JP2004271229A - 電子部品材料の品質管理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電子部品材料から採取した試料に対し、質量分析装置を用いて特定金属元素の同位体存在比の検出を行う分析方法を用いて電子部品材料の品質管理を行う。また、電子部品の製造工程において、使用する電子部品材料から、定期的あるいは不定期に試料を採取し、各試料に対し、質量分析装置を用いて特定金属元素の同位体存在比を検出し、その同位体存在比の変動をモニタリングする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品材料中に混入する金属元素についての品質管理に関し、特に、微量含有金属元素の分析方法を用いた品質管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近の世界各国では、化学物質の有害性に着目した法規制が整備されつつあり、欧州連合では、2006年より特定物質の使用制限令であるRoHS (Restriction of Hazardous substances)規制を制定し、全ての電気・電子機器製品中から鉛(Pb)やカドミウム(Cd)等の環境有害6物質を非含有とすることが義務付けられている。これらの指令には製造者以外に欧州へ電気・電子機器製品を輸出する企業も対象であり、電気・電子機器製品中の環境有害物質の存在量を正確に把握し、非含有であることを証明することは企業にとって重大な責任となっている。
【0003】
従来、これらの環境有害物質についての電気・電子機器製品の品質管理を行うために、PbやCd等の微量含有金属の定量方法としては、欧州の公定法であるBSEN−1122(2001)(Determination of Cadmium wet decomposition method)やアメリカ環境保護庁の公定法であるEPA method B (Acid digestion of sediments, slugs, and soils) 等が使用されてきた。これらの公定法は、基本的には分析対象である試料を硝酸、塩酸、硫酸、又は過酸化水素水等の酸化性酸で溶解する湿式化学分析法であり、試料を溶液化して誘導結合プラズマ発光分光法や原子吸光法で各元素の定量分析を行う。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第4,764,256号明細書。
【0005】
【特許文献2】
米国特許第20,1983号明細書。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述する従来の公定法を用いて、電子部品中の汚染物質の有無を分析するには、最終製品を分解し、分解した電子部品材料から定量すべき元素ごとに試料の採集と分析を行う必要がある。このため、試料作製に長時間を要するとともに分析操作が複雑で効率的ではなかった。
【0007】
又、公定法では、発光分析法や原子吸光法を利用するため、この分析方法に適した溶解液条件が指定されている。例えばBSEN−1122に準拠した条件では、硫酸5ml、硝酸10ml、及び純水100mlとを混合した溶解液を用いる。しかし、このように硫酸濃度の高い溶解液中では、試料中に含まれる例えば鉛(Pb)等の有害物質が硫酸塩として析出沈殿しやすい。沈殿が生じると、溶解液中の濃度が変化するためもはや正確な測定値は得られなくなる。
【0008】
さらに、従来の公定法では、得られる値が同一元素については区別されない。例えば、ハンダ中に含有されるPbは規制対象外である。よって、分析対象である最終製品にハンダが使用されているような場合に、試料からPbが検出されても、それがハンダに由来するものであれば問題ないが、それ以外の電子部品材料そのものに含まれるものであれば規制対象となる。しかし、従来の公定法では検出されたPbに区別をつけることはできないため、検出されたPbがハンダに由来するものか別の部品材料に由来するものなのかを特定することは困難である。このように、最終製品が有害物質を含有する場合において、その有害物質の汚染源を特定することは難しい。
【0009】
このように、従来の公定法で定められた分析方法を用いた電子部品材料の品質管理方法では、処理が煩雑で含有金属量の正確な把握が困難になることがあり、さらに汚染源の特定も難しいため、効率の良い品質管理が行われていたとは言い難い状況にあった。
【0010】
