JP2004281296A - 有機エレクトロルミネッセンス素子及び表示素子及び照明装置 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ということもある)、表示装置および照明装置に関し、詳しくは発光輝度、発光効率を有するとともに、とくに耐久性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子、及びそれを有する表示装置もしくは照明装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子が挙げられる。無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。
【0003】
一方、有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光する化合物を含有する発光層を、陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・リン光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、さらに、自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
【0004】
今後の実用化に向けた有機エレクトロルミネッセンス素子の開発としては、さらに低消費電力で効率よく高輝度に発光する有機エレクトロルミネッセンス素子が望まれているわけであり、例えば、スチルベン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体又はトリススチリルアリーレン誘導体に、微量の蛍光体をドープし、発光輝度の向上、素子の長寿命化を達成する技術(例えば、特許文献1参照。)、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これに微量の蛍光体をドープした有機発光層を有する素子(例えば、特許文献2参照。)、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これにキナクリドン系色素をドープした有機発光層を有する素子(例えば、特許文献3参照。)等が知られている。
【0005】
上記文献に開示されている技術では、励起一重項からの発光を用いる場合、一重項励起子と三重項励起子の生成比が1:3であるため発光性励起種の生成確率が25%であることと、光の取り出し効率が約20%であるため、外部取り出し量子効率(ηext)の限界は5%とされている。
【0006】
ところが、プリンストン大より、励起三重項からのリン光発光を用いる有機エレクトロルミネッセンス素子の報告(例えば、非特許文献1参照。)がされて以来、室温でリン光を示す材料の研究が活発になってきている(例えば、非特許文献2及び特許文献4参照。)。
【0007】
励起三重項を使用すると、内部量子効率の上限が100%となるため、励起一重項の場合に比べて原理的に発光効率が4倍となり、冷陰極管とほぼ同等の性能が得られ照明用にも応用可能であり注目されている。
【0008】
例えば、多くの化合物がイリジウム錯体系など重金属錯体を中心に合成検討されている(例えば、非特許文献3参照。)。
【0009】
又、ドーパントとして、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウムを用いた検討がされている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0010】
その他、ドーパントとしてL2Ir(acac)例えば(ppy)2Ir(acac)(例えば、非特許文献4参照。)を、又、ドーパントとして、トリス(2−(p−トリル)ピリジン)イリジウム(Ir(ptpy)3),トリス(ベンゾ[h]キノリン)イリジウム(Ir(bzq)3),Ir(bzq)2ClP(Bu)3等を用いた検討(例えば、非特許文献5参照。)が行われている。
【0011】
又、高い発光効率を得るために、ホール輸送性の化合物をリン光性化合物のホストとして用いている(例えば、非特許文献6参照。)。
【0012】
また、各種電子輸送性材料をリン光性化合物のホストとして、これらに新規なイリジウム錯体をドープして用いている(例えば、非特許文献4参照)。さらに、ホールブロック層の導入により高い発光効率を得ている(例えば、非特許文献5参照。)。
【0013】
しかし、緑色発光については理論限界である20%近くの外部取り出し効率が達成されているものの、その他の発光色についてはまだ十分な効率が得られておらず改良が必要であり、また、今後の実用化に向けた有機エレクトロルミネッセンス素子では、更に、低消費電力で効率よく高輝度に発光する有機エレクトロルミネッセンス素子の開発が望まれている。
【0014】
また、同時に強く待望されているのは、ディスプレイ用途や照明用途の装置として実用上さしつかえのない素子耐久性すなわち発光寿命を有する有機エレクトロルミネッセンス素子である。この点に関してはこれまでにも様々な方向から検討が行われており、たとえば特許文献5、6、7には素子の封止という面からのアプローチが、特許文献8には適切なエネルギー準位を有するドーパントの添加によって耐久性を改良するアプローチが、特許文献9には素子を構成する基板材料と素子および封止剤によって形成される気密空間内に吸湿剤を封入するという方法がそれぞれ開示されているし、云うまでもなく素子を構成する電荷輸送性材料や発光層に用いられる材料それ自体について、より耐久性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を構成するべく検討が重ねられており、それらについては特許文献10、11、12、13など非常に多くの開示がある。
【0015】
さらにこれらの有機材料に関しては、その材料が構成する素子中の有機化合物層が含有する不純物について、構成された有機エレクトロルミネッセンス素子の耐久性への影響が検討されている。例えば特許文献14には、素子を構成する有機化合物層に含有される不純物の量について、特許文献15には有機エレクトロルミネッセンス材料を合成する際のクロスカップリング反応に由来する不純物の量について、特許文献16にはハロゲン原子を含む不純物について、それらを含有することが素子の耐久性に影響を及ぼしていることが示されている。
【0016】
これらの種々のアプローチは、相互に相殺しないかぎりにおいて併用しうるものである。したがってさらに有機エレクトロルミネッセンス素子の耐久性を高めるための技術的アプローチは引き続き求められ続けるものであり、耐久性を改良するための新規な技術はなお待望されるものである。
【0017】
【特許文献1】
特許第3093796号明細書
【0018】
【特許文献2】
特開昭63−264692号公報
【0019】
【特許文献3】
特開平3−255190号公報
【0020】
【特許文献4】
米国特許第6097147号
【0021】
【特許文献5】
特開2002−313559号公報
【0022】
【特許文献6】
特開平08−236271号公報
【0023】
【特許文献7】
特開2002−367771号公報
【0024】
【特許文献8】
特開平07−065958号公報
【0025】
【特許文献9】
特開2002−198170号公報
【0026】
【特許文献10】
特開2002−363227号公報
【0027】
【特許文献11】
特開2002−352961号公報
【0028】
【特許文献12】
