JP2004279228A - 呼気中成分ガス濃度測定方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】呼気を、臨床生化学検査の検体として実用上問題なく使用できるように、サンプリングの仕方やタイミングの違いによって生じる呼気成分ガス濃度のバラツキを補正する技術を提供する。
【解決手段】
【請求項1】呼気又は呼気試料中の成分ガス例えば一酸化炭素、水素、エチルアルコール、メタンなどの濃度をガス検知器で測定する場合に、併せて炭酸ガス濃度を測定し、炭酸ガス濃度を終末呼気炭酸ガス濃度に換算した場合の換算率で成分ガスの濃度を換算し、該換算した成分ガス濃度(補正濃度)をもって、終末呼気中の成分ガス濃度とする。終末呼気炭酸ガス濃度が既知或いは測定しうる場合はその値を使用し、未知或いは測定しえない場合であって且つ測定された呼気又は呼気試料中の炭酸ガス濃度が4.5〜5.0%に満たない場合、終末呼気炭酸ガス濃度を4.5〜6.5%、より好ましくは5〜6%の範囲内の任意の値とする。
【選択図】 図3
【解決手段】
【請求項1】呼気又は呼気試料中の成分ガス例えば一酸化炭素、水素、エチルアルコール、メタンなどの濃度をガス検知器で測定する場合に、併せて炭酸ガス濃度を測定し、炭酸ガス濃度を終末呼気炭酸ガス濃度に換算した場合の換算率で成分ガスの濃度を換算し、該換算した成分ガス濃度(補正濃度)をもって、終末呼気中の成分ガス濃度とする。終末呼気炭酸ガス濃度が既知或いは測定しうる場合はその値を使用し、未知或いは測定しえない場合であって且つ測定された呼気又は呼気試料中の炭酸ガス濃度が4.5〜5.0%に満たない場合、終末呼気炭酸ガス濃度を4.5〜6.5%、より好ましくは5〜6%の範囲内の任意の値とする。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、呼気や呼気試料を分析して成分ガス濃度を再現性よく測定するものに係わり、殊に、呼気中の炭酸ガス濃度で呼気試料の質を判断したり呼気成分ガス濃度を補正するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
呼気は、人(或いは動物)が生命を維持している限り連続して間欠的に放出されるものである。しかも、肺胞毛細血管を流れる混合静脈血中の微量の揮発成分がガス交換により呼気中に移動するため、揮発成分に関しては呼気と血液の間には相関があると推察される。また、血液分析では困難な揮発成分の分別測定も可能であるし血液と異なり非侵襲であるので、呼気は臨床生化学検査の検体として理想的なものであると言える。
【0003】
しかし、従来、呼気は臨床生化学検査の検体として殆ど用いられていない。これは、一つには呼気が臨床生化学検査の検体などになるはずが無いと言う先入観が関係者にあること、二つめには呼気中の検出対象ガスが窒素、酸素及び炭酸ガスを除いて極低濃度(ppb 単位精々ppm 単位)であり、そのため、微量成分の濃縮装置と大型の高感度ガス検出装置との組合せによって初めて測定可能になるものであることによる。従って、測定は特殊な機器や用具を熟練者が操作する実験室のみで行なわれ、臨床検査報告例は僅かしかない。更に三つめには、再現性が悪く、測定値(検査)の信頼性に欠けることである。
【0004】
上記一つ目の問題に対しては、本発明者らの啓蒙活動等もあって徐々に研究が進められてきており、数百種とも言われる呼気ガス成分の分別や疾病と特定成分の増減など古くから知られている実験室的な知見が、臨床生化学検査と結ばれつつある。また二つ目の問題に対しては、各種ガス検知器の進歩により特定の呼気ガス成分の手軽で精密な測定が可能になってきつつある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、再現性については、いまだ根本的な解決はされていない。これは、呼気が血液と異なり、呼気サンプリングのタイミングによりガス成分の濃度が変動することによる。即ち、呼気は肺胞毛細血管中の血液とガス交換することにより揮発成分に関しては両者間に相関があることは事実であるが、ガス交換に要した時間の長短で濃度は変動する。また、呼気サンプルの大気による希釈の問題もある。一つは、気道でのガス交換は殆ど行われないため、呼気サンプル中に気道内(死腔)の呼気(空気)が混入すれば、濃度は低くなる。また、サンプリング中に大気が混入してもガス成分の濃度は低くなる。
【0006】
このように、サンプリングの仕方やタイミングの違いによって濃度がバラツクような試料は、幾ら手軽で非侵襲であるとは言え、臨床生化学検査の対象とはなりえない。そこで、以前から呼気分析においては、終末呼気を対象にすることが行われている。終末呼気とは、息を吐ききる直前の呼気即ち肺胞部分に入り込んでいた呼気のことを言い、気道内(死腔)の呼気を含まないものを言う。この問題に対処するために、本発明者らは、死腔部分の空気を排除して呼気サンプリングを行う呼気分析方法(特開平10−187)や、呼気採取容器(特願2001−366617)を開発している。
【0007】
ただ、終末呼気とは言っても、吸ってすぐ吐けば肺胞でのガス交換が十分には行われないので、一定時間(十数秒以上)の息堪えをした後の終末呼気(以下、真の終末呼気と言うこともある。)でなければ意味がない。このようにすれば、呼気は血液に代わりうる或いは補完する検体と成りうるものである。しかし、このような息堪えは重症患者などの意識不明者や恍惚の人では不可能であるし、老人や小児でも困難である。従って、呼気が検体としての意味を持つのは、息堪えのことが理解できる健常者が、医師などのマンツーマンの指導の下で行われる場合に限られる。
【0008】
