JP2004276385A - 平版印刷版の製版方法、平版印刷方法および平版印刷原版 - Google Patents
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Abstract
【課題】現像処理なしで耐刷性が高い平版印刷版を製版する。
【解決手段】支持体上に、熱分解性結合を含む疎水性ポリマーからなる微粒子と親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版を画像状に加熱して、疎水性ポリマーの結合を熱分解し、これにより加熱領域を疎水性領域および未加熱領域を親水性領域として有する平版印刷版を製版する。
【選択図】 図1
【解決手段】支持体上に、熱分解性結合を含む疎水性ポリマーからなる微粒子と親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版を画像状に加熱して、疎水性ポリマーの結合を熱分解し、これにより加熱領域を疎水性領域および未加熱領域を親水性領域として有する平版印刷版を製版する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、現像処理なしで平版印刷版を製版する方法に関する。また、本発明は、平版印刷原版を印刷機のシリンダーに取り付けた状態で製版し、そのまま印刷できる平版印刷方法にも関する。さらに本発明は、現像処理が不要な平版印刷原版にも関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とから成る。従来の平版印刷版は、親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けたPS版に、リスフイルムを介してマスク露光した後、非画像部を現像液によって溶解除去することにより製版することが普通であった。
近年では、コンピュータが画像をデジタル情報として電子的に処理し、蓄積して、出力する。従って、デジタル画像情報に応じた画像形成処理は、レーザ光のような指向性の高い活性放射線を用いる走査露光により、リスフイルムを介することなく、平版印刷版用原版に対して直接画像形成を行うことが望ましい。このようにデジタル画像情報からリスフイルムを介さずに印刷版を製版する技術は、コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)と呼ばれている。
【0003】
CTPよりも、さらにデジタル化を進めた技術として、コンピュータ・トゥ・シリンダー(CTC)による製版方法が提案されている。すなわち、デジタル画像情報に応じた露光処理を実施するだけで、現像処理のような露光後の処理を追加することなく、印刷機上(そのシリンダー上)で印刷版を製版し、直ちに印刷を行うことが理想的である。
従来の平版印刷原版を用いて、CTCを実現することは、実質的に不可能である。CTCを実現するためには、新たな平版印刷原版を開発する必要がある。
【0004】
支持体上に、疎水性ポリマーからなる微粒子と架橋構造を有する親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
平版印刷原版を画像状に加熱すると、疎水性ポリマーが溶融し、加熱領域が疎水性領域となり、未加熱領域が親水性領域として機能する平版印刷版が製版される。従って、平版印刷原版を印刷機のシリンダーに取り付けた状態で、平版印刷原版を画像加熱するだけで平版印刷版が製版され、そのまま印刷することができる。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−201283号公報
【特許文献2】
特開2002−226597号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開2002−201283号および特開2002−226597号の各公報に開示されている平版印刷原版は、疎水性ポリマーの溶融により画像を形成する。本発明者が研究を進めた結果、溶融した疎水性ポリマーは、親水性ポリマーとの親和性が低いため、加熱領域の強度が弱く、耐刷性に問題があることが判明した。
本発明の目的は、現像処理なしで耐刷性の高い平版印刷版を製版して、印刷することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(1)の平版印刷版の製版方法、下記(2)の平版印刷方法、および下記(3)の平版印刷原版を提供する。
(1)支持体上に、熱分解性結合を含む疎水性ポリマーからなる微粒子と親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版を画像状に加熱して、疎水性ポリマーの結合を熱分解し、これにより加熱領域を疎水性領域および未加熱領域を親水性領域として有する平版印刷版を製版する工程からなる平版印刷版の製版方法。
【0008】
(11)画像形成層がさらに光熱変換剤を含み、レーザー光で走査することにより平版印刷原版を画像状に加熱する(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(12)平版印刷原版を印刷機のシリンダーに取り付けた状態で、平版印刷原版を画像加熱する(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(13)親水性ポリマーが金属錯体と有機親水性ポリマーとを共存させた条件で加水分解および重縮合して得られた架橋構造を有する有機無機複合体である(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(14)疎水性ポリマーが架橋構造を有し、熱分解性結合が架橋構造に含まれている(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(15)疎水性ポリマーが炭化水素主鎖を有する(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(16)熱分解性結合がウレタン結合またはスルホン酸エステル結合である(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(17)親水性ポリマーが架橋構造を有する(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(18)親水性ポリマーの架橋構造が、親水性ポリマーとケイ素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウムの水酸化物またはアルコキシドとの反応により形成されている(17)に記載の平版印刷版の製版方法。
【0009】
(2)支持体上に、熱分解性結合を含む疎水性ポリマーからなる微粒子と親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版を画像状に加熱して、疎水性ポリマーの結合を熱分解し、これにより加熱領域を疎水性領域および未加熱領域を親水性領域として有する平版印刷版を製版する工程、そして、製版された平版印刷版で印刷する工程からなる平版印刷方法。
【0010】
(21)画像形成層がさらに光熱変換剤を含み、レーザー光で走査することにより平版印刷原版を画像状に加熱する(2)に記載の平版印刷方法。
(22)平版印刷原版を印刷機のシリンダーに取り付けた状態で、平版印刷原版を画像加熱する(2)に記載の平版印刷方法。
(23)親水性ポリマーが金属錯体と有機親水性ポリマーとを共存させた条件で加水分解および重縮合して得られた架橋構造を有する有機無機複合体である(2)に記載の平版印刷方法。
(24)疎水性ポリマーが架橋構造を有し、熱分解性結合が架橋構造に含まれている(2)に記載の平版印刷方法。
(25)疎水性ポリマーが炭化水素主鎖を有する(2)に記載の平版印刷方法。
(26)熱分解性結合がウレタン結合またはスルホン酸エステル結合である(2)に記載の平版印刷方法。
(27)親水性ポリマーが架橋構造を有する(1)に記載の平版印刷方法。
(28)親水性ポリマーの架橋構造が、親水性ポリマーとケイ素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウムの水酸化物またはアルコキシドとの反応により形成されている(27)に記載の平版印刷方法。
【0011】
(3)支持体上に、疎水性ポリマーからなる微粒子と架橋構造を有する親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版であって、疎水性ポリマーが熱分解性結合を含むことを特徴とする平版印刷原版。
(31)画像形成層がさらに光熱変換剤を含む(3)に記載の平版印刷原版。
(32)疎水性ポリマーが架橋構造を有し、熱分解性結合が架橋構造に含まれている(3)に記載の平版印刷原版。
(33)疎水性ポリマーが炭化水素主鎖を有する(3)に記載の平版印刷原版。
(34)熱分解性結合がウレタン結合またはスルホン酸エステル結合である(3)に記載の平版印刷原版。
(35)親水性ポリマーの架橋構造が、親水性ポリマーとケイ素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウムの水酸化物またはアルコキシドとの反応により形成されている(3)に記載の平版印刷原版。
【0012】
【発明の効果】
本発明は、微粒子を構成する疎水性ポリマーが熱分解性結合を含むことを特徴とする。本発明では、疎水性ポリマーの溶融に代えて(または加えて)熱分解反応により疎水性領域を形成する。疎水性ポリマーを分解することにより、親水性ポリマーとの親和性が改善され、低いエネルギー量でも平版印刷版を製版できる。
従って、本発明に従うと、高い感度の平版印刷原版を用いて、現像処理なしで平版印刷版を製版することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
[平版印刷原版の基本構成]
図1は、好ましい平版印刷原版の基本構成を示す断面模式図である。
図1に示す平版印刷原版は、親水性支持体(1)上に、画像形成層(2)が設けられている。画像形成層(2)は、疎水性ポリマー微粒子(21)、架橋構造を有する親水性ポリマー(22)および光熱変換剤(23)を含む。疎水性微粒子(21)は、炭化水素主鎖が架橋構造を有し、熱分解性結合が架橋構造に含まれている疎水性ポリマーからなる。
【0014】
[疎水性ポリマー微粒子]
疎水性ポリマー微粒子は、熱分解性結合を含む疎水性ポリマーからなる。
熱分解性結合の熱分解温度は、100乃至300℃であることが好ましく、120乃至250℃であることがさらに好ましい。
疎水性ポリマーは、架橋構造を有していることが好ましい。熱分解性結合は、主鎖よりも架橋構造に含まれていることが好ましい。
【0015】
熱分解性結合の例には、ウレタン結合(−NH−CO−O−または−O−CO−NH−)、スルホン酸エステル結合(−SO2 −O−または−O−SO2 −)、炭酸エステル結合(−O−CO−O−)、ウレア結合(−NH−CO−NH−)およびアセタール結合(−O−C(−R)2 −O−)が含まれる。アセタール結合のRは、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。ウレタン結合およびスルホン酸エステル結合が特に好ましい。
【0016】
疎水性ポリマーの主鎖は、炭化水素(ポリオレフィン)、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエーテルおよびそれらの組み合わせから選ばれることが好ましい。炭化水素主鎖が特に好ましい。
【0017】
疎水性ポリマーの主鎖は、架橋構造(後述)以外にも置換基を有することができる。置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、アミノ、アンモニオ、ホルミル、カルボキシル、カルバモイル、スルホ、スルファモイル、ホスホノ、ホスホノオキシ、シアノ、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−NH−R、−N(−R)2 、−N+ H2 −R、−N+ H(−R)2 、−N+ (−R)3 、−CO−O−R、−O−CO−R、−CO−NH−R、−NH−CO−R、−SO2 −R、−SO2 −NH−R、−NH−SO2 −R、−P(=O)(−O−R)2 および−O−P(=O)(−O−R)2 が含まれる。上記Rは、それぞれ、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。アニオン性基(例、カルボキシル、スルホ、ホスホノ、ホスホノオキシ)は、水素原子が解離していても、塩の状態になっていてもよい。なお、ポリマー中の親水性基(ヒドロキシル、アニオン性基、カチオン性基)の数は、ポリマーの疎水性を損なわない程度に制限される。
主鎖の複数の置換基が結合して、脂肪族環または複素環を形成してもよい。形成される環は、主鎖とスピロ結合の結合の関係になっていてもよい。形成される環は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、上記主鎖の置換基に加えて、オキソ(=O)およびチオ(=S)が含まれる。
【0018】
本明細書において、脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基または置換アルキニル基を意味する。
脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至40であることが好ましく、1乃至30であることがより好ましく、1乃至20であることがさらに好ましく、1乃至15であることがさらにまた好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
脂肪族基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、アミノ、アンモニオ、ホルミル、カルボキシル、カルバモイル、スルホ、スルファモイル、ホスホノ、ホスホノオキシ、シアノ、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−NH−R、−N(−R)2 、−N+ H2 −R、−N+ H(−R)2 、−N+ (−R)3 、−CO−O−R、−O−CO−R、−CO−NH−R、−NH−CO−R、−SO2 −R、−SO2 −NH−R、−NH−SO2 −R、−P(=O)(−O−R)2 および−O−P(=O)(−O−R)2 が含まれる。上記Rは、それぞれ、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。アニオン性基(例、カルボキシル、スルホ、ホスホノ、ホスホノオキシ)は、水素原子が解離していても、塩の状態になっていてもよい。
【0019】
本明細書において、芳香族基は、アリール基または置換アリール基を意味する。
アリール基は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルであることがさらに好ましい。
芳香族基の置換基の例には、脂肪族基の置換基の例に加えて、脂肪族基が含まれる。
本明細書において、複素環基は、無置換複素環基または置換複素環基を意味する。
複素環は、3員環乃至7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。複素環の複素原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子であることが好ましい。複素環に、脂肪族環、芳香族環または複素環が縮合していてもよい。
複素環基の置換基の例には、芳香族基の置換基の例に加えて、オキソ(=O)およびチオ(=S)が含まれる。
【0020】
架橋構造は、前述したように熱分解結合を含むことが好ましい。疎水性ポリマーは、熱分解結合を含む架橋構造に加えて、熱分解結合を含まない架橋構造を有していてもよい。
疎水性ポリマーは、下記(I)または(II)で表される繰り返し単位を、熱分解結合を含む架橋構造として有することが好ましい。
【0021】
【化1】
【0022】
式(I)および(II)において、R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1乃至10のアルキル基である。R1 およびR2 は、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数が1乃至3のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子またはメチルであることが最も好ましい。
【0023】
式(I)および(II)において、L1 、L2 およびL3 は、それぞれ独立に、単結合または二価の連結基である。単結合よりも二価の連結基の方が好ましい。二価の連結基は、−CO−、−O−、−S−、−NH−、−N=CR−(Rは、水素原子、脂肪族基または芳香族基)、−SO2 −、アルキレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせから選ばれることが好ましい。
上記アルキレン基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましく、1乃至8であることがさらに好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。アルキレン基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。
上記アリーレン基は、フェニレンまたはナフチレンであることが好ましく、フェニレンであることがさらに好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。アリーレン基の置換基は、前述した置換アリール基の置換基と同様である。
以下に、二価の連結基の例を示す。Rは水素原子、脂肪族基または芳香族基であり、ALはアルキレン基であり、ARはアリーレン基である。
【0024】
L−1:−CO−O−AL−
L−2:−AR−
L−3:−CO−O−CR=N−
L−4:−CO−O−AL−O−CO−AL−CR=N−
L−5:−CO−NH−AL−
L−6:−CO−O−AL−O−AL−
L−11:−N=CR−CR=N−
L−12:−AL−CR=N−
L−13:−N=CR−AL−CR=N−
L−14:−AL−AR−
L−15:−AR−SO2 −AR−
L−16:−AR−AL−AR−
L−17:−AR−O−AR−
L−18:−AR−S−AR−
L−19:−AR−AR−
L−20:−AL−
【0025】
