JP2004279214A - 磁気塗料中の粒子分散性評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気塗料化における原材料から最終工程までの粒子分散性を評価できるようにする。
【解決手段】磁気塗料を測定試料とし、該試料中の比表面積基準メディアン径(例えば図2の累積表面積が半分になる細孔径)を、水銀ポロシメータにより測定する測定段階と、前記測定段階で測定されたメディアン径に基づいて磁気塗料の粒子分散性を評価する評価段階とを備える。
【選択図】 図2
【解決手段】磁気塗料を測定試料とし、該試料中の比表面積基準メディアン径(例えば図2の累積表面積が半分になる細孔径)を、水銀ポロシメータにより測定する測定段階と、前記測定段階で測定されたメディアン径に基づいて磁気塗料の粒子分散性を評価する評価段階とを備える。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば塗布型磁気記録媒体を構成する各層用の磁気塗料中の粒子分散性評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来磁気塗料中の粒子分散性評価に関しては直接測定する方法が殆ど見出されておらず、例えば塗料を基板に塗布し、磁場配向処理後に溶剤乾燥させた後の塗膜中の磁性粉の配向性を角型比Rsで評価したり、塗膜面の平滑性を表面粗度sRaで評価したりする方法等がこれまで取られてきた。ただし、これらの方法は塗料中の有機溶剤を蒸発乾燥させる操作が伴い、塗料中の粒子分散状態が変化する懸念が払拭できない。
【0003】
本願発明者は磁気塗料を直接測定し、塗料中の粒子分散性を粒度分布測定により評価する方法を提唱してきた。
【0004】
尚本発明に関連する水銀ポロシメータとしては次の非特許文献1に開示されたものがある。
【0005】
【非特許文献1】島津製作所、「ポアサイザ9320取扱説明書」、第5章 データ整理 p7 細孔表面積の項。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
塗料化状態での粒子分散性を評価するには、磁気塗料を希釈せずに直接測定する方法と希釈して測定する方法の2つがある。ただし、その前段階である混練工程における粒子分散性の評価をする際には混練ペーストを希釈する必要があり、その際に発生する凝集を除去することは不可能に近い。そのため塗料中の粒子分散性を高めるために求められる最適混練条件を見出すことは至難の業といっても過言ではない。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものでその目的は、磁気塗料化における原材料から最終工程までの粒子分散性を評価することができ、また磁気塗料中の粒子分散性を制御することができる磁気塗料中の粒子分散性評価方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題を混練ペースト中の空隙(ポア)径を小さくかつ全空孔断面積を最小にする混練条件を見出すことで解決するようにした。それだけでなく原材料段階で空隙の多い粒子に関してはバインダー量を増やすことで粒子分散性を確保する手法も確立した。
【0009】
すなわち本発明の磁気塗料中の粒子分散性評価方法は、磁気塗料を測定試料とし、該試料中の比表面積基準メディアン径を測定する測定段階と、前記測定段階で測定されたメディアン径に基づいて磁気塗料の粒子分散性を評価する評価段階とを備えたことを特徴としている。
【0010】
また、前記評価段階は、前記測定試料を塗料化したときの磁気特性を測定して評価することを特徴としている。
【0011】
また前記測定試料は、磁気塗料の粉体原材料であることを特徴とし、また磁気塗料の混合前粉体撹拌物であることを特徴とし、また磁気塗料の混練処理物であることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
(水銀ポロシメータ装置測定原理概要)
本発明の測定段階の一例としては、水銀ポロシメータ(マイクロメリティックス ポアサイザ 9320;島津製作所製)による測定方法を用いる。すなわち、粉体及びペースト中に存在する空隙(ポア)径等を測定するために水銀を圧入し、圧力による圧入量の変化から空隙径等を求める方法である。以下にその概要を示す。
