例えばワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ファクシミリ等に於ける情報出力装置として、所望される文字や画像等の情報を用紙やフィルム等シート状の記録媒体に記録を行うプリンタが広く使用されている。
プリンタの記録方式としては様々な方式が知られているが、記録手段(記録ヘッド)から記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット方式は、コンパクト化が容易、高精細な画像を高速で記録することが可能、ランニングコストが安い、ノンインパクト方式である為騒音が少ない、多色のインクを使用してカラー画像を記録するのが容易、等の利点を有していることから、一般的な方式として普及してきている。
インクジェット方式を採用する記録装置(以下、インクジェット記録装置と称する)の記録ヘッドにおいては、各吐出口(ノズル)毎に吐出速度や吐出方向にばらつきがあり、吐出口列が複数ある場合には、記録ヘッドへの取り付け精度に微妙なばらつきが生じるため、ノズル列によって微妙に着弾位置がずれる。吐出口列間の相対記録位置がずれた状態で記録を行うと、罫線のずれや、記録ヘッドから吐出されるインクによって記録されるドットの配置に粗密が生じるため画像がざらつくことになる。
従って、記録画像の品質を向上させるためには、各ノズル列間の相対的な記録位置合わせを行うことが必要であり、これは一般的には記録位置調整と呼ばれる。
記録位置調整は、記録位置を調整しようとするもの(例えば、ノズル列)の相対記録位置を少しずつずらしたパターンを記録媒体上に複数記録し、そのなかから最適な相対記録位置で記録されているものを選択することで行われる。最適なパターン選択の方法としては大きく二つがある。ユーザーにより相対記録位置を選択してもらう方法と、記録装置自体に何らかの相対記録位置調整手段を設け、これにより相対記録位置を合わせる方法とである。
このように、複数のノズル列を有するインクジェット記録装置においては、使用に先立ちノズル列間の相対的記録位置の調整を行うことで、記録品質を向上させることが可能となる。
図8は、複数のノズル列間での記録位置調整を行うための記録のパターンの一例を示す図である。この記録位置調整は、複数のノズル列間での相対的記録位置を調整する目的で行われるため、記録ヘッドがいかなるノズル列を有しているかにより記録のパターンは種々異なる。図8に示す記録のパターンは、黒、シアン、イエロー、マゼンタそれぞれのインクを使用し、各々のインクに対して図11に示すように偶数ノズル列と奇数ノズル列とを有する記録ヘッドを使用するインクジェット記録装置の記録位置調整用のパターンである。
なお、図11に示した記録ヘッドでは、各色及び各ノズル列相互に吐出タイミングを制限することはなく、各々任意のタイミングで駆動することが可能であると想定している。また、駆動のタイミングの間隔は、同一の主走査における同一ノズルからの記録ドットが主走査方向に1200dpiの間隔で記録可能な間隔とする。
記録位置調整は、記録媒体(一般には紙)上での相対的記録位置のずれを検出しやすい特定のテストパターン(記録位置調整用パターン)を記録することで行う。記録位置調整を行うノズル列の一方を基準として、相対的記録位置を合わせる他方のノズル列の相対的記録位置を駆動タイミングをずらして変化させながら特定のパターンを複数(図8では+7から−3もしくは+5から−5までの11回)記録し、記録された複数のパターンのうち最も記録位置が合った設定値を記録装置内の不揮発性メモリ(EEPROM)に格納する処理であり、この処理を記録位置調整を行うすべてのノズル列間において(もしくは一部共通化して)行う。
図8のAからFの各パターンで記録位置調整を行うノズル列の組合せは、
A:黒偶数ノズル列/奇数ノズル列
B:シアン偶数ノズル列/奇数ノズル列
C:マゼンタ偶数ノズル列/奇数ノズル列
D:黒双方向記録
E:カラー(シアン)双方向記録
F:黒/カラー(シアン)
である。
ここで、イエローに関しては偶数ノズル列と奇数ノズル列間の記録位置調整は行っていないが、これはイエローは濃度が低いため、上記パターンを記録してもどの設定値で記録したときに相対位置が最も合っているか判別が困難であるためであり、シアンの調整結果を利用する。その他のカラー(マゼンタ及びイエロー)インクの双方向記録位置調整などもシアンでの調整結果を流用するため本パターンでは用意していない。
以上のようにして記録位置調整用パターンを記録した後、その記録結果から設定値を選択する処理は、このテストパターンの記録結果からユーザが選択し、記録装置に接続したホスト機器からマニュアル(手作業)で設定値を入力する場合と、記録されたテストパターンを記録装置内に設けられたセンサにより読み込み、例えばその濃度変化から、最適な設定値を選択する場合とがある。
ここで、記録位置調整に関して、パターンA(黒偶数ノズル列/奇数ノズル列間の記録位置調整用パターン)を例に図9ならびに図12、図13、図14、図15を用いてより詳細に説明する。
図9は、図8に示したパターンAのうち、設定値+3で記録される記録ドットの状態を部分的に拡大して示す図である。ここで横軸は走査方向の記録位置であり、図中の1メモリが1200dpiに対応すると想定し、図の向かって左から右すなわち横軸の数値の小さいものから順に記録される。白丸は偶数ノズル列により記録された記録ドットを、ハッチングされた丸は奇数ノズル列により記録された記録ドットを示している。
すなわち、図9ではまず主走査方向に、図11に示した記録ヘッドの黒ノズル列1Aのうち偶数ノズル列であるAと奇数ノズル列であるBを、それぞれ記録位置を移動させて7回連続して駆動し(7カラム分記録し)、その後7回連続して駆動しない、ということを繰り返して記録した状態を示している。本実施例では1回の記録ごとに1200di記録位置を移動させながら記録を行っている。より具体的には、偶数ノズル列による記録ドットは、主走査方向記録位置0〜6と14〜20に記録されており、奇数ノズル列による記録ドットは10〜16ならびに24〜30に記録されている。ここで、主走査方向記録位置14〜16の記録位置においては偶数ノズル列と奇数ノズル列とによる記録ドットが重なって記録されていることが分かる。
図12では、上記図8で示したパターンAのうち、設定値+2で記録される記録ドットの状態を示している。横軸が記録を行う主走査方向記録位置であり、1メモリが1200dpiに対応し、図の向かって左から右へ走査され、白丸は偶数ノズル列により記録された記録ドットを、ハッチングされた丸は奇数ノズル列による記録ドットを示していることは図9と同様である。更に、偶数ノズル列と奇数ノズル列の駆動/非駆動が7回ごとに切り替わるのも図9と同様である。
