JP2004278557A - セラミックバルブ及びその製造方法並びにバルブユニット - Google Patents
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Abstract
【課題】長期間にわたり、優れた摺動特性を安定して得ることができ、水漏れ等も生じにくいセラミックバルブ及びその製造方法並びにバルブユニットを提供すること。
【解決手段】可動弁体(5)の摺動面(9)には、円柱状に開けられた多数の凹部(19)が形成されている。つまり、可動弁体(5)の摺動面(9)は、可動弁体(5)の中央に開口する混合室(17)の周縁部から円板の外縁部に至る表面であり、この摺動面(9)には、直径φ0.1〜0.5mmの円形の開口部(21)を有する凹部(19)が、均一な配列で多数開口している。具体的には、凹部(19)の開口部(21)以外の摺動面(9)の面積が、摺動面(9)の全表面積の40〜80%の範囲を占めるように、凹部(19)が多数形成されている。
【選択図】 図2
【解決手段】可動弁体(5)の摺動面(9)には、円柱状に開けられた多数の凹部(19)が形成されている。つまり、可動弁体(5)の摺動面(9)は、可動弁体(5)の中央に開口する混合室(17)の周縁部から円板の外縁部に至る表面であり、この摺動面(9)には、直径φ0.1〜0.5mmの円形の開口部(21)を有する凹部(19)が、均一な配列で多数開口している。具体的には、凹部(19)の開口部(21)以外の摺動面(9)の面積が、摺動面(9)の全表面積の40〜80%の範囲を占めるように、凹部(19)が多数形成されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックバルブ及びその製造方法並びにバルブユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水や湯の供給に使用されるバルブとして、摺動面(摺接面)において互いに接する固定弁体と可動弁体とを備えたセラミックバルブが多く使用されている。
【0003】
このようなセラミックバルブは、例えば円板状に形成された弁体を互いに接した状態にて摺動させることにより、各弁体に形成した流体通路の開閉を行うようになっている。また、この種のセラミックバルブには、水(あるいは湯)を単独に給・止水できるタイプのものの他、湯水を混合して使用できるタイプのものもある(いわゆる湯水混合栓)。
【0004】
前記弁体の材質としては、耐食性や耐摩耗性に優れしかも安価であることから、アルミナ質セラミックを採用したものが普及している。また、最近では、その摺動特性を向上させるために、弁体の摺動面にダイヤモンド状薄膜等の非晶質炭素膜(いわゆるDLCによるコーティング膜)を形成したものが知られている。
【0005】
ところで、上記のようなセラミックバルブにおいては、弁体の摺動面は、水漏れ防止のために高精度に仕上げられるのが通常である。
しかしながら、摺動性と水漏れ防止のためのシール性とは元来相反する因子であり、摺動性を高めるために摺動面の面粗度(面粗さ)を大きくすると水漏れが発生し、一方、シール性を向上させるために摺動面の面粗度を小さくすると、弁体同士が貼り付いて動かなくなる、いわゆるリンキング現象が発生しやすくなる。
【0006】
この対策として、下記特許文献1には、非晶質炭素膜を形成する摺動面の面粗度を0.08〜0.4μmと若干粗い領域に設定し、リンキング防止とシール性との両立を図る提案がなされている。
しかし、この面粗度のレベルは、非晶質炭素膜単独で水漏れを完全に防止するには粗すぎるため、通常、グリースの塗布が要求される。この場合、長期間バルブを使用するうちにグリースが流出すると、微細な凸部が削れてなくなったり、あるいは凹部が摩耗粉で埋まったりして、結局はリンキングが発生し易くなる。
【0007】
一方、下記特許文献2や特許文献3には、摺動面を構成する2面のうちのいずれか一方のみに非晶質炭素膜(ダイヤモンド状炭素膜)を形成する手法にて、グリース塗布の廃止が実現可能となる旨が記載されている。
これら公報の技術においては、2つの弁体のいずれか片側のみに非晶質炭素膜を形成する点にて共通しており、かつ面粗度も前記特許文献1に開示されたものよりも低い値に設定されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−233121号公報 (第2頁、第1図)
【特許文献2】
特開平3−223190号公報 (第2頁、第1図)
【特許文献3】
特開平6−101772号公報 (第2頁、第1図)
【特許文献4】
特開2001−124220号公報 (第2頁、第1図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した特許文献1〜3の技術では、実際にはグリースを塗布しない状態でバルブの摺動を長期間繰り返せば非晶質炭素膜の摩耗がやはり進行し、摺動特性が損なわれてしまう。従って、現在市販されている各社のセラミックバルブには、例外なくグリース塗布した形で市販に供されているのが現状である。
【0010】
その結果、グリース切れが生じた場合は、グリースの再塗布を行う必要が生じるなどメンテナンス上の問題が生ずる。また、実際には、グリース切れにより摺動性が低下した場合は、バルブそのものを新品に交換するのが通常である。
この対策として、本願出願人は、既に上記特許文献4にて、一方の摺動面に硬質炭素皮膜を形成するとともに、両方の摺動面の中心線平均粗さRaを規定し、更に硬質炭素皮膜の硬さを規定した発明を提案しているが、本発明は、この発明を踏まえて、一層の改善を図ったものである。
【0011】
つまり、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、長期間にわたり、優れた摺動特性を安定して得ることができ、シール性が高く水漏れ等も生じにくいセラミックバルブ及びその製造方法並びにバルブユニットを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
