JP2004277328A - ジフェニルエーテルモノスルホン酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジフェニルエーテルモノスルホン酸の製造方法に関する。さらに、詳しくは、本発明は、ジフェニルエーテルにクロロスルホン酸を反応させ、スルホン酸化合物を製造する方法において、ジフェニルエーテルモノスルホン酸を容易に選択率良く製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
式(1)で示されるジフェニルエーテルモノスルホン酸(以下、DPESと略す)は、医薬中間体の原料として有用であり、また、導電性高分子化合物のドーパントとしても期待されている。
【0003】
【化2】
【0004】
従来のDPESの製造方法としては、ジフェニルエーテルと硫酸により直接DPESを製造する方法がある(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)が、硫酸を過剰に用い、高温で反応させているため、スルホン基が複数置換したジフェニルエーテルジスルホン酸やジフェニルエーテルトリスルホン酸などの副生物が生成する。
【0005】
そこで、硫酸を用いない製造方法として、ジフェニルエーテルとクロロスルホン酸をジクロロメタン中、低温下で反応させるDPESの製法がある(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法では、溶媒を使用しており、室温ではジフェニルエーテルモノスルホン酸の選択率が小さく、スルホン基の複数置換体の副生を抑制するため、−20℃という低温下で反応を行っている。
【0006】
【特許文献1】
DE629312号公報
【非特許文献1】
J.Am.Chem.Soc.,53.1112(1931)(第1114頁)
【特許文献2】
特表2001−521504号公報(第26−28頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来法における上記のような問題点を解消し、温和な条件下、高選択率で、高純度なジフェニルエーテルモノスルホン酸(DPES)を簡便な操作で製造できる方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ジフェニルエーテルにガスを溶存させて、ジフェニルエーテルとクロロスルホン酸とを反応させることにより、ジスルホン酸化合物、トリスルホン酸化合物の生成を抑え、モノスルホン酸化合物であるDPESの選択率を上げることが出来る方法を見出し、本発明に至った。
【0009】
さらに、ジフェニルエーテルにガスを溶存させることにより、溶媒を用いないでも、従来法よりも高純度なDPESが得られる製造方法を見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、ジフェニルエーテルにクロロスルホン酸を加えながら反応させる式(1)で表されるジフェニルエーテルモノスルホン酸を製造する方法において、前記ジフェニルエーテルにハロゲン化水素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガス及び窒素ガスから選ばれる少なくとも1つを溶存させた状態で、反応させることを特徴とする前記ジフェニルエーテルモノスルホン酸の製造方法に関するものである。
【0011】
【化3】
また、本発明の製造方法は、無溶媒で反応させることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の一実施形態では、前記ハロゲン化水素ガスが塩化水素ガスまたは臭化水素ガスであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の実施形態では、空気を前記ジフェニルエーテルに吹き込むことにより酸素ガス又は窒素ガスを溶存させることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のジフェニルエーテルモノスルホン酸(DPES)の製造方法は、ガスが溶存したジフェニルエーテルとクロロスルホン酸とを反応させることにより行われる。本発明の反応に使用するガスは任意の方法で溶存させることができ、その方法について何ら制限されるものではないが、ジフェニルエーテルを含む反応液中にガスを吹き込むことで行なうことが出来る。また、反応液中にガスをバブリングしながら反応させることもできる。ジフェニルエーテルとクロロスルホン酸との反応は、ジフェニルエーテルにクロロスルホン酸を加えながら行なうことが好ましい。使用されるジフェニルエーテルに対するクロロスルホン酸量は、ジフェニルエーテル1モルに対し、クロロスルホン酸が0.01〜0.7モルであることが好ましい。クロロスルホン酸が0.01より少ない場合、DPESの選択率は高いものの、生産効率が悪く、工業的には好ましくない。一方、クロロスルホン酸を増やすと徐々にDPESの選択率が低下することから、0.7モルを超えると好ましくない。
