JP2004271202A - 含有機物試料中の揮発性元素の定量方法 - Google Patents
含有機物試料中の揮発性元素の定量方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004271202A JP2004271202A JP2003058241A JP2003058241A JP2004271202A JP 2004271202 A JP2004271202 A JP 2004271202A JP 2003058241 A JP2003058241 A JP 2003058241A JP 2003058241 A JP2003058241 A JP 2003058241A JP 2004271202 A JP2004271202 A JP 2004271202A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- sample
- heat
- acid
- solution
- volatile element
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)
- Investigating Or Analyzing Non-Biological Materials By The Use Of Chemical Means (AREA)
- Investigating, Analyzing Materials By Fluorescence Or Luminescence (AREA)
- Investigating Or Analysing Materials By Optical Means (AREA)
Abstract
【課題】有機物を含む試料中の揮発性元素を、分解過程で損失することなく迅速かつ高感度に定量する方法を提供する。
【解決手段】有機物を含む試料を耐熱性容器に秤量した後、該耐熱性容器の開口部に耐熱性充填物を充填し、該耐熱性容器底部を加熱することによって試料を灰化後、残留物を酸で分解することによって得られた溶液中の揮発性元素濃度を測定する。
【選択図】 なし
【解決手段】有機物を含む試料を耐熱性容器に秤量した後、該耐熱性容器の開口部に耐熱性充填物を充填し、該耐熱性容器底部を加熱することによって試料を灰化後、残留物を酸で分解することによって得られた溶液中の揮発性元素濃度を測定する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機物を含む試料中の揮発性元素を、損失することなく迅速かつ高感度に定量する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
弗素樹脂等の耐薬品性に優れた有機物を含む試料中の不純物元素を定量する場合、試料の分解法としては、試料を高温で加熱して有機物を分解した後、残留物を酸で分解する方法が一般的に用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この方法は、試料中の有機物を容易に分解できるといった特徴を有するが、有機物を完全に分解するには、試料を約700°C程度まで加熱する必要がある。したがって、測定の対象となる元素が、Pb、Cd、As、Se、Sb、Sn、Bi、In、Te、Zn、TlおよびHg等の揮発性の高い元素であった場合、加熱過程で揮発し、定量結果が低値を示してしまうといった問題があった。
【0004】
このような問題から、揮発性の高い元素を定量する場合は、試料の分解を密閉系で行うことが望ましい。密閉系の分解法としては、高圧酸素燃焼法(非特許文献1)や環状炉に揮発した元素の捕集層を接続した燃焼法が考えられる。しかし、前者では、弗素樹脂の燃焼が不十分となる可能性が高く、後者では、揮発した元素が配管等へ吸着しその回収が困難となるため、いずれの分解法も実用には適さないといった問題があった。
【0005】
一方、弗素樹脂等の有機物を含む試料中の揮発性元素を、固体で直接測定する方法として発光分光分析法が挙げられる。この方法によれば、上記元素を損失することなく迅速に定量することが可能である。しかし、精度の高い定量を行うには、検量線の作成に用いる標準試料の主成分組成が、測定の対象となる試料と同様であることが望まれ、また、測定の対象となる元素が標準試料中に段階的な濃度で含まれている必要がある。このような条件を満たす標準試料を準備することは極めて困難であるため、発光分光分析法では定性的な判断に留まる場合が多い。
【0006】
また、装置の感度も不十分であり、特に環境問題等で注目されているPb、Cd、As、SeおよびHgを高感度に定量することが困難であるといった問題があった。
【非特許文献1】
有機微量分析研究懇談会編:“有機微量定量分析”,P.431(1969),(南江堂).