(1)請求項1の発明は、セラミック製の固定弁体とセラミック製の可動弁体とを、互いの摺動面にて摺動させるセラミックバルブにおいて、前記固定弁体及び前記可動弁体の摺動面のうち、少なくとも一方の摺動面に、微小な凹部を多数設けるとともに、前記凹部の開口部の平均開口面積を0.0079〜0.2mm2としたことを特徴とする。
【0013】
本発明では、固定弁体や可動弁体の摺動面に、微小な凹部を多数設けるとともに、凹部の開口部の平均開口面積を0.0079〜0.2mm2としているので、長期間にわたり、優れた摺動特性を安定して得ることができ、またシール性が高いので水漏れも生じににくく、しかもメンテナンス性に優れている。
【0014】
特に、本発明では、凹部の開口部の平均開口面積が0.0079mm2以上であるので、摺動面上に適度な大きさの凹部を設けることができ、これにより、リンキングを防止でき、優れた摺動性を確保できる。また、平均開口面積が0.2mm2以下であるので、過大な凹部によるシール性の悪化を防止でき、高いシール性を確保して水漏れの発生を防止できる。
【0015】
尚、微小な凹部を多数設ける程度としては、例えば1cm2当たり50〜1000の範囲の程度を採用でき、特に1cm2当たり100個程度が、リンキング及び水漏れ防止の点から好適である。また、凹部は、摺動面にわたり均一に設けることが好ましい(以下同様)。
【0016】
(2)請求項2の発明は、セラミック製の固定弁体とセラミック製の可動弁体とを、互いの摺動面にて摺動させるセラミックバルブにおいて、前記固定弁体及び前記可動弁体の摺動面のうち、少なくとも一方の摺動面に、微小な凹部を多数設けるとともに、前記凹部の開口面積(特に開口形状)を該凹部の軸方向に略一定としたことを特徴とする。
【0017】
本発明では、固定弁体や可動弁体の摺動面に設けられた多数の凹部は、柱状に開けられている。つまり、凹部の開口部の開口面積(特に開口形状)が、その底部までほぼ同じに設定されている。
従って、長期間の使用によって摺動面が摩耗しても、摺動面における接触面積の割合(接触面積率=接触面積/開口面積を含む摺動面の面積)が変化しない。よって、摺動性やシール性が変化することを抑制できる。
【0018】
(3)請求項3の発明は、セラミック製の固定弁体とセラミック製の可動弁体とを、互いの摺動面にて摺動させるセラミックバルブにおいて、前記固定弁体及び可動弁体の摺動面のうち、少なくとも一方の摺動面に、微小な凹部を多数設けるとともに、前記凹部の開口部の平均開口面積を0.0079〜0.2mm2とし、更に、前記凹部の開口面積を該凹部の軸方向に略一定としたことを特徴とする。
【0019】
本発明は、前記請求項1、2の発明の構成を備えている。従って、前記請求項1、2の発明と同様に、長期間にわたり優れた摺動特性を安定して得ることができ、また、長期間にわたりシール性が高いので水漏れも生じににくく、メンテナンス性に優れている。
【0020】
(4)請求項4の発明は、前記凹部の開口部の平均径を、φ0.1〜0.5mmとしたことを特徴とする。
本発明は、凹部の開口部の開口形状が円形の場合に、その平均径を例示したものである。この平均径を有する凹部を多数形成することにより、前記請求項1の発明と同様な効果を奏するとともに、開口形状が円形であるので、カケ等が生じにくく、強度的に優れているという利点がある。
【0021】
(5)請求項5の発明は、前記凹部を設けた摺動面において、前記凹部が開口する開口部及び空孔以外の面積が、前記摺動面に対して40〜80%(即ち前記接触面積率)であることを特徴とする。
つまり、本発明では、接触面積率が40%以上であるので、シール性が優れており水漏れが生じにくい。しかも、接触面積率が80%以下であるので、リンキングが生じにくく、摺動性に優れている。尚、接触面積率が50〜70%の場合には、上記効果に優れており、一層好適である。
【0022】
ここで、前記開口部とは加工により形成されるものであり、空孔とは摺動面を形成する材料が元来有するものである。
(6)請求項6の発明は、前記摺動面の面粗度が、0.1μm以下であることを特徴とする。
【0023】
本発明は、摺動面の好ましい面粗度の範囲を例示したものである。つまり、面粗度が0.1μm以下であると、優れた摺動性が得られる。
尚、この面粗度とは、「JIS B 0601−2001」に規定する平均表面粗さRaである。
【0024】
(7)請求項7の発明は、前記請求項1〜6のいずれかに記載のセラミックバルブを、内部を流れる液体の弁体として備えたバルブユニットを特徴とする。
本発明のバルブユニットは、上述したセラミックバルブを備えているので、優れた摺動特性を長期間安定して得ることができ、また、長期間にわたりシール性が高く水漏れも生じににくく、メンテナンス性に優れている。
【0025】
(8)請求項8の発明は、前記請求項1〜6のいずれかに記載のセラミックバルブの製造方法であって、前記凹部を設ける摺動面に鏡面加工を施し、その後、前記鏡面加工を施した摺動面に対し、前記凹部の形成位置以外をマスキングして、サンドブラスト加工を施して、前記凹部を形成することを特徴とする。
【0026】
本発明は、上述したセラミックバルブの製造方法を例示したものである。本発明の様に、サンドブラストによって凹部を形成することにより、多数の凹部を精度良く、例えば一度の処理により容易に形成することができる。
・尚、固定弁体と可動弁体との各セラミック基材は特に限定されないが、例えばアルミナ質緻密焼結体が、熱衝撃や熱応力に対する耐久性と耐薬品性に優れていることから本発明に好適に使用することができる。
【0027】
・また、固定弁体と可動弁体との摺動面には、グリースを塗布することが考えられるが、例えばDLCコーティングを施すことにより、グリースを省略することも可能である。
・更に、前記セラミックバルブは、例えば、固定弁体及び可動弁体の一方を、1ないしそれ以上の液供給部を備える供給側部材とし、同じく他方を、その供給側部材に対し、摺動面において互いに接触した状態で相対的に摺動可能に設けられ、その摺動により液供給部から供給される液体の流量を調整する流量調整部材とすることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のセラミックバルブ及びその製造方法並びにバルブユニットの実施の形態の例(実施例)について説明する。
