JP2004284174A - インクジェットヘッド及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】隔壁の対向面における必要な領域の全てに電極を形成することができるようにし、材料コストの高騰、及び、消費電力の増加によるランニングコストの高騰を招くことなく高精度で安定した高速画像形成を行うことができるインクジェットヘッドを得る。
【解決手段】電極形成用の導電性物質を拡散させた液体をインクジェットヘッド2からチャンネルウエハ200上における隔壁29の各対向面に吐出する。このとき、吐出位置が隔壁29の各対向面の上下方向に変化するのに応じて、インクジェットヘッド2の傾き、及び、単位面積当たりの吐出量を変化させる。隔壁29の各対向面の全面に略均一な膜厚の駆動電極が形成される。
【選択図】図4
【解決手段】電極形成用の導電性物質を拡散させた液体をインクジェットヘッド2からチャンネルウエハ200上における隔壁29の各対向面に吐出する。このとき、吐出位置が隔壁29の各対向面の上下方向に変化するのに応じて、インクジェットヘッド2の傾き、及び、単位面積当たりの吐出量を変化させる。隔壁29の各対向面の全面に略均一な膜厚の駆動電極が形成される。
【選択図】図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、インク室内のインクを加圧して記録媒体上に吐出することによって画像形成を行うインクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッド、及び、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドとして、インク室を構成する溝部を挟んで隣接する複数の隔壁の互いの対向面のそれぞれに電極を形成し、外部駆動回路からの電極に対する駆動パルスの印加により隔壁を変形させてインク室内のインクを吐出するようにしたものがある(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
このようなインクジェットヘッドの従来の製造方法の一部を図7及び図8を用いて説明する。先ず、厚さ方向(上下方向)に分極した圧電素子からなる基板103の上面103aにドライフィルムレジストをラミネートして硬化させた後、ダイサーのダイシングブレードを用いて上面103aを前面103b側から背面103c側に向かってハーフダイシングし、隔壁127の間に挟まれたインク室122を形成する。このとき、基板103の前面103bと背面103cの中間部でダイシングブレードを上昇させてインク室122の背面側にアール部122aを形成し、さらに、背面103cまで上面103aのドライフィルムレジストのみをカットして平坦部122bを形成する。
【0004】
このダイシング処理を基板103の前面103b及び背面103cに平行な方向に所定の間隙を設けて繰り返し実行し、基板103上にインク室アレイを形成した後に、インク室122の長手方向に対して基板103の上方からAl又はCu等の電極材料となる金属を斜方から蒸着またはスパッタする。この作業をインク室122を挟んで対向する2方向(図中矢印で示す方向)から行うことにより、インク室122を挟む両側の隔壁127の対向面に電極101を形成する。
【0005】
このとき、インク室122内では、ドライフィルムレジスト及び隔壁126のシャドーイング効果により、隔壁127の上端から厚さ方向の約1/2までの範囲に電極101が形成される。また、インク室122のアール部122a及び平坦部122bにも同時に電極材料の斜方から蒸着またはスパッタが行われるが、左右2方向から蒸着またはスパッタされた金属膜が平坦部122bで重なり合うようにドライフィルムレジストの厚さ及び開口幅を設定することにより、平坦部122bにおいては開口部分の全面に電極(室外電極102)が形成され、アール部122aにおいてはインク室122内の電極101と平坦部122bの室外電極102とを接続する状態に電極が形成される。
【0006】
この後、基板103の上面103aに供給口124を有するカバープレート123を接着し、基板103の前面103bにノズル126を有するノズルプレート125を接着することにより、アクチュエータ100が完成する。
【0007】
このようにして形成されたアクチュエータ100は、隣接するインク室122内に形成された電極101のそれぞれに、互いに逆位相の電位を印加することによりシェアモード駆動を行う。即ち、両側面のそれぞれに互いに逆極性の電位が印加された隔壁127は電極101の形成領域と未形成領域との境目で“く”の字に剪断変形を生じる。この隔壁127の剪断変形によるインク室122の体積変化、及び、これに伴うインク室122内のインク圧力の変化を利用してインク室122の前面103b側に配置したノズル126からインク液滴が吐出される。
【0008】
【特許文献1】
特開閉8−222475号公報
【特許文献2】
特開2002−178518公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように構成された従来のインクジェットヘッドでは、アクチュエータに形成されたインク室においてインクの吐出に直接寄与するアクティブ領域は供給口よりも前面側の範囲のみであり、供給孔を含む背面側はインク室内にインクを供給するためのみに使用され、アール部及び平坦部はインク室内において対向する電極の接続、及び、室外電極を介してインク室内の電極を外部駆動回路に接続するためのみに使用されている。このように本来の機能であるインクの吐出に直接寄与しない領域にも形成する電極の面積範囲が大きく、材料コストが高騰する問題がある。
【0010】
加えて、上記のように構成された圧電素子の変形による体積変化を利用してインクを吐出する本方式のインクジェットヘッドにおいては、電位を印加した場合の剪断変形はインク室壁の全体に電極を形成した場合に最も効率が良いが、電極となる金属を斜方から蒸着又はスパッタする従来の方法においては、ドライフィルムレジスト及び隔壁126のシャドーイング効果のため蒸着面又はスパッタ面の形成領域が規制されるため、隔壁127の上端から厚さ方向の約1/2までの範囲にしか電極101が形成できない。このため電極に電位を印加しても剪断変形に寄与する壁面は全体の1/2に過ぎず、十分な変形量を確保するために駆動電圧を高くする必要が生じる。また、誘電率の高いPZT等の圧電素子を素材とする基板上で平坦部までインク室内の電極を延出させるために基板の静電容量が大きくなり、アクチュエータの駆動に際して印加すべき駆動電圧波形が鈍り、高速印字を実現するための高速駆動を実現することができない問題がある。
【0011】
この問題を解決するために駆動電圧を高くするとアクチュエータにおける発熱量が増加し、アクチュエータの温度上昇によってインクの粘度が変化するため、高精度で安定した画像形成を行うことができなくなるとともに、容量の大きな駆動用ICが要求されることによる部品コストの高騰、及び、消費電力の増加によるランニングコストの高騰を招く。
【0012】
この発明の目的は、隔壁の対向面に形成すべき電極を構成しうる導電性物質を分散させた液体をインクジェット記録装置から吐出することにより、隔壁の対向面における必要な領域の全てに電極を形成することができるようにし、材料コストの高騰、及び、消費電力の増加によるランニングコストの高騰を招くことなく高精度で安定した高速画像形成を行うことができるインクジェットヘッド、及び、その製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0014】
(1)基板上に一定の間隔を設けて複数の溝部を形成し、各溝部を挟んで隣接する複数の隔壁の互いの対向面のそれぞれに、該隔壁を変形させるための駆動パルスが印加される電極を形成するインクジェットヘッドの製造方法において、
前記電極の形成時に、前記隔壁の対向面に対する角度を調整しつつインクジェット記録装置から導電性物質を分散させた液体を前記隔壁の対向面に吐出することを特徴とする。
【0015】
この構成においては、インクジェットヘッドにおいて隔壁を変形させるための駆動パルスが印加される電極の形成時に、導電性物質を分散させた液体がインクジェット記録装置から隔壁の対向面に対する吐出角度を調整しつつ吐出される。したがって、隔壁における所望の領域に電極材料となる導電性物質が正確に塗布され、電極を構成する金属を溝部の斜方から蒸着又はスパッタする従来の製造方法のように、隔壁の変形に直接寄与しない領域にも電極が形成されることによる材料コストの高騰や、隣接する隔壁のシャドーイング効果による蒸着面又はスパッタ面の規制によって隔壁の対向面における十分な範囲に電極が形成されないことによるランニングコストの高騰を招くことなく、高精度で安定した高速画像形成が行われる。
【0016】
(2)前記液体は、樹脂が添加されていることを特徴とする。
【0017】
この構成においては、インクジェット記録装置から隔壁の対向面に対して導電性物質が樹脂とともに吐出される。したがって、インクジェット記録装置から吐出された導電性物質が樹脂を介して隔壁の対向面に堅牢に固着する。
【0018】
(3)前記電極の形成時に、前記電極の膜厚が略均一になるように、前記インクジェット記録装置からの液体の吐出量を液体の吐出位置に応じて変化させることを特徴とする。
【0019】
この構成においては、インクジェット記録装置からの液体の吐出量を液体の吐出位置に応じて変化させて電極の膜厚が略均一にされる。したがって、インクジェット記録装置から吐出された液滴の一部が隣接する隔壁の上面に当接し、溝部の底面近傍における隔壁の対向面に対する液体の吐出量が不十分になり、この部分の電極の膜厚が不足する可能性がある場合には、その部分に対する液体の吐出量を増加することによって電極の膜厚が略一定に維持される。
【0020】
(4)前記電極の形成時に、前記隔壁の各対向面に吐出した前記液体を乾燥及び焼成することを特徴とする。
【0021】
この構成においては、導電性物質を分散させた液体が、インクジェット記録装置により隔壁の各対向面に塗布された後に乾燥され、さらに焼成される。したがって、液体中に分散された導電性物質が、液体の乾燥によって隔壁の各対向面に微粒子として付着し、さらに焼成によって溶融して微粒子が互いに固着する。これによって、隔壁の各対向面には機械的強度が向上した状態で導電性物質による電極が形成される。 (5)前記液体の乾燥及び焼成時における焼成温度を、前記基板を構成するPZT圧電素子のキュリー点より低温度に設定することを特徴とする。
