JP2004279806A - 感熱性平版印刷版の製版方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】実用上十分な耐傷性と高感度を兼ね備えつつ、現像ランニング安定性の改善された感熱性平版印刷版の製版方法を提供することにある。
【解決手段】光を吸収し熱を発生する物質と、アルカリ水溶液可溶性樹脂と、該アルカリ水溶液可溶性樹脂と相分離し表面突起を形成する樹脂を含有する記録層を有する感熱性平版印刷版を、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含有するアルカリ現像液で現像処理することを特徴とする製版方法。
【選択図】 なし
【解決手段】光を吸収し熱を発生する物質と、アルカリ水溶液可溶性樹脂と、該アルカリ水溶液可溶性樹脂と相分離し表面突起を形成する樹脂を含有する記録層を有する感熱性平版印刷版を、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含有するアルカリ現像液で現像処理することを特徴とする製版方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱性平版印刷版の製版方法に関する。より詳しくは、デジタル信号に基づいた赤外線レーザ露光による画像形成が可能な感熱性平版印刷版の製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のレーザの発展は目覚ましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは高出力かつ小型の物が容易に入手できる様になっている。特に平版印刷の分野においては、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザは非常に有用である。
【0003】
そのような赤外線レーザを用いたダイレクト製版用のポジ型平版印刷版材として、特許文献1(特開平7−285275号公報)には、アルカリ可溶性樹脂に、光を吸収し熱を発生する物質と、キノンジアジド化合物類等を添加した画像記録材料が記載されている。この画像記録材料は、キノンジアジド化合物類等が、未露光部(画像部)ではアルカリ水溶液可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、露光部(非画像部)では、光を吸収し熱を発生する物質の発熱により分解して溶解阻止能を発現しなくなるため、露光部が現像により除去できるようになって、画像を形成する。
しかしながら、このポジ型平版印刷版材は、記録層の機械的膜強度が十分でなく、取扱い時、版面に傷がつき易い問題があった。また、経時で感度が低下する問題があった。
【0004】
また、特許文献2(特開2001−14222号公報)および特許文献3(特開2002−311570号公報)には、耐傷性を向上させるために記録層の上に水溶性オーバーコートを用いることが記載されている。しかしながら、水溶性オーバーコートは、疎水性である記録層との密着に劣り、しばしば、ハンドリング中に剥離が生じる問題があった。又、水溶性オーバーコートは、吸湿性が強い為、合紙と接着して露光機内で搬送故障を生じたり、露光後現像までの間に高湿度下に放置される場合に、記録層との密着性が変化して現像時のアルカリに対する溶解性に影響を与えて感度が不安定にさせたりする欠点を有していた。更に、露光時に発生する熱が、水溶性オーバーコートに放熱することで、熱効率が下がり、結果として感度が低下するという重大な欠点を有していた。
【0005】
さらに、特許文献4(特開2000−235255号公報)には、平均高さが1〜5μmの凹凸を、静電スプレーによる感材表面への樹脂固着、又は樹脂微粒子の感光層添加で形成することによって耐傷性を改良する技術が記載されている。しかしながら、樹脂固着では樹脂の固着が不十分な場合、露光時セッター内で脱離が発生し光学系を汚染するという問題があり、又樹脂微粒子の感光層添加は、感光層塗布液内で沈降が発生して塗布乾燥時に均一な凹凸形状が形成できないといった致命的な欠陥を有していた。更に、アルカリ可溶性のない樹脂を添加するため、現像浴内で該樹脂が析出、蓄積し、更に版上に再転写して印刷時の汚れとなる問題があり、これを避けるためには、頻繁に煩雑な現像液交換が必要となり実用上の製版効率を著しく低下させてしまうことが判明した。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−285275号公報
【特許文献2】
特開2001−14222号公報
【特許文献3】
特開2002−311570号公報
【特許文献4】
特開2000−235255号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題を解決することであり、実用上十分な耐傷性と高感度を兼ね備えつつ、現像ランニング安定性の改善された感熱性平版印刷版の製版方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、光を吸収し熱を発生する物質と、アルカリ水溶液可溶性樹脂と、該アルカリ水溶液可溶性樹脂と相分離し表面突起を形成する樹脂とを含有する記録層を有する感熱性平版印刷版を、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含有するアルカリ現像液で現像処理する平版印刷版の製版方法によって、上記目的を達成できた。
【0009】
上記発明は、下記のような検討および発見に基づいている。
アルカリ水溶液可溶性樹脂と相分離する樹脂の添加によって記録層表面に微細な突起を形成することができ、耐傷性を向上させることが見出された。この突起部分が引っ掻き傷、擦り傷に対する応力を緩和するものと推測される。しかしながら、相分離する樹脂は、アルカリ水溶液である現像液の浸透速度が極端に遅く、短時間に処理量が集中した場合、凝集体となって現像液表面に浮遊して版材表面に再転写することが見られた。そこで、相分離する樹脂を分散できる化合物を鋭意検討したところ、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を現像液に添加することで凝集体の発生を抑制できることが見出された。
検討を進めたところ、該現像液を用いることで感度が向上することも確認された。更に解析を進めたところ、粗面化支持体上での該樹脂の相分離による突起形成は厚み依存性が存在し、砂目の深い凹部(すなわち、記録層の厚い部分)で相分離突起が大きく、しかも数か多く、砂目の凸部(すなわち、記録層の薄い部分)で相分離突起が小さく少ないことが判明した。上記現像液を使用すると、該樹脂の相分離突起部分が、現像初期に分散除去されて現像液の記録層内への浸透パスとなるが、相分離突起が多い記録層の厚い部分に多くの浸透パスができ、薄い部分では少なくなることによって、記録層厚みによる溶解速度の不均一が解消され、感度が向上したと推定される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に用いる感熱性平版印刷版および製版方法について順次説明する。
【0011】
[感熱性平版印刷版]
本発明に用いる感熱性平版印刷版は、光を吸収し熱を発生する物質と、アルカリ水溶液可溶性樹脂と、該アルカリ水溶液可溶性樹脂と相分離して表面に突起を形成させる樹脂とを含有する記録層を有することを特徴とする。感熱性平版印刷版の記録層が多層構成である場合には、上記の表面に突起を形成させる樹脂を含有する記録層は、最上層の記録層として用いられる。
【0012】
上記の相分離して表面に突起を形成させるとは、該樹脂は記録層塗布液中では均一に溶解しているが、塗布乾燥の際に相分離して表面に突起を形成させることを意味し、従来の無機粒子、金属粒子、有機粒子の微粒子分散物を塗布液に添加して形成する表面突起とは異なる。
【0013】
本発明の表面突起の水平方向の大きさ(平均径)の測定には、一般には、光学顕微鏡、電子顕微鏡等が用いられる。表面突起の高さの測定には、電子顕微鏡による断面測定、原子間力顕微鏡(AFM)測定等が用いられる。
本発明の表面突起の平均径は0.01μm〜20μmが好ましく、0.03μm〜10μmがより好ましく、0.05μm〜5μmが最も好ましい。この範囲内で耐傷性に対する良好な効果が得られる。平均径が0.01μmを下回ると凹凸の形成が不十分で耐傷性に対する効果が無い。20μmを上回ると印刷物の解像度が悪くなったり、下層との接着性が悪くなったり、表面付近の突起が取れ易くなったりする。
また、表面突起の高さは5.0nm〜1000nmが好ましく、10nm〜800nmがより好ましく、20nm〜500nmが最も好ましい。
上記の表面突起の平均径および高さは、アルカリ水溶液可溶性樹脂と相分離して表面に突起を形成させる樹脂の極性、塗布溶剤、記録層添加剤、アルカリ水溶液可溶性樹脂の極性、乾燥条件(温度、時間、湿度、圧力等)、添加量を選択することでにより制御できる。
【0014】
上記のような、アルカリ水溶液可溶性樹脂と相分離して表面に突起を形成させる樹脂としては、長鎖アルキル基含有ポリマーが好ましい。
なお、以下では、アルカリ水溶液可溶性樹脂を、単にアルカリ可溶性樹脂ともいう。
【0015】
(長鎖アルキル基含有ポリマー)
相分離して最表面に突起を形成させる長鎖アルキル基含有ポリマーとしては、少なくとも1種の炭素数6以上、好ましくは炭素数12以上の長鎖アルキル基を含有するモノマーを重合して得られるポリマーが好ましい。
上記の炭素数6以上の長鎖アルキル基含有モノマーとしては、分子内に付加重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましく、溶剤溶解性や感熱性平版印刷版を作製した場合の耐傷性改良効果、表面被覆性及び画像形成性への影響等の観点から、長鎖アルキル基を有するアクリレート系、メタクリレート系、アクリルアミド系、メタクリルアミド系、スチレン系、ビニル系、ビニルエーテル系、マレイン酸系、フマル酸系などの化合物であることが好ましい。
このような長鎖アルキル基含有モノマーとして、具体的に下記一般式(I)のモノマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
【化1】
【0017】
一般式(I)中、nは6〜40の整数を表す。より好ましくは10〜30の整数、最も好ましくは12〜20の整数である。Xは2価の連結基を表す。Y、Y’及びY”は1価の有機基を表す。
【0018】
Xが表す2価の連結基の具体例としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐、鎖状または環状のアルキレン基、炭素数2〜20の直鎖または分岐、鎖状または環状のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリレン基(単環、複素環)、−OC(=O)−、−OC(=O)Ar−、−OC(=O)O−、−OC(=O)OAr−、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−SO2NR−、−SO2NAr−、−O−、(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−アリレンオキシ、ポリアリレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−C(=O)Ar−、−C(=O)−、−SO2O−、−SO2OAr−、−OSO2−、−OSO2Ar−、−NRSO2−、−NArSO2−、−NRC(=O)−、−NArC(=O)−、−NRC(=O)O−、−NArC(=O)O−、−OC(=O)NR−、−OC(=O)NAr−、−NAr−、−NR−、−N+RR’−、−N+RAr−、−N+ ArAr’−、−S−、−SAr−、−ArS−、ヘテロ環基(ヘテロ原子としては例えば、窒素、酸素およびイオウ等を少なくとも1個以上含み、3ないし12員環の単環、縮合環)、−OC(=S)−、−OC(=S)Ar−、−C(=S)O−、−C(=S)OAr−、−C(=S)OAr−、−C(=O)S−、−C(=O)SAr−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)NR−、−ArC(=O)NAr−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)S−、−ArC(=S)O−、−ArO−、−ArNR−等が挙げられる。ここで、R及びR’はH、直鎖または分岐、鎖状または環状のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、Ar及びAr’はアリール基を表す。
【0019】
上記の連結基は、ここで挙げた連結基を2種類以上組み合わせて連結基を形成していても良い。このような連結基としては、炭素数6〜20のアリレン基(単環、複素環)、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−O−(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−アリレンオキシ、ポリアリレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−C(=O)−、−C(=O)Ar−、−S−、−SAr−、−ArS−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArO−、−ArNR−等が好ましく、炭素数6〜20のアリレン基(単環、複素環)、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−O−(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−アリレンオキシ、ポリアリレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−SAr−、−ArS−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArO−、−ArNR−等がより好ましい。
【0020】
また、上記連結基は置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐、鎖状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20の直鎖又は分岐、鎖状又は環状のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリレン、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のカルバモイルオキシ基、炭素数1〜20のカルボンアミド基、炭素数1〜20のスルホンアミド基、炭素数1〜20のカルバモイル基、炭素数0〜20のスルファモイル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のN−アシルスルファモイル基、炭素数1〜20のN−スルファモイルカルバモイル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のイミノ基、炭素数3〜20のアンモニオ基、カルボキシル基、スルホ基、オキシ基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜20のアリールスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基、炭素数1〜20のウレイド基、炭素数2〜20のヘテロ環基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数0〜20のスルファモイルアミノ基、炭素数2〜20のシリル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0021】
また、Y、Y’及びY”の具体例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水素原子、炭素数1〜50の直鎖又は分岐、鎖状又は環状のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ヘプタフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、t−ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル等)、炭素数2〜50の直鎖又は分岐、鎖状又は環状のアルケニル基(例えばビニル、1−メチルビニル、シクロヘキセン−1−イル等)、炭素数2〜50のアルキニル基(例えば、エチニル、1−プロピニル等)、炭素数6〜50のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、アントリル等)、炭素数1〜50のアシルオキシ基(例えば、アセトキシ、テトラデカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、炭素数2〜50のアルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、2−メトキシエトキシカルボニルオキシ基など)、炭素数7〜50のアリールオキシカルボニルオキシ基(例えばフェノキシカルボニルオキシ基など)、炭素数1〜50のカルバモイルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ等)、炭素数1〜50のカルボンアミド基(例えば、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、アセトアミド、N−メチルホルムアミド、ベンツアミド等)、炭素数1〜50のスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ドデカンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド等)、炭素数1〜50のカルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−メシルカルバモイル等)、炭素数0〜50のスルファモイル基(例えば、N−ブチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)スルファモイル等)、炭素数1〜50のアルコキシ基(例えば、メトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、オクチルオキシ、t−オクチルオキシ、ドデシルオキシ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エトキシ、ポリアルキレンオキシ等)、炭素数6〜50のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、4−メトキシフェノキシ、ナフトキシ等)、炭素数7〜50のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル等)、
【0022】
炭素数2〜50のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等)、炭素数1〜50のN−アシルスルファモイル基(例えば、N−テトラデカノイルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル等)、炭素数1〜50のN−スルファモイルカルバモイル基(例えばN−メタンスルホニルカルバモイル基など)、炭素数1〜50のアルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル、オクチルスルホニル、2−メトキシエチルスルホニル、2−ヘキシルデシルスルホニル等)、炭素数6〜50のアリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、4−フェニルスルホニルフェニルスルホニル等)、炭素数2〜50のアルコキシカルボニルアミノ基(例えば、エトキシカルボニルアミノ等)、炭素数7〜50のアリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ、ナフトキシカルボニルアミノ等)、炭素数0〜50のアミノ基(例えばアミノ、メチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、アニリノ、モルホリノ等)、炭素数3〜50のアンモニオ基(例えば、トリメチルアンモニオ基、ジメチルベンジルアンモニオ基など)、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、スルホ基、メルカプト基、炭素数1〜50のアルキルスルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル、オクタンスルフィニル等)、炭素数6〜50のアリールスルフィニル基(例えば、ベンゼンスルフィニル、4−クロロフェニルスルフィニル、p−トルエンスルフィニル等)、炭素数1〜50のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、シクロヘキシルチオ等)、炭素数6〜50のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオ等)、炭素数1〜50のウレイド基(例えば、3−メチルウレイド、3,3−ジメチルウレイド、1,3−ジフェニルウレイド等)、炭素数2〜50のヘテロ環基(ヘテロ原子としては例えば、窒素、酸素及びイオウ等を少なくとも1個以上含み、3ないし12員環の単環、縮合環で、例えば、2−フリル、2−ピラニル、2−ピリジル、2−チエニル、2−イミダゾリル、モルホリノ、2−キノリル、2−ベンツイミダゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾオキサゾリル等)、炭素数1〜50のアシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル等)、炭素数0〜50のスルファモイルアミノ基(例えば、N−ブチルスルファモイルアミノ、N−フェニルスルファモイルアミノ等)、炭素数3〜50のシリル基(例えば、トリメチルシリル、ジメチル−t−ブチルシリル、トリフェニルシリル等)、アゾ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)が挙げられる。上記の置換基はさらに置換基を有していてもよく、その置換基の例としてはここで挙げた置換基が挙げられる。
