JP2004276541A - 二軸延伸積層フィルム及びその用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一般式1〜3で示される繰返し単位:−CO−R1−CO−(1)(式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基)−O−R2−O−(2)(式中、R2は炭素数2〜12の二価脂肪族基)下記一般式(3)で示される繰返し単位:−CO−R3−O−(3)(式中、R3は炭素数1〜10の二価脂肪族基)からなり一般式3で示される繰返し単位が1〜30モル%である脂肪族ポリエステル共重合体Aからなる二軸延伸フィルムの基材層Iの少なくとも片面に、上記脂肪族ポリエステル共重合体A70〜20重量%、および一般式4〜6:−CO−R4−CO−(4)(式中、R4は炭素数0〜8の二価脂肪族基)−CO−R5−CO−(5)(式中、R5は炭素数8〜12の二価芳香族基)−O−R6−O−(6)(式中、R6は炭素数2〜12の二価脂肪族基)からなり単位4:20〜95モル%及び単位5:80〜5モル%である芳香族系ポリエステル共重合体E30〜80重量%のポリエステル組成物Dの被覆層IIを有する二軸延伸積層フィルム。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を備え、且つ熱融着性、透明性に優れた包装用フィルムに好適な二軸延伸積層フィルム及びその包装用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
生分解可能なプラスチックとして、汎用性の高い脂肪族ポリエステルが注目されており、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリカプロラクトン(PCL)などが上市されている。
これら生分解性脂肪族ポリエステルの用途の一つとして包装用、農業用、食品用などのフィルム分野があり、用途に応じた高強度、耐熱性および生分解性が、基本性能として要求されている。
【0003】
上記脂肪族ポリエステルの中で、PLAは、高いものでは170℃付近に融点を持ち高耐熱性であるが、脆いために成形品の伸度は低く、また土中で分解しにくいためコンポスト化設備が必要である。PBSおよびPESは融点が100℃付近で十分な耐熱性を有するが、生分解速度が小さく、実用的には不充分であり、また機械的性質では柔軟性に欠ける。PCLは柔軟性に優れるものの、融点60℃と耐熱性が低いために用途が限定されているが、生分解速度は非常に速い。
【0004】
一方、特許2997756号公報記載のポリブチレンサクシネート−ポリカプロラクトン共重合体(PBSC)のように、脂肪族ポリエステル共重合体中にカプロラクトンユニットを導入することにより、実用的な柔軟性と適度な生分解性を実現することができ、また、カプロラクトンユニットの含有量を制御することにより、融点を80℃以上として十分な耐熱性を保持することと、生分解性を制御することが可能であることが見出されている。(特許文献1)
【0005】
又、WO 02−44249号公報には、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ヒドロキシカルボン酸またはその無水環状化合物(ラクトン類)の3成分からなる混合物の重縮合反応により合成した重量平均分子量40,000以上の高分子量脂肪族ポリエステル共重合体と他の生分解性樹脂を使用することにより、フィルム等の成形時の分子量安定性が良く、成形が良好であることが開示されている。(特許文献2)
【0006】
しかし、上記技術の脂肪族ポリエステル共重合体から得られる二軸延伸フィルムは、熱融着性がないので包装用フィルムに使用するには制限があった。
【0007】
【特許文献1】
特許2997756号(請求項1〜3、実施例1〜5)
【特許文献2】
WO 02−44249号公報(請求項、発明の開示の項の最終段落、表VII−1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、生分解性、透明性、柔軟性および熱融着性を有する二軸延伸フィルムを提供することを目的とした。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、基材層(I)に脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、及びラクトンからなる3成分系脂肪族ポリエステル共重合体を使用し、被覆層(II)に上記3成分系脂肪族ポリエステル共重合体と脂肪族ジカルボン酸−芳香族ジカルボン酸−脂肪族ジオールからなる芳香族系ポリエステル共重合体とからなる組成物を使用することにより、かかる問題点を解決し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明の第1は、分子鎖が、下記一般式(1)〜(3)で示される繰返し単位:
−CO−R1−CO− (1)
(式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基を表す。)
−O−R2−O− (2)
(式中、R2は炭素数2〜12の二価脂肪族基を表す。)
下記一般式(3)で示される繰返し単位:
−CO−R3−O− (3)
(式中、R3は炭素数1〜10の二価脂肪族基を表す。)
からなり、
一般式(3)で示される繰返し単位が1〜30モル%
(一般式(1)〜(3)で、繰返し単位(1)と(2)の量は実質的に等しく、(1)、(2)及び(3)の量の合計は100モル%である。)
である脂肪族ポリエステル共重合体(A)からなる二軸延伸フィルムの基材層(I)の少なくとも片面に、
上記脂肪族ポリエステル共重合体(A)70〜20重量%、および
分子鎖が、下記一般式(4)〜(6)で示される繰返し単位:
−CO−R4−CO− (4)
(式中、R4炭素数0〜8の二価脂肪族基を表す。)
−CO−R5−CO− (5)
(式中、R5炭素数8〜12の二価芳香族基を表す。)
−O−R6−O− (6)
(式中、R6は炭素数2〜12の二価脂肪族基を表す。)
