JP2004269575A - アクリロニトリル(共)重合体の製造方法および高分子ラジカル重合開始剤 - Google Patents

アクリロニトリル(共)重合体の製造方法および高分子ラジカル重合開始剤 Download PDF

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Katsuhiro Kojima
克宏 小嶋
Hideko Okamoto
英子 岡本
Takayuki Makino
隆之 槙野
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Abstract

【課題】分子量および分子量分布が制御された(共)重合体を製造することが可能なアクリロニトリル(共)重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)〜(4)で示される化合物の少なくとも1種以上のニトロキサイド化合物存在下、アクリロニトリルを単独で重合して、またはアクリロニトリルと他のビニル系モノマーとを共重合して、アクリロニトリル(共)重合体を合成するに際して、重合温度119℃以下で重合を行う。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリロニトリル単独からなる、またはアクリロニトリルと、アクリロニトリル以外のビニル系モノマーから成る、分子量および分子量分布が制御された(共)重合体を製造するための重合方法に関する。
【0002】
本発明の重合方法によれば、アクリロニトリル(共)重合体の重合の制御が容易となるのみならず、得られる(共)重合体のラジカル重合開始剤能をも高めることができる。本発明の製造方法により得られる(共)重合体は、高分子ラジカル重合開始剤として特に好適に利用することができるため、該(共)重合体は、ブロックポリマー等の種々の機能性新規材料の製造に好適に使用可能である。
【0003】
【従来の技術】
ラジカル重合は、イオン重合等の他の重合形式と比較して、適用できる単量体の種類が多く、また容易にランダム共重合体を合成することができる。さらに、ラジカル重合は塊状、溶液、懸濁液または乳濁液で実施することができるという利点を有するため、実験・研究の目的のみならず、工業的にも極めて広く利用されている。しかしながら、従来より、ラジカル重合で得られる重合体の分子量分布は一般的に広く、したがって均一な物性を有する重合体のラジカル重合による製造は、困難なことが知られている。
【0004】
他方、近年、種々の所望の特性を有する機能性新規材料の開発が、各方面から強く望まれている。このような機能性新規材料の開発を有利且つ効率的に進めるためには、上記した利点を有するラジカル重合を活用することが有利である。このような観点から、ラジカル重合において均一な物性を有する重合体を得るために、重合体の分子量、および分子量分布を制御する方法が強く求められていた。
【0005】
最近、高分子重合の分野において、安定なニトロキシラジカル(いわゆる「リビングラジカル」の一種)を利用する重合が注目を集めている。このような安定なニトロキシラジカルを利用する重合により、分子量、分子量分布および形態を含めて、ポリマーの分子構造を正確に調節できる可能性がある。
【0006】
ラジカル重合における分子量および分子量分布の制御方法として、過酸化ベンゾイル等のラジカル開始剤とニトロキサイド化合物との混合物の存在下でスチレンの重合を制御する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1において、ニトロキサイド化合物存在下において重合が制御される単量体としては、スチレン、あるいはスチレン誘導体が主に挙げられるが、ニトロキサイド化合物の種類によって、アクリル酸エステル類の重合制御も可能となることが報告されている。
【0007】
このニトロキサイド化合物存在下における重合方法を利用した報告は多数知られており、その中には単独重合体のみならず、二種以上のラジカル重合性単量体を用いた共重合体を合成した例も多数報告されている。また、このような報告の中には、分子量制御が可能で分子量分布の狭いアクリロニトリル(共)重合体を合成する方法について報告されているものもある(例えば、特許文献2、非特許文献1参照。)。
【特許文献1】
特開昭60−89452号公報
【特許文献2】
特開平6−199916号公報
【非特許文献1】
Benoit,D.;Chaplinski,V.;Braslau,R.;Hawker,C.J.、Development of a Universal Alkoxyamine for ”Living” Free Radical Polymerizat ions、「Journal of American Chemical Society」、(アメリカ)、 American Chemical Society、1999、121、16、p3904−3920
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の方法(特許文献2または非特許文献1)で重合したアクリロニトリル(共)重合体は分子量分布が狭く、一見したところでは、スチレン単独で重合させた場合と同様の重合制御が行われているように見える。
【0009】
