JP2004276322A - インクジェットインク受容層形成用インクおよびそれを用いたシートおよびインクジェットインク受容層への印字・画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラスチックフィルムやプラチックシートなどのシート基材の必要な部分に、インクジェットインクの定着性、耐水性に優れ、滲みが起こらず、品質の高い印字・画像を容易に形成できるインクおよびそのようなインクを用いてシート基材の所定部に形成されたインクジェットインク受容層を有するシートおよび印字・画像を容易に形成する方法の提供。
【解決手段】透明インクジェットインク受容層を形成するためのインクであって、3官能以上のアクリル系光重合成分および光重合開始剤を必須主要成分として含み、任意成分として3官能未満のアクリル系光重合成分を含むインクジェットインク受容層形成用インクにより課題を解決できる。
【選択図】 図1
【解決手段】透明インクジェットインク受容層を形成するためのインクであって、3官能以上のアクリル系光重合成分および光重合開始剤を必須主要成分として含み、任意成分として3官能未満のアクリル系光重合成分を含むインクジェットインク受容層形成用インクにより課題を解決できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットインク受容層形成用インクおよびそれを用いたシートおよびインクジェットインク受容層への印字・画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェットインクを使用するインクジェットプリンタによる記録形態は、高速、低騒音、機構が簡単で小型軽量、マルチカラー化が容易で、画像の大型化が容易、現像定着が不要、記録パターンの融通性が大きいなど多くの特徴があり、文字だけでなく画像の処理をも含んだハードコピーを得る方法として広く普及している。紙や紙カードへの印字については実用化されているが、インクジェットインクを使用して印字可能なプラスチックフィルムやプラチックシートが求められている。
インクジェットインクを使用するインクジェットプリンタでは、ジェットノズル部においてインクの乾燥によりインクの粘度が上昇して噴出不良となるのを防ぐため、比較的乾燥し難いインクが用いられており、しかも、インクジェットインクは一般に水溶性の染料や親水性顔料、バインダ、添加剤などを水に溶解または安定的に分散されたものからなるため、プラスチックフィルムやプラチックシートはインクジェットインクの受容性がなく乾燥や定着が不良となり印字困難である。
そこで、印字可能なプラスチックフィルムやプラチックシートの特性としては、(1)インクの定着が速やかで、かつ良好であり、印刷後インクの液だれなどが起こらないこと、(2)印字濃度が高く、発色性に優れていること、(3)インク液滴が拡散してドットの径が必要以上に大きくならないこと、などが求められる。
【0003】
一般的にインクジェットインク印字性向上のためには、通常の紙やインクジェット記録用紙と称されるシート基材上に非晶質シリカなどの微粒子とポリビニルアルコールなどの水溶性バインダ樹脂からなる多孔質のインクジェットインク受容層を設けてなる記録材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしこれらの記録材料は何れも通常の紙やインクジェット記録用紙などをシート基材として用いるものであり、プラスチックフィルムやプラチックシートなどのシート基材に対しては適用できない。
【0004】
そこで、透明な合成樹脂シート表面に、ポリビニルピロリドンを含有するインク受容層を設けたインクジェット記録用シート(特許文献2参照)、透明な熱可塑性樹脂フィルム上に、ポリビニルアルコールやゼラチンなどの水溶性樹脂とコロイダルシリカとを含有する透明なインク受容層を設けた記録用シート(特許文献3参照)、透明なプラスチックフィルム上に、平均粒径1〜100mμの超微粒子と平均粒径1〜20μmの微粒子とを含有する水溶性高分子の薄膜を設けた記録用シート(特許文献4参照)、透明フィルム上に粒径5〜50μm程度の透明性微粒子(ガラスビーズや合成樹脂球状マイクロビーズなど)を含有させた透明性接着剤を塗布したオーバーヘッドプロジェクタ用フィルム(特許文献5参照)、水溶性高分子化合物(例えば、ポリビニルピロリドン)と水不溶性高分子化合物(例えば、ソルビトールと芳香族アルデヒドの縮合生成物)を含む少なくとも2種の成分と、一方の成分に対して良溶媒であり、他方の成分に対して貧溶媒である溶媒とを含む加熱溶液を基材に直接塗布し、溶媒を高温で乾燥除去してインク受容層を形成する方法(特許文献6参照)、などが提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭64−11877号公報
【特許文献2】
特開昭61−32788号公報
【特許文献3】
特開昭61−19389号公報
【特許文献4】
特開昭61−280983号公報
【特許文献5】
特開昭61−24494号公報
【特許文献6】
特許第2694042号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ポリビニルピロリドンを含有するインク受容層は、インク液滴の付着により膨潤する膨潤型であるため、インクの固化能力が不十分であり、印字後の経時変化により画像のシャープさが低下する問題があり、また、膨潤型のインクジェット記録媒体は吸湿によりインク受容層が粘着性を持つようになるためブロッキングして取扱性が低下し易い問題がある。
コロイダルシリカやアルミナなどの無機粒子を高比率で混入した水溶性高分子からなるインク受容層は、インク液滴を吸収する吸収型であるため、インクの固化能力は良好であるものの、透明性が不十分であったり、脆くて割れ易い問題がある。
ガラスビーズや合成樹脂球状マイクロビーズなどを水溶性高分子バインダで結合固定してなるインク受容層は、インクの吸収性は良好であるが、定着性に劣り、滲みが多く、しかも脆くて割れ易い問題がある。
【0007】
これらの水溶性高分子を含有するインク受容層は、耐水性および耐候性が不十分であり、水との接触により水溶性高分子が溶解してインク受容層が破壊され易く、また厳しい環境下に置かれると画像が変化したり、インク受容層の劣化が進み易い。そのため水溶性高分子を含有するインク受容層が形成されたインクジェット記録媒体は屋外におけるサイン用途や自動車への貼付など、耐水性および耐候性が要求される用途分野への適用に制限があった。
吸収型のインク受容層の場合には、水溶性高分子を架橋することにより耐水性および耐候性を向上することができるものの十分でなく、屋外では1ケ月程度でインク受容層が劣化して割れが発生する。
水溶性高分子化合物と水不溶性高分子化合物を含むインク受容層は、水不溶性高分子化合物の配合により耐ブロッキング性が改善されるものの、インク吸収性を水溶性高分子化合物や水溶性有機化合物により得ており、インク受容性、耐水性および耐候性が不十分である。
【0008】
また、以上に記載した従来のインク受容層形成用インクは基材に対して全面塗工を行うものであり、プラスチックフィルムやプラチックシートなどの基材の必要な部分に部分的にインク受容層を形成することはできなかった。
【0009】
本発明の第1の目的は、従来の問題を解決し、プラスチックフィルムやプラチックシートなどのシート基材の必要な部分にインクジェットインク受容層を容易に形成できるインクを提供することであり、
本発明の第2の目的は、そのようなインクを用いてシート基材の所定部に形成されたインクジェットインク受容層を有するシートを提供することであり、
本発明の第3の目的は、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性に優れ、滲みが起こらず、品質の高い印字・画像を容易に形成する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明の請求項1は、透明インクジェットインク受容層を形成するためのインクであって、3官能以上のアクリル系光重合成分および光重合開始剤を必須主要成分として含み、任意成分として3官能未満のアクリル系光重合成分を含むことを特徴とするインクジェットインク受容層形成用インクである。
【0011】
本発明のインクは、印刷適性がよくインクジェットインクの受容性の優れた透明インクジェットインク受容層をプラスチックフィルムやプラチックシートなどのシート基材の必要な部分に容易に形成できるとともに、このインクジェットインク受容層面に公知のジェットプリンタを用いて印字・画像を形成した後、光照射すると硬化速度が速く、定着性、耐水性に優れ、滲みがなく、品質の高い印字・画像が得られる。
すなわち、この透明インクジェットインク受容層面にインクジェットプリンタを用いて印字・画像を形成した後、直ちに光を短時間照射して硬化させることができる。本発明のインクには、通常使用される粘度調整剤や多孔質微粒子などを配合せず、3官能以上のアクリル系光重合成分および光重合開始剤を必須主要成分として含むインクを用いることが必要であり、そして1官能アクリル系光重合成分および/または2官能アクリル系光重合成分から選ばれる3官能未満のアクリル系光重合成分は配合量が多すぎると光照射による硬化速度がやや低下したり、滲みが発生する恐れがあるものの、粘度を調整してインクジェットプリンタ適性を向上させる作用効果があるので任意成分として配合する。
【0012】
本発明の請求項2は、シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて形成されたインクジェットインク受容層を有してなることを特徴とするシートである。
【0013】
本発明のシートの透明インクジェットインク受容層面にインクジェットプリンタを用いて印字・画像を形成した後、光を印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層に短時間照射して硬化させることにより、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性に優れ、滲みが起こらず、品質の高い印字・画像を形成することができる。
【0014】
本発明の請求項3は、請求項2記載のシートにおいて、前記透明インクジェットインク受容層面に保護層が形成されてなることを特徴とする。
【0015】
インクジェットインク受容層へ形成された印字・画像を摩擦、衝撃、水、熱などの外部からの刺激から保護して本発明のシートの特性を維持できる。
【0016】
本発明の請求項4は、シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて透明インクジェットインク受容層を形成した後、インクジェットプリンタを用いて前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、光照射して印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層を完全に硬化することを特徴とする印字・画像形成方法である。
【0017】
本発明の印字・画像形成方法により、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性に優れ、滲みが起こらず、品質の高い印字・画像を短時間で効率よく例えばインライン方式で形成することができる。