(実施例)
a)まず、本実施例のセラミックバルブについて説明する。
【0029】
図1に示す様に、本実施例のセラミックバルブ1は、例えば温水と冷水の混合など、温度の異なる液体を混合させる混合栓のバルブ部として使用されるものである。
このセラミックバルブ1は、円板等の板状に構成された固定弁体(供給側部材)3と、同じく円板等の板状に構成された可動弁体(流量調整部材)5とを備え、それぞれ一方の板面に形成された摺動面7、9において、互いに重ね合わされるようになっている。この両弁体3、5は、セラミックの緻密焼結体(ここではアルミナ質緻密焼結体)により形成されている。
【0030】
前記固定弁体3は、板厚方向に貫通する2つの液流入口(液供給部)11、13を備え、一方が高温液流入口11、他方が低温液流入口13とされ、各々摺動面7とは反対側の板面側から、それぞれ高温及び低温の液体(例えば温水と冷水)が図示しない供給管路から流入し、可動弁体5側へ流出するようになっている。
【0031】
また、固定弁体3には、同じく板厚方向に貫通する液排出口15が形成されており、摺動面7側において固定弁体3側からの液体が流入し、その反対側において流出管路等へ該液体を流出するようになっている。
一方、前記可動弁体5には、繭状に切り欠かれて摺動面9側に開口する混合室17が形成されている。この混合室17は、高温液流入口11と低温液流入口13と液排出口15とに対して、可動弁体5の矢印A、B方向の回転に伴って連通可能な形状とされており、高温液流入口11及び低温液流入口13から高温及び低温の液体を流入させて混合した後、液排出口15へ排出するようになっている。
【0032】
ここで、可動弁体5は、その摺動面9において固定弁体3に対して相対的に回転可能とされており、その相対回転に応じて、混合室17と高温液流入口11及び低温液流入口13との重なり部分の面積比率、すなわち高温液流入口11及び低温液流入口13から混合室17への液の供給比率が変化するようになっている。
【0033】
また、この可動弁体5は、固定弁体3に対して、混合室17が高温液流入口11及び低温液流入口13に重なる位置と、重なりを生じなくなる位置との間で、C、D方向に往復動可能とされ、液排出口15からの液排出を許容又は停止できるようになっている。
【0034】
b)次に、本実施例の要部であるセラミックバルブ1の摺動面7、9の構成について説明する。
前記セラミックバルブ1においては、可動弁体5及び固定弁体3の一方、具体的には、可動弁体5側の摺動面9が固定弁体3の摺動面7よりも小面積とされている。
【0035】
このうち、可動弁体5の摺動面9には、図2に示す様に、多数の凹部19が形成されている。つまり、可動弁体5の摺動面9は、可動弁体5の中央に開口する混合室17の周縁部から円板の外縁部に至る表面であり、この摺動面9には、円形の開口部21を有する凹部19が、均一な配列で多数開口している。
【0036】
具体的には、各開口部21の直径は、φ0.1〜0.5mmの範囲(例えば φ0.3mm)である。また、凹部19は、1cm2当たりの個数が50〜1000の範囲(例えば100個)となるように、全摺動面9にわたって均一に多数設けられている。これにより、開口部21以外の摺動面9の面積(空孔を除いた実際に固定弁体3に当接する実摺動面積)が、摺動面9の全表面積の40〜80%の範囲(例えば50%)を占めるように、即ち、40〜80%の接触面積率となるように凹部19が形成されている。
【0037】
特に、前記凹部19は、図3にその軸方向の縦断面を示す様に、深さ約0.2mmまで円柱状に開けられており、その表面の開口部21から底部23まで直径がほぼ同じ(従って開口面積及び形状がほぼ同じ)である。
また、前記摺動面7、9には、グリースが塗布されるので、このグリースが凹部19内に充填される。
【0038】
c)次に、前記セラミックバルブ1の製造方法について説明する。
▲1▼まず、原料粉末として、純度99.8%のアルミナ粉末と、焼結助剤粉末として、純度99.8%のSiO2、MgOとを用意し、所定の比率にて配合した後、その粉末総量を100重量部とし、バインダとしてのボバールワックス及びステアリン酸を5重量部と、水103重量部とを加えて湿式混合することにより、成形用素地スラリーを作製した。
【0039】
そして、そのスラリーをスプレードライ法により乾燥し、ふるいにより粒径80〜150μmに整粒して原料素地粉末とした。該原料素地粉末は、金型プレスにより58.8MPaの圧力で部材形状に成型し、所定温度で焼結することにより可動弁体5及び固定弁体3に対応する形状の焼結体(アルミナ質緻密焼結体)を得た。
【0040】
▲2▼次に、微粉噴射加工装置を用いたマイクロブラスト工法(例えば微粒子のSiCをワークに対して噴射して加工するサンドブラスト)にて、可動弁体5の摺動面9に多数の凹部19を形成した。
つまり、マイクロブラストのマスキングに用いるマスク材を製造し、このマスク材を用いて、可動弁体5の摺動面9に対してマイクロブラストを行った。尚、マスク材は、紫外線硬化型のウレタン樹脂からなるフィルムである。
【0041】
具体的には、ワークである可動弁体5の摺動面9に、マスク材となるドライフィルムを貼り付け、(多数の凹部19が格子状に並んだ形状のパターンとなるように)紫外線にて露光し、弱アルカリ溶液にて現像し、乾燥した。これにより、所定パターンを有するマスク材がワーク表面に貼り付けられた状態となる。
【0042】
その後、微粉噴射加工装置にてマイクロブラスト加工を行い、マスク材の無い部分のみを選択的に除去して、可動弁体5の摺動面9に所定パターンの多数の凹部19を形成した。加工後、マスク材を除去して洗浄した。
尚、マイクロブラストの加工条件としては、下記の条件を採用できる。
【0043】
噴射材の種類:SiC
噴射材の寸法:#400〜#600(粒径:20〜30μm)
更に、可動弁体5の摺動面9(及び固定弁体3の摺動面7)に対して鏡面加工を行った。例えば、摺動面7及び摺動面9は、周知の表面研磨により、いずれもその中心線平均粗さRaが0.08μm以下に調整した。
【0044】