【0015】
本発明の反応温度は特に限定されないが、無溶媒の場合には0〜120℃の範囲内で任意であるが、好ましくは5〜90℃、さらに好ましくは15〜50℃である。
【0016】
本発明の反応時間は、上記の濃度、温度によって変化するが、通常0.1〜24時間であり、好ましくは0.2〜10時間であり、さらに好ましくは0.5〜5時間である。
【0017】
本発明の反応に使用するガスとしては、反応に不活性なガスを単独または混合して使用することができるが、反応に不活性な酸性ガス、酸素ガス、二酸化炭素(CO2)ガス、窒素ガスの少なくとも1つをジフェニルエーテルに溶存できるガスであればよい。反応に不活性な酸性ガスとしては、塩化水素、臭化水素が挙げられる。これらを含有するガスは、単独でも混合物でもよく、また他の反応に不活性なガスで希釈されていてもよい。また、酸素ガス、二酸化炭素(CO2)ガス、窒素ガスも、単独でも混合物でもよく、また他の反応に不活性なガスで希釈されていてもよい。特に、酸素ガスをジフェニルエーテルに溶存させるには、空気をジフェニルエーテルに吹き込むことにより行なうことができるので、酸素ガスを含むガスとしては、空気が入手し易く好ましい。上記のジフェニルエーテルに溶存させるガスの中でも、塩化水素または臭化水素が選択率の面から最も好ましいガスとして挙げられる。特に塩化水素のような酸性ガスを用いた場合に最もDPESの選択率が高い原因は定かではないが、酸性雰囲気がクロロスルホン酸のベンゼン環への付加反応の速度を低下させていることによるものと推測される。溶存させるガス量としては、ジフェニルエーテルに溶存する飽和量の10%以上であればよいが、好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上である。
【0018】
また本発明の反応は、反応に不活性な任意の溶媒を使用することもできる。例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭素や、n−ヘキサン、n−へプタンなどの炭化水素を挙げることができる。溶媒の使用量は、ジフェニルエーテルとクロロスルホン酸の全容量に対して、0〜50倍量、好ましくは0〜20倍量、さらに好ましくは0〜10倍量である。
【0019】
本発明では、上記のように、ジフェニルエーテルに上記のガスを溶存させて、ジフェニルエーテルとクロロスルホン酸とを反応させることにより、−20℃まで反応温度を下げずに、ジスルホン酸化合物、トリスルホン酸化合物の生成を抑え、モノスルホン酸化合物であるDPESの選択率を上げることが出来る。
【0020】
本発明の別の特徴は、本来凝固点が26〜28℃と高いジフェニルエーテルにガスを溶存させて、本来無溶媒では反応させられない温度(例えば20℃付近)まで反応温度を下げ、無溶媒で反応を行なわせることである。本発明の方法により、ジフェニルエーテルの凝固点は0℃付近まで下げることができる。その理由については定かでないが、主にガス溶存によるジフェニルエーテルの凝固点降下と考えられる。
【0021】
さらに反応終了後、過剰に用いたジフェニルエーテルは、溶媒抽出あるいは晶析などにより容易に回収ができるが、例えば、反応後、水を50〜200wt%、好ましくは100〜150wt%添加することにより、ろ過性の良好なジフェニルエーテルの結晶を分離回収することができ、リサイクルが容易となる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これは本発明を説明するためのものであって、実施例に何ら限定されるものではない。
【0023】
実施例に用いた分析条件は下記のとおりである。
高速液体クロマトグラフ分析条件:
カラム:TOSOH TSKgel ODS−80TM
温度 : 40℃
流速 :1ml/min
移動相:アセトニトリル/10mM−KH2PO4水溶液=65/35+5mM Bu4NHSO4
検出器:UV検出器(254nm)
【0024】
実施例1
ジフェニルエーテル20.0g(0.118mol)に室温でHClガスを51.5ml/minの速度で10分間、泡立てて吹き込んだところ、濁りのある液体が得られた。この時のHClガスのジフェニルエーテルへの溶存量は約0.2gであった。この液体を20℃に冷却し、窒素気流下、クロロスルホン酸1.62ml(23.6mmol)を15分かけて滴下した。3時間反応後、窒素ガスを吹き込み、残存ガスを追い出した後、氷水でクエンチし、ヘキサンで過剰なジフェニルエーテルを抽出除去し、水相を濃縮乾燥して、定量的に目的物を得た。DPESの純度をHPLCで分析したところ、面積百分率で、DPESは98%、不純物であるジスルホン酸は1%であった。ジフェニルエーテルの凝固点以下の温度でも、HClガスを溶存させることにより、反応させることができ、モノスルホン酸が選択率良く得られることがわかる。なお、ジフェニルエーテルにHClガスを吹き込んだ後の溶液の凝固点は、約0℃であった。