からなり、繰返し単位(4)20〜95モル%および繰返し単位(5)80〜5モル%(繰返し単位(4)と(5)の合計は100モル%であり、繰返し単位(4)と(5)の合計と繰返し単位(6)の量は実質的に等しい。)である芳香族系ポリエステル共重合体(E)30〜80重量%(但し、(A)と(E)の合計は100重量%である。)のポリエステル組成物(D)からなる被覆層(II)を有してなることを特徴とする二軸延伸積層フィルムを提供する。
本発明の第2は、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点が、70〜120℃の範囲にある本発明の第1記載の二軸延伸積層フィルムを提供する。
本発明の第3は、脂肪族ポリエステル共重合体(A)が、該脂肪族ポリエステル共重合体(A)の重合中間体である重量平均分子量5,000以上の低分子量脂肪族ポリエステル共重合体(A’)100重量部に対し、0.1〜5重量部のジイソシアネート化合物を反応させて高分子量化されたものである本発明の第1又は2に記載の二軸延伸積層フィルムを提供する。
本発明の第4は、一般式(1)が、コハク酸残基及び/又はアジピン酸残基である本発明の第1〜3の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルムを提供する。
本発明の第5は、一般式(2)が、エチレングリコール残基及び/又は1,4−ブタンジオール残基である本発明の第1〜4の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルムを提供する。
本発明の第6は、一般式(3)が、ε−カプロラクトンの開環した基である本発明の第1〜5の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルムを提供する。
本発明の第7は、一般式(4)が、アジピン酸残基又はコハク酸残基である本発明の第1〜6の何れか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物を提供する。
本発明の第8は、一般式(5)が、テレフタル酸残基である本発明の第1〜7の何れか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物を提供する。
本発明の第9は、一般式(6)が、エチレングリコール残基及び/又は1,4−ブタンジオール残基である本発明の第1〜8の何れか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物を提供する。
本発明の第10は、脂肪族ポリエステル共重合体(A)とポリエステル組成物(D)とを共押出し成形して得られる積層シートを二軸延伸してなる本発明の第1〜9の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルムを提供する。
本発明の第11は、基材層(I)の両面に被覆層(II)を有する本発明の第1〜10の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルムを提供する。
本発明の第12は、本発明の第1〜11の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルムからなる包装用フィルムを提供する。
本発明の第13は、本発明の第1〜11の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルムからなる収縮包装用フィルムを提供する。
本発明の第14は、本発明の第11に記載の二軸延伸積層フィルムからなるオーバーラップ包装用フィルムを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の二軸延伸積層フィルムは、脂肪族ポリエステル共重合体(A)からなる基材層(I)と、脂肪族ポリエステル共重合体(A)と芳香族系ポリエステル共重合体(E)との特定組成の組成物(D)からなる被覆層(II)とからなる。
【0012】
基材層(I)
本発明に係る基材層(I)は、脂肪族ポリエステル共重合体(A)からなる。
【0013】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、分子鎖が、下記一般式(1)〜(3)で示される繰返し単位:
−CO−R1−CO− (1)
(式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基を表す。)
−O−R2−O− (2)
(式中、R2は炭素数2〜12の二価脂肪族基を表す。)
下記一般式(3)で示される繰返し単位:
−CO−R3−O− (3)
(式中、R3は炭素数1〜10の二価脂肪族基を表す。)
からなる。
基材層(I)では、二種以上の脂肪族ポリエステル共重合体(A)を混合使用してもよい。
【0014】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)の組成及び基礎物性は下記の通りである。
一般式(3)で示される繰返し単位の含有率は、1〜30モル%、好ましくは1〜20モル%、更に好ましくは1〜15モル%の範囲にある(一般式(1)〜(3)で、繰返し単位(1)と(2)の量は実質的に等しく、(1)、(2)及び(3)の量の合計は100モル%である。)。
上記脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、フィルム形成能がある限り、分子量は特に限定はされないが、通常、重量平均分子量が40,000以上、好ましくは70,000〜300,000、より好ましくは120,000〜250,000の範囲にある。
又、好ましくは重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布が2〜5、好ましくは2〜3の範囲である。
共重合体(A)の融点は通常70℃以上、好ましくは85〜120℃、より好ましくは90〜110℃の範囲にある。
【0015】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、一般式(3)で示される繰返し単位が1モル%未満では、得られる二軸延伸積層フィルムは透明性、柔軟性が失われる傾向にあり、30モル%を超えると、得られるポリマーの融点が低く、結晶性が極端に低下するため、得られる二軸延伸積層フィルムは耐熱性が劣る傾向にある。