【0018】
本発明の請求項5は、シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて透明インクジェットインク受容層を形成した後、前記インクジェットインク受容層に光照射して半硬化した後、インクジェットプリンタを用いて半硬化した前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、再度光照射して印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層を完全に硬化することを特徴とする印字・画像形成方法である。
【0019】
本発明の印字・画像形成方法により、半硬化させた前記インクジェットインク受容層は広がったり、流動したりしないが、未だ表面が柔らかくインクジェットインクの受容性が充分にあり、ジェットプリンタを用いて半硬化した前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、再度光照射して完全に硬化することにより、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性により優れ、滲みがより起こらず、したがって解像度がアップしてより品質の高い印字・画像を短時間で効率よく例えばインライン方式で形成することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1(イ)〜(ハ)は、本発明のシートおよび印字・画像形成方法の1実施の形態の断面を模式的に説明する説明図である。
図1(イ)に示すように、本発明のシート1は、シート基材(例えばプラスチックシート基材)2の上面の所定の箇所に本発明のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて図示しない公知の印刷機により印刷して形成された透明インクジェットインク受容層3を有している。本発明のインクジェットインク受容層形成用インクは、印刷インク適性に優れるため公知の印刷機でシート基材2の必要な所定の箇所に容易に透明インクジェットインク受容層3を形成できる。
【0021】
図1(ロ)に示すように、未だ硬化させていないインクジェットインク受容層3は表面が柔らかくインクジェットインクの受容性が充分にあるので、公知のインクジェットインクを使用して、図示しないインクジェットプリンタにより、前記インクジェットインク受容層3面に印字・画像4を形成することができる。そして引き続きあまり間をおくことなく、高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどを用いて近紫外光を照射してインクジェットインク受容層3を完全に硬化することにより、インクジェットインク受容層3への定着性、耐水性に優れ、滲みが起こらず、品質の高い印字・画像4を短時間で効率よく例えばインライン方式で形成することができる。
【0022】
高圧水銀ランプやメタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプなどを用いて、近紫外域の200nm〜450nm、中でも300nm〜400nmの紫外光を照射してインクジェットインク受容層3を完全に硬化(インクジェットインク受容層3がもうこれ以上硬化反応が進行しないまで)させる。
【0023】
図1(ハ)に示すように、印字・画像4を保護するために硬化させたインクジェットインク受容層3面に保護層5を形成することができる。
【0024】
シート基材2の上面へのインクジェットインク受容層3の形成、インクジェットインク受容層3面への印字・画像4の形成、紫外光の照射によるインクジェットインク受容層3の硬化、保護層5の形成はインラインで行うこともでき、本発明のシート1を効率よく容易に製造できる。
上記の(イ)〜(ハ)の工程を例えばインライン方式で連続的に行うことも可能である。
【0025】
図2(イ)〜(ニ)は、本発明のシートおよび印字・画像形成方法の他の実施の形態の断面を模式的に説明する説明図である。
図2(イ)に示すように、本発明のシート1Aは、シート基材(例えばプラスチックシート基材)2の上面の所定の箇所に本発明のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて図示しない公知の印刷機により印刷して形成された透明インクジェットインク受容層3を有している。
本発明のインクジェットインク受容層形成用インクは、印刷インク適性に優れるため公知の印刷機でシート基材2の必要な所定の箇所に容易に透明インクジェットインク受容層3を形成できる。
【0026】
図2(ロ)に示すように、インクジェットインク受容層3に例えば、高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどを使用して近紫外光を照射してインクジェットインク受容層3を半硬化させる。
【0027】
高圧水銀ランプやメタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプなどを使用して用いて、近紫外域の200nm〜450nm、中でも300nm〜400nmの紫外光を照射してインクジェットインク受容層3を半硬化させる。ここでいう半硬化とは、完全に硬化反応が終了する近紫外線量の例えば1/4〜1/2により硬化された状態である。
【0028】
この半硬化状態であれば、図2(ハ)に示すように、半硬化させたインクジェットインク受容層3は広がったり、流動したりしないが、未だ表面が柔らかくインクジェットインクの受容性が充分にあり、ジェットプリンタを用いて半硬化したインクジェットインク受容層面に印字・画像4を形成することができる。そして引き続きあまり間をおくことなく、高圧水銀ランプなどを用いて近紫外光を再度照射してインクジェットインク受容層3を完全に硬化することにより、インクジェットインク受容層3へ定着性、耐水性により優れ、滲みがより起こらず、したがって解像度がアップしてより品質の高い印字・画像4を短時間で効率よく形成することができる。
【0029】
図2(ニ)に示すように、印字・画像4を保護するために完全に硬化させたインクジェットインク受容層3面に保護層5を形成することができる。上記の(イ)〜(ニ)の工程を例えばインライン方式で連続的に行うことも可能である。
【0030】
シート基材の上面へのインクジェットインク受容層3の形成、不十分な量の近紫外光を照射するインクジェットインク受容層3の半硬化、インクジェットインク受容層3面への印字・画像4の形成、近紫外光の照射によるインクジェットインク受容層3の完全硬化、保護層5の形成はインラインで行うこともでき、本発明のシート1Aを効率よく容易に製造できる。
【0031】
本発明で用いるアクリル系光重合成分としては、具体的には、例えばアクリル酸やメタクリル酸などの不飽和カルボン酸又はそのエステル、例えばアルキル‐、シクロアルキル‐、ハロゲン化アルキル‐、アルコキシアルキル‐、ヒドロキシアルキル‐、アミノアルキル‐、テトラヒドロフルフリル‐、アリル‐、グリシジル‐、ベンジル‐、フェノキシ‐アクリレート及びメタクリレート、低級アルキレングリコール、アクリルアミド、メタクリルアミド又はその誘導体、例えばアルキル基やヒドロキシアルキル基でモノ置換又はジ置換されたアクリルアミド及びメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド及びメタクリルアミド、N,N′‐アルキレンビスアクリルアミド及びメタクリルアミドなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
これらは1官能アクリル系光重合成分、2官能アクリル系光重合成分、3官能アクリル系光重合成分、あるいは3官能以上の多官能アクリル系光重合成分があるが、本発明においては印字・画像の定着性、耐水性を向上させ、滲みを防止して品質の高い印字・画像を維持するため、および速い光硬化速度を得るために3官能以上のアクリル系光重合成分を必須主要成分として用いる。
【0033】
3官能性アクリル系光重合成分の具体例としては、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成社製、M305、粘度400〜800cps/25℃)、
トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製、M309、粘度60〜110cps/25℃)、
トリメチロールプロパンPO変性(n≒1)トリアクリレート(東亞合成社製、M310、粘度60〜110cps/25℃)、
イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート(東亞合成社製、M315、粘度600〜1200cps/25℃)、
トリメチロールプロパンPO変性(n≒2)トリアクリレート(東亞合成社製、M320、粘度70〜170cps/25℃)、
トリメチロールプロパンEO変性(n≒2)トリアクリレート(東亞合成社製、M350、粘度50〜70cps/25℃)、
トリメチロールプロパンEO変性(n≒2)トリアクリレート(東亞合成社製、M360、粘度65〜90cps/25℃)
などを挙げることができる。
【0034】
アクリル系光重合成分としては、疎水性を有するものと親水性を有するものがあるが本発明においては単独でもよく、両者の任意の混合物でもよく、いずれも使用できる。親水性を有するアクリル系光重合成分は常温の水によく溶解し放置しても分離したり沈殿を生じたりない、例えばエチレングリコール単位を分子内にもつポリエチレングリコール(nは3以上であり、およそ14以下)ジアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(nは3以上であり、およそ14以下)トリアクリレートなどのアクリル系光重合成分と異なり、疎水性を有するアクリル系光重合成分は常温の水に溶解したりしない疎水性を有するものである。
【0035】
疎水性を有するアクリル系光重合成分は例えば、エチレングリコール単位を分子内にもたないか、あるいは持っていてもn=2以下のポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(nは2以下)トリアクリレートなどを挙げることができる。
【0036】
そして、1官能アクリル系光重合成分および/または2官能アクリル系光重合成分から選ばれる3官能未満のアクリル系光重合成分は、配合量が多すぎると光照射による硬化速度がやや低下したり、滲みが発生する恐れがあるものの、粘度を調整してインクジェットプリンタ適性を向上させることができるので、インクジェットプリンタの種類やプリント条件などにより適宜に任意成分として配合することができる。
【0037】
また本発明においてはアクリル系光重合成分として、アクリル系光重合オリゴマーを必要に応じて配合することができる。アクリル系光重合オリゴマーを配合すると、波長および波長巾の大きい光を照射してインクジェットインク受容層を半硬化させなくても、インクジェットインク受容層は広がったり、流動したりせず、表面が柔らかくインクジェットインクの受容性が充分にある状態に調整することができ、インクジェットプリンタを用いてこのインクジェットインク受容層面に印字・画像を形成することができる。
