JP2004264702A - Mems素子および光デバイス - Google Patents
Mems素子および光デバイス Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004264702A JP2004264702A JP2003056303A JP2003056303A JP2004264702A JP 2004264702 A JP2004264702 A JP 2004264702A JP 2003056303 A JP2003056303 A JP 2003056303A JP 2003056303 A JP2003056303 A JP 2003056303A JP 2004264702 A JP2004264702 A JP 2004264702A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- actuator
- predetermined
- mirror
- layer
- substrate
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【課題】ミラーを回転させるヒンジ部を細くしてもミラーが元に戻らない状態やヒンジ部の破損を回避することのできるMEMS素子およびこれを使用した光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等の光デバイスを得ること。
【解決手段】ミラー部202とアクチュエータ205、206はトーションスプリング(ヒンジ部)207、208によって固定部209、210に接続され、電源217によるアクチュエータ205、206とシリコン基板215の静電的な引力によって回転軸203の回りを回転する力を受ける。ヒンジ部を構成する所定層の厚さ方向の長さがこれと直交する面方向の長さよりも長いので、厚さ方向の衝撃に強い。またストッパ部219が水平方向の過度な移動を阻止する。ヒンジ部の両端部と接合する箇所にも衝撃に強い形状が採られている。
【選択図】 図1
【解決手段】ミラー部202とアクチュエータ205、206はトーションスプリング(ヒンジ部)207、208によって固定部209、210に接続され、電源217によるアクチュエータ205、206とシリコン基板215の静電的な引力によって回転軸203の回りを回転する力を受ける。ヒンジ部を構成する所定層の厚さ方向の長さがこれと直交する面方向の長さよりも長いので、厚さ方向の衝撃に強い。またストッパ部219が水平方向の過度な移動を阻止する。ヒンジ部の両端部と接合する箇所にも衝撃に強い形状が採られている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は微小電気機械システムとしてのMEMS素子と、これを使用した光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等の光デバイスに係わり、特にチルトミラーを使用したMEMS素子と、MEMS素子を使用した光デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信技術の発展に伴い、各種の光デバイスが開発されている。この中で、微細構造デバイスとしてのMEMS(Micro Electro Mechanical System)素子が近年注目を集めている。MEMS素子は固体の弾性的あるいは機械的な性質を制御する技術を応用したもので、金属等の各種の材料で作られた従来の機械システムをシリコン加工により極小サイズで製造するデバイスである。部品が小型のため最終的な製品も小さくなるという利点があり、また金属疲労が無く、素子としての信頼性が高い。
【0003】
MEMS素子のうちで、その一部にミラーが備えられているものは、電圧を印加することでこのミラーの傾斜角やミラーの位置を変化させ、入射した光の反射方向等を変化させることができる(たとえば特許文献1)。この原理を用いることで、MEMS素子を使用した光減衰器や光スイッチあるいは光スキャナ等の各種の光デバイスを製造することができる。傾斜角を変化させるミラーを備えたMEMS素子では、ミラー自体が比較的大面積であっても、電圧印加に応じて傾斜角が変化したときに反りが少ないことが重要である。また、このような精度の高いMEMS素子が簡単なプロセスで製造できることが求められている。以下、単にMEMS素子と表現するときにはその一部にミラーを備えた素子をいうものとする。
【0004】
MEMS素子として、従来からSOI(Silicon−on−Insulator)プロセスによる片持ち梁の素子が知られている。
【0005】
図11(a)はこのSOIプロセスを使用したMEMS素子を上から見たもので、同図(b)はこれをK−K方向に切断したものである。このMEMS素子101は、電極を兼ねたシリコン基板102上に所定の厚さの酸化層からなる支持部103を配置し、更にこの上に単結晶シリコンの上部電極104を配置して、この上部電極104におけるこれらの図で右半分部分にミラー105を形成した構造となっている。上部電極104におけるミラー105が形成された領域の直下の酸化層は、除去されている。
【0006】
このようなMEMS素子101は上部電極104と、下部電極を兼ねたシリコン基板102との間に電圧を印加すると、両者の間に矢印106で示す静電引力が働く。これにより、ミラー105が上面に形成され下方に空隙が生じている上部電極104が、矢印107方向に傾斜して、ミラー面の上方から入射する図示しない光の反射角度を変えることができる。
【0007】
図11に示したMEMS素子101は次のようにして製造される。まずシリコン基板102の上に支持部103となる酸化層および上部電極104となる単結晶シリコンの層を形成する。この後、上部電極104となる単結晶シリコンにおけるミラー105が形成される直下の部分を切削する。次に、シリコン基板102上の酸化層における支持部103となっている部分以外をエッチングにより取り除く。この後、このエッチングにより除去した酸化層の上側の上部電極104の部分にミラー105を蒸着等で形成する。
【0008】
このように図11に示したMEMS素子101は、比較的簡単なSOIプロセスで製造できるという利点がある。また、上部電極104は単結晶のシリコン板であるため、膜厚を厚く構成することができ、その上に形成するミラー105の反りが少ないという長所がある。しかしながら、ミラー105が片持ち梁の構造となっているので、ミラー面がシリコン基板102に吸引される方向にのみ傾斜することになる。このように、図11に示したバルクマイクロマシニングによる製造では、MEMS素子のミラー105の傾斜の自由度が少ないという問題があった。
【0009】
そこで、表面マイクロマシニングを使用してMEMS素子の設計の自由度を高めることで、ミラーが跳ね上がる方向にも傾斜できるようにする提案が行われている。
【0010】
図12(a)は、表面マイクロマシニングの技術を使用して製造したMEMS素子を上から見たもので、同図(b)はこれをL−L方向に切断したものである。このMEMS素子121は、同図(b)に示すように非導電体の基板122上に酸化層からなる支持部123を配置し、その上にポリシリコン薄膜124を配置した構造となっている。ポリシリコン薄膜124は同図(a)における左半分の部分が上部電極125を構成しており、ここには、多数のエッチングホールと呼ばれる開口126が開けられている。ポリシリコン薄膜124の右側の部分にはその上部にミラー部127が形成されている。ポリシリコン薄膜124は同図(a)でほぼ中央部に図で上下に細く伸びたヒンジ部1281、1282を有しており、これらヒンジ部1281、1282の端部と一体となった矩形領域からなる固定部1291、1292は同図(b)に示した支持部123のちょうど上に積層されている。基板122とポリシリコン薄膜124の間は支持部123を除いて空隙となっており、上部電極125と対向する基板122上には下部電極131が形成されている。
【0011】
このような図12に示す構造のMEMS素子121では、上部電極125と下部電極131の間に電圧を印加することで、矢印130で示すように静電引力が働き、ヒンジ部1281、1282を回転中心としてミラー部127を矢印132、133方向にチルトさせることができる。すなわちミラー部127を上方向に蹴り上げるように傾斜させることができる。これにより、静電引力による駆動時に傾斜角度をより大きく変化させることができる。また図11と図12を比較すると分かるように、ミラー面をより大型のものとすることも可能である。
【0012】
なお、図12でポリシリコン薄膜124はヒンジ部1281、1282を結ぶ直線(回転軸)に対して図でわずかに左側が長くなった形状となっている。これは回転軸を中心に左右の重さのバランスをとることで最も効率的な駆動特性を得るようにするためである。図で回転軸の左側を構成するポリシリコン薄膜124の幅を右側よりも若干広くしても、同様に質量によるモーメントを左右対称として駆動特性を最も効率的なものとすることができる。
【0013】
【特許文献1】
特開2001−174724号公報(第0017段落、図5)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、MEMS素子に関してもこれが組み込まれる装置の他の電子回路等との兼ね合いで低電圧駆動の要請が強い。たとえば図12に示したMEMS素子で低電圧駆動に対処しようとすると、ヒンジ部1281、1282をより細くあるいは長くして、その曲げ剛性を低下させ、わずかの静電引力でミラー部127が回転する必要がある。
【0015】
ところが、このようにヒンジ部1281、1282を細くしたり、その曲げ剛性を低下させると、MEMS素子に何らかの原因で大きな衝撃が加わったときに、ミラー部がヒンジ部1281、1282を中心として回転し、その端部が非導電体の基板122に衝突したり、ミラー部自体が横揺れする。ヒンジ部1281、1282が細くなるとこのような衝突や横揺れがひどくなり、場合によってはヒンジ部1281、1282自体が破壊されるといった現象を生じる。
【0016】
そこで本発明の目的は、ミラーを回転させるヒンジ部に外力が加わったような場合でも、その破損を回避することのできるMEMS素子およびこれを使用した光減衰器、光スイッチおよび光スキャナ等の光デバイスを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明では、(イ)一方の電極となる導電性の基板と、(ロ)この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記した一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、(ハ)前記した所定層から同じく形成され回転軸を中心軸としてアクチュエータと所定の固定箇所との間を接続する棒状部材であって前記した所定層の厚さ方向の長さがこれと直交する面方向の長さよりも長いヒンジ部材と、(ニ)アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーとをMEMS素子に具備させる。
【0018】
すなわち請求項1記載の発明では、導電性の基板の上のアクチュエータがこの基板との静電的な力によってヒンジ部材を中心として回転しミラーの入射光の反射方向を変化させるようになっている。低電圧駆動の要請等によってヒンジ部材の断面の面積が小さくなっている場合であっても、この棒状のヒンジ部材を構成する所定層の厚さ方向の長さがこれと直交する面方向の長さよりも長いので、同じくこの所定層から構成されるミラーやアクチュエータにこの所定層の厚さ方向の力が作用してもこれに耐えることができヒンジ部の破損を回避することができる。
【0019】