式(I)および(II)のL1 およびL2 は、L−1〜L−6から選ばれる(左側が主鎖に結合し、右側が熱分解性結合に結合する)ことが好ましい。
式(II)のL3 は、L−11〜L−20から選ばれることが好ましい。
【0026】
式(I)および(II)において、X1 およびX2 は、それぞれ独立に、熱分解性結合である。
熱分解性結合の例には、ウレタン結合(−NH−CO−O−または−O−CO−NH−)、スルホン酸エステル結合(−SO2 −O−または−O−SO2 −)、炭酸エステル結合(−O−CO−O−)、ウレア結合(−NH−CO−NH−)およびアセタール結合(−O−C(−R)2 −O−)が含まれる。ウレタン結合が特に好ましい。アセタール結合のRは、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。
以下に、熱分解性結合を含む架橋構造を有する繰り返し単位の例を示す。以下の例では、主たる熱分解反応も表示する。
【0027】
【化2】
【0028】
【化3】
【0029】
【化4】
【0030】
【化5】
【0031】
【化6】
【0032】
【化7】
【0033】
【化8】
【0034】
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
【化11】
【0037】
【化12】
【0038】
【化13】
【0039】
【化14】
【0040】
【化15】
【0041】
【化16】
【0042】
【化17】
【0043】
【化18】
【0044】
【化19】
【0045】
【化20】
【0046】
【化21】
【0047】
疎水性ポリマーは、熱分解性結合を含む架橋構造を有する繰り返し単位に加えて、熱分解性結合を含まない繰り返し単位を有することが好ましい。
以下に、熱分解性結合を含まない繰り返し単位の例を示す。
【0048】
【化22】
【0049】
【化23】
【0050】
【化24】
【0051】
【化25】
【0052】
【化26】
【0053】
【化27】
【0054】
【化28】
【0055】
【化29】
【0056】
【化30】
【0057】
【化31】
【0058】
【化32】
【0059】
【化33】
【0060】
【化34】
【0061】
【化35】
【0062】
【化36】
【0063】
【化37】
【0064】
【化38】
【0065】
【化39】
【0066】
【化40】
【0067】
【化41】
【0068】
【化42】
【0069】
【化43】
【0070】
【化44】
【0071】
【化45】
【0072】
【化46】
【0073】
【化47】
【0074】
【化48】
【0075】
【化49】
【0076】
【化50】
【0077】
【化51】
【0078】
【化52】
【0079】
【化53】
【0080】
【化54】
【0081】
【化55】
【0082】
【化56】
【0083】
【化57】
【0084】
【化58】
【0085】
【化59】
【0086】
【化60】
【0087】
【化61】
【0088】
【化62】
【0089】
【化63】
【0090】
【化64】
【0091】
【化65】
【0092】
【化66】
【0093】
【化67】
【0094】
【化68】
【0095】
【化69】
【0096】
【化70】
【0097】
【化71】
【0098】
【化72】
【0099】
【化73】
【0100】
【化74】
【0101】
【化75】
【0102】
【化76】
【0103】
【化77】
【0104】
【化78】
【0105】
【化79】
【0106】
【化80】
【0107】
【化81】
【0108】
【化82】
【0109】
【化83】
【0110】
【化84】
【0111】
【化85】
【0112】
【化86】
【0113】
【化87】
【0114】
【化88】
【0115】
【化89】
【0116】
【化90】
【0117】
熱分解性結合を含む架橋構造を有する繰り返し単位と熱分解性結合を含まない繰り返し単位とを組み合わせる場合、熱分解性結合を含む架橋構造を有する繰り返し単位/熱分解性結合を含まない繰り返し単位の割合は、モノマーのモル比で、0.1/99.9乃至99.9/0.1であることが好ましく、1/99乃至70/30であることがさらに好ましい。
【0118】
以下に、熱分解性結合を含む架橋構造を有する繰り返し単位と、熱分解性結合を含まない繰り返し単位とからなる疎水性ポリマーの例を示す。かっこ内の番号は、熱分解性結合を含む架橋構造を有する繰り返し単位と、熱分解性結合を含まない繰り返し単位との例示番号に相当する。繰り返し単位の割合は、モノマーのモル比(%)である。
【0119】
P−1: −(9)19− −(102)81−
P−2: −(6)17− −(102)83−
P−3: −(9)6 − −(301)94−
P−4: −(6)6 − −(301)94−
P−5: −(1)28− −(102)72−
P−6: −(1)28− −(301)72−
P−7: −(9)20− −(110)80−
P−8: −(6)20− −(110)80−
P−9: −(1)25− −(110)75−
P−10:−(10)18− −(102)82−
【0120】
P−11:−(10)12− −(301)88−
P−12:−(10)15− −(110)85−
P−13:−(11)10− −(102)90−
P−14:−(11)8 − −(301)92−
P−15:−(11)8 − −(110)92−
P−16: −(3)12− −(102)88−
P−17: −(3)7 − −(301)93−
P−18: −(3)10− −(110)90−
P−19: −(9)18− −(101)82−
P−20: −(6)17− −(102)83−
【0121】
P−21: −(9)10− −(301)70− −(324)20−
P−22:−(10)15− −(301)70− −(324)15−
P−23:−(13)15− −(301)75− −(324)10−
P−24:−(14)10− −(301)70− −(324)20−
P−25:−(15)15− −(301)70− −(324)15−
P−26:−(16)10− −(301)70− −(324)20−
P−27:−(13)10− −(301)65− −(323)25−
P−28:−(16)10− −(301)70− −(323)20−
P−29: −(9)19− −(102)71− −(164)10−
P−30: −(6)18− −(104)72− −(164)10−
P−31:−(16)19− −(301)65− −(324)16−
【0122】
繰り返し単位(熱分解性結合を含む繰り返し単位、熱分解性結合を含まない繰り返し単位、架橋構造を有する繰り返し単位、架橋構造を有さない繰り返し単位のいずれも)が、架橋剤が作用できる官能基を含むことができる。架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位については、親水性ポリマーについての説明で後述する。架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位/架橋剤が作用できる官能基を含まない繰り返し単位の割合は、モノマーのモル比で、1/99乃至99/1であることが好ましく、30/70乃至90/10であることがさらに好ましい。また、ポリマーの末端に、架橋剤が作用できる官能基を含む末端基を有していてもよい。末端基についても、親水性ポリマーについて後述する。
架橋剤が作用できる官能基は、微粒子の形状が維持されている状態(平版印刷原版の加熱前)では表面部分でのみ架橋剤と相互作用する。表面部分での架橋剤との相互作用は、無視できる程度である。加熱によりポリマーが分解し、微粒子の形状が崩壊すると、微粒子の内部の官能基も架橋剤と相互作用し、より強固な(耐刷性の高い)疎水性領域を形成できる。
【0123】
疎水性ポリマーは、前述した繰り返し単位に対応するモノマー(一般に、エチレン性不飽和モノマー)の重合反応(ラジカル共重合反応)によって合成できる。架橋構造は、主鎖ポリマーの合成後に導入してもよい。
重合は、乳化重合反応であることが好ましい。乳化重合反応であると、疎水性ポリマーの合成と同時に微粒子を形成することができる。乳化重合反応は、ラテックスの製造に一般に用いられている反応条件を採用すればよい。
均質な微粒子を形成するため、乳化重合反応において界面活性剤を使用することが好ましい。カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用できる。界面活性剤の使用量は、モノマーの総量の0.01乃至10質量%であることが好ましい。
重合反応は、重合開始剤(連鎖移動剤)を用いることが好ましい。重合開始剤の使用量は、モノマーの総モル量の0.01乃至10モル%であることが好ましい。
【0124】
形成される疎水性ポリマー微粒子は、5乃至500nmの粒子サイズを有することが好ましく、10乃至300nmの粒子サイズを有することがさらに好ましい。粒子サイズ分布は、なるべく均一であることが好ましい。
二種類以上の疎水性ポリマー微粒子を混合して用いてもよい。
疎水性ポリマー微粒子は、画像形成層に1乃至90質量%含まれていることが好ましく、5乃至80質量%含まれていることがさらに好ましく、10乃至60質量%含まれていることが最も好ましい。
【0125】
[親水性ポリマー]
画像形成層は、親水性ポリマーを含む。親水性ポリマーとしては、様々な天然または半合成ポリマーあるいは合成ポリマーが使用できる。
親水性ポリマーは、画像形成層の耐刷性を確保するため、架橋構造を有していることが好ましい。架橋構造は、後述する架橋剤の使用により親水性ポリマーに導入することが好ましい。
親水性ポリマーは、架橋剤が作用できる官能基を有することが好ましい。官能基の種類は、架橋剤の種類に応じて決定する。例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤が架橋剤である場合は、親水性ポリマーはエチレン性不飽和結合を架橋剤が作用できる官能基として有することが好ましい。また、感熱性酸発生剤が架橋剤である場合は、親水性ポリマーは、ビニルオキシ基またはエポキシ基を架橋剤が作用できる官能基として有することが好ましい。
ただし、後述するように、ケイ素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウムの水酸化物またはアルコキシドを架橋剤として用いることが好ましい。その場合、親水性ポリマーは、ケイ素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウムの水酸化物またはアルコキシドから誘導される官能基を架橋剤が作用できる官能基として有することが好ましい。
【0126】
架橋剤が作用できる官能基は、ポリマーの末端基または側鎖に導入できる。
架橋剤が作用できる官能基を含む末端基は、下記式(III)で表されることが特に好ましい。
【0127】
(III) (R3 −)m (R4 O)3−m Si−Cn H2n−S−
【0128】
式中、R3 およびR4 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数が1乃至8の脂肪族基または炭素原子数が6乃至8の芳香族基であって、複数のR3 またはR4 は、異なっていてもよい。mは、0、1または2である。nは、1乃至8の整数である。
以下に、架橋剤が作用できる官能基を含む末端基の例を示す。
【0129】
【化91】
【0130】
【化92】
【0131】
親水性ポリマーが架橋剤が作用できる官能基を含む末端基を有する場合、親水性ポリマーを構成する繰り返し単位は、架橋剤が作用できる官能基を含む必要はない。
親水性ポリマーが、架橋剤が作用できる官能基を末端基に有する場合、親水性ポリマーの繰り返し単位は、(141)〜(154)、(201)〜(206)、(311)〜(315)、(318)〜(321)、(335)〜(337)から選ばれることが特に好ましい。なお、親水性ポリマーが架橋剤が作用できる官能基を含む末端基を有する場合でも、繰り返し単位が、架橋剤が作用できる官能基を含んでもよい。架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位については後述する。
以下に、架橋剤が作用できる官能基を含む末端基と、架橋剤が作用できる官能基を含まない繰り返し単位とからなる親水性ポリマーの例を示す。かっこ内の番号は、架橋剤が作用できる官能基を含む末端基と、熱分解性結合を含まない繰り返し単位との例示番号に相当する。
【0132】
I−1: 401−(201)−
I−2: 401−(202)−
I−3: 402−(203)−
I−4: 401−(204)−
I−5: 401−(205)−
I−7: 401−(335)−
I−8: 401−(141)−
I−9: 401−(209)−
I−10: 403−(201)−
I−11: 404−(205)−
I−12: 404−(336)−
【0133】
架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位は、下記式(IV)で表されることが特に好ましい。
【0134】
【化93】
【0135】
式中、R5 は、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。R5 は、水素原子またはメチルであることが好ましい。R6 およびR7 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数が1乃至8の脂肪族基または炭素原子数が6乃至8の芳香族基であって、複数のR6 またはR7 は、異なっていてもよい。mは、0、1または2である。nは、1乃至8の整数である。L4 は、二価の連結基の定義および例は、式(I)および(II)のL1 およびL2 と同様である。L4 は、前述したL−1〜L−6から選ばれる(左側が主鎖に結合し、右側がSiに結合する)ことが好ましい。
以下に、架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位の例を示す。
【0136】
【化94】
【0137】
【化95】
【0138】
親水性ポリマーは、架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位に加えて、架橋剤が作用できる官能基を含まない繰り返し単位を含むことが好ましい。親水性ポリマーの繰り返し単位は、(141)〜(154)、(201)〜(206)、(311)〜(315)、(318)〜(321)、(335)〜(337)から選ばれることが特に好ましい。
架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位/架橋剤が作用できる官能基を含まない繰り返し単位の割合は、モノマーのモル比で、1/99乃至99/1であることが好ましく、30/70乃至90/10であることがさらに好ましい。以下に、架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位と、架橋剤が作用できる官能基を含まない繰り返し単位とからなる親水性ポリマーの例を示す。かっこ内の番号は、架橋剤が作用できる官能基を含む末端基と、熱分解性結合を含まない繰り返し単位との例示番号に相当する。
【0139】
II−1:−(337)90− −(502)10−
II−2:−(205)90− −(502)10−
II−3:−(201)90− −(502)10−
II−4:−(204)90− −(502)10−
II−5:−(334)90− −(502)10−
II−6:−(335)90− −(502)10−
II−7:−(207)90− −(502)10−
II−8:−(201)95− −(502)5 −
II−9:−(201)95− −(504)5 −
II−10:−(209)98− −(502)5 −
【0140】
二種類以上の親水性ポリマーを併用してもよい。
画像形成層中に親水性ポリマーは、2乃至40質量%含まれることが好ましく、3乃至30質量%含まれることがさらに好ましい。
【0141】
[架橋剤]
親水性ポリマーは、架橋していることが好ましい。ただし、平版印刷原版に画像形成層を設ける前に(例えば、画像形成層の塗布液の段階で)、ポリマーが架橋(硬化)していると、架橋ポリマーを均一に含む画像形成層を設けることは非常に難しい(実質的に不可能である)。従って、画像形成層を設けてから(例えば、画像形成層の塗布液の塗布後に)、ポリマーを架橋させることが好ましい。親水性ポリマーと架橋剤(光開始剤または熱開始剤)とを画像形成層の塗布液に添加し、塗布後に、光照射または加熱により架橋剤を機能させてポリマーを架橋させることができる。ただし、外部のエネルギー(光照射または加熱)を加えることなく、塗布だけでポリマーを架橋させる方が好ましい。そのためには、画像形成層の塗布後に外部のエネルギーを必要とすることなく機能する架橋剤を用いて、ポリマーを架橋させることが特に好ましい。
【0142】
外部のエネルギーを必要とすることなく塗布後に機能できる架橋剤としては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)またはジルコニウム(Zr)の水酸化物またはアルコキシド化合物が代表的である。アルコキシド化合物は、カップリング剤(シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコアルミニウムカップリング剤)としても知られている。
カップリング剤は、異なる材料の界面の結合または親和性を強化し、複合材料の強度、耐水性、耐熱性等を改良するために用いられる化合物である。結合の強化は、カップリング剤と各材料との化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力)による。
【0143】
カップリング剤は、材料(特にプラスチック材料)関係の技術分野で良く知られており、最近では、カップリング剤本来の有機−無機界面の接着という観点からさらに応用範囲を広げて樹脂改良(強度、接着性、耐候性等の改良)や表面改質(分散性、帯電防止等)のような目的で実際に使用されている。具体的な化合物としては、豊富な種類がある。一般にカップリング剤は、中心原子として金属(例、Si、Al、Ti)を有し、さらにアルコキシ基、アセトキシ基、ケトオキシム基、イソプレペノキシ基のような加水分解基を有する有機金属化合物である。カップリング剤は、一般に常温で液状の低分子量化合物である。カップリング剤の詳細については、青木恂二郎他、カップリング剤最適利用技術(科学技術総合研究所(株))や山下晋三他、架橋剤ハンドブック(大成社)に記載がある。