【0014】
まず測定試料を乾燥し、それを測定室に所定量入れる。次に測定室を真空引きした後、そこに水銀を注入する。測定室に圧力をかけるとそれに伴い水銀が測定室の空隙に圧入されるが、その量Vを測定室の静電容量変化から求めることができる。
【0015】
すなわち具体的には、例えば5ccの容積を持つ測定試料部に乾燥させた0.3g(粉体)−0.7g(ペースト)を顆粒状に粉砕して挿入する。次いで試料部全体を50μmHgまで真空引きし、水銀を測定試料部に注入する。
【0016】
真空状態から大気圧に戻す際に水銀が試料中の細孔に入り込むが、その水銀注入量は試料全体の容量変化から求めることができる。引き続き大気圧(14.7Psia)から30000Psia(2041気圧)まで圧力を高める操作を行い水銀が試料部の細孔に圧入される。
【0017】
印加される圧力と水銀が入りうる試料中の細孔径の逆数とはリニアな関係にあるため、こうした操作を行うことで各細孔径に対してどの位の水銀が注入されるかを求めることができる。
【0018】
得られた結果の評価法としては、上述の圧力と水銀注入量の関係を基に行うもの(体積基準)と、圧力を上げることにより水銀が新たに注入できるようになる径の小さい細孔径が存在する粒子表面の表面積と圧力の関係を基に行うもの(表面積基準)との2通りの方法がある。
【0019】
水銀は細孔に液体が浸透する際の毛管の法則に従うと仮定し次のWashburnの方程式が成立する。
【0020】
D=−(1/P)4γCosθ…(1)
ここで細孔の直径をD、圧力をPとする。前記θは水銀の接触角であり、水銀の場合は130°であるためCosθ=−0.6428となる。また表面張力γは水銀の場合は485dyn/cm であるため、これらは定数となる。このことから前記(1)式を用いて圧力Pから細孔の直径Dを計算できる。
【0021】
各圧力での水銀圧入量の変化を取ることにより、例えば図1に示す、横軸を細孔径(圧力の逆数)とし、縦軸を水銀圧入量としたグラフを得ることができる。図1で水銀圧入量が全体の半分になる細孔径を体積基準メディアン径という。
【0022】
測定試料中に存在する空隙(ポア)はすべて円筒形であると仮定し、その細孔の直径をD,比表面積をA、深さをHとし、体積をVとする。体積Vはπ・(D/2)2・Hとなる。また比表面積Aは2π・(D/2)・H となるため、A=4V/D…(2)となる。
【0023】
前記(1)式と(2)式からDを消去することで PV=−AγCosθとなる。これを微分してdA=KPdV…(3)となる。ここでKは定数である。微分を差分に直して積分し、A=KΣP(I)V(I)…(4)となって、比表面積Aを求めることができる。
【0024】
この場合に横軸を細孔径(圧力の逆数)、縦軸を累積表面積にしたグラフを書くことができ、その例を図2に示す。図2で累積表面積が半分になる細孔径を比表面積基準メディアン径という。
【0025】
尚、図1、図2はいずれも酸化鉄粉の例を示しており、酸化鉄は長軸長150nmの針状粉で、長軸長と短軸長のアスペクト比は10である。
【0026】
前記(4)式においては、ある圧力P(I)での水銀圧入体積V(I)との積を取り、それらの和を取った後に定数Kをかけることにより表面積Aを求めることができることを示している(ここで表面積の単位は比表面積と同じm2/gとするように定数Kの値を決める。)。
【0027】
粉体系試料の場合には体積基準メディアン径を適用して評価すると、圧力が低い状態で水銀圧入量が多くなるが、(4)式ではそれに圧力Pがかかっているため、表面積Aの値にはあまり寄与しない。
【0028】
一方Vとしては余り大きな値にならなくても圧力が高い時に水銀が圧入された時はAの値への寄与が大きくなる。それが表面積基準にするとメディアン径が小さくなる理由である。
【0029】
本発明で適用する粉体はいずれも微粒子であり、メタル粉や酸化鉄などに関しては1個の粉体に発生している空隙は長軸長および短軸長と同程度以下の高々10−20nm程度である。こうしたことに対しても比表面積基準メディアン径での評価結果は実態をより反映しているものと考えられる。
【0030】
圧力を上げていくに従い、真空状態で水銀を圧入する際に入り込まなかった2次粒子間の空隙の部分にまず水銀が圧入される。2次粒子中の一次粒子間及び粉体自身の空隙に水銀が圧入されるのはもっと圧力が高くなってから(数百気圧以上)である。