これにより、本実施例のセラミックバルブ1を構成する固定弁体3及び可動弁体5を得た。
d)次に、前記セラミックバルブ1を組み込んだバルブユニットについて説明する。
【0045】
図4に示す様に、前記セラミックバルブ1は、バルブユニット25に組み込まれている。
このバルブユニット25においては、可動弁体5は、円板状のケース27の底面側の開口部29に嵌着・収容される。そして、ケース27の上面側には、一体的にレバー取付部31が固定され、このレバー取付部31は、カバー33を介して操作レバー35に固定されている。
【0046】
一方、固定弁体3は、円板状のベース部37上に固定される。このベース部37には、固定弁体3の高温液流入口11及び低温液流入口13にそれぞれ連通する液供給口39、41と、液排出口部15に連通する液排出口43とが形成されている。
【0047】
また、各液供給口39、41と液排出口43との各周縁部にて、ベース部37と固定弁体3との間には、ゴム等によりリング状に形成されたシール部材45が配置されている。
更に、液排出口43には蛇口部45が、また、液供給口39、41には温水供給管47及び冷水供給管49が、それぞれ接続されている。
【0048】
そして、前記構成のバルブユニット25では、可動弁体5をケース27及びカバー33とともに、固定弁体3に対して高温液流入口11側へ回転させると、その高温液流入口11と混合室17との重なり面積が増加し、混合室17に流れ込む高温の液体の比率が増加して、液排出口15から排出される混合液の温度が上昇する。
【0049】
逆に、可動弁体5を低温液流入口13側へ回転させると、低温の液体の比率が増大するので排出される混合液の温度は低下する。
このように、可動弁体5の回転角を調整することにより、排出される混合液の温度を自由に変化させることができる。
【0050】
また、レバー35を上下動させると、可動弁体5が固定弁体3に対して往復動し、混合室17が高温液流入口11及び低温液流入口13に重なると、液排出が許容され、逆に重なりを生じなくなると排出が停止される。
e)次に、本実施例の効果について説明する。
【0051】
本実施例のセラミックバルブ1を備えたバルブユニット25においては、可動弁体5の摺動面9に、開口形状が円形でその直径がφ0.1〜0.5mmの範囲の多数の凹部19が均一に設けられ、その接触面積率が40〜80%の範囲に設定されている。
【0052】
従って、優れた摺動特性を長期間安定して得ることができ、また、長期間にわたりシール性が高いので水漏れも生じににくく、しかもメンテナンス性に優れている。
また、前記凹部19は、その開口形状が底部23まで続くように柱状に開けられているので、長期間の使用により摺動面9が摩耗しても、摺動面9における接触面積率が変化しない。よって、この点からも、長期間にわたり摺動性やシール性が変化することを防止できる。
【0053】
更に、本実施例では、サンドブラストにより凹部19を形成するので、多数の凹部19を、精密にしかも一度の加工で形成することができる。
f)次に、本実施例の効果を確認するために行った実験例について説明する。
前記実施例と同様なバルブユニットを作製し、ケーシングにて押さえ付けた。
【0054】
また、比較例として、摺動面にサンドブラスト加工を行わず、非晶質炭素膜をコーティングしたバルブユニットを製造した。
▲1▼そして、「JIS B 2061」による耐圧性能試験(閉栓状態にて液供給口より冷水として室温の水を1.75MPaにて注入する)を行い、水漏れの有無を確認した。
【0055】
その結果、本実施例のセラミックバルブユニットは、水漏れが無く良好であった。
▲2▼また、バルブ全開状態として、液供給口より室温の水を0.17MPaにて注入する一方、液供給口より80℃の温水を0.1MPaにて注入し、操作レバーにより可動弁体を固定弁体に対して回転摺動させ、摺動に必要な荷重を測定した。そして、全温水−混合−全冷水−止水を1サイクルとして、20万サイクルまで摺動を繰返し、その時点で摺動荷重が9.8N以下のものを良好、9.8Nを超えるものを不良として評価した。
【0056】
その結果、本実施例のセラミックバルブユニットは、摺動荷重が少なく良好であったが、比較例のものは、摺動荷重が大きく好ましくない。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0057】
(1)例えば、多数の凹部を、可動弁体の摺動面ではなく、固定弁体の摺動面に設けてもよい。或いは、両方に設けてもよい。
(2)また、凹部の開口部の形状は、強度や欠け防止等の点で円形が望ましいが、方形や楕円形状等の各種の形状も採用できる。
【0058】
(3)更に、前記実施例では、摺動面にグリースを塗布したが、グリースを省略することも可能である。
(4)その上、可動弁体及び固定弁体の摺動面のうち、少なくとも一方に、DLCコーティングを施してもよい。このDLCコーティングを施すことによって、摺動性が増すという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のセラミックバルブを分解して示す斜視図である。
【図2】可動弁体の摺動面側を示す説明図である。
【図3】凹部を軸方向に破断した状態を示す断面図である。
【図4】実施例のバルブユニットを分解して示す斜視図である。
【符号の説明】
1…セラミックバルブ
3…固定弁体
5…可動弁体
7、9…摺動面
11…高温液流入口
13…低温液流入口
15…液排出口
17…混合室
19…凹部
25…バルブユニット
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックバルブ及びその製造方法並びにバルブユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水や湯の供給に使用されるバルブとして、摺動面(摺接面)において互いに接する固定弁体と可動弁体とを備えたセラミックバルブが多く使用されている。
【0003】