架橋剤については、作花済夫「ゾル−ゲル法の化学」(株)アグネ承風社刊(1988年)、平島碩「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター刊(1992年)にも記載がある。
架橋剤は、下記式(V)で表される化合物であることが好ましい。
【0144】
(V) (R9 O−)p−q M(−R10)q
Mは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)またはジルコニウム(Zr)であり;Mがアルミニウムの場合、pは3または4であり、Mがケイ素、チタンまたはジルコニウムの場合、pは4であり;qは、0乃至2の整数であり;R9 およびR10は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基である。脂肪族基および芳香族基の定義は、前述した通りである。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至4であることが好ましい。
化合物の分子量は、1000以下であることが好ましい。
【0145】
ケイ素のアルコキシド化合物の例には、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシランおよびジフェニルジエトキシシランが含まれる。
アルミニウムのアルコキシド化合物の例には、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネートおよびテトラエトキシアルミネートが含まれる。
【0146】
チタンのアルコキシド化合物の例には、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネートおよびフェニルトリエトキシチタネートが含まれる。
ジルコニウムのアルコキシド化合物の例には、トリメトキシジルコネート、テトラメトキシジルコネート、トリエトキシジルコネート、テトラエトキシジルコネート、テトラプロポキシジルコネート、クロロトリメトキシジルコネート、クロロトリエトキシジルコネート、エチルトリメトキシジルコネート、メチルトリエトキシジルコネート、エチルトリエトキシジルコネート、ジエチルジエトキシジルコネート、フェニルトリメトキシジルコネートおよびフェニルトリエトキシジルコネートが含まれる。
【0147】
架橋剤の使用量は、ポリマーに対して0.5乃至60質量%の範囲であることが好ましく、0.1乃至30質量%の範囲であることがさらに好ましい。
架橋剤の加水分解および重縮合を促進するため、酸性触媒または塩基性触媒を用いることが好ましい。
触媒は、酸または塩基そのままか、溶液の状態で使用することができる。溶液の溶媒は、水またはアルコールが好ましい。溶液の濃度は、反応の種類に応じて決定する。溶液濃度を高めると、加水分解および重縮合の反応速度を速くすることができる。ただし、塩基性触媒の溶液濃度が高いと、ゾル溶液中で沈澱が生じやすい。そのため、塩基性触媒の濃度は、水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
触媒溶液の濃度を高くする場合、焼結後の触媒結晶粒中にほとんど残留しない元素で触媒を構成することが望ましい。酸触媒の例には、ハロゲン化水素(例、塩酸)、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、カルボン酸(例、蟻酸、酢酸)およびスルホン酸(例、ベンゼンスルホン酸)が含まれる。塩基性触媒の例には、水酸化アンモニウム(アンモニア水)およびアミン(例、エチルアミン、アニリン)が含まれる。
【0148】
[光熱変換剤]
画像形成層または任意に設けられる層は、光熱変換剤を含むことが好ましい。画像形成層が、光熱変換剤を含むことがより好ましい。
光熱変換剤は、光を吸収し、光エネルギーを熱エネルギーに変換して、発熱する機能を有する物質である。
光熱変換剤が吸収する光の波長(最大吸収波長)は、700nm以上(赤外光)であることが特に好ましい。赤外光を吸収できる顔料、染料または金属微粒子を、光熱変換剤として好ましく用いることができる。
【0149】
赤外吸収顔料については、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載がある。
特に好ましい赤外吸収顔料は、カーボンブラックである。
赤外吸収顔料を疎水性ポリマー中または疎水性ポリマーの微粒子の内部に添加する場合は、顔料に疎水化(親油化)処理を行うことができる。疎水化処理としては、親油性樹脂を顔料表面にコートする方法がある。
赤外吸収顔料を親水性ポリマー中に分散させる場合は、顔料に親水化処理を行うことができる。親水化処理としては、親水性樹脂を顔料表面にコートする方法、界面活性剤を顔料表面に付着させる方法、あるいは、反応性物質(例、シリカゾル、アルミナゾル、シランカップリング剤、エポキシ化合物、イソシアナート化合物)を顔料表面に結合させる方法を採用できる。
顔料の粒径は、0.01乃至1μmであることが好ましく、0.01乃至0.5μmであることがさらに好ましい。
顔料を親水性ポリマー中に分散させる場合、インク製造やトナー製造に用いられる公知の分散技術が適用できる。
【0150】
赤外吸収染料については、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシーに記載がある。
好ましい赤外吸収染料は、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料(特開昭58−112793号、同58−224793号、同59−48187号、同59−73996号、同60−52940号、同60−63744号の各公報記載)、アントラキノン染料、フタロシアニン染料(特開平11−235883号公報記載)、スクアリリウム染料(特開昭58−112792号公報記載)、ピリリウム染料(米国特許3881924号同4283475号の各明細書、特開昭57−142645号、同58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号、特公平5−13514号、同5−19702号の各公報記載)、カルボニウム染料、キノンイミン染料およびメチン染料(特開昭58−173696号、同58−181690号、同58−194595号の各公報記載)である。
【0151】
赤外吸収染料については、米国特許4756993号、同5156938号の各明細書および特開平10−268512号公報にも記載がある。
市販の赤外吸収染料(例えば、エポライトIII−178、エポライトIII−130、エポライトIII−125、エポリン社製)を用いてもよい。
メチン染料がさらに好ましく、シアニン染料(英国特許434875号、米国特許4973572号の各明細書、特開昭58−125246号、同59−84356号、同59−216146号、同60−78787号の各公報記載)が最も好ましい。シアニン染料は、下記式で定義される。
Bo−Lo=Bs
上記式において、Bsは、塩基性核であり;Boは、塩基性核のオニウム体であり;そして、Loは、奇数個のメチンからなるメチン鎖である。
赤外吸収染料の場合、Loは、7個のメチンからなるメチン鎖であることが好ましい。
赤外吸収染料を画像形成層の親水性ポリマー中に添加する場合は、親水性の染料を用いることが好ましい。また、赤外吸収染料を疎水性ポリマー微粒子内に添加する場合は、比較的疎水性の染料を用いることが好ましい。
【0152】
金属は、一般に自己発熱性を有している。従って、赤外、可視または紫外領域に吸収をもつ金属、特に赤外領域に吸収をもつ金属は、光熱変換機能を有している。
金属微粒子を構成する金属は、光照射によって熱融着することが好ましい。具体的には、融点が1000℃以下であることが好ましい。
金属微粒子を構成する金属としては、Si、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、In、Sn、W、Te、Pb、Ge、Re、Sbおよびそれらの合金が好ましく、Re、Sb、Te、Ag、Au、Cu、Ge、PbおよびSnがより好ましく、Ag、Au、Cu、Sb、GeおよびPbがさらに好ましく、Ag、AuおよびCuが最も好ましい。
【0153】
合金の場合、低融点金属(例、Re、Sb、Te、Au、Ag、Cu、Ge、Pb、Sn)と、自己発熱性が高い金属(例、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、W、Ge)とを組み合わせることもできる。また、光吸収が大きい金属(例、Ag、Pt、Pd)の微粒子と他の金属の微粒子とを組み合わせて用いることもできる。
金属微粒子は、表面を親水性化処理することによって、親水性ポリマー中に分散することが好ましい。表面親水性化処理としては、親水性物質(例、界面活性剤)による表面処理、親水性物質との表面化学反応、あるいは親水性ポリマー被膜の形成のような手段を採用できる。保護コロイド性の親水性高分子皮膜を設けるなどの方法を用いることができる。親水性物質との表面化学反応が好ましく、表面シリケート処理が最も好ましい。鉄微粒子の表面シリケート処理では、70℃のケイ酸ナトリウム(3質量%)水溶液に鉄微粒子を30秒浸漬する方法によって表面を充分に親水性化することができる。他の金属微粒子も同様の方法で表面シリケート処理を行うことができる。
金属微粒子に代えて、金属酸化物微粒子または金属硫化物微粒子を用いることもできる。
微粒子の粒径は、10μm以下であることが好ましく、0.003乃至5μmであることがさらに好ましく、0.01乃至3μmであることが最も好ましい。
【0154】
[画像形成層の他の任意成分]
画像形成層に無機微粒子を添加することができる。微粒子を構成する無機物質は、酸化物(例、シリカ、アルミナ、二酸化チタン)または塩(例、炭酸マグネシウム)であることが好ましい。無機物質の混合物から微粒子を形成してもよい。微粒子は、画像形成層の被膜強化や、粗面化による界面接着性の硬化を目的として用いることができる。
無機微粒子の平均粒径は、5nm乃至10μmであることが好ましく、10nm乃至1μmであることがさらに好ましい。微粒子の平均粒径を調整することで、微粒子を安定に層内に分散でき、画像形成層の膜強度を保持し、印刷汚れが生じにくい親水性が優れた非画像部を形成できる。
【0155】
ケイ素酸化物微粒子が、親水性および膜強度の観点で好ましい。ケイ素酸化物微粒子には、親水性ポリマーにより表面修飾が容易であるとの利点もある。市販のケイ素酸化物微粒子(スノーテックスZL、日産化学工業(株)製;サイリシア350、富士シリシア化学(株)製;AEROSIL130、日本アエロジル(株)製;ミズカシルP−527U、水澤化学工業(株)製)を用いてもよい。無機微粒子の画像形成層へ添加量は、画像形成層の全固形分の1乃至70質量%であることが好ましく、5乃至50質量%であることがさらに好ましい。
無機微粒子に代えて、有機微粒子(例えば、アルギン酸カルシウム微粒子)を用いてもよい。
【0156】
画像形成層には、画像形成後の画像部と非画像部との区別を目的として、着色剤を添加することができる。着色剤としては、可視領域に大きな吸収を有する染料または顔料を用いる。着色剤の例には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)およびメチレンブルー(CI52015)が含まれる。着色剤として用いられる染料については、特開昭62−293247号公報に記載がある。酸化チタンのような無機顔料も着色剤として用いることができる。
着色剤の添加量は、画像形成層の0.01乃至10質量%であることが好ましい。
【0157】
画像形成層には、ノニオン界面活性剤(特開昭62−251740号、特開平3−208514号の各公報記載)または両性界面活性剤(特開昭59−121044号、特開平4−13149号の各公報記載)を添加することができる。
ノニオン界面活性剤の例には、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリドおよびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが含まれる。両性界面活性剤の例には、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインおよびN−テトラデシル−N,N−ベタイン型界面活性剤(アモーゲンK、第一工業(株)製)が含まれる。
ノニオン界面活性剤および両性界面活性剤は、画像形成層に0.05乃至15質量%含まれることが好ましく、0.1乃至5質量%含まれることがさらに好ましい。
【0158】
画像形成層に柔軟性を付与するため、可塑剤を添加してもよい。可塑剤の例には、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチルおよびオレイン酸テトラヒドロフルフリルが含まれる。
【0159】
[画像形成層の形成]
画像形成層は、各成分を適当な液状媒体中に溶解、分散または乳化して塗布液を調製し、支持体上に塗布し、および乾燥して液状媒体を除去することにより形成することができる。
塗布液に使用する媒体の例には、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエンおよび水が含まれる。二種類以上の液体を混合して用いてもよい。
【0160】
塗布液の全固形分濃度は、1乃至50質量%であることが好ましい。
塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤を添加することができる。フッ素系界面活性剤(特開昭62−170950号公報記載)が特に好ましい。界面活性剤の添加量は、塗布液の固形分量に対して0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.05乃至0.5質量%であることがさらに好ましい。
画像形成層の乾燥塗布量は、0.5乃至5.0g/m2 であることが好ましい。
【0161】
[支持体]
支持体としては、金属板、プラスチックフイルムまたは紙を用いることができる。具体的には、表面処理されたアルミニウム板、親水処理されたプラスチックフイルムまたは耐水処理された紙が好ましい。さらに具体的には、陽極酸化処理されたアルミニウム板、親水性層を設けたポリエチレンテレフタレートフイルムまたはポリエチレンでラミネートされた紙が好ましい。
【0162】
陽極酸化処理されたアルミニウム板が特に好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板またはアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板である。アルミニウム合金に含まれる異元素の例には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケルおよびチタンが含まれる。異元素の割合は、10質量%以下であることが好ましい。市販の印刷版用のアルミニウム板を用いてもよい。
アルミニウム板の厚さは、0.05乃至0.6mmであることが好ましく、0.1乃至0.4mmであることがさらに好ましく、0.15乃至0.3mmであることが最も好ましい。
【0163】
アルミニウム板表面には、粗面化処理を行うことが好ましい。粗面化処理は、機械的方法、電気化学的方法あるいは化学的方法により実施できる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法またはバフ研磨法を採用できる。電気化学的方法としては、塩酸または硝酸などの酸を含む電解液中で交流または直流により行う方法を採用できる。混合酸を用いた電解粗面化方法(特開昭54−63902号公報記載)も利用することができる。化学的方法としては、アルミニウム板を鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法(特開昭54−31187号公報記載)が適している。
粗面化処理は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2乃至1.0μmとなるように実施することが好ましい。
粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理を行う。アルカリ処理液としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液が一般に用いられる。アルカリエッチング処理の後は、さらに中和処理を行うことが好ましい。
【0164】
アルミニウム板の陽極酸化処理は、支持体の耐摩耗性を高めるために行う。
陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質が使用できる。一般には、硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が電解質として用いられる。
陽極酸化の処理条件は一般に、電解質の濃度が1乃至80質量%溶液、液温が5乃至70℃、電流密度が5乃至60A/dm2 、電圧が1乃至100V、そして、電解時間が10秒乃至5分の範囲である。
陽極酸化処理により形成される酸化皮膜量は、1.0乃至5.0g/m2 であることが好ましく、1.5乃至4.0g/m2 であることがさらに好ましい。
支持体を表面処理(例えば、シリケート処理)してから、画像形成層を設けてもよい。
支持体と画像形成層との間に下塗り層を設けてもよい。
【0165】
[水溶性オーバーコート層]
親油性物質による画像形成層表面の汚染防止のため、画像形成層の上に、水溶性オーバーコート層を設けることができる。
水溶性オーバーコート層は、印刷時に容易に除去できる材料から構成する。そのためには、水溶性の有機ポリマーから水溶性オーバーコート層を構成することが好ましい。水溶性の有機ポリマーの例には、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、アラビアガム、セルロースエーテル(例、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース)、デキストリンおよびその誘導体(例、ホワイトデキストリン、酵素分解エーテル化デキストリン、プルラン)が含まれる。
水溶性の有機ポリマーの繰り返し単位を二種類以上有するコポリマーを用いてもよい。コポリマーの例には、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化ポリマー)およびビニルメチルエーテル−無水マレイン酸コポリマーが含まれる。ポリ酢酸ビニルの部分ケン化により、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマーを合成する場合は、ケン化度は65%以上であることが好ましい。