【0025】
実施例2〜6
実施例2〜6は反応温度または吹き込みガスを変えた以外は実施例1と同様にして目的物を定量的に得た。結果を表1に示す。実施例2,4,5より、下記のガスを溶存させない比較例1と比較することにより、ジフェニルエーテルにHClガス、空気、二酸化炭素ガス、窒素ガスをそれぞれ吹き込むことにより、モノスルホン酸が選択率良く得られることがわかる。なお、ジフェニルエーテルに空気ガスを吹き込んだ後の溶液の凝固点は約4℃であり、二酸化炭素ガスでは、12.5℃、窒素ガスでは、7℃まで溶液の凝固点を下げることができた。
【0026】
実施例7
実施例7はクロロスルホン酸をジフェニルエーテルに対して0.4当量用い、反応温度を30℃で行った以外は実施例1と同様にして目的物を定量的に得た。結果を表1に示す。下記のガスを溶存させない比較例2と比較することにより、クロロスルホン酸をジフェニルエーテルに対して0.4当量用いた場合でも、モノスルホン酸が選択率良く得られることがわかる。
【0027】
比較例1
ジフェニルエーテル20.0g(0.118mol)に30℃、窒素気流下、クロロスルホン酸1.62ml(23.6mmol)を15分かけて滴下した。3時間反応後、氷水でクエンチし、ヘキサンで過剰なジフェニルエーテルを抽出除去し、水相を濃縮乾燥して、定量的に目的物を得た。ジフェニルエーテルモノスルホン酸の純度をHPLCで分析したところ、モノスルホン酸は90%、ジスルホン酸は9%であった。結果を表1に示す。
【0028】
比較例2
反応モル比を変えた以外は比較例1と同様にして目的物を定量的に得た。結果を表1に示す。
【0029】
以下にDPES(1)のMS(CI)、IR、および1H−NMRスペクトルデータを示す。
【0030】
DPES(1)
MS(CI): calcd for C12H10O4S (M+1,m/z 251), found (m/z 251)
IR(KBr):3383, 3067, 1586, 1490, 1237, 1180, 1157, 1108, 971, 696, 558 cm−1
1H−NMR(300MHz, D2O): δ 7.00−7.15(4H, m, ortho−H of Ar’−OArSO3H and Ar−OAr’), 7.20−7.30(1H, m, para−H of Ar’−OArSO3H), 7.40−7.50(2H, m, meta−H of Ar’−OArSO3H), 7.75−7.90(2H, m, ortho−H of Ar−SO3H)
【0031】
以下に式(2)で表されるジフェニルエーテルジスルホン酸(2)の構造式および1H−NMRスペクトルデータを示す。
ジフェニルエーテルジスルホン酸(2)
【0032】
【化4】
1H−NMR(300MHz, D2O): δ 7.15−7.25(4H, m, ortho−H of −Ar−SO3H), 7.80−7.90(4H, m, para−H of Ar−SO3H)
【0033】
表1に合成条件および分析結果を示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、ジフェニルエーテルにガスを溶存させて、ジフェニルエーテルとクロロスルホン酸とを反応させることにより、ジスルホン酸化合物、トリスルホン酸化合物の生成を抑え、モノスルホン酸化合物であるジフェニルエーテルモノスルホン酸(DPES)の選択率を上げることが出来る。
また、本発明によれば、ジフェニルエーテルにガスを溶存させることにより、溶媒を用いないでも室温付近でクロロスルホン酸と反応させることが可能となり、溶媒除去の処理が不要で、従来法よりも高純度なジフェニルエーテルモノスルホン酸(DPES)を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジフェニルエーテルモノスルホン酸の製造方法に関する。さらに、詳しくは、本発明は、ジフェニルエーテルにクロロスルホン酸を反応させ、スルホン酸化合物を製造する方法において、ジフェニルエーテルモノスルホン酸を容易に選択率良く製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
式(1)で示されるジフェニルエーテルモノスルホン酸(以下、DPESと略す)は、医薬中間体の原料として有用であり、また、導電性高分子化合物のドーパントとしても期待されている。