請求項2記載の発明では、(イ)一方の電極となる導電性の基板と、(ロ)この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記した一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、(ハ)前記した所定層から同じく形成され回転軸に沿ってアクチュエータと所定の固定箇所との間を接続するヒンジ部材と、(ニ)アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーと、(ホ)前記した所定層から同じく形成されアクチュエータの回転軸を中心とした回転範囲からわずかに離れた位置に固定されたストッパとをMEMS素子に具備させる。
【0020】
すなわち請求項2記載の発明では、導電性の基板の上のアクチュエータがこの基板との静電的な力によってヒンジ部材を中心として回転しミラーの入射光の反射方向を変化させるようになっている。このMEMS素子には、アクチュエータの回転軸を中心とした回転範囲からわずかに離れた位置におけるアクチュエータと同一の層としての所定層に、ストッパが位置的に固定された状態で配置されている。そこで、ミラーやアクチュエータに前記した所定層の面方向の力が加わった場合にストッパが過剰な移動を阻止することができ、ヒンジ部材が破損するのを防止することができる。
【0021】
請求項3記載の発明では、(イ)一方の電極となる導電性の基板と、(ロ)この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記した一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、(ハ)前記した所定層から同じく形成され回転軸に沿ってアクチュエータと所定の固定箇所との間を接続する棒状部材であってアクチュエータとの接続箇所でこのアクチュエータに近づく方向に少なくとも所定距離の範囲内では回転軸と直交する前記した所定層の面方向の長さが幅広となったヒンジ部材と、(ニ)前記した所定層から同じく形成され固定箇所に位置的に固定して配置され、ヒンジ部材との接続箇所でこのヒンジ部材から遠ざかる方向に少なくとも所定距離の範囲内では回転軸と直交する前記した所定層の面方向の長さが幅広となった固定部材と、(ホ)アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーとをMEMS素子に具備させる。
【0022】
すなわち請求項3記載の発明では、導電性の基板の上のアクチュエータがこの基板との静電的な力によってヒンジ部材を中心として回転しミラーの入射光の反射方向を変化させるようになっている。ヒンジ部材は所定層から形成されており、回転軸に沿ってアクチュエータと固定箇所との間を接続している棒状の部材であるが、その固定箇所にはヒンジ部材から遠ざかる方向に少なくとも所定距離の範囲内では回転軸と直交する前記した所定層の面方向の長さが幅広となった固定部材が配置されているので、ヒンジ部材の長手方向の衝撃をこの幅広となった固定部材の部分でゆるやかに吸収することができ、その破損を効果的に防止することができる。
【0023】
請求項4記載の発明では、(イ)一方の電極となる導電性の基板と、この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記した一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、前記した所定層から同じく形成され回転軸を中心軸としてアクチュエータと所定の固定箇所との間を接続する棒状部材であって前記した所定層の厚さ方向の長さがこれと直交する面方向の長さよりも長いヒンジ部材と、アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーとを備えたMEMS素子と、(ロ)このMEMS素子の基板と前記した所定層との間に電圧を印加する電源と、(ハ)この電源の電圧印加に応じて傾斜するミラーを用いて光線の入出力を行う入出力手段とを光デバイスに具備させる。
【0024】
すなわち請求項4記載の発明では、請求項1記載のMEMS素子を、光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等のミラーの傾斜角を用いて光の減衰率の調整や光のオン・オフあるいは光の走査等に利用する光デバイスに応用し、光デバイス自体の耐衝撃性を高めている。
【0025】
請求項5記載の発明では、(イ)一方の電極となる導電性の基板と、この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記した一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、前記した所定層から同じく形成され回転軸に沿ってアクチュエータと所定の固定箇所との間を接続するヒンジ部材と、アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーと、前記した所定層から同じく形成されアクチュエータの回転軸を中心とした回転範囲からわずかに離れた位置に固定されたストッパとを備えたMEMS素子と、(ロ)このMEMS素子の基板と前記した所定層との間に電圧を印加する電源と、(ハ)この電源の電圧印加に応じて傾斜するミラーを用いて光線の入出力を行う入出力手段とを光デバイスに具備させる。
【0026】
すなわち請求項5記載の発明では、請求項2記載のMEMS素子を、光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等のミラーの傾斜角を用いて光の減衰率の調整や光のオン・オフあるいは光の走査等に利用する光デバイスに応用し、光デバイス自体の耐衝撃性を高めている。
【0027】
請求項6記載の発明では、(イ)一方の電極となる導電性の基板と、この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記した一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、前記した所定層から同じく形成され回転軸に沿ってアクチュエータと所定の固定箇所との間を接続する棒状部材であってアクチュエータとの接続箇所でこのアクチュエータに近づく方向に少なくとも所定距離の範囲内では回転軸と直交する前記した所定層の面方向の長さが幅広となったヒンジ部材と、前記した所定層から同じく形成され固定箇所に位置的に固定して配置され、ヒンジ部材との接続箇所でこのヒンジ部材から遠ざかる方向に少なくとも所定距離の範囲内では回転軸と直交する前記した所定層の面方向の長さが幅広となった固定部材と、アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーを備えたMEMS素子と、(ロ)このMEMS素子の基板と前記した所定層との間に電圧を印加する電源と、(ハ)この電源の電圧印加に応じて傾斜するミラーを用いて光線の入出力を行う入出力手段とを光デバイスに具備させる。
【0028】
すなわち請求項6記載の発明では、請求項3記載のMEMS素子を、光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等のミラーの傾斜角を用いて光の減衰率の調整や光のオン・オフあるいは光の走査等に利用する光デバイスに応用し、光デバイス自体の耐衝撃性を高めている。
【0029】
【発明の実施の形態】
【0030】
【実施例】
以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
【0031】
図1は本発明の実施例におけるMEMS素子の要部を斜め上方から見たものである。このMEMS素子201は、円盤状のミラー部202を備えている。このミラー部202は、円盤の中心部を上面と平行な方向に貫通する1本の回転軸203を中心として傾斜角度θで矢印204方向に回転するようになっている。ミラー部202は、この回転軸203の貫通した2方向に突出した第1および第2のアクチュエータ205、206を備えている。これら第1および第2のアクチュエータ205、206の延長上には回転軸203が同じく中心部分を貫通した形で細い棒状の第1および第2のトーションスプリング(ヒンジ部)207、208のそれぞれ一端が配置されており、これらの他端は第1および第2の固定部209、210に接続された構造となっている。ただし、ミラー部202、第1および第2のアクチュエータ205、206、第1および第2のトーションスプリング207、208ならびに第1および第2の固定部209、210は別々の部品が組み合わされているのではなく、上部電極層と呼ばれる1つの層を所定の処理によって加工したものである。第1および第2のアクチュエータ205、206にはエッチングホールと呼ばれる開口212が複数配置されている。また、ミラー部202には図示しないが必要に応じて金(Au)やクロム(Cr)等の金属によって反射面が形成されている。
【0032】
この図1で第1および第2のアクチュエータ205、206の右半分部分の下側には所定の間隔dをおいて、下部電極を兼ねたシリコン基板215が配置されている。ミラー部202の下側では、このミラー部202の円形形状よりもやや大きなサイズでシリコン基板215がその面とほぼ垂直方向にくり抜かれるように切除されており、円形開口部216を形成している。これは、回転軸203を中心としてミラー部202が矢印204方向に回転するとき、シリコン基板215の上面と接触するのを防止するためと、上部電極層と下部電極を兼ねたシリコン基板215の間に電源217によって電圧を印加したときミラー部202に静電的な力が直接及ぼされないようにするためである。
【0033】
また、円形開口部216に連なって第1および第2のアクチュエータ205、206の図で左側の領域でもシリコン基板215がその面とほぼ垂直方向にくり抜かれるように切除されており、矩形開口部218を構成している。これに対して第1および第2のアクチュエータ205、206の図で右側の領域ではシリコン基板215は切除されていない。このように回転軸203を中心としてシリコン基板215が左右不均衡に存在することによって、電源217による電圧印加の大きさに応じて第1および第2のアクチュエータ205、206が左右異なった静電引力を受ける。この結果、印加電圧に応じてミラー部202は矢印204方向に回転する力を第1および第2のアクチュエータ205、206から伝達され、第1および第2のトーションスプリング207、208のこれに逆らう力と均衡する傾斜角にミラー面が設定されることになる。
【0034】
すなわち、電圧が印加されていない状態におけるミラー部202のミラー面と直交する垂線(Y軸方向)221に対して入射角αで光ビーム222が入射したとすると、電源217の印加電圧が大きくなるに応じて傾斜角度θが角度αから次第に大きな値に変化することになる。このようにミラー部202の傾斜角度θを電源217による印加電圧によって任意に変化させることで、後に説明するようにMEMS素子を光減衰器、光スイッチあるいは光スキャナ等の各種の光学部品あるいは光学装置に応用することができる。
【0035】
シリコン基板215におけるミラー部202の周辺あるいは第1または第2のアクチュエータ205、206の両側部のいずれかと対向する位置には、共にわずかの間隔を置いてストッパ部219の端部が配置されている。ストッパ部219は上部電極層で構成されている。この図1で回転軸203の方向をZ軸方向とし、前記した垂線221の方向がY軸方向のとき、このストッパ部219の端部は、ミラー部202および第1または第2のアクチュエータ205、206のX軸方向の揺れを制限する役割を果たしている。本実施例の第1および第2のアクチュエータ205、206は低電圧駆動を可能にするためにそれらの断面のサイズを小さくしているが、図でハッチングで示したようにY軸方向に細長い断面構造となっており、Y軸方向の衝撃に強い。その分だけX軸方向の衝撃に対して変形あるいは破壊が生じやすい構造となっているので、ストッパ部219の端部がこれらのX軸方向の大幅な移動を阻止するようになっている。
【0036】
なお、この図1では層構造を分りやすくするために、第1のアクチュエータ205の手前側(電源217を示している側)のシリコン基板215およびストッパ部219を適宜切除して図解している。また、上部電極層とシリコン基板215の間の中間層の図示は省略している。