図12と図9との相違点は、偶数ノズルでの記録は変更せずに、奇数ノズルの記録位置を左に1200dpiだけずらした(奇数ノズルの駆動タイミングを1200dpi分だけ早くした)点である。これにより、図12に示したように、偶数ノズル列による記録ドットが主走査記録位置0〜6ならびに、14〜20に記録されることに変わりないが、奇数ノズル列による主走査記録位置が9〜15ならびに23〜29へと左側へと移動することになる。このため、偶数ノズル列による記録ドットと奇数ノズル列による記録ドットが重なる主走査記録位置は、図9とは異なり14と15の2箇所となる。
また、図13は、図8のパターンAのうち、設定値+1で記録される記録ドット、すなわち、図12からさらに奇数のノズル列の記録位置を左に1200dpiだけずらした(駆動タイミングを1200dpiに対応する時間だけ早くした)記録ドットの状態を示し、図14は、図8に示したパターンAのうち、設定値0で記録される記録ドットの状態、図15は、図8に示したパターンAの内、設定値−1で記録される記録ドットの状態をそれぞれ示している。
このように偶数ノズル列の駆動タイミングを変更せず、奇数ノズル列による記録タイミングのみを逐次変更していくことで、奇数ノズルの記録ドットの主走査方向記録位置が変化し、偶数ノズル列による記録ドットと奇数ノズル列による記録ドットとの相対的記録位置が変化する。これら設定値を変えた複数のパターンを記録した後、偶数ノズル列によって記録された記録ドットと奇数ノズル列によって記録された記録ドットとのつなぎ目が最も滑らかなパターン(上記の図9、図12〜15の中では図14)を選択することで、相対的記録位置の設定値が決定されて記憶される。
記録位置調整を行うことで図14のパターンが選択された場合に、図14の主走査方向記録位置0を偶数ノズル列で記録した際の駆動タイミングで偶数ノズル列を駆動し、主走査方向記録位置7を記録した際の奇数ノズル列の駆動タイミングで奇数ノズル列を駆動すると、各々の記録ドットの間隔は主走査方向記録位置において7ずれることになるので、奇数ノズル列の駆動タイミングを図14に示した状態からさらに7早くすることで、偶数ノズル列と奇数ノズル列とによる記録位置を主走査方向に同一位置とすることができる。
以上のようにして、偶数ノズル列と奇数ノズル列間の相対記録位置の設定位置が決定される。図8の他のパターン(パターンBからF)に関しても記録位置調整を行う2つのノズル列の一方を基準として(駆動タイミングを変更せず)、他方のノズル列の駆動タイミングを1200dpiずつ変更して記録を行う事により、記録位置調整を行う2つのノズル列による相対的記録位置を異ならせることができ、複数種類記録したパターンのうち最も滑らかなパターンを選択することで、それぞれのノズル間の記録位置の設定値を得ることができる。
複数の吐出口群(ノズル群)を有するヘッドにおいては、同一走査においては同じカラム位置では異なる吐出口群の駆動を行わないように制御する構成(つまり同時に異なった吐出口群のノズルの駆動はできないような構成)にことで、カラムごとでのヘッドへの記録データを吐出口群ごとに分けたり、吐出口群が異なっても記録データ転送用の信号線を共用できるため、記録ヘッド及び記録装置のコストダウンが図れるといったメリットがある。
このため異なるノズル群を有する記録ヘッドを走査する装置においては、異なる吐出口群を異なった駆動タイミングで駆動し、異なる吐出口群を順次を切り替えて使用するような記録装置が提案されている。
図10Aから図10Fは、このような記録装置で使用される記録ヘッドの吐出口群の様々な構成例を示す図である。これらの図において、A又はBで示される吐出口はそれぞれ別の吐出口群をなしており、本実施形態では吐出口群Aと吐出口群Bとは同時に駆動することができないものとする。
図10Aは、吐出口群Aと吐出口群Bとをそれぞれ別の吐出口列(ノズル列)で構成し、2つの列をノズルピッチの半分だけずらした構成、図10Bは、吐出口群Aと吐出口群Bとを同じ列に交互に配置した構成、図10Cは、吐出口群Aと吐出口群Bとをそれぞれ2列ずつ備え、各吐出口群の2つの列をノズルピッチの半分だけずらした構成を示している。
また、図10D〜10Fは、一つの記録インクに対して吐出量の異なる特性を持つ吐出口群を備えた構成を示している。すなわち、図10D〜10Fに示す構成においては、吐出口群Aと吐出口群Bとは吐出量が異なり、吐出口群Aの方は相対的に吐出量が多い。図10D及び図10Eはいずれも、吐出口群Aと吐出口群Bとをそれぞれ2列ずつ備え、各吐出口群の2つの列をノズルピッチの半分だけずらした構成であるが、列の並び順が異なっている。図10Fは、吐出口群Aと吐出口群Bとを交互に配置した列を2つ有し、Aで示される吐出口とBで示される吐出口の位置(列内の順序)が2つの列で異なっている構成である。
このように異なる吐出量の吐出口群を有する記録ヘッドで記録を行う場合、ハイライト部分に対して吐出量の小さなノズルを使用して粒状感を低減させ、高濃度部分に対して吐出量の大きなノズルを使用して吐出回数を低減しつつ高濃度を表現することで、記録速度を低下させずに記録画質を向上させることができる。
更に、このような構成の記録ヘッドで記録を行う記録装置が、記録画質よりも記録速度を優先すべく、吐出量の大きなノズルのみで画像を形成する記録モード(高速モード)や、記録速度よりも記録画質を優先すべく、吐出量の小さなノズルのみで画像を形成する記録モード(高画質モード)等の記録モードを備えるようにすると、ユーザの所望する条件に応じた記録が可能である。このような装置は、例えば、特開平8−183179号公報(特許文献1)に開示されている。
特開平8−183179号公報
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態では、インクジェット記録方式を用いた記録装置としてプリンタを例に挙げ説明する。
本明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
始めに、以下で説明する本発明の実施形態に共通な、記録装置の全体構成ならびに制御構成について記載する。
(記録装置の構成)
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の要部構成を模式的に示す斜視図である。図1において、記録手段としてのヘッドカートリッジ1はキャリッジ2に着脱可能に搭載されており、このヘッドカートリッジ1はそれぞれが異なる種類(色等)のインクで記録する4個のヘッドカートリッジ1A,1B,1C,1Dで構成されている。
ヘッドカートリッジ1A,1B,1C,1Dのそれぞれは、インク吐出口群を含む記録ヘッドと該記録ヘッドへインクを供給するインクタンクとから構成される。図11は、ヘッドカートリッジ1A,1B,1C,1Dのそれぞれが図10Aに示すのと同様な2列の吐出口列を有している場合の、ヘッドカートリッジの吐出口群の構成を示す図である。