【0003】
【化2】
【0004】
従来のDPESの製造方法としては、ジフェニルエーテルと硫酸により直接DPESを製造する方法がある(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)が、硫酸を過剰に用い、高温で反応させているため、スルホン基が複数置換したジフェニルエーテルジスルホン酸やジフェニルエーテルトリスルホン酸などの副生物が生成する。
【0005】
そこで、硫酸を用いない製造方法として、ジフェニルエーテルとクロロスルホン酸をジクロロメタン中、低温下で反応させるDPESの製法がある(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法では、溶媒を使用しており、室温ではジフェニルエーテルモノスルホン酸の選択率が小さく、スルホン基の複数置換体の副生を抑制するため、−20℃という低温下で反応を行っている。
【0006】
【特許文献1】
DE629312号公報
【非特許文献1】
J.Am.Chem.Soc.,53.1112(1931)(第1114頁)
【特許文献2】
特表2001−521504号公報(第26−28頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来法における上記のような問題点を解消し、温和な条件下、高選択率で、高純度なジフェニルエーテルモノスルホン酸(DPES)を簡便な操作で製造できる方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ジフェニルエーテルにガスを溶存させて、ジフェニルエーテルとクロロスルホン酸とを反応させることにより、ジスルホン酸化合物、トリスルホン酸化合物の生成を抑え、モノスルホン酸化合物であるDPESの選択率を上げることが出来る方法を見出し、本発明に至った。
【0009】
さらに、ジフェニルエーテルにガスを溶存させることにより、溶媒を用いないでも、従来法よりも高純度なDPESが得られる製造方法を見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、ジフェニルエーテルにクロロスルホン酸を加えながら反応させる式(1)で表されるジフェニルエーテルモノスルホン酸を製造する方法において、前記ジフェニルエーテルにハロゲン化水素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガス及び窒素ガスから選ばれる少なくとも1つを溶存させた状態で、反応させることを特徴とする前記ジフェニルエーテルモノスルホン酸の製造方法に関するものである。
【0011】
【化3】
また、本発明の製造方法は、無溶媒で反応させることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の一実施形態では、前記ハロゲン化水素ガスが塩化水素ガスまたは臭化水素ガスであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の実施形態では、空気を前記ジフェニルエーテルに吹き込むことにより酸素ガス又は窒素ガスを溶存させることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のジフェニルエーテルモノスルホン酸(DPES)の製造方法は、ガスが溶存したジフェニルエーテルとクロロスルホン酸とを反応させることにより行われる。本発明の反応に使用するガスは任意の方法で溶存させることができ、その方法について何ら制限されるものではないが、ジフェニルエーテルを含む反応液中にガスを吹き込むことで行なうことが出来る。また、反応液中にガスをバブリングしながら反応させることもできる。ジフェニルエーテルとクロロスルホン酸との反応は、ジフェニルエーテルにクロロスルホン酸を加えながら行なうことが好ましい。使用されるジフェニルエーテルに対するクロロスルホン酸量は、ジフェニルエーテル1モルに対し、クロロスルホン酸が0.01〜0.7モルであることが好ましい。クロロスルホン酸が0.01より少ない場合、DPESの選択率は高いものの、生産効率が悪く、工業的には好ましくない。一方、クロロスルホン酸を増やすと徐々にDPESの選択率が低下することから、0.7モルを超えると好ましくない。
【0015】
本発明の反応温度は特に限定されないが、無溶媒の場合には0〜120℃の範囲内で任意であるが、好ましくは5〜90℃、さらに好ましくは15〜50℃である。
【0016】
本発明の反応時間は、上記の濃度、温度によって変化するが、通常0.1〜24時間であり、好ましくは0.2〜10時間であり、さらに好ましくは0.5〜5時間である。
【0017】