このようなセラミックバルブは、例えば円板状に形成された弁体を互いに接した状態にて摺動させることにより、各弁体に形成した流体通路の開閉を行うようになっている。また、この種のセラミックバルブには、水(あるいは湯)を単独に給・止水できるタイプのものの他、湯水を混合して使用できるタイプのものもある(いわゆる湯水混合栓)。
【0004】
前記弁体の材質としては、耐食性や耐摩耗性に優れしかも安価であることから、アルミナ質セラミックを採用したものが普及している。また、最近では、その摺動特性を向上させるために、弁体の摺動面にダイヤモンド状薄膜等の非晶質炭素膜(いわゆるDLCによるコーティング膜)を形成したものが知られている。
【0005】
ところで、上記のようなセラミックバルブにおいては、弁体の摺動面は、水漏れ防止のために高精度に仕上げられるのが通常である。
しかしながら、摺動性と水漏れ防止のためのシール性とは元来相反する因子であり、摺動性を高めるために摺動面の面粗度(面粗さ)を大きくすると水漏れが発生し、一方、シール性を向上させるために摺動面の面粗度を小さくすると、弁体同士が貼り付いて動かなくなる、いわゆるリンキング現象が発生しやすくなる。
【0006】
この対策として、下記特許文献1には、非晶質炭素膜を形成する摺動面の面粗度を0.08〜0.4μmと若干粗い領域に設定し、リンキング防止とシール性との両立を図る提案がなされている。
しかし、この面粗度のレベルは、非晶質炭素膜単独で水漏れを完全に防止するには粗すぎるため、通常、グリースの塗布が要求される。この場合、長期間バルブを使用するうちにグリースが流出すると、微細な凸部が削れてなくなったり、あるいは凹部が摩耗粉で埋まったりして、結局はリンキングが発生し易くなる。
【0007】
一方、下記特許文献2や特許文献3には、摺動面を構成する2面のうちのいずれか一方のみに非晶質炭素膜(ダイヤモンド状炭素膜)を形成する手法にて、グリース塗布の廃止が実現可能となる旨が記載されている。
これら公報の技術においては、2つの弁体のいずれか片側のみに非晶質炭素膜を形成する点にて共通しており、かつ面粗度も前記特許文献1に開示されたものよりも低い値に設定されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−233121号公報 (第2頁、第1図)
【特許文献2】
特開平3−223190号公報 (第2頁、第1図)
【特許文献3】
特開平6−101772号公報 (第2頁、第1図)
【特許文献4】
特開2001−124220号公報 (第2頁、第1図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した特許文献1〜3の技術では、実際にはグリースを塗布しない状態でバルブの摺動を長期間繰り返せば非晶質炭素膜の摩耗がやはり進行し、摺動特性が損なわれてしまう。従って、現在市販されている各社のセラミックバルブには、例外なくグリース塗布した形で市販に供されているのが現状である。
【0010】
その結果、グリース切れが生じた場合は、グリースの再塗布を行う必要が生じるなどメンテナンス上の問題が生ずる。また、実際には、グリース切れにより摺動性が低下した場合は、バルブそのものを新品に交換するのが通常である。
この対策として、本願出願人は、既に上記特許文献4にて、一方の摺動面に硬質炭素皮膜を形成するとともに、両方の摺動面の中心線平均粗さRaを規定し、更に硬質炭素皮膜の硬さを規定した発明を提案しているが、本発明は、この発明を踏まえて、一層の改善を図ったものである。
【0011】
つまり、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、長期間にわたり、優れた摺動特性を安定して得ることができ、シール性が高く水漏れ等も生じにくいセラミックバルブ及びその製造方法並びにバルブユニットを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
(1)請求項1の発明は、セラミック製の固定弁体とセラミック製の可動弁体とを、互いの摺動面にて摺動させるセラミックバルブにおいて、前記固定弁体及び前記可動弁体の摺動面のうち、少なくとも一方の摺動面に、微小な凹部を多数設けるとともに、前記凹部の開口部の平均開口面積を0.0079〜0.2mm2としたことを特徴とする。
【0013】
本発明では、固定弁体や可動弁体の摺動面に、微小な凹部を多数設けるとともに、凹部の開口部の平均開口面積を0.0079〜0.2mm2としているので、長期間にわたり、優れた摺動特性を安定して得ることができ、またシール性が高いので水漏れも生じににくく、しかもメンテナンス性に優れている。
【0014】
特に、本発明では、凹部の開口部の平均開口面積が0.0079mm2以上であるので、摺動面上に適度な大きさの凹部を設けることができ、これにより、リンキングを防止でき、優れた摺動性を確保できる。また、平均開口面積が0.2mm2以下であるので、過大な凹部によるシール性の悪化を防止でき、高いシール性を確保して水漏れの発生を防止できる。
【0015】
尚、微小な凹部を多数設ける程度としては、例えば1cm2当たり50〜1000の範囲の程度を採用でき、特に1cm2当たり100個程度が、リンキング及び水漏れ防止の点から好適である。また、凹部は、摺動面にわたり均一に設けることが好ましい(以下同様)。
【0016】
(2)請求項2の発明は、セラミック製の固定弁体とセラミック製の可動弁体とを、互いの摺動面にて摺動させるセラミックバルブにおいて、前記固定弁体及び前記可動弁体の摺動面のうち、少なくとも一方の摺動面に、微小な凹部を多数設けるとともに、前記凹部の開口面積(特に開口形状)を該凹部の軸方向に略一定としたことを特徴とする。
【0017】
本発明では、固定弁体や可動弁体の摺動面に設けられた多数の凹部は、柱状に開けられている。つまり、凹部の開口部の開口面積(特に開口形状)が、その底部までほぼ同じに設定されている。
従って、長期間の使用によって摺動面が摩耗しても、摺動面における接触面積の割合(接触面積率=接触面積/開口面積を含む摺動面の面積)が変化しない。よって、摺動性やシール性が変化することを抑制できる。
【0018】