【0037】
図2は、本実施例のMEMS素子の平面構造を表わしたものである。この図で実線224、225で示したのがストッパ部219における第1または第2のアクチュエータ205、206に対するストッパとしての役割を果たす前記した端部を示したものである。すでに説明したようにストッパ部219はミラー部202や第1または第2のアクチュエータ205、206と同一の上部電極層で構成されている。本来、ミラー部202や第1または第2のアクチュエータ205、206以外のこれらの領域は下部電極としてのシリコン基板215が露出していてもよい。本実施例のMEMS素子201ではこれらの領域に上部電極層を残すことで、ミラー部202や第1または第2のアクチュエータ205、206と対向する壁を作り、これによってY軸方向の不必要な移動を阻止するようにしている。
【0038】
図3は、図2でA−A方向にMEMS素子を切断した場合の端面の構造を表わしたものである。図3に示すように実施例ではミラー部202の上部に金の薄膜からなる反射層231が形成されている。また、ミラー部202の直下のシリコン基板215は図で下方からくり抜かれ、円形開口部216を形成している。ストッパ部219はミラー部202を挟むような形でそれぞれ所定の間隔を置いてこの両側に配置されている。
【0039】
図4は、図2でB−B方向にMEMS素子を切断した場合の端面の構造を表わしたものである。この図では図2における第2のアクチュエータ206を横断する形で切断している。第2のアクチュエータ206には、エッチングホールとしての開口212が上下に貫通している。この開口212は、第2のアクチュエータ206を構成する上部電極層とシリコン基板215の間にMEMS素子のパターン作成処理前にこの部分に存在していた図示しない中間層(活性層)をエッチングによって除去する際のエッチング液の染み込みを促進させる役割を果たしている。また、上部電極層を構成する第1および第2のアクチュエータ205、206(図1および図2)が印加電圧に応じて傾斜する際に、スクイーズダンピングと呼ばれる空気の粘性抵抗を低減して高速動作を可能とする。ストッパ部219は第2のアクチュエータ206を挟むような形で所定の間隔を置いてこの両側に配置されている。図示しないが第1のアクチュエータ205とストッパ部219の関係も同様である。
【0040】
図5(a)は、図2でC−C方向にMEMS素子を切断した場合の端面の構造を表わしたものである。この図では図2における第1のトーションスプリング207を横断する形で切断している。ストッパ部219は第1のトーションスプリング207を挟むような形で所定の間隔を置いてこの両側に配置されている。同図(b)は第1のトーションスプリングの断面を拡大して示したものである。本実施例では第1のトーションスプリング207のX軸方向の長さとY軸方向の長さは1対10程度となっている。この場合、X軸方向の第1のトーションスプリング207の長さは最も短い場合には数μm程度となる。図示しないが第2のトーションスプリング208とストッパ部219の関係も同様である。
【0041】
図6は、この実施例のMEMS素子をバルクマイクロマシニングによって製造するプロセスを示したものである。まず、同図(a)に示すようにシリコン基板215と中間層241および上部電極層242がそれぞれ所望の厚さとなった3層構造のウエハ243を用意する。ここでシリコン基板215と上部電極層242は共にシリコン(Si)にボロン(B)やリン(P)等の不純物をドープして導体としたものである。中間層241はシリコン酸化膜(SiO2)である。このうち、上部電極層242は、図1等で説明したミラー部202、第1および第2のアクチュエータ205、206、第1および第2のトーションスプリング207、208、第1および第2の固定部209、210ならびにストッパ部219が形成される層である。中間層241は、図1に示した間隔dに対応する厚さとなっている。本実施例ではシリコン基板215の厚さは300〜800μm、中間層241の厚さは0.5〜5μm、上部電極層242の厚さは10〜50μmのものを使用する。
【0042】
次に、同図(b)に示すようにフォトリソグラフィとエッチングによって上部電極層242のパターンを作成する。フォトリソグラフィとエッチングによるパターンの作成については、従来から用いられている手法なので図示および説明を省略する。この処理で図1等で説明したミラー部202、第1および第2のアクチュエータ205、206、第1および第2のトーションスプリング207、208、第1および第2の固定部209、210、開口212およびストッパ部219が形成される。なお、図6では上部電極層242の詳細な図示は省略している。
【0043】
次に、同図(c)に示すようにシリコン基板215側からフォトリソグラフィとエッチングを行い、図1に示したミラー部202に対応する円形開口部216や、この図5には示していない矩形開口部218を作成する。このときには、必要に応じてウエハ243の表裏を反転させて処理を行うことになる。
【0044】
最後に、同図(d)に示すように中間層241を除去する。ただし、図1および図2に示した第1および第2の固定部209、210およびストッパ部219の部分は中間層241と上部電極層242で構成されているので、エッチングの時間を調整することでこの部分の中間層241(図3〜図5で図示を省略)は残存させる。
【0045】
以上説明した実施例ではSOIを用いたバルクマイクロマシニングを使用してMEMS素子201を製造したので、表面マイクロマシニングと比べて簡単な工程となり、コストダウンを図ることができる。しかもSOIを用いた場合、構造体が結晶シリコンとなるため、ミラー等の光学部品を高い品質で製造することができる。更に通常の表面マイクロマシニングと比べて上部電極層242を厚く形成することができるので、図5(b)に示したように第1および第2のトーションスプリング207のY軸方向をX軸方向に比べて厚くすることができ、低電圧駆動を行う場合にもY軸方向に特に補強を行うことなく衝撃に対する耐性を十分持たせることができる。また、構造上、回転軸203の方向としてのZ軸方向(図1)の耐衝撃性が高いので、結果的にすべての方向に対する耐衝撃性を高めることができる。
【0046】
また、第1および第2のアクチュエータ205、206は第1および第2のトーションスプリング207、208に対して対称形となり、回転軸203の両側に開口212を均等に配置している。このため、回転軸203に対して質量のモーメントが対称形となり、第1および第2のトーションスプリング207、208が特定方向に余計に回転してねじ切れる事態の発生を効果的に防止することができる。更に第1および第2のアクチュエータ205、206のほぼ全面に開口212が配置されているので、エッチング液の染み込みを均一に行えると共に空気の粘性抵抗の低減も回転軸203を中心にバランスよく行うことができる。
【0047】
<第1の実施例の第1の変形例>
図7は本発明の第1の実施例のMEMS素子の第1の変形例における平面構造を表わしたものである。図7で図2と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。第1の変形例のMEMS素子201Aは、図2に示した第1の実施例のMEMS素子201と次の点が大きく相違している。第1の実施例では、図2に示したように第1および第2のトーションスプリング207、208が第1および第2の固定部209、210のうちの対応するもので終端している。第1の変形例では第1および第2のトーションスプリング207A、208Aが第1および第2の補強部209A、210Aを途中に挟んで更に延長されており、ストッパ部219の一部をなす第1および第2の緩衝吸収領域301、302に接続されている。
【0048】
これら第1および第2の緩衝吸収領域301、302は第1および第2の補強部209A、210Aと共に上部電極層242を構成しているが、第1および第2のトーションスプリング207A、208Aの終端が90度以上の鈍角で他の部材と接続されるように渦巻き状に進路を変え、進路を2分岐することで力の掛かる方向を2つに分散している。なお、第1および第2の補強部209A、210Aは第1の実施例における第1および第2の固定部209、210と異なり位置的に固定されているものではない。第1および第2の補強部209A、210Aは中間層としての酸化層を除去するまでの工程での強度を保持するための役割を果たしており、第1および第2のトーションスプリング207A、208Aは第1または第2の緩衝吸収領域301、302で固定されている。
【0049】
したがって、MEMS素子201AにZ軸方向(図1)の衝撃が加わったとき、第1の実施例ではこれを図2に示す第1および第2の固定部209、210で受け止めていたが、第1の変形例では第1および第2の補強部209A、210Aならびに第1および第2の緩衝吸収領域301、302で受け止めるようになっている。これにより、Z軸方向の衝撃に対する耐力が飛躍的に増大する。なお、第1の実施例および第1の変形例共に、第1または第2のトーションスプリング207、208、207A、208Aの両端の接続箇所は、図1にも示されているようにR(アール)を形成し、次第に幅広となって対向するアクチュエータ205、206あるいは補強部209A、210Aと接続されている。これもZ軸方向の衝撃に対する耐力の増強に効果がある。
【0050】
また、第1および第2のトーションスプリング207Aおよび208Aの横に壁を設けることで、構造体のパターンをエッチングで作製する際のばらつきを低減することができる。
【0051】
<第1の実施例の第2の変形例>
図8は本発明の第1の実施例のMEMS素子の第2の変形例における平面構造を表わしたものである。この第2の変形例のMEMS素子201Bでは、ミラー部202の周辺と第1または第2のアクチュエータ205、206におけるZ軸(図1)に平行な側部に沿って第1および第2のストッパ部311、312が所定の幅を有する壁状に設けられている。したがって、この図に示すようにMEMS素子201Bを上から見たとき、ミラー部202、第1および第2のアクチュエータ205、206、第1および第2のトーションスプリング207、208、第1および第2の固定部209、210ならびに第1および第2のストッパ部311、312以外の部分では下部電極としてのシリコン基板215が露出している。このように第1および第2のストッパ部311、312を壁のような構造にしても、衝撃に対するストッパとしての効果を得ることができる。
【0052】
<第2の実施例>
【0053】
図9は、本発明の第2の実施例として第1の実施例のMEMS素子を光減衰器に応用した例を示したものである。この光減衰器501は、減衰を行う光を入射する第1の光ファイバ502と減衰後の光を射出する第2の光ファイバ503のそれぞれ端部近傍を収容するキャピラリ504を備えている。このキャピラリ504における第1および第2の光ファイバ502、503の端部側にはレンズホルダ505が接続されている。第1の光ファイバ502から射出された光は、このレンズホルダ505内を進行して非球面レンズ506に入射し、前方に配置されたMEMS素子201のミラー部202に入射する。
【0054】
このミラー部202と下部電極を兼ねたシリコン基板215の間には電圧制御部508から出力電圧が印加されるようになっている。この出力電圧は所定範囲で連続的にその値を変化させることができるようになっており、この電圧変化によってミラー部202の傾斜角が0度(水平)から所定の角度まで変化するようになっている。
【0055】
電圧制御部508による印加電圧を連続的に変化させ、ミラー部202の傾斜角をこれに応じて変化させると、レンズホルダ505の非球面レンズ506から出射しミラー部202で反射された光は、非球面レンズ506に入射する量および入射角を連続的に変化させる。この結果、非球面レンズ506に戻った光のうちで第2の光ファイバ503に結合する光の量が連続的に変化することになる。したがって、光減衰器501は電圧制御部508の出力電圧に応じて光の減衰量を変化させることができる。