【0016】
上記脂肪族ポリエステル共重合体(A)の一般式(1)で表される繰り返し単位である脂肪族ジカルボン酸残基を与える化合物としては、脂肪族ジカルボン酸、その無水物、又はそのモノまたはジエステル体が挙げられ、下記一般式(1’)で表される化合物を挙げることができる。
R14OCO−R1−COOR15 (1’)
(式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基、R14及びR15は水素原子、又は炭素数1〜6の脂肪族基もしくは芳香族基を示す。R14及びR15は同一でも異なっていてもよい。)
前記R1で示される二価脂肪族基は、好ましくは炭素数2〜8の鎖状又は環状のアルキレン基であり、−(CH2)2−、−(CH2)4−、−(CH2)6−等の炭素数2〜6の直鎖状低級アルキレン基が挙げられる。R14及びR15が水素原子であるときには脂肪族ジカルボン酸を表わしている。脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ジグリコール酸。
【0017】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位である脂肪族ジオール残基を与える化合物としては、脂肪族ジオールが挙げられ、下記一般式(2’)で表される化合物を挙げることができる。
HO−R2−OH (2’)
(式中、R2は炭素数2〜12の二価脂肪族基を示す。)
二価の脂肪族基としては、炭素数2〜12、好ましくは2〜8の鎖状又は環状のアルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基は、−(CH2)2−、−(CH2)4−等の炭素数2〜6の直鎖状低級アルキレン基である。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1、3‐プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を用いることができる。これらのものは単独で用いてよいし、2種以上組合せて用いてもよい。
【0018】
上記一般式(3)で表される繰り返し単位である脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基を与える化合物としては、下記一般式(3’)で表されるヒドロキシカルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸エステル、又は下記一般式(3”)で表されるラクトン類が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
HO−R3−COOR16 (3’)
(式中、R3は炭素数1〜10の二価脂肪族基、R16は水素原子または炭素数1〜6の脂肪族基又は芳香族基を表す。)
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、R3は炭素数4〜10の二価脂肪族基を表す。)
【0021】
上記式(3’)において、二価脂肪族基R3としては、炭素数1〜10、好ましくは2〜8の鎖状又は環状のアルキレン基が挙げられる。
R16は水素、脂肪族基又は芳香族基である。脂肪族基としては、炭素数1〜6、好ましくは1〜4の直鎖状又は分岐鎖状の低級アルキル基や、シクロヘキシル基等の炭素数5〜12のシクロアルキル基、芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
上記ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、D,L−乳酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸及びヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。上記ヒドロキシカルボン酸エステルとしては、上記ヒドロキシカルボン酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル、フェニルエステル等が挙げられる。
【0022】
前記一般式(3”)において、二価脂肪族基R3としては、炭素数4〜10、好ましくは4〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
ラクトンの具体例としては、例えば、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、1,3−ジオキソラン−4−オン、1,4−ジオキサン−3−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン等を挙げることができる。
また、前記ヒドロキシカルボン酸の2分子が結合した環状二量体エステル(ラクチド)であってもよく、グリコール酸から得られるグリコリドや、乳酸から得られるラクチド等が挙げられる。
【0023】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)の製造方法
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は種々公知の方法、例えば、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸ジエステル、前記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する脂肪族ジオール、及び前記一般式(3)で表される繰り返し単位を有するオキシカルボン酸又はオキシカルボン酸エステル若しくはラクトン類を触媒の存在下に重縮合反応させることにより得られる。
【0024】
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、一旦重量平均分子量5,000以上の低分子量の脂肪族ポリエステル共重合体(A’)を得た後、溶融状態の低分子量脂肪族ポリエステル共重合体(A’)にジイソシアネート化合物を加えて重量平均分子量を40,000以上に高めるようにしてもよい。
またウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル共重合体は、重量平均分子量が前記共重合体(A)の範囲と同じであるが、40,000以上、通常100,000〜250,000、好ましくは120,000〜250,000の範囲のものである。
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、詳しくは、例えば、特許第2997756号公報及びWO 02−44249号公報に記載の製造方法により得られる。
【0025】
被覆層(II)
本発明に係る被覆層(II)は、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)と芳香族系ポリエステル共重合体(E)とのポリエステル組成物(D)からなる。
【0026】
被覆層(II)に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、前記基材層(I)で使用されるものとは、同じであっても異なっていてもよい。
被覆層(II)では、二種以上の脂肪族ポリエステル共重合体(A)を混合使用してもよい。
【0027】
芳香族系ポリエステル共重合体(E)
本発明に係る芳香族系ポリエステル共重合体(E)は、前記一般式(4)〜(6)で示される繰返し単位からなる。
芳香族系ポリエステル共重合体(E)において、脂肪族ジカルボン酸残基である繰返し単位(4)は、20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、更に好ましくは40〜60モル%であり、芳香族ジカルボン酸残基である繰返し単位(5)が、5〜80モル%、好ましくは70〜30モル%、更に好ましくは60〜40モル%であり、及び脂肪族ジオール残基である繰返し単位(6)は、上記脂肪族ジカルボン酸残基および芳香族ジカルボン酸残基の合計に実質的に等しい。
【0028】
かかる芳香族系ポリエステル共重合体(E)としては、融点が、好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは70〜170℃、特に好ましくは100〜160℃の範囲にある。また、芳香族系ポリエステル共重合体(E)のMFR(ASTM D−1238による、190℃、荷重2160g)は、脂肪族ポリエステル共重合体(A)との組成物で、フィルムが成形できる限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0029】
上記繰返し単位(4)を与える脂肪族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体としては次のものを例示できる。
上記脂肪族ジカルボン酸は、一般に2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含む)、とくに4〜6個の炭素原子を有する。ジカルボン酸は線状であっても枝分れしていてもよいし、環状(脂環式)であってもよい。環状の脂肪族ジカルボン酸は、通例7〜10個の炭素原子を有するようなもの、とくに8個の炭素原子を有するようなものである。又、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸も使用することができる。
かかる脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等が挙げられる。それらの中でもアジピン酸が好ましい。
上記脂肪族ジカルボン酸のエステル形成誘導体としては、例えば、上記脂肪族ジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステルが挙げられる。ジカルボン酸の無水物も同様に使用することができる。
又、脂肪族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、単独かまたはその2種以上からなる混合物として使用することもできる。
特に好ましくは、アジピン酸またはそのアルキルエステルのようなエステル形成誘導体またはそれの混合物が使用される。
【0030】
上記繰返し単位(5)を与える芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体としては次のものを例示できる。
本発明に係わる芳香族ジカルボン酸としては、一般に8〜12個の炭素原子を有するようなもの、とくに8個の炭素原子を有するようなものが挙げられる。具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフトエ酸および1,5−ナフトエ酸並びにそのエステル形成誘導体を例示できる。
芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体としては、上記芳香族ジカルボン酸のジ−C1〜C6アルキルエステル、例えばジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等が挙げられる。
特に好ましくは、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートのようなそのエステル形成誘導体が使用される。
又、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、単独かまたはその2種以上からなる混合物として使用することもできる。
【0031】
上記繰返し単位(6)を与える脂肪族ジオールまたはその誘導体としては、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状の脂肪族ジオール、または5〜10個の炭素原子を有する環状の脂肪族ジオールが挙げられる。
【0032】