呼気検査の利点は、急性のアルコール中毒や一酸化炭素中毒など緊急な測定に迅速に対処しうることや、CO2 −COによる呼吸機能検査のように頻回な検査に対応しうる点にあるが、上記のような状態では、汎用性のある技術と言うことはできない。また本発明者らは、終末呼気を呼気バッグに採取して送付してもらい、呼気試料中のアセトン濃度で食事療法による痩身治療の経過をモニターするシステムを企画している。このシステムでは、十分な息堪えの後の終末呼気を呼気バッグに採取することが前提になるが、これが正しく守られているか否かは、分析者側では全くわからない。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような観点から、本発明者らは呼気や呼気試料が真の終末呼気を反映するように補正する技術について鋭意研究した結果、呼気中の炭酸ガスに着目して本発明を完成させたものである。
【0010】
即ち、激しい運動の後や過度呼吸状態ではない安静時(通常時)における真の終末呼気中の炭酸ガス濃度は、ある程度の個人差はあるが、同一人ではほぼ一定である。また、通常の大気中には極少量(約400ppm 、0.04%)しか含まれていない。従って、被検者の呼気中の炭酸ガス濃度を測定しそれが終末呼気中の炭酸ガス濃度の何倍に希釈されているかがわかれば、呼気中の成分ガスも同率で希釈されていることが推測される。本発明は、この原理に基づき、呼気検査を行う場合に必要な成分ガスとともに炭酸ガスの濃度も同時に測定し、終末呼気中の炭酸ガス濃度で換算して、成分ガスの正確な濃度(補正濃度)を算出するものである。尚、前記希釈には、呼気のサンプリング中の空気の混入の他、肺胞における不十分なガス交換(通常の呼吸等)の場合も含む。また、呼気とは分析装置に直接に吸引するものを言い、呼気試料とはバッグ等に採取したものを言うが、以下では混用することもある。
【0011】
ところで、従来呼気中成分ガス濃度を測定する場合に、炭酸ガスも同時に測定する技術は幾つか知られている(例えば、特許文献1参照、特許文献2参照)。特許文献1には、一酸化炭素とともに炭酸ガスを測定する技術が示されている。また、特許文献2には、アルコールとともに炭酸ガスを測定する技術が示されている。しかし、前者は、被検者の口腔内の圧力を上昇させて鼻腔などからの物質を排除して呼気を分析するものであって、一酸化炭素や炭酸ガス以外に酸素、窒素その他の多種類の成分を測定対象とし、一酸化炭素と炭酸ガスの間には、本発明で示すような関係は全く論じられていない。後者は、血中アルコール濃度の信頼性を確認する方法であって、呼気中のアルコール濃度の判断基準に炭酸ガス濃度を利用する点では本発明と同じであるが、炭酸ガス濃度がある閾値に達しない場合にはアルコール濃度を表示しない即ちネグレクトしてデータには含めないことを特徴とする点において本発明とは全く異質のものである。即ち、本発明は以下にも説明するように、たとえ一酸化炭素やアルコールの濃度が幾ら低くてもその場合には炭酸ガス濃度も低い値を示すことから、炭酸ガスの希釈倍率で補正して、必ず一酸化炭素やアルコールの濃度を表示するものである。このように、終末呼気中の炭酸ガス濃度で補正すると言う考え方は、後者の発明中には一切見られない。
【0012】
【特許文献1】
特表2000−506601号公報(1−2頁、)
【特許文献2】
特開平9−164130号公報(1−3頁)
【0013】
次に、(真の)終末呼気中の炭酸ガス濃度について説明する。まず、呼気検査器のマウスピース等からゆっくり終末呼気を吹き込んだ場合、図1に示すように息堪えの程度で炭酸ガス濃度は変化する。この図から、15秒〜25秒程度息堪えした場合、真の終末呼気ということができると判断できる。
【0014】
一方、種々な段階における呼気中の炭酸ガス濃度(a%)と一酸化炭素濃度(bppm )を測定したところ、表1に示すような結果を得た。この中で、試料1(15秒間息堪えした終末呼気)が真の終末呼気と言える。そして、この真の終末呼気中のCO2 濃度を各試料中のCO2 濃度で除す(5.7/a)と、各試料の希釈倍率cが求まる。そして、各試料のCO濃度にこの希釈倍率を乗じると、COの補正濃度が求まる。表1からも明らかなように、CO補正濃度は、真の終末呼気のCO濃度近似値として十分に使用できるものである(誤差、1〜3%)。尚、試料2及び3はそれぞれ7秒、5秒間息堪えしたもの、試料4〜6は死腔を含んだ呼気である。
【表1】
【0015】
ここで、CO2 とともにCO濃度を測定してみたのは、以下の理由による。即ち、一酸化炭素(CO)は物の不完全燃焼で発生し、肺に吸入されれば赤血球のヘモグロビンと強く結合して一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)となり、ヘモグロビンの酸素供給能を低下させる。一酸化炭素ヘモグロビン飽和度(COHb%)が10%程度までは自覚症状は現れないがそれ以上では頭痛などが生じ、70%を超えれば死亡に至る。そして、COHb濃度が高ければ、たとえ周囲空気が清浄になっても呼気中にCOが含まれて排出し続ける(外因性)。また、血中赤血球の寿命が来てヘモグロビンが分解するときのヘム核解裂時にCOが放出され上昇する(内因性)。これらの二つの要因でCOは呼気(肺胞気)中に含まれるものである。
【0016】
この内前者は、化石燃料などの燃焼過程での生成や喫煙などにより生じたCOの吸引から血液中のCOHbが上昇する場合であり、火災などの不慮の事故によるCO中毒で最悪の場合死に至ることも珍しいことではない。一方後者は、Heme oxygenase(HO−1、ヘム酸化酵素)が亢進したときに、
ヘム核 → Fe(++イオン)+CO+ビリベルジン
