JP2004278340A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジン1およびエンジン1に接続されてエンジン1の出力を回生する発電機2を備え、統合コントロールユニット10に、発電機2の目標発電量に基づき目標エンジントルクを算出する手段と、エンジン1の運転領域毎に前記目標エンジントルクを学習補正する目標エンジントルク学習補正手段と、目標エンジントルク学習補正手段により補正された目標エンジントルクに基づいてエンジントルクを制御する手段と、目標エンジントルクを制限する目標エンジントルクリミッタを算出する手段とを設け、前記目標エンジントルク学習進行度合いに基づいて前記目標エンジントルクリミッタを可変とした。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の制御装置に関し、特に、ハイブリッド車両に好適な車両の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からエンジンと発電/電動機を組合せて搭載したハイブリッド車両(HEV)が、大きくシリーズ式、パラレル式に分類されて知られ、いずれもエンジンの運動エネルギの全部あるいは一部を発電機により一旦電気エネルギに変換するようにしている。シリーズ式の場合はエンジンの出力軸から取出される仕事率(軸出力)は全て発電機によって回生され、また一部のパラレル式においても、エンジンから駆動系への機械的接続を切離して一時的にシリーズ式の発電モードを選択でき、この場合もエンジンの軸出力は全て発電機により回生される。
【0003】
ここで、特にパラレル式HEVでは、通常の運転時にはエンジンの軸出力は発電のためだけではなく、同時に駆動出力としても使用するため、エンジンの最高出力は発電機の最高出力よりも大きくなるように、エンジンと発電機を組合せることが多い。そのため、パラレルHEVをシリーズモードで発電を行う場合、エンジンの軸出力が全て発電機へと加わるため、発電機に対して過大入力となる可能性がある。シリーズHEVでも、エンジンから発電機への入力仕事率が過大とならないよう、予め発電機の最高出力および最大トルクが、それぞれのエンジンの値よりも大きくなる様に、エンジンと発電機を組合せるのが望ましいが、発電機コストやシステムレイアウトによりやむを得ずその反対の組合せになる場合がある。
【0004】
このようなエンジンと発電機の組合せの場合、エンジントルクが発電機の最大許容回生トルクを上回り、結果としてエンジンおよび発電機が過回転に至る可能性がある。このような不具合を解消すべく、発電機の最大許容回生トルクに基づいてエンジントルクを予め制限するものが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
これは、エンジンの最大トルクが、発電機の最大トルクを上回る回転領域において、エンジンのスロットル開度が所定値以上開かないように制限する、即ち、実際のエンジントルクではなく、エンジントルクに影響を及ぼす制御目標値を制限して、エンジントルクが発電機の最大許容回生トルクを上回らないようにするものである。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−325344号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般にエンジントルクの制御精度や、環境変化、および、そもそものエンジン個体ばらつきによって、エンジントルクは目標値とは完全には一致しないことは良く知られている。そこで、エンジントルクのばらつき幅が最大でどれくらいの大きさになるかということは予想できるため、実際のエンジントルクが目標値よりも大きい側へばらつくことを考慮して、通常は前記のスロットル開度のリミッタを決める際に、エンジントルクが目標値と比較して大きい側へ、起こり得る最大量ばらついたとしても、発電機の最大許容回生トルクを上回らないように設定される。
【0008】