本発明の目的は、上記従来の課題に鑑み、電子部品材料中に含有される金属元素について、より迅速に、正確に、さらに汚染源の情報も得られうる分析方法を用いた、効率的で信頼性の高い電子部品材料の品質管理方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の電子部品材料の品質管理方法は、電子部品材料中の含有金属元素を検査するため、質量分析装置を用いて特定金属元素の同位体存在比を検出する分析方法を使用することを特徴とする。
【0012】
上記第1の電子部品材料の品質管理方法によれば、特定金属元素の同位体存在比が、他の含有金属元素の存在に対しても相関を有し、試料の経歴や特定金属元素の混入要因の違いよって異なるため、汚染源の特定や、他の含有金属元素の有無等の情報を得ることができる。よって、より正確で効率の良い電子部品の品質管理を行うことが可能になる。
【0013】
なお、本明細書で「電子部品」とは、電子機器製品又は電子部品製品を構成する部品を含み、「電子部品材料」とは、電子機器、及び電子部品を構成する材料、又は電子部品を製造するために使用される種々の材料を含む。
【0014】
本発明の第2の電子部品材料の品質管理方法は、電子部品の製造工程において使用する電子部品材料から、定期的あるいは不定期的に試料を採取する工程と、各試料に対し、質量分析装置を用いて特定金属元素の同位体存在比を検出し、その同位体存在比の変動をモニタリングする工程とを有することを特徴とする。
【0015】
上記第2の電子部品材料の品質管理方法によれば、特定金属元素の同位体存在比が、試料の履歴や特定金属元素の混入要因の違いよって異なるため、同位体存在比の変動をモニタリングすることにより、特定金属元素の混入をいち早く検知し、さらにその混入原因等の解析を容易に行うことができる。したがって、より正確で効率的な電子部品の品質管理を行うことが可能になる。
【0016】
上記本発明の第1及び第2の電子部品材料の品質管理方法において、質量分析装置として、誘導結合プラズマ質量分析装置、又は二次イオン質量分析装置を使用することが好ましい。より微量な元素を高感度に測定することが可能になる。
【0017】
また、上記特定金属元素としては、鉛、砒素、カドニウム、ストロンチウム、硼素、及び亜鉛の少なくともいずれか1以上の元素であってもよい。
【0018】
さらに、上記特定金属元素は、鉛であり、鉛の同位体である204Pb、206Pb、207Pb、及び208Pbの中から少なくとも複数の同位体存在比を検出してもよい。鉛の同位体存在比は、As、Sb、及びCd等の他の有害物質の存在に対し強い相関を示すため、Pbについての解析結果から他の有害物質の存在についての情報を得ることもできる。また、Pbの同位体存在比は、有害物質の存在により比較的顕著に変動が生じるため、Pbを特定金属元素として用いることで、汚染の発生や汚染源についての情報をより正確に得ることができる。
【0019】
さらに、上記分析方法は、試料を酸化性酸で溶解し、少なくとも特定金属元素が沈殿しない酸性濃度に調整した溶解液を作製する工程と、溶解液を質量分析装置に導入する工程とを有することが好ましい。沈殿による測定値誤差が生じるのを防止でき、より正確な測定が可能になる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電子部品の品質管理方法についての実施の形態について説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態では、電子部品中に含まれる含有金属元素の検査のため、従来の公定法に替えて、質量分析装置による同位体存在比を検出する分析方法を用いた電子部品材料の品質管理方法について説明する。すなわち、ここで使用される分析方法は、電子部品材料から採取した試料に対し、誘導結合プラズマ質量分析装置や二次イオン質量分析装置等質量分析装置を用いて、特定金属元素の同位体存在比を検出することを特徴とする。
【0022】
誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)等の質量分析装置は、多数元素を同時に、極めて高感度(ppqレベル)に検出できる。したがって、従来の公定法のように、測定元素ごとに試料の溶解液を作製する必要がない。また、電子部品材料から採取される試料が少量で、しかもその中に含まれる有害物質が極めて微量な場合において高感度の分析が可能となる。
【0023】
さらに、質量分析装置では、特定金属元素の同位体存在比を容易に検出できる。鉛(Pb)等の特定元素の同位体存在比は、材料の素性や材料の履歴によって、同じ含有元素でも異なる値を示す。したがって、同位体存在比を検出することにより、従来の公定法では困難であった汚染源の特定が可能になる。
【0024】
例えば、最終製品である電子部品材料でPbが検出された場合に、ハンダ中に含有されるPbと、プラスチック材料に含有されるPbでは同位体存在比が異なるため、本実施の形態に係る分析法を用いれば、従来の公定法では区別をつけることができなかった両者を明確に区別することが可能になる。