二種類以上の水溶性有機ポリマーを併用してもよい。
オーバーコート層に、染料を添加してもよい。
【0166】
オーバーコート層の塗布液には、ノニオン界面活性剤(例、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル)を添加することができる。
オーバーコート層の塗布量は、0.1乃至2.0g/m2 であることが好ましい。
【0167】
[画像状加熱工程]
平版印刷原版は、画像状に加熱して画像を形成する。直接的には、熱記録ヘッドによって、平版印刷原版を画像状に加熱できる。その場合は、光熱変換剤は不要である。
ただし、熱記録ヘッドは画像の解像度が一般に低いため、光熱変換剤を用いて画像露光による光エネルギーを熱エネルギーに変換することが望ましい。一般に、画像露光に用いる露光装置の方が、熱記録ヘッドよりも高解像度である。
露光方法には、アナログデータである原稿(オリジナル)を介しての露光と、オリジナルのデータ(通常はデジタルデータ)に対応させた走査露光とがある。
オリジナルを介しての露光では、光源としてキセノン放電灯または赤外線ランプが用いられる。キセノン放電灯のような高出力の光源を使用すれば、短時間のフラッシュ露光も可能である。
走査露光は、レーザー、特に赤外線レーザーを用いることが一般的である。赤外線の波長は、700乃至1200nmであることが好ましい。赤外線は、固体高出力赤外線レーザー(例えば、半導体レーザー、YAGレーザー)が好ましい。
【0168】
光熱変換剤を含む画像形成層にレーザーを走査露光すると、光熱変換剤によりレーザーの光エネルギーが熱エネルギーに変換される。そして、平版印刷原版の加熱部分(画像部)において、微粒子に含まれていた疎水性ポリマーが熱分解し、ポリマー微粒子が融合し、露光部に疎水性領域が形成される。
これに対して、平版印刷原版の非加熱部分(非画像部)には変化がない。
【0169】
図2は、レーザーによる平版印刷原版の画像状加熱を示す断面模式図である。
図2に示すように、平版印刷原版の画像形成層(2)にレーザー(Lazer )を走査露光すると、光熱変換剤(23)によりレーザーの光エネルギーが熱エネルギー(Heat)に変換される。
【0170】
図3は、画像状加熱後の平版印刷原版の状態を示す断面模式図である。
図3に示すように、平版印刷原版の加熱部分(画像部)において、疎水性ポリマー微粒子に含まれていたポリマーが熱分解する。その結果、微粒子の硬度が低下し、加熱部分で疎水性ポリマー微粒子が融合し、親水性支持体(1)に付着している疎水性領域(21a)を形成する。
これに対して、平版印刷原版の非加熱部分(非画像部)の疎水性ポリマー微粒子には変化がない。
【0171】
なお、加熱した平版印刷原版を冷却することにより、平版印刷原版の加熱部分(画像部)において、熱分解していた疎水性ポリマーが部分的に再結合してもよい。疎水性ポリマーが再結合すると、疎水性領域の硬度が上昇し、疎水性領域が安定して、取り扱い(例えば、印刷機への装着)が容易になる。
【0172】
[印刷工程]
以上のように本発明に従い画像状に露光した平版印刷原版は、特別な現像処理を実施することなく、印刷を実施できる。
なお、レーザー露光装置を有する印刷機(特許2938398号公報記載)を用いると、平版印刷原版を印刷機シリンダー上に取りつけた後に、印刷機に搭載されたレーザーにより露光し、その後に湿し水又はインクをつけて、直ちに印刷する(露光〜印刷を連続して処理する)ことも可能である。
【0173】
図4は、印刷中の平版印刷版の状態を示す断面模式図である。
図4に示すように、平版印刷原版を印刷機に取り付けて、油性インク(3)と湿し水(4)を印刷機から供給すると、湿し水(4)が非加熱部分(非画像部)に付着し、油性インク(3)が加熱部分(画像部)の疎水性領域(21a)に付着して、印刷することができる。
【0174】
【実施例】
[実施例1]
(支持体の作製)
ポリエチレンテレフタレートフイルムにコロナ放電処理を行い、支持体を作製した。
【0175】
(疎水性ポリマー微粒子の分散物の調製)
コンデンサーと攪拌機とを備えた三口の500ml丸底フラスコに、ドデシル硫酸ナトリウムの30質量%水溶液2.1gと蒸留水330gとを入れ、攪拌しながら内温が60℃になるまで加熱した。60℃に温度を安定させ、窒素気流下、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.18gを蒸留水6gに溶解した水溶液を加えた。次に、下記のモノマー(M−9)7.9gを、メチルメタクリレート30gおよびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート4gに溶解した溶液を、攪拌および加熱しながら約3時間かけて滴下した。
【0176】
【化96】
【0177】
滴下終了後、さらにペルオキソ二硫酸アンモニウム0.18gを蒸留水7gに溶解した水溶液を加え、続けて3時間加熱攪拌を続け、下記の疎水性ポリマー(P−29)からなる微粒子の分散液(固形分濃度:約10質量%)を得た。
【0178】
【化97】
【0179】
(親水性ポリマーの合成)
500mlの三口フラスコにアクリルアミド50g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.4gおよびジメチルアセトアミド220gを入れ、65℃の窒素気流下、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。酢酸エチル2リットル中に投入し、析出した固体をろ取し、水洗して有機親水性樹脂を得た。乾燥後の質量は52.4gであった。GPC(ポリスチレン標準)により、ポリマーの質量平均分子量3000を測定した。さらに、13C−NMR(DMSO−d6 )によりポリマー(I−1)の構造(末端にトリメトキシシリル基が50.0ppm導入)を確認した。
【0180】
【化98】
【0181】
(画像形成層の形成)
以下の成分を均一に混合し、室温で2時間撹拌して加水分解を行い、ゾル状の親水性組成物を得た。
【0182】
────────────────────────────────────
親水性組成物
────────────────────────────────────
親水性ポリマー(I−1) 21g
テトラメトキシシラン(架橋剤) 62g
エタノール 470g
水 470g
1N硝酸水溶液 10g
────────────────────────────────────
【0183】
下記の画像形成層塗布液を調製し、支持体のコロナ放電処理面に、乾燥後の塗布量が3g/m2 となるように塗布し、100℃、3分加熱乾燥して平版印刷原板を作製した。
【0184】
────────────────────────────────────
画像形成層塗布液組成
────────────────────────────────────
親水性組成物 66g
疎水性ポリマー微粒子の分散物 40g
下記の赤外線吸収染料(光熱変換剤) 0.5g
────────────────────────────────────
【0185】
【化99】
【0186】
(画像形成層の親水性評価)
画像形成層表面の接触角(空中水滴)を、測定機(CA−Z、協和界面科学(株)製)を用いて測定した。結果を第1表に示す。接触角の値が小さいほど親水性である。
【0187】
(形成される疎水性領域の評価)
得られた平版印刷版原板を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したクレオ社製トレンドセッター3244VFSにて、版面エネルギー200mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した。露光部の水滴接触角を上記と同様に測定し、その値で疎水性を評価した結果を第1表に示す。。接触角の角度が大きいほど疎水性である。
【0188】
(印刷における評価)
得られた平版印刷版原板を、上記疎水性領域の評価と同様の条件で露光した後、現像処理することなく、印刷機(SOR−M、ハイデルベルグ社製)に装着し、市販の湿し水原液(IF201およびIF202、富士写真フイルム(株)製)の水希釈液(それぞれ、2.5質量%および0.75質量%)からなる湿し水と黒色インク(GEOS−G墨、大日本インキ化学工業(株)製)とを用いて、通常どおり印刷し、良好な印刷物が得られるまでの刷り出し印刷枚数と良好な印刷物が得られた枚数(耐刷枚数)で評価した。結果を第1表に示す。
【0189】
(耐傷性の評価)
得られた平版印刷版原板を、上記疎水性領域の評価と同様の条件で露光した後、露光部と未露光部をそれぞれ荷重をかけたサファイヤ針にて引っ掻いた。その後、印刷評価方法と同様の条件にて印刷を実施し、露光部=画像部においては白抜けが発生したときのサファイヤ針にかけた荷重で、未露光部=非画像部においては汚れが発生したときのサファイヤ針にかけた荷重で評価した。結果を第1表に示す。
【0190】
[実施例2]
(疎水性ポリマー微粒子の調製)
コンデンサーと攪拌機とを備えた三口の500ml丸底フラスコに、ドデシル硫酸ナトリウムの30質量%水溶液2.1gと蒸留水330gとを入れ、攪拌しながら内温が60℃になるまで加熱した。60℃に温度を安定させ、窒素気流下、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.18gを蒸留水6gに溶解した水溶液を加えた。次に、下記のモノマー(M−6)7.2gを、エチルメタクリレート30gおよびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート4gに溶解した溶液を、攪拌および加熱しながら約3時間かけて滴下した。
【0191】
【化100】
【0192】
滴下終了後、さらにペルオキソ二硫酸アンモニウム0.18gを蒸留水7gに溶解した水溶液を加え、続けて3時間加熱攪拌を続け、下記の疎水性ポリマー(P−30)からなる微粒子の分散液(固形分濃度:約10質量%)を得た。
【0193】
【化101】
【0194】
(平版印刷原版の製造および評価)
調製した疎水性ポリマー(P−30)からなる微粒子の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、平版印刷原版を製造した。
製造した平版印刷原版を実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
【0195】
[実施例3]
(疎水性ポリマー微粒子の調製)
コンデンサーと攪拌機とを備えた三口の500ml丸底フラスコに、ドデシル硫酸ナトリウムの30質量%水溶液2.1gと蒸留水330gとを入れ、攪拌しながら内温が60℃になるまで加熱した。60℃に温度を安定させ、窒素気流下、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.18gを蒸留水6gに溶解した水溶液を加えた。次に、下記のモノマー(M−16)8gを、スチレン27.2gおよび4−ビニルピリジン6.8gに溶解した溶液を、攪拌および加熱しながら約3時間かけて滴下した。
【0196】
【化102】
【0197】
滴下終了後、さらにペルオキソ二硫酸アンモニウム0.18gを蒸留水7gに溶解した水溶液を加え、続けて3時間加熱攪拌を続け、冷却後、蒸留水を用いて濃度を調整し、下記の疎水性ポリマー(P−31)からなる微粒子の分散液(固形分濃度:約10質量%)を得た。
【0198】
【化103】
【0199】
(平版印刷原版の製造および評価)
調製した疎水性ポリマー(P−31)からなる微粒子の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、平版印刷原版を製造した。
製造した平版印刷原版を実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
【0200】
[比較例1]
(疎水性ポリマー微粒子の調製)
ポリスチレンからなる微粒子の分散液(固形分濃度:約10質量%)を調製した。
【0201】
(平版印刷原版の製造および評価)
調製したポリスチレンからなる微粒子の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、平版印刷原版を製造した。
製造した平版印刷原版を実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
【0202】
[比較例2]
(疎水性ポリマー微粒子の調製)
スチレン/4−ビニルピリジン共重合体(共重合モル比=75/25)からなる微粒子の分散液(固形分濃度:約10質量%)を調製した。
【0203】
(平版印刷原版の製造および評価)
スチレン/4−ビニルピリジン共重合体からなる微粒子の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、平版印刷原版を製造した。
製造した平版印刷原版を実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
【0204】
[比較例3]
(疎水性ポリマー微粒子の調製)
メチルエチルケトン45.0gに、下記の疎水性ポリマー(P−X)30.0gおよびアニオン界面活性剤(パイオニンA41C、竹本油脂(株)製)0.5を溶解して油相とした。
【0205】
【化104】
【0206】
別に、水259.8gに、下記の親水性ポリマー4.2gを溶解して水相とした。
【0207】
【化105】
【0208】
油相と水相とを混合し、ホモジナイザーにて12000rpmで10分間激しく攪拌し、水相中に油相の液滴を分散した乳化物をえた。次に、ステンレスポットに乳化物を投入し、40℃で3時間攪拌して、溶媒成分を除去し、粒径0.24μmの疎水性ポリマー微粒子の分散液を調製した。
【0209】
(平版印刷原版の製造および評価)
調製した微粒子の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、平版印刷原版を製造した。
製造した平版印刷原版を実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
【0210】
【表1】
第1表
────────────────────────────────────
平版印刷 微粒子 水滴接触角(゜)印刷性評価(枚) 耐傷性(g)
原版 ポリマー 露光前 露光後 刷出 耐刷 画像部 非画像部
────────────────────────────────────
実施例1 P−29 5.8 120 10 10000 >300 >300
実施例2 P−30 6.5 115 10 11000 >300 >300
実施例3 P−31 7.0 120 10 12000 >300 >300
比較例1 pSt 6.5 110 10 5000 10 >300
比較例2 pSt/4−Vp 8.5 125 10 11000 10 >300
比較例3 P−X 7.5 95 10 1000以下 20 200
────────────────────────────────────
(註)
pSt: ポリスチレン
pSt/4−Vp:スチレン/4−ビニルピリジン共重合体
【0211】
[実施例4]
厚さ0.30mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレン洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水懸濁液とを用いその表面を砂目立てした後、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングし、水洗後、更に2質量%硝酸に20秒間浸漬して水洗した。この時、砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2 であった。
次に、7%硫酸を電解液として電流密度15A/dm2 で、陽極酸化皮膜の厚さが2.4g/m2 になるように、このアルミニウム板に直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗乾燥して支持体を得た。
上記のアルミニウム支持体上に、実施例3と同様の画像形成層の塗布液を、乾燥後の塗布量が3g/m2 となるように塗布し、100℃、3分加熱乾燥して平版印刷原版を得た。得られた支持体上の親水性層表面の接触角(空中水滴)を実施例1と同様に測定したところ、6.5°であった。
この平版印刷版原版を、クレオ社製トレンドセッター3244VFSにより前述の条件で露光したところ、露光部の水滴接触角は120℃であり、疎水性領域が形成されたことを確認した。また、露光した印刷版の画像部、非画像部の耐傷性評価結果は両方とも300g以上であった。さらに、得られた平版印刷版の刷り出し枚数は10枚であり、良好な印刷物が1.3万枚得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】好ましい平版印刷原版の基本構成を示す断面模式図である。
【図2】レーザーによる平版印刷原版の画像状加熱を示す断面模式図である。
【図3】画像状加熱後の平版印刷原版の状態を示す断面模式図である。
【図4】印刷中の平版印刷版の状態を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1 支持体
2 画像形成層
21 親水性ポリマー
21a 疎水性領域
22 疎水性ポリマー微粒子
23 光熱変換剤
3 油性インク
4 湿し水
Laser レーザー
Heat 熱エネルギー
【発明の属する技術分野】
本発明は、現像処理なしで平版印刷版を製版する方法に関する。また、本発明は、平版印刷原版を印刷機のシリンダーに取り付けた状態で製版し、そのまま印刷できる平版印刷方法にも関する。さらに本発明は、現像処理が不要な平版印刷原版にも関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とから成る。従来の平版印刷版は、親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けたPS版に、リスフイルムを介してマスク露光した後、非画像部を現像液によって溶解除去することにより製版することが普通であった。
近年では、コンピュータが画像をデジタル情報として電子的に処理し、蓄積して、出力する。従って、デジタル画像情報に応じた画像形成処理は、レーザ光のような指向性の高い活性放射線を用いる走査露光により、リスフイルムを介することなく、平版印刷版用原版に対して直接画像形成を行うことが望ましい。このようにデジタル画像情報からリスフイルムを介さずに印刷版を製版する技術は、コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)と呼ばれている。