の反応が進行しヘム核1個から1分子のCOが産生されるものである。これは、血中赤血球の生体内における寿命が120日と言われていることから、健常な生命活動においても数ppm (通常2〜3ppm 、平均約2.5ppm 程度)のCOが呼気に出現している。ただ、HO−1が亢進する症状、即ち、活性酸素(フリーラジカル)による酸化ストレスがかかったときは、CO産生が増加することが知られている。
【0017】
そこで従来から、火災などの不慮の事故によるCO中毒が懸念される場合、患者のCOHb%を測定することが行われている。これは、患者の動脈血を採血しヘモキシメーターで分析するものであるが、分析に時間がかかるとともに、患者に苦痛を与える欠点がある。
【0018】
一方、図2に示すように、呼気中CO(ppm )と血中COHb(%)の相関が知られている(Stewrt RD, et al;JAMA/235;390−392,1976)。ここに、COは息堪え終末呼気の値、COHbはヘモキシメーターで測定した値である。そこで、息堪え終末呼気中のCO濃度が簡単に測定できれば、採血の手間や時間、患者の苦痛を生じることなく、この図からCOHb%の値が簡単に求められることになる。尚、図2のグラフにおいて、左寄りの数値が低い部分(ハッチングの部分)は前述の内因性、右よりの数値の高いは外因性によるものである。同様に、火災による中毒以外にも、喫煙による慢性低レベルCO中毒症状のモニターや、生体変化をリアルタイムにモニターすることが可能になる。
【0019】
しかし、従来、息堪え終末呼気中のCO濃度を簡単に測定することは、実際上不可能であった。本発明は、呼気中のCO濃度をCO2 濃度と同時に測定することにより、このことを可能にした。ただ、息堪え終末呼気中のCO2 濃度を測定することは、意識のハッキリした健常者でなければ無理である。この問題に対しては、入院患者などにルーチンに行われる動脈血二酸化炭素分圧PaCO2 の値が利用できる。即ち、PaCO2 (mmHg)を大気圧(760mmHg)で除せば、ほぼ、真の終末呼気中のCO2 濃度となるので、この値を用いて真の終末呼気中のCO濃度(補正濃度)とする。ただ、呼気の測定は完全に無侵襲(非侵襲)であるが、1回だけとは言え採血するので、このPaCO2 を利用する場合は、低侵襲と言うことになる。
【0020】
次に、呼気バッグに終末呼気を吹き込み、これを郵送してもらうような場合について説明する。この場合、前述の方法(息堪え法やPaCO2 法)は採りえない。このような場合、多少の誤差は覚悟の上で、ある値を代表として採用する。邦人の場合、真の終末呼気中CO2 濃度は、4.0〜7.5%、通常は4.5〜6.5%の間に分布すると言われている(喫煙者は高く、女性は男性に比べて低く、また20才台で低値で加齢とともに暫時増加傾向)。従って、バッグ中の呼気試料を測定して、CO2 濃度が4.5〜5.0%(この間の任意値に設定)に満たない場合、終末呼気炭酸ガス濃度を4.5〜6.5%、より好ましくは5〜6%の範囲内の任意の値(例えば5.5)に設定し、この設定した値(5.5%)を真の終末呼気中のCO2 濃度としてCOの補正濃度を算出するようにする。但しこの場合、4.5%よりも低いようであれば、再度のバッグへの呼気採取を依頼するようにすればよい。或いは、同一人が何度もバッグを送付してくるような場合、過去のデータの中で最も高いCO2 濃度を記録しておき、以後、それを真の終末呼気中のCO2 濃度として使用するのも一方法である。
【0021】
以上は、呼気中成分ガスが一酸化炭素の場合について説明したが、同様に水素、エチルアルコールなどのアルコール類、メタン等の炭化水素、アルデヒド、アセトン、イソプレン、アンモニアなどについても、炭酸ガスと同時に測定することにより、真の終末呼気中のそれらの成分ガス濃度(補正濃度)を求めることができる。尚これらのガスの測定には、小型で構造や取扱が簡単で且つ信頼性が高いものが望ましいことから、NDIR式(炭酸ガス)、定電位電解式(酸化炭素、水素、エチルアルコール等)、半導体式(メタン等の炭化水素)などのガスセンサが好ましく用いられる。半導体式の場合、感度は高いがガス選択性が悪いため、妨害ガスをフイルター等で除去する必要がある。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明装置について、図面に示す好適な実施の1形態に基づいて更に詳細に説明する。図3は、本発明に係わる呼気中CO−CO2 濃度測定器1の一例を示す概略図で、CO2 の測定にNDIR式式ガスセンサ、COの測定に定電位電解式ガスセンサを用い、採取系と測定演算系を一体に構成したものを示す。この測定器1は、試料導入部2、ポンプ3、COセンサ4、CO2 センサ5、流速計(フローインジェクター)6、試料排出部7、制御・演算処理部8、データ(終末呼気中のCO2 濃度等)入力のためのテンキー91や表示部92・93・94、スイッチ類95を備えた操作部9、出力装置としてのプリンター10を含んで構成されている。
【0023】
試料導入部2は、呼気や呼気試料Bを注入する注入口21と、COの妨害ガス(アルコール等)を除去するフィルター23を内蔵した本体22、出口24とポンプ出入口31をつなぐパイプ25からなる。ポンプ3は、呼気試料Bを定速で吸引し、COセンサ4及びCO2 センサ5に定速定圧で送り込む。COセンサ4は、定電位電解式ガスセンサであり、内部を流通する呼気ガス中のCO濃度を測定し第1の表示部92に表示する。符号41はセンサ出入口、32はポンプ出入口31とセンサ出入口41をつなぐパイプである。測定範囲は、喫煙による慢性低レベルCO中毒症状のモニターや生体変化をリアルタイムにモニターする場合には0〜50ppm 程度のものでよいが、火災による中毒などに対応するには、1〜500ppm のものを用いるとよい。CO2 センサ5は、NDIR式式ガスセンサであり、内部を流通する呼気ガス中のCO2 濃度を測定して同じく第1の表示部92に表示する。測定範囲は、0〜10%程度あればよい。符号51はセンサ入口、52はセンサ出口、42はCOセンサ出入口41とCO2 センサ入口51をつなぐパイプである。センサ出口52から押し出された呼気は、パイプ53を通って流量計6に至る。流量計6から出た呼気ガスBは、パイプ63を通って試料排出部7から器外へ排出される。符号61は流量計6の入口、62は出口である。