【0056】
このような連続的な光の減衰制御の代わりに、電圧制御部508から電圧が2値のいずれかとなったオン・オフ制御信号を出力することで、たとえば第2の光ファイバ503に入射する光を第1の光ファイバ502から出射された光のほぼ100パーセントの状態とほぼ0パーセントの状態に切り換えることができる。これにより、図9に示したデバイスを光スイッチとして動作させることができる。
【0057】
<第3の実施例>
【0058】
図10は、本発明の第3の実施例として第1の実施例のMEMS素子を光スキャナに応用した例を示したものである。この光スキャナ551の一部を構成する光ファイバ552から射出された光は、コリメータレンズ553によって平行光にされて、図1あるいは図2に示したMEMS素子201のミラー部202に入射する。このミラー部202と下部電極を兼ねたシリコン基板215の間には電圧制御部554から出力電圧が印加されるようになっている。この出力電圧はその値がサイン波状あるいは鋸歯状等種々の波形で周期的に変化するようになっており、これによるミラー部202の傾斜角の周期的な変化で反射光555が矢印556に示すように方向を周期的に変える。したがって、この反射光555を用いた光学的なスキャンが可能になる。
【0059】
以上、各実施例ではMEMS素子をSOIを用いたバルクマイクロマシニングで実現する例を説明したが、最終的に同一の構造のMEMS素子を他の周知のプロセスで作成した物に対しても本発明を適用することができることは当然である。また、第1の実施例および変形例ではトーションスプリングを固定部で固定したが、第1の変形例のような緩衝吸収領域に接続しているときは固定部を省略してもよいことは当然である。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、棒状のヒンジ部材を構成する所定層の厚さ方向の長さがこれと直交する面方向の長さよりも長いので、同じくこの所定層から構成されるミラーやアクチュエータにこの所定層の厚さ方向の力が作用してもこれに耐えることができヒンジ部の破損を回避しながらその剛性を低下させ低電圧駆動を実現することができる。
【0061】
また請求項2記載の発明によれば、ミラーやアクチュエータと同一の層としての所定層に間隔を置いてストッパを形成したので、ミラーやアクチュエータが外力によってこの層の面方向に移動することがあってもこの動きを制動することができ、結果的にヒンジ部材を細長くすることでその剛性を低下させ低電圧駆動を実現することができる。
【0062】
更に請求項3記載の発明によれば、ヒンジ部材は所定層から形成されており、回転軸に沿ってアクチュエータと固定箇所との間を接続している棒状の部材であるが、その固定箇所にはヒンジ部材から遠ざかる方向に少なくとも所定距離の範囲内では回転軸と直交する前記した所定層の面方向の長さが幅広となった固定部材が配置されているので、ヒンジ部材の長手方向の衝撃をこの幅広となった固定部材の部分でゆるやかに吸収することができ、その破損を効果的に防止することができるので、ヒンジ部材を細長くしてその剛性を低下させ低電圧駆動を実現することが可能になる。
【0063】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1記載のMEMS素子を、光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等のミラーの傾斜角を用いて光の減衰率の調整や光のオン・オフあるいは光の走査等に利用する光デバイスに応用し、光デバイス自体の耐衝撃性を高めると共に低電圧駆動を実現することができる。
【0064】
更に請求項5記載の発明によれば、請求項2記載のMEMS素子を、光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等のミラーの傾斜角を用いて光の減衰率の調整や光のオン・オフあるいは光の走査等に利用する光デバイスに応用し、光デバイス自体の耐衝撃性を高めると共に低電圧駆動を実現することができる。
【0065】
また請求項6記載の発明によれば、請求項3記載のMEMS素子を、光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等のミラーの傾斜角を用いて光の減衰率の調整や光のオン・オフあるいは光の走査等に利用する光デバイスに応用し、光デバイス自体の耐衝撃性を高めると共に低電圧駆動を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例におけるMEMS素子の要部斜視図である。
【図2】実施例のMEMS素子の要部を上から見た平面図である。
【図3】図2でMEMS素子の要部をA−A方向に切断した端面図である。
【図4】図2でMEMS素子の要部をB−B方向に切断した端面図である。
【図5】図2でMEMS素子の要部をC−C方向に切断した端面図である。
【図6】実施例のMEMS素子をバルクマイクロマシニングによって製造する一連のプロセスを示した説明図である。
【図7】本発明の第1の実施例の第1の変形例におけるMEMS素子の要部を表わした平面図である。
【図8】本発明の第1の実施例の第2の変形例におけるMEMS素子の要部を表わした平面図である。
【図9】本発明の第2の実施例として第1の実施例のMEMS素子を光減衰器に応用した例を示した概略構成図である。
【図10】本発明の第3の実施例として第1の実施例のMEMS素子を光スキャナに応用した例を示した概略構成図である。
【図11】従来SOIプロセスを使用して製造されたMEMS素子の平面および断面を示した図である。
【図12】表面マイクロマシニングにより従来製造されたMEMS素子の平面および断面を示した図である。
【符号の説明】
201、201A、201B MEMS素子
202 ミラー部(上部電極)
203 回転軸
205、206 アクチュエータ(上部電極)
207、208 トーションスプリング(ヒンジ部)
209、210 固定部
215 シリコン基板(下部電極)
216 円形開口部
217 電源
218 矩形開口部
219、311、312 ストッパ部
501 光減衰器(光スイッチ)
508、554 電圧制御部
551 光スキャナ
【発明の属する技術分野】
本発明は微小電気機械システムとしてのMEMS素子と、これを使用した光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等の光デバイスに係わり、特にチルトミラーを使用したMEMS素子と、MEMS素子を使用した光デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信技術の発展に伴い、各種の光デバイスが開発されている。この中で、微細構造デバイスとしてのMEMS(Micro Electro Mechanical System)素子が近年注目を集めている。MEMS素子は固体の弾性的あるいは機械的な性質を制御する技術を応用したもので、金属等の各種の材料で作られた従来の機械システムをシリコン加工により極小サイズで製造するデバイスである。部品が小型のため最終的な製品も小さくなるという利点があり、また金属疲労が無く、素子としての信頼性が高い。
【0003】
MEMS素子のうちで、その一部にミラーが備えられているものは、電圧を印加することでこのミラーの傾斜角やミラーの位置を変化させ、入射した光の反射方向等を変化させることができる(たとえば特許文献1)。この原理を用いることで、MEMS素子を使用した光減衰器や光スイッチあるいは光スキャナ等の各種の光デバイスを製造することができる。傾斜角を変化させるミラーを備えたMEMS素子では、ミラー自体が比較的大面積であっても、電圧印加に応じて傾斜角が変化したときに反りが少ないことが重要である。また、このような精度の高いMEMS素子が簡単なプロセスで製造できることが求められている。以下、単にMEMS素子と表現するときにはその一部にミラーを備えた素子をいうものとする。
【0004】
MEMS素子として、従来からSOI(Silicon−on−Insulator)プロセスによる片持ち梁の素子が知られている。
【0005】
図11(a)はこのSOIプロセスを使用したMEMS素子を上から見たもので、同図(b)はこれをK−K方向に切断したものである。このMEMS素子101は、電極を兼ねたシリコン基板102上に所定の厚さの酸化層からなる支持部103を配置し、更にこの上に単結晶シリコンの上部電極104を配置して、この上部電極104におけるこれらの図で右半分部分にミラー105を形成した構造となっている。上部電極104におけるミラー105が形成された領域の直下の酸化層は、除去されている。
【0006】
このようなMEMS素子101は上部電極104と、下部電極を兼ねたシリコン基板102との間に電圧を印加すると、両者の間に矢印106で示す静電引力が働く。これにより、ミラー105が上面に形成され下方に空隙が生じている上部電極104が、矢印107方向に傾斜して、ミラー面の上方から入射する図示しない光の反射角度を変えることができる。
【0007】
図11に示したMEMS素子101は次のようにして製造される。まずシリコン基板102の上に支持部103となる酸化層および上部電極104となる単結晶シリコンの層を形成する。この後、上部電極104となる単結晶シリコンにおけるミラー105が形成される直下の部分を切削する。次に、シリコン基板102上の酸化層における支持部103となっている部分以外をエッチングにより取り除く。この後、このエッチングにより除去した酸化層の上側の上部電極104の部分にミラー105を蒸着等で形成する。
【0008】
このように図11に示したMEMS素子101は、比較的簡単なSOIプロセスで製造できるという利点がある。また、上部電極104は単結晶のシリコン板であるため、膜厚を厚く構成することができ、その上に形成するミラー105の反りが少ないという長所がある。しかしながら、ミラー105が片持ち梁の構造となっているので、ミラー面がシリコン基板102に吸引される方向にのみ傾斜することになる。このように、図11に示したバルクマイクロマシニングによる製造では、MEMS素子のミラー105の傾斜の自由度が少ないという問題があった。
【0009】
そこで、表面マイクロマシニングを使用してMEMS素子の設計の自由度を高めることで、ミラーが跳ね上がる方向にも傾斜できるようにする提案が行われている。
【0010】
図12(a)は、表面マイクロマシニングの技術を使用して製造したMEMS素子を上から見たもので、同図(b)はこれをL−L方向に切断したものである。このMEMS素子121は、同図(b)に示すように非導電体の基板122上に酸化層からなる支持部123を配置し、その上にポリシリコン薄膜124を配置した構造となっている。ポリシリコン薄膜124は同図(a)における左半分の部分が上部電極125を構成しており、ここには、多数のエッチングホールと呼ばれる開口126が開けられている。ポリシリコン薄膜124の右側の部分にはその上部にミラー部127が形成されている。ポリシリコン薄膜124は同図(a)でほぼ中央部に図で上下に細く伸びたヒンジ部1281、1282を有しており、これらヒンジ部1281、1282の端部と一体となった矩形領域からなる固定部1291、1292は同図(b)に示した支持部123のちょうど上に積層されている。基板122とポリシリコン薄膜124の間は支持部123を除いて空隙となっており、上部電極125と対向する基板122上には下部電極131が形成されている。
【0011】
このような図12に示す構造のMEMS素子121では、上部電極125と下部電極131の間に電圧を印加することで、矢印130で示すように静電引力が働き、ヒンジ部1281、1282を回転中心としてミラー部127を矢印132、133方向にチルトさせることができる。すなわちミラー部127を上方向に蹴り上げるように傾斜させることができる。これにより、静電引力による駆動時に傾斜角度をより大きく変化させることができる。また図11と図12を比較すると分かるように、ミラー面をより大型のものとすることも可能である。
【0012】