【0038】
本発明で必要に応じて用いるアクリル系光重合オリゴマーは、末端にアクリロイル基、メタクリロイル基をもつオリゴマーであり、このようなオリゴマーとしては、エポキシ系アクリレート、ポリエステル系アクリレート、ポリビニルアルコール系オリゴマー、ポリアクリル酸系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマーなどであり、具体的には、例えば、エポキシ樹脂のアクリル酸エステル例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテルジアクリレート、エポキシ樹脂とアクリル酸とメチルテトラヒドロフタル酸無水物との反応生成物、エポキシ樹脂と2‐ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物などのエポキシ系アクリレート、グリシジルジアクリレートと無水フタル酸との開環共重合エステル、メタクリル酸二量体とポリオールとのエステル、アクリル酸と無水フタル酸とプロピレンオキシドから得られるポリエステル、ポリエチレングリコールと無水マレイン酸とグリシジルメタクリレートとの反応生成物などのようなポリエステル系オリゴマー、ポリビニルアルコールとN‐メチロールアクリルアミドとの反応生成物、ポリビニルアルコールを無水コハク酸でエステル化したのち、グリシジルメタクリレートを付加させたものなどのようなポリビニルアルコール系オリゴマー、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体と2‐ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物又はこれにさらにグリシジルメタクリレートを反応させたものなどのポリアクリル酸系オリゴマー、ウレタン結合を介してポリオキシアルキレンセグメント又は飽和ポリエステルセグメントあるいはその両方が連結し、両末端にアクリロイル基又はメタクロイル基を有するウレタンアクリレート系オリゴマーなどを挙げることができる。
これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、さらにアクリル系光重合オリゴマー以外のオリゴマーと組み合わせて用いることもできる。
【0039】
これらのアクリル系光重合オリゴマーは、重量平均分子量2000〜30000の範囲のものが適当である。これよりも分子量が小さいものを用いると粘着性が大きくブロッキングなどを生じるため取り扱いが困難になるし、反面、これよりも分子量の大きいものを用いると、粘度が上がりインクジェットプリンタ適性が悪化する恐れがある。
【0040】
前記アクリル系光重合成分とともに用いられる光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤の中から任意のものを選択して用いることができる。
このような光重合開始剤としては、具体的には、例えばベンゾインやベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン‐n‐プロピルエーテル、ベンゾイン‐イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチル‐エーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、2,2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、エオシン、チオニン、9,10‐アントラキノン、2‐エチル‐9,10‐アントラキノンなどを挙げることができる。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
これらの光重合開始剤の配合量は、アクリル系光重合成分100質量部に対し、約0.1質量部〜15質量部、好ましくは約1質量部〜11質量部、さらに好ましくは約8質量部〜10質量部の範囲で選ばれる。
【0042】
また、インクジェットインク受容層の硬化収縮が支障となる用途の場合には、例えばイソボルニルアクリレート又はメタクリレート、ノルボルニルアクリレート又はメタクリレート、ジシクロペンテノキシエチルアクリレート又はメタクリレート、ジシクロペンテノキシプロピルアクリレート又はメタクリレートなど、ジエチレングリコールジシクロペンテニルモノエーテルのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルなど、ジシクロペンテニルシンナメート、ジシクロペンテノキシエチルシンナメート、ジシクロペンテノキシエチルモノフマレート又はジフマレートなど、3,9−ビス(1,1−ビスメチル−2−オキシエチル)−スピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ビスメチル−2−オキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(2−オキシエチル)−スピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(2−オキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどのモノ−、ジアクリレート又はモノ−、ジメタアクリレート、あるいは前記モノアクリレート又はメタクリレートのメチルエーテル、1−アザビシクロ[2,2,2]−3−オクテニルアクリレート又はメタクリレート、ビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボキシルモノアリルエステルなど、ジシクロペンタジエニルアクリレート又はメタクリレート、ジシクロペンタジエニルオキシエチルアクリレート又はメタクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート又はメタクリレートなどの光重合性モノマーを用いることができる。
これらの光重合性モノマーは単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明のインクのタイプは、溶剤型インク、水性インクなどいずれでもよく、特に限定されるものではないが、3官能以上のアクリル系光重合成分および光重合開始剤を必須主要成分として含み、任意成分として3官能未満のアクリル系光重合成分を含むインクであって、形成されるインクジェットインク受容層の透明性を損なう恐れのある通常使用される粘度調整剤や多孔質微粒子などを配合しないものが好ましく使用できる。
しかし、必要に応じて、慣用されている添加成分、例えば、反応性希釈剤、各種安定剤、界面活性剤、滑剤などを含有させることもできる。
【0044】
本発明のインクジェットインク受容層形成用インクは、オフセット印刷機、シルクスクリーン印刷機、グラビアコーター、フレキソ、エアナイフコーター、バーコーターなどの塗工手段によりシート基材の少なくとも一方の面の所定部に塗工し、必要に応じて乾燥して、紫外線などの光を照射して硬化させる。
【0045】
本発明で用いるシート基材としては、通常の紙、コート紙、アート紙、それにオーバーコート層(保護層)をもつ用紙やフィルム、プロセスカラー印刷を施したパンフレットやカタログ、書類などの他に、合成紙、あるいはポリエチレン、透明性を有するポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、塩化ビニルなどあるいはこれらの2種以上を組み合わせた合成フィルムや合成シートを用いることもできる。これらの合成フィルムや合成シートを用いる場合には基材の表面をマット処理、コロナ処理などの表面処理を施すのが好ましい。また、シート基材面への本発明のインクの塗工量は特に限定されないが、例えば1〜30g/m2、好ましくは3〜20g/m2 、さらに好ましくは5〜15g/m2 とする。
【0046】
本発明において用いるインクジェットインクとしては、たとえばアントラキノン系、ベンゾキノン系、ナフトキシキノン系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、キノリン系、インジゴイド系、アジン系、オキサジン系、チアジン系およびメチン系染料からなる群から選ばれた少なくとも1種のアニオン性インクが好適に用いられる。このインクに使用する媒体としては、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。このほかに、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤などを含有させることができる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
(実施例1)
トリメチロールプロパントリアクリレート[商品名:アロニックスM309(東亞合成社製)]92質量部と光重合開始剤[商品名:バイキュア55(アクゾノーベル社製)]8質量部添加し、30分攪拌後、3本ロールミルで、グラインドメータで5μm以下になるまで練肉を繰り返し、本発明のインクジェットインク受容層形成用インクを調製した。
本発明のインクをポリ塩化ビニル樹脂製シート基材2上に8〜20μmの厚みになるようにスクリーン印刷してインクジェットインク受容層3を形成した。インクジェットインク受容層3面にプリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。そして印字後引き続き紫外線ランプ[高圧水銀ランプ、オゾン有り、240w/cm、1灯]を用いて、コンベアスピード45m/minで紫外線を照射してインクジェットインク受容層3を完全に硬化した。
インクジェットインク受容層3面に印字された印字を目視で、下記の評価基準に従って評価した。評価結果、◎であった。
【0048】
(評価基準)
◎:インクジェットインク受容層3は印字を受け付け、画線部がイメージ通りに形成された。
○:ジェットインク受容層3は印字を受け付け、画線部がほとんどイメージ通りに形成された。
△:ジェットインク受容層3は印字を受け付けたが、画線部が少しにじみ、こすれると画線部の汚れがでたが、実用上問題ない。
×:ジェットインク受容層3は印字を受け付けない、もしくは画線部がにじみがひどく画線部の判読が不可能であり実使用不可。
【0049】
(実施例2)
実施例1で使用したトリメチロールプロパントリアクリレートをトリメチロールプロパンPO付加(n=1)トリアクリレート[商品名:アロニックスM310(東亞合成社製)]に替えた以外は実施例1と同様の操作を行い、インクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、○であった。
【0050】
(実施例3)
実施例1で使用したトリメチロールプロパントリアクリレートをトリメチロールプロパンEO付加(n=3)トリアクリレート[商品名:SR454(日本化薬社製)]に替えた以外は実施例1と同様の操作を行い、インクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、○であった。
【0051】
(実施例4)