特開2002−356462号公報
【0029】
【特許文献13】
特開2002−363550号公報
【0030】
【特許文献14】
特開2002−373785号公報
【0031】
【特許文献15】
特開2002−373786号公報
【0032】
【特許文献16】
国際特許WO 00/41443号公報
【0033】
【非特許文献1】
M.A.Baldo et al.,nature、395巻、151−154ページ(1998年)
【0034】
【非特許文献2】
M.A.Baldo et al.,nature、403巻、17号、750−753ページ(2000年)
【0035】
【非特許文献3】
S.Lamansky et al.,J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304ページ(2001年)
【0036】
【非特許文献4】
M.E.Tompson et al.,The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL’00、浜松)
【0037】
【非特許文献5】
Moon−Jae Youn.Og,Tetsuo Tsutsuiet al.,The 10th InternationalWorkshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL’00、浜松)
【0038】
【非特許文献6】
Ikai et al.,The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL’00、浜松)
【0039】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、高い発光輝度および優れた量子効率と同時に、とくに高い耐久性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子、およびそれを備えた表示装置もしくは照明装置を提供することである。
【0040】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は下記構成により達成される。
【0041】
(1) 前記一般式1で表される化合物を含有する層を少なくとも1層以上有し、該層は前記一般式2で表される化合物の含有率が0.5質量%未満であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(前記一般式1、一般式2において、Aは連結基を、R1およびR2は独立に1価の置換基を表し、mは1〜6の整数を表す。X1は=N−もしくは=C(R3)−を表し、このときR3は水素原子または1価の置換基を表し、X2は=N−もしくは=C(R4)−を表し、このときR4は水素原子または1価の置換基を表す。)
(2) 前記一般式2で表される化合物の含有率が0.1質量%未満であることを特徴とする(1)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0042】
(3) 前記一般式2のR1とR2、R3とR4がそれぞれ互いに結合して芳香環を形成していることを特徴とする(1)又は(2)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0043】
(4) 前記一般式2で表される化合物が、置換されていてもよいカルバゾール、ピリドインドール、あるいはジピリドピロールのいずれかであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0044】
(5) 前記一般式2で表される化合物の分子量が250未満であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0045】
(6) 電界を印加された際の発光がリン光発光を含むことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0046】
(7) 白色に発光することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0047】
(8) (1)〜(7)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた表示素子。
【0048】
(9) (1)〜(7)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた照明装置。
【0049】
(10) (9)に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子と、を備えた表示素子。
【0050】
本発明者らは検討を重ねた結果、ある特定の構造単位を有する有機エレクトロルミネッセンス材料を含有する層に該構造単位に由来する不純物が混入すると、作製された素子の耐久性に非常な影響を及ぼすことを見出すに至り、本発明を完成させた。
【0051】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陰極及び陽極の間に上記一般式1で表される化合物を含有する層を少なくとも1層有している。さらに、上記一般式1で表される化合物を含有する層は、上記一般式2で表される化合物の含有率が0.5質量%未満となっている。
【0052】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、一般式1の化合物を含有してなる層を有し、なおかつ該層に含まれる一般式2の化合物の含有率を少なくとも0.5質量%未満、に抑制することによって、高い発光輝度と優れた量子効率を実現すると同時に、高い耐久性を実現する。
【0053】
一般式2の化合物を含有することで素子の耐久性が劣化する、その機構については必ずしもつまびらかではないが、一般式2の化合物が一般式1の化合物よりも電気的・熱的安定性に乏しく、したがって電界発光時において比較的短い時間で分解してしまうと考えられる。これにより生じた分解生成物が有機エレクトロルミネッセンス素子中でトラップ準位を形成することにより、あるいは一般式1の化合物と反応して該化合物の分解を促進することにより、比較的短時間で素子を劣化させるのではないかと推測できる。この影響は一般式2の化合物の分子量が小さい場合に強く現れ、一般式2の化合物の分子量が250より小さい場合においてはとくに顕著である。
【0054】
本発明において、上記一般式1で表される化合物を含有する層は上記一般式2で表される化合物の含有率が0.3質量%未満となることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量%未満であり、これにより、一層高い発光輝度と優れた量子効率と同時に、非常に高い耐久性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子とすることができる。
【0055】