【0024】
しかして、呼気採取具11(図4)や呼気採取バッグ12(図5)などから供給される呼気や呼気試料Bは、ポンプ3に吸引されて各ガスセンサ4、5に至る。吸引速度は例えば200ml/分である。測定結果は、CO2 、COとも表示部92に示される。表示間隔は、数〜数十秒ごとでもよいし、一定の時間間隔毎の最高値を示すようにしてもよい。尚、COセンサ4とCO2 センサ5は行路差があるため、その差を電気的に処理して同一サンプル部分の値を同時に表示するようにする。次に、真の終末呼気中の炭酸ガス濃度%をテンキー91から入力し表示部94に表示させるとともに、第1の表示部92に示されたCO2 、CO濃度から換算された補正濃度を、第2の表示部93に表示する。一方、これらの値をプリンター10から出力するようにしてもよい。尚、これらの演算や装置全体の制御は制御・演算処理部8で行う。
【0025】
次に、本発明で使用する呼気採取具11や呼気採取バッグ12の一例を示す。呼気採取具11は、図4に示すように一端111から呼気Bを吹き込み、他端112から排出するようになっている。そして、中央出口113から終末呼気が採取されるが、採取は約200mlの死腔空気を排出した後に行われる。中央出口113の上部には、フイルター収納部114(符号115はフイルター)がある。一端111にはマウスピース116を装着するようになっており、他端112には逆止弁117が組み込まれている。尚、意識不明者などマウスピースをくわえることが出来ない患者の場合、フェイスマスクを使用するとよい。
【0026】
呼気採取バッグ12は、図5に示すようにガス透過性の低い可撓性部材からなる容器本体121の一端部にキャップ122を有する呼気吹き込み口123、他端部にキャップ124を有する呼気吹き出し口125を備えたものである。そして、呼気吹き込み口123をくわえて約200mlの死腔空気を排出したのちキャップ124を締め、続いて終末呼気を吹き込んでからキャップ122を締めて呼気のサンプリングを終えるものである。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明方法は、呼気又は呼気試料中の成分ガス濃度を測定する場合に、併せて炭酸ガス濃度を測定し、炭酸ガス濃度を終末呼気炭酸ガス濃度に換算した場合の換算率で成分ガスの濃度を換算し、該換算した成分ガス濃度(補正濃度)をもって、終末呼気中の成分ガス濃度とするものである。
【0028】
従って、息堪え終末呼気の採取或いは動脈血PaCO2 の測定による被検者の終末呼気炭酸ガス濃度がわかれば、通常の呼吸状態の呼気から、正確で再現性(信頼性)のある呼気ガス成分の測定が可能になる。
【0029】
そのため、急性アルコール中毒や一酸化炭素中毒など緊急な測定に迅速に対処できるし、意識がない重症患者や小児の呼気分析も容易に行えるなどの効果がある。
【0030】
また、被検者の終末呼気炭酸ガス濃度が未知或いは測定しえないような場合、終末呼気炭酸ガス濃度を5〜6%の範囲内の任意の値として濃度を換算するようにすれば、バッグ詰めの呼気試料を遠方に搬送して分析するような場合でも、ほぼ正確な分析結果を得ることができる。
【0031】
もともと、呼気は人が生命を維持している限り連続して間欠的に放出されるものであり、その採取は完全に無侵襲である。そのうえ、肺における外呼吸により血液とガス交換を行うため、揮発成分に関しては臨床生化学検査の分野において血液以上に優れた情報源である。また、血液分析と異なり装置や器具がありさえすれば、瞬時に測定結果が得られる利点があるが、本発明により、信頼性の高い呼気分析ができる利点は、極めて大きいものと言うことができる。
【0032】
また、本発明の呼気中成分ガス濃度測定装置は、炭酸ガスや一酸化炭素、水素、アルコール、メタンなどの測定に、小型で取り扱いやすくしかも感度の高いガス検知器を使用している。従って、多数のガスの測定には向かないが、構造が簡単で安価に得られ、且つ取扱が容易な特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】息堪えの時間(秒)と終末呼気中炭酸ガス濃度(%)との関係を示すグラフである。
【図2】息堪え終末呼気中のCO濃度(ppm )と血中COHb(%)の関係を示すグラフである。
【図3】本発明に係る呼気中CO−CO2 濃度測定器の一例を示す概略図である。
【図4】本発明で使用する呼気採取具の一例を示す断面図である。
【図5】本発明で使用する呼気採取バッグの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 呼気中CO−CO2 濃度測定器
2 試料導入部
22 本体
23 フィルター
3 ポンプ
4 COセンサ
5 CO2 センサ
6 流速計
8 制御・演算処理部
9 操作部
91 テンキー
92・93・94 表示部
B 呼気又は呼気試料
【産業上の利用分野】
本発明は、呼気や呼気試料を分析して成分ガス濃度を再現性よく測定するものに係わり、殊に、呼気中の炭酸ガス濃度で呼気試料の質を判断したり呼気成分ガス濃度を補正するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