【0003】
CTPよりも、さらにデジタル化を進めた技術として、コンピュータ・トゥ・シリンダー(CTC)による製版方法が提案されている。すなわち、デジタル画像情報に応じた露光処理を実施するだけで、現像処理のような露光後の処理を追加することなく、印刷機上(そのシリンダー上)で印刷版を製版し、直ちに印刷を行うことが理想的である。
従来の平版印刷原版を用いて、CTCを実現することは、実質的に不可能である。CTCを実現するためには、新たな平版印刷原版を開発する必要がある。
【0004】
支持体上に、疎水性ポリマーからなる微粒子と架橋構造を有する親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
平版印刷原版を画像状に加熱すると、疎水性ポリマーが溶融し、加熱領域が疎水性領域となり、未加熱領域が親水性領域として機能する平版印刷版が製版される。従って、平版印刷原版を印刷機のシリンダーに取り付けた状態で、平版印刷原版を画像加熱するだけで平版印刷版が製版され、そのまま印刷することができる。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−201283号公報
【特許文献2】
特開2002−226597号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開2002−201283号および特開2002−226597号の各公報に開示されている平版印刷原版は、疎水性ポリマーの溶融により画像を形成する。本発明者が研究を進めた結果、溶融した疎水性ポリマーは、親水性ポリマーとの親和性が低いため、加熱領域の強度が弱く、耐刷性に問題があることが判明した。
本発明の目的は、現像処理なしで耐刷性の高い平版印刷版を製版して、印刷することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(1)の平版印刷版の製版方法、下記(2)の平版印刷方法、および下記(3)の平版印刷原版を提供する。
(1)支持体上に、熱分解性結合を含む疎水性ポリマーからなる微粒子と親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版を画像状に加熱して、疎水性ポリマーの結合を熱分解し、これにより加熱領域を疎水性領域および未加熱領域を親水性領域として有する平版印刷版を製版する工程からなる平版印刷版の製版方法。
【0008】
(11)画像形成層がさらに光熱変換剤を含み、レーザー光で走査することにより平版印刷原版を画像状に加熱する(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(12)平版印刷原版を印刷機のシリンダーに取り付けた状態で、平版印刷原版を画像加熱する(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(13)親水性ポリマーが金属錯体と有機親水性ポリマーとを共存させた条件で加水分解および重縮合して得られた架橋構造を有する有機無機複合体である(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(14)疎水性ポリマーが架橋構造を有し、熱分解性結合が架橋構造に含まれている(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(15)疎水性ポリマーが炭化水素主鎖を有する(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(16)熱分解性結合がウレタン結合またはスルホン酸エステル結合である(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(17)親水性ポリマーが架橋構造を有する(1)に記載の平版印刷版の製版方法。
(18)親水性ポリマーの架橋構造が、親水性ポリマーとケイ素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウムの水酸化物またはアルコキシドとの反応により形成されている(17)に記載の平版印刷版の製版方法。
【0009】
(2)支持体上に、熱分解性結合を含む疎水性ポリマーからなる微粒子と親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版を画像状に加熱して、疎水性ポリマーの結合を熱分解し、これにより加熱領域を疎水性領域および未加熱領域を親水性領域として有する平版印刷版を製版する工程、そして、製版された平版印刷版で印刷する工程からなる平版印刷方法。
【0010】
(21)画像形成層がさらに光熱変換剤を含み、レーザー光で走査することにより平版印刷原版を画像状に加熱する(2)に記載の平版印刷方法。
(22)平版印刷原版を印刷機のシリンダーに取り付けた状態で、平版印刷原版を画像加熱する(2)に記載の平版印刷方法。
(23)親水性ポリマーが金属錯体と有機親水性ポリマーとを共存させた条件で加水分解および重縮合して得られた架橋構造を有する有機無機複合体である(2)に記載の平版印刷方法。
(24)疎水性ポリマーが架橋構造を有し、熱分解性結合が架橋構造に含まれている(2)に記載の平版印刷方法。
(25)疎水性ポリマーが炭化水素主鎖を有する(2)に記載の平版印刷方法。
(26)熱分解性結合がウレタン結合またはスルホン酸エステル結合である(2)に記載の平版印刷方法。
(27)親水性ポリマーが架橋構造を有する(1)に記載の平版印刷方法。
(28)親水性ポリマーの架橋構造が、親水性ポリマーとケイ素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウムの水酸化物またはアルコキシドとの反応により形成されている(27)に記載の平版印刷方法。
【0011】
(3)支持体上に、疎水性ポリマーからなる微粒子と架橋構造を有する親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版であって、疎水性ポリマーが熱分解性結合を含むことを特徴とする平版印刷原版。
(31)画像形成層がさらに光熱変換剤を含む(3)に記載の平版印刷原版。
(32)疎水性ポリマーが架橋構造を有し、熱分解性結合が架橋構造に含まれている(3)に記載の平版印刷原版。
(33)疎水性ポリマーが炭化水素主鎖を有する(3)に記載の平版印刷原版。
(34)熱分解性結合がウレタン結合またはスルホン酸エステル結合である(3)に記載の平版印刷原版。
(35)親水性ポリマーの架橋構造が、親水性ポリマーとケイ素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウムの水酸化物またはアルコキシドとの反応により形成されている(3)に記載の平版印刷原版。
【0012】
【発明の効果】
本発明は、微粒子を構成する疎水性ポリマーが熱分解性結合を含むことを特徴とする。本発明では、疎水性ポリマーの溶融に代えて(または加えて)熱分解反応により疎水性領域を形成する。疎水性ポリマーを分解することにより、親水性ポリマーとの親和性が改善され、低いエネルギー量でも平版印刷版を製版できる。
従って、本発明に従うと、高い感度の平版印刷原版を用いて、現像処理なしで平版印刷版を製版することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
[平版印刷原版の基本構成]
図1は、好ましい平版印刷原版の基本構成を示す断面模式図である。
図1に示す平版印刷原版は、親水性支持体(1)上に、画像形成層(2)が設けられている。画像形成層(2)は、疎水性ポリマー微粒子(21)、架橋構造を有する親水性ポリマー(22)および光熱変換剤(23)を含む。疎水性微粒子(21)は、炭化水素主鎖が架橋構造を有し、熱分解性結合が架橋構造に含まれている疎水性ポリマーからなる。
【0014】
[疎水性ポリマー微粒子]
疎水性ポリマー微粒子は、熱分解性結合を含む疎水性ポリマーからなる。
熱分解性結合の熱分解温度は、100乃至300℃であることが好ましく、120乃至250℃であることがさらに好ましい。
疎水性ポリマーは、架橋構造を有していることが好ましい。熱分解性結合は、主鎖よりも架橋構造に含まれていることが好ましい。
【0015】
熱分解性結合の例には、ウレタン結合(−NH−CO−O−または−O−CO−NH−)、スルホン酸エステル結合(−SO2 −O−または−O−SO2 −)、炭酸エステル結合(−O−CO−O−)、ウレア結合(−NH−CO−NH−)およびアセタール結合(−O−C(−R)2 −O−)が含まれる。アセタール結合のRは、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。ウレタン結合およびスルホン酸エステル結合が特に好ましい。
【0016】
疎水性ポリマーの主鎖は、炭化水素(ポリオレフィン)、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエーテルおよびそれらの組み合わせから選ばれることが好ましい。炭化水素主鎖が特に好ましい。
【0017】
疎水性ポリマーの主鎖は、架橋構造(後述)以外にも置換基を有することができる。置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、アミノ、アンモニオ、ホルミル、カルボキシル、カルバモイル、スルホ、スルファモイル、ホスホノ、ホスホノオキシ、シアノ、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−NH−R、−N(−R)2 、−N+ H2 −R、−N+ H(−R)2 、−N+ (−R)3 、−CO−O−R、−O−CO−R、−CO−NH−R、−NH−CO−R、−SO2 −R、−SO2 −NH−R、−NH−SO2 −R、−P(=O)(−O−R)2 および−O−P(=O)(−O−R)2 が含まれる。上記Rは、それぞれ、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。アニオン性基(例、カルボキシル、スルホ、ホスホノ、ホスホノオキシ)は、水素原子が解離していても、塩の状態になっていてもよい。なお、ポリマー中の親水性基(ヒドロキシル、アニオン性基、カチオン性基)の数は、ポリマーの疎水性を損なわない程度に制限される。
主鎖の複数の置換基が結合して、脂肪族環または複素環を形成してもよい。形成される環は、主鎖とスピロ結合の結合の関係になっていてもよい。形成される環は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、上記主鎖の置換基に加えて、オキソ(=O)およびチオ(=S)が含まれる。
【0018】
本明細書において、脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基または置換アルキニル基を意味する。
脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至40であることが好ましく、1乃至30であることがより好ましく、1乃至20であることがさらに好ましく、1乃至15であることがさらにまた好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
脂肪族基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、アミノ、アンモニオ、ホルミル、カルボキシル、カルバモイル、スルホ、スルファモイル、ホスホノ、ホスホノオキシ、シアノ、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−NH−R、−N(−R)2 、−N+ H2 −R、−N+ H(−R)2 、−N+ (−R)3 、−CO−O−R、−O−CO−R、−CO−NH−R、−NH−CO−R、−SO2 −R、−SO2 −NH−R、−NH−SO2 −R、−P(=O)(−O−R)2 および−O−P(=O)(−O−R)2 が含まれる。上記Rは、それぞれ、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。アニオン性基(例、カルボキシル、スルホ、ホスホノ、ホスホノオキシ)は、水素原子が解離していても、塩の状態になっていてもよい。
【0019】
本明細書において、芳香族基は、アリール基または置換アリール基を意味する。
アリール基は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルであることがさらに好ましい。
芳香族基の置換基の例には、脂肪族基の置換基の例に加えて、脂肪族基が含まれる。
本明細書において、複素環基は、無置換複素環基または置換複素環基を意味する。
複素環は、3員環乃至7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。複素環の複素原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子であることが好ましい。複素環に、脂肪族環、芳香族環または複素環が縮合していてもよい。
複素環基の置換基の例には、芳香族基の置換基の例に加えて、オキソ(=O)およびチオ(=S)が含まれる。
【0020】
架橋構造は、前述したように熱分解結合を含むことが好ましい。疎水性ポリマーは、熱分解結合を含む架橋構造に加えて、熱分解結合を含まない架橋構造を有していてもよい。
疎水性ポリマーは、下記(I)または(II)で表される繰り返し単位を、熱分解結合を含む架橋構造として有することが好ましい。
【0021】
【化1】
【0022】
式(I)および(II)において、R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1乃至10のアルキル基である。R1 およびR2 は、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数が1乃至3のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子またはメチルであることが最も好ましい。
【0023】
式(I)および(II)において、L1 、L2 およびL3 は、それぞれ独立に、単結合または二価の連結基である。単結合よりも二価の連結基の方が好ましい。二価の連結基は、−CO−、−O−、−S−、−NH−、−N=CR−(Rは、水素原子、脂肪族基または芳香族基)、−SO2 −、アルキレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせから選ばれることが好ましい。
上記アルキレン基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましく、1乃至8であることがさらに好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。アルキレン基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。
上記アリーレン基は、フェニレンまたはナフチレンであることが好ましく、フェニレンであることがさらに好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。アリーレン基の置換基は、前述した置換アリール基の置換基と同様である。
以下に、二価の連結基の例を示す。Rは水素原子、脂肪族基または芳香族基であり、ALはアルキレン基であり、ARはアリーレン基である。
【0024】
L−1:−CO−O−AL−
L−2:−AR−
L−3:−CO−O−CR=N−
L−4:−CO−O−AL−O−CO−AL−CR=N−
L−5:−CO−NH−AL−
L−6:−CO−O−AL−O−AL−
L−11:−N=CR−CR=N−
L−12:−AL−CR=N−
L−13:−N=CR−AL−CR=N−
L−14:−AL−AR−
L−15:−AR−SO2 −AR−
L−16:−AR−AL−AR−
L−17:−AR−O−AR−
L−18:−AR−S−AR−
L−19:−AR−AR−
L−20:−AL−
【0025】
式(I)および(II)のL1 およびL2 は、L−1〜L−6から選ばれる(左側が主鎖に結合し、右側が熱分解性結合に結合する)ことが好ましい。
式(II)のL3 は、L−11〜L−20から選ばれることが好ましい。
【0026】
式(I)および(II)において、X1 およびX2 は、それぞれ独立に、熱分解性結合である。
熱分解性結合の例には、ウレタン結合(−NH−CO−O−または−O−CO−NH−)、スルホン酸エステル結合(−SO2 −O−または−O−SO2 −)、炭酸エステル結合(−O−CO−O−)、ウレア結合(−NH−CO−NH−)およびアセタール結合(−O−C(−R)2 −O−)が含まれる。ウレタン結合が特に好ましい。アセタール結合のRは、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。
以下に、熱分解性結合を含む架橋構造を有する繰り返し単位の例を示す。以下の例では、主たる熱分解反応も表示する。
【0027】
【化2】
【0028】
【化3】
【0029】
【化4】
【0030】
【化5】
【0031】
【化6】
【0032】
【化7】
【0033】
【化8】
【0034】
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
【化11】
【0037】
【化12】
【0038】
【化13】
【0039】
【化14】
【0040】
【化15】
【0041】
【化16】
【0042】
【化17】
【0043】
【化18】
【0044】
【化19】
【0045】
【化20】
【0046】
【化21】
【0047】
疎水性ポリマーは、熱分解性結合を含む架橋構造を有する繰り返し単位に加えて、熱分解性結合を含まない繰り返し単位を有することが好ましい。
以下に、熱分解性結合を含まない繰り返し単位の例を示す。
【0048】
【化22】
【0049】
【化23】
【0050】
【化24】
【0051】
【化25】
【0052】
【化26】
【0053】
【化27】
【0054】
【化28】
【0055】
【化29】
【0056】
【化30】
【0057】
【化31】
【0058】
【化32】
【0059】
【化33】
【0060】
【化34】
【0061】
【化35】
【0062】
【化36】
【0063】
【化37】