上記一般式1の有機エレクトロルミネッセンス材料は、連結基Aにm個の含窒素芳香族環を有する構造部位が連結した構造をもつ化合物である。ここでmは1〜6の整数を表し、連結基Aにm個の水素原子を結合させた化合物、すなわちAの由来となる化合物としてはメタン、エテン、アセチレン、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、テトラセンなどの炭化水素化合物の他、ボラン、アンモニア、シラン、硫化水素、水などヘテロ原子が水素と結合した化合物や、フラン、チオフェン、セレノフェン、ピロール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、トリアジン、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールなどのヘテロ芳香族化合物、さらにはベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、カルバゾール、ベンズチアゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾロイミダゾール、ピラゾロトリアゾール、キノリン、キノリン、アクリジン、ピリドインドール、ジピリドピロール、プリン、シノリン、フェノキサジン、フェノチアジンなどの縮合多環式芳香族化合物を挙げることができる。これらの化合物から誘導される連結基Aは置換基を有していてもよく、その例としてはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、アニリノ基、エチルトリルアミノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、フッ素原子等が挙げられる。これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。なお、Aに結合する2〜6個の含窒素芳香族環は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0056】
以下に連結基Aの例を示すが、本発明に係る一般式1で表される化合物の構造が、これらの例によって限定されるものではない。
【0057】
【化2】
【0058】
【化3】
【0059】
【化4】
【0060】
【化5】
【0061】
【化6】
【0062】
上記一般式1のR1およびR2は独立に1価の置換基を表し、X1は=N−もしくは=C(R3)−を表し、X2は=N−もしくは=C(R4)−を表す。ここにおいてR1、R2、R3、R4の例としては、前述した連結基Aを修飾する置換基の例として挙げた置換基と同じ置換基が挙げられ、さらに、R3およびR4は水素原子であってもよい。また、R1とR3、R2とR4がそれぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0063】
以下に、一般式1の連結基Aに結合する含窒素芳香族化合物残基の例を示すが、一般式1で表される化合物の構造がこれらの例によって限定されるものではない。
【0064】
【化7】
【0065】
【化8】
【0066】
一般式1で表される化合物は例えばTetrahedron Lett.,39(1998),2367−2370ページ、日本国特許3161360号、Angew.Chem.Int.Ed.,37(1998),2046−2067ページ、Tetrahedron Lett.,41(2000),481−484ページ、Synth.Commun.,11(7) (1981),513−519ページ、およびChem.Rev.,2002,102,1359−51469ページ等に記載の合成反応等、当業に従事する技術者には周知の合成方法によって製造することができる。
【0067】
本発明に用いられる一般式1で表される化合物は、後述する有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送層、電子輸送層、発光層のいずれに用いることも可能であるが、電子輸送層ないし発光層に用いることが好ましい。また、発光層において蛍光性もしくはリン光性の化合物へエネルギーを移動させて自身は発光することのない、当業に従事する技術者に「ホスト化合物」として知られる材料としても、好ましく用いることができる。
【0068】
上記一般式2で表される化合物におけるR1、R2、X1、X2は一般式1のR1、R2、X1、X2で説明したものと同様である。
【0069】
一般式2で表される化合物の例としてはピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピラゾロピロール、ピリドインドール、ジピリドピロール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピリドイミダゾール、チエノイミダゾール、ピロロイミダゾール、ピラゾロイミダゾール、ピロロトリアゾール、ピラゾロトリアゾールなどが挙げられ、好ましくはカルバゾール、ピリドインドール、ジピリドピロール、ベンズイミダゾール、ピリドイミダゾールであり、とくに好ましくはカルバゾール、ピリドインドール、ジピリドインドールである。これらの化合物はさらに置換されていてもよく、置換基の例としては前述したR1およびR2の例として挙げたのと同様の置換基を挙げることができる。好ましい置換基としてはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、フッ素原子であり、とくに好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フッ素原子である。
【0070】
また、一般式2で表される化合物の分子量は600〜2000であることが好ましい。分子量が600〜2000であるとTg(ガラス転移温度)が上昇し、熱安定性が向上し、素子寿命が改善される。より好ましい分子量は800〜2000である。
【0071】
《有機EL素子の構成層》
本発明の有機EL素子の構成層について説明する。
【0072】
本発明において、陰極、陽極および有機化合物層の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
《陽極》
陽極について説明する。
【0073】
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0074】
《陰極》
次に、陰極について説明する。
【0075】
陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1000nm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0076】
《注入層》:電子注入層、正孔注入層
次に、本発明の有機EL素子の層として用いられる、注入層について説明する。
【0077】
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記のごとく陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び、陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0078】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0079】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0080】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0081】
上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜100nmの範囲が好ましい。
【0082】
《阻止層》:正孔阻止層、電子阻止層
