JP2004285180A - インクジェットプリンタ用油性インク組成物、電子写真用液体現像剤、および着色樹脂粒子の製造方法 - Google Patents
インクジェットプリンタ用油性インク組成物、電子写真用液体現像剤、および着色樹脂粒子の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】着色剤が均一に微粒子分散され、且つ着色剤分散液の分散安定性に優れ、吐出安定性が高く、更に記録紙上での乾燥性、記録画像の耐水性、耐光性に優れ、高度の耐擦過性を有するインクジェットプリンタ用油性インクを提供する。
【解決手段】比誘電率1.5〜20及び表面張力15〜60mN/m(25℃において)を有する非水溶媒中に、着色剤を表面処理した着色成分を該非水溶媒中に微粒子状に分散して得た着色成分微粒子をシード粒子として、一官能性単量体(A)の少なくとも一種と、上記単量体(A)と共重合可能なマクロモノマー(M)の少なくとも一種と、特定構造の繰返し単位を含有する重合体で、且つ、その重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)の少なくとも一種とを加え、重合開始剤の存在下に分散重合させることにより得られる着色樹脂粒子を含有するインクジェットプリンタ用油性インク組成物および電子写真用液体現像剤。
【選択図】 なし
【解決手段】比誘電率1.5〜20及び表面張力15〜60mN/m(25℃において)を有する非水溶媒中に、着色剤を表面処理した着色成分を該非水溶媒中に微粒子状に分散して得た着色成分微粒子をシード粒子として、一官能性単量体(A)の少なくとも一種と、上記単量体(A)と共重合可能なマクロモノマー(M)の少なくとも一種と、特定構造の繰返し単位を含有する重合体で、且つ、その重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)の少なくとも一種とを加え、重合開始剤の存在下に分散重合させることにより得られる着色樹脂粒子を含有するインクジェットプリンタ用油性インク組成物および電子写真用液体現像剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクを飛翔させ、記録紙等の被転写媒体上に文字や画像を形成するインクジェット記録装置に供する油性インクに関し、特に、着色樹脂粒子が、着色剤が表面処理された着色成分粒子を更にポリマー被覆した着色樹脂粒子である油性インク、電子写真現像剤及び該着色樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種のインクジェット記録方式が知られており、例えば安居院猛等「リアルカラー ハードコピー」産業図書(株)(1993年刊)、大野信「ノンインパクトプリンティング−技術と材料−」(株)シーエムシー(1986年刊)、甘利武司「インクジェットプリンタ−技術と材料」(株)シーエムシー(1998年刊)等の成書に記載されており、オンデマンド(随意噴射)とコンティニアス(連続噴射)の方式がある。更に連続型では静電方式(Sweet型、Hertz型)、オンデマンド型ではピエゾ圧電方式、シェアモードピエゾ圧電方式、サーマルインクジェット方式、静電加速型と呼ばれる記録方式等が知られている。
これらインクジェット記録方式に用いるインクとしては、インク吐出部及びインク供給経路でインク目詰まりがなく、吐出安定性に優れ且つ、色彩・光沢性等のカラー画像としての品質が良好なものとして一般に水性インクが用いられている。
【0003】
静電力を用いるオンデマンド型のインクジェット方式として一ノ瀬進、大庭有二、電子通信学会論文誌vol.J66−C(No.1)、p.47(1983)、大野忠義、水口衛、画像電子学会誌Vol.10、(No.3)、p.157(1981)等に記載の静電加速型インクジェットあるいはスリットジェットと呼ばれる方式が知られており、具体的態様が、例えば特開昭56−170号、同56−4467号、同57−151374号各公報等に開示されている。これは、インクタンクからスリット状のインク保持部内面に多数の電極を配置してなるスリット状インク室にインクを供給し、これらの電極に選択的に高電圧を印加することにより、スリットと近接対向する記録紙に電極近傍のインクを噴射させて記録するものである。
【0004】
また、スリット状の記録ヘッドを用いない濃縮吐出型の静電方式が、特開平10−138493号公報に開示されている。これは、インク中の色剤成分に静電力を作用させるための複数個の個別電極を、貫通孔の形成された絶縁性基板およびこの貫通孔に対応して形成された制御電極からなる制御電極基板と、この貫通孔のほぼ中心位置に配置された凸状インクガイドとから構成し、この凸状インクガイドの表面を表面張力でインクをインク滴飛翔位置まで運び、制御電極に所定の電圧を印加することで記録媒体にインク滴を飛翔させ記録するものである。
【0005】
この様な種々のインクジェット記録方式に用いるインクとしては、各種の水溶性染料を水、または、水及び水溶性有機溶剤からなる溶媒中に溶解し、必要により各種添加剤が添加されたものが主流を占めている(以下、水性染料インクと呼称する場合がある)。しかしながら、水性染料インクを用いて実印字を行った場合、紙種により記録紙上でインクがにじみ、高品位な印字が得られないことや、形成された記録画像の耐水性・耐光性が劣っている、記録紙上での乾燥が遅く尾引きが起こる、カラーの混色(異色のドットを隣接して印字した場合に色境界面で生じる色濁りあるいは色ムラ)による記録画像の劣化等の欠点があった。
そこで、前記の水性染料インクの問題点である記録画像の耐水性・耐光性を改善する意味で、水性溶媒あるいは非水性溶媒体中に顔料を微粒子として分散させた、顔料系インクをインクジェット記録方式に適用する試みが種々なされている。
例えば、水を主成分とした溶媒中に顔料を分散させたインクジェットプリンタ用インクとして、特開平2−255875号、特開平3−76767号、特開平3−76768号、特開昭56−147871号、特開昭56−147868号の各公報に示されるようなインクが提案されているが、顔料が媒体に不溶であるため、一般に分散安定性が悪い、ノズル部で目詰まりを起こしやすい等の問題を有していた。
【0006】
一方、顔料を非極性の絶縁性溶媒に分散させたインク(以下、油性顔料インクと呼称する場合がある)は、紙への吸収性が良いため滲みが少なく、又、記録画像の耐水性が良いなどの利点があり、例えば、特開昭57−10660号公報、特開昭57−10661号公報のようなインクが提案されている。
また、特開昭57−10660号公報ではアルコールアミド系分散剤、特開昭57−10661号公報ではソルビタン系分散剤によりそれぞれ顔料を微粒子化しているものの、顔料粒子を非極性の絶縁性溶媒に均一に微粒子分散させるには十分でなく、又、分散安定性が悪いため、ノズル部で目詰まりを起こしやすい等の問題を依然として有していた。更に顔料自体には記録紙に対する固着能がないために耐擦過性に乏しいという大きな欠点があった。
これらを改良するために、非極性の絶縁性溶媒に可溶な樹脂を固着剤および顔料分散剤として兼用して用いる樹脂溶解型油性インクが提案されている。例えば、特開平3−234772号公報には上記の樹脂としてテルペンフェノール系樹脂が提案されている。しかしながら、顔料の分散安定性が依然として十分でなく、インクとしての信頼性に問題があつた。更に、樹脂を非極性溶媒中に溶解させているために、顔料を記録紙に完全に定着させるだけの樹脂が残らず、耐水性及び耐擦過性が十分ではなかった。
【0007】
一方、高度の耐擦過性を得るために、非極性の絶縁性溶媒に不溶、あるいは半溶解な樹脂で顔料粒子を被覆することが提案されている。例えば、特許文献1(特開平4−25574号公報)には、マイクロカプセル法等により顔料を樹脂で被覆した油性インクが提案されている。しかしながら、この技術では顔料内包樹脂粒子を均一に微粒子分散することが困難であり、しかも分散安定性も十分ではないため、インクとしての信頼性に問題があつた。
近年は水性染料インクを使用した一般のインクジェットプリンターで写真画質での高画質化が達成されており、顔料インクでも発色性や透明性を上げるためにできるだけ顔料をできるだけ微細化し、且つその分散状態を安定に保持することが要求されてきている。
しかし、一方で、顔料を微細にすればするほど顔料の微細化と同時に顔料一次粒子の破砕が起き、更に、表面エネルギーの増加により、同時に凝集エネルギーが大きくなるため、再凝集が起こりやすくなり、結局は微細化した顔料分散体の貯蔵安定性が損なわれるといった弊害が生じてくる。
この様に、インクジェットプリンター用油性顔料インクに使用される顔料分散体に対する要求は、より高度の微細化が要求されているものの、顔料を微粒子分散するには高度な技術を要すると共に、その分散安定性を高めることは非常に困難なものであり、これまでに上記を全て満足する油性顔料インクは知られていない。
【0008】
静電方式のインクジェツトプリンタや電子写真用液体現像剤に、これらの油性顔料インクを用いる場合には、荷電極性の制御や荷電の経時安定性が要求されるものの、顔料表面の極性を制御するのが非常に困難なため、上記を満足する油性顔料インクがこれまで知られていなかった。
非水溶媒を用いた電子写真用液体現像剤は、一般的に、脂肪族炭化水素系溶媒、着色剤、定着用樹脂、分散剤と必要に応じて添加される種々の添加剤とから成る混合物を、ボールミルやアトライター等で微粉砕して製造されている。その製造方法については、これまでに種々の提案がなされており、例えば特許文献2(特開昭63一174070号公報)には、非水溶媒中でスチレンやアクリル系モノマー等を重合させて得られるポリマーラテックスを染料で染色し、これを着色剤とする着色液体現像剤が開示されている。しかしながら、着色材として染料を用いたこの方法では黒色液体現像剤の製造が困難なことと、染料系なので画像濃度が低いことや、光退色などの欠点があった。一方、着色材として顔料を用いた例としては、特許文献3(特公昭62−3859号公報)に、電子写真用液体現像剤として顔料と定着用樹脂として天然樹脂変性熱硬化性樹脂とを長鎖アルキル基含有モノマー中で反応させた樹脂が提案されている。しかしながら、この技術では着色剤の分散安定性の改善には効果があるが、未だ、充分な分散安定性を有するものではなかった。
このように、着色材として顔料を用いた電子写真用液体現像剤では、耐擦過性と共に十分な分散安定性が望まれていた。更に、顔料はその種類により荷電極性が異なるため、顔料粒子の荷電極性を明瞭にし、且つその荷電の経時変化が無い事が望まれている。
【0009】
【特許文献1】
特開平4−25574号公報
【特許文献2】
特開昭63−174070号公報
【特許文献3】
特公昭62−3859号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の第一の目的は、顔料が均一に微粒子分散され、且つ顔料分散液の分散安定性に優れることにより、ノズル部での目詰まりが起きない吐出安定性の高いインクジェットプリンタ用油性インクを提供する事である。
本発明の第二の目的は、記録紙上での乾燥性、記録画像の耐水性、耐光性に優れており、且つ高度の耐擦過性を有するインクジェットプリンタ用油性インクを提供する事である。
本発明の第三の目的は、分散安定性、耐擦過性に優れると共に、荷電極性の制御や荷電の経時安定性にも優れた静電方式インクジェツトプリンタ用油性インク、及び電子写真用液体現像剤を提供する事である。
本発明の第四の目的は、上記の特徴を有する、均一に微粒子分散された顔料を内包する樹脂粒子からなるインクジェットプリンタ用インクを得るための製造方法を提供する事である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記本発明の課題は、下記の構成により解決される事が見出された。
(1) 比誘電率1.5〜20及び表面張力15〜60mN/m(25℃において)を有する非水溶媒中に、着色剤を表面処理した着色成分を該非水溶媒中に微粒子状に分散して得た着色成分微粒子をシード粒子として、一官能性単量体(A)の少なくとも一種と、上記単量体(A)と共重合可能なマクロモノマー(M)の少なくとも一種と、下記一般式(I)で示される繰返し単位を含有する重合体で、且つ、その重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)の少なくとも一種とを加え、重合開始剤の存在下に分散重合させることにより得られる着色樹脂粒子を含有することを特徴とするインクジェットプリンタ用油性インク組成物。
【0012】
【化10】
【0013】
一般式(I)中、X1は−COO−、−OCO−、−(CH2)k−OCO−、−(CH2)k−COO−及び−O−から選ばれる1種或いはそれらの組み合わされた連結基を表わす。kは1〜3の整数を表す。 a1とa2は、互いに同じでも異なってもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭化水素基、−COO−Z1又は炭化水素を介した−COO−Z1 (Z1は水素原子又は置換されてもよい炭化水素基を示す)を表す。Y1は炭素数6〜32の脂肪族基を表す。
【0014】
(2) 該マクロモノマー(M)が、下記一般式(II)で示される繰り返し単位から成る重合体の主鎖の末端に、下記一般式(III)で示される重合性二重結合基を結合して成る重量平均分子量1×103 〜4×104 のマクロモノマー(M)である上記(1)記載のインクジェットプリンタ用油性インク組成物。
【0015】
【化11】
【0016】
一般式(III)中、Vは−COO−、−OCO−、−(CH2)k −OCO−、−(CH2)k −COO−、−O−、−CONHCOO−、−CONHCO−、−SO2 −、−CO−、−CONZ2 −、−SO2 NZ2−又は−Ph−を表す。kは1〜3の整数を表す。Z2は水素原子又は置換されてもよい炭化水素基を示す。d1 とd2は、互いに同じでも異なってもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭化水素基、−COO−Z1 又は炭化水素を介した−COO−Z1を表す。Z1 は前記Z2と同義である。
【0017】
【化12】
【0018】
一般式(II)中、X2 は一般式(III)のVと同一の基を表す。
b1 とb2 は、互いに同じでも異なってもよく、一般式(III)中のd1 及びd2 と同一の基を表す。Y2 は炭素数1〜22の脂肪族基を表す。
【0019】
(3) 着色剤が有機顔料及び無機顔料から選択される少なくとも一種の顔料であり、着色成分が、該着色剤をポリマー被覆することにより表面処理されたものである上記(1)記載のインクジェットプリンタ用油性インク組成物。
【0020】
(4) 体積比抵抗109Ωcm以上の非水溶媒中に、着色剤を表面処理した着色成分を該非水溶媒中に微粒子状に分散して得た着色成分微粒子をシード粒子として、一官能性単量体(A)の少なくとも一種と、上記単量体(A)と共重合可能なマクロモノマー(M)の少なくとも一種と、上記一般式(I)で示される繰返し単位を含有する重合体で、且つ、その重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)の少なくとも一種とを加えた分散液を、重合開始剤の存在下に分散重合させることにより得られる着色樹脂粒子を含有することを特徴とする電子写真用液体現像剤。
【0021】
(5) 該マクロモノマー(M)が、上記一般式(II)で示される繰り返し単位から成る重合体の主鎖の末端に、上記一般式(III)で示される重合性二重結合基を結合して成る重量平均分子量1×103 〜4×104 のマクロモノマー(M)である上記(4)記載の電子写真用液体現像剤。
(6) 着色剤が有機顔料及び無機顔料から選択される少なくとも一種の顔料であり、着色成分が、該着色剤をポリマー被覆することにより表面処理されたものである上記(4)記載の電子写真用液体現像剤。
【0022】
(7) 比誘電率1.5〜20及び表面張力15〜60mN/m(25℃において)を有する非水溶媒中に、着色剤を表面処理した着色成分を該非水溶媒中に微粒子状に分散して得た着色成分微粒子をシード粒子として、一官能性単量体(A)の少なくとも一種と、上記単量体(A)と共重合可能なマクロモノマー(M)の少なくとも1種と、上記一般式(I)で示される繰返し単位を含有する重合体で、且つ、その重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)の少なくとも一種とを加えた分散液を、重合開始剤の存在下に分散重合させることにより得られる着色樹脂粒子の製造方法。
(8) 該マクロモノマー(M)が、上記一般式(II)で示される繰り返し単位から成る重合体の主鎖の末端に、上記一般式(III)で示される重合性二重結合基を結合して成る重量平均分子量1×103 〜4×104 のマクロモノマー(M)である上記(7)記載の着色樹脂粒子の製造方法。
(9) 着色剤が有機顔料及び無機顔料から選択される少なくとも一種の顔料であり、着色成分が、該着色剤をポリマー被覆することにより表面処理されたものである上記(7)記載の着色樹脂粒子の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に述べる。
本発明のインクジェットプリンタ用油性インク組成物に使用される非水溶媒(分散媒)は、非極性の絶縁性溶剤であり、比誘電率1.5〜20及び表面張力15〜60mN/m(25℃において)であることが好ましい。また電子写真用液体現像剤に使用される非水溶媒は、体積比抵抗109Ωcm以上であることが好ましい。更に望まれる特性としては、毒性の少ないこと、引火性が少ないこと、臭気が少ないことである。
【0024】
かかる非水溶媒としては、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、石油ナフサ及びこれらのハロゲン置換体等から選ばれた溶媒が挙げられる。例えばヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、エクソン社のアイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、フィリップ石油社のソルトール、出光石油化学社のIPソルベント、石油ナフサではシェル石油化学社のS.B.R.シェルゾール70、シエルゾール71、モービル石油社のベガゾール等から選ばれた溶媒を単独あるいは混合して用いることができる。
【0025】
好ましい炭化水素溶剤としては、沸点が150〜350℃の範囲にある高純度のイソパラフィン系炭化水素が挙げられ、市販品としては前述のエクソン化学製のアイソパーG,H,L,M,V(商品名)、ノーパー12,13,15(商品名)、出光石油化学製のIPソルベント1620,2028(商品名)、日本石油化学製のアイソゾール300,400(商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ;スピリッツ社の商品名)等が挙げられる。
これらの製品は、極めて純度の高い脂肪族飽和炭化水素であり、25℃における粘度は3cSt以下、25℃における表面張力は22.5〜28.0mN/m、25℃における比抵抗は1010Ω・cm以上である。また、反応性が低く安定であり、低毒性で安全性が高く、臭気も少ないという特徴がある。
ハロゲン置換の炭化水素系溶媒としてフルオロカーボン系溶媒があり、例えばC7F16、C8F18などのCnF2n+2で表されるパーフルオロアルカン類(住友3M社製「フロリナートPF5080」、「フロリナートPF5070」(商品名)等)、フッ素系不活性液体(住友3M社製「フロリナートFCシリーズ」(商品名)等)、フルオロカーボン類(デュポンジャパンリミテッド社製「クライトックスGPLシリーズ」(商品名)等)、フロン類(ダイキン工業株式会社製「HCFC−141b 」(商品名)等)、[F(CF2)4CH2CH2I]、[F(CF2)6I]等のヨウ素化フルオロカーボン類(ダイキンファインケミカル研究所製「I−1420」、「I−1600」(商品名)等)等がある。
【0026】
本発明で使用される非水系の溶媒として、更に高級脂肪酸エステルや、シリコーンオイルも使用できる。シリコーンオイルの具体例としては、低粘度の合成ジメチルポリシロキサンが挙げられ、市販品としては、信越シリコーン製のKF96L(商品名)、東レ・ダウコーニング・シリコーン製のSH200(商品名)等がある。
シリコーンオイルとしてはこれらの具体例に限定されるものではない。これらのジメチルポリシロキサンは、その分子量により非常に広い粘度範囲のものが入手可能であるが、1〜20cStの範囲のものを用いるのが好ましい。これらのジメチルポリシロキサンは、イソパラフィン系炭化水素同様、1010Ω・cm以上の体積抵抗率を有し、高安定性、高安全性、無臭性といった特徴を有している。またこれらのジメチルポリシロキサンは、表面張力が低いことに特徴があり、18〜21mN/mの表面張力を有している。
【0027】
上記の有機溶媒とともに、混合して使用できる溶媒としては、アルコール類(例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)及びハロゲン化炭化水素類(例えばメチレンジクロリド、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、メチルクロロホルム等)、等の溶媒が挙げられる。
【0028】
次に、本発明の表面処理された着色成分について詳細に述べる。
本発明の表面処理された着色成分(以下単に「着色成分」と称することもある)は、着色剤を表面処理したものであり、該着色剤としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料が挙げられる。
【0029】
例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等)、 C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、 C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、 C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、 C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、 C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、 C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0030】
マゼンタ色を呈するものとして、C.I.ビグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、 C.I.ビグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、 C.I.ビグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ビグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、 C.I.ビグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、 C.I.ビグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、 C.I.ビグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、 C.I.ビグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ビグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、 C.I.ビグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、 C.I.ビグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、 C.I.ビグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、 C.I.ビグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、 C.I.ビグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0031】
シアン色を呈する顔料として、C.Iピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、 C.I.ビグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、 C.I.ビグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、 C.I.ビグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、 C.I.ビグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、 C.I.ビグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0032】
ブラック色を呈する顔料として、BK−1(アニリンブラック)の如きアニリンブラック系顔料等の有機顔料や酸化鉄顔料、及びファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料類が挙げられる。
また、金、銀、銅などの色再現のために金属粉も使用可能である。
【0033】
着色剤の表面処理方法としては、技術情報協会発行の「顔料分散技術」第5章に記載されている、ロジン処理、ポリマー処理、グラフト化処理、プラズマ処理等の方法が適用できる。
【0034】