しかしながら、エンジントルクが大きい側へばらつくことを想定して、制御目標値のリミッタを予め設定した場合、エンジントルクが中央値あるいは小さい側へばらつく状態では、過剰にエンジントルクを制限することとなって、最高出力が必要以上に低下してしまう不具合が生ずる。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、エンジン軸出力の全てが発電機へ加わるシリーズモードにおけるエンジントルクの制限が過剰となることを抑制可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エンジンおよびエンジンに接続されてエンジンの出力を回生する発電機を備え、発電機の目標発電量に基づき目標エンジントルクを算出する手段と、エンジンの運転領域毎に前記目標エンジントルクを学習補正する目標エンジントルク学習補正手段と、目標エンジントルク学習補正手段により補正された目標エンジントルクに基づいてエンジントルクを制御する手段と、目標エンジントルクを制限する目標エンジントルクリミッタを算出する手段と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であり、前記目標エンジントルク学習進行度合いに基づいて前記目標エンジントルクリミッタを可変とする。
【0011】
【発明の効果】
したがって、本発明では、発電機の目標発電量に基づき算出される目標エンジントルクを、エンジンの運転領域毎に学習補正し、補正された目標エンジントルクに基づいてエンジントルクを制御し、目標エンジントルクリミッタ算出手段により目標エンジントルクを制限するようにし、前記目標エンジントルクリミッタは、前記目標エンジントルク学習進行度合いに基づいて可変とされるようにした。このため、目標エンジントルク学習補正手段は、発電機回生トルクと目標エンジントルクとの偏差が減少するようにエンジントルクを補正し、学習により目標エンジントルク補正量を更新することにより、目標エンジントルクを運転領域毎に時々刻々適切な値に設定することができる。このため、例えば、実際のエンジントルクが目標値よりも小さい側へばらついた場合であっても、目標エンジントルク学習補正手段およびその学習進行度合いに基づき算出される目標エンジントルクリミッタにより、過剰にエンジントルクを制限してしまうことがなく、そのエンジンと発電機の組合せにおいて可能な限り高い出力を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を各実施形態に基づいて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本発明のハイブリッド車両の制御装置の第1実施形態が適用される車両のシステム構成図である。この車両では、従来の機械式変速機に代えて、無段変速機として機能する電機パワートレイン5がエンジン1に接続されている。電機パワートレイン5は、主に発電機として使用される第1の回転電機(以下、発電機)2と主に電動機として使用される第2の回転電機(以下、電動機)4とで構成され、発電機2のロータ軸がエンジン1のクランク軸に連結される一方、電動機4のロータ軸(以下、出力軸)6は、図示しない変速装置、動力伝達装置、差動装置等の減速機を介して駆動軸(駆動輪が取付けられる回転軸)に連結される。
【0014】
発電機2および電動機4は永久磁石式交流同期電動機等の交流機であり、それぞれインバータ8に接続されている。インバータ8にはさらにバッテリ9(リチウムバッテリあるいはニッケル水素バッテリ等)が接続されている。
【0015】
発電機2と電動機4の間にはクラッチ3が介装されており、クラッチ3が締結されるとエンジン1と出力軸6が直結状態となってエンジン1で直接出力軸6を駆動することができる。クラッチ3は、駆動力をエンジン1のみ、電動機4のみ、またはエンジン1と電動機4両方に切換えるためのものであり、HEVの種類や構造によっては当該クラッチ3を備えないものもある。図1では、第1の回転電機(発電機)はエンジンの出力軸上に配置されているが、ギアやプーリなどで連結する方式もある。
【0016】
また、電機パワートレイン5には、発電機2のロータ回転速度(以下、入力軸回転速度)Niを検出する入力軸回転速度センサ24と、電動機4のロータ回転速度(以下、出力軸回転速度)Noを検出する出力軸回転速度センサ21とが取付けられている。
【0017】
一方、エンジン1の吸気管には電子制御式スロットル弁14が設けられており、スロットル弁14は必要とされる発電電力に応じて設定される目標エンジントルクが実現されるよう運転者のアクセル操作とは独立して開閉制御される。エンジン1にはこの他、吸入空気量を検出するエアフローメータ13、クランク角を検出するクランク角センサ23が設けられている。