各カートリッジ1A〜1Dのそれぞれには、記録ヘッドを駆動する信号を受けるためのコネクタが設けられている。なお、以下の説明では記録手段1A〜1Dの全体または任意の1つを指す場合、単に記録手段(記録ヘッドまたはヘッドカートリッジ)1で示すことにする。
ヘッドカートリッジ1は、異なる色のインクを用いたカラー記録が可能なように、それらのインクタンク部には例えば黒、シアン、イエロー、マゼンタなどの異なるインクが収納されている。各記録手段1はキャリッジ2に位置決めして着脱可能に搭載されており、そのキャリッジ2には、コネクタを介して各記録手段1に駆動信号等を伝達するためのコネクタホルダ(電気接続部)が設けられている。
キャリッジ2は、装置本体に設置されたガイドシャフト3に沿って主走査方向に移動可能に案内支持されている。そしてキャリッジ2は、キャリアモータ4により、モータプーリ5、従動プーリ6、及びタイミングベルト7を介して駆動され、その位置及び移動を制御される。用紙やプラスチック薄板等の記録媒体8は、不図示の搬送モータによって駆動される9及び10、11及び12で示される2組の搬送ローラの回転により、記録ヘッド1の吐出口面と対向する位置(記録部)を通して搬送(紙送り)される。なお記録媒体8は、記録部において平坦な記録面を形成できるように、その裏面をプラテン(不図示)により指示されている。この場合、キャリッジ2に搭載された各カートリッジ1は、それらの吐出口面がキャリッジ2から下方へ突出して2組の搬送ローラ対の間で記録媒体8と平坦になるように保持されている。
記録ヘッド1は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録手段であって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。また記録ヘッド1は電気熱変換体によって印加される熱エネルギーにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して、吐出口よりインクを吐出させ、記録を行うものである。
また、14は記録ヘッド1の吐出性能を回復させる回復動作を行う回復機構であり、記録ヘッドがホームポジションに戻った際に吐出口面をカバーしてインクの蒸発を防止するキャップ15と、該キャップ15とチューブ27によって接続された吸引ポンプ16、吐出口面に付着したゴミや固着したインク等を清掃するためのブレード18と、該ブレード18を保持するブレード押え17とが設けられている。
回復動作は、所定の時間間隔で行われ、各記録ヘッド1の吐出面をブレード18によって清掃すると共に、必要に応じて各記録ヘッドの吐出面が対応するキャップ15にカバーされる位置まで移動させ、吸引ポンプ16によって吐出口部の増粘したインクを吸引して排出させる。
図2は、記録ヘッド1のインク吐出部13の主要な構造を部分的に示す模式的斜視図である。なお、図2は図10Aに示した2つの吐出口列AもしくはBの一方のみを示したものである。
図2において記録媒体8と所定の隙間(約0.5〜2[mm]程度)をおいて対面する吐出口面21には、所定のピッチで複数の吐出口22が形成され、共通液室23を各吐出口22とを連通する各流路24の壁面に沿ってインク吐出用のエネルギーを発生するために電気熱変換体(発熱抵抗体など)25が配設されている。本例においては、記録ヘッド1は吐出口22がキャリッジ2の走査方向と交差する方向に並ぶような位置関係で、該キャリッジ2に搭載されている。こうして記録信号または吐出信号に基づいて対応する電気熱変換体25を駆動(通電)して、流路24内のインクを膜沸騰させ、その時に発生する圧力によって吐出口22からインクを吐出させるように記録ヘッド1が構成されている。
なお、本実施例ではインクを吐出させるための手段として熱エネルギーを発生する電気熱変換体の構成で説明するが、これに限らず圧電素子を用いた構成であっても良い。
(制御システムの構成)
図3は、本発明に係るインクジェット記録装置の制御システムの構成を示すブロック図である。図3において、31は接続されたホスト機器からの記録信号が入力されるインターフェイスであり、32はマイクロプロセッサユニット(MPU)であり、33はこのMPU42が実行する制御プログラムを格納するプログラムROMであり、34は記録信号や記録ヘッド1に供給される記録データ等の各種データを保存しておくDRAMである。このDRAM34では、記録ドット数や記録時間なども記憶(カウント)できるようになっている。35は記録ヘッド1に対する記録データの供給制御を行うゲートアレイであり、インターフェース31とMPU32とDRAM34との間のデータの転送制御も行うように構成されている。
図3において、4は記録ヘッド1を搭載したキャリッジ2を搬送する為のキャリアモータ(主走査モータ)であり、20は記録用紙等の記録媒体8を搬送する為の搬送モータである。36は記録ヘッド1を駆動する為のヘッドドライバであり、37は搬送モータ20を駆動する為のモータドライバであり、38はキャリアモータ4を駆動する為のモータドライバであり、39は各種の検出を行うためのセンサ群である。このセンサ39は例えば、記録媒体8の有無を検知するセンサ、キャリッジ2がホームポジションにあることを検知するセンサ、記録ヘッド1の温度を検知するセンサなどであり、これらにより、記録媒体8の有無やキャリッジ2の位置や環境温度などを認識することができる。
図1及び図3において、ホスト機器から記録データがインターフェース31を介して送られてくると、ゲートアレイ35を通してDRAM34に記録データが一時的に蓄えられる。その後DRAM34のデータをゲートアレイ35によってラスターデータから記録ヘッド1で記録するための画像イメージに変換し、再度DRAM34に記憶する。そのデータを、再度ゲートアレイ35によってヘッドドライバ36を介して記録ヘッド1に送り、対応する位置の吐出口からインクを吐出させて記録を行う。その際、ゲートアレイ45に記録させるドットのカウンタを構成しておき、記録させるドットを高速でカウントできる構成としておく。
モータドライバ38を介してキャリアモータ4を駆動し、記録ヘッド1の記録速度に合わせてキャリッジ2を主走査方向へ動かすことにより、1回の主走査における記録が行われる。当該主走査の記録が完了すると、搬送モータ用のモータドライバ37を介して搬送モータ20を駆動し、記録媒体8を主走査方向と交叉する搬送方向(副走査方向)へ所定ピッチだけ搬送(紙送り)する。そして、次の走査での記録を行うべく、モータドライバ38を介して再びキャリアモータ4を駆動し、記録ヘッド1の記録速度に合わせてキャリッジ2を主走査方向へ動かし、その主走査(次の主走査)における記録が行われる。以下、これらを繰り返すことにより、記録媒体8の全体にわたる記録が行われる。
<第1の実施形態>