【0064】
【化38】
【0065】
【化39】
【0066】
【化40】
【0067】
【化41】
【0068】
【化42】
【0069】
【化43】
【0070】
【化44】
【0071】
【化45】
【0072】
【化46】
【0073】
【化47】
【0074】
【化48】
【0075】
【化49】
【0076】
【化50】
【0077】
【化51】
【0078】
【化52】
【0079】
【化53】
【0080】
【化54】
【0081】
【化55】
【0082】
【化56】
【0083】
【化57】
【0084】
【化58】
【0085】
【化59】
【0086】
【化60】
【0087】
【化61】
【0088】
【化62】
【0089】
【化63】
【0090】
【化64】
【0091】
【化65】
【0092】
【化66】
【0093】
【化67】
【0094】
【化68】
【0095】
【化69】
【0096】
【化70】
【0097】
【化71】
【0098】
【化72】
【0099】
【化73】
【0100】
【化74】
【0101】
【化75】
【0102】
【化76】
【0103】
【化77】
【0104】
【化78】
【0105】
【化79】
【0106】
【化80】
【0107】
【化81】
【0108】
【化82】
【0109】
【化83】
【0110】
【化84】
【0111】
【化85】
【0112】
【化86】
【0113】
【化87】
【0114】
【化88】
【0115】
【化89】
【0116】
【化90】
【0117】
熱分解性結合を含む架橋構造を有する繰り返し単位と熱分解性結合を含まない繰り返し単位とを組み合わせる場合、熱分解性結合を含む架橋構造を有する繰り返し単位/熱分解性結合を含まない繰り返し単位の割合は、モノマーのモル比で、0.1/99.9乃至99.9/0.1であることが好ましく、1/99乃至70/30であることがさらに好ましい。
【0118】
以下に、熱分解性結合を含む架橋構造を有する繰り返し単位と、熱分解性結合を含まない繰り返し単位とからなる疎水性ポリマーの例を示す。かっこ内の番号は、熱分解性結合を含む架橋構造を有する繰り返し単位と、熱分解性結合を含まない繰り返し単位との例示番号に相当する。繰り返し単位の割合は、モノマーのモル比(%)である。
【0119】
P−1: −(9)19− −(102)81−
P−2: −(6)17− −(102)83−
P−3: −(9)6 − −(301)94−
P−4: −(6)6 − −(301)94−
P−5: −(1)28− −(102)72−
P−6: −(1)28− −(301)72−
P−7: −(9)20− −(110)80−
P−8: −(6)20− −(110)80−
P−9: −(1)25− −(110)75−
P−10:−(10)18− −(102)82−
【0120】
P−11:−(10)12− −(301)88−
P−12:−(10)15− −(110)85−
P−13:−(11)10− −(102)90−
P−14:−(11)8 − −(301)92−
P−15:−(11)8 − −(110)92−
P−16: −(3)12− −(102)88−
P−17: −(3)7 − −(301)93−
P−18: −(3)10− −(110)90−
P−19: −(9)18− −(101)82−
P−20: −(6)17− −(102)83−
【0121】
P−21: −(9)10− −(301)70− −(324)20−
P−22:−(10)15− −(301)70− −(324)15−
P−23:−(13)15− −(301)75− −(324)10−
P−24:−(14)10− −(301)70− −(324)20−
P−25:−(15)15− −(301)70− −(324)15−
P−26:−(16)10− −(301)70− −(324)20−
P−27:−(13)10− −(301)65− −(323)25−
P−28:−(16)10− −(301)70− −(323)20−
P−29: −(9)19− −(102)71− −(164)10−
P−30: −(6)18− −(104)72− −(164)10−
P−31:−(16)19− −(301)65− −(324)16−
【0122】
繰り返し単位(熱分解性結合を含む繰り返し単位、熱分解性結合を含まない繰り返し単位、架橋構造を有する繰り返し単位、架橋構造を有さない繰り返し単位のいずれも)が、架橋剤が作用できる官能基を含むことができる。架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位については、親水性ポリマーについての説明で後述する。架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位/架橋剤が作用できる官能基を含まない繰り返し単位の割合は、モノマーのモル比で、1/99乃至99/1であることが好ましく、30/70乃至90/10であることがさらに好ましい。また、ポリマーの末端に、架橋剤が作用できる官能基を含む末端基を有していてもよい。末端基についても、親水性ポリマーについて後述する。
架橋剤が作用できる官能基は、微粒子の形状が維持されている状態(平版印刷原版の加熱前)では表面部分でのみ架橋剤と相互作用する。表面部分での架橋剤との相互作用は、無視できる程度である。加熱によりポリマーが分解し、微粒子の形状が崩壊すると、微粒子の内部の官能基も架橋剤と相互作用し、より強固な(耐刷性の高い)疎水性領域を形成できる。
【0123】
疎水性ポリマーは、前述した繰り返し単位に対応するモノマー(一般に、エチレン性不飽和モノマー)の重合反応(ラジカル共重合反応)によって合成できる。架橋構造は、主鎖ポリマーの合成後に導入してもよい。
重合は、乳化重合反応であることが好ましい。乳化重合反応であると、疎水性ポリマーの合成と同時に微粒子を形成することができる。乳化重合反応は、ラテックスの製造に一般に用いられている反応条件を採用すればよい。
均質な微粒子を形成するため、乳化重合反応において界面活性剤を使用することが好ましい。カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用できる。界面活性剤の使用量は、モノマーの総量の0.01乃至10質量%であることが好ましい。
重合反応は、重合開始剤(連鎖移動剤)を用いることが好ましい。重合開始剤の使用量は、モノマーの総モル量の0.01乃至10モル%であることが好ましい。
【0124】
形成される疎水性ポリマー微粒子は、5乃至500nmの粒子サイズを有することが好ましく、10乃至300nmの粒子サイズを有することがさらに好ましい。粒子サイズ分布は、なるべく均一であることが好ましい。
二種類以上の疎水性ポリマー微粒子を混合して用いてもよい。
疎水性ポリマー微粒子は、画像形成層に1乃至90質量%含まれていることが好ましく、5乃至80質量%含まれていることがさらに好ましく、10乃至60質量%含まれていることが最も好ましい。
【0125】
[親水性ポリマー]
画像形成層は、親水性ポリマーを含む。親水性ポリマーとしては、様々な天然または半合成ポリマーあるいは合成ポリマーが使用できる。
親水性ポリマーは、画像形成層の耐刷性を確保するため、架橋構造を有していることが好ましい。架橋構造は、後述する架橋剤の使用により親水性ポリマーに導入することが好ましい。
親水性ポリマーは、架橋剤が作用できる官能基を有することが好ましい。官能基の種類は、架橋剤の種類に応じて決定する。例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤が架橋剤である場合は、親水性ポリマーはエチレン性不飽和結合を架橋剤が作用できる官能基として有することが好ましい。また、感熱性酸発生剤が架橋剤である場合は、親水性ポリマーは、ビニルオキシ基またはエポキシ基を架橋剤が作用できる官能基として有することが好ましい。
ただし、後述するように、ケイ素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウムの水酸化物またはアルコキシドを架橋剤として用いることが好ましい。その場合、親水性ポリマーは、ケイ素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウムの水酸化物またはアルコキシドから誘導される官能基を架橋剤が作用できる官能基として有することが好ましい。
【0126】
架橋剤が作用できる官能基は、ポリマーの末端基または側鎖に導入できる。
架橋剤が作用できる官能基を含む末端基は、下記式(III)で表されることが特に好ましい。
【0127】
(III) (R3 −)m (R4 O)3−m Si−Cn H2n−S−
【0128】
式中、R3 およびR4 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数が1乃至8の脂肪族基または炭素原子数が6乃至8の芳香族基であって、複数のR3 またはR4 は、異なっていてもよい。mは、0、1または2である。nは、1乃至8の整数である。
以下に、架橋剤が作用できる官能基を含む末端基の例を示す。
【0129】
【化91】
【0130】
【化92】
【0131】
親水性ポリマーが架橋剤が作用できる官能基を含む末端基を有する場合、親水性ポリマーを構成する繰り返し単位は、架橋剤が作用できる官能基を含む必要はない。
親水性ポリマーが、架橋剤が作用できる官能基を末端基に有する場合、親水性ポリマーの繰り返し単位は、(141)〜(154)、(201)〜(206)、(311)〜(315)、(318)〜(321)、(335)〜(337)から選ばれることが特に好ましい。なお、親水性ポリマーが架橋剤が作用できる官能基を含む末端基を有する場合でも、繰り返し単位が、架橋剤が作用できる官能基を含んでもよい。架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位については後述する。
以下に、架橋剤が作用できる官能基を含む末端基と、架橋剤が作用できる官能基を含まない繰り返し単位とからなる親水性ポリマーの例を示す。かっこ内の番号は、架橋剤が作用できる官能基を含む末端基と、熱分解性結合を含まない繰り返し単位との例示番号に相当する。
【0132】
I−1: 401−(201)−
I−2: 401−(202)−
I−3: 402−(203)−
I−4: 401−(204)−
I−5: 401−(205)−
I−7: 401−(335)−
I−8: 401−(141)−
I−9: 401−(209)−
I−10: 403−(201)−
I−11: 404−(205)−
I−12: 404−(336)−
【0133】
架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位は、下記式(IV)で表されることが特に好ましい。
【0134】
【化93】
【0135】
式中、R5 は、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。R5 は、水素原子またはメチルであることが好ましい。R6 およびR7 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数が1乃至8の脂肪族基または炭素原子数が6乃至8の芳香族基であって、複数のR6 またはR7 は、異なっていてもよい。mは、0、1または2である。nは、1乃至8の整数である。L4 は、二価の連結基の定義および例は、式(I)および(II)のL1 およびL2 と同様である。L4 は、前述したL−1〜L−6から選ばれる(左側が主鎖に結合し、右側がSiに結合する)ことが好ましい。
以下に、架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位の例を示す。
【0136】
【化94】
【0137】
【化95】
【0138】
親水性ポリマーは、架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位に加えて、架橋剤が作用できる官能基を含まない繰り返し単位を含むことが好ましい。親水性ポリマーの繰り返し単位は、(141)〜(154)、(201)〜(206)、(311)〜(315)、(318)〜(321)、(335)〜(337)から選ばれることが特に好ましい。
架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位/架橋剤が作用できる官能基を含まない繰り返し単位の割合は、モノマーのモル比で、1/99乃至99/1であることが好ましく、30/70乃至90/10であることがさらに好ましい。以下に、架橋剤が作用できる官能基を含む繰り返し単位と、架橋剤が作用できる官能基を含まない繰り返し単位とからなる親水性ポリマーの例を示す。かっこ内の番号は、架橋剤が作用できる官能基を含む末端基と、熱分解性結合を含まない繰り返し単位との例示番号に相当する。
【0139】
II−1:−(337)90− −(502)10−
II−2:−(205)90− −(502)10−
II−3:−(201)90− −(502)10−
II−4:−(204)90− −(502)10−
II−5:−(334)90− −(502)10−
II−6:−(335)90− −(502)10−
II−7:−(207)90− −(502)10−
II−8:−(201)95− −(502)5 −
II−9:−(201)95− −(504)5 −
II−10:−(209)98− −(502)5 −
【0140】
二種類以上の親水性ポリマーを併用してもよい。
画像形成層中に親水性ポリマーは、2乃至40質量%含まれることが好ましく、3乃至30質量%含まれることがさらに好ましい。
【0141】
[架橋剤]
親水性ポリマーは、架橋していることが好ましい。ただし、平版印刷原版に画像形成層を設ける前に(例えば、画像形成層の塗布液の段階で)、ポリマーが架橋(硬化)していると、架橋ポリマーを均一に含む画像形成層を設けることは非常に難しい(実質的に不可能である)。従って、画像形成層を設けてから(例えば、画像形成層の塗布液の塗布後に)、ポリマーを架橋させることが好ましい。親水性ポリマーと架橋剤(光開始剤または熱開始剤)とを画像形成層の塗布液に添加し、塗布後に、光照射または加熱により架橋剤を機能させてポリマーを架橋させることができる。ただし、外部のエネルギー(光照射または加熱)を加えることなく、塗布だけでポリマーを架橋させる方が好ましい。そのためには、画像形成層の塗布後に外部のエネルギーを必要とすることなく機能する架橋剤を用いて、ポリマーを架橋させることが特に好ましい。
【0142】
外部のエネルギーを必要とすることなく塗布後に機能できる架橋剤としては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)またはジルコニウム(Zr)の水酸化物またはアルコキシド化合物が代表的である。アルコキシド化合物は、カップリング剤(シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコアルミニウムカップリング剤)としても知られている。
カップリング剤は、異なる材料の界面の結合または親和性を強化し、複合材料の強度、耐水性、耐熱性等を改良するために用いられる化合物である。結合の強化は、カップリング剤と各材料との化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力)による。
【0143】
カップリング剤は、材料(特にプラスチック材料)関係の技術分野で良く知られており、最近では、カップリング剤本来の有機−無機界面の接着という観点からさらに応用範囲を広げて樹脂改良(強度、接着性、耐候性等の改良)や表面改質(分散性、帯電防止等)のような目的で実際に使用されている。具体的な化合物としては、豊富な種類がある。一般にカップリング剤は、中心原子として金属(例、Si、Al、Ti)を有し、さらにアルコキシ基、アセトキシ基、ケトオキシム基、イソプレペノキシ基のような加水分解基を有する有機金属化合物である。カップリング剤は、一般に常温で液状の低分子量化合物である。カップリング剤の詳細については、青木恂二郎他、カップリング剤最適利用技術(科学技術総合研究所(株))や山下晋三他、架橋剤ハンドブック(大成社)に記載がある。
架橋剤については、作花済夫「ゾル−ゲル法の化学」(株)アグネ承風社刊(1988年)、平島碩「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター刊(1992年)にも記載がある。
架橋剤は、下記式(V)で表される化合物であることが好ましい。
【0144】
(V) (R9 O−)p−q M(−R10)q
Mは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)またはジルコニウム(Zr)であり;Mがアルミニウムの場合、pは3または4であり、Mがケイ素、チタンまたはジルコニウムの場合、pは4であり;qは、0乃至2の整数であり;R9 およびR10は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基である。脂肪族基および芳香族基の定義は、前述した通りである。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至4であることが好ましい。
化合物の分子量は、1000以下であることが好ましい。
【0145】
ケイ素のアルコキシド化合物の例には、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシランおよびジフェニルジエトキシシランが含まれる。
アルミニウムのアルコキシド化合物の例には、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネートおよびテトラエトキシアルミネートが含まれる。
【0146】
チタンのアルコキシド化合物の例には、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネートおよびフェニルトリエトキシチタネートが含まれる。
ジルコニウムのアルコキシド化合物の例には、トリメトキシジルコネート、テトラメトキシジルコネート、トリエトキシジルコネート、テトラエトキシジルコネート、テトラプロポキシジルコネート、クロロトリメトキシジルコネート、クロロトリエトキシジルコネート、エチルトリメトキシジルコネート、メチルトリエトキシジルコネート、エチルトリエトキシジルコネート、ジエチルジエトキシジルコネート、フェニルトリメトキシジルコネートおよびフェニルトリエトキシジルコネートが含まれる。