【0023】
また、Y、Y’及びY”のうち少なくとも2つが互いに環を形成していても良く、このような例としては脂肪族環、芳香族環、複素環基が挙げられる。
【0024】
上記一般式(I)の具体例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、下記において、n及びmは6〜40の整数を表す。
【0025】
【化2】
【0026】
【化3】
【0027】
相分離して最表面に突起を形成させる長鎖アルキル基含有ポリマーは、上記長鎖アルキル基含有モノマーと1種類以上の他のモノマーを組み合わせて共重合したポリマーであっても良く、上記長鎖アルキル基含有モノマーの組成モル比は、表面微小突起形成の観点から10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが最も好ましい。
【0028】
上記長鎖アルキル基含有モノマーと共重合させるモノマーとしては、アルカリ現像液に対する溶解性、及び、感度の観点から、親水性モノマーであることが好ましい。親水性モノマーとしては、アルカリ現像液に対する溶解性、及び感度の観点から下記一般式(II)で表される化合物が好ましい。
【0029】
【化4】
【0030】
式中、Zは親水性基を含む1価の基を表し、W、W’及びW”は1価の有機基を表す。W、W’及びW”は、一般式(I)中の1価の有機基Y、Y’及びY”と同義である。Zにおける親水性基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、オニウム基(アンモニウム、スルホニウム、ジアゾニウム、ヨードニウム、イミニウム等)、アミド基、カルバモイルオキシ基、炭素数1〜2000の(ポリ)アルキレンオキシド基、及び酸性基が挙げられる。中でも親水性基としては、アルカリ現像液に対する溶解性、及び、感度の観点からpKa12以下の酸性基が好ましい。pKa12以下の酸性基としては、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基が、アルカリ現像液に対する溶解性、感度の点で好ましい。
【0031】
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)活性イミド基
(−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R)
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO3H2)
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0032】
上記(1)のフェノール基を有する一般式(II)のモノマーとしては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0033】
上記(2)スルホンアミド基を有するモノマーとしては、上記構造のスルホンアミド基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、又はビニロキシ基と、スルホンアミド基とを分子内に有する低分子化合物が好ましい。例えば、下記一般式(i)〜(v)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化5】
【0035】
上記一般式(i)〜(v)中、X1及びX2は、各々独立に、−O−又は−NR7−を表す。R1及びR4は、各々独立に、水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R9、R12、及び、R16は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、及び、R13は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6及びR17は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10及びR14は、各々独立に、水素原子又は−CH3を表す。R11及びR15は、各々独立に、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリレン基又はアラルキレン基を表す。Y1及びY2は、それぞれ独立に単結合、又は−CO−を表す。
【0036】
一般式(i)〜(v)で表される化合物のうち、本発明の画像記録要素では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0037】
上記(3)活性イミド基を有するモノマーとしては、前記構造式で表される活性イミド基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。中でも、下記構造式で表される活性イミド基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物が好ましい。
【0038】
【化6】
【0039】
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0040】
上記(4)カルボン酸基を有するモノマーとしては、例えば、カルボン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。上記(5)スルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、スルホン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。上記(6)リン酸基を有するモノマーとしては、例えば、リン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。
【0041】
上記のpKa12以下の酸基を有するモノマーの中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基又は(4)カルボン酸を有するモノマーが好ましく、(1)フェノール基又は(2)スルホンアミド基又は(4)カルボン酸を有するモノマーが、アルカリ現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を十分に確保する点から最も好ましい。
【0042】
上記一般式(II)の親水性モノマーは、ポリマー成分中に90モル%以下の組成で共重合することが好ましく、80モル%以下の組成で共重合することが耐傷性効果の観点からより好ましい。
【0043】
また、本発明の相分離する樹脂には、長鎖アルキル基含有モノマーと親水性モノマー成分以外に、他のモノマーを併用することもできる。このような長鎖アルキル基含有モノマー及び親水性モノマー以外のモノマー成分は、共重合体成分中に50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることが耐傷性効果の観点から、より好ましい。
長鎖アルキル基含有モノマーと親水性モノマー以外のモノマーとしては、下記(7)〜(17)に挙げる化合物を例示することができる。
【0044】
(7)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(8)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸アミル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキレート等のアクリレート。
(9)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等のメタクリレート。
【0045】
(10)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド又はメタクリルアミド。
(11)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(12)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
【0046】
(13)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(14)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(15)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(16)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(17)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
【0047】
上記長鎖アルキル基含有モノマーと親水性モノマーの共重合方法としては、従来知られている、グラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。また、この共重合において、長鎖アルキル基含有モノマーの共重合成分は、2種類以上混合して用いることもできる。
【0048】
本発明の長鎖アルキル基含有ポリマーとしては、上記のようにして得られる共重合体が用いられるが、一般式(III)で表される構造単位を有するポリマーであることがより好ましい。
【0049】
【化7】
【0050】
ここで、nは6〜40の整数を表す。Y、Y’及びY”は1価の有機基を表す。Xは2価の連結基を表す。Z’は親水性モノマー単位を表す。mは0.1≦m<1の実数を表す。耐傷性改良効果、溶解性への影響等の観点からより好ましくは、0.2≦m≦0.9であり、更に好ましくは0.25≦m≦0.85である。これらY、Y’、Y” 及びXの具体例としては、一般式(I)のものと同義のものが挙げられる。Z’の具体例としては、一般式(II)で表されるモノマーからなる構造単位が挙げられる。
【0051】
更に、本発明の長鎖アルキル基含有ポリマーとしては、一般式(IV)であることがより好ましい。
【化8】
【0052】
上記一般式(IV)において、点線のメチル基はあってもなくても良く、X及びZ’としては、一般式(III)のX、Z’と同義のものが好ましく、mは、耐傷性改良効果、溶解性への影響等の観点から0.2≦m≦0.9が好ましく、0.25≦m≦0.85がより好ましく、0.30≦m≦0.60が最も好ましい。nは6〜40整数であり、好ましくは10〜30の整数、より好ましくは12〜20の整数である。
【0053】
上記(IV)の親水性モノマー単位Z’としては、ヒドロキシ基、炭素数1〜2000の(ポリ)アルキレンオキシド基、フェノール基、スルホンアミド基、活性イミド基、カルボン酸基、スルホン酸基を有する骨格が、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に確保する点から好ましく、フェノール基、スルホンアミド基、活性イミド基、カルボン酸基、スルホン酸基を有する骨格が感度の点からより好ましく、カルボン酸を有する骨格がもっとも好ましい。上記(IV)のXとしては、−C(=O)O−が最も好ましい。
【0054】
また、一般式(III)で表される構造単位を有するポリマーの共重合成分として、前述の(7)〜(18)に挙げた化合物を共重合体成分中50モル%以下の組成比で用いることができる。本発明の効果の観点から30モル%以下がより好ましい。
【0055】
本発明に用いる相分離して最表面に突起を形成させる長鎖アルキル基含有ポリマーとしては、重量平均分子量が2,000以上、数平均分子量が1,000以上のものが好ましく用いられる。さらに好ましくは、ポリスチレン換算で重量平均分子量が5,000 〜5,000,000で、特に好ましくは5,000〜2,000,000、更に好ましくは10,000〜1,000,000である。このようなポリマーは、1種類を用いてもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
相分離して最表面に突起を形成させる長鎖アルキル基含有ポリマー中の残留モノマー量は、本発明の感熱性平版印刷版を積層する際に保護紙(合紙)、支持体裏面への転写や感熱性平版印刷版製造時のローラへの転写等の問題から、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
以下に本発明の長鎖アルキル基含有ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0058】
【化9】
【0059】
【化10】
【0060】
【化11】
【0061】
【化12】
【0062】
【化13】
【0063】
【化14】
【0064】
【化15】
【0065】
【化16】
【0066】
【化17】
【0067】
本発明に用いる上記長鎖アルキル基含有ポリマーとしては、重量平均分子量が2,000以上、数平均分子量が1,000以上のものが好ましく用いられる。さらに好ましくは、ポリスチレン換算で重量平均分子量が5,000 〜5,000,000で、特に好ましくは5,000〜2,000,000、更に好ましくは10,000〜1,000,000である。このようなポリマーは、1種類を用いてもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
上記長鎖アルキル基含有ポリマーの記録層中の含有量は、記録層固形分に対し、0.5〜30質量%であり、1〜20質量%がさらに好ましい。含有量が0.5質量%を下回ると凹凸の形成が不十分で耐傷性に対する効果が無い。30質量%を上回ると記録層の強度が低下して耐刷性が低下する。
【0069】
相分離して最表面に突起を形成させる長鎖アルキル基含有ポリマーを含む記録層表面の空中水滴接触角は60度から140度の範囲であることが好ましい。また、相分離して最表面に突起を形成させる長鎖アルキル基含有ポリマーを含む感熱性平版印刷版の動摩擦係数は0.38〜0.70の範囲にあることが好ましい。
【0070】
(アルカリ水溶液可溶性樹脂)
本発明に用いられるアルカリ水溶液可溶性樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、またはm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂、およびピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。さらに、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を挙げることもできる。
【0071】
フェノール基を側鎖に有する化合物としては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0072】
前記共重合体は、フェノール基を側鎖に有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが現像ラチチュードを充分に向上させるために好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。
【0073】
本発明の上記共重合体には、上記フェノール基を側鎖に有する化合物以外のアルカリ可溶性基を有する化合物、例えば、前記一般式(II)の酸性基が(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基、(4)カルボン酸基、(5)スルホン酸基、または(6)リン酸基である化合物を、共重合成分として用いることができる。
【0074】
また、本発明の上記共重合体の共重合成分としては、酸性基を含まない他の化合物を用いることもできる。上記(2)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物の例としては、前記の長鎖アルキル基含有ポリマーにおいて共重合してもよい成分として例示した(7)〜(17)の化合物が挙げられる。
【0075】
(その他のアルカリ可溶性樹脂)
本発明の記録層には、上記フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂以外のアルカリ可溶性樹脂を含有することができる。かかるアルカリ可溶性樹脂としては、前記一般式(II)の酸性基が(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基、(4)カルボン酸基、(5)スルホン酸基、および(6)リン酸基から選ばれた少なくとも一つの酸性基を有する化合物と、前記(7)〜(17)の化合物から選ばれた少なくとも一つの化合物との共重合体が挙げられる。
【0076】
上記酸性基の中では、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基、(4)カルボン酸基がより好ましく、カルボン酸基が特に好ましい。このようなカルボン酸基を有する共重合化合物としては、カルボン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物が挙げられる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。また、側鎖にヒドロキシル基を有するアクリレート又はメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルエチルアクリレート又はメタクリレート等)のヒドロキシル基と、二塩基酸(例えば、コハク酸、グルタル酸等)とのモノエステルである不飽和カルボン酸も好適なものとして挙げられる。
【0077】
前記(7)〜(17)の化合物の中で、より好ましいものとしては、(8)および(9)のアルキルアクリレート又はメタクリレートが挙げられる。
【0078】
(光を吸収し熱を発生する物質)
本発明の記録層に用いられる光を吸収し熱を発生する物質としては、赤外線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザへの適合性の観点から、波長760nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料または顔料が好ましく挙げられる。
【0079】
染料としては、市販の染料、例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0080】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等の公報、米国特許第4973572号明細書等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許第434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0081】
また、米国特許第5,156,938号名宰相記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号等の公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号の各公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0082】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0083】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の記録層で使用した場合に、アルカリ溶解性樹脂との高い相互作用を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0084】
【化18】
【0085】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、−X2−L1または下記に構造を示す基を表す。ここで、X2は酸素原子または、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0086】
【化19】
【0087】
R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0088】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0089】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638号公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360号公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0090】
【化20】
【0091】
【化21】
【0092】
【化22】
【0093】
【化23】
【0094】
前記一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14およびR15〜R20は互いに独立に水素原子またはハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、またはアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組み合わせた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、および、R9〜R14およびR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0095】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0096】
【化24】
【0097】
【化25】
【0098】
前記一般式(c)中、Y3およびY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、またはテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24およびR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、またはアミノ基を表す。また、式中Za−は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0099】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0100】