しかしながら、これらのような従来の方法により得られたアクリロニトリル(共)重合体は高分子ラジカル重合開始剤としての純分が90質量%以下と低く、高分子ラジカル重合開始剤の一部しか所望の重合を開始しないという欠点があり、精製等によってその純分を99質量%まで高くする必要があった。換言すれば、これら従来の方法により得られた(共)重合体を用いた場合には、リビングラジカル重合を行って、新規材料開発の範囲を広げることは、高分子ラジカル重合開始剤の精製度を高くしない限り事実上は不可能であった。
【0010】
従って、本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決することが可能なアクリロニトリル(共)重合体の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、分子量および分子量分布が制御された(共)重合体を製造することが可能なアクリロニトリル(共)重合体の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定のニトロキサイド化合物の存在下において、重合温度119℃以下でアクリロニトリルのリビングラジカル(共)重合を行うことにより、得られる重合体は純分が99質量%以上と高く、精製を行わずとも、高分子ラジカル重合開始剤として用いることが可能であることを見出した。
【0013】
すなわち、第1の面において、本発明は、下記一般式(1)〜(4)で示される化合物の少なくとも1種以上のニトロキサイド化合物存在下、アクリロニトリルを単独で重合して、またはアクリロニトリルと他のビニル系モノマーとを共重合して、アクリロニトリル(共)重合体を合成するに際して、重合温度119℃以下で重合を行うことを特徴とするアクリロニトリル(共)重合体の製造方法に関する。
【0014】
【化2】
Figure 2004269575
【0015】
(式中、Xは少なくとも1個の炭素原子を有する基を示し、その遊離基X・はラジカル重合によって不飽和モノマーを重合させ得る基であり、Rはアルコキシアミン基と(共)重合体末端との結合に立体障害及び結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する直鎖型もしくは分岐型のアルキル基;あるいはO=P(R17)(R18)基を示し、R、R〜R、R15及びR16は、該アルコキシアミン基と(共)重合体末端との結合に立体障害及び結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する同一又は異なる直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、R、R、R、R10、R13及びR14は、水素、直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R11、R12は直鎖型もしくは分岐型のアルキル基、水素、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R17とR18はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0016】
第2の面において、本発明は、上記した第1の発明である製造方法で得られる(共)重合体からなる高分子ラジカル重合開始剤に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において含有量を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0018】
(アクリロニトリル(共)重合体の製造方法)
本発明のアクリロニトリル(共)重合体の製造方法は、特定のニトロキサイド化合物の存在下で、アクリロニトリルを単独で重合して、またはアクリロニトリルと他のビニル系モノマーとを共重合して、アクリロニトリル(共)重合体を合成するに際して、重合温度が119℃以下であることを特徴とする。
【0019】
(ニトロキサイド化合物)
本発明において使用されるニトロキサイド化合物としては、下記一般式(1)〜(4)に表される化合物を用いることができる。
【0020】
【化3】
Figure 2004269575
【0021】
上記一般式(1)〜(4)中で、「(共)重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長」とは、炭素数1以上であることを言う。
【0022】
上記一般式(1)〜(4)中、Xは特に限定はされないが例えば1−フェニルエチル、1−フェニル−1−メチルエチル、アリル、1−メチル−2−プロペニルなどの少なくとも1個の炭素原子を有する基を示す。
【0023】
これらの中でも、特に1−フェニルエチルが好ましい。
【0024】
(ニトロキサイド化合物の具体例)
一般式(1)〜(4)で表される化合物としては、本発明の製造方法により得られる重合体をリビングラジカル重合開始剤として使用する際の、いわゆる“リビング”性の点からは、例えば2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシ−1−ピペリジニルオキシ、1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニロキシ、N−t−ブチル−N−(1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル)ニトロキサイドなどを挙げることができる。
【0025】
これらの中でも、特に2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシ−1−ピペリジニルオキシ、1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジンが好ましい。