【0025】
例えば、環境有害元素の一つであるPbの同位体には、204Pb,206Pb,207Pb,208Pbの4種があり、その同位体存在比としては、206Pbと207Pbの同位体存在比(以下、「206/207」と示す)、206Pbと208Pbの同位体存在比(以下、「206/208」と示す)、204Pbと208Pbの同位体存在比(以下、「204/208」と示す)等が挙げられるが、混入Pbの量、またこれに付随する他の有害元素、例えばCd、As、及びSb等の混入量に依存して、同位体存在比が異なる値を示す。特に、同位体存在比206/207と206/208とは他の有害元素の混入量に対し強い相関を示す。したがって、これらのPb同位体存在比を検知することにより、電子部品材料の品質管理に必要な、有害物質の混入や有害物質の汚染源の特定について高感度の分析情報が得られる。
【0026】
このように、同位体存在比、あるいは複数の同位体存在比の比率を検出することにより電子部品材料中に同一金属元素が含まれる場合にもそれが単一の汚染源によるものか複数の汚染源によるものか、さらにはその汚染源の特定についての情報を得ることができる。したがって、この分析方法を使用することで、迅速で的確な電子部品材料の品質管理が可能になる。例えば、同一材料であっても原材料の産出地、製造メーカ、含有される製品形態によって検出される同一金属元素の同位体存在比は異なる。又、予めこれらの同位体存在比の情報を入手しておけば、最終製品において、当該金属元素を検出した際に、その汚染源を容易に特定することができる。
【0027】
次に、第1の実施の形態に係る具体的な分析方法について説明する。
【0028】
まず、分析対象となる電子部品材料から試料を採取する。分析対象となる電子部品材料は、最終製品、又は製造途中の電子機器や電子部品を分解することにより得られる電子部品材料でもよく、あるいは製品や製造工程で使用される前の原材料段階の電子部品材料でもよい。採取する試料は少量でもよく、数mg〜数百mg試料を採取する。
【0029】
採取した試料を硝酸、塩酸、または硫酸等の酸性水溶液で溶解した溶解液を作製する。なお、この溶解液は少なくとも測定すべき含有有害元素が沈殿しない濃度に設定することが好ましい。例えば最終的な溶解液の硫酸濃度を0.1〜3vol%、更に好ましくは0.1〜0.5vol%とする。この濃度範囲に調整することにより、Pbが硫酸鉛として沈殿を防ぐことができる。なお、Pbのみを塩酸又は過酸化水素水で予め抽出してもよい。
【0030】
次に得られた溶解液を質量分析装置に導入する。誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)等の質量分析装置は、大きく分けて試料導入部、プラズマトーチ部、質量分析部から構成され、試料は装置内をAr等のキャリアガスによって移送される。例えば溶解液は試料導入部においてネブライザーによって霧状にされ、プラズマトーチ部で高周波電磁波により生じたプラズマによりイオン化される。さらに、質量分析部では質量電荷比ごとに分離されイオン数が計測される。
【0031】
誘導結合プラズマ質量分析装置において、低分解能型(四重極)ICP−MSでは、高周波出力数を1.0kW〜1.5kW、更に好ましくは1.1kW〜1.2kWに設定する。これにより、各Pb同位体質量数におけるイオンカウント数が向上し、高感度分析を行うことが可能となる。
【0032】
なお、上述の方法では、試料を溶解した溶解液をネブライザーによって、噴霧状にしイオン化部に導入しているが、試料導入部にレーザーアブレーション装置を用いれば、固体試料を直接レーザ照射により蒸散させ、蒸気化した試料をイオン化部であるプラズマトーチ部に導入することもできる。また、二次イオン質量分析装置を使用する場合も同様に固体試料を直接分析することが可能である。なお、試料が気体の場合は、直接キャリヤガスとともにプラズマトーチ部に導入できる。
【0033】
また、これらの質量分析装置以外にも、グロー放電質量分析装置、レーザ飛行時間型質量分析装置、表面電離型質量分析装置など、金属元素を測定する装置であれば、いかなる質量分析装置を用いても何ら問題ない。
【0034】
上述する分析方法で同位体存在比を測定する特定金属元素としては、Pbのみならず同位体を有する金属元素であれば限定はない。例えばCd,B,Zn,Sb,Sn及びSr等もその対象にできる。また、上記元素を含有する化学種であればイオン、分子、その他のいかなる形態のものも測定対象にできる。その存在状態は固体、液体、気体いずれの状態であってもよい。