阻止層は、上記のごとく、有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば特開平11−204258号、同11−204359号、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0083】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層であり、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0084】
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層であり、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0085】
《発光層》
次に発光層について説明する。
【0086】
発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子および正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であっても良い。
【0087】
発光層に使用される材料(以下、発光材料という)は、蛍光またはリン光を発する有機化合物または錯体であることが好ましく、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。特に発光材料としてリン光発光するリン光性化合物を用いるのが好ましく、これにより、より一層効率よく高輝度に発光することができる。
【0088】
このような発光材料は主として有機化合物であり、所望の色調により、例えば、Macromol.Synth.,125巻,17〜25頁に記載の化合物等を用いることができる。
【0089】
発光材料は、発光性能の他に、正孔輸送機能や電子輸送機能を併せ持っていても良く、正孔輸送材料や電子輸送材料の殆どが、発光材料としても使用できる。
【0090】
発光材料は、p−ポリフェニレンビニレンやポリフルオレンのような高分子材料でも良く、さらに前記発光材料を高分子鎖に導入した、または前記発光材料を高分子の主鎖とした高分子材料を使用しても良い。
【0091】
この発光層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。発光層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この発光層は、これらの発光材料一種又は二種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。本発明の有機EL素子の好ましい態様は、発光層が二種以上の材料からなり、その内の一種が本発明の化合物であるときである。
【0092】
また、この発光層は、特開昭57−51781号公報に記載されているように、樹脂などの結着材と共に上記発光材料を溶剤に溶かして溶液としたのち、これをスピンコート法などにより薄膜化して形成することができる。このようにして形成された発光層の膜厚については、特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm〜5μmの範囲である。
【0093】
本発明においては、発光層にその主たる構成成分である上記の有機化合物に加えて、それらの発光極大波長よりも長波な蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有させてもよい。このように主たる構成成分に加えて発光層になんらかの化合物を含有させた場合、主たる構成成分はホスト化合物あるいは単にホスト、加えられた化合物はドーパントと呼ばれるが、このような形態の場合、発光層の主たる構成成分である先述の有機化合物がホスト化合物であり、加えられた蛍光性化合物がドーパントであり、この場合においては蛍光性ドーパントである。蛍光性ドーパントはホスト化合物に励起されて蛍光を発し、その結果としてこのように構成された有機EL素子からは、蛍光性化合物からの発光が取出されることになる。このような用途に用いることのできる蛍光性化合物としてはクマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。用いる蛍光性化合物としては溶液状態における蛍光量子収率の高いものが好ましく、蛍光量子収率10%以上、特に30%以上が好ましい。蛍光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの362頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定することができる。
【0094】
また、上記の形態において蛍光性ドーパントを加えたのと同様に、発光層を構成する化合物の発光極大波長よりも長波な発光極大波長を有するリン光性化合物をドーパントとして加えてもよい。リン光性化合物(ドーパント)を発光層に加えた場合、ホスト化合物からリン光性ドーパントへのエネルギー移動によって、有機EL素子からはリン光発光が取出される。既に述べたとおり、有機EL素子としてはリン光発光を利用する形態が発光効率の観点から好ましく、本発明においても同様に、少なくとも発光成分の一部がリン光発光によるものである有機EL素子が好ましい。
【0095】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては先に述べた発光効率の観点から、本発明に係る一般式1で表される化合物をホスト化合物として、リン光性化合物とともに発光層を構成したリン光発光性有機エレクトロルミネッセンス素子であることがとくに好ましい。
【0096】
本発明におけるリン光性化合物とは励起三重項からの発光が観測される化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.001以上の化合物である。リン光量子収率は好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.1以上である。
【0097】
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられるリン光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記リン光量子収率が達成されれば良い。
【0098】
本発明で用いられるリン光性化合物としては、好ましくは元素の周期律表で8族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0099】
以下に、本発明で用いられるリン光性化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
【0100】
【化9】
【0101】
【化10】
【0102】
【化11】
【0103】
さらに、ホスト化合物とリン光性化合物の他に、リン光性化合物からの発光の極大波長よりも長波な領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有させてもよい。この場合、ホスト化合物とリン光性ドーパントからのエネルギー移動により、有機EL素子としての電界発光は蛍光性化合物からの発光が得られる。
【0104】