【化26】
【0101】
【化27】
【0102】
前記一般式(d)中、R29〜R32は各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。R33およびR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、またはハロゲン原子を示す。nおよびmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、またはR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29および/またはR30はR33と、またR31および/またはR32はR34と結合して環を形成しても良く、さらに、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X2およびX3は各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、X2およびX3の少なくとも一方は水素原子またはアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基またはペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0103】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0104】
【化28】
【0105】
【化29】
【0106】
前記一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。R36とR37、R40とR41、R44とR45およびR48とR49は、連結して脂肪族環、芳香族環または複素環を形成してもよく、その環は縮合環を有してもよい。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0107】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0108】
【化30】
【0109】
本発明において赤外線吸収剤として使用される顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0110】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0111】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0112】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点から顔料の粒径は0.01μm以上であることが好ましく、また、記録層の均一性の点から10μm以下であることが好ましい。
【0113】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0114】
これらの顔料もしくは染料は、記録層の全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。顔料もしくは染料の添加量が0.01質量%以上とすることで感度を充分に確保することができ、また50質量%以下の範囲とすることで、記録層の均一性や、記録層の膜強度を維持できる。
【0115】
(その他の記録層成分)
上述された本発明の記録層には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。
例えば、他のオニウム塩、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物、多官能アミン化合物等、添加するとアルカリ水可溶性高分子(アルカリ可溶性樹脂)の現像液への溶解阻止機能を向上させるいわゆる溶解抑止剤を添加することが好ましく、中でも、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点で好ましい。分解性溶解抑止剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩および、o−キノンジアジド化合物が好ましく、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のオニウム塩がより好ましい。
【0116】
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えばS.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書、特開平3−140140号、特開2002−229186号の各公報に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第5,041,358号、同第4,491,628号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同5,041,358号、同4,491,628号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。
これらのオニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩が特に好ましい。特に、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。
【0117】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、およびパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0118】
好適なキノンジアジド類としてはo−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステルまたはスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号および同第3,188,210号明細書に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0119】
さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号などの各公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものをあげることができる。
【0120】
分解性溶解抑止剤であるオニウム塩、および/または、o−キノンジアジド化合物の添加量は好ましくは記録層の全固形分に対し、1〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%、特に好ましくは1〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0121】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.1〜2質量%、特に好ましくは0.1〜1.5質量%である。本発明に係る添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
【0122】
また、分解性を有さない溶解抑止剤を併用してもよく、好ましい溶解抑止剤としては、特開平10−268512号公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、同じく特開平11−190903号公報に詳細に記載されているラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有し着色剤を兼ねた酸発色性色素、同じく特開2000−105454号公報に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0123】
また別の添加剤としては、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することができる。また、後述する界面活性剤、画像着色剤、および、可塑剤も使用可能な添加剤である。
【0124】
環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3’’,4’’−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類およびカルボン酸類などが挙げられる。
【0125】
上記の環状酸無水物、フェノール類および有機酸類の記録層中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0126】
また、これら以外にも、本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物等を目的に応じて適宜添加することができる。
【0127】
また、本発明に係る記録層塗布液中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、欧州特許第950517号明細書に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業(株)製)等が挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることが出来る。
上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0128】
また、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を発生する化合物(光酸発生剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号および同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0129】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、記録層全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で記録層中に添加することができる。
【0130】
更に、記録層中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸またはメタクリル酸のオリゴマーおよびポリマー等が用いられる。
【0131】
[感熱性平版印刷版の形成]
本発明の感熱性平版印刷版は支持体上に記録層を設けることによって形成される。記録層は、単層であってもよいし、積層構成であってもよい。単層及び積層構成の最上層には、光を吸収し熱を発生する物質、フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂および長鎖アルキル基含有ポリマーのごときフェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂と相分離して表面に突起を形成する樹脂を含有する上述の記録層が適用される。
【0132】
積層構成の下層は、アルカリ可溶性樹脂を主成分として含有し、長鎖アルキル基含有ポリマーを含有しないことが好ましい。下層に含有されるアルカリ可溶性樹脂としては、前記フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂、及び前記一般式(II)の酸性基が、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基、(4)カルボン酸基、(5)スルホン酸基、及び(6)リン酸基から選ばれる少なくとも一つの酸性基である化合物を共重合成分とする共重合体から選ばれる樹脂であることが好ましい。
【0133】
より好ましい下層に含有されるアルカリ可溶性樹脂としては、前記フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂、及び前記一般式(II)の酸性基が、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基および(4)カルボン酸基から選ばれる少なくとも一つの酸性基である化合物と、前記の長鎖アルキル基含有ポリマーにおいて共重合してもよい成分として例示した(7)〜(17)の化合物の少なくとも一つとを共重合成分とする共重合体であることが好ましい。
【0134】
積層構成の下層には、前記の、光を吸収し熱を発生する物質 及びその他の記録層成分を適宜含有させることができる。
【0135】
本発明の感熱性平版印刷版は、通常上記の記録層成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより形成される。
用いられる溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。
【0136】
また、塗布に用いる溶剤としては、原則的に、記録層上層に用いるアルカリ可溶性樹脂と下層に用いるアルカリ可溶性樹脂に対して溶解性の異なるものを選ぶことが好ましいが、新たな機能を付与するために積極的に部分相溶を行うことも可能である。
【0137】
2つの層を分離して形成する場合の方法としては、例えば、下層に含まれる共重合体と上層に含まれるアルカリ可溶性樹脂との溶剤溶解性の差を利用する方法、記録層上層を塗布した後、急速に溶剤を乾燥、除去させる方法等が挙げられる。以下、これらの方法について詳述するが、2つの層を分離して塗布する方法はこれらに限定されるものではない。
【0138】
下層に含まれる共重合体と上層に含まれるアルカリ可溶性樹脂との溶剤溶解性の差を利用する方法は、アルカリ可溶性樹脂を塗布する際に、下層に含まれるアルカリ可溶性樹脂及びこれと併用される共重合体のいずれもが不溶な溶媒系を用いるものである。これにより、二層塗布を行っても、各層を明確に分離して塗膜にすることが可能になる。例えば、メチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノ−ル等のアルカリ可溶性樹脂を溶解する溶剤に不溶な下層成分を構成する特定モノマーを共重合成分として含む共重合体を選択し、該下層成分を構成する共重合体を溶解する溶剤系を用いて該共重合体主体とする下層を塗布・乾燥し、その後、アルカリ可溶性樹脂を主体とする上層をメチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノ−ル等下層成分を溶解しない溶剤を用いて塗布することにより二層化が可能になる。
【0139】
一方、二層目を塗布後に極めて速く溶剤を乾燥させる方法は、帯状支持体の走行方向に対してほぼ直角に設置したスリットノズルより高圧エア−を吹き付けることや、蒸気等の加熱媒体を内部に供給されたロ−ル(加熱ロ−ル)より帯状支持体の下面から伝導熱として熱エネルギ−を与えること、あるいはそれらを組み合わせることにより達成できる。
2つの層を部分的に相溶させる方法としては、上記溶剤溶解性の差を利用する方法、2層目を塗布後に極めて速く溶剤を乾燥させる方法何れにおいても、その程度を調整することによって可能となる。
【0140】
塗布液中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
記録層上層塗布時に下層へのダメージを防ぐため、記録層上層の塗布方法は非接触式であることが望ましい。また接触型ではあるが溶剤系塗布に一般的に用いられる方法としてバーコーター塗布を用いることも可能であるが、下層へのダメージを防止するために順転駆動で塗布することが望ましい。
【0141】
本発明の記録層塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、記録層全固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0142】
この感熱性平版印刷版の下層の乾燥後塗布量は、0.5〜4.0g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.6〜2.5g/m2の範囲である。この範囲内で、良好な耐刷性、画像再現性及び感度が得られる。
また画像形成層上層の乾燥後塗布量は0.05g/m2〜1.0g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.08〜0.7g/m2の範囲である。この範囲内で、良好な現像ラチチュード、耐傷性、及び感度が得られる。
上下層を合わせた塗布量および単層系での塗布量としては、0.6g/m2〜4.0g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.7〜2.5g/m2の範囲である。この範囲内で、良好な耐刷性、画像再現性及び感度が得られる。
【0143】
[支持体]
本発明の感熱性平版印刷版に使用される支持体としては、必要な強度と耐久性を備えた寸度的に安定な板状物が挙げられ、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が含まれる。
【0144】
本発明の支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。
【0145】
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0146】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0147】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなり、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなったりする。陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0148】
[下塗層]
本発明に適用される感熱性平版印刷版は、支持体上に少なくとも画像形成層上層と下層を積層して設けたものであるが、必要に応じて支持体と下層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0149】
また、下塗層にオニウム基を有する化合物を含有することも好ましい。オニウム基を有する化合物は、特開2000−10292号、特開2000−108538号、特開2000−241962号等の公報に詳述されている。
なかでも好ましいものとして、ポリ(p−ビニル安息香酸)などで代表される構造単位を分子中に有する高分子化合物群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。具体例としては、p−ビニル安息香酸とビニルベンジルトリエチルアンモニウム塩との共重合体、p−ビニル安息香酸とビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドとの共重合体などが挙げられる。
【0150】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の濃度0.005〜10質量%溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、感熱性平版印刷版の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。この範囲内で良好な耐刷性が得られる。
【0151】
[バックコート層]
本発明の感熱性平版印刷版の支持体裏面には必要に応じてバックコートを設けることができる。かかるバックコートとしては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物、および特開平6−35174号公報記載の有機または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物などの被覆層が挙げられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4などのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手しやすく、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており、特に好ましい。
【0152】
[製版方法]
本発明の感熱性平版印刷版は熱により画像形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられるが、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザ、YAGレーザ等の固体高出力赤外線レーザによる露光が好適である。
【0153】
(アルカリ現像液)
露光された感熱性平版印刷版は、アルカリ現像液(以下、単に現像液ともいう。)によって現像される。本発明の製版方法で使用する現像液は、アルカリ水溶液にアニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを必須とする。
本発明における界面活性剤の効果は、露光部の溶解した樹脂の分散性を向上させ、支持体の凹部に残存するアルカリ可溶性樹脂のアルカリに対する溶解性を上げることにより、高鮮鋭な画像形成ができることにある。また、溶解した樹脂の不溶成分により発生するカスを分散する効果もある。
【0154】
アニオン界面活性剤としては,脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などが挙げられる。中でも、カルボン酸型に分類される脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、スルホン酸型に分類されるヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類、ジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、オレフィンスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などが好適に挙げられる。
【0155】
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン型、アミドベタイン型、イミダゾリニウムベタイン型、アルキルグリシン型及びアルキルアラニン型といったアルキルアミノカルボン酸類、スルホベタイン型等が挙げられ、特にアルキルグリシン型、アルキルアラニン型などのアルキルアミノカルボン酸類が好適に挙げられる.