【0018】
統合コントロールユニット10は、基本的には、検出されたアクセル操作量等に基づき運転者が要求する駆動力を求め、要求駆動力が実現されるようにトランスミッションコントロールユニット12を介して電動機4のトルク制御を行う。また、電動機4の駆動出力(消費電力)に見合った発電電力が得られるようにトランスミッションコントロールユニット12を介しての発電機2の回転速度制御及びエンジンコントロールユニット11を介してのエンジン1のトルク制御も併せて行う。
【0019】
統合コントロールユニット10の目標エンジントルク演算は、図2に示す目標エンジントルクを演算する目標エンジントルク演算部と、図4に示す目標エンジントルクを学習された補正値で補正する最終目標エンジントルク設定部と、図3に示す最終エンジントルク設定部で利用する補正値をエンジン運転領域毎に学習・記憶しその学習値を出力可能な学習マップ値参照部と、図5に示す学習値更新演算部とより構成している。即ち、図2は目標エンジントルク演算部の制御内容を示した演算ブロック図、図3はエンジン運転領域毎に補正値を記憶しその学習値を出力可能な学習マップ値参照部の演算ブロック図、図4は最終目標エンジントルク設定部の演算ブロック図、図5は学習値更新演算部の演算ブロック図である。
【0020】
図2において、目標エンジントルク演算部(図中破線で囲んだ部分)には、アクセル操作量等に基づく要求駆動力より求められる目標発電量TGP0[W]、発電機2入力回転数から得られるエンジン回転数換算値RNENEST[rpm]、要求駆動力とバッテリ充電要求等から求められた発電機最大許容回生トルクLMTGMNS[Nm]、予め設定されたエンジントルクリミッタマージン値LMTEMGN[Nm]、エンジン1と発電機2の回転速度変化に伴うトルク(回転速度増加時は正値、減少時は負値)の推定値であるイナーシャトルク推定値TIPMB[Nm]、発電機2の制御電流から算出した発電機回生トルクSTMB[Nm]、目標エンジントルクTTE[Nm]と発電機回生トルクSTMB[Nm]との差から得られるトルク偏差TEDLT[Nm]、エンジン水温TW[℃]の各信号が入力される。発電機2のトルク(発電機回生トルクSTMB、発電機最大許容回生トルクLMTGMNS等)は、回生(発電)しているときのトルクを正としている。なお、トルク偏差TEDLT[Nm]は、後述する学習値更新演算部の演算により求められたものを利用することも可能であり、その場合にはここでの演算を省略することができる。
【0021】
除算器B1は、目標発電量TGPO[W]を、定数器B2で単位変換したエンジン回転数換算値RNENEST[rad/s]で除してトルク換算値TTE0[Nm]を演算する。
【0022】
減算器B3は、要求駆動力およびバッテリ要求等から求められる発電機最大許容回生トルクLMTGMNS[Nm]から、予め設定したエンジントルクリミッタマージン値LMTEMGN[Nm]を減算して目標エンジントルクリミッタ値LMTEPLS[Nm]を演算する。
【0023】
比較器B4は、入力されたトルク換算値TTE0[Nm]と目標エンジントルクリミッタ値LMTEPLS[Nm]とを比較し、いずれか小さい側の入力を選択して出力する。トルク換算値TTE0[Nm]は要求駆動トルクであり、目標エンジントルクリミッタ値LMTEPLS[Nm]はマージンを減じた発電機2側の最大許容回生トルクLMTGMNSであるため、要求駆動トルクTTE0が最大許容回生トルクLMTGMNS未満である場合には要求駆動トルクTTE0が出力され、最大許容回生トルクLMTGMNSを超える場合には最大許容回生トルクLMTGMNS0が出力される。
【0024】
加算器B5は、比較器B4の出力値にイナーシャトルク推定値TIPMB[Nm]を加算し、エンジン1と発電機2の回転速度変化に伴うトルク(回転速度増加時は正値、減少時は負値)を織込んだトルク値を出力する。
【0025】
比較器B6は、加算器B5から出力されるトルク値と、最大エンジントルク演算部B7で演算される最大エンジントルクTTMAX[Nm]とを比較し、いずれか小さい側の入力を選択して出力する。最大エンジントルク演算部B7は、エンジン回転数(換算値RNENEST)に対する実際のエンジン1の最大トルクを記憶させている最大トルクテーブルから参照した最大エンジントルクTTMAXを出力する。