「ロジン処理」とは、顔料とロジンを機械的に混練し顔料表面にロジンを処理する方法や、顔料の水性スラリーにロジンのアルカリ水溶液を加えた後にアルカリ土類塩や酸などを加えてロジンの難溶性塩または遊離酸を顔料粒子表面に析出させる方法などである。ロジン処理では通常、顔料の数%から20%程度のロジンが用いられ、▲1▼顔料の結晶成長防止効果により微細で透明性の大きな顔料が得られること、▲2▼粒子の乾燥凝集が弱くなるために機械的分散が容易になること、▲3▼顔料表面の親油性を増大させることにより油性ビヒクルに対するぬれを改善するなどに大きな効果があり、特に印刷インキの分野で多く使用されている。
【0035】
「グラフト化処理」とは、カーボンブラック、およびシリカや酸化チタンなどの無機微粒子、さらには有機顔料などの表面に存在する水酸基やカルボキシル基やアミノ基などの官能基とポリマーとのグラフト化反応を行うものである。顔料表面へのポリマーのグラフト化反応には、(1)顔料微粒子の存在下で、重合開始剤を用いてビニルモノマーの重合を行い、系内で生成する生長ポリマーを顔料粒子表面の官能基で停止することによる方法、(2)顔料微粒子表面へ導入した重合開始基からグラフト鎖を生長させる方法、および(3)顔料微粒子表面の官能基とポリマー末端の官能基との高分子反応による方法等がある。
【0036】
「プラズマ処理」とは、低温プラズマや熱プラズマにより顔料粉体表面の改質を行うものである。低温プラズマによる顔料表面の処理の具体例としては、(1)酸素や窒素などの非重合性気体のプラズマ照射による改質、(2)重合性気体を用いたプラズマ重合膜形成による改質、(3)プラズマ照射によって基材表面に活性種を形成させる1st stageと、照射後モノマーと接触させ、あと反応でグラフト重合を進行させる2nd stageの2段階プロセスよりなるプラズマ開始グラフト重合反応による改質、などが挙げられる。
顔料の分散性を向上させると共に、この分散された着色成分微粒子をシード粒子として非水溶媒中で分散重合させる観点からは、以下に述べるポリマー処理が好ましい。
【0037】
ポリマー処理の代表的方法としては、技術情報協会発行の「顔料分散技術」99頁以降に記載のin−situ重合法を利用した化学的方法、相分離法(コアセルベーション)を利用した方法、顔料分散時に機械的な力で処理する方法などが挙げられる。
【0038】
in−situ重合法としては、顔料およびポリマーの系を分散した後懸濁重合する方法、分散剤の存在下に顔料を水系に分散し極性ポリマー、ビニル系ポリマー、多官能橋かけポリマーを加えて重合する方法、顔料を分散したモノマーを塊状重合した後懸濁重合または乳化重合することにより顔料への吸着が十分行えるようにする方法などがある。
【0039】
相分離法(コアセルベーション)としては、ポリマー溶液中に顔料を分散させた後、何らかの方法でポリマーの溶解度を下げ溶液系からポリマーを顔料粒子上へ析出させる方法で化学的方法(in−situ重合法)に比べ広い範囲のポリマーを選べる特徴がある。顔料を分散した樹脂溶液に非溶媒を加えて顔料表面に樹脂を析出させる方法や、水溶性ポリマーや水溶性樹脂溶液に顔料を微細に分散した後、PHを調整してこれらを顔料表面に析出させる方法はロジン処理を含めて広く用いられている。酸可溶性の含窒素アクリル樹脂の酸溶液中で顔料を分散させた後、pHを上げてポリマーを顔料表面で不溶化したものは塗料、印刷インキでの凝集防止、流動性、光沢、着色力向上に効果がみられている。
機械的な力でポリマー処理する方法を例示すると、ポリマーと顔料を予め顔料分が5〜95%になる様に混合した後に、加熱しながらニーダー、三本ロールなどで混練し、ピンミル等で粉砕するものである。フラッシング樹脂処理という方法も機械的なポリマー処理方法に含まれる。
【0040】
ポリマー処理に用いる樹脂としては、非水溶媒中で顔料の分散性を向上させると共に、この分散された着色成分微粒子をシード粒子として非水溶媒中で分散重合させる際の加熱分散安定性を付与するものであれば何でも良く、液体現像剤で従来使用されている樹脂も使用することができる。
【0041】
好ましい樹脂としては、着色剤に吸着し、且つ非水系溶媒中に良く分散する機能を有するために、溶媒に溶媒和する部分と溶媒に溶媒和しにくい部分及び極性基を有する部分を持っている樹脂が好ましい。例えば、重合後に溶媒に溶媒和するモノマーとしては、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、セチルメタクリレート等が挙げられる。重合後に溶媒に溶媒和しにくいモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。極性基を含むモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸またはそのアルカリ塩などの酸性基モノマーと、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピリジン、ビニルピロリジン、ビニルピペリジン、ビニルラクタムなどの塩基性基モノマーが挙げられる。
【0042】
ポリマー処理に用いる樹脂の具体例としては、オレフィン重合体および共重合体(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等)、スチレンおよびその誘導体の重合体ならびに共重合体(例えばブタジエン−スチレン共重合体、イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−メタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等)、アクリル酸エステル重合体および共重合体、メタクリル酸エステル重合体および共重合体、イタコン酸ジエステル重合体および共重合体、無水マレイン酸共重合体、ロジン樹脂、水素添加ロジン樹脂、石油樹脂、水素添加石油樹脂、マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、クロマン−インデン樹脂、環化ゴム−メタクリル酸エステル共重合体、環化ゴム−アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0043】
本発明の着色材とポリマー処理に用いられる樹脂の割合は、着色剤/樹脂の質量比で95/5〜5/95の範囲で、好ましくは80/20〜10/90の範囲である。
【0044】
更に表面処理された着色成分として、一般に市販されている加工顔料も用いることができる。市販加工顔料の具体例としては、チバスペシャリティケミカルズ社のマイクロリス顔料等が挙げられ、好ましい加工顔料の例としては、ロジンエステル樹脂で顔料を被覆したマイクロリス−T顔料が挙げられる。
【0045】
本発明においては、上記表面処理された着色成分は、非水溶媒中に微粒子状に分散されて着色成分微粒子を得、これをシード粒子として更に分散重合させるものである。
まず、着色成分の分散工程について述べる。
該分散工程では、表面処理された着色成分を微粒子状に分散し且つ非水溶媒中で分散安定化させるために顔料分散剤の使用することが好ましい。
【0046】
本発明に使用することができる、表面処理された着色成分を非水溶媒中で微粒子状に分散する顔料分散剤としては、該非水溶媒中で適用される一般の顔料用分散剤が使用できる。顔料用分散剤としては前記非極性の絶縁性溶媒に相溶し、安定的に顔料を微粒子分散できるものであれば良い。
【0047】
顔料用分散剤の具体例としては、ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリエチレングリコールジイソステアレート等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等)、脂肪族ジエタノールアミド系などのノニオン系界面活性剤、及び高分子系分散剤としては、分子量1000以上の高分子化合物が良く、例えば、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ロジン、BYK−160、162、164、182(ビックケミー社製のウレタン系高分子化合物)、EFKA−47、LP−4050(EFKA社製のウレタン系分散剤)、ソルスパーズ24000(ゼネカ社製のポリエステル系高分子化合物)、ソルスパース17000(ゼネカ社の脂肪族ジエタノールアミド系)等が挙げられる。
【0048】
高分子系顔料分散剤としては上記の他に更に、溶媒に溶媒和するラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、セチルメタクリレート等のモノマーと、溶媒に溶媒和しにくいメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン等のモノマー及び極性基を有する部分からなるランダム共重合体、あるいは特開平3−188469号公報に開示されているグラフト共重合体が挙げられる。上述の極性基を含むモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸またはそのアルカリ塩などの酸性基モノマーと、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピリジン、ビニルピロリジン、ビニルピペリジン、ビニルラクタムなどの塩基性基モノマーが挙げられる。また、この他にはスチレン―ブタジエン共重合体、特開昭60−10263号公報に開示されているスチレンと長鎖アルキルメタクリレートのブロック共重合体等が挙げられる。好ましい顔料用分散剤としては、特開平3−188469号公報に開示されているグラフト共重合体等が挙げられる。
【0049】
顔料用分散剤の使用量は、顔料100質量部に対して、0.1〜300質量部が好ましい。顔料分散剤の添加量を上記範囲内にすることで、充分な顔料分散効果を得ることが可能である。
【0050】
表面処理された着色成分を、非水溶媒中に微粒子状に分散する分散工程において、顔料分散剤を使用する方法としては、例えば次のような方法があり、これらのいずれにによっても目的とする効果が得られる。
【0051】
1.表面処理された着色成分と顔料分散剤を予め混合して得られる顔料組成物を非水系溶媒中に添加して分散する。
2.非水系溶媒に表面処理された着色成分と顔料分散剤を別々に添加して分散する。
3.非水系溶媒に表面処理された着色成分と顔料分散剤を予め別々に分散し、得られた分散体を混合する。この場合、顔料分散剤を溶剤のみで分散しても良い。
4.非水系溶媒に表面処理された着色成分を分散した後、得られた顔料分散体に顔料分散剤を添加する等の方法があり、これらのいずれによっても目的とする効果が得られる。
【0052】
上記の表面処理された着色剤(着色成分)を非水系溶媒中で混合あるいは分散させて、着色成分微粒子とすることができる。非水系溶媒中で混合あるいは分散する機械としては、ディゾルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ニーダー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター等が使用できる。この分散工程での表面処理された着色成分(加工顔料等)の分散平均粒径の範囲は0.01〜10μmである。インク中の加工顔料の好ましい分散平均粒径範囲としては0.01〜1.0μmである。
【0053】
次に上記分散された着色成分微粒子をシード粒子(シード)として、このシード粒子に一官能性単量体(M)を添加して分散重合させる工程について説明する。
非水溶媒中に着色成分を微粒子状に分散させシード粒子とした中で、一官能性単量体(A)と、上記単量体(A)と共重合可能なマクロモノマー(M)と、重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)と、を加えた重合系を、重合開始剤の存在下に重合させることにより、本発明の着色剤を内包した着色樹脂粒子が得られる。単量体(A)は、該非水溶媒に可溶であるが重合する事によって該非水溶媒に不溶性となる単量体であればいずれでもよい。具体的には、例えば下記一般式(IV)で表される重合単量体が挙げられる。
【0054】
【化13】
【0055】
一般式(IV)中、X3は−COO−、−OCO−、−CH2OCO−、−CH2COO−、−O−、−CONHCOO−、−CONHOCO−、−SO2−、−CON(Z3)−、−SO2N(Z3)−、または−Ph−を表す。ここでZ3は、水素原子または炭素数1〜8の置換されていてもよい脂肪族基(たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、ベンジル基、クロロベンジル基、メチルベンジル基、メトキシベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ジメチルベンジル基、フロロベンジル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基等)を表す。
【0056】
Y3は水素原子または炭素数1〜6の置換されてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2,2,2−トリフロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、2−ニトロエチル基、2−メトキシエチル基、2−メタンスルホニルエチル基、2−エトキシエチル基、3−ブロモプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−フルフリルエチル基、2−チエニルエチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、4−カルボキシブチル基、2−カルボキシアミドエチル基、3−スルホアミドプロピル基、2−N−メチルカルボキシアミドエチル基、シクロペンチル基、クロロシクロヘキシル基、ジクロロヘキシル基等)を表す。
【0057】
e1 およびe2 は互いに同じでも異なっていてもよく、好ましくは水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基等)、−COO−L1または−CH2−COO−L1〔ここでL1は水素原子、または置換されてもよい炭素数10以下の炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基)等を表す。〕を表す。
【0058】
具体的な単量体(A)としては、例えば炭素数1〜6の脂肪族カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、モノクロロ酢酸、トリフロロプロピオン酸等)のビニルエステル類あるいはアリルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸の炭素数1〜32の置換されてもよいアルキルエステル類またはアミド類(アルキル基として例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、2−ニトロエチル基、2−メトキシエチル基、2−メタンスルホニルエチル基、2−ベンゼンスルホニルエチル基、2−カルボキシエチル基、4−カルボキシブチル基、3−クロロプロピル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基、2−フルフリルエチル基、2−チエニルエチル基、2−カルボキシアミドエチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、ドデセニル基、ヘキサデセニル基、オレイル基、リノレイル基、ドコセニル基等);スチレン誘導体(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルベンゼンカルボン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、メトキシメチルスチレン、ビニルベンゼンカルボキシアミド、ビニルベンゼンスルホアミド等);アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;マレイン酸、イタコン酸の環状酸無水物;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;重合性二重結合基含有のヘテロ環化合物(具体的には、例えば高分子学会編「高分子データハンドブック−基礎編−」、p175〜184、培風舘(1986年刊)に記載の化合物、例えば、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、ビニルチオフェン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルオキサゾリン、ビニルチアゾール、N−ビニルモルホリン等)等が挙げられる。
単量体(A)は、上記の中から少なくとも一種以上選択されたモノマーを主成分とする。
【0059】
次に、本発明に用いられるマクロモノマー(M)について説明する。
本発明では、マクロモノマー(M)は、上記一般式(II)で示される繰り返し単位から成る重合体の主鎖の末端に、上記一般式(III)で示される重合性二重結合基を結合して成る重量平均分子量1×103 〜4×104 のマクロモノマー(M)である事が好ましい。
【0060】
一般式(III)中、Vは−COO−、−OCO−、−(CH2)k −OCO−、−(CH2)k −COO−、−O−、−CONHCOO−、−CONHCO−、−SO2 −、−CO−、−CONZ2 −、−SO2 NZ2−又は−Ph−を表す。kは1〜3の整数を表す。 d1 とd2は一般式(I)におけるa1とa2と同一の基を表す。Z2は一般式(I)のZ1 と同一の基を表す。
【0061】
一般式(III)において、Vで示される置換基中のZ2は水素原子のほか、好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜22の置換されてもよいアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−メトキシエチル基、2−ブロモプロピル基等)、炭素数4〜18の置換されていてもよいアルケニル基(例えば、2−メチル−1−プロペニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、4−メチル−2−ヘキセニル基等)、炭素数7〜12の置換されていてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基等)、炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ドデシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、シアノフェニル基、アセチルフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、ブトキシカルボニルフェニル基、アセトアミドフェニル基、プロピオアミドフェニル基、ドデシロイルアミドフェニル基等)、炭素数5〜18の橋かけ炭化水素から成る基(例えば、ビシクロ〔1,1,0〕ブタン、ビシクロ〔3,2,1〕オクタン、ビシクロ〔5,2,0〕ノナン、ビシクロ〔4,3,2〕ウンデカン、アダマンタン等の基)等が挙げられる。
【0062】
Vが−C6H4−を表す場合、ベンゼン環は置換基を有してもよい。置換基としては、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、クロロメチル基、メトキシメチル基等)等が挙げられる。
【0063】
d1 とd2は一般式(I)におけるa1とa2と同一の基を表し、好ましくは水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、−COO−L2又は−CH2COOL2 (L2 は、好ましくは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基もしくは脂環式基、又はアリール基を表し、これらは置換されていてもよく、具体的には、上記Z2について説明したものと同様の内容を表す)を表す。
【0064】
一般式(II)中、X2は一般式(III)のV と同一の基を表す。 また、b1 とb2は一般式(I)におけるa1とa2と同一の基を表す。Y2は炭素数1〜22の脂肪族基を表す。
【0065】
Y2が表す脂肪族基の具体例としては、上記したZ2 において説明したアルキル基と同様の内容のものが挙げられる。Y2が表す炭素数1〜22の脂肪族基は、更にフッ素原子及び/又はケイ素原子含有の置換基を有していても良く、フッ素原子を含有する置換基としては、例えば下記の1価又は2価の有機残基等が挙げられる。
−Cn(F)2n+1(nは1〜22の整数)、−CFH2 、−CFHCl、−CFCl2 、−CF2Cl、−(CF2)mCF2H(mは0、又は1〜17の整数)、−CF2−、−CFH−、−CFCl−。
【0066】
これらのフッ素原子含有の有機残基は組み合わせて構成されていてもよく、その場合には、直接結合してもよいし、他の連結基を介して組み合わされてもよい。連結する基としては、具体的には2価の有機残基が挙げられ、−O−、−S−、−N(g1)−、−CO−、−SO−、−SO2 −、−COO−、−OCO−、−CONHCO−、−NHCONH−、−CON(g1)−、−SO2 N(g1)−等から選ばれた結合基を介在させてもよい、2価の脂肪族基もしくは2価の芳香族基、又はこれらの2価の残基の組み合わせにより構成された有機残基が挙げられる。ここで、g1 は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
【0067】
ケイ素原子を含有する置換基としては、シロキサン構造(あるいはシリルオキシ構造)又はシリル基を含有するものが好ましい。
【0068】
b1 とb2は、互いに同じでも異なってもよく、一般式(I)におけるa1とa2と同一の基を表し、b1 とb2の好ましい範囲はd1 とd2についてしたものと同等の内容である。b1 とb2のより好ましい基としては水素原子、メチル基が挙げられる。
【0069】
一般式(II)で表される繰り返し単位を含有する重合体は、着色樹脂粒子の分散安定性の観点から、非水分散媒に溶媒和することが望ましく、Y2は炭素数6〜22の脂肪族基が好ましい。好ましい該重合体の例としては、ポリヘキシルアクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリラウリルメタクリレート、ポリステアリルアクリレート、ポリステアリルメタクリレート、ポリ2−エチルヘキシルアクリレート、ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート、セチルメタクリレート等が挙げられるが、本発明の範囲は、これらに限定されるものではない。
【0070】
次に一般式(II)で表される、Y2が炭素数1〜22の脂肪族基で更にフッ素原子及び/又はケイ素原子含有の置換基を有している場合の、繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明の範囲は、これらに限定されるものではない。
【0071】
【化14】
【0072】
【化15】
【0073】
【化16】
【0074】
【化17】
【0075】
本発明のマクロモノマー(M)のうち好ましいものは下記一般式(V)で示されるものである。
【0076】
【化18】
【0077】
一般式(V)中、d1、d2、b1、b2及びVは、各々、一般式(II)及び(III)において説明したものと同じ内容を表す。
Tは一般式(II)で示される−X2−Y2を表し、一般式(II)において説明したものと同一の内容を表す。
W1は単結合又は、−C(Z4)(Z5)−〔Z4、Z5は各々水素原子、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原等)、シアノ基又はヒドロキシル基を示す〕、−(CH=CH)−、シクロヘキシレン基(以下シクロヘキシレン基をCyで表す。ただしCyは1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキシレン基を含む)、−Ph−、−O−、−S−、−C(=O)−、−N(Z6)−、−COO−、−SO2−、−CON(Z6)−、−SO2N(Z6)−、−NHCOO−、−NHCONH−又は−Si(Z6)(Z7)−〔Z6、Z7は、水素原子又は前記Z1と同様の内容の炭化水素基等を示す〕等の原子団から選ばれた単独の連結基もしくは任意の組合せで構成された連結基を表す。
【0078】
前記一般式(II)、(III)又は(V)において、X2、V、d1、d2、b1、b2 の各々における特に好ましい例を以下に示す。
X2としては−COO−、−OCO−、−O−、−CH2COO−及び−CH2OCO−から選ばれた1種以上の連結基が、Vとしては前記のものすべて(但し、Z1は水素原子である)から選ばれた1種の連結基が、d1、d2、b1、b2としては水素原子又はメチル基が挙げられる。
【0079】
以下に、一般式(V)におけるCH(d1)=C(d2)−V−W1−で示される基の具体的な例を示す。しかし、本発明の内容がこれらに限定されるものではない。なお、下記の各例において、jは1〜12の整数、kは2〜12の整数、aはH又は−CH3を表す。
【0080】
【化19】
【0081】
【化20】
【0082】
【化21】
【0083】
【化22】
【0084】
本発明のマクロモノマー(M)は、従来公知の合成方法によって製造することができる。例えば、(1)アニオン重合またはカチオン重合によって得られるリビングポリマーの末端に種々の試薬を反応させてマクロマーにするイオン重合法による方法、(2)分子中に、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基等の反応性基を含有した重合開始剤及び/又は連鎖移動剤を用いて、ラジカル重合して得られる末端反応性基結合のオリゴマーと種々の試薬を反応させてマクロマーにするラジカル重合法による方法、(3)重付加又は重縮合反応により得られたオリゴマーに上記ラジカル重合方法と同様にして、重合性二重結合基を導入する重付加縮合法による方法等が挙げられる。
【0085】