【0035】
上述するように、本発明の第1の実施の形態に係る品質管理方法によれば、高感度な分析が可能であるとともに、同位体存在比を検出することにより同一元素であっても、汚染源の相違等により区別できる分析方法を利用して電子部品材料の品質管理を行うことにより、有害物質が含有した場合に、その汚染を正確に把握でき、しかも汚染要因解析をより的確迅速に行うことができるため、効率のよい品質管理を行うことができる。例えば、はんだ材が付着した半導体チップやHDD装置の部品材料中に含まれる有害物質の分析に好適である。
【0036】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態では、上述する第1の実施の形態に係る分析方法を用いて電子機器、又は電子部品の製造工程における電子部品材料の品質管理を行う方法について説明する。
【0037】
例えば、電子機器や電子部品の製造工程では、工程ごとに、新たな部品材料が使用される。このように工程ごとに新たに使用される電子部品材料について、定期的、あるいは不定期的に試料を採取し、特定金属元素についての同位体存在比の変動をモニタリングする。すなわち、誘導結合プラズマ質量分析装置や二次イオン質量分析装置等質量分析装置を用いて、Pb等の特定金属元素についての同位体存在比を検出し、その変動を管理する。具体的な同位体存在比の測定条件は、上述する第1の実施の形態に係る条件を用いることができる。
【0038】
なお、全ての工程において、特定金属元素についての同位体存在比のモニタリングを行ってもよいが、汚染が予想される特定の工程についてのみをモニタリングの対象にしてもよい。
【0039】
例えば電子部品材料の搬入ルートが変わらず、均質な品質の電子部品材料が使用されていれば、測定により得られる同位体存在比は試料間で変動せず安定した値を示す。しかしながら、一旦何らかの原因で、特定金属元素による汚染が生じると、特定金属元素の含有濃度が増加するとともに同位体存在比が大きく変動する。したがって、最終製品についての分析を待つまでもなく、汚染の発生をいち早く検知することができる。また、同位体存在比から汚染源の特定を行うことも容易になるため、工程ごとの管理がより正確に効率よくなされる。
【0040】
上記質量分析装置を用いた分析方法を用いれば、極めて微量の含有金属元素の定量および同位体存在比の測定が可能であるので、材料そのものの汚染の他、大気中や工程雰囲気等からの微量な汚染についても正確な検知を行うことができる。
【0041】
以上に説明するように、第2の実施の形態に係る電子部品材料の品質管理方法によれば、各工程で使用される電子部品材料の微量な汚染について正確に検知できるとともに、汚染源の特定がより容易になるので、迅速な対応が可能になり、電子部品の汚染を防止するために効果的な品質管理を行うことができる。
【0042】
また、試料となる電子部品材料は、電子機器、電子部品を構成する材料であれば、特にその制限はない。具体的にはプリント基板、FPC、パッケージ材等の有機化合物、半導体材料であるシリコンウエーハ、チップ等が挙げられる。また、これらを製造する際に用いられる試薬類、治具類、梱包類、製造雰囲気もその対象となる。
【0043】
上述する第1、及び第2の実施の形態に係る分析方法は、有害物質についての品質管理にとどまらず、電子部品の特性に密接に関連する含有金属等、電子部品材料に含まれうる他の含有金属元素についての品質管理にも適用できる。
【0044】
上述する第1、及び第2の実施の形態に係る電子部品材料の品質管理方法は、有害物質についての品質管理にとどまらず、電子部品の特性に密接に関連する含有金属等、電子部品材料に含まれうる他の含有金属元素についての品質管理にも適用できる。
【0045】
【実施例】
以下、本発明に係る実施例および参照例について説明する。
【0046】
(実施例1)
実施例1では、本発明の品質管理方法で使用する分析方法により、電子部品材料中の有害元素の定量分析を行い、他元素含有量とPb同位体存在比との関係を検討した。
【0047】
測定試料としては、電子機器の電子部品材料として使用される塩化ビニル配線を準備した。異なるメーカから調達した3種の塩化ビニル配線A、B、及びCについて分析を行った。
【0048】
まず、硝酸10mlと硫酸0.2mlとを加えた100ml酸性溶液に所定量の試料を溶解させた。この溶解液の硫酸濃度約0.2vol%であった。次に、この溶解液を低分解能誘導結合プラズマ質量分析装置(セイコー電子工業製 型番SPQ9000)に導入した。なお、この溶解液の誘導結合プラズマ質量分析装置への導入は、同軸型石英製ネブラーザーを使用した。高周波出力条件を1.1kWに設定し、Pb、及びそれ以外の元素の質量分析測定を行った。また、Pbの4種の同位体204Pb、206Pb、207Pb、208Pbについての同位体存在比を測定した。分析結果を表1に示す。