【0026】
比較器B8は、比較器B6で選択されたトルク値と、最小エンジントルク演算部B9で演算された最小エンジントルクTTMIN[Nm]とを比較し、いずれか大きい側の入力を選択して目標エンジントルクTTE[Nm]として出力する。最小エンジントルク演算部B9は、エンジン回転数(換算値RNENEST)に対する実際のエンジン1の最小トルクを記憶させている最小トルクテーブルから参照した最小エンジントルクTTMINを出力する。
【0027】
以上の構成では、エンジン1は、電流を制御することで安定した出力特性を得られる電動機(発電機、モータ)と異なり、環境の変化や運転状態によって出力特性が変化するものであるため、エンジントルクが発電機2の最大許容回生トルクLMTGMNS[Nm]を上回ってしまい、結果としてエンジン1および発電機2が過回転に至ってしまうことがないように、エンジントルクTTE[Nm]を制限するようにしている。
【0028】
また、エンジン1および発電機2が過回転に至らないように発電機最大許容回生トルクLMTGMNS[Nm]よりエンジントルクリミッタマージン値LMTMGN[Nm]を減算した値を目標エンジントルクリミッタLMTEPLS[Nm]として設定している。したがってエンジントルクTTE[Nm]は目標エンジントルクリミッタLMTEPLS[Nm]により制限される。
【0029】
切換器B10は、前記減算器B3に入力されるエンジントルクリミッタマージン値LMTEMGN[Nm]を、補正なしの100パーセントを入力する場合と、トルク偏差TEDLT[Nm]に係数器B11による所定の係数K2(補正値HOS[%]の値が1より小となるよう設定される)を乗じて補正値HOS[%]を算出し、この補正値HOS[%]をマージン値LMTEMGN[Nm]に乗算器B12により乗算して100パーセント未満に補正した補正エンジントルクリミッタマージン値(LMTEMGN×HOS)[Nm]として入力する場合との、いずれかに切換選択可能としている。そして、切換器B10は、ORブロックB13の出力が「1」の場合に100%のエンジントルクリミッタマージン値LMTEMGN[Nm]を選択し、ORブロックB13の出力が「0」の場合(後述するように、通常は「0」が出力される)に補正値HOS[%]を乗算した補正エンジントルクリミッタマージン値(LMTEMGN×HOS)[Nm]を選択する。即ち、エンジン1および発電機2が過回転に至らないように前記エンジントルクリミッタマージン値LMTEMGNを設定しているが、該エンジントルクリミッタマージンLMTEMGNは過剰にエンジントルクを制限しないように、トルク偏差量TEDLT[Nm]に応じて前記マージン値LIMEMGNの補正を行っている。この場合、トルク偏差TEDLTが小さいほど補正値HOS[%]も小さくなる。また、後述する目標エンジントルクTTEのトルク補正量TBLRC[Nm]を更新する学習が進むほどトルク偏差TEDLT[Nm]が小さくなるので、トルク偏差TEDLT[Nm]が小さいほどリミッタマージンを小さくすることは望ましい。
【0030】
前記ORブロックB13には、エンジンの水温判定ブロックB14より出力される暖機中「1」若しくは暖機完了「0」の水温判定信号と、発電機最大許容回生トルクLMTGMNS[Nm]に対するエンジントルク(=発電機回生トルクSTMB[Nm])を監視するエンジントルク判定ブロックB15より出力されるエンジントルク大「1」若しくは発電機最大許容回生トルク大「0」のエンジントルク判定信号とが入力される。
【0031】
前記水温判定ブロックB14は、エンジンの冷却水温TW[℃]が所定のしきい値TWH[℃]に達するまでは暖機中信号「1」を出力し、しきい値TWH[℃]を超えた時点より暖機完了信号「0」を出力する。暖機完了信号「0」は、しきい値TWH[℃]にヒステリシスをもってTWH−HIS[℃]の低下まで維持され、それ以下の水温低下時に信号「1」に復帰される。即ち、エンジン水温TW[℃]が所定のしきい値TWH[℃]以上になるまでの間、水温判定ブロックB14の出力が「1」となり、ORブロックB13の出力が「1」となり、切換器B10は補正されていないリミッタマージンLMTEMGN[Nm]を選択する。また、エンジン水温TW[℃]が所定のしきい値TWH[℃]以上になった場合は、水温判定ブロックB14の出力が「0」となり、ORブロックB13の出力が「0」となり、切換器B10は補正されたリミッタマージンLMTEMGN[Nm]を選択する。
