JP2004282719A - 電波レンズアンテナ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】反射板と半球状ルーネベルグレンズを組み合わせて構成される電波レンズアンテナ装置の小型化、軽量化、コスト低減等を図る。
【解決手段】反射板1を、所要範囲の方位からの電波を反射させる部位以外の領域が除去されて存在しない形状、好ましくは扇形形状となし、その反射板1上に、半球状ルーネベルグレンズ2を扇の小円弧縁1b側にオフセットされた状態にして取り付けて小型化、コンパクト化を図った。
【選択図】図1

Description

この発明は、衛星通信やアンテナ間での通信に利用する電波レンズアンテナ装置に関する。
電波レンズのひとつとして知られるルーネベルグレンズは、球を基本的とする誘電体製のレンズであり、各部の比誘電率εrが、下式(1)に略従うものになっている。
εr=2−(r/a)2 ……… 式(1)
但し a:球の半径
r:球中心からの距離
このルーネベルグレンズを用いたアンテナ装置は、電波の焦点を半球上の任意の位置に設定してどの方向からの電波も捕捉でき、また、任意方向に電波を送り出すことができる。
かかるルーネベルグレンズアンテナ装置の中に、半球状のレンズを反射板と組み合わせて球状レンズと等価な機能を持たせたものがある。その装置の概要を図11に示す。図中1は反射板、2は半球状ルーネベルグレンズ、4は一次放射器である。
この形式のアンテナ装置は、安定した送受信性能を得るために、レンズ中心から反射板1の外端までの距離(反射板の半径R)をレンズ2の半径aよりも大きくする必要がある。その反射板の半径Rは、電波の入射角をθとするとR=a/cosθの式で求まる。その半径Rは、電波の入射角によってはaの2倍を超えることもあり得る。
ルーネベルグレンズアンテナ装置は、一次放射器をレンズの球面の任意位置に移動させることでどの方位からの電波にも対応できる利点を有しており、従って、従来のこの種装置は、反射板をレンズと同心の円盤とし、これを水平置き(地面と平行)にして上記の利点を生かすことを考えている。
ところが、この構造ではレンズの全周に反射板が張り出すため、装置の大型化、重量増、コスト増、設置スペース増、取扱い性の悪化などの問題が生じる。
従来は、この不具合を無くすことに関して何ら考察がなされていない。
そこで、この発明は、電波レンズアンテナ装置に要求される電気的性能を犠牲にせずに反射板を用いたルーネベルグレンズアンテナ装置の小型化、軽量化、コスト低減などを図ることを課題としている。
上記の課題を解決するため、この発明においては、静止衛星に対して電波の送信、受信もしくは送受信を行う電波レンズアンテナ装置であって、誘電体で形成される半球状ルーネベルグレンズと、そのレンズの球の2分断面に沿って設けるレンズ径よりも大サイズで、静止衛星の方向に対し、ルーネベルグレンズの反対側を除去した非円形形状である反射板と、保持具で保持してレンズの焦点部に設ける一次放射器とを、有することを特徴とする電波レンズアンテナ装置を提供する。
この装置の反射板は、反射板を、レンズ中心と同心のレンズ径よりも径大の大円弧縁と、レンズの外周近傍に位置して大円弧縁に対向する小円弧縁と、大円弧縁と小円弧縁の端々を結ぶ左右の側縁とで画される扇形形状にすると好ましい。その扇形を包含する形状でも反射板のサイズ縮小が図れる。反射板の形状は、上述した扇形形状をベースにして大円弧側の縁部を電波入射角が小さくなる部位ほどレンズ中心から縁端までの距離(R=a/cosθの式で求まるR)が短くなるように切欠いた形状が理想的である。最両端の通信相手からの電波入射角と同一角度で電波の入射方向と反対方向から半球状レンズを反射面に投影し、投影された半楕円の輪郭に沿って両側縁部を除去すればより理想的な形になる。この理想的形状では最両端の通信相手からの電波の入射角が異なる場合、反射板が左右非対称形状となる(これ等をここでは変形扇形と称する)。なお、日本で使用するアンテナ装置については、扇形或いは変形扇形反射板の扇の広がり角が130°あれば現存する静止衛星の全てに対応できる。