【0156】
本発明で使用する現像液は、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤のいずれかの1種以上を含むことを必須とするが、双方を含んでもよい。
現像液中における、上記界面活性剤の含有量としては、0.001〜10質量%が好ましく、0.005〜1質量%がより好ましく、0.01〜0.5質量%が最も好ましい。
前記含有量が0.001質量%未満であると、画像形成性の向上および不溶物の発生に対する抑制効果に乏しく、10質量%を越えると、現像力が低下することがある。
【0157】
本発明の現像液で用いるアルカリ水溶液は、従来公知のアルカリ水溶液の中から適宜選択することができる。中でも好適なアルカリ水溶液としては、ケイ酸アルカリ若しくは非還元糖と、塩基とからなる現像液が挙げられ、特にpH12.5〜14.0のものが好ましい。前記ケイ酸アルカリとしては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであり、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩、ケイ酸アンモニウムなどが挙げられる。ケイ酸アルカリは1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0158】
上記アルカリ水溶液は、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属又はアンモニウム基を表す。)との混合比率、及び濃度の調整により、現像性を容易に調節することができる。
前記アルカリ水溶液の中でも、前記酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2O:モル比)が0.5〜3.0のものが好ましく、1.0〜2.0のものがより好ましい。前記SiO2/M2Oが0.5未満であると、アルカリ強度が強くなっていくため、支持体のアルミニウム板をエッチングしてしまうといった弊害を生ずることがあり、3.0を超えると、現像性が低下することがある。
【0159】
また、現像液中のケイ酸アルカリの濃度としては、アルカリ水溶液の質量に対して1〜10質量%が好ましく、3〜8質量%がより好ましく、4〜7質量%が最も好ましい。この濃度が1質量%未満であると現像性、処理能力が低下することがあり、10質量%を超えると沈澱や結晶を生成しやすくなり、さらに廃液時の中和の際にゲル化しやすくなり、廃液処理に支障をきたすことがある。
【0160】
非還元糖と塩基とからなる現像液において、非還元糖とは遊離性のアルデヒド基やケトン基を持たないために還元性を有しない糖類を意味し、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類される。本発明ではこれらのいずれも好適に用いることができる。
【0161】
トレハロース型少糖類としては、例えばサッカロースやトレハロースが挙げられ、前記配糖体としては、例えばアルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。
糖アルコールとしては、例えばD,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシットなどが挙げられる。さらには、二糖類の水素添加で得られるマルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)なども好適に挙げることができる。
【0162】
上記のうち、非還元糖としては、糖アルコール、サッカロースが好ましく、中でも特に、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用がある点でより好ましい。
これらの非還元糖は単独でも、二種以上を組み合わせてもよく、現像液中に占める割合としては、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0163】
前記ケイ酸アルカリ若しくは非還元糖には、塩基としてアルカリ剤を従来公知の物の中から適宜選択して組み合わせることができる。
該アルカリ剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウムなどの無機アルカリ剤、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0164】
さらにモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も好適に挙げることができる。
【0165】
これらのアルカリ剤は単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。その理由は、非還元糖に対する添加量を調整することにより、広いpH領域においてpH調整が可能となるためである。
【0166】
また,本発明で使用する現像液は、上記のようなアルカリ水溶液にさらにアルカリ金属または第4アンモニウム陽イオンの塩を含有することが好ましい。
本発明においてこれらの塩類の効果は、露光部へのアルカリの浸透を向上させ、支持体の凹部に残存するアルカリ可溶性樹脂のアルカリに対する溶解性を上げることにより、高鮮鋭な画像形成ができる.その結果,現像液のアルカリ強度(pH)を低下させることができ、画像部の耐傷性を大きく良化する。
【0167】
現像液に含ませるアルカリ金属または第4アンモニウム陽イオンの塩類としては、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩,ホウ酸塩等の無機塩、また、蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、レブリン酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩、フマル酸塩,クエン酸塩,リンゴ酸塩等の有機酸塩があげられる。特に、カリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩が好ましい。
【0168】
本発明で使用する現像液は、上記化合物を1種単独で含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0169】
現像液中における上記化合物の効果は、アルカリ金属または第4アンモニウム陽イオンのモル濃度により依存することより、現像液中における上記化合物の含有量はアルカリ金属または第4アンモニウム陽イオン換算で0.01〜1モル/リットルが好ましく、0.05〜0.5モル/リットルがより好ましい。
前記含有量が、0.01モル/リットル未満であると、画像形成性の向上に対する効果に乏しく、1モル/リットルを越えると、画像形成性の向上に対する効果が変わらないばかりか、他の成分を不溶化させることがある。
【0170】
現像液には、さらに現像性能を高める目的で、以下のような添加剤を加えることができる。
例えば特開昭58−190952号公報に記載のEDTA、NTAなどのキレート剤、特開昭59−121336号公報に記載の[Co(NH3)6]Cl3、CoCl2・6H2Oなどの錯体、米国特許第4,374,920号明細書に記載のテトラメチルデシンジオールなどの非イオン性界面活性剤、特開昭55−95946号公報に記載のp−ジメチルアミノメチルポリスチレンのメチルクロライド4級化合物などのカチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載のビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸ソーダとの共重合体などの両性高分子電解質、特開昭57−192951号公報に記載の亜硫酸ソーダなどの還元性無機塩、特開昭59−75255号公報に記載の有機Si、Tiなどを含む有機金属界面活性剤、特開昭59−84241号公報に記載の有機ホウ素化合物、欧州特許第101010号明細書に記載のテトラアルキルアンモニウムオキサイドなどの4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0171】
また、現像液の表面張力としては、65dyne/cm以下が好ましく、特には60dyne/cm以下がより好ましい。現像液の表面張力は例えば振動ジェット法にて測定することができ、測定機器として自動・動的表面張力計 JET型がある。
【0172】
本発明におけるアルカリ現像液の使用態様は特に限定されるものではない。
近年では、特に製版・印刷業界において、製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版材用の自動現像機が広く用いられている。
この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。浸漬現像の際、現像液を版面に均一に供給することが好ましく、供給量としては0.5〜10ml/sec・cm2の範囲で供給することが望ましい。現像液を版面に供給する量は、搬送速度と現像液を供給する手段による供給量から規定でき、現像液を供給する手段としてはスプレー装置、循環ポンプによる対流などが挙げられる。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間などに応じて補充液を補充しながら処理することができる。
【0173】
この場合、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液を現像補充液として現像液中に加えることによって、長時間現像タンク中に現像液を交換することなく多量の平版印刷版材を処理できる。本発明のアルカリ現像処理液を使用するに際しても、この補充方式を採用することが好ましい態様である。その場合の現像補充液として、上に説明したアルカリ現像液の処方を用いることができる。
前記現像液及び現像補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて上記以外の種々の界面活性剤や有機溶剤などを添加することもできる。有機溶剤としてはベンジルアルコールなどが好ましい。また、ポリエチレングリコールもしくはその誘導体、又はポリプロピレングリコールもしくはその誘導体などの添加も好ましい。
さらに必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸又は亜硫酸水素酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩などの無機塩系還元剤、有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0174】
本発明の製版方法は、上記現像方式の他に、実質的に未使用の現像液で処理する、いわゆる使い捨て処理方式の現像に適用することも可能である。
【0175】
上記のアルカリ現像液を用いて現像処理された平版印刷版は、水洗水や界面活性剤などを含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液(ガム液)で後処理がなされる。この後処理は、これら公知の処理液を種々組み合わせて行うことができる。
【0176】
【実施例】
以下本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
【0177】
(合成例1:長鎖アルキル基含有ポリマーAの合成)
コンデンサー、攪拌機を取り付けた1000ml三口フラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール59gを入れ、80℃に加熱した。窒素気流下、n−メタクリル酸ステアリル42.0g、メタクリル酸16.0g、重合開始剤V−601(和光純薬製)0.714g及び1−メトキシ−2−プロパノール59gからなる溶液を2時間半かけて滴下した。更に、80℃で2時間反応させた。反応混液を室温に冷却して、1000mlの水に反応液を注ぎ込んだ。デカンテーション後、メタノールで洗浄し、得られた液状生成物を減圧乾燥することで長鎖アルキル基含有ポリマーA73.5gを得た。ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、重量平均分子量を測定した結果、66,000であった。
【0178】
(合成例2:長鎖アルキル基含有ポリマーBの合成)
コンデンサー、攪拌機を取り付けた1000ml三口フラスコに、1−メトキシー2−プロパノール 56.0gを入れ、80℃に加熱した。窒素気流下、n−メタクリル酸ドデシル50.9g、メタクリル酸 4.3g、重合開始剤V−601(和光純薬製)0.576g及び1−メトキシ−2−プロパノール56.0gからなる溶液を2時間半かけて滴下した。更に、80℃で2時間反応させた。反応混液を室温に冷却して、1000mlの水中に反応液を注ぎ込んだ。デカンテーション後、メタノールで洗浄し、得られた液状生成物を減圧乾燥することで長鎖アルキル基含有ポリマーB58.2gを得た。ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、重量平均分子量を測定した結果、60,000であった。
【0179】
(合成例3〜5:長鎖アルキル基含有ポリマーC、F、Iの合成)
合成例1又は合成例2と同様にして、下記表1に示した長鎖アルキル基含有モノマーと親水性モノマーを用い、本発明の長鎖アルキル基含有ポリマーC、F、Iを合成した。更にGPCにより分子量を測定した。測定した結果を表1に示す。
【0180】
【表1】
【0181】
(支持体の作製)
(a)機械的粗面化処理
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A 1050)を比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は一本目250rpm、二本目及び三本目200rpmであった。
【0182】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を10g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0183】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0184】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で175C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0185】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をNaOH濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板の溶解量は0.5g/m2に設定した。前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0186】
(f)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度25質量%水溶液で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0187】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸5.0g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0188】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をNaOH濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0189】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0190】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。いずれも硫酸濃度150g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.5g/m2であった。
【0191】
(k)シリケート処理
温度35℃の3号珪酸ソーダ水溶液で、ディップによるシリケート処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0192】
<支持体X>
上記(a)〜(k)の各工程を順に行い支持体Xを作製した。(e)工程でのアルミニウム板の溶解量は0.5g/m2に設定した。
【0193】
<支持体Y>
上記工程のうち(a)、(g)、(h)及び(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体Yを作製した。(e)工程でのアルミニウム板の溶解量は3.5g/m2に変更した。
【0194】
<支持体Z>
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A 1050)を苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温60℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗し、10g/l硝酸で中和洗浄後、水洗した。
これを印加電圧Va=20Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて、塩化水素濃度15g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温30℃の水溶液中で、500C/dm2の電気量で電気化学的な粗面化処理を行い水洗後、苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温40℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗した。次に、硫酸濃度15質量%、液温30℃の硫酸水溶液中でデスマット処理を行い水洗した。さらに、液温20℃の10質量%硫酸水溶液中、直流にて電流密度6A/dm2の条件下で、陽極酸化皮膜量が2.5g/m2相当となるように陽極酸化処理し、水洗、乾燥した。その後、珪酸ナトリウム1.0質量%水溶液で30℃において10秒間処理し、支持体Zを作製した。この支持体の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.48μmであった。
【0195】
(下塗り処理)
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体X, Y, Z上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は15mg/m2であった。
【0196】
<下塗り液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1.0g
【0197】
【化31】
【0198】
(感熱性平版印刷版の作製)
上記のようにして得られた支持体(X、Y、Z)、下記の2種の記録層(α、β)および記録層に含まれる長鎖アルキル基含有ポリマー(A、B、C、F、I)を表2に記載のように組み合わせて、実施例および比較例で用いる感熱性平版印刷版を作製した。
【0199】
(1)記録層αを有する感熱性平版印刷版
下塗り付支持体上に下記組成の記録層下層用塗布液を、ウェット塗布量が18.75ml/m2のワイヤーバーで塗布し、140℃の乾燥オーブンで50秒間乾燥し、乾燥塗布量0.85g/m2の記録層下層を得た。
得られた記録層下層の上に、下記組成の記録層上層用塗布液2を、ウェット塗布量が18.75ml/m2のワイヤーバーで塗布を行い、塗布後、乾燥オーブンで、140℃で60秒間乾燥し、総乾燥塗布量を1.10g/m2の重層の記録層αを有するポジ型感熱性平版印刷版を作製した。
【0200】
<記録層下層用塗布液>
【0201】
<記録層上層用塗布液2>
・クレゾールノボラック樹脂 0.35g
(PR−54046、住友ベークライト(株)製)
・下記表2に記載の高分子樹脂 0.03g
・シアニン染料(本明細書記載のIRa−7) 0.019g
・下記構造の高分子(化合物X) 0.042g
・下記構造の化合物(化合物Y) 0.0043g
・フッ素系界面活性剤 0.015g
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製30%溶液)
・フッ素系界面活性剤 0.0033g
(メガファックF−781、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 10.17g
・1−メトキシ−2−プロパノール 21.00g
【0202】
【化32】
【0203】
(2)記録層βを有する感熱性平版印刷版
下塗り付支持体上に以下の記録層用塗布液3を塗布し、150℃のオーブンで1分乾燥後、乾燥塗布量が1.8g/m2のポジ型記録層βを有する感熱性平版印刷版を作製した。
【0204】
<記録層用塗布液3>
【0205】
(現像液の調液)
以下の比率からなる水溶液を調整した。その後、記録層α、βの感熱性平版印刷版をCreo社製Trendsetter3244にて書き込み回転数を150rpm、8Wで全面露光した後、30℃12秒浸漬現像を行ったときに、露光部で残膜が観測されなくようにアルカリ剤(KOH)の濃度を調整して作製した。
【0206】
<アルカリ現像液A組成>
・D−ソルビット/K2O(1/1(モル比)) 5.0質量%
・クエン酸3カリウム 10.0質量%
・表2記載の界面活性剤 1.0質量%
【0207】
<アルカリ現像液B組成>
・SiO2・K2O(K2O/SiO2=1/1(モル比)) 4.0質量%
・クエン酸3カリウム 0.5質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・表2記載の界面活性剤 1.0質量%
【0208】
実施例1〜15及び比較例1〜14
上記のようにして得られた現像液と感熱性平版印刷版を表2に示したように組み合わせて製版を行った。その各製版方法を、感度、耐傷性、現像ランニング性について下記の評価方法によって評価し、結果を表2に示した。
【0209】
(感度の評価)
上記の感熱性平版印刷版をCreo社製Trendsetter3244にて書き込み回転数を150rpmに固定し、レーザ出力を3〜8Wで0.25W刻みで露光エネルギーを変えて描き込みを行った。その後、LP−940H(富士写真フイルム(株)製自動現像機)の現像処理浴に上記現像液を仕込み、第3浴目には、FG−1(富士写真フイルム(株)製)を1部に対し水 1部で希釈したフィニシングガム液を8リットル仕込んだ。現像スピードは、現像時間12秒になるように設定した。現像液で非画像部が現像できる露光量(ドラム回転速度150rpmのときのビーム強度)を測定し、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。
【0210】
(耐傷性の評価)
上記のように作製した感熱性平版印刷版を、HEIDON社製 Scratching TESTER HEIDON−14を用い、引掻き針として0.4mmRダイヤ針を用い、針上の荷重を変化させながら400mm/minの速さで記録層表面を引掻いた。引掻いた後の感熱性平版印刷版に上記の現像処理を行い、傷による残膜が目視で観測された荷重(単位g)を耐傷性の評価値とした。値が大きい程、傷残膜が生じにくく耐傷性に優れていることを示している。
【0211】
(現像ランニング性の評価)
(1)カス発生の評価
上記のように作製した感熱性平版印刷版0.5m2分をCreo社製Trendsetter3244にて、書き込み回転数150rpm、レーザ出力8Wで全面露光し、上記現像液30mlにて記録層を溶出させた。この記録層濃度16m2/Lに相当する現像処理液をガラス製サンプルビンに回収して、静置2日放置後析出・沈降物の発生の程度を観察し、○(析出無し)、△(浮遊物あり)、×(沈降析出物有るが再分散可能)、××(沈降析出物有り再分散不能)の4段階にて評価した。
