されたコイル展開時の総延長P以内の長さで」という制約があるので、Lx2,Lx3をLx1,Lx4に対して独立に変えることはできないので、その決定方法は、さらに複雑となる。たとえば、決定した総延長Pを一定に維持しつつ、Lx1〜Lx4で確定されるコイル形状を方形とする場合を考えると、磁界検知部として機能し得る開口部30aの面積Sが図3(B)に示すように変わる。そして、Lx2,Lx3とLx1,Lx4とが等しいとき(つまり正方形であるとき)に面積Sは最大となる。配線パターン22からの距離に拘わらず磁束密度が一定であれば、面積Sが最大となるところが最大感度の得られる最適解であるけれども、前述のように、配線パターン22からの距離に応じて磁束密度が変わる(たとえば図3(C)参照)。
【0059】
さらに、巻きの回数を増やす場合、面積を同一に維持できれば、開口部30aにて得られる起電力は図3(D)に示すように、巻きの回数nに比例する。しかしながら、決定した総延長Pを一定に維持しつつ、巻きの回数nを変える場合には、図3(E)に示すように、Lxαの取り得る範囲も変わり、それに伴い形成可能な面積Sも変わる。
【0060】
したがって、たとえば、図3(C)や図3(E)に示すように、Lx2とLx3を短くして開口部30a内を通過する磁束の量が増加するように設計しても、面積Sが小さくなり、トータルの磁束は必ずしも増加しない状態もある。加えて、ここでは、導出部30bを割愛して説明しているが、導出部30b=0でない場合には、その分だけ、開口部30aの形成に寄与し得る実質的な総延長P’が小さくなる。
【0061】
実際にコイル30を形成する際には、図3(B)〜図3(E)に示した事項やパターン形成時の物理的制約などを総合的に考慮して、その形状を確定する必要がある。ただし、何れの場合においても、図2に基づく総延長Pの決定手法を利用することで、誘導起電力について、より高い感度を有し得るコイル長を特定し得る。そして、この特定したコイル長に基づき、現実に即したコイル形状や配置を決定する。最適解は、基板設計(アートワーク)とも関連するが、理論的には読取対象の極めて近傍に細長く、しかも総延長を短く作るのがベストである。よって、より高い感度を得ることの可能なコイル形状や配置を効率的に設計が可能となる。
【0062】
以上のように、磁界センシング部を構成するコイル形状部分の長さと、コイルで観測される誘導起電力の振幅が最大値を示す周波数との関係において、コイルを形成する巻線の総延長を、コイルで観測される誘導起電力振幅の最大値を含むスペクトルの所定幅(前例では半値幅)を決定する周波数に対応する長さの範囲となるように、4つの長さLxαやこれで決まるコイル形状、さらには故障診断部位としての配線パターン22との位置関係を設定し、そのようにコイルを形成すれば、上記図2および図3で示したことから、回路の駆動状態を知るための誘導起電力をより高い感度で読み取ることが可能となる。
【0063】
<具体例;その1>
図4は、上記考察に基づき形成されるコイルの具体的な事例(第1例)を説明する図である。この図4に示す事例は、配線パターン22上を流れる電流が発生する磁界を読み取るために、コイル30を適用した配置の例を示している。配線パターン22上で動作するロジック信号の動作周波数fは、たとえば4MHzであるとする。
【0064】
図2(B)に示したグラフの関係から、最大振幅を有するコイル30の総延長Pが50cmであることを読み取った場合、銅配線によりパターン形成されるコイル30の開放端32の端子32aと端子32bの間の総延長Pが50cm以内となるように、コイル30の実体部分(すなわち磁界検出部としての有効となる開口部30a)と導出部30bの配線長や、(開口部30aの)コイル形状、並びに、(開口部30aと)配線パターン22との位置関係を設計する。
【0065】
図1(B)にコイルの総延長Pに含まれる部分の考え方(すなわち開口部30aだけでなく導出部30bも含めて考える)を示したが、実際にコイルをプリント基板に実装して形成する場合には、バイアホールパターン34の長さなど、回路基板10上に形成する際に発生する独自の形状からくる長さについても、総延長Pの一部として考慮に入れるようにする。
【0066】