(3)請求項3の発明は、セラミック製の固定弁体とセラミック製の可動弁体とを、互いの摺動面にて摺動させるセラミックバルブにおいて、前記固定弁体及び可動弁体の摺動面のうち、少なくとも一方の摺動面に、微小な凹部を多数設けるとともに、前記凹部の開口部の平均開口面積を0.0079〜0.2mm2とし、更に、前記凹部の開口面積を該凹部の軸方向に略一定としたことを特徴とする。
【0019】
本発明は、前記請求項1、2の発明の構成を備えている。従って、前記請求項1、2の発明と同様に、長期間にわたり優れた摺動特性を安定して得ることができ、また、長期間にわたりシール性が高いので水漏れも生じににくく、メンテナンス性に優れている。
【0020】
(4)請求項4の発明は、前記凹部の開口部の平均径を、φ0.1〜0.5mmとしたことを特徴とする。
本発明は、凹部の開口部の開口形状が円形の場合に、その平均径を例示したものである。この平均径を有する凹部を多数形成することにより、前記請求項1の発明と同様な効果を奏するとともに、開口形状が円形であるので、カケ等が生じにくく、強度的に優れているという利点がある。
【0021】
(5)請求項5の発明は、前記凹部を設けた摺動面において、前記凹部が開口する開口部及び空孔以外の面積が、前記摺動面に対して40〜80%(即ち前記接触面積率)であることを特徴とする。
つまり、本発明では、接触面積率が40%以上であるので、シール性が優れており水漏れが生じにくい。しかも、接触面積率が80%以下であるので、リンキングが生じにくく、摺動性に優れている。尚、接触面積率が50〜70%の場合には、上記効果に優れており、一層好適である。
【0022】
ここで、前記開口部とは加工により形成されるものであり、空孔とは摺動面を形成する材料が元来有するものである。
(6)請求項6の発明は、前記摺動面の面粗度が、0.1μm以下であることを特徴とする。
【0023】
本発明は、摺動面の好ましい面粗度の範囲を例示したものである。つまり、面粗度が0.1μm以下であると、優れた摺動性が得られる。
尚、この面粗度とは、「JIS B 0601−2001」に規定する平均表面粗さRaである。
【0024】
(7)請求項7の発明は、前記請求項1〜6のいずれかに記載のセラミックバルブを、内部を流れる液体の弁体として備えたバルブユニットを特徴とする。
本発明のバルブユニットは、上述したセラミックバルブを備えているので、優れた摺動特性を長期間安定して得ることができ、また、長期間にわたりシール性が高く水漏れも生じににくく、メンテナンス性に優れている。
【0025】
(8)請求項8の発明は、前記請求項1〜6のいずれかに記載のセラミックバルブの製造方法であって、前記凹部を設ける摺動面に鏡面加工を施し、その後、前記鏡面加工を施した摺動面に対し、前記凹部の形成位置以外をマスキングして、サンドブラスト加工を施して、前記凹部を形成することを特徴とする。
【0026】
本発明は、上述したセラミックバルブの製造方法を例示したものである。本発明の様に、サンドブラストによって凹部を形成することにより、多数の凹部を精度良く、例えば一度の処理により容易に形成することができる。
・尚、固定弁体と可動弁体との各セラミック基材は特に限定されないが、例えばアルミナ質緻密焼結体が、熱衝撃や熱応力に対する耐久性と耐薬品性に優れていることから本発明に好適に使用することができる。
【0027】
・また、固定弁体と可動弁体との摺動面には、グリースを塗布することが考えられるが、例えばDLCコーティングを施すことにより、グリースを省略することも可能である。
・更に、前記セラミックバルブは、例えば、固定弁体及び可動弁体の一方を、1ないしそれ以上の液供給部を備える供給側部材とし、同じく他方を、その供給側部材に対し、摺動面において互いに接触した状態で相対的に摺動可能に設けられ、その摺動により液供給部から供給される液体の流量を調整する流量調整部材とすることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のセラミックバルブ及びその製造方法並びにバルブユニットの実施の形態の例(実施例)について説明する。
(実施例)
a)まず、本実施例のセラミックバルブについて説明する。
【0029】
図1に示す様に、本実施例のセラミックバルブ1は、例えば温水と冷水の混合など、温度の異なる液体を混合させる混合栓のバルブ部として使用されるものである。
このセラミックバルブ1は、円板等の板状に構成された固定弁体(供給側部材)3と、同じく円板等の板状に構成された可動弁体(流量調整部材)5とを備え、それぞれ一方の板面に形成された摺動面7、9において、互いに重ね合わされるようになっている。この両弁体3、5は、セラミックの緻密焼結体(ここではアルミナ質緻密焼結体)により形成されている。
【0030】
前記固定弁体3は、板厚方向に貫通する2つの液流入口(液供給部)11、13を備え、一方が高温液流入口11、他方が低温液流入口13とされ、各々摺動面7とは反対側の板面側から、それぞれ高温及び低温の液体(例えば温水と冷水)が図示しない供給管路から流入し、可動弁体5側へ流出するようになっている。
【0031】
また、固定弁体3には、同じく板厚方向に貫通する液排出口15が形成されており、摺動面7側において固定弁体3側からの液体が流入し、その反対側において流出管路等へ該液体を流出するようになっている。
一方、前記可動弁体5には、繭状に切り欠かれて摺動面9側に開口する混合室17が形成されている。この混合室17は、高温液流入口11と低温液流入口13と液排出口15とに対して、可動弁体5の矢印A、B方向の回転に伴って連通可能な形状とされており、高温液流入口11及び低温液流入口13から高温及び低温の液体を流入させて混合した後、液排出口15へ排出するようになっている。
【0032】
ここで、可動弁体5は、その摺動面9において固定弁体3に対して相対的に回転可能とされており、その相対回転に応じて、混合室17と高温液流入口11及び低温液流入口13との重なり部分の面積比率、すなわち高温液流入口11及び低温液流入口13から混合室17への液の供給比率が変化するようになっている。
【0033】
また、この可動弁体5は、固定弁体3に対して、混合室17が高温液流入口11及び低温液流入口13に重なる位置と、重なりを生じなくなる位置との間で、C、D方向に往復動可能とされ、液排出口15からの液排出を許容又は停止できるようになっている。