【0212】
(2)カス再付着性の評価
上記のように作製した感熱性平版印刷版に、Creo社製Trendsetter3244にて、ドラム回転数150rpm、レーザ出力8Wで175lpi50%網点を全面書き込みし、上記現像条件で現像を行い、版上のカスの転写を確認した。カスの転写発生の頻度を、○(転写なし)、△(1〜3個所)、×(3個所以上)の三段階にて評価した。
【0213】
【表2】
【0214】
(注1)記録層に用いた前記長鎖アルキル基含有ポリマーの種類を表す。
(注2)数字は下記の界面活性剤を表す。
アニオン系界面活性剤
1:ラウリン酸カリウム
2:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
3:ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物
両性系界面活性剤
4:ラウリルベタイン
(N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−(カルボキシメチル)
アンモニウム ハイドロオキサイド、第一工業製薬製
「アモーゲンK」)
5:ラウリルアミノジカルボン酸ナトリウム
(N−ラウリル−N,N−ジ(エチルカルボン酸ナトリウム)
アミン、竹本油脂製「パイオニンC158」)
【0215】
以上の結果より、表面突起を形成する樹脂を含有する記録層を設けた感熱性平版印刷版をアニオン界面活性剤又は両性界面活性剤を含有するアルカリ現像液で現像処理する本発明の製版方法は、実用上十分な耐傷性と高感度を兼ね備え、かつ現像ランニング安定性が良好であることが判る。更に、支持体表面処理の種類や記録層の形態、及び現像液のアルカリ剤の種類によらず上記効果が発現することも明らかである。
【0216】
【発明の効果】
本発明によれば、実用上十分な耐傷性と高感度を兼ね備えつつ、現像ランニング安定性の改善された感熱性平版印刷版の製版方法を提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱性平版印刷版の製版方法に関する。より詳しくは、デジタル信号に基づいた赤外線レーザ露光による画像形成が可能な感熱性平版印刷版の製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のレーザの発展は目覚ましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは高出力かつ小型の物が容易に入手できる様になっている。特に平版印刷の分野においては、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザは非常に有用である。
【0003】
そのような赤外線レーザを用いたダイレクト製版用のポジ型平版印刷版材として、特許文献1(特開平7−285275号公報)には、アルカリ可溶性樹脂に、光を吸収し熱を発生する物質と、キノンジアジド化合物類等を添加した画像記録材料が記載されている。この画像記録材料は、キノンジアジド化合物類等が、未露光部(画像部)ではアルカリ水溶液可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、露光部(非画像部)では、光を吸収し熱を発生する物質の発熱により分解して溶解阻止能を発現しなくなるため、露光部が現像により除去できるようになって、画像を形成する。
しかしながら、このポジ型平版印刷版材は、記録層の機械的膜強度が十分でなく、取扱い時、版面に傷がつき易い問題があった。また、経時で感度が低下する問題があった。
【0004】
また、特許文献2(特開2001−14222号公報)および特許文献3(特開2002−311570号公報)には、耐傷性を向上させるために記録層の上に水溶性オーバーコートを用いることが記載されている。しかしながら、水溶性オーバーコートは、疎水性である記録層との密着に劣り、しばしば、ハンドリング中に剥離が生じる問題があった。又、水溶性オーバーコートは、吸湿性が強い為、合紙と接着して露光機内で搬送故障を生じたり、露光後現像までの間に高湿度下に放置される場合に、記録層との密着性が変化して現像時のアルカリに対する溶解性に影響を与えて感度が不安定にさせたりする欠点を有していた。更に、露光時に発生する熱が、水溶性オーバーコートに放熱することで、熱効率が下がり、結果として感度が低下するという重大な欠点を有していた。
【0005】
さらに、特許文献4(特開2000−235255号公報)には、平均高さが1〜5μmの凹凸を、静電スプレーによる感材表面への樹脂固着、又は樹脂微粒子の感光層添加で形成することによって耐傷性を改良する技術が記載されている。しかしながら、樹脂固着では樹脂の固着が不十分な場合、露光時セッター内で脱離が発生し光学系を汚染するという問題があり、又樹脂微粒子の感光層添加は、感光層塗布液内で沈降が発生して塗布乾燥時に均一な凹凸形状が形成できないといった致命的な欠陥を有していた。更に、アルカリ可溶性のない樹脂を添加するため、現像浴内で該樹脂が析出、蓄積し、更に版上に再転写して印刷時の汚れとなる問題があり、これを避けるためには、頻繁に煩雑な現像液交換が必要となり実用上の製版効率を著しく低下させてしまうことが判明した。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−285275号公報
【特許文献2】
特開2001−14222号公報
【特許文献3】
特開2002−311570号公報
【特許文献4】
特開2000−235255号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題を解決することであり、実用上十分な耐傷性と高感度を兼ね備えつつ、現像ランニング安定性の改善された感熱性平版印刷版の製版方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、光を吸収し熱を発生する物質と、アルカリ水溶液可溶性樹脂と、該アルカリ水溶液可溶性樹脂と相分離し表面突起を形成する樹脂とを含有する記録層を有する感熱性平版印刷版を、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含有するアルカリ現像液で現像処理する平版印刷版の製版方法によって、上記目的を達成できた。
【0009】
上記発明は、下記のような検討および発見に基づいている。
アルカリ水溶液可溶性樹脂と相分離する樹脂の添加によって記録層表面に微細な突起を形成することができ、耐傷性を向上させることが見出された。この突起部分が引っ掻き傷、擦り傷に対する応力を緩和するものと推測される。しかしながら、相分離する樹脂は、アルカリ水溶液である現像液の浸透速度が極端に遅く、短時間に処理量が集中した場合、凝集体となって現像液表面に浮遊して版材表面に再転写することが見られた。そこで、相分離する樹脂を分散できる化合物を鋭意検討したところ、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を現像液に添加することで凝集体の発生を抑制できることが見出された。
検討を進めたところ、該現像液を用いることで感度が向上することも確認された。更に解析を進めたところ、粗面化支持体上での該樹脂の相分離による突起形成は厚み依存性が存在し、砂目の深い凹部(すなわち、記録層の厚い部分)で相分離突起が大きく、しかも数か多く、砂目の凸部(すなわち、記録層の薄い部分)で相分離突起が小さく少ないことが判明した。上記現像液を使用すると、該樹脂の相分離突起部分が、現像初期に分散除去されて現像液の記録層内への浸透パスとなるが、相分離突起が多い記録層の厚い部分に多くの浸透パスができ、薄い部分では少なくなることによって、記録層厚みによる溶解速度の不均一が解消され、感度が向上したと推定される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に用いる感熱性平版印刷版および製版方法について順次説明する。
【0011】
[感熱性平版印刷版]
本発明に用いる感熱性平版印刷版は、光を吸収し熱を発生する物質と、アルカリ水溶液可溶性樹脂と、該アルカリ水溶液可溶性樹脂と相分離して表面に突起を形成させる樹脂とを含有する記録層を有することを特徴とする。感熱性平版印刷版の記録層が多層構成である場合には、上記の表面に突起を形成させる樹脂を含有する記録層は、最上層の記録層として用いられる。
【0012】
上記の相分離して表面に突起を形成させるとは、該樹脂は記録層塗布液中では均一に溶解しているが、塗布乾燥の際に相分離して表面に突起を形成させることを意味し、従来の無機粒子、金属粒子、有機粒子の微粒子分散物を塗布液に添加して形成する表面突起とは異なる。
【0013】
本発明の表面突起の水平方向の大きさ(平均径)の測定には、一般には、光学顕微鏡、電子顕微鏡等が用いられる。表面突起の高さの測定には、電子顕微鏡による断面測定、原子間力顕微鏡(AFM)測定等が用いられる。
本発明の表面突起の平均径は0.01μm〜20μmが好ましく、0.03μm〜10μmがより好ましく、0.05μm〜5μmが最も好ましい。この範囲内で耐傷性に対する良好な効果が得られる。平均径が0.01μmを下回ると凹凸の形成が不十分で耐傷性に対する効果が無い。20μmを上回ると印刷物の解像度が悪くなったり、下層との接着性が悪くなったり、表面付近の突起が取れ易くなったりする。
また、表面突起の高さは5.0nm〜1000nmが好ましく、10nm〜800nmがより好ましく、20nm〜500nmが最も好ましい。
上記の表面突起の平均径および高さは、アルカリ水溶液可溶性樹脂と相分離して表面に突起を形成させる樹脂の極性、塗布溶剤、記録層添加剤、アルカリ水溶液可溶性樹脂の極性、乾燥条件(温度、時間、湿度、圧力等)、添加量を選択することでにより制御できる。
【0014】
上記のような、アルカリ水溶液可溶性樹脂と相分離して表面に突起を形成させる樹脂としては、長鎖アルキル基含有ポリマーが好ましい。
なお、以下では、アルカリ水溶液可溶性樹脂を、単にアルカリ可溶性樹脂ともいう。
【0015】
(長鎖アルキル基含有ポリマー)
相分離して最表面に突起を形成させる長鎖アルキル基含有ポリマーとしては、少なくとも1種の炭素数6以上、好ましくは炭素数12以上の長鎖アルキル基を含有するモノマーを重合して得られるポリマーが好ましい。
上記の炭素数6以上の長鎖アルキル基含有モノマーとしては、分子内に付加重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましく、溶剤溶解性や感熱性平版印刷版を作製した場合の耐傷性改良効果、表面被覆性及び画像形成性への影響等の観点から、長鎖アルキル基を有するアクリレート系、メタクリレート系、アクリルアミド系、メタクリルアミド系、スチレン系、ビニル系、ビニルエーテル系、マレイン酸系、フマル酸系などの化合物であることが好ましい。
このような長鎖アルキル基含有モノマーとして、具体的に下記一般式(I)のモノマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
【化1】
【0017】
一般式(I)中、nは6〜40の整数を表す。より好ましくは10〜30の整数、最も好ましくは12〜20の整数である。Xは2価の連結基を表す。Y、Y’及びY”は1価の有機基を表す。
【0018】
Xが表す2価の連結基の具体例としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐、鎖状または環状のアルキレン基、炭素数2〜20の直鎖または分岐、鎖状または環状のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリレン基(単環、複素環)、−OC(=O)−、−OC(=O)Ar−、−OC(=O)O−、−OC(=O)OAr−、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−SO2NR−、−SO2NAr−、−O−、(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−アリレンオキシ、ポリアリレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−C(=O)Ar−、−C(=O)−、−SO2O−、−SO2OAr−、−OSO2−、−OSO2Ar−、−NRSO2−、−NArSO2−、−NRC(=O)−、−NArC(=O)−、−NRC(=O)O−、−NArC(=O)O−、−OC(=O)NR−、−OC(=O)NAr−、−NAr−、−NR−、−N+RR’−、−N+RAr−、−N+ ArAr’−、−S−、−SAr−、−ArS−、ヘテロ環基(ヘテロ原子としては例えば、窒素、酸素およびイオウ等を少なくとも1個以上含み、3ないし12員環の単環、縮合環)、−OC(=S)−、−OC(=S)Ar−、−C(=S)O−、−C(=S)OAr−、−C(=S)OAr−、−C(=O)S−、−C(=O)SAr−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)NR−、−ArC(=O)NAr−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)S−、−ArC(=S)O−、−ArO−、−ArNR−等が挙げられる。ここで、R及びR’はH、直鎖または分岐、鎖状または環状のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、Ar及びAr’はアリール基を表す。
【0019】
上記の連結基は、ここで挙げた連結基を2種類以上組み合わせて連結基を形成していても良い。このような連結基としては、炭素数6〜20のアリレン基(単環、複素環)、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−O−(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−アリレンオキシ、ポリアリレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−C(=O)−、−C(=O)Ar−、−S−、−SAr−、−ArS−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArO−、−ArNR−等が好ましく、炭素数6〜20のアリレン基(単環、複素環)、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−O−(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−アリレンオキシ、ポリアリレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−SAr−、−ArS−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArO−、−ArNR−等がより好ましい。
【0020】
また、上記連結基は置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐、鎖状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20の直鎖又は分岐、鎖状又は環状のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリレン、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のカルバモイルオキシ基、炭素数1〜20のカルボンアミド基、炭素数1〜20のスルホンアミド基、炭素数1〜20のカルバモイル基、炭素数0〜20のスルファモイル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のN−アシルスルファモイル基、炭素数1〜20のN−スルファモイルカルバモイル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のイミノ基、炭素数3〜20のアンモニオ基、カルボキシル基、スルホ基、オキシ基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜20のアリールスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基、炭素数1〜20のウレイド基、炭素数2〜20のヘテロ環基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数0〜20のスルファモイルアミノ基、炭素数2〜20のシリル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0021】
また、Y、Y’及びY”の具体例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水素原子、炭素数1〜50の直鎖又は分岐、鎖状又は環状のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ヘプタフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、t−ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル等)、炭素数2〜50の直鎖又は分岐、鎖状又は環状のアルケニル基(例えばビニル、1−メチルビニル、シクロヘキセン−1−イル等)、炭素数2〜50のアルキニル基(例えば、エチニル、1−プロピニル等)、炭素数6〜50のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、アントリル等)、炭素数1〜50のアシルオキシ基(例えば、アセトキシ、テトラデカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、炭素数2〜50のアルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、2−メトキシエトキシカルボニルオキシ基など)、炭素数7〜50のアリールオキシカルボニルオキシ基(例えばフェノキシカルボニルオキシ基など)、炭素数1〜50のカルバモイルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ等)、炭素数1〜50のカルボンアミド基(例えば、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、アセトアミド、N−メチルホルムアミド、ベンツアミド等)、炭素数1〜50のスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ドデカンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド等)、炭素数1〜50のカルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−メシルカルバモイル等)、炭素数0〜50のスルファモイル基(例えば、N−ブチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)スルファモイル等)、炭素数1〜50のアルコキシ基(例えば、メトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、オクチルオキシ、t−オクチルオキシ、ドデシルオキシ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エトキシ、ポリアルキレンオキシ等)、炭素数6〜50のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、4−メトキシフェノキシ、ナフトキシ等)、炭素数7〜50のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル等)、
【0022】
炭素数2〜50のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等)、炭素数1〜50のN−アシルスルファモイル基(例えば、N−テトラデカノイルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル等)、炭素数1〜50のN−スルファモイルカルバモイル基(例えばN−メタンスルホニルカルバモイル基など)、炭素数1〜50のアルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル、オクチルスルホニル、2−メトキシエチルスルホニル、2−ヘキシルデシルスルホニル等)、炭素数6〜50のアリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、4−フェニルスルホニルフェニルスルホニル等)、炭素数2〜50のアルコキシカルボニルアミノ基(例えば、エトキシカルボニルアミノ等)、炭素数7〜50のアリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ、ナフトキシカルボニルアミノ等)、炭素数0〜50のアミノ基(例えばアミノ、メチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、アニリノ、モルホリノ等)、炭素数3〜50のアンモニオ基(例えば、トリメチルアンモニオ基、ジメチルベンジルアンモニオ基など)、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、スルホ基、メルカプト基、炭素数1〜50のアルキルスルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル、オクタンスルフィニル等)、炭素数6〜50のアリールスルフィニル基(例えば、ベンゼンスルフィニル、4−クロロフェニルスルフィニル、p−トルエンスルフィニル等)、炭素数1〜50のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、シクロヘキシルチオ等)、炭素数6〜50のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオ等)、炭素数1〜50のウレイド基(例えば、3−メチルウレイド、3,3−ジメチルウレイド、1,3−ジフェニルウレイド等)、炭素数2〜50のヘテロ環基(ヘテロ原子としては例えば、窒素、酸素及びイオウ等を少なくとも1個以上含み、3ないし12員環の単環、縮合環で、例えば、2−フリル、2−ピラニル、2−ピリジル、2−チエニル、2−イミダゾリル、モルホリノ、2−キノリル、2−ベンツイミダゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾオキサゾリル等)、炭素数1〜50のアシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル等)、炭素数0〜50のスルファモイルアミノ基(例えば、N−ブチルスルファモイルアミノ、N−フェニルスルファモイルアミノ等)、炭素数3〜50のシリル基(例えば、トリメチルシリル、ジメチル−t−ブチルシリル、トリフェニルシリル等)、アゾ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)が挙げられる。上記の置換基はさらに置換基を有していてもよく、その置換基の例としてはここで挙げた置換基が挙げられる。
【0023】
また、Y、Y’及びY”のうち少なくとも2つが互いに環を形成していても良く、このような例としては脂肪族環、芳香族環、複素環基が挙げられる。
【0024】
上記一般式(I)の具体例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、下記において、n及びmは6〜40の整数を表す。