すなわち、回路基板10上にてコイル30をプリントパターンにて形成する場合、1ターンコイルであれば、コイル中心部なす開口部30aを形成した後、導出部30bを同一面上に形成し、そのまま開放端32まで導くことで、コイル30の全体を形成することができる。ところが、プリント配線パターン22で複数巻きのコイルパターンを形成する場合、開放端32を同一面上に形成するためには、少なくとも2つの層を使用しなければならい。この場合、2つの層のパターンを接続する仕組み、たとえばバイアホールパターン(スルーホールパターンともいわれる)を必要とし、その分(層間距離)が総延長Pに影響を及ぼすからである。
【0067】
信号抽出部としての開放端32の位置を決定すると、配線パターン22の近傍にコイル30の開口部30aを形成しようとすれば、開放端32の位置と検査対象配線パターン22の位置との関係で、開口部30a用のコイル巻線(実質的な磁界検知部をなす)を形成するために使用し得る線長が決まる。
【0068】
ここで実際には、回路基板10上には、検査対象の配線パターン22だけでなく、その近傍には回路部材20や、それから導出される他の配線パターン22bが多数形成されており、設計対象のコイル30を形成し得るエリアには自由度がないのが通常であろう。このような場合、回路部材20や他の配線パターン22bが形成されている面とは別の面(レイア;層)に開口部30aを形成する手法を採ってもよい。また、多数巻のコイルとすることで、開口部30aの占有する領域を狭くしてもよい。ただし、その分だけ磁束の通過し得る開口面積Sが少なくなる。
【0069】
開口面積Sを同一にしたまま、巻きの回数nを増やす場合、検出感度はその回数nに比例するであろう。しかしながら、巻きの回数nに連動して開口面積Sが変われば、配線パターン22に対してより遠くの方の配線の位置も変わってくるので、前述の図3(B)〜図3(E)に示したように、磁束密度との関わりで、検出感度も変わってくる。磁束密度の変化特性が1次関数で規定される場合には、一義的に決められるであろうが、そのような関係にはないので、巻きの回数nと開口面積Sの検出感度に与える影響も加味して、全体的にバランスを取る。
【0070】
たとえば、ここでも、4つの頂点を持ち、4つの線分で囲まれた4角形の領域にてコイル30を形成するものとする。先ず、形成する開口部30aの巻き数を決定したら、次に、開口部30aを形成する線分Lx11、Lx12、Lx13、Lx14の長さを決定し、Lx11に相当する部分を配線パターン22の極めて近傍に配置するように設計する。
【0071】
こうすることで、磁界をセンシングするためのコイル形状の磁界センシング部をなす開口部30aは、センシングする電流経路である配線パターン22に並行して配置され、かつ、開口部30aで包囲する領域には、センシングする対象である電流経路(配線パターン22)を含まないように配置される。つまり、開口部30aには、配線パターン22から発生する磁力線については、同一方向の磁力線のみが通過するような位置に配線されることとなる。
【0072】
このとき、検査対象の配線パターン22に隣接する非検査対象の配線パターン22bから発生する磁界が開口部30a内を通過する誘導起電力による影響が大きいことが予測される場合も生じる。この場合には、配線パターン22の長手方向に対する垂直方向であるLx12とLx13の長さを、Lx11とLx14に対して相対的に長くとるようにする。こうすることで、配線パターン22の極近傍に開口部30aを形成する場合に比べて感度が低下するものの、外乱要因である配線パターン22bの影響を少なくすることができ、全体としての判定精度を高めることができる。なお、2つの配線パターン22の駆動周波数が異なる場合には、開口部30aのレイアウト上の工夫に代えて、周波数解析をして2つの成分を切り分けた判定処理をすることで、外乱要因である配線パターン22bの影響を少なくすることもできる。
【0073】
<具体例;その2>
図5は、コイルの具体的な形成手法の事例(第2例)を説明する図である。この第2例は、特定の配線パターン22cと、配線パターン22cに隣接する複数の配線パターン22a,22b,22dを流れる電流が発生する磁界を、1つのコイル30で同時に読み取る場合の開口部30aの配置例を示す。ここでも、4つの頂点を持ち、4つの線分で囲まれた4角形の領域にてコイル30を形成するものとする。コイル30の総延長Pの決定までは上述の通りであり、Lx11の長さを決定したら配線パターン22cの近傍に配置するところも同じである。
【0074】