【0034】
b)次に、本実施例の要部であるセラミックバルブ1の摺動面7、9の構成について説明する。
前記セラミックバルブ1においては、可動弁体5及び固定弁体3の一方、具体的には、可動弁体5側の摺動面9が固定弁体3の摺動面7よりも小面積とされている。
【0035】
このうち、可動弁体5の摺動面9には、図2に示す様に、多数の凹部19が形成されている。つまり、可動弁体5の摺動面9は、可動弁体5の中央に開口する混合室17の周縁部から円板の外縁部に至る表面であり、この摺動面9には、円形の開口部21を有する凹部19が、均一な配列で多数開口している。
【0036】
具体的には、各開口部21の直径は、φ0.1〜0.5mmの範囲(例えば φ0.3mm)である。また、凹部19は、1cm2当たりの個数が50〜1000の範囲(例えば100個)となるように、全摺動面9にわたって均一に多数設けられている。これにより、開口部21以外の摺動面9の面積(空孔を除いた実際に固定弁体3に当接する実摺動面積)が、摺動面9の全表面積の40〜80%の範囲(例えば50%)を占めるように、即ち、40〜80%の接触面積率となるように凹部19が形成されている。
【0037】
特に、前記凹部19は、図3にその軸方向の縦断面を示す様に、深さ約0.2mmまで円柱状に開けられており、その表面の開口部21から底部23まで直径がほぼ同じ(従って開口面積及び形状がほぼ同じ)である。
また、前記摺動面7、9には、グリースが塗布されるので、このグリースが凹部19内に充填される。
【0038】
c)次に、前記セラミックバルブ1の製造方法について説明する。
▲1▼まず、原料粉末として、純度99.8%のアルミナ粉末と、焼結助剤粉末として、純度99.8%のSiO2、MgOとを用意し、所定の比率にて配合した後、その粉末総量を100重量部とし、バインダとしてのボバールワックス及びステアリン酸を5重量部と、水103重量部とを加えて湿式混合することにより、成形用素地スラリーを作製した。
【0039】
そして、そのスラリーをスプレードライ法により乾燥し、ふるいにより粒径80〜150μmに整粒して原料素地粉末とした。該原料素地粉末は、金型プレスにより58.8MPaの圧力で部材形状に成型し、所定温度で焼結することにより可動弁体5及び固定弁体3に対応する形状の焼結体(アルミナ質緻密焼結体)を得た。
【0040】
▲2▼次に、微粉噴射加工装置を用いたマイクロブラスト工法(例えば微粒子のSiCをワークに対して噴射して加工するサンドブラスト)にて、可動弁体5の摺動面9に多数の凹部19を形成した。
つまり、マイクロブラストのマスキングに用いるマスク材を製造し、このマスク材を用いて、可動弁体5の摺動面9に対してマイクロブラストを行った。尚、マスク材は、紫外線硬化型のウレタン樹脂からなるフィルムである。
【0041】
具体的には、ワークである可動弁体5の摺動面9に、マスク材となるドライフィルムを貼り付け、(多数の凹部19が格子状に並んだ形状のパターンとなるように)紫外線にて露光し、弱アルカリ溶液にて現像し、乾燥した。これにより、所定パターンを有するマスク材がワーク表面に貼り付けられた状態となる。
【0042】
その後、微粉噴射加工装置にてマイクロブラスト加工を行い、マスク材の無い部分のみを選択的に除去して、可動弁体5の摺動面9に所定パターンの多数の凹部19を形成した。加工後、マスク材を除去して洗浄した。
尚、マイクロブラストの加工条件としては、下記の条件を採用できる。
【0043】
噴射材の種類:SiC
噴射材の寸法:#400〜#600(粒径:20〜30μm)
更に、可動弁体5の摺動面9(及び固定弁体3の摺動面7)に対して鏡面加工を行った。例えば、摺動面7及び摺動面9は、周知の表面研磨により、いずれもその中心線平均粗さRaが0.08μm以下に調整した。
【0044】
これにより、本実施例のセラミックバルブ1を構成する固定弁体3及び可動弁体5を得た。
d)次に、前記セラミックバルブ1を組み込んだバルブユニットについて説明する。
【0045】
図4に示す様に、前記セラミックバルブ1は、バルブユニット25に組み込まれている。
このバルブユニット25においては、可動弁体5は、円板状のケース27の底面側の開口部29に嵌着・収容される。そして、ケース27の上面側には、一体的にレバー取付部31が固定され、このレバー取付部31は、カバー33を介して操作レバー35に固定されている。
【0046】
一方、固定弁体3は、円板状のベース部37上に固定される。このベース部37には、固定弁体3の高温液流入口11及び低温液流入口13にそれぞれ連通する液供給口39、41と、液排出口部15に連通する液排出口43とが形成されている。
【0047】
また、各液供給口39、41と液排出口43との各周縁部にて、ベース部37と固定弁体3との間には、ゴム等によりリング状に形成されたシール部材45が配置されている。
更に、液排出口43には蛇口部45が、また、液供給口39、41には温水供給管47及び冷水供給管49が、それぞれ接続されている。
【0048】
そして、前記構成のバルブユニット25では、可動弁体5をケース27及びカバー33とともに、固定弁体3に対して高温液流入口11側へ回転させると、その高温液流入口11と混合室17との重なり面積が増加し、混合室17に流れ込む高温の液体の比率が増加して、液排出口15から排出される混合液の温度が上昇する。
【0049】
逆に、可動弁体5を低温液流入口13側へ回転させると、低温の液体の比率が増大するので排出される混合液の温度は低下する。
このように、可動弁体5の回転角を調整することにより、排出される混合液の温度を自由に変化させることができる。
【0050】
また、レバー35を上下動させると、可動弁体5が固定弁体3に対して往復動し、混合室17が高温液流入口11及び低温液流入口13に重なると、液排出が許容され、逆に重なりを生じなくなると排出が停止される。
e)次に、本実施例の効果について説明する。
【0051】