呼気は、人(或いは動物)が生命を維持している限り連続して間欠的に放出されるものである。しかも、肺胞毛細血管を流れる混合静脈血中の微量の揮発成分がガス交換により呼気中に移動するため、揮発成分に関しては呼気と血液の間には相関があると推察される。また、血液分析では困難な揮発成分の分別測定も可能であるし血液と異なり非侵襲であるので、呼気は臨床生化学検査の検体として理想的なものであると言える。
【0003】
しかし、従来、呼気は臨床生化学検査の検体として殆ど用いられていない。これは、一つには呼気が臨床生化学検査の検体などになるはずが無いと言う先入観が関係者にあること、二つめには呼気中の検出対象ガスが窒素、酸素及び炭酸ガスを除いて極低濃度(ppb 単位精々ppm 単位)であり、そのため、微量成分の濃縮装置と大型の高感度ガス検出装置との組合せによって初めて測定可能になるものであることによる。従って、測定は特殊な機器や用具を熟練者が操作する実験室のみで行なわれ、臨床検査報告例は僅かしかない。更に三つめには、再現性が悪く、測定値(検査)の信頼性に欠けることである。
【0004】
上記一つ目の問題に対しては、本発明者らの啓蒙活動等もあって徐々に研究が進められてきており、数百種とも言われる呼気ガス成分の分別や疾病と特定成分の増減など古くから知られている実験室的な知見が、臨床生化学検査と結ばれつつある。また二つ目の問題に対しては、各種ガス検知器の進歩により特定の呼気ガス成分の手軽で精密な測定が可能になってきつつある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、再現性については、いまだ根本的な解決はされていない。これは、呼気が血液と異なり、呼気サンプリングのタイミングによりガス成分の濃度が変動することによる。即ち、呼気は肺胞毛細血管中の血液とガス交換することにより揮発成分に関しては両者間に相関があることは事実であるが、ガス交換に要した時間の長短で濃度は変動する。また、呼気サンプルの大気による希釈の問題もある。一つは、気道でのガス交換は殆ど行われないため、呼気サンプル中に気道内(死腔)の呼気(空気)が混入すれば、濃度は低くなる。また、サンプリング中に大気が混入してもガス成分の濃度は低くなる。
【0006】
このように、サンプリングの仕方やタイミングの違いによって濃度がバラツクような試料は、幾ら手軽で非侵襲であるとは言え、臨床生化学検査の対象とはなりえない。そこで、以前から呼気分析においては、終末呼気を対象にすることが行われている。終末呼気とは、息を吐ききる直前の呼気即ち肺胞部分に入り込んでいた呼気のことを言い、気道内(死腔)の呼気を含まないものを言う。この問題に対処するために、本発明者らは、死腔部分の空気を排除して呼気サンプリングを行う呼気分析方法(特開平10−187)や、呼気採取容器(特願2001−366617)を開発している。
【0007】
ただ、終末呼気とは言っても、吸ってすぐ吐けば肺胞でのガス交換が十分には行われないので、一定時間(十数秒以上)の息堪えをした後の終末呼気(以下、真の終末呼気と言うこともある。)でなければ意味がない。このようにすれば、呼気は血液に代わりうる或いは補完する検体と成りうるものである。しかし、このような息堪えは重症患者などの意識不明者や恍惚の人では不可能であるし、老人や小児でも困難である。従って、呼気が検体としての意味を持つのは、息堪えのことが理解できる健常者が、医師などのマンツーマンの指導の下で行われる場合に限られる。
【0008】
呼気検査の利点は、急性のアルコール中毒や一酸化炭素中毒など緊急な測定に迅速に対処しうることや、CO2 −COによる呼吸機能検査のように頻回な検査に対応しうる点にあるが、上記のような状態では、汎用性のある技術と言うことはできない。また本発明者らは、終末呼気を呼気バッグに採取して送付してもらい、呼気試料中のアセトン濃度で食事療法による痩身治療の経過をモニターするシステムを企画している。このシステムでは、十分な息堪えの後の終末呼気を呼気バッグに採取することが前提になるが、これが正しく守られているか否かは、分析者側では全くわからない。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような観点から、本発明者らは呼気や呼気試料が真の終末呼気を反映するように補正する技術について鋭意研究した結果、呼気中の炭酸ガスに着目して本発明を完成させたものである。
【0010】
即ち、激しい運動の後や過度呼吸状態ではない安静時(通常時)における真の終末呼気中の炭酸ガス濃度は、ある程度の個人差はあるが、同一人ではほぼ一定である。また、通常の大気中には極少量(約400ppm 、0.04%)しか含まれていない。従って、被検者の呼気中の炭酸ガス濃度を測定しそれが終末呼気中の炭酸ガス濃度の何倍に希釈されているかがわかれば、呼気中の成分ガスも同率で希釈されていることが推測される。本発明は、この原理に基づき、呼気検査を行う場合に必要な成分ガスとともに炭酸ガスの濃度も同時に測定し、終末呼気中の炭酸ガス濃度で換算して、成分ガスの正確な濃度(補正濃度)を算出するものである。尚、前記希釈には、呼気のサンプリング中の空気の混入の他、肺胞における不十分なガス交換(通常の呼吸等)の場合も含む。また、呼気とは分析装置に直接に吸引するものを言い、呼気試料とはバッグ等に採取したものを言うが、以下では混用することもある。
【0011】