以下、上記のような構成のインクジェット記録装置に本発明を適用する、第1の実施形態について説明する。
第1の実施形態は、吐出量の異なる2種類の吐出口群(大ノズル群及び小ノズル群)を有する記録ヘッドを備え、同一の主走査で一方のノズル群のみを用いて記録を行う記録モードと、同一の主走査で2種類のノズル群を異なったタイミングで駆動して記録を行う記録モードとを有している。
すなわち、本実施形態では、少なくとも第1の濃度の記録要素(ドット)を記録するときに使用される第1のノズル群と、第2の濃度の記録要素を記録するときに使用される第2のノズル群とを持っており、1回の走査での記録において第1及び第2のノズル群の一方のみを使用する第1の記録モードと、1回の走査での記録において第1及び第2のノズル群を異なったタイミングで駆動する第2の記録モードとを備え、第1の記録モードでの複数のノズル列間の相対的記録位置を調整するための設定値に基づいて、第2の記録モードでの複数のノズル列間の相対的記録位置の設定値を決定するインクジェット記録装置であるが、本実施形態は次のような特徴をも有しており、本発明としてはこれらの構成を適宜併せ持つ構成であっても良い。
第1の記録モードでの相対的記録位置調整の際の分解能が、第2の記録モードでの相対的記録位置調整の分解能の整数倍である。
第2の記録モードでの記録位置の設定値を決定する際に、2つのノズル群のいずれかの相対的記録位置の設定値を変更する必要がある場合、濃度の低い記録要素を記録するときに使用されるノズル群の設定値を変更しない。
第1のノズル群と第2のノズル群とは、記録する記録要素の大きさが異なる。
記録ヘッドは、第1のノズル群に属するノズルと第2のノズル群に属するノズルとが交互に配置されたノズル列を複数有している。
第1の記録モードでの設定値は、記録されたパターンを参照してユーザが入力する。
本実施形態のヘッドカートリッジ1において1つのインクに対するヘッドカートリッジのノズル群は、図10Fに示すような構成であり、吐出量が多く大きな記録ドットの記録に使用される大ノズル群と、吐出量が少なく小さな記録ドットの記録に使用される小ノズル群とが交互に配置された2つのノズル列を有し、2つのノズル列において大小2種類のノズルの位置(列内の順序)が異なっている。
より詳細には、偶数吐出口(ノズル)列1001には、吐出口群1001A(大ノズル)と吐出口群1001B(小ノズル)を備えており、駆動回路の都合上、同一主走査中には吐出口群1001Aと吐出口群1001Bは同時のタイミングでは駆動することができず、同一主走査内ではそれぞれの駆動タイミングを切り替えて記録を行う。また、吐出口群1001Aと吐出口群1001Bから吐出される記録ドットの吐出量は、吐出口群1001Aの方が吐出口群Bを比べて相対的に吐出量が多く記録ドットも大きい。奇数吐出口(ノズル)列1002も偶数吐出口列1001同様、吐出量の異なる、吐出口群1002A(大ノズル)と吐出口群1002B(小ノズル)を備えており、同一主走査中には吐出口群1002Aと吐出口群1002Bは同時のタイミングでは駆動することができず、同一主走査内ではそれぞれの駆動タイミングを切り替えて記録を行う。偶数吐出口列1001と奇数吐出口列1002とは大ノズルと小ノズルの位置関係が互い違いとなるよう構成されている。
なお、同一走査内で大ノズルからのみ、または小吐出のノズルからのみの吐出によって記録を行う場合には、切り換えずに主走査方向に連続した位置に記録を行うことができる。
本実施形態において記録位置調整に使用するテストパターンは、上記において説明した図8にG,Hの2つのパターンを追加したものである。各パターンで記録位置調整を行うノズル列及びノズル群の組合せは、
A:黒偶数列大ノズル/奇数列大ノズル
B:シアン偶数列大ノズル/奇数列大ノズル
C:マゼンタ偶数列大ノズル/奇数列大ノズル
D:黒偶数列小ノズル/奇数列小ノズル
E:シアン偶数列小ノズル/奇数列小ノズル
F:マゼンタ偶数列小ノズル/奇数列小ノズル
G:シアン偶数列大ノズル/偶数列小ノズル
H:マゼンタ偶数列大ノズル/偶数列小ノズル
となっている。
以下、図4ならびに図16〜図21を参照して、本実施形態における記録位置調整について説明する。これらの図は、図6と同様に1つの記録ヘッドにおける2つの駆動状態を示している。
図21は、本実施形態における駆動タイミングと記録ドットの関係を説明するための模式図である。記録ヘッドの構成は、上記のように図10Fに示すような構成であり、各ノズル列のノズル数は大ノズル、小ノズル共に2つずつの計4個である。この記録ヘッドを図中矢印で示す左から右へ移動するものとし、主走査方向記録位置を破線で示した。この記録位置の間隔(ピッチ)は1200dpiであり、駆動タイミングを1ずらすとは着弾位置を1200dpiずらすことと等価であり、また、記録位置の設定値を1ずらすこととも等価である。設定値の+(プラス)は右方向へずらすこと意味し、−(マイナス)は左方向へずらすことを意味する。本実施形態においては記録解像度を600dpiとするため、着目画素は1200dpiの2×2のマトリクスで構成される600dpiの大きさとなる。
図21では、主走査方向記録位置0ならびに主走査方向記録位置1において大ノズル(1001A,1002A)を駆動した状態を記録画素210〜213の上下にそれぞれ示している。
そして図21では、2つのノズル列の間隔が600dpiであり、連続した2つの駆動タイミング(ノズル列1001が駆動タイミング2及び3で、ノズル列1002が駆動タイミング0及び1の位置)で大ノズルからのみインクを吐出した場合に記録される画素を示している。この場合、210、211、212、213の4つの画素には、図示したように、記録ドットが2発ずつ記録されるが、以下ではこれら記録画素のうち1つに着目して説明を行うこととする。
図4及び図16で、同一主走査で一つのインク吐出口群(大ノズル)のみを使用して記録する際の駆動タイミングと記録ドットの関係、図17〜図19で、同一主走査で大ノズルとは駆動の異なるインク吐出口群(小ノズル)のみを使用して記録する際の駆動タイミングと記録ドットの関係、そして図20及び図22〜図25で、同一主走査において大ノズルと小ノズルとの駆動を切り替えて記録する際の駆動タイミングと記録ドットの関係についてそれぞれ説明する。
まず大ノズルのみを使用して記録する場合の駆動タイミングを記録ドットの関係について説明する。図4及び図16は、大ノズルを使用して偶数ノズル列であるノズル列1001と奇数ノズル列であるノズル列1002とによって記録を行う場合の駆動タイミングと記録ドットの関係を示す模式図である。
図4は、2つのノズル列1001及び1002をいずれも主走査方向記録位置0で駆動してそれぞれインクを吐出し、着目画素400上でのノズル列1001の大ノズルから吐出されたインク滴によって形成された記録ドット401Lとノズル列1002の大ノズル〜吐出されたインク滴によって形成された記録ドット402Lを示している。この例では、いずれのドットも主走査方向記録2に着弾しており、着弾位置が合っている状態を示している。