本発明の反応に使用するガスとしては、反応に不活性なガスを単独または混合して使用することができるが、反応に不活性な酸性ガス、酸素ガス、二酸化炭素(CO2)ガス、窒素ガスの少なくとも1つをジフェニルエーテルに溶存できるガスであればよい。反応に不活性な酸性ガスとしては、塩化水素、臭化水素が挙げられる。これらを含有するガスは、単独でも混合物でもよく、また他の反応に不活性なガスで希釈されていてもよい。また、酸素ガス、二酸化炭素(CO2)ガス、窒素ガスも、単独でも混合物でもよく、また他の反応に不活性なガスで希釈されていてもよい。特に、酸素ガスをジフェニルエーテルに溶存させるには、空気をジフェニルエーテルに吹き込むことにより行なうことができるので、酸素ガスを含むガスとしては、空気が入手し易く好ましい。上記のジフェニルエーテルに溶存させるガスの中でも、塩化水素または臭化水素が選択率の面から最も好ましいガスとして挙げられる。特に塩化水素のような酸性ガスを用いた場合に最もDPESの選択率が高い原因は定かではないが、酸性雰囲気がクロロスルホン酸のベンゼン環への付加反応の速度を低下させていることによるものと推測される。溶存させるガス量としては、ジフェニルエーテルに溶存する飽和量の10%以上であればよいが、好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上である。
【0018】
また本発明の反応は、反応に不活性な任意の溶媒を使用することもできる。例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭素や、n−ヘキサン、n−へプタンなどの炭化水素を挙げることができる。溶媒の使用量は、ジフェニルエーテルとクロロスルホン酸の全容量に対して、0〜50倍量、好ましくは0〜20倍量、さらに好ましくは0〜10倍量である。
【0019】
本発明では、上記のように、ジフェニルエーテルに上記のガスを溶存させて、ジフェニルエーテルとクロロスルホン酸とを反応させることにより、−20℃まで反応温度を下げずに、ジスルホン酸化合物、トリスルホン酸化合物の生成を抑え、モノスルホン酸化合物であるDPESの選択率を上げることが出来る。
【0020】
本発明の別の特徴は、本来凝固点が26〜28℃と高いジフェニルエーテルにガスを溶存させて、本来無溶媒では反応させられない温度(例えば20℃付近)まで反応温度を下げ、無溶媒で反応を行なわせることである。本発明の方法により、ジフェニルエーテルの凝固点は0℃付近まで下げることができる。その理由については定かでないが、主にガス溶存によるジフェニルエーテルの凝固点降下と考えられる。
【0021】
さらに反応終了後、過剰に用いたジフェニルエーテルは、溶媒抽出あるいは晶析などにより容易に回収ができるが、例えば、反応後、水を50〜200wt%、好ましくは100〜150wt%添加することにより、ろ過性の良好なジフェニルエーテルの結晶を分離回収することができ、リサイクルが容易となる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これは本発明を説明するためのものであって、実施例に何ら限定されるものではない。
【0023】
実施例に用いた分析条件は下記のとおりである。
高速液体クロマトグラフ分析条件:
カラム:TOSOH TSKgel ODS−80TM
温度 : 40℃
流速 :1ml/min
移動相:アセトニトリル/10mM−KH2PO4水溶液=65/35+5mM Bu4NHSO4
検出器:UV検出器(254nm)
【0024】
実施例1
ジフェニルエーテル20.0g(0.118mol)に室温でHClガスを51.5ml/minの速度で10分間、泡立てて吹き込んだところ、濁りのある液体が得られた。この時のHClガスのジフェニルエーテルへの溶存量は約0.2gであった。この液体を20℃に冷却し、窒素気流下、クロロスルホン酸1.62ml(23.6mmol)を15分かけて滴下した。3時間反応後、窒素ガスを吹き込み、残存ガスを追い出した後、氷水でクエンチし、ヘキサンで過剰なジフェニルエーテルを抽出除去し、水相を濃縮乾燥して、定量的に目的物を得た。DPESの純度をHPLCで分析したところ、面積百分率で、DPESは98%、不純物であるジスルホン酸は1%であった。ジフェニルエーテルの凝固点以下の温度でも、HClガスを溶存させることにより、反応させることができ、モノスルホン酸が選択率良く得られることがわかる。なお、ジフェニルエーテルにHClガスを吹き込んだ後の溶液の凝固点は、約0℃であった。
【0025】
実施例2〜6
実施例2〜6は反応温度または吹き込みガスを変えた以外は実施例1と同様にして目的物を定量的に得た。結果を表1に示す。実施例2,4,5より、下記のガスを溶存させない比較例1と比較することにより、ジフェニルエーテルにHClガス、空気、二酸化炭素ガス、窒素ガスをそれぞれ吹き込むことにより、モノスルホン酸が選択率良く得られることがわかる。なお、ジフェニルエーテルに空気ガスを吹き込んだ後の溶液の凝固点は約4℃であり、二酸化炭素ガスでは、12.5℃、窒素ガスでは、7℃まで溶液の凝固点を下げることができた。