かかる脂肪族ジオールとしては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類、及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラヒドロフラン、とくには、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。かかる脂肪族ジオールは、異なる脂肪族ジオールの混合物も使用することができる。
【0033】
本発明に係る芳香族ポリエステル共重合体(E)は、上記脂肪族ジカルボン酸成分、芳香族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジオール成分の他に、例えば、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩に代表されるスルホネート基を有するジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体のアルカリ金属塩もしはアルカリ土類金属塩などのスルホネート基含有化合物;グリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、D−、L−ジラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、p−ヒドロキシ安息香酸などに代表されるグリコール酸、D−、L−、D,L−乳酸、6−ヒドロキシヘキサン酸及びその環式誘導体、並びに、例えば3−ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリラクチドなどに代表されるそのオリゴマーおよびポリマーなどのヒドロキシカルボン酸;2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノールなどに代表されるアミノ−C2〜C6−アルカノール、4−アミノメチルシクロヘキサンメタノール、アミノシクロペンタノール、アミノシクロヘキサノールに代表されるアミノ−C5〜C6−シクロアルカノール、またはこれらの混合物などのアミノ−C2〜C12−アルカノールまたはアミノ−C5〜C10−シクロアルカノール;1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン”HMD”)などに代表されるジアミノ−C1〜C8−アルカン;2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニル)メタン、1,2−ビス(2−オキサゾリニル)エタン、1,3−ビス(2−オキサゾリニル)プロパンまたは1,4−ビス(2−オキサゾリニル)ブタン、1,4−ビス(2−オキサゾリニル)ベンゼン、1,2−ビス(2−オキサゾリニル)ベンゼン、1,3−ビス(2−オキサゾリニル)ベンゼンなどに代表される2,2′−ビスオキサゾリン;バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リシン、アラニン、アルギニン、アスパルテーム酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、プロリン、セリン、チロシン、アスパラギン、グルタミンに代表される天然のアミノ酸;あるいは、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ポリエーテルトリオール、グリセリン、トリメシン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物およびヒドロキシイソフタル酸などに代表されるエステルを形成することができる基、例えばヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を少なくとも3個有している化合物;トルイレン−2,4−ジイソシアネート、トルイレン−2,6−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネートまたはキシリレン−ジイソシアネート、トリ(4−イソシアノフェニル)メタンなどの芳香族ジイソシアネート、n−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートなどのイソシアネート化合物;及び、1,4−ブタンジオール−ジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオール−ジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノール−ジビニルエーテルなどのジビニルエーテルなどの鎖延長剤等を共重合成分として含んでいてもよい。
かかる芳香族ポリエステル共重合体(E)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特表2002−527644公報、特表2001−501652公報に記載されている。又、芳香族ポリエステル共重合体(E)としては、例えば、BASF社から商品名ECOFLEX(登録商標)として販売されている。
【0034】
ポリエステル組成物(D)
本発明に係わるポリエステル組成物(D)は、脂肪族ポリエステル共重合体(A):芳香族ポリエステル共重合体(E)の重量%比が、70:30〜20:80、好ましくは60:40〜30:70の範囲にある。(ここで、(A)と(E)の割合の合計は100重量%である。)。
芳香族ポリエステル共重合体(E)が30重量%未満の組成物は二軸延伸積層フィルムの熱融着層に用いても、熱融着性が不十分となりヒートシールが完了する前に基材層(I)が融解して積層フィルム自体が溶断するおそれがあり、一方、80重量%を超える組成物は二軸延伸積層フィルムの熱融着層に用いた場合には、基材層(I)との層間接着力が劣り、又、積層フィルムがベタつくおそれがある。
又、本発明に係るポリエステル組成物(D)は、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)として、縮重合の過程で生じる少量のオリゴマーを含む脂肪族ポリエステル共重合体を用いても、二軸延伸積層フィルムにした際に熱融着層及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(A)から得られる二軸延伸フィルム基材からのオリゴマーのフィルム表面へのブリードアウトを抑制する副次的効果もある。オリゴマーのブリードアウトの抑制効果は、脂肪族ポリエステル共重合体(A)に含まれるオリゴマーの量にもよるが、ポリエステル組成物(D)における芳香族ポリエステル共重合体(E)の量を20重量%以上とすることで発現される。