【0007】
このような現状に鑑み、本発明は、有機物を含む試料中の揮発性元素を、分解過程で損失することなく迅速かつ高感度に定量する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、有機物を含む試料を石英製試験管等の耐熱性容器に秤量し、耐熱性容器の開口部に石英製繊維等の耐熱性充填物を充填し、耐熱性容器底部を加熱することによって試料を灰化し、灰化後の残留物を酸で分解することによって得られた溶液中の揮発性元素濃度を測定することを特徴とする含有機物試料中の揮発性元素の定量方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、試験管等の筒状の容器に試料を加えその容器の底部を加熱した場合、揮発した元素は、容器の内壁に接触、冷却されることによって容器内に留まる割合が高いことを見出した。さらに容器開口部にガラス繊維等の比表面積の高い物体を充填すれば、接触および冷却の効果が向上することを見出し本発明に至った。
【0010】
本発明による含有機物試料中の揮発性元素の定量方法をより詳細に述べると以下のようになる。
試料を耐熱性容器に秤量した後、耐熱性容器の開口部に耐熱性充填物を充填する。使用する耐熱性容器としては、筒状で開口部面積の小さいものが好ましく、その例としては石英製試験管が挙げられる。また、耐熱性充填物としては、不純物の溶出が少なく比表面積の高い物体が好ましく、その例としては石英製繊維が挙げられる。
【0011】
次に、耐熱容器底部をブンゼンバーナー等で加熱し、試料を分解、灰化する。冷却後、耐熱性充填物をビーカーに移し入れ、過塩素酸と硝酸を加えて白煙が発生するまで加熱し、充填物表面に付着した揮発性元素を分解する。また、この際に耐熱容器にも過塩素酸と硝酸を加えて同様の操作を行い、耐熱容器底部の残留物および内壁に付着した揮発性元素を分解する。
【0012】
なお、測定の対象となる揮発性元素がAsであり、試料中に含まれる有機物が弗素樹脂の場合は、弗素樹脂に由来する弗素とAsが揮発性の弗化物を生成し、上述の酸処理の過程で揮発する可能性があるため、過塩素酸と硝酸の他に過マンガン酸カリウム溶液を加えて加熱することが望ましい。
【0013】
また、測定の対象となる揮発性元素がHgの場合は、酸処理時に高温で加熱すると揮発する可能性があるため、95°C程度の湯浴で加熱することが望ましく、さらに酸処理に十分な酸化力を付与するために、過塩素酸と硝酸の他に過マンガン酸カリウム溶液およびペルオキソニ硫酸カリウムを加えて加熱処理することが望ましい。
【0014】
さらに、測定の対象となる揮発性元素がSnの場合は、過塩素酸と硝酸で加熱すると難容性のメタスズ酸を生成する可能性があるため、硝酸を添加せずに過塩素酸のみで分解することが望ましい。
【0015】
以上の方法で試料を分解、溶液化した後、溶液量を一定の容量に合わせ、適宜希釈した後、誘導結合プラズマ発光分光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置あるいは原子吸光装置を用いて溶液中の揮発性元素法度を測定する。
【0016】
ただし、Asを誘導結合プラズマ質量分析装置で測定する場合には、過塩素酸に由来する塩素と装置のキャリアガスであるアルゴンが分子イオンを生成し、これがスペクトル干渉をもたらすため測定が困難となる。したがって、この場合は、予めAsを過塩素酸から分離するか、あるいは測定時に揮発性の高いAsの水素化物を生成せしめ、これを誘導結合プラズマ質量分析装置に導入して測定する。いわゆる水素化物導入法を用いることが好ましい。水素化物導入法は、過塩素酸とAsの分離を可能とする他、感度が著しく向上する利点も有するため,誘導結合プラズマ発光分光分析装置で測定する際にも有効である。
【0017】
【実施例】
本発明により、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む試料中の揮発性元素の定量を行った。以下、実施例に基づき本発明を説明する。
(実施例1)