また、図16は、ノズル列1001の主走査方向記録位置(カラム)が0(カラム0)、ノズル列1002の主走査方向記録位置が1(カラム1)のタイミングでそれぞれインクを吐出する構成、つまり、2つのノズル列の駆動タイミングを1(1200dpi)ずらすことで着目画素400上での記録ドット161L及び162Lの記録位置が主走査方向記録位置2で合っている状態を示している。
図16のように吐出タイミング(吐出位置)が異なるにも係らずドットの形成位置が同じカラムになっているのは、ノズル列毎で吐出方向や吐出速度(インクの飛翔速度)が異なっているためである。この例では、ノズル列1002のからのインクの吐出速度が相対的に速い場合やインクの吐出方向が相対的に進行方向に傾いている場合などに対応する。
図4もしくは図16に示したように、どのような駆動タイミングで吐出を行えば記録位置が合うのかを調べる(検知する)ことが記録位置調整(ドットの形成位置調整)であり、記録位置調整により最適な駆動タイミングが判明した場合には、その駆動タイミングを記録位置調整の設定値として使用し、このタイミングで偶数及び奇数の2つのノズル列の大ノズルをそれぞれ駆動することにより、2つのノズル列間の相対的記録位置が合った状態での記録が行える。
このように大ノズルだけで記録を行う場合での記録位置調整時の分解能(使用できる駆動タイミング)は、すべての主走査方向記録位置(カラム)における駆動が可能であり、駆動の選択に何ら制約はない。すなわち1200dpiの分解能となる。
小ノズルのみを使用した記録モードにおける偶数ノズル列と奇数ノズル列間の相対的記録位置の調整についても同様であり、それらの状態を図17〜図19に示す。
図17は、主走査方向記録位置1において偶数ノズル列1001の小ノズル、奇数ノズル列1002の小ノズルを駆動すれば、着目画素400において記録ドット171S及び172Sの相対的記録位置が合うように記録が行える状態(以下、主走査方向記録位置Xにおいて駆動を行うことを駆動タイミングXにおいて駆動するとも表記する)を示している。図18は、駆動タイミング0において偶数ノズル列1001の小ノズル、奇数ノズル列1002の小ノズルを駆動すれば、着目画素400において記録ドット181S及び182Sの相対的記録位置が合うように記録が行える状態を示している。
また図19は、駆動タイミング0において偶数ノズル列1001の小ノズルを、駆動タイミング1において奇数ノズル列1002の小ノズルを駆動すれば、着目画素400において記録ドット191S及び192Sの相対的記録位置が合うように記録が行える状態を示している。このように小ノズルのみを用いて記録を行う場合でも小ノズルを駆動するのに駆動タイミング0,1,2,...を全て使用できるため、1200dpiの分解能で記録位置の調整を行うことができる。
一方、同一の主走査において大小ノズルを異なったタイミングで駆動する記録モードにおいては、以下のような状態が生じる。
例えば、大ノズルのみの記録モードで記録位置を調整した場合に、2つのノズル列の大ノズルから吐出されたインクによって形成された記録ドットの状態が図4に示す状態(401L及び402L)であり(以下大ノズルが図4の状態にあると記載する)、小ノズルのみの記録モードで記録位置を調整した場合に、2つの列の小ノズルから吐出されたインクによって形成された記録ドットの状態が図17に示す状態(171S及び172S)である場合には、大ノズルを偶数の主走査方向記録位置で駆動し、小ノズルを奇数の主走査方向記録位置で駆動すれば、着目画素への記録ドットの着弾は図22に示すようになる。
図22は、着目画素400を抜き出して示す図であり、図4の状態で大ノズルを駆動したと想定した場合の記録ドットを401L及び402Lで、また図17の状態で小ノズルを駆動したと想定した場合の記録ドットを171S及び172Sでそれぞれ示している。
この場合、一方のノズル群に対しては偶数の主走査方向記録位置、他方のノズル群に対しては奇数の主走査方向記録位置でしか記録できないが(上記の例では、大ノズルは偶数の主走査方向記録位置、小ノズルは奇数の主走査方向記録位置)、形成されるそれぞれのドットの位置は同じカラムとなるので、大ノズルのみで記録を行った場合の記録位置の調整値と小ノズルのみで記録を行った場合の記録位置の調整値のそのもので、1走査中に大小ノズルのタイミングを切り分けて記録を行う場合であっても、記録位置は適切な位置にできる。
なお、両ノズル群を1走査中で切換えて記録を行うモードでの分解能(使用できる駆動タイミング)はいずれかのノズル群(大ノズル又は小ノズル)のみを使用する記録モードの分解能の半分である600dpiとなる。
一方、大ノズルのみの記録モードで記録位置調整を行った場合がが図4の状態であり、小ノズルのみの記録モードで記録位置調整を行った場合が図18の状態である場合には、本実施形態の構成の記録ヘッドでは、これらの記録位置の調整値を使って大小2つのノズル群を同じ主走査方向記録位置での駆動はできない。すなわち、大ノズルを図4の状態にすると大ノズルを偶数の主走査記録位置で駆動することになるため、小ノズルは偶数の主走査記録位置において駆動できなくなる。そこで本実施形態ではこのような場合においては、吐出タイミングを異ならせることを優先して相対的に小ノズルを図25に示すように、奇数の主走査記録位置で駆動するようにし、記録ドットの着弾を図23に示すようにする。(この例では小ノズルのタイミングをずらした場合で説明しているが、大ノズルの駆動タイミングをずらしても良い。)
図25は、図18の状態から小ノズルの駆動タイミングを1遅らせた(記録ヘッドは、矢印で示すように右に向かって走査している)状態を示す図であり、図18の記録ヘッドの状態も点線で示してある。また図23は、図4の駆動タイミングで大ノズルを駆動した場合に着目画素400に形成される記録ドット(401L,402L)と、図25の駆動タイミングで小ノズルを駆動した場合に着目画素400に形成される記録ドット(251S,252S)とを合わせて示した図である。
また、大ノズルから吐出されたインクでドットが形成される状態が図4の状態で小ノズルから吐出されたインクでドットが形成される状態が図19の状態である場合にも、このままでは同一の主走査において大ノズルと小ノズルとを駆動できないため、大ノズルもしくは小ノズルの駆動タイミングをずらして記録位置設定値を変更する必要が生じる。本実施形態ではこのような場合には、駆動タイミングをずらす記録ドットが最も少なくてすむように、ノズル列の駆動タイミングをずらす。すなわち、この場合にはノズル列1001の小ノズルの駆動タイミングのみを1ずらして図20に示すようにする。