【0022】
この構成においては、導電性物質を分散させた液体が、インクジェット記録装置により隔壁の各対向面に塗布された後に、基板として使用するPZT圧電素子のキュリー点より低温度で焼成される。液体中に分散した導電性物質の焼成温度がPZT圧電素子のキュリー点より高温度であると、導電性物質の焼成処理時にPZT圧電素子に予め付与されている分極状態が失われてしまう。また、電極形成後にPZT圧電素子を再分極させることは構造上不可能である。したがって、導電性物質の焼成温度をPZT圧電素子のキュリー点より低温度とすることにより、導電性物質の焼成処理にPZT圧電素子の分極状態が失われることがなく、電極に対する駆動パルスの印加によって隔壁が確実に剪断変形を生じる。
【0023】
(6)溝部を挟んで隣接する複数の隔壁の互いの対向面のそれぞれに、該隔壁を変形させるための駆動パルスが印加される電極を備えたインクジェットヘッドにおいて、
(1)〜(5)の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0024】
この構成においては、電極の形成時に、インクジェット記録装置から吐出角度を調整しつつ吐出される導電性物質を分散させた液体により、インク吐出時に隔壁を変形させるための駆動パルスが印加される電極が隔壁の対向面に形成される。したがって、隔壁における所望の領域に電極材料となる導電性物質が正確に塗布され、電極を構成する金属を溝部の斜方から蒸着又はスパッタする従来の製造方法のように、隔壁の変形に直接寄与しない領域にも電極が形成されることによる材料コストの高騰や、隣接する隔壁のシャドーイング効果による蒸着面又はスパッタ面の規制によって隔壁の対向面における十分な範囲に電極が形成されないことによるランニングコストの高騰を招くことなく、高精度で安定した高速画像形成が行われる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照して具体的に説明する。図1(A)〜(C)は、この発明の第1の実施形態に係る電極接続構造を適用したインクジェットヘッドの要部の構成を示すインク吐出方向の背面断面図、平面断面図((A)図におけるX−X部断面図)及び側面断面図((A)図におけるY−Y部断面図)である。この実施形態に係るインクジェットヘッド1は、PZT圧電素子からなる基板20に複数形成された溝状のインク室26のそれぞれの背面部にAg導電性フィラーを含有する導電性樹脂10が充填されており、インク室26の背面側に導電性樹脂10が露出している。
【0026】
一対の隔壁29の間に形成された各インク室26は、インク吐出方向である長手方向の全長にわたって一定の断面形状を呈しており、互いに対向する隔壁29の側面に電極27,28が形成されている。互いに対向する電極27,28は、導電性樹脂10を介して電気的に導通した状態で駆動用IC40のアウターリード42に接続されている。基板20の前面には各インク室26に対応するノズル孔24を形成したノズルプレート25が貼付されており、基板20の上面にはインク室26の上部にインク供給部31を形成するカバープレート30が貼付されている。
【0027】
このようにして、基板20にアレイ状に形成されたインク室26が有する電極27,28に導電性樹脂10及びアウターリード42を介して駆動用IC40から同電位の駆動電圧を印加するとともに、隣接するインク室26において隔壁29を挟んで対向する電極27,28に逆位相の電圧を印加することにより、隔壁29を剪断変形させてインク室26内のインク圧力を制御し、インク室26内のインクをノズル孔24から前面側に吐出させる。
【0028】
図2は、上記インクジェットヘッドの製造方法の要部を説明する図である。図1に示したインクジェットヘッド1を製造する際には、先ず、厚さ方向に分極した圧電素子からなるチャンネルウエハ200の上面にドライフィルムレジスト70をラミネートして硬化させる。チャンネルウエハ200はインクジェットヘッド1において基板20を構成する。次いで、ダイサーのダイシングブレードを用いてチャンネルウエハ200の上面を一定ピッチでハーフダイスすることにより、図2(A)に示すように、インク室26となる複数の溝部201を形成する。このとき、ダンシングブレードのダイシング幅は、後に充填される導電性樹脂10が含有する導電性フィラー径よりも大きくすべきであり、直径0.1μm〜70μmの導電性フィラーを含有した導電性樹脂10を用いる場合にはダンシング幅は70μm以上とする。
【0029】
この後、隔壁29に対して図3および図6のように配置したインクジェット装置で、導電性物質を分散させた液体を吐出して電極27,28を形成し、ドライフィルムレジスト70をリフトオフする。
【0030】
次に、基板20の上面からインク室26となる溝部の長手方向に直交する方向に、一例として0.5mm幅で液状(未硬化)の導電性樹脂10をディスペンサー等を用いて塗布し、溝部201の内部及び隔壁29の上面に付着させる。さらに、図2(B)に示すように、ラバースキージを用いてインク室29の上面に付着した導電性樹脂10を溝部内に充填しつつ除去した後、加熱等によって導電性樹脂10を硬化させる。
【0031】
次いで、チャンネルウエハ200の上面に、インク供給部31をザグリによって形成したカバーウエハ300を接着剤を介して貼付する。このカバーウエハ300は、インクジェットヘッド1においてカバープレート30を構成する。この時、図2(C)に示すように、チャンネルウエハ200において導電性樹脂10が充填された部分が、カバーウエハ300に形成されたインク供給部31の中央部に対向するように位置決めする。
【0032】
この後、図2(C)中破線で示す位置においてダイシングブレードによるダイシングを行い、個々のインクジェットヘッド1に分割する。各インクジェットヘッド1の一方の切断面には、インク吐出方向におけるインク室26上流側端部を閉塞する導電性樹脂10が露出しており、この導電性樹脂10に駆動用IC40のアウターリード42を電気的に接続する。
【0033】
次に、実施例を示し、本発明のインクジェット装置で導電性を付与する物質を分散させたインクを吐出して電極を形成する方法について詳しく説明する。この実施例は、本発明の最良の実施の形態の一例ではあるものの、本発明を限定するものではない。
【0034】
なお、本発明の実施例にはキュリー点温度が320℃のPZT圧電素子を使用した。
【0035】
【実施例1】
実施例1では導電性物質として金属微粒子を分散させ、これに樹脂を溶剤で溶解したものを添加して検討を行った。
【0036】
市販されている銀の超微粒子分散液(平均粒径8nmの銀微粒子の分散液)に、その分散液中の銀微粒子100質量部当たり、樹脂組成物を形成する各成分である酸無水物としてメチルヘキサヒドロ無水フタル酸を7質量部、熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を5質量部、有機溶剤としてトルエンを、粘度が10mPa・sになるように混合及び攪拌して均一化し、電極形成用の液体を作成した。
【0037】
この液体をインクジェット方式のプリンタに使用されるインクカートリッジに充填し、専用のプリンタのインクジェットヘッドに装着した。本実施例では、このインクジェットヘッドの吐出方式として、シェアモード方式を選択した。吐出される液滴の平均液量は約4plであり、平均直径約25μmのドット状に塗布される。
【0038】
図3に示すように、溝部201をダイシングしたPZT圧電素子のチャンネルウエハ200における隔壁29の各対向面に斜め上方から対向させ、かつ、図4(A)及び(B)に示すように、インクジェットヘッド2を隔壁29の各対向面の全面のみに電極形成用の液体を塗布できるように、傾きの角度を適宜調整しながらこのインクを吐出した。この角度調整により、隔壁29の各対向面以外には電極形成用の液体は塗布されなかった。
【0039】
次いで、電極形成用の液体を塗布した後のチャンネルウエハ200を180℃で60分間加熱し、電極形成用の液体の乾燥及び焼成を行い、この焼成処理後に塗布性を評価した。電極は隔壁29の各対向面の全面に略均一な膜厚で塗布されていた。より具体的には、平均膜厚は3μm、膜厚のバラツキは20%以下であった。
【0040】
また、電極形成用の液体の吐出に用いたインクジェットヘッド2の吐出ノズル部において、電極形成用の液体による目詰まりも全く生じなかった。得られた電極の抵抗は、3×10−6Ω・cmと良好な値を高い再現性で示した。
【0041】
さらに、この実施例で電極を形成したチャンネルウエハ200を用いて、前述した工程により作製したインクジェットヘッド1は、駆動電圧約30Vの低い駆動電圧でインクを吐出させることができ、インクの着弾位置や吐出量等のインク吐出性も安定していた。
【0042】
【実施例2】
実施例2では銀酸化物を分散させ、これに樹脂を溶剤で溶解したものを添加して検討を行った。
【0043】
粒径が50nmの酸化銀の分散液に、その分散液中の酸化銀微粒子100質量部当たり、樹脂組成物を形成する各成分である耐熱性樹脂として溶剤溶解性ポリイミド樹脂を15質量部、有機溶剤としてN−メチルピロリドンをインクの粘度が10mPa・sになるように混合及び攪拌して均一化し、電極形成用の液体を作成した。
【0044】
実施例1と同様に、溝部201をダイシングしたPZT圧電素子のチャンネルウエハ200における隔壁29の各対向面に斜め上方から対向し、かつ、隔壁29の各対向面の全面のみに電極形成用の液体を塗布できるようにインクジェットヘッド2の傾きの角度を適宜調整しながら、この電極形成用の液体を吐出した。この角度調整により、隔壁29の各対向面以外には電極形成用の液体は塗布されなかった。吐出される液滴の平均液量は約4plであり、平均直径は約28μmであった。
【0045】
次いで、電極形成用の液体を塗布した後のチャンネルウエハ200を200℃で60分間加熱し、電極形成用の液体の乾燥及び焼成を行い、この焼成処理後に塗布性を評価した。電極は隔壁29の各対向面の全面に塗布されており、平均膜厚は3μm、膜厚のバラツキは20%以下と安定した膜厚で塗布されていた。
【0046】