試料Aの0.1gを、長さ約200mm、内径約10mmφの石英製試験管に秤取り、試験管の先端に石英製繊維を充填した後、ブンゼンバーナーで試験管底部を約3分間加熱して試料を分解、灰化した。次に、石英製繊維を50mlの石英製ビーカーに移し入れ、9N過塩素酸2mlおよび14N硝酸0.5mlを加えて約250。Cで加熱した。この際、試験管にも9N過塩素酸2ml、14N硝酸0.5mlを加えて約250°Cで加熱した。それぞれを冷却後、同一の50ml全量フラスコに各溶液を移し入れ、水を加えて溶液量を50mlに合わせ試料溶液とした。
【0018】
なお、50ml全量フラスコには、予めY、RhおよびReを内標準元素として、その濃度が1ng/mlとなるように添加した。以上の操作によって得られた試料溶液中のPb、Cd、Se、Sb、Bi、In、Tb、ZnおよびTl濃度を、誘導結合プラズマ質量分析装置(セイコーインストルメンツ株式会社製SPQ6500)を用いて測定した。なお、SeおよびZnの内標準元素としてはYを、Cd、Sb、InおよびTbの内標準元素としてはRhを、Pb、BiおよびTlの内標準元素としてはReを選択して測定した。
【0019】
表1に定量分析結果例を示す。
【表1】
【0020】
分析値の確かさを確認するために、試料Aに各元素の標準溶液を添加して80°Cで乾燥した後、同様の操作で試料溶液を調製し、各元素の添加回収率を測定した。その結果、各元素の添加回収率は95〜100%の範囲内にあった。
【0021】
(実施例2)
試料Bの0.1gを、長さ約300mm、内径約7mmφの石英製試験管に秤取り、試験管の先端に石英製繊維を充填した後、ブンゼンバーナーで試験管底部を約3分間加熱して試料を分解、灰化した。次に、石英製繊維を50mlの石英製ビーカーに移し入れ、9N過塩素酸2ml、14N硝酸0.5ml、50g/l過マンガン酸カリウム1mlおよび50g/lペルオキソニ硫酸カリウム1mlを加えて約95°Cの湯浴で2時間加熱した。この際、試験管にも9N過塩素酸2ml、14N硝酸0.5ml、50g/l過マンガン酸カリウム1mlおよび50g/lペルオキソニ硫酸カリウム1mlを加えて約95°Cの湯浴で2時間加熱した。
【0022】
それそれを冷却後、同一の50ml全量フラスコに各溶液を移し入れ、水を加えて溶液量を50mlに合わせた。次に、この溶液の40mlを密閉可能な200mlのガラス容器に移し入れ、過剰の遇マンガン酸カリウムを100g/l塩化ヒドロキシルアンモニウムで還元した後、直ちに100g/l塩化第二スズを10ml加えて密閉し約2分間激しく撹拌した。その後、気相中の水銀を吸収セルに導き、原子吸光装置(Varian製SpectrAA−30)を用いて波長253.7nmの吸光度を測定しHg濃度を求めた。その結果、試料BのHg濃度は0.05g/gであった。
【0023】
分析値の確かさを確認するために、試料BにHgの標準溶液を添加して40°Cで乾燥した後、同様の操作で試料溶液を調製し、Hgの添加回収率を測定した。その結果、Hgの添加回収率は95%であった。
【0024】
(実施例3)
試料Cの0.1gを、長さ約200mm、内径約10mmφの石英製試験管に秤取り、試験管の先端に石英製繊維を充填した後、ブンゼンバーナーで試験管底部を約3分間加熱して試料を分解、灰化した。次に、石英製繊維を50mlの石英製ビーカーに移し入れ、9N過塩素酸2mlを加えて約250°Cで加熱した。この際、試験管にも9N過塩素酸2mlを加えて約250°Cで加熱した。
【0025】
それぞれを冷却後、同一の50ml全量フラスコに各溶液を移し入れ、水を加えて溶液量を50mlに合わせ試料溶液とした。なお、50ml全量フラスコには、予めRbを内標準元素として、その濃度が1ng/mlとなるように添加した。以上の操作によって得られた試料溶液中のSn濃度を誘導結合プラズマ質量分析装置(セイコーインストルメンツ株式会社製SPQ6500)を用いて測定した。その結果、試料C中のSn濃度は0.2μg/gであった。
【0026】
分析値の確かさを確認するために、試料Cに標準溶液を添加して80°Cで乾燥した後、同様の操作で試料溶液を調製し、Snの添加回収率を測定した。その結果、Snの添加回収率は97%であった。