【0031】
体積基準メディアン径では両方共にカウントされるが、比表面積基準メディアン径では殆ど後者のみがカウントされることがこうした違いとなって表れるものと推測される。
【0032】
(体積基準と比表面積基準のメディアン径の比較)
次に各種磁性粉、混練前処理品、混練ペースト処理品について、前記水銀ポロシメータにより測定した結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から体積基準メディアン径では原材料粉に関して長軸長以上の値となる。これは粒子の間に水銀が圧入される量が多いことを示唆する。これに対して比表面積基準メディアン径では原材料粉でも原材料の大きさ以下の値となる。このことは原材料表面の空隙に関する情報が得られていることを示唆している。
【0035】
またプラネタリ、混練前処理を施すことにより、比表面積基準メディアン径は原材料粉より値が小さくなり、ペースト処理により更に小さくなる。このことはこうした処理により原材料粉表面に存在する空隙が減少していくことを示している。
【0036】
また混練処理によりそれが11.0nmまで低下したことから、混練処理で粉体表面の空隙が一層バインダーで埋められていくことを示している。こうした結果から比表面積基準メディアン径を測定することにより粉体から混練処理までの粉体表面状態を把握できることが示された。
【0037】
(各種メタル粉の粉体特性と塗料化時の磁性粉分散性)
次に長軸長が40−100nmメタル粉の粉体状態での比表面積基準メディアン径を表2の左列に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
長軸長40nm以外のメタル粉では30nm前後であるのに対し、40 nm粉だけが100nm以上の大きな値となった。このことは粉体表面の空隙が大きいことを意味する。次にこれに塩ビ樹脂(MR110)をメタル粉100重量部に対して16.7重量部添加したもののプラネタリ処理を行った。その結果を表2の粉体の結果の右欄に記した。
【0040】
その結果メタル粉の空隙に塩ビ樹脂が入り込むためにメディアン径が小さくなったが、依然として40nmメタル粉ではメディアン径がほかのものより大きくなった。これを混練後塗料化(溶剤組成MEK/TOL/ANON 1/1/1で固形分30%)し、塗布後配向処理をして乾燥させたものの角型比を測定した(外部磁界5KOe)。
【0041】
その結果長軸長60nm以上のメタル粉を用いたテープでは角型比が93以上となったが、40nm粉は80に留まった。そこで40nmメタル粉に1.5倍量の塩ビ樹脂(メタル粉100重量部に樹脂25重量部)を添加したところ、プラネタリ処理後のメディアン径が24.9nmとなり、テープの角型比も93台になった。
【0042】
このことから、もともと大きな粉体でも空隙を埋めることにより塗料中の粒子分散性が向上するが、混練前段階のメディアン径を測定することで、塗料化した際の分散性を推測できることも示している。
【0043】
(混練条件変更の粒子分散性への影響)
次に長軸長40nmのメタル粉100重量部に28.6重量部のメタル粉を添加し、溶剤組成をMEK/TOL/ANON 1/1/1にて固形分70%にしてエクストルーダー混練条件を変えてペーストを試作した。
【0044】
混練条件はフィード量を210g、130g、50g毎分にし、回転数を150、230、300rpmにした。それをサンドミルで固形分28%にして塗料化した。そしてそれをPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布配向したものの磁気特性を測定した。それら測定結果は表3に示すとおりである。
【0045】
【表3】
【0046】
表3において、フィード量を下げ、回転数を上げる程テープの角型比が高まったが、それは塗料で見ると平均粒径D50(粒子を小さい方から並べた時の50%目に相当する粒径)が低下して一次粒子(計算では18.2nm)に近づくことと相関性が高い結果となった。
【0047】
またペーストを乾燥させて水銀ポロシメーターで測定した結果を併せて示したが、フィード量を下げ、回転数を上げると概ねメディアン径が減少し、全細孔表面積が小さくなった。この結果から混練時のペースト中の粒子分散性向上が塗料での粒子分散(D50の低下)及びテープでの角型比の増加につながっていることが示唆される結果となった。このことからペースト中の粒子の分散状態を直接評価できる本発明の方法は粒子分散に関して極めて有効な知見を与えることになる。