【0147】
架橋剤の使用量は、ポリマーに対して0.5乃至60質量%の範囲であることが好ましく、0.1乃至30質量%の範囲であることがさらに好ましい。
架橋剤の加水分解および重縮合を促進するため、酸性触媒または塩基性触媒を用いることが好ましい。
触媒は、酸または塩基そのままか、溶液の状態で使用することができる。溶液の溶媒は、水またはアルコールが好ましい。溶液の濃度は、反応の種類に応じて決定する。溶液濃度を高めると、加水分解および重縮合の反応速度を速くすることができる。ただし、塩基性触媒の溶液濃度が高いと、ゾル溶液中で沈澱が生じやすい。そのため、塩基性触媒の濃度は、水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
触媒溶液の濃度を高くする場合、焼結後の触媒結晶粒中にほとんど残留しない元素で触媒を構成することが望ましい。酸触媒の例には、ハロゲン化水素(例、塩酸)、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、カルボン酸(例、蟻酸、酢酸)およびスルホン酸(例、ベンゼンスルホン酸)が含まれる。塩基性触媒の例には、水酸化アンモニウム(アンモニア水)およびアミン(例、エチルアミン、アニリン)が含まれる。
【0148】
[光熱変換剤]
画像形成層または任意に設けられる層は、光熱変換剤を含むことが好ましい。画像形成層が、光熱変換剤を含むことがより好ましい。
光熱変換剤は、光を吸収し、光エネルギーを熱エネルギーに変換して、発熱する機能を有する物質である。
光熱変換剤が吸収する光の波長(最大吸収波長)は、700nm以上(赤外光)であることが特に好ましい。赤外光を吸収できる顔料、染料または金属微粒子を、光熱変換剤として好ましく用いることができる。
【0149】
赤外吸収顔料については、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載がある。
特に好ましい赤外吸収顔料は、カーボンブラックである。
赤外吸収顔料を疎水性ポリマー中または疎水性ポリマーの微粒子の内部に添加する場合は、顔料に疎水化(親油化)処理を行うことができる。疎水化処理としては、親油性樹脂を顔料表面にコートする方法がある。
赤外吸収顔料を親水性ポリマー中に分散させる場合は、顔料に親水化処理を行うことができる。親水化処理としては、親水性樹脂を顔料表面にコートする方法、界面活性剤を顔料表面に付着させる方法、あるいは、反応性物質(例、シリカゾル、アルミナゾル、シランカップリング剤、エポキシ化合物、イソシアナート化合物)を顔料表面に結合させる方法を採用できる。
顔料の粒径は、0.01乃至1μmであることが好ましく、0.01乃至0.5μmであることがさらに好ましい。
顔料を親水性ポリマー中に分散させる場合、インク製造やトナー製造に用いられる公知の分散技術が適用できる。
【0150】
赤外吸収染料については、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシーに記載がある。
好ましい赤外吸収染料は、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料(特開昭58−112793号、同58−224793号、同59−48187号、同59−73996号、同60−52940号、同60−63744号の各公報記載)、アントラキノン染料、フタロシアニン染料(特開平11−235883号公報記載)、スクアリリウム染料(特開昭58−112792号公報記載)、ピリリウム染料(米国特許3881924号同4283475号の各明細書、特開昭57−142645号、同58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号、特公平5−13514号、同5−19702号の各公報記載)、カルボニウム染料、キノンイミン染料およびメチン染料(特開昭58−173696号、同58−181690号、同58−194595号の各公報記載)である。
【0151】
赤外吸収染料については、米国特許4756993号、同5156938号の各明細書および特開平10−268512号公報にも記載がある。
市販の赤外吸収染料(例えば、エポライトIII−178、エポライトIII−130、エポライトIII−125、エポリン社製)を用いてもよい。
メチン染料がさらに好ましく、シアニン染料(英国特許434875号、米国特許4973572号の各明細書、特開昭58−125246号、同59−84356号、同59−216146号、同60−78787号の各公報記載)が最も好ましい。シアニン染料は、下記式で定義される。
Bo−Lo=Bs
上記式において、Bsは、塩基性核であり;Boは、塩基性核のオニウム体であり;そして、Loは、奇数個のメチンからなるメチン鎖である。
赤外吸収染料の場合、Loは、7個のメチンからなるメチン鎖であることが好ましい。
赤外吸収染料を画像形成層の親水性ポリマー中に添加する場合は、親水性の染料を用いることが好ましい。また、赤外吸収染料を疎水性ポリマー微粒子内に添加する場合は、比較的疎水性の染料を用いることが好ましい。
【0152】
金属は、一般に自己発熱性を有している。従って、赤外、可視または紫外領域に吸収をもつ金属、特に赤外領域に吸収をもつ金属は、光熱変換機能を有している。
金属微粒子を構成する金属は、光照射によって熱融着することが好ましい。具体的には、融点が1000℃以下であることが好ましい。
金属微粒子を構成する金属としては、Si、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、In、Sn、W、Te、Pb、Ge、Re、Sbおよびそれらの合金が好ましく、Re、Sb、Te、Ag、Au、Cu、Ge、PbおよびSnがより好ましく、Ag、Au、Cu、Sb、GeおよびPbがさらに好ましく、Ag、AuおよびCuが最も好ましい。
【0153】
合金の場合、低融点金属(例、Re、Sb、Te、Au、Ag、Cu、Ge、Pb、Sn)と、自己発熱性が高い金属(例、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、W、Ge)とを組み合わせることもできる。また、光吸収が大きい金属(例、Ag、Pt、Pd)の微粒子と他の金属の微粒子とを組み合わせて用いることもできる。
金属微粒子は、表面を親水性化処理することによって、親水性ポリマー中に分散することが好ましい。表面親水性化処理としては、親水性物質(例、界面活性剤)による表面処理、親水性物質との表面化学反応、あるいは親水性ポリマー被膜の形成のような手段を採用できる。保護コロイド性の親水性高分子皮膜を設けるなどの方法を用いることができる。親水性物質との表面化学反応が好ましく、表面シリケート処理が最も好ましい。鉄微粒子の表面シリケート処理では、70℃のケイ酸ナトリウム(3質量%)水溶液に鉄微粒子を30秒浸漬する方法によって表面を充分に親水性化することができる。他の金属微粒子も同様の方法で表面シリケート処理を行うことができる。
金属微粒子に代えて、金属酸化物微粒子または金属硫化物微粒子を用いることもできる。
微粒子の粒径は、10μm以下であることが好ましく、0.003乃至5μmであることがさらに好ましく、0.01乃至3μmであることが最も好ましい。
【0154】
[画像形成層の他の任意成分]
画像形成層に無機微粒子を添加することができる。微粒子を構成する無機物質は、酸化物(例、シリカ、アルミナ、二酸化チタン)または塩(例、炭酸マグネシウム)であることが好ましい。無機物質の混合物から微粒子を形成してもよい。微粒子は、画像形成層の被膜強化や、粗面化による界面接着性の硬化を目的として用いることができる。
無機微粒子の平均粒径は、5nm乃至10μmであることが好ましく、10nm乃至1μmであることがさらに好ましい。微粒子の平均粒径を調整することで、微粒子を安定に層内に分散でき、画像形成層の膜強度を保持し、印刷汚れが生じにくい親水性が優れた非画像部を形成できる。
【0155】
ケイ素酸化物微粒子が、親水性および膜強度の観点で好ましい。ケイ素酸化物微粒子には、親水性ポリマーにより表面修飾が容易であるとの利点もある。市販のケイ素酸化物微粒子(スノーテックスZL、日産化学工業(株)製;サイリシア350、富士シリシア化学(株)製;AEROSIL130、日本アエロジル(株)製;ミズカシルP−527U、水澤化学工業(株)製)を用いてもよい。無機微粒子の画像形成層へ添加量は、画像形成層の全固形分の1乃至70質量%であることが好ましく、5乃至50質量%であることがさらに好ましい。
無機微粒子に代えて、有機微粒子(例えば、アルギン酸カルシウム微粒子)を用いてもよい。
【0156】
画像形成層には、画像形成後の画像部と非画像部との区別を目的として、着色剤を添加することができる。着色剤としては、可視領域に大きな吸収を有する染料または顔料を用いる。着色剤の例には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)およびメチレンブルー(CI52015)が含まれる。着色剤として用いられる染料については、特開昭62−293247号公報に記載がある。酸化チタンのような無機顔料も着色剤として用いることができる。
着色剤の添加量は、画像形成層の0.01乃至10質量%であることが好ましい。
【0157】
画像形成層には、ノニオン界面活性剤(特開昭62−251740号、特開平3−208514号の各公報記載)または両性界面活性剤(特開昭59−121044号、特開平4−13149号の各公報記載)を添加することができる。
ノニオン界面活性剤の例には、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリドおよびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが含まれる。両性界面活性剤の例には、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインおよびN−テトラデシル−N,N−ベタイン型界面活性剤(アモーゲンK、第一工業(株)製)が含まれる。
ノニオン界面活性剤および両性界面活性剤は、画像形成層に0.05乃至15質量%含まれることが好ましく、0.1乃至5質量%含まれることがさらに好ましい。
【0158】
画像形成層に柔軟性を付与するため、可塑剤を添加してもよい。可塑剤の例には、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチルおよびオレイン酸テトラヒドロフルフリルが含まれる。
【0159】
[画像形成層の形成]
画像形成層は、各成分を適当な液状媒体中に溶解、分散または乳化して塗布液を調製し、支持体上に塗布し、および乾燥して液状媒体を除去することにより形成することができる。
塗布液に使用する媒体の例には、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエンおよび水が含まれる。二種類以上の液体を混合して用いてもよい。
【0160】
塗布液の全固形分濃度は、1乃至50質量%であることが好ましい。
塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤を添加することができる。フッ素系界面活性剤(特開昭62−170950号公報記載)が特に好ましい。界面活性剤の添加量は、塗布液の固形分量に対して0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.05乃至0.5質量%であることがさらに好ましい。
画像形成層の乾燥塗布量は、0.5乃至5.0g/m2 であることが好ましい。
【0161】
[支持体]
支持体としては、金属板、プラスチックフイルムまたは紙を用いることができる。具体的には、表面処理されたアルミニウム板、親水処理されたプラスチックフイルムまたは耐水処理された紙が好ましい。さらに具体的には、陽極酸化処理されたアルミニウム板、親水性層を設けたポリエチレンテレフタレートフイルムまたはポリエチレンでラミネートされた紙が好ましい。
【0162】
陽極酸化処理されたアルミニウム板が特に好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板またはアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板である。アルミニウム合金に含まれる異元素の例には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケルおよびチタンが含まれる。異元素の割合は、10質量%以下であることが好ましい。市販の印刷版用のアルミニウム板を用いてもよい。
アルミニウム板の厚さは、0.05乃至0.6mmであることが好ましく、0.1乃至0.4mmであることがさらに好ましく、0.15乃至0.3mmであることが最も好ましい。
【0163】
アルミニウム板表面には、粗面化処理を行うことが好ましい。粗面化処理は、機械的方法、電気化学的方法あるいは化学的方法により実施できる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法またはバフ研磨法を採用できる。電気化学的方法としては、塩酸または硝酸などの酸を含む電解液中で交流または直流により行う方法を採用できる。混合酸を用いた電解粗面化方法(特開昭54−63902号公報記載)も利用することができる。化学的方法としては、アルミニウム板を鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法(特開昭54−31187号公報記載)が適している。
粗面化処理は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2乃至1.0μmとなるように実施することが好ましい。
粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理を行う。アルカリ処理液としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液が一般に用いられる。アルカリエッチング処理の後は、さらに中和処理を行うことが好ましい。
【0164】
アルミニウム板の陽極酸化処理は、支持体の耐摩耗性を高めるために行う。
陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質が使用できる。一般には、硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が電解質として用いられる。
陽極酸化の処理条件は一般に、電解質の濃度が1乃至80質量%溶液、液温が5乃至70℃、電流密度が5乃至60A/dm2 、電圧が1乃至100V、そして、電解時間が10秒乃至5分の範囲である。
陽極酸化処理により形成される酸化皮膜量は、1.0乃至5.0g/m2 であることが好ましく、1.5乃至4.0g/m2 であることがさらに好ましい。
支持体を表面処理(例えば、シリケート処理)してから、画像形成層を設けてもよい。
支持体と画像形成層との間に下塗り層を設けてもよい。
【0165】
[水溶性オーバーコート層]
親油性物質による画像形成層表面の汚染防止のため、画像形成層の上に、水溶性オーバーコート層を設けることができる。
水溶性オーバーコート層は、印刷時に容易に除去できる材料から構成する。そのためには、水溶性の有機ポリマーから水溶性オーバーコート層を構成することが好ましい。水溶性の有機ポリマーの例には、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、アラビアガム、セルロースエーテル(例、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース)、デキストリンおよびその誘導体(例、ホワイトデキストリン、酵素分解エーテル化デキストリン、プルラン)が含まれる。
水溶性の有機ポリマーの繰り返し単位を二種類以上有するコポリマーを用いてもよい。コポリマーの例には、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化ポリマー)およびビニルメチルエーテル−無水マレイン酸コポリマーが含まれる。ポリ酢酸ビニルの部分ケン化により、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマーを合成する場合は、ケン化度は65%以上であることが好ましい。
二種類以上の水溶性有機ポリマーを併用してもよい。
オーバーコート層に、染料を添加してもよい。
【0166】
オーバーコート層の塗布液には、ノニオン界面活性剤(例、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル)を添加することができる。
オーバーコート層の塗布量は、0.1乃至2.0g/m2 であることが好ましい。
【0167】
[画像状加熱工程]
平版印刷原版は、画像状に加熱して画像を形成する。直接的には、熱記録ヘッドによって、平版印刷原版を画像状に加熱できる。その場合は、光熱変換剤は不要である。
ただし、熱記録ヘッドは画像の解像度が一般に低いため、光熱変換剤を用いて画像露光による光エネルギーを熱エネルギーに変換することが望ましい。一般に、画像露光に用いる露光装置の方が、熱記録ヘッドよりも高解像度である。
露光方法には、アナログデータである原稿(オリジナル)を介しての露光と、オリジナルのデータ(通常はデジタルデータ)に対応させた走査露光とがある。
オリジナルを介しての露光では、光源としてキセノン放電灯または赤外線ランプが用いられる。キセノン放電灯のような高出力の光源を使用すれば、短時間のフラッシュ露光も可能である。
走査露光は、レーザー、特に赤外線レーザーを用いることが一般的である。赤外線の波長は、700乃至1200nmであることが好ましい。赤外線は、固体高出力赤外線レーザー(例えば、半導体レーザー、YAGレーザー)が好ましい。
【0168】
光熱変換剤を含む画像形成層にレーザーを走査露光すると、光熱変換剤によりレーザーの光エネルギーが熱エネルギーに変換される。そして、平版印刷原版の加熱部分(画像部)において、微粒子に含まれていた疎水性ポリマーが熱分解し、ポリマー微粒子が融合し、露光部に疎水性領域が形成される。
これに対して、平版印刷原版の非加熱部分(非画像部)には変化がない。
【0169】
図2は、レーザーによる平版印刷原版の画像状加熱を示す断面模式図である。
図2に示すように、平版印刷原版の画像形成層(2)にレーザー(Lazer )を走査露光すると、光熱変換剤(23)によりレーザーの光エネルギーが熱エネルギー(Heat)に変換される。