また、蛍光性もしくはリン光性ドーパントを複数種類用いてこれらからの発光を同時に取り出すことにより、複数の発光極大波長をもつ発光素子を構成することもできる。例えばホスト化合物を兼ねる発光性化合物としてポリビニルカルバゾールを、蛍光性ドーパントとしてクマリン6とナイルレッドを用いることにより、ポリビニルカルバゾールからの青色発光と、クマリン6からの緑色発光、ナイルレッドからの赤色発光を同時に取り出して、白色に発光する素子を構成することができる。リン光発光型の有機EL素子においても同様に、複数種類のリン光性ドーパントを用いることによって発光の混色を行うことができる。薄型であること、および樹脂基板上に形成することが可能であるという有機EL素子の特長を活かして、これをパネル状その他の形状の照明装置に利用する場合を考慮すると、白色発光素子を構成することは実用的に有用である。現在のところ単一の発光材料で白色発光を示すものがないため、複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得ている。複数の発光色の組み合わせとしては、青色、緑色、青色の3原色の3つの発光極大波長を含有させたものでも良いし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有したものでも良い。これらの混色した発光は先に述べたとおり、ドーパントを用いることによって行うことがで、ドーパントの種類と量を変化させることによって、発光色の色調を制御することができる。
【0105】
《正孔輸送層》
次に正孔輸送層について説明する。
【0106】
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
【0107】
正孔輸送材料としては、特に制限はなく、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0108】
正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0109】
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0110】
芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0111】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0112】
また、p型−Si,p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
【0113】
また、本発明においては正孔輸送層の正孔輸送材料は415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、正孔輸送材料は、正孔輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
【0114】
この正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この正孔輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0115】
《電子輸送層》
次に電子輸送層について説明する。
【0116】
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
【0117】
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、下記の材料が知られている。
【0118】
さらに、電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0119】
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0120】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0121】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0122】
電子輸送層に用いられる好ましい化合物は、415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、電子輸送層に用いられる化合物は、電子輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
【0123】
《基体(基板、基材、支持体等ともいう)》
本発明の有機EL素子は基体上に形成されているのが好ましい。
【0124】
本発明の有機EL素子に用いることができる基体としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また、透明のものであれば特に制限はないが、好ましく用いられる基板としては例えばガラス、石英、光透過性樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい基体は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
【0125】
樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
【0126】
樹脂フィルムの表面には、無機物もしくは有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよい。
【0127】
本発明の有機EL素子の発光の室温における外部取り出し効率は1%以上であることが好ましく、より好ましくは2%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
【0128】
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用してもよい。
《有機EL素子の作製方法》
本発明の有機EL素子の作製方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
【0129】
まず適当な基体上に、所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、正孔阻止層の有機化合物薄膜を形成させる。
【0130】
この有機化合物薄膜の薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法またはスピンコート法が特に好ましい。さらに層ごとに異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6Pa〜10−2Pa、蒸着速度0.01nm〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚0.1nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0131】
これらの層の形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下好ましくは50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施してもかまわない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
【0132】
本発明においては、発光層形成時のみシャドーマスクを設け、他層は共通であるのでシャドーマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で膜を形成できる。
【0133】
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、印刷法である。蒸着法を用いる場合においてはシャドーマスクを用いたパターニングが好ましい。
【0134】