【0048】
以上のことから次の事項が明らかとなった。
1.粉体原材料、混合前粉体攪拌物(プラネタリ)、混練処理物(ニーダー、エクストルーダー等)に存在する空隙(ポア)の表面積基準メディアン径を小さくすることが塗料中の粒子分散性を向上することにつながる。
2.上記ポアの比表面積基準メディアン径を同じにした場合、全細孔表面積を小さくすると塗料中の粒子分散性が向上する。
3.決められた組成の最適混練条件を混練物の空隙のメディアン径の測定により定める事ができる。混練手法としてニーダー、エクストルーダー等があるがそれらのいずれにも本方法は適用できる。
4.粉体原材料中のポア径が大きい場合、バインダー等の添加量をふやすことで塗料中の粒子分散性を向上することができる。原材料の空隙を測定することにより、塗料分散性を保持するために必要なバインダー添加量を推定することができる。
【0049】
【発明の効果】
(1)以上のように本発明の磁気塗料中の粒子分散性評価方法によれば、ある粉体を最適分散させるために必要なバインダー添加量及び最適組成を予測できる。
【0050】
ペースト混練条件の最適化を図ることができる。
【0051】
プラント混練設備と生産混練設備の比較をすることができる(スケールファクター解明)。
【0052】
生産ペーストを解析することで塗料作製時の分散状態を予測できる(2時間程度で解析可能)。
【0053】
上記評価結果から分散条件の微調整や必要なら後処理をすることで分散性確保を図る事ができる。
【0054】
異種ペースト間の粒子分散性の比較をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水銀ポロシメータ装置により測定したときの、酸化鉄での水銀圧入量と細孔径の関係を示すグラフ。
【図2】水銀ポロシメータ装置により測定したときの、酸化鉄での累積表面積と細孔径の関係を示すグラフ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば塗布型磁気記録媒体を構成する各層用の磁気塗料中の粒子分散性評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来磁気塗料中の粒子分散性評価に関しては直接測定する方法が殆ど見出されておらず、例えば塗料を基板に塗布し、磁場配向処理後に溶剤乾燥させた後の塗膜中の磁性粉の配向性を角型比Rsで評価したり、塗膜面の平滑性を表面粗度sRaで評価したりする方法等がこれまで取られてきた。ただし、これらの方法は塗料中の有機溶剤を蒸発乾燥させる操作が伴い、塗料中の粒子分散状態が変化する懸念が払拭できない。
【0003】
本願発明者は磁気塗料を直接測定し、塗料中の粒子分散性を粒度分布測定により評価する方法を提唱してきた。
【0004】
尚本発明に関連する水銀ポロシメータとしては次の非特許文献1に開示されたものがある。
【0005】
【非特許文献1】島津製作所、「ポアサイザ9320取扱説明書」、第5章 データ整理 p7 細孔表面積の項。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
塗料化状態での粒子分散性を評価するには、磁気塗料を希釈せずに直接測定する方法と希釈して測定する方法の2つがある。ただし、その前段階である混練工程における粒子分散性の評価をする際には混練ペーストを希釈する必要があり、その際に発生する凝集を除去することは不可能に近い。そのため塗料中の粒子分散性を高めるために求められる最適混練条件を見出すことは至難の業といっても過言ではない。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものでその目的は、磁気塗料化における原材料から最終工程までの粒子分散性を評価することができ、また磁気塗料中の粒子分散性を制御することができる磁気塗料中の粒子分散性評価方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題を混練ペースト中の空隙(ポア)径を小さくかつ全空孔断面積を最小にする混練条件を見出すことで解決するようにした。それだけでなく原材料段階で空隙の多い粒子に関してはバインダー量を増やすことで粒子分散性を確保する手法も確立した。