具体的には、P.Dreyfuss & R.P.Quirk,エンサイクロペディア ポリマー サイエンス エンジニアリング(Encycl.Polym.Sci.Eng.),7巻 551頁(1987)、P.F.Rempp&E.Franta,アドバンスト ポリマー サイエンス(Adv.Polym.Sci.),58巻 1頁(1984)、V.Percec,アプライド ポリマー サイエンス(Appl.Polym.Sci.),285巻 95頁(1984)R.Asami,M.Takagi,マクロモレキュラー ヘミーサプルメント(Makromol.Chem.Suppl.),12巻 163頁(1985)、P.Rempp et al,同(Makromol.Chem.Suppl)、8巻、3頁(1987)、川上雄資、化学工業、38巻、56頁(1987)、山下達也,高分子、31巻、988頁(1982)、小林四郎、高分子、30巻、625頁(1981)、東村敏延、日本接着協会誌、18巻、536頁(1982)、伊藤浩一、高分子加工、35巻、262頁(1986)、東貴四郎、津田隆、機能材料 1987、No.10、5等の総説及びそれに引例の文献・特許等に記載の方法に従って合成することができる。
【0086】
本発明では更に、上記一官能性単量体(A)及びマクロモノマー(M)と共重合可能な他のモノマー成分を併用してもよい。
共重合可能な他のモノマー成分としては、例えば一般式 −N(R1)(R2)で示されるアミノ基を含有する、塩基性の単量体(B)を挙げる事ができる。本発明の着色樹脂粒子において、上記一官能性単量体(A)と共に、共重合成分としてアミノ基含有の塩基性単量体(B)を用いることで、粒子自身の表面が正荷電を発現し、非水系溶媒中に分散された粒子の分散安定性が向上する。これは粒子同志の近接時の荷電反発効果によるものと推測される。
【0087】
上記一般式において、R1 、R2 は、各々同じでも異なってもよく、好ましくは水素原子又は炭素数1〜22の置換されてもよいアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ドコシル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−メトキシエチル基、3−ブロモプロピル基等)、炭素数4〜18の置換されてもよいアルケニル基(例えば、2−メチル−1−プロペニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、4−メチル−2−ヘキセニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、リノレイル基等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基等)または炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ドデシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、シアノフェニル基、アセチルフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、ブトキシカルボニルフェニル基、アセトアミドフェニル基、プロピオアミドフェニル基、ドデシロイルアミドフェニル基等)が挙げられる。
【0088】
また、R1、R2は環を形成しても良く、具体的には、ヘテロ原子(例えば酸素原子、窒素原子、イオウ原子等)を含有してもよい環形成の有機残基を表す。形成される環状アミノ基としては、例えばモルホリノ基、ピペリジノ基、ピリジニル基、イミダゾリル基、キノリル基、等が挙げられる。これらのアミノ基は、塩基性単量体の分子中に複数個含有されていてもよい。
【0089】
塩基性単量体(B)は、単量体(A)の総量に対して、好ましくは1〜45重量%、より好ましくは3〜30重量%で用いる。
以下に塩基性単量体(B)の具体例を示すが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0090】
【化23】
【0091】
本発明のインク組成物に用いられる樹脂粒子のシェル層を構成する非水溶媒に不溶性の樹脂は、ガラス転移点0〜80℃または軟化点40〜100℃の範囲が好ましく、ガラス転移点10〜70℃または軟化点45〜80℃の範囲がより好ましい。このような熱的性質を示す共重合体となる様に、単量体(A)、及びマクロモノマー(M)を適宜選択することができる。
【0092】
本発明においては、非水溶媒中で、単量体を重合して生成した当該溶媒不溶の重合体を安定な樹脂分散物とするために、分散安定化剤(P)を共存させてシード重合を行なう。
【0093】
次に分散安定化剤(P)について説明する。
分散安定化剤(P)は、下記一般式(I)で示される繰返し単位を含有する重合体で、且つ、その重合体主鎖の一部分が架橋された重合体で、該非水溶媒に可溶性である。
【0094】
【化24】
【0095】
一般式(I)中、X1は−COO−、−OCO−、−(CH2)k−OCO−、−(CH2)k−COO−及び−O−から選ばれた1種或いはそれらの組み合わされた連結基を表わす。kは1〜3の整数を表す。
Y1は炭素数6〜32の直鎖状或は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表す。具体的には、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、リノレル基等が挙げられる。
【0096】
a1とa2は、互いに同じでも異なってもよく、好ましくは水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素原子又は臭素原子等)、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基又はプロピル基等)、−COO−Z1又は炭化水素を介した−COO−Z1 (Z1は水素原子又は置換されてもよい炭化水素基を示す)を表す。Z1は水素原子又は炭素数1〜22の、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、脂環式基、アリール基もしくは架橋環式炭化水素基を表わし、これらは置換されていてもよい。
【0097】
Z1の好ましい炭化水素基としては、上記Z2について説明したものと同一の基が挙げられる。
【0098】
本発明の分散安定化剤(P)の重合体成分は、上記一般式(I)で示される繰返し単位の中から選択されるホモ重合体成分、もしくは一般式(I)で示される繰返し単位に相当する単量体と共重合し得る他の単量体とを重合して得られる共重合体成分を含有し、且つその重合体主鎖の一部分が架橋された重合体である。共重合し得る他の単量体としては、重合性二重結合基を含有すればいずれでもよく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;炭素数6以下の不飽和カルボン酸のエステル誘導体もしくはアミド誘導体;カルボン酸類のビニルエステル類もしくはアリルエステル類;スチレン類;メタクリロニトリル;アクリロニトリル;重合性二重結合基含有の復素環化合吻等が挙げられる。より具体的には、前記した不溶化する単量体(M)と同一の内容の化合物等が挙げられる。
分散安定化剤(P)における重合体成分中、一般式(I)で示される繰返し単位の成分は、重合体全成分中、少なくとも30質量%以上であり、好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
【0099】
重合体中に架橋構造を導入する方法としては、通常知られている方法を利用することができる。
即ち、▲1▼単量体の重合反応において、多官能性単量体を共存させて重合する方法、及び、▲2▼重合体中に、架橋反応を進行する官能基を含有させ高分子反応で架橋する方法である。
本発明の分散安定化剤(P)は、製造方法が簡便なこと(例えば、長時間の反応を要する、反応が定量的でない、反応促進助剤を用いる等で不純物が混入する等)等から、自己橋かけ反応を有する官能基;−CONHCH2OR3(ここでR3は水素原子又はアルキル基を示す)あるいは、重合による橋かけ反応が有効である。
重合反応において、好ましくは、重合性官能基を2個以上有する単量体を上記した一般式(I)で示される繰返し単位に相当する単量体とともに重合することで、ポリマー鎖間を橋架する方法である。重合性官能基として具体的には下記構造のものを挙げることができるが、上記の重合性官能基を2個以上有する単量体は、これらの重合性官能基を同一のものあるいは異なったものを2個以上有した単量体であればよい。
【0100】
【化25】
【0101】
重合性官能基を2個以上存した単量体の具体例は、例えば同一の重合性官能基を有する単量体として、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のスチレン誘導体;多価アルコール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ボリエチレングリコール#200、#400、#600、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールブロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなど)又は、ボリヒドロキシフエノール(例えばヒドロキノン、レゾルシン、カテコールおよびそれらの誘導体)のメタクリル酸、アクリル酸又はクロトン酸のエステル類、ビニルテル類又はアリルエーテル類;二塩基酸(例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等)のビニルエステル類、アリルステル支頁、ビニルアミド頻又はアリルアミド頻;ポリアミン(例えばエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブチレンジアミン等)とビニル基を含有するカルボン酸(例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、アリル酢酸等)との縮合体などが挙げられる。
【0102】
又、異なる重合性官能基を有する単量体としては、例えば、ビニル基を含有するカルボン酸〔例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリロイル酢酸、アクリロイル酢酸、メタクリロイルプロピオン酸、アクリロイルプロピオン酸、イタコニロイル酢酸、イタコニロイルプロピオン酸、カルボン酸無水物とアルコール又はアミンの反応体(例えばアリルオキシカルボニルブロピオン酸、アリルオキシカルボニル酢酸、2−アリルオキシカルボニル安息香酸、アリルアミノカルボニルプロピオン酸等)等〕のビニル基を含有したエステル誘導体又はアミド誘導体(例えば、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、イタコン酸ビニル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、イタコン酸アリル、メタクリロイル酢酸ビニル、メタクリロイルプロピオン酸ビニル、メタクリロイルプロピオン酸アリル、メタクリル酸ビニルオキシカルボニルメチルエステル、アクリル酸ビニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニルエチレンエステル、N−アリルアクリルアミド、N−アリルメタクリルアミド、N−アリルイタコン酸アミド、メタクリロイルプロピオン酸アリルアミド等);およびアミノアルコール類(例えばアミノエタノ一ル、1−アミノプロパノール、1−アミノブタノール、1−アミノヘキサノール、2−アミノブタノール等)と、ビニル基を含有したカルボン酸との縮合体などが挙げられる。
本発明に用いられる2個以上の重合性官能基を有する単量体は、全単量体の10質量%以下、好ましくは8質量%以下用いて重合し、本発明の非水溶媒に可溶性である樹脂を形成する。
【0103】
本発明の分散安定化剤(P)は、従来公知の合成方法によって容易に合成することができる。
即ち、一般式(I)で示される繰り返し単位に相当する単量体、及び上記した多官能性単量体を少なくとも共存させて、重合開始剤(例えば、アゾビス系化合物、過酸化物等)により重合する方法が簡便であり好ましい。
ここで用いられる重合開始剤は、各々全単量体100質量部に対して0.5〜15質量%であり、好ましくは1〜10質量%である。以上の如くして製造された本発明の分散安定化剤(P)は、不溶性樹脂粒子と相互作用し、不溶性樹脂粒子に吸着する。分散安定化剤(P)の吸着した粒子は、非水溶媒に可溶となる分散安定化剤(P)が架橋されていることにより、非水溶媒への親和性が著しく向上される。このように不溶性樹脂粒子界面の親媒性が向上されていることに加えて、更に、粒子に吸着しないで非水溶媒中に存在する分散安定化剤(P)が分散安定化剤の吸着した粒子同士の接近を立体的に抑制しているものと推定される。これらのことにより不溶性粒子の凝集・沈殿が抑制され、再分散性が著しく向上するものと考えられる。
【0104】
本発明の分散安定化剤(P)の重量平均分子量(Mw)は、5×103〜1×106が好ましく、より好ましくは2×104〜3×105である。
【0105】
本発明で用いられる顔料を内包した着色樹脂粒子を製造するには、非水溶媒中に表面処理された着色成分を微粒子状に分散させシード粒子とした中で、単量体と重合体繰返し成分主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)を加えた重合系を、過酸化ベンゾイル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル又はブチルリチウム等の重合開始剤の存在下に重合させればよい。
【0106】
非水溶媒中に表面処理された着色成分を微粒子状に分散させシード粒子とした中に、単量体と重合体繰返し成分主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)と重合開始剤とを具体的に加えるには、
(1)単量体と分散安定化剤(P)と重合開始剤とを非水溶媒中に混合溶解した溶液を滴下する方法、もしくは一括あるいは分割して添加する方法、
(2)非水溶媒中に着色成分を微粒子状に分散させシード粒子とした中に分散安定化剤(P)を溶解した溶液を加え、次に単量体と重合開始剤とを滴下、もしくは一括あるいは分割して添加する方法、
(3)非水溶媒中に着色成分を微粒子状に分散させシード粒子とした中に、単量体、分散安定化剤(P)、重合開始剤を非水溶媒中に混合溶解した溶液の一部を加え分散重合させた後に、残りの単量体、分散安定化剤(P)、重合開始剤の混合物を任意に添加する方法、
(4)非水溶媒中に着色成分を微粒子状に分散させシード粒子とした中に単量体の一部を加えてシード粒子へのモノマー吸収を促進させ、次に残りの単量体、分散安定化剤(P)と重合開始剤とを滴下、もしくは一括あるいは分割して添加する方法等
があり、いずれの方法を用いても製造することができる。
【0107】
次に顔料を内包した着色樹脂粒子を形成する各成分の量について説明する。シード粒子(着色成分微粒子)と単量体{(A)並びに(M)、必要に応じて(B)}の総量との使用割合は、5/95〜95/5質量比が好ましく、より好ましくは10/90〜80/20質量比である。単量体総量の仕込み量は、非水溶媒100質量部に対して5〜80質量部程度であり、好ましくは10〜50質量部である。可溶性もしくはコロイド状に分散している、重合体繰返し成分主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)は、上記で用いる全単量体100質量部に対して1〜100質量部であり、好ましくは3〜50質量部である。重合開始剤の量は、全単量体の0.1〜5モル%が適切である。又、重合温度は20〜180℃程度であり、好ましくは30〜120℃である。反応時間は1〜15時間が好ましい。
【0108】
反応に用いた非水溶媒中に、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が残存する場合、及び前記したアルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類等の極性溶媒を併用した場合、あるいは重合造粒化される単量体の未反応物が残存する場合、該溶媒あるいは単量体の沸点以上に加温して留去するかあるいは減圧留去することによって除くことが好ましい。
【0109】
以上の如くして製造された非水系顔料内包樹脂粒子は、顔料が均一に微粒子分散され、且つ分散液の分散安定性に優れることにより、ノズル部での目詰まりが起きない吐出安定性の高いインクジェットプリンタ用油性インクを提供する。また記録紙上での乾燥性、記録画像の耐水性、耐光性に優れており、且つ高度の耐擦過性を有する。更に、非水系溶媒中で均一に微粒子分散された顔料内包樹脂粒子を容易に得ることができ、荷電極性の制御、荷電の経時安定性に優れたインクジェットプリンタ用油性顔料インク、及びその安価な製造方法を提供する。また、単量体を適切に選択する事により、定着性、荷電性などの機能を顔料内包樹脂粒子に導入することができる特徴を有する。
【0110】
以下の実施例で、本発明のインク組成物がインクジェットプリンタ用油性インクとして有用な事を示す。インクジェットプリンタとしては、ピエゾ方式及び静電方式のインクジェットプリンタを例にして説明するが、これらの方式に限定されずに、サーマル方式やNTTなどのスリットジェットに代表されるインクジェットプリンタにも適用できる。
【0111】
静電方式のインクジェットプリンタについて更に説明する。
図1及び図2は吐出ヘッドの例を説明する概略図で、図1はライン走査型マルチチャンネルインクジェットヘッドの構成を示す図で、記録ドットに対応した吐出電極の断面を示している。同図においてインク100はポンプを含む循環機構111から、ヘッドブロック101に接続されたインク供給流路112を通して、ヘッド基板102と吐出電極基板103間に供給され、同じくヘッドブロック101に形成されたインク回収流路113を通してインク循環機構111に回収される。この吐出電極基板103は、貫通孔107を有する絶縁性基板104と、この貫通孔107の周囲で記録媒体側に形成されている吐出電極109とから構成されている。一方ヘッド基板102上には凸状インクガイド108が前記貫通孔107の略中心位置に配置されている。この凸状インクガイド108はプラスチック樹脂、セラミックスなど絶縁性部材からなり、前記貫通孔107と中心が等しくなるように同じ列間隔、ピッチで配置され、所定の方法でヘッド基板102上に保持されている。各凸状インクガイド108は厚みが一定の平板の先端を三角形あるいは台形状に切り出した形状で、その先端部がインク滴飛翔位置110となる。各凸状インクガイド108はその先端部からスリット状の溝を形成しても良く、そのスリットの毛細管現象により、インク飛翔位置110へのインク供給がスムースに行われ、記録周波数を向上することが出来る。またインクガイドの任意の表面は必要に応じて導電性を有していても良く、その場合には導電部分は電気的に浮遊状態とする事によって、吐出電極への少ない電圧印加で有効にインク飛翔位置に電界を形成できる。各凸状インクガイド108は、それぞれの貫通孔からほぼ垂直に所定の距離だけインク滴飛翔方向に突きだしている。凸状インクガイド108の先端に対向して記録紙である記録媒体121が配置され、この記録媒体121のヘッド基板102と反対側の背面に、記録媒体121を案内するプラテンの役割を兼ねる対向電極122が配置されている。また、ヘッド基板102と吐出電極基板103間によって形成される空間の底部には泳動電極140が形成されており、これに所定の電圧を印加する事により、インクガイドの吐出位置方向にインク中の荷電粒子を電気泳動させ、吐出の応答性を上げることが出来る。
【0112】
次に、吐出電極基板103の具体的構成例について図2を用いて説明する。図2は、吐出電極基板103を記録媒体121側から見た図で、複数個の吐出電極が主走査方向に二列でアレイ状に配列されて、各吐出電極の中心に貫通孔107が形成され、この貫通孔107の周辺にはそれぞれ個別の吐出電極109が形成されている。本実施例では吐出電極109の内径は貫通孔107の径より一回り大きく設けられているが、貫通孔107の径と同径でも良い。ここでは、絶縁性基板104は25から200μm程度の厚さのポリイミドからなり、吐出電極109は10から100μm程度の厚さの銅箔からなり、貫通孔107の内径は150から250μmΦ程度である。
【0113】
次に、静電方式のインクジェット記録装置の記録動作を説明する。ここでは正荷電したインクを用いた場合を例にとって説明するが、本発明は本例に限定される物ではない。記録時には、インク循環機構111からインク供給流路112を経て供給されたインク100は貫通孔107から凸状インクガイド108の先端のインク飛翔位置110に供給されると共に、一部はインク回収流路113を経てインク循環機構111に回収される。ここで、吐出電極109にはバイアス電圧源123から常時バイアスとして例えば+1.5kVの電圧が与えられ、これに信号電圧源124からの画像信号に応じた信号電圧として例えばON時に+500Vのパルス電圧が吐出電圧109に重畳される。またこの際、泳動電極140は+1.8kVの電圧が印加されている。一方、記録媒体121の背面に設けられた対向電極122は、図のように接地電圧0Vに設定されている。場合によっては記録媒体121側を例えば−1.5kVに帯電させてバイアス電圧としても良い。この場合には、対向電極122表面に絶縁層を設け、記録媒体にコロナチャージャー、スコロトロンチャージャー、固体イオン発生器等により帯電を行い、かつ吐出電極109は例えば接地され、これに信号電圧源124からの画像信号に応じた信号電圧として例えばON時に+500Vのパルス電圧が吐出電圧109に重畳される。またこの際、泳動電極140は+200Vの電圧が印加される。今、吐出電圧109がON状態(500Vが印加された状態)となり、バイアスDC1.5kVに500Vのパルス電圧が重畳された合計2kVの電圧が加わると、凸状電極108先端のインク滴飛翔位置110から、インク滴115が飛び出し、対向電極122方向に引っ張られて、該記録媒体121に向けて飛翔して画像を形成する。
【0114】
なお、飛翔後のインク液滴の飛翔を精密制御し記録媒体上での着弾精度を向上するため、吐出電極と記録媒体間に中間電極を設ける、あるいは吐出電極間に電界干渉抑制用のガード電極を設ける、等の手段がしばしば講じられるが、本実施例においても必要により好適に使用されることはもちろんである。また、ヘッド基28板102と吐出電極基板103間に多孔質体を設けても良く、この場合にはインクジェットヘッドの移動等によるインク内圧の変化の影響を防止できると共にインク滴吐出後の貫通孔107部へのインク液供給が迅速に達成される。したがって、インク滴115の飛翔が安定化され、記録媒体121上に濃度の安定した良好な画像を高速に記録することができる。
【0115】
[実施例]
以下、本発明の実施例を説明する。
分散安定化剤の合成例1:分散安定化剤(P−1)
オクタデシルメタクリレート100g、ジビニルベンゼン2g及びトルエン200gの混合溶液を窒素気流下撹拌しながら温度85℃に加温した。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(略称A.I.B.N)3.0gを加え4時間反応し、更にA.I.B.Nを1.0g加えて2時間反応し、更にA.I.B.Nを0.5g加えて2時間反応した。冷却後メタノール1.5L中に、この混合溶液を再沈し、白色粉末を濾集後乾燥して、粉末88gを得た。得られた重合体の重量平均分子量は3.3×104であった。
【0116】
分散安定化剤の合成例2〜14:分散安定化剤(P−2)〜(P−14)
合成例1において、オクタデシルメタクリレートの代りに下記表−Aの単量体を用いる他は合成1と全く同様に操作して各分散安定化剤を合成した。各分散安定化剤の重量平均分子量は3.0×104〜5.0×104であった。
【0117】
【表1】
【0118】
分散安定化剤の合成例15〜27:分散安定化剤(P−15)〜(P−27)
合成例1において、架橋用多官能性単量体であるジビニルベンゼン2gの代わりに、下記表−Bの多官能性単量体又はオリゴマーを用いる他は、合成例と全く同様に操作して各分散安定化剤を合成した。各分散安定化剤の重量平均分子量は3.0×104〜6.0×104であった。
【0119】
【表2】
【0120】
分散安定化剤の合成例28:分散安定化剤(P−28)
オクタデシルメタクリレート95g、N−メトキシメチルアクリルアミド5g、トルエン150g及びイソブロパノール50gの混合吻を窒素気流下に温度75℃に加温した。A.I.B.N.を3.0g加え、8時間反応した。次に、Dean−Starkを用いて、温度110℃に加温し6時間攪拌した。用いた溶媒イソプロパノール及び反応で副生するメタノールを除去した。冷却後、メタノール1.5L中に再沈し、白色粉末を濾集後、乾燥した。収量82gで重量平均分子量は5.6×104であった。
【0121】
マクロモノマーの製造例1:(M−1)
オクタデシルメタクリレート100g、チオグリコール酸1g及びトルエン200gの混合溶液を、窒素気流下攪拌しながら、温度75℃に加温した。2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(略称A.I.B.N.)を1.5g加え、4時間反応した。更に、A.I.B.N.を0.5g加え3時間、その後、更にA.I.B.N.を0.3g加え3時間反応した。この反応溶液を、室温に冷却し、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.8gを加え、これにジシクロヘキシルカルボジイミド(略称D.C.C.)を4.5g及び塩化メチレン10gの混合溶液を1時間で滴下した。4−ジメチルアミノピリジン0.1gとt−ブチルハイドロキノン0.1gを加え、そのまま4時間攪拌した。
析出した結晶を濾別して得た濾液を、メタノール2リットル中に再沈した。沈殿した白色固体をデカンテーションで補集し、これをテトラヒドロフラン300mlに溶解し、メタノール3リットル中に再度再沈した。沈殿した白色粉末を補集し、減圧乾燥して、収量93.2gで重量平均分子量12,100のマクロモノマー(M−1)を得た。分子量はGPC法によるポリスチレン換算値である。
【0122】