【0027】
(実施例4)
試料Dの0.2gを長さ約200mm、内径約10mmφの石英製試験管に秤取り、試験管の先端に石英製繊維を充填した後、ブンゼンバーナーで試験管底部を約5分間加熱して試料を分解、灰化した。次に、石英製繊維を50mlの石英製ビーカーに移し入れ、9N過塩素酸2ml、14N硝酸0.5mlおよび50g/l過マンガン酸カリウム溶液を着色するまで加え、約250°Cで過塩素酸の白煙が発生するまで加熱した。冷却後、さらに12N塩酸5mlを加え溶液が透明に成るまで加熱した。
【0028】
それぞれを冷却後、同一の50ml全量フラスコに各溶液を移し入れ、10g/lアスコルビン酸溶液5ml、30g/lヨウ化カリウム溶液10mlおよび水を加えて溶液量を50mlに合わせ試料溶液とした。次に、水素化物導入装置(Varian製VGA−76)を用いて、試料溶液と6N塩酸および10g/l水素化ホウ素ナトリウム溶液を混合し、発生したAsの水素化物を誘導結合プラズマ質量分析装置(セイコーインストルメンツ株式会社製SPQ6500)に導入しAs濃度を測定した。その結果、試料D中のAs濃度は0.3μg/gであった。
【0029】
分析値の確かさを確認するために、試料DにAsの標準溶液を添加して40°Cで乾燥した後、同様の操作で試料溶液を調製し、Asの添加回収率を測定した。その結果、Asの添加回収率は95%であった。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、有機物を含む試料中の揮発性元素を、分解過程で損失することなく迅速かつ高感度に定量することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機物を含む試料中の揮発性元素を、損失することなく迅速かつ高感度に定量する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
弗素樹脂等の耐薬品性に優れた有機物を含む試料中の不純物元素を定量する場合、試料の分解法としては、試料を高温で加熱して有機物を分解した後、残留物を酸で分解する方法が一般的に用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この方法は、試料中の有機物を容易に分解できるといった特徴を有するが、有機物を完全に分解するには、試料を約700°C程度まで加熱する必要がある。したがって、測定の対象となる元素が、Pb、Cd、As、Se、Sb、Sn、Bi、In、Te、Zn、TlおよびHg等の揮発性の高い元素であった場合、加熱過程で揮発し、定量結果が低値を示してしまうといった問題があった。
【0004】
このような問題から、揮発性の高い元素を定量する場合は、試料の分解を密閉系で行うことが望ましい。密閉系の分解法としては、高圧酸素燃焼法(非特許文献1)や環状炉に揮発した元素の捕集層を接続した燃焼法が考えられる。しかし、前者では、弗素樹脂の燃焼が不十分となる可能性が高く、後者では、揮発した元素が配管等へ吸着しその回収が困難となるため、いずれの分解法も実用には適さないといった問題があった。
【0005】
一方、弗素樹脂等の有機物を含む試料中の揮発性元素を、固体で直接測定する方法として発光分光分析法が挙げられる。この方法によれば、上記元素を損失することなく迅速に定量することが可能である。しかし、精度の高い定量を行うには、検量線の作成に用いる標準試料の主成分組成が、測定の対象となる試料と同様であることが望まれ、また、測定の対象となる元素が標準試料中に段階的な濃度で含まれている必要がある。このような条件を満たす標準試料を準備することは極めて困難であるため、発光分光分析法では定性的な判断に留まる場合が多い。
【0006】
また、装置の感度も不十分であり、特に環境問題等で注目されているPb、Cd、As、SeおよびHgを高感度に定量することが困難であるといった問題があった。
【非特許文献1】
有機微量分析研究懇談会編:“有機微量定量分析”,P.431(1969),(南江堂).