【0009】
すなわち本発明の磁気塗料中の粒子分散性評価方法は、磁気塗料を測定試料とし、該試料中の比表面積基準メディアン径を測定する測定段階と、前記測定段階で測定されたメディアン径に基づいて磁気塗料の粒子分散性を評価する評価段階とを備えたことを特徴としている。
【0010】
また、前記評価段階は、前記測定試料を塗料化したときの磁気特性を測定して評価することを特徴としている。
【0011】
また前記測定試料は、磁気塗料の粉体原材料であることを特徴とし、また磁気塗料の混合前粉体撹拌物であることを特徴とし、また磁気塗料の混練処理物であることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
(水銀ポロシメータ装置測定原理概要)
本発明の測定段階の一例としては、水銀ポロシメータ(マイクロメリティックス ポアサイザ 9320;島津製作所製)による測定方法を用いる。すなわち、粉体及びペースト中に存在する空隙(ポア)径等を測定するために水銀を圧入し、圧力による圧入量の変化から空隙径等を求める方法である。以下にその概要を示す。
【0014】
まず測定試料を乾燥し、それを測定室に所定量入れる。次に測定室を真空引きした後、そこに水銀を注入する。測定室に圧力をかけるとそれに伴い水銀が測定室の空隙に圧入されるが、その量Vを測定室の静電容量変化から求めることができる。
【0015】
すなわち具体的には、例えば5ccの容積を持つ測定試料部に乾燥させた0.3g(粉体)−0.7g(ペースト)を顆粒状に粉砕して挿入する。次いで試料部全体を50μmHgまで真空引きし、水銀を測定試料部に注入する。
【0016】
真空状態から大気圧に戻す際に水銀が試料中の細孔に入り込むが、その水銀注入量は試料全体の容量変化から求めることができる。引き続き大気圧(14.7Psia)から30000Psia(2041気圧)まで圧力を高める操作を行い水銀が試料部の細孔に圧入される。
【0017】
印加される圧力と水銀が入りうる試料中の細孔径の逆数とはリニアな関係にあるため、こうした操作を行うことで各細孔径に対してどの位の水銀が注入されるかを求めることができる。
【0018】
得られた結果の評価法としては、上述の圧力と水銀注入量の関係を基に行うもの(体積基準)と、圧力を上げることにより水銀が新たに注入できるようになる径の小さい細孔径が存在する粒子表面の表面積と圧力の関係を基に行うもの(表面積基準)との2通りの方法がある。
【0019】
水銀は細孔に液体が浸透する際の毛管の法則に従うと仮定し次のWashburnの方程式が成立する。
【0020】
D=−(1/P)4γCosθ…(1)
ここで細孔の直径をD、圧力をPとする。前記θは水銀の接触角であり、水銀の場合は130°であるためCosθ=−0.6428となる。また表面張力γは水銀の場合は485dyn/cm であるため、これらは定数となる。このことから前記(1)式を用いて圧力Pから細孔の直径Dを計算できる。
【0021】
各圧力での水銀圧入量の変化を取ることにより、例えば図1に示す、横軸を細孔径(圧力の逆数)とし、縦軸を水銀圧入量としたグラフを得ることができる。図1で水銀圧入量が全体の半分になる細孔径を体積基準メディアン径という。
【0022】
測定試料中に存在する空隙(ポア)はすべて円筒形であると仮定し、その細孔の直径をD,比表面積をA、深さをHとし、体積をVとする。体積Vはπ・(D/2)2・Hとなる。また比表面積Aは2π・(D/2)・H となるため、A=4V/D…(2)となる。
【0023】
前記(1)式と(2)式からDを消去することで PV=−AγCosθとなる。これを微分してdA=KPdV…(3)となる。ここでKは定数である。微分を差分に直して積分し、A=KΣP(I)V(I)…(4)となって、比表面積Aを求めることができる。
【0024】
この場合に横軸を細孔径(圧力の逆数)、縦軸を累積表面積にしたグラフを書くことができ、その例を図2に示す。図2で累積表面積が半分になる細孔径を比表面積基準メディアン径という。
【0025】
尚、図1、図2はいずれも酸化鉄粉の例を示しており、酸化鉄は長軸長150nmの針状粉で、長軸長と短軸長のアスペクト比は10である。
【0026】