【0032】
従って、前記ハイブリッド車両の停止時、および、システム起動時(運転開始時)の急激な環境の変化(温度、湿度、気圧など)や一時的な車両状態の変化等で、前記マージン値が過剰に補正(小さく)してしまった場合でも、前記ハイブリッド車両のシステム起動時からエンジン水温TW[℃]が所定のしきい値TWH[℃]に達するまでは該エンジントルクリミッタマージンLMTEMGNを初期値として設定するためエンジン1および発電機2の過回転を防止することが可能である。また、エンジン水温TW[℃]が所定のしきい値TWH[℃]以上になった場合は、その時の環境や車両の状態で前記マージン値LMTEMGN[Nm]の補正を行うため、過剰にエンジントルクを制限することを防止することが可能である。
【0033】
前記エンジントルク判定ブロックB15は、発電機最大許容回生トルクLMTGMNS[Nm]とエンジントルク(=発電機回生トルクSTMB[Nm])を比較し、発電機回生トルクSTMB≧発電機最大許容回生トルクLMTGMNSが成立するとき「1」を出力し、不成立のとき「0」を出力する。即ち、結果として発電機最大許容回生トルクLMTGMNS[Nm]をエンジントルク(=発電機回生トルクSTMB[Nm])が越えた場合は、ORブロックB13から切換器B10に信号「1」を出力させ、直ちにエンジントルクリミッタマージンLMTEMGN[Nm]を補正していない初期値に設定し、エンジントルクをより低い値へ制限して、エンジン1および発電機2の過回転を防止するようにできる。
【0034】
前記最終目標エンジントルク設定部は、図4に示すように、加算器B20により前記目標エンジントルクTTE[Nm]に目標エンジントルク補正量の学習参照値TBLRC[Nm]を加算し、最終目標エンジントルクTTEN[Nm]を設定する。前記目標エンジントルク補正量は、エンジン1の運転領域毎、即ち、複数の領域に分割したエンジン回転数と同じく複数の領域に分割したエンジントルクとを組合せた運転領域毎に、その学習参照値TBLRC[Nm]を記憶させた、図3に示す、学習マップB21から参照して利用する。この学習マップB21の学習参照値TBLRC[Nm]の読出しは、図3に示すように、学習ポインタセットB22により、その時点のエンジン回転数換算値RNEMEST[rpm]および目標エンジントルクTTE[Nm]基づいてエンジン1の運転領域を特定し、特定した運転領域の学習ポインタALPC1をセットし、学習マップB21より目標エンジントルク補正量である学習値TBLRC[Nm]を参照することができる。
【0035】
前記学習マップB21の学習値TBLRC[Nm]の更新は、図5に示すように、減算器B23により目標エンジントルクTTE[Nm]から発電機トルクSMB[Nm]を減算してトルク偏差TEDLT[Nm]を求め、常数器B24によりトルク偏差TEDLT[Nm]に所定のゲインIGTFBを乗じ、加算器B25により現在のエンジン運転領域の学習マップ参照値TBLRC[Nm]に加算し、得られた値を上下リミッタB26により上限値mTBLMAXと下限値mTBLMINの範囲内に制限して学習値TBLRC1[Nm]とし、この学習値TBLRC1を新たな学習値TBLRCとして現在のエンジン運転領域の学習マップ値を更新する。なお、発電機回生トルクSTMB[Nm]は、発電機2の制御電流から比較的正確に算出することができる。また、トランスミッションコントロールユニット12が算出する発電機2の目標トルクをSTMB[Nm]として使用してもよい。なお、定常運転時は、「実エンジントルク=発電機回生トルクSTMB」とみなすことができる。
【0036】
従って、発電機回生トルクSTMB[Nm]と目標エンジントルクTTE[Nm]との偏差TEDLT[Nm]が減少するようにエンジントルクを補正し、学習により目標エンジントルク補正量TBLRC[Nm]を更新することにより、目標エンジントルクTTE[Nm]を複数の運転領域毎に時々刻々適切な値に設定することができ、過剰にエンジントルクを制限してしまうことがなく、そのエンジン1と発電機2の組合せにおいて可能な限り(過回転に至らない)高い出力を得ることができる。