【0170】
図3は、画像状加熱後の平版印刷原版の状態を示す断面模式図である。
図3に示すように、平版印刷原版の加熱部分(画像部)において、疎水性ポリマー微粒子に含まれていたポリマーが熱分解する。その結果、微粒子の硬度が低下し、加熱部分で疎水性ポリマー微粒子が融合し、親水性支持体(1)に付着している疎水性領域(21a)を形成する。
これに対して、平版印刷原版の非加熱部分(非画像部)の疎水性ポリマー微粒子には変化がない。
【0171】
なお、加熱した平版印刷原版を冷却することにより、平版印刷原版の加熱部分(画像部)において、熱分解していた疎水性ポリマーが部分的に再結合してもよい。疎水性ポリマーが再結合すると、疎水性領域の硬度が上昇し、疎水性領域が安定して、取り扱い(例えば、印刷機への装着)が容易になる。
【0172】
[印刷工程]
以上のように本発明に従い画像状に露光した平版印刷原版は、特別な現像処理を実施することなく、印刷を実施できる。
なお、レーザー露光装置を有する印刷機(特許2938398号公報記載)を用いると、平版印刷原版を印刷機シリンダー上に取りつけた後に、印刷機に搭載されたレーザーにより露光し、その後に湿し水又はインクをつけて、直ちに印刷する(露光〜印刷を連続して処理する)ことも可能である。
【0173】
図4は、印刷中の平版印刷版の状態を示す断面模式図である。
図4に示すように、平版印刷原版を印刷機に取り付けて、油性インク(3)と湿し水(4)を印刷機から供給すると、湿し水(4)が非加熱部分(非画像部)に付着し、油性インク(3)が加熱部分(画像部)の疎水性領域(21a)に付着して、印刷することができる。
【0174】
【実施例】
[実施例1]
(支持体の作製)
ポリエチレンテレフタレートフイルムにコロナ放電処理を行い、支持体を作製した。
【0175】
(疎水性ポリマー微粒子の分散物の調製)
コンデンサーと攪拌機とを備えた三口の500ml丸底フラスコに、ドデシル硫酸ナトリウムの30質量%水溶液2.1gと蒸留水330gとを入れ、攪拌しながら内温が60℃になるまで加熱した。60℃に温度を安定させ、窒素気流下、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.18gを蒸留水6gに溶解した水溶液を加えた。次に、下記のモノマー(M−9)7.9gを、メチルメタクリレート30gおよびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート4gに溶解した溶液を、攪拌および加熱しながら約3時間かけて滴下した。
【0176】
【化96】
【0177】
滴下終了後、さらにペルオキソ二硫酸アンモニウム0.18gを蒸留水7gに溶解した水溶液を加え、続けて3時間加熱攪拌を続け、下記の疎水性ポリマー(P−29)からなる微粒子の分散液(固形分濃度:約10質量%)を得た。
【0178】
【化97】
【0179】
(親水性ポリマーの合成)
500mlの三口フラスコにアクリルアミド50g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.4gおよびジメチルアセトアミド220gを入れ、65℃の窒素気流下、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。酢酸エチル2リットル中に投入し、析出した固体をろ取し、水洗して有機親水性樹脂を得た。乾燥後の質量は52.4gであった。GPC(ポリスチレン標準)により、ポリマーの質量平均分子量3000を測定した。さらに、13C−NMR(DMSO−d6 )によりポリマー(I−1)の構造(末端にトリメトキシシリル基が50.0ppm導入)を確認した。
【0180】
【化98】
【0181】
(画像形成層の形成)
以下の成分を均一に混合し、室温で2時間撹拌して加水分解を行い、ゾル状の親水性組成物を得た。
【0182】
────────────────────────────────────
親水性組成物
────────────────────────────────────
親水性ポリマー(I−1) 21g
テトラメトキシシラン(架橋剤) 62g
エタノール 470g
水 470g
1N硝酸水溶液 10g
────────────────────────────────────
【0183】
下記の画像形成層塗布液を調製し、支持体のコロナ放電処理面に、乾燥後の塗布量が3g/m2 となるように塗布し、100℃、3分加熱乾燥して平版印刷原板を作製した。
【0184】
────────────────────────────────────
画像形成層塗布液組成
────────────────────────────────────
親水性組成物 66g
疎水性ポリマー微粒子の分散物 40g
下記の赤外線吸収染料(光熱変換剤) 0.5g
────────────────────────────────────
【0185】
【化99】
【0186】
(画像形成層の親水性評価)
画像形成層表面の接触角(空中水滴)を、測定機(CA−Z、協和界面科学(株)製)を用いて測定した。結果を第1表に示す。接触角の値が小さいほど親水性である。
【0187】
(形成される疎水性領域の評価)
得られた平版印刷版原板を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したクレオ社製トレンドセッター3244VFSにて、版面エネルギー200mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した。露光部の水滴接触角を上記と同様に測定し、その値で疎水性を評価した結果を第1表に示す。。接触角の角度が大きいほど疎水性である。
【0188】
(印刷における評価)
得られた平版印刷版原板を、上記疎水性領域の評価と同様の条件で露光した後、現像処理することなく、印刷機(SOR−M、ハイデルベルグ社製)に装着し、市販の湿し水原液(IF201およびIF202、富士写真フイルム(株)製)の水希釈液(それぞれ、2.5質量%および0.75質量%)からなる湿し水と黒色インク(GEOS−G墨、大日本インキ化学工業(株)製)とを用いて、通常どおり印刷し、良好な印刷物が得られるまでの刷り出し印刷枚数と良好な印刷物が得られた枚数(耐刷枚数)で評価した。結果を第1表に示す。
【0189】
(耐傷性の評価)
得られた平版印刷版原板を、上記疎水性領域の評価と同様の条件で露光した後、露光部と未露光部をそれぞれ荷重をかけたサファイヤ針にて引っ掻いた。その後、印刷評価方法と同様の条件にて印刷を実施し、露光部=画像部においては白抜けが発生したときのサファイヤ針にかけた荷重で、未露光部=非画像部においては汚れが発生したときのサファイヤ針にかけた荷重で評価した。結果を第1表に示す。
【0190】
[実施例2]
(疎水性ポリマー微粒子の調製)
コンデンサーと攪拌機とを備えた三口の500ml丸底フラスコに、ドデシル硫酸ナトリウムの30質量%水溶液2.1gと蒸留水330gとを入れ、攪拌しながら内温が60℃になるまで加熱した。60℃に温度を安定させ、窒素気流下、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.18gを蒸留水6gに溶解した水溶液を加えた。次に、下記のモノマー(M−6)7.2gを、エチルメタクリレート30gおよびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート4gに溶解した溶液を、攪拌および加熱しながら約3時間かけて滴下した。
【0191】
【化100】
【0192】
滴下終了後、さらにペルオキソ二硫酸アンモニウム0.18gを蒸留水7gに溶解した水溶液を加え、続けて3時間加熱攪拌を続け、下記の疎水性ポリマー(P−30)からなる微粒子の分散液(固形分濃度:約10質量%)を得た。
【0193】
【化101】
【0194】
(平版印刷原版の製造および評価)
調製した疎水性ポリマー(P−30)からなる微粒子の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、平版印刷原版を製造した。
製造した平版印刷原版を実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
【0195】
[実施例3]
(疎水性ポリマー微粒子の調製)
コンデンサーと攪拌機とを備えた三口の500ml丸底フラスコに、ドデシル硫酸ナトリウムの30質量%水溶液2.1gと蒸留水330gとを入れ、攪拌しながら内温が60℃になるまで加熱した。60℃に温度を安定させ、窒素気流下、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.18gを蒸留水6gに溶解した水溶液を加えた。次に、下記のモノマー(M−16)8gを、スチレン27.2gおよび4−ビニルピリジン6.8gに溶解した溶液を、攪拌および加熱しながら約3時間かけて滴下した。
【0196】
【化102】
【0197】
滴下終了後、さらにペルオキソ二硫酸アンモニウム0.18gを蒸留水7gに溶解した水溶液を加え、続けて3時間加熱攪拌を続け、冷却後、蒸留水を用いて濃度を調整し、下記の疎水性ポリマー(P−31)からなる微粒子の分散液(固形分濃度:約10質量%)を得た。
【0198】
【化103】
【0199】
(平版印刷原版の製造および評価)
調製した疎水性ポリマー(P−31)からなる微粒子の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、平版印刷原版を製造した。
製造した平版印刷原版を実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
【0200】
[比較例1]
(疎水性ポリマー微粒子の調製)
ポリスチレンからなる微粒子の分散液(固形分濃度:約10質量%)を調製した。
【0201】
(平版印刷原版の製造および評価)
調製したポリスチレンからなる微粒子の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、平版印刷原版を製造した。
製造した平版印刷原版を実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
【0202】
[比較例2]
(疎水性ポリマー微粒子の調製)
スチレン/4−ビニルピリジン共重合体(共重合モル比=75/25)からなる微粒子の分散液(固形分濃度:約10質量%)を調製した。
【0203】
(平版印刷原版の製造および評価)
スチレン/4−ビニルピリジン共重合体からなる微粒子の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、平版印刷原版を製造した。
製造した平版印刷原版を実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
【0204】
[比較例3]
(疎水性ポリマー微粒子の調製)
メチルエチルケトン45.0gに、下記の疎水性ポリマー(P−X)30.0gおよびアニオン界面活性剤(パイオニンA41C、竹本油脂(株)製)0.5を溶解して油相とした。
【0205】
【化104】
【0206】
別に、水259.8gに、下記の親水性ポリマー4.2gを溶解して水相とした。
【0207】
【化105】
【0208】
油相と水相とを混合し、ホモジナイザーにて12000rpmで10分間激しく攪拌し、水相中に油相の液滴を分散した乳化物をえた。次に、ステンレスポットに乳化物を投入し、40℃で3時間攪拌して、溶媒成分を除去し、粒径0.24μmの疎水性ポリマー微粒子の分散液を調製した。
【0209】
(平版印刷原版の製造および評価)
調製した微粒子の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、平版印刷原版を製造した。
製造した平版印刷原版を実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
【0210】
【表1】
第1表
────────────────────────────────────
平版印刷 微粒子 水滴接触角(゜)印刷性評価(枚) 耐傷性(g)
原版 ポリマー 露光前 露光後 刷出 耐刷 画像部 非画像部
────────────────────────────────────
実施例1 P−29 5.8 120 10 10000 >300 >300
実施例2 P−30 6.5 115 10 11000 >300 >300
実施例3 P−31 7.0 120 10 12000 >300 >300
比較例1 pSt 6.5 110 10 5000 10 >300
比較例2 pSt/4−Vp 8.5 125 10 11000 10 >300
比較例3 P−X 7.5 95 10 1000以下 20 200
────────────────────────────────────
(註)
pSt: ポリスチレン
pSt/4−Vp:スチレン/4−ビニルピリジン共重合体
【0211】
[実施例4]
厚さ0.30mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレン洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水懸濁液とを用いその表面を砂目立てした後、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングし、水洗後、更に2質量%硝酸に20秒間浸漬して水洗した。この時、砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2 であった。
次に、7%硫酸を電解液として電流密度15A/dm2 で、陽極酸化皮膜の厚さが2.4g/m2 になるように、このアルミニウム板に直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗乾燥して支持体を得た。
上記のアルミニウム支持体上に、実施例3と同様の画像形成層の塗布液を、乾燥後の塗布量が3g/m2 となるように塗布し、100℃、3分加熱乾燥して平版印刷原版を得た。得られた支持体上の親水性層表面の接触角(空中水滴)を実施例1と同様に測定したところ、6.5°であった。
この平版印刷版原版を、クレオ社製トレンドセッター3244VFSにより前述の条件で露光したところ、露光部の水滴接触角は120℃であり、疎水性領域が形成されたことを確認した。また、露光した印刷版の画像部、非画像部の耐傷性評価結果は両方とも300g以上であった。さらに、得られた平版印刷版の刷り出し枚数は10枚であり、良好な印刷物が1.3万枚得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】好ましい平版印刷原版の基本構成を示す断面模式図である。
【図2】レーザーによる平版印刷原版の画像状加熱を示す断面模式図である。
【図3】画像状加熱後の平版印刷原版の状態を示す断面模式図である。
【図4】印刷中の平版印刷版の状態を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1 支持体
2 画像形成層
21 親水性ポリマー
21a 疎水性領域
22 疎水性ポリマー微粒子
23 光熱変換剤
3 油性インク
4 湿し水
Laser レーザー
Heat 熱エネルギー
Claims (9)
- 支持体上に、熱分解性結合を含む疎水性ポリマーからなる微粒子と親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版を画像状に加熱して、疎水性ポリマーの結合を熱分解し、これにより加熱領域を疎水性領域および未加熱領域を親水性領域として有する平版印刷版を製版する工程からなる平版印刷版の製版方法。
- 画像形成層がさらに光熱変換剤を含み、レーザー光で走査することにより平版印刷原版を画像状に加熱する請求項1に記載の平版印刷版の製版方法。
- 支持体上に、熱分解性結合を含む疎水性ポリマーからなる微粒子と親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版を画像状に加熱して、疎水性ポリマーの結合を熱分解し、これにより加熱領域を疎水性領域および未加熱領域を親水性領域として有する平版印刷版を製版する工程、そして、製版された平版印刷版で印刷する工程からなる平版印刷方法。
- 平版印刷原版を印刷機のシリンダーに取り付けた状態で、平版印刷原版を画像加熱する請求項3に記載の平版印刷方法。
- 支持体上に、疎水性ポリマーからなる微粒子と架橋構造を有する親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版であって、疎水性ポリマーが熱分解性結合を含むことを特徴とする平版印刷原版。
- 疎水性ポリマーが架橋構造を有し、熱分解性結合が架橋構造に含まれている請求項5に記載の平版印刷原版。
- 疎水性ポリマーが炭化水素主鎖を有する請求項5に記載の平版印刷原版。
- 熱分解性結合がウレタン結合またはスルホン酸エステル結合である請求項5に記載の平版印刷原版。
- 親水性ポリマーの架橋構造が、親水性ポリマーとケイ素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウムの水酸化物またはアルコキシドとの反応により形成されている請求項5に記載の平版印刷原版。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003070259A JP2004276385A (ja) | 2003-03-14 | 2003-03-14 | 平版印刷版の製版方法、平版印刷方法および平版印刷原版 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007026491A1 (ja) * | 2005-08-30 | 2007-03-08 | Mitsui Chemicals, Inc. | 平版印刷用原版、および平版印刷用原版の感光層用樹脂組成物 |
-
2003
- 2003-03-14 JP JP2003070259A patent/JP2004276385A/ja not_active Withdrawn
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WO2007026491A1 (ja) * | 2005-08-30 | 2007-03-08 | Mitsui Chemicals, Inc. | 平版印刷用原版、および平版印刷用原版の感光層用樹脂組成物 |
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