【化26】
【0123】
マクロモノマーの製造例2〜17:(M−2)〜(M−17)
マクロモノマーの製造例1において、メタクリレートモノマー(オクタデシルメタクリレートに相当)、連鎖移動剤(チオグリコール酸に相当)、開始剤(A.I.B.N.に相当)及び不飽和カルボン酸エステル(2−カルボキシエチルメタクリレートに相当)を各々相当する化合物に代えて、上記マクロモノマーの製造例1と同様にして、下記表−C及び表−Dのマクロモノマー(M−2)〜(M−17)を各々製造した。得られた各マクロモノマーの重量平均分子量は4,600〜61,000であった。
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
【表5】
【0127】
【表6】
【0128】
【表7】
【0129】
実施例1
<顔料分散液の調製>
下記構造の顔料分散剤(D−1)をアイソパーHに加熱溶解して調液した20%溶液を、顔料分散剤として用いた。上記顔料分散剤溶液88.25重量部と、黒色加工顔料としてロジンエステル樹脂で処理されたマイクロリスブラックC−T(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)17.65重量部、アイソパーH29.4重量部及びガラスビーズ250重量部とともにペイントシェイカー(東洋精機KK)で30分間混合した。次にガラスビーズをろ別した後、高速度分散混和機器ダイノミル(商品名;KDL)で回転数3000rpmで3時間分散した。メディアはガラスビーズMK−3GXを使用した。分散液中の顔料粒子の体積平均粒径を、超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定したところ、0.16μmと良好に分散されていた。
【0130】
【化27】
【0131】
<着色樹脂粒子の調製>
ガラスビーズをろ過した加工顔料分散液のろ液(固形分23.3%)85.8gを四つ口フラスコに入れ窒素気流下攪拌しながら温度80℃で3時間加熱した。
次にこの加工顔料分散液中に、分散安定化剤(P)として(P−1)を粉体で8g、メタクリル酸メチル16.0g、アクリル酸メチル22.0g、マクロモノマー(M)として(M−1)を2.0g及びアイソパーH120gの混合溶液に2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.0gを加えた溶液をフィード溶液として、滴下速度2.5ml/分で滴下しその後3時間反応させた。滴下開始から約20分して発熱が始まり、反応液温度は約5℃程上昇した。3時間反応後に温度を90℃に上げ2時間攪拌し未反応のモノマーを留去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し得られた黒色樹脂粒子分散液は重合率98%でその体積平均粒子サイズは0.24μmであった。得られた黒色樹脂粒子分散液は、1カ月静置保存した後の分散状態も良好であった。
黒色樹脂粒子分散液をS−800形電界放射形走査電子顕微鏡(日立電気社製)で観察したところ、約100nm程度のマイクロリスブラック顔料粒子が分散重合後には約180nmの球形状樹脂粒子に成長しており、滴下モノマーがシード顔料粒子内で吸収され重合していることが判った。更に黒色粒子分散液を透過形走査電子顕微鏡で観察したところ、分散重合後の約180nmの球形状着色樹脂粒子の中にはシードの顔料粒子が内包されているのが判った。
以上より、本発明のシード分散重合により生成した着色樹脂粒子は、ロジンエステル樹脂処理された顔料を内部に含有した着色樹脂粒子である事が判る。
【0132】
<インク組成物:(IJ−1)の作製>
上記着色樹脂粒子分散液を、溶媒留去により一旦濃縮しアイソパーGにて希釈する事により、粘度は13cp(E型粘度計、温度25℃で測定)、表面張力は23mN/m(協和界面科学社製の自動表面張力計、温度25℃で測定)のインク組成物(IJ−1)を調液した。インクジェット記録装置としてカラーファクシミリ彩遊記UX−E1CL(シャープ社製)を用い、上記インク組成物(IJ−1)を充填して、富士写真フイルムインクジェットペーパーハイグレード専用紙上に描画したところ、ノズル詰まりが無く安定に吐出した。得られた描画画像は、滲みがなく、画像濃度1.8の良質で明瞭なものであった。次にフルベタパターンを印字して、印字物を乾燥させた後ベタ部を指で擦ったところ、目視で地汚れが全くなく極めて耐擦過性に優れていることが判った。インク組成物は、長期に保存しても沈降凝集が見られず分散性が極めて良好で、かなりな期間連続して印刷に使用でき優れた鮮明度の印刷を与えた。
【0133】
実施例2
<顔料分散物の調製>
黒色顔料としてカーボンブラック#30(三菱化学社製)100重量部、ポリマー処理の樹脂としてエチレン/ステアリルアクリレート共重合体(95/5モル比)、200重量部をトリオブレンダーで予備粉砕しよく混合した後に、120℃に加熱した三本ロールミルで溶融混練(20分)した。上記の顔料混練物をピンミルで粉砕した。
次に顔料混練物10重量部、アイソパーH65重量部、下記構造の顔料分散剤(D−2)をアイソパーHに加熱溶解して調液した20wt%溶液を20重量部、及び3G−Xガラスビーズ250重量部とともにペイントシェイカー(東洋精機KK)で60分間混合した。次にガラスビーズをろ別した後、高速度分散混和機器ダイノミル(商品名;KDL)で回転数3000rpmで3時間分散した。メディアはガラスビーズMK−3GXを使用した。分散液中の顔料粒子の体積平均粒径を、超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定したところ、0.16μmと良好に分散されていた。
【0134】
【化28】
【0135】
<着色樹脂粒子の調製>
ガラスビーズをろ過した顔料分散液のろ液(固形分14.0%)214.3gを四つ口フラスコに入れ窒素気流下攪拌しながら温度75℃で1時間加熱した。次にこの顔料分散液中に、実施例1と同様に、分散安定化剤(P−2)を粉体で4g、メタクリル酸メチル5.8g、アクリル酸メチル13.2g、マクロモノマー(M)として(M−2)を1.0g及びアイソパーH80gの混合溶液に2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gを加えた溶液をフィード溶液として、一時間で滴下しその後3時間反応させた。滴下開始から約15分して発熱が始まり、反応液温度は約4℃程上昇した。3時間反応後に温度を90℃に上げ窒素流量を上げながら、2時間攪拌し未反応のモノマーを留去した。黒色樹脂粒子分散液は重合率97.0%でその体積平均粒子サイズは0.22μmであった。得られた黒色樹脂粒子分散液は、1カ月静置保存した後の分散状態も良好であった。
【0136】
<インク組成物:(IJ−2)の作製>
上記着色樹脂粒子分散液を、溶媒留去により一旦濃縮しアイソパーGにて希釈する事により、粘度は13cp、表面張力は23mN/mのインク組成物(IJ−2)を調製した。インク組成物(IJ−2)を、実施例1と同様にしてカラーファクシミリ彩遊記UX−E1CL(シャープ社製)で印刷したところ、滲みのない良質の明瞭な印刷を与えた。また実施例1と同様にして耐擦過性を調べたところ、目視で地汚れが全くなく極めて耐擦過性に優れていることが判った。インク組成物は、長期に保存しても沈降凝集が見られず分散性が良好であつた。
【0137】
実施例3
<顔料分散物の調製>
黒色顔料としてカーボンブラック#100(三菱化学社製)10重量部、水100重量部をフラッシャーで攪拌後、ポリマー処理の樹脂としてスチレン/ビニルトルエン/ラウリルメタクリリレート共重合体(40/58/2モル比)の33%トルエン溶液60重量部を、更にフラッシャーに加え攪拌した。次いで、加熱し減圧して水分と溶媒を除去して含水率1重量%の黒色塊状物を得た。黒色塊状物を真空乾燥し、水分を完全に除去した後、サンプルミルで粉砕し、0.1−0.01mmの黒色粉体を得た。実施例2において、顔料混練物の代わりに上記黒色粉体を用い、顔料分散剤として(D−2)の代わりに下記構造の顔料分散剤(D−3)を用いた他は、実施例2と全く同様に顔料分散を行った。ガラスビーズをろ別した後得られた黒色顔料分散液は、体積平均粒径が0.13μmと分散性は良好であった。
【0138】
【化29】
【0139】
<着色樹脂粒子の調製>
ガラスビーズをろ過した顔料分散液のろ液(固形分13.0%)をシード粒子として、実施例2において、マクロモノマー(M)としてマクロモノマー(M−2)の代わりに(M−3)1.0gを用い、また、分散安定化剤(P−1)の代わりに(P−3)を8g用いた他は、実施例2と全く同様にして分散重合を行った。得られた黒色樹脂粒子分散液は重合率98.0%でその体積平均粒子サイズは0.21μmであった。得られた黒色樹脂粒子分散液は、1カ月静置保存した後の分散状態も良好であった。
【0140】
<インク組成物:(IJ−3)の作製>
上記顔料樹脂粒子分散液を、粘度は13cp、表面張力は23mN/mに調製してインク組成物(IJ−3)を得た。インク組成物(IJ−3)を、実施例1と同様にしてカラーファクシミリ彩遊記UX−E1CL(シャープ社製)で印刷したところ、滲みのない良質の明瞭な印刷を与えた。また実施例1と同様にして耐擦過性を調べたところ、目視で地汚れが全くなく極めて耐擦過性に優れていることが判った。インク組成物は、長期に保存しても沈降凝集が見られず分散性が良好であつた。
【0141】
比較例1
<比較用顔料分散液の調製>
青色顔料としてアルカリブルー 5重量部、顔料分散剤としてラウリルメタクリレート/アクリル酸共重合体(組成比95/5wt/wt)5重量部とを、アイソパーH90重量部及びガラスビーズ250重量部とともにペイントシェイカー(東洋精機KK)で30分間混合した。次にガラスビーズをろ別した後、高速度分散混和機器ダイノミル(商品名;KDL)で回転数3000rpmで3時間分散し分散液中の顔料粒子の体積平均粒径を、超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定したところ、0.13μmと良好に分散されていた。
【0142】
<比較用着色樹脂粒子の調製>
ガラスビーズをろ過した顔料分散液のろ液(固形分9.6%)208.3gを四つ口フラスコに入れ窒素気流下攪拌しながら溶液温度を80℃で3時間加熱した。次にこの顔料分散液中に、実施例1と同様に、分散安定化剤(P−1)を粉体で8g、メタクリル酸メチル16.0g、アクリル酸メチル22.0g、マクロモノマー(M)として(M−1)を2.0g及びアイソパーH120gの混合溶液に2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.0gを加えた溶液をフィード溶液として、滴下速度2.5ml/分で滴下しその後3時間反応させた。滴下開始から約15分して発熱が始まり、反応液温度は約5℃程上昇したが、フラスコ壁面に粗大粒子が付着しており、反応後にはフラスコの底に多量の沈殿物がみられた。比較例1の着色樹脂粒子は、粗大粒子、沈降物の生成のため、次ぎのインク組成物に供することができなかった。
【0143】
比較例2〜3
実施例1において、ロジンエステル樹脂処理された黒色顔料マイクロリスブラックC−T (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)の代わりに、下記のポリマーで処理された青色顔料(C.I.Pigmet Blue 15:3)を用いた他は実施例1と全く同様に顔料分散を行った。
【0144】
分散後にガラスビーズをろ別し得られた比較例2〜3の顔料分散液は、体積平均粒径が比較例2で1.48μm、比較例3で1.67μmであった。比較例2〜3の顔料分散液は、粗大粒子があり経時で沈降物が生成するなど分散性は良好でないため、次ぎのシード重合に供することができなかった。
【0145】
実施例1〜3と比較例1〜3より、本発明の如くポリマー処理された顔料は、特異的に微細粒子化され良好な分散安定性を有し、また、分散安定化剤として、重合体成分の主鎖の一部分が架橋された分散安定化剤を用いたために、シード分散重合が良好に進行し、そのシード分散重合により生成したポリマー処理された顔料を内部に含有する着色樹脂粒子は、明瞭な印刷画質、極めて優れた耐擦過性、良好な長期分散性等の、良好なインク特性を示すことが判った。
【0146】
実施例4
<顔料分散液の調製>
黒色顔料としてカーボンブラック#30(三菱化学社製)100重量部、ポリマー処理の樹脂としてメチルメタクリレート/ステアリルメタクリレート共重合体(9/1モル比)、200重量部をトリオブレンダーで予備粉砕しよく混合した後に、120℃に加熱した三本ロールミルで溶融混練(20分)した。上記の顔料混練物をピンミルで粉砕した。
次に顔料混練物10重量部、アイソパーG65重量部、顔料分散剤としてソルプレン1205(旭化成社製、スチレン/ブタジエン共重合体)をアイソパーGに加熱溶解して調液した20wt%溶液を25重量部、及び3G−Xガラスビーズ250重量部とともにペイントシェイカー(東洋精機KK)で60分間混合した。次にガラスビーズをろ別した後、高速度分散混和機器ダイノミル(商品名;KDL)で回転数3000rpmで3時間分散した。メディアはガラスビーズMK−3GXを使用した。分散液中の顔料粒子の体積平均粒径を、超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定したところ、0.21μmと良好に分散されていた。
【0147】
<着色樹脂粒子の調製>
ガラスビーズをろ過した顔料分散液のろ液(固形分14.0%)214.3gを四つ口フラスコに入れ窒素気流下攪拌しながら温度50℃で1時間加熱した。次にこの顔料分散液中に、上記の分散安定化剤(P−2)を粉体で4g、アクリル酸メチル19.6g、マクロモノマー(M−1)を0.4g及びアイソパーH80gの混合溶液に2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.7gを加えた溶液をフィード溶液として、一時間で滴下しその後3時間反応させた。滴下開始から約20分して発熱が始まり、反応液温度は約5℃程上昇した。3時間反応後に温度を50℃から80℃に上げ窒素流量を上げながら、2時間攪拌し未反応のモノマーを留去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し得られた黒色樹脂粒子分散液は重合率95%でその体積平均粒子サイズは0.24μmであった。得られた黒色樹脂粒子分散液は、1カ月静置保存した後の分散状態も良好であった。
【0148】
<インク組成物:(IJ−4)の作製>
上記着色樹脂粒子分散液を、溶媒留去により一旦濃縮しアイソパーGにて希釈する事により、粘度は13cp、表面張力は23mN/mのインク組成物(IJ−4)を調製した。インク組成物(IJ−4)を、実施例1と同様にしてカラーファクシミリ彩遊記UX−E1CL(シャープ社製)で印刷したところ、滲みのない良質の明瞭な印刷を与えた。また実施例1と同様にして耐擦過性を調べたところ、目視で地汚れが全くなく極めて耐擦過性に優れていることが判った。インク組成物は、長期に保存しても沈降凝集が見られず分散性が良好であつた。
【0149】
比較例4
<比較用インク組成物:(IJR−1)の作製>
実施例4の着色樹脂粒子の代わりにシード粒子の顔料分散液を用いた他は、インク組成物(IJ−4)と同様にして、比較用インク組成物(IJR−1)を作成した。インクの粘度は12cp、表面張力は23dyne/cmであった。比較用インク組成物(IJR−1)を、実施例1と同様にしてカラーファクシミリ彩遊記UX−E1CL(シャープ社製)で印刷したところ、滲みのない印刷を与えたものの、ベタ画像部を指で擦ると簡単に画像部が取れてしまい、耐擦過性が極めて悪い事が判った。更に、得られた印刷画像部を指で擦って取れないようにするには、印刷記録体を120℃以上に加熱定着する必要がある事が判った。
【0150】
本発明のインク組成物(IJ−4)と比較用インク組成物(IJR−1)の実験結果より、本発明の如くポリマー処理された顔料をシード粒子として、重合体成分の一部が架橋された分散安定化剤を用いたシード分散重合により、低軟化性の樹脂で被覆された着色樹脂粒子は、明瞭な印刷画質、良好な易定着性、極めて優れた耐擦過性、良好な長期分散性等の、良好なインク特性を示すことが判った。
【0151】
実施例5
<顔料分散物の調製>
実施例1において、黒色顔料マイクロリスブルーC−T (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)の代わりに、黄色顔料マイクロリスイエロ−3R−T (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を用いた他は実施例1と全く同様に顔料分散を行った。ガラスビーズをろ別した後得られた黄色顔料の分散液は、体積平均粒径が0.20μmと分散性は良好であった。
【0152】
<着色樹脂粒子の調製>
黄色顔料の分散液(固形分20.0%)100gを四つ口フラスコに入れ窒素気流下攪拌しながら温度80℃で2時間加熱した。実施例1において、分散安定化剤として(P−6)を粉体で4g、メタクリル酸メチル8.0g、アクリル酸メチル10.0g、マクロモノマー(M−3)1.0g、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル1.0g及びアイソパーH80gの混合溶液に2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6gを加えた溶液をフィード溶液として、滴下速度2.0ml/分で滴下し3時間反応させた他は、実施例1と全く同一の反応操作を行った。反応液温度は約4℃程上昇した。得られた黄色樹脂分散液は、重合率95%、体積平均粒子サイズは0.26μmであり、1カ月静置保存した後の分散状態も良好であった。
【0153】
<インク組成物:(IJ−5)の作製>
黄色樹脂粒子分散液をアイソパーGで樹脂粒子成分が6.0%になる様希釈した。次いで荷電調節剤としてオクタデセン−半マレイン酸オクタデシルアミド共重合体を、0.01g/アイソパーG 1リットルになる様添加してインク組成物(IJ−5)を調液した。インク組成物(IJ−5)の荷電量の測定を、特公昭64−696号に記載の現像特性装置(印加電圧500V、印加した電極の背面に誘起された電圧の時間変化の初期値を測定)で行った。インク組成物(IJ−5)は全体荷電が240mV、黄色樹脂粒子の荷電が201mVと明瞭な正荷電性を示し、一ヵ月後の荷電量の変化も殆ど無く極めて安定している事が判った。また、その荷電量は荷電調節剤の量により容易に制御できる事が判った。
【0154】
比較例5
<比較用インク組成物:(IJR−2)の作製>
実施例5において、シード粒子である黄色顔料分散物をインク組成物(IJ−5)と同様にインク化して比較用インク組成物(IJR−2)を作成した。比較用インク組成物(IJR−2)の荷電量を測定したところ、荷電極性は負荷電で、全体荷電が90mV、黄色顔料粒子の荷電が13mVであった。
実施例5と比較例5より、シード粒子の黄色顔料マイクロリスイエロ−3R−T(比較用インク組成物(IJR−2))の荷電極性はもともと負荷電であるが、重合体成分の主鎖の一部分が架橋された分散安定化剤を用いたシード分散重合により樹脂被覆した本発明の着色樹脂粒子(インク組成物(IJ−5))は、荷電極性が明瞭な正荷電を示し、その荷電量も荷電調節剤の量により容易に制御できる事が判る。即ち、もともとの顔料の荷電極性に依らず、シード分散重合により顔料表面を樹脂被覆する事により、荷電極性(適切に荷電調節剤を選択して)、荷電量を自由に制御できることが判る。
【0155】
<画像描画性>
インクジェツト装置として、図−1に示すヘッド構造の100dpi 64チャンネルの静電式インクジェツトヘッドを使用し、インク組成物(IJ−5)をインクタンクに充填した。エアーポンプ吸引により記録媒体であるコート記録紙表面の埃除去を行った後、吐出ヘッドを描画位置までコート記録紙に近づけ、描画解像度600dpiでインクを吐出し描画した。この際、パルス電圧を調節してドット径15μmから60μmの範囲で16段階でドット面積を変化させながら描画した。描画画像は滲みのない満足し得る濃度の良質の明瞭な画像を与えた。インクヘッドからの吐出安定性も良好で、詰まりを生じる事が無く、画像描画でも安定したドット形状の印字ができた。また実施例1と同様にして耐擦過性を調べたところ、目視で地汚れが全くなく極めて耐擦過性に優れていた。インク組成物(IJ−5)は、長期に保存しても沈降凝集が見られず分散性が良好であった。
【0156】
一方、比較用インク組成物(IJR−2)を用い、吐出ヘッドに印加するパルス電圧を負極性にして上記と同様に描画したところ、描画画像は滲みがひどく画像濃度も低いものであった。また、吐出不良が発生したために、画像欠落が見られ満足する画像が得られなかった。
以上の結果より、本発明のシード分散重合により樹脂被覆した顔料樹脂粒子(インク組成物IJ−5)が、明瞭な正荷電と十分な荷電量も有するために、静電式インクジェツト装置において、明瞭な印刷画質、良好な吐出安定性、極めて優れた耐擦過性、良好な長期分散性等の、良好なインク特性を示すことが判った。
【0157】
実施例6〜19
<顔料分散液の調製>
実施例1において、顔料分散剤(D−1)の代わりに(D−3)を加工顔料に対して50wt%用い、また黒色加工顔料マイクロリスブラックC−Tの代わりに、青色加工顔料マイクロリスブルー4G−T(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を用いた他は実施例1と全く同様に顔料分散を行った。ガラスビーズをろ別した後得られた顔料分散液は、体積平均粒径は0.16μmで分散性は良好であった。この青色顔料分散液を用いてシード分散重合を行い着色樹脂粒子、インク組成物(IJ−6)〜(IJ−19)をそれぞれ作成した。
【0158】
<着色樹脂粒子の調製>
実施例1において、青色加工顔料分散液(固形分19.1%)157.5gを用い、下記の表−Eに記載の分散安定化剤(P)を粉体で8g、単量体を40g、アイソパーGを120g、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を単量体の1モル%加えた溶液をフィード溶液と2時間で滴下して他は、実施例1と全く同一の反応操作を行った。反応液温度はそれぞれ約3〜8℃程上昇した。得られた青色粒子分散液6〜19は、重合率が約89〜98%であり、その体積平均粒子サイズは0.20〜0.26μmであった。また青色粒子分散液6〜19は、1カ月静置保存した後の分散状態もそれぞれ良好であった。
【0159】
<インク組成物:(IJ−6)〜(IJ−19)>
上記着色樹脂粒子分散液6〜19を、それぞれ粘度は12〜14cp、表面張力は22〜24mN/mに調整してインク組成物(IJ−6)〜(IJ−19)を得た。インク組成物(IJ−6)〜(IJ−19)を、実施例1と同様にしてカラーファクシミリ彩遊記UX−E1CL(シャープ社製)で印刷したところ、インク組成物(IJ−6)〜(IJ−19)は、滲みのない満足し得る濃度の良質の明瞭な印刷を与え、また目視で地汚れが全くなく極めて耐擦過性に優れていた。また、インク組成物(IJ−6)〜(IJ−19)は、長期に保存しても沈降凝集が見られず分散性が良好であつた。
【0160】
【表8】
【0161】
【表9】
【0162】
実施例20
実施例5で得られたインク組成物(IJ−5)を電子写真用液体現像剤として、リコー製湿式複写機DT−2500を用いて印字テストしたところ、十分な画像濃度と良好な定着性を有する画像が得られた。また、この電子写真用液体現像剤は荷電の経時変化が極めて少なく、再分散性、保存安定性に優れるものであった。
【0163】
【発明の効果】
ポリマー処理された顔料をシード粒子として、非水溶媒中で重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤を用いたシード分散重合により得られる、樹脂で被覆された本発明の顔料樹脂粒子を含有するインク組成物により、顔料が均一に微粒子分散され、且つ顔料分散液の分散安定性に優れるインクジェットプリンタ用油性インクを提供できる。また、ノズル部での目詰まりが起きない吐出安定性の高いインクジェットプリンタ用油性インクを提供できる。更に記録紙上での乾燥性、記録画像の耐水性、耐光性に優れており、且つ高度の耐擦過性を有するインクジェットプリンタ用油性インクを提供できる。また、分散安定性、耐擦過性に優れると共に、荷電極性の制御や荷電の経時安定性にも優れた静電方式インクジェツトプリンタ用油性インク、及び電子写真用液体現像剤を提供する事である。更に上記の特徴を有する、均一に微粒子分散された顔料を内包する樹脂粒子からなるインクジェットプリンタ用インクを得るための製造方法を提供できる。
【0164】
【図面の簡単な説明】
【図1】ライン走査型マルチチャンネルインクジェットヘッドの構成例を示し、記録ドットに対応した 吐出電極の断面を示す図である。
【図2】吐出電極を記録媒体側から見た図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクを飛翔させ、記録紙等の被転写媒体上に文字や画像を形成するインクジェット記録装置に供する油性インクに関し、特に、着色樹脂粒子が、着色剤が表面処理された着色成分粒子を更にポリマー被覆した着色樹脂粒子である油性インク、電子写真現像剤及び該着色樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種のインクジェット記録方式が知られており、例えば安居院猛等「リアルカラー ハードコピー」産業図書(株)(1993年刊)、大野信「ノンインパクトプリンティング−技術と材料−」(株)シーエムシー(1986年刊)、甘利武司「インクジェットプリンタ−技術と材料」(株)シーエムシー(1998年刊)等の成書に記載されており、オンデマンド(随意噴射)とコンティニアス(連続噴射)の方式がある。更に連続型では静電方式(Sweet型、Hertz型)、オンデマンド型ではピエゾ圧電方式、シェアモードピエゾ圧電方式、サーマルインクジェット方式、静電加速型と呼ばれる記録方式等が知られている。