ところで、従来呼気中成分ガス濃度を測定する場合に、炭酸ガスも同時に測定する技術は幾つか知られている(例えば、特許文献1参照、特許文献2参照)。特許文献1には、一酸化炭素とともに炭酸ガスを測定する技術が示されている。また、特許文献2には、アルコールとともに炭酸ガスを測定する技術が示されている。しかし、前者は、被検者の口腔内の圧力を上昇させて鼻腔などからの物質を排除して呼気を分析するものであって、一酸化炭素や炭酸ガス以外に酸素、窒素その他の多種類の成分を測定対象とし、一酸化炭素と炭酸ガスの間には、本発明で示すような関係は全く論じられていない。後者は、血中アルコール濃度の信頼性を確認する方法であって、呼気中のアルコール濃度の判断基準に炭酸ガス濃度を利用する点では本発明と同じであるが、炭酸ガス濃度がある閾値に達しない場合にはアルコール濃度を表示しない即ちネグレクトしてデータには含めないことを特徴とする点において本発明とは全く異質のものである。即ち、本発明は以下にも説明するように、たとえ一酸化炭素やアルコールの濃度が幾ら低くてもその場合には炭酸ガス濃度も低い値を示すことから、炭酸ガスの希釈倍率で補正して、必ず一酸化炭素やアルコールの濃度を表示するものである。このように、終末呼気中の炭酸ガス濃度で補正すると言う考え方は、後者の発明中には一切見られない。
【0012】
【特許文献1】
特表2000−506601号公報(1−2頁、)
【特許文献2】
特開平9−164130号公報(1−3頁)
【0013】
次に、(真の)終末呼気中の炭酸ガス濃度について説明する。まず、呼気検査器のマウスピース等からゆっくり終末呼気を吹き込んだ場合、図1に示すように息堪えの程度で炭酸ガス濃度は変化する。この図から、15秒〜25秒程度息堪えした場合、真の終末呼気ということができると判断できる。
【0014】
一方、種々な段階における呼気中の炭酸ガス濃度(a%)と一酸化炭素濃度(bppm )を測定したところ、表1に示すような結果を得た。この中で、試料1(15秒間息堪えした終末呼気)が真の終末呼気と言える。そして、この真の終末呼気中のCO2 濃度を各試料中のCO2 濃度で除す(5.7/a)と、各試料の希釈倍率cが求まる。そして、各試料のCO濃度にこの希釈倍率を乗じると、COの補正濃度が求まる。表1からも明らかなように、CO補正濃度は、真の終末呼気のCO濃度近似値として十分に使用できるものである(誤差、1〜3%)。尚、試料2及び3はそれぞれ7秒、5秒間息堪えしたもの、試料4〜6は死腔を含んだ呼気である。
【表1】
【0015】
ここで、CO2 とともにCO濃度を測定してみたのは、以下の理由による。即ち、一酸化炭素(CO)は物の不完全燃焼で発生し、肺に吸入されれば赤血球のヘモグロビンと強く結合して一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)となり、ヘモグロビンの酸素供給能を低下させる。一酸化炭素ヘモグロビン飽和度(COHb%)が10%程度までは自覚症状は現れないがそれ以上では頭痛などが生じ、70%を超えれば死亡に至る。そして、COHb濃度が高ければ、たとえ周囲空気が清浄になっても呼気中にCOが含まれて排出し続ける(外因性)。また、血中赤血球の寿命が来てヘモグロビンが分解するときのヘム核解裂時にCOが放出され上昇する(内因性)。これらの二つの要因でCOは呼気(肺胞気)中に含まれるものである。
【0016】
この内前者は、化石燃料などの燃焼過程での生成や喫煙などにより生じたCOの吸引から血液中のCOHbが上昇する場合であり、火災などの不慮の事故によるCO中毒で最悪の場合死に至ることも珍しいことではない。一方後者は、Heme oxygenase(HO−1、ヘム酸化酵素)が亢進したときに、
ヘム核 → Fe(++イオン)+CO+ビリベルジン
の反応が進行しヘム核1個から1分子のCOが産生されるものである。これは、血中赤血球の生体内における寿命が120日と言われていることから、健常な生命活動においても数ppm (通常2〜3ppm 、平均約2.5ppm 程度)のCOが呼気に出現している。ただ、HO−1が亢進する症状、即ち、活性酸素(フリーラジカル)による酸化ストレスがかかったときは、CO産生が増加することが知られている。
【0017】
そこで従来から、火災などの不慮の事故によるCO中毒が懸念される場合、患者のCOHb%を測定することが行われている。これは、患者の動脈血を採血しヘモキシメーターで分析するものであるが、分析に時間がかかるとともに、患者に苦痛を与える欠点がある。
【0018】
一方、図2に示すように、呼気中CO(ppm )と血中COHb(%)の相関が知られている(Stewrt RD, et al;JAMA/235;390−392,1976)。ここに、COは息堪え終末呼気の値、COHbはヘモキシメーターで測定した値である。そこで、息堪え終末呼気中のCO濃度が簡単に測定できれば、採血の手間や時間、患者の苦痛を生じることなく、この図からCOHb%の値が簡単に求められることになる。尚、図2のグラフにおいて、左寄りの数値が低い部分(ハッチングの部分)は前述の内因性、右よりの数値の高いは外因性によるものである。同様に、火災による中毒以外にも、喫煙による慢性低レベルCO中毒症状のモニターや、生体変化をリアルタイムにモニターすることが可能になる。
【0019】
しかし、従来、息堪え終末呼気中のCO濃度を簡単に測定することは、実際上不可能であった。本発明は、呼気中のCO濃度をCO2 濃度と同時に測定することにより、このことを可能にした。ただ、息堪え終末呼気中のCO2 濃度を測定することは、意識のハッキリした健常者でなければ無理である。この問題に対しては、入院患者などにルーチンに行われる動脈血二酸化炭素分圧PaCO2 の値が利用できる。即ち、PaCO2 (mmHg)を大気圧(760mmHg)で除せば、ほぼ、真の終末呼気中のCO2 濃度となるので、この値を用いて真の終末呼気中のCO濃度(補正濃度)とする。ただ、呼気の測定は完全に無侵襲(非侵襲)であるが、1回だけとは言え採血するので、このPaCO2 を利用する場合は、低侵襲と言うことになる。