【0049】
(参照例1)
参照例2では、BS−1122公定法に準拠した条件により、測定用の溶解液の作製を行った。すなわち、測定試料としては、実施例1と同じ異なるメーカから調達した3種の塩化ビニル配線A、B、及びCを用いた。硫酸5ml、硝酸10mlを加えた100ml酸性水溶液に各試料を溶解させた。溶解液の硫酸濃度は、5vol%である。この溶解液の誘導結合プラズマ質量分析装置への導入し、実施例1と同様な条件でPb、及びそれ以外の元素の質量分析測定を行った。また、Pbの4種の同位体204Pb、206Pb、207Pb、208Pbについての同位体存在比を測定した。分析結果を表1に示す。
【0050】
(実施例1と参照例1の比較)
実施例1及び参照例2では、いずれも質量分析装置を使用することにより、同時に複数の金属元素の測定が可能になった。
【0051】
しかし、公定法に準拠した高硫酸濃度の溶解液を用いた参照例1では、Pbが硫酸塩として析出し、溶解液中に沈殿するため、溶解液中の実質的なPb濃度が低下し、正確な測定をすることができなかった。Pb含有濃度が微量な塩化ビニル配線BやCでは、溶解液中のPb濃度が低く、その結果、イオン強度が検出されず、同位体比の測定も困難であった。
【0052】
これに対し、実施例1では、公定法に比較し、硫酸濃度が低濃度の溶解液を使用しているため、溶解液中で硫酸鉛の沈殿も起こらず、より正確なPbの質量分析が可能であった。実施例1の測定結果によれば、塩化ビニル配線Aでは、Pbが高濃度に存在するとともに、その他の元素AsやSb、Cdも高濃度に存在していた。試料ごとに同位体存在比は異なり、特に、他の元素を高濃度に含む塩化ビニル配線Aの同位体存在比は、他の塩化ビニル配線BやCと明らかに異なる同位体存在比を示した。
【0053】
【表1】
(実施例2)
実施例2では、HDD(ハードディスクドライブ)を構成する各電子部品材料について、本発明の品質管理方法で使用する分析方法を用いて、Pbの質量分析を行った。
【0054】
最終製品であるHDDを各部品ごとに解体した。また、FPC(フレキシブルプリント基板)についてはハンダが付着している部品は塩酸/過酸化水素水によりエッチングを行った。こうして、表2に示す7種の部品からそれぞれ数十mgの微小な試料を採取した。
【0055】
次に、硝酸10mlと硫酸0.2mlとを加えた100ml酸性溶液を複数作製し、各酸性溶液中に採取した各試料を溶解させた。溶解液の硫酸濃度は約0.2vol%であった。
【0056】
続いて、この溶解液を誘導結合プラズマ質量分析装置への導入し、実施例1と同様な条件でPbの質量分析測定を行った。Pbの4種の同位体204Pb、206Pb、207Pb、208Pbについての同位体存在比を測定した。測定結果を表2に示す。
【0057】
(参照例2)
最終製品であるHDDを各部品ごとに解体した。表2に示す6種の部品からそれぞれ数十mgの微小な試料を採取した。なお、FPCについてはハンダが付着したものを試料とした。
【0058】
BS−1122公定法に準拠した条件により、測定用の溶解液の作製を行った。すなわち、硫酸5ml、硝酸10mlを加えた100ml酸性水溶液に各試料を溶解させた。溶解液の硫酸濃度は5vol%であった。
【0059】
続いて、この溶解液を誘導結合プラズマ質量分析装置へ導入し、実施例2と同様な条件でPbの質量分析測定を行った。Pbの4種の同位体204Pb、206Pb、207Pb、208Pbについての同位体存在比を測定した。測定結果を表2に示す。
【0060】
(実施例2と参照例2の比較)
表2から明らかのように、参照例2の場合は、試料量が少ない上に、溶解液の硫酸濃度が高いため、硫酸鉛が溶解液中に沈殿し、各試料の溶液濃度は検出限界以下となった。なお、FPCについては、付着したハンダ中に含まれる高濃度のPbが検出された。
【0061】
一方、実施例2の場合は、溶解液の硫酸濃度が低いため、硫酸鉛の沈殿が生じず、正確な質量分析が可能であった。この結果から数mgの微小試料でも同様に正確な質量分析測定が可能であると予想される。また、微小試料での測定ができるため、ハンダをエッチング除去したFPC本体部分でのPb濃度の測定も可能であった。また、FPC本体部分から検出されたPbの同位体存在比は、FPCに付着したハンダ部分から検出されたPbの同位体存在比とは異なっており、FPC本体部分から検出されたPbが、明らかにハンダ中に含有されたPbとは異なるものであることが確認できた。このように、質量分析法を用いた同位体存在比を測定することにより同一元素であるPbであっても、汚染源の相違によって区別することが可能であることが確認された。