【0025】
【化2】
【0026】
【化3】
【0027】
相分離して最表面に突起を形成させる長鎖アルキル基含有ポリマーは、上記長鎖アルキル基含有モノマーと1種類以上の他のモノマーを組み合わせて共重合したポリマーであっても良く、上記長鎖アルキル基含有モノマーの組成モル比は、表面微小突起形成の観点から10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが最も好ましい。
【0028】
上記長鎖アルキル基含有モノマーと共重合させるモノマーとしては、アルカリ現像液に対する溶解性、及び、感度の観点から、親水性モノマーであることが好ましい。親水性モノマーとしては、アルカリ現像液に対する溶解性、及び感度の観点から下記一般式(II)で表される化合物が好ましい。
【0029】
【化4】
【0030】
式中、Zは親水性基を含む1価の基を表し、W、W’及びW”は1価の有機基を表す。W、W’及びW”は、一般式(I)中の1価の有機基Y、Y’及びY”と同義である。Zにおける親水性基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、オニウム基(アンモニウム、スルホニウム、ジアゾニウム、ヨードニウム、イミニウム等)、アミド基、カルバモイルオキシ基、炭素数1〜2000の(ポリ)アルキレンオキシド基、及び酸性基が挙げられる。中でも親水性基としては、アルカリ現像液に対する溶解性、及び、感度の観点からpKa12以下の酸性基が好ましい。pKa12以下の酸性基としては、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基が、アルカリ現像液に対する溶解性、感度の点で好ましい。
【0031】
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)活性イミド基
(−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R)
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO3H2)
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0032】
上記(1)のフェノール基を有する一般式(II)のモノマーとしては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0033】
上記(2)スルホンアミド基を有するモノマーとしては、上記構造のスルホンアミド基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、又はビニロキシ基と、スルホンアミド基とを分子内に有する低分子化合物が好ましい。例えば、下記一般式(i)〜(v)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化5】
【0035】
上記一般式(i)〜(v)中、X1及びX2は、各々独立に、−O−又は−NR7−を表す。R1及びR4は、各々独立に、水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R9、R12、及び、R16は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、及び、R13は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6及びR17は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10及びR14は、各々独立に、水素原子又は−CH3を表す。R11及びR15は、各々独立に、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリレン基又はアラルキレン基を表す。Y1及びY2は、それぞれ独立に単結合、又は−CO−を表す。
【0036】
一般式(i)〜(v)で表される化合物のうち、本発明の画像記録要素では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0037】
上記(3)活性イミド基を有するモノマーとしては、前記構造式で表される活性イミド基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。中でも、下記構造式で表される活性イミド基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物が好ましい。
【0038】
【化6】
【0039】
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0040】
上記(4)カルボン酸基を有するモノマーとしては、例えば、カルボン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。上記(5)スルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、スルホン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。上記(6)リン酸基を有するモノマーとしては、例えば、リン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。
【0041】
上記のpKa12以下の酸基を有するモノマーの中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基又は(4)カルボン酸を有するモノマーが好ましく、(1)フェノール基又は(2)スルホンアミド基又は(4)カルボン酸を有するモノマーが、アルカリ現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を十分に確保する点から最も好ましい。
【0042】
上記一般式(II)の親水性モノマーは、ポリマー成分中に90モル%以下の組成で共重合することが好ましく、80モル%以下の組成で共重合することが耐傷性効果の観点からより好ましい。
【0043】
また、本発明の相分離する樹脂には、長鎖アルキル基含有モノマーと親水性モノマー成分以外に、他のモノマーを併用することもできる。このような長鎖アルキル基含有モノマー及び親水性モノマー以外のモノマー成分は、共重合体成分中に50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることが耐傷性効果の観点から、より好ましい。
長鎖アルキル基含有モノマーと親水性モノマー以外のモノマーとしては、下記(7)〜(17)に挙げる化合物を例示することができる。
【0044】
(7)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(8)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸アミル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキレート等のアクリレート。
(9)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等のメタクリレート。
【0045】
(10)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド又はメタクリルアミド。
(11)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(12)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
【0046】
(13)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(14)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(15)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(16)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(17)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
【0047】
上記長鎖アルキル基含有モノマーと親水性モノマーの共重合方法としては、従来知られている、グラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。また、この共重合において、長鎖アルキル基含有モノマーの共重合成分は、2種類以上混合して用いることもできる。
【0048】
本発明の長鎖アルキル基含有ポリマーとしては、上記のようにして得られる共重合体が用いられるが、一般式(III)で表される構造単位を有するポリマーであることがより好ましい。
【0049】
【化7】
【0050】
ここで、nは6〜40の整数を表す。Y、Y’及びY”は1価の有機基を表す。Xは2価の連結基を表す。Z’は親水性モノマー単位を表す。mは0.1≦m<1の実数を表す。耐傷性改良効果、溶解性への影響等の観点からより好ましくは、0.2≦m≦0.9であり、更に好ましくは0.25≦m≦0.85である。これらY、Y’、Y” 及びXの具体例としては、一般式(I)のものと同義のものが挙げられる。Z’の具体例としては、一般式(II)で表されるモノマーからなる構造単位が挙げられる。
【0051】
更に、本発明の長鎖アルキル基含有ポリマーとしては、一般式(IV)であることがより好ましい。
【化8】
【0052】
上記一般式(IV)において、点線のメチル基はあってもなくても良く、X及びZ’としては、一般式(III)のX、Z’と同義のものが好ましく、mは、耐傷性改良効果、溶解性への影響等の観点から0.2≦m≦0.9が好ましく、0.25≦m≦0.85がより好ましく、0.30≦m≦0.60が最も好ましい。nは6〜40整数であり、好ましくは10〜30の整数、より好ましくは12〜20の整数である。
【0053】
上記(IV)の親水性モノマー単位Z’としては、ヒドロキシ基、炭素数1〜2000の(ポリ)アルキレンオキシド基、フェノール基、スルホンアミド基、活性イミド基、カルボン酸基、スルホン酸基を有する骨格が、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に確保する点から好ましく、フェノール基、スルホンアミド基、活性イミド基、カルボン酸基、スルホン酸基を有する骨格が感度の点からより好ましく、カルボン酸を有する骨格がもっとも好ましい。上記(IV)のXとしては、−C(=O)O−が最も好ましい。
【0054】
また、一般式(III)で表される構造単位を有するポリマーの共重合成分として、前述の(7)〜(18)に挙げた化合物を共重合体成分中50モル%以下の組成比で用いることができる。本発明の効果の観点から30モル%以下がより好ましい。
【0055】
本発明に用いる相分離して最表面に突起を形成させる長鎖アルキル基含有ポリマーとしては、重量平均分子量が2,000以上、数平均分子量が1,000以上のものが好ましく用いられる。さらに好ましくは、ポリスチレン換算で重量平均分子量が5,000 〜5,000,000で、特に好ましくは5,000〜2,000,000、更に好ましくは10,000〜1,000,000である。このようなポリマーは、1種類を用いてもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
相分離して最表面に突起を形成させる長鎖アルキル基含有ポリマー中の残留モノマー量は、本発明の感熱性平版印刷版を積層する際に保護紙(合紙)、支持体裏面への転写や感熱性平版印刷版製造時のローラへの転写等の問題から、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
以下に本発明の長鎖アルキル基含有ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0058】
【化9】
【0059】
【化10】
【0060】
【化11】
【0061】
【化12】
【0062】
【化13】
【0063】
【化14】
【0064】
【化15】
【0065】
【化16】
【0066】
【化17】
【0067】
本発明に用いる上記長鎖アルキル基含有ポリマーとしては、重量平均分子量が2,000以上、数平均分子量が1,000以上のものが好ましく用いられる。さらに好ましくは、ポリスチレン換算で重量平均分子量が5,000 〜5,000,000で、特に好ましくは5,000〜2,000,000、更に好ましくは10,000〜1,000,000である。このようなポリマーは、1種類を用いてもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
上記長鎖アルキル基含有ポリマーの記録層中の含有量は、記録層固形分に対し、0.5〜30質量%であり、1〜20質量%がさらに好ましい。含有量が0.5質量%を下回ると凹凸の形成が不十分で耐傷性に対する効果が無い。30質量%を上回ると記録層の強度が低下して耐刷性が低下する。
【0069】
相分離して最表面に突起を形成させる長鎖アルキル基含有ポリマーを含む記録層表面の空中水滴接触角は60度から140度の範囲であることが好ましい。また、相分離して最表面に突起を形成させる長鎖アルキル基含有ポリマーを含む感熱性平版印刷版の動摩擦係数は0.38〜0.70の範囲にあることが好ましい。
【0070】
(アルカリ水溶液可溶性樹脂)
本発明に用いられるアルカリ水溶液可溶性樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、またはm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂、およびピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。さらに、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を挙げることもできる。
【0071】
フェノール基を側鎖に有する化合物としては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0072】
前記共重合体は、フェノール基を側鎖に有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが現像ラチチュードを充分に向上させるために好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。
【0073】
本発明の上記共重合体には、上記フェノール基を側鎖に有する化合物以外のアルカリ可溶性基を有する化合物、例えば、前記一般式(II)の酸性基が(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基、(4)カルボン酸基、(5)スルホン酸基、または(6)リン酸基である化合物を、共重合成分として用いることができる。
【0074】
また、本発明の上記共重合体の共重合成分としては、酸性基を含まない他の化合物を用いることもできる。上記(2)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物の例としては、前記の長鎖アルキル基含有ポリマーにおいて共重合してもよい成分として例示した(7)〜(17)の化合物が挙げられる。
【0075】
(その他のアルカリ可溶性樹脂)
本発明の記録層には、上記フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂以外のアルカリ可溶性樹脂を含有することができる。かかるアルカリ可溶性樹脂としては、前記一般式(II)の酸性基が(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基、(4)カルボン酸基、(5)スルホン酸基、および(6)リン酸基から選ばれた少なくとも一つの酸性基を有する化合物と、前記(7)〜(17)の化合物から選ばれた少なくとも一つの化合物との共重合体が挙げられる。
【0076】
上記酸性基の中では、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基、(4)カルボン酸基がより好ましく、カルボン酸基が特に好ましい。このようなカルボン酸基を有する共重合化合物としては、カルボン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1個以上有する化合物が挙げられる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。また、側鎖にヒドロキシル基を有するアクリレート又はメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルエチルアクリレート又はメタクリレート等)のヒドロキシル基と、二塩基酸(例えば、コハク酸、グルタル酸等)とのモノエステルである不飽和カルボン酸も好適なものとして挙げられる。
【0077】
前記(7)〜(17)の化合物の中で、より好ましいものとしては、(8)および(9)のアルキルアクリレート又はメタクリレートが挙げられる。
【0078】
(光を吸収し熱を発生する物質)
本発明の記録層に用いられる光を吸収し熱を発生する物質としては、赤外線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザへの適合性の観点から、波長760nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料または顔料が好ましく挙げられる。
【0079】
染料としては、市販の染料、例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0080】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等の公報、米国特許第4973572号明細書等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許第434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0081】
また、米国特許第5,156,938号名宰相記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号等の公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号の各公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0082】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0083】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の記録層で使用した場合に、アルカリ溶解性樹脂との高い相互作用を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0084】
【化18】
【0085】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、−X2−L1または下記に構造を示す基を表す。ここで、X2は酸素原子または、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0086】
【化19】
【0087】
R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0088】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0089】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638号公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360号公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0090】
【化20】
【0091】
【化21】
【0092】
【化22】
【0093】
【化23】
【0094】
前記一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14およびR15〜R20は互いに独立に水素原子またはハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、またはアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組み合わせた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、および、R9〜R14およびR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0095】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0096】
【化24】
【0097】
【化25】
【0098】
前記一般式(c)中、Y3およびY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、またはテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24およびR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、またはアミノ基を表す。また、式中Za−は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0099】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0100】
【化26】
【0101】
【化27】
【0102】
前記一般式(d)中、R29〜R32は各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。R33およびR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、またはハロゲン原子を示す。nおよびmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、またはR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29および/またはR30はR33と、またR31および/またはR32はR34と結合して環を形成しても良く、さらに、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X2およびX3は各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、X2およびX3の少なくとも一方は水素原子またはアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基またはペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0103】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0104】
【化28】
【0105】
【化29】
【0106】