なお、図12でポリシリコン薄膜124はヒンジ部1281、1282を結ぶ直線(回転軸)に対して図でわずかに左側が長くなった形状となっている。これは回転軸を中心に左右の重さのバランスをとることで最も効率的な駆動特性を得るようにするためである。図で回転軸の左側を構成するポリシリコン薄膜124の幅を右側よりも若干広くしても、同様に質量によるモーメントを左右対称として駆動特性を最も効率的なものとすることができる。
【0013】
【特許文献1】
特開2001−174724号公報(第0017段落、図5)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、MEMS素子に関してもこれが組み込まれる装置の他の電子回路等との兼ね合いで低電圧駆動の要請が強い。たとえば図12に示したMEMS素子で低電圧駆動に対処しようとすると、ヒンジ部1281、1282をより細くあるいは長くして、その曲げ剛性を低下させ、わずかの静電引力でミラー部127が回転する必要がある。
【0015】
ところが、このようにヒンジ部1281、1282を細くしたり、その曲げ剛性を低下させると、MEMS素子に何らかの原因で大きな衝撃が加わったときに、ミラー部がヒンジ部1281、1282を中心として回転し、その端部が非導電体の基板122に衝突したり、ミラー部自体が横揺れする。ヒンジ部1281、1282が細くなるとこのような衝突や横揺れがひどくなり、場合によってはヒンジ部1281、1282自体が破壊されるといった現象を生じる。
【0016】
そこで本発明の目的は、ミラーを回転させるヒンジ部に外力が加わったような場合でも、その破損を回避することのできるMEMS素子およびこれを使用した光減衰器、光スイッチおよび光スキャナ等の光デバイスを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明では、(イ)一方の電極となる導電性の基板と、(ロ)この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記した一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、(ハ)前記した所定層から同じく形成され回転軸を中心軸としてアクチュエータと所定の固定箇所との間を接続する棒状部材であって前記した所定層の厚さ方向の長さがこれと直交する面方向の長さよりも長いヒンジ部材と、(ニ)アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーとをMEMS素子に具備させる。
【0018】
すなわち請求項1記載の発明では、導電性の基板の上のアクチュエータがこの基板との静電的な力によってヒンジ部材を中心として回転しミラーの入射光の反射方向を変化させるようになっている。低電圧駆動の要請等によってヒンジ部材の断面の面積が小さくなっている場合であっても、この棒状のヒンジ部材を構成する所定層の厚さ方向の長さがこれと直交する面方向の長さよりも長いので、同じくこの所定層から構成されるミラーやアクチュエータにこの所定層の厚さ方向の力が作用してもこれに耐えることができヒンジ部の破損を回避することができる。
【0019】
請求項2記載の発明では、(イ)一方の電極となる導電性の基板と、(ロ)この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記した一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、(ハ)前記した所定層から同じく形成され回転軸に沿ってアクチュエータと所定の固定箇所との間を接続するヒンジ部材と、(ニ)アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーと、(ホ)前記した所定層から同じく形成されアクチュエータの回転軸を中心とした回転範囲からわずかに離れた位置に固定されたストッパとをMEMS素子に具備させる。
【0020】
すなわち請求項2記載の発明では、導電性の基板の上のアクチュエータがこの基板との静電的な力によってヒンジ部材を中心として回転しミラーの入射光の反射方向を変化させるようになっている。このMEMS素子には、アクチュエータの回転軸を中心とした回転範囲からわずかに離れた位置におけるアクチュエータと同一の層としての所定層に、ストッパが位置的に固定された状態で配置されている。そこで、ミラーやアクチュエータに前記した所定層の面方向の力が加わった場合にストッパが過剰な移動を阻止することができ、ヒンジ部材が破損するのを防止することができる。
【0021】
請求項3記載の発明では、(イ)一方の電極となる導電性の基板と、(ロ)この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記した一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、(ハ)前記した所定層から同じく形成され回転軸に沿ってアクチュエータと所定の固定箇所との間を接続する棒状部材であってアクチュエータとの接続箇所でこのアクチュエータに近づく方向に少なくとも所定距離の範囲内では回転軸と直交する前記した所定層の面方向の長さが幅広となったヒンジ部材と、(ニ)前記した所定層から同じく形成され固定箇所に位置的に固定して配置され、ヒンジ部材との接続箇所でこのヒンジ部材から遠ざかる方向に少なくとも所定距離の範囲内では回転軸と直交する前記した所定層の面方向の長さが幅広となった固定部材と、(ホ)アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーとをMEMS素子に具備させる。
【0022】
すなわち請求項3記載の発明では、導電性の基板の上のアクチュエータがこの基板との静電的な力によってヒンジ部材を中心として回転しミラーの入射光の反射方向を変化させるようになっている。ヒンジ部材は所定層から形成されており、回転軸に沿ってアクチュエータと固定箇所との間を接続している棒状の部材であるが、その固定箇所にはヒンジ部材から遠ざかる方向に少なくとも所定距離の範囲内では回転軸と直交する前記した所定層の面方向の長さが幅広となった固定部材が配置されているので、ヒンジ部材の長手方向の衝撃をこの幅広となった固定部材の部分でゆるやかに吸収することができ、その破損を効果的に防止することができる。
【0023】
請求項4記載の発明では、(イ)一方の電極となる導電性の基板と、この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記した一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、前記した所定層から同じく形成され回転軸を中心軸としてアクチュエータと所定の固定箇所との間を接続する棒状部材であって前記した所定層の厚さ方向の長さがこれと直交する面方向の長さよりも長いヒンジ部材と、アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーとを備えたMEMS素子と、(ロ)このMEMS素子の基板と前記した所定層との間に電圧を印加する電源と、(ハ)この電源の電圧印加に応じて傾斜するミラーを用いて光線の入出力を行う入出力手段とを光デバイスに具備させる。
【0024】
すなわち請求項4記載の発明では、請求項1記載のMEMS素子を、光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等のミラーの傾斜角を用いて光の減衰率の調整や光のオン・オフあるいは光の走査等に利用する光デバイスに応用し、光デバイス自体の耐衝撃性を高めている。
【0025】
請求項5記載の発明では、(イ)一方の電極となる導電性の基板と、この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記した一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、前記した所定層から同じく形成され回転軸に沿ってアクチュエータと所定の固定箇所との間を接続するヒンジ部材と、アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーと、前記した所定層から同じく形成されアクチュエータの回転軸を中心とした回転範囲からわずかに離れた位置に固定されたストッパとを備えたMEMS素子と、(ロ)このMEMS素子の基板と前記した所定層との間に電圧を印加する電源と、(ハ)この電源の電圧印加に応じて傾斜するミラーを用いて光線の入出力を行う入出力手段とを光デバイスに具備させる。
【0026】
すなわち請求項5記載の発明では、請求項2記載のMEMS素子を、光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等のミラーの傾斜角を用いて光の減衰率の調整や光のオン・オフあるいは光の走査等に利用する光デバイスに応用し、光デバイス自体の耐衝撃性を高めている。
【0027】
請求項6記載の発明では、(イ)一方の電極となる導電性の基板と、この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記した一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、前記した所定層から同じく形成され回転軸に沿ってアクチュエータと所定の固定箇所との間を接続する棒状部材であってアクチュエータとの接続箇所でこのアクチュエータに近づく方向に少なくとも所定距離の範囲内では回転軸と直交する前記した所定層の面方向の長さが幅広となったヒンジ部材と、前記した所定層から同じく形成され固定箇所に位置的に固定して配置され、ヒンジ部材との接続箇所でこのヒンジ部材から遠ざかる方向に少なくとも所定距離の範囲内では回転軸と直交する前記した所定層の面方向の長さが幅広となった固定部材と、アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーを備えたMEMS素子と、(ロ)このMEMS素子の基板と前記した所定層との間に電圧を印加する電源と、(ハ)この電源の電圧印加に応じて傾斜するミラーを用いて光線の入出力を行う入出力手段とを光デバイスに具備させる。
【0028】
すなわち請求項6記載の発明では、請求項3記載のMEMS素子を、光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等のミラーの傾斜角を用いて光の減衰率の調整や光のオン・オフあるいは光の走査等に利用する光デバイスに応用し、光デバイス自体の耐衝撃性を高めている。
【0029】
【発明の実施の形態】
【0030】
【実施例】
以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
【0031】
図1は本発明の実施例におけるMEMS素子の要部を斜め上方から見たものである。このMEMS素子201は、円盤状のミラー部202を備えている。このミラー部202は、円盤の中心部を上面と平行な方向に貫通する1本の回転軸203を中心として傾斜角度θで矢印204方向に回転するようになっている。ミラー部202は、この回転軸203の貫通した2方向に突出した第1および第2のアクチュエータ205、206を備えている。これら第1および第2のアクチュエータ205、206の延長上には回転軸203が同じく中心部分を貫通した形で細い棒状の第1および第2のトーションスプリング(ヒンジ部)207、208のそれぞれ一端が配置されており、これらの他端は第1および第2の固定部209、210に接続された構造となっている。ただし、ミラー部202、第1および第2のアクチュエータ205、206、第1および第2のトーションスプリング207、208ならびに第1および第2の固定部209、210は別々の部品が組み合わされているのではなく、上部電極層と呼ばれる1つの層を所定の処理によって加工したものである。第1および第2のアクチュエータ205、206にはエッチングホールと呼ばれる開口212が複数配置されている。また、ミラー部202には図示しないが必要に応じて金(Au)やクロム(Cr)等の金属によって反射面が形成されている。