これらインクジェット記録方式に用いるインクとしては、インク吐出部及びインク供給経路でインク目詰まりがなく、吐出安定性に優れ且つ、色彩・光沢性等のカラー画像としての品質が良好なものとして一般に水性インクが用いられている。
【0003】
静電力を用いるオンデマンド型のインクジェット方式として一ノ瀬進、大庭有二、電子通信学会論文誌vol.J66−C(No.1)、p.47(1983)、大野忠義、水口衛、画像電子学会誌Vol.10、(No.3)、p.157(1981)等に記載の静電加速型インクジェットあるいはスリットジェットと呼ばれる方式が知られており、具体的態様が、例えば特開昭56−170号、同56−4467号、同57−151374号各公報等に開示されている。これは、インクタンクからスリット状のインク保持部内面に多数の電極を配置してなるスリット状インク室にインクを供給し、これらの電極に選択的に高電圧を印加することにより、スリットと近接対向する記録紙に電極近傍のインクを噴射させて記録するものである。
【0004】
また、スリット状の記録ヘッドを用いない濃縮吐出型の静電方式が、特開平10−138493号公報に開示されている。これは、インク中の色剤成分に静電力を作用させるための複数個の個別電極を、貫通孔の形成された絶縁性基板およびこの貫通孔に対応して形成された制御電極からなる制御電極基板と、この貫通孔のほぼ中心位置に配置された凸状インクガイドとから構成し、この凸状インクガイドの表面を表面張力でインクをインク滴飛翔位置まで運び、制御電極に所定の電圧を印加することで記録媒体にインク滴を飛翔させ記録するものである。
【0005】
この様な種々のインクジェット記録方式に用いるインクとしては、各種の水溶性染料を水、または、水及び水溶性有機溶剤からなる溶媒中に溶解し、必要により各種添加剤が添加されたものが主流を占めている(以下、水性染料インクと呼称する場合がある)。しかしながら、水性染料インクを用いて実印字を行った場合、紙種により記録紙上でインクがにじみ、高品位な印字が得られないことや、形成された記録画像の耐水性・耐光性が劣っている、記録紙上での乾燥が遅く尾引きが起こる、カラーの混色(異色のドットを隣接して印字した場合に色境界面で生じる色濁りあるいは色ムラ)による記録画像の劣化等の欠点があった。
そこで、前記の水性染料インクの問題点である記録画像の耐水性・耐光性を改善する意味で、水性溶媒あるいは非水性溶媒体中に顔料を微粒子として分散させた、顔料系インクをインクジェット記録方式に適用する試みが種々なされている。
例えば、水を主成分とした溶媒中に顔料を分散させたインクジェットプリンタ用インクとして、特開平2−255875号、特開平3−76767号、特開平3−76768号、特開昭56−147871号、特開昭56−147868号の各公報に示されるようなインクが提案されているが、顔料が媒体に不溶であるため、一般に分散安定性が悪い、ノズル部で目詰まりを起こしやすい等の問題を有していた。
【0006】
一方、顔料を非極性の絶縁性溶媒に分散させたインク(以下、油性顔料インクと呼称する場合がある)は、紙への吸収性が良いため滲みが少なく、又、記録画像の耐水性が良いなどの利点があり、例えば、特開昭57−10660号公報、特開昭57−10661号公報のようなインクが提案されている。
また、特開昭57−10660号公報ではアルコールアミド系分散剤、特開昭57−10661号公報ではソルビタン系分散剤によりそれぞれ顔料を微粒子化しているものの、顔料粒子を非極性の絶縁性溶媒に均一に微粒子分散させるには十分でなく、又、分散安定性が悪いため、ノズル部で目詰まりを起こしやすい等の問題を依然として有していた。更に顔料自体には記録紙に対する固着能がないために耐擦過性に乏しいという大きな欠点があった。
これらを改良するために、非極性の絶縁性溶媒に可溶な樹脂を固着剤および顔料分散剤として兼用して用いる樹脂溶解型油性インクが提案されている。例えば、特開平3−234772号公報には上記の樹脂としてテルペンフェノール系樹脂が提案されている。しかしながら、顔料の分散安定性が依然として十分でなく、インクとしての信頼性に問題があつた。更に、樹脂を非極性溶媒中に溶解させているために、顔料を記録紙に完全に定着させるだけの樹脂が残らず、耐水性及び耐擦過性が十分ではなかった。
【0007】
一方、高度の耐擦過性を得るために、非極性の絶縁性溶媒に不溶、あるいは半溶解な樹脂で顔料粒子を被覆することが提案されている。例えば、特許文献1(特開平4−25574号公報)には、マイクロカプセル法等により顔料を樹脂で被覆した油性インクが提案されている。しかしながら、この技術では顔料内包樹脂粒子を均一に微粒子分散することが困難であり、しかも分散安定性も十分ではないため、インクとしての信頼性に問題があつた。
近年は水性染料インクを使用した一般のインクジェットプリンターで写真画質での高画質化が達成されており、顔料インクでも発色性や透明性を上げるためにできるだけ顔料をできるだけ微細化し、且つその分散状態を安定に保持することが要求されてきている。
しかし、一方で、顔料を微細にすればするほど顔料の微細化と同時に顔料一次粒子の破砕が起き、更に、表面エネルギーの増加により、同時に凝集エネルギーが大きくなるため、再凝集が起こりやすくなり、結局は微細化した顔料分散体の貯蔵安定性が損なわれるといった弊害が生じてくる。
この様に、インクジェットプリンター用油性顔料インクに使用される顔料分散体に対する要求は、より高度の微細化が要求されているものの、顔料を微粒子分散するには高度な技術を要すると共に、その分散安定性を高めることは非常に困難なものであり、これまでに上記を全て満足する油性顔料インクは知られていない。
【0008】
静電方式のインクジェツトプリンタや電子写真用液体現像剤に、これらの油性顔料インクを用いる場合には、荷電極性の制御や荷電の経時安定性が要求されるものの、顔料表面の極性を制御するのが非常に困難なため、上記を満足する油性顔料インクがこれまで知られていなかった。
非水溶媒を用いた電子写真用液体現像剤は、一般的に、脂肪族炭化水素系溶媒、着色剤、定着用樹脂、分散剤と必要に応じて添加される種々の添加剤とから成る混合物を、ボールミルやアトライター等で微粉砕して製造されている。その製造方法については、これまでに種々の提案がなされており、例えば特許文献2(特開昭63一174070号公報)には、非水溶媒中でスチレンやアクリル系モノマー等を重合させて得られるポリマーラテックスを染料で染色し、これを着色剤とする着色液体現像剤が開示されている。しかしながら、着色材として染料を用いたこの方法では黒色液体現像剤の製造が困難なことと、染料系なので画像濃度が低いことや、光退色などの欠点があった。一方、着色材として顔料を用いた例としては、特許文献3(特公昭62−3859号公報)に、電子写真用液体現像剤として顔料と定着用樹脂として天然樹脂変性熱硬化性樹脂とを長鎖アルキル基含有モノマー中で反応させた樹脂が提案されている。しかしながら、この技術では着色剤の分散安定性の改善には効果があるが、未だ、充分な分散安定性を有するものではなかった。
このように、着色材として顔料を用いた電子写真用液体現像剤では、耐擦過性と共に十分な分散安定性が望まれていた。更に、顔料はその種類により荷電極性が異なるため、顔料粒子の荷電極性を明瞭にし、且つその荷電の経時変化が無い事が望まれている。
【0009】
【特許文献1】
特開平4−25574号公報
【特許文献2】
特開昭63−174070号公報
【特許文献3】
特公昭62−3859号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の第一の目的は、顔料が均一に微粒子分散され、且つ顔料分散液の分散安定性に優れることにより、ノズル部での目詰まりが起きない吐出安定性の高いインクジェットプリンタ用油性インクを提供する事である。
本発明の第二の目的は、記録紙上での乾燥性、記録画像の耐水性、耐光性に優れており、且つ高度の耐擦過性を有するインクジェットプリンタ用油性インクを提供する事である。
本発明の第三の目的は、分散安定性、耐擦過性に優れると共に、荷電極性の制御や荷電の経時安定性にも優れた静電方式インクジェツトプリンタ用油性インク、及び電子写真用液体現像剤を提供する事である。
本発明の第四の目的は、上記の特徴を有する、均一に微粒子分散された顔料を内包する樹脂粒子からなるインクジェットプリンタ用インクを得るための製造方法を提供する事である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記本発明の課題は、下記の構成により解決される事が見出された。
(1) 比誘電率1.5〜20及び表面張力15〜60mN/m(25℃において)を有する非水溶媒中に、着色剤を表面処理した着色成分を該非水溶媒中に微粒子状に分散して得た着色成分微粒子をシード粒子として、一官能性単量体(A)の少なくとも一種と、上記単量体(A)と共重合可能なマクロモノマー(M)の少なくとも一種と、下記一般式(I)で示される繰返し単位を含有する重合体で、且つ、その重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)の少なくとも一種とを加え、重合開始剤の存在下に分散重合させることにより得られる着色樹脂粒子を含有することを特徴とするインクジェットプリンタ用油性インク組成物。
【0012】
【化10】
【0013】
一般式(I)中、X1は−COO−、−OCO−、−(CH2)k−OCO−、−(CH2)k−COO−及び−O−から選ばれる1種或いはそれらの組み合わされた連結基を表わす。kは1〜3の整数を表す。 a1とa2は、互いに同じでも異なってもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭化水素基、−COO−Z1又は炭化水素を介した−COO−Z1 (Z1は水素原子又は置換されてもよい炭化水素基を示す)を表す。Y1は炭素数6〜32の脂肪族基を表す。
【0014】
(2) 該マクロモノマー(M)が、下記一般式(II)で示される繰り返し単位から成る重合体の主鎖の末端に、下記一般式(III)で示される重合性二重結合基を結合して成る重量平均分子量1×103 〜4×104 のマクロモノマー(M)である上記(1)記載のインクジェットプリンタ用油性インク組成物。
【0015】
【化11】
【0016】
一般式(III)中、Vは−COO−、−OCO−、−(CH2)k −OCO−、−(CH2)k −COO−、−O−、−CONHCOO−、−CONHCO−、−SO2 −、−CO−、−CONZ2 −、−SO2 NZ2−又は−Ph−を表す。kは1〜3の整数を表す。Z2は水素原子又は置換されてもよい炭化水素基を示す。d1 とd2は、互いに同じでも異なってもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭化水素基、−COO−Z1 又は炭化水素を介した−COO−Z1を表す。Z1 は前記Z2と同義である。
【0017】
【化12】
【0018】
一般式(II)中、X2 は一般式(III)のVと同一の基を表す。
b1 とb2 は、互いに同じでも異なってもよく、一般式(III)中のd1 及びd2 と同一の基を表す。Y2 は炭素数1〜22の脂肪族基を表す。
【0019】
(3) 着色剤が有機顔料及び無機顔料から選択される少なくとも一種の顔料であり、着色成分が、該着色剤をポリマー被覆することにより表面処理されたものである上記(1)記載のインクジェットプリンタ用油性インク組成物。
【0020】
(4) 体積比抵抗109Ωcm以上の非水溶媒中に、着色剤を表面処理した着色成分を該非水溶媒中に微粒子状に分散して得た着色成分微粒子をシード粒子として、一官能性単量体(A)の少なくとも一種と、上記単量体(A)と共重合可能なマクロモノマー(M)の少なくとも一種と、上記一般式(I)で示される繰返し単位を含有する重合体で、且つ、その重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)の少なくとも一種とを加えた分散液を、重合開始剤の存在下に分散重合させることにより得られる着色樹脂粒子を含有することを特徴とする電子写真用液体現像剤。
【0021】
(5) 該マクロモノマー(M)が、上記一般式(II)で示される繰り返し単位から成る重合体の主鎖の末端に、上記一般式(III)で示される重合性二重結合基を結合して成る重量平均分子量1×103 〜4×104 のマクロモノマー(M)である上記(4)記載の電子写真用液体現像剤。
(6) 着色剤が有機顔料及び無機顔料から選択される少なくとも一種の顔料であり、着色成分が、該着色剤をポリマー被覆することにより表面処理されたものである上記(4)記載の電子写真用液体現像剤。
【0022】
(7) 比誘電率1.5〜20及び表面張力15〜60mN/m(25℃において)を有する非水溶媒中に、着色剤を表面処理した着色成分を該非水溶媒中に微粒子状に分散して得た着色成分微粒子をシード粒子として、一官能性単量体(A)の少なくとも一種と、上記単量体(A)と共重合可能なマクロモノマー(M)の少なくとも1種と、上記一般式(I)で示される繰返し単位を含有する重合体で、且つ、その重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)の少なくとも一種とを加えた分散液を、重合開始剤の存在下に分散重合させることにより得られる着色樹脂粒子の製造方法。
(8) 該マクロモノマー(M)が、上記一般式(II)で示される繰り返し単位から成る重合体の主鎖の末端に、上記一般式(III)で示される重合性二重結合基を結合して成る重量平均分子量1×103 〜4×104 のマクロモノマー(M)である上記(7)記載の着色樹脂粒子の製造方法。
(9) 着色剤が有機顔料及び無機顔料から選択される少なくとも一種の顔料であり、着色成分が、該着色剤をポリマー被覆することにより表面処理されたものである上記(7)記載の着色樹脂粒子の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に述べる。
本発明のインクジェットプリンタ用油性インク組成物に使用される非水溶媒(分散媒)は、非極性の絶縁性溶剤であり、比誘電率1.5〜20及び表面張力15〜60mN/m(25℃において)であることが好ましい。また電子写真用液体現像剤に使用される非水溶媒は、体積比抵抗109Ωcm以上であることが好ましい。更に望まれる特性としては、毒性の少ないこと、引火性が少ないこと、臭気が少ないことである。
【0024】
かかる非水溶媒としては、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、石油ナフサ及びこれらのハロゲン置換体等から選ばれた溶媒が挙げられる。例えばヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、エクソン社のアイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、フィリップ石油社のソルトール、出光石油化学社のIPソルベント、石油ナフサではシェル石油化学社のS.B.R.シェルゾール70、シエルゾール71、モービル石油社のベガゾール等から選ばれた溶媒を単独あるいは混合して用いることができる。
【0025】
好ましい炭化水素溶剤としては、沸点が150〜350℃の範囲にある高純度のイソパラフィン系炭化水素が挙げられ、市販品としては前述のエクソン化学製のアイソパーG,H,L,M,V(商品名)、ノーパー12,13,15(商品名)、出光石油化学製のIPソルベント1620,2028(商品名)、日本石油化学製のアイソゾール300,400(商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ;スピリッツ社の商品名)等が挙げられる。
これらの製品は、極めて純度の高い脂肪族飽和炭化水素であり、25℃における粘度は3cSt以下、25℃における表面張力は22.5〜28.0mN/m、25℃における比抵抗は1010Ω・cm以上である。また、反応性が低く安定であり、低毒性で安全性が高く、臭気も少ないという特徴がある。
ハロゲン置換の炭化水素系溶媒としてフルオロカーボン系溶媒があり、例えばC7F16、C8F18などのCnF2n+2で表されるパーフルオロアルカン類(住友3M社製「フロリナートPF5080」、「フロリナートPF5070」(商品名)等)、フッ素系不活性液体(住友3M社製「フロリナートFCシリーズ」(商品名)等)、フルオロカーボン類(デュポンジャパンリミテッド社製「クライトックスGPLシリーズ」(商品名)等)、フロン類(ダイキン工業株式会社製「HCFC−141b 」(商品名)等)、[F(CF2)4CH2CH2I]、[F(CF2)6I]等のヨウ素化フルオロカーボン類(ダイキンファインケミカル研究所製「I−1420」、「I−1600」(商品名)等)等がある。
【0026】
本発明で使用される非水系の溶媒として、更に高級脂肪酸エステルや、シリコーンオイルも使用できる。シリコーンオイルの具体例としては、低粘度の合成ジメチルポリシロキサンが挙げられ、市販品としては、信越シリコーン製のKF96L(商品名)、東レ・ダウコーニング・シリコーン製のSH200(商品名)等がある。
シリコーンオイルとしてはこれらの具体例に限定されるものではない。これらのジメチルポリシロキサンは、その分子量により非常に広い粘度範囲のものが入手可能であるが、1〜20cStの範囲のものを用いるのが好ましい。これらのジメチルポリシロキサンは、イソパラフィン系炭化水素同様、1010Ω・cm以上の体積抵抗率を有し、高安定性、高安全性、無臭性といった特徴を有している。またこれらのジメチルポリシロキサンは、表面張力が低いことに特徴があり、18〜21mN/mの表面張力を有している。
【0027】
上記の有機溶媒とともに、混合して使用できる溶媒としては、アルコール類(例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)及びハロゲン化炭化水素類(例えばメチレンジクロリド、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、メチルクロロホルム等)、等の溶媒が挙げられる。
【0028】
次に、本発明の表面処理された着色成分について詳細に述べる。
本発明の表面処理された着色成分(以下単に「着色成分」と称することもある)は、着色剤を表面処理したものであり、該着色剤としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料が挙げられる。
【0029】
例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等)、 C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、 C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、 C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、 C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、 C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、 C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0030】
マゼンタ色を呈するものとして、C.I.ビグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、 C.I.ビグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、 C.I.ビグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ビグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、 C.I.ビグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、 C.I.ビグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、 C.I.ビグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、 C.I.ビグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ビグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、 C.I.ビグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、 C.I.ビグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、 C.I.ビグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、 C.I.ビグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、 C.I.ビグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0031】
シアン色を呈する顔料として、C.Iピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、 C.I.ビグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、 C.I.ビグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、 C.I.ビグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、 C.I.ビグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、 C.I.ビグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0032】
ブラック色を呈する顔料として、BK−1(アニリンブラック)の如きアニリンブラック系顔料等の有機顔料や酸化鉄顔料、及びファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料類が挙げられる。
また、金、銀、銅などの色再現のために金属粉も使用可能である。
【0033】
着色剤の表面処理方法としては、技術情報協会発行の「顔料分散技術」第5章に記載されている、ロジン処理、ポリマー処理、グラフト化処理、プラズマ処理等の方法が適用できる。
【0034】
「ロジン処理」とは、顔料とロジンを機械的に混練し顔料表面にロジンを処理する方法や、顔料の水性スラリーにロジンのアルカリ水溶液を加えた後にアルカリ土類塩や酸などを加えてロジンの難溶性塩または遊離酸を顔料粒子表面に析出させる方法などである。ロジン処理では通常、顔料の数%から20%程度のロジンが用いられ、▲1▼顔料の結晶成長防止効果により微細で透明性の大きな顔料が得られること、▲2▼粒子の乾燥凝集が弱くなるために機械的分散が容易になること、▲3▼顔料表面の親油性を増大させることにより油性ビヒクルに対するぬれを改善するなどに大きな効果があり、特に印刷インキの分野で多く使用されている。
【0035】
「グラフト化処理」とは、カーボンブラック、およびシリカや酸化チタンなどの無機微粒子、さらには有機顔料などの表面に存在する水酸基やカルボキシル基やアミノ基などの官能基とポリマーとのグラフト化反応を行うものである。顔料表面へのポリマーのグラフト化反応には、(1)顔料微粒子の存在下で、重合開始剤を用いてビニルモノマーの重合を行い、系内で生成する生長ポリマーを顔料粒子表面の官能基で停止することによる方法、(2)顔料微粒子表面へ導入した重合開始基からグラフト鎖を生長させる方法、および(3)顔料微粒子表面の官能基とポリマー末端の官能基との高分子反応による方法等がある。
【0036】
「プラズマ処理」とは、低温プラズマや熱プラズマにより顔料粉体表面の改質を行うものである。低温プラズマによる顔料表面の処理の具体例としては、(1)酸素や窒素などの非重合性気体のプラズマ照射による改質、(2)重合性気体を用いたプラズマ重合膜形成による改質、(3)プラズマ照射によって基材表面に活性種を形成させる1st stageと、照射後モノマーと接触させ、あと反応でグラフト重合を進行させる2nd stageの2段階プロセスよりなるプラズマ開始グラフト重合反応による改質、などが挙げられる。
顔料の分散性を向上させると共に、この分散された着色成分微粒子をシード粒子として非水溶媒中で分散重合させる観点からは、以下に述べるポリマー処理が好ましい。
【0037】
ポリマー処理の代表的方法としては、技術情報協会発行の「顔料分散技術」99頁以降に記載のin−situ重合法を利用した化学的方法、相分離法(コアセルベーション)を利用した方法、顔料分散時に機械的な力で処理する方法などが挙げられる。
【0038】
in−situ重合法としては、顔料およびポリマーの系を分散した後懸濁重合する方法、分散剤の存在下に顔料を水系に分散し極性ポリマー、ビニル系ポリマー、多官能橋かけポリマーを加えて重合する方法、顔料を分散したモノマーを塊状重合した後懸濁重合または乳化重合することにより顔料への吸着が十分行えるようにする方法などがある。
【0039】
相分離法(コアセルベーション)としては、ポリマー溶液中に顔料を分散させた後、何らかの方法でポリマーの溶解度を下げ溶液系からポリマーを顔料粒子上へ析出させる方法で化学的方法(in−situ重合法)に比べ広い範囲のポリマーを選べる特徴がある。顔料を分散した樹脂溶液に非溶媒を加えて顔料表面に樹脂を析出させる方法や、水溶性ポリマーや水溶性樹脂溶液に顔料を微細に分散した後、PHを調整してこれらを顔料表面に析出させる方法はロジン処理を含めて広く用いられている。酸可溶性の含窒素アクリル樹脂の酸溶液中で顔料を分散させた後、pHを上げてポリマーを顔料表面で不溶化したものは塗料、印刷インキでの凝集防止、流動性、光沢、着色力向上に効果がみられている。
機械的な力でポリマー処理する方法を例示すると、ポリマーと顔料を予め顔料分が5〜95%になる様に混合した後に、加熱しながらニーダー、三本ロールなどで混練し、ピンミル等で粉砕するものである。フラッシング樹脂処理という方法も機械的なポリマー処理方法に含まれる。