発明者等は、反射板を用いたルーネベルグレンズアンテナ装置を静止衛星との間での電波の送受信に利用することを考えた。BS放送等の受信には、パラボラアンテナが用いられているが、これは受信専用であり、しかも特定方位の衛星にしか対応できない。これに対し、ルーネベルグレンズアンテナ装置は、複数の一次放射器を各静止衛星からの電波の焦点部に備えさせることで複数の衛星からの電波を捕捉でき、また、一次放射器の数を増やして時間差なしでの双方向通信(送受信)を行うこともできる。
ところで、我が国(日本)においては、現在10基を越える静止衛星が存在し、それ等はいずれも東経110°〜162°の範囲にある。この場合、円形反射板を用いると一部の限られた領域でのみ電波が反射され、他の領域では電波反射がなされない。この発明は、この点に着目し、電波の反射がなされない非機能領域を除去した。これにより、反射板は非円形となり、そのサイズが縮小される。
なお、電波の送受信方位は、どこに(どの地域のどの地点に)アンテナを設置するかによって変わるが、例えば与那国では東経110°の衛星に対する方位角は真北を0°として209.2°、東経162°の衛星に対する方位角は117.1°であり、その差は92.1°となる。東経110°と162°の静止衛星に対する全国各地での方位角の差は与那国が特に大きく、従って、反射板を左右対称形の扇形や変形扇形にする場合、片側(中心からの開き角が大きい側)の開き角は180−171.1=62.9となり、左右対称形状となすにはその2倍の角度125.8°が必要であるので、扇の開き角を130°程度に設定すれば、同一形状の反射板を全国各地で使用することができる。
反射板のサイズ(扇の大円弧縁部の半径R)は、各静止衛星に対する電波の入射角θがアンテナの使用場所によって変わるので、使用場所ごとの最適値があるが、使用対象地域を全国、通信対象衛星を例えば12基と考えた場合、R≧a×2.19(aはレンズの半径)となり、その式を満足する半径を有していれば同一サイズの反射板を全国で共通して使用することができる。
以上述べたように、この発明の電波レンズアンテナ装置は、反射板の電波反射に寄与しない部位を除去して所定範囲の方位からの電波に対応させた部位のみを残すので、反射板を最小限の大きさにして小型化、軽量化、コスト低減を図ることができ、取扱い性の向上、設置スペースの削減にもつながる。
また、アンテナに要求される電気性能は十分に確保でき、BS、CS放送用のパラボラアンテナよりも小型のもので複数の静止衛星や相手アンテナからの電波を受信したり、送受信を行ったりすることが可能になる。
以下、この発明の電波レンズアンテナ装置の実施形態を図1乃至図3に基づいて説明する。
図に示すように、このアンテナ装置は、反射板1上に半球状のルーネベルグレンズ2を固定し、さらに、一次放射器4を反射板1上に設けた保持具3で保持してレンズ2の球面近傍に設けて成る。
反射板1は、電波反射性の良い金属板や、プラスチック板と電波反射用の金属シートを貼り合わせた複合板などで形成されている。この反射板1は、レンズ2の半径よりも径大の大円弧縁1a、レンズ2の外周近傍に位置して大円弧縁に対向する小円弧縁1b、両円弧縁の端々を結ぶ左右の直線縁1c、1dとで画される扇形形状をなしているが、この形に限定されるものではない。要は通信相手からの電波を反射でき、その電波反射に寄与しない非機能領域を極力除去した形になっていればよい。
ルーネベルグレンズ2は、誘電体で形成される中心の半球体上に比誘電率と径を徐々に変化させた誘電体製の半球殻を全体が多層構造(例えば8層)となるように積層一体化して作られており、各部の比誘電率が先の(1)式で求まる値に近似したものになっている。