【0007】
このような現状に鑑み、本発明は、有機物を含む試料中の揮発性元素を、分解過程で損失することなく迅速かつ高感度に定量する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、有機物を含む試料を石英製試験管等の耐熱性容器に秤量し、耐熱性容器の開口部に石英製繊維等の耐熱性充填物を充填し、耐熱性容器底部を加熱することによって試料を灰化し、灰化後の残留物を酸で分解することによって得られた溶液中の揮発性元素濃度を測定することを特徴とする含有機物試料中の揮発性元素の定量方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、試験管等の筒状の容器に試料を加えその容器の底部を加熱した場合、揮発した元素は、容器の内壁に接触、冷却されることによって容器内に留まる割合が高いことを見出した。さらに容器開口部にガラス繊維等の比表面積の高い物体を充填すれば、接触および冷却の効果が向上することを見出し本発明に至った。
【0010】
本発明による含有機物試料中の揮発性元素の定量方法をより詳細に述べると以下のようになる。
試料を耐熱性容器に秤量した後、耐熱性容器の開口部に耐熱性充填物を充填する。使用する耐熱性容器としては、筒状で開口部面積の小さいものが好ましく、その例としては石英製試験管が挙げられる。また、耐熱性充填物としては、不純物の溶出が少なく比表面積の高い物体が好ましく、その例としては石英製繊維が挙げられる。
【0011】
次に、耐熱容器底部をブンゼンバーナー等で加熱し、試料を分解、灰化する。冷却後、耐熱性充填物をビーカーに移し入れ、過塩素酸と硝酸を加えて白煙が発生するまで加熱し、充填物表面に付着した揮発性元素を分解する。また、この際に耐熱容器にも過塩素酸と硝酸を加えて同様の操作を行い、耐熱容器底部の残留物および内壁に付着した揮発性元素を分解する。
【0012】
なお、測定の対象となる揮発性元素がAsであり、試料中に含まれる有機物が弗素樹脂の場合は、弗素樹脂に由来する弗素とAsが揮発性の弗化物を生成し、上述の酸処理の過程で揮発する可能性があるため、過塩素酸と硝酸の他に過マンガン酸カリウム溶液を加えて加熱することが望ましい。
【0013】
また、測定の対象となる揮発性元素がHgの場合は、酸処理時に高温で加熱すると揮発する可能性があるため、95°C程度の湯浴で加熱することが望ましく、さらに酸処理に十分な酸化力を付与するために、過塩素酸と硝酸の他に過マンガン酸カリウム溶液およびペルオキソニ硫酸カリウムを加えて加熱処理することが望ましい。
【0014】
さらに、測定の対象となる揮発性元素がSnの場合は、過塩素酸と硝酸で加熱すると難容性のメタスズ酸を生成する可能性があるため、硝酸を添加せずに過塩素酸のみで分解することが望ましい。
【0015】
以上の方法で試料を分解、溶液化した後、溶液量を一定の容量に合わせ、適宜希釈した後、誘導結合プラズマ発光分光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置あるいは原子吸光装置を用いて溶液中の揮発性元素法度を測定する。
【0016】
ただし、Asを誘導結合プラズマ質量分析装置で測定する場合には、過塩素酸に由来する塩素と装置のキャリアガスであるアルゴンが分子イオンを生成し、これがスペクトル干渉をもたらすため測定が困難となる。したがって、この場合は、予めAsを過塩素酸から分離するか、あるいは測定時に揮発性の高いAsの水素化物を生成せしめ、これを誘導結合プラズマ質量分析装置に導入して測定する。いわゆる水素化物導入法を用いることが好ましい。水素化物導入法は、過塩素酸とAsの分離を可能とする他、感度が著しく向上する利点も有するため,誘導結合プラズマ発光分光分析装置で測定する際にも有効である。
【0017】
【実施例】
本発明により、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む試料中の揮発性元素の定量を行った。以下、実施例に基づき本発明を説明する。
(実施例1)
試料Aの0.1gを、長さ約200mm、内径約10mmφの石英製試験管に秤取り、試験管の先端に石英製繊維を充填した後、ブンゼンバーナーで試験管底部を約3分間加熱して試料を分解、灰化した。次に、石英製繊維を50mlの石英製ビーカーに移し入れ、9N過塩素酸2mlおよび14N硝酸0.5mlを加えて約250。Cで加熱した。この際、試験管にも9N過塩素酸2ml、14N硝酸0.5mlを加えて約250°Cで加熱した。それぞれを冷却後、同一の50ml全量フラスコに各溶液を移し入れ、水を加えて溶液量を50mlに合わせ試料溶液とした。
【0018】
なお、50ml全量フラスコには、予めY、RhおよびReを内標準元素として、その濃度が1ng/mlとなるように添加した。以上の操作によって得られた試料溶液中のPb、Cd、Se、Sb、Bi、In、Tb、ZnおよびTl濃度を、誘導結合プラズマ質量分析装置(セイコーインストルメンツ株式会社製SPQ6500)を用いて測定した。なお、SeおよびZnの内標準元素としてはYを、Cd、Sb、InおよびTbの内標準元素としてはRhを、Pb、BiおよびTlの内標準元素としてはReを選択して測定した。