また作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。このようにして得られた有機EL素子に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0135】
本発明の有機EL素子は、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示デバイス、ディスプレー等の表示装置に用いることができる。表示デバイス、ディスプレーとしてはテレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリックス(パッシブマトリックス)方式でもアクティブマトリックス方式でもどちらでもよい。
【0136】
異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【0137】
また、本発明の有機EL素子は、発光光源としては家庭用照明、車内照明、時計や表示手段として液晶素子を用いている表示装置のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等の照明装置に用いることができるがこれに限定するものではない。
【0138】
さらに、本発明に係る有機EL素子に共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。
【0139】
このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより、上記用途に使用してもよい。
【0140】
《表示装置》
本発明の有機EL素子から構成される表示装置の一例を図面に基づいて以下に説明する。
【0141】
図1は、有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
【0142】
ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
【0143】
制御部Bは、表示部Aと電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
【0144】
図2は、表示部Aの模式図である。
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
【0145】
図においては、画素3の発光した光が、白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
【0146】
配線部の走査線5及び複数のデータ線6は、それぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。
【0147】
画素3は、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を、適宜、同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0148】
次に、画素の発光プロセスを説明する。
図3は、画素の模式図である。
【0149】
画素は、有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサ13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色、青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
【0150】
図3において、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスタ11のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスタ11のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサ13と駆動トランジスタ12のゲートに伝達される。
【0151】
画像データ信号の伝達により、コンデンサ13が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ12の駆動がオンする。駆動トランジスタ12は、ドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子10の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から有機EL素子10に電流が供給される。
【0152】
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフしてもコンデンサ13は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ12の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ12が駆動して有機EL素子10が発光する。
【0153】
すなわち、有機EL素子10の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
【0154】
ここで、有機EL素子10の発光は、複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。
【0155】
また、コンデンサ13の電位の保持は、次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
【0156】
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
【0157】
図4は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図4において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
【0158】
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。
【0159】
パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子が無く、製造コストの低減が計れる。
【0160】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0161】
実施例1
《化合物1−1(A、B、C、D)〜1−8(A、B、C、D)の調製》
〈化合物1−1の合成及びサンプル1−1(A、B、C、D)の調製〉
窒素雰囲気下、酢酸パラジウム45mgにトリ(tert−ブチル)ホスフィン0.2mlを加えて、50℃で30分間撹拌した。これにキシレン60ml、カルバゾール1.2g、4,4’−ジブロモビフェニル1.0g、ナトリウム−tert−ブトキシド0.9gを加えて、還流温度にて8時間撹拌を行った。反応混合物を放冷後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後に再結晶して、前述した一般式1で表される化合物である4,4’−ジカルバゾリルビフェニル(化合物1−1)を0.67g得た(収率42%)。得られた化合物1−1の構造はNMRスペクトルおよび質量分析スペクトルにより同定した。
【0162】
【化12】
【0163】
なお、得られた化合物1−1を昇華精製して得たサンプルおよびカルバゾールの、高速液体クロマトグラフィー分析および液体クロマトグラフィー質量分析の結果から、得られたサンプルには原料であるカルバゾールが0.54質量%含まれていることが判明した。これをサンプル1−1Aとする。