実施例1で使用したトリメチロールプロパントリアクリレートをトリメチロールプロパンEO付加(n=9)トリアクリレート[商品名:SR502(日本化薬社製)]に替えた以外は実施例1と同様の操作を行い、インクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、△であった。
【0052】
(実施例5)
トリメチロールプロパンEO付加(n=15)トリアクリレート[商品名:SR9035(日本化薬社製)]92質量部と光重合開始剤[商品名:バイキュア55(アクゾノーベル社製)]8質量部添加し、30分攪拌後、3本ロールミルで、グラインドメータで5μm以下になるまで練肉を繰り返し、本発明のインクジェットインク受容層形成用インクを調製した。
本発明のインクをポリ塩化ビニル樹脂製シート基材2上に8〜20μmの厚みになるようにスクリーン印刷してインクジェットインク受容層3を形成した。
インクジェットインク受容層3面にメタルハライドランプ[オゾン有り、60w/cm、1灯]を用いてコンベアスピード45m/minで紫外線を照射してインクジェットインク受容層3を半硬化した。
半硬化したインクジェットインク受容層3面にプリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。そして印字後引き続きコンベアスピード45m/minで紫外線ランプ[高圧水銀ランプ、オゾン有り、240w/cm、1灯]を用いて紫外線を照射してインクジェットインク受容層3を完全に硬化した。
そして実施例1と同様にして印字を行い、インクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、△であった。プリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。
インクジェットインク受容層3面に印字された印字を目視で、下記の評価基準に従って評価した。評価結果、◎であった。
【0053】
(比較例1)
実施例1で用いた本発明のインクの代わりに市販の熱硬化性フェノール樹脂[商品名:ショウノール(昭和高分子社製)]を用いて、比較のインクジェットインク受容層形成用インクとした。
この比較のインクを実施例1と同様にポリ塩化ビニル樹脂製シート基材2上に8〜20μmの厚みになるようにスクリーン印刷してインクジェットインク受容層3を形成した。
インクジェットインク受容層3を加熱乾燥する前にインクジェットインク受容層3面にプリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。そして乾燥した。
そして、実施例1と同様にしてインクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、×であった。
【0054】
(比較例2)
実施例1で用いた本発明のインクの代わりに市販の酸化重合型樹脂(亜麻仁油)[商品名:8号ボイル油(日清製油社製)]100質量部を用い、比較のインクジェットインク受容層形成用インクとした。
この比較のインクを実施例1と同様にポリ塩化ビニル樹脂製シート基材2上に8〜20μmの厚みになるようにスクリーン印刷してインクジェットインク受容層3を形成し、乾燥した後、インクジェットインク受容層3面にプリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。
そして、実施例1と同様にしてインクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、×であった。
【0055】
(比較例3)
トリメチロールプロパントリアクリレート[商品名:アロニックスM309(東亞合成社製)]92質量部と光重合開始剤[商品名:バイキュア55(アクゾノーベル社製)]8質量部添加し、30分攪拌後、3本ロールミルで、グラインドメータで5μm以下になるまで練肉を繰り返し、本発明のインクジェットインク受容層形成用インクを調製した。
本発明のインクをポリ塩化ビニル樹脂製シート基材2上に8〜20μmの厚みになるようにスクリーン印刷してインクジェットインク受容層3を形成した。
そして、引き続き紫外線ランプ[高圧水銀ランプ、オゾン有り、240w/cm、1灯]を用いてコンベアスピード45m/minで紫外線を照射してインクジェットインク受容層3を完全に硬化した。
硬化させたインクジェットインク受容層3面にプリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。
そして、実施例1と同様にしてインクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、×であった。
【0056】
(比較例4)
トリメチロールプロパントリアクリレート[商品名:アロニックスM309(東亞合成社製)]92質量部と光重合開始剤[商品名:バイキュア55(アクゾノーベル社製)]8質量部添加し、30分攪拌後、3本ロールミルで、グラインドメータで5μm以下になるまで練肉を繰り返し、本発明のインクジェットインク受容層形成用インクを調製した。
本発明のインクをポリ塩化ビニル樹脂製シート基材2上に8〜20μmの厚みになるようにスクリーン印刷してインクジェットインク受容層3を形成した。
そして、引き続きインクジェットインク受容層3面にプリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。
印字後もインクジェットインク受容層3を硬化させなかった。
そして、実施例1と同様にしてインクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、×であった。
【0057】
【発明の効果】
本発明の請求項1のインクジェットインク受容層形成用インクは、透明インクジェットインク受容層を形成するためのインクであって、3官能以上のアクリル系光重合成分および光重合開始剤を必須主要成分として含み、任意成分として3官能未満のアクリル系光重合成分を含むことを特徴とするものであり、印刷適性がよくインクジェットインクの受容性の優れた透明インクジェットインク受容層をプラスチックフィルムやプラチックシートなどのシート基材の必要な部分に容易に形成できるとともに、このインクジェットインク受容層面に公知のインクジェットプリンタを用いて印字・画像を形成した後、光照射すると硬化速度が速く、定着性、耐水性に優れ、滲みがなく、品質の高い印字・画像が得られるという顕著な効果を奏する。
すなわち、この透明インクジェットインク受容層面にインクジェットプリンタを用いて印字・画像を形成した後、直ちに光を短時間照射して硬化させることができる。本発明のインクには、通常使用される粘度調整剤や多孔質微粒子などを配合せず、3官能以上のアクリル系光重合成分および光重合開始剤を必須主要成分として含むインクを用いることが必要であり、そして1官能アクリル系光重合成分および/または2官能アクリル系光重合成分から選ばれる3官能未満のアクリル系光重合成分は配合量が多すぎると光照射による硬化速度がやや低下したり、滲みが発生する恐れがあるものの、粘度を調整してインクジェットプリンタ適性を向上させる作用効果があるので任意成分として配合する。
【0058】
本発明の請求項2は、シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて形成されたインクジェットインク受容層を有してなることを特徴とするシートであり、透明インクジェットインク受容層面にインクジェットプリンタを用いて印字・画像を形成した後、光を印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層に短時間照射して硬化させることにより、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性に優れ、滲みが起こらず、品質の高い印字・画像を形成することができるという顕著な効果を奏する。
【0059】
本発明の請求項3は、請求項2記載のシートにおいて、前記透明インクジェットインク受容層面に保護層が形成されてなることを特徴とするものであり、インクジェットインク受容層へ形成された印字・画像を摩擦、衝撃、水、熱などの外部からの刺激から保護して本発明のシートの特性を維持できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0060】
本発明の請求項4は、シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて透明インクジェットインク受容層を形成した後、インクジェットプリンタを用いて前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、光照射して印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層を完全に硬化することを特徴とする印字・画像形成方法であり、本発明の印字・画像形成方法により、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性に優れ、滲みが起こらず、品質の高い印字・画像を短時間で効率よく容易に例えばインライン方式で形成することができるという顕著な効果を奏する。
【0061】
本発明の請求項5は、シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて透明インクジェットインク受容層を形成した後、前記インクジェットインク受容層に光照射して半硬化した後、インクジェットプリンタを用いて半硬化した前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、再度光照射して印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層を完全に硬化することを特徴とする印字・画像形成方法であり、本発明の印字・画像形成方法により、半硬化させた前記インクジェットインク受容層は広がったり、流動したりしないが、未だ表面が柔らかくインクジェットインクの受容性が充分にあり、インクジェットプリンタを用いて半硬化した前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、再度光照射して完全に硬化することにより、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性により優れ、滲みがより起こらず、したがって解像度がアップしてより品質の高い印字・画像を短時間で効率よく例えばインライン方式で形成することができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(イ)〜(ハ)は、本発明のシートおよび印字・画像形成方法の1実施の形態の断面を模式的に説明する説明図である。
【図2】(イ)〜(ニ)は、本発明のシートおよび印字・画像形成方法の1実施の形態の断面を模式的に説明する説明図である。
【符号の説明】
1、1A 本発明のシート
2 シート基材
3 インクジェットインク受容層
4 印字・画像
5 保護層