前記(4)式においては、ある圧力P(I)での水銀圧入体積V(I)との積を取り、それらの和を取った後に定数Kをかけることにより表面積Aを求めることができることを示している(ここで表面積の単位は比表面積と同じm2/gとするように定数Kの値を決める。)。
【0027】
粉体系試料の場合には体積基準メディアン径を適用して評価すると、圧力が低い状態で水銀圧入量が多くなるが、(4)式ではそれに圧力Pがかかっているため、表面積Aの値にはあまり寄与しない。
【0028】
一方Vとしては余り大きな値にならなくても圧力が高い時に水銀が圧入された時はAの値への寄与が大きくなる。それが表面積基準にするとメディアン径が小さくなる理由である。
【0029】
本発明で適用する粉体はいずれも微粒子であり、メタル粉や酸化鉄などに関しては1個の粉体に発生している空隙は長軸長および短軸長と同程度以下の高々10−20nm程度である。こうしたことに対しても比表面積基準メディアン径での評価結果は実態をより反映しているものと考えられる。
【0030】
圧力を上げていくに従い、真空状態で水銀を圧入する際に入り込まなかった2次粒子間の空隙の部分にまず水銀が圧入される。2次粒子中の一次粒子間及び粉体自身の空隙に水銀が圧入されるのはもっと圧力が高くなってから(数百気圧以上)である。
【0031】
体積基準メディアン径では両方共にカウントされるが、比表面積基準メディアン径では殆ど後者のみがカウントされることがこうした違いとなって表れるものと推測される。
【0032】
(体積基準と比表面積基準のメディアン径の比較)
次に各種磁性粉、混練前処理品、混練ペースト処理品について、前記水銀ポロシメータにより測定した結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から体積基準メディアン径では原材料粉に関して長軸長以上の値となる。これは粒子の間に水銀が圧入される量が多いことを示唆する。これに対して比表面積基準メディアン径では原材料粉でも原材料の大きさ以下の値となる。このことは原材料表面の空隙に関する情報が得られていることを示唆している。
【0035】
またプラネタリ、混練前処理を施すことにより、比表面積基準メディアン径は原材料粉より値が小さくなり、ペースト処理により更に小さくなる。このことはこうした処理により原材料粉表面に存在する空隙が減少していくことを示している。
【0036】
また混練処理によりそれが11.0nmまで低下したことから、混練処理で粉体表面の空隙が一層バインダーで埋められていくことを示している。こうした結果から比表面積基準メディアン径を測定することにより粉体から混練処理までの粉体表面状態を把握できることが示された。
【0037】
(各種メタル粉の粉体特性と塗料化時の磁性粉分散性)
次に長軸長が40−100nmメタル粉の粉体状態での比表面積基準メディアン径を表2の左列に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
長軸長40nm以外のメタル粉では30nm前後であるのに対し、40 nm粉だけが100nm以上の大きな値となった。このことは粉体表面の空隙が大きいことを意味する。次にこれに塩ビ樹脂(MR110)をメタル粉100重量部に対して16.7重量部添加したもののプラネタリ処理を行った。その結果を表2の粉体の結果の右欄に記した。
【0040】
その結果メタル粉の空隙に塩ビ樹脂が入り込むためにメディアン径が小さくなったが、依然として40nmメタル粉ではメディアン径がほかのものより大きくなった。これを混練後塗料化(溶剤組成MEK/TOL/ANON 1/1/1で固形分30%)し、塗布後配向処理をして乾燥させたものの角型比を測定した(外部磁界5KOe)。
【0041】
その結果長軸長60nm以上のメタル粉を用いたテープでは角型比が93以上となったが、40nm粉は80に留まった。そこで40nmメタル粉に1.5倍量の塩ビ樹脂(メタル粉100重量部に樹脂25重量部)を添加したところ、プラネタリ処理後のメディアン径が24.9nmとなり、テープの角型比も93台になった。
【0042】
このことから、もともと大きな粉体でも空隙を埋めることにより塗料中の粒子分散性が向上するが、混練前段階のメディアン径を測定することで、塗料化した際の分散性を推測できることも示している。
【0043】
(混練条件変更の粒子分散性への影響)