図20では、図19から偶数ノズル列1001の小ノズルの駆動位置を主走査方向(+)に1ずらした状態を示しており、図19での偶数ノズル列の小ノズルの駆動タイミングも点線で示してある。このように一方のノズル列の小ノズルの駆動タイミングをずらすことで、偶数ノズル列1001と奇数ノズル列1002の小ノズルを奇数の主走査方向記録位置において駆動する状態にでき、図4で示したような大ノズルの主走査方向記録位置と重なることなく同一主査走査における大小ノズルの駆動を行うことが可能となる。
これにより記録ドットの着弾位置は図24に示すようになる。図24は、着目画素400への、図4における駆動タイミングでの大ノズルを駆動した際の記録ドット(401L,402L)と図20における駆動タイミングで小ノズルを駆動した際の記録ドット(201S、202S)とを示した図である。このように、本実施形態では、記録位置調整により調整された設定値をより多く記録に反映させるようにすると共に、駆動をずらす記録ドットを最小に抑えるようにする。
大ノズルと小ノズルとの駆動タイミングが同時となる場合の駆動タイミングの変更は、大ノズル(列)に対する記録位置調整の設定値と小ノズル(列)に対する記録位置調整の設定値とが決定された後に、プリンタ内部のMPU32により両者の設定値を参照して所定の規則に従って行われ、例えば、大ノズルの設定値と小ノズルの設定値とからテーブルを参照して行われる。この場合に駆動タイミングを変更するノズル列としては、偶数ノズル列1001と奇数ノズル列1002とのいずれでもよいが、駆動タイミングの変更は常に着目画素の大きさである600dpi内に着弾させるように(本実施形態では、主走査方向記録位置を遅らせる方向にずらす)行う。
図37に記録位置調整値設定のフローを示す。
まず、ステップS3701において大ノズル列の偶数ノズル列と奇数ノズル列同士の記録位置の相対的位置関係(大ノズル列間記録位置関係)を調べ、次にステップS3702において小ノズル列の偶数ノズル列と奇数ノズル列同士の記録位置関係(小ノズル列間記録位置関係)を調べる。続いてステップS3703にて、偶数大ノズル列と偶数小ノズル列間の記録位置関係を調べ、これらの位置関係から大偶数ノズル列・大奇数ノズル列・小偶数ノズル列・小奇数ノズル列それぞれの記録位置調整値を決定する。
図38に上記図37を用いて説明した記録位置調整値を実際の記録時に用いるフローの一例を示す。本フローにおいては説明の簡略化のため、大の偶数ノズル列の記録位置調整値を大1、大の奇数ノズル列の記録位置調整値を大2、小の偶数ノズル列の記録位置調整値を小1、小の奇数ノズル列の記録位置調整値を小2と記載することにする。
ステップS3801において行う記録モードが、同一主走査において大小ノズルを共に用いて記録を行うか否かの判定を行う。同一主走査で大ノズルと小ノズルと混在使用しないのであれば図37において算出した記録位置調整値をそのまま使用して記録可能であるのでステップS3805へと進み記録位置調整値をそのまま使用して記録を行う。
同一主走査で大小ノズルを混在使用するならば、ステップS3802へと進み、まず図37で行った位置調整値を利用して駆動を行った場合に大1と大2とが同一の駆動タイミングとなるかを判定する。ここで同一の駆動タイミングとは図4や図17で言うところの、駆動を行う主走査方向の記録位置が偶数であるか奇数であるかが同一かどうかを示すことにする。すなわち大1と大2が同一の駆動タイミングであるとは、大1と大2がともに偶数もしくはともに奇数である状態を示す。
ステップS3802において共に偶数と判断された場合にはステップS3803に進むこととし、大1と小1とが同一の駆動タイミングであるかどうかを判定し、大1と小1とが同一の駆動タイミングであるならばステップS3807へ、同一でないならばステップS3804へと進む。ステップS3804、ステップS3807ともに小1と小2とが同一のタイミングかどうかの判定を行う。ステップS3804で同一であると判断されると記録位置調整値は大1と大2、小1と小2それぞれが同一のタイミングでかつ大1と小1は同一のタイミングではないので先に得られた記録位置調整値をそのまま使用して記録を行うことが可能とわかる。その他ステップS3804で小1と小2とが同一のタイミングでない場合には小2を、ステップS3807において小1と小2が同一のタイミングである場合には大1と大2を、小1と小2が同一でない場合には小1をそれぞれずらすことにする。
また、ステップS3802において大1と大2とが同一のタイミングでないと判断された場合にも進む先のステップS3810において大1と小1とが同一のタイミングかを判定し、同一のタイミングの場合にはステップS3811、同一でない場合にはステップS3814へと進みともに小1と小2とが同一か否かの判定を行う。以上の判定の結果ステップS3811で同一と判断された場合には大1を、ステップS3811もしくはステップS3814で同一でないと判断された場合には大1と小2を、ステップS3814で同一と判断された場合には大2をそれぞれずらすことにする。
なお、本実施形態においては左から右へ走査する往路記録における記録位置調整について説明したが、右から左へ走査する復路記録における記録位置の調整についても同様の考え方により大小ノズルを交互に駆動して記録する際の記録位置を変更することできるのはもちろんであり、この場合においても常に600dpiの着目画素の中に着弾させるように変更を行うようにする。
以上のように大小ノズルを交互駆動する構成において、必要に応じて駆動タイミングを変更することで、大小交互駆動のために特別な記録位置調整を行う必要がなくなり、最適な記録位置からのずれを最小の1200dpiとすることができ、かつ、画素の大きさである600dpiの範囲内に入るように設定値を決定するため、記録画像の画質低下を抑えることが可能となる。
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態も第1の実施形態と同様なインクジェット記録装置における記録位置調整に関するものであり、以下の説明では上記第1の実施形態と同様な部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
第1の実施形態においては、1方向の走査(1走査)における2つのノズル列間の記録位置調整について説明したが、本実施形態においては、双方向記録を行う際の記録位置調整について説明する。なお本実施形態においても第1の実施形態と同様に、着目画素の大きさは600dpiであり、駆動タイミングの設定は1200dpiのピッチで可能であるとする。
すなわち、第2の実施形態は、記録ヘッドを往復両方向に走査させて記録を行うときに、第1の記録モードで同じノズル列の往方向及び復方向の相対的記録位置の調整を行うためのパターンから判別された相対的記録位置の設定に基づいて、第2の記録モードでの同じノズル列の往方向及び復方向の相対的記録位置の設定値を決定すること特徴とする。