このとき、4つの配線パターン22a、22b,22c,22dのそれぞれでコイルが分割される場合、すなわち開口部30aを配線パターン22β(βはa,b,c,dの少なくとも1つ)が横切る場合、配線パターン22βごとに、自身によって開口部30aを分割して得られる各面積(Sβ1,Sβ2とする)内の磁束数が異なるようにする。磁束数が等しい場合、Sβ1側で誘起される起電力とSβ2側で誘起される起電力の各大きさが等しく、互いに逆極性となり、結果としては、開放端32にて誘起起電力を検知できなくなるので、これを避けるためである。
【0075】
たとえば、4つの配線パターン22a,22b,22c,22dが並行に配置され、これらに対して4角形のコイル30の一辺を並行に配置する場合を考える。そして、図5に示すように、4つの配線パターン22a、22b,22c,22dのうちの配線パターン22a,22bが開口部30aを横切っているものとする。
【0076】
配線パターン22aが開口部30aを横切ることで面積Sa1,Sa2が形成され、配線パターン22bが開口部30aを横切ることで面積Sb1,Sb2が形成される。面積Sa1,Sa2において磁束数が等しくなる条件はSa1=Sa2であり、同様に、面積SB1,Sb2において磁束数が等しくなる条件はSb1=SB2である。よって、この事例では、Sa1=Sa2、Sb1=Sb2とならないように、Lx11,Lx12,Lx13,Lx14の長さを決定してやるようにする。
【0077】
すなわち、コイル形状の磁界検出部で包囲する領域にセンシング対象の電流経路を含んだ構成では、コイル形状の磁界検出部のうち、電流経路に並行して構成される部分までの距離が、電流経路を挟んだ両側で異なっている状態とする。ただし、このような考え方が採れるのは、コイル30の開口部30a部分を対称形状にする場合に適用可能であって、一般論としては、距離や面積で規定することはできず、電流経路を含むことで形成される各領域内の磁束数を異なるものとする必要がある。各領域に起因して発生する、互いに異なる極性の誘導起電力を、異なる大きさとするためである。
【0078】
なお、距離や面積が少しでも異なる、あるいは一方の方向の磁力線総数と他方の方向の磁力線総数との差が少しでも異なることで十分かといえば、そうではない。感度の観点から考えた場合、ある程度の差を持つことが望ましい。たとえば、対称な方形の開口部30aを条件として距離や面積を規定する場合、読取対象とする配線について非対称となるずれが最低でも1mm程度以上あることが好ましい。また、磁力線の総数で規定する場合には、一方の方向の磁力線総数と他方の方向の磁力線総数との差が数倍(たとえば2〜5倍程度)あるとよい。
【0079】
これにより、各配線パターン22a,22b,22c,22dを流れる電流が発生する磁界は、導出部30bで、それぞれの誘導起電力信号が重畳して観測される。重畳して観測される波形特性と、予め正常時に取得しておいた、重畳して観測される波形特性とを比較することで、何れかに故障状態が生じても、一括して故障を診断可能となる。なお、故障解析は、波形パターンの比較に限らず、周波数解析を行なってもよい。
【0080】
また、配線パターン22a,22b,22c,22dごとに電流が流れない場合の誘導起電力波形をも予め観測して、それぞれの磁界が発生する誘導起電力の特性を把握しておくことで、4つの何れかに故障状態が生じた際に、その原因が何れの配線パターンによるものであるのかを特定することも可能となる。
【0081】
上記結果から、各配線に流れる電流が発生する磁界を読み取るコイルを基板上に配置する際、誘導起電力信号の感度がより高くなるように設計するための道筋が明らかとなった。このことから、総延長Pや導出部30bの距離、あるいは開口部30aと非検査対象パターンとの距離など、全体のバランスを取ることで、感度の最大値を与えるコイル形状や配置を求めることも可能となると考えてよい。よって、より適正な、あるいは最適の感度を有するコイルを設計することが可能となる。
【0082】
これをなし得たのは、「コイル形状の磁界センシング部の長さと、磁界をセンシングするためのコイル形状の磁界センシング部で観測される誘導起電力振幅が最大値を示す周波数との関係において、コイル形状の磁界センシング部を展開した場合の長さを決定する」ということを契機としたものである。決定したコイル長に基づき、適正あるいは最適な感度を有するコイルの形状や配置を特定し、その位置にコイルを形成(好ましくは基板上にパターン形成)するようにしたことで、検査の都度、試行錯誤により最適感度を与える位置をサーチする必要がなくなり、これまでと比較して、簡単な構成で、かつ、低コストで、故障を特定することが可能となる。