【0020】
次に、呼気バッグに終末呼気を吹き込み、これを郵送してもらうような場合について説明する。この場合、前述の方法(息堪え法やPaCO2 法)は採りえない。このような場合、多少の誤差は覚悟の上で、ある値を代表として採用する。邦人の場合、真の終末呼気中CO2 濃度は、4.0〜7.5%、通常は4.5〜6.5%の間に分布すると言われている(喫煙者は高く、女性は男性に比べて低く、また20才台で低値で加齢とともに暫時増加傾向)。従って、バッグ中の呼気試料を測定して、CO2 濃度が4.5〜5.0%(この間の任意値に設定)に満たない場合、終末呼気炭酸ガス濃度を4.5〜6.5%、より好ましくは5〜6%の範囲内の任意の値(例えば5.5)に設定し、この設定した値(5.5%)を真の終末呼気中のCO2 濃度としてCOの補正濃度を算出するようにする。但しこの場合、4.5%よりも低いようであれば、再度のバッグへの呼気採取を依頼するようにすればよい。或いは、同一人が何度もバッグを送付してくるような場合、過去のデータの中で最も高いCO2 濃度を記録しておき、以後、それを真の終末呼気中のCO2 濃度として使用するのも一方法である。
【0021】
以上は、呼気中成分ガスが一酸化炭素の場合について説明したが、同様に水素、エチルアルコールなどのアルコール類、メタン等の炭化水素、アルデヒド、アセトン、イソプレン、アンモニアなどについても、炭酸ガスと同時に測定することにより、真の終末呼気中のそれらの成分ガス濃度(補正濃度)を求めることができる。尚これらのガスの測定には、小型で構造や取扱が簡単で且つ信頼性が高いものが望ましいことから、NDIR式(炭酸ガス)、定電位電解式(酸化炭素、水素、エチルアルコール等)、半導体式(メタン等の炭化水素)などのガスセンサが好ましく用いられる。半導体式の場合、感度は高いがガス選択性が悪いため、妨害ガスをフイルター等で除去する必要がある。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明装置について、図面に示す好適な実施の1形態に基づいて更に詳細に説明する。図3は、本発明に係わる呼気中CO−CO2 濃度測定器1の一例を示す概略図で、CO2 の測定にNDIR式式ガスセンサ、COの測定に定電位電解式ガスセンサを用い、採取系と測定演算系を一体に構成したものを示す。この測定器1は、試料導入部2、ポンプ3、COセンサ4、CO2 センサ5、流速計(フローインジェクター)6、試料排出部7、制御・演算処理部8、データ(終末呼気中のCO2 濃度等)入力のためのテンキー91や表示部92・93・94、スイッチ類95を備えた操作部9、出力装置としてのプリンター10を含んで構成されている。
【0023】
試料導入部2は、呼気や呼気試料Bを注入する注入口21と、COの妨害ガス(アルコール等)を除去するフィルター23を内蔵した本体22、出口24とポンプ出入口31をつなぐパイプ25からなる。ポンプ3は、呼気試料Bを定速で吸引し、COセンサ4及びCO2 センサ5に定速定圧で送り込む。COセンサ4は、定電位電解式ガスセンサであり、内部を流通する呼気ガス中のCO濃度を測定し第1の表示部92に表示する。符号41はセンサ出入口、32はポンプ出入口31とセンサ出入口41をつなぐパイプである。測定範囲は、喫煙による慢性低レベルCO中毒症状のモニターや生体変化をリアルタイムにモニターする場合には0〜50ppm 程度のものでよいが、火災による中毒などに対応するには、1〜500ppm のものを用いるとよい。CO2 センサ5は、NDIR式式ガスセンサであり、内部を流通する呼気ガス中のCO2 濃度を測定して同じく第1の表示部92に表示する。測定範囲は、0〜10%程度あればよい。符号51はセンサ入口、52はセンサ出口、42はCOセンサ出入口41とCO2 センサ入口51をつなぐパイプである。センサ出口52から押し出された呼気は、パイプ53を通って流量計6に至る。流量計6から出た呼気ガスBは、パイプ63を通って試料排出部7から器外へ排出される。符号61は流量計6の入口、62は出口である。
【0024】
しかして、呼気採取具11(図4)や呼気採取バッグ12(図5)などから供給される呼気や呼気試料Bは、ポンプ3に吸引されて各ガスセンサ4、5に至る。吸引速度は例えば200ml/分である。測定結果は、CO2 、COとも表示部92に示される。表示間隔は、数〜数十秒ごとでもよいし、一定の時間間隔毎の最高値を示すようにしてもよい。尚、COセンサ4とCO2 センサ5は行路差があるため、その差を電気的に処理して同一サンプル部分の値を同時に表示するようにする。次に、真の終末呼気中の炭酸ガス濃度%をテンキー91から入力し表示部94に表示させるとともに、第1の表示部92に示されたCO2 、CO濃度から換算された補正濃度を、第2の表示部93に表示する。一方、これらの値をプリンター10から出力するようにしてもよい。尚、これらの演算や装置全体の制御は制御・演算処理部8で行う。
【0025】
次に、本発明で使用する呼気採取具11や呼気採取バッグ12の一例を示す。呼気採取具11は、図4に示すように一端111から呼気Bを吹き込み、他端112から排出するようになっている。そして、中央出口113から終末呼気が採取されるが、採取は約200mlの死腔空気を排出した後に行われる。中央出口113の上部には、フイルター収納部114(符号115はフイルター)がある。一端111にはマウスピース116を装着するようになっており、他端112には逆止弁117が組み込まれている。尚、意識不明者などマウスピースをくわえることが出来ない患者の場合、フェイスマスクを使用するとよい。
【0026】