【0026】
(化合物(1)および/又は(3))
本発明において利用可能な一般式(1)〜(4)の化合物のうち、化合物(1)、(3)は、加熱することによってラジカル重合によって不飽和モノマーを重合させ得る「遊離基X・」を生じるため、他のラジカル開始剤がない場合であっても本発明の(共)重合体を得ることが出来る。重合速度を増大させるために、必要に応じて、化合物(1)、(3)と、他のラジカル開始剤とを使用しても良い。
【0027】
このような開始剤を併用する態様において、化合物(1)または(3)と他のラジカル開始剤のモル比は、{化合物(1)または(3)}/(他のラジカル開始剤)=0.2/1以下の範囲が好ましく、0.15/1以下の範囲がより好ましい。この{化合物(1)または(3)}/(他のラジカル開始剤)のモル比が大きすぎる場合には、得られる(共)重合体の分子量分布が広くなる傾向がある。
【0028】
(化合物(2)および/又は(4))
本発明において利用可能な一般式(1)〜(4)の化合物のうち、化合物(2)または(4)を用いる場合、ラジカル開始剤を併用することが好ましい。このような併用の態様において、化合物(2)または(4)とラジカル開始剤とのモル比は、{化合物(2)または(4)}/(ラジカル開始剤)=0.2/1〜2.5/1の範囲が好ましく、1/1〜1.5/1の範囲内がより好ましい。この{化合物(2)または(4)}/(ラジカル開始剤)のモル比が小さ過ぎる場合には得られる(共)重合体の分子量分布が広くなり、他方、このモル比が大きすぎる場合には重合速度が著しく低下する傾向がある。
【0029】
(ニトロキサイド化合物の組合せ)
ニトロキサイド化合物の典型的な例である化合物(1)〜(4)と、単量体との組み合わせに関しては、化合物(1)〜(4)の何れを用いることも可能である。
【0030】
(アクリロニトリル以外のビニル系モノマー)
本発明において、アクリロニトリル以外のビニル系モノマーは特に限定されず、公知のビニル系モノマーを特に制限なく使用することが可能である。ビニル系モノマーとしては、ラジカル重合性を有するという点からは、例えばスチレン誘導体もしくは(メタ)アクリル酸エステル類が好適に使用可能である。
【0031】
(スチレン誘導体)
上記した「アクリロニトリル以外のビニル系モノマー」の一種たるスチレン誘導体は特に限定されず、公知のスチレン誘導体を特に制限なく使用することが可能である。このスチレン誘導体として、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン等が好適に使用可能である。
【0032】
(アクリル酸エステル)
上記した「アクリロニトリル以外のビニル系モノマー」の一種たるアクリル酸エステルは特に限定されず、公知のアクリル酸エステルを特に制限なく使用することが可能である。このアクリル酸エステルとして、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸n−ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸エトキシエトキシエチル、アクリル酸メチルトリグリコール、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シアノエチル等が好適に使用可能である。
【0033】
(メタクリル酸エステル)
上記した「アクリロニトリル以外のビニル系モノマー」の一種たるメタクリル酸エステルは特に限定されず、公知のメタクリル酸エステルを特に制限なく使用可能である。このメタクリル酸エステルとして、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸エトキシエトキシエチル、メタクリル酸メチルトリグリコール、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸アルキル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸アリル、メタクリル酸ジアミノエチル、メタクリル酸エチルホスフェート等が好適に使用可能である。
【0034】
(アクリロニトリルの量)
本発明の(共)重合では、重合に供すべきアクリロニトリルおよびその他のビニル系モノマーの合計量を100質量%とした場合、アクリロニトリルは1質量%以上、さらには10〜90質量%の範囲が好ましい。アクリロニトリルが1質量%より少ない場合には、(共)重合体または(共)重合体を高分子ラジカル開始剤として用いて得られるブロック共重合体の相溶性や機械強度などアクリロニトリル成分によって発現する性能が低下する傾向がある。
【0035】
(重合方法)
本発明において使用可能な(共)重合(例えばランダム共重合)の形式は特に制限されず、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法で行うことができる。この重合の際には、単量体の種類、重合温度等によって適当な重合方法を選択することができる。重合に開始剤を利用する場合には、重合温度、重合溶媒等を考慮し、適当なラジカル開始剤を選択して使用すればよい。
【0036】
(開始剤)