【0083】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0084】
また、上記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0085】
たとえば、上記実施形態では、磁場をセンシングするコイルの形状を長方形を例に説明したが、コイル形状の磁界センシング部の長さと検知される誘導起電力振幅が最大値を示す周波数との関係に基づいて規定される、コイル形状の磁界センシング部を展開した場合における、感度を確実に高めることが可能な長さに基づくものである限り、コイル形状を具体的に規定するものではない。
【0086】
また、上記実施形態では、コイル30で検知される誘導起電力を故障診断部90へ伝達するために導出部30bを要するという点を考慮し、開口部30aのみでなく導出部30bも含むコイルの総延長によるインピーダンスコントロールからセンシング周波数域を調整する手法を述べたが、これに限らず、コイル構成部のみ(前例では開口部30aの部分)の長さ調節などによる調整も可能である。
【0087】
たとえば、図1において、開口部30aの線長8(p2+p3)を一定に維持したまま、導出部30bの線長2p1だけを変化させると、コイルの総延長Pは変化するので、この導出部30bのインピーダンスL,Cが変わりコイル30全体のインピーダンスも変わる。コイル30全体のインピーダンスが変わると、駆動周波数との関わりで決まるコイル総延長の決定に影響を与える。
【0088】
しかしながら、開口部30aの引出し部分(導出部30bとの境界)の極近傍にバッファアンプを設けることで、導出部30bの影響を排除可能であり、開口部30aの線長のみに基づいた設計が可能となる。
【0089】
また、導出部までの距離を要する場合には、バッファアンプを設けることなく、上記説明における感度が十分得られる範囲でコイルの巻き数を削減して、その部分を導出部にあてるなどの措置も可能であり、このように補正するなどの対処を講じることで、上述したと同様の手法を用いることができる。
【0090】
また、上記実施形態では、コイルの総延長によるインピーダンスコントロールからセンシング周波数域を調整し、その結果に基づいて得られるコイルの総延長に従いコイルの形状や配置を特定する手法を述べたが、コイル総延長の規定の上記手法に拘わらず、任意の総延長で形成されたコイルを使って、コイル形状の磁界センシング部の一部が、センシング対象である信号配線に並行して配置するだけの構成も、従来にない新規な構成であり、また、このような配置をすることで、感度を確実に高めることが可能となるということを新規に発見したものであり、本願発明の権利範囲に含まれる。
【0091】
また、上記実施形態では、検査対象の配線パターンが形成されている基板面と同一の層にコイルをパターン形成していたが、その場所は同一の層に限らない。なお、パターン形成によらず、たとえば、下記の条件を満たすコイル単体を、下記の条件を満たす位置に配置することを排除するものではない。
【0092】
パターン形成する場合には、回路基板10の部品実装面と略平行に配置される、たとえば支持基板を用意し、この支持基板が回路基板10と略平行に配置された状態で支持基板における診断対象部位と対向する位置に設けてもよい。支持基板は、適用する回路基板10と縦横略同サイズであり、回路基板10と支持基板とを略平行に重ねたときに、支持基板上に形成されるコイルが、ちょうど検査対象の箇所へ、上記実施形態で示したような配置関係となり検査対象の箇所には非接触となるように宛われる位置に配置する。支持基板上にコイルをプリント形成する場合、支持基板としては、たとえば、平面状の絶縁性の板であるフレキシブル(可撓性)基板(Flexible Printed Circuit board;FPC基板)を用いるのがよい。ある程度柔軟性があるので、電気的には非接触となりかつ近接して配置する上で都合がよいからである。