前記一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。R36とR37、R40とR41、R44とR45およびR48とR49は、連結して脂肪族環、芳香族環または複素環を形成してもよく、その環は縮合環を有してもよい。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0107】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0108】
【化30】
【0109】
本発明において赤外線吸収剤として使用される顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0110】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0111】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0112】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点から顔料の粒径は0.01μm以上であることが好ましく、また、記録層の均一性の点から10μm以下であることが好ましい。
【0113】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0114】
これらの顔料もしくは染料は、記録層の全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。顔料もしくは染料の添加量が0.01質量%以上とすることで感度を充分に確保することができ、また50質量%以下の範囲とすることで、記録層の均一性や、記録層の膜強度を維持できる。
【0115】
(その他の記録層成分)
上述された本発明の記録層には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。
例えば、他のオニウム塩、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物、多官能アミン化合物等、添加するとアルカリ水可溶性高分子(アルカリ可溶性樹脂)の現像液への溶解阻止機能を向上させるいわゆる溶解抑止剤を添加することが好ましく、中でも、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点で好ましい。分解性溶解抑止剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩および、o−キノンジアジド化合物が好ましく、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のオニウム塩がより好ましい。
【0116】
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えばS.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書、特開平3−140140号、特開2002−229186号の各公報に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第5,041,358号、同第4,491,628号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同5,041,358号、同4,491,628号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。
これらのオニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩が特に好ましい。特に、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。
【0117】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、およびパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0118】
好適なキノンジアジド類としてはo−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステルまたはスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号および同第3,188,210号明細書に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0119】
さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号などの各公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものをあげることができる。
【0120】
分解性溶解抑止剤であるオニウム塩、および/または、o−キノンジアジド化合物の添加量は好ましくは記録層の全固形分に対し、1〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%、特に好ましくは1〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0121】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.1〜2質量%、特に好ましくは0.1〜1.5質量%である。本発明に係る添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
【0122】
また、分解性を有さない溶解抑止剤を併用してもよく、好ましい溶解抑止剤としては、特開平10−268512号公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、同じく特開平11−190903号公報に詳細に記載されているラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有し着色剤を兼ねた酸発色性色素、同じく特開2000−105454号公報に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0123】
また別の添加剤としては、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することができる。また、後述する界面活性剤、画像着色剤、および、可塑剤も使用可能な添加剤である。
【0124】
環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3’’,4’’−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類およびカルボン酸類などが挙げられる。
【0125】
上記の環状酸無水物、フェノール類および有機酸類の記録層中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0126】
また、これら以外にも、本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物等を目的に応じて適宜添加することができる。
【0127】
また、本発明に係る記録層塗布液中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、欧州特許第950517号明細書に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業(株)製)等が挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることが出来る。
上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0128】
また、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を発生する化合物(光酸発生剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号および同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0129】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、記録層全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で記録層中に添加することができる。
【0130】
更に、記録層中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸またはメタクリル酸のオリゴマーおよびポリマー等が用いられる。
【0131】
[感熱性平版印刷版の形成]
本発明の感熱性平版印刷版は支持体上に記録層を設けることによって形成される。記録層は、単層であってもよいし、積層構成であってもよい。単層及び積層構成の最上層には、光を吸収し熱を発生する物質、フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂および長鎖アルキル基含有ポリマーのごときフェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂と相分離して表面に突起を形成する樹脂を含有する上述の記録層が適用される。
【0132】
積層構成の下層は、アルカリ可溶性樹脂を主成分として含有し、長鎖アルキル基含有ポリマーを含有しないことが好ましい。下層に含有されるアルカリ可溶性樹脂としては、前記フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂、及び前記一般式(II)の酸性基が、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基、(4)カルボン酸基、(5)スルホン酸基、及び(6)リン酸基から選ばれる少なくとも一つの酸性基である化合物を共重合成分とする共重合体から選ばれる樹脂であることが好ましい。
【0133】
より好ましい下層に含有されるアルカリ可溶性樹脂としては、前記フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂、及び前記一般式(II)の酸性基が、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基および(4)カルボン酸基から選ばれる少なくとも一つの酸性基である化合物と、前記の長鎖アルキル基含有ポリマーにおいて共重合してもよい成分として例示した(7)〜(17)の化合物の少なくとも一つとを共重合成分とする共重合体であることが好ましい。
【0134】
積層構成の下層には、前記の、光を吸収し熱を発生する物質 及びその他の記録層成分を適宜含有させることができる。
【0135】
本発明の感熱性平版印刷版は、通常上記の記録層成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより形成される。
用いられる溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。
【0136】
また、塗布に用いる溶剤としては、原則的に、記録層上層に用いるアルカリ可溶性樹脂と下層に用いるアルカリ可溶性樹脂に対して溶解性の異なるものを選ぶことが好ましいが、新たな機能を付与するために積極的に部分相溶を行うことも可能である。
【0137】
2つの層を分離して形成する場合の方法としては、例えば、下層に含まれる共重合体と上層に含まれるアルカリ可溶性樹脂との溶剤溶解性の差を利用する方法、記録層上層を塗布した後、急速に溶剤を乾燥、除去させる方法等が挙げられる。以下、これらの方法について詳述するが、2つの層を分離して塗布する方法はこれらに限定されるものではない。
【0138】
下層に含まれる共重合体と上層に含まれるアルカリ可溶性樹脂との溶剤溶解性の差を利用する方法は、アルカリ可溶性樹脂を塗布する際に、下層に含まれるアルカリ可溶性樹脂及びこれと併用される共重合体のいずれもが不溶な溶媒系を用いるものである。これにより、二層塗布を行っても、各層を明確に分離して塗膜にすることが可能になる。例えば、メチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノ−ル等のアルカリ可溶性樹脂を溶解する溶剤に不溶な下層成分を構成する特定モノマーを共重合成分として含む共重合体を選択し、該下層成分を構成する共重合体を溶解する溶剤系を用いて該共重合体主体とする下層を塗布・乾燥し、その後、アルカリ可溶性樹脂を主体とする上層をメチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノ−ル等下層成分を溶解しない溶剤を用いて塗布することにより二層化が可能になる。
【0139】
一方、二層目を塗布後に極めて速く溶剤を乾燥させる方法は、帯状支持体の走行方向に対してほぼ直角に設置したスリットノズルより高圧エア−を吹き付けることや、蒸気等の加熱媒体を内部に供給されたロ−ル(加熱ロ−ル)より帯状支持体の下面から伝導熱として熱エネルギ−を与えること、あるいはそれらを組み合わせることにより達成できる。
2つの層を部分的に相溶させる方法としては、上記溶剤溶解性の差を利用する方法、2層目を塗布後に極めて速く溶剤を乾燥させる方法何れにおいても、その程度を調整することによって可能となる。
【0140】
塗布液中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
記録層上層塗布時に下層へのダメージを防ぐため、記録層上層の塗布方法は非接触式であることが望ましい。また接触型ではあるが溶剤系塗布に一般的に用いられる方法としてバーコーター塗布を用いることも可能であるが、下層へのダメージを防止するために順転駆動で塗布することが望ましい。
【0141】
本発明の記録層塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、記録層全固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0142】
この感熱性平版印刷版の下層の乾燥後塗布量は、0.5〜4.0g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.6〜2.5g/m2の範囲である。この範囲内で、良好な耐刷性、画像再現性及び感度が得られる。
また画像形成層上層の乾燥後塗布量は0.05g/m2〜1.0g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.08〜0.7g/m2の範囲である。この範囲内で、良好な現像ラチチュード、耐傷性、及び感度が得られる。
上下層を合わせた塗布量および単層系での塗布量としては、0.6g/m2〜4.0g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.7〜2.5g/m2の範囲である。この範囲内で、良好な耐刷性、画像再現性及び感度が得られる。
【0143】
[支持体]
本発明の感熱性平版印刷版に使用される支持体としては、必要な強度と耐久性を備えた寸度的に安定な板状物が挙げられ、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が含まれる。
【0144】
本発明の支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。
【0145】
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0146】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0147】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなり、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなったりする。陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0148】
[下塗層]
本発明に適用される感熱性平版印刷版は、支持体上に少なくとも画像形成層上層と下層を積層して設けたものであるが、必要に応じて支持体と下層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0149】
また、下塗層にオニウム基を有する化合物を含有することも好ましい。オニウム基を有する化合物は、特開2000−10292号、特開2000−108538号、特開2000−241962号等の公報に詳述されている。
なかでも好ましいものとして、ポリ(p−ビニル安息香酸)などで代表される構造単位を分子中に有する高分子化合物群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。具体例としては、p−ビニル安息香酸とビニルベンジルトリエチルアンモニウム塩との共重合体、p−ビニル安息香酸とビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドとの共重合体などが挙げられる。
【0150】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の濃度0.005〜10質量%溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、感熱性平版印刷版の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。この範囲内で良好な耐刷性が得られる。
【0151】
[バックコート層]
本発明の感熱性平版印刷版の支持体裏面には必要に応じてバックコートを設けることができる。かかるバックコートとしては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物、および特開平6−35174号公報記載の有機または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物などの被覆層が挙げられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4などのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手しやすく、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており、特に好ましい。
【0152】
[製版方法]
本発明の感熱性平版印刷版は熱により画像形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられるが、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザ、YAGレーザ等の固体高出力赤外線レーザによる露光が好適である。
【0153】
(アルカリ現像液)
露光された感熱性平版印刷版は、アルカリ現像液(以下、単に現像液ともいう。)によって現像される。本発明の製版方法で使用する現像液は、アルカリ水溶液にアニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを必須とする。
本発明における界面活性剤の効果は、露光部の溶解した樹脂の分散性を向上させ、支持体の凹部に残存するアルカリ可溶性樹脂のアルカリに対する溶解性を上げることにより、高鮮鋭な画像形成ができることにある。また、溶解した樹脂の不溶成分により発生するカスを分散する効果もある。
【0154】
アニオン界面活性剤としては,脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などが挙げられる。中でも、カルボン酸型に分類される脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、スルホン酸型に分類されるヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類、ジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、オレフィンスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などが好適に挙げられる。
【0155】
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン型、アミドベタイン型、イミダゾリニウムベタイン型、アルキルグリシン型及びアルキルアラニン型といったアルキルアミノカルボン酸類、スルホベタイン型等が挙げられ、特にアルキルグリシン型、アルキルアラニン型などのアルキルアミノカルボン酸類が好適に挙げられる.
【0156】
本発明で使用する現像液は、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤のいずれかの1種以上を含むことを必須とするが、双方を含んでもよい。
現像液中における、上記界面活性剤の含有量としては、0.001〜10質量%が好ましく、0.005〜1質量%がより好ましく、0.01〜0.5質量%が最も好ましい。
前記含有量が0.001質量%未満であると、画像形成性の向上および不溶物の発生に対する抑制効果に乏しく、10質量%を越えると、現像力が低下することがある。
【0157】
本発明の現像液で用いるアルカリ水溶液は、従来公知のアルカリ水溶液の中から適宜選択することができる。中でも好適なアルカリ水溶液としては、ケイ酸アルカリ若しくは非還元糖と、塩基とからなる現像液が挙げられ、特にpH12.5〜14.0のものが好ましい。前記ケイ酸アルカリとしては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであり、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩、ケイ酸アンモニウムなどが挙げられる。ケイ酸アルカリは1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0158】
上記アルカリ水溶液は、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属又はアンモニウム基を表す。)との混合比率、及び濃度の調整により、現像性を容易に調節することができる。
前記アルカリ水溶液の中でも、前記酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2O:モル比)が0.5〜3.0のものが好ましく、1.0〜2.0のものがより好ましい。前記SiO2/M2Oが0.5未満であると、アルカリ強度が強くなっていくため、支持体のアルミニウム板をエッチングしてしまうといった弊害を生ずることがあり、3.0を超えると、現像性が低下することがある。
【0159】
また、現像液中のケイ酸アルカリの濃度としては、アルカリ水溶液の質量に対して1〜10質量%が好ましく、3〜8質量%がより好ましく、4〜7質量%が最も好ましい。この濃度が1質量%未満であると現像性、処理能力が低下することがあり、10質量%を超えると沈澱や結晶を生成しやすくなり、さらに廃液時の中和の際にゲル化しやすくなり、廃液処理に支障をきたすことがある。
【0160】
非還元糖と塩基とからなる現像液において、非還元糖とは遊離性のアルデヒド基やケトン基を持たないために還元性を有しない糖類を意味し、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類される。本発明ではこれらのいずれも好適に用いることができる。
【0161】
トレハロース型少糖類としては、例えばサッカロースやトレハロースが挙げられ、前記配糖体としては、例えばアルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。