【0032】
この図1で第1および第2のアクチュエータ205、206の右半分部分の下側には所定の間隔dをおいて、下部電極を兼ねたシリコン基板215が配置されている。ミラー部202の下側では、このミラー部202の円形形状よりもやや大きなサイズでシリコン基板215がその面とほぼ垂直方向にくり抜かれるように切除されており、円形開口部216を形成している。これは、回転軸203を中心としてミラー部202が矢印204方向に回転するとき、シリコン基板215の上面と接触するのを防止するためと、上部電極層と下部電極を兼ねたシリコン基板215の間に電源217によって電圧を印加したときミラー部202に静電的な力が直接及ぼされないようにするためである。
【0033】
また、円形開口部216に連なって第1および第2のアクチュエータ205、206の図で左側の領域でもシリコン基板215がその面とほぼ垂直方向にくり抜かれるように切除されており、矩形開口部218を構成している。これに対して第1および第2のアクチュエータ205、206の図で右側の領域ではシリコン基板215は切除されていない。このように回転軸203を中心としてシリコン基板215が左右不均衡に存在することによって、電源217による電圧印加の大きさに応じて第1および第2のアクチュエータ205、206が左右異なった静電引力を受ける。この結果、印加電圧に応じてミラー部202は矢印204方向に回転する力を第1および第2のアクチュエータ205、206から伝達され、第1および第2のトーションスプリング207、208のこれに逆らう力と均衡する傾斜角にミラー面が設定されることになる。
【0034】
すなわち、電圧が印加されていない状態におけるミラー部202のミラー面と直交する垂線(Y軸方向)221に対して入射角αで光ビーム222が入射したとすると、電源217の印加電圧が大きくなるに応じて傾斜角度θが角度αから次第に大きな値に変化することになる。このようにミラー部202の傾斜角度θを電源217による印加電圧によって任意に変化させることで、後に説明するようにMEMS素子を光減衰器、光スイッチあるいは光スキャナ等の各種の光学部品あるいは光学装置に応用することができる。
【0035】
シリコン基板215におけるミラー部202の周辺あるいは第1または第2のアクチュエータ205、206の両側部のいずれかと対向する位置には、共にわずかの間隔を置いてストッパ部219の端部が配置されている。ストッパ部219は上部電極層で構成されている。この図1で回転軸203の方向をZ軸方向とし、前記した垂線221の方向がY軸方向のとき、このストッパ部219の端部は、ミラー部202および第1または第2のアクチュエータ205、206のX軸方向の揺れを制限する役割を果たしている。本実施例の第1および第2のアクチュエータ205、206は低電圧駆動を可能にするためにそれらの断面のサイズを小さくしているが、図でハッチングで示したようにY軸方向に細長い断面構造となっており、Y軸方向の衝撃に強い。その分だけX軸方向の衝撃に対して変形あるいは破壊が生じやすい構造となっているので、ストッパ部219の端部がこれらのX軸方向の大幅な移動を阻止するようになっている。
【0036】
なお、この図1では層構造を分りやすくするために、第1のアクチュエータ205の手前側(電源217を示している側)のシリコン基板215およびストッパ部219を適宜切除して図解している。また、上部電極層とシリコン基板215の間の中間層の図示は省略している。
【0037】
図2は、本実施例のMEMS素子の平面構造を表わしたものである。この図で実線224、225で示したのがストッパ部219における第1または第2のアクチュエータ205、206に対するストッパとしての役割を果たす前記した端部を示したものである。すでに説明したようにストッパ部219はミラー部202や第1または第2のアクチュエータ205、206と同一の上部電極層で構成されている。本来、ミラー部202や第1または第2のアクチュエータ205、206以外のこれらの領域は下部電極としてのシリコン基板215が露出していてもよい。本実施例のMEMS素子201ではこれらの領域に上部電極層を残すことで、ミラー部202や第1または第2のアクチュエータ205、206と対向する壁を作り、これによってY軸方向の不必要な移動を阻止するようにしている。
【0038】
図3は、図2でA−A方向にMEMS素子を切断した場合の端面の構造を表わしたものである。図3に示すように実施例ではミラー部202の上部に金の薄膜からなる反射層231が形成されている。また、ミラー部202の直下のシリコン基板215は図で下方からくり抜かれ、円形開口部216を形成している。ストッパ部219はミラー部202を挟むような形でそれぞれ所定の間隔を置いてこの両側に配置されている。
【0039】
図4は、図2でB−B方向にMEMS素子を切断した場合の端面の構造を表わしたものである。この図では図2における第2のアクチュエータ206を横断する形で切断している。第2のアクチュエータ206には、エッチングホールとしての開口212が上下に貫通している。この開口212は、第2のアクチュエータ206を構成する上部電極層とシリコン基板215の間にMEMS素子のパターン作成処理前にこの部分に存在していた図示しない中間層(活性層)をエッチングによって除去する際のエッチング液の染み込みを促進させる役割を果たしている。また、上部電極層を構成する第1および第2のアクチュエータ205、206(図1および図2)が印加電圧に応じて傾斜する際に、スクイーズダンピングと呼ばれる空気の粘性抵抗を低減して高速動作を可能とする。ストッパ部219は第2のアクチュエータ206を挟むような形で所定の間隔を置いてこの両側に配置されている。図示しないが第1のアクチュエータ205とストッパ部219の関係も同様である。
【0040】
図5(a)は、図2でC−C方向にMEMS素子を切断した場合の端面の構造を表わしたものである。この図では図2における第1のトーションスプリング207を横断する形で切断している。ストッパ部219は第1のトーションスプリング207を挟むような形で所定の間隔を置いてこの両側に配置されている。同図(b)は第1のトーションスプリングの断面を拡大して示したものである。本実施例では第1のトーションスプリング207のX軸方向の長さとY軸方向の長さは1対10程度となっている。この場合、X軸方向の第1のトーションスプリング207の長さは最も短い場合には数μm程度となる。図示しないが第2のトーションスプリング208とストッパ部219の関係も同様である。
【0041】
図6は、この実施例のMEMS素子をバルクマイクロマシニングによって製造するプロセスを示したものである。まず、同図(a)に示すようにシリコン基板215と中間層241および上部電極層242がそれぞれ所望の厚さとなった3層構造のウエハ243を用意する。ここでシリコン基板215と上部電極層242は共にシリコン(Si)にボロン(B)やリン(P)等の不純物をドープして導体としたものである。中間層241はシリコン酸化膜(SiO2)である。このうち、上部電極層242は、図1等で説明したミラー部202、第1および第2のアクチュエータ205、206、第1および第2のトーションスプリング207、208、第1および第2の固定部209、210ならびにストッパ部219が形成される層である。中間層241は、図1に示した間隔dに対応する厚さとなっている。本実施例ではシリコン基板215の厚さは300〜800μm、中間層241の厚さは0.5〜5μm、上部電極層242の厚さは10〜50μmのものを使用する。
【0042】
次に、同図(b)に示すようにフォトリソグラフィとエッチングによって上部電極層242のパターンを作成する。フォトリソグラフィとエッチングによるパターンの作成については、従来から用いられている手法なので図示および説明を省略する。この処理で図1等で説明したミラー部202、第1および第2のアクチュエータ205、206、第1および第2のトーションスプリング207、208、第1および第2の固定部209、210、開口212およびストッパ部219が形成される。なお、図6では上部電極層242の詳細な図示は省略している。
【0043】
次に、同図(c)に示すようにシリコン基板215側からフォトリソグラフィとエッチングを行い、図1に示したミラー部202に対応する円形開口部216や、この図5には示していない矩形開口部218を作成する。このときには、必要に応じてウエハ243の表裏を反転させて処理を行うことになる。
【0044】
最後に、同図(d)に示すように中間層241を除去する。ただし、図1および図2に示した第1および第2の固定部209、210およびストッパ部219の部分は中間層241と上部電極層242で構成されているので、エッチングの時間を調整することでこの部分の中間層241(図3〜図5で図示を省略)は残存させる。
【0045】
以上説明した実施例ではSOIを用いたバルクマイクロマシニングを使用してMEMS素子201を製造したので、表面マイクロマシニングと比べて簡単な工程となり、コストダウンを図ることができる。しかもSOIを用いた場合、構造体が結晶シリコンとなるため、ミラー等の光学部品を高い品質で製造することができる。更に通常の表面マイクロマシニングと比べて上部電極層242を厚く形成することができるので、図5(b)に示したように第1および第2のトーションスプリング207のY軸方向をX軸方向に比べて厚くすることができ、低電圧駆動を行う場合にもY軸方向に特に補強を行うことなく衝撃に対する耐性を十分持たせることができる。また、構造上、回転軸203の方向としてのZ軸方向(図1)の耐衝撃性が高いので、結果的にすべての方向に対する耐衝撃性を高めることができる。
【0046】
また、第1および第2のアクチュエータ205、206は第1および第2のトーションスプリング207、208に対して対称形となり、回転軸203の両側に開口212を均等に配置している。このため、回転軸203に対して質量のモーメントが対称形となり、第1および第2のトーションスプリング207、208が特定方向に余計に回転してねじ切れる事態の発生を効果的に防止することができる。更に第1および第2のアクチュエータ205、206のほぼ全面に開口212が配置されているので、エッチング液の染み込みを均一に行えると共に空気の粘性抵抗の低減も回転軸203を中心にバランスよく行うことができる。
【0047】
<第1の実施例の第1の変形例>
図7は本発明の第1の実施例のMEMS素子の第1の変形例における平面構造を表わしたものである。図7で図2と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。第1の変形例のMEMS素子201Aは、図2に示した第1の実施例のMEMS素子201と次の点が大きく相違している。第1の実施例では、図2に示したように第1および第2のトーションスプリング207、208が第1および第2の固定部209、210のうちの対応するもので終端している。第1の変形例では第1および第2のトーションスプリング207A、208Aが第1および第2の補強部209A、210Aを途中に挟んで更に延長されており、ストッパ部219の一部をなす第1および第2の緩衝吸収領域301、302に接続されている。
【0048】
これら第1および第2の緩衝吸収領域301、302は第1および第2の補強部209A、210Aと共に上部電極層242を構成しているが、第1および第2のトーションスプリング207A、208Aの終端が90度以上の鈍角で他の部材と接続されるように渦巻き状に進路を変え、進路を2分岐することで力の掛かる方向を2つに分散している。なお、第1および第2の補強部209A、210Aは第1の実施例における第1および第2の固定部209、210と異なり位置的に固定されているものではない。第1および第2の補強部209A、210Aは中間層としての酸化層を除去するまでの工程での強度を保持するための役割を果たしており、第1および第2のトーションスプリング207A、208Aは第1または第2の緩衝吸収領域301、302で固定されている。