本実施例のセラミックバルブ1を備えたバルブユニット25においては、可動弁体5の摺動面9に、開口形状が円形でその直径がφ0.1〜0.5mmの範囲の多数の凹部19が均一に設けられ、その接触面積率が40〜80%の範囲に設定されている。
【0052】
従って、優れた摺動特性を長期間安定して得ることができ、また、長期間にわたりシール性が高いので水漏れも生じににくく、しかもメンテナンス性に優れている。
また、前記凹部19は、その開口形状が底部23まで続くように柱状に開けられているので、長期間の使用により摺動面9が摩耗しても、摺動面9における接触面積率が変化しない。よって、この点からも、長期間にわたり摺動性やシール性が変化することを防止できる。
【0053】
更に、本実施例では、サンドブラストにより凹部19を形成するので、多数の凹部19を、精密にしかも一度の加工で形成することができる。
f)次に、本実施例の効果を確認するために行った実験例について説明する。
前記実施例と同様なバルブユニットを作製し、ケーシングにて押さえ付けた。
【0054】
また、比較例として、摺動面にサンドブラスト加工を行わず、非晶質炭素膜をコーティングしたバルブユニットを製造した。
▲1▼そして、「JIS B 2061」による耐圧性能試験(閉栓状態にて液供給口より冷水として室温の水を1.75MPaにて注入する)を行い、水漏れの有無を確認した。
【0055】
その結果、本実施例のセラミックバルブユニットは、水漏れが無く良好であった。
▲2▼また、バルブ全開状態として、液供給口より室温の水を0.17MPaにて注入する一方、液供給口より80℃の温水を0.1MPaにて注入し、操作レバーにより可動弁体を固定弁体に対して回転摺動させ、摺動に必要な荷重を測定した。そして、全温水−混合−全冷水−止水を1サイクルとして、20万サイクルまで摺動を繰返し、その時点で摺動荷重が9.8N以下のものを良好、9.8Nを超えるものを不良として評価した。
【0056】
その結果、本実施例のセラミックバルブユニットは、摺動荷重が少なく良好であったが、比較例のものは、摺動荷重が大きく好ましくない。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0057】
(1)例えば、多数の凹部を、可動弁体の摺動面ではなく、固定弁体の摺動面に設けてもよい。或いは、両方に設けてもよい。
(2)また、凹部の開口部の形状は、強度や欠け防止等の点で円形が望ましいが、方形や楕円形状等の各種の形状も採用できる。
【0058】
(3)更に、前記実施例では、摺動面にグリースを塗布したが、グリースを省略することも可能である。
(4)その上、可動弁体及び固定弁体の摺動面のうち、少なくとも一方に、DLCコーティングを施してもよい。このDLCコーティングを施すことによって、摺動性が増すという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のセラミックバルブを分解して示す斜視図である。
【図2】可動弁体の摺動面側を示す説明図である。
【図3】凹部を軸方向に破断した状態を示す断面図である。
【図4】実施例のバルブユニットを分解して示す斜視図である。
【符号の説明】
1…セラミックバルブ
3…固定弁体
5…可動弁体
7、9…摺動面
11…高温液流入口
13…低温液流入口
15…液排出口
17…混合室
19…凹部
25…バルブユニット
Claims (8)
- セラミック製の固定弁体とセラミック製の可動弁体とを、互いの摺動面にて摺動させるセラミックバルブにおいて、
前記固定弁体及び前記可動弁体の摺動面のうち、少なくとも一方の摺動面に、微小な凹部を多数設けるとともに、前記凹部の開口部の平均開口面積を0.0079〜0.2mm2としたことを特徴とするセラミックバルブ。 - セラミック製の固定弁体とセラミック製の可動弁体とを、互いの摺動面にて摺動させるセラミックバルブにおいて、
前記固定弁体及び前記可動弁体の摺動面のうち、少なくとも一方の摺動面に、微小な凹部を多数設けるとともに、前記凹部の開口面積を該凹部の軸方向に略一定としたことを特徴とするセラミックバルブ。 - セラミック製の固定弁体とセラミック製の可動弁体とを、互いの摺動面にて摺動させるセラミックバルブにおいて、
前記固定弁体及び可動弁体の摺動面のうち、少なくとも一方の摺動面に、微小な凹部を多数設けるとともに、前記凹部の開口部の平均開口面積を0.0079〜0.2mm2とし、更に、前記凹部の開口面積を該凹部の軸方向に略一定としたことを特徴とするセラミックバルブ。 - 前記凹部の開口部の平均径を、φ0.1〜0.5mmとしたことを特徴とする請求項1又は3に記載のセラミックバルブ。
- 前記凹部を設けた摺動面において、前記凹部が開口する開口部及び空孔以外の面積が、前記摺動面に対して40〜80%であることを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックバルブ。
- 前記摺動面の面粗度が、0.1μm以下であることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックバルブ。
- 前記請求項1〜6のいずれかに記載のセラミックバルブを、内部を流れる液体の弁体として備えたことを特徴とするバルブユニット。
- 前記請求項1〜6のいずれかに記載のセラミックバルブの製造方法であって、
前記凹部を設ける摺動面に鏡面加工を施し、その後、前記鏡面加工を施した摺動面に対し、前記凹部の形成位置以外をマスキングして、サンドブラスト加工を施して、前記凹部を形成することを特徴とするセラミックバルブの製造方法。
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JP2013029194A (ja) * | 2011-06-20 | 2013-02-07 | Toto Ltd | ディスクバルブ |
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- 2003-03-12 JP JP2003067097A patent/JP2004278557A/ja active Pending
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