【0040】
ポリマー処理に用いる樹脂としては、非水溶媒中で顔料の分散性を向上させると共に、この分散された着色成分微粒子をシード粒子として非水溶媒中で分散重合させる際の加熱分散安定性を付与するものであれば何でも良く、液体現像剤で従来使用されている樹脂も使用することができる。
【0041】
好ましい樹脂としては、着色剤に吸着し、且つ非水系溶媒中に良く分散する機能を有するために、溶媒に溶媒和する部分と溶媒に溶媒和しにくい部分及び極性基を有する部分を持っている樹脂が好ましい。例えば、重合後に溶媒に溶媒和するモノマーとしては、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、セチルメタクリレート等が挙げられる。重合後に溶媒に溶媒和しにくいモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。極性基を含むモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸またはそのアルカリ塩などの酸性基モノマーと、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピリジン、ビニルピロリジン、ビニルピペリジン、ビニルラクタムなどの塩基性基モノマーが挙げられる。
【0042】
ポリマー処理に用いる樹脂の具体例としては、オレフィン重合体および共重合体(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等)、スチレンおよびその誘導体の重合体ならびに共重合体(例えばブタジエン−スチレン共重合体、イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−メタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等)、アクリル酸エステル重合体および共重合体、メタクリル酸エステル重合体および共重合体、イタコン酸ジエステル重合体および共重合体、無水マレイン酸共重合体、ロジン樹脂、水素添加ロジン樹脂、石油樹脂、水素添加石油樹脂、マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、クロマン−インデン樹脂、環化ゴム−メタクリル酸エステル共重合体、環化ゴム−アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0043】
本発明の着色材とポリマー処理に用いられる樹脂の割合は、着色剤/樹脂の質量比で95/5〜5/95の範囲で、好ましくは80/20〜10/90の範囲である。
【0044】
更に表面処理された着色成分として、一般に市販されている加工顔料も用いることができる。市販加工顔料の具体例としては、チバスペシャリティケミカルズ社のマイクロリス顔料等が挙げられ、好ましい加工顔料の例としては、ロジンエステル樹脂で顔料を被覆したマイクロリス−T顔料が挙げられる。
【0045】
本発明においては、上記表面処理された着色成分は、非水溶媒中に微粒子状に分散されて着色成分微粒子を得、これをシード粒子として更に分散重合させるものである。
まず、着色成分の分散工程について述べる。
該分散工程では、表面処理された着色成分を微粒子状に分散し且つ非水溶媒中で分散安定化させるために顔料分散剤の使用することが好ましい。
【0046】
本発明に使用することができる、表面処理された着色成分を非水溶媒中で微粒子状に分散する顔料分散剤としては、該非水溶媒中で適用される一般の顔料用分散剤が使用できる。顔料用分散剤としては前記非極性の絶縁性溶媒に相溶し、安定的に顔料を微粒子分散できるものであれば良い。
【0047】
顔料用分散剤の具体例としては、ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリエチレングリコールジイソステアレート等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等)、脂肪族ジエタノールアミド系などのノニオン系界面活性剤、及び高分子系分散剤としては、分子量1000以上の高分子化合物が良く、例えば、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ロジン、BYK−160、162、164、182(ビックケミー社製のウレタン系高分子化合物)、EFKA−47、LP−4050(EFKA社製のウレタン系分散剤)、ソルスパーズ24000(ゼネカ社製のポリエステル系高分子化合物)、ソルスパース17000(ゼネカ社の脂肪族ジエタノールアミド系)等が挙げられる。
【0048】
高分子系顔料分散剤としては上記の他に更に、溶媒に溶媒和するラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、セチルメタクリレート等のモノマーと、溶媒に溶媒和しにくいメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン等のモノマー及び極性基を有する部分からなるランダム共重合体、あるいは特開平3−188469号公報に開示されているグラフト共重合体が挙げられる。上述の極性基を含むモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸またはそのアルカリ塩などの酸性基モノマーと、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピリジン、ビニルピロリジン、ビニルピペリジン、ビニルラクタムなどの塩基性基モノマーが挙げられる。また、この他にはスチレン―ブタジエン共重合体、特開昭60−10263号公報に開示されているスチレンと長鎖アルキルメタクリレートのブロック共重合体等が挙げられる。好ましい顔料用分散剤としては、特開平3−188469号公報に開示されているグラフト共重合体等が挙げられる。
【0049】
顔料用分散剤の使用量は、顔料100質量部に対して、0.1〜300質量部が好ましい。顔料分散剤の添加量を上記範囲内にすることで、充分な顔料分散効果を得ることが可能である。
【0050】
表面処理された着色成分を、非水溶媒中に微粒子状に分散する分散工程において、顔料分散剤を使用する方法としては、例えば次のような方法があり、これらのいずれにによっても目的とする効果が得られる。
【0051】
1.表面処理された着色成分と顔料分散剤を予め混合して得られる顔料組成物を非水系溶媒中に添加して分散する。
2.非水系溶媒に表面処理された着色成分と顔料分散剤を別々に添加して分散する。
3.非水系溶媒に表面処理された着色成分と顔料分散剤を予め別々に分散し、得られた分散体を混合する。この場合、顔料分散剤を溶剤のみで分散しても良い。
4.非水系溶媒に表面処理された着色成分を分散した後、得られた顔料分散体に顔料分散剤を添加する等の方法があり、これらのいずれによっても目的とする効果が得られる。
【0052】
上記の表面処理された着色剤(着色成分)を非水系溶媒中で混合あるいは分散させて、着色成分微粒子とすることができる。非水系溶媒中で混合あるいは分散する機械としては、ディゾルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ニーダー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター等が使用できる。この分散工程での表面処理された着色成分(加工顔料等)の分散平均粒径の範囲は0.01〜10μmである。インク中の加工顔料の好ましい分散平均粒径範囲としては0.01〜1.0μmである。
【0053】
次に上記分散された着色成分微粒子をシード粒子(シード)として、このシード粒子に一官能性単量体(M)を添加して分散重合させる工程について説明する。
非水溶媒中に着色成分を微粒子状に分散させシード粒子とした中で、一官能性単量体(A)と、上記単量体(A)と共重合可能なマクロモノマー(M)と、重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)と、を加えた重合系を、重合開始剤の存在下に重合させることにより、本発明の着色剤を内包した着色樹脂粒子が得られる。単量体(A)は、該非水溶媒に可溶であるが重合する事によって該非水溶媒に不溶性となる単量体であればいずれでもよい。具体的には、例えば下記一般式(IV)で表される重合単量体が挙げられる。
【0054】
【化13】
【0055】
一般式(IV)中、X3は−COO−、−OCO−、−CH2OCO−、−CH2COO−、−O−、−CONHCOO−、−CONHOCO−、−SO2−、−CON(Z3)−、−SO2N(Z3)−、または−Ph−を表す。ここでZ3は、水素原子または炭素数1〜8の置換されていてもよい脂肪族基(たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、ベンジル基、クロロベンジル基、メチルベンジル基、メトキシベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ジメチルベンジル基、フロロベンジル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基等)を表す。
【0056】
Y3は水素原子または炭素数1〜6の置換されてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2,2,2−トリフロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、2−ニトロエチル基、2−メトキシエチル基、2−メタンスルホニルエチル基、2−エトキシエチル基、3−ブロモプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−フルフリルエチル基、2−チエニルエチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、4−カルボキシブチル基、2−カルボキシアミドエチル基、3−スルホアミドプロピル基、2−N−メチルカルボキシアミドエチル基、シクロペンチル基、クロロシクロヘキシル基、ジクロロヘキシル基等)を表す。
【0057】
e1 およびe2 は互いに同じでも異なっていてもよく、好ましくは水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基等)、−COO−L1または−CH2−COO−L1〔ここでL1は水素原子、または置換されてもよい炭素数10以下の炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基)等を表す。〕を表す。
【0058】
具体的な単量体(A)としては、例えば炭素数1〜6の脂肪族カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、モノクロロ酢酸、トリフロロプロピオン酸等)のビニルエステル類あるいはアリルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸の炭素数1〜32の置換されてもよいアルキルエステル類またはアミド類(アルキル基として例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、2−ニトロエチル基、2−メトキシエチル基、2−メタンスルホニルエチル基、2−ベンゼンスルホニルエチル基、2−カルボキシエチル基、4−カルボキシブチル基、3−クロロプロピル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基、2−フルフリルエチル基、2−チエニルエチル基、2−カルボキシアミドエチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、ドデセニル基、ヘキサデセニル基、オレイル基、リノレイル基、ドコセニル基等);スチレン誘導体(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルベンゼンカルボン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、メトキシメチルスチレン、ビニルベンゼンカルボキシアミド、ビニルベンゼンスルホアミド等);アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;マレイン酸、イタコン酸の環状酸無水物;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;重合性二重結合基含有のヘテロ環化合物(具体的には、例えば高分子学会編「高分子データハンドブック−基礎編−」、p175〜184、培風舘(1986年刊)に記載の化合物、例えば、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、ビニルチオフェン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルオキサゾリン、ビニルチアゾール、N−ビニルモルホリン等)等が挙げられる。
単量体(A)は、上記の中から少なくとも一種以上選択されたモノマーを主成分とする。
【0059】
次に、本発明に用いられるマクロモノマー(M)について説明する。
本発明では、マクロモノマー(M)は、上記一般式(II)で示される繰り返し単位から成る重合体の主鎖の末端に、上記一般式(III)で示される重合性二重結合基を結合して成る重量平均分子量1×103 〜4×104 のマクロモノマー(M)である事が好ましい。
【0060】
一般式(III)中、Vは−COO−、−OCO−、−(CH2)k −OCO−、−(CH2)k −COO−、−O−、−CONHCOO−、−CONHCO−、−SO2 −、−CO−、−CONZ2 −、−SO2 NZ2−又は−Ph−を表す。kは1〜3の整数を表す。 d1 とd2は一般式(I)におけるa1とa2と同一の基を表す。Z2は一般式(I)のZ1 と同一の基を表す。
【0061】
一般式(III)において、Vで示される置換基中のZ2は水素原子のほか、好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜22の置換されてもよいアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−メトキシエチル基、2−ブロモプロピル基等)、炭素数4〜18の置換されていてもよいアルケニル基(例えば、2−メチル−1−プロペニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、4−メチル−2−ヘキセニル基等)、炭素数7〜12の置換されていてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基等)、炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ドデシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、シアノフェニル基、アセチルフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、ブトキシカルボニルフェニル基、アセトアミドフェニル基、プロピオアミドフェニル基、ドデシロイルアミドフェニル基等)、炭素数5〜18の橋かけ炭化水素から成る基(例えば、ビシクロ〔1,1,0〕ブタン、ビシクロ〔3,2,1〕オクタン、ビシクロ〔5,2,0〕ノナン、ビシクロ〔4,3,2〕ウンデカン、アダマンタン等の基)等が挙げられる。
【0062】
Vが−C6H4−を表す場合、ベンゼン環は置換基を有してもよい。置換基としては、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、クロロメチル基、メトキシメチル基等)等が挙げられる。
【0063】
d1 とd2は一般式(I)におけるa1とa2と同一の基を表し、好ましくは水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、−COO−L2又は−CH2COOL2 (L2 は、好ましくは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基もしくは脂環式基、又はアリール基を表し、これらは置換されていてもよく、具体的には、上記Z2について説明したものと同様の内容を表す)を表す。
【0064】
一般式(II)中、X2は一般式(III)のV と同一の基を表す。 また、b1 とb2は一般式(I)におけるa1とa2と同一の基を表す。Y2は炭素数1〜22の脂肪族基を表す。
【0065】
Y2が表す脂肪族基の具体例としては、上記したZ2 において説明したアルキル基と同様の内容のものが挙げられる。Y2が表す炭素数1〜22の脂肪族基は、更にフッ素原子及び/又はケイ素原子含有の置換基を有していても良く、フッ素原子を含有する置換基としては、例えば下記の1価又は2価の有機残基等が挙げられる。
−Cn(F)2n+1(nは1〜22の整数)、−CFH2 、−CFHCl、−CFCl2 、−CF2Cl、−(CF2)mCF2H(mは0、又は1〜17の整数)、−CF2−、−CFH−、−CFCl−。
【0066】
これらのフッ素原子含有の有機残基は組み合わせて構成されていてもよく、その場合には、直接結合してもよいし、他の連結基を介して組み合わされてもよい。連結する基としては、具体的には2価の有機残基が挙げられ、−O−、−S−、−N(g1)−、−CO−、−SO−、−SO2 −、−COO−、−OCO−、−CONHCO−、−NHCONH−、−CON(g1)−、−SO2 N(g1)−等から選ばれた結合基を介在させてもよい、2価の脂肪族基もしくは2価の芳香族基、又はこれらの2価の残基の組み合わせにより構成された有機残基が挙げられる。ここで、g1 は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
【0067】
ケイ素原子を含有する置換基としては、シロキサン構造(あるいはシリルオキシ構造)又はシリル基を含有するものが好ましい。
【0068】
b1 とb2は、互いに同じでも異なってもよく、一般式(I)におけるa1とa2と同一の基を表し、b1 とb2の好ましい範囲はd1 とd2についてしたものと同等の内容である。b1 とb2のより好ましい基としては水素原子、メチル基が挙げられる。
【0069】
一般式(II)で表される繰り返し単位を含有する重合体は、着色樹脂粒子の分散安定性の観点から、非水分散媒に溶媒和することが望ましく、Y2は炭素数6〜22の脂肪族基が好ましい。好ましい該重合体の例としては、ポリヘキシルアクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリラウリルメタクリレート、ポリステアリルアクリレート、ポリステアリルメタクリレート、ポリ2−エチルヘキシルアクリレート、ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート、セチルメタクリレート等が挙げられるが、本発明の範囲は、これらに限定されるものではない。
【0070】
次に一般式(II)で表される、Y2が炭素数1〜22の脂肪族基で更にフッ素原子及び/又はケイ素原子含有の置換基を有している場合の、繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明の範囲は、これらに限定されるものではない。
【0071】
【化14】
【0072】
【化15】
【0073】
【化16】
【0074】
【化17】
【0075】
本発明のマクロモノマー(M)のうち好ましいものは下記一般式(V)で示されるものである。
【0076】
【化18】
【0077】
一般式(V)中、d1、d2、b1、b2及びVは、各々、一般式(II)及び(III)において説明したものと同じ内容を表す。
Tは一般式(II)で示される−X2−Y2を表し、一般式(II)において説明したものと同一の内容を表す。
W1は単結合又は、−C(Z4)(Z5)−〔Z4、Z5は各々水素原子、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原等)、シアノ基又はヒドロキシル基を示す〕、−(CH=CH)−、シクロヘキシレン基(以下シクロヘキシレン基をCyで表す。ただしCyは1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキシレン基を含む)、−Ph−、−O−、−S−、−C(=O)−、−N(Z6)−、−COO−、−SO2−、−CON(Z6)−、−SO2N(Z6)−、−NHCOO−、−NHCONH−又は−Si(Z6)(Z7)−〔Z6、Z7は、水素原子又は前記Z1と同様の内容の炭化水素基等を示す〕等の原子団から選ばれた単独の連結基もしくは任意の組合せで構成された連結基を表す。
【0078】
前記一般式(II)、(III)又は(V)において、X2、V、d1、d2、b1、b2 の各々における特に好ましい例を以下に示す。
X2としては−COO−、−OCO−、−O−、−CH2COO−及び−CH2OCO−から選ばれた1種以上の連結基が、Vとしては前記のものすべて(但し、Z1は水素原子である)から選ばれた1種の連結基が、d1、d2、b1、b2としては水素原子又はメチル基が挙げられる。
【0079】
以下に、一般式(V)におけるCH(d1)=C(d2)−V−W1−で示される基の具体的な例を示す。しかし、本発明の内容がこれらに限定されるものではない。なお、下記の各例において、jは1〜12の整数、kは2〜12の整数、aはH又は−CH3を表す。
【0080】
【化19】
【0081】
【化20】
【0082】
【化21】
【0083】
【化22】
【0084】
本発明のマクロモノマー(M)は、従来公知の合成方法によって製造することができる。例えば、(1)アニオン重合またはカチオン重合によって得られるリビングポリマーの末端に種々の試薬を反応させてマクロマーにするイオン重合法による方法、(2)分子中に、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基等の反応性基を含有した重合開始剤及び/又は連鎖移動剤を用いて、ラジカル重合して得られる末端反応性基結合のオリゴマーと種々の試薬を反応させてマクロマーにするラジカル重合法による方法、(3)重付加又は重縮合反応により得られたオリゴマーに上記ラジカル重合方法と同様にして、重合性二重結合基を導入する重付加縮合法による方法等が挙げられる。
【0085】
具体的には、P.Dreyfuss & R.P.Quirk,エンサイクロペディア ポリマー サイエンス エンジニアリング(Encycl.Polym.Sci.Eng.),7巻 551頁(1987)、P.F.Rempp&E.Franta,アドバンスト ポリマー サイエンス(Adv.Polym.Sci.),58巻 1頁(1984)、V.Percec,アプライド ポリマー サイエンス(Appl.Polym.Sci.),285巻 95頁(1984)R.Asami,M.Takagi,マクロモレキュラー ヘミーサプルメント(Makromol.Chem.Suppl.),12巻 163頁(1985)、P.Rempp et al,同(Makromol.Chem.Suppl)、8巻、3頁(1987)、川上雄資、化学工業、38巻、56頁(1987)、山下達也,高分子、31巻、988頁(1982)、小林四郎、高分子、30巻、625頁(1981)、東村敏延、日本接着協会誌、18巻、536頁(1982)、伊藤浩一、高分子加工、35巻、262頁(1986)、東貴四郎、津田隆、機能材料 1987、No.10、5等の総説及びそれに引例の文献・特許等に記載の方法に従って合成することができる。
【0086】
本発明では更に、上記一官能性単量体(A)及びマクロモノマー(M)と共重合可能な他のモノマー成分を併用してもよい。
共重合可能な他のモノマー成分としては、例えば一般式 −N(R1)(R2)で示されるアミノ基を含有する、塩基性の単量体(B)を挙げる事ができる。本発明の着色樹脂粒子において、上記一官能性単量体(A)と共に、共重合成分としてアミノ基含有の塩基性単量体(B)を用いることで、粒子自身の表面が正荷電を発現し、非水系溶媒中に分散された粒子の分散安定性が向上する。これは粒子同志の近接時の荷電反発効果によるものと推測される。
【0087】
上記一般式において、R1 、R2 は、各々同じでも異なってもよく、好ましくは水素原子又は炭素数1〜22の置換されてもよいアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ドコシル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−メトキシエチル基、3−ブロモプロピル基等)、炭素数4〜18の置換されてもよいアルケニル基(例えば、2−メチル−1−プロペニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、4−メチル−2−ヘキセニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、リノレイル基等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基等)または炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ドデシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、シアノフェニル基、アセチルフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、ブトキシカルボニルフェニル基、アセトアミドフェニル基、プロピオアミドフェニル基、ドデシロイルアミドフェニル基等)が挙げられる。
【0088】
また、R1、R2は環を形成しても良く、具体的には、ヘテロ原子(例えば酸素原子、窒素原子、イオウ原子等)を含有してもよい環形成の有機残基を表す。形成される環状アミノ基としては、例えばモルホリノ基、ピペリジノ基、ピリジニル基、イミダゾリル基、キノリル基、等が挙げられる。これらのアミノ基は、塩基性単量体の分子中に複数個含有されていてもよい。