【0093】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、コイル形状の磁界センシング部の長さと検知される誘導起電力振幅が最大値を示す周波数との関係に基づいて、感度を確実に高めることが可能な長さであって、コイル形状の磁界センシング部を展開した場合の長さを決定する。これにより、配線を流れる駆動周波数との関係で、誘導起電力をより高い感度で読み取ることが可能となるコイル長の範囲を特定できるようになった。
【0094】
また、特定されたコイル長を参照して、コイル形状や配置を具体的に設計すれば、誘導起電力をより高い感度で読み取ることが可能となるコイルの形状や配置を確実に特定することができるようになる。このようにして、コイル状の磁界検出部を形成すれば、検査の都度、試行錯誤により最適感度を与える位置をサーチする必要がなく、簡単な構成で、かつ、低コストで、故障を特定することが可能となる。
【0095】
また、コイル総延長の規定の上記手法に拘わらず任意の総延長で形成されたコイルを使って、コイル形状の磁界センシング部の一部が、センシング対象である信号配線に並行して配置することで、感度を確実に高めることが可能となるということを新規に発見した。よって、このようにコイル状の磁界検出部を形成すれば、検査の都度、試行錯誤により最適感度を与える位置をサーチする必要がなく、簡単な構成で、かつ、低コストで、故障を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実現するための基本的な構成と考え方を説明する図である。
【図2】コイルにて検知される誘導起電力波形の様子をグラフに図示したものである。
【図3】決定された長さを参照して、実際にコイルを配置する手法の、基本的な考え方を示した図である。
【図4】コイルの具体的な形成手法の第1例を説明する図である。
【図5】コイルの具体的な形成手法の第2例を説明する図である。
【図6】非特許文献1に記載の故障診断の仕組みを説明する図である。
【図7】特許文献1に記載の故障診断の仕組みに使用されるプローブの一例を示す図である。
【符号の説明】
1…故障診断システム、2…基板設計装置、10…回路基板、20…回路部材、22…配線パターン、30…コイル、30b…導出部、30a…開口部、32…開放端、34…バイアホールパターン、90…故障診断部

Claims (13)

  1. 回路基板上の搭載部品による駆動電流に基づき発生する磁束を磁界センシング部としての機能をなすコイルの開口部に通過させることで前記磁界センシング部に発生する誘導起電力を読み取り、この読み取った誘導起電力と予め測定しておいた正常状態の誘導起電力とを比較することにより、前記回路基板の配線や搭載部品の故障の有無を診断する故障診断方法に使用される前記コイルの設計方法であって、
    前記駆動電流の周波数と前記コイルにより観測される前記誘導起電力との関係を示す誘導起電力周波数特性に基づいて、前記コイルで観測される誘導起電力に対する検出感度が所定レベル以上である周波数範囲を特定し、
    前記駆動電流の周波数と前記コイルをなす電線の長さとの関係を示すコイル長周波数特性に基づいて、前記特定した周波数範囲に対応する配線の長さの範囲に、前記磁界センシング部としての機能をなすコイルを形成するための配線の長さを設定する
    ことを特徴とする故障診断用コイルの設計方法。
  2. 前記検出感度が所定レベル以上である周波数範囲は、誘導起電力振幅の最大値を含むピーク周波数の半値幅で規定される
    ことを特徴とする請求項1に記載の故障診断用コイルの設計方法。
  3. 前記コイルは、前記開口部と、前記誘導起電力を抽出するための開放端まで前記開口部から配線を導くための導出部とからなり、
    前記コイルを形成する配線の長さを、前記導出部とをなす配線の長さと、前記コイルの開口部を担当する部分の長さとを合計した総延長とする
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の故障診断用コイルの設計方法。
  4. 前記コイルは、前記開口部と、前記誘導起電力を抽出するための開放端まで前記開口部から配線を導くための導出部とからなり、
    前記コイルを形成する配線の長さを、前記導出部をなす配線の長さに拘わらず、前記コイルの開口部を担当する部分の長さとする
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の故障診断用コイルの設計方法。