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットインク受容層形成用インクおよびそれを用いたシートおよびインクジェットインク受容層への印字・画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェットインクを使用するインクジェットプリンタによる記録形態は、高速、低騒音、機構が簡単で小型軽量、マルチカラー化が容易で、画像の大型化が容易、現像定着が不要、記録パターンの融通性が大きいなど多くの特徴があり、文字だけでなく画像の処理をも含んだハードコピーを得る方法として広く普及している。紙や紙カードへの印字については実用化されているが、インクジェットインクを使用して印字可能なプラスチックフィルムやプラチックシートが求められている。
インクジェットインクを使用するインクジェットプリンタでは、ジェットノズル部においてインクの乾燥によりインクの粘度が上昇して噴出不良となるのを防ぐため、比較的乾燥し難いインクが用いられており、しかも、インクジェットインクは一般に水溶性の染料や親水性顔料、バインダ、添加剤などを水に溶解または安定的に分散されたものからなるため、プラスチックフィルムやプラチックシートはインクジェットインクの受容性がなく乾燥や定着が不良となり印字困難である。
そこで、印字可能なプラスチックフィルムやプラチックシートの特性としては、(1)インクの定着が速やかで、かつ良好であり、印刷後インクの液だれなどが起こらないこと、(2)印字濃度が高く、発色性に優れていること、(3)インク液滴が拡散してドットの径が必要以上に大きくならないこと、などが求められる。
【0003】
一般的にインクジェットインク印字性向上のためには、通常の紙やインクジェット記録用紙と称されるシート基材上に非晶質シリカなどの微粒子とポリビニルアルコールなどの水溶性バインダ樹脂からなる多孔質のインクジェットインク受容層を設けてなる記録材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしこれらの記録材料は何れも通常の紙やインクジェット記録用紙などをシート基材として用いるものであり、プラスチックフィルムやプラチックシートなどのシート基材に対しては適用できない。
【0004】
そこで、透明な合成樹脂シート表面に、ポリビニルピロリドンを含有するインク受容層を設けたインクジェット記録用シート(特許文献2参照)、透明な熱可塑性樹脂フィルム上に、ポリビニルアルコールやゼラチンなどの水溶性樹脂とコロイダルシリカとを含有する透明なインク受容層を設けた記録用シート(特許文献3参照)、透明なプラスチックフィルム上に、平均粒径1〜100mμの超微粒子と平均粒径1〜20μmの微粒子とを含有する水溶性高分子の薄膜を設けた記録用シート(特許文献4参照)、透明フィルム上に粒径5〜50μm程度の透明性微粒子(ガラスビーズや合成樹脂球状マイクロビーズなど)を含有させた透明性接着剤を塗布したオーバーヘッドプロジェクタ用フィルム(特許文献5参照)、水溶性高分子化合物(例えば、ポリビニルピロリドン)と水不溶性高分子化合物(例えば、ソルビトールと芳香族アルデヒドの縮合生成物)を含む少なくとも2種の成分と、一方の成分に対して良溶媒であり、他方の成分に対して貧溶媒である溶媒とを含む加熱溶液を基材に直接塗布し、溶媒を高温で乾燥除去してインク受容層を形成する方法(特許文献6参照)、などが提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭64−11877号公報
【特許文献2】
特開昭61−32788号公報
【特許文献3】
特開昭61−19389号公報
【特許文献4】
特開昭61−280983号公報
【特許文献5】
特開昭61−24494号公報
【特許文献6】
特許第2694042号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ポリビニルピロリドンを含有するインク受容層は、インク液滴の付着により膨潤する膨潤型であるため、インクの固化能力が不十分であり、印字後の経時変化により画像のシャープさが低下する問題があり、また、膨潤型のインクジェット記録媒体は吸湿によりインク受容層が粘着性を持つようになるためブロッキングして取扱性が低下し易い問題がある。
コロイダルシリカやアルミナなどの無機粒子を高比率で混入した水溶性高分子からなるインク受容層は、インク液滴を吸収する吸収型であるため、インクの固化能力は良好であるものの、透明性が不十分であったり、脆くて割れ易い問題がある。
ガラスビーズや合成樹脂球状マイクロビーズなどを水溶性高分子バインダで結合固定してなるインク受容層は、インクの吸収性は良好であるが、定着性に劣り、滲みが多く、しかも脆くて割れ易い問題がある。
【0007】
これらの水溶性高分子を含有するインク受容層は、耐水性および耐候性が不十分であり、水との接触により水溶性高分子が溶解してインク受容層が破壊され易く、また厳しい環境下に置かれると画像が変化したり、インク受容層の劣化が進み易い。そのため水溶性高分子を含有するインク受容層が形成されたインクジェット記録媒体は屋外におけるサイン用途や自動車への貼付など、耐水性および耐候性が要求される用途分野への適用に制限があった。
吸収型のインク受容層の場合には、水溶性高分子を架橋することにより耐水性および耐候性を向上することができるものの十分でなく、屋外では1ケ月程度でインク受容層が劣化して割れが発生する。
水溶性高分子化合物と水不溶性高分子化合物を含むインク受容層は、水不溶性高分子化合物の配合により耐ブロッキング性が改善されるものの、インク吸収性を水溶性高分子化合物や水溶性有機化合物により得ており、インク受容性、耐水性および耐候性が不十分である。
【0008】
また、以上に記載した従来のインク受容層形成用インクは基材に対して全面塗工を行うものであり、プラスチックフィルムやプラチックシートなどの基材の必要な部分に部分的にインク受容層を形成することはできなかった。
【0009】
本発明の第1の目的は、従来の問題を解決し、プラスチックフィルムやプラチックシートなどのシート基材の必要な部分にインクジェットインク受容層を容易に形成できるインクを提供することであり、
本発明の第2の目的は、そのようなインクを用いてシート基材の所定部に形成されたインクジェットインク受容層を有するシートを提供することであり、
本発明の第3の目的は、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性に優れ、滲みが起こらず、品質の高い印字・画像を容易に形成する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明の請求項1は、透明インクジェットインク受容層を形成するためのインクであって、3官能以上のアクリル系光重合成分および光重合開始剤を必須主要成分として含み、任意成分として3官能未満のアクリル系光重合成分を含むことを特徴とするインクジェットインク受容層形成用インクである。
【0011】
本発明のインクは、印刷適性がよくインクジェットインクの受容性の優れた透明インクジェットインク受容層をプラスチックフィルムやプラチックシートなどのシート基材の必要な部分に容易に形成できるとともに、このインクジェットインク受容層面に公知のジェットプリンタを用いて印字・画像を形成した後、光照射すると硬化速度が速く、定着性、耐水性に優れ、滲みがなく、品質の高い印字・画像が得られる。
すなわち、この透明インクジェットインク受容層面にインクジェットプリンタを用いて印字・画像を形成した後、直ちに光を短時間照射して硬化させることができる。本発明のインクには、通常使用される粘度調整剤や多孔質微粒子などを配合せず、3官能以上のアクリル系光重合成分および光重合開始剤を必須主要成分として含むインクを用いることが必要であり、そして1官能アクリル系光重合成分および/または2官能アクリル系光重合成分から選ばれる3官能未満のアクリル系光重合成分は配合量が多すぎると光照射による硬化速度がやや低下したり、滲みが発生する恐れがあるものの、粘度を調整してインクジェットプリンタ適性を向上させる作用効果があるので任意成分として配合する。
【0012】
本発明の請求項2は、シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて形成されたインクジェットインク受容層を有してなることを特徴とするシートである。
【0013】
本発明のシートの透明インクジェットインク受容層面にインクジェットプリンタを用いて印字・画像を形成した後、光を印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層に短時間照射して硬化させることにより、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性に優れ、滲みが起こらず、品質の高い印字・画像を形成することができる。
【0014】
本発明の請求項3は、請求項2記載のシートにおいて、前記透明インクジェットインク受容層面に保護層が形成されてなることを特徴とする。
【0015】
インクジェットインク受容層へ形成された印字・画像を摩擦、衝撃、水、熱などの外部からの刺激から保護して本発明のシートの特性を維持できる。
【0016】
本発明の請求項4は、シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて透明インクジェットインク受容層を形成した後、インクジェットプリンタを用いて前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、光照射して印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層を完全に硬化することを特徴とする印字・画像形成方法である。
【0017】
本発明の印字・画像形成方法により、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性に優れ、滲みが起こらず、品質の高い印字・画像を短時間で効率よく例えばインライン方式で形成することができる。
【0018】
本発明の請求項5は、シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて透明インクジェットインク受容層を形成した後、前記インクジェットインク受容層に光照射して半硬化した後、インクジェットプリンタを用いて半硬化した前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、再度光照射して印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層を完全に硬化することを特徴とする印字・画像形成方法である。
【0019】
本発明の印字・画像形成方法により、半硬化させた前記インクジェットインク受容層は広がったり、流動したりしないが、未だ表面が柔らかくインクジェットインクの受容性が充分にあり、ジェットプリンタを用いて半硬化した前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、再度光照射して完全に硬化することにより、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性により優れ、滲みがより起こらず、したがって解像度がアップしてより品質の高い印字・画像を短時間で効率よく例えばインライン方式で形成することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1(イ)〜(ハ)は、本発明のシートおよび印字・画像形成方法の1実施の形態の断面を模式的に説明する説明図である。