【0049】
したがって、MEMS素子201AにZ軸方向(図1)の衝撃が加わったとき、第1の実施例ではこれを図2に示す第1および第2の固定部209、210で受け止めていたが、第1の変形例では第1および第2の補強部209A、210Aならびに第1および第2の緩衝吸収領域301、302で受け止めるようになっている。これにより、Z軸方向の衝撃に対する耐力が飛躍的に増大する。なお、第1の実施例および第1の変形例共に、第1または第2のトーションスプリング207、208、207A、208Aの両端の接続箇所は、図1にも示されているようにR(アール)を形成し、次第に幅広となって対向するアクチュエータ205、206あるいは補強部209A、210Aと接続されている。これもZ軸方向の衝撃に対する耐力の増強に効果がある。
【0050】
また、第1および第2のトーションスプリング207Aおよび208Aの横に壁を設けることで、構造体のパターンをエッチングで作製する際のばらつきを低減することができる。
【0051】
<第1の実施例の第2の変形例>
図8は本発明の第1の実施例のMEMS素子の第2の変形例における平面構造を表わしたものである。この第2の変形例のMEMS素子201Bでは、ミラー部202の周辺と第1または第2のアクチュエータ205、206におけるZ軸(図1)に平行な側部に沿って第1および第2のストッパ部311、312が所定の幅を有する壁状に設けられている。したがって、この図に示すようにMEMS素子201Bを上から見たとき、ミラー部202、第1および第2のアクチュエータ205、206、第1および第2のトーションスプリング207、208、第1および第2の固定部209、210ならびに第1および第2のストッパ部311、312以外の部分では下部電極としてのシリコン基板215が露出している。このように第1および第2のストッパ部311、312を壁のような構造にしても、衝撃に対するストッパとしての効果を得ることができる。
【0052】
<第2の実施例>
【0053】
図9は、本発明の第2の実施例として第1の実施例のMEMS素子を光減衰器に応用した例を示したものである。この光減衰器501は、減衰を行う光を入射する第1の光ファイバ502と減衰後の光を射出する第2の光ファイバ503のそれぞれ端部近傍を収容するキャピラリ504を備えている。このキャピラリ504における第1および第2の光ファイバ502、503の端部側にはレンズホルダ505が接続されている。第1の光ファイバ502から射出された光は、このレンズホルダ505内を進行して非球面レンズ506に入射し、前方に配置されたMEMS素子201のミラー部202に入射する。
【0054】
このミラー部202と下部電極を兼ねたシリコン基板215の間には電圧制御部508から出力電圧が印加されるようになっている。この出力電圧は所定範囲で連続的にその値を変化させることができるようになっており、この電圧変化によってミラー部202の傾斜角が0度(水平)から所定の角度まで変化するようになっている。
【0055】
電圧制御部508による印加電圧を連続的に変化させ、ミラー部202の傾斜角をこれに応じて変化させると、レンズホルダ505の非球面レンズ506から出射しミラー部202で反射された光は、非球面レンズ506に入射する量および入射角を連続的に変化させる。この結果、非球面レンズ506に戻った光のうちで第2の光ファイバ503に結合する光の量が連続的に変化することになる。したがって、光減衰器501は電圧制御部508の出力電圧に応じて光の減衰量を変化させることができる。
【0056】
このような連続的な光の減衰制御の代わりに、電圧制御部508から電圧が2値のいずれかとなったオン・オフ制御信号を出力することで、たとえば第2の光ファイバ503に入射する光を第1の光ファイバ502から出射された光のほぼ100パーセントの状態とほぼ0パーセントの状態に切り換えることができる。これにより、図9に示したデバイスを光スイッチとして動作させることができる。
【0057】
<第3の実施例>
【0058】
図10は、本発明の第3の実施例として第1の実施例のMEMS素子を光スキャナに応用した例を示したものである。この光スキャナ551の一部を構成する光ファイバ552から射出された光は、コリメータレンズ553によって平行光にされて、図1あるいは図2に示したMEMS素子201のミラー部202に入射する。このミラー部202と下部電極を兼ねたシリコン基板215の間には電圧制御部554から出力電圧が印加されるようになっている。この出力電圧はその値がサイン波状あるいは鋸歯状等種々の波形で周期的に変化するようになっており、これによるミラー部202の傾斜角の周期的な変化で反射光555が矢印556に示すように方向を周期的に変える。したがって、この反射光555を用いた光学的なスキャンが可能になる。
【0059】
以上、各実施例ではMEMS素子をSOIを用いたバルクマイクロマシニングで実現する例を説明したが、最終的に同一の構造のMEMS素子を他の周知のプロセスで作成した物に対しても本発明を適用することができることは当然である。また、第1の実施例および変形例ではトーションスプリングを固定部で固定したが、第1の変形例のような緩衝吸収領域に接続しているときは固定部を省略してもよいことは当然である。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、棒状のヒンジ部材を構成する所定層の厚さ方向の長さがこれと直交する面方向の長さよりも長いので、同じくこの所定層から構成されるミラーやアクチュエータにこの所定層の厚さ方向の力が作用してもこれに耐えることができヒンジ部の破損を回避しながらその剛性を低下させ低電圧駆動を実現することができる。
【0061】
また請求項2記載の発明によれば、ミラーやアクチュエータと同一の層としての所定層に間隔を置いてストッパを形成したので、ミラーやアクチュエータが外力によってこの層の面方向に移動することがあってもこの動きを制動することができ、結果的にヒンジ部材を細長くすることでその剛性を低下させ低電圧駆動を実現することができる。
【0062】
更に請求項3記載の発明によれば、ヒンジ部材は所定層から形成されており、回転軸に沿ってアクチュエータと固定箇所との間を接続している棒状の部材であるが、その固定箇所にはヒンジ部材から遠ざかる方向に少なくとも所定距離の範囲内では回転軸と直交する前記した所定層の面方向の長さが幅広となった固定部材が配置されているので、ヒンジ部材の長手方向の衝撃をこの幅広となった固定部材の部分でゆるやかに吸収することができ、その破損を効果的に防止することができるので、ヒンジ部材を細長くしてその剛性を低下させ低電圧駆動を実現することが可能になる。
【0063】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1記載のMEMS素子を、光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等のミラーの傾斜角を用いて光の減衰率の調整や光のオン・オフあるいは光の走査等に利用する光デバイスに応用し、光デバイス自体の耐衝撃性を高めると共に低電圧駆動を実現することができる。
【0064】
更に請求項5記載の発明によれば、請求項2記載のMEMS素子を、光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等のミラーの傾斜角を用いて光の減衰率の調整や光のオン・オフあるいは光の走査等に利用する光デバイスに応用し、光デバイス自体の耐衝撃性を高めると共に低電圧駆動を実現することができる。
【0065】
また請求項6記載の発明によれば、請求項3記載のMEMS素子を、光減衰器、光スイッチ、光スキャナ等のミラーの傾斜角を用いて光の減衰率の調整や光のオン・オフあるいは光の走査等に利用する光デバイスに応用し、光デバイス自体の耐衝撃性を高めると共に低電圧駆動を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例におけるMEMS素子の要部斜視図である。
【図2】実施例のMEMS素子の要部を上から見た平面図である。
【図3】図2でMEMS素子の要部をA−A方向に切断した端面図である。
【図4】図2でMEMS素子の要部をB−B方向に切断した端面図である。
【図5】図2でMEMS素子の要部をC−C方向に切断した端面図である。
【図6】実施例のMEMS素子をバルクマイクロマシニングによって製造する一連のプロセスを示した説明図である。
【図7】本発明の第1の実施例の第1の変形例におけるMEMS素子の要部を表わした平面図である。
【図8】本発明の第1の実施例の第2の変形例におけるMEMS素子の要部を表わした平面図である。
【図9】本発明の第2の実施例として第1の実施例のMEMS素子を光減衰器に応用した例を示した概略構成図である。
【図10】本発明の第3の実施例として第1の実施例のMEMS素子を光スキャナに応用した例を示した概略構成図である。
【図11】従来SOIプロセスを使用して製造されたMEMS素子の平面および断面を示した図である。
【図12】表面マイクロマシニングにより従来製造されたMEMS素子の平面および断面を示した図である。
【符号の説明】
201、201A、201B MEMS素子
202 ミラー部(上部電極)
203 回転軸
205、206 アクチュエータ(上部電極)
207、208 トーションスプリング(ヒンジ部)
209、210 固定部
215 シリコン基板(下部電極)
216 円形開口部
217 電源
218 矩形開口部
219、311、312 ストッパ部
501 光減衰器(光スイッチ)
508、554 電圧制御部
551 光スキャナ
Claims (6)
- 一方の電極となる導電性の基板と、
この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、
前記所定層から同じく形成され前記回転軸を中心軸として前記アクチュエータと所定の固定箇所との間を接続する棒状部材であって前記所定層の厚さ方向の長さがこれと直交する面方向の長さよりも長いヒンジ部材と、
前記アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラー
とを具備することを特徴とするMEMS素子。 - 一方の電極となる導電性の基板と、
この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、
前記所定層から同じく形成され前記回転軸に沿って前記アクチュエータと所定の固定箇所との間を接続するヒンジ部材と、
前記アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーと、
前記所定層から同じく形成され前記アクチュエータの前記回転軸を中心とした回転範囲からわずかに離れた位置に固定されたストッパ
とを具備することを特徴とするMEMS素子。 - 一方の電極となる導電性の基板と、
この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、
前記所定層から同じく形成され前記回転軸に沿って前記アクチュエータと所定の固定箇所との間を接続する棒状部材であってアクチュエータとの接続箇所でこのアクチュエータに近づく方向に少なくとも所定距離の範囲内では前記回転軸と直交する前記所定層の面方向の長さが幅広となったヒンジ部材と、
前記所定層から同じく形成され前記固定箇所に位置的に固定して配置され、ヒンジ部材との接続箇所でこのヒンジ部材から遠ざかる方向に少なくとも所定距離の範囲内では前記回転軸と直交する前記所定層の面方向の長さが幅広となった固定部材と、
前記アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラー
とを具備することを特徴とするMEMS素子。 - 一方の電極となる導電性の基板と、この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、前記所定層から同じく形成され前記回転軸を中心軸として前記アクチュエータと所定の固定箇所との間を接続する棒状部材であって前記所定層の厚さ方向の長さがこれと直交する面方向の長さよりも長いヒンジ部材と、前記アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーとを備えたMEMS素子と、