【0035】
本発明に係るポリエステル組成物(D)は、脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び、芳香族ポリエステル共重合体(E)を夫々上記範囲でヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等で混合する方法、混合後更に単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法等により得られる。
【0036】
添加剤
本発明に係る基材層(I)に使用される樹脂及び被覆層(II)に使用される樹脂又は樹脂組成物(D)には、それぞれの樹脂にあるいは組成物(D)を製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機化合物あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0037】
被覆層(II)は、上記で得られた混練物を、前記基材層(I)の項で述べた成形方法により単独で成形してもよいし、基材層(I)と共押出して積層フィルムを直接成形してもよい。
【0038】
二軸延伸積層フィルム
本発明の二軸延伸積層フィルムは、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)からなる二軸延伸フィルム基材層(I)の片面若しくは両面にポリエステル組成物(D)からなる被覆層(II)を有してなる二軸延伸積層フィルムである。本発明の二軸延伸積層フィルムは、二軸延伸フィルム基材として、脂肪族ポリエステル共重合体(A)を用いてなるので、得られる二軸延伸積層フィルムは柔軟性、透明性に優れ、且つ表面には、ポリエステル組成物(D)から得られる被覆層を有することにより熱融着性を有する。
【0039】
本発明の二軸延伸積層フィルムで、両面にポリエステル組成物(D)からなる被覆層(II)を積層した二軸延伸積層フィルムは、前述のように、二軸延伸フィルム基材層(I)及び被覆層(II)の原料として、オリゴマーを少量、例えば4,000〜8,000ppmの範囲で含む脂肪族ポリエステル共重合体(A)を用いても、前記特性に加え、オリゴマーの二軸延伸積層フィルムの表面へのブリードアウトを抑制することができるという副次的効果も有する。
【0040】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)からなる二軸延伸フィルム基材層(I)及びポリエステル組成物(D)からなる被覆層(II)の厚さは用途に応じて種々決め得るが、通常、基材層(I)となる二軸延伸フィルムの厚さは5〜500μm、好ましくは10〜200μm、被覆層(II)の厚さは0.1〜5μm、好ましくは0.3〜2μmの範囲にあり、二軸延伸積層フィルムの厚さは約5〜500μm、好ましくは10〜200μmの範囲にある。
【0041】
本発明の二軸延伸積層フィルムは、例えば、二軸延伸フィルム(基材層(I))として脂肪族ポリエステル共重合体(A)を用い、被覆層(II)としてポリエステル組成物(D)を用いて共押出し成形して得た積層シートを、公知の同時二軸延伸法あるいは逐次二軸延伸法等の二軸延伸フィルム製造方法等により得られる。
二軸延伸の条件は、脂肪族ポリエステル共重合体(A)を延伸し得る条件、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度を60〜100℃、延伸倍率を3〜6倍の範囲、横延伸温度を60〜120℃、延伸倍率を4〜10倍の範囲にすればよい。又、同時二軸延伸法では、延伸温度を60〜120℃、延伸倍率を3〜6倍(面倍率で9〜36倍)の範囲にすればよい。
二軸延伸後は二軸延伸積層フィルムの用途に応じて種々条件でヒートセット(熱処理)を行うことにより、得られる二軸延伸積層フィルムの熱収縮率を任意の範囲、例えば80℃、15分の条件下における縦方向の熱収縮率を1〜5%、横方向の熱収縮率を5〜10%の範囲に、また100℃、15分の条件下における縦方向の熱収縮率を5〜15%、横方向の熱収縮率を10〜20%の範囲にすることができる。
熱収縮フィルムを得るためにはヒートセットを行わないか、あるいは延伸温度近辺またはそれ以下の温度に置くことで、例えば、80℃、15分の条件下における縦方向の熱収縮率を5〜10%、横方向の熱収縮率を10〜15%、また100℃、15分の条件下における縦方向の熱収縮率を20〜70%、横方向の熱収縮率を20〜70%の範囲にすることができる。
【0042】
二軸延伸積層フィルムを製造する方法としては前記共押出し積層シートを延伸せずに、予め前記方法で脂肪族ポリエステル共重合体(A)を用いて二軸延伸フィルムを製造した後、かかる二軸延伸フィルム基材の片面あるいは両面にポリエステル組成物(D)を押出し被覆する方法、あるいは予めポリエステル組成物(D)からなるフィルムを得た後、二軸延伸フィルム基材層(I)と貼り合せる方法をとり得るが、共押出し積層シートを延伸する方法が、二軸延伸フィルム基材層(I)と被覆層(II)との層間密着性に優れるので好ましい。
又、二軸延伸積層フィルムを得た後、熱処理を行わないか、あるいは熱処理の条件を種々選択することにより、熱収縮性を備えた二軸延伸積層フィルムあるいは熱収縮性を抑えた二軸延伸積層フィルムを得ることができる。
【0043】
オーバーラップ包装用フィルム
本発明のオーバーラップ包装用フィルムは、上記基材層(I)の両側に上記被覆層(II)を有する二軸延伸積層フィルムからなる。
本発明のオーバーラップ包装用フィルムは、二軸延伸フィルム基材層(I)として、脂肪族ポリエステル共重合体(A)を用いてなるので、得られるオーバーラップ包装用フィルムは柔軟性、透明性に優れ、且つ両表面に、ポリエステル組成物(D)から得られる被覆層(II)を有しているので、オーバーラップ適性に優れている。
【0044】