次に長軸長40nmのメタル粉100重量部に28.6重量部のメタル粉を添加し、溶剤組成をMEK/TOL/ANON 1/1/1にて固形分70%にしてエクストルーダー混練条件を変えてペーストを試作した。
【0044】
混練条件はフィード量を210g、130g、50g毎分にし、回転数を150、230、300rpmにした。それをサンドミルで固形分28%にして塗料化した。そしてそれをPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布配向したものの磁気特性を測定した。それら測定結果は表3に示すとおりである。
【0045】
【表3】
【0046】
表3において、フィード量を下げ、回転数を上げる程テープの角型比が高まったが、それは塗料で見ると平均粒径D50(粒子を小さい方から並べた時の50%目に相当する粒径)が低下して一次粒子(計算では18.2nm)に近づくことと相関性が高い結果となった。
【0047】
またペーストを乾燥させて水銀ポロシメーターで測定した結果を併せて示したが、フィード量を下げ、回転数を上げると概ねメディアン径が減少し、全細孔表面積が小さくなった。この結果から混練時のペースト中の粒子分散性向上が塗料での粒子分散(D50の低下)及びテープでの角型比の増加につながっていることが示唆される結果となった。このことからペースト中の粒子の分散状態を直接評価できる本発明の方法は粒子分散に関して極めて有効な知見を与えることになる。
【0048】
以上のことから次の事項が明らかとなった。
1.粉体原材料、混合前粉体攪拌物(プラネタリ)、混練処理物(ニーダー、エクストルーダー等)に存在する空隙(ポア)の表面積基準メディアン径を小さくすることが塗料中の粒子分散性を向上することにつながる。
2.上記ポアの比表面積基準メディアン径を同じにした場合、全細孔表面積を小さくすると塗料中の粒子分散性が向上する。
3.決められた組成の最適混練条件を混練物の空隙のメディアン径の測定により定める事ができる。混練手法としてニーダー、エクストルーダー等があるがそれらのいずれにも本方法は適用できる。
4.粉体原材料中のポア径が大きい場合、バインダー等の添加量をふやすことで塗料中の粒子分散性を向上することができる。原材料の空隙を測定することにより、塗料分散性を保持するために必要なバインダー添加量を推定することができる。
【0049】
【発明の効果】
(1)以上のように本発明の磁気塗料中の粒子分散性評価方法によれば、ある粉体を最適分散させるために必要なバインダー添加量及び最適組成を予測できる。
【0050】
ペースト混練条件の最適化を図ることができる。
【0051】
プラント混練設備と生産混練設備の比較をすることができる(スケールファクター解明)。
【0052】
生産ペーストを解析することで塗料作製時の分散状態を予測できる(2時間程度で解析可能)。
【0053】
上記評価結果から分散条件の微調整や必要なら後処理をすることで分散性確保を図る事ができる。
【0054】
異種ペースト間の粒子分散性の比較をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水銀ポロシメータ装置により測定したときの、酸化鉄での水銀圧入量と細孔径の関係を示すグラフ。
【図2】水銀ポロシメータ装置により測定したときの、酸化鉄での累積表面積と細孔径の関係を示すグラフ。
Claims (5)
- 磁気塗料を測定試料とし、該試料中の比表面積基準メディアン径を測定する測定段階と、
前記測定段階で測定されたメディアン径に基づいて磁気塗料の粒子分散性を評価する評価段階と
を備えたことを特徴とする磁気塗料中の粒子分散性評価方法。 - 前記測定試料は、磁気塗料の粉体原材料であることを特徴とする請求項1に記載の磁気塗料中の粒子分散性評価方法。
- 前記測定試料は、磁気塗料の混合前粉体撹拌物であることを特徴とする請求項1に記載の磁気塗料中の粒子分散性評価方法。
- 前記測定試料は、磁気塗料の混練処理物であることを特徴とする請求項1に記載の磁気塗料中の粒子分散性評価方法。
- 前記評価段階は、前記測定試料を塗料化したときの磁気特性を測定して評価することを特徴とする請求項1に記載の磁気塗料中の粒子分散性評価方法。
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