この半球状ルーネベルグレンズ2の球の2分断面(円形平面)を接着するなどして反射板1の反射面上に固定している。レンズ2は、その中心が反射板1の大円弧縁1aのアール中心上にあり、従って、小円弧縁1b側にオフセット配置されて反射板に取り付けられた状態になっている。
保持具3は、一次放射器4の位置調整が行えるものが好ましい。例示の保持具3は、レンズ2を跨ぐアーチ状の支持アーム3aを設けてその支持アーム3aに一次放射器4をアーム長手方向に位置調整が行えるように取り付けている。支持アーム3aは両端に反射板の反射面と平行な支軸3b(この軸はレンズ中心を通る線上にある)を有し、その支軸を支点にした支持アームの回転と、アーム上でのスライドを組み合わせて一次放射器4を電波捕捉効率の高い位置(焦点近傍)に位置決めするようにしている。この保持具3は、勿論、図示の形態のものに限定されるものではない。
一次放射器4の設置数も特に限定されない。その数を例えばひとつとして1基の静止衛星からの電波を受信してもよいし、その数を複数にし、マルチビームアンテナにして複数ある静止衛星からの電波を受信してもよい。また、一次放射器の数を増やして送受信を行うこともできる。
このように構成した電波レンズアンテナ装置は、従来円形にしていた反射板1の図1鎖線部を除去したことにより小型化が実現されるが、複数の静止衛星に対応する場合、反射板が小さ過ぎると送受信性能が著しく低下させる。そこで、反射板の最適形状とサイズについて検討した。その形状、サイズは、使用する衛星、アンテナの使用場所、使用方法によって若干異なるので、対象地域、対象衛星数に合わせた設計例を表1に示す。同表中のaは図1に示すレンズの半径、Rは反射板の機能部半径を表す。扇の開き角ψは、設計例1、2については反射板を体裁を考えて左右対称形状にした場合の開き角、設計例3〜11は反射板を左右非対称形とした場合の開き角を示している。
日本の現存静止衛星を先ず記す。
・BSAT−2a 東経110°
・JCSAT−110 東経110°
・スーパーバードD 東経110°
・JCSAT−4A 東経124°
・JCSAT−3 東経128°
・N−STARa 東経132°
・S−STARb 東経136°
・スーパーバードC 東経144°
・JCSAT−1B 東経150°
・JCSAT−2 東経154°
・スーパーバードA 東経158°
・スーパーバードB2 東経162°
Figure 2004282719
なお、反射板1の実際の半径Rは、エッジでの電波の散乱を防止するために計算式R=a/cosθで求まる値よりも一波長程度長くしておくのが望ましい。小円弧部の半径Lもレンズ2の半径aより一波長程度長くしておくのが望ましい。
反射板の形状は、コンパクト性を損なわなければ扇形で無くてもよく、また半径R、Lは、望ましいとした値よりも長くてよく、扇の開き角ψも表1の値より大きくても差し支えない。
図4は、反射板1を全国対応型となす場合の理想的形状の決定法を解説したものである。この図において今、A〜Eの各方位から電波が到来すると考える。ここではA、Eからの電波の入射角θ1 は等しく、またB、Dからの電波の入射角θ2 も等しいと仮定し、さらにθ1 >θ2 >θ3 (θ3 はC方位からの入射角)の関係が成立すると仮定している。
この条件でA、Eと反対方向からθ1 の角度でレンズ2に例えば光を当てると、2R1 を長軸、2aを短軸とする楕円の半分が反射面上に投影される。また、B、Dと反対方向からθ2 の角度でレンズ2に光を当てると、2R2 を長軸、2aを短軸とする楕円の半分が反射面上に投影され、さらにCと反対方向からのθ3 の角度での投光では2R3 を長軸、2aを短軸とする楕円の半分が投影される。そこで各楕円を包絡線5で結ぶ。こうして描かれる実線の変形扇形状(素子保持具の取付け部等は別途必要。また、レンズの比誘電率が既述の式(1)からずれていれば、ずれに応じた形状補正が必要になる場合がある。)が最良の形になる。なお、アンテナの設置点によっては、包絡線5が凹形に弯曲したり、扇の形状が左右非対称となったりすることもある。包絡線5が凹形に弯曲する場合には包絡線に代えて両端の楕円間を直線で結んでもよく、この場合、包絡線は直線縁の内側にあるので、電波の反射には支障が出ない。