【0019】
表1に定量分析結果例を示す。
【表1】
【0020】
分析値の確かさを確認するために、試料Aに各元素の標準溶液を添加して80°Cで乾燥した後、同様の操作で試料溶液を調製し、各元素の添加回収率を測定した。その結果、各元素の添加回収率は95〜100%の範囲内にあった。
【0021】
(実施例2)
試料Bの0.1gを、長さ約300mm、内径約7mmφの石英製試験管に秤取り、試験管の先端に石英製繊維を充填した後、ブンゼンバーナーで試験管底部を約3分間加熱して試料を分解、灰化した。次に、石英製繊維を50mlの石英製ビーカーに移し入れ、9N過塩素酸2ml、14N硝酸0.5ml、50g/l過マンガン酸カリウム1mlおよび50g/lペルオキソニ硫酸カリウム1mlを加えて約95°Cの湯浴で2時間加熱した。この際、試験管にも9N過塩素酸2ml、14N硝酸0.5ml、50g/l過マンガン酸カリウム1mlおよび50g/lペルオキソニ硫酸カリウム1mlを加えて約95°Cの湯浴で2時間加熱した。
【0022】
それそれを冷却後、同一の50ml全量フラスコに各溶液を移し入れ、水を加えて溶液量を50mlに合わせた。次に、この溶液の40mlを密閉可能な200mlのガラス容器に移し入れ、過剰の遇マンガン酸カリウムを100g/l塩化ヒドロキシルアンモニウムで還元した後、直ちに100g/l塩化第二スズを10ml加えて密閉し約2分間激しく撹拌した。その後、気相中の水銀を吸収セルに導き、原子吸光装置(Varian製SpectrAA−30)を用いて波長253.7nmの吸光度を測定しHg濃度を求めた。その結果、試料BのHg濃度は0.05g/gであった。
【0023】
分析値の確かさを確認するために、試料BにHgの標準溶液を添加して40°Cで乾燥した後、同様の操作で試料溶液を調製し、Hgの添加回収率を測定した。その結果、Hgの添加回収率は95%であった。
【0024】
(実施例3)
試料Cの0.1gを、長さ約200mm、内径約10mmφの石英製試験管に秤取り、試験管の先端に石英製繊維を充填した後、ブンゼンバーナーで試験管底部を約3分間加熱して試料を分解、灰化した。次に、石英製繊維を50mlの石英製ビーカーに移し入れ、9N過塩素酸2mlを加えて約250°Cで加熱した。この際、試験管にも9N過塩素酸2mlを加えて約250°Cで加熱した。
【0025】
それぞれを冷却後、同一の50ml全量フラスコに各溶液を移し入れ、水を加えて溶液量を50mlに合わせ試料溶液とした。なお、50ml全量フラスコには、予めRbを内標準元素として、その濃度が1ng/mlとなるように添加した。以上の操作によって得られた試料溶液中のSn濃度を誘導結合プラズマ質量分析装置(セイコーインストルメンツ株式会社製SPQ6500)を用いて測定した。その結果、試料C中のSn濃度は0.2μg/gであった。
【0026】
分析値の確かさを確認するために、試料Cに標準溶液を添加して80°Cで乾燥した後、同様の操作で試料溶液を調製し、Snの添加回収率を測定した。その結果、Snの添加回収率は97%であった。
【0027】
(実施例4)
試料Dの0.2gを長さ約200mm、内径約10mmφの石英製試験管に秤取り、試験管の先端に石英製繊維を充填した後、ブンゼンバーナーで試験管底部を約5分間加熱して試料を分解、灰化した。次に、石英製繊維を50mlの石英製ビーカーに移し入れ、9N過塩素酸2ml、14N硝酸0.5mlおよび50g/l過マンガン酸カリウム溶液を着色するまで加え、約250°Cで過塩素酸の白煙が発生するまで加熱した。冷却後、さらに12N塩酸5mlを加え溶液が透明に成るまで加熱した。
【0028】
それぞれを冷却後、同一の50ml全量フラスコに各溶液を移し入れ、10g/lアスコルビン酸溶液5ml、30g/lヨウ化カリウム溶液10mlおよび水を加えて溶液量を50mlに合わせ試料溶液とした。次に、水素化物導入装置(Varian製VGA−76)を用いて、試料溶液と6N塩酸および10g/l水素化ホウ素ナトリウム溶液を混合し、発生したAsの水素化物を誘導結合プラズマ質量分析装置(セイコーインストルメンツ株式会社製SPQ6500)に導入しAs濃度を測定した。その結果、試料D中のAs濃度は0.3μg/gであった。
【0029】
分析値の確かさを確認するために、試料DにAsの標準溶液を添加して40°Cで乾燥した後、同様の操作で試料溶液を調製し、Asの添加回収率を測定した。その結果、Asの添加回収率は95%であった。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、有機物を含む試料中の揮発性元素を、分解過程で損失することなく迅速かつ高感度に定量することができる。
Claims (9)
- 有機物を含む試料を耐熱性容器に秤量し、該耐熱性容器の開口部に耐熱性充填物を充填し、該耐熱性容器底部を加熱することによって試料を灰化し、灰化後の残留物を酸で分解することによって得られた溶液中の揮発性元素濃度を測定することを特徴とする含有機物試料中の揮発性元素の定量方法。
- 試料が弗素樹脂であることを特徴とする請求項1記載の含有機物試料中の揮発性元素の定量方法。