呼気採取バッグ12は、図5に示すようにガス透過性の低い可撓性部材からなる容器本体121の一端部にキャップ122を有する呼気吹き込み口123、他端部にキャップ124を有する呼気吹き出し口125を備えたものである。そして、呼気吹き込み口123をくわえて約200mlの死腔空気を排出したのちキャップ124を締め、続いて終末呼気を吹き込んでからキャップ122を締めて呼気のサンプリングを終えるものである。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明方法は、呼気又は呼気試料中の成分ガス濃度を測定する場合に、併せて炭酸ガス濃度を測定し、炭酸ガス濃度を終末呼気炭酸ガス濃度に換算した場合の換算率で成分ガスの濃度を換算し、該換算した成分ガス濃度(補正濃度)をもって、終末呼気中の成分ガス濃度とするものである。
【0028】
従って、息堪え終末呼気の採取或いは動脈血PaCO2 の測定による被検者の終末呼気炭酸ガス濃度がわかれば、通常の呼吸状態の呼気から、正確で再現性(信頼性)のある呼気ガス成分の測定が可能になる。
【0029】
そのため、急性アルコール中毒や一酸化炭素中毒など緊急な測定に迅速に対処できるし、意識がない重症患者や小児の呼気分析も容易に行えるなどの効果がある。
【0030】
また、被検者の終末呼気炭酸ガス濃度が未知或いは測定しえないような場合、終末呼気炭酸ガス濃度を5〜6%の範囲内の任意の値として濃度を換算するようにすれば、バッグ詰めの呼気試料を遠方に搬送して分析するような場合でも、ほぼ正確な分析結果を得ることができる。
【0031】
もともと、呼気は人が生命を維持している限り連続して間欠的に放出されるものであり、その採取は完全に無侵襲である。そのうえ、肺における外呼吸により血液とガス交換を行うため、揮発成分に関しては臨床生化学検査の分野において血液以上に優れた情報源である。また、血液分析と異なり装置や器具がありさえすれば、瞬時に測定結果が得られる利点があるが、本発明により、信頼性の高い呼気分析ができる利点は、極めて大きいものと言うことができる。
【0032】
また、本発明の呼気中成分ガス濃度測定装置は、炭酸ガスや一酸化炭素、水素、アルコール、メタンなどの測定に、小型で取り扱いやすくしかも感度の高いガス検知器を使用している。従って、多数のガスの測定には向かないが、構造が簡単で安価に得られ、且つ取扱が容易な特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】息堪えの時間(秒)と終末呼気中炭酸ガス濃度(%)との関係を示すグラフである。
【図2】息堪え終末呼気中のCO濃度(ppm )と血中COHb(%)の関係を示すグラフである。
【図3】本発明に係る呼気中CO−CO2 濃度測定器の一例を示す概略図である。
【図4】本発明で使用する呼気採取具の一例を示す断面図である。
【図5】本発明で使用する呼気採取バッグの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 呼気中CO−CO2 濃度測定器
2 試料導入部
22 本体
23 フィルター
3 ポンプ
4 COセンサ
5 CO2 センサ
6 流速計
8 制御・演算処理部
9 操作部
91 テンキー
92・93・94 表示部
B 呼気又は呼気試料
Claims (8)
- 呼気又は呼気試料中の成分ガス濃度を測定する場合に、併せて炭酸ガス濃度を測定し、炭酸ガス濃度を終末呼気炭酸ガス濃度に換算した場合の換算率で成分ガスの濃度を換算し、該換算した成分ガス濃度(補正濃度)をもって、終末呼気中の成分ガス濃度とすることを特徴とする呼気中成分ガス濃度測定方法。
- 被検者の終末呼気炭酸ガス濃度が既知或いは測定しうる場合、該既知或いは測定しうる炭酸ガス濃度を終末呼気炭酸ガス濃度とするものである、請求項1記載の呼気中成分ガス濃度測定方法。
- 被検者の終末呼気炭酸ガス濃度が未知或いは測定しえない場合であって且つ測定された呼気又は呼気試料中の炭酸ガス濃度が4.5〜5.0%に満たない場合、終末呼気炭酸ガス濃度を4.5〜6.5%、より好ましくは5〜6%の範囲内の任意の値とするものである、請求項1記載の呼気中成分ガス濃度測定方法。
- 成分ガスが一酸化炭素、水素、アルコール類、メタン等炭化水素、アルデヒド、アセトン、イソプレン又はアンモニアである、請求項1、請求項2または請求項3記載の呼気中成分ガス濃度測定方法。
- 呼気又は呼気試料中の一酸化炭素、水素またはエチルアルコール濃度を測定するものであって、これらのガス成分を測定するための定電位電解法による検出器と炭酸ガスを測定するための測定範囲0〜10%のNDIR法による検出器を備えるとともに、測定されたガス成分と炭酸ガスの濃度をそれぞれ表示する表示部を備えたことを特徴とする呼気中の成分ガス測定装置。
- 呼気試料中のメタン等の炭化水素や水素、エチルアルコール等の濃度を測定するものであって、これらのガス成分を測定するための半導体式検出器と炭酸ガスを測定するための測定範囲0〜10%のNDIR法による検出器を備えるとともに、測定されたガス成分と炭酸ガスの濃度をそれぞれ表示する表示部を備えたことを特徴とする呼気中の成分ガス測定装置。
- 測定されたガス成分と炭酸ガスの濃度をそれぞれ表示する第1の表示部と、炭酸ガス濃度として、被検者の終末呼気中の炭酸ガス濃度が既知の場合はその数値、未知の場合には5〜6%の間の適宜の数値を入力表示するとともに、ガス成分濃度は補正濃度を表示する第2の表示部を備えたものである、請求項5又は請求項6記載の呼気中の成分ガス測定装置。
- 第1の表示部と第2の表示部は、同じ表示装置を切り換えて使用するものである請求項7記載の呼気中の成分ガス測定装置。
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