【0037】
また、学習値の更新演算手段は、目標エンジントルクTTE[Nm]と所定時間前の目標エンジントルクTTE[Nm]との差u(ただしu=TTE−所定時間前TTE)を減算器B27により求め、判定ブロックB28により前記差の絶対値|u|を補正量しきい値DTLRNST[Nm]と比較し、前記差の絶対値|u|が補正量しきい値DTLRNST[Nm]以下の場合(補正量しきい値DTLRNDT≧絶対値|u|)にのみ切換器B29に許可信号「1」を出力し、それ以外の場合には切換器B29に不許可信号「0」を出力するよう構成している。判定ブロックB28から許可信号「1」が出力される場合は、前記差の絶対値が補正量しきい値DTLRNST[Nm]以下のエンジン1がほぼ定常運転しているとみなせる場合のみである。なお、ここでは、前記差uは、所定時間前と比較して得ているが、所定サンプル数前との比較により得てもよい。前記切換器B29は、許可信号「1」が入力されると、前記ゲインIGTFBを乗じたトルク偏差TEDLT[Nm]を加算器B25へ出力し、不許可信号「0」が入力されると、加算器B25へ零を出力する。
【0038】
従って、学習により前記目標エンジントルク補正量TBLRC[Nm]を更新する場合において、所定の運転状態の場合にのみ学習値を更新し、車両の運転状態における過渡的のさまざまな変動要因を含んだ値を学習して、前記目標エンジントルク補正量TBLRC[Nm]を好ましくない方向へを補正してしまうことを防止できる。
【0039】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0040】
(ア)エンジン1およびエンジン1に接続されてエンジン1の出力を回生する発電機2を備え、発電機2の目標発電量TGP0[W]に基づき目標エンジントルクTTE[Nm]を算出する手段(B1、B2)と、エンジン1の運転領域毎に前記目標エンジントルクTTE[Nm]を学習補正する目標エンジントルク学習補正手段(B20〜B26)と、目標エンジントルク学習補正手段により補正された目標エンジントルクTTEN[Nm]に基づいてエンジントルクを制御する手段11と、目標エンジントルクTTE[Nm]を制限する目標エンジントルクリミッタLNTEPLS[Nm]を算出する手段(B3、B10〜B15)と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であり、前記目標エンジントルク学習進行度合いに基づいて前記目標エンジントルクリミッタLNTEPLS[Nm]を可変とするようにした。このため、目標エンジントルク学習補正手段(B20〜B26)は、発電機回生トルクSTMB[Nm]と目標エンジントルクTTE[Nm]との偏差TEDLT[Nm]が減少するようにエンジントルクTTE[Nm]を補正し、学習により目標エンジントルク補正量TBLRC[Nm]を更新することにより、目標エンジントルクTTEN[Nm]を運転領域毎に時々刻々適切な値に設定することができる。このため、例えば、実際のエンジントルクが目標値よりも小さい側へばらついた場合であっても、目標エンジントルク学習補正手段(B20〜B26)およびその学習進行度合いに基づき算出される目標エンジントルクリミッタLNTEPLS[Nm]により、過剰にエンジントルクを制限してしまうことがなく、そのエンジン1と発電機2の組合せにおいて可能な限り高い出力を得ることができる。
【0041】
(イ)目標エンジントルクリミッタ算出手段(B3、B10〜B15)は、発電機運転状態を検出する手段8と、前記発電機運転状態検出手段8で検出される発電機運転状態に基づいて目標エンジントルクリミッタ基本値LMTGMNS[Nm]を算出する手段(要求駆動力とバッテリ要求とで演算)と、前記目標エンジントルクリミッタ基本値LMTGMNS[Nm]に対して実際の目標エンジントルクリミッタLMTEPLS[Nm]を決定するためのマージンを算出する手段(B10〜B12)と、前記目標エンジントルクリミッタ基本値LMTGMNS[Nm]から前記マージンを減算した値を目標エンジントルクリミッタLMTEPLS[Nm]とする目標エンジントルクリミッタ設定手段B4と、からなり、前記マージン算出手段(B10〜B12)は、目標エンジントルク学習補正手段(B20〜B26)の目標エンジントルク学習進行度合いに基づいてマージンを算出するようにした。このため、エンジントルクの運転領域毎のばらつきを吸収する目標エンジントルク学習進行度合いに応じてマージンが決定され、エンジントルクの過剰な制限やエンジン1および発電機2の過回転を防止し、学習進行度合いによりそれぞれの運転領域毎で可能な限り高い出力を得ることができる。