このMEMS素子の前記基板と前記所定層との間に電圧を印加する電源と、
この電源の電圧印加に応じて傾斜する前記ミラーを用いて光線の入出力を行う入出力手段
とを具備することを特徴とする光デバイス。 - 一方の電極となる導電性の基板と、この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、前記所定層から同じく形成され前記回転軸に沿って前記アクチュエータと所定の固定箇所との間を接続するヒンジ部材と、前記アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーと、前記所定層から同じく形成され前記アクチュエータの前記回転軸を中心とした回転範囲からわずかに離れた位置に固定されたストッパとを備えたMEMS素子と、
このMEMS素子の前記基板と前記所定層との間に電圧を印加する電源と、
この電源の電圧印加に応じて傾斜する前記ミラーを用いて光線の入出力を行う入出力手段
とを具備することを特徴とする光デバイス。 - 一方の電極となる導電性の基板と、この基板と絶縁状態で間隔を置いて平行に配置された導電性の所定層から形成され、前記一方の電極との間に印加される静電的な力によって所定の回転軸を中心として回転力を生じるアクチュエータと、前記所定層から同じく形成され前記回転軸に沿って前記アクチュエータと所定の固定箇所との間を接続する棒状部材であってアクチュエータとの接続箇所でこのアクチュエータに近づく方向に少なくとも所定距離の範囲内では前記回転軸と直交する前記所定層の面方向の長さが幅広となったヒンジ部材と、前記所定層から同じく形成され前記固定箇所に位置的に固定して配置され、ヒンジ部材との接続箇所でこのヒンジ部材から遠ざかる方向に少なくとも所定距離の範囲内では前記回転軸と直交する前記所定層の面方向の長さが幅広となった固定部材と、前記アクチュエータと一体的に配置され、アクチュエータの回転に応じて入射光の反射方向を変化させるミラーを備えたMEMS素子と、
このMEMS素子の前記基板と前記所定層との間に電圧を印加する電源と、
この電源の電圧印加に応じて傾斜する前記ミラーを用いて光線の入出力を行う入出力手段
とを具備することを特徴とする光デバイス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003056303A JP2004264702A (ja) | 2003-03-03 | 2003-03-03 | Mems素子および光デバイス |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003056303A JP2004264702A (ja) | 2003-03-03 | 2003-03-03 | Mems素子および光デバイス |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004264702A true JP2004264702A (ja) | 2004-09-24 |
Family
ID=33120052
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003056303A Pending JP2004264702A (ja) | 2003-03-03 | 2003-03-03 | Mems素子および光デバイス |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004264702A (ja) |
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004294828A (ja) * | 2003-03-27 | 2004-10-21 | Anritsu Corp | 光スキャナ |
GB2413401A (en) * | 2004-04-20 | 2005-10-26 | Advanced Nano Systems Inc | MEMS scanning mirror with beams, springs and rotational comb teeth |
US7605966B2 (en) | 2008-01-21 | 2009-10-20 | Stanley Electric Co., Ltd. | Optical deflector |
US7605965B2 (en) | 2008-01-16 | 2009-10-20 | Stanley Electric Co., Ltd. | Optical deflector |
WO2012043041A1 (ja) * | 2010-09-28 | 2012-04-05 | コニカミノルタオプト株式会社 | マイクロスキャナおよびそれを備えた光学機器 |
CN104094160A (zh) * | 2012-02-03 | 2014-10-08 | 船井电机株式会社 | Mems器件以及具有投影功能的电子设备 |
US10222610B2 (en) | 2014-03-25 | 2019-03-05 | Seiko Epson Corporation | Optical scanner, image display device, and head mounted display |
WO2021080059A1 (ko) * | 2019-10-25 | 2021-04-29 | 엘지전자 주식회사 | 스캐너, 및 이를 구비한 전자기기 |
-
2003
- 2003-03-03 JP JP2003056303A patent/JP2004264702A/ja active Pending
Cited By (11)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004294828A (ja) * | 2003-03-27 | 2004-10-21 | Anritsu Corp | 光スキャナ |
GB2413401A (en) * | 2004-04-20 | 2005-10-26 | Advanced Nano Systems Inc | MEMS scanning mirror with beams, springs and rotational comb teeth |
US7187100B2 (en) | 2004-04-20 | 2007-03-06 | Advanced Numicro Systems, Inc. | Dimensions for a MEMS scanning mirror with ribs and tapered comb teeth |
US7605965B2 (en) | 2008-01-16 | 2009-10-20 | Stanley Electric Co., Ltd. | Optical deflector |
US7773282B2 (en) | 2008-01-16 | 2010-08-10 | Stanley Electric Co., Ltd. | Optical deflector |
US7605966B2 (en) | 2008-01-21 | 2009-10-20 | Stanley Electric Co., Ltd. | Optical deflector |
WO2012043041A1 (ja) * | 2010-09-28 | 2012-04-05 | コニカミノルタオプト株式会社 | マイクロスキャナおよびそれを備えた光学機器 |
JP5516746B2 (ja) * | 2010-09-28 | 2014-06-11 | コニカミノルタ株式会社 | マイクロスキャナおよびそれを備えた光学機器 |
CN104094160A (zh) * | 2012-02-03 | 2014-10-08 | 船井电机株式会社 | Mems器件以及具有投影功能的电子设备 |
US10222610B2 (en) | 2014-03-25 | 2019-03-05 | Seiko Epson Corporation | Optical scanner, image display device, and head mounted display |
WO2021080059A1 (ko) * | 2019-10-25 | 2021-04-29 | 엘지전자 주식회사 | 스캐너, 및 이를 구비한 전자기기 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6628856B1 (en) | Optical switch | |
KR101264136B1 (ko) | 가동 구조체을 사용한 마이크로 미러 소자 | |
US7129617B2 (en) | Rotary-type comb-drive actuator and variable optical attenuator using the same | |
US8049394B2 (en) | Micro oscillating comb tooth element with two interesecting oscillation axes | |
US6934439B2 (en) | Piano MEMs micromirror | |
JP4492252B2 (ja) | アクチュエータ | |
JP6447683B2 (ja) | 走査型微小電気機械反射鏡システム、光検出及び測距(lidar)装置、及び走査型微小電気機械反射鏡システムの作動方法 | |
US7505646B2 (en) | Optical switch and optical switch array | |
KR20040051598A (ko) | 특히 광학적 적용을 위한 스위치 장치 | |
JP4437320B2 (ja) | マイクロミラー、及び、マイクロミラーデバイス | |
JP5195028B2 (ja) | 微小電子機械素子及び微小電子機械素子アレイ | |
JP2004264702A (ja) | Mems素子および光デバイス | |
KR20060124079A (ko) | 스캐닝 마이크로미러 및 전자력 구동 2축 스캐닝마이크로미러 디바이스 | |
JP4445019B2 (ja) | ばね、ミラー素子、ミラーアレイおよび光スイッチ | |
US20070018065A1 (en) | Electrically controlled tiltable microstructures | |
JP4036643B2 (ja) | 光偏向器及び光偏向器アレイ | |
JP4475421B2 (ja) | マイクロミラー、及び、マイクロミラーデバイス | |
JP3846359B2 (ja) | 光デバイス | |
JP4336123B2 (ja) | Mems素子および光デバイス | |
JP2003315701A (ja) | ミラーデバイス及び該ミラーデバイスを備えた光スイッチ | |
JP7455976B2 (ja) | 光走査装置、及びマイクロミラーデバイスの駆動方法 | |
JP2002277810A (ja) | 光偏向器および光走査型光学装置 | |
JP4145168B2 (ja) | Mems素子および光デバイス | |
KR100493168B1 (ko) | Mems를 이용한 광 스위치 | |
JP4177051B2 (ja) | 可変光減衰器及び光部品 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060131 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20071227 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080108 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080513 |