本発明のオーバーラップ包装用フィルムは、柔軟性、透明性に優れ、熱融着性を備えており、又、運搬に耐え得る耐衝撃性も有しているので、従来ポリオレフィンフィルムからなるオーバーラップ包装用フィルムが使用されているあらゆる用途、例えば、チョコレート、ガム、キャンデー等の菓子類、たばこ、化粧品等の嗜好品、カセットテープ、ビデオテープ、CD、CDR、DVD、ゲームソフト等の記録材料、およびそれらの集積包装材料等の、箱物包装の包装用フィルムとして好適に使用できる。
【0045】
収縮包装用フィルム
本発明の収縮包装用フィルムは、上記基材層(I)の片側又は両側に被覆層(II)を有する二軸延伸積層フィルムからなる。
収縮包装用フィルムは、通常、縦方向の熱収縮率が20〜70%、好ましくは30〜60%の範囲、横方向の熱収縮率が20〜70%、好ましくは30〜60%の範囲にある。
【0046】
本発明の収縮包装用フィルムは、柔軟性、透明性に優れ、且つ(両)表面に、ポリエステル組成物(D)から得られる被覆層(II)を有しているので熱融着性、熱収縮性を備えており、又、運搬に耐え得る耐衝撃性も有しているので、従来ポリオレフィンフィルムからなる熱収縮フィルムが使用されているあらゆる用途、例えば、ラーメン、うどん、そば、焼きそば等の即席カップ麺食品、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の乳酸菌飲料のような飲料デザート類カップ食品の個別あるいは複数個等の熱収縮包装用フィルムに限らず、エアゾール製品、インテリア製品、CD類、磁気テープ製品の一般シュリンク包装、缶・瓶詰飲料、調味料などの集積シュリンクパックや、プラスチック容器、ガラス瓶などの胴張りシュリンクラベル、ワイン、ウイスキー等の瓶のキャップシール等、種々の収縮包装用フィルム等に用い得る。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
実施例及び比較例で使用した原料は次の通りである。
(A)脂肪族ポリエステル共重合体
PCBS−1”:ダイセル化学工業社製、コハク酸−1,4−ブタンジオール−ε−カプロラクトン三元共重合体、カプロラクトン含有量4モル%、MFR(温度190℃、荷重2160g)0.9g/10分、Mw220,000、Tm104℃、オリゴマー含有量6900ppm、生分解性良好。
PCBS−2”:ダイセル化学工業社製、コハク酸−1,4−ブタンジオール−ε−カプロラクトン三元共重合体、カプロラクトン含有量9.8モル%、MFR(温度190℃、荷重2160g):0.9g/10分、Mw:240,000、融点(Tm):93℃、オリゴマー含有量6900ppm、生分解性良好。
(E)芳香族系ポリエステル共重合体
PBA/T:BASF社製、商品名ECOFLEX(登録商標)、アジピン酸−テレフタル酸−1,4−ブタンジオール(テレフタル酸46モル%、アジピン酸54モル%)、MFR(190℃、荷重2160g)3g/10分、Tm112℃、密度1.26g/cm3。
【0049】
本発明における各種測定方法は以下の通りである。
(1)重量平均分子量等の分子量:GPCにより測定し、標準ポリスチレンにて換算して求めた。
(2)<表面観察>
二軸延伸積層フィルムの外観を目視で観察し、ブリードアウト(表面へのオリゴマーの滲み出し)なし:○、ブリードアウト微少:△及びブリードアウトあり:×とした。
(3)ヘーズ(HZ)及び平行光線透過率(PLT):日本電色工業社製ヘーズメーター300Aを用いて、二軸延伸積層フィルムのヘイズ(HZ:%)及び平行光線透過率(PT:%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
(4)引張試験:二軸延伸積層フィルムからMD方向又はTD方向の短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を採取して、チャック間距離100mmで、引張試験を行い、降伏点及び破断点における強度(MPa)、伸度(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。
なお、測定条件は以下の通りである。
使用機器:オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC−1225
クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分で行った。)
測定値は5回の平均値である。
(5)引裂強度:二軸延伸積層フィルムから長さ:63.5mm、幅:50.0mmの試験片を採取して、東洋精機製作所製 引き裂き試験機(軽荷重引き裂き試験機)を用い、引裂強度(mN)を測定した。
(6)衝撃強度:二軸延伸積層フィルムから長さ:100mm、幅:100mmの試験片を採取して、東洋精機製作所製 衝撃試験機(フィルムインパクトテスター)を用い、衝撃強度(J)を測定した。
(7)加熱収縮率:二軸延伸積層フィルムから長さ:120mm、幅:15mmの試験片を採取し、100mm間隔で標線を記入した。次いで、当該フィルムを表1記載の所定の温度に設定したオーブン中に15分間放置した後、取り出し室温に15分以上放置し、標線間の長さ(L:mm)を測定した。〔(100−L)/100〕×100(%)の値を、加熱収縮率(%)とした。
(8)ヒートシール強度:二軸延伸積層フィルムを重ね合わせた後に、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名ルミラー)で挟み、テスター産業株式会社製TP−701−B HEATSEALTESTERを用いて、各温度で、シール面圧1kg/cm2、時間1秒の条件下で熱融着した。尚、加熱は上側のみとした。次いで、熱融着した二軸延伸フィルムをオリエンテック社製テンシロン万能試験機 RTC−1225を用いて幅15mmの熱融着したサンプルを300mm/分の引張り速度で剥離し、その最大強度をヒートシール強度(熱融着強度)とした。
【0050】
[実施例1〜4及び比較例1]
熱融着層(内層)用ポリエステル組成物(D)、外層用ポリエステル組成物(D)及び基材層(中間層)用脂肪族ポリエステル共重合体として、夫々表1に示す比率で原料樹脂を計量し、40mmφの1軸押出機を用いて180℃で溶融混練し、熱融着層用ポリエステル組成物(D)、外層用ポリエステル組成物(D)及び基材層(中間層)用脂肪族ポリエステル共重合体を用意した。