  5. 前記設定された配線の長さの範囲で、前記駆動電流が流れる信号配線に対しての前記コイルの配置位置と当該コイルの形状とを、当該コイルで観測される誘導起電力に対する検出感度がより高くなるように設定する
    ことを特徴とする請求項1から4のうちの何れか1項に記載の故障診断用コイルの設計方法。
  6. 回路基板上の搭載部品による駆動電流に基づき発生する磁束を磁界センシング部としての機能をなすコイルの開口部に通過させることで前記磁界センシング部に発生する誘導起電力を読み取り、この読み取った誘導起電力と予め測定しておいた正常状態の誘導起電力とを比較することにより、前記回路基板の配線や搭載部品の故障の有無を診断する故障診断方法に使用される前記コイルがパターン形成されてなるプリント基板であって、
    前記駆動電流の周波数と前記コイルにより観測される前記誘導起電力との関係を示す誘導起電力周波数特性、並びに前記駆動電流の周波数と前記コイルをなす電線の長さとの関係を示すコイル長周波数特性との関わりにおいて、前記コイルで観測される誘導起電力振幅の最大値を含むピーク周波数の半値幅を決定する周波数、に対応する配線の長さの範囲に、前記磁界センシング部としての機能をなすコイルを形成する配線の長さが設定されている
    ことを特徴とするプリント基板。
  7. 前記コイルを形成する配線の一部は、前記駆動電流が流れる信号配線に対して並行となるように配置されている
    ことを特徴とする請求項6に記載のプリント基板。
  8. 回路基板上の搭載部品による駆動電流に基づき発生する磁束を磁界センシング部としての機能をなすコイルの開口部に通過させることで前記磁界センシング部に発生する誘導起電力を読み取り、この読み取った誘導起電力と予め測定しておいた正常状態の誘導起電力とを比較することにより、前記回路基板の配線や搭載部品の故障の有無を診断する故障診断方法に使用される前記コイルが配されてなる回路基板であって、
    前記コイルを形成する配線の一部は、前記駆動電流が流れる信号配線に対して並行となるように配置されている
    ことを特徴とするプリント基板。
  9. 前記コイルの開口部には、故障診断対象部位から発生する磁力線については、同一方向の磁力線が通過するような位置に、前記コイルを形成する配線が設けられている
    ことを特徴とする請求項6から8のうちの何れか1項に記載のプリント基板。
  10. 前記コイルの開口部には、故障診断対象部位から発生する磁力線については、相互に逆方向の磁力線が通過するような位置であって、一方の方向の磁力線の総数と他方の方向の磁力線の総数との差が所定比率以上となるような位置に、前記コイルを形成する配線が設けられている
    ことを特徴とする請求項6から8のうちの何れか1項に記載のプリント基板。
  11. 前記コイルの開口部には、複数の前記故障診断対象部位から発生する磁力線が通過するような位置であって、それぞれの前記故障診断対象部位について、前記差が所定比率以上となるような位置に、前記コイルを形成する配線が設けられている
    ことを特徴とする請求項10に記載のプリント基板。
  12. 前記コイルの開口部には、前記故障診断対象部位とは異なる部位である非対象部位から発生する磁力線が通過する位置であって、前記故障診断対象部位から発生する磁力線の総数と、前記非対象部位から発生する磁力線の総数との差が所定比率以上となるような位置に、前記コイルを形成する配線が設けられている
    ことを特徴とする請求項6から11のうち何れか1項に記載のプリント基板。
  13. 回路基板の配線や搭載部品の故障の有無を診断する故障診断システムであって、
    請求項6から12のうちの何れか1項に記載のプリント基板と、
    前記回路基板上の搭載部品による駆動電流に基づき発生する磁束が前記磁界センシング部としての機能をなす前記コイルの開口部を通過することで前記磁界センシング部に発生する誘導起電力を読み取り、この読み取った誘導起電力と予め測定しておいた正常状態の誘導起電力とを比較することにより、前記回路基板の配線や搭載部品の故障の有無を診断する故障診断部と
    を備えたことを特徴とする故障診断システム。
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