上記の塊状重合、溶液重合、懸濁重合等の公知の重合方法において使用可能な開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキシド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤が挙げられる。これらの中でも、119℃以下で充分に重合開始能力を有するというの点からは、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等を用いることが好ましい。これら開始剤の使用量について目的とするポリマーの分子量に合わせて開始剤の使用量を決めることができるが例えば、塊状重合において分子量1万のポリアクリロニトリルを合成する場合、アクリロニトリルモノマーに対して開始剤を1mol%程度添加することが好ましい。
【0037】
(乳化重合)
本発明において上記した乳化重合を行う場合には、例えばベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、エチル3,3−ジ(t−アミルペルオキシ)ブチレート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジイヒドロクロリド、硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性ラジカル開始剤が利用できる。
【0038】
乳化重合を行う際には、一般的には、乳化剤を重合系に存在させることが極めて好ましい。このような態様における乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、ソルビタンポリエチレングリコールモノラウリン酸エステル、モノパルミチン酸エステル、モノオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールステアリル酸エステル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル等の非イオン界面活性剤等が利用できる。
【0039】
(溶液重合)
本発明において、上記した溶液重合を行う場合には、単量体、ニトロキサイド化合物、およびラジカル開始剤の溶解性、および重合温度等を考慮して適当な溶剤を選択し、その溶剤中で重合を行うことができる。この溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン、乳酸エチル、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0040】
(重合温度)
本発明の重合温度は119℃以下の範囲が好ましく、更に90℃以上119℃以下の範囲がより好ましく、100℃以上119℃以下の範囲が最も好ましい。重合温度120℃以上では高分子ラジカル重合開始剤としての能力が著しく低下する傾向がある。
【0041】
最適な重合時間は、選択される重合開始剤、およびニトロキサイド化合物の種類並びに量、および重合温度により決定されるが、例えば塊状重合で分子量1万のものを重合温度100℃で合成するには重合時間は1〜24時間が好ましい。また、塊状重合や溶液重合において、重合終了後未反応のモノマーを除去する方法として再沈操作や真空乾燥作業があるが、この操作や作業によって高分子ラジカル重合開始剤の純分を高くすることはできない。
【0042】
(高分子ラジカル重合開始剤)
本発明によって製造されたアクリロニトリル(共)重合体は下記一般式(5)または(6)に示されるアルコキシアミン基が末端に存在し、リビング活性を有しているため、高分子ラジカル重合開始剤として利用することが可能である。この開始剤の使用方法は特に限定されないが、例えば単量体に該(共)重合体を溶解して、130℃で加熱することでラジカルを発生させ、単量体の重合を開始することができ、利用するブロック共重合体等の合成に好適に利用可能である。
【0043】
【化4】
Figure 2004269575
【0044】
上記式(5)または(6)中、Rはアルコキシアミン基と(共)重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する直鎖型もしくは分岐型のアルキル基である。ここに、「(共)重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長」は、炭素数1以上の基であればよい。
【0045】
上記した「(共)重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長」を有する限り、本発明において使用可能なアルキル基は特に限定されない。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基などが挙げられ、あるいはO=P(R17)(R18)基であって、R17とR18はメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;アリールオキシ基、アリール基、トリフルオロエチル基などのパーフルオロアルキル基;F、Cl、Iなどのハロゲン基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0046】
上記式(5)または(6)中、R、R〜R、R15およびR16は、上記アルコキシアミン基と(共)重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する同一又は異なる直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示す。このようなアルキル基も特に限定されない。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基など好適に使用可能であり、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0047】