ついで、これらを用いて、三種三層連続二軸延伸フィルム成形機(ブルックナー社製、逐次二軸延伸フィルム成形機)により、表1記載の条件で、縦方向及び横方向に延伸し、表1に示す温度の雰囲気中でテンター内でヒートセットし、三層構成の二軸延伸積層フィルムを得た。フィルムの評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から明らかなように、熱融着層に特定の脂肪族ポリエステル共重合体と芳香族系ポリエステル共重合体との組成物からなる層を有する二軸延伸積層フィルム(実施例1〜4)は、熱融着層が脂肪族ポリエステル共重合体からなる二軸延伸積層フィルム(比較例1)が全く熱融着(ヒートシール)させることができないのに比べ、105〜115℃の範囲で包装用フィルムとしての使用に耐え得る熱融着強度が得られ、且つ脂肪族ポリエステル共重合体からなる二軸延伸フィルム本来の特徴である柔軟性、透明性、引張り強度等を維持していることが分る。
【0053】
【発明の効果】
本発明の二軸延伸積層フィルムは柔軟性、透明性に優れ、熱融着性を有するので、従来のポリオレフィンフィルムからなる包装用フィルムと同様に包装用フィルムとして好適に使用し得る。
それに加え、本発明の二軸延伸積層フィルムは、脂肪族ポリエステル共重合体(A)本来の生分解性も有するので、使用済みの包装材料は、食品等の分解される非包装物が付着していてもコンポストとして、ごみの回収、処理が容易になる。
Claims (14)
- 分子鎖が、下記一般式(1)〜(3)で示される繰返し単位:
−CO−R1−CO− (1)
(式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基を表す。)
−O−R2−O− (2)
(式中、R2は炭素数2〜12の二価脂肪族基を表す。)
下記一般式(3)で示される繰返し単位:
−CO−R3−O− (3)
(式中、R3は炭素数1〜10の二価脂肪族基を表す。)
からなり、
一般式(3)で示される繰返し単位が1〜30モル%
(一般式(1)〜(3)で、繰返し単位(1)と(2)の量は実質的に等しく、(1)、(2)及び(3)の量の合計は100モル%である。)
である脂肪族ポリエステル共重合体(A)からなる二軸延伸フィルムの基材層(I)の少なくとも片面に、
上記脂肪族ポリエステル共重合体(A)70〜20重量%、および
分子鎖が、下記一般式(4)〜(6)で示される繰返し単位:
−CO−R4−CO− (4)
(式中、R4炭素数0〜8の二価脂肪族基を表す。)
−CO−R5−CO− (5)
(式中、R5炭素数8〜12の二価芳香族基を表す。)
−O−R6−O− (6)
(式中、R6は炭素数2〜12の二価脂肪族基を表す。)
からなり、繰返し単位(4)20〜95モル%および繰返し単位(5)80〜5モル%(繰返し単位(4)と(5)の合計は100モル%であり、繰返し単位(4)と(5)の合計と繰返し単位(6)の量は実質的に等しい。)である芳香族系ポリエステル共重合体(E)30〜80重量%(但し、(A)と(E)の合計は100重量%である。)のポリエステル組成物(D)からなる被覆層(II)を有してなることを特徴とする二軸延伸積層フィルム。 - 脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点が、70〜120℃の範囲にある請求項1記載の二軸延伸積層フィルム。
- 脂肪族ポリエステル共重合体(A)が、該脂肪族ポリエステル共重合体(A)の重合中間体である重量平均分子量5,000以上の低分子量脂肪族ポリエステル共重合体(A’)100重量部に対し、0.1〜5重量部のジイソシアネート化合物を反応させて高分子量化されたものである請求項1又は2に記載の二軸延伸積層フィルム。
- 一般式(1)が、コハク酸残基及び/又はアジピン酸残基である請求項1〜3の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルム。
- 一般式(2)が、エチレングリコール残基及び/又は1,4−ブタンジオール残基である請求項1〜4の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルム。
- 一般式(3)が、ε−カプロラクトンの開環した基である請求項1〜5の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルム。
- 一般式(4)が、アジピン酸残基又はコハク酸残基である請求項1〜6の何れか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
- 一般式(5)が、テレフタル酸残基である請求項1〜7の何れか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
- 一般式(6)が、エチレングリコール残基及び/又は1,4−ブタンジオール残基である請求項1〜8の何れか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
- 脂肪族ポリエステル共重合体(A)とポリエステル組成物(D)とを共押出し成形して得られる積層シートを二軸延伸してなる請求項1〜9の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルム。
- 基材層(I)の両面に被覆層(II)を有する請求項1〜10の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルム。
- 請求項1〜11の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルムからなる包装用フィルム。
- 請求項1〜11の何れか1項に記載の二軸延伸積層フィルムからなる収縮包装用フィルム。
- 請求項11に記載の二軸延伸積層フィルムからなるオーバーラップ包装用フィルム。
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