【0026】
実施例7
実施例7はクロロスルホン酸をジフェニルエーテルに対して0.4当量用い、反応温度を30℃で行った以外は実施例1と同様にして目的物を定量的に得た。結果を表1に示す。下記のガスを溶存させない比較例2と比較することにより、クロロスルホン酸をジフェニルエーテルに対して0.4当量用いた場合でも、モノスルホン酸が選択率良く得られることがわかる。
【0027】
比較例1
ジフェニルエーテル20.0g(0.118mol)に30℃、窒素気流下、クロロスルホン酸1.62ml(23.6mmol)を15分かけて滴下した。3時間反応後、氷水でクエンチし、ヘキサンで過剰なジフェニルエーテルを抽出除去し、水相を濃縮乾燥して、定量的に目的物を得た。ジフェニルエーテルモノスルホン酸の純度をHPLCで分析したところ、モノスルホン酸は90%、ジスルホン酸は9%であった。結果を表1に示す。
【0028】
比較例2
反応モル比を変えた以外は比較例1と同様にして目的物を定量的に得た。結果を表1に示す。
【0029】
以下にDPES(1)のMS(CI)、IR、および1H−NMRスペクトルデータを示す。
【0030】
DPES(1)
MS(CI): calcd for C12H10O4S (M+1,m/z 251), found (m/z 251)
IR(KBr):3383, 3067, 1586, 1490, 1237, 1180, 1157, 1108, 971, 696, 558 cm−1
1H−NMR(300MHz, D2O): δ 7.00−7.15(4H, m, ortho−H of Ar’−OArSO3H and Ar−OAr’), 7.20−7.30(1H, m, para−H of Ar’−OArSO3H), 7.40−7.50(2H, m, meta−H of Ar’−OArSO3H), 7.75−7.90(2H, m, ortho−H of Ar−SO3H)
【0031】
以下に式(2)で表されるジフェニルエーテルジスルホン酸(2)の構造式および1H−NMRスペクトルデータを示す。
ジフェニルエーテルジスルホン酸(2)
【0032】
【化4】
1H−NMR(300MHz, D2O): δ 7.15−7.25(4H, m, ortho−H of −Ar−SO3H), 7.80−7.90(4H, m, para−H of Ar−SO3H)
【0033】
表1に合成条件および分析結果を示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、ジフェニルエーテルにガスを溶存させて、ジフェニルエーテルとクロロスルホン酸とを反応させることにより、ジスルホン酸化合物、トリスルホン酸化合物の生成を抑え、モノスルホン酸化合物であるジフェニルエーテルモノスルホン酸(DPES)の選択率を上げることが出来る。
また、本発明によれば、ジフェニルエーテルにガスを溶存させることにより、溶媒を用いないでも室温付近でクロロスルホン酸と反応させることが可能となり、溶媒除去の処理が不要で、従来法よりも高純度なジフェニルエーテルモノスルホン酸(DPES)を得ることができる。
Claims (4)
- 無溶媒で反応させることを特徴とする請求項1記載のジフェニルエーテルモノスルホン酸の製造方法。
- 前記ハロゲン化水素ガスが塩化水素ガスまたは臭化水素ガスであることを特徴とする請求項1記載のジフェニルエーテルモノスルホン酸の製造方法。
- 前記ジフェニルエーテルに空気を吹き込むことにより酸素ガス又は窒素ガスを溶存させることを特徴とする請求項1記載のジフェニルエーテルモノスルホン酸の製造方法。
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JP2013510097A (ja) * | 2009-11-03 | 2013-03-21 | リウ、リー | タンシノンiiaスルホン酸ナトリウム水和物、並びにその調製方法及び使用 |
CN117317374A (zh) * | 2023-11-30 | 2023-12-29 | 蓝固(淄博)新能源科技有限公司 | 一种电解液添加剂、其制备方法、电解液和二次电池 |
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2003
- 2003-03-14 JP JP2003069746A patent/JP2004277328A/ja active Pending
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