上記式(5)または(6)中、R、R、R、R10、R13およびR14は、水素、または直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。このようなアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基などが好適に使用可能である。
【0048】
上記式(5)または(6)中、R11、R12はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの直鎖型もしくは分岐型のアルキル基;水素、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、エチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシロキシ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。上記式(5)または(6)中、R17とR18はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0049】
一般式(5)または(6)で示されるアルコキシアミン基は、特に限定されない。好適な特性を有する高分子ラジカル重合開始剤になりうるという点からは、例えば2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシ−1−ピペリジニルオキシ、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニロキシ、N−t−ブチル−N−(1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル)ニトロキサイドなどの由来の基を挙げることができる。中でも、特に2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシ−1−ピペリジニルオキシ、が好ましい。
【0050】
(分子量)
本発明によって得られた(共)重合体の分子量は、例えば、この(共)重合体を高分子ラジカル重合開始剤として使用する際の所望の物性により適宜決定することができる。例えば高分子ラジカル重合体を用いてブロック共重合体をつくり、相溶化剤として使用する場合には、相溶化効果の点からは、この(共)重合体の数平均分子量は、5×10〜50×10程度、更には1×10〜10×10程度であることが好ましい。この数平均分子量は、後述するようなゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定することができる。
【0051】
(アクリロニトリル(共)重合体の用途)
本発明の製造方法により得られるアクリロニトリル(共)重合体または高分子ラジカル重合開始剤の用途は、特に制限されない。これらの(共)重合体または高分子ラジカル重合開始剤は、例えば、重合が制御された(共)重合体である特徴を活かして、エラストマー、相溶化剤、界面活性剤、塗料、接着剤、流動性改質剤等の合成等の種々の用途にも好適に使用することができる。
【0052】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す(これらの実験結果は、後述する表1、図1、2に纏めて記載する)。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
実施例中における物性は、以下の方法に従って評価した。
【0054】
○数平均分子量、分子量分布
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(TOSOH社製、商品名:HLC−8200GPC、検出器:示差屈折)
カラム:TSKgel SuperHZM−N(内径6.0mm、長さ150mm)2本
カラム槽温度:35℃
移動相:クロロホルム、流量1.0ml/min
標準サンプル:PMMA(Polymer Laboratories社製)(Mn:330000、88000、34500、10300、2990)
試料:濃度 2mg/ml、クロロホルム溶液
試料注入量:100μl
○純分
高分子ラジカル重合開始剤を用いて重合を行って得られたポリマーのGPCカーブの面積比より下記のとおりに計算を行った。
目的とするポリマーの面積比=(目的とするポリマーのGPCカーブの面積)/(得られたポリマーGPCカーブの総面積)
純分(%)=((目的とするポリマーの面積比)/(目的とするポリマーのMn))/(((1−(目的とするポリマーの面積比))/(高分子ラジカル重合開始剤のMn))×100
【0055】
実施例1
下記の各成分を混合して、溶液Aを作製した。この溶液Aを容量5mlのガラスアンプルに注入し、該ガラスアンプルの出入り口側を二方コックで蓋をして真空ラインに接続した後、液体窒素を用いてガラスアンプル中の溶液Aを凍結させた。溶液Aが凍結したのを確認した後、二方コックを開いて、中の溶液Aの凍結物を真空ポンプを使用して0.13kPaで15分間脱気し、次いで二方コックを閉めて、該二方コック付きガラスアンプルを真空ラインから外した。凍結させた二方コック付きガラスアンプルを室温の流水で解凍した後に、再び上記と同様の操作で凍結・脱気した。