- 揮発性元素がPb、Cd、As、Se、Sb、Sn、Bi、In、Te、Zn、TlおよびHgのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の含有機物試料中の揮発性元素の定量方法。
- 耐熱性容器が石英製の試験管であることを特徴とする請求項1記載の含有機物試料中の揮発性元素の定量方法。
- 耐熱性充填物が石英製繊維であることを特徴とする請求項1記載の含有機物試料中の揮発性元素の定量方法。
- 前記酸が過塩素酸と硝酸であることを特徴とする請求項1記載の含有機物試料中の揮発性元素の定量方法。
- 揮発性元素がAsの場合、前記酸に過マンガン酸カリウム溶液を加えることを特徴とする請求項6記載の含有機物試料中の揮発性元素の定量方法。
- 揮発性電素がHgの場合、前記酸に過マンガン酸カリウム溶液およびペルオキソニ硫酸カリウムを加えることを特徴とする請求項6記載の含有機物試料中の揮発性元素の定量方法。
- 揮発性電素がSnの場合、前記酸に硝酸を添加せずに過塩素酸のみで分解することを特徴とする請求項6記載の含有機物試料中の揮発性元素の定量方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003058241A JP2004271202A (ja) | 2003-03-05 | 2003-03-05 | 含有機物試料中の揮発性元素の定量方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003058241A JP2004271202A (ja) | 2003-03-05 | 2003-03-05 | 含有機物試料中の揮発性元素の定量方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004271202A true JP2004271202A (ja) | 2004-09-30 |
Family
ID=33121399
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003058241A Pending JP2004271202A (ja) | 2003-03-05 | 2003-03-05 | 含有機物試料中の揮発性元素の定量方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004271202A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006170824A (ja) * | 2004-12-16 | 2006-06-29 | Hitachi Cable Ltd | 重金属元素の定量法 |
WO2014064985A1 (ja) * | 2012-10-23 | 2014-05-01 | Sato Ayako | 有機化合物による検量線を用いる各態炭素と窒素の統一定量システム |
JP2014173878A (ja) * | 2013-03-06 | 2014-09-22 | Central Research Institute Of Electric Power Industry | 石炭灰中水銀測定用試料の作製方法及び石炭灰中水銀の測定方法 |
-
2003
- 2003-03-05 JP JP2003058241A patent/JP2004271202A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006170824A (ja) * | 2004-12-16 | 2006-06-29 | Hitachi Cable Ltd | 重金属元素の定量法 |
JP4552645B2 (ja) * | 2004-12-16 | 2010-09-29 | 日立電線株式会社 | 重金属元素の定量法 |
WO2014064985A1 (ja) * | 2012-10-23 | 2014-05-01 | Sato Ayako | 有機化合物による検量線を用いる各態炭素と窒素の統一定量システム |
JP2014173878A (ja) * | 2013-03-06 | 2014-09-22 | Central Research Institute Of Electric Power Industry | 石炭灰中水銀測定用試料の作製方法及び石炭灰中水銀の測定方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Paul et al. | Mineral assay in atomic absorption spectroscopy | |
Shekhar et al. | Determination of thallium at trace levels by electrolyte cathode discharge atomic emission spectrometry with improved sensitivity | |
JP2004198324A (ja) | 土壌含有重金属の分析方法 | |