【0062】
【表2】
(実施例3)
実施例3では、HDD製造工程で使用する電子部品材料について、本発明の品質管理方法で使用する分析方法を用いて、Pbの同位体存在比の変動をモニタリングした。
【0063】
試料としては、HDD製造工程で搬入されるABS樹脂部材から、定期的に試料とするABS樹脂部材を抜き出し、搬入時期の異なる計12個のABS樹脂について質量分析測定を行った。
【0064】
試料ごとに、硝酸10mlと硫酸0.2mlとを加えた100ml酸性溶液を作製し、酸性溶液中に採取した試料を溶解させた。溶解液の硫酸濃度は約0.2vol%の溶解液であった。
【0065】
続いて、この溶解液を誘導結合プラズマ質量分析装置へ導入し、実施例1と同様な条件でPbの質量分析測定を行った。Pbの4種の同位体204Pb、206Pb、207Pb、208Pbについての同位体存在比の変動をモニタリングした。測定結果を表3に示す。
【0066】
通常は安定した同位体存在比を示しているが、外部から意図的に汚染を混入させた試料5では、明らかにPb同位体比が変動していることが分かった。このように、同位体存在比を常にモニタリングしていれば、搬入されるABS樹脂部材の品質をより正確に管理することができる。例えば混入するPbの量が変化しても、同位体存在比が一定なら汚染源は同一と推測でき、同位体存在比が変化する場合には異なる汚染源の存在が推定できる。
【0067】
一方、表3に示すように、定常状態でABS樹脂に含有されるPbの同位体存在比はほぼ一定である。したがって、各工程において定常的に混入するPbの同位体存在比や特定汚染源による混入Pbの同位体存在比を予め特定していれば、最終製品においてPbの検出を行う際に、どの工程、あるいはどの汚染源によって汚染されたものかを容易に特定できる。
【0068】
【表3】
以上、実施の形態および実施例に基づき本発明について説明したが、本発明は、上記実施の形態、或いは実施例の説明に限定されるものではない。上記実施の形態及び実施例は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0069】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の電子部品材料の品質管理方法によれば、質量分析装置を用い、特定金属元素の同位体存在比の検知を行うことで、環境有害物質等の含有金属元素の定量測定を高感度にできるとともに、より詳細な分析情報の入手が可能になる。したがって、汚染の発生や製造条件の変化をより早く察知し、適切な対応が可能になる。電子機器や電子部品の品質の信頼性を向上させることができる。
Claims (6)
- 電子部品材料中の含有金属元素を検査するため、質量分析装置を用いて特定金属元素の同位体存在比を検出する分析方法を用いることを特徴とする電子部品材料の品質管理方法。
- 電子機器、又は電子部品の製造工程において、使用する電子部品材料から、定期的あるいは不定期的に試料を採取する工程と、
前記試料から、質量分析装置を用いて特定金属元素の同位体存在比を検出する分析方法を用いて、前記同位体存在比の変動をモニタリングする工程と
を有することを特徴とする電子部品材料の品質管理方法。 - 前記質量分析装置は、誘導結合プラズマ質量分析装置、又は二次イオン質量分析装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品材料の品質管理方法。
- 前記特定金属元素は、鉛、砒素、カドミウム、ストロンチウム、硼素、及び亜鉛からなる群のうち少なくともいずれか1以上の元素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品材料の品質管理方法。
- 前記特定金属元素は、鉛であり、
鉛の同位体である204Pb、206Pb、207Pb、及び208Pbの中から少なくともいずれかの同位体存在比を検出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子部品材料の品質管理方法。 - 前記分析方法は、さらに
前記試料を酸化性酸で溶解し、少なくとも前記特定金属元素が沈殿しない酸性濃度に調整した溶解液を作製する工程と、
前記溶解液を前記質量分析装置に導入する工程と
を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子部品材料の品質管理方法。
Priority Applications (1)
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