図1(イ)に示すように、本発明のシート1は、シート基材(例えばプラスチックシート基材)2の上面の所定の箇所に本発明のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて図示しない公知の印刷機により印刷して形成された透明インクジェットインク受容層3を有している。本発明のインクジェットインク受容層形成用インクは、印刷インク適性に優れるため公知の印刷機でシート基材2の必要な所定の箇所に容易に透明インクジェットインク受容層3を形成できる。
【0021】
図1(ロ)に示すように、未だ硬化させていないインクジェットインク受容層3は表面が柔らかくインクジェットインクの受容性が充分にあるので、公知のインクジェットインクを使用して、図示しないインクジェットプリンタにより、前記インクジェットインク受容層3面に印字・画像4を形成することができる。そして引き続きあまり間をおくことなく、高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどを用いて近紫外光を照射してインクジェットインク受容層3を完全に硬化することにより、インクジェットインク受容層3への定着性、耐水性に優れ、滲みが起こらず、品質の高い印字・画像4を短時間で効率よく例えばインライン方式で形成することができる。
【0022】
高圧水銀ランプやメタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプなどを用いて、近紫外域の200nm〜450nm、中でも300nm〜400nmの紫外光を照射してインクジェットインク受容層3を完全に硬化(インクジェットインク受容層3がもうこれ以上硬化反応が進行しないまで)させる。
【0023】
図1(ハ)に示すように、印字・画像4を保護するために硬化させたインクジェットインク受容層3面に保護層5を形成することができる。
【0024】
シート基材2の上面へのインクジェットインク受容層3の形成、インクジェットインク受容層3面への印字・画像4の形成、紫外光の照射によるインクジェットインク受容層3の硬化、保護層5の形成はインラインで行うこともでき、本発明のシート1を効率よく容易に製造できる。
上記の(イ)〜(ハ)の工程を例えばインライン方式で連続的に行うことも可能である。
【0025】
図2(イ)〜(ニ)は、本発明のシートおよび印字・画像形成方法の他の実施の形態の断面を模式的に説明する説明図である。
図2(イ)に示すように、本発明のシート1Aは、シート基材(例えばプラスチックシート基材)2の上面の所定の箇所に本発明のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて図示しない公知の印刷機により印刷して形成された透明インクジェットインク受容層3を有している。
本発明のインクジェットインク受容層形成用インクは、印刷インク適性に優れるため公知の印刷機でシート基材2の必要な所定の箇所に容易に透明インクジェットインク受容層3を形成できる。
【0026】
図2(ロ)に示すように、インクジェットインク受容層3に例えば、高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどを使用して近紫外光を照射してインクジェットインク受容層3を半硬化させる。
【0027】
高圧水銀ランプやメタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプなどを使用して用いて、近紫外域の200nm〜450nm、中でも300nm〜400nmの紫外光を照射してインクジェットインク受容層3を半硬化させる。ここでいう半硬化とは、完全に硬化反応が終了する近紫外線量の例えば1/4〜1/2により硬化された状態である。
【0028】
この半硬化状態であれば、図2(ハ)に示すように、半硬化させたインクジェットインク受容層3は広がったり、流動したりしないが、未だ表面が柔らかくインクジェットインクの受容性が充分にあり、ジェットプリンタを用いて半硬化したインクジェットインク受容層面に印字・画像4を形成することができる。そして引き続きあまり間をおくことなく、高圧水銀ランプなどを用いて近紫外光を再度照射してインクジェットインク受容層3を完全に硬化することにより、インクジェットインク受容層3へ定着性、耐水性により優れ、滲みがより起こらず、したがって解像度がアップしてより品質の高い印字・画像4を短時間で効率よく形成することができる。
【0029】
図2(ニ)に示すように、印字・画像4を保護するために完全に硬化させたインクジェットインク受容層3面に保護層5を形成することができる。上記の(イ)〜(ニ)の工程を例えばインライン方式で連続的に行うことも可能である。
【0030】
シート基材の上面へのインクジェットインク受容層3の形成、不十分な量の近紫外光を照射するインクジェットインク受容層3の半硬化、インクジェットインク受容層3面への印字・画像4の形成、近紫外光の照射によるインクジェットインク受容層3の完全硬化、保護層5の形成はインラインで行うこともでき、本発明のシート1Aを効率よく容易に製造できる。
【0031】
本発明で用いるアクリル系光重合成分としては、具体的には、例えばアクリル酸やメタクリル酸などの不飽和カルボン酸又はそのエステル、例えばアルキル‐、シクロアルキル‐、ハロゲン化アルキル‐、アルコキシアルキル‐、ヒドロキシアルキル‐、アミノアルキル‐、テトラヒドロフルフリル‐、アリル‐、グリシジル‐、ベンジル‐、フェノキシ‐アクリレート及びメタクリレート、低級アルキレングリコール、アクリルアミド、メタクリルアミド又はその誘導体、例えばアルキル基やヒドロキシアルキル基でモノ置換又はジ置換されたアクリルアミド及びメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド及びメタクリルアミド、N,N′‐アルキレンビスアクリルアミド及びメタクリルアミドなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
これらは1官能アクリル系光重合成分、2官能アクリル系光重合成分、3官能アクリル系光重合成分、あるいは3官能以上の多官能アクリル系光重合成分があるが、本発明においては印字・画像の定着性、耐水性を向上させ、滲みを防止して品質の高い印字・画像を維持するため、および速い光硬化速度を得るために3官能以上のアクリル系光重合成分を必須主要成分として用いる。
【0033】
3官能性アクリル系光重合成分の具体例としては、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成社製、M305、粘度400〜800cps/25℃)、
トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製、M309、粘度60〜110cps/25℃)、
トリメチロールプロパンPO変性(n≒1)トリアクリレート(東亞合成社製、M310、粘度60〜110cps/25℃)、
イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート(東亞合成社製、M315、粘度600〜1200cps/25℃)、
トリメチロールプロパンPO変性(n≒2)トリアクリレート(東亞合成社製、M320、粘度70〜170cps/25℃)、
トリメチロールプロパンEO変性(n≒2)トリアクリレート(東亞合成社製、M350、粘度50〜70cps/25℃)、
トリメチロールプロパンEO変性(n≒2)トリアクリレート(東亞合成社製、M360、粘度65〜90cps/25℃)
などを挙げることができる。
【0034】
アクリル系光重合成分としては、疎水性を有するものと親水性を有するものがあるが本発明においては単独でもよく、両者の任意の混合物でもよく、いずれも使用できる。親水性を有するアクリル系光重合成分は常温の水によく溶解し放置しても分離したり沈殿を生じたりない、例えばエチレングリコール単位を分子内にもつポリエチレングリコール(nは3以上であり、およそ14以下)ジアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(nは3以上であり、およそ14以下)トリアクリレートなどのアクリル系光重合成分と異なり、疎水性を有するアクリル系光重合成分は常温の水に溶解したりしない疎水性を有するものである。
【0035】
疎水性を有するアクリル系光重合成分は例えば、エチレングリコール単位を分子内にもたないか、あるいは持っていてもn=2以下のポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(nは2以下)トリアクリレートなどを挙げることができる。
【0036】
そして、1官能アクリル系光重合成分および/または2官能アクリル系光重合成分から選ばれる3官能未満のアクリル系光重合成分は、配合量が多すぎると光照射による硬化速度がやや低下したり、滲みが発生する恐れがあるものの、粘度を調整してインクジェットプリンタ適性を向上させることができるので、インクジェットプリンタの種類やプリント条件などにより適宜に任意成分として配合することができる。
【0037】
また本発明においてはアクリル系光重合成分として、アクリル系光重合オリゴマーを必要に応じて配合することができる。アクリル系光重合オリゴマーを配合すると、波長および波長巾の大きい光を照射してインクジェットインク受容層を半硬化させなくても、インクジェットインク受容層は広がったり、流動したりせず、表面が柔らかくインクジェットインクの受容性が充分にある状態に調整することができ、インクジェットプリンタを用いてこのインクジェットインク受容層面に印字・画像を形成することができる。
【0038】
本発明で必要に応じて用いるアクリル系光重合オリゴマーは、末端にアクリロイル基、メタクリロイル基をもつオリゴマーであり、このようなオリゴマーとしては、エポキシ系アクリレート、ポリエステル系アクリレート、ポリビニルアルコール系オリゴマー、ポリアクリル酸系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマーなどであり、具体的には、例えば、エポキシ樹脂のアクリル酸エステル例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテルジアクリレート、エポキシ樹脂とアクリル酸とメチルテトラヒドロフタル酸無水物との反応生成物、エポキシ樹脂と2‐ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物などのエポキシ系アクリレート、グリシジルジアクリレートと無水フタル酸との開環共重合エステル、メタクリル酸二量体とポリオールとのエステル、アクリル酸と無水フタル酸とプロピレンオキシドから得られるポリエステル、ポリエチレングリコールと無水マレイン酸とグリシジルメタクリレートとの反応生成物などのようなポリエステル系オリゴマー、ポリビニルアルコールとN‐メチロールアクリルアミドとの反応生成物、ポリビニルアルコールを無水コハク酸でエステル化したのち、グリシジルメタクリレートを付加させたものなどのようなポリビニルアルコール系オリゴマー、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体と2‐ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物又はこれにさらにグリシジルメタクリレートを反応させたものなどのポリアクリル酸系オリゴマー、ウレタン結合を介してポリオキシアルキレンセグメント又は飽和ポリエステルセグメントあるいはその両方が連結し、両末端にアクリロイル基又はメタクロイル基を有するウレタンアクリレート系オリゴマーなどを挙げることができる。
これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、さらにアクリル系光重合オリゴマー以外のオリゴマーと組み合わせて用いることもできる。
【0039】
これらのアクリル系光重合オリゴマーは、重量平均分子量2000〜30000の範囲のものが適当である。これよりも分子量が小さいものを用いると粘着性が大きくブロッキングなどを生じるため取り扱いが困難になるし、反面、これよりも分子量の大きいものを用いると、粘度が上がりインクジェットプリンタ適性が悪化する恐れがある。
【0040】
前記アクリル系光重合成分とともに用いられる光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤の中から任意のものを選択して用いることができる。
このような光重合開始剤としては、具体的には、例えばベンゾインやベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン‐n‐プロピルエーテル、ベンゾイン‐イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチル‐エーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、2,2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、エオシン、チオニン、9,10‐アントラキノン、2‐エチル‐9,10‐アントラキノンなどを挙げることができる。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
これらの光重合開始剤の配合量は、アクリル系光重合成分100質量部に対し、約0.1質量部〜15質量部、好ましくは約1質量部〜11質量部、さらに好ましくは約8質量部〜10質量部の範囲で選ばれる。
【0042】
また、インクジェットインク受容層の硬化収縮が支障となる用途の場合には、例えばイソボルニルアクリレート又はメタクリレート、ノルボルニルアクリレート又はメタクリレート、ジシクロペンテノキシエチルアクリレート又はメタクリレート、ジシクロペンテノキシプロピルアクリレート又はメタクリレートなど、ジエチレングリコールジシクロペンテニルモノエーテルのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルなど、ジシクロペンテニルシンナメート、ジシクロペンテノキシエチルシンナメート、ジシクロペンテノキシエチルモノフマレート又はジフマレートなど、3,9−ビス(1,1−ビスメチル−2−オキシエチル)−スピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ビスメチル−2−オキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(2−オキシエチル)−スピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(2−オキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどのモノ−、ジアクリレート又はモノ−、ジメタアクリレート、あるいは前記モノアクリレート又はメタクリレートのメチルエーテル、1−アザビシクロ[2,2,2]−3−オクテニルアクリレート又はメタクリレート、ビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボキシルモノアリルエステルなど、ジシクロペンタジエニルアクリレート又はメタクリレート、ジシクロペンタジエニルオキシエチルアクリレート又はメタクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート又はメタクリレートなどの光重合性モノマーを用いることができる。
これらの光重合性モノマーは単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明のインクのタイプは、溶剤型インク、水性インクなどいずれでもよく、特に限定されるものではないが、3官能以上のアクリル系光重合成分および光重合開始剤を必須主要成分として含み、任意成分として3官能未満のアクリル系光重合成分を含むインクであって、形成されるインクジェットインク受容層の透明性を損なう恐れのある通常使用される粘度調整剤や多孔質微粒子などを配合しないものが好ましく使用できる。
しかし、必要に応じて、慣用されている添加成分、例えば、反応性希釈剤、各種安定剤、界面活性剤、滑剤などを含有させることもできる。
【0044】
本発明のインクジェットインク受容層形成用インクは、オフセット印刷機、シルクスクリーン印刷機、グラビアコーター、フレキソ、エアナイフコーター、バーコーターなどの塗工手段によりシート基材の少なくとも一方の面の所定部に塗工し、必要に応じて乾燥して、紫外線などの光を照射して硬化させる。
【0045】
本発明で用いるシート基材としては、通常の紙、コート紙、アート紙、それにオーバーコート層(保護層)をもつ用紙やフィルム、プロセスカラー印刷を施したパンフレットやカタログ、書類などの他に、合成紙、あるいはポリエチレン、透明性を有するポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、塩化ビニルなどあるいはこれらの2種以上を組み合わせた合成フィルムや合成シートを用いることもできる。これらの合成フィルムや合成シートを用いる場合には基材の表面をマット処理、コロナ処理などの表面処理を施すのが好ましい。また、シート基材面への本発明のインクの塗工量は特に限定されないが、例えば1〜30g/m2、好ましくは3〜20g/m2 、さらに好ましくは5〜15g/m2 とする。
【0046】
本発明において用いるインクジェットインクとしては、たとえばアントラキノン系、ベンゾキノン系、ナフトキシキノン系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、キノリン系、インジゴイド系、アジン系、オキサジン系、チアジン系およびメチン系染料からなる群から選ばれた少なくとも1種のアニオン性インクが好適に用いられる。このインクに使用する媒体としては、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。このほかに、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤などを含有させることができる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
(実施例1)
トリメチロールプロパントリアクリレート[商品名:アロニックスM309(東亞合成社製)]92質量部と光重合開始剤[商品名:バイキュア55(アクゾノーベル社製)]8質量部添加し、30分攪拌後、3本ロールミルで、グラインドメータで5μm以下になるまで練肉を繰り返し、本発明のインクジェットインク受容層形成用インクを調製した。
本発明のインクをポリ塩化ビニル樹脂製シート基材2上に8〜20μmの厚みになるようにスクリーン印刷してインクジェットインク受容層3を形成した。インクジェットインク受容層3面にプリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。そして印字後引き続き紫外線ランプ[高圧水銀ランプ、オゾン有り、240w/cm、1灯]を用いて、コンベアスピード45m/minで紫外線を照射してインクジェットインク受容層3を完全に硬化した。
インクジェットインク受容層3面に印字された印字を目視で、下記の評価基準に従って評価した。評価結果、◎であった。
【0048】
(評価基準)
◎:インクジェットインク受容層3は印字を受け付け、画線部がイメージ通りに形成された。
○:ジェットインク受容層3は印字を受け付け、画線部がほとんどイメージ通りに形成された。
△:ジェットインク受容層3は印字を受け付けたが、画線部が少しにじみ、こすれると画線部の汚れがでたが、実用上問題ない。
×:ジェットインク受容層3は印字を受け付けない、もしくは画線部がにじみがひどく画線部の判読が不可能であり実使用不可。
【0049】
(実施例2)
実施例1で使用したトリメチロールプロパントリアクリレートをトリメチロールプロパンPO付加(n=1)トリアクリレート[商品名:アロニックスM310(東亞合成社製)]に替えた以外は実施例1と同様の操作を行い、インクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、○であった。
【0050】
(実施例3)
実施例1で使用したトリメチロールプロパントリアクリレートをトリメチロールプロパンEO付加(n=3)トリアクリレート[商品名:SR454(日本化薬社製)]に替えた以外は実施例1と同様の操作を行い、インクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、○であった。
【0051】
(実施例4)
実施例1で使用したトリメチロールプロパントリアクリレートをトリメチロールプロパンEO付加(n=9)トリアクリレート[商品名:SR502(日本化薬社製)]に替えた以外は実施例1と同様の操作を行い、インクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、△であった。
【0052】
(実施例5)
トリメチロールプロパンEO付加(n=15)トリアクリレート[商品名:SR9035(日本化薬社製)]92質量部と光重合開始剤[商品名:バイキュア55(アクゾノーベル社製)]8質量部添加し、30分攪拌後、3本ロールミルで、グラインドメータで5μm以下になるまで練肉を繰り返し、本発明のインクジェットインク受容層形成用インクを調製した。
本発明のインクをポリ塩化ビニル樹脂製シート基材2上に8〜20μmの厚みになるようにスクリーン印刷してインクジェットインク受容層3を形成した。
インクジェットインク受容層3面にメタルハライドランプ[オゾン有り、60w/cm、1灯]を用いてコンベアスピード45m/minで紫外線を照射してインクジェットインク受容層3を半硬化した。
半硬化したインクジェットインク受容層3面にプリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。そして印字後引き続きコンベアスピード45m/minで紫外線ランプ[高圧水銀ランプ、オゾン有り、240w/cm、1灯]を用いて紫外線を照射してインクジェットインク受容層3を完全に硬化した。