【0056】
このような凍結から解凍までの作業を更に2回(合計で3回)繰り返して行った。この3回目の作業では、ガラスアンプル中の溶液Aの凍結物を解凍することなく、二方コックより下部のガラスアンプル部分でガスバーナーを用いて該ガラスアンプルを封管し、次いで得られたガラスアンプルの内容物について、100℃で9時間重合を行った。
【0057】
重合終了後、得られた重合物を10mLのクロロホルムに溶解し、次いで200mLのメタノールに注いで再沈操作を行い、未反応モノマーを除去した。得られた重合体を真空乾燥機にて1.3kPaまで圧力を減じて70℃で24時間乾燥させて重合体を得た。得られた重合体の物性を表1に、GPC曲線を図1に示す。
【0058】
Figure 2004269575
【0059】
実施例2
下記の各成分を混合して、実施例1で合成したアクリロニトリル/スチレンランダム共重合体のブチルアクリレート溶液Bを作製した。得られた混合物について、該アクリロニトリル/スチレンランダム共重合体を高分子ラジカル重合開始剤として用いて、重合温度を130℃、重合時間を9時間にした以外は実施例1と同様の方法で、凍結・脱気操作および重合を行った。得られた重合体の物性および実施例1で合成した高分子ラジカル重合開始剤の純分を表1に、GPC曲線を図1に示す。
溶液B
実施例1で得たアクリロニトリル/スチレンランダム共重合体 0.5g
ブチルアクリレート 1.0g
【0060】
比較例1
重合温度を130℃とした以外は実施例1と同様に凍結・脱気操作および重合を行い、アクリロニトリル/スチレンランダム共重合体を得た。再沈、乾燥操作についても実施例1と同様に行い、得られた共重合体の物性を表1に、GPC曲線を図2に示す。
【0061】
比較例2
下記の各成分を混合して、比較例1で合成したアクリロニトリル/スチレンランダム共重合体のブチルアクリレート溶液Cを作製し、実施例1と同様に凍結・脱気操作を行い、更に実施例2と同様の重合条件で重合を行った。得られた重合体の物性および比較例1で合成した高分子ラジカル重合開始剤純分を表1に、GPC曲線を図2に示す。
溶液C
比較例1で得たアクリロニトリル/スチレンランダム共重合体 0.5g
ブチルアクリレート 1.0g
【0062】
【表1】
Figure 2004269575
【0063】
上記した表1に示したデータ、および図1および2に示した実施例2および比較例2で得られた重合体の分子量ピーク形状および分子量ピーク幅を見れば、本発明のアクリロニトリル(共)重合体が高分子ラジカル重合開始剤として高効率に機能して、制御された分子量および非常に狭い分子量分布を与えることが理解できよう。
【0064】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、アクリロニトリルラジカル(共)重合において、ニトロキサイド化合物の存在下で重合温度を調節して重合することにより、分子量が制御でき、分子量分布が非常に狭く、かつ高分子ラジカル重合開始剤として機能する(共)重合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において得られた高分子ラジカル重合開始剤、および実施例2において得られた重合体、それぞれのGPC曲線を示すグラフである。
【図2】比較例1において得られた高分子ラジカル重合開始剤、および比較例2において得られた重合体、それぞれのGPC曲線を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)〜(4)で示される化合物の少なくとも1種以上のニトロキサイド化合物存在下、アクリロニトリルを単独で重合して、またはアクリロニトリルと他のビニル系モノマーとを共重合して、アクリロニトリル(共)重合体を合成するに際して、重合温度119℃以下で重合を行うアクリロニトリル(共)重合体の製造方法。
    Figure 2004269575
    (式中、Xは少なくとも1個の炭素原子を有する基を示し、その遊離基X・はラジカル重合によって不飽和モノマーを重合させ得る基であり、Rはアルコキシアミン基と(共)重合体末端との結合に立体障害及び結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する直鎖型もしくは分岐型のアルキル基;あるいはO=P(R17)(R18)基を示し、R、R〜R、R15及びR16は、該アルコキシアミン基と(共)重合体末端との結合に立体障害及び結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する同一又は異なる直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、R、R、R、R10、R13及びR14は、水素、直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R11、R12は直鎖型もしくは分岐型のアルキル基、水素、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R17とR18はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。)
  2. 請求項1記載の製造方法で得られる(共)重合体からなる高分子ラジカル重合開始剤。
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