糖アルコールとしては、例えばD,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシットなどが挙げられる。さらには、二糖類の水素添加で得られるマルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)なども好適に挙げることができる。
【0162】
上記のうち、非還元糖としては、糖アルコール、サッカロースが好ましく、中でも特に、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用がある点でより好ましい。
これらの非還元糖は単独でも、二種以上を組み合わせてもよく、現像液中に占める割合としては、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0163】
前記ケイ酸アルカリ若しくは非還元糖には、塩基としてアルカリ剤を従来公知の物の中から適宜選択して組み合わせることができる。
該アルカリ剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウムなどの無機アルカリ剤、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0164】
さらにモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も好適に挙げることができる。
【0165】
これらのアルカリ剤は単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。その理由は、非還元糖に対する添加量を調整することにより、広いpH領域においてpH調整が可能となるためである。
【0166】
また,本発明で使用する現像液は、上記のようなアルカリ水溶液にさらにアルカリ金属または第4アンモニウム陽イオンの塩を含有することが好ましい。
本発明においてこれらの塩類の効果は、露光部へのアルカリの浸透を向上させ、支持体の凹部に残存するアルカリ可溶性樹脂のアルカリに対する溶解性を上げることにより、高鮮鋭な画像形成ができる.その結果,現像液のアルカリ強度(pH)を低下させることができ、画像部の耐傷性を大きく良化する。
【0167】
現像液に含ませるアルカリ金属または第4アンモニウム陽イオンの塩類としては、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩,ホウ酸塩等の無機塩、また、蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、レブリン酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩、フマル酸塩,クエン酸塩,リンゴ酸塩等の有機酸塩があげられる。特に、カリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩が好ましい。
【0168】
本発明で使用する現像液は、上記化合物を1種単独で含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0169】
現像液中における上記化合物の効果は、アルカリ金属または第4アンモニウム陽イオンのモル濃度により依存することより、現像液中における上記化合物の含有量はアルカリ金属または第4アンモニウム陽イオン換算で0.01〜1モル/リットルが好ましく、0.05〜0.5モル/リットルがより好ましい。
前記含有量が、0.01モル/リットル未満であると、画像形成性の向上に対する効果に乏しく、1モル/リットルを越えると、画像形成性の向上に対する効果が変わらないばかりか、他の成分を不溶化させることがある。
【0170】
現像液には、さらに現像性能を高める目的で、以下のような添加剤を加えることができる。
例えば特開昭58−190952号公報に記載のEDTA、NTAなどのキレート剤、特開昭59−121336号公報に記載の[Co(NH3)6]Cl3、CoCl2・6H2Oなどの錯体、米国特許第4,374,920号明細書に記載のテトラメチルデシンジオールなどの非イオン性界面活性剤、特開昭55−95946号公報に記載のp−ジメチルアミノメチルポリスチレンのメチルクロライド4級化合物などのカチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載のビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸ソーダとの共重合体などの両性高分子電解質、特開昭57−192951号公報に記載の亜硫酸ソーダなどの還元性無機塩、特開昭59−75255号公報に記載の有機Si、Tiなどを含む有機金属界面活性剤、特開昭59−84241号公報に記載の有機ホウ素化合物、欧州特許第101010号明細書に記載のテトラアルキルアンモニウムオキサイドなどの4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0171】
また、現像液の表面張力としては、65dyne/cm以下が好ましく、特には60dyne/cm以下がより好ましい。現像液の表面張力は例えば振動ジェット法にて測定することができ、測定機器として自動・動的表面張力計 JET型がある。
【0172】
本発明におけるアルカリ現像液の使用態様は特に限定されるものではない。
近年では、特に製版・印刷業界において、製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版材用の自動現像機が広く用いられている。
この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。浸漬現像の際、現像液を版面に均一に供給することが好ましく、供給量としては0.5〜10ml/sec・cm2の範囲で供給することが望ましい。現像液を版面に供給する量は、搬送速度と現像液を供給する手段による供給量から規定でき、現像液を供給する手段としてはスプレー装置、循環ポンプによる対流などが挙げられる。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間などに応じて補充液を補充しながら処理することができる。
【0173】
この場合、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液を現像補充液として現像液中に加えることによって、長時間現像タンク中に現像液を交換することなく多量の平版印刷版材を処理できる。本発明のアルカリ現像処理液を使用するに際しても、この補充方式を採用することが好ましい態様である。その場合の現像補充液として、上に説明したアルカリ現像液の処方を用いることができる。
前記現像液及び現像補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて上記以外の種々の界面活性剤や有機溶剤などを添加することもできる。有機溶剤としてはベンジルアルコールなどが好ましい。また、ポリエチレングリコールもしくはその誘導体、又はポリプロピレングリコールもしくはその誘導体などの添加も好ましい。
さらに必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸又は亜硫酸水素酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩などの無機塩系還元剤、有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0174】
本発明の製版方法は、上記現像方式の他に、実質的に未使用の現像液で処理する、いわゆる使い捨て処理方式の現像に適用することも可能である。
【0175】
上記のアルカリ現像液を用いて現像処理された平版印刷版は、水洗水や界面活性剤などを含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液(ガム液)で後処理がなされる。この後処理は、これら公知の処理液を種々組み合わせて行うことができる。
【0176】
【実施例】
以下本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
【0177】
(合成例1:長鎖アルキル基含有ポリマーAの合成)
コンデンサー、攪拌機を取り付けた1000ml三口フラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール59gを入れ、80℃に加熱した。窒素気流下、n−メタクリル酸ステアリル42.0g、メタクリル酸16.0g、重合開始剤V−601(和光純薬製)0.714g及び1−メトキシ−2−プロパノール59gからなる溶液を2時間半かけて滴下した。更に、80℃で2時間反応させた。反応混液を室温に冷却して、1000mlの水に反応液を注ぎ込んだ。デカンテーション後、メタノールで洗浄し、得られた液状生成物を減圧乾燥することで長鎖アルキル基含有ポリマーA73.5gを得た。ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、重量平均分子量を測定した結果、66,000であった。
【0178】
(合成例2:長鎖アルキル基含有ポリマーBの合成)
コンデンサー、攪拌機を取り付けた1000ml三口フラスコに、1−メトキシー2−プロパノール 56.0gを入れ、80℃に加熱した。窒素気流下、n−メタクリル酸ドデシル50.9g、メタクリル酸 4.3g、重合開始剤V−601(和光純薬製)0.576g及び1−メトキシ−2−プロパノール56.0gからなる溶液を2時間半かけて滴下した。更に、80℃で2時間反応させた。反応混液を室温に冷却して、1000mlの水中に反応液を注ぎ込んだ。デカンテーション後、メタノールで洗浄し、得られた液状生成物を減圧乾燥することで長鎖アルキル基含有ポリマーB58.2gを得た。ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、重量平均分子量を測定した結果、60,000であった。
【0179】
(合成例3〜5:長鎖アルキル基含有ポリマーC、F、Iの合成)
合成例1又は合成例2と同様にして、下記表1に示した長鎖アルキル基含有モノマーと親水性モノマーを用い、本発明の長鎖アルキル基含有ポリマーC、F、Iを合成した。更にGPCにより分子量を測定した。測定した結果を表1に示す。
【0180】
【表1】
【0181】
(支持体の作製)
(a)機械的粗面化処理
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A 1050)を比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は一本目250rpm、二本目及び三本目200rpmであった。
【0182】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を10g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0183】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0184】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で175C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0185】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をNaOH濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板の溶解量は0.5g/m2に設定した。前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0186】
(f)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度25質量%水溶液で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0187】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸5.0g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0188】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をNaOH濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0189】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0190】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。いずれも硫酸濃度150g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.5g/m2であった。
【0191】
(k)シリケート処理
温度35℃の3号珪酸ソーダ水溶液で、ディップによるシリケート処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0192】
<支持体X>
上記(a)〜(k)の各工程を順に行い支持体Xを作製した。(e)工程でのアルミニウム板の溶解量は0.5g/m2に設定した。
【0193】
<支持体Y>
上記工程のうち(a)、(g)、(h)及び(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体Yを作製した。(e)工程でのアルミニウム板の溶解量は3.5g/m2に変更した。
【0194】
<支持体Z>
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A 1050)を苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温60℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗し、10g/l硝酸で中和洗浄後、水洗した。
これを印加電圧Va=20Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて、塩化水素濃度15g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温30℃の水溶液中で、500C/dm2の電気量で電気化学的な粗面化処理を行い水洗後、苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温40℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗した。次に、硫酸濃度15質量%、液温30℃の硫酸水溶液中でデスマット処理を行い水洗した。さらに、液温20℃の10質量%硫酸水溶液中、直流にて電流密度6A/dm2の条件下で、陽極酸化皮膜量が2.5g/m2相当となるように陽極酸化処理し、水洗、乾燥した。その後、珪酸ナトリウム1.0質量%水溶液で30℃において10秒間処理し、支持体Zを作製した。この支持体の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.48μmであった。
【0195】
(下塗り処理)
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体X, Y, Z上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は15mg/m2であった。
【0196】
<下塗り液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1.0g
【0197】
【化31】
【0198】
(感熱性平版印刷版の作製)
上記のようにして得られた支持体(X、Y、Z)、下記の2種の記録層(α、β)および記録層に含まれる長鎖アルキル基含有ポリマー(A、B、C、F、I)を表2に記載のように組み合わせて、実施例および比較例で用いる感熱性平版印刷版を作製した。
【0199】
(1)記録層αを有する感熱性平版印刷版
下塗り付支持体上に下記組成の記録層下層用塗布液を、ウェット塗布量が18.75ml/m2のワイヤーバーで塗布し、140℃の乾燥オーブンで50秒間乾燥し、乾燥塗布量0.85g/m2の記録層下層を得た。
得られた記録層下層の上に、下記組成の記録層上層用塗布液2を、ウェット塗布量が18.75ml/m2のワイヤーバーで塗布を行い、塗布後、乾燥オーブンで、140℃で60秒間乾燥し、総乾燥塗布量を1.10g/m2の重層の記録層αを有するポジ型感熱性平版印刷版を作製した。
【0200】
<記録層下層用塗布液>
【0201】
<記録層上層用塗布液2>
・クレゾールノボラック樹脂 0.35g
(PR−54046、住友ベークライト(株)製)
・下記表2に記載の高分子樹脂 0.03g
・シアニン染料(本明細書記載のIRa−7) 0.019g
・下記構造の高分子(化合物X) 0.042g
・下記構造の化合物(化合物Y) 0.0043g
・フッ素系界面活性剤 0.015g
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製30%溶液)
・フッ素系界面活性剤 0.0033g
(メガファックF−781、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 10.17g
・1−メトキシ−2−プロパノール 21.00g
【0202】
【化32】
【0203】
(2)記録層βを有する感熱性平版印刷版
下塗り付支持体上に以下の記録層用塗布液3を塗布し、150℃のオーブンで1分乾燥後、乾燥塗布量が1.8g/m2のポジ型記録層βを有する感熱性平版印刷版を作製した。
【0204】
<記録層用塗布液3>
【0205】
(現像液の調液)
以下の比率からなる水溶液を調整した。その後、記録層α、βの感熱性平版印刷版をCreo社製Trendsetter3244にて書き込み回転数を150rpm、8Wで全面露光した後、30℃12秒浸漬現像を行ったときに、露光部で残膜が観測されなくようにアルカリ剤(KOH)の濃度を調整して作製した。
【0206】
<アルカリ現像液A組成>
・D−ソルビット/K2O(1/1(モル比)) 5.0質量%
・クエン酸3カリウム 10.0質量%
・表2記載の界面活性剤 1.0質量%
【0207】
<アルカリ現像液B組成>
・SiO2・K2O(K2O/SiO2=1/1(モル比)) 4.0質量%
・クエン酸3カリウム 0.5質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・表2記載の界面活性剤 1.0質量%
【0208】
実施例1〜15及び比較例1〜14
上記のようにして得られた現像液と感熱性平版印刷版を表2に示したように組み合わせて製版を行った。その各製版方法を、感度、耐傷性、現像ランニング性について下記の評価方法によって評価し、結果を表2に示した。
【0209】
(感度の評価)
上記の感熱性平版印刷版をCreo社製Trendsetter3244にて書き込み回転数を150rpmに固定し、レーザ出力を3〜8Wで0.25W刻みで露光エネルギーを変えて描き込みを行った。その後、LP−940H(富士写真フイルム(株)製自動現像機)の現像処理浴に上記現像液を仕込み、第3浴目には、FG−1(富士写真フイルム(株)製)を1部に対し水 1部で希釈したフィニシングガム液を8リットル仕込んだ。現像スピードは、現像時間12秒になるように設定した。現像液で非画像部が現像できる露光量(ドラム回転速度150rpmのときのビーム強度)を測定し、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。
【0210】
(耐傷性の評価)
上記のように作製した感熱性平版印刷版を、HEIDON社製 Scratching TESTER HEIDON−14を用い、引掻き針として0.4mmRダイヤ針を用い、針上の荷重を変化させながら400mm/minの速さで記録層表面を引掻いた。引掻いた後の感熱性平版印刷版に上記の現像処理を行い、傷による残膜が目視で観測された荷重(単位g)を耐傷性の評価値とした。値が大きい程、傷残膜が生じにくく耐傷性に優れていることを示している。
【0211】
(現像ランニング性の評価)
(1)カス発生の評価
上記のように作製した感熱性平版印刷版0.5m2分をCreo社製Trendsetter3244にて、書き込み回転数150rpm、レーザ出力8Wで全面露光し、上記現像液30mlにて記録層を溶出させた。この記録層濃度16m2/Lに相当する現像処理液をガラス製サンプルビンに回収して、静置2日放置後析出・沈降物の発生の程度を観察し、○(析出無し)、△(浮遊物あり)、×(沈降析出物有るが再分散可能)、××(沈降析出物有り再分散不能)の4段階にて評価した。
【0212】
(2)カス再付着性の評価
上記のように作製した感熱性平版印刷版に、Creo社製Trendsetter3244にて、ドラム回転数150rpm、レーザ出力8Wで175lpi50%網点を全面書き込みし、上記現像条件で現像を行い、版上のカスの転写を確認した。カスの転写発生の頻度を、○(転写なし)、△(1〜3個所)、×(3個所以上)の三段階にて評価した。
【0213】
【表2】
【0214】
(注1)記録層に用いた前記長鎖アルキル基含有ポリマーの種類を表す。
(注2)数字は下記の界面活性剤を表す。
アニオン系界面活性剤
1:ラウリン酸カリウム
2:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
3:ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物
両性系界面活性剤
4:ラウリルベタイン
(N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−(カルボキシメチル)
アンモニウム ハイドロオキサイド、第一工業製薬製
「アモーゲンK」)
5:ラウリルアミノジカルボン酸ナトリウム
(N−ラウリル−N,N−ジ(エチルカルボン酸ナトリウム)
アミン、竹本油脂製「パイオニンC158」)
【0215】
以上の結果より、表面突起を形成する樹脂を含有する記録層を設けた感熱性平版印刷版をアニオン界面活性剤又は両性界面活性剤を含有するアルカリ現像液で現像処理する本発明の製版方法は、実用上十分な耐傷性と高感度を兼ね備え、かつ現像ランニング安定性が良好であることが判る。更に、支持体表面処理の種類や記録層の形態、及び現像液のアルカリ剤の種類によらず上記効果が発現することも明らかである。
【0216】
【発明の効果】
本発明によれば、実用上十分な耐傷性と高感度を兼ね備えつつ、現像ランニング安定性の改善された感熱性平版印刷版の製版方法を提供できる。
Claims (1)
- 光を吸収し熱を発生する物質と、アルカリ水溶液可溶性樹脂と、該アルカリ水溶液可溶性樹脂と相分離し表面突起を形成する樹脂とを含有する記録層を有する感熱性平版印刷版を、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含有するアルカリ現像液で現像処理することを特徴とする平版印刷版の製版方法。
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JP2003072036A JP2004279806A (ja) | 2003-03-17 | 2003-03-17 | 感熱性平版印刷版の製版方法 |
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2003
- 2003-03-17 JP JP2003072036A patent/JP2004279806A/ja active Pending
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