図36は、本実施形態において使用する記録位置調整を行うためのテストパターンの一例であり、本パターンで調整を行うノズル列及びノズル群の組合せは、
A:黒偶数列大ノズル/奇数列大ノズル
B:シアン偶数列大ノズル/奇数列大ノズル
C:マゼンタ偶数列大ノズル/奇数列大ノズル
D:シアン偶数列小ノズル/奇数列小ノズル
E:マゼンタ偶数列小ノズル/奇数列小ノズル
F:黒大ノズル双方向
G:カラー大ノズル双方向
H:黒ノズル列/カラーノズル列
I:カラー小ノズル双方向
J:シアン大ノズル/小ノズル
K:マゼンタ大ノズル/小ノズル
となっている。
図36のA〜Kパターンの詳細については、図8、9および図12〜15を参照して説明したものと同様であり、記録位置調整を行う2つのノズル列の一方を基準として(駆動タイミングを変更せず)、他方のノズル列の駆動タイミングを1200dpiずつ変更して記録を行う事により記録位置調整を行う2つのノズル列間の相対的記録位置を異ならせることができ、複数種類記録したパターンのうち最も滑らかなパターンを選択することで記録位置調整を行うことも、図8のパターンに関して説明したのと同様である。
双方向記録における記録位置調整では、第1の実施形態のような1方向(1走査)での記録における記録位置調整とは異なり、大小2種類のノズルを交互に駆動して記録を行う場合においても、異なる列の小ノズル同士もしくは異なる列の大ノズル同士のうち、基準とする一方のノズル列に関しては、記録位置調整を1200dpiのピッチで行うことができる。
上述のように、大小2種類のノズルを使用して記録を行う場合には、濃度が低いハイライト部分に対しては小ノズルのみを使用して粒状感を減らし、小ノズルによる小さい記録ドット(以下小ドットとも称する)によりエリアファクタ(記録媒体上の所定の領域内における記録領域の比率:面積階調法では濃度に比例する)がある程度高くなると、大ノズルによる大きい記録ドット(以下大ドットとも称する)の使用を開始する。
このため、小ドットが主に使われるハイライト部分では、エリアファクタが低いため、記録位置のずれが目立ちやすく、ざらつきとして認識される。これとは逆に大ドットが使用される領域では、ある程度エリアファクタが高いため、多少記録位置がずれても小ドットの記録位置ずれによるざらつきよりも目立たない。このため、本実施形態による双方向記録における記録位置調整においては、小ノズルの駆動タイミングをずらすことは極力避けるよう、小ノズルを基準として、主に大ノズルの駆動タイミングをずらすようにする。
以上を、図26〜図29を参照して説明する。なお、ここでは、大ノズル、小ノズルそれぞれのノズル群で基準とするノズル列は1001で示されるノズル列とする。
同一主走査で駆動のタイミングを異ならせる必要のある大ノズルと小ノズルとを使用する交互駆動において、大ノズルのみを使用してドットを形成する状態が図26に示す状態であり、小ノズルのみを使用してドットを形成する状態が図27に示す状態である場合について説明を行う。
図26、27及び28は、横軸に主走査方向記録位置を示しておりその間隔が1200dpiであることは、上記第1の実施形態と同様である。また、1つの着目画素500に対して記録を行っている状態の記録ヘッドを示していることも上記第1の実施形態で説明した図4等と同様であり、駆動を行っているノズルをハッチングで示してあることや、着目画素上に記録された記録ドットをノズルと同じ大きさの丸にハッチングで示していること、ならびに記録ヘッドの走査方向を矢印で示していることも図4等と同様である。
図26は、着目画素500の上側に、矢印で示すように左から右への主走査方向に記録ヘッドが走査している状態(往路走査)で、主走査方向記録位置0において偶数ノズル列の大ノズル1001A_Fを駆動することで、着目画素500に記録ドット261Lが記録される状態を示している。また同図において、着目画素500の下側に、矢印で示すように右から左への主走査方向に記録ヘッドが走査している状態(復路走査)で、主走査方向記録位置4において偶数ノズル列の大ノズル1001A_Bを駆動することで、着目画素500に記録ドット262Lが記録される状態を示している。
図27は、着目画素500の上側に、矢印で示すように左から右への主走査方向に記録ヘッドが走査している状態(往路走査)で、主走査方向記録位置0において偶数ノズル列の小ノズル1001B_Fを駆動することで、着目画素500に記録ドット271Sが記録される状態を示している。また同図において、着目画素500の下側に、矢印で示すように右から左への主走査方向に記録ヘッドが走査している状態で、主走査方向記録位置3において偶数ノズル列の小ノズル1001B_Bを駆動することで、着目画素500に記録ドット272Sが記録される状態を示している。
記録タイミングと記録ドット位置の関係が、上記図26及び27に示すような状態である場合に、大ノズルと小ノズルとを同一主走査において順次切り替えて駆動して記録を行おうとしても、往路走査において偶数列の大ノズルと偶数列の小ノズルとを、同じ主走査方向記録位置0で駆動する必要があり、このような駆動は本実施形態の記録ヘッドでは実行できない。
そこで本実施形態においては、小ノズルを基準として小ノズルの駆動タイミングをずらすことは極力避けて、主に大ノズルの駆動タイミングをずらすようにする。すなわち、図26の状態であった大ノズルの駆動タイミングを、図28に示すように駆動タイミングを変更する。
図28は、図26に示した偶数ノズル列1001の大ノズルの着目画素への記録のうち往路走査での駆動タイミングを、主走査方向記録位置0から1へと変更した状態を示す図である。この図には図26での往路走査時の記録ヘッドの位置も点線で示している。また、駆動タイミングの変更に伴い記録される記録ドット281Lも、図26の記録ドット261Lから主走査方向右側へ1200dpiずれて記録される。
大ノズル及び小ノズルを図27及び図28に示す状態で駆動する場合に、着目画素に記録される記録ドットの状態を図29に抜き出して示した。図29には、着目画素500に対する、偶数ノズル列の大ノズルを用いた往路走査による記録ドット281L、偶数ノズル列の大ノズルを用いた復路走査による記録ドット282L、偶数ノズル列の小ノズルを用いた往路走査による記録ドット271S、偶数ノズル列の小ノズルを用いた復路走査による記録ドット272Sをそれぞれ示した。
以上では、偶数ノズル列における、大ノズルと小ノズルとの間の双方向記録における記録位置の調整について説明したが、本実施形態で使用する記録ヘッドに対しては、図30A及び30Bに関連して説明したように、偶数ノズル列及び奇数ノズル列間の記録位置の調整のためのパターンも記録され、該パターンを用いた記録位置の調整も行われるので、例えば、小ノズルの往路走査での偶数ノズル列と奇数ノズル列間の着目画素への記録と駆動タイミングの関係が第1の実施形態で参照した図19のような状態にある場合には、奇数ノズル列の小ノズルの駆動タイミングを1から2へと変更する必要がある(不図示)。