Průša et al. | Ultratrace determination of tin by hydride generation in-atomizer trapping atomic absorption spectrometry | |
Vallelonga et al. | Recent advances in measurement of Pb isotopes in polar ice and snow at sub-picogram per gram concentrations using thermal ionisation mass spectrometry | |
JP2009014512A (ja) | 有機化合物を含む試料中のハロゲン化物の定量方法 | |
Liu et al. | Inorganic arsenic speciation analysis of water samples by trapping arsine on tungsten coil for atomic fluorescence spectrometric determination | |
de Moraes Flores et al. | A new approach for fluorine determination by solid sampling graphite furnace molecular absorption spectrometry | |
JP2018066627A (ja) | 元素分析用前処理装置及び元素分析システム並びに元素分析用前処理方法及び元素分析方法 | |
JP2004271202A (ja) | 含有機物試料中の揮発性元素の定量方法 | |
Enders et al. | Microwave-induced combustion of high purity nuclear flexible graphite for the determination of potentially embrittling elements using atomic spectrometric techniques | |
Frech | Rapid determination of antimony in steel by flameless atomic-absorption | |
Musil et al. | In situ collection of volatile silver species in a new modular quartz tube atomizer for atomic absorption spectrometry | |
CN108593606A (zh) | 一种利用原子荧光光谱测试煤中锗含量的方法 | |
Menicucci et al. | Oxygen isotope analyses of biogenic opal and quartz using a novel microfluorination technique | |
Gilevska et al. | Improvement of analytical method for chlorine dual‐inlet isotope ratio mass spectrometry of organochlorines | |
JP2019066249A (ja) | 元素不純物測定用試料調製方法 | |
JP2006184109A (ja) | ポリマー中の超微量金属分析方法 | |
Kratzer et al. | Stibine and bismuthine trapping in quartz tube atomizers for atomic absorption spectrometry. Part 2: a radiotracer study | |
Nham et al. | Evaluation of digestion procedures for the determination of selenium in soil comparing vapour generation and graphite furnace atomic absorption spectrometry with Zeeman-effect background correction | |
Dědina | Nonplasma devices for atomization and detection of volatile metal species by atomic absorption and fluorescence | |
Dobrowolski et al. | Determination of mercury in fluorescent lamp cullet by atomic absorption spectrometry | |
Wood et al. | A borate fusion method for the determination of fluorine in coal | |
JP4602070B2 (ja) | 化学形態別砒素分析のための試料前処理方法 | |
JP2010223721A (ja) | フッ素化合物中の不純物分析方法 |