【0042】
(ウ)マージン算出手段(B10〜B12)は、システム起動時には水温判定ブロックB14、ORブロックB13および切換器B10によりマージンを所定の初期値LMTEMGN[Nm]とするため、ハイブリッド車両の停止時の急激な環境の変化や一時的な車両状態の変化等で、マージン値が好ましくない方向にずれた場合でも、ハイブリッド車両のシステム起動時からエンジン1の過回転や過剰にエンジントルクを制限してしまうことを防止できる。
【0043】
(エ)マージン算出手段(B10〜B12)は、発電機2の回生トルクSTMB[Nm]が発電機最大許容回生トルクLMTGMNS[Nm]を超えた場合に、判定ブロックB15、ORブロックB13および切換器B10によりマージンを所定の初期値LMTEMGN[Nm]とするため、結果として発電機最大許容回生トルクLMTGMNS[Nm]を一時的にエンジントルク(=STMB[Nm])が越えた場合でも、目標エンジントルクリミッタ算出手段(B3、B10〜B15)のエンジントルクリミッタマージンが直ちに所定の初期値LMTEMGN[Nm]に設定され、エンジントルクをより低い値へ制限するためエンジン1の過回転を防止できる。
【0044】
(オ)目標エンジントルク学習補正手段(B20〜B26)は、所定の条件が成立した場合、例えば、エンジン1がほぼ定常運転しているとみなせる場合(B27〜B29)、にのみ、目標エンジントルク補正量TBLRC[Nm]を更新するため、ハイブリッド車両の運転状態における過渡的のさまざまな変動要因を含んだ値を学習して、前記エンジントルク補正量を好ましくない方向へ補正してしまうことが防止できる。
【0045】
(第2実施形態)
図6は、本発明を適用したハイブリッド車両の制御装置の第2実施形態を示す制御ブロック図である。本実施形態においては、エンジントルクリミッタマージンの補正量HOSをトルク偏差に代えて運転領域毎の学習値の更新回数に応じて変更するようにしたものである。図6は補正エンジントルクリミッタマージンの乗算器B12へ入力する補正量HOSの演算手段を示したものであり、その他の構成は、第1実施形態と同様であり、図示を省略している。
【0046】
前記補正量HOSの演算手段は、エンジン1の運転領域を特定する領域判定ブロックB30と、運転領域毎の学習回数を記憶した学習回数マップB31と、学習回数に対する補正量を算出する補正量演算ブロックB32とから構成している。
【0047】
前記領域判定ブロックB30は、エンジン回転数換算値RNENEST[rpm]および目標エンジントルクTTE[Nm]から運転領域を特定し、学習ポインタALPC1を設定する。
【0048】
前記学習回数マップB31は、運転領域毎に学習値TBLRCの更新が行われる都度、対応する領域での学習回数COUNTをカウントアップし、領域毎に記憶する。学習回数COUNTと学習値TBLRCとはセットで学習マップB21に記憶させ、必要の都度読込むようにしてもよい。また、学習回数COUNTは、エンジン1の始動時に全ての領域で0にリセットする。そして、領域判定ブロックB30よりの学習ポインタALPC1が設定する領域の学習COUNTを読出し、補正量演算ブロックB32へ出力する。
【0049】
前記補正量演算ブロックB32は、入力された学習COUNTに応じて補正値HOSの値を算出する。学習COUNTが小さい(学習回数が少ない)ときの補正値HOSは100[%]とし、学習COUNTが大きくなるのに従って補正値HOSの値を一定値まで小さくする。
【0050】
以上の構成の補正量の演算手段では、学習が進んでいない運転領域ではエンジントルクリミッタマージンLMTEMGNがそのままリミッタマージンとして使用され、学習が進んでいる運転領域ではエンジントルクリミッタマージンLMTEMGNを小さく補正してリミッタマージンとして使用される。
【0051】