【0164】
さらに、同様にして合成を行ったがシリカゲルカラムクロマトグラフィーを繰り返して精製を行った後に再結晶と昇華精製を行い得られたサンプル1−1B、サンプル1−1Cおよびサンプル1−1Dを調製し、これらについてもサンプル1−1Aと同様に分析を行い、サンプル1−1Bには0.38質量%、サンプル1−1Cには0.24質量%、サンプル1−1Dには0.06質量%の原料であるカルバゾール(一般式2で表される化合物)が含まれていることが判明した。すなわち、サンプル1−1A、1−1B、1−1C、1−1Dは、精製により化合物1−1に含有される一般式2で表される化合物の含有率が異なるものであり、一般式2で表される化合物の含有率が1−1A>1−1B>1−1C>1−1Dとなるようにしたものである(一般式2で表される含有率が多い順にA、B、C、D)とする。
【0165】
〈化合物1−2の合成及びサンプル1−2(A、B、C、D)の調製〉
窒素雰囲気下、酢酸パラジウム45mgにトリ(tert−ブチル)ホスフィン0.2mlを加えて、50℃で30分間撹拌した。これにキシレン60ml、カルバゾール0.8g、1,3,5−トリヨードベンゼン1.0g、炭酸ルビジウム2.4gを加えて、還流温度にて8時間撹拌を行った。反応混合物を放冷後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後に再結晶して、一般式1で表される化合物である1,3,5−トリカルバゾリルベンゼン(化合物1−2)を430mg得た(収率34%)。
【0166】
【化13】
【0167】
得られた化合物1−2の構造はNMRスペクトルおよび質量分析スペクトルにより同定した。
【0168】
さらに、得られた化合物1−2を上述した精製方法と同様の方法で一般式2で表される化合物の含有率が異なるサンプル(1−2A、1−2B、1−2C、1−2D)を調製した。
【0169】
〈化合物1−3〜1−8の合成及びサンプル1−3〜1−8(A、B、C、D)の調製〉
公知の製造方法を用いて化合物1−3〜1−8を合成し、さらに、上述した精製方法と同様にしてそれぞれの化合物について一般式2で表される化合物の含有率が異なるサンプル(A、B、C、D)を調製した。
【0170】
【化14】
【0171】
【化15】
【0172】
《有機EL素子1−1〜1−32の作製》
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行なった。この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにα−NPDを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに、合成した化合物1−1(サンプル1−1A)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにバソキュプロイン(BCP)を200mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートにAlq3を200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。
【0173】
次いで、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで透明支持基板に蒸着し、膜厚45nmの正孔輸送層を設けた。さらに化合物1−1(サンプル1A)の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.2nm/secで前記正孔輸送層上に蒸着して膜厚20nmの発光層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。更に、BCPの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記発光層の上に蒸着して膜厚10nmの正孔阻止の役割も兼ねた電子輸送層を設けた。その上に、更に、Alq3の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記電子輸送層の上に蒸着して更に膜厚40nmの電子注入層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。
【0174】
引き続きフッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子1−1を作製した。
【0175】
上記で使用した化合物の構造を以下に示す。
【0176】
【化16】
【0177】
さらに、有機EL素子1−1における化合物1−1(サンプル1−1A)を表1に示すように置き換えた以外は有機EL素子1−1の作製方法と同様にして、有機EL素子1−2〜1−32を作製した。
【0178】
有機EL素子の層中での一般式2で表される化合物の含有率の測定は下記の手法を用いた。
〈発光層中の一般式2で表される化合物の含有率の測定〉
100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行なった。この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにサンプル1−1Aを200mg入れて、真空蒸着装置に取付けた。
【0179】
真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、有機EL素子1−1の発光層を形成するのと同じ条件で、サンプル1−1Aで表される化合物の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、ガラス基板上に蒸着を行って蒸着膜を得た。
【0180】
得られたガラス基板上の蒸着膜をトルエンにて溶解し、得られた溶液を高速液体クロマトグラフィーによって分析して層中の原料であるカルバゾール(一般式2で表される化合物)の含有率を測定した。さらに、サンプル1−1Aを他のサンプル1−1(B、C、D)、1−2(A、B、C、D)〜1−8(A、B、C、D)に変更して作製した蒸着膜でも同様の測定を行い、この測定結果を、有機EL素子1−1〜1−32の発光層中の一般式2で表される化合物の含有率とした。
【0181】
《有機EL素子1−1〜1−32の評価》
有機EL素子1−1〜1−32の温度23℃、窒素雰囲気下で10V直流電圧を印加した時の発光輝度(cd/m2)および発光効率(lm/W)を測定した。発光輝度については、CS−1000(ミノルタ製)を用いて測定した。
【0182】
さらに10mA/cm2の一定電流で駆動したときに、初期輝度が元の半分に低下するのに要した時間を測定し、これを半減寿命時間として耐久性の指標とした。
【0183】
その結果を、同じ化合物を用いた有機EL素子のうちで、蒸着膜中の一般式2で表される不純物の含有率が最も高い素子に対する結果を100とした相対値として、表1に示した。
【0184】
【表1】
【0185】
表1から明らかなように、一般式1で表される化合物を含有する層に含まれる、一般式2で表される不純物の含有率が0.5質量%未満の場合には層を有する有機EL素子の性能は大きく改善される。とくにこの効果は耐久性に関して顕著であり、0.1質量%以下にまで不純物の含有を抑制した層を有する有機EL素子においてはとくに大きな改善効果がある。
【0186】