【0089】
塩基性単量体(B)は、単量体(A)の総量に対して、好ましくは1〜45重量%、より好ましくは3〜30重量%で用いる。
以下に塩基性単量体(B)の具体例を示すが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0090】
【化23】
【0091】
本発明のインク組成物に用いられる樹脂粒子のシェル層を構成する非水溶媒に不溶性の樹脂は、ガラス転移点0〜80℃または軟化点40〜100℃の範囲が好ましく、ガラス転移点10〜70℃または軟化点45〜80℃の範囲がより好ましい。このような熱的性質を示す共重合体となる様に、単量体(A)、及びマクロモノマー(M)を適宜選択することができる。
【0092】
本発明においては、非水溶媒中で、単量体を重合して生成した当該溶媒不溶の重合体を安定な樹脂分散物とするために、分散安定化剤(P)を共存させてシード重合を行なう。
【0093】
次に分散安定化剤(P)について説明する。
分散安定化剤(P)は、下記一般式(I)で示される繰返し単位を含有する重合体で、且つ、その重合体主鎖の一部分が架橋された重合体で、該非水溶媒に可溶性である。
【0094】
【化24】
【0095】
一般式(I)中、X1は−COO−、−OCO−、−(CH2)k−OCO−、−(CH2)k−COO−及び−O−から選ばれた1種或いはそれらの組み合わされた連結基を表わす。kは1〜3の整数を表す。
Y1は炭素数6〜32の直鎖状或は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表す。具体的には、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、リノレル基等が挙げられる。
【0096】
a1とa2は、互いに同じでも異なってもよく、好ましくは水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素原子又は臭素原子等)、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基又はプロピル基等)、−COO−Z1又は炭化水素を介した−COO−Z1 (Z1は水素原子又は置換されてもよい炭化水素基を示す)を表す。Z1は水素原子又は炭素数1〜22の、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、脂環式基、アリール基もしくは架橋環式炭化水素基を表わし、これらは置換されていてもよい。
【0097】
Z1の好ましい炭化水素基としては、上記Z2について説明したものと同一の基が挙げられる。
【0098】
本発明の分散安定化剤(P)の重合体成分は、上記一般式(I)で示される繰返し単位の中から選択されるホモ重合体成分、もしくは一般式(I)で示される繰返し単位に相当する単量体と共重合し得る他の単量体とを重合して得られる共重合体成分を含有し、且つその重合体主鎖の一部分が架橋された重合体である。共重合し得る他の単量体としては、重合性二重結合基を含有すればいずれでもよく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;炭素数6以下の不飽和カルボン酸のエステル誘導体もしくはアミド誘導体;カルボン酸類のビニルエステル類もしくはアリルエステル類;スチレン類;メタクリロニトリル;アクリロニトリル;重合性二重結合基含有の復素環化合吻等が挙げられる。より具体的には、前記した不溶化する単量体(M)と同一の内容の化合物等が挙げられる。
分散安定化剤(P)における重合体成分中、一般式(I)で示される繰返し単位の成分は、重合体全成分中、少なくとも30質量%以上であり、好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
【0099】
重合体中に架橋構造を導入する方法としては、通常知られている方法を利用することができる。
即ち、▲1▼単量体の重合反応において、多官能性単量体を共存させて重合する方法、及び、▲2▼重合体中に、架橋反応を進行する官能基を含有させ高分子反応で架橋する方法である。
本発明の分散安定化剤(P)は、製造方法が簡便なこと(例えば、長時間の反応を要する、反応が定量的でない、反応促進助剤を用いる等で不純物が混入する等)等から、自己橋かけ反応を有する官能基;−CONHCH2OR3(ここでR3は水素原子又はアルキル基を示す)あるいは、重合による橋かけ反応が有効である。
重合反応において、好ましくは、重合性官能基を2個以上有する単量体を上記した一般式(I)で示される繰返し単位に相当する単量体とともに重合することで、ポリマー鎖間を橋架する方法である。重合性官能基として具体的には下記構造のものを挙げることができるが、上記の重合性官能基を2個以上有する単量体は、これらの重合性官能基を同一のものあるいは異なったものを2個以上有した単量体であればよい。
【0100】
【化25】
【0101】
重合性官能基を2個以上存した単量体の具体例は、例えば同一の重合性官能基を有する単量体として、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のスチレン誘導体;多価アルコール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ボリエチレングリコール#200、#400、#600、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールブロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなど)又は、ボリヒドロキシフエノール(例えばヒドロキノン、レゾルシン、カテコールおよびそれらの誘導体)のメタクリル酸、アクリル酸又はクロトン酸のエステル類、ビニルテル類又はアリルエーテル類;二塩基酸(例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等)のビニルエステル類、アリルステル支頁、ビニルアミド頻又はアリルアミド頻;ポリアミン(例えばエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブチレンジアミン等)とビニル基を含有するカルボン酸(例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、アリル酢酸等)との縮合体などが挙げられる。
【0102】
又、異なる重合性官能基を有する単量体としては、例えば、ビニル基を含有するカルボン酸〔例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリロイル酢酸、アクリロイル酢酸、メタクリロイルプロピオン酸、アクリロイルプロピオン酸、イタコニロイル酢酸、イタコニロイルプロピオン酸、カルボン酸無水物とアルコール又はアミンの反応体(例えばアリルオキシカルボニルブロピオン酸、アリルオキシカルボニル酢酸、2−アリルオキシカルボニル安息香酸、アリルアミノカルボニルプロピオン酸等)等〕のビニル基を含有したエステル誘導体又はアミド誘導体(例えば、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、イタコン酸ビニル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、イタコン酸アリル、メタクリロイル酢酸ビニル、メタクリロイルプロピオン酸ビニル、メタクリロイルプロピオン酸アリル、メタクリル酸ビニルオキシカルボニルメチルエステル、アクリル酸ビニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニルエチレンエステル、N−アリルアクリルアミド、N−アリルメタクリルアミド、N−アリルイタコン酸アミド、メタクリロイルプロピオン酸アリルアミド等);およびアミノアルコール類(例えばアミノエタノ一ル、1−アミノプロパノール、1−アミノブタノール、1−アミノヘキサノール、2−アミノブタノール等)と、ビニル基を含有したカルボン酸との縮合体などが挙げられる。
本発明に用いられる2個以上の重合性官能基を有する単量体は、全単量体の10質量%以下、好ましくは8質量%以下用いて重合し、本発明の非水溶媒に可溶性である樹脂を形成する。
【0103】
本発明の分散安定化剤(P)は、従来公知の合成方法によって容易に合成することができる。
即ち、一般式(I)で示される繰り返し単位に相当する単量体、及び上記した多官能性単量体を少なくとも共存させて、重合開始剤(例えば、アゾビス系化合物、過酸化物等)により重合する方法が簡便であり好ましい。
ここで用いられる重合開始剤は、各々全単量体100質量部に対して0.5〜15質量%であり、好ましくは1〜10質量%である。以上の如くして製造された本発明の分散安定化剤(P)は、不溶性樹脂粒子と相互作用し、不溶性樹脂粒子に吸着する。分散安定化剤(P)の吸着した粒子は、非水溶媒に可溶となる分散安定化剤(P)が架橋されていることにより、非水溶媒への親和性が著しく向上される。このように不溶性樹脂粒子界面の親媒性が向上されていることに加えて、更に、粒子に吸着しないで非水溶媒中に存在する分散安定化剤(P)が分散安定化剤の吸着した粒子同士の接近を立体的に抑制しているものと推定される。これらのことにより不溶性粒子の凝集・沈殿が抑制され、再分散性が著しく向上するものと考えられる。
【0104】
本発明の分散安定化剤(P)の重量平均分子量(Mw)は、5×103〜1×106が好ましく、より好ましくは2×104〜3×105である。
【0105】
本発明で用いられる顔料を内包した着色樹脂粒子を製造するには、非水溶媒中に表面処理された着色成分を微粒子状に分散させシード粒子とした中で、単量体と重合体繰返し成分主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)を加えた重合系を、過酸化ベンゾイル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル又はブチルリチウム等の重合開始剤の存在下に重合させればよい。
【0106】
非水溶媒中に表面処理された着色成分を微粒子状に分散させシード粒子とした中に、単量体と重合体繰返し成分主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)と重合開始剤とを具体的に加えるには、
(1)単量体と分散安定化剤(P)と重合開始剤とを非水溶媒中に混合溶解した溶液を滴下する方法、もしくは一括あるいは分割して添加する方法、
(2)非水溶媒中に着色成分を微粒子状に分散させシード粒子とした中に分散安定化剤(P)を溶解した溶液を加え、次に単量体と重合開始剤とを滴下、もしくは一括あるいは分割して添加する方法、
(3)非水溶媒中に着色成分を微粒子状に分散させシード粒子とした中に、単量体、分散安定化剤(P)、重合開始剤を非水溶媒中に混合溶解した溶液の一部を加え分散重合させた後に、残りの単量体、分散安定化剤(P)、重合開始剤の混合物を任意に添加する方法、
(4)非水溶媒中に着色成分を微粒子状に分散させシード粒子とした中に単量体の一部を加えてシード粒子へのモノマー吸収を促進させ、次に残りの単量体、分散安定化剤(P)と重合開始剤とを滴下、もしくは一括あるいは分割して添加する方法等
があり、いずれの方法を用いても製造することができる。
【0107】
次に顔料を内包した着色樹脂粒子を形成する各成分の量について説明する。シード粒子(着色成分微粒子)と単量体{(A)並びに(M)、必要に応じて(B)}の総量との使用割合は、5/95〜95/5質量比が好ましく、より好ましくは10/90〜80/20質量比である。単量体総量の仕込み量は、非水溶媒100質量部に対して5〜80質量部程度であり、好ましくは10〜50質量部である。可溶性もしくはコロイド状に分散している、重合体繰返し成分主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)は、上記で用いる全単量体100質量部に対して1〜100質量部であり、好ましくは3〜50質量部である。重合開始剤の量は、全単量体の0.1〜5モル%が適切である。又、重合温度は20〜180℃程度であり、好ましくは30〜120℃である。反応時間は1〜15時間が好ましい。
【0108】
反応に用いた非水溶媒中に、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が残存する場合、及び前記したアルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類等の極性溶媒を併用した場合、あるいは重合造粒化される単量体の未反応物が残存する場合、該溶媒あるいは単量体の沸点以上に加温して留去するかあるいは減圧留去することによって除くことが好ましい。
【0109】
以上の如くして製造された非水系顔料内包樹脂粒子は、顔料が均一に微粒子分散され、且つ分散液の分散安定性に優れることにより、ノズル部での目詰まりが起きない吐出安定性の高いインクジェットプリンタ用油性インクを提供する。また記録紙上での乾燥性、記録画像の耐水性、耐光性に優れており、且つ高度の耐擦過性を有する。更に、非水系溶媒中で均一に微粒子分散された顔料内包樹脂粒子を容易に得ることができ、荷電極性の制御、荷電の経時安定性に優れたインクジェットプリンタ用油性顔料インク、及びその安価な製造方法を提供する。また、単量体を適切に選択する事により、定着性、荷電性などの機能を顔料内包樹脂粒子に導入することができる特徴を有する。
【0110】
以下の実施例で、本発明のインク組成物がインクジェットプリンタ用油性インクとして有用な事を示す。インクジェットプリンタとしては、ピエゾ方式及び静電方式のインクジェットプリンタを例にして説明するが、これらの方式に限定されずに、サーマル方式やNTTなどのスリットジェットに代表されるインクジェットプリンタにも適用できる。
【0111】
静電方式のインクジェットプリンタについて更に説明する。
図1及び図2は吐出ヘッドの例を説明する概略図で、図1はライン走査型マルチチャンネルインクジェットヘッドの構成を示す図で、記録ドットに対応した吐出電極の断面を示している。同図においてインク100はポンプを含む循環機構111から、ヘッドブロック101に接続されたインク供給流路112を通して、ヘッド基板102と吐出電極基板103間に供給され、同じくヘッドブロック101に形成されたインク回収流路113を通してインク循環機構111に回収される。この吐出電極基板103は、貫通孔107を有する絶縁性基板104と、この貫通孔107の周囲で記録媒体側に形成されている吐出電極109とから構成されている。一方ヘッド基板102上には凸状インクガイド108が前記貫通孔107の略中心位置に配置されている。この凸状インクガイド108はプラスチック樹脂、セラミックスなど絶縁性部材からなり、前記貫通孔107と中心が等しくなるように同じ列間隔、ピッチで配置され、所定の方法でヘッド基板102上に保持されている。各凸状インクガイド108は厚みが一定の平板の先端を三角形あるいは台形状に切り出した形状で、その先端部がインク滴飛翔位置110となる。各凸状インクガイド108はその先端部からスリット状の溝を形成しても良く、そのスリットの毛細管現象により、インク飛翔位置110へのインク供給がスムースに行われ、記録周波数を向上することが出来る。またインクガイドの任意の表面は必要に応じて導電性を有していても良く、その場合には導電部分は電気的に浮遊状態とする事によって、吐出電極への少ない電圧印加で有効にインク飛翔位置に電界を形成できる。各凸状インクガイド108は、それぞれの貫通孔からほぼ垂直に所定の距離だけインク滴飛翔方向に突きだしている。凸状インクガイド108の先端に対向して記録紙である記録媒体121が配置され、この記録媒体121のヘッド基板102と反対側の背面に、記録媒体121を案内するプラテンの役割を兼ねる対向電極122が配置されている。また、ヘッド基板102と吐出電極基板103間によって形成される空間の底部には泳動電極140が形成されており、これに所定の電圧を印加する事により、インクガイドの吐出位置方向にインク中の荷電粒子を電気泳動させ、吐出の応答性を上げることが出来る。
【0112】
次に、吐出電極基板103の具体的構成例について図2を用いて説明する。図2は、吐出電極基板103を記録媒体121側から見た図で、複数個の吐出電極が主走査方向に二列でアレイ状に配列されて、各吐出電極の中心に貫通孔107が形成され、この貫通孔107の周辺にはそれぞれ個別の吐出電極109が形成されている。本実施例では吐出電極109の内径は貫通孔107の径より一回り大きく設けられているが、貫通孔107の径と同径でも良い。ここでは、絶縁性基板104は25から200μm程度の厚さのポリイミドからなり、吐出電極109は10から100μm程度の厚さの銅箔からなり、貫通孔107の内径は150から250μmΦ程度である。
【0113】
次に、静電方式のインクジェット記録装置の記録動作を説明する。ここでは正荷電したインクを用いた場合を例にとって説明するが、本発明は本例に限定される物ではない。記録時には、インク循環機構111からインク供給流路112を経て供給されたインク100は貫通孔107から凸状インクガイド108の先端のインク飛翔位置110に供給されると共に、一部はインク回収流路113を経てインク循環機構111に回収される。ここで、吐出電極109にはバイアス電圧源123から常時バイアスとして例えば+1.5kVの電圧が与えられ、これに信号電圧源124からの画像信号に応じた信号電圧として例えばON時に+500Vのパルス電圧が吐出電圧109に重畳される。またこの際、泳動電極140は+1.8kVの電圧が印加されている。一方、記録媒体121の背面に設けられた対向電極122は、図のように接地電圧0Vに設定されている。場合によっては記録媒体121側を例えば−1.5kVに帯電させてバイアス電圧としても良い。この場合には、対向電極122表面に絶縁層を設け、記録媒体にコロナチャージャー、スコロトロンチャージャー、固体イオン発生器等により帯電を行い、かつ吐出電極109は例えば接地され、これに信号電圧源124からの画像信号に応じた信号電圧として例えばON時に+500Vのパルス電圧が吐出電圧109に重畳される。またこの際、泳動電極140は+200Vの電圧が印加される。今、吐出電圧109がON状態(500Vが印加された状態)となり、バイアスDC1.5kVに500Vのパルス電圧が重畳された合計2kVの電圧が加わると、凸状電極108先端のインク滴飛翔位置110から、インク滴115が飛び出し、対向電極122方向に引っ張られて、該記録媒体121に向けて飛翔して画像を形成する。
【0114】
なお、飛翔後のインク液滴の飛翔を精密制御し記録媒体上での着弾精度を向上するため、吐出電極と記録媒体間に中間電極を設ける、あるいは吐出電極間に電界干渉抑制用のガード電極を設ける、等の手段がしばしば講じられるが、本実施例においても必要により好適に使用されることはもちろんである。また、ヘッド基28板102と吐出電極基板103間に多孔質体を設けても良く、この場合にはインクジェットヘッドの移動等によるインク内圧の変化の影響を防止できると共にインク滴吐出後の貫通孔107部へのインク液供給が迅速に達成される。したがって、インク滴115の飛翔が安定化され、記録媒体121上に濃度の安定した良好な画像を高速に記録することができる。
【0115】
[実施例]
以下、本発明の実施例を説明する。
分散安定化剤の合成例1:分散安定化剤(P−1)
オクタデシルメタクリレート100g、ジビニルベンゼン2g及びトルエン200gの混合溶液を窒素気流下撹拌しながら温度85℃に加温した。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(略称A.I.B.N)3.0gを加え4時間反応し、更にA.I.B.Nを1.0g加えて2時間反応し、更にA.I.B.Nを0.5g加えて2時間反応した。冷却後メタノール1.5L中に、この混合溶液を再沈し、白色粉末を濾集後乾燥して、粉末88gを得た。得られた重合体の重量平均分子量は3.3×104であった。
【0116】
分散安定化剤の合成例2〜14:分散安定化剤(P−2)〜(P−14)
合成例1において、オクタデシルメタクリレートの代りに下記表−Aの単量体を用いる他は合成1と全く同様に操作して各分散安定化剤を合成した。各分散安定化剤の重量平均分子量は3.0×104〜5.0×104であった。
【0117】
【表1】
【0118】
分散安定化剤の合成例15〜27:分散安定化剤(P−15)〜(P−27)
合成例1において、架橋用多官能性単量体であるジビニルベンゼン2gの代わりに、下記表−Bの多官能性単量体又はオリゴマーを用いる他は、合成例と全く同様に操作して各分散安定化剤を合成した。各分散安定化剤の重量平均分子量は3.0×104〜6.0×104であった。
【0119】
【表2】
【0120】
分散安定化剤の合成例28:分散安定化剤(P−28)
オクタデシルメタクリレート95g、N−メトキシメチルアクリルアミド5g、トルエン150g及びイソブロパノール50gの混合吻を窒素気流下に温度75℃に加温した。A.I.B.N.を3.0g加え、8時間反応した。次に、Dean−Starkを用いて、温度110℃に加温し6時間攪拌した。用いた溶媒イソプロパノール及び反応で副生するメタノールを除去した。冷却後、メタノール1.5L中に再沈し、白色粉末を濾集後、乾燥した。収量82gで重量平均分子量は5.6×104であった。
【0121】
マクロモノマーの製造例1:(M−1)
オクタデシルメタクリレート100g、チオグリコール酸1g及びトルエン200gの混合溶液を、窒素気流下攪拌しながら、温度75℃に加温した。2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(略称A.I.B.N.)を1.5g加え、4時間反応した。更に、A.I.B.N.を0.5g加え3時間、その後、更にA.I.B.N.を0.3g加え3時間反応した。この反応溶液を、室温に冷却し、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.8gを加え、これにジシクロヘキシルカルボジイミド(略称D.C.C.)を4.5g及び塩化メチレン10gの混合溶液を1時間で滴下した。4−ジメチルアミノピリジン0.1gとt−ブチルハイドロキノン0.1gを加え、そのまま4時間攪拌した。
析出した結晶を濾別して得た濾液を、メタノール2リットル中に再沈した。沈殿した白色固体をデカンテーションで補集し、これをテトラヒドロフラン300mlに溶解し、メタノール3リットル中に再度再沈した。沈殿した白色粉末を補集し、減圧乾燥して、収量93.2gで重量平均分子量12,100のマクロモノマー(M−1)を得た。分子量はGPC法によるポリスチレン換算値である。
【0122】
【化26】
【0123】
マクロモノマーの製造例2〜17:(M−2)〜(M−17)
マクロモノマーの製造例1において、メタクリレートモノマー(オクタデシルメタクリレートに相当)、連鎖移動剤(チオグリコール酸に相当)、開始剤(A.I.B.N.に相当)及び不飽和カルボン酸エステル(2−カルボキシエチルメタクリレートに相当)を各々相当する化合物に代えて、上記マクロモノマーの製造例1と同様にして、下記表−C及び表−Dのマクロモノマー(M−2)〜(M−17)を各々製造した。得られた各マクロモノマーの重量平均分子量は4,600〜61,000であった。
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
【表5】
【0127】
【表6】
【0128】
【表7】
【0129】
実施例1
<顔料分散液の調製>
下記構造の顔料分散剤(D−1)をアイソパーHに加熱溶解して調液した20%溶液を、顔料分散剤として用いた。上記顔料分散剤溶液88.25重量部と、黒色加工顔料としてロジンエステル樹脂で処理されたマイクロリスブラックC−T(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)17.65重量部、アイソパーH29.4重量部及びガラスビーズ250重量部とともにペイントシェイカー(東洋精機KK)で30分間混合した。次にガラスビーズをろ別した後、高速度分散混和機器ダイノミル(商品名;KDL)で回転数3000rpmで3時間分散した。メディアはガラスビーズMK−3GXを使用した。分散液中の顔料粒子の体積平均粒径を、超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定したところ、0.16μmと良好に分散されていた。
【0130】
【化27】
【0131】
<着色樹脂粒子の調製>
ガラスビーズをろ過した加工顔料分散液のろ液(固形分23.3%)85.8gを四つ口フラスコに入れ窒素気流下攪拌しながら温度80℃で3時間加熱した。
次にこの加工顔料分散液中に、分散安定化剤(P)として(P−1)を粉体で8g、メタクリル酸メチル16.0g、アクリル酸メチル22.0g、マクロモノマー(M)として(M−1)を2.0g及びアイソパーH120gの混合溶液に2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.0gを加えた溶液をフィード溶液として、滴下速度2.5ml/分で滴下しその後3時間反応させた。滴下開始から約20分して発熱が始まり、反応液温度は約5℃程上昇した。3時間反応後に温度を90℃に上げ2時間攪拌し未反応のモノマーを留去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し得られた黒色樹脂粒子分散液は重合率98%でその体積平均粒子サイズは0.24μmであった。得られた黒色樹脂粒子分散液は、1カ月静置保存した後の分散状態も良好であった。
黒色樹脂粒子分散液をS−800形電界放射形走査電子顕微鏡(日立電気社製)で観察したところ、約100nm程度のマイクロリスブラック顔料粒子が分散重合後には約180nmの球形状樹脂粒子に成長しており、滴下モノマーがシード顔料粒子内で吸収され重合していることが判った。更に黒色粒子分散液を透過形走査電子顕微鏡で観察したところ、分散重合後の約180nmの球形状着色樹脂粒子の中にはシードの顔料粒子が内包されているのが判った。