このように必要に応じて、小ノズルの駆動タイミングを変更する必要が生じるが、通常は偶数ノズル列の小ノズルを基準とし、必ず偶数ノズル列の小ノズルの双方向記録位置調整に関しては記録位置調整の設定値を反映させて、双方向記録を行う際に最も記録位置が合う状態で記録を行うことができる。
また、上記の例では大ノズルを、往路走査時には主走査方向記録位置が奇数となるタイミング、復路走査時には主走査方向記録位置が偶数となるタイミングで駆動しているが、同一主走査内においては、大ノズルもしくは小ノズルは各々偶数もしくは奇数の同一タイミングでしか駆動できないが、異なる走査間、すなわち、往路走査と復路走査では駆動タイミングを偶数もしくは奇数に揃える必要はないため、大小いずれかのノズルの双方向の記録位置調整においては、1200dpiのピッチでの記録位置調整が可能である。
上述したように、大小ノズルを交互に駆動して記録する場合において、小ノズルの駆動タイミングをずらさずに(記録位置調整の設定値を変更せずに)、主に大ノズルの駆動タイミングのみをずらすため、大小ノズルを用いた交互駆動のために特別な記録位置調整を行う必要もなく、最適な記録位置からのずれを最小とすることができると共に、記録画像の画質低下を抑えることが可能となる。
更に、大小ノズルを交互駆動する場合における2つのノズル列間の記録位置調整についても、これを踏まえた上で画素の大きさである600dpiの範囲内に入るように、記録位置調整を設定することで、記録画像の画質低下を抑えることが可能となる。
<変形例>
なお、以上の実施形態においては、記録ヘッドとして、大ノズルと小ノズルとが同じノズル列に交互に配置された構成の記録ヘッドについて説明したが、本発明はこれ以外の構成の記録ヘッドにも適用できる。例えば、大ノズルと小ノズルがそれぞれ別の列に配列されており、同じ記録走査において大ノズル列と小ノズル列とが同時に駆動できないように構成された記録ヘッドを用いる場合にも適用でき、同様の効果を得ることができる。
このような場合につき概要を説明する。大ノズルと小ノズルとが、それぞれ別のノズル列として構成されている記録ヘッドの一例を図31に示す。
図31に記載の記録ヘッドは、黒、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクを用いる記録ヘッドであり、それぞれのインクに対して大ノズル列32Aと小ノズル列32Bとを有しており、大ノズル列と小ノズル列とを同一主走査内において順次切り替えて駆動することにより使用可能である。
図31に記載の記録ヘッドにおいては、第1の実施形態に示したような偶数ノズル列/奇数ノズル列間の記録位置調整を必要としないため、双方向記録においての記録位置調整のみが問題となる。
図31に示したような記録ヘッドにおいても、上記第2の実施形態と同様の処理により同様の効果が得られることを、黒のインクに対応するノズル列について、図32から図35を参照して簡単に説明する。
図32〜図34は、図26〜28と同様に駆動タイミングと記録ドットとの関係を記録ヘッドのみを変更して記載した。すなわち図32は、大ノズル列のみでの双方向記録を行った場合の駆動タイミングと記録ドットの関係、図33は、小ノズル列のみでの双方向記録を行ったときの駆動タイミングと記録ドットの関係の1例を示している。
この場合、図26及び27の場合と同様に、同一主走査において、大ノズル列と小ノズル列とを順次切り替えて駆動することで記録を行うように構成された記録ヘッドにおいては、往方向走査で図32及び33の状態を同時に満たして記録を行うことができない。このため、図34に示すように大ノズル列による往路走査での記録位置を主走査方向に1ずらすことで、同一主走査における順次切り替え記録が可能となり、その際の着目画素330での記録ドットの状態を図35に示した。
このように、上記第2の実施形態で示したような構成の記録ヘッドでなくとも第2の実施形態と同様の処理をすることで同様の効果を得られることが分かる。
また、上述の実施形態においては、異なった大きさの記録ドットを形成する大小2種類のノズル間の記録位置調整について説明したが、本発明は濃度の異なるインクを用いる記録ヘッド間の記録位置調整にも適用できる。この場合、小ノズルを淡インクを吐出するノズル、大ノズルを濃インクを吐出するノズルに置き換えて、上記と同様の処理をすることにより同様の効果を得ることができる。
また、シアン、マゼンタ、イエローのような記録インク間でも、より記録位置のずれが目立ちやすいインクを基準にすることが望ましく、さらにいえば、記録する画像に応じて、例えば人の顔のような画像では肌色を形成するのに主として用いられるマゼンタを基準に、空を含む画像などでは主に使用されるシアンを基準にするといったように、記録する画像に応じて基準とするインクを設定することも、画質をより一層の向上させるためには望ましい。
<他の実施形態>
以上の実施形態は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式を用いることにより記録の高密度化、高精細化が達成できる。
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に1対1で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。
また、以上説明した記録装置の構成に、記録ヘッドに対する回復手段、予備的な手段等を付加することは記録動作を一層安定にできるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段などがある。また、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを備えることも安定した記録を行うために有効である。
さらに、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってでも良いが、異なる色の複色カラー、または混色によるフルカラーの少なくとも1つを備えた装置とすることもできる。
さらに加えて、本発明に係る記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を取るものであっても良い。
なお、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ,インターフェース機器,リーダ,プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機,ファクシミリ装置など)に適用してもよい。