また、層中に含まれる一般式2の化合物の分子量がある程度以上に大きい場合、いくぶん改善効果が小さくなる傾向があるが、これは一般式2で表される不純物の分子が大きくなった結果、ある程度には不純物の安定性が高くなったためであろうと推測される。
【0187】
実施例2
《有機EL素子2−1〜2−16の作製及び評価》
実施例1の有機EL素子1−3の電子輸送層におけるBCPを表2に示す実施例1で調製した化合物に置き換えた以外は、有機EL素子1−3と全く同じ方法で作製した有機EL素子2−1〜2−16について、実施例1と同様の方法で、電子輸送層中の一般式2で表される化合物の含有量、発光輝度、発光効率及び半減寿命時間(耐久性)を測定した。測定結果を表3に示す。
【0188】
【表2】
【0189】
表2から明らかなように、いずれの化合物についても一般式2で表される不純物の混入を抑制することは、該化合物を用いた有機化合物層が電子輸送層として機能する場合においても有機EL素子の特性、とくに耐久性について顕著な改善効果をもたらすことが分かった。
【0190】
実施例3
《有機EL素子3−1〜3−32の作製及び評価》
実施例1の有機EL素子1−1の作製方法において、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにリン光性物質であるIr−1を100mg入れて真空蒸着装置に取付け、発光層をサンプル1−1AとIr−1の入った加熱ボートにそれぞれ通電しサンプル1−1Aを0.2nm/sec、Ir−1を0.012nm/secの蒸着速度で共蒸着させた膜厚20nmの発光層とした以外は、有機EL素子1−1と同様の方法で有機EL素子3−1を作製した。
【0191】
同様にして実施例1の有機EL素子1−2〜1−32の発光層を上述した方法でIr−1と共蒸着させた発光層とした有機EL素子3−2〜3−32を作製した。
【0192】
得られたリン光発光型有機EL素子3−1〜3−32について、実施例1と同様にして、発光層中の一般式2で表される化合物の含有量、発光輝度、発光効率、耐久性を評価した結果を表3に示す。
【0193】
【表3】
【0194】
表3から明らかなように、リン光発光型の有機EL素子を作製する場合においても一般式2で表される化合物の混入を抑制することは、いずれの化合物をホスト化合物として用いる場合においても有機EL素子の特性、とくに耐久性について顕著な改善効果をもたらすことが分かった。
【0195】
実施例4
《有機EL素子4−1〜4−16の作製及び評価》
実施例1の有機EL素子1−1の作製において、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにリン光性物質であるIr−6を100mg入れて、さらに別のモリブデン製抵抗加熱ボートにリン光性物質であるIr−12を100mg入れて真空蒸着装置に取付け、発光層を、サンプル1−1AとIr−6とIr−12の入った加熱ボートにそれぞれ通電し、サンプル1−1Aを0.5nm/sec、Ir−6を0.005nm/sec、Ir−12を0.02nm/secの蒸着速度で共蒸着させた膜厚30nmの発光層とした以外は、有機EL素子1−1と同様の方法で2波長発光型の有機EL素子4−1を作製した。Ir−6のリン光発光は赤色であり、Ir−12のリン光発光は青色であるので、該有機EL素子からの発光は2つの発光極大波長を有しており、人間の視覚には白色の発光として認識される。
【0196】
同様にして実施例1の有機EL素子1−2〜1−4、1−9〜1−16、1−21〜1−24の発光層を上述した方法で、Ir−6とIr−12と共蒸着させた発光層とした有機EL素子4−2〜4−16を作製した。実施例1と同様の方法で、発光層中の一般式2で表される化合物の含有量、発光輝度、発光効率及び半減寿命時間(耐久性)を測定した。測定結果を表4に示す。
【0197】
【表4】
【0198】
表4の結果から明らかなように、リン光発光型白色発光有機EL素子を作製する場合においても一般式2で表される不純物の混入を抑制することは、いずれの化合物をホスト化合物として用いる場合においても有機EL素子の特性、とくに耐久性について顕著な改善効果をもたらす。
【0199】
実施例5
実施例3の有機EL素子3−4(緑色)のIr−1をIr−6、Ir−12に変更した以外は有機EL素子3−4と同様の方法で有機EL素子5−1(赤色)、5−2(青色)を作製した。
【0200】
これらの素子を同一基板上に並置して、図1,2に示すアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製した。即ち同一基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、並置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。前記複数画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。この様に各赤、緑、青の画素を適宜、並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0201】
該フルカラー表示装置を駆動することにより、輝度の高く耐久性の良好な、鮮明なフルカラー動画表示が得られた。
【0202】
【発明の効果】
本発明により、高い発光輝度および優れた量子効率と同時に、とくに高い耐久性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子、およびそれを備えた表示装置もしくは照明装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した図である。
【図2】表示部Aの模式図である。
【図3】画素の模式図である。
【図4】パッシブマトリックス方式による表示装置の模式図である。
【符号の説明】
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスタ
12 駆動トランジスタ
13 コンデンサ
A 表示部
B 制御部
Claims (10)
- 前記一般式2で表される化合物の含有率が0.1質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記一般式2のR1とR2、R3とR4がそれぞれ互いに結合して芳香環を形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記一般式2で表される化合物が、置換されていてもよいカルバゾール、ピリドインドール、あるいはジピリドピロールのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記一般式2で表される化合物の分子量が250未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 電界を印加された際の発光がリン光発光を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 白色に発光することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた表示素子。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた照明装置。
- 請求項9に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子と、を備えた表示素子。
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