そして実施例1と同様にして印字を行い、インクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、△であった。プリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。
インクジェットインク受容層3面に印字された印字を目視で、下記の評価基準に従って評価した。評価結果、◎であった。
【0053】
(比較例1)
実施例1で用いた本発明のインクの代わりに市販の熱硬化性フェノール樹脂[商品名:ショウノール(昭和高分子社製)]を用いて、比較のインクジェットインク受容層形成用インクとした。
この比較のインクを実施例1と同様にポリ塩化ビニル樹脂製シート基材2上に8〜20μmの厚みになるようにスクリーン印刷してインクジェットインク受容層3を形成した。
インクジェットインク受容層3を加熱乾燥する前にインクジェットインク受容層3面にプリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。そして乾燥した。
そして、実施例1と同様にしてインクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、×であった。
【0054】
(比較例2)
実施例1で用いた本発明のインクの代わりに市販の酸化重合型樹脂(亜麻仁油)[商品名:8号ボイル油(日清製油社製)]100質量部を用い、比較のインクジェットインク受容層形成用インクとした。
この比較のインクを実施例1と同様にポリ塩化ビニル樹脂製シート基材2上に8〜20μmの厚みになるようにスクリーン印刷してインクジェットインク受容層3を形成し、乾燥した後、インクジェットインク受容層3面にプリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。
そして、実施例1と同様にしてインクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、×であった。
【0055】
(比較例3)
トリメチロールプロパントリアクリレート[商品名:アロニックスM309(東亞合成社製)]92質量部と光重合開始剤[商品名:バイキュア55(アクゾノーベル社製)]8質量部添加し、30分攪拌後、3本ロールミルで、グラインドメータで5μm以下になるまで練肉を繰り返し、本発明のインクジェットインク受容層形成用インクを調製した。
本発明のインクをポリ塩化ビニル樹脂製シート基材2上に8〜20μmの厚みになるようにスクリーン印刷してインクジェットインク受容層3を形成した。
そして、引き続き紫外線ランプ[高圧水銀ランプ、オゾン有り、240w/cm、1灯]を用いてコンベアスピード45m/minで紫外線を照射してインクジェットインク受容層3を完全に硬化した。
硬化させたインクジェットインク受容層3面にプリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。
そして、実施例1と同様にしてインクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、×であった。
【0056】
(比較例4)
トリメチロールプロパントリアクリレート[商品名:アロニックスM309(東亞合成社製)]92質量部と光重合開始剤[商品名:バイキュア55(アクゾノーベル社製)]8質量部添加し、30分攪拌後、3本ロールミルで、グラインドメータで5μm以下になるまで練肉を繰り返し、本発明のインクジェットインク受容層形成用インクを調製した。
本発明のインクをポリ塩化ビニル樹脂製シート基材2上に8〜20μmの厚みになるようにスクリーン印刷してインクジェットインク受容層3を形成した。
そして、引き続きインクジェットインク受容層3面にプリンタ[日本ヒューレットパッカード社の顔料タイプ]にて水性の黒色インクを用いて印字を行った。
印字後もインクジェットインク受容層3を硬化させなかった。
そして、実施例1と同様にしてインクジェットインク受容層3面に印字された印字を評価した。評価結果、×であった。
【0057】
【発明の効果】
本発明の請求項1のインクジェットインク受容層形成用インクは、透明インクジェットインク受容層を形成するためのインクであって、3官能以上のアクリル系光重合成分および光重合開始剤を必須主要成分として含み、任意成分として3官能未満のアクリル系光重合成分を含むことを特徴とするものであり、印刷適性がよくインクジェットインクの受容性の優れた透明インクジェットインク受容層をプラスチックフィルムやプラチックシートなどのシート基材の必要な部分に容易に形成できるとともに、このインクジェットインク受容層面に公知のインクジェットプリンタを用いて印字・画像を形成した後、光照射すると硬化速度が速く、定着性、耐水性に優れ、滲みがなく、品質の高い印字・画像が得られるという顕著な効果を奏する。
すなわち、この透明インクジェットインク受容層面にインクジェットプリンタを用いて印字・画像を形成した後、直ちに光を短時間照射して硬化させることができる。本発明のインクには、通常使用される粘度調整剤や多孔質微粒子などを配合せず、3官能以上のアクリル系光重合成分および光重合開始剤を必須主要成分として含むインクを用いることが必要であり、そして1官能アクリル系光重合成分および/または2官能アクリル系光重合成分から選ばれる3官能未満のアクリル系光重合成分は配合量が多すぎると光照射による硬化速度がやや低下したり、滲みが発生する恐れがあるものの、粘度を調整してインクジェットプリンタ適性を向上させる作用効果があるので任意成分として配合する。
【0058】
本発明の請求項2は、シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて形成されたインクジェットインク受容層を有してなることを特徴とするシートであり、透明インクジェットインク受容層面にインクジェットプリンタを用いて印字・画像を形成した後、光を印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層に短時間照射して硬化させることにより、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性に優れ、滲みが起こらず、品質の高い印字・画像を形成することができるという顕著な効果を奏する。
【0059】
本発明の請求項3は、請求項2記載のシートにおいて、前記透明インクジェットインク受容層面に保護層が形成されてなることを特徴とするものであり、インクジェットインク受容層へ形成された印字・画像を摩擦、衝撃、水、熱などの外部からの刺激から保護して本発明のシートの特性を維持できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0060】
本発明の請求項4は、シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて透明インクジェットインク受容層を形成した後、インクジェットプリンタを用いて前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、光照射して印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層を完全に硬化することを特徴とする印字・画像形成方法であり、本発明の印字・画像形成方法により、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性に優れ、滲みが起こらず、品質の高い印字・画像を短時間で効率よく容易に例えばインライン方式で形成することができるという顕著な効果を奏する。
【0061】
本発明の請求項5は、シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて透明インクジェットインク受容層を形成した後、前記インクジェットインク受容層に光照射して半硬化した後、インクジェットプリンタを用いて半硬化した前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、再度光照射して印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層を完全に硬化することを特徴とする印字・画像形成方法であり、本発明の印字・画像形成方法により、半硬化させた前記インクジェットインク受容層は広がったり、流動したりしないが、未だ表面が柔らかくインクジェットインクの受容性が充分にあり、インクジェットプリンタを用いて半硬化した前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、再度光照射して完全に硬化することにより、前記インクジェットインク受容層へ定着性、耐水性により優れ、滲みがより起こらず、したがって解像度がアップしてより品質の高い印字・画像を短時間で効率よく例えばインライン方式で形成することができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(イ)〜(ハ)は、本発明のシートおよび印字・画像形成方法の1実施の形態の断面を模式的に説明する説明図である。
【図2】(イ)〜(ニ)は、本発明のシートおよび印字・画像形成方法の1実施の形態の断面を模式的に説明する説明図である。
【符号の説明】
1、1A 本発明のシート
2 シート基材
3 インクジェットインク受容層
4 印字・画像
5 保護層
Claims (5)
- 透明インクジェットインク受容層を形成するためのインクであって、3官能以上のアクリル系光重合成分および光重合開始剤を必須主要成分として含み、任意成分として3官能未満のアクリル系光重合成分を含むことを特徴とするインクジェットインク受容層形成用インク。
- シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて形成された透明インクジェットインク受容層を有してなることを特徴とするシート。
- 前記透明インクジェットインク受容層面に保護層が形成されてなることを特徴とする請求項2記載のシート。
- シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて透明インクジェットインク受容層を形成した後、インクジェットプリンタを用いて前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、光照射して印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層を完全に硬化することを特徴とする印字・画像形成方法。
- シート基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1記載のインクジェットインク受容層形成用インクを用いて透明インクジェットインク受容層を形成した後、前記インクジェットインク受容層に光照射して半硬化した後、インクジェットプリンタを用いて半硬化した前記インクジェットインク受容層面に印字・画像を形成し、その後、再度光照射して印字・画像を形成した前記インクジェットインク受容層を完全に硬化することを特徴とする印字・画像形成方法。
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