図5は、上記の思想に基づいて設計された全国対応型の左右対称形状の反射板の具体例である。図中、一点鎖線は日本の最北東点で、また、点線は最南西点で各々現存する静止衛星の総てに対応させて決定した左右対称形の反射板形状である。その2つの図形を重ねて両図形を包含する実線形状の反射板1にすれば、これを共通反射板として日本全国どこででも使用することができる。最北東点での反射板形状は、図6の線Cを基準にした右半分の図形を左右対称にしたもの、最南西点での反射板形状は、図10の線Cを基準にした左半分の図形を左右対称にしたものとほぼ一致する。
なお、地域対応型反射板の理想形状は捕捉する静止衛星の数や位置、アンテナの使用場所によって変わる。その例を図6〜図10に示す。
図6のように特定地域毎に求めた図形をいくつか重ね、図5と同じ考えに基いて重ねた図形が全て包含される実線形状にすれば、例えば北海道対応型の反射板ができる(他の地方も考え方は同じ)。また、例えば、図6の北海道対応型の反射板形状と図7の東北対応型の反射板形状を重ねて各地域の図形が包含される形状にすれば北海道と東北の共用反射板が得られる。地域対応型、複数地域対応型の反射板も、線Cを基準にして大きい側の半分の図形を反転させ、小さい側の図形と置きかえることで体裁の良い左右対称形状の反射板となすことができる。他の地域も形状決定の考え方は全く同じであり、このようにして無駄な部分を省き、コンパクト化を図る。
この発明のアンテナ装置の実施形態を示す平面図 同上のアンテナ装置の側面図 同上のアンテナ装置の斜視図 反射板の形状決定法の解説図 全国対応型反射板の最良の形状を示す図 地域対応型反射板を示す図 地域対応型反射板を示す図 地域対応型反射板を示す図 地域対応型反射板を示す図 地域対応型反射板を示す図 (a)円形反射板を有するルーネベルグアンテナ装置の側面図、(b)同じく平面図
符号の説明
1 反射板
1a 大円弧縁部
1b 小円弧縁部
1c、1d 直線縁
2 半球状ルーネベルグレンズ
3 保持具
4 一次放射器
R 反射板の大円弧縁部の半径
a 球の半径
L 反射板の小円弧縁部の半径
ψ 扇の開き角

Claims (5)

  1. 静止衛星に対して電波の送信、受信もしくは送受信を行う電波レンズアンテナ装置であって、誘電体で形成される半球状ルーネベルグレンズと、そのレンズの球の2分断面に沿って設けるレンズ径よりも大サイズで、静止衛星の方向に対し、ルーネベルグレンズの反対側を除去した非円形形状である反射板と、保持具で保持してレンズの焦点部に設ける一次放射器とを、有することを特徴とする電波レンズアンテナ装置。
  2. 反射板を、レンズ中心と同心のレンズ径よりも径大の大円弧縁と、レンズの外周近傍に位置して大円弧縁に対向する小円弧縁と、大円弧縁と小円弧縁の端々を結ぶ左右の側縁とで画される扇形形状又はその扇形を包含する形状にした請求項1記載の電波レンズアンテナ装置。
  3. 反射板を、請求項2記載の扇形形状をベースにして大円弧側の縁部を電波入射角が小さくなる部位ほどレンズ中心から縁端までの距離が短くなるように切欠いた形状にした請求項1記載の電波レンズアンテナ装置。
  4. 反射板を、左右非対称形にした請求項2又は3に記載の電波レンズアンテナ装置。
  5. 反射板を左右対称形状にし、かつその反射板の扇の広がり角を130°以下にした請求項2又は3に記載の電波レンズアンテナ装置。
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