また、電極形成用の液体の吐出に用いたインクジェットヘッド2の吐出ノズル部において、電極形成用の液体による目詰まりも全く生じなかった。得られた電極の抵抗は、4×10−6Ω・cmと良好な値を高い再現性で示した。
【0047】
さらに、この実施例で電極を形成したチャンネルウエハ200を用いて、前述した工程により作製したインクジェットヘッド1は、約32Vの低い駆動電圧でインクを吐出させることができ、インクの着弾位置や吐出量等のインク吐出性も安定していた。
【0048】
【比較例1】
図5に示すように、チャンネルウエハ200の斜め上方から電極材料となるAlを蒸着した。蒸着装置内では、チャンネルウエハ200に対する蒸着分子の蒸着方向を変更することは困難であるため、電極材料のAl分子はチャンネルウエハ200における隔壁29の各対向面に固定された方向から蒸着される。また、各隔壁29に挟まれた溝部201の底部には電極材料が付着しないようにする必要があるため、蒸着方向が隔壁29の高さ方向となす角度を余り小さくすることもできない。
【0049】
このため、隣接する隔壁29によるシャドーイング効果のため蒸着面が規制されてしまい、隔壁29の各対向面における上端から高さ方向の約1/2までの範囲にしか電極を形成することができなかった。
【0050】
この比較例で電極を形成したチャンネルウエハ200を用いて、前述した工程により作製したインクジェットヘッド1では、インクを吐出させるために約45Vの駆動電圧が必要であり、実施例1及び実施例2により高い駆動電圧を要した。また、実施例1及び実施例2に比べてインクジェットヘッド1の発熱量が多く、インクの粘度及び表面張力の変化が大きく、インクの着弾位置や吐出量等のインクの吐出安定性が実施例1及び実施例2に比べて劣る結果となった。
【0051】
【比較例2】
チャンネルウエハ200に対して斜め上方から電極材料となるCuのスパッタリングを行った。この方法では、比較例1と同様に、隣接する隔壁29のシャドーイング効果のため、隔壁29の各対向面スパッタ面が規制されてしまい、隔壁の上端から厚さ方向の約1/2までの範囲にしか電極が形成できなかった。
【0052】
この比較例で電極を形成したチャンネルウエハ200を用いて、前述した工程により作製したインクジェットヘッド1では、インクを吐出させるために約48Vの駆動電圧が必要であり、実施例1及び実施例2により高い駆動電圧を要した。また、実施例1及び実施例2に比べてインクジェットヘッド1の発熱量が多く、インクの粘度及び表面張力の変化が大きく、インクの着弾位置や吐出量等のインクの吐出安定性が実施例1及び実施例2に比べて劣る結果となった。
【0053】
以上のように、従来のような電極材料の金属分子をチャンネルウエハ200の斜め上方から蒸着またはスパッタする方法では、図5に示したように、隣接する隔壁29のシャドーイング効果のため蒸着又はスパッタ面が規制され、隔壁29の上端から高さ方向の約1/2までの範囲にしか電極が形成できない。
【0054】
この点で、インクジェット記録装置で導電性物質を分散させた液体を吐出することによって隔壁29の各対向面に電極を形成する本発明の方法では、導電性物質を分散させた液体はチャンネルウエハ200の斜め上方から吐出する必要はあるが、図4(A)及び(B)に示したようにインクジェットヘッド2の角度を変更することで液体の吐出角度を自由に変えることができ、隔壁29の各対向面における上端から下端まで電極を形成することが可能である。
【0055】
また、金属分子を斜め上方から蒸着又はスパッタする方法では、隣接する隔壁29のシャドーイング効果のため、図6に示したように隔壁29の各対向面において、下方へいくほど金属分子の付着量が少なくなる現象が起こる。このため、従来の方法では、駆動電極27,28に対する駆動電圧の印加によって隔壁29に安定した剪断変形を生じさせることができない可能性がある。
【0056】
この点でも、インクジェット記録装置で導電性物質を分散させた液体を吐出して電極を形成する本発明の方法では、液体の吐出量を正確に変化させることが可能であるため、隔壁29の各対向面における一部に駆動電極の膜厚が薄くなる傾向にある場合には、それに応じてインク吐出量を部分的に増加させることで隔壁29の各対向面全体における駆動電極27,28の膜厚を均一にでき、駆動電極27,28に対する駆動電圧の印加によって隔壁29に安定した剪断変形を生じさせることができる。
【0057】
なお、本発明に使用する導電性物質を分散した液体としては、金属微粒子を分散させてこれに樹脂を溶剤で溶解したものを添加した系と、酸化物等の銀化合物を分散させてこれに樹脂を溶剤で溶解したものを添加した系の2種類が挙げられる。
【0058】
金属微粒子を分散させてこれに分散安定のために樹脂を溶剤で溶解したものを添加した系では、平均粒子径が1〜100nmの比較的細かい導電性物質を分散させることが重要である。これは、平均粒子径が500nm以上の金属粉を用いると、含有される金属粉の粒径が相対的に大きすぎ、駆動電極の導通性を均一にすることができなくなるためである。即ち、駆動電極は数μm程度の厚さであるため、導電性物質の粒径が500nm以上であると、駆動電極の厚さ方向に金属粒子が2〜3個しか存在しない状態になり、結果として、膜厚分布に不均一を生じやすくなる。また、駆動電極の厚さ方向に金属粒子が数個しか存在しない場合、部分的に金属粒子同士の接触不良を生じると、導通性が大きく損なわれる要因ともなる。
【0059】
平均粒子径が100nm以下の極めて粒子径の小さな金属超微粒子の製造方法の一例として、特開平3−34211号公報には、ガス中蒸発法を用いて調製される10nm以下の金属超微粒子をコロイド状に分散したものとその製造方法が開示されている。また、特開平11−319538号公報等には、還元にアミン化合物を用いる還元析出法を利用して、平均粒子径が数nm〜数10nm程度の金属超微粒子をコロイド状に分散したものとその製造方法が開示されている。この特開平11−319538号公報等に開示される平均粒子径数nm〜数10nm程度の金属超微粒子は、コロイド状態を維持するためにその表面が高分子樹脂などで被覆されている。
【0060】
このような平均粒子径が1〜100nmと非常に細かい導電性を付与する物質を分散させた系で構成される液体を用いると、薄い膜厚とした際にも、用いる金属粒子の粒子径に起因する厚さの不均一性を大幅に低減することが可能となる。
【0061】
また、一般に、平均粒子径数nm〜数10nm程度の金属超微粒子はその融点よりも格段に低い温度(例えば、銀であれば200℃程度)で焼結することが知られている。これは、金属の超微粒子においては、十分にその粒子径を小さくすると、粒子表面に存在するエネルギー状態の高い原子の全体に占める割合いが大きくなり、金属原子の表面拡散が無視し得ないほど大きくなる結果、粒子相互の界面の延伸がなされ焼結が行われるためである。
【0062】
一方、室温近傍においても、金属超微粒子の表面相互が直接接触すると凝集体を形成するという現象を生じる。この凝集体形成は、極めて微細な導電性物質を分散させることによって密度の高い充填状態を形成した結果、達成される厚さの均一性向上の効果を損なう要因となる。また密度の高い充填状態を形成することで全体として所望の導電性を達成できる効果が得られるが、予め部分的に凝集体を形成した構造が混入することにより、密度の高い充填状態の再現性が悪くなくなる。
【0063】
特に、インクジェット記録装置を利用して、導電性物質として金属超微粒子を分散させた液体を吐出する際には、吐出される微細な液滴中に含有される金属超微粒子量の均一性が不可欠である。即ち、液体中に含有される金属超微粒子は、分散溶媒中に均一に分散された状態であることも必須の要件となる。具体的には、インクジェットヘッドに付属する容器中に保持する間において、金属超微粒子の凝集分離や沈降分離等の現象の発生を抑制する必要もある。また、上述した金属超微粒子の凝集体の塊が、インクジェットヘッドの吐出ノズル先端などに付着する事態が生じてはならない。これらの好ましくない状況を防止するために、インク中に樹脂及びその樹脂を溶解する溶剤を添加することが有効であり、樹脂としては電極塗布後の焼成時の温度で硬化する熱硬化性樹脂、又は、焼成時の温度で炭化しない耐熱性樹脂が望ましい。
【0064】
したがって、本発明により形成される電極は、熱硬化性樹脂又は耐熱性樹脂を含む焼結体層により構成され、より具体的には、焼結体層が樹脂により基体上に設膜されるとともに強固に接着された構造を有することになる。
【0065】
導電性物質を分散させた液体の組成としては、金属超微粒子100質量部当たり、有機溶剤を含む樹脂組成物が50〜300質量部の範囲で含まれ、有機溶剤が20〜270質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0066】
導電性物質となる金属超微粒子としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、タンタル、ビスマス、鉛、インジウム、錫、亜鉛、チタン、アルミニウムからなる群より選択される一又は2種類以上の金属があげられる。
【0067】
次に、酸化物等の銀化合物を分散させてこれに樹脂を溶剤で溶解したものを添加した系について述べる。
【0068】
本発明の電極形成方法では、電極塗布後の焼成時に熱分解して金属銀を析出する酸化物等の銀化合物と耐熱性樹脂と溶媒とを混合して導電性物質を分散させた液体を作製し、この液体をインクジェット記録装置により吐出して駆動電極となるパターンを形成し、次いでこのパターンを所定の温度で焼成させることにより銀化合物を分解させて金属銀を析出させ、電極を形成するものである。
【0069】
ここで、焼成を行うのは銀化合物を分解させて表面活性の高い銀表面を形成するためであり、焼成温度の範囲は200℃以上を下限とし、上限としてはPZT圧電素子のキュリー点以下の温度を上限とする。下限を200℃としたのは、酸化銀が分解して銀に変化する温度は200℃以上であるためである。また、上限は前述したように、使用するPZT圧電素子のキュリー点より高温度で焼成すると、PZT圧電素子の分極状態が失われてしまうとともに、溝状のインク室26を挟む一対の隔壁29の各対向面に形成した駆動電極に対する駆動パルスの印加により隔壁を変形させてインク室内のインクを吐出するインクジェットヘッドにおいては、電極形成後にPZT圧電素子を再分極させることは構造上不可能であるからである。
【0070】
また、本発明においては、銀化合物としては、焼成時に熱分解して金属銀となるような酸化銀、炭酸銀、有機酸銀、銀錯体、炭酸銀およびコロイド銀のような銀化合物を使用することができる。また、銀化合物が熱分解する温度は、前述の金属微粒子を焼成する温度に比べて高くなる傾向にあるため、焼成温度がPZT圧電素子のキュリー点を越えないように必要に応じてインク中に銀化合物の分解を促進する還元剤等を添加してもよい。
【0071】
銀化合物の粒径は、平均粒子径が1〜100nmの比較的細かい導電性物質を分散させることが重要である。これは、平均粒子径が500nm以上の金属粉を用いると、含有される金属粉の粒径が相対的に大きすぎ、駆動電極の導通性を均一にすることができなくなるためである。即ち、駆動電極は数μm程度の厚さであるため、導電性物質の粒径が500nm以上であると、駆動電極の厚さ方向に金属粒子が2〜3個しか存在しない状態になり、結果として、膜厚分布に不均一を生じやすくなる。
【0072】
樹脂組成物に用いる有機バインダとして機能する熱硬化性樹脂は、有機の酸無水物またはその誘導体あるいは有機酸を、重合剤として、加熱重合可能な熱硬化製樹脂であることがより好ましい。有機バインダとして機能する耐熱性樹脂は、電極塗布後の焼成温度以上の耐熱性が必要であり、このような条件を満たす耐熱性樹脂としては、アラミッド(芳香族ポリイミド)、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、その他の含窒素縮重合系樹脂、ポリアミドイミド樹脂やポリベンゾビスチアゾール、ポリアリレート(芳香族ポリエステル)などがある。ポリイミドは、線状(縮合型)ポリイミド及び付加重合型ポリイミドのいずれも使用できる。ただし、何れの樹脂も適当な溶媒に溶解するものであることが望ましい。
【0073】
本発明の電極形成方法に使用される有機溶剤は、塗布後の焼成温度において比較的速やかに蒸散でき、その間に熱分解などを起こすことがない程度に熱的な安定性を有することが好ましい。また、その塗布の工程において、液体をインクジェット記録装置を利用して、微小な液滴として吐出して塗布するため、吐出に好適な液粘度範囲に維持することも必要となる。また、ハンドリング性を考慮すると、室温付近では容易に蒸散することのない、比較的高沸点の非極性溶剤又は低極性溶剤、例えば、テルピネオール、ミネラルスピリット、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、メシチレンなどが好適に利用でき、さらには、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタンなども用いることができる。耐熱性樹脂としてポリイミドを用いた場合には、N−メチルピロリドン等のピロリドン誘導体、又は、モノグライム、ジグライム、テトラグライム、トリグライム等のエーテル系の溶媒も使用できる。
【0074】
本発明の方法において、インクジェット記録装置から吐出すべき液滴量は、形成すべき駆動電極の膜厚、及び、ドットの平均径から定まる。即ち、インクジェット記録装置を利用して微小な液滴を吐出する際の液滴量は、利用するインクジェットヘッド自体の性能に依存するため、目的とする液滴量に適合するノズル内径を備えたインクジェットヘッドを選択して用いる。
【0075】
なお、電極を形成するための導電性物質を分散させた液体は、金属微粒子を分散させてこれに樹脂を溶剤で溶解したものを添加した系、又は、酸化物等の銀化合物を分散させてこれに樹脂を溶剤で溶解したものを添加した系のそれぞれを単一の液体(1液)として単一のインクジェット記録装置から吐出する形態をとることができるだけでなく、例えば、金属超微粒子を有機溶剤中に分散した液とその他の樹脂組成物を構成する成分を含む液との2液に分け、この2液を個々に微小な液滴として個別のインクジェット記録装置から吐出し、隔壁の各対向面上で両液を混和して電極を形成することも可能である。
【0076】
この2液混合型の電極形成方法を用いる際には、高い密度で両液滴の接触・重ね合わせが達成されるように、利用するインクジェットヘッドのそれぞれの吐出ノズルの位置合わせ制御を行う。また、両液の液滴量は、混和がなされた状態において、各成分が適正な混合比率となるように調整する。隔壁の各対向面上に2液を塗布した後に加熱することにより、1液型の液体を用いた場合と同様に、熱硬化樹脂成分の熱硬化、及び、金属超微粒子相互の低温焼結・融着により、堅牢な駆動電極が形成される。
【0077】
2液混合型のインクを利用する際には、金属超微粒子を有機溶剤中に分散した液とその他の樹脂組成物を構成する成分を含む液とを個々に吐出するため、それぞれの液の粘度を適正な吐出が達成可能な範囲に選択することが必要となる。このため、それぞれの液体に含有される有機溶剤の量を合計すると、予め混合した1液型の液体における有機溶剤の量と比較してより多くなることもあり得る。この場合には、電極形成中又は電極形成後の加熱工程において、好適な有機溶剤の含有比率となるように有機溶剤の蒸散を行う工程を設けることが好ましい。
【0078】
また、本発明のインクジェットヘッドの製造方法における電極形成用の導電性物質を拡散させた液体の吐出には、圧電素子を利用してインクの吐出を行うピエゾ方式又はシェアモード方式のいずれの方法をも用いることができる。また、必要に応じてその他の方式も用いてもよい。但し、使用するインクジェットヘッドの方式に応じて吐出させる液体の液粘度を調製する必要があり、例えば、有機溶剤の添加量を調整して、最終液粘度を1〜30mPa・sの範囲、好ましくは、2〜15mPa・sの範囲に選択することが望ましい。
【0079】
さらに、本発明のインクジェットヘッドの製造方法は、電極形成に必要な成分を含有した液体を微細なドッド状の塗布が可能なインクジェット記録装置を用いて隔壁の各対向面に吐出するものであるため、隔壁の各対向面上で複数のドットが互いに重なり合うようにして複数の層によって所定の膜厚の駆動電極を形成するようにすることにより、電極の膜厚を自由に設定することができるとともに、部分的に層数を変更することによって膜厚の均一化を容易に実現することができる。
【0080】
【発明の効果】
以上のようにして、この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0081】
(1)インクジェットヘッドにおいて隔壁を変形させるための駆動パルスが印加される電極の形成時に、導電性物質を分散させた液体をインクジェット記録装置から隔壁の対向面に対する吐出角度を調整しつつ吐出することにより、隔壁における所望の領域に電極材料となる導電性物質を正確に塗布することができ、電極を構成する金属を溝部の斜方から蒸着又はスパッタする従来の製造方法のように、隔壁の変形に直接寄与しない領域にも電極が形成されることによる材料コストの高騰や、隣接する隔壁のシャドーイング効果による蒸着面又はスパッタ面の規制によって隔壁の対向面における十分な範囲に電極が形成されないことによるランニングコストの高騰を招くことなく、高精度で安定した高速画像形成を行うことができるインクジェットヘッドを製造することができる。
【0082】
(2)インクジェット記録装置から隔壁の対向面に対して導電性物質を樹脂とともに吐出することにより、インクジェット記録装置から吐出した導電性物質を樹脂を介して隔壁の対向面に堅牢に固着させることができる。
【0083】
(3)インクジェット記録装置からの液体の吐出量を液体の吐出位置に応じて変化させて電極の膜厚を略均一にすることにより、インクジェット記録装置から吐出された液滴の一部が隣接する隔壁の上面に当接して溝部の底面近傍における隔壁の対向面に対する液体の吐出量が不十分になることでこの部分の電極の膜厚が不足する可能性がある場合には、その部分に対する液体の吐出量を増加することによって電極の膜厚を全体について略一定に維持することができる。
【0084】
(4)導電性物質を分散させた液体を、インクジェット記録装置により隔壁の各対向面に塗布した後に乾燥させ、さらに焼成することにより、液体中に分散された導電性物質を、液体の乾燥によって隔壁の各対向面に微粒子として付着させ、さらに焼成によって溶融して微粒子を互いに固着させることができ、隔壁の各対向面に機械的強度が向上した状態で導電性物質による電極を形成することができる。
【0085】
(5)導電性物質を分散させた液体を、インクジェット記録装置により隔壁の各対向面に塗布した後に、基板として使用するPZT圧電素子のキュリー点より低温度で焼成することにより、導電性物質の焼成処理にPZT圧電素子の分極状態が失われることがなく、電極に対する駆動パルスの印加によって隔壁に確実に剪断変形を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の製造方法によって製造されるインクジェットヘッドの要部の構成を示す背面断面図、平面断面図及び側面断面図である。
【図2】上記インクジェットヘッドの製造方法の要部を説明する図である。
【図3】上記インクジェットヘッドの製造方法における電極形成時の状態を説明する斜視図である。
【図4】上記インクジェットヘッドの製造方法における電極形成時の状態を説明する正面図である。
【図5】従来のインクジェットヘッドの製造方法における蒸着による電極形成時の状態を説明する正面図である。
【図6】従来の別のインクジェットヘッドの製造方法による電極形成状態を示す正面図である。
【図7】従来のインクジェットヘッドの構造の例を示す側面断面図である。
【図8】従来のインクジェットヘッドの製造方法の要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
1−インクジェットヘッド
10−導電性樹脂
20−基板
24−ノズル孔
25−ノズルプレート
26−インク室
27,28−電極
29−隔壁
30−カバープレート
31−インク供給部
40−駆動用IC(外部駆動回路)
42−アウターリード
200−チャンネルウエハ
【発明の属する技術分野】
この発明は、インク室内のインクを加圧して記録媒体上に吐出することによって画像形成を行うインクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッド、及び、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドとして、インク室を構成する溝部を挟んで隣接する複数の隔壁の互いの対向面のそれぞれに電極を形成し、外部駆動回路からの電極に対する駆動パルスの印加により隔壁を変形させてインク室内のインクを吐出するようにしたものがある(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
このようなインクジェットヘッドの従来の製造方法の一部を図7及び図8を用いて説明する。先ず、厚さ方向(上下方向)に分極した圧電素子からなる基板103の上面103aにドライフィルムレジストをラミネートして硬化させた後、ダイサーのダイシングブレードを用いて上面103aを前面103b側から背面103c側に向かってハーフダイシングし、隔壁127の間に挟まれたインク室122を形成する。このとき、基板103の前面103bと背面103cの中間部でダイシングブレードを上昇させてインク室122の背面側にアール部122aを形成し、さらに、背面103cまで上面103aのドライフィルムレジストのみをカットして平坦部122bを形成する。
【0004】
このダイシング処理を基板103の前面103b及び背面103cに平行な方向に所定の間隙を設けて繰り返し実行し、基板103上にインク室アレイを形成した後に、インク室122の長手方向に対して基板103の上方からAl又はCu等の電極材料となる金属を斜方から蒸着またはスパッタする。この作業をインク室122を挟んで対向する2方向(図中矢印で示す方向)から行うことにより、インク室122を挟む両側の隔壁127の対向面に電極101を形成する。
【0005】
このとき、インク室122内では、ドライフィルムレジスト及び隔壁126のシャドーイング効果により、隔壁127の上端から厚さ方向の約1/2までの範囲に電極101が形成される。また、インク室122のアール部122a及び平坦部122bにも同時に電極材料の斜方から蒸着またはスパッタが行われるが、左右2方向から蒸着またはスパッタされた金属膜が平坦部122bで重なり合うようにドライフィルムレジストの厚さ及び開口幅を設定することにより、平坦部122bにおいては開口部分の全面に電極(室外電極102)が形成され、アール部122aにおいてはインク室122内の電極101と平坦部122bの室外電極102とを接続する状態に電極が形成される。
【0006】
この後、基板103の上面103aに供給口124を有するカバープレート123を接着し、基板103の前面103bにノズル126を有するノズルプレート125を接着することにより、アクチュエータ100が完成する。
【0007】
このようにして形成されたアクチュエータ100は、隣接するインク室122内に形成された電極101のそれぞれに、互いに逆位相の電位を印加することによりシェアモード駆動を行う。即ち、両側面のそれぞれに互いに逆極性の電位が印加された隔壁127は電極101の形成領域と未形成領域との境目で“く”の字に剪断変形を生じる。この隔壁127の剪断変形によるインク室122の体積変化、及び、これに伴うインク室122内のインク圧力の変化を利用してインク室122の前面103b側に配置したノズル126からインク液滴が吐出される。
【0008】
【特許文献1】
特開閉8−222475号公報
【特許文献2】
特開2002−178518公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように構成された従来のインクジェットヘッドでは、アクチュエータに形成されたインク室においてインクの吐出に直接寄与するアクティブ領域は供給口よりも前面側の範囲のみであり、供給孔を含む背面側はインク室内にインクを供給するためのみに使用され、アール部及び平坦部はインク室内において対向する電極の接続、及び、室外電極を介してインク室内の電極を外部駆動回路に接続するためのみに使用されている。このように本来の機能であるインクの吐出に直接寄与しない領域にも形成する電極の面積範囲が大きく、材料コストが高騰する問題がある。
【0010】
加えて、上記のように構成された圧電素子の変形による体積変化を利用してインクを吐出する本方式のインクジェットヘッドにおいては、電位を印加した場合の剪断変形はインク室壁の全体に電極を形成した場合に最も効率が良いが、電極となる金属を斜方から蒸着又はスパッタする従来の方法においては、ドライフィルムレジスト及び隔壁126のシャドーイング効果のため蒸着面又はスパッタ面の形成領域が規制されるため、隔壁127の上端から厚さ方向の約1/2までの範囲にしか電極101が形成できない。このため電極に電位を印加しても剪断変形に寄与する壁面は全体の1/2に過ぎず、十分な変形量を確保するために駆動電圧を高くする必要が生じる。また、誘電率の高いPZT等の圧電素子を素材とする基板上で平坦部までインク室内の電極を延出させるために基板の静電容量が大きくなり、アクチュエータの駆動に際して印加すべき駆動電圧波形が鈍り、高速印字を実現するための高速駆動を実現することができない問題がある。
【0011】
この問題を解決するために駆動電圧を高くするとアクチュエータにおける発熱量が増加し、アクチュエータの温度上昇によってインクの粘度が変化するため、高精度で安定した画像形成を行うことができなくなるとともに、容量の大きな駆動用ICが要求されることによる部品コストの高騰、及び、消費電力の増加によるランニングコストの高騰を招く。
【0012】
この発明の目的は、隔壁の対向面に形成すべき電極を構成しうる導電性物質を分散させた液体をインクジェット記録装置から吐出することにより、隔壁の対向面における必要な領域の全てに電極を形成することができるようにし、材料コストの高騰、及び、消費電力の増加によるランニングコストの高騰を招くことなく高精度で安定した高速画像形成を行うことができるインクジェットヘッド、及び、その製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0014】
(1)基板上に一定の間隔を設けて複数の溝部を形成し、各溝部を挟んで隣接する複数の隔壁の互いの対向面のそれぞれに、該隔壁を変形させるための駆動パルスが印加される電極を形成するインクジェットヘッドの製造方法において、
前記電極の形成時に、前記隔壁の対向面に対する角度を調整しつつインクジェット記録装置から導電性物質を分散させた液体を前記隔壁の対向面に吐出することを特徴とする。
【0015】
この構成においては、インクジェットヘッドにおいて隔壁を変形させるための駆動パルスが印加される電極の形成時に、導電性物質を分散させた液体がインクジェット記録装置から隔壁の対向面に対する吐出角度を調整しつつ吐出される。したがって、隔壁における所望の領域に電極材料となる導電性物質が正確に塗布され、電極を構成する金属を溝部の斜方から蒸着又はスパッタする従来の製造方法のように、隔壁の変形に直接寄与しない領域にも電極が形成されることによる材料コストの高騰や、隣接する隔壁のシャドーイング効果による蒸着面又はスパッタ面の規制によって隔壁の対向面における十分な範囲に電極が形成されないことによるランニングコストの高騰を招くことなく、高精度で安定した高速画像形成が行われる。
【0016】
(2)前記液体は、樹脂が添加されていることを特徴とする。
【0017】
この構成においては、インクジェット記録装置から隔壁の対向面に対して導電性物質が樹脂とともに吐出される。したがって、インクジェット記録装置から吐出された導電性物質が樹脂を介して隔壁の対向面に堅牢に固着する。
【0018】
(3)前記電極の形成時に、前記電極の膜厚が略均一になるように、前記インクジェット記録装置からの液体の吐出量を液体の吐出位置に応じて変化させることを特徴とする。
【0019】
この構成においては、インクジェット記録装置からの液体の吐出量を液体の吐出位置に応じて変化させて電極の膜厚が略均一にされる。したがって、インクジェット記録装置から吐出された液滴の一部が隣接する隔壁の上面に当接し、溝部の底面近傍における隔壁の対向面に対する液体の吐出量が不十分になり、この部分の電極の膜厚が不足する可能性がある場合には、その部分に対する液体の吐出量を増加することによって電極の膜厚が略一定に維持される。
【0020】
(4)前記電極の形成時に、前記隔壁の各対向面に吐出した前記液体を乾燥及び焼成することを特徴とする。
【0021】
この構成においては、導電性物質を分散させた液体が、インクジェット記録装置により隔壁の各対向面に塗布された後に乾燥され、さらに焼成される。したがって、液体中に分散された導電性物質が、液体の乾燥によって隔壁の各対向面に微粒子として付着し、さらに焼成によって溶融して微粒子が互いに固着する。これによって、隔壁の各対向面には機械的強度が向上した状態で導電性物質による電極が形成される。 (5)前記液体の乾燥及び焼成時における焼成温度を、前記基板を構成するPZT圧電素子のキュリー点より低温度に設定することを特徴とする。
【0022】
この構成においては、導電性物質を分散させた液体が、インクジェット記録装置により隔壁の各対向面に塗布された後に、基板として使用するPZT圧電素子のキュリー点より低温度で焼成される。液体中に分散した導電性物質の焼成温度がPZT圧電素子のキュリー点より高温度であると、導電性物質の焼成処理時にPZT圧電素子に予め付与されている分極状態が失われてしまう。また、電極形成後にPZT圧電素子を再分極させることは構造上不可能である。したがって、導電性物質の焼成温度をPZT圧電素子のキュリー点より低温度とすることにより、導電性物質の焼成処理にPZT圧電素子の分極状態が失われることがなく、電極に対する駆動パルスの印加によって隔壁が確実に剪断変形を生じる。
【0023】
(6)溝部を挟んで隣接する複数の隔壁の互いの対向面のそれぞれに、該隔壁を変形させるための駆動パルスが印加される電極を備えたインクジェットヘッドにおいて、
(1)〜(5)の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0024】
この構成においては、電極の形成時に、インクジェット記録装置から吐出角度を調整しつつ吐出される導電性物質を分散させた液体により、インク吐出時に隔壁を変形させるための駆動パルスが印加される電極が隔壁の対向面に形成される。したがって、隔壁における所望の領域に電極材料となる導電性物質が正確に塗布され、電極を構成する金属を溝部の斜方から蒸着又はスパッタする従来の製造方法のように、隔壁の変形に直接寄与しない領域にも電極が形成されることによる材料コストの高騰や、隣接する隔壁のシャドーイング効果による蒸着面又はスパッタ面の規制によって隔壁の対向面における十分な範囲に電極が形成されないことによるランニングコストの高騰を招くことなく、高精度で安定した高速画像形成が行われる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照して具体的に説明する。図1(A)〜(C)は、この発明の第1の実施形態に係る電極接続構造を適用したインクジェットヘッドの要部の構成を示すインク吐出方向の背面断面図、平面断面図((A)図におけるX−X部断面図)及び側面断面図((A)図におけるY−Y部断面図)である。この実施形態に係るインクジェットヘッド1は、PZT圧電素子からなる基板20に複数形成された溝状のインク室26のそれぞれの背面部にAg導電性フィラーを含有する導電性樹脂10が充填されており、インク室26の背面側に導電性樹脂10が露出している。
【0026】
一対の隔壁29の間に形成された各インク室26は、インク吐出方向である長手方向の全長にわたって一定の断面形状を呈しており、互いに対向する隔壁29の側面に電極27,28が形成されている。互いに対向する電極27,28は、導電性樹脂10を介して電気的に導通した状態で駆動用IC40のアウターリード42に接続されている。基板20の前面には各インク室26に対応するノズル孔24を形成したノズルプレート25が貼付されており、基板20の上面にはインク室26の上部にインク供給部31を形成するカバープレート30が貼付されている。
【0027】
このようにして、基板20にアレイ状に形成されたインク室26が有する電極27,28に導電性樹脂10及びアウターリード42を介して駆動用IC40から同電位の駆動電圧を印加するとともに、隣接するインク室26において隔壁29を挟んで対向する電極27,28に逆位相の電圧を印加することにより、隔壁29を剪断変形させてインク室26内のインク圧力を制御し、インク室26内のインクをノズル孔24から前面側に吐出させる。
【0028】
図2は、上記インクジェットヘッドの製造方法の要部を説明する図である。図1に示したインクジェットヘッド1を製造する際には、先ず、厚さ方向に分極した圧電素子からなるチャンネルウエハ200の上面にドライフィルムレジスト70をラミネートして硬化させる。チャンネルウエハ200はインクジェットヘッド1において基板20を構成する。次いで、ダイサーのダイシングブレードを用いてチャンネルウエハ200の上面を一定ピッチでハーフダイスすることにより、図2(A)に示すように、インク室26となる複数の溝部201を形成する。このとき、ダンシングブレードのダイシング幅は、後に充填される導電性樹脂10が含有する導電性フィラー径よりも大きくすべきであり、直径0.1μm〜70μmの導電性フィラーを含有した導電性樹脂10を用いる場合にはダンシング幅は70μm以上とする。
【0029】
この後、隔壁29に対して図3および図6のように配置したインクジェット装置で、導電性物質を分散させた液体を吐出して電極27,28を形成し、ドライフィルムレジスト70をリフトオフする。
【0030】
次に、基板20の上面からインク室26となる溝部の長手方向に直交する方向に、一例として0.5mm幅で液状(未硬化)の導電性樹脂10をディスペンサー等を用いて塗布し、溝部201の内部及び隔壁29の上面に付着させる。さらに、図2(B)に示すように、ラバースキージを用いてインク室29の上面に付着した導電性樹脂10を溝部内に充填しつつ除去した後、加熱等によって導電性樹脂10を硬化させる。
【0031】
次いで、チャンネルウエハ200の上面に、インク供給部31をザグリによって形成したカバーウエハ300を接着剤を介して貼付する。このカバーウエハ300は、インクジェットヘッド1においてカバープレート30を構成する。この時、図2(C)に示すように、チャンネルウエハ200において導電性樹脂10が充填された部分が、カバーウエハ300に形成されたインク供給部31の中央部に対向するように位置決めする。
【0032】
この後、図2(C)中破線で示す位置においてダイシングブレードによるダイシングを行い、個々のインクジェットヘッド1に分割する。各インクジェットヘッド1の一方の切断面には、インク吐出方向におけるインク室26上流側端部を閉塞する導電性樹脂10が露出しており、この導電性樹脂10に駆動用IC40のアウターリード42を電気的に接続する。
【0033】
次に、実施例を示し、本発明のインクジェット装置で導電性を付与する物質を分散させたインクを吐出して電極を形成する方法について詳しく説明する。この実施例は、本発明の最良の実施の形態の一例ではあるものの、本発明を限定するものではない。
【0034】
なお、本発明の実施例にはキュリー点温度が320℃のPZT圧電素子を使用した。
【0035】
【実施例1】
実施例1では導電性物質として金属微粒子を分散させ、これに樹脂を溶剤で溶解したものを添加して検討を行った。
【0036】
市販されている銀の超微粒子分散液(平均粒径8nmの銀微粒子の分散液)に、その分散液中の銀微粒子100質量部当たり、樹脂組成物を形成する各成分である酸無水物としてメチルヘキサヒドロ無水フタル酸を7質量部、熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を5質量部、有機溶剤としてトルエンを、粘度が10mPa・sになるように混合及び攪拌して均一化し、電極形成用の液体を作成した。
【0037】
この液体をインクジェット方式のプリンタに使用されるインクカートリッジに充填し、専用のプリンタのインクジェットヘッドに装着した。本実施例では、このインクジェットヘッドの吐出方式として、シェアモード方式を選択した。吐出される液滴の平均液量は約4plであり、平均直径約25μmのドット状に塗布される。
【0038】
図3に示すように、溝部201をダイシングしたPZT圧電素子のチャンネルウエハ200における隔壁29の各対向面に斜め上方から対向させ、かつ、図4(A)及び(B)に示すように、インクジェットヘッド2を隔壁29の各対向面の全面のみに電極形成用の液体を塗布できるように、傾きの角度を適宜調整しながらこのインクを吐出した。この角度調整により、隔壁29の各対向面以外には電極形成用の液体は塗布されなかった。
【0039】
次いで、電極形成用の液体を塗布した後のチャンネルウエハ200を180℃で60分間加熱し、電極形成用の液体の乾燥及び焼成を行い、この焼成処理後に塗布性を評価した。電極は隔壁29の各対向面の全面に略均一な膜厚で塗布されていた。より具体的には、平均膜厚は3μm、膜厚のバラツキは20%以下であった。
【0040】
また、電極形成用の液体の吐出に用いたインクジェットヘッド2の吐出ノズル部において、電極形成用の液体による目詰まりも全く生じなかった。得られた電極の抵抗は、3×10−6Ω・cmと良好な値を高い再現性で示した。
【0041】
さらに、この実施例で電極を形成したチャンネルウエハ200を用いて、前述した工程により作製したインクジェットヘッド1は、駆動電圧約30Vの低い駆動電圧でインクを吐出させることができ、インクの着弾位置や吐出量等のインク吐出性も安定していた。
【0042】
【実施例2】
実施例2では銀酸化物を分散させ、これに樹脂を溶剤で溶解したものを添加して検討を行った。
【0043】
粒径が50nmの酸化銀の分散液に、その分散液中の酸化銀微粒子100質量部当たり、樹脂組成物を形成する各成分である耐熱性樹脂として溶剤溶解性ポリイミド樹脂を15質量部、有機溶剤としてN−メチルピロリドンをインクの粘度が10mPa・sになるように混合及び攪拌して均一化し、電極形成用の液体を作成した。
【0044】
実施例1と同様に、溝部201をダイシングしたPZT圧電素子のチャンネルウエハ200における隔壁29の各対向面に斜め上方から対向し、かつ、隔壁29の各対向面の全面のみに電極形成用の液体を塗布できるようにインクジェットヘッド2の傾きの角度を適宜調整しながら、この電極形成用の液体を吐出した。この角度調整により、隔壁29の各対向面以外には電極形成用の液体は塗布されなかった。吐出される液滴の平均液量は約4plであり、平均直径は約28μmであった。
【0045】
次いで、電極形成用の液体を塗布した後のチャンネルウエハ200を200℃で60分間加熱し、電極形成用の液体の乾燥及び焼成を行い、この焼成処理後に塗布性を評価した。電極は隔壁29の各対向面の全面に塗布されており、平均膜厚は3μm、膜厚のバラツキは20%以下と安定した膜厚で塗布されていた。
【0046】
また、電極形成用の液体の吐出に用いたインクジェットヘッド2の吐出ノズル部において、電極形成用の液体による目詰まりも全く生じなかった。得られた電極の抵抗は、4×10−6Ω・cmと良好な値を高い再現性で示した。
【0047】
さらに、この実施例で電極を形成したチャンネルウエハ200を用いて、前述した工程により作製したインクジェットヘッド1は、約32Vの低い駆動電圧でインクを吐出させることができ、インクの着弾位置や吐出量等のインク吐出性も安定していた。
【0048】
【比較例1】
図5に示すように、チャンネルウエハ200の斜め上方から電極材料となるAlを蒸着した。蒸着装置内では、チャンネルウエハ200に対する蒸着分子の蒸着方向を変更することは困難であるため、電極材料のAl分子はチャンネルウエハ200における隔壁29の各対向面に固定された方向から蒸着される。また、各隔壁29に挟まれた溝部201の底部には電極材料が付着しないようにする必要があるため、蒸着方向が隔壁29の高さ方向となす角度を余り小さくすることもできない。
【0049】
このため、隣接する隔壁29によるシャドーイング効果のため蒸着面が規制されてしまい、隔壁29の各対向面における上端から高さ方向の約1/2までの範囲にしか電極を形成することができなかった。
【0050】
この比較例で電極を形成したチャンネルウエハ200を用いて、前述した工程により作製したインクジェットヘッド1では、インクを吐出させるために約45Vの駆動電圧が必要であり、実施例1及び実施例2により高い駆動電圧を要した。また、実施例1及び実施例2に比べてインクジェットヘッド1の発熱量が多く、インクの粘度及び表面張力の変化が大きく、インクの着弾位置や吐出量等のインクの吐出安定性が実施例1及び実施例2に比べて劣る結果となった。
【0051】
【比較例2】
チャンネルウエハ200に対して斜め上方から電極材料となるCuのスパッタリングを行った。この方法では、比較例1と同様に、隣接する隔壁29のシャドーイング効果のため、隔壁29の各対向面スパッタ面が規制されてしまい、隔壁の上端から厚さ方向の約1/2までの範囲にしか電極が形成できなかった。
【0052】
この比較例で電極を形成したチャンネルウエハ200を用いて、前述した工程により作製したインクジェットヘッド1では、インクを吐出させるために約48Vの駆動電圧が必要であり、実施例1及び実施例2により高い駆動電圧を要した。また、実施例1及び実施例2に比べてインクジェットヘッド1の発熱量が多く、インクの粘度及び表面張力の変化が大きく、インクの着弾位置や吐出量等のインクの吐出安定性が実施例1及び実施例2に比べて劣る結果となった。
【0053】
以上のように、従来のような電極材料の金属分子をチャンネルウエハ200の斜め上方から蒸着またはスパッタする方法では、図5に示したように、隣接する隔壁29のシャドーイング効果のため蒸着又はスパッタ面が規制され、隔壁29の上端から高さ方向の約1/2までの範囲にしか電極が形成できない。
【0054】
この点で、インクジェット記録装置で導電性物質を分散させた液体を吐出することによって隔壁29の各対向面に電極を形成する本発明の方法では、導電性物質を分散させた液体はチャンネルウエハ200の斜め上方から吐出する必要はあるが、図4(A)及び(B)に示したようにインクジェットヘッド2の角度を変更することで液体の吐出角度を自由に変えることができ、隔壁29の各対向面における上端から下端まで電極を形成することが可能である。
【0055】
また、金属分子を斜め上方から蒸着又はスパッタする方法では、隣接する隔壁29のシャドーイング効果のため、図6に示したように隔壁29の各対向面において、下方へいくほど金属分子の付着量が少なくなる現象が起こる。このため、従来の方法では、駆動電極27,28に対する駆動電圧の印加によって隔壁29に安定した剪断変形を生じさせることができない可能性がある。
【0056】
この点でも、インクジェット記録装置で導電性物質を分散させた液体を吐出して電極を形成する本発明の方法では、液体の吐出量を正確に変化させることが可能であるため、隔壁29の各対向面における一部に駆動電極の膜厚が薄くなる傾向にある場合には、それに応じてインク吐出量を部分的に増加させることで隔壁29の各対向面全体における駆動電極27,28の膜厚を均一にでき、駆動電極27,28に対する駆動電圧の印加によって隔壁29に安定した剪断変形を生じさせることができる。
【0057】
なお、本発明に使用する導電性物質を分散した液体としては、金属微粒子を分散させてこれに樹脂を溶剤で溶解したものを添加した系と、酸化物等の銀化合物を分散させてこれに樹脂を溶剤で溶解したものを添加した系の2種類が挙げられる。
【0058】
金属微粒子を分散させてこれに分散安定のために樹脂を溶剤で溶解したものを添加した系では、平均粒子径が1〜100nmの比較的細かい導電性物質を分散させることが重要である。これは、平均粒子径が500nm以上の金属粉を用いると、含有される金属粉の粒径が相対的に大きすぎ、駆動電極の導通性を均一にすることができなくなるためである。即ち、駆動電極は数μm程度の厚さであるため、導電性物質の粒径が500nm以上であると、駆動電極の厚さ方向に金属粒子が2〜3個しか存在しない状態になり、結果として、膜厚分布に不均一を生じやすくなる。また、駆動電極の厚さ方向に金属粒子が数個しか存在しない場合、部分的に金属粒子同士の接触不良を生じると、導通性が大きく損なわれる要因ともなる。
【0059】
平均粒子径が100nm以下の極めて粒子径の小さな金属超微粒子の製造方法の一例として、特開平3−34211号公報には、ガス中蒸発法を用いて調製される10nm以下の金属超微粒子をコロイド状に分散したものとその製造方法が開示されている。また、特開平11−319538号公報等には、還元にアミン化合物を用いる還元析出法を利用して、平均粒子径が数nm〜数10nm程度の金属超微粒子をコロイド状に分散したものとその製造方法が開示されている。この特開平11−319538号公報等に開示される平均粒子径数nm〜数10nm程度の金属超微粒子は、コロイド状態を維持するためにその表面が高分子樹脂などで被覆されている。
【0060】
このような平均粒子径が1〜100nmと非常に細かい導電性を付与する物質を分散させた系で構成される液体を用いると、薄い膜厚とした際にも、用いる金属粒子の粒子径に起因する厚さの不均一性を大幅に低減することが可能となる。
【0061】
また、一般に、平均粒子径数nm〜数10nm程度の金属超微粒子はその融点よりも格段に低い温度(例えば、銀であれば200℃程度)で焼結することが知られている。これは、金属の超微粒子においては、十分にその粒子径を小さくすると、粒子表面に存在するエネルギー状態の高い原子の全体に占める割合いが大きくなり、金属原子の表面拡散が無視し得ないほど大きくなる結果、粒子相互の界面の延伸がなされ焼結が行われるためである。
【0062】
一方、室温近傍においても、金属超微粒子の表面相互が直接接触すると凝集体を形成するという現象を生じる。この凝集体形成は、極めて微細な導電性物質を分散させることによって密度の高い充填状態を形成した結果、達成される厚さの均一性向上の効果を損なう要因となる。また密度の高い充填状態を形成することで全体として所望の導電性を達成できる効果が得られるが、予め部分的に凝集体を形成した構造が混入することにより、密度の高い充填状態の再現性が悪くなくなる。
【0063】
特に、インクジェット記録装置を利用して、導電性物質として金属超微粒子を分散させた液体を吐出する際には、吐出される微細な液滴中に含有される金属超微粒子量の均一性が不可欠である。即ち、液体中に含有される金属超微粒子は、分散溶媒中に均一に分散された状態であることも必須の要件となる。具体的には、インクジェットヘッドに付属する容器中に保持する間において、金属超微粒子の凝集分離や沈降分離等の現象の発生を抑制する必要もある。また、上述した金属超微粒子の凝集体の塊が、インクジェットヘッドの吐出ノズル先端などに付着する事態が生じてはならない。これらの好ましくない状況を防止するために、インク中に樹脂及びその樹脂を溶解する溶剤を添加することが有効であり、樹脂としては電極塗布後の焼成時の温度で硬化する熱硬化性樹脂、又は、焼成時の温度で炭化しない耐熱性樹脂が望ましい。
【0064】
したがって、本発明により形成される電極は、熱硬化性樹脂又は耐熱性樹脂を含む焼結体層により構成され、より具体的には、焼結体層が樹脂により基体上に設膜されるとともに強固に接着された構造を有することになる。
【0065】
導電性物質を分散させた液体の組成としては、金属超微粒子100質量部当たり、有機溶剤を含む樹脂組成物が50〜300質量部の範囲で含まれ、有機溶剤が20〜270質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0066】
導電性物質となる金属超微粒子としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、タンタル、ビスマス、鉛、インジウム、錫、亜鉛、チタン、アルミニウムからなる群より選択される一又は2種類以上の金属があげられる。
【0067】
次に、酸化物等の銀化合物を分散させてこれに樹脂を溶剤で溶解したものを添加した系について述べる。
【0068】
本発明の電極形成方法では、電極塗布後の焼成時に熱分解して金属銀を析出する酸化物等の銀化合物と耐熱性樹脂と溶媒とを混合して導電性物質を分散させた液体を作製し、この液体をインクジェット記録装置により吐出して駆動電極となるパターンを形成し、次いでこのパターンを所定の温度で焼成させることにより銀化合物を分解させて金属銀を析出させ、電極を形成するものである。
【0069】
ここで、焼成を行うのは銀化合物を分解させて表面活性の高い銀表面を形成するためであり、焼成温度の範囲は200℃以上を下限とし、上限としてはPZT圧電素子のキュリー点以下の温度を上限とする。下限を200℃としたのは、酸化銀が分解して銀に変化する温度は200℃以上であるためである。また、上限は前述したように、使用するPZT圧電素子のキュリー点より高温度で焼成すると、PZT圧電素子の分極状態が失われてしまうとともに、溝状のインク室26を挟む一対の隔壁29の各対向面に形成した駆動電極に対する駆動パルスの印加により隔壁を変形させてインク室内のインクを吐出するインクジェットヘッドにおいては、電極形成後にPZT圧電素子を再分極させることは構造上不可能であるからである。
【0070】
また、本発明においては、銀化合物としては、焼成時に熱分解して金属銀となるような酸化銀、炭酸銀、有機酸銀、銀錯体、炭酸銀およびコロイド銀のような銀化合物を使用することができる。また、銀化合物が熱分解する温度は、前述の金属微粒子を焼成する温度に比べて高くなる傾向にあるため、焼成温度がPZT圧電素子のキュリー点を越えないように必要に応じてインク中に銀化合物の分解を促進する還元剤等を添加してもよい。
【0071】
銀化合物の粒径は、平均粒子径が1〜100nmの比較的細かい導電性物質を分散させることが重要である。これは、平均粒子径が500nm以上の金属粉を用いると、含有される金属粉の粒径が相対的に大きすぎ、駆動電極の導通性を均一にすることができなくなるためである。即ち、駆動電極は数μm程度の厚さであるため、導電性物質の粒径が500nm以上であると、駆動電極の厚さ方向に金属粒子が2〜3個しか存在しない状態になり、結果として、膜厚分布に不均一を生じやすくなる。
【0072】
樹脂組成物に用いる有機バインダとして機能する熱硬化性樹脂は、有機の酸無水物またはその誘導体あるいは有機酸を、重合剤として、加熱重合可能な熱硬化製樹脂であることがより好ましい。有機バインダとして機能する耐熱性樹脂は、電極塗布後の焼成温度以上の耐熱性が必要であり、このような条件を満たす耐熱性樹脂としては、アラミッド(芳香族ポリイミド)、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、その他の含窒素縮重合系樹脂、ポリアミドイミド樹脂やポリベンゾビスチアゾール、ポリアリレート(芳香族ポリエステル)などがある。ポリイミドは、線状(縮合型)ポリイミド及び付加重合型ポリイミドのいずれも使用できる。ただし、何れの樹脂も適当な溶媒に溶解するものであることが望ましい。
【0073】
本発明の電極形成方法に使用される有機溶剤は、塗布後の焼成温度において比較的速やかに蒸散でき、その間に熱分解などを起こすことがない程度に熱的な安定性を有することが好ましい。また、その塗布の工程において、液体をインクジェット記録装置を利用して、微小な液滴として吐出して塗布するため、吐出に好適な液粘度範囲に維持することも必要となる。また、ハンドリング性を考慮すると、室温付近では容易に蒸散することのない、比較的高沸点の非極性溶剤又は低極性溶剤、例えば、テルピネオール、ミネラルスピリット、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、メシチレンなどが好適に利用でき、さらには、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタンなども用いることができる。耐熱性樹脂としてポリイミドを用いた場合には、N−メチルピロリドン等のピロリドン誘導体、又は、モノグライム、ジグライム、テトラグライム、トリグライム等のエーテル系の溶媒も使用できる。
【0074】
本発明の方法において、インクジェット記録装置から吐出すべき液滴量は、形成すべき駆動電極の膜厚、及び、ドットの平均径から定まる。即ち、インクジェット記録装置を利用して微小な液滴を吐出する際の液滴量は、利用するインクジェットヘッド自体の性能に依存するため、目的とする液滴量に適合するノズル内径を備えたインクジェットヘッドを選択して用いる。
【0075】
なお、電極を形成するための導電性物質を分散させた液体は、金属微粒子を分散させてこれに樹脂を溶剤で溶解したものを添加した系、又は、酸化物等の銀化合物を分散させてこれに樹脂を溶剤で溶解したものを添加した系のそれぞれを単一の液体(1液)として単一のインクジェット記録装置から吐出する形態をとることができるだけでなく、例えば、金属超微粒子を有機溶剤中に分散した液とその他の樹脂組成物を構成する成分を含む液との2液に分け、この2液を個々に微小な液滴として個別のインクジェット記録装置から吐出し、隔壁の各対向面上で両液を混和して電極を形成することも可能である。
【0076】
この2液混合型の電極形成方法を用いる際には、高い密度で両液滴の接触・重ね合わせが達成されるように、利用するインクジェットヘッドのそれぞれの吐出ノズルの位置合わせ制御を行う。また、両液の液滴量は、混和がなされた状態において、各成分が適正な混合比率となるように調整する。隔壁の各対向面上に2液を塗布した後に加熱することにより、1液型の液体を用いた場合と同様に、熱硬化樹脂成分の熱硬化、及び、金属超微粒子相互の低温焼結・融着により、堅牢な駆動電極が形成される。
【0077】
2液混合型のインクを利用する際には、金属超微粒子を有機溶剤中に分散した液とその他の樹脂組成物を構成する成分を含む液とを個々に吐出するため、それぞれの液の粘度を適正な吐出が達成可能な範囲に選択することが必要となる。このため、それぞれの液体に含有される有機溶剤の量を合計すると、予め混合した1液型の液体における有機溶剤の量と比較してより多くなることもあり得る。この場合には、電極形成中又は電極形成後の加熱工程において、好適な有機溶剤の含有比率となるように有機溶剤の蒸散を行う工程を設けることが好ましい。
【0078】
また、本発明のインクジェットヘッドの製造方法における電極形成用の導電性物質を拡散させた液体の吐出には、圧電素子を利用してインクの吐出を行うピエゾ方式又はシェアモード方式のいずれの方法をも用いることができる。また、必要に応じてその他の方式も用いてもよい。但し、使用するインクジェットヘッドの方式に応じて吐出させる液体の液粘度を調製する必要があり、例えば、有機溶剤の添加量を調整して、最終液粘度を1〜30mPa・sの範囲、好ましくは、2〜15mPa・sの範囲に選択することが望ましい。
【0079】
さらに、本発明のインクジェットヘッドの製造方法は、電極形成に必要な成分を含有した液体を微細なドッド状の塗布が可能なインクジェット記録装置を用いて隔壁の各対向面に吐出するものであるため、隔壁の各対向面上で複数のドットが互いに重なり合うようにして複数の層によって所定の膜厚の駆動電極を形成するようにすることにより、電極の膜厚を自由に設定することができるとともに、部分的に層数を変更することによって膜厚の均一化を容易に実現することができる。
【0080】
【発明の効果】
以上のようにして、この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0081】
(1)インクジェットヘッドにおいて隔壁を変形させるための駆動パルスが印加される電極の形成時に、導電性物質を分散させた液体をインクジェット記録装置から隔壁の対向面に対する吐出角度を調整しつつ吐出することにより、隔壁における所望の領域に電極材料となる導電性物質を正確に塗布することができ、電極を構成する金属を溝部の斜方から蒸着又はスパッタする従来の製造方法のように、隔壁の変形に直接寄与しない領域にも電極が形成されることによる材料コストの高騰や、隣接する隔壁のシャドーイング効果による蒸着面又はスパッタ面の規制によって隔壁の対向面における十分な範囲に電極が形成されないことによるランニングコストの高騰を招くことなく、高精度で安定した高速画像形成を行うことができるインクジェットヘッドを製造することができる。
【0082】
(2)インクジェット記録装置から隔壁の対向面に対して導電性物質を樹脂とともに吐出することにより、インクジェット記録装置から吐出した導電性物質を樹脂を介して隔壁の対向面に堅牢に固着させることができる。
【0083】
(3)インクジェット記録装置からの液体の吐出量を液体の吐出位置に応じて変化させて電極の膜厚を略均一にすることにより、インクジェット記録装置から吐出された液滴の一部が隣接する隔壁の上面に当接して溝部の底面近傍における隔壁の対向面に対する液体の吐出量が不十分になることでこの部分の電極の膜厚が不足する可能性がある場合には、その部分に対する液体の吐出量を増加することによって電極の膜厚を全体について略一定に維持することができる。
【0084】
(4)導電性物質を分散させた液体を、インクジェット記録装置により隔壁の各対向面に塗布した後に乾燥させ、さらに焼成することにより、液体中に分散された導電性物質を、液体の乾燥によって隔壁の各対向面に微粒子として付着させ、さらに焼成によって溶融して微粒子を互いに固着させることができ、隔壁の各対向面に機械的強度が向上した状態で導電性物質による電極を形成することができる。
【0085】
(5)導電性物質を分散させた液体を、インクジェット記録装置により隔壁の各対向面に塗布した後に、基板として使用するPZT圧電素子のキュリー点より低温度で焼成することにより、導電性物質の焼成処理にPZT圧電素子の分極状態が失われることがなく、電極に対する駆動パルスの印加によって隔壁に確実に剪断変形を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の製造方法によって製造されるインクジェットヘッドの要部の構成を示す背面断面図、平面断面図及び側面断面図である。
【図2】上記インクジェットヘッドの製造方法の要部を説明する図である。
【図3】上記インクジェットヘッドの製造方法における電極形成時の状態を説明する斜視図である。
【図4】上記インクジェットヘッドの製造方法における電極形成時の状態を説明する正面図である。
【図5】従来のインクジェットヘッドの製造方法における蒸着による電極形成時の状態を説明する正面図である。
【図6】従来の別のインクジェットヘッドの製造方法による電極形成状態を示す正面図である。
【図7】従来のインクジェットヘッドの構造の例を示す側面断面図である。
【図8】従来のインクジェットヘッドの製造方法の要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
1−インクジェットヘッド
10−導電性樹脂
20−基板
24−ノズル孔
25−ノズルプレート
26−インク室
27,28−電極
29−隔壁
30−カバープレート
31−インク供給部
40−駆動用IC(外部駆動回路)
42−アウターリード
200−チャンネルウエハ
Claims (6)
- 基板上に一定の間隔を設けて複数の溝部を形成し、各溝部を挟んで隣接する複数の隔壁の互いの対向面のそれぞれに、該隔壁を変形させるための駆動パルスが印加される電極を形成するインクジェットヘッドの製造方法において、
前記電極の形成時に、前記隔壁の対向面に対する角度を調整しつつインクジェット記録装置から導電性物質を分散させた液体を前記隔壁の対向面に吐出することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。 - 前記液体は、樹脂が添加されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記電極の形成時に、前記電極の膜厚が略均一になるように、前記インクジェット記録装置からの液体の吐出量を液体の吐出位置に応じて変化させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記電極の形成時に、前記隔壁の各対向面に吐出した前記液体を乾燥及び焼成することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記液体の乾燥及び焼成時における焼成温度を、前記基板を構成するPZT圧電素子のキュリー点より低温度に設定することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 溝部を挟んで隣接する複数の隔壁の互いの対向面のそれぞれに、該隔壁を変形させるための駆動パルスが印加される電極を備えたインクジェットヘッドにおいて、
請求項1乃至5の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法によって製造されたことを特徴とするインクジェットヘッド。
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