以上より、本発明のシード分散重合により生成した着色樹脂粒子は、ロジンエステル樹脂処理された顔料を内部に含有した着色樹脂粒子である事が判る。
【0132】
<インク組成物:(IJ−1)の作製>
上記着色樹脂粒子分散液を、溶媒留去により一旦濃縮しアイソパーGにて希釈する事により、粘度は13cp(E型粘度計、温度25℃で測定)、表面張力は23mN/m(協和界面科学社製の自動表面張力計、温度25℃で測定)のインク組成物(IJ−1)を調液した。インクジェット記録装置としてカラーファクシミリ彩遊記UX−E1CL(シャープ社製)を用い、上記インク組成物(IJ−1)を充填して、富士写真フイルムインクジェットペーパーハイグレード専用紙上に描画したところ、ノズル詰まりが無く安定に吐出した。得られた描画画像は、滲みがなく、画像濃度1.8の良質で明瞭なものであった。次にフルベタパターンを印字して、印字物を乾燥させた後ベタ部を指で擦ったところ、目視で地汚れが全くなく極めて耐擦過性に優れていることが判った。インク組成物は、長期に保存しても沈降凝集が見られず分散性が極めて良好で、かなりな期間連続して印刷に使用でき優れた鮮明度の印刷を与えた。
【0133】
実施例2
<顔料分散物の調製>
黒色顔料としてカーボンブラック#30(三菱化学社製)100重量部、ポリマー処理の樹脂としてエチレン/ステアリルアクリレート共重合体(95/5モル比)、200重量部をトリオブレンダーで予備粉砕しよく混合した後に、120℃に加熱した三本ロールミルで溶融混練(20分)した。上記の顔料混練物をピンミルで粉砕した。
次に顔料混練物10重量部、アイソパーH65重量部、下記構造の顔料分散剤(D−2)をアイソパーHに加熱溶解して調液した20wt%溶液を20重量部、及び3G−Xガラスビーズ250重量部とともにペイントシェイカー(東洋精機KK)で60分間混合した。次にガラスビーズをろ別した後、高速度分散混和機器ダイノミル(商品名;KDL)で回転数3000rpmで3時間分散した。メディアはガラスビーズMK−3GXを使用した。分散液中の顔料粒子の体積平均粒径を、超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定したところ、0.16μmと良好に分散されていた。
【0134】
【化28】
【0135】
<着色樹脂粒子の調製>
ガラスビーズをろ過した顔料分散液のろ液(固形分14.0%)214.3gを四つ口フラスコに入れ窒素気流下攪拌しながら温度75℃で1時間加熱した。次にこの顔料分散液中に、実施例1と同様に、分散安定化剤(P−2)を粉体で4g、メタクリル酸メチル5.8g、アクリル酸メチル13.2g、マクロモノマー(M)として(M−2)を1.0g及びアイソパーH80gの混合溶液に2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gを加えた溶液をフィード溶液として、一時間で滴下しその後3時間反応させた。滴下開始から約15分して発熱が始まり、反応液温度は約4℃程上昇した。3時間反応後に温度を90℃に上げ窒素流量を上げながら、2時間攪拌し未反応のモノマーを留去した。黒色樹脂粒子分散液は重合率97.0%でその体積平均粒子サイズは0.22μmであった。得られた黒色樹脂粒子分散液は、1カ月静置保存した後の分散状態も良好であった。
【0136】
<インク組成物:(IJ−2)の作製>
上記着色樹脂粒子分散液を、溶媒留去により一旦濃縮しアイソパーGにて希釈する事により、粘度は13cp、表面張力は23mN/mのインク組成物(IJ−2)を調製した。インク組成物(IJ−2)を、実施例1と同様にしてカラーファクシミリ彩遊記UX−E1CL(シャープ社製)で印刷したところ、滲みのない良質の明瞭な印刷を与えた。また実施例1と同様にして耐擦過性を調べたところ、目視で地汚れが全くなく極めて耐擦過性に優れていることが判った。インク組成物は、長期に保存しても沈降凝集が見られず分散性が良好であつた。
【0137】
実施例3
<顔料分散物の調製>
黒色顔料としてカーボンブラック#100(三菱化学社製)10重量部、水100重量部をフラッシャーで攪拌後、ポリマー処理の樹脂としてスチレン/ビニルトルエン/ラウリルメタクリリレート共重合体(40/58/2モル比)の33%トルエン溶液60重量部を、更にフラッシャーに加え攪拌した。次いで、加熱し減圧して水分と溶媒を除去して含水率1重量%の黒色塊状物を得た。黒色塊状物を真空乾燥し、水分を完全に除去した後、サンプルミルで粉砕し、0.1−0.01mmの黒色粉体を得た。実施例2において、顔料混練物の代わりに上記黒色粉体を用い、顔料分散剤として(D−2)の代わりに下記構造の顔料分散剤(D−3)を用いた他は、実施例2と全く同様に顔料分散を行った。ガラスビーズをろ別した後得られた黒色顔料分散液は、体積平均粒径が0.13μmと分散性は良好であった。
【0138】
【化29】
【0139】
<着色樹脂粒子の調製>
ガラスビーズをろ過した顔料分散液のろ液(固形分13.0%)をシード粒子として、実施例2において、マクロモノマー(M)としてマクロモノマー(M−2)の代わりに(M−3)1.0gを用い、また、分散安定化剤(P−1)の代わりに(P−3)を8g用いた他は、実施例2と全く同様にして分散重合を行った。得られた黒色樹脂粒子分散液は重合率98.0%でその体積平均粒子サイズは0.21μmであった。得られた黒色樹脂粒子分散液は、1カ月静置保存した後の分散状態も良好であった。
【0140】
<インク組成物:(IJ−3)の作製>
上記顔料樹脂粒子分散液を、粘度は13cp、表面張力は23mN/mに調製してインク組成物(IJ−3)を得た。インク組成物(IJ−3)を、実施例1と同様にしてカラーファクシミリ彩遊記UX−E1CL(シャープ社製)で印刷したところ、滲みのない良質の明瞭な印刷を与えた。また実施例1と同様にして耐擦過性を調べたところ、目視で地汚れが全くなく極めて耐擦過性に優れていることが判った。インク組成物は、長期に保存しても沈降凝集が見られず分散性が良好であつた。
【0141】
比較例1
<比較用顔料分散液の調製>
青色顔料としてアルカリブルー 5重量部、顔料分散剤としてラウリルメタクリレート/アクリル酸共重合体(組成比95/5wt/wt)5重量部とを、アイソパーH90重量部及びガラスビーズ250重量部とともにペイントシェイカー(東洋精機KK)で30分間混合した。次にガラスビーズをろ別した後、高速度分散混和機器ダイノミル(商品名;KDL)で回転数3000rpmで3時間分散し分散液中の顔料粒子の体積平均粒径を、超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定したところ、0.13μmと良好に分散されていた。
【0142】
<比較用着色樹脂粒子の調製>
ガラスビーズをろ過した顔料分散液のろ液(固形分9.6%)208.3gを四つ口フラスコに入れ窒素気流下攪拌しながら溶液温度を80℃で3時間加熱した。次にこの顔料分散液中に、実施例1と同様に、分散安定化剤(P−1)を粉体で8g、メタクリル酸メチル16.0g、アクリル酸メチル22.0g、マクロモノマー(M)として(M−1)を2.0g及びアイソパーH120gの混合溶液に2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.0gを加えた溶液をフィード溶液として、滴下速度2.5ml/分で滴下しその後3時間反応させた。滴下開始から約15分して発熱が始まり、反応液温度は約5℃程上昇したが、フラスコ壁面に粗大粒子が付着しており、反応後にはフラスコの底に多量の沈殿物がみられた。比較例1の着色樹脂粒子は、粗大粒子、沈降物の生成のため、次ぎのインク組成物に供することができなかった。
【0143】
比較例2〜3
実施例1において、ロジンエステル樹脂処理された黒色顔料マイクロリスブラックC−T (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)の代わりに、下記のポリマーで処理された青色顔料(C.I.Pigmet Blue 15:3)を用いた他は実施例1と全く同様に顔料分散を行った。
【0144】
分散後にガラスビーズをろ別し得られた比較例2〜3の顔料分散液は、体積平均粒径が比較例2で1.48μm、比較例3で1.67μmであった。比較例2〜3の顔料分散液は、粗大粒子があり経時で沈降物が生成するなど分散性は良好でないため、次ぎのシード重合に供することができなかった。
【0145】
実施例1〜3と比較例1〜3より、本発明の如くポリマー処理された顔料は、特異的に微細粒子化され良好な分散安定性を有し、また、分散安定化剤として、重合体成分の主鎖の一部分が架橋された分散安定化剤を用いたために、シード分散重合が良好に進行し、そのシード分散重合により生成したポリマー処理された顔料を内部に含有する着色樹脂粒子は、明瞭な印刷画質、極めて優れた耐擦過性、良好な長期分散性等の、良好なインク特性を示すことが判った。
【0146】
実施例4
<顔料分散液の調製>
黒色顔料としてカーボンブラック#30(三菱化学社製)100重量部、ポリマー処理の樹脂としてメチルメタクリレート/ステアリルメタクリレート共重合体(9/1モル比)、200重量部をトリオブレンダーで予備粉砕しよく混合した後に、120℃に加熱した三本ロールミルで溶融混練(20分)した。上記の顔料混練物をピンミルで粉砕した。
次に顔料混練物10重量部、アイソパーG65重量部、顔料分散剤としてソルプレン1205(旭化成社製、スチレン/ブタジエン共重合体)をアイソパーGに加熱溶解して調液した20wt%溶液を25重量部、及び3G−Xガラスビーズ250重量部とともにペイントシェイカー(東洋精機KK)で60分間混合した。次にガラスビーズをろ別した後、高速度分散混和機器ダイノミル(商品名;KDL)で回転数3000rpmで3時間分散した。メディアはガラスビーズMK−3GXを使用した。分散液中の顔料粒子の体積平均粒径を、超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定したところ、0.21μmと良好に分散されていた。
【0147】
<着色樹脂粒子の調製>
ガラスビーズをろ過した顔料分散液のろ液(固形分14.0%)214.3gを四つ口フラスコに入れ窒素気流下攪拌しながら温度50℃で1時間加熱した。次にこの顔料分散液中に、上記の分散安定化剤(P−2)を粉体で4g、アクリル酸メチル19.6g、マクロモノマー(M−1)を0.4g及びアイソパーH80gの混合溶液に2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.7gを加えた溶液をフィード溶液として、一時間で滴下しその後3時間反応させた。滴下開始から約20分して発熱が始まり、反応液温度は約5℃程上昇した。3時間反応後に温度を50℃から80℃に上げ窒素流量を上げながら、2時間攪拌し未反応のモノマーを留去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し得られた黒色樹脂粒子分散液は重合率95%でその体積平均粒子サイズは0.24μmであった。得られた黒色樹脂粒子分散液は、1カ月静置保存した後の分散状態も良好であった。
【0148】
<インク組成物:(IJ−4)の作製>
上記着色樹脂粒子分散液を、溶媒留去により一旦濃縮しアイソパーGにて希釈する事により、粘度は13cp、表面張力は23mN/mのインク組成物(IJ−4)を調製した。インク組成物(IJ−4)を、実施例1と同様にしてカラーファクシミリ彩遊記UX−E1CL(シャープ社製)で印刷したところ、滲みのない良質の明瞭な印刷を与えた。また実施例1と同様にして耐擦過性を調べたところ、目視で地汚れが全くなく極めて耐擦過性に優れていることが判った。インク組成物は、長期に保存しても沈降凝集が見られず分散性が良好であつた。
【0149】
比較例4
<比較用インク組成物:(IJR−1)の作製>
実施例4の着色樹脂粒子の代わりにシード粒子の顔料分散液を用いた他は、インク組成物(IJ−4)と同様にして、比較用インク組成物(IJR−1)を作成した。インクの粘度は12cp、表面張力は23dyne/cmであった。比較用インク組成物(IJR−1)を、実施例1と同様にしてカラーファクシミリ彩遊記UX−E1CL(シャープ社製)で印刷したところ、滲みのない印刷を与えたものの、ベタ画像部を指で擦ると簡単に画像部が取れてしまい、耐擦過性が極めて悪い事が判った。更に、得られた印刷画像部を指で擦って取れないようにするには、印刷記録体を120℃以上に加熱定着する必要がある事が判った。
【0150】
本発明のインク組成物(IJ−4)と比較用インク組成物(IJR−1)の実験結果より、本発明の如くポリマー処理された顔料をシード粒子として、重合体成分の一部が架橋された分散安定化剤を用いたシード分散重合により、低軟化性の樹脂で被覆された着色樹脂粒子は、明瞭な印刷画質、良好な易定着性、極めて優れた耐擦過性、良好な長期分散性等の、良好なインク特性を示すことが判った。
【0151】
実施例5
<顔料分散物の調製>
実施例1において、黒色顔料マイクロリスブルーC−T (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)の代わりに、黄色顔料マイクロリスイエロ−3R−T (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を用いた他は実施例1と全く同様に顔料分散を行った。ガラスビーズをろ別した後得られた黄色顔料の分散液は、体積平均粒径が0.20μmと分散性は良好であった。
【0152】
<着色樹脂粒子の調製>
黄色顔料の分散液(固形分20.0%)100gを四つ口フラスコに入れ窒素気流下攪拌しながら温度80℃で2時間加熱した。実施例1において、分散安定化剤として(P−6)を粉体で4g、メタクリル酸メチル8.0g、アクリル酸メチル10.0g、マクロモノマー(M−3)1.0g、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル1.0g及びアイソパーH80gの混合溶液に2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6gを加えた溶液をフィード溶液として、滴下速度2.0ml/分で滴下し3時間反応させた他は、実施例1と全く同一の反応操作を行った。反応液温度は約4℃程上昇した。得られた黄色樹脂分散液は、重合率95%、体積平均粒子サイズは0.26μmであり、1カ月静置保存した後の分散状態も良好であった。
【0153】
<インク組成物:(IJ−5)の作製>
黄色樹脂粒子分散液をアイソパーGで樹脂粒子成分が6.0%になる様希釈した。次いで荷電調節剤としてオクタデセン−半マレイン酸オクタデシルアミド共重合体を、0.01g/アイソパーG 1リットルになる様添加してインク組成物(IJ−5)を調液した。インク組成物(IJ−5)の荷電量の測定を、特公昭64−696号に記載の現像特性装置(印加電圧500V、印加した電極の背面に誘起された電圧の時間変化の初期値を測定)で行った。インク組成物(IJ−5)は全体荷電が240mV、黄色樹脂粒子の荷電が201mVと明瞭な正荷電性を示し、一ヵ月後の荷電量の変化も殆ど無く極めて安定している事が判った。また、その荷電量は荷電調節剤の量により容易に制御できる事が判った。
【0154】
比較例5
<比較用インク組成物:(IJR−2)の作製>
実施例5において、シード粒子である黄色顔料分散物をインク組成物(IJ−5)と同様にインク化して比較用インク組成物(IJR−2)を作成した。比較用インク組成物(IJR−2)の荷電量を測定したところ、荷電極性は負荷電で、全体荷電が90mV、黄色顔料粒子の荷電が13mVであった。
実施例5と比較例5より、シード粒子の黄色顔料マイクロリスイエロ−3R−T(比較用インク組成物(IJR−2))の荷電極性はもともと負荷電であるが、重合体成分の主鎖の一部分が架橋された分散安定化剤を用いたシード分散重合により樹脂被覆した本発明の着色樹脂粒子(インク組成物(IJ−5))は、荷電極性が明瞭な正荷電を示し、その荷電量も荷電調節剤の量により容易に制御できる事が判る。即ち、もともとの顔料の荷電極性に依らず、シード分散重合により顔料表面を樹脂被覆する事により、荷電極性(適切に荷電調節剤を選択して)、荷電量を自由に制御できることが判る。
【0155】
<画像描画性>
インクジェツト装置として、図−1に示すヘッド構造の100dpi 64チャンネルの静電式インクジェツトヘッドを使用し、インク組成物(IJ−5)をインクタンクに充填した。エアーポンプ吸引により記録媒体であるコート記録紙表面の埃除去を行った後、吐出ヘッドを描画位置までコート記録紙に近づけ、描画解像度600dpiでインクを吐出し描画した。この際、パルス電圧を調節してドット径15μmから60μmの範囲で16段階でドット面積を変化させながら描画した。描画画像は滲みのない満足し得る濃度の良質の明瞭な画像を与えた。インクヘッドからの吐出安定性も良好で、詰まりを生じる事が無く、画像描画でも安定したドット形状の印字ができた。また実施例1と同様にして耐擦過性を調べたところ、目視で地汚れが全くなく極めて耐擦過性に優れていた。インク組成物(IJ−5)は、長期に保存しても沈降凝集が見られず分散性が良好であった。
【0156】
一方、比較用インク組成物(IJR−2)を用い、吐出ヘッドに印加するパルス電圧を負極性にして上記と同様に描画したところ、描画画像は滲みがひどく画像濃度も低いものであった。また、吐出不良が発生したために、画像欠落が見られ満足する画像が得られなかった。
以上の結果より、本発明のシード分散重合により樹脂被覆した顔料樹脂粒子(インク組成物IJ−5)が、明瞭な正荷電と十分な荷電量も有するために、静電式インクジェツト装置において、明瞭な印刷画質、良好な吐出安定性、極めて優れた耐擦過性、良好な長期分散性等の、良好なインク特性を示すことが判った。
【0157】
実施例6〜19
<顔料分散液の調製>
実施例1において、顔料分散剤(D−1)の代わりに(D−3)を加工顔料に対して50wt%用い、また黒色加工顔料マイクロリスブラックC−Tの代わりに、青色加工顔料マイクロリスブルー4G−T(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を用いた他は実施例1と全く同様に顔料分散を行った。ガラスビーズをろ別した後得られた顔料分散液は、体積平均粒径は0.16μmで分散性は良好であった。この青色顔料分散液を用いてシード分散重合を行い着色樹脂粒子、インク組成物(IJ−6)〜(IJ−19)をそれぞれ作成した。
【0158】
<着色樹脂粒子の調製>
実施例1において、青色加工顔料分散液(固形分19.1%)157.5gを用い、下記の表−Eに記載の分散安定化剤(P)を粉体で8g、単量体を40g、アイソパーGを120g、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を単量体の1モル%加えた溶液をフィード溶液と2時間で滴下して他は、実施例1と全く同一の反応操作を行った。反応液温度はそれぞれ約3〜8℃程上昇した。得られた青色粒子分散液6〜19は、重合率が約89〜98%であり、その体積平均粒子サイズは0.20〜0.26μmであった。また青色粒子分散液6〜19は、1カ月静置保存した後の分散状態もそれぞれ良好であった。
【0159】
<インク組成物:(IJ−6)〜(IJ−19)>
上記着色樹脂粒子分散液6〜19を、それぞれ粘度は12〜14cp、表面張力は22〜24mN/mに調整してインク組成物(IJ−6)〜(IJ−19)を得た。インク組成物(IJ−6)〜(IJ−19)を、実施例1と同様にしてカラーファクシミリ彩遊記UX−E1CL(シャープ社製)で印刷したところ、インク組成物(IJ−6)〜(IJ−19)は、滲みのない満足し得る濃度の良質の明瞭な印刷を与え、また目視で地汚れが全くなく極めて耐擦過性に優れていた。また、インク組成物(IJ−6)〜(IJ−19)は、長期に保存しても沈降凝集が見られず分散性が良好であつた。
【0160】
【表8】
【0161】
【表9】
【0162】
実施例20
実施例5で得られたインク組成物(IJ−5)を電子写真用液体現像剤として、リコー製湿式複写機DT−2500を用いて印字テストしたところ、十分な画像濃度と良好な定着性を有する画像が得られた。また、この電子写真用液体現像剤は荷電の経時変化が極めて少なく、再分散性、保存安定性に優れるものであった。
【0163】
【発明の効果】
ポリマー処理された顔料をシード粒子として、非水溶媒中で重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤を用いたシード分散重合により得られる、樹脂で被覆された本発明の顔料樹脂粒子を含有するインク組成物により、顔料が均一に微粒子分散され、且つ顔料分散液の分散安定性に優れるインクジェットプリンタ用油性インクを提供できる。また、ノズル部での目詰まりが起きない吐出安定性の高いインクジェットプリンタ用油性インクを提供できる。更に記録紙上での乾燥性、記録画像の耐水性、耐光性に優れており、且つ高度の耐擦過性を有するインクジェットプリンタ用油性インクを提供できる。また、分散安定性、耐擦過性に優れると共に、荷電極性の制御や荷電の経時安定性にも優れた静電方式インクジェツトプリンタ用油性インク、及び電子写真用液体現像剤を提供する事である。更に上記の特徴を有する、均一に微粒子分散された顔料を内包する樹脂粒子からなるインクジェットプリンタ用インクを得るための製造方法を提供できる。
【0164】
【図面の簡単な説明】
【図1】ライン走査型マルチチャンネルインクジェットヘッドの構成例を示し、記録ドットに対応した 吐出電極の断面を示す図である。
【図2】吐出電極を記録媒体側から見た図である。
Claims (9)
- 比誘電率1.5〜20及び表面張力15〜60mN/m(25℃において)を有する非水溶媒中に、着色剤を表面処理した着色成分を該非水溶媒中に微粒子状に分散して得た着色成分微粒子をシード粒子として、一官能性単量体(A)の少なくとも一種と、上記単量体(A)と共重合可能なマクロモノマー(M)の少なくとも一種と、下記一般式(I)で示される繰返し単位を含有する重合体で、且つ、その重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)の少なくとも一種とを加え、重合開始剤の存在下に分散重合させることにより得られる着色樹脂粒子を含有することを特徴とするインクジェットプリンタ用油性インク組成物。
- 該マクロモノマー(M)が、下記一般式(II)で示される繰り返し単位から成る重合体の主鎖の末端に、下記一般式(III)で示される重合性二重結合基を結合して成る重量平均分子量1×103 〜4×104 のマクロモノマー(M)である請求項1のインクジェットプリンタ用油性インク組成物。
b1 とb2 は、互いに同じでも異なってもよく、一般式(III)中のd1 及びd2 と同一の基を表す。Y2 は炭素数1〜22の脂肪族基を表す。 - 着色剤が有機顔料及び無機顔料から選択される少なくとも一種の顔料であり、着色成分が、該着色剤をポリマー被覆することにより表面処理されたものである請求項1のインクジェットプリンタ用油性インク組成物。
- 体積比抵抗109Ωcm以上の非水溶媒中に、着色剤を表面処理した着色成分を該非水溶媒中に微粒子状に分散して得た着色成分微粒子をシード粒子として、一官能性単量体(A)の少なくとも一種と、上記単量体(A)と共重合可能なマクロモノマー(M)の少なくとも一種と、下記一般式(I)で示される繰返し単位を含有する重合体で、且つ、その重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)の少なくとも一種とを加えた分散液を、重合開始剤の存在下に分散重合させることにより得られる着色樹脂粒子を含有することを特徴とする電子写真用液体現像剤。
- 該マクロモノマー(M)が、下記一般式(II)で示される繰り返し単位から成る重合体の主鎖の末端に、下記一般式(III)で示される重合性二重結合基を結合して成る重量平均分子量1×103 〜4×104 のマクロモノマー(M)である請求項4の電子写真用液体現像剤。
b1 とb2 は、互いに同じでも異なってもよく、一般式(III)中のd1 及びd2 と同一の基を表す。Y2 は炭素数1〜22の脂肪族基を表す。 - 着色剤が有機顔料及び無機顔料から選択される少なくとも一種の顔料であり、着色成分が、該着色剤をポリマー被覆することにより表面処理されたものである請求項4の電子写真用液体現像剤。
- 比誘電率1.5〜20及び表面張力15〜60mN/m(25℃において)を有する非水溶媒中に、着色剤を表面処理した着色成分を該非水溶媒中に微粒子状に分散して得た着色成分微粒子をシード粒子として、一官能性単量体(A)の少なくとも一種と、上記単量体(A)と共重合可能なマクロモノマー(M)の少なくとも1種と、下記一般式(I)で示される繰返し単位を含有する重合体で、且つ、その重合体主鎖の一部分が架橋され該非水溶媒に可溶性の分散安定化剤(P)の少なくとも一種とを加えた分散液を、重合開始剤の存在下に分散重合させることにより得られる着色樹脂粒子の製造方法。
- 該マクロモノマー(M)が、下記一般式(II)で示される繰り返し単位から成る重合体の主鎖の末端に、下記一般式(III)で示される重合性二重結合基を結合して成る重量平均分子量1×103 〜4×104 のマクロモノマー(M)である請求項7の着色樹脂粒子の製造方法。
b1 とb2 は、互いに同じでも異なってもよく、一般式(III)中のd1 及びd2 と同一の基を表す。Y2 は炭素数1〜22の脂肪族基を表す。 - 着色剤が有機顔料及び無機顔料から選択される少なくとも一種の顔料であり、着色成分が、該着色剤をポリマー被覆することにより表面処理されたものである請求項7の着色樹脂粒子の製造方法。
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JP2011057822A (ja) * | 2009-09-09 | 2011-03-24 | Dic Corp | 変性顔料およびその製造方法 |
CN103087254A (zh) * | 2011-10-28 | 2013-05-08 | 江南大学 | 一种双亲性共网络树脂的制备方法及其应用 |
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