なお、上記実施形態では、学習COUNTのみにより補正量HOSを設定するものについて説明しているが、図示しないが、 学習回数COUNTとトルク偏差TEDLTの両方を使用して補正値HOSを算出するようにしてもよく、更に一層補正量HOSの精度が向上できる。
【0052】
本実施形態においては、第1実施形態における効果(ア)〜(オ)に加えて以下に記載した効果を奏することができる。
【0053】
(カ)マージン算出手段(B30〜B32)は、目標エンジントルク学習補正手段(B20〜B26)の運転領域毎の目標エンジントルク学習進行度合いに基づき、学習が進行している運転領域ほどマージンを小さく算出するため、学習進行度合いによりそれぞれの運転領域毎に、エンジン1および発電機2を過回転させることなく、可能な限り高い出力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のハイブリッド車両の制御装置の第1の実施形態が適用される車両のシステム構成図。
【図2】本発明の第1実施形態のハイブリッド車両の制御装置の目標エンジントルク演算手段の制御内容を示した演算ブロック図。
【図3】同じくエンジン運転領域毎に補正値を記憶しその学習値を出力可能な学習マップ値参照手段の演算ブロック図。
【図4】同じく最終目標エンジントルク設定手段の演算ブロック図。
【図5】同じく学習値更新演算手段の演算ブロック図。
【図6】本発明のハイブリッド車両の制御装置の第2の実施形態の補正量HOSの演算手段の演算ブロック図。
【符号の説明】
1 エンジン
2 発電機
4 電動機
9 バッテリ
10 統合コントロールユニット
11 エンジンコントロールユニット
12 トランスミッションコントロールユニット
21 出力軸回転速度センサ
22 アクセル操作量センサ
24 入力軸回転速度センサ
26 車速センサ
Claims (5)
- エンジンおよびエンジンに接続されてエンジンの出力を回生する発電機と、
前記発電機の目標発電量に基づき目標エンジントルクを算出する手段と、
前記エンジンの運転領域毎に前記目標エンジントルクを学習補正する目標エンジントルク学習補正手段と、
前記目標エンジントルク学習補正手段により補正された目標エンジントルクに基づいてエンジントルクを制御する手段と、
前記目標エンジントルクを制限する目標エンジントルクリミッタを算出する手段と、を備えたハイブリッド車両の制御装置であり、
前記目標エンジントルクリミッタ算出手段は、前記目標エンジントルク学習補正手段の目標エンジントルク学習進行度合いに基づいて目標エンジントルクリミッタを可変とすることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 前記目標エンジントルクリミッタ算出手段は、
発電機運転状態を検出する手段と、
前記発電機運転状態検出手段で検出される発電機運転状態に基づいて目標エンジントルクリミッタ基本値を算出する手段と、
前記目標エンジントルクリミッタ基本値に対して実際の目標エンジントルクリミッタを決定するためのマージンを算出する手段と、
前記目標エンジントルクリミッタ基本値から前記マージンを減算した値を目標エンジントルクリミッタとする目標エンジントルクリミッタ設定手段と、を備え、
前記マージン算出手段は、前記目標エンジントルク学習補正手段の目標エンジントルク学習進行度合いに基づいてマージンを算出することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。 - 前記マージン算出手段は、前記目標エンジントルク学習補正手段の運転領域毎の目標エンジントルク学習進行度合いに基づき、学習が進行している運転領域ほどマージンを小さく算出することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記マージン算出手段は、システム起動時にはマージンを所定の初期値とすることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記マージン算出手段は、前記発電機の回生トルクが発電機最大許容回生トルクを超えた場